説明

映像品質評価方法および装置

【課題】映像の主観的な品質を定量的に評価できる映像品質評価装置を提供する。
【解決手段】フレーム識別コード生成部2は、試験映像からフレームIDを抽出し、そのQRコードを生成する。フレーム識別コード埋込部3は、試験映像の一部分に前記QRコードを埋め込む。符号化部4は、QRコードが埋め込まれた試験映像を符号化する。復号部8は、受信された符号化映像を復号して試験映像を再現する。再生部9は、そのディスプレイ9a上で試験映像を再生する。映像撮影部10は、ディスプレイ9aを撮影してDV映像データを生成する。フレーム識別コード抽出部11は、DV映像データからフレーム識別コード(本実施形態では、QRコード)を抽出する。品質評価部12は、前記抽出されたQRコードに基づいて試験映像の滑らかさを統計的に評価する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワーク上で伝送される動画像の品質を受信側で評価する映像品質評価方法および装置に係り、特に、映像のなめらかさを評価できる映像品質評価方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
符号化された映像の品質を評価する手法として、評価者が、復号された映像を映したテレビ画面の画質等を視認することによって主観的に評価する主観評価以外に、コンテンツそのものを物理的な尺度により評価する客観評価の手法が存在する。客観評価では、映像信号の信号対雑音電力比(SNR)やビットエラーレート(BER)等の各種データを測定し、その数値データに基づいて映像品質が定量的に評価される。
【0003】
特許文献1には、客観的評価方法として、評価対象たる通信・放送ネットワークに対して試験用の信号を入力し、通信・放送ネットワーク内で劣化が生じた出力信号が客観品質評価部に入力し、客観品質評価部では、入力信号と出力信号とを比較して通信・放送ネットワーク内での品質の劣化を推定し、品質の評価を行う技術が開示されている。
【特許文献1】特開2001−298428号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
主観評価法は、実使用上での評価が期待できる反面、被験者の収集、評価試験実施環境の構築作業などに多大な労力を要し、被験者の負担も大きい。また、被験者の年代あるいは性別の偏りや試験当日の体調など、評価結果に大きな影響を与える不確定要素があるため、常に一定の評価結果を得ることが難しい。さらには、映像品質を定量的に評価することが難しい。
【0005】
これに対して、客観評価法では被験者を収集する必要がなく、試験環境などの外因に影響されることなく映像品質を定量的に評価できる。しかしながら、評価結果とユーザの主観とが必ずしも一致しないので、実使用上での評価が難しい。
【0006】
本発明の目的は、上記した従来技術の課題を解決し、映像の主観的な品質を定量的に評価できる映像品質評価方法および装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために、本発明は、映像品質に対する視聴者の主観的な評価を定量的に表現できるようにした点に特徴があり、各フレームにフレームIDのコード情報が表示される試験映像を生成する試験映像生成手段と、試験映像を符号化する符号化手段と、符号化された試験映像をネットワーク上に送出する送出手段と、符号化された試験映像を受信して復号・再生する手段と、再生映像を撮影する撮影手段と、撮影された映像からコード情報を抽出するコード情報抽出手段と、抽出されたコード情報に基づいて試験映像の品質を評価する品質評価手段とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、評価対象の映像を実使用の環境で画面表示させ、この画面を撮影した映像が客観的に評価されるので、視聴ユーザの主観的評価が反映された定量的な評価結果を得られるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の最良の実施の形態について詳細に説明する。図1は、本発明に係る映像品質評価システムの主要部の構成を示したブロック図であり、ここでは、本発明の説明に不用な構成は図示が省略されている。
【0010】
試験映像データベース(DB)1には、映像の滑らかさを視覚的に評価し易い動画像が格納されている。フレーム識別コード生成部2は、試験映像から各フレームを一意に識別できるフレームIDを抽出し、そのフレームIDのコード情報(フレーム識別コード)を生成する。
【0011】
本実施形態では、フレームIDとしてフレーム番号を採用し、フレーム識別コードとしてQRコードを採用し、各フレーム番号がQRコード化されるものとして説明する。フレーム識別コード埋込部3は、図2に一例を示したように、試験映像の各フレーム画像の一部分に前記QRコード13を埋め込む。符号化部4は、前記QRコード13が埋め込まれた試験映像を符号化する。送信部5は、符号化された試験映像を映像伝送路6へ送出する。
【0012】
受信部7は、映像伝送路6から自局宛の符号化映像を受信する、復号部8は、符号化映像を復号して試験映像を再現する。再生部9は、そのディスプレイ9a上で前記試験映像を再生する。映像撮影部10は、ディスプレイ9aに表示される試験映像を撮影してデジタルビデオ(DV)映像データを生成する。フレーム識別コード抽出部11は、試験映像のDV映像データからフレーム識別コード(本実施形態では、QRコード13)を抽出して復号する。品質評価部12は、前記抽出されたQRコード13を復号して得られたフレーム番号の時系列変化に基づいて映像の滑らかさを統計的に評価する。
【0013】
図3は、前記品質評価部12における評価手順の一例を示した図であり、本実施形態では、同一フレームが連続する割合に基づいて映像品質が定量的に評価される。
【0014】
ステップS1では、映像撮影部10で撮影されたDV映像の各フレーム番号を特定する変数i、同一のQRコードが連続するフレーム数をカウントする変数j、および変数jの記憶アドレスを指定する変数kに初期値「1」がセットされる。
【0015】
ステップS2では、DV映像のi番目のフレームから抽出されたフレーム番号Niおよび(i+1)番目のフレームから抽出されたフレーム番号Ni+1が読み込まれる。ステップS3では、NiとNi+1とが一致するか否かが判定される。両者が一致すればステップS4へ進み、連続フレーム数jがインクリメントされる。
【0016】
