説明

映像番組視聴装置

【課題】あらゆるTV放送形態や映像番組の視聴形態にも容易にかつ安価に対応できるとともに、著作権保護にも配慮した映像番組視聴装置を提供する。
【解決手段】ユーザインタフェースと、選局されたチャンネルの放送番組を所定形式の番組データとして出力する別体のチューナモジュールと、チューナモジュールを着脱自在に装着してチューナモジュールと通信するモジュールインタフェースと、ネットワークインタフェースと、番組データをローカル暗号化する手段と、ローカル暗号化された番組データの復号手段と、番組データを所定形式の映像信号と音声信号として出力する手段と、ユーザ入力された番組指定情報をチューナモジュールに与える手段と、番組データをデコード部へ入力するとともに、ネットワークインタフェースからの暗号化された番組データを復号手段へ入力し、番組データをローカル暗号化してネットワーク上に送出する手段とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、TV放送などの番組を視聴するための装置に関し、具体的には、デジタルTV放送やアナログTV放送、あるいは地上波放送、衛星放送など、各種TV放送形態と映像番組の著作権保護とに対応した映像番組視聴装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、TV放送の形態が多様化している。従来のアナログ地上波放送とアナログ衛星(BS)放送、デジタル通信衛星(CS)放送に加え、デジタルBS放送が近年本放送を開始した。デジタル地上波放送も一部地域で受信可能となっている。また、TVの視聴形態も多様化してきている。とくにTV放送受信機能を備えたコンピュータが普及し始めており、TV受像機やビデオレコーダを一切持たず、TV放送の受信機能や録画機能を備えたパーソナルコンピュータをそれらの代わりとして日常的に利用している人もいる。また、記憶資源に映像番組を蓄積しておき、その蓄積されている映像番組をLANなどを介してコンピュータに配信することで、複数の人が記憶資源に蓄積された映像番組を複数の場所で個別に視聴する形態もある。その一方で、ホームページの閲覧や電子メールの送受信を行えるTV受像機もある。TV受像機に関しては、家電製品とIT製品としての境界が極めて曖昧になってきている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、視聴者が現在所有しているTV受像機の多くは、未だにアナログ放送(地上波、BS)専用の機種であり、視聴者はあらゆる放送形態のTV放送を視聴しようと思えば、新規にデジタル放送受信機能を備えたTV受像機、あるいはデジタルBS放送受信チューナやデジタルCS放送受信チューナなど特定の放送形態に対応した専用チューナを購入する必要がある。また、専用チューナを追加すれば、TV受像機やチューナを操作するためのリモコン装置も多くなり、操作自体が面倒になる。
【0004】
また、デジタルTV放送システムは、高能率のデータ圧縮技術により、従来のアナログTV放送システムより遙かに高画質の番組を放送することができる。また、番組の映像音声の起源となるデジタルデータ(番組データ)をそのまま記録すれば、画質劣化のない録画ができる。そのため、違法コピーやネットワークを介した違法配信を防止して番組の提供者や制作者の著作権を保護するための規定が、社団法人電波産業会規格「ARIB TR-B14 第2編」「ARIB TR-B15 第2編」「ARIB TR-B14 第8編」など(以下、ARIB仕様書)などに記載されている。
【0005】
特に、コンピュータは、デジタルデータを直接取り出すことが可能なユーザアクセスバス(AGP、PCI、IDE、SCSIなど:以下、汎用バス)を備え、この汎用バスにデジタルTV放送の番組データや、その番組データを起源とするデジタルデータを送出すれば、高画質のTV番組を劣化させることなくコピーすることができる。その高画質の番組に関わるデータをネットワーク経由で他のコンピュータへ転送することもできる。特にHDコンテンツと呼ばれる解像度の高い映像を含んだ番組に関わるデータの取り扱いについては、上記ARIB仕様書により厳しく規定されている。
【0006】
したがって本発明は、あらゆるTV放送形態や映像番組の視聴形態にも容易にかつ安価に対応できるとともに、著作権保護にも配慮した映像番組視聴装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明は次の要件(1)〜(14)を備えている。
(1)TV放送番組などの映像番組を視聴する映像番組視聴装置であること。
(2)ユーザインタフェースと、別体の番組供給モジュールと、モジュールインタフェースと、ネットワークインタフェースと、ローカル暗号化手段と、復号手段と、デコード手段と、ディスプレイインタフェースと、オーディオインタフェースと、制御手段を備えること。
