説明

映像信号処理回路

【課題】 コンポジット映像信号から輝度信号と搬送色信号とに帯域を分離して動き検出を行う映像信号処理回路では、搬送色信号と輝度信号の一方から他方への混入成分が動き検出の誤検出を招き、クロスカラー妨害やドット妨害を引き起こすことがある。
【解決手段】 動き検出回路41は、3次元YC分離回路36で分離された搬送色信号と、2次元YC分離回路37で分離された搬送色信号の加算結果と、色復調回路35で復調された第1の色差信号とDRAM33で1フレーム遅延された第2の色差信号との減算結果とを、任意の割合で乗算して色差信号の動き検出結果を得る。これにより、静止画領域や搬送色信号が存在しない動画領域では、最終的な動き検出データを”0”に抑制させることができ、色差信号領域の動き検出で生じる輝度信号の高域成分の混入による誤検出による、色の無い時や静止画時の目に付き易いクロスカラー妨害を抑えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は映像信号処理回路に係り、特にテレビジョン受像機又は映像信号記録再生装置において入力コンポジット映像信号をYC分離するための映像信号処理回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、BS放送やCS放送、更に地上波のディジタル化に伴い、既存の地上波アナログTV放送の放送周波数帯域に比べて広い放送周波数帯域を持つようになってきたことから、標準方式テレビ(SDTV)に比べて高精細度のHDTV(High Definition TV)放送が増えてきている。このとき、受信した映像信号が、放送局側で映像信号に変換した信号の場合は、放送局側の性能不十分さを一因として、受像機側で取り出した色信号(又は色差信号)に輝度信号が混入して細かい縞模様などに色がつくクロスカラー妨害や、輝度信号に色信号(又は色差信号)が混入して色の不連続なところにドット状のものが動いて見えるドット妨害などが発生することがある。
【0003】
しかし、従来のテレビジョン受像機は、受像機側で受信した放送信号がコンポジット信号であるかコンポーネント信号であるかを判別し、コンポジット信号と判別した場合にはYC分離処理を施して表示装置に表示させるようにした映像信号処理回路が知られている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1記載の従来の映像信号処理回路によれば、高性能のYC分離回路として動き適応型3次元YC分離回路を用いて、受信したコンポジット映像信号から輝度信号と搬送色信号とを精度良く分離して、コンポジット映像信号の画質を改善するようにしている。コンポーネント映像信号入力時は、もともと輝度信号と搬送色信号は分離して入力される為、処理を施さずに入力信号のまま出力している。
【0004】
ところで、前述したコンポーネント入力のHDTV放送の放送信号の中には、従来のSDTV信号をアップコンバートした信号であったり、送出側の蓄積又は編集過程で一度コンポジット映像信号にされた後、再度コンポーネント映像信号に変換されて送出されたコンテンツの信号があり、それらは、コンポーネント映像信号であるにもかかわらず、クロスカラー妨害やドット妨害成分を多く含んでいる場合がある。
【0005】
【特許文献1】特開2003−70018号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかるに、特許文献1記載の従来の映像信号処理回路では、テレビジョン受像機側で受信した放送信号がコンポジット信号であるかコンポーネント信号であるかを判別し、コンポジット信号と判別した場合にのみ、YC分離処理を施す構成であるため、コンポーネント映像信号中に含まれているクロスカラーやドット妨害成分の除去を行うことができない。従って、コンポーネント映像信号入力に対してもクロスカラー除去、ドット妨害除去などの画像処理を施すようなシステムが要求されてくることが考えられる。
【0007】
