説明

時分割多重化回路切り換えルータ

時分割多重化回路切り換えルータは、複数の入力手段(i,...,i)と、少なくとも1つの出力手段(o,....,o)と、前記入力手段(i,...,i)と前記出力手段(o,....,o)との間を切り換えるとともに、所定のタイムスロット中に、選択された前記入力手段を前記出力手段に対して接続するための切り換え手段と、所定のタイムスロットにおいてどの入力手段が出力手段に接続されるかについての命令を含み、前記切り換え手段を制御するためのルータテーブル手段とを備えている。前記ルータテーブル手段は複数のテーブルに分割され、各テーブルは、他のテーブルにおける予約に関連して1つのテーブルにおける予約毎に帯域幅の大きさを特定する重みを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の入力手段と、少なくとも1つの出力手段と、入力手段と出力手段との間を切り換えるとともに、所定のタイムスロット中に、選択された入力手段を出力手段に対して接続するための切り換え手段と、所定のタイムスロットにおいてどの入力手段が出力手段に接続されるかについての命令を含み、切り換え手段を制御するためのルータテーブル手段とを備えている時分割多重化回路切り換えルータに関する。
【背景技術】
【0002】
共有された相互接続にわたる通信において正確な待ち時間およびスループットを実現するために、従来の通信アーキテクチャは、一般に、時分割多重接続方式(TDMA)と呼ばれるアービトレーション方式に依存する。アービトレーション方式は、コンテンション解決を行ない、共有相互接続ラインにわたる通信の場合には不可欠である。TDMAは、固有のマスタのために各スロットを静的に予約することができる(スロットの)タイムホイールのように機能する。タイムホイールがS個のスロットから成り且つ各スロットが等しい量の時間を要する場合、全てのスロット予約は、バスの利用可能な帯域幅Bの1/S番目に対応する。B/Sよりも大きい帯域幅を必要とする接続のためには、複数のスロットを予約しなければならない。スロット予約は1つのテーブル内に記憶され、これは、一般に、内蔵メモリ等、例えばランダムアクセスメモリ(RAM)または先入れ先出し(FIFO)バッファによって実施される。
【0003】
プログラムされた接続の帯域幅要件の範囲が大きい(例えば1Mb/s〜20Gb/s)場合には、問題が生じる。この時、20000個未満のスロットを用いて大きな比率を実現するためには、タイムホイール内の多くのスロット(与えられた例においては、>20000)あるいは何か他のものが必要とされる。
【0004】
莫大な数のトランジスタを有するチップを設計する複雑度を管理するには、計算を通信から切り離す必要がある。通信においては、ネットワークオンチップ(NoC)等の拡張可能で且つ合成的な相互接続を使用しなければならない。そのため、オンチップ通信の将来は、ルータのオンチップネットワークである。回路切り換えにより、送信元から送信先への概念的物理経路にわたる通信を確立することができる。オンチップルータネットワークは、他の部品間に、相互接続されたルータから成る。
【0005】
米国特許第4466060号明細書は、パケットメッセージ切り換えデジタルコンピュータネットワークにおいてデータメッセージのルーティングを制御するための適応分散メッセージルーティングアルゴリズムを開示している。ネットワークトポロジ情報は、排他的ツリーと称される最小長さのツリーの形態を成す隣接するノード間でだけやりとりされる。排他的ツリーは、隣接するノード及びそのリンクをツリーから排除することにより形成される。受けられた排他的ツリーの組から、ルータテーブルおよび送信された排他的ツリーが構成される。
【0006】
国際公開第01/89158号パンフレットは、リンクによって相互に接続されたノードを備える通信ネットワーク内でリソースを制御するための方法を開示している。各リンクは、複数のフレームに分割されるビットストリームを伝送する。また、各フレームは、回路切り換えチャンネルを形成するために割り当てることができる複数のタイムスロットに分割される。タイムスロットへの書き込みアクセスの形態を成すリソースは、管理エンティティに関連付けられている。その後、リソースが対象管理エンティティに関連付けられた程度まで対象管理エンティティに属するチャンネルに対するリソースの割り当てが保証されるように、リソースの割り当てが行なわれる。
【0007】
