説明

時刻表示装置、電子機器および制御方法

【課題】 時刻表示を切り替えるための制御信号を出力してから、実際に時刻表示が切り替わるまでに時間を要する場合でも、時刻を正確に表示することができるようにする。
【解決手段】 時刻の計時動作に基づいて表示パネル22の時刻表示を切り替える際に、制御用コントローラ14は、前記表示パネル22のコントラストが所定のコントラストに達するまでに要する時間tsだけ早めたタイミングt1で前記表示パネル22を駆動するドライバIC15に対して時刻表示の切り替えを指示する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時刻を表示する表示装置、電子機器および制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体中に分散した帯電粒子が電界印加により泳動する現象、いわゆる電気泳動現象が従来から知られており、この電気泳動現象を利用した電気泳動表示装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この種の電気泳動表示装置にあっては、一対の電極間に、少なくとも1種の電気泳動粒子(帯電粒子)を含む電気泳動分散液が封入され、これらの一対の電極間に電圧を印加して電気泳動分散液に電界を作用させることにより、電気泳動分散液中の電気泳動粒子の分布状態を変化させ、電気泳動分散液が呈する色相のコントラストを変化させて表示が行われる。
【特許文献1】特開平1−86116号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、電気泳動分散液に電界を作用させてから電気泳動分散液のコントラストが変化して所定の表示が行われるまでに、比較的時間を要するため、上記電気泳動表示装置にあっては、表示を切り替えるべく一対の電極間に電圧を印加する表示切替タイミングと、実際に表示が切り替わるタイミングとの間にずれが生じるといった問題がある。
したがって、電気泳動表示装置を時刻表示装置として用いる場合には、時刻表示を切り替えるべく一対の電極間に電圧を印加したタイミングから、実際に時刻表示が切り替わるまでにずれが生じ、時刻を正確に表示できないといった問題がある。
このような問題は、電気泳動表示装置に限らず、時刻表示を切り替えるための信号を出力してから、実際に時刻表示が切り替わるまでに遅延を生じる時刻表示装置に共通する問題である。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、時刻表示を切り替えるための制御信号を出力してから、実際に時刻表示が切り替わるまでに時間を要する場合でも、時刻を正確に表示することのできる時刻表示装置、電子機器および制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために、本発明は、時刻を表示する表示部を備えた時刻表示装置において、時刻を計時する時刻計時手段と、前記時刻計時手段の計時動作に基づいて前記表示部に時刻表示の切り替え信号を出力する時刻表示切替指示手段とを備え、前記時刻表示切替指示手段は、前記表示部のコントラストが所定のコントラストに達するまでに要する時間分だけ早めたタイミングで前記表示部に対して時刻表示の切り替え信号を出力することを特徴とする時刻表示装置を提供する。
この時刻表示装置によれば、表示部のコントラスト変化に時間を要する場合であっても、前記表示部のコントラストが所定のコントラストに達するまでに要する時間分だけ早めたタイミングで前記表示部に対して時刻表示の切り替え指示が出力される。これにより、実際の時刻の切り替わるタイミングでは、時刻表示が切り替わった後の時刻表示がなされるため、時刻を正確に表示することができる。
【0005】
ここで、上記時刻表示装置において、前記所定のコントラストは約50%〜約100%の間であることが望ましい。
この望ましい構成によれば、コントラストが約50%〜約100%であれば十分な視認性が得られるため、実際の時刻の切り替わり時に、時刻表示の切り替わりをユーザに確実に視認させることができる。
また、上記時刻表示装置において、前記時刻計時手段は、所定周波数の信号を出力する発振回路と、前記所定周波数の信号を分周して、少なくとも計時用の1Hzの周波数を含む複数の周波数のクロック信号を出力可能な分周回路とを備え、前記表示切替指示手段は、前記分周回路が出力可能な周波数のうち、前記表示部のコントラストが所定のコントラストに達するまでに要する時間に最も近い周期の周波数のクロック信号に基づくタイミングで前記表示部に対して時刻表示の切り替え信号を出力する構成が望ましい。