(3)ユーザインタフェースは、利用者入力を受け付けるとともに、利用者に提示する情報を出力すること。
(4)番組供給モジュールは、TV放送用チューナを主体に構成されたチューナモジュールであり、当該チューナモジュールは、チャンネルの指定情報を含む番組特定情報を受け付け、受信した放送電波信号から指定のチャンネルで放送中の番組の映像と音声を所定形式の番組データとして出力すること。
(5)モジュールインタフェースは、番組供給モジュールを着脱自在に装着するとともに、装着されている番組供給モジュールと前記制御手段との通信を仲介・制御すること。
(6)ネットワークインタフェースは、所定のネットワークに接続して前記制御手段と当該ネットワークとの通信を仲介・制御すること。
(7)ローカル暗号化手段は、番組データをローカル暗号化して暗号化番組データとして出力すること。
(8)復号手段は、暗号化番組データを番組データに復号して出力すること。
(9)デコード手段は、番組データを伸長して非圧縮のデジタル映像データとデジタル音声データとして出力すること。
(10)ディスプレイインタフェースは、デコード手段からの前記デジタル映像データを所定規格のディスプレイモニタに対応する映像信号に変換して出力すること。
(11)オーディオインタフェースは、デコード手段からのデジタル音声データを適宜なオーディオ信号にして出力すること。
(12)制御手段は、番組指定処理と、番組データ通信制御処理とを可能とすること。
(13)番組指定処理は、ユーザインタフェースあるいはネットワークインタフェースを介して受け付けた番組指定情報をチューナモジュールに与えること。
(14)番組データ通信制御処理は、チューナモジュールからの番組データをデコード手段へ入力するとともに、ネットワークインタフェースを介して受信した暗号化番組データを復号手段へ入力し、番組データをネットワーク上へ送出する際には、ローカル暗号化手段により暗号化番組データにした上でネットワーク上に送出すること。
【0008】
本発明は上記要件(1)〜(14)に加え、次の要件(21)〜(28)を備えた映像番組視聴装置とすることもできる。
(21)前記番組供給モジュールには、前記チューナモジュールに加え、前記暗号化番組データを所定形式の映像音声ファイルとして蓄積したハードディスク装置を主体として構成されるHDDモジュールがあること。
(22)前記番組供給モジュールは自身の種別情報を出力すること。
【0009】
(23)前記モジュールインタフェースは、前記チューナモジュールと前記HDDモジュールを同時装着可能とすること。
(24)前記HDDモジュールは、映像音声ファイルの指定情報を含む番組特定情報を受け付けて、指定の映像音声ファイルを暗号化番組データとして出力すること。
(25)前記制御手段は、録画処理と、ファイル一覧提示処理と、ファイル指定処理とを可能とすること。
(26)録画処理は、前記チューナモジュールと前記HDDモジュールが前記モジュールインタフェースに同時装着されている場合、ユーザインタフェースを介してチャンネルの指定情報を含む録画指示を受け付けるとチューナモジュールから、指定のチャンネルで放送中の番組データをローカル暗号化手段により暗号化番組データにさせた上で前記映像音声ファイルにしてHDDモジュールのハードディスク装置に格納すること。
(27)ファイル一覧提示処理は、ユーザインタフェースを介してファイル一覧の提示要求を受け付けると、HDDモジュールのハードディスク装置に蓄積されているファイルの一覧を前記ユーザインタフェースにより表示出力し、前記提示要求をネットワークインタフェースットワークインタフェースを介して受け付けると、前記ファイルの一覧を当該提示要求の送付元に宛ててネットワーク上へ送出すること。
(28)ファイル指定処理は、ユーザインタフェース、あるいはネットワークインタフェースを介して前記ファイルの指定情報を含む番組特定情報を受け付け、当該番組特定情報をモジュールインタフェースを介して前記HDDモジュールに与えること。
【0010】
さらに、上記要件(1)〜(14)に加え、次の要件(31)〜(35)を備えた映像番組視聴装置、あるいは上記要件(1)〜(14)と(21)〜(28)とに加え、次の要件(31)〜(35)を備えた映像番組視聴装置とすることもできる。
(31)前記番組供給モジュールとして、特定のTV放送形態に対応したチューナモジュールが各種用意されていること。
(32)チューナモジュールは、自身が受信可能なTV放送についての情報を含む種別情報を出力すること。
(33)前記モジュールインタフェースは複数の番組供給モジュールを同時装着可能とし、制御手段は、チューナ特定処理と、番組配信処理とを可能とすること。
