説明

易分解性フィルム

【課題】
本発明は、農林水産資材および土木建築資材に求められる常温保管性を発現するだけではなく、特に使用後は速やかに分解する易分解性フィルムを提供せんとするものである。
【解決手段】
本発明の易分解フィルムは、生分解性樹脂組成物Aとアルカリ徐放性粒子Bを含む樹脂組成物Cからなる易分解性フィルムであることを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は易分解性フィルムに関し、生分解樹脂組成物を含有することで環境負荷および労働負荷を低減できることだけでなく、さらにアルカリ徐放性粒子を添加することで使用後の生分解速度を速やかに加速することのできる易分解性フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、農林水産資材および土木建築資材などに用いられるポリマー樹脂製品の使用後は、手作業もしくは機械によって回収されてきた。また、当該回収品は、土壌、薬剤、およびゴミなどが付着しており、リサイクルに供するには適さないため、焼却または埋め立てなどの方法により処理する方法が長くなされてきた。しかし、近年では低コスト化による回収費用の削減の要望や、さらに回収品の焼却による温室ガスの排出や埋立地の減少や埋立地周辺への有害物質の漏洩など環境問題が大きく取り上げられるようになってきた。
【0003】
このような中、酵素や微生物で分解される環境に優しい素材として、生分解性樹脂が大きく注目され、生分解性樹脂を用いた成型品に関する製品の開発が活発に行われてきている。特に生分解性樹脂製品は、使用後は分解することで製品回収が不要となり、回収にかかる労働コストが大幅に削減させることができる点において、農林水産資材および土木建築資材分野において盛んに開発が行われている。
【0004】
例えば、生分解性樹脂の一つであるポリ乳酸を主成分とする成型品に、アルカリ性物質を散布またはアルカリ性溶液に浸漬することで、生分解性樹脂を分解する技術が開示されている(例えば、特許文献1、2参照)。しかし、アルカリ性物質を散布するには散布にかかる手間とコスト、またはアルカリ性溶液に浸漬させるには、一旦回収する必要があるといった点で、十分なコスト削減にはいたっていない。
【0005】
また、生分解性を高めるために酸・アルカリ性物質を添加すると、フィルムがブロッキングすることで引き出し性が悪化することや、さらに製品保管時にも分解が促進され、使用時にフィルム物性の低下を招き好ましくない。
【特許文献1】特開2002−37921号公報
【特許文献2】特開H9−111036号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記した従来技術の背景に鑑み、農林水産資材および土木建築資材に求められる常温保管性を発現するだけではなく、使用後は速やかに分解する易分解性フィルムを提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、以下の発明を成すに至った。
(1)生分解性樹脂組成物Aとアルカリ徐放性粒子Bを含む樹脂組成物Cからなる易分解性フィルム。
(2)生分解性樹脂組成物Aが、主鎖にエステル結合を有する生分解性樹脂を含むことを特徴とする、(1)記載の易分解性フィルム。
(3)アルカリ徐放性粒子Bが、コアにアルカリ性物質、シェルに多孔質物質からなるコアシェル粒子であることを特徴とする、(1)又は(2)に記載の易分解性フィルム。
(4)アルカリ徐放性粒子Bの平均粒子径が、0.1μm以上、30μm以下であることを特徴とする、(1)から(3)のいずれかに記載の易分解性フィルム。
(5)樹脂組成物Cの全重量に占めるアルカリ徐放性粒子Bの重量が、0.01重量%以上、30重量%以下であることを特徴とする、(1)から(4)のいずれかに記載の易分解性フィルム。
(6)農林水産資材、土木建築資材に用いることを特徴とする(1)から(5)のいずれかに記載の易分解性フィルム。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、常温保管性に優れるだけでなく、使用後は速やかに分解する易分解性フィルムを提供することができる。かかる易分解性フィルムは、農林水産資材および土木建築資材などとして好適に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は前記課題、つまり農林水産資材および土木建築資材などに求められる常温保管性に優れるだけでなく、使用後は速やかに分解する易分解性フィルムについて、鋭意検討した結果、生分解性樹脂組成物とアルカリ徐放性粒子を含む樹脂組成物から成るフィルムとしたところ、かかる課題を一挙に解決することを究明したものである。
【0010】
すなわち、本発明の易分解性フィルムは、生分解性樹脂組成物Aとアルカリ徐放性粒子Bを含む樹脂組成物Cからなる易分解性フィルムとすることにより、常温保管性と使用後の分解性を優れたバランスで発現する観点でより顕著な効果を有する。
【0011】
本発明で用いる生分解性樹脂組成物Aは、生分解性の性質を有する樹脂組成物であれば特に限定されず、例えば、澱粉およびその誘導体類、ポリビニルアルコール類、キトサン類、ポリカプロラクトン類、セルロースエステル類、脂肪族ポリエステル類、芳香族ポリエステル類などを挙げることができる。好ましくは生分解性樹脂組成物Aが、エステル結合を有する生分解性樹脂を含む場合であり、エステル結合を有する生分解性樹脂の具体例として、ポリカプロラクトン類、セルロースエステル類、脂肪族ポリエステル類、芳香族ポリエステル類などを挙げることができる。
【0012】