この望ましい構成によれば、計時動作と表示切替指示の出力動作とを1つの発振回路が出力する信号に基づいて実行可能になるため、装置コストの抑制、省スペース化、および、省電力化を図ることができる。さらに、時刻計時手段および表示切替指示手段がそれぞれ同一の発振回路が出力する信号に基づくタイミングで動作するため、時刻計時手段と表示切替指示手段との間で同期がとられ、同期をとるための手段を別途設ける必要がない。
【0006】
また、上記時刻表示装置において、前記表示部は、前記時刻を表示する表示パネルと、前記時刻表示切替指示手段からの駆動信号に基づいて前記表示パネルを駆動する駆動回路とを備え、前記駆動回路が通常オフ状態とされるとともに、前記時刻表示切替指示手段が、前記時刻表示の切り替えを指示するタイミングよりも、前記駆動回路が安定動作するまでに要する時間分だけ早いタイミングで前記駆動回路に対して前記駆動信号を出力する構成が望ましい。
この望ましい構成によれば、駆動回路を間欠動作させることが可能となるため、省電力化を図ることができる。また、駆動回路が時刻表示を切り替えるべく表示パネルを駆動すべきタイミングよりも前もって起動されるため、駆動回路が安定動作するのに十分な時間が確保され、時刻表示切り替えるための表示パネルの駆動動作を駆動回路に確実に実行させることができる。
【0007】
ここで、上記時刻表示装置において、コントラストを変化させて時刻を表示する表示部の一態様としては電気泳動ディスプレイなどがある。
また、上記時刻表示装置は電子機器の表示部に組み込まれて実施することが可能である。
【0008】
また、上記目的を達成するために、本発明は、時刻を表示する表示部を備えた時刻表示装置の時刻表示を制御する制御方法において、時刻の計時動作に基づいて前記表示部の時刻表示を切り替える際に、前記表示部のコントラストが所定のコントラストに達するまでに要する時間分だけ早めたタイミングで前記表示部に対して時刻表示の切り替え信号を出力することを特徴とする制御方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、表示部のコントラストが所定のコントラストに達するまでに要する時間分だけ早めたタイミングで前記表示部に対して時刻表示の切り替え指示が出力される構成であるため、実際の時刻の切り替わるタイミングでは、時刻表示が切り替わった後の時刻表示がなされることになるから、時刻を正確に表示することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の説明では、本発明に係る時刻表示装置を電子機器の一態様たる腕時計に適用した場合を説明する。
図1は、本実施の形態に係る腕時計1の外観構成を示す図である。この図に示すように、腕時計1は、時計ケース体2と、この時計ケース体2に取り付けられ、ユーザの手首に巻き付けられる一対の時計バンド3とを備えている。時計ケース体2は正面に時刻を表示するための時刻表示窓4が形成され、時刻を表示する表示パネル22を時刻表示窓4から視認可能に構成されている。また、時刻表示窓4には透明樹脂や透明ガラス等から形成されたカバー体7が嵌め込まれて表示パネル22が保護されている。さらに、時計ケース体2の側面には、時刻修正などの各種操作のための操作ボタン5が複数配設されている。
【0011】
図2は、時計ケース体2に内蔵された時刻表示回路(時刻表示装置)の基板構成を模式的に示す図である。この図に示すように、時刻表示回路10は、表示パネル基板20と制御回路基板30との2つの回路基板を備えている。表示パネル基板20は、回路基板20A上に表示パネル22が設けられて構成されている。表示パネル22は7つのセグメント40Aを有して構成され、0〜9の数字を表示する7セグメント41が2つずつ2組配列され、一方の組の7セグメント41により時刻の「時」が表示され、他方の組の7セグメント41により「分」が表示される。また、7セグメント41の組のそれぞれの間には、「時」、「分」の区切りを示す、いわゆるコロンを表示するための正面視円形のセグメント40Bが縦に2つ配置されている。本実施の形態では、表示パネル22に電気泳動ディスプレイパネルが用いられているが、その詳細な構成については後述することにする。また、以下の説明において、セグメント40A、40Bのそれぞれを特に区別する必要がないときは、セグメント40と表記する。
【0012】