(34)モジュール特定処理は、前記モジュールインタフェースに装着されている番組供給モジュールの種別情報とユーザインタフェースあるいはネットワークインタフェースを介して受け付けた番組特定情報とに基づいて当該番組特定情報の送付先となる番組供給モジュールを特定するとともに、複数の番組特定情報を受け付けると番組データを出力していない番組供給モジュールに番組特定情報を与えること。
(35)番組配信処理は、複数の送信元からの番組特定情報をネットワークインタフェースを介して受け付けると、前記モジュール特定処理により特定した番組供給モジュールからの番組データを、ローカル暗号化手段により暗号化番組データにした上で、前記送信元へネットワークインタフェースを介して出力すること。
【発明の効果】
【0011】
本発明の映像番組視聴装置によれば、あらゆるTV放送形態や映像番組の視聴形態にも容易にかつ安価に対応できるとともに、著作権保護対策にも対応することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
===装置構成===
図1に、本発明の実施例における映像番組視聴装置(以下、視聴装置)の概略構成を示した。視聴装置1の本体2は、セットトップボックス(STB)の形態で提供され、ディスプレイモニタ50、およびステレオセットやスピーカなどのオーディオ機器60は外付けとし、既存の機器を使用するようになっている。視聴装置1のユーザインタフェースにおける入出力部としては、主な入力装置となるリモコン装置10が付属し、装置本体2には、操作ボタン12が配設されている。また、キャラクタを主体とした各種情報を利用者に提示するための液晶パネや動作状況を提示するためのLEDランプなどの表示部13が配設されている。
【0013】
そして視聴装置1には、映像番組の供給源となるモジュール(番組供給モジュール)20が着脱可能に装着され、視聴装置本体2には、複数の番組供給モジュール20を装着するための複数のスロット21が配設されている。本実施例の番組供給モジュール20の形態は、薄い箱形であり、スロット21に装着される側の箱の端部には独自規格のコネクタを備えている。スロット21内には番組供給モジュール20のコネクタに適合する他方のコネクタがあり、番組供給モジュール20をスロット21に装着すると、番組供給モジュール20と装置本体2の双方の内部回路が接続される。番組供給モジュール20とスロット21の接続形態としては、上記形態に限らず、番組供給モジュール20を拡張ボード形状にして、エッジコネクタによって接続するなど、適宜な形態が採用できる。
【0014】
番組供給モジュール20としては、各種TV放送形態(デジタルBS放送、アナログ地上波放送など)に対応したチューナを内蔵したモジュール(チューナモジュール)や、映像番組を所定形式のデータファイルにして蓄積したハードディスク装置(HDD)を内蔵したHDDモジュールが用意され、視聴者は、希望するTV放送形態や番組のデータファイルなどに応じて番組供給モジュールを選択したり、追加したりすることができる。それによって、既存のTV受像機を買い換えることなく、番組供給モジュール20を追加装着するだけで視聴を希望する放送形態で放送されている番組を視聴したり、映像番組の録画や再生視聴をしたりすることができる。また、視聴装置1を操作するためのユーザインタフェースは、当然1系統であり、番組供給モジュールが増えても複数のリモコン装置を使い分ける必要がなく、利用者に快適な操作環境を提供することができる。
【0015】
なお、視聴装置1は上記の装置構成に限らず、TV受像機として、ディスプレイモニタとスピーカとを一体化してもよいし、番組供給モジュールを簡単に交換できるように、モジュールを装着する筐体部分と、ユーザインタフェースや映像や音声信号を処理する回路を内蔵した制御装置の筐体部分とを別体にし、双方の筐体における回路を専用の通信インタフェースで通信可能に接続するようにしてもよい。制御装置側にディスプレイモニタとスピーカなどが一体化されていてもよい。
【0016】
===機能ブロック構成===
図2に本発明の実施例における視聴装置1の機能ブロック構成を示した。制御部31は、ワンチップマイコンであり、各機能構成部を制御し、視聴装置1を統括している。ユーザインタフェース(IF)11は、入力部となる操作ボタン12やリモコン装置10、LEDや液晶パネルなどの表示部13と、入力部(10,12)からの操作入力情報を制御部31へ転送したり制御部31からの指示に従って表示部13を駆動したりするための回路を含む入出力制御部14とを含んでいる。
【0017】