時分割多重化(TDM)を使用するオンチップルータネットワークにおいては、物理的なリンクを共有して、相互接続リソースの高い利用度を得ることができる。これは、ルータ内にスイッチをセットするための制御を必要とし、また、この制御情報は、所謂スロットすなわち所定の時間単位あるいはルータテーブルに記憶される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、低コストでオンチップルータネットワークにおいて使用できる時分割多重化回路切り換えルータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
【0010】
前記目的および更なる目的を達成するために、複数の入力手段と、少なくとも1つの出力手段と、前記入力手段と前記出力手段との間を切り換えるとともに、所定のタイムスロット中に、選択された前記入力手段を前記出力手段に対して接続するための切り換え手段と、所定のタイムスロットにおいてどの入力手段が出力手段に接続されるかについての命令を含み、前記切り換え手段を制御するためのルータテーブル手段とを備えるルータであって、前記ルータテーブル手段が複数のテーブルに分割され、各テーブルが、他のテーブルにおける予約に関連して1つのテーブルにおける予約毎に帯域幅の大きさを特定する重みを有していることを特徴とするルータが提供される。
【0011】
本発明によれば、ルータテーブル手段のサイズが減少し、それにより、対応するシリコン領域およびオーバーヘッドが減少し、したがって、コストが節約される。これは、オンチップルータネットワークを設ける場合に重要である。また、本発明によれば、同じサイズのルータテーブル手段において帯域幅粒度を更に細かくすることができ、したがって、同じコストで、ネットワーク中の利用可能な帯域幅をより効率的に使用することができる。これは、より高く重み付けられたテーブルによって高帯域幅のデータストリームを網羅でき、それにより、僅かなタイムスロットを割り当てるだけで済むからである。本発明は、全てのデジタルシステムオンチップICにおいて使用できる。
【0012】
テーブルの重みがプログラム可能であることが好ましい。
【0013】
各テーブルは所定数の横列を含むことができ、また、所定時間毎にテーブルが各重み(w>1)に対応して所定回数(w)循環される。そのため、有効スロットサイクル周期(S)は、

=Σw・S
l=1
であることが好ましい。
【0014】
テーブルのエントリが列挙される方法は、ルータが一部を成すネットワークを通じた待ち時間要件に依存している。
【0015】
複数のバッファ手段を備える更なる好ましい実施形態において、各バッファ手段はそれぞれ、前記入力手段と前記切り換え手段との間に接続され、前記各バッファ手段はそれぞれ、複数のテーブルに対応する複数のバッファ部を備え、各バッファ部がそれぞれ1つのテーブルに割り当てられ、前記ルータテーブル手段は、前記テーブルにしたがって前記バッファ部を制御するために設けられている。そのようなバッファリングコンセプトは、共有バッファリングコンセプトよりもエレガントである。これは、そのようなバッファ手段内に入力フロー制御数字がテーブル毎に記憶され、それにより、様々なレベルのTDMAスケジュールが論理的に独立するようになるからである。前記バッファ手段は先入れ先出し(FIFO)バッファ手段であることが好ましい。
【0016】
本発明の前述した目的および他の態様は、以下の説明および添付図面によって更に良く理解される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について説明する。
【0018】
回路切り換えのための単純なルータのアーキテクチャ(構造)が図1に説明の目的で示されている。ルータは、バッファを含むN個の入力ポートと、M個の出力ポートと、ルータテーブルにしたがって入力から出力へと(同時に)データを転送するためのスイッチとから成る。回路切り換えにより、特定の時間の間に送信元から送信先へと物理的な経路にわたって接続を行なうことができる(Leijten, J. A. J.;van Meerbergen, J. L.; Timmer, A. H.;Jess, J. A. G.;「高性能マルチプロセッサにおけるリアルタイムタスク間でのストリーム通信」,Design, Automation and Test in Europe,1998年、議事録、1998年2月23日〜26日、125〜131頁)。
【0019】
