説明

易重合性液体の移送方法

【課題】自己循環型キャンドモータポンプにより、易重合性液体を長期間にわたって安定して移送できる方法を提供する。
【解決手段】重合性液体を、自己循環型キャンドモータポンプを用いて移送する方法であって、前記自己循環型キャンドモータポンプは、移送される前記易重合性液体の一部を分岐してなる内部循環液が、冷却された後に発熱部材と接触するようになっており、自己循環型キャンドモータポンプに導入される易重合性液体の温度をA[℃]、前記冷却された直後の内部循環液の温度をB[℃]とした時、下記式1を満たすことを特徴とする易重合性液体の移送方法。
B ≦ A−5 …(式1)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は易重合性液体の移送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、易重合性液体を移送する目的で自己循環型キャンドモータポンプが広く用いられている。この型のポンプでは移送される液体の一部を内部循環液(バックフラッシング液)として利用して、ポンプ内部を循環させることでモータや軸受け部の冷却や潤滑を行っている。
このため自己循環型キャンドモータポンプで移送する液体が易重合性の場合は、ポンプ運転中に内部循環液が加熱されて重合物が発生し、ポンプが焼き付くなどしてポンプの運転が出来なくなる問題があった。
【0003】
この問題を解決するため、下記特許文献1ではシャフトの被支持部表面を電解研磨することにより、このシャフトの被支持部表面と接触して流動する内部循環液における摩擦熱の発生が抑制されるようにしたキャンドモータポンプが提案されている。また、循環パイプの経路途中に内部循環液を冷却させるための冷却手段を設ける例が記載されているが([0015])、どの程度の温度に冷却させるかについての記載は無い。
下記特許文献2では、減圧下の重合性液体をキャンドモータポンプで移送する際に、移送される重合性液体の一部を酸素含有気体の雰囲気下で常圧に戻してモータの冷却に利用する方法が提案されている。
下記特許文献3では、自己循環型キャンドモータポンプを縦型に設けることにより、横型の自己循環型キャンドモータポンプにおいて、循環パイプの水平部分および水平に配されたシャフトまわりで内部循環液が滞留し易いという不都合を防止する方法が提案されている。
【特許文献1】特開平6−272688号公報
【特許文献2】特開平8−73398号公報
【特許文献3】特開2001−114705号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では電解研磨した特殊なポンプが必要となり装置コストが高くなる欠点がある。
特許文献2に記載の方法では、実際にはバックフラッシング液を常圧に戻した後に再度ポンプの吐出圧まで加圧することが必要であることからバックフラッシング液の圧力制御が煩雑になる欠点がある。
特許文献3では最長でも6ヶ月まで安定な送液ができたとの記載があるのみで、1年間という長期間にわたって安定運転ができるかどうかは不明である。
【0005】
本発明は前記事情に鑑みてなされたものであって、特殊なポンプや、煩雑な圧力制御を必要とせずに、長期間にわたって易重合性液体を安定して移送できる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的は、以下の本発明により達成できる。
易重合性液体を、自己循環型キャンドモータポンプを用いて移送する方法であって、前記自己循環型キャンドモータポンプは、移送される前記易重合性液体の一部を分岐してなる内部循環液が、冷却された後に発熱部材と接触するようになっており、前記自己循環型キャンドモータポンプに導入される易重合性液体の温度をA[℃]、前記冷却された直後の内部循環液の温度をB[℃]とした時、下記式1を満たすことを特徴とする易重合性液体の移送方法。
B ≦ A−5 …(式1)
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、長期間にわたって易重合性液体を安定して移送することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明における易重合性液体は特に限定されず、易重合性化合物を1種類以上含有する液体であればよく、例えばα,β−不飽和カルボン酸またはそのエステル、オレフィン系化合物、エポキシ系化合物などを1種類以上含有する液体が挙げられる。特にα,β−不飽和カルボン酸またはそのエステルが好適である。
α,β−不飽和カルボン酸またはそのエステルとして、例えば(メタ)アクリル酸またはそのエステルが挙げられる。