従って、入力映像信号がコンポジット映像信号であるかコンポーネント映像信号であるか否かに関わらず、入力映像信号を精度良くYC分離する動き適応型YC分離回路を経由させ、ノイズリダクション機能も併せ持つ映像信号処理回路が要求されるようになってきている。
【0008】
そこで、回路の制約が大きくかかってきている中、本出願人は動き適応型YC分離回路における動き検出の精度をより向上した映像信号処理回路を特願2003−416040号にて提案した。図3はこの本出願人の提案になる映像信号処理回路の一例のブロック図を示す。図3において、コンポジット映像信号(ここでは、NTSC方式)Vn0は、入力端子10を介して輝度信号処理回路11Y内の2次元YC分離回路12と3次元YC分離回路13にそれぞれ供給される一方、2次元YC分離回路14及びダイナミック・ランダム・アクセス・メモリ(DRAM)15にそれぞれ供給される。
【0009】
2次元YC分離回路12は、入力コンポジット映像信号から2次元処理により分離した輝度信号Yn2を低域フィルタ(LPF)16を通して動き検出回路18に供給する。3次元YC分離回路13は、入力コンポジット映像信号Vn0とDRAM15により1フレーム遅延されたコンポジット映像信号とを加算することにより、静止画領域で1フレーム毎に位相が反転する搬送色信号を相殺除去し、かつ、2フレーム間で同位相である輝度信号の加算信号である輝度信号Yn3を得てセレクタ19へ出力する。
【0010】
また、DRAM15により1フレーム遅延されたコンポジット映像信号は、LPF17により低域周波数成分である輝度信号のみが分離されて動き検出回路18に供給される。動き検出回路18は、LPF16及びLPF17からそれぞれ供給される輝度信号に基づいて、画像に動きがあるか否かを検出する。セレクタ19は、動き検出回路18からの動き検出信号が画像に動きが有ることを示しているときには、2次元YC分離回路12から出力された輝度信号Yn2を選択し、画像に動きが無いことを示しているときには3次元YC分離回路13から出力された輝度信号Yn3を選択する。
【0011】
一方、2次元YC分離回路14はコンポジット映像信号Vn0から2次元処理により搬送色信号Cn2を分離し、色復調回路20に供給して色復調させてベースバンド帯の色差信号(R−Y及びB−Y)を出力させて色差信号処理部11CD内のパラレル/シリアル変換回路(PS変換回路)21に供給させる。
【0012】
PS変換回路21から出力された2種類の色差信号が時系列的に合成されたシリアル色差信号CDn0は、動き検出回路22に直接供給される一方、DRAM25により1フレーム遅延された後動き検出回路22に供給される。また、PS変換回路21から出力された2種類の色差信号が時系列的に合成されたシリアル色差信号CDn0は、3次元処理回路23に直接供給される一方、DRAM25により1フレーム遅延された後3次元処理回路23に供給される。
【0013】
3次元処理回路23は、シリアル色差信号CDn0と1フレーム遅延色差信号とを加算し、静止画領域で2フレーム間の色差信号に逆位相で含まれるクロスカラー妨害成分を相殺除去し、かつ、2フレーム間で同位相である色差信号の加算信号CDn3を生成してセレクタ24へ出力する。セレクタ24は、動き検出回路22から供給される動き検出信号が画像に動きが有ることを示しているときには、2次元YC分離によるシリアル色差信号CDn0を選択し、画像に動きが無いことを示しているときには、3次元処理回路23からの色差信号CDn3を選択する。
次に、コンポーネント映像信号に対する信号処理について説明する。入力端子26を介して入力されたコンポーネント映像信号中の輝度信号Y0は、3次元YC分離回路13に直接供給される一方、DRAM15により1フレーム遅延された後3次元YC分離回路13に供給され、静止画領域で1フレーム毎に位相が反転するドット妨害成分が相殺除去され、輝度信号Y3が出力される。
【0014】