ルータにおいて、データは、タイミングを図るため、特定の時間の間、キュー内に記憶される。したがって、ルータネットワークにわたる回路切り換えは、ネットワークにわたるデータ転送が1つのホップだけではなく複数のホップ(経路上の各ルータ毎に1つずつ)を含んでいるという点で、共有バスTDMAアーキテクチャとは異なる。この場合、各ホップ(ルータ)は、異なるルータテーブルを有している。また、回路切り換えは、マスタ−スレーブにより或いはルータ入力−出力ポートとの関連で後述するように対がスケジュールされる特定の形式のTDMAである。
【0020】
個々のルータのルータテーブルは、経時的にコンテンションフリーな態様でクロスバースイッチをプログラムするための情報を含んでいる。このため、時間がスロットと呼ばれる所定の複数の単位時間に分けられる。1スロット中においては、フリット(フロー制御数字)と呼ばれるデータの単位をクロスバースイッチによりルータ入力バッファから出力へと転送することができる。特定のスロットにおける入力/出力マッピングは、S×Mサイズのマトリクス(行列)であるルータテーブルTによって特定される。ここで、Sはスロットエントリの数であり、Mはルータの出力端子の数である。Tの要素は組{φ,I,...,N}内にある。値n=T(s,m)(0s<Sおよび0<mM)は、スロットsにおいてn≠φの場合にフリットが入力iから出力oへと転送されることを意味している。そのため、Tの行sは、スロットsにおけるマッピングを特定する。スロット割り当てTは、s=k mod Sにしたがって、時間と共に周期的に繰り返され、ここで、kはスロット反復子である。
【0021】
したがって、ネットワーク内の全てのルータのルータテーブルは、S個のタイムスロットを有している。同時性の論理的概念が存在する。すなわち、ネットワーク内の全てのルータは、前述したように、同じ所定の持続スロット内にある。スロット反復kにおいては、多くとも1つのデータブロックが出力ポート毎に書き込まれる。ネットワーク中のルータの出力は、入力/出力対間のリンクにより、ルータの入力に接続されている。そのようなリンクにより、スロット反復kにおいて1つの出力に書き込まれるブロックが、次のスロット反復でリンクにより接続される入力のキュー内に存在するようになる。次のスロットk+1中において或いはその後において、到達したブロックは、その適切な出力ポートに対して再び書き込まれる。したがって、ブロックは、記憶装置内を伝搬してファッションを転送する。ブロックがルータ毎に要する待ち時間は、(経路に沿うその後の2つのルータの予約によって与えられる)ブロックの発着時間の差が乗じられるスロットの持続時間に等しい。帯域幅は、S個のスロット毎のブロックサイズの倍数単位で保証される。
【0022】
送信元から送信先への経路において確保(予約)されたスロットは、ルータ毎に少なくとも1(モジュロS)だけ増大する。スロットsが経路上の特定のルータで確保(予約)され且つスロット(s+q)%S(q>0)が経路上の次のルータで確保(予約)される場合には、経路のこの部分において要した待ち時間はqスロットである。
【0023】
ルータの入力におけるブロックの到達順序は、これらのブロックがルータの出力のうちの1つを通じて書き込まれる順序と同じでなければならない。これは、FIFOによって入力に接続されるキューの実施を可能にする。
【0024】
ルータテーブルのエントリは、全てのスロット毎に出力を入力に対してマッピングする。すなわち、T(s,0)=iである。そのスロットにおけるその出力のための確保(予約)が存在しない場合には、エントリは空である。出力毎に多くとも1つの入力しか存在しないため、コンテンションは全く生じない。1つの入力を複数の出力に対して送信する(マルチキャスト)ことができる。
【0025】
GT(保証スループット)ルーティング法において、特定のルータにおいてタイムスロットsで読み取られる全てのGTトークンは、トークンが辿る経路中の次のルータにおいてタイムスロット(s+q)%Sで読み取られる。qの値は、少なくとも1であり、選択されたスケジュールの結果である。それはできる限り小さいことが好ましい。なぜなら、接続の全体の待ち時間が、経路に沿う全てのqの合計に等しいからである。保証スループット(GT)サービスは、最悪の場合のシナリオのためにリソース予約を必要とするが、これは費用が高くなる可能性がある。
【0026】
ルータテーブルサイズS=4での2つの2×2ルータR1,R2を含む単純なルータネットワークの一例が図2に示されている。この図では、4つのGT接続がデータストリームs,s,s,sによって表されている。そのデータストリームのために割り当てられるタイムスロットの数が図2の括弧内に示されている。
【0027】