(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ターシャリーブチル、(メタ)アクリル酸ノルマルブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル等のアルキルエステル類;(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル等の脂環式アルキルエステル類;(メタ)アクリル酸ベンジル等の芳香族基含有エステル類;(メタ)アクリル酸グリシジル等の複素環基含有エステル類;(メタ)アクリル酸アリル等の不飽和アルキルエステル類;(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル等のヒドロキシアルキルエステル類;(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル等のアルコキシアルキルエステル類;ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸トリエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸1,3−ブチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸1,6−ヘキサンジオール、ジ(メタ)アクリル酸ポリブチレングリコール、トリ(メタ)アクリル酸トリメチロールプロパン等の多価アルコールのエステル類;フタル酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル、ヘキサヒドロフタル酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル等のカルボン酸含有アルコールのエステル類;(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライド塩、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルベンジルクロライド塩、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル等のジアルキルアミノアルキルエステル類およびその塩類;(メタ)アクリル酸トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸ヘプタデカフルオロデシル等のフルオロアルキルエステル類;等が挙げられる。
なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸とはメタクリル酸およびアクリル酸の総称であり、(メタ)アクリロイルとはメタクリロイルおよびアクリロイルの総称である。
【0009】
易重合性液体中の易重合性化合物の含有量は特に限定されないが、本発明の方法により、ポンプ内における重合やポンプの焼き付きが効果的に抑制される点から、易重合性液体中における易重合性化合物の含有率が10質量%以上であることが好ましい。より好ましくは30質量%以上であり、特に好ましくは50質量%以上である。該易重合性化合物の含有率の上限は特に限定されず、100質量%でもよい。
【0010】
本発明における易重合性液体は重合防止剤を含有してもよい。重合防止剤としては、一般的に知られているものを用いることができる。重合防止剤の具体例としては、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジブチルヒドロキシルトルエンなどのフェノール系化合物;N−N’−ジイソプロピル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン、フェノチアジンなどのアミン系化合物;4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−アセトアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシルなどのN−オキシル系化合物などが挙げられる。重合防止剤は、1種を用いても、2種以上を併用してもよい。
易重合性液体中の重合防止剤の含有量は適宜決めることができるが、通常はコスト抑制の点から、重合防止剤以外の成分100質量部に対して、重合防止剤が5質量部以下となるように添加することが好ましい。該重合防止剤の添加量は、より好ましくは3質量部以下であり、特に好ましくは1質量部以下である。
【0011】
