説明

映像伝送方法、映像伝送システム及び映像処理装置

【課題】HDMI規格などの映像データの伝送規格を利用して、著作権保護用のデータなどの映像データに付随する各種付加データが良好に伝送できるようにすることを目的とする。
【解決手段】所定の規定で決められた第1の色域を超える色域が表現可能な映像データを伝送する場合において、送信側で送信する映像データとして、映像データから、第1の色域を超えた色域の映像の区間を検出する。そして、その検出した第1の色域を超えた色域の映像の区間に、映像データに関する付加データを、第1の色域を超えた色の変化で、埋め込むようにした映像データとしたものである。この映像データを受信した側では、伝送された映像データに含まれる第1の色域を超えた色域の映像の区間の色の変化を検出し、その検出した変化から、付加データを検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばHDMI(High-Definition Multimedia Interface)規格と称されるデジタル映像・音声入出力インターフェース規格に適用して好適な映像伝送方法及び映像伝送システム、並びにこの伝送システムに適用される映像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複数台の映像機器の間で、非圧縮のデジタル映像データなどを伝送させるインターフェース規格として、HDMI規格と称されるものが開発されている。HDMI規格は、映像データを、各色の原色データとして、1画素単位で個別に伝送する規格である(以下画素をピクセルと称する場合もある)。音声データ(オーディオデータ)についても、映像データのブランキング期間に、映像データの伝送ラインを使用して伝送するようにしてある。伝送する原色データは、赤,緑,青の加法混色の3チャンネルの原色データ(Rデータ,Gデータ,Bデータ)を伝送する場合と、Y,Cb,Crといった輝度および色差信号を伝送する場合とがある。
【0003】
HDMI規格のインターフェースでは、映像データを伝送するチャンネルとは別のチャンネルを使用して、制御データやピクセルクロックを伝送するようにしてある。制御データについては、映像データの送信側機器(ソース側機器)から受信側機器(シンク側機器)への伝送だけでなく、受信側機器(シンク側機器)から送信側機器(ソース側機器)への伝送も行える構成としてある。また、ソース側機器では、8ビット単位でデータを暗号化してあり、シンク側機器では、8ビット単位でデータをその暗号化からの復号化を行うようにしてある。
【0004】
特許文献1には、HDMI規格の詳細についての記載がある。
【特許文献1】WO2002/078336号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、映像データなどのコンテンツを、HDMI規格のインターフェースで伝送する場合には、著作権保護を行うことが重要である。著作権保護用のデータを伝送する方式としては、上述した制御データとして伝送する場合と、映像データで示される映像そのものに、著作権保護のデータを埋め込む方式とがあり、それぞれ一長一短がある。著作権保護のデータを、映像データに付加された制御データで伝送するようにした場合、映像データそのものには、変更が加えられないため、映像データの品質を保つ点では好ましい。ところが、映像データと制御データとを分離することが可能であれば、映像データから著作権保護のデータを除くことが可能となり、著作権保護用のデータが上手く機能しなくなってしまう。また、著作権保護などのデータを新たに加えるようにすると、映像データに付随するデータのデータ量が増え、伝送されるデータが増えて好ましくなくなってしまう。
【0006】
一方、映像データそのものに、著作権保護のデータをウォーターマークなどとして埋め込む方式では、映像データから著作権保護用のデータを除去することが困難であり、著作権保護の効果が高いが、そのデータの埋め込みで、伝送される映像データそのものの品質が低下する可能性があり、表示映像に影響を及ぼさない程度の、比較的簡単なデータの埋め込みしか出来ない問題があった。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、HDMI規格などの映像データの伝送規格を利用して、著作権保護用のデータなどの映像データに付随する各種付加データが良好に伝送できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、所定の規定で決められた第1の色域を超える色域が表現可能な映像データを伝送する場合において、送信側で送信する映像データとして、映像データから、第1の色域を超えた色域の映像の区間を検出する。そして、その検出した第1の色域を超えた色域の映像の区間に、映像データに関する付加データを、表現される映像と色相の略等しい第1の色域を超えた色への変化で、埋め込むようにした映像データとしたものである。この映像データを受信した側では、伝送された映像データに含まれる第1の色域を超えた色域の映像の区間の色の変化を検出し、その検出した変化から、付加データを検出する。