第1のルータR1の第1の出力ポート(図2では上側ポートとして示されている)は使用されておらず、したがって、ルーティングテーブルの第1の列は空である。第1のルータR1のルーティングマトリクスの第2の列は、その入力からのトークンが第2の出力ポート(図2では下側ポートとして示されている)上に交互に書き込まれることを示している。したがって、第1のルータR1におけるコンテンション無くして、両方のデータストリームs,sが所定の帯域幅をもってルーティング(経路指定)される。第2のルータR2において、第1の出力ポート(図2では上側ポートとして示されている)は、データストリームs,sのトークンを受ける。データストリームsからのトークンは、第1のルータR1においてはタイムスロット0,2でルーティングされるため、第2のルータR2においてはタイムスロット1,3でルーティングされる。これは、第2のルータR2のルータテーブルの第1の列における2つの「1」によって見られる。データストリームsによって必要とされる1つのタイムスロットは、第1の列のタイムスロット2においてスケジュールされる。同様に、第2のルータR2のルータテーブルの第2の列で「1」により示されるように、データストリームsのトークンはタイムスロット0,2においてスケジュールされる。最終的に、データストリームsのトークンはタイムスロット1においてスケジュールされる。
【0028】
GTトークンが全ての予約されたタイムスロットにおいて利用できる必要はない。GTパケットが予約されたタイムスロットにおいて到達しない場合には、要求されているが使用されていないリンクのタイムスロットにわたってBE(ベストエフォート)パケットを送信することができる。ベストエフォート(BE)サービスは、リソースを全く予約せず、したがって保証を行なわないが、一般に最悪の場合のシナリオではなく平均的な場合のシナリオのために設計されているため、リソースをうまく使用する。
【0029】
ルータテーブル中のスロットの数Sは、リンクの帯域幅の全体の大きさを分割することができる粒度を決定する。Bがリンク毎の帯域幅の大きさを表している場合には、1つの接続がB/Sのかなりの部分で帯域幅を割り当てることができる。そのため、全てのルータのスロットテーブルエントリの数の増大を意味するSの増大により、粒度が更に細かくなる。しかしながら、ルータテーブルのサイズが更に大きいと、シリコン領域においてルータのコストが高くなる。現在の評価では、ルータテーブルが全ルータシリコン領域の50%程度を占められることが分かっている。また、大きなルータテーブルは動作上の欠点も有している。すなわち、高い大域幅および中間の帯域幅の接続においては、多数のスロットをプログラムしなければならない。これは、接続のセットアップおよび解除時間において高くつく。
【0030】
図3は、直列に接続された2つの2×2ルータR1,R2の組み合わせの一例を示している。この場合、2つの2×2ルータがR1,R2で示されており、また、ネットワーク端子がt(i=1,2,...,6)で示されている。
【0031】
第1のルータR1が端子tを介してBEパケットを受けるとともに、これらのパケットが全て端子tへ向かうことになっており、また、これらのパケットの帯域幅がリンクの容量の10%を必要とすると仮定する。同様に、パケットは、端子tから端子tへと向かうとともに、リンク容量の1%しか必要としない。第2のルータR2は、端末tへと向かうことになっている端子tを介してGTデータストリームを受ける。GTデータストリームは、帯域幅の99%を要求して使用し、したがって、時間の99%の間、ルータR2の出力ポートbから端子tに向かう出力リンクを占める。そのため、BEストリーム共有ポートbは、残りの1%のリンク容量においてフリットだけを送ることができ、また、GTデータがポートbにおいて到達する毎に、ポートbにわたるBEパケットの送信がプリエンプト(pre-empted)される。
【0032】
これは、1%のBEデータストリームのパケットにおいて長い待ち時間を引き起こす可能性がある。この場合、待ち時間は、パケットがネットワークにわたって送信される持続時間として規定される。また、待ち時間により、ルータR1,R2間のリンクは、1%のBEストリームによってほぼ連続的に占められる。これは、異なるパケットのフリットがインタリーブされないからである。したがって、10%のデータストリームのBEパケットは、リンクの速度の10%未満を得る。これにより、図3の例において、ルータR1,R2間のリンクは、その理論的容量の11%未満の利用度を有する。
【0033】