また、動き検出回路18は、LPF16を介して入力された上記のコンポーネント映像信号中の輝度信号Y0と、DRAM15により1フレーム遅延され、かつ、LPF17により高周波成分が除去された輝度信号Y01とに基づいて、画像に動きがあるか否かを検出する。セレクタ19は、動き検出回路18から供給される動き検出信号が、画像に動きが有ることを示しているときには、入力端子26を介して入力されるコンポーネント映像信号中の輝度信号Y0を選択し、画像に動きが無いことを示しているときには、3次元YC分離回路13からの輝度信号Y3を選択する。
【0015】
一方、コンポーネント映像信号中の色差信号Pb及びPrは、入力端子27、28を介してPS変換回路21に供給され、ここでシリアル信号CD0に変換された後、動き検出回路22及び3次元処理回路23にそれぞれ供給され、またDRAM25により1フレーム遅延された後動き検出回路22及び3次元処理回路23にそれぞれ供給される。
【0016】
3次元処理回路23は、シリアル色差信号CD0とDRAM25からの1フレーム遅延色差信号とを加算し、静止画領域の2フレーム間の色差信号に逆位相で含まれることがあるクロスカラー妨害成分を相殺除去し、かつ、2フレーム間で同位相である色差信号の加算信号CD3を生成してセレクタ24へ出力する。セレクタ24は、動き検出回路22から供給される動き検出信号が画像に動きが有ることを示しているときには、コンポーネント映像信号中の色差信号Pb及びPrからなるシリアル信号CD0を選択し、画像に動きが無いことを示しているときには、3次元処理回路23からの色差信号CD3を選択する。
【0017】
このように、図3に示す映像信号処理回路では、本来YC分離を行う必要がないコンポーネント映像信号であっても、コンポーネント映像信号によっては元々ドット妨害成分やクロスカラー成分が含まれていることがあるために、入力されたコンポーネント映像信号に対して3次元YC分離回路13と3次元処理回路23によるドット妨害除去処理とクロスカラー妨害除去処理を行うようにしているので、画質を向上することができる。
【0018】
ところで、NTSC方式のコンポジット映像信号中の搬送色信号は、静止画領域では1フレーム毎に色副搬送波の位相が180°変化する(位相が反転する)ため、画像の動き検出は、一般には入力コンポジット映像信号と2フレーム遅延したコンポジット映像信号とのフレーム差分をとり、その値が0又はそれに近いときには静止画、そうでないときには動画と判定する。
【0019】
しかし、図3に示した上記の映像信号処理回路では、輝度信号処理回路11Yと色信号処理回路11CDとを分けて設け、動き検出を別々に行っていることを特徴とする。すなわち、色信号(色差信号)の動き検出は、2次元YC分離回路14でコンポジット映像信号から搬送色信号を分離した後、色復調回路20でベースバンドの色差信号に復調してから動き検出回路22で原フレームの色差信号と1フレーム遅延した色差信号との差分値を算出して、動き検出結果を得る。一方、輝度信号側の動き検出は、コンポジット映像信号から2次元YC分離回路12で分離した原フレームの輝度信号と、DRAM15にて1フレーム遅延され、かつ、LPF17によりコンポジット映像信号から分離した輝度信号との差分値を算出して動き検出結果を得る。
【0020】
しかるに、コンポジット映像信号から輝度信号と搬送色信号とに帯域を分離して動き検出を行う上記の映像信号処理回路では、コンポジット映像信号から輝度信号と搬送色信号とを分離する段階で、搬送色信号が輝度信号側へ、また輝度信号の高域成分が搬送色信号側へ混入してしまい、その結果、この混入成分が動き検出の誤検出を招き、また、特に静止画で目に付き易いクロスカラーやドット妨害を引き起こすという問題がある。
【0021】