本発明で用いる生分解性樹脂組成物Aの好ましい例としては、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリ3−ヒドロキシ酪酸、ポリ4−ヒドロキシ酪酸、ポリ4−ヒドロキシ吉草酸、ポリ6−ヒドロキシカプロン酸などのポリヒドロキシカルボン酸類や、エステル形成能を有するグリコール化合物(例えば、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコールなど)と、ジカルボン酸化合物(例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、フマル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸およびこれらのジメチルエステル誘導体など)、およびそのエステル誘導体類の重合体を挙げることができる。
【0013】
これらの中でも、特に易分解性の観点でを好ましく用いることができるものとして、例えば、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリ3−ヒドロキシ酪酸、ポリ4−ヒドロキシ酪酸、ポリ4−ヒドロキシ吉草酸、ポリ6−ヒドロキシカプロン酸やエチレングリコール、およびトリメチレングリコール、テトラメチレングリコールなどのグリコール化合物と、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸などのジカルボン酸化合物の重合体である。これらからなる樹脂組成物Aは、単独もしくは2種以上を組合せて使用してもよい。
【0014】
また本発明で用いる生分解性樹脂組成物Aは、フィルム物性全般、特に機械強度発現の観点から、数平均分子量が、好ましくは2万以上、50万以下、より好ましくは4万以上、40万以下、特に好ましくは5万以上、30万以下であるのがよい。
【0015】
上述の生分解性樹脂組成物Aは通常の使用状態においては、他の汎用ポリマーと何ら変わらないが、本発明の易分解性フィルムが好ましく用いられる農林水産資材用途や土木建築資材用途においては、使用後は環境下で速やかに分解されることが好ましい。
【0016】
その分解について、一般に、生分解性樹脂のポリマー分解機構は二段階であると考えられている。すなわち、一段階目は、ポリマーの加水分解による分子切断、つまりポリマー分子量の低下であり、二段階目は、低分子量化したポリマーが微生物存在下で酵素分解を受けて最終的に二酸化炭素と水まで分解される機構である。本発明のフィルムに用いられるアルカリ徐放性粒子Bは、上述の一段階目にあたる生分解性樹脂の加水分解を加速することで、二段階目の微生物による酵素分解に速やかに移行させるものである。
【0017】
具体的に、本発明で用いるアルカリ徐放性粒子Bは、コアにアルカリ性物質、シェルに多孔質物質、からなるコアシェル粒子の形態をとることが好ましい。アルカリ徐放性粒子Bをコアシェル構造の粒子とすることで、常温保管状態、つまり25℃、湿度50%の環境下では、コアシェル粒子内部にアルカリ性物質が補足され溶出することがないため、生分解性樹脂Aの加水分解は進まず、農林水産資材用途や土木建築資材用途などの各種用途の製品として要求されるフィルム物性を維持することができる。また、一度該製品として使用が開始されれば、使用環境中に暴露されることになり、特に土中や水中等の水存在環境下においては、コアシェル粒子内部のアルカリ性物質中のアルカリ成分がシェルの多孔質間隙から徐々に溶出することで、本発明の易分解性フィルム内部のpHが8.5以上、13.0以下のアルカリ環境となり、生分解性樹脂組成物Aの加水分解が進行する。
【0018】
本発明のアルカリ徐放性粒子Bとして、コアにアルカリ性物質及びシェルに多孔質物質からなるコアシェル粒子を用いた場合、コアのアルカリ性物質としては、アルカリ金属またはアルカリ土類金属塩類(例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素マグネシウム、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、リン酸ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等が挙げられる)、ハイドロキシアパタイト、およびゼオライトなどが挙げられ、これらは単独もしくは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0019】
また、アルカリ徐放性粒子Bとして、コアにアルカリ性物質及びシェルに多孔質物質からなるコアシェル粒子を用いた場合の、シェルの多孔質の形成には、例えば、後述するアパタイト形成や、上述のアルカリ性物質スラリーにシリコーン、高級脂肪酸、およびパラフィンなどでコアの表面処理を施すことが、アルカリ徐放性粒子Bの平均粒子径調整の観点から好ましい。
【0020】
さらに、アルカリ徐放性粒子Bの平均粒子径は0.1μm以上、30μm以下が好ましく、フィルム製膜性の観点からより好ましくは0.1μm以上、10μm以下であり、さらに好ましくは0.1μm以上、5μm以下である。アルカリ徐放性粒子Bの平均粒子径が0.1μmを下回る場合は、フィルム製膜の際に均一に分散させることが困難となる。また、アルカリ徐放性粒子Bの平均粒子径が30μmを越える場合には、延伸フィルムとした際、フィルムが破断するという問題がある。
【0021】