本発明における自己循環型キャンドモータポンプは、該ポンプによって移送される易重合性液体(本流)の一部を分岐して内部循環液とし、ポンプ内を循環させた後に再び前記本流に合流させる構成を有するものである。内部循環液はポンプ内を循環する間に、発熱部材と接触し、これによって該発熱部材が冷却される。本発明における発熱部材とは、ポンプの運転に伴って発熱する部材を意味しており、例えばモータ、ベアリング等がこれに含まれる。
また、本発明における自己循環型キャンドモータポンプは、本流から分岐された内部循環液を、発熱部材と接触する前に冷却する冷却手段を備えている。該冷却手段としては、冷媒との熱交換により冷却を行う装置が好ましく、各種熱交換器を用いることができる。熱交換器の具体例としては、スパイラル型熱交換器、二重管式熱交換器、プレート式熱交換器、冷却コイルが内挿された容器等が挙げられる。
また冷媒を用いた熱交換器を使用せず、前記本流から分岐された内部循環液がパイプを通って発熱部材へと導かれる間に、パイプ内の内部循環液が所定の温度までに冷却される構成でもよく、この場合は前記パイプの全長を、空気を冷媒とする熱交換器(冷却手段)とみなすものとする。
【0012】
本発明における自己循環型キャンドモータポンプとしては、上記構成を有するものであれば特に限定されず、一般に液移送に用いられているキャンドモータポンプを使用することができ、必要に応じて冷却手段を設ける。
例えば前記特許文献1、2または3に記載されているような自己循環型キャンドモータポンプ、あるいは市販の自己循環型キャンドモータポンプに、必要に応じて冷却手段を設けたものを用いることができる。
【0013】
本発明の移送方法において、自己循環型キャンドモータポンプに導入される易重合性液体の温度をA[℃]とし、冷却された直後の内部循環液の温度をB[℃]とした時、該AとBが下記式1を満たす。前記冷却された直後の内部循環液の温度(B)は、具体的には前記冷却手段の出口で測定した温度である。
B ≦ A−5 …(式1)
以下、自己循環型キャンドモータポンプに導入される易重合性液体の温度を温度A、冷却された直後の内部循環液の温度を温度Bということがある。
【0014】
図1は後述する実施例および比較例を示したものであり、「・」は実施例における温度Aおよび温度Bの値をプロットした点であり、「×」は比較例における温度Aおよび温度Bの値をプロットした点である。
後述の実施例にも示されるように、温度Bが上記式1を満たす範囲(図1における直線(1)およびその下の領域)であれば、ポンプの焼き付きが抑制され、長期に渡る連続運転を安定して行ことができる。これは内部循環液における重合が良好に抑制されるためと考えられる。
また該効果の点で、温度Bが下記式2を満たす範囲(図1における直線(2)およびその下の領域)であることがより好ましく、下記式3を満たす範囲(図1における直線(3)およびその下の領域)であることが最も好ましい。
B ≦ A×0.92−2.31 …(式2)
B ≦ A×0.77+3.08 …(式3)
【0015】
温度Bの下限値は特に制限されないが、低すぎると粘度が低下して冷却効率が低下するため、温度Bは15℃以上が好ましく、30℃以上がより好ましい。
温度Aは、移送される易重合性液体に含まれる易重合性化合物の重合が生じない温度範囲、すなわち重合が生じる温度よりも低い範囲に設定される。またエネルギー効率の点からは、移送時の易重合性液体の温度(温度A)と、移送の前工程および後工程における易重合性液体の好適な温度との差が小さい方が好ましい。したがって、温度Aは、移送される易重合性液体の組成、および移送の前後の工程における好適な液温を考慮して設定されることが好ましい。
特に温度Aが高く設定されているほど、本発明の方法による、ポンプ内における重合やポンプの焼き付きを抑制する効果は高い。したがって、本発明の効果が顕著に表れる点で温度Aは40℃以上が好ましく、45℃以上がより好ましく、50℃以上が特に好ましい。
【0016】
本発明によれば、自己循環型キャンドモータポンプにおいて、移送される易重合性液体の一部を分岐してなる内部循環液を、該内部循環液の温度が特定の範囲となるように冷却した後に発熱部材と接触させる条件で、ポンプ内を循環させることにより、ポンプ内での重合物の発生を抑制でき、これによりポンプの焼き付を抑制できるので、易重合性液体の移送を長期間にわたって安定に行うことができる。
また本発明の方法は、既存の自己循環型キャンドモータポンプを用いて、必要に応じてこれに冷却手段を設けることにより、特殊なポンプや煩雑な圧力制御を必要とせずに実施できるという利点を有する。
【0017】