本発明は以上の点に鑑みなされたもので、コンポジット映像信号から輝度信号と搬送色信号とに帯域を分離して別々に動き検出を行い、それらの動き検出結果に応じてYC分離された輝度信号と色信号(色差信号)とを得るに際し、クロスカラー妨害を減少し得る映像信号処理回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記の目的を達成するため、本発明は、輝度信号と、所定フレーム毎に色副搬送波の位相が静止画領域で反転する搬送色信号とが帯域共用多重化されたコンポジット映像信号から動画用輝度信号及び静止画用輝度信号と搬送色信号とを分離し、分離した搬送色信号は復調して動画用色差信号と静止画用色差信号とを生成し、コンポジット映像信号の画像の動きの検出結果に応じて、動画用輝度信号及び静止画用輝度信号の一方を選択すると共に、動画用色差信号及び静止画用色差信号の一方を選択出力する映像信号処理回路において、
コンポジット映像信号から搬送色信号を分離した後復調して動画用色差信号である第1の色差信号を生成する色差信号復調手段と、コンポジット映像信号及び色差信号復調手段からの第1の色差信号を、それぞれ所定フレーム遅延する遅延手段と、コンポジット映像信号と遅延手段から出力された遅延コンポジット映像信号とを加算処理する3次元処理により、コンポジット映像信号から静止画用輝度信号を分離出力する第1の分離手段と、コンポジット映像信号を入力として受け、所定ライン間の入力コンポジット映像信号とを加減算する2次元処理により、コンポジット映像信号から動画用輝度信号である第1の輝度信号と第1の搬送色信号とを分離出力する第2の分離手段と、遅延手段から出力された遅延コンポジット映像信号を入力として受け、所定ライン間の入力遅延コンポジット映像信号を加減算する2次元処理により、遅延コンポジット映像信号から第2の輝度信号と第2の搬送色信号とを分離出力する第3の分離手段と、色差信号復調手段からの第1の色差信号と遅延手段からの所定フレーム遅延された第1の色差信号とを演算処理する3次元処理により、第1の色差信号から静止画用色差信号である第2の色差信号を出力する3次元処理手段と、第1及び第2の輝度信号の差分値に基づき輝度信号の動き検出結果を得る輝度信号動き検出手段と、第1及び第2の搬送色信号の加算結果と、第1の色差信号と遅延手段からの所定フレーム遅延された第1の色差信号との減算結果とを、任意の割合で乗算して色差信号の動き検出結果を得る色差信号動き検出手段と、輝度信号の動き検出結果と色差信号の動き検出結果とに基づき、動き検出データを生成する動き検出データ生成手段と、動き検出データに応じて、動画用輝度信号及び静止画用輝度信号の一方を選択すると共に、動画用色差信号及び静止画用色差信号の一方を選択する選択手段とを有することを特徴とする。
【0023】
この発明では、動画用輝度信号及び静止画用輝度信号の一方を選択すると共に、動画用色差信号及び静止画用色差信号の一方を選択出力するための動き検出データを、第1及び第2の搬送色信号の加算結果と、第1の色差信号と遅延手段からの所定フレーム遅延された第1の色差信号との減算結果とを、任意の割合で乗算して得た色差信号の動き検出結果に基づいて生成しているため、互いに所定フレーム(NTSC方式では1フレーム、PAL方式では2フレーム)異なる搬送色信号の位相は静止画領域では180°変化(位相反転)しているため、理論上、静止画領域では上記の加算結果は”0”となり、動画領域においても搬送色信号が存在しない場合は、加算結果は”0”となり、その結果、最終的な動き検出データを”0”に抑制させることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、輝度信号と色差信号別に動き検出を行う際に、動画用輝度信号及び静止画用輝度信号の一方を選択すると共に、動画用色差信号及び静止画用色差信号の一方を選択出力するための動き検出データを、静止画領域では180°変化(位相反転)する所定フレーム間の搬送色信号の加算結果を、色差信号の動き検出結果に反映させ、静止画領域や、搬送色信号が存在しない動画領域では、上記の加算結果は”0”となり、その結果、最終的な動き検出データを”0”に抑制させるようにしたため、色差信号領域の動き検出で生じる輝度信号の高域成分の混入による誤検出による、色の無い時や静止画時の目に付き易いクロスカラー妨害を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