アルカリ徐放性粒子Bとしてコアにアルカリ性物質及びシェルに多孔質物質からなるコアシェル粒子を用いた場合の、アルカリ徐放性粒子Bの製造方法は、例えばシェルの多孔質物質としてアパタイトを形成させる場合、上述のコアとして用いるアルカリ性物質のスラリー(種晶)を撹拌しながら、浴温70度に調整し、これに10重量%のコロイド状炭酸カルシウムスラリーと13.5 重量%のリン酸水素二アンモニウム水溶液を、コロイド状炭酸カルシウムスラリーのカルシウムとリンのmol比が1.67となるように同時に滴下し、得られた物質を濾過、水洗することで、コアである種晶の周囲に花弁状のアパタイトが形成された、コアシェル粒子を得ることができる。さらに、アルカリ徐放性粒子Bの平均粒子径は、10重量%の炭酸カルシウムスラリーと13.5重量%のリン酸水素二アンモニウム水溶液の滴下量で任意に調整することができる。
【0022】
また、生分解性樹脂組成物Aとアルカリ徐放性粒子Bを含む樹脂組成物Cの全重量100重量%に占めるアルカリ徐放性粒子Bの重量割合は、0.01重量%以上、30重量%以下が好ましく、分解性コントロールの観点から0.1重量%以上、10重量%以下であることがより好ましく、フィルム物性発現の観点から0.1重量%以上、5重量%以下であることがさらに好ましい。また、アルカリ徐放性粒子Bにより、樹脂組成物Cからなる易分解性フィルムの表面に凹凸が形成されることとなり、易分解性フィルムをロール状に巻き取った際の耐ブロッキング性が向上する。樹脂組成物Cの全重量100重量%に占めるアルカリ徐放性粒子Bの重量割合が0.01重量%を下回ると、十分な分解性を得ることが困難となることがある。また、樹脂組成物Cの全重量100重量%に占めるアルカリ徐放性粒子Bの重量割合が30重量%を越えると、延伸フィルムとした際に、フィルムが破断しやすくなるという問題がある。
【0023】
本発明の易分解性フィルムは、農林水産資材および土木建築資材として用いられた場合の施工性の観点から、フィルムの引張弾性率が100MPa以上、1500MPa以下、であることが好ましい。引張弾性率が1500MPaを超えると柔軟性が不十分であり使い勝手が悪くなることがあり、100MPa未満であると巻物状のフィルムの解除性が悪化することや、フィルムの腰が不足するため製膜および加工プロセス上においても不具合を生じる場合がある。
【0024】
また、フィルムの65℃、30分での熱収縮率は、10%以下となることが好ましい。フィルムの65℃、30分後の熱収縮率が10%を越えると、巻物状のフィルムの解除性が悪化したり、施工性が悪化する不具合を生じる場合がある。
【0025】
フィルムの引張弾性率を100MPa以上、1500MPa以下、および/または65℃30分後の熱収縮率を10%以下とするためには、本発明の易分解性フィルムを少なくとも一方向に延伸した後、熱固定することが好ましい。
【0026】
また、本発明の易分解性フィルムは、各種用途に応じた要求特性を満足させるために、本発明の効果を損なわない範囲で少なくとも一層以上の積層構成を採用しても良い。
【0027】
本発明の樹脂組成物Cとしては、本発明の効果を損なわない範囲で易分解性フィルムに柔軟性を付与するために可塑剤を添加することができる。
【0028】
本発明に用いる公知の可塑剤としては、例えば、フタル酸ジエチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジシクロヘキシルなどのフタル酸エステル系、アジピン酸ジ−1−ブチル、アジピン酸ジ−n−オクチル、セバシン酸ジ−n−ブチル、アゼライン酸ジ−2−エチルヘキシルなどの脂肪族二塩基酸エステル系、リン酸ジフェニル−2−エチルヘキシル、リン酸ジフェニルオクチルなどのリン酸エステル系、アセチルクエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリ−2−エチルヘキシル、クエン酸トリブチルなどのヒドロキシ多価カルボン酸エステル系、アセチルリシノール酸メチル、ステアリン酸アミルなどの脂肪酸エステル系、グリセリントリアセテート、トリエチレングリコールジカプリレートなどの多価アルコールエステル系、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油脂肪酸ブチルエステル、エポキシステアリン酸オクチルなどのエポキシ系可塑剤、ポリプロピレングリコールセバシン酸エステルなどのポリエステル系可塑剤、ポリアルキレンエーテル系、ポリエーテルエステル系、ポリアクリレート系などが挙げられる。なお、安全性の面から、米食品衛生局(FDA)の認可がなされている可塑剤を用いることが好ましい。
【0029】
本発明の易分解性フィルムに可塑剤を添加する場合、フィルムの柔軟性の観点から、生分解性樹脂組成物Aとアルカリ徐放性粒子Bを含む樹脂組成物Cの100重量%において、生分解性樹脂組成物Aとアルカリ徐放性粒子Bの合計が60重量%以上100重量%以下で、可塑剤を0重量%以上40重量%以下含むことが好ましい。
【0030】
また、本発明の樹脂組成物Cとしては、本発明の効果を損なわない範囲で、主としてフィルムの機械的性質やフィルムの加工性等を付与することを目的として、生分解性樹脂以外の一般に市販されている各種の熱可塑性樹脂を配合しても良い。当該熱可塑性樹脂としては特に限定されないが代表的なものとして、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン 、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート等のポリエステル、ナイロン6、ナイロン12などのポリアミド、ポリ塩化ビニル、エチレン酢酸ビニル共重合体またはそのけん化物、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンサルファイド、芳香族ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリルなど、およびこれらの共重合体が挙げられる。本発明の樹脂組成物Cに、これら生分解性樹脂を配合する場合、本発明の易分解性と環境中での残留量低減の観点から、生分解性樹脂組成物Aとアルカリ徐放性粒子Bを含む樹脂組成物Cの100重量%において、生分解性樹脂組成物Aとアルカリ徐放性粒子Bの合計が80重量%以上100重量%以下で、生分解性樹脂以外の熱可塑性樹脂を0重量%以上20重量%以下含むことが好ましい。生分解性樹脂以外の熱可塑性樹脂が20重量%を越えると、フィルムの分解性の低下、および環境中への非生分解性樹脂の蓄積が生じるため好ましくない。