モジュールIF22は、チューナモジュール20aやHDDモジュール20bなどの複数の番組供給モジュール20が個別に着脱自在に装着される複数のスロット21を備え、スロット21に装着された番組供給モジュール20と制御部31との通信制御を行うための通信制御部23を含んでいる。なお本実施例のチューナモジュール20aは、アンテナ70からの放送電波信号を入力するためのアンテナ端子24を備え、アンテナ70からの放送電波信号は各チューナモジュール20aにて個別に受信される構成としている。もちろん、視聴装置本体2側に共通のアンテナ入力端子を備えさせるとともに、チューナモジュール20aのコネクタの特定の端子をアンテナ入力端子とし、スロット21を介して放送電波信号をチューナモジュール20aへ分配する構成とすることもできる。
【0018】
番組供給モジュール20は、自身の種別情報を記憶し、チューナモジュール20aであれば受信可能なTV放送形態についての情報を記憶している。HDDモジュール20bであればその旨の情報を記憶している。そして、制御部31からの要求に従って、自身の種別情報を出力し、制御部31は、どのスロット21にどの種別の番組供給モジュール20が装着されているのかを管理する。
【0019】
また番組供給モジュール20は、チューナモジュール20aでれば、内蔵チューナで選局しているチャンネルで放送している映像と音声を所定形式の番組データにして出力する。本実施例では、番組データとして、映像と音声を多重化したMPEG2トランスポートストリーム(TS)を採用しており、チューナモジュール20aは、内蔵チューナがデジタル放送用チューナであれば、同調・復調を経て、選局チャンネルのTSを抽出し、そのTSをそのまま出力する。デジタルCS放送など、1つの搬送帯域に複数の番組が多重化されている場合には、各番組の映像データと音声データとを含んだTSに多重分離し、そのTSを出力する。アナログ放送用チューナであれば、ハードウエアMPEG2エンコーダを内蔵し、同調・復調・を経て抽出した音声信号とNTSC規格のアナログの映像信号とをエンコーダがMPEG2規格に基づいて符号化・圧縮してTSに変換して出力する。
【0020】
一方、HDDモジュール20bの内蔵HDDには映像番組の映像と音声を含む所定形式の符号化・圧縮データをローカル暗号化した暗号化番組データをファイルとして格納されており、この暗号化番組データを番組データとして出力する。なお本実施例では、暗号化前の圧縮・符号化データは、MPEG2規格で圧縮符号化したデータである。
【0021】
ローカル暗号化部32は、当該暗号部に実装された専用の暗号化LSIに固有の鍵を記憶し、所定のアルゴリズムに基づいてMPEG2規格の映像音声データをこの鍵でローカル暗号化して暗号化番組データを出力する。なお、上記HDDモジュール20bに格納されている暗号化番組データもこの固有の鍵により暗号化されたものである。復号部33は、自身に実装された専用の複号化LSIに上記暗号化LSIに固有の鍵と同じ鍵を記憶し、この鍵で暗号化番組データをMPEG2規格の映像音声データ(番組データ)に復号する。また、周知のスクランブル放送にも対応して、B-CAS(登録商標)カードなど、スクランブル鍵を記憶したICカード35とそのカードを装着するためのICカードIF34とを備えている。そして復号部33は、スクランブル放送のTSをスクランブル鍵を用いてスクランブルを解除し番組データに復号する処理も行う。
【0022】
デコード部36は番組データを復号・伸長して非圧縮のデジタル映像データとデジタル音声データとして出力する。ディスプレイIF38はビデオRAMを内蔵し、非圧縮のデジタル映像データをビデオRAMにビットマップ展開するとともに、そのビットマップ画像を種々の形式のアナログ映像信号に変換して出力する。本実施例では、コンポーネント色差信号、コンポジット映像信号、YCセパレート信号に変換し、それぞれの信号は対応の映像出力端子39から外部出力される。またディスプレイIF38は、制御部31の制御により、番組データ起源以外の画像(例えば、チャンネル表示のためのテキスト、音量表示のためのバーグラフなど)を所定の色を背景にして表示したり、番組の映像にスーパーインポーズ表示したりする処理も行う。
【0023】
オーディオIF40は、非圧縮のデジタル音声データをアナログの音声信号にD/A変換したり、所定形式のデジタル信号に変換したりして、音声信号出力端子41から出力させる。なお、本実施例の視聴装置1は、音声信号出力端子41として、アナログ音声信号用のRCA端子とスピーカ用端子、デジタル光信号用の周知のSPIF規格の出力端子を備えている。
【0024】
ネットワークIF37は、外部の機器との通信IFであり、本実施例では100BASE−T規格に準拠したRJ45コネクタを備え、制御部31とLANや外部機器との通信を制御する。本実施例では、TCP/IP手順に基づいて通信する。IPアドレスはネットワーク上のDHCPサーバーにより割り当てられてもよいし、利用者が手動で設定してもよい。視聴装置1自体にDHCPサーバーの機能があってもよい。
【0025】
===TV番組の視聴===