次に、本発明の実施の形態について図面と共に説明する。図1は本発明になる映像信号処理回路の一実施の形態のブロック図を示す。図1は入力されるコンポジット映像信号をYC分離する回路である。なお、コンポーネント映像信号が入力される場合も、図3に示した映像信号処理回路と同様の処理により、ドット妨害除去処理とクロスカラー妨害除去処理を行うが、コンポーネント映像信号入力に対する具体的処理については本発明の要旨ではないので、その説明は省略する。
【0026】
図1において、入力端子31に入力されたNTSC方式のコンポジット映像信号は、後述するYC分離回路32に供給される一方、1フレーム遅延回路を構成するダイナミック・ランダム・アクセス・メモリ(DRAM)32及び2次元C分離回路33にそれぞれ供給される。2次元C分離回路33は、NTSC方式のコンポジット映像信号中の搬送色信号が、単一輝度、色の映像信号において1ライン毎に位相が反転するのに対し、輝度信号は位相が反転しないことを利用し、1ライン遅延回路を使用して2ライン間のくし型フィルタにより、輝度信号を相殺除去して搬送色信号だけを分離出力する2次元色分離処理を行う。
【0027】
2次元C分離回路33から取り出された搬送色信号は色復調回路35に供給され、ここでベースバンドの2種類の色差信号(R−Y及びB−Y)に復調された後、DRAM33、YC分離回路32、3次元処理回路39及びセレクタ45にそれぞれ供給される。この色復調回路35から出力された色差信号は、動画用色差信号としてセレクタ45に供給される。DRAM33は、1フレーム遅延したコンポジット映像信号と、1フレーム遅延した2種類の色差信号とをYC分離回路32へ出力する。
【0028】
YC分離回路32は、3次元YC分離回路36と、2次元YC分離回路37及び38と、3次元処理回路39と、輝度信号用動き検出回路40と、色信号用動き検出回路41と、輝度信号用動きデータ生成回路42と、色信号用動きデータ生成回路43と、セレクタ44及び45とより構成されている。
【0029】
3次元YC分離回路36は、入力端子31よりのNTSC方式コンポジット映像信号と、DRAM33から出力された1フレーム遅延コンポジット映像信号とを加算した後、1/2にレベル補正する時間方向のフィルタ構成である。前述したように、NTSC方式コンポジット映像信号は、静止画領域では1フレーム間のコンポジット映像信号中の輝度信号は同位相であるのに対し、コンポジット映像信号中の搬送色信号及びドット妨害成分は逆位相であるため、上記の3次元YC分離回路36は、この性質を利用して1フレーム間のコンポジット映像信号を加算することにより、搬送色信号及びドット妨害成分が相殺除去された輝度信号を取り出し、これを1/2にレベル補正してセレクタ44へ出力する。この3次元YC分離回路36からは、上記の静止画領域でのコンポジット映像信号の性質を利用して静止画用輝度信号が出力される。
【0030】
また、2次元YC分離回路37は、入力端子31よりのNTSC方式コンポジット映像信号に対して、1ライン遅延回路を用いたくし型フィルタにより輝度信号と搬送色信号とをそれぞれ分離出力する。この2次元YC分離回路37からは動画用輝度信号と搬送色信号が出力される。
【0031】
もう一つの2次元YC分離回路38は、2次元YC分離回路37と同一の1ライン遅延回路を用いたくし型フィルタ構成であるが、2次元YC分離回路37と異なり、入力信号がDRAM33から出力された1フレーム遅延されたNTSC方式コンポジット映像信号であり、1フレーム遅延された輝度信号と搬送色信号とを分離出力する。
【0032】
また、3次元処理回路39は、色復調回路35からの色差信号と、DRAM33から出力された1フレーム遅延色差信号でフレーム間処理し、静止画領域のフレーム間の色差信号に逆位相で含まれるクロスカラー妨害成分を相殺除去し、静止画用色差信号をセレクタ45へ出力する。
【0033】