本発明の方法が適用される工程は、易重合性化合物を含有する液体を製造、貯蔵、あるいは輸送する過程において、ポンプによる液体の移送(送液)が行われる工程であれば特に限定されない。
例えばメタクリル酸メチルとノルマルブタノールからエステル交換反応を用いたメタクリル酸ノルマルブチルの製造工程を例とすると、原料のメタクリル酸メチルの送液、反応終了後の反応液の移送、蒸留塔とリボイラーを用いた蒸留における塔底液のリボイラーへの循環を目的とした送液、低沸蒸留塔と製品蒸留塔を用いた2段蒸留における低沸蒸留塔塔底液の製品蒸留塔への送液、または易重合性液体である留出液の送液などへの適用が挙げられる。
【0018】
前述したように、移送される液体の温度が高い場合に本発明による効果が高いことから、反応終了後の反応液の移送、蒸留塔とリボイラーを用いた蒸留における塔底液のリボイラーへの循環を目的とした送液、低沸蒸留塔と製品蒸留塔を用いた2段蒸留における低沸蒸留塔塔底液の製品蒸留塔への送液への適用がより好ましく、特に蒸留塔とリボイラーを用いた蒸留における塔底液のリボイラーへの循環を目的とした送液、あるいは低沸蒸留塔と製品蒸留塔を用いた2段蒸留における低沸蒸留塔塔底液の製品蒸留塔への送液への適用が好ましい。
【実施例】
【0019】
以下、本発明を実施例によって詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
メタクリル酸メチルとノルマルブタノールを常圧でバッチ式のエステル交換反応で反応させ、副生するメタノールをメタクリル酸メチルとの共沸混合物として精留塔に導き、精留塔の塔底液を反応釜に戻すために自己循環型キャンドモータポンプ(以下、単にポンプということがある。)を用いた。
このとき移送される塔底液の主な組成は下記表1に示すように、メタノールを1質量%、重合防止剤としてのフェノチアジンを20ppm含有するメタクリル酸メチルであり、塔底の温度は100±1℃であった。本実施例においては、精留塔の塔底からポンプまでの距離が短いため、ポンプに導入される塔底液の温度は塔底における液温と同等とみなすことができる。すなわち温度Aは100℃である。
ポンプにおいて、内部循環液(以下、バックフラッシング液ということがある。)は水冷却の二重管を通して冷却した後、ポンプのモータ部へ供給した。該二重管の出口で測定した温度Bは75℃であった。
バッチ反応であるため、ポンプの稼働は、稼働時間が4時間、休転時間が3時間の繰り返しで行った。この稼動状態を繰り返した結果、1年間ポンプに問題を生じることなく運転することができた。
【0020】
(実施例2)
実施例1における反応釜において、バッチ式のエステル交換反応が終了した反応液を、温度が55℃となるまで冷却した後に反応液貯蔵タンクへ送液するために自己循環型キャンドモータポンプを用いた。このとき移送される反応液の主な組成は下記表1に示す通りであった。本実施例においては反応釜からポンプまでの距離が短いため、ポンプに導入される反応液の温度は反応釜における液温と同等とみなすことができる。すなわち温度Aは55℃である。
またポンプに導入される反応液の液温はバックフラッシング液の冷却は実施例1と同様にした。実施例1と同様にして測定した温度Bは45℃であった。
バッチ反応であるため、ポンプの稼動は、稼働時間が30分、休転時間が7.5時間の繰り返しで行った。この稼動状態を繰り返した結果、1年間ポンプに問題を生じることなく運転することができた。
【0021】
(実施例3)
実施例2における反応液貯蔵タンク内の液を低沸除去塔へ連続的に移送するために自己循環型キャンドモータポンプを用いた。
このとき移送される液の主な組成は下記表1に示す通りであった。本実施例においては反応液貯蔵タンクからポンプまでの距離が短いため、ポンプに導入される液の温度は反応貯蔵タンク内における液温と同等とみなすことができる。反応貯蔵タンク内の液温、すなわち温度Aは52℃であった。
バックフラッシング液の冷却は実施例1と同様にした。実施例1と同様にして測定した温度Bは43℃であった。
連続的に運転した結果、1年間ポンプに問題を生じることなく運転することができた。
【0022】
(実施例4)
実施例3における低沸除去塔の塔底液をリボイラーで加熱して塔底へ連続的に循環させるために自己循環型キャンドモータポンプを用いた。
このとき移送される液の主な組成は下記表1に示す通りであった。本実施例においては低沸除去塔の塔底からポンプまでの距離が短いため、ポンプに導入される塔底液の温度は低沸除去塔の塔底における液温と同等とみなすことができる。低沸除去塔の塔底の液温、すなわち温度Aは106℃であった。