上記構成の視聴装置1におけるTV番組の映像表示処理について説明する。制御部31は、リモコン装置10や操作ボタン12などにより選局チャンネルが指定されると、制御部31は、そのチャンネルの指定情報を入出力制御部14を介して受け付ける。そして、番組供給モジュール20から受け取った種別情報に基づいて指定のチャンネルを受信可能なチューナモジュール20aに対してチャンネル指定情報を送付する。
【0026】
チャンネル指定情報を受け取ったチューナモジュール20aはこの指定のチャンネルを選局し、放送中の番組データを出力する。番組データは、必要に応じて復号部33でスクランブルを解除され、デコード部36にて伸長されて番組の映像データと音声データとしてディスプレイIF38とオーディオIF40に入力される。そして、所定の映像信号と音声信号として映像出力端子39と音声出力端子41から出力され、外付けのディスプレイモニタ50とオーディオ機器60とにより番組の映像と音声が、映像音響出力され視聴に供される。
【0027】
===著作権保護対策===
視聴装置1は、チューナモジュール20aにて受信・選局された番組を、自身の出力端子(39,41)に直接接続されたディスプレイモニタ50やオーディオ機器60にのみ映像音響出力するだけではなく、ネットワーク80上に接続された外部の機器、例えば、番組データの復号・伸長機能を備えたパーソナコンピュータや他の視聴装置での視聴に供することができる。しかし、ネットワーク80上に番組データをそのまま送出すれば、著作権保護上問題がある。もちろんARIBの規定にも反する。そこで、視聴装置1は、ネットワーク80上に送出する番組データをローカル暗号化した上で送出している。それによって、ネットワーク80上で番組データを傍受したり、不正に番組データを視聴装置1から取り寄せたりしても、ローカル暗号化されているため、専用の復号化LSIを実装した復号装置がなければ、番組を視聴することができない。
【0028】
具体例として、ネットワークカードを実装してLANに接続しているパーソナルコンピュータ(PC)にて視聴装置起源の番組の映像と音声を映像音響出力する例を挙げる。PCには、視聴装置の復号部に実装された復号化LSIを実装するとともに、MPEG2TSを復号・伸長する機能を備えた拡張カード(デコーダカード)がPCIなどの所定の汎用バススロットに接続されているものとする。また、視聴装置を遠隔操作するためのソフトウエア(番組視聴ソフト)がインストールされているものとする。
【0029】
PCにて番組視聴ソフトを起動すると、PCはネットワーク80上に視聴装置1があるか否かを走査する。視聴装置1を認識したならば、視聴装置1の制御部31と通信を確立する。PCの番組視聴ソフトは、選局操作と番組のPCのモニタ上での視聴とを可能とし、PCの利用者があるチャンネルを選局すると、そのチャンネル指定情報がネットワークIF37を介して制御部31に送達される。制御部31は、指定チャンネルで放送中の番組データを、必要に応じて復号部33でスクランブル解除した上で、ローカル暗号化部32へ転送していく。ローカル暗号化部32は、番組データをローカル暗号化した暗号化番組データを出力する。制御部31は、この暗号化番組データをネットワークIF37を介して、チャンネル指定情報を送付してきたPCを宛先にしてLAN上に送出する。
【0030】
PCは暗号化番組データを自身のネットワークカードを介して受け取ると、その暗号化番組データをデコーダカードへ転送する。デコーダカードは自身に実装されている復号化LSIに記憶されている鍵を使って暗号化番組データを番組データに復号し、視聴装置のデコード部と同様の機能により非圧縮のデジタル映像データとデジタル音声データをPCIバス上に送出する。デジタル映像データは、PCIバスを経由して例えばAGPバス上のグラフィックカードに転送される。デジタル映像データは、グラフィックカードにてオーバーレイ処理された上でVGA規格の映像信号に変換されて出力される。それによって、PCのモニタには、番組の映像がPCのデスクトップ画面中に挿入された子画面やフルスクリーン画面に表示出力される。
【0031】
一方、デジタル音声データは、PCのPCIバススロットに装着されたオーディオカードやマザーボードのオーディオデータ処理機能などによりD/A変換され、アナログの音声信号として出力される。それによって、PCに接続されたスピーカなどから番組の音声が音響出力される。
【0032】
なお、複数の視聴装置1がネットワークに接続されている場合、視聴する側の視聴装置1は、PCと同様にネットワーク上の他の視聴装置1を走査し、ネットワーク上に他の視聴装置1が存在すれば、自身のユーザIF11が受け付けた番組指定情報を他の視聴装置1に宛ててネットワーク80上に送出すればよい。自身のローカル暗号化部32からの暗号化番組データの代わりに、ネットワークIF37を介して送付されてきた暗号化番組データを復号部33へ入力すればよい。
【0033】