制御回路基板30は、腕時計1の各部に電力を供給する電源13と、腕時計1の各部を制御する制御用コントローラ14と、表示パネル22の表示制御を実行するドライバIC(駆動回路)15と、スイッチ端子16と、水晶発振回路17と、分周回路18とのそれぞれが回路基板30A上に配設されて構成され、上記表示パネル22とドライバIC15とを備えて表示部が構成されている。電源13には通常の一次電池であるボタン電池が用いられており、回路基板30A上には、ソケットが配設され、このソケットにボタン電池が着脱自在に装着される。制御用コントローラ14は、いわゆるマイクロコンピュータとして構成されており、図示しないMPU、ROM、RAMなどを備え、ROMに予め格納された制御プログラムに基づいてMPUが処理動作を行うことで、腕時計1の各部を制御する。水晶発振回路17は周波数32768Hzのクロック信号を生成して分周回路18に出力するものであり、分周回路18はクロック信号を分周して計時用の1Hzの計時用クロック信号を生成し制御用コントローラ14に出力する。制御用コントローラ14は、この計時用クロック信号に基づいて計時動作を実行する。また、分周回路18からは1Hzの計時用クロック信号の他にも、各種周波数のクロック信号が制御用コントローラ14に出力される。
【0013】
スイッチ端子16は、回路基板30A上に形成された接点端子であり、上記操作ボタン5が押下されたときに導通してオンとなり、オン信号が制御用コントローラ14に入力される。制御用コントローラ14は、操作ボタン5が操作されてオン信号が入力されると、その操作に対応した、例えば時刻修正動作などの各種動作を実行する。ドライバIC15は、制御用コントローラ14の計時動作に基づいて、表示パネル22に現在時刻を表示させるための表示制御を実行するものである。表示パネル基板70および制御回路基板80はそれぞれ個別に製造され、一端に設けられたコネクタ24により互いに接続されて時刻表示回路10を構成する。このようにして構成された時刻表示回路10は、コネクタ24近傍から2つ折にされて、時計ケース体2の時刻表示窓4に表示パネル22が臨むように、この時計ケース体2に収容される。
【0014】
ついで、上記表示パネル22の構成について図3および図4を参照して説明する。
図3は表示パネル22の断面図であり、図4は表示パネル22のセグメント40部分を拡大して示す断面図である。なお、図3においては、表示パネル22と共に時計ケース体2およびカバー体7を仮想線にて示している。また、図3および図4においては、透明電極にのみ斜線を入れ、その他の部材については図面が複雑になるのを避けるため斜線を省略する。
上述の通り、表示パネル22には電気泳動ディスプレイパネルが用いられ、図3に示すように、表示パネル22は、一対の透明電極50およびセグメント電極51と、これら透明電極50およびセグメント電極51の間に挟み込まれて配置された複数のマイクロカプセル53とを有している。そして、各マイクロカプセル53には電気泳動分散液60(図4参照)が封入されている。上記セグメント電極51は上記表示パネル22のセグメント40ごとに設けられた電極であり、これらのセグメント電極51がフレキシブル基板54上に形成されている。また、上記透明電極50は透明なガラス基板55上に例えばITO(Indium-Tin Oxide)を蒸着して形成された透明な電極であり、上記セグメント電極51と対向して配置される。この透明電極50は全てのセグメント電極51にまたがる1枚の電極として構成され、フレキシブル基板54上に設けられた共通電極56に接続されて、この共通電極56と同電位に維持される。
このような構成の表示パネル22を時計ケース体2に収容する際には、ガラス基板55および透明電極50が時計ケース体2の上面、すなわち、時刻表示窓4が形成された側に位置するように収容される。したがって、時刻表示窓4からは、ガラス基板55および透明電極50を介してマイクロカプセル53が呈する表示色が視認されることとなる。
なお、上記共通電極56は時刻表示窓4から見え難くするために、カバー体7の直下ではなく、図3に示すように、時計ケース体2の上面に覆われる位置に配設することが望ましい。
【0015】
さて、上記共通電極56と各セグメント電極51には、フレキシブル基板54に配設(プリント)された図示せぬ電気配線を介して、制御回路基板80側に設けられたドライバIC15から駆動電圧が供給され、マイクロカプセル53に封入された電気泳動分散液60に電界が付与される。マイクロカプセル53内の電気泳動分散液中には、図4に示すように、電気泳動粒子として青色に着色された青粒子61が分散されている(いわゆる1粒子系)。この青粒子61はプラス極性に帯電し、また、電気泳動分散液60が白色に着色されている。
【0016】