【0031】
また、本発明の樹脂組成物Cとしては、本発明の効果を損なわない範囲で、酸化防止剤、紫外線安定化剤、着色防止剤、艶消し剤、消臭剤、難燃剤、耐候剤、帯電防止剤、離型剤、抗酸化剤、イオン交換剤あるいは着色顔料等として、無機微粒子や有機粒子、有機化合物などの各種添加剤を添加することができる。本発明の樹脂組成物Cにこれらを添加する場合、フィルムの分解性の観点から、生分解性樹脂組成物Aとアルカリ徐放性粒子Bを含む樹脂組成物Cの100重量%において、生分解性樹脂組成物Aとアルカリ徐放性粒子Bの合計が90重量%以上100重量%以下で、その他の各種添加剤などを0重量%以上、10重量%以下含むことが好ましい。
【0032】
例えば、本発明に用いる酸化防止剤としてはヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系などを使用することができる。
【0033】
また、着色顔料としてはカーボンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄などの無機顔料の他、シアニン系、スチレン系、フタロシアイン系、アンスラキノン系、ペリノン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、キノクリドン系、チオインディゴ系などの有機顔料などを使用することができる。
【0034】
また、フィルムの易滑性や耐ブロッキング性の向上を目的として、無機微粒子や有機粒子を添加する際には、例えば、シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、アルミナゾル、カオリン、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、シリコーンなどの粒子を使用することができる。
【0035】
続いて、本発明の易分解性フィルムの製膜に関して説明する。
【0036】
本発明の易分解性フィルムは、インフレーション法、逐次二軸延伸法、同時二軸延伸法などの既存の延伸フィルムの製造法により得ることが出来る。逐次二軸延伸法や同時二軸延伸法でのフィルムの製造においては、例えば単層型延伸フィルムとする場合、樹脂組成物Cを押出機に供給し、Tダイ口金に導いてシート状に溶融押出をするなど、公知の方法で押し出しすることができるが、押出し機やポリマー配管、口金などの温度は300℃以下が好ましく、280℃以下がさらに好ましく、260℃以下が特に好ましい。また、樹脂組成物Cが押出し機内で溶融されてから口金より吐出されるまでの滞留時間は20分以下であることが好ましく、10分以下であることがさらに好ましく、5分以下であることがより好ましい。押出されたシート状の溶融物はキャスティングドラムに密着させて冷却固化せしめて未延伸フィルムを得る。かかる方法で得た未延伸フィルムを連続して少なくとも一方向に延伸した後、必要に応じて1段目延伸方向と直交する方向に延伸する。
【0037】
本発明の易分解性フィルムの製造に際して、使用する生分解性樹脂組成物Aの劣化および分解物を抑制するため、使用する樹脂のガラス転移温度にもよるが、40℃以上、110℃以下の範囲でブロッキングしないよう適時温度調整しながら真空乾燥し、真空度を10Torr以下の高真空とし、乾燥時間は6時間以上とすることが好ましい。
【0038】
生分解性樹脂組成物Aとアルカリ徐放性粒子Bを含む樹脂組成物Cに各種添加剤を添加する場合、例えば、添加剤を高濃度含有させた生分解性樹脂組成物Aのマスターチップと生分解性樹脂組成物Aおよびアルカリ徐放性粒子Bとを混合したブレンドチップをエクストルーダなど製膜機の押出系へ供して溶融混練しても良い。さらに二軸押出機の途中にベントポートを設け、ベントポートを減圧し、水分や溶融時に発生するオリゴマー類などの低分子量成分を除去しつつ溶融混練する方法が好ましい。
【0039】
フィルムの延伸条件は、目的とする熱収縮特性、寸法安定性、強度、弾性率などの機械特性に応じて、適宜調整し任意の方法で行うことができるが、少なくとも一軸方向に1.1以上延伸してなることが好ましい。延伸により基材中のアルカリ徐放性粒子がフィルム表面に突出することで、耐ブロッキング性向上および使用後の分解促進の観点から好ましい。
【0040】
また、延伸速度は、延伸速度100〜50000%/分の範囲で適宜調整することができる。また、フィルム中の結晶およびフィルム中のオリゴマー成分など低分子量成分を低減する目的で、100℃以上で10秒以上のより長時間熱処理を行うことがより好ましい。熱処理条件は、フィルムの強度、寸法安定性の点から用いる樹脂のガラス転移温度以上融点以下の範囲のより高い温度で行うことが好ましく、具体的には40〜90℃である。
【0041】
また、熱処理の際、フィルム長手方向および幅方向に弛緩させて行っても良い。また特定の伸度が求められる用途においては、延伸倍率、熱処理温度を適宜調整することが好ましく、延伸倍率を面積倍率として1〜10倍、熱処理温度を120℃以下で20秒以下の短時間の熱処理とすることが好ましい。