===録画・再生機能===
番組供給モジュール20には、HDDモジュール20bがあり、視聴装置1は、このHDDモジュール20bを番組データの蓄積媒体とした録画・再生装置としても機能する。また視聴装置1は、録画再生機能に付随して、周知のEPGを利用した録画機能や予約録画機能も備えている。番組の録画処理の流れとしては、まず、制御部31がユーザIF11を介してチャンネル指定情報を含む録画指示情報を受け付ける。録画指示情報に、録画の開始/終了時刻などを含む予約録画情報が含まれている場合には、制御部31は、指定の録画開始/終了時刻と指定チャンネル情報とを内部のRAMに格納して自身のリアルタイムクロックの時刻を監視して録画待機状態にする。
【0034】
次に制御部31は、録画指示を受け付けたり予約録画開始時刻を認知したりすると、チャンネル指定情報に基づいて特定したチューナモジュール20aに指定チャンネルで放送中の番組データを出力させる。番組データを、必要に応じて復号部33にスクランブル解除させ、ローカル暗号化部32へ転送する。ローカル暗号化部32は、番組データを暗号化して暗号化番組データを出力する。
【0035】
制御部31は、HDDモジュール20bのHDDに新規のファイルを作成し、そのファイルに暗号化番組データを書き込んでいく。そしてユーザIF11からの録画終了指示を受け付けたり、録画終了時刻を認知したりすると、ファイルを閉じる。それによって、HDDに録画時間分の暗号化番組データのファイル(録画ファイル)が記憶される。
【0036】
HDDモジュール20bに録画した番組の再生処理としては、まず、制御部31がユーザIF11からHDDに蓄積されているファイルの一覧の提示要求を受け付けると、HDDに蓄積されている録画ファイルの一覧画面のビットマップデータをディスプレイIF38のビデオRAMに書き込むことで、そのビットマップ画像が外部のディスプレイモニタ50に表示される。また制御部31は、一覧のテキストデータを生成して本体2に配設されているディスプレイパネルにも表示する。なお録画ファイル一覧はファイル名の一覧であってもよいし、例えば、録画日時や録画したチャンネルなどの情報、あるいはEPGから取得した番組についての情報と、録画ファイルとを対応付けした録画情報ファイルを別に作成しておき、その録画情報ファイルの内容を提示するようにしてもよい。
【0037】
制御部31は、利用者入力による録画ファイルの指定情報を含む再生指示をユーザIF11から受け付けると、指定のファイルに記述されている暗号化番組データを復号部33に転送する。復号部33は、転送されてきた暗号化番組データを番組データに復号し、制御部31は、その番組データをデコード部36へ転送する。デコード部36は番組データを伸長して非圧縮のデジタル映像データとデジタル音声データを出力する。そのデジタル映像・音声データは、ディスプレイIF38およびオーディオIF40を経て外部のディスプレイモニタ50とオーディオ機器60とにより映像音響出力される。
【0038】
また視聴装置1は、ネットワーク80上の外部機器からも録画指示や再生指示を受け付ける。この場合、録画指示情報をネットワークIF37を介して受け付け、指定の番組を録画したり録画予約したりする。ネットワーク80上の外部機器から録画ファイル一覧の送付要求があると、当該一覧を返送する。録画ファイル一覧を送付した外部機器から録画ファイルの指定情報を受け付けると、録画ファイルを返送する。あるいは録画ファイルの内容に相当する暗号化番組データのビットストリームをネットワーク80上に送出してもよい。
【0039】
===利用形態・装置形態===
視聴装置1の利用形態として、例えば、複数台の視聴装置1がLANに接続されたネットワーク構成において、たとえば、ある視聴装置1にはデジタルBS放送用のチューナモジュール20aが一台装着されており、おなじ放送形態のチューナモジュール20aは装着されていないものとする。そして利用者が、デジタルBS放送のあるチャンネルの番組を視聴していたとき、同じ時間にデジタルBS放送の他のチャンネルの番組を録画したいと思ったとする。しかし、現にデジタルBS放送用のチューナモジュール20aが使用されているため、裏番組録画ができない。そこで、ネットワークIF37を介して他の視聴装置1と通信し、使用中にないデジタルBS放送用のチューナモジュール20aがあるかどうかを問い合わせる。もしあれば、その視聴装置1に対して番組指示情報を送付する。番組指示情報を受け付けた視聴装置1は該当番組の暗号化番組データを返送する。裏番組録画をする視聴装置1は、送付されてきた暗号化番組データをHDDモジュール20bへ格納する。
【0040】