この問題を解消するため、基本的に3つの手法がある。すなわち、(1)いわゆるワームホールルーティングではなく仮想カットスルールーティングを使用する、(2)データが無い長い期間およびデータの比較的大きなブロックにおいてGT通信を実行する、(3)1%のBEストリームにおいてGTサービスを使用する。
【0034】
最初の手法は、次のルータの入力リンクがブロックしないように、全てのパケットが次のルータで受け入れられることを保証する。しかしながら、これにより、メモリが余計に必要になる。
【0035】
2番目の手法では、フリット強制排除がめったに生じない。GTデータの99%が10時間単位のブロックでグループ化される場合、この帯域幅は、99個のデータブロックを選択的に送信した後に10時間単位を無くすることにより得られる。BEデータストリームのパケットサイズがそのような10時間単位と比べて小さい場合には、1%BEデータストリームの全パケットが10時間単位で送られ、パケットが送信された直後に10%BEデータストリームによりルータR1,R2間のリンクを使用することができる。最初の手法ではルータにおいて更なるメモリが必要になるが、この2番目の手法では、BEデータストリームにおいて更なる待ち時間が必要になる。
【0036】
第3の手法においては、端子t,t間の接続を実現するためにGTサービスが使用される。したがって、ルーティングテーブル中の100個の全てのスロットから1つを予約することにより特定の瞬間に比較的低い帯域幅のストリームがスケジュールされる。これにより、スロットテーブルは、少なくとも100エントリのサイズを有している必要がある。GTサービスにより予約期間中に回路切り換え接続が得られるため、接続は、ルータR1,R2間のリンク容量のせいぜい1%しか使用しない。残りのリンク容量は、10%BEストリームのために利用できる。
【0037】
3番目の手法は、低帯域幅および高帯域幅の両方を要する一組の接続を効率的に記憶するための手段を必要とする。これは、階層予約テーブルによって達成される。予約テーブルによってかなりの量のエリアオーバーヘッドが費やされるとすると、テーブルはL層に構造化される。すなわち、T=(T,...,T)である。層l=1,...,Lのテーブルは、S行から成るサイズと、w>1)の重みとを有している。重みは帯域幅の大きさを定め、対応する予約テーブルのスロットが他の層の重みに比例して表す。これは、L個のテーブルの組み合わせスケジュールを構成することにより実現される。この組み合わせスケジュールにおいては、周期毎に、テーブルT,l=1,...,Lがw回それぞれ循環される。そのため、有効スロットサイクル周期Sは以下のようになる。
L (1)
=Σw・S
l=1
【0038】
また、これは、物理的な予約テーブルエトリを殆ど犠牲にしない。
L (2)
S=ΣS
l=1
【0039】
方程式(1)から、層lのスロットが全リンク帯域幅Bの比w/Sに対応していることが分かる。
【0040】
多層ルータテーブルを含むそのようなル−タアーキテクチャが図4に概略的に示されている。
【0041】
図5は、多層手法に係る図3に示されるような状況におけるルータテーブルのファイリングを示している。ここでは、2つの層が必要とされる。1つのストリームがベストエフォートストリームであり、これがbe1で示されている。また、2つの他のストリームが保証スループットである。これらはgt1,gt2で示されている。両方のストリームをスケジュールする各ルータのルータテーブルは2つの層に分割され、各層は異なる重みを有している。第1の層は、重み1を有するとともに、gt2をサポートする。第2の層は、重み99を有するとともに、gt1をサポートする。マトリクスT1,T2は、ルータR1,R2のそれぞれにおける第1の層1に関連付けられた2つのサブテーブルを規定する。マトリクスT1,T2は、第2の層2のための予約を与える。したがって、第2の層2におけるスロットの予約は、第1の層1におけるスロットの予約よりも99倍大きい帯域幅割り当てを必要とする。2層手法の結果として、スロットエントリSの総数は、この場合において、3よりも多くなる必要はない。
【0042】
様々なテーブルのエントリが列挙される方法は、ネットワークを通じた待ち時間要件に依存しており、また、層毎の独立したバッファリングに関して余計なコストを費やすことが望まれているかどうかに依存している。
【0043】
以下の説明は、2つのバッファオプションを扱っている。両方のケースでは、ネットワーク内の全てのルータにおいて一方の層から他方の層への切り換えが同期して行なわれるものとする。
【0044】