【0009】
このようにしたことで、規定された色帯域を越える色の変化で、映像データの付加データが伝送されるようになり、少なくとも、規定された色帯域の映像データについては、映像の品質に一切劣化を起こすことがない状態で、付加データを伝送できるようになる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、規定された色帯域を越える色の変化で、映像データの付加データが伝送されるようになり、少なくとも、規定された色帯域の映像データについては、映像の品質に一切劣化を起こすことがない状態で、付加データを伝送できる。従って、伝送データ量を増やすことなく、著作権保護用のデータなどの各種付加データが、良好に伝送できるようになる。規定された色帯域の色だけを表示可能な能力の表示装置の場合には、付加データによる表示映像の劣化が全くない。規定された色帯域を越えた色を表示可能な能力の表示装置の場合には、付加データによる表示映像の劣化が多少あるが、基本的な色の表現範囲から外れた箇所での元の映像と色相の略等しい色の変化であるので、付加データによる劣化が目立たない状態での表示が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の一実施の形態を、図1〜図6を参照して説明する。
【0012】
本実施の形態においては、HDMI規格のケーブルで、ソース側機器からシンク側機器に映像データなどを伝送する伝送システムに適用したものである。そして、ソース側機器からシンク側機器に映像データを伝送する際に、映像データの付加データを、その映像データに埋め込んで伝送するようにしたものである。
【0013】
まず、具体的な伝送構成について説明する前に、本実施の形態で伝送される映像データの特性について説明する。HDMI規格のケーブルで映像データを伝送する場合には、赤,緑,青の原色データ(Rデータ,Gデータ,Bデータ:いわゆるRGBデータ)を伝送する場合と、Y,Cb,Crの輝度および色差信号を伝送する場合とがある。
【0014】
ここで図4を参照して説明すると、図4は、原色信号であるRGBデータを入力して表示可能な表示装置において、立体(色空間)を投影したu’,v’色度図である。横軸がu’であり縦軸がv’である。このu’,v’色度図として示された図4において、自然界に存在する色の範囲が、外側の扇形形状で示されている。この図4中で、例えば3点Rs,Gs,Bsで囲って示される3角形の範囲が、通常のRGBデータで表現可能な色域である。この三角形の内部の色は、各原色RGBの値をそれぞれアナログ値の場合に0から1までの範囲の値で与えることにより、一意に決めることができる。このRGBの3原色をどこにするかで、表示できる色域が決定されるが、その規格のひとつとして、sRGB規格がある。アナログ信号の場合に0から1までの範囲で表現される値は、デジタルの場合には、例えば8ビットで量子化された値で示されることになる。
【0015】
従来は、表示手段として使用されていた陰極線管(CRT)の蛍光体の特性から、ほぼ図4に示されるようなsRGB規格の頂点(3原色の色度点)Rs,Gs,Bsと、モニタが表現可能な3原色点が一致していた。ところが、最近CRT以外の各種FPD、およびプロジェクタタイプのモニタが増え、モニタの再現できる色域がsRGB規格で規定された色域の外側に広がってきて、より広い色域が再現可能になってきた。例えば、頂点Rf,Gf,Bfで囲まれた図4に破線で示した色域の例は、あるFPDで表現可能な色域の例である。
【0016】
これらの色を再現することのできる色域の動画規格として、xvYCC規格が策定された。図4中の各点は、自然界に実際に存在した色度を示したものである。この図4から判るように、画像中には、sRGB信号で表現可能な色域を超えた範囲の色となる場合が相当ある。
【0017】