また、利用者が現に使用している視聴装置1にHDDモジュール20bが装着されていなくても、HDDモジュール20bが装着されている他の視聴装置1に自身を起源とした番組暗号化データを送付して他の視聴装置1に録画させる形態もあり得る。このように、本発明の視聴装置1によれば、使用していないチューナモジュール20aを他の視聴装置1での視聴や録画に供することができる。そのため、複数台の視聴装置1を購入する際に必要最小限の番組供給モジュール20だけを揃えておけばよく、視聴者に無駄な出費をさせずにすむ。
【0041】
例えば、家庭内の複数の部屋のそれぞれで、各種放送形態のTV放送を個別に視聴したい場合、モジュールIF22を備えた視聴装置(親機)1を1台だけ用意しておき、他の視聴装置は、上記実施例の機能構成の視聴装置からモジュールIF22を省略した簡易型の視聴装置(子機)を設置しておく。あるいは、視聴装置の装置構成をモジュールIF22とその他の機能構成分からなる子機とを別筐体で分離した形態にし、利用者が子機だけを追加購入できるようにしておく。それによって、各部屋では、親機に対して番組指示情報や録画指示情報を送付し、該当の番組の暗号化番組データを返送してもらう。視聴頻度の高いTV放送(アナログ地上波放送など)については、そのTV放送用のチューナモジュール20aを親機に複数台装着しておけばよい。それにより、複数台の子機で同時に同じ放送形態で放送中の番組を視聴したり録画したりすることができる。
【0042】
なお、モジュールIF22と子機とを分離した装置形態では、親機におけるモジュールIF22と子機間で暗号化されていない番組データを送受信すると、この送受信経路から暗号化していない番組データが不正に抽出される場合がある。図3に、この分離装置形態における機能ブロック構成の一例を示した。モジュールIF22を備えた側の装置(フロントエンド部)1aにローカル暗号化部32を内蔵し、フロントエンド部1aから出力される番組データは全て暗号化番組データとしている。フロントエンド部1aと子機1bは個別に制御部(フロントエンド制御部11a,子機制御部11b)を持ち、双方の通信IF(90a、90b)が双方の制御部(11a,11b)間の通信を仲介・制御する。また、通信IF(90a、90b)は、独自規格のコネクタ形状を備えるとともに専用のプロトコルで通信するようにすれば、より確実に番組データの不正抽出を防止することができる。
【0043】
なお、分離形態の視聴装置は、図3に示した機能構成に限らない。例えば、子機としてのみ利用される装置であれば、ICカードIF35は必要ない。親機となる視聴装置であれば、利用者が操作したり番組供給モジュール20を着脱したりするのを容易にするために、フロントエンド部1aにユーザIF11を設け、他のデコード部34を主体とした機能構成にディスプレイモニタ50とオーディオ機器60とを一体化してもよい。そして、フロントエンド部1aを利用者の手が届きやすい場所に設置し、ディスプレイモニタ60とオーディオ機器60とが一体化した他の部分を視聴に適した場所に設置すればよい。このように本発明の視聴装置は、操作や視聴の形態に応じて柔軟に変更することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施例における映像番組視聴装置を主体にしたシステムの装置構成図である。
【図2】上記映像番組視聴装置の機能ブロック構成図である。
【図3】本発明のその他の実施例における機能ブロック構成である。
【符号の説明】
【0045】
1 映像番組視聴装置
11 ユーザインタフェース
20 番組供給モジュール
20a チューナモジュール
20b HDDモジュール
31 制御部
32 ローカル暗号化部
33 復号部
34 デコード部
37 ネットワークインタフェース
38 ディスプレイインタフェース
40 オーディオインタフェース
50 ディスプレイモニタ
60 オーディオ機器
70 TVアンテナ
80 ネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
TV放送番組などの映像番組を視聴する映像番組視聴装置であって、ユーザインタフェースと、別体の番組供給モジュールと、モジュールインタフェースと、ネットワークインタフェースと、ローカル暗号化手段と、復号手段と、デコード手段と、ディスプレイインタフェースと、オーディオインタフェースと、制御手段を備え、
ユーザインタフェースは、利用者入力を受け付けるとともに、利用者に提示する情報を出力し、
番組供給モジュールは、TV放送用チューナを主体に構成されたチューナモジュールであり、当該チューナモジュールは、チャンネルの指定情報を含む番組特定情報を受け付け、受信した放送電波信号から指定のチャンネルで放送中の番組の映像と音声を所定形式の番組データとして出力し、
モジュールインタフェースは、番組供給モジュールを着脱自在に装着するとともに、装着されている番組供給モジュールと前記制御手段との通信を仲介・制御し、
ネットワークインタフェースは、所定のネットワークに接続して前記制御手段と当該ネットワークとの通信を仲介・制御し、