したがって、共通電極56が0V電位(アース電位)に保持されて透明電極50が0V電位とされるとともに、セグメント電極51にプラス電圧の駆動電圧が供給されてプラス電位とされた場合、セグメント電極51から透明電極50に向かう電界が発生し、図4に示すように、マイクロカプセル53内のプラスに帯電した青粒子61が透明電極50側に移動し、これに伴って、白色の電気泳動分散液60がセグメント電極51側に移動する。この結果、マイクロカプセル53が青色を呈するため、セグメント40が青を表示する。これとは逆に、共通電極56にプラス電圧の駆動電圧が供給されて透明電極50がプラス電位とされるとともに、セグメント電極51が0V電位に保持された場合には、プラスに帯電した青粒子61がセグメント電極51側に移動し、これに伴って、白色の電気泳動分散液60が透明電極50側に移動するため、結果として、マイクロカプセル53が白色を呈し、セグメント40が白を表示する。また、透明電極50とセグメント電極51との間に電位差を生じない場合には、青粒子61の移動が生じないため、セグメント40の表示色は変化せずに以前の状態が維持される。
【0017】
本実施の形態では、ドライバIC15が図示しない昇圧回路を内蔵し、電源13から供給される電圧(例えば3V)を昇圧して+12Vの電圧を生成して、この+12Vの電圧、或いは、0Vの電圧を駆動電圧としてセグメント電極51および共通電極56に供給している。具体的には、ドライバIC15は、セグメント40に青を表示させる際には、そのセグメント40のセグメント電極54に対して+12Vの駆動電圧を与えるとともに、共通電極56に対して0Vの駆動電圧を与える。これとは逆に、セグメント40に白を表示させる際には、そのセグメント40のセグメント電極54に対して0Vの駆動電圧を与えるとともに、共通電極56に対して+12Vの駆動電圧を与えることになる。
【0018】
ここで、透明電極50とセグメント電極51との間に電界が発生した場合、青粒子61の移動が電界の発生からすぐには完了せず、その移動にはある程度の時間を要する。すなわち、図5に示すように、マイクロカプセル53が呈する色の変化に伴うコントラスト変化を縦軸とした場合、透明電極50とセグメント電極51とに駆動電圧が出力されたタイミング(原点)から、コントラストがLOG(ログ)関数的に増加して略100%(飽和点)に達するまでには所定時間Tmaxを要することになる。したがって、時刻表示においては、例えば実際に時刻が切り替わるタイミング(ここでは「分」が切り替わるタイミング)と略同時に駆動電圧を透明電極50とセグメント電極51とに出力する構成であると、表示の切り替わりが、実際の時刻の切り替わりよりも遅くなってしまう。
【0019】
そこで本実施の形態では、次のようにして、時刻表示が正確な時間を表示するようにしている。すなわち、図6に示すように、実際の時刻において「分」が更新されるタイミングを分更新タイミングt0とした場合に、ドライバIC15が分更新タイミングt0よりも時間tsだけ早いタイミングt1で駆動電圧を出力する構成としている。
詳述すると、セグメント40の表示色の切り替わりの際に、コントラストが約50%〜約100%の範囲であれば、十分な視認性が保たれる。したがって、本実施の形態では、前掲図5に示す、セグメント40のコントラストが50%となる時間Thalfと、100%となる時間Tmaxとの間に上記時間tsが設定されている。より具体的には、本実施の形態では、水晶発振回路17から出力される周波数32768Hzのクロック信号を分周して得られる周波数fの周期T(=1/f)のうち、セグメント40のコントラストが50%に達するまでの時間Thalf以上であって、当該Thalfに最も近い時間に上記時間tsを設定している。
したがって、例えば、周波数fa=(32768/2n)Hz(但しnは0以上の整数)の周期Ta(例えば62.5msや125msなど)が上記時間Thalf以上であって、当該Thalfに最も近い場合、その周期Ta(=1/f)が時間tsとして決定される。そして、ドライバIC15は、このようにして決定された時間tsだけ分更新タイミングt0よりも早いタイミングt1で駆動電圧を出力する。
【0020】
次いで、本実施の形態の動作として、時刻表示切替動作時の動作について詳述する。
制御用コントローラ14は分周回路18から出力される1Hzの計時用クロック信号に基づいて、図示せぬ計時用カウンタをカウントアップさせて時刻の計時動作を実行する。そして、制御用コントローラ14は時刻の計時動作中に、分更新タイミングt0の1秒前のクロック信号、すなわち、前回の分更新タイミングt0から数えて59個目のクロック信号が入力されたときに、時刻表示の切り替えのための時刻表示切替動作を実行する。
具体的には、分更新タイミングt0から1秒前のタイミングt3に至ると、図7に示すように、制御用コントローラ14は、分周回路18から出力される上記周波数faのクロック信号(以下、表示切替用クロック信号という)CLが入力されるごとに図示せぬカウンタをカウントアップさせる。この表示切替用クロック信号CLは1秒間に周期Taでfa個出力され、制御用コントローラ14は、タイミングt3から数えてfa−1個目の表示切替用クロック信号CLfa−1が入力されたタイミングt2(=2Ta=2ts)でドライバIC15に対して起動指示制御信号Paを出力し、次いで、fa個目の表示切替用クロック信号CLfaが入力されたタイミングt1で表示切替制御信号(駆動信号)Pbを出力する。