図5は、xvYCC信号とsRGB信号の色域の関係を示した図である。縦軸が輝度信号Y、横軸が色差信号Cb,Crである。xvYCC信号の規格では、図5に示すように、sRGB信号と同じ原色点を用いつつ、一つの輝度信号Yと二つの色差信号Cb,Crで表現し、sRGB信号の色域を包含するよう規格化されている。xvYCC信号は輝度信号と2つの色差信号であるYデータ,Cbデータ,Crデータで表現され、sRGB信号としてのRデータ,Gデータ,Bデータとは、以下の行列によって変換可能である。同様にその逆変換によりsRGB信号からxvYCC信号が得られることはいうまでもない。図5に示すように、sRGB信号としての領域は、菱形の領域で示され、xvYCC信号としての拡張利領域が、その菱形のsRGB信号の周辺に設定されている。色差信号Cbデータ,Crについては、−0.5から+0.5の
Y= 0.2126R+0.7152G+0.0722B
Cb=−0.1146R−0.3854G+0.5000B
Cr= 0.5000R−0.4542G−0.0458B
【0018】
図6は、3次元的に示された色空間上に、sRGB信号の色域とxvYCC信号の色域とを示したものである。sRGB信号の色域を示す四角の立方体は、xvYCC信号の色域を示す四角の立方体よりも小さく表現されている。図6中の各点は、xvYCC信号として映像データを構成させた場合に、実際に存在した色度を示したものである。ここで、sRGB信号の色域を示す四角の立方体の外側に位置する点が、sRGB信号の域外のデータとして表現されるデータになる。
【0019】
ところで、映像信号の記録、および伝送については、テレビを中心とする映像機器においては、一般的にはYCC系であり、DVDやカメラ一体型VTRにおいても、色差信号で記録されている。また、アナログの伝送においても、コンポジット、コンポーネントの信号は、YCCの色差信号、およびそれを重畳された形で伝達されている。また、HDMI等のデジタルインターフェイスにおいても、YCCの色差信号(Yデータ,Cbデータ,Crデータ)にて伝達される。YCCの色差信号、即ちYデータとCbデータとCrデータとで伝送を行う構成とした場合には、sRGB信号の域外のデータを伝送することが可能であり、xvYCC信号の色域を扱うことも容易に対処可能である。
【0020】
一方、YCCの色差信号で伝送を行う場合であっても、従来の放送、デジタルビデオ、DVDなどのパッケージメディアなど、種々の映像に含まれる色域は、一般的には、ほぼsRGB信号の色域内に収まっている。これは、CRTを中心とする、ほとんどすべての映像表示機器において、表示、または再生可能であるように、sRGB信号の色域となるように、カメラのフィルタが設計され、また撮影後信号処理され、または編集されているからである。
【0021】
よって、現状ではYCCの色差信号を伝送する場合であっても、sRGB信号の色域を超えている範囲については、映像としての信号成分が入っていないことになる。
本発明においては、この点に着目して、sRGB信号の色域を超える広色域の映像信号を伝送可能とした場合において、sRGB信号の色域を超える色域に、付加データ(ウオーターマークなど)を埋め込むようにして、付加データを確実に伝送できるようにすると共に、その埋め込まれた付加データが、再生映像の品質劣化に及ぼす影響を最小限にするようにしたものである。
【0022】
以下、このように色域が規定された色域を超えた箇所に付加データを埋め込んで伝送する構成の例について説明する。
図1は、本例のシステム構成例を示した図で、ソース側機器であるビデオ記録再生装置10と、シンク側機器であるテレビジョン受像機30とを、HDMIケーブル1で接続して、ビデオ記録再生装置10から映像データや音声データを、テレビジョン受像機30に伝送する構成としてある。本例のビデオ記録再生装置10は、色域が広帯域の映像データを記録し再生することができる構成としてあり、テレビジョン受像機30は、色域が広帯域の映像の表示処理が行える受像機としてある。
【0023】
以下の説明でHDMI規格について、必要な構成などを順に説明するが、基本的には既存のHDMI規格をそのまま適用してあり、HDMIケーブル1の構成などは従来と同じである。本例の場合には、HDMIケーブル1を使用して、輝度信号及び色差信号、即ちYCCの色差信号(Yデータ,Cbデータ,Crデータ)の信号形式で伝送される。
【0024】