輝度信号用動き検出回路40は、2次元YC分離回路37から出力された輝度信号と、2次元YC分離回路38から出力された1フレーム遅延輝度信号とを減算して差分値を算出し、その差分値が予め定めた閾値以下のときには、入力コンポジット映像信号の画像に動きが無いと判定し、差分値が上記の閾値より大きいときには、画像に動きが有ると判定し、その判定結果を示す輝度信号用動き検出信号を動きデータ生成回路42及び43へ出力する。
【0034】
一方、本実施の形態の要部をなす色信号用動き検出回路41は、2次元YC分離回路37から出力された搬送色信号と、2次元YC分離回路38から出力された1フレーム遅延搬送色信号と、色復調回路35から出力されたベースバンドの色差信号と、DRAM33から出力されたベースバンドの1フレーム遅延色差信号とに基づいて、入力コンポジット映像信号の画像の動きを検出する。
【0035】
ここで、基本的な動き検出方法としては、コンポジット映像信号から分離した輝度信号と、ベースバンドの色差信号のそれぞれにおいて、フレーム間の差分値を基に、算出された値が小さければ静止画、値が大きければ動画、といった判定を行う。しかし、高域成分の少ない画像では、上記の差分算出による方法で正確な動き判定を行うことが可能だが、実際は輝度信号と色差信号それぞれの高域成分が他方の信号に混入し、動き検出の誤検出を導く。
【0036】
本実施の形態では輝度信号の高域成分が色信号側に混入したところに発生するクロスカラー妨害を削除するための手段を有する。特に、本実施の形態の削除条件としては、カラーの載っていない領域と静止画領域で、輝度信号の高域成分が色信号側に混入した時に発生するクロスカラー妨害に特定する。色信号に混入した輝度信号の位相がフレーム間で反転し大きな振幅をもってしまうために、動きとしてみなされる。前者は本来色の無い部分に色が載ってしまい、後者は本来静止領域であるところにチラチラとした、目に付き易いクロスカラー妨害になっている。
【0037】
そこで、本実施の形態では、色信号用動き検出回路41に色差信号のゲインを算出する回路を加え、この結果を差分値による検出結果に掛け合わせることで、誤検出時の動き検出成分を抑制する。
【0038】
図2は上記の色信号用動き検出回路41の一実施の形態のブロック図を示す。同図に示すように、色信号用動き検出回路41は、減算器411、加算器412及び乗算器413より構成されており、減算器411により色復調回路35から出力されたベースバンドの色差信号と、DRAM33から出力されたベースバンドの1フレーム遅延色差信号との減算を行うと共に、加算器412により2次元YC分離回路37から出力された搬送色信号と、2次元YC分離回路38から出力された1フレーム遅延搬送色信号との加算を行い、減算器411から出力された減算結果と、加算器412から出力された加算結果とを乗算器413で乗算する。
【0039】
色差信号のゲインを算出する回路は加算器412として表される。上述したように、加算器412は、コンポジット映像信号から分離された搬送色信号のフレーム間加算を行うことでゲイン算出を行う。ここで、互いに1フレーム異なる搬送色信号の位相は静止画領域では180°回転(位相反転)しているため、理論上、静止画領域では加算器412の出力加算値は”0”となり、動画領域においても搬送色信号が存在しない場合は、加算値は”0”となる。
【0040】
上記の加算器412から出力される加算値は図2に示したように、減算器411で得られたベースバンドの色差信号のフレーム間差分で求められた動き検出値に対して、乗算器413において乗算される。これにより、動き検出回路41は、次式で得られる動き検出信号yを出力する。
【0041】
y=my・x/z (1)
但し、(1)式中、myは減算器411から出力されるベースバンド色差信号の動き検出値、xは加算器412から出力される加算値、zは上記加算値xの分割数であり、例えば9段階に分割するとした場合、z=8である。また、加算値xは次の不等式を満足する。
【0042】
0≦x≦z (2)