様々な層のテーブルが経時的にインタリーブされるため、ルータの層コントローラは、遅かれ早かれ、1つの層のテーブルの列挙を中断して、他の層のうちの1つを続ける。先入れ先出し(FIFO)バッファポリシーが入力毎に使用される場合、FIFOは、コントローラが他の層に切り換わるレベルに属するデータを含んでいてはならない。さもなければ、データがだめになってしまう。そのようなポイントを特定の層において全てのルータのテーブル中で見出すことは取るに足りないことではない。なぜなら、一般に、ネットワークを通じた多くの経路が経時的に互いに重なり合うからである。経路を横切ることなく異なる層への巧みな切り換えを行なうことができる自然なポイントは、テーブルの最後のエントリの後ということもあり得る。しかし、循環スケジュールの場合、そのようなポイントは全く終了しない。すなわち、循環スケジュールにより、ルータを経由する経路を2つの部分に分けることができる。この場合、第1の部分はテーブルの最後でスロットを使用し、第2の部分はテーブルの最初にスロットを使用する。すなわち、1つの経路をテーブルの境界上で重ね合わせることができる。実際には、「入力毎に1つのFIFO−手法」における有効な割り込みポイントを有するスケジュールにより、リンク利用度が低下する。
【0045】
更に優れたバッファ手法は、図4と併せて図6に示されるように、レベル毎に入力フリットをFIFOに記憶する。図4に示されるように、複数のバッファQが設けられている。この場合、各入力i〜iは、そのようなバッファQに結合されている。図6には、そのようなバッファQの構成が概略的に示されている。この概念において、様々なレベルのTDMAスケジュールは、それ自体が論理的に独立する異なるキューを使用する。そのため、予約テーブルを環状にすることができ、層間の切り換えを経時的な任意の瞬間において行なうことができる。
【0046】
なお、ネットワークを通じた待ち時間は、2つのバッファリング方法において同じではない。
【0047】
便宜上、高帯域幅接続と低帯域幅接続との間の割合および接続数はそれぞれ、1:99および3と、小さく維持される。しかしながら、実際には、接続の割合および数がもっと大きくても良い。
【0048】
多層スロットテーブルの利点は以下のように示される。簡単のため、図4にしたがってネットワークオンチップがたった1つのルータから成ると仮定する。また、1つの特定の出力ポートを通じて流れる保証スループット接続に焦点を合わせることとする。また、この出力を通じて流れる60個のGTストリームが存在するものとする。これらのストリームの帯域幅要件は以下の通りである。すなわち、50個のGTストリームが1Mb/sであり、10個のGTストリームが1Gb/sである。そのため、全体の総帯域幅は少なくとも10.05Gb/sである。
【0049】
以下、層の数およびスロットテーブルエントリの数が異なるスロットテーブルの3つの例A,B,Cについて説明する。
【0050】
例Aは、10050個のスロットから成る1つのスロットテーブルを利用する。1つのリンクの帯域幅を10.05Gb/sとして、スロット毎の帯域幅が1/10050×10.05Gb/s=1Mb/sとなるようにする。ここで、1Mb/sの50個のGTストリームはそれぞれ1スロットを確保する必要があり、また、1Gb/sの10個のGTストリームはそれぞれ1000個のスロットを確保する必要がある。
【0051】
例Bも、同様に、単層スロットテーブルであるが、ここではちょうど250個のスロットエントリから成るスロットテーブルを利用する。この減少した数のスロットエントリは、かなりのコストを節約する。60個のストリームにわたる256個のスロットの最適な分配は以下の通りである。すなわち、1Mb/sの50個のストリームはそれぞれ1スロットを使用し、1Gb/sの10個のストリームはそれぞれ残りの20個のスロットを使用する。ここで、全てのストリームの帯域幅要件を満たすため、リンクの帯域幅は250/20×1Gb/s=12.5Mb/sでなければならない。したがって、スロット毎の帯域幅は50Mb/sである。この実現には欠点があるのが分かる。すなわち、第1に、例Aよりも25%多い帯域幅を有するリンクを必要とするという点であり、また、第2に、この余計な帯域幅を他の接続において利用できないという点である。これは、そうすることを50Mb/sの帯域幅粒度が許容しないからである。
【0052】