まず、ビデオ記録再生装置10について説明すると、ビデオ記録再生装置10は記録再生部11を備え、映像データや音声データを記録し再生することができる。記録再生部11としては、例えばハードディスクドライブ(HDD)装置を使用できる。また、ディスク装着部10aを備えて、そのディスク装着部10aに装着されたディスク(DVDなど)10bを記録再生部11で再生することもできる。記録再生部11で再生して得た映像データがアナログ信号である場合には、アナログ・デジタル変換回路12に供給し、デジタルデータ化して、伝送処理する。ここでは、輝度信号と色差信号とよりなるデータとする。再生して得た音声データは、音声処理部14に供給する。
【0025】
アナログ・デジタル変換回路12でデジタル化した映像データ、又は記録再生部11から既にデジタル化されて供給された映像データは、レベル検出部16に供給する。レベル検出部16では、供給される区間(領域)の色が、sRGB信号の色域を超える色である場合に、そのことが検出される。検出された区間の色差信号については、スイッチ17に供給される。レベル検出部16では、例えば、映像内のある程度連続した領域で、sRGB信号の色域を超える色である場合に、そのことを検出するようにしてあり、例えば1ピクセルから数ピクセル程度だけが、sRGB信号の色域を超える色であった場合には、検出なしとする。
【0026】
また、本例のビデオ記録再生装置10は、ウォーターマーク発生部18を備えて、そのウォーターマーク発生部18で、著作権保護などを行うためのウォーターマークを発生させることが可能としてある。このウォーターマーク発生部18としては、例えば、発生させるウォーターマークを、メモリなどに記憶させて、予め用意させる構成としてもよい。或いは、そのときの条件で必要な著作権情報に対応したウォーターマークを、演算処理で生成させる構成としてもよい。
【0027】
レベル検出部16で、sRGB信号の色域を超える色である区間を検出した場合に、スイッチ17に供給されるその区間に、ウォーターマーク発生部18で用意されたウォーターマークをスイッチ17から出力させる制御を行う。このスイッチ17が出力するウォーターマークは、加算器19に供給し、アナログ・デジタル変換回路12側から供給される映像信号に加算し、ウォーターマークが加算された伝送用の映像データとする。ここでのウォーターマークの加算処理としては、表現される映像と色相の略等しいsRGB信号の色域を超える範囲での色の変化で、ウォーターマークを映像中に加算する。ここでの色相が略等しい変化とは、色度図上において、所望の色座標と白色を表す色座標を結んだ線状に色に信号を変化させることである。このように変化させることで、ウォーターマークが加算された映像データは、そのウォーターマークの加算箇所についても、色相そのものは元の色とほとんど変化がない状態である。
【0028】
音声処理部14は、再生又は受信して得た音声データを、伝送用の音声データとする処理が行われる。
【0029】
加算器19及び音声処理部14が出力する映像データ及び音声データは、HDMI伝送処理部20に供給する。HDMI伝送処理部20は、HDMI規格のインターフェースの伝送処理を行う回路部であり、例えば集積回路化してある。HDMI伝送処理部20に供給される映像データ及び音声データは、多重化回路21で多重化する。
【0030】
映像データは、例えば1ピクセルあたり24ビット使用して、Yデータ,Cbデータ,Crデータを伝送する。音声データについては、映像データが伝送されるチャンネルのブランキング期間を使用して伝送するように、多重化を行うようにしてある。この音声データをブランキング期間に配置して伝送する処理は、HDMI規格でフォーマット化された一般的な伝送処理である。
【0031】
そして、多重化回路21で多重化された伝送用のデータを、HDCP暗号化部22で暗号化する。HDCP暗号化部22は、HDCP(High-bandwidth Digital Content Protection System)規格で、少なくとも映像データが伝送されるチャンネルの暗号化を行うようにしてある。ここでの暗号化は、1チャンネルの8ビットのデータを単位として行うようにしてある。なお、ここでの8ビットのデータを単位とした伝送とは、送信用で入力させるデータのビット数であり、受信側で取り出されるデータのビット数である。実際にHDMI規格で伝送する際には、8ビットのデータを8−10変換で10ビットデータに変換して、ケーブルで相手側に伝送し、受信側で10ビットデータを8ビットに戻す10−8変換を行う、TMDS(Transition Minimized Differential Signaling)というシリアル伝送方式により伝送を行う構成としてある。
【0032】