バックフラッシング液は水冷却コイルを内挿した貯槽で冷却した後、ポンプのモータ部に供給した。冷却のための貯槽の出口で測定した温度Bは81℃であった。
連続的に運転した結果、1年間ポンプに問題を生じることなく運転することができた。
【0023】
(実施例5)
実施例3における低沸除去塔の塔底液を製品精製塔へ連続的に移送するために自己循環型キャンドモータポンプを用いた。
このとき移送される液の主な組成は下記表1に示す通りであった。本実施例においては低沸除去塔の塔底からポンプまでの距離が短いため、ポンプに導入される塔底液の温度は低沸除去塔の塔底における液温と同等とみなすことができる。低沸除去塔の塔底の液温、すなわち温度Aは106℃であった。
バックフラッシング液の冷却は実施例1と同様にした。実施例1と同様にして測定した温度Bは81℃であった。
連続的に運転した結果、1年間ポンプに問題を生じることなく運転することができた。
【0024】
(実施例6)
実施例5における製品蒸留塔の塔底液をリボイラーで加熱して塔底へ連続的に循環させるために自己循環型キャンドモータポンプを用いた。
このとき移送される液の主な組成は下記表1に示す通りであった。本実施例においては製品蒸留塔の塔底からポンプまでの距離が短いため、ポンプに導入される塔底液の温度は製品蒸留塔の塔底における液温と同等とみなすことができる。製品蒸留塔の塔底の液温、すなわち温度Aは100℃であった。
バックフラッシング液の冷却は実施例4と同様にした。実施例4と同様にして測定した温度Bは75℃であった。
連続的に運転した結果、1年間ポンプに問題を生じることなく運転することができた。
【0025】
(比較例1)
実施例4において、バックフラッシング液の冷却を行わなかった以外は実施例4と同様に運転を実施した。すなわち、比較例においては冷却器に冷媒を供給しない状態でバックフラッシング液を通過させ、該冷却器の出口における温度を温度Bの値とした(以下、同様)。温度Bは105℃であった。運転開始後3時間でポンプが焼き付きを起こしたため運転を停止せざるを得ない状況となった。
(比較例2)
実施例5において、バックフラッシング液の冷却を行わなかった以外は実施例5と同様に運転を実施した。温度Bは105℃であった。運転開始後3時間でポンプが焼き付きを起こしたため運転を停止せざるを得ない状況となった。
(比較例3)
実施例6において、バックフラッシング液の冷却を行わなかった以外は実施例6と同様に運転を実施した。温度Bは99℃であった。運転開始後4時間でポンプが焼き付きを起こしたため運転を停止せざるを得ない状況となった。
【0026】
【表1】

【0027】
図1は表1における温度Aおよび温度Bの値をプロットしたグラフである。図1中「・」は実施例を示し、「×」は比較例を示している。
この図1の結果に示されるように、図1における直線(1)より上の領域にある比較例では、ポンプの焼き付きが生じたのに対して、直線(1)以下、好ましくは直線(2)以下、より好ましくは直線(3)以下の領域にある実施例では、ポンプの焼き付きが抑制され、長期に渡る連続運転を安定して行ことができた。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、易重合性液体の移送に関するものであり、易重合性液体を送液するためのポンプを連続的に安定に使用できる方法を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明にかかる温度Aと温度Bの関係を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
易重合性液体を、自己循環型キャンドモータポンプを用いて移送する方法であって、
前記自己循環型キャンドモータポンプは、移送される前記易重合性液体の一部を分岐してなる内部循環液が、冷却された後に発熱部材と接触するようになっており、
前記自己循環型キャンドモータポンプに導入される易重合性液体の温度をA[℃]、前記冷却された直後の内部循環液の温度をB[℃]とした時、下記式1を満たすことを特徴とする易重合性液体の移送方法。
B ≦ A−5 …(式1)



【図1】
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【公開番号】特開2007−132195(P2007−132195A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−323259(P2005−323259)
【出願日】平成17年11月8日(2005.11.8)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】