例Cは2層スロットテーブルを使用する。スロットテーブルの第1の層は、スロット毎の帯域幅が1Mb/sである50個のエントリから成る。スロットテーブルの第2の層は10個のエントリから成る。この場合、各スロットの帯域幅は1Gb/sである。したがって、その後の層の重みwは、1および1000である。この実現では、例Aと同様に、リンクの帯域幅を10.05GB/sにする必要があるが、我々は、全体で60個のスロットテーブルエントリしか必要としない。その数は、例Aの数の0.6%にすぎない。
【0053】
以上、添付図面に示される実施例を参照して本発明について説明したが、本発明がそれに限定されず、添付の請求項に開示された範囲内において多くの方法で本発明を変形できることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】時分割多重化回路切り換えルータの概略的な基本ブロック図を示している。
【図2】直列に接続された2つのルータの組み合わせ及び4つの保証スループットデータストリームのフローを概略的に示している。
【図3】2つの2×2ルータを有する単純なルータネットワーク、及び2つのデータストリームがベストエフォートであり1つのデータストリームが保証スループットである3つのデータストリームのフローを概略的に示している。
【図4】本発明の好ましい実施形態に係る多層ルータテーブルを含む時分割多重化回路切り換えルータの概略的なブロック図を示している。
【図5】本発明の好ましい実施形態に係る2つのルータから成るネットワークを通じて伝搬する3つのデータストリームのフローの概略図を示している。
【図6】入力毎に図4のルータに含まれる複数のバッファの概略的なブロック図を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の入力手段と、
少なくとも1つの出力手段と、
前記入力手段と前記出力手段との間を切り換えるとともに、所定のタイムスロット中に、選択された前記入力手段を前記出力手段に接続するための切り換え手段と、
所定のタイムスロットにおいてどの入力手段が出力手段に接続されるかについての命令を含み、前記切り換え手段を制御するためのルータテーブル手段と、
を備え、
前記ルータテーブル手段が複数のテーブル(T)(l=1,...,L)に分割され、各テーブルは、他のテーブルにおける予約に関連して1つのテーブルにおける予約毎に帯域幅の大きさを指定する重み(w>1)を有していることを特徴とするルータ。
【請求項2】
前記ルータテーブル手段が複数の階層レベルに分割され、各テーブルが特定の階層レベルに割り当てられる請求項1に記載のルータ。
【請求項3】
前記テーブルの重みがプログラム可能である請求項1または2に記載のルータ。
【請求項4】
前記各テーブル(T)が多数の行(S)を含んでいる請求項1乃至3のいずれかに記載のルータ。
【請求項5】
所定時間毎に前記テーブル(T)が各重み(w>1)に対応して多数回(w)循環される請求項1乃至4のいずれかに記載のルータ。
【請求項6】
有効スロットサイクル周期(S)は、

=Σw・S
l=1
である請求項4または5に記載のルータ。
【請求項7】
前記テーブル(T)のエントリが列挙される方法は、ルータが一部を成すネットワークを通じた待ち時間要件に依存している請求項1乃至6のいずれかに記載のルータ。
【請求項8】
複数のバッファ手段を備え、各バッファ手段はそれぞれ、前記入力手段と前記切り換え手段との間に接続され、前記各バッファ手段はそれぞれ、複数のテーブル(T)に対応する複数のバッファ部を備え、各バッファ部がそれぞれ1つのテーブルに割り当てられ、前記ルータテーブル手段は、前記テーブルにしたがって前記バッファ部を制御するために設けられている請求項1乃至7のいずれかに記載のルータ。
【請求項9】
前記バッファ手段が先入れ先出しバッファ手段である請求項8に記載のルータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−500985(P2007−500985A)
【公表日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−530791(P2006−530791)
【出願日】平成16年5月10日(2004.5.10)
【国際出願番号】PCT/IB2004/050622
【国際公開番号】WO2004/102989
【国際公開日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips Electronics N.V.
【住所又は居所原語表記】Groenewoudseweg 1,5621 BA Eindhoven, The Netherlands
【Fターム(参考)】