この結果、コンポジット映像信号からYC分離して得られた、互いに1フレーム異なる搬送色信号同士の加算結果(すなわち、フレーム間の搬送色信号の加算結果)を動き検出値yに反映させることができ、加算値xが”0”の時にはベースバンド色差信号の動き検出値myが0以外の値を持っていたとしても、最終的な動き検出値yを”0”に抑制させ、また、加算値xが0以外の値を持つ時には、そのまま動き成分として残すことができる。
【0043】
再び図1に戻って説明するに、輝度信号用動きデータ生成回路42は、動き検出回路40から出力された輝度信号動き検出信号と、動き検出回路41から出力された色差信号動き検出信号とに基づいて、最終的に動きがあるか否かを示す第1の動き検出データを生成してセレクタ44にセレクト信号として供給する。一方、色差信号用動きデータ生成回路43は、動き検出回路40から出力された輝度信号動き検出信号と、動き検出回路41から出力された色差信号動き検出信号とに基づいて、最終的に動きがあるか否かを示す第2の動き検出データを生成してセレクタ45にセレクト信号として供給する。
【0044】
セレクタ44は動きデータ生成回路42から供給された第1の動き検出データが、動きが無いことを示しているときには、3次元YC分離回路36によりYC分離して得られたドット妨害成分が除去された輝度信号を選択して出力端子46へ出力し、動きが有ることを示しているときには、2次元YC分離回路37によりYC分離して得られた輝度信号を選択して出力端子46へ出力する。
【0045】
一方、セレクタ45は動きデータ生成回路43から供給された第2の動き検出データが、動きが無いことを示しているときには、3次元処理回路39により3次元処理して得られた、クロスカラー妨害成分が除去されたベースバンドの色差信号を選択して出力端子47へ出力し、動きが有ることを示しているときには、色復調回路35から出力されたベースバンドの色差信号を出力端子47へ出力する。
【0046】
このように、本実施の形態では、コンポジット映像信号からYC分離して得られた搬送色信号を色復調して得られたベースバンド色差信号の動き検出値がYC分離の不完全さ等により或る値を持っていたとしても、理論上、静止画領域では”0”となる2フレーム間の搬送色信号の加算結果による動き検出結果を、予め設定した重み付け(分割数z)に従ってベースバンドの色差信号の動き検出結果よりも優先させ、2フレーム間の搬送色信号の加算結果が”0”の時にはベースバンド色差信号の動き検出値が0以外の値を持っていたとしても、最終的な動き検出値を”0”に抑制させることができ、本出願人が先に提案した映像信号処理回路に比べ、カラーの載っていない領域と静止画領域で、発生するクロスカラー妨害を抑えることができる。
【0047】
なお、上記の実施の形態では、入力コンポジット映像信号はNTSC方式であるものとして説明したが、本発明はPAL方式のコンポジット映像信号にも適用することができる。この場合、PAL方式コンポジット映像信号の入力時には、PAL方式コンポジット映像信号中の搬送色信号の色副搬送波が、静止画領域において2ライン毎に位相が反転するのに対し、輝度信号は位相が反転しないことを利用し、2次元C分離回路34は2ライン遅延回路を使用したくし型フィルタの構成により、2ライン間のPAL方式コンポジット映像信号を減算することで輝度信号を相殺除去して搬送色信号だけを分離出力する2次元色分離処理を行う。2次元YC分離回路37及び38も上記と同様の2ライン遅延回路を使用したくし型フィルタの構成により、コンポジット映像信号から輝度信号と搬送色信号とを分離する。
【0048】
また、PAL方式コンポジット映像信号中の搬送色信号の色副搬送波が、静止画領域において2フレーム毎に位相が反転する(位相が180°変化する)のに対し、輝度信号の位相は変化しないので、3次元YC分離回路36はPAL方式コンポジット映像信号と2フレーム遅延したPAL方式コンポジット映像信号とを減算することで、輝度信号を相殺除去して搬送色信号だけを出力する。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の映像信号処理回路の一実施の形態のブロック図である。