【0042】
また、延伸温度は、用いる樹脂のガラス転移温度以上、結晶化温度以下で行うことが二軸延伸性やフィルムの透明性の点で好ましく、延伸倍率は、長手方向、幅方向にそれぞれ1.1倍〜10倍の範囲の任意とすることができ、長手方向、幅方向のどちらかを大きくしてもよく、同一であってもよい。
【0043】
さらに、フィルムに成形した後に、印刷性、ラミネート適性、コーティング適性などを向上させる目的で各種の表面処理を施しても良い。表面処理の方法としては、コロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理、酸処理などが挙げられ、いずれの方法をも用いることができが、連続処理が可能であり、既存の製膜設備への装置設置が容易な点や処理の簡便さからコロナ放電処理が最も好ましいものとして例示できる。
【0044】
また、本発明の易分解性フィルムのフィルム厚みは、通常1μm以上、300μm以下であることが好ましい。フィルム厚みが1μmを下回ると、添加したアルカリ除法性粒子Bによりフィルム製膜時にフィルムが破断し易くなることがある、また、フィルム厚みが300μmを越えると、アルカリ徐放性粒子Bからのアルカリ成分の溶出速度が低下するため、分解速度が大幅に低下することがある。
【0045】
本発明の易分解性フィルムは、常温保管性に優れるだけでなく、使用後速やかに分解することから、農林水産資材および土木建築資材などして好適に使用することができる。
【実施例】
【0046】
以下に、本発明の易分解性フィルムの製造方法を具体的に例示するが、本発明のフィルムの製造方法はこれに限定されるものではない。
(1)フィルム厚み
JIS−B−7509(1955年制定)に従い、ダイヤルゲージ式厚み計を用いて測定した。
(2)分解性
B5サイズに切り出したフィルムを50℃、湿度90%RHの恒温恒湿条件下に10日間静置させた。
【0047】
10日間恒温恒湿条件下での静置処理をしていない(分解前)フィルムと、10日間恒温恒湿条件下で静置させた(分解後)フィルムについて、フィルム幅方向を幅、フィルム長手方向を長さとして、幅10mm、長さ150mmに切り出したフィルム試料を各々5サンプル用意し、これらのフィルム試料をオリエンテック社製引張試験機にかけて、測定温度23℃、初期長50mm、引張速度300mm/分の条件で、これ以外の条件はJISZ1702(1976年制定)に準じて引張試験を行い、破断伸度(%)を測定した。
【0048】
分解前と分解後の各々5サンプルのフィルム長手方向の破断伸度(%)を求め、平均値を算出し、次の基準で判定した。
◎:0≦[100×(分解後の破断伸度)/(分解前の破断伸度)]≦5 (%)
○:5<[100×(分解後の破断伸度)/(分解前の破断伸度)]≦10 (%)
△:10<[100×(分解後の破断伸度)/(分解前の破断伸度)]≦50(%)
×:50<[100×(分解後の破断伸度)/(分解前の破断伸度)]≦100 (%)
であり、◎、○を良好とした。
(3)常温保管特性
B5サイズに切り出したフィルムを30℃、湿度50%RHの恒温恒湿条件下に60日間静置させた。
【0049】
60日間恒温恒湿条件下の静置処理をしていない(経時変化前)フィルムと60日間恒温恒湿条件下で静置させた(経時変化後)フィルムについて、フィルム幅方向を幅、フィルム長手方向を長さとして、幅10mm、長さ150mmに切り出したフィルム試料を各々5サンプル用意し、これらのフィルム試料をオリエンテック社製引張試験機にかけて、測定温度23℃、初期長50mm、引張速度300mm/分の条件で、これ以外の条件はJISZ1702(1976年制定)に準じて引張試験を行い、破断伸度(%)を測定した。
【0050】
経時変化前と経時変化後の各々5サンプルのフィルム長手方向の破断伸度(%)を求め、平均値を算出し、次の基準で判定した。
◎:90≦[100×(経時変化後の破断伸度)/(経時変化前の破断伸度)]≦100 (%)
○:70≦[100×(経時変化後の破断伸度)/(経時変化前の破断伸度)]<90 (%)
△:50≦[100×(経時変化後の破断伸度)/(経時変化前の破断伸度)]<70(%)
×:0≦[100×(経時変化後の破断伸度)/(経時変化前の破断伸度)]<50 (%)
であり、◎、○を良好とした。
(4)耐ブロッキング性
B5サイズに切り出したフィルムを重ね合わせ、荷重(500g/(3×4)cm2 )下、40℃、90%RHで24時間調湿し、荷重を加えた箇所の剥離状態を観察し、次の基準で判定した。
◎:容易に剥離し重ね合わせた跡が残らない。
○:容易に剥離するが重ね合わせた跡が一部に残る。
△:剥離できるが重ね合わせた跡が残る。
×:剥離するときフィルムが劈開する。
であり、◎、○を良好とした。
(5)平均粒子径
リーズ・アンド・ノースラップ社(株)製粒度分布測定装置“マイクロトラックシリーズ”を使用して25℃・生理食塩水中にて測定した。平均粒子径は、体積平均の値より算出され、“マイクロトラックシリーズ”においては、粒子の真球度に依らず、“MV”値として表示される。
【0051】
続いて、使用した樹脂などを下記する。
(生分解性樹脂(A1))
生分解性樹脂として、ポリ乳酸(光学純度84%、NatureWorks社製 PLA4060D)を用いた。
(生分解性樹脂(A2))
生分解性樹脂として、ポリ乳酸(光学純度98%、NatureWorks社製 PLA4032D)を用いた。
(生分解性樹脂(A3))
生分解性樹脂としてポリブチレンサクシネートアジペート(昭和高分子社製、ビオノーレ#3001)を用いた。
(生分解性樹脂(A4))
生分解性樹脂としてポリ−ε−カプロラクトンPCL(ダイセル化学社工業製、セルグリーンPH−7)を用いた。