HDCP暗号化部22で暗号化されたデータは、伝送処理部23に供給し、各色のピクセルデータを個別のチャンネルに配置し、またピクセルクロックチャンネルや制御データチャンネルなども、それぞれ対応したクロックやデータとし、HDMI端子24に接続されたHDMIケーブル1に送出する。
【0033】
HDMIケーブル1は、テレビジョン受像機30のHDMI端子41に接続するようにしてある。
次にテレビジョン受像機30の構成について説明する。テレビジョン受像機30のHDMI端子41に接続されたHDMIケーブル1で伝送されたデータは、HDMI伝送処理部40内の伝送処理部42で、ピクセルクロックに同期して検出(受信)される。検出された各チャンネルのデータは、HDCP復号化部42で送信時の暗号化からの復号化を行う。ここでの復号化についても、1チャンネルごとに8ビット単位で行われる。
【0034】
復号化されたデータは、多重分離回路44に供給して、各チャンネルに多重化されたデータを分離する。ここでの分離処理としては、映像が伝送されるチャンネルのブランキング期間に配置された音声データを、映像データから分離する。
【0035】
多重分離回路44で分離された各映像データについては、映像処理部31に供給する。映像処理部31では、伝送された映像データに関する各種処理を行う。例えば、映像データに重畳されたウォーターマークの検出が必要な場合には、この映像処理部31で検出し、その検出結果を制御部36に供給する。ウォーターマークの検出については、sRGB信号の色域を超える範囲の色の変化から検出される。
【0036】
映像処理部31で処理された映像データは、デジタル・アナログ変換回路32に供給して、アナログ映像信号とする。なお、輝度信号と色差信号から原色信号への変換が必要な場合には、このデジタル・アナログ変換回路32などで変換を行う。変換されたアナログ映像信号は、表示処理部33に供給する。表示処理部33では、表示パネル60を駆動する処理を行う。
【0037】
多重分離回路44で分離された音声データについては、音声処理部34に供給し、アナログ変換などの音声処理を行い、処理された出力を出力処理部35に供給して、スピーカ駆動用に増幅などの処理を行い、出力処理部35に接続されたスピーカ51,52から出力させる。
【0038】
多重分離回路44で分離された制御データについては、制御部36に供給する。なお、制御データについては、制御データ用のチャンネルを使用して、このテレビジョン受像機30の制御部36から、ビデオ記録再生装置10側の制御部15に送ることもできる。
【0039】
図2は、ビデオ記録再生装置10の伝送処理部23と、テレビジョン受像機30の伝送処理部42との間で、HDMIケーブル1で伝送される各チャンネルのデータ構成例を示した図である。図2に示すように、映像データを伝送するチャンネルとして、チャンネル0と、チャンネル1と、チャンネル2の3つのチャンネルが用意してあり、さらにピクセルクロックを伝送するクロックチャンネルが用意してある。1つのチャンネルでは、1クロックあたり8ビットの伝送が可能であり、3チャンネル合計での1クロックあたり24ビットを使用して、1ピクセルのYデータ,Cbデータ,Crデータを伝送する。また、制御データ伝送チャンネルとしての、DDC(Display Data Channel)ライン及びCEC(Consumer Electronics Control)ラインが用意してある。DDCラインは、主として表示を制御するデータを伝送する伝送路であり、CECラインは、主として接続された機器間で、機器制御のデータなどを相互に伝送する伝送路である。
【0040】
送信側では、映像データを伝送するチャンネル毎に、伝送処理部(送信部)23a,23b,23cが伝送処理部23内に用意してあり、受信側でも、映像データを伝送するチャンネル毎に、伝送処理部(データ受信部)42a,42b,42cが伝送処理部42内に用意してある。
【0041】
各チャンネルの構成について説明すると、チャンネル0では、ピクセルデータと、垂直同期データと水平同期データと補助データとを伝送するようにしてある。チャンネル1では、ピクセルデータと、2種類の制御データ(CTL0,CTL1)と、補助データとを伝送するようにしてある。チャンネル2では、ピクセルデータと、2種類の制御データ(CTL2,CTL3)と、補助データとを伝送するようにしてある。
【0042】