【図2】図1中の色差信号用動き検出回路の一実施の形態のブロック図である。
【図3】本出願人が先に提案した映像信号処理回路の一例のブロック図である。
【符号の説明】
【0050】
31 コンポジット映像信号入力端子
32 YC分離回路
33 1フレーム遅延用ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリ(DRAM)
34 2次元C分離回路
35 色復調回路
36 3次元YC分離回路
37、38 2次元YC分離回路
39 3次元処理回路
40、41 動き検出回路
42、43 動きデータ生成回路
44、45 セレクタ
46 輝度信号出力端子
47 色差信号出力端子



【特許請求の範囲】
【請求項1】
輝度信号と、所定フレーム毎に色副搬送波の位相が静止画領域で反転する搬送色信号とが帯域共用多重化されたコンポジット映像信号から前記輝度信号を動画用輝度信号及び静止画用輝度信号としてそれぞれ分離すると共に前記搬送色信号を分離し、分離した前記搬送色信号は復調して動画用色差信号と静止画用色差信号とを生成し、前記コンポジット映像信号の画像の動きの検出結果に応じて、前記動画用輝度信号及び静止画用輝度信号の一方を選択すると共に、前記動画用色差信号及び静止画用色差信号の一方を選択出力する映像信号処理回路において、
前記コンポジット映像信号から前記搬送色信号を分離した後復調して前記動画用色差信号である第1の色差信号を生成する色差信号復調手段と、
前記コンポジット映像信号及び前記色差信号復調手段からの前記第1の色差信号を、それぞれ前記所定フレーム遅延する遅延手段と、
前記コンポジット映像信号と前記遅延手段から出力された遅延コンポジット映像信号とを加算処理する3次元処理により、前記コンポジット映像信号から前記静止画用輝度信号を分離出力する第1の分離手段と、
前記コンポジット映像信号を入力として受け、所定ライン間の入力コンポジット映像信号とを加減算する2次元処理により、前記コンポジット映像信号から前記動画用輝度信号である第1の輝度信号と第1の搬送色信号とを分離出力する第2の分離手段と、
前記遅延手段から出力された遅延コンポジット映像信号を入力として受け、所定ライン間の入力遅延コンポジット映像信号を加減算する2次元処理により、前記遅延コンポジット映像信号から第2の輝度信号と第2の搬送色信号とを分離出力する第3の分離手段と、
前記色差信号復調手段からの前記第1の色差信号と前記遅延手段からの前記所定フレーム遅延された第1の色差信号とを演算処理する3次元処理により、前記第1の色差信号から前記静止画用色差信号である第2の色差信号を出力する3次元処理手段と、
前記第1及び第2の輝度信号の差分値に基づき輝度信号の動き検出結果を得る輝度信号動き検出手段と、
前記第1及び第2の搬送色信号の加算結果と、前記第1の色差信号と前記遅延手段からの前記所定フレーム遅延された第1の色差信号との減算結果とを、任意の割合で乗算して色差信号の動き検出結果を得る色差信号動き検出手段と、
前記輝度信号の動き検出結果と前記色差信号の動き検出結果とに基づき、動き検出データを生成する動き検出データ生成手段と、
前記動き検出データに応じて、前記動画用輝度信号及び静止画用輝度信号の一方を選択すると共に、前記動画用色差信号及び静止画用色差信号の一方を選択する選択手段と
を有することを特徴とする映像信号処理回路。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−217237(P2006−217237A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−27712(P2005−27712)
【出願日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(000004329)日本ビクター株式会社 (3,896)
【Fターム(参考)】