(生分解性樹脂(A5))
生分解性樹脂としてポリ4−ヒドロキシ酪酸(三菱瓦斯化学社製、ビオグリーンPHB)を用いた。
(生分解性樹脂(A6))
生分解性樹脂としてポリ(ブチレンサクシネート−テレフタレート)(BASF社製、Ecoflex)を用いた。
(生分解性樹脂(A7))
生分解性樹脂として酢酸セルロース(ダイセル化学工業社製、セルグリーンPCA00)を用いた。
(生分解性樹脂(A8))
生分解性樹脂としてポリビニルアルコール(クラレ社製、ポバール217)を用いた。
(アルカリ徐放性粒子(B1))
炭酸カルシウムのスラリー(種晶)を撹拌しながら、浴温70度に調整し、これに10重量%のコロイド状炭酸カルシウムスラリーと13.5 重量%のリン酸水素二アンモニウム水溶液を、コロイド状炭酸カルシウムスラリーのカルシウムとリンのmol比が1.67となるように同時に滴下し、得られた物質を濾過、水洗することで、平均粒子径0.05μmのアルカリ徐放性粒子B1を得た。
(アルカリ徐放性粒子(B2))
前述のアルカリ徐放性粒子B1と同様にして、10重量%のコロイド状炭酸カルシウムスラリーと13.5 重量%のリン酸水素二アンモニウム水溶液の滴下量を変えることで、平均粒子径0.1μmのアルカリ徐放性粒子B2を得た。
(アルカリ徐放性粒子(B3))
前述のアルカリ徐放性粒子B1と同様にして、10重量%のコロイド状炭酸カルシウムスラリーと13.5 重量%のリン酸水素二アンモニウム水溶液の滴下量を変えることで、平均粒子径5μmのアルカリ徐放性粒子B3を得た。
(アルカリ徐放性粒子(B4))
前述のアルカリ徐放性粒子B1と同様にして、10重量%のコロイド状炭酸カルシウムスラリーと13.5 重量%のリン酸水素二アンモニウム水溶液の滴下量を変えることで、平均粒子径30μmのアルカリ徐放性粒子B4を得た。
(アルカリ徐放性粒子(B5))
前述のアルカリ徐放性粒子B1と同様にして、10重量%のコロイド状炭酸カルシウムスラリーと13.5 重量%のリン酸水素二アンモニウム水溶液の滴下量を変えることで、平均粒子径50μmのアルカリ徐放性粒子B4を得た。
(アルカリ徐放性粒子(B6))
アルカリ徐放性粒子として、平均粒子径約1μmの脂肪酸表面処理炭酸カルシウム(丸尾カルシウム社製、ナノコートS−25)を用いた。
(アルカリ徐放性粒子(B7))
アルカリ徐放性粒子として、平均粒子径約2μmのゼオライト(日東粉化工業社製、SP#600)を用いた。
(アルカリ徐放性粒子(B8))
アルカリ徐放性粒子として、平均粒子径約1μmのハイドロキシアパタイト(エクセラ社製、天然アパタイト)を用いた。
(可塑剤(C1))
数平均分子量8000のポリエチレングリコール62重量%とL−ラクチド38重量%とオクチル酸スズ0.025重量%を混合し、窒素雰囲気下150℃で3時間重合することで、ポリエチレングリコールの両末端にポリ乳酸セグメントを有するポリエーテルエステル系可塑剤C1を得た。
(非生分解性樹脂(D1))
テレフタル酸ジメチル100質量部、およびエチレングリコール70質量部の混合物に、0.09質量部の酢酸マグネシウムと0.03質量部の三酸化アンチモンとを添加して、徐々に昇温し、最終的には220℃でメタノールを留出させながらエステル交換反応を行い、ついで、該エステル交換反応生成物に、0.020質量部のリン酸85%水溶液を添加した後、重縮合反応釜に移行した。さらに、加熱昇温しながら反応系を徐々に減圧して1hPaの減圧下、290℃で常法により重縮合反応を行い、固有粘度0.65のポリエチレンテレフタレート樹脂D1を得た。
(無機粒子(E1))
4塩化珪素1当量に対し、酸素1当量、および、水素1当量を気化装置において気化させ、酸水素炎中において1,000℃で加水分解を行い、酸化ケイ素粒子を得た。さらに、直径0.5mmのビーズを用いた湿式サンドミルにて粉砕し平均粒子径2.5μmの凝集シリカ粒子E1を得た。
(実施例1)
生分解性樹脂(A1)97重量%、、アルカリ徐放性粒子(B3)3重量%の混合物を、シリンダー温度200℃の二軸混練押出機に供して溶融混練し均質化した後にチップ化した組成物を得た。この組成物(チップ)をさらに10torrの高真空下、80℃で24時間乾燥し以下の製膜に供した。
【0052】
上記組成物のチップを温度200℃に設定した単軸押出機に供し、口金温度200℃に設定した円形ダイより溶融樹脂をチューブ状に押出し、冷却リングより約25℃のエアーを吹き付けながらチューブ内にエアーを注入してバブルを形成し、得られたフィルムをピンチロールへ導きチューブ状のフィルムをカッターで開き2枚のフィルムとし、巻き取りロールで巻き取り、厚さ20μmのフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示した。
(実施例2)
生分解性樹脂(A2)を97重量%、アルカリ徐放性粒子(B3)を3重量%の混合物を用いた以外は実施例1と同様にして、厚さ20μmのフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示した。
(実施例3)
生分解性樹脂(A3)を97重量%、アルカリ徐放性粒子(B3)を3重量%の混合物を用い、シリンダー温度、単軸押出機温度、および口金温度を140℃とした以外は実施例1と同様にして、厚さ20μmのフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示した。
(実施例4)
生分解性樹脂(A4)を97重量%、アルカリ徐放性粒子(B3)を3重量%の混合物を用い、シリンダー温度、単軸押出機温度、および口金温度を150℃とした以外は実施例1と同様にして、厚さ20μmのフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示した。