ステップS5では、フレーム番号変数iが更新される。ステップS6では、評価を終了するか否かが判定され、所定数のフレームに関して上記した各処理が完了するか、あるいは別途に評価終了が指示されるまでは、ステップS2へ戻って上記した各処理が繰り返される。したがって、各フレーム映像から抽出されるフレーム番号が一致する限り、前記連続フレーム数jが増加し続ける。
【0017】
その後、ステップS3において、NiとNi+1とが不一致と判定されるとステップS7へ進み、これまでにカウントされた連続フレーム数jが記憶領域D(k)に登録される。ステップS8では、前記アドレス変数がインクリメントされる。ステップS9では、連続フレーム数jに初期値「1」がセットされる。
【0018】
以上の処理が進行すると、各記憶領域D(1)〜D(k)には、最初のフレームからの連続フレーム数が時系列に記憶されることになる。図4は、DV映像の各フレームから読み取られたQRコードが示すフレーム番号と各記憶領域D(k)に記憶される連続フレーム数jとの関係を示した図であり、フレーム番号の「1」が3回連続し、フレーム番号の「4」が2回連続し、フレーム番号の「7」が3回連続すると、記憶領域D(1)には「3」、記憶領域D(2)には「2」、記憶領域D(3)には「4」が、それぞれ記憶される。
【0019】
ステップS10では、各記憶領域D(k)のデータが統計的に処理され、例えば、連続フレーム数の平均値が「3」であり、DV映像のフレームレートが30[fps]であれば、受信端末に表示される映像のフレームレートは30/3=10[fps]であることが判る。そして、試験映像のフレームレートRtest[fps]は既知なので、両者に基づいてロスフレームの平均値や分散値を算出できる。また、連続フレーム数に基づいて、フレームの停止時間を算出できる。
【0020】
なお、上記した実施形態ではフレーム識別コード(QRコード)が試験映像の一部に重畳表示されるものとして説明したが、フレーム識別コードが全面に表示されるようにしても良い。
【0021】
また、上記した実施形態ではフレーム識別コードとしてQRコードを採用し、フレーム番号がQRコードに変換されるものとして説明したが、本発明はこれのみに限定されるものではなく、バーコード、PDF417、DataMatrix あるいはMaxi Code等の他のコード情報に変換されるようにしても良い。
【0022】
さらに、フレーム識別コードとして、図5に一例を示したように、試験映像の下方に帯状の2値コードを配置し、図6に示したように、例えば白色の縞がフレーム識別コードの増加と共に一方方向に移動するようなコード体系を採用すれば、映像の滑らかさを縞模様の変化として、統計的のみならず視覚的にも認識できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る映像品質評価システムの主要部の構成を示したブロック図である。
【図2】試験映像の一例を示した図である。
【図3】映像品質の評価手順の一例を示したフローチャートである。
【図4】映像品質の評価方法を示したブロック図である。
【図5】試験映像の他の一例を示した図である。
【図6】二値の符号化コードの一例を示した図である。
【符号の説明】
【0024】
1…試験映像データベース(DB),2…フレーム識別コード生成部,3…フレーム識別コード埋込部,4…符号化部,5…送信部,6…映像伝送路,7…受信部,8…復号部,9…再生部,10…映像撮影部,11…フレーム識別コード抽出部,12…品質評価部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像の各フレームにフレームIDのコード情報が表示される試験映像を生成する試験映像生成手段と、
前記試験映像を符号化する符号化手段と、
前記符号化された試験映像を映像伝送路上に送出する送出手段と、
前記符号化された試験映像を受信して復号する復号手段と、
前記復号された試験映像を再生する再生手段と、
前記再生された試験映像を撮影する撮影手段と、
前記撮影された試験映像からコード情報を抽出するコード情報抽出手段と、
前記抽出されたコード情報に基づいて試験映像の品質を評価する品質評価手段とを含むことを特徴とする映像品質評価装置。
【請求項2】
前記品質評価手段は、各コード情報を復号してフレームIDを再現し、当該フレームIDの時系列変化に基づいて映像品質を統計的に評価することを特徴とする請求項1に記載の映像品質評価装置。
【請求項3】
前記試験映像生成手段は、試験映像の各フレーム画像の一部に前記コード情報を重畳させることを特徴とする請求項1に記載の映像品質評価装置。
【請求項4】
前記コード情報がQRコード、バーコード、PDF417、DataMatrix およびMaxi コードのいずれかであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の映像品質評価装置。
【請求項5】
前記コード情報が、フレームIDの増加に応じてパターンが規則的に移動する2値コードであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の映像品質評価装置。
【請求項6】
映像の各フレームにフレームIDのコード情報が表示される試験映像を生成する手順と、
前記試験映像を符号化する手順と、
前記符号化された試験映像を映像伝送路上に送出する手順と、
前記符号化された試験映像を受信して復号する手順と、
前記復号された試験映像を再生する手順と、
前記再生された試験映像を撮影する手順と、
前記撮影された試験映像からコード情報を抽出する手順と、
前記抽出されたコード情報に基づいて試験映像の品質を評価する手順とを含むことを特徴とする映像品質評価方法。
【請求項7】
前記品質を評価する手順では、各コード情報を復号してフレームIDを再現し、当該フレームIDの時系列変化に基づいて映像品質が統計的に評価されることを特徴とする請求項6に記載の映像品質評価方法。
【請求項8】
前記試験映像を生成する手段では、試験映像の各フレーム画像の一部に前記コード情報が重畳されることを特徴とする請求項6に記載の映像品質評価方法。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図2】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−206042(P2008−206042A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−42284(P2007−42284)
【出願日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(000208891)KDDI株式会社 (2,700)
【Fターム(参考)】