図3は、本例の伝送構成で伝送される映像データの、1フレームのライン構成及びピクセル構成を示した図である。本例の場合に伝送される映像データ(主映像データ)は、非圧縮データ(即ち1画素単位の映像データ)であり、垂直ブランキング期間及び水平ブランキング期間が付加されている。具体的には、図3の例では、表示される映像エリア(アクティブビデオエリアとして示すエリア)として、480ライン×720ピクセルのピクセルデータとしてあり、ブランキング期間まで含めたライン数及びピクセル数として525ライン及び858ピクセルとしてある。ブランキング期間中のダブルハッチング(右方向の斜線と左方向の斜線の重なり部分)で示すエリアはデータアイランドと称される、補助データが付加可能な期間である。
【0043】
このような伝送構成で伝送することで、ソース側機器10内のウォーターマーク発生部18で用意されたウォーターマークを、映像データに重畳して、シンク側機器30に伝送することができる。この場合の映像データへの重畳としては、sRGB信号の色域を超える色の区間(領域)がある程度ある場合に、その区間に、sRGB信号の色域を超える色の変化で、重畳するようにしてある。
【0044】
図7は、ウォーターマークを映像に埋め込む例を示したものである。図7に示すように、映像信号70に、映像として認識可能な図形や文字などのウォーターマーク71を埋め込む。この映像信号70を、従来の表示能力(即ちsRGB信号の色域を表示可能な)の表示装置80に伝送した場合には、その表示装置80の色再現能力を超えた範囲にウォーターマーク71が存在するので、表示画面81として、ウォーターマーク71が表示されることはない。一方、xvYCC信号の表示能力を有する表示装置90に伝送した場合には、表示画面91として、ソース側で重畳したウォーターマーク92が表示されることになる。このウォーターマーク92の表示は、その周辺のsRGB信号の色域を超えた色の部分で、そのsRGB信号の色域を超えた色の変化であり、なおかつ、表現される映像と色相の略等しい色の変化で表現されるため、比較的目立たない色の変化であり、表示画質への影響が最小限に抑えられた状態である。図6に示した色空間で示すと、sRGB信号の色域を示す菱形の直方体から、はみ出した範囲にある色について、色相の略等しい色の変化でウォーターマークの埋め込み処理が行われることになる。
【0045】
従って、表示画像への影響は全くない状態か、或いは、あっても最小限の画質低下で抑えることができ、ウォーターマークの埋め込みを良好に行うことができる。ウォーターマークを付加することによる伝送データ量の増加もない。ウォーターマークとして、例えば著作権保護のデータを埋め込むことで、良好な著作権保護が可能となる。著作権保護用のデータ以外の映像データに関する付加情報を、このようなウォーターマークで埋め込むようにしてもよい。
【0046】
なお、図7の例では、ウォーターマークとして、図形のような比較的単純なものを埋め込むようにしたが、より高度なデータ埋め込み処理を行うようにしてもよい。例えば、微小に色レベルを変化させるディザ処理を行うようにしてもよい。
【0047】
図8は、この場合の伝送構成を示したものである。図1の構成との変更点について説明すると、ビデオ再生装置10′で、アナログ・デジタル変換回路12でデジタル化した映像データ、又は記録再生部11から既にデジタル化されて供給された映像データを、ディザ処理部13に供給して、ディザ処理部13で、RGB信号の色域を超える色の区間で、ウォーターマークを重畳したい部分のレベルを、RGB信号の色域を超える色の変化で、微小に変化させる。また、レベル検出部16でも、供給される映像の区間(領域)の色が、sRGB信号の色域を超える色である場合に、そのことが検出される。検出された区間の色差信号については、スイッチ17に供給される。
【0048】
そして、レベル検出部16で、sRGB信号の色域を超える色である区間を検出した場合に、スイッチ17に供給されるその区間に、ウォーターマーク発生部18で用意されたウォーターマークをスイッチ17から出力させる制御を行う。このスイッチ17が出力するウォーターマークは、加算器19に供給し、ディザ処理部13の出力を加算し、ウォーターマークがディザ処理で加算された伝送用の映像データとする。その他の部分は、図1の構成と同一とする。
【0049】
図9は、ディザ処理を行われる状態の例を示したものである。図9の左側に示すように、ディザ処理前の映像100内の画素の色101として、sRGB信号の色域を超える色である区間を検出した場合に、図9の右側に示すように、ディザaの色の部分111と、ディザbの色の部分112とを所定画素ごとに交互に設けて、平均的に元の色となるようにする。この場合、元の色によっては、一方のディザa又はディザbは、sRGB信号の色域内になる場合もある。このようにして、ウォーターマークの埋め込みを行うことで、より目立たない良好な埋め込みが可能となる。