(実施例5)
生分解性樹脂(A5)を97重量%、アルカリ徐放性粒子(B3)を3重量%の混合物を用い、シリンダー温度、単軸押出機温度、および口金温度を190℃とした以外は実施例1と同様にして、厚さ20μmのフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示した。
(実施例6)
生分解性樹脂(A6)を97重量%、アルカリ徐放性粒子(B3)を3重量%の混合物を用い、シリンダー温度、単軸押出機温度、および口金温度を140℃とした以外は実施例1と同様にして、厚さ20μmのフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示した。
(実施例7)
生分解性樹脂(A7)を97重量%、アルカリ徐放性粒子(B3)を3重量%の混合物を用い、シリンダー温度、単軸押出機温度、および口金温度を180℃とした以外は実施例1と同様にして、厚さ20μmのフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示した。
(実施例8)
生分解性樹脂(A8)を97重量%、アルカリ徐放性粒子(B3)を3重量%の混合物を用い、シリンダー温度、単軸押出機温度、および口金温度を180℃とした以外は実施例1と同様にして、厚さ20μmのフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示した。
(実施例9)
生分解性樹脂(A1)を38重量%、生分解性樹脂(A2)を29重量%、生分解性樹脂(A3)を30重量%、アルカリ徐放性粒子(B1)を3重量%の混合物を用いた以外は実施例1と同様にして、厚さ20μmのフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示した。
(実施例10)
生分解性樹脂(A1)を38重量%、生分解性樹脂(A2)を29重量%、生分解性樹脂(A3)を30重量%、アルカリ徐放性粒子(B2)を3重量%の混合物を用いた以外は実施例1と同様にして、厚さ20μmのフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示した。
(実施例11)
生分解性樹脂(A1)を38重量%、生分解性樹脂(A2)を29重量%、生分解性樹脂(A3)を30重量%、アルカリ徐放性粒子(B3)を3重量%の混合物を用いた以外は実施例1と同様にして、厚さ20μmのフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示した。
(実施例12)
生分解性樹脂(A1)を38重量%、生分解性樹脂(A2)を29重量%、生分解性樹脂(A3)を30重量%、アルカリ徐放性粒子(B4)を3重量%の混合物を用いた以外は実施例1と同様にして、厚さ20μmのフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示した。
(実施例13)
生分解性樹脂(A1)を38重量%、生分解性樹脂(A2)を29重量%、生分解性樹脂(A3)を30重量%、アルカリ徐放性粒子(B5)を3重量%の混合物を用いた以外は実施例1と同様にして、厚さ20μmのフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示した。
(実施例14)
生分解性樹脂(A1)を38重量%、生分解性樹脂(A2)を29重量%、生分解性樹脂(A3)を30重量%、アルカリ徐放性粒子(B6)を3重量%の混合物を用いた以外は実施例1と同様にして、厚さ20μmのフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示した。
(実施例15)
生分解性樹脂(A1)を38重量%、生分解性樹脂(A2)を29重量%、生分解性樹脂(A3)を30重量%、アルカリ徐放性粒子(B7)を3重量%の混合物を用いた以外は実施例1と同様にして、厚さ20μmのフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示した。
(実施例16)
生分解性樹脂(A1)を38重量%、生分解性樹脂(A2)を29重量%、生分解性樹脂(A3)を30重量%、アルカリ徐放性粒子(B8)を3重量%の混合物を用いた以外は実施例1と同様にして、厚さ20μmのフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示した。
(実施例17)
生分解性樹脂(A1)を40.995重量%、生分解性樹脂(A2)を29重量%、生分解性樹脂(A3)を30重量、%アルカリ徐放性粒子(B3)を0.005重量%の混合物を用いた以外は実施例1と同様にして、厚さ20μmのフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示した。
(実施例18)
生分解性樹脂(A1)を40.99重量%、生分解性樹脂(A2)を29重量%、生分解性樹脂(A3)を30重量、%アルカリ徐放性粒子(B3)を0.01重量%の混合物を用いた以外は実施例1と同様にして、厚さ20μmのフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示した。
(実施例19)
生分解性樹脂(A1)を40.9重量%、生分解性樹脂(A2)を29重量%、生分解性樹脂(A3)を30重量%、アルカリ徐放性粒子(B3)を0.1重量%の混合物を用いた以外は実施例1と同様にして、厚さ20μmのフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示した。