【0021】
詳細には、ドライバIC15は、省電力化を図るために通常オフ状態となっており、上記起動指示制御信号Paが入力されることで起動する。そして、ドライバIC15は、表示切替制御信号(駆動信号)Pbが入力されたタイミングt1に至るまでに安定動作し、このタイミングt1、すなわち、分更新タイミングt0よりも周期Ta秒(=ts)早いタイミングt1で表示パネル22に対して駆動電圧を出力する。
このような動作の結果、駆動電圧が出力されたタイミングt1からセグメント40のコントラストが変化し始め、実際の時刻において分が切り替わる分更新タイミングt0に至ったときには、セグメント40のコントラストが約50%以上に達し、時刻表示切り替え後の時刻が表示され、実際の時刻が正確に表示されることとなる。
【0022】
このように、本実施の形態によれば、表示パネル22のコントラスト変化に時間を要する場合であっても、表示パネル22のコントラストが約50%に達するまでに要する時間Thalfに近い時間tsだけ早めたタイミングt1で、ドライバIC15に対して時刻表示の切り替えのための表示切替制御信号が制御用コントローラ14から出力される。これにより、実際の時刻の切り替わるタイミングt1では、時刻表示が切り替わった後の時刻表示がなされるため、時刻を正確に表示することができる。
【0023】
また、本実施の形態によれば、上記時間tsをコントラストが約50%〜約100%の間となるように設定したため、実際の時刻の切り替わり時に、時刻表示が十分視認可能となり、時刻表示の切り替わりをユーザに確実に視認させることができる。
また、本実施の形態によれば、水晶発振回路17から出力される信号を分周して得られるクロック信号に基づいて、制御用コントローラ14が計時動作と表示切替指示の出力動作と行うため、計時動作用のクロックを生成する発振器と、表示切替指示の出力動作用のクロックを生成する発振器とを個別に設ける必要がなく、装置コストの抑制、省スペース化、および、省電力化を図ることができる。
さらに、1つの水晶発振回路17が出力する信号に基づくタイミングで、制御用コントローラ14が計時動作と表示切替指示の出力動作と行うため、各々の動作の間で同期が図られ、同期をとるための手段を別途設ける必要がない。
【0024】
また、本実施の形態によれば、ドライバIC15が通常オフとなり間欠動作されるため、省電力化を図ることができる。また、ドライバIC15が時刻表示を切り替えるべく表示パネル22を駆動すべきタイミングt1よりも前もって起動されるため、ドライバIC15が安定動作するのに十分な時間が確保され、時刻表示切り替えるための表示パネル22の駆動動作をドライバIC15に確実に実行させることができる。
【0025】
なお、上述した実施の形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の範囲内で任意に変形および応用が可能である。
例えば、上述した実施の形態では、セグメント40(マイクロカプセル53)のコントラスト変化がLOG関数的に変化する場合を例示したが、コントラスト変化の傾向は、電気泳動分散液60や青粒子61の材質の性質に基づいて変化し、例えば、図8に示すように、コントラストが時間に対してリニアに変化する場合もある。この場合においても、セグメント40のコントラストが約50%となる時間Thalfと、約100%となる時間Tmaxとの間の時間、例えば、コントラストが約50%に達する時間Thalfを上記時間tsに設定すれば良い。
【0026】
また、上述した実施の形態では、電気泳動ディスプレイの構成として、マイクロカプセル53内に、プラスに帯電した青粒子61を白色に着色された電気泳動分散液60中に分散された、いわゆる1粒子系の構成を例示したが、これに限らない。
例えば、第1色(例えば黒色)に着色されるとともに第1極性(例えばプラス極性)に帯電された第1粒子と、この第1粒子と異なる極性(例えばマイナス極性)に帯電するとともに第2色(例えば白色)に着色された第2粒子とを電気泳動分散液60に分散した、いわゆる2粒子系の構成としても良い。
また例えば、マイクロカプセル53に電気泳動分散液60を封入する構成に限らず、各セグメント40を密閉構造として、それぞれのセグメント40に電気泳動分散液60を注入する構成としても良い。
【0027】
また、上述した実施の形態では、表示パネル22に複数のセグメント40を設けて時刻を表示する構成について例示したが、これに限らず、上記セグメント40に相当する画素を例えばマトリクス状に複数配列して表示パネル22を構成しても良い。