【0050】
なお、図8、図9のディザ処理の例では、sRGB信号の色域を超えた部分で、ディザ処理でウォーターマークを埋め込むようにしたが、ディザ処理を行う区間は、sRGB信号の色域内であってもよい。
具体的には、例えば、sRGB信号の色域内の特定の色の領域を検出して、その検出したsRGB信号の色域内の特定の色の領域の画素について、sRGB信号の色域内の色と、sRGB信号の色域外の飽和色とを交互に設定するようにして、平均的には元の映像の色が変化しない状態で変化させる処理であるディザを付加する処理を行って、ウォーターマークなどの不可データの埋め込みを行うようにしてもよい。この場合でも、ディザ表示されたsRGB信号の色域内の色と、sRGB信号の色域外の飽和色とは、色相の略等しい色とする。但し、ディザを付加するsRGB信号の色域内の色は、sRGB信号の色域外との境界部の近傍であることが、ディザを目立たないようにする点から好ましい。
【0051】
さらに、図9に示したようなディザ処理は、1つの画像内の空間的なディザ処理であるが、例えば、特定位置の画素について、時間的に異なるフレームで、色をsRGB信号の色域を超えた部分などで色相の略等しい色の間で変化させて、同様にディザ処理を行うようにしてもよい。
【0052】
また、上述した実施の形態では、ソース側の機器内で、ウォーターマークを埋め込む例について説明したが、例えば、図1に示したディスク装着部10aに装着したディスク(記憶媒体)10bに記録(記憶)された映像データとして、sRGB信号の色域を超えた広色域の情報がある映像データとした上で、そのsRGB信号の色域を超えた部分に、予めウォーターマークなどの付加データを埋め込む処理が施した映像コンテンツのディスクとしておいてもよい。このようにすることで、ソース側機器がウォーターマークを埋め込む処理をしなくても対処可能である。
【0053】
また、上述した実施の形態では、HDMI規格のインターフェースで伝送させる場合の例について説明したが、広帯域の映像データが伝送可能であれば、他の同様な伝送規格にも適用可能である。上述例では、YCCの色差信号(Yデータ,Cbデータ,Crデータ)の信号形式で伝送させる例としたが、RGB信号として広色域の信号が伝送可能である場合には、そのRGB信号で伝送させるようにしてもよい。HDMI規格のケーブルで接続するソース側機器とシンク側機器についても、図1に示した記録再生装置とテレビジョン受像機以外の映像機器で接続する構成としてもよい。また、ウォーターマークなどの付加データは、映像データがデジタルデータとアナログ信号の場合のいずれの場合でも表現可能であるので、ソース側の機器からシンク側の機器にアナログ映像信号伝送路を使用して、伝送する場合にも適用可能である。
【0054】
さらに、上述した実施の形態では、sRGB信号の色域と、それよりも色域が広いxvYCC信号の色域とがある場合の例について説明したが、その他の規格で決められた色域を適用してもよい。さらにまた、上述した実施の形態では、付加データとしてウォーターマークなどの例について説明したが、その他の各種データを、同様の処理で付加して伝送させるようにしてもよい。例えば、なんらかのテキストデータを付加データとして埋め込み、伝送するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の一実施の形態によるシステム構成例を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施の形態による伝送チャンネル構成例を示す説明図である。
【図3】本発明の一実施の形態によるビット構成例を示す説明図である。
【図4】本発明の一実施の形態によるディスプレイの表示可能領域と、sRGB信号で表現される色域との関係例を示す説明図である。
【図5】sRGB信号とxvYCC信号の色域の関係を示す説明図である。
【図6】sRGB信号とxvYCC信号の色域を、色空間で示した説明図である。
【図7】本発明の一実施の形態によるウォーターマークの埋め込み例を示す説明図である。
【図8】本発明の他の実施の形態によるシステム構成例を示すブロック図である。
【図9】本発明の他の実施の形態による色表示例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0056】