(実施例20)
生分解性樹脂(A1)を36重量%、生分解性樹脂(A2)を29重量%、生分解性樹脂(A3)を30重量%、アルカリ徐放性粒子(B3)を5重量%の混合物を用いた以外は実施例1と同様にして、厚さ20μmのフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示した。
(実施例21)
生分解性樹脂(A1)を30重量%、生分解性樹脂(A2)を20重量%、生分解性樹脂(A3)を20重量%、アルカリ徐放性粒子(B3)を30重量%の混合物を用いた以外は実施例1と同様にして、厚さ20μmのフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示した。
(実施例22)
生分解性樹脂(A1)を35重量%、生分解性樹脂(A2)を22重量%、可塑剤(C1)を40重量%、アルカリ徐放性粒子(B3)を3重量%の混合物を用いた以外は実施例1と同様にして、厚さ20μmのフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示した。
(実施例23)
生分解性樹脂(A1)を30重量%、生分解性樹脂(A2)を22重量%、可塑剤(C1)を45重量%、アルカリ徐放性粒子(B3)を3重量%の混合物を用いた以外は実施例1と同様にして、厚さ20μmのフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示した。
(実施例24)
生分解性樹脂(A1)を42重量%、生分解性樹脂(A2)を35重量%、非生分解性樹脂(D1)を20重量%、アルカリ徐放性粒子(B3)を3重量%の混合物を用いた以外は実施例1と同様にして、厚さ20μmのフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示した。
(実施例25)
生分解性樹脂(A1)を42重量%、生分解性樹脂(A2)を30重量%、非生分解性樹脂(D1)を25重量%、アルカリ徐放性粒子(B3)を3重量%の混合物を用いた以外は実施例1と同様にして、厚さ20μmのフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示した。
(比較例1)
生分解性樹脂(A1)を40重量%、生分解性樹脂(A2)を30重量%、生分解性樹脂(A3)を30重量%の混合物を用いた以外は実施例1と同様にして、厚さ20μmのフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示した。
(比較例2)
生分解性樹脂(A1)を38重量%、生分解性樹脂(A2)を29重量%、生分解性樹脂(A3)を30重量%、無機粒子(E1)を3重量%の混合物を用いた以外は実施例1と同様にして、厚さ20μmのフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示した。
(比較例3)
非生分解性樹脂(D1)を97重量%、アルカリ徐放性粒子(B3)を3重量%の混合物を用い、シリンダー温度、単軸押出機温度、および口金温度を260℃とした以外は実施例1と同様にして、厚さ20μmのフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示した。
(比較例4)
非生分解性樹脂(D1)を100重量%を用い、シリンダー温度、単軸押出機温度、および口金温度を260℃とした以外は実施例1と同様にして、厚さ20μmのフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示した。
【0053】
【表1−1】

【0054】
【表1−2】

【0055】
【表1−3】

【0056】
【表1−4】

【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の易分解性フィルムは、農業水産資材および土木建築資材として好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生分解性樹脂組成物Aとアルカリ徐放性粒子Bを含む樹脂組成物Cからなる易分解性フィルム。
【請求項2】
生分解性樹脂組成物Aが、主鎖にエステル結合を有する生分解性樹脂を含むことを特徴とする、請求項1記載の易分解性フィルム。
【請求項3】
アルカリ徐放性粒子Bが、コアにアルカリ性物質、シェルに多孔質物質からなるコアシェル粒子であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の易分解性フィルム。
【請求項4】
アルカリ徐放性粒子Bの平均粒子径が、0.1μm以上、30μm以下であることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の易分解性フィルム。
【請求項5】
樹脂組成物Cの全重量に占めるアルカリ徐放性粒子Bの重量が、0.01重量%以上、30重量%以下であることを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の易分解性フィルム。
【請求項6】
農林水産資材、土木建築資材に用いることを特徴とする、請求項1から5のいずれかに記載の易分解性フィルム。

【公開番号】特開2009−57408(P2009−57408A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−223674(P2007−223674)
【出願日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】