また、上述した実施の形態では、表示パネル22に電気泳動ディスプレイを用いた場合を例示したが、本発明は、コントラスト変化に時間を要する種類のディスプレイであれば、任意のディスプレイに適用可能である。
【0028】
また例えば、上述した実施の形態では、本発明に係る時刻表示装置を腕時計の表示部に適用した場合を例示したが、他の電子機器の表示部にも適用可能である。例えば、携帯電話機或いは固定電話機の表示部、電子ペーパの表示部などにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の形態に係る腕時計の外観構成を示す上面図である。
【図2】時刻表示回路の構成を示す平面図である。
【図3】表示パネルの構成を示す断面図である。
【図4】セグメントの構成を示す断面図である。
【図5】セグメントのコントラストの変化特性を示す図である。
【図6】時刻表示切替指示のタイミングを説明するための図である。
【図7】時刻表示切替動作を説明するための図である。
【図8】その他のコントラストの変化特性を示す図である。
【符号の説明】
【0030】
1…腕時計、10…時刻表示回路(時刻表示装置)、14…制御用コントローラ、15…ドライバIC(駆動回路)、17…水晶発振回路、18…分周回路、20…表示パネル基板、22…表示パネル、30…制御回路基板、40、40A、40B…セグメント、53…マイクロカプセル、CL…表示切替用クロック信号、Pb…表示切替制御信号。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
時刻を表示する表示部を備えた時刻表示装置において、
時刻を計時する時刻計時手段と、
前記時刻計時手段の計時動作に基づいて前記表示部に時刻表示の切り替え信号を出力する時刻表示切替指示手段とを備え、
前記時刻表示切替指示手段は、
前記表示部のコントラストが所定のコントラストに達するまでに要する時間分だけ早めたタイミングで前記表示部に対して時刻表示の切り替え信号を出力する
ことを特徴とする時刻表示装置。
【請求項2】
前記所定のコントラストは約50%〜約100%の間であることを特徴とする請求項1に記載の時刻表示装置。
【請求項3】
前記時刻計時手段は、
所定周波数の信号を出力する発振回路と、
前記所定周波数の信号を分周して、少なくとも計時用の1Hzの周波数を含む複数の周波数のクロック信号を出力可能な分周回路とを備え、
前記表示切替指示手段は、
前記分周回路が出力可能な周波数のうち、前記表示部のコントラストが所定のコントラストに達するまでに要する時間に最も近い周期の周波数のクロック信号に基づくタイミングで前記表示部に対して時刻表示の切り替え信号を出力する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の時刻表示装置。
【請求項4】
前記表示部は、
前記時刻を表示する表示パネルと、
前記時刻表示切替指示手段からの駆動信号に基づいて前記表示パネルを駆動する駆動回路とを備え、
前記駆動回路が通常オフ状態とされるとともに、
前記時刻表示切替指示手段が、前記時刻表示の切り替えを指示するタイミングよりも、前記駆動回路が安定動作するまでに要する時間分だけ早いタイミングで前記駆動回路に対して前記駆動信号を出力する
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の時刻表示装置。
【請求項5】
前記表示部は電気泳動ディスプレイを備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の時刻表示装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の時刻表示装置を備えたことを特徴とする電子機器。
【請求項7】
時刻を表示する表示部を備えた時刻表示装置の時刻表示を制御する制御方法において、
時刻の計時動作に基づいて前記表示部の時刻表示を切り替える際に、前記表示部のコントラストが所定のコントラストに達するまでに要する時間分だけ早めたタイミングで前記表示部に対して時刻表示の切り替え信号を出力する
ことを特徴とする制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−243447(P2006−243447A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−60216(P2005−60216)
【出願日】平成17年3月4日(2005.3.4)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】