1…HDMIケーブル、10…ビデオ記録再生装置(ソース側機器)、10a…ディスク装着部、10b…ディスク、11…記録再生部、12…アナログ・デジタル変換回路、13…ディザ処理部、14…音声処理部、15…制御部、16…レベル検出部、17…スイッチ、18…ウォーターマーク発生部、20…HDMI伝送処理部、21…多重化回路、22…HDCP暗号化部、23…伝送処理部、24…HDMI端子、30…テレビジョン受像機(シンク側機器)、31…映像選択部、32…デジタル・アナログ変換回路、33…表示処理部、34…音声処理部、35…出力処理部、36…制御部、37…映像処理部、38…表示処理部、40…HDMI伝送処理部、41…HDMI端子、42…伝送処理部、43…HDCP復号化部、44…多重分離回路、60…表示パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の規定で決められた第1の色域を超える色域が表現可能な映像データを伝送する伝送方法において、
前記映像データから、前記第1の色域を超えた色域の映像の区間を検出し、
その検出した第1の色域を超えた色域の映像の区間に、前記映像データに関する付加データを、表現される映像と色相の略等しい第1の色域を超えた色への変化で、埋め込むようにしたことを特徴とする
映像伝送方法。
【請求項2】
所定の規定で決められた第1の色域を超える色域が表現可能な映像データを作成する映像処理装置において、
前記映像データの、前記第1の色域を超えた色域の映像の区間を検出する検出部と、
前記映像データに関する付加データを生成させる付加データ生成部と、
前記検出部で検出された前記区間に、前記付加データ生成部で生成された付加データを、表現される映像と色相の略等しい第1の色域を超えた色への変化で埋め込む埋め込み部とを備えたことを特徴とする
映像処理装置。
【請求項3】
請求項2記載の映像処理装置において、
前記付加データは、前記映像データの著作権保護用のデータであることを特徴とする
映像処理装置。
【請求項4】
請求項2記載の映像処理装置において、
埋め込み部で付加データを埋め込む処理として、前記所定の色域の映像の区間をディザリングする処理であることを特徴とする
映像処理装置。
【請求項5】
請求項4記載の映像処理装置において、
前記ディザリングする処理を行う所定の色域の映像の区間は、前記第1の色域を超えてない区間を含むことを特徴とする
映像処理装置。
【請求項6】
所定の規定で決められた第1の色域を超える色域が表現可能な映像データを作成する映像処理装置において、
前記映像データの、前記第1の色域内の所定色の区間を検出する検出部と、
前記映像データに関する付加データを生成させる付加データ生成部と、
前記検出部で検出された前記区間に、前記付加データ生成部で生成された付加データを、前記第1の色域内の色と、表現される映像と色相の略等しい第1の色域を超えた色との間で変化するディザリングされたデータとして埋め込む埋め込み部とを備えたことを特徴とする
映像処理装置。
【請求項7】
所定の規定で決められた第1の色域を超える色域が表現可能な映像データをソース側装置からシンク側装置に伝送する伝送システムであって、
前記ソース側装置として、
前記映像データの前記第1の色域を超えた色域の映像の区間に、前記映像データに関する付加データが、表現される映像と色相の略等しい第1の色域を超えた色への変化で埋め込まれた映像データを伝送し、
前記シンク側装置として、
伝送された映像データに含まれる前記第1の色域を超えた色域の映像の区間の色の変化を検出し、その検出した変化から、前記付加データを検出することを特徴とする
映像伝送システム。
【請求項8】
請求項7記載の映像伝送システムにおいて、
前記付加データは、伝送される映像データの著作権保護用のデータであり、前記シンク側装置で、検出した著作権保護用のデータに基づいた映像データの著作権保護処理を行うことを特徴とする
映像伝送システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図4】
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【図6】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−131282(P2008−131282A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−313280(P2006−313280)
【出願日】平成18年11月20日(2006.11.20)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】