ローカル暗号化手段は、番組データをローカル暗号化して暗号化番組データとして出力し、
復号手段は、暗号化番組データを番組データに復号して出力し、
デコード手段は、番組データを伸長して非圧縮のデジタル映像データとデジタル音声データとして出力し、
ディスプレイインタフェースは、デコード手段からの前記デジタル映像データを所定規格のディスプレイモニタに対応する映像信号に変換して出力し、
オーディオインタフェースは、デコード手段からのデジタル音声データを適宜なオーディオ信号にして出力し、
制御手段は、番組指定処理と、番組データ通信制御処理とを可能とし、
番組指定処理は、ユーザインタフェースあるいはネットワークインタフェースを介して受け付けた番組指定情報をチューナモジュールに与え、
番組データ通信制御処理は、チューナモジュールからの番組データをデコード手段へ入力するとともに、ネットワークインタフェースを介して受信した暗号化番組データを復号手段へ入力し、番組データをネットワーク上へ送出する際には、ローカル暗号化手段により暗号化番組データにした上でネットワーク上に送出する、
映像番組視聴装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記番組供給モジュールには、前記チューナモジュールに加え、前記暗号化番組データを所定形式の映像音声ファイルとして蓄積したハードディスク装置を主体として構成されるHDDモジュールがあり、
前記番組供給モジュールは自身の種別情報を出力し、
前記モジュールインタフェースは、前記チューナモジュールと前記HDDモジュールを同時装着可能とし、
前記HDDモジュールは、映像音声ファイルの指定情報を含む番組特定情報を受け付けて、指定の映像音声ファイルを暗号化番組データとして出力し、
前記制御手段は、録画処理と、ファイル一覧提示処理と、ファイル指定処理とを可能とし、
録画処理は、前記チューナモジュールと前記HDDモジュールが前記モジュールインタフェースに同時装着されている場合、ユーザインタフェースを介してチャンネルの指定情報を含む録画指示を受け付けるとチューナモジュールから、指定のチャンネルで放送中の番組データをローカル暗号化手段により暗号化番組データにさせた上で前記映像音声ファイルにしてHDDモジュールのハードディスク装置に格納し、
ファイル一覧提示処理は、ユーザインタフェースを介してファイル一覧の提示要求を受け付けると、HDDモジュールのハードディスク装置に蓄積されているファイルの一覧を前記ユーザインタフェースにより表示出力し、前記提示要求をネットワークインタフェースットワークインタフェースを介して受け付けると、前記ファイルの一覧を当該提示要求の送付元に宛ててネットワーク上へ送出し、
ファイル指定処理は、ユーザインタフェース、あるいはネットワークインタフェースを介して前記ファイルの指定情報を含む番組特定情報を受け付け、当該番組特定情報をモジュールインタフェースを介して前記HDDモジュールに与える、
映像番組視聴装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記番組供給モジュールとして、特定のTV放送形態に対応したチューナモジュールが各種用意され、
チューナモジュールは、自身が受信可能なTV放送についての情報を含む種別情報を出力し、
前記モジュールインタフェースは複数の番組供給モジュールを同時装着可能とし、
制御手段は、チューナ特定処理と、番組配信処理とを可能とし、
モジュール特定処理は、前記モジュールインタフェースに装着されている番組供給モジュールの種別情報とユーザインタフェースあるいはネットワークインタフェースを介して受け付けた番組特定情報とに基づいて当該番組特定情報の送付先となる番組供給モジュールを特定するとともに、複数の番組特定情報を受け付けると番組データを出力していない番組供給モジュールに番組特定情報を与え、
番組配信処理は、複数の送信元からの番組特定情報をネットワークインタフェースを介して受け付けると、前記モジュール特定処理により特定した番組供給モジュールからの番組データを、ローカル暗号化手段により暗号化番組データにした上で、前記送信元へネットワークインタフェースを介して出力する、
映像番組視聴装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2006−279433(P2006−279433A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−94516(P2005−94516)
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【出願人】(504277481)株式会社ゼンテック・テクノロジー・ジャパン (5)
【Fターム(参考)】