説明

時計装置、時計システム、同期方法、時計装置制御プログラム、および通信装置

【課題】複数の通信装置が通信を行う通信システムを構成する通信装置において、時刻検知を各通信装置において同時に行うこと無く、各通信装置の装置時刻を同期する。
【解決手段】通信システムは、第1の装置時刻を計時する上位時計111と、第1の装置時刻と第1の参照時刻とをほぼ同時に検知する時刻検知部113と、検知された第1の装置時刻と第1の参照時刻とを非クロックマスタへ送信する送信部123とを備えたクロックマスタである通信装置100と、第2の装置時刻を計時する上位時計211と、第1の参照時刻に同期している第2の参照時刻と第2の装置時刻とをほぼ同時に検知する時刻検知部214と、第1の装置時刻と第1の参照時刻とを受信する受信部223と、第2の装置時刻と第2の参照時刻と第1の装置時刻と第1の参照時刻とに基づき上位時計211を調整する調整部214とを備えた非クロックマスタである通信装置200とで構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計装置間において時刻の同期を行う、時計装置、時計システム、時計装置制御プログラム、および記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、複数の端末装置を備えた通信ネットワークが知られている。図6は、このような通信ネットワークの一例を示した図である。同図では、通信ネットワーク40は、端末装置1、端末装置2、および端末装置3から構成されている。また、端末装置1は通信装置10を、端末装置2は通信装置20を、端末装置3は通信装置30を、それぞれ備えている。
【0003】
端末装置1が端末装置2および端末装置3に対し、映像データや音声データ等の実時間性の保証が要求されるストリームデータを送信する状況を考える。各通信装置10・20・30は、映像データや音声データを再生する際に参照する時計を持っているが、その時計の時刻は、水晶発信器の持つ精度の範囲内で揺らぐのが普通である。
【0004】
仮に水晶発信器の発振周波数がその公称値を持つときの時刻の刻み具合を標準時刻と呼ぶ場合、図7に示すとおり、通信装置10・20・30が持つ時計の時刻の実際の刻み具合は、標準時刻の刻み具合よりも、速かったり、または、遅かったりする。また、通信装置10・20・30の時計の時刻の刻み具合は、通常、各通信装置10・20・30によりそれぞれ異なる。それゆえ、図8に示すとおり、各通信装置10・20・30間では、装置の時刻が相違してしまう。
【0005】
なお、これらの端末装置1・2・3は、映像データや音声データを扱うAV(Audio Visual)機器であっても良く、例えば通信ネットワークに対応した、音響機器、テレビ受像器、ホームシアター、プロジェクタなどである。
【0006】
しかしながら、各端末装置1・2・3間で装置の時刻が異なると不都合が生じる場合がある。例えば、ある動画コンテンツを再生する際に、その動画コンテンツを保存している通信装置10から、映像データを通信装置20に対してリアルタイムに伝送して再生し、音声データを通信装置30に対してリアルタイムに伝送して再生する状況を考えると、通信装置20の時刻と通信装置30の時刻とをお互いに高い精度で同期させる必要があることは明らかである。
【0007】
これを実現するための具体的な方法として、通信装置20の時刻と通信装置30の時刻との双方を通信装置10の時刻に対して同期させる方法、通信装置30の時刻を通信装置20の時刻に対して同期させる方法、通信装置20の時刻を通信装置30の時刻に対して同期させる方法、などが考えられる。
【0008】
なお、以下では、「端末装置の時計」と記した場合には、端末装置内の通信装置の時計を示すものとする。
【0009】
また、通信装置の通信機能は、通常、複数の層(プロトコルスタック)により実現されている。それぞれの層は、別個独立した時計を持つ場合がある。例えば、図9に示すように、通信装置10および通信装置20は、上位層11・21および下位層12・22の二つの層を備え、それぞれの層に時計が設けられている。
【0010】
下位層12・22の時計と上位層11・21の時計とは、別の目的に用いられているため、通常お互いに同期していないが、同じ層にある時計同士は同期している必要がある。つまり、上位層11の時計と上位層21の時計とは、互いに同期している必要があり、下位層12の時計と下位層22の時計とも、互いに同期している必要があるが、上位層11の時計と下位層12の時計とは、通常同期していない。
【0011】
IEEE802.11規格に従った無線LAN(Local Area Network)上において、上位層同士が互いに同期を取る方法としては、特許文献1に開示された技術がある。なお、この技術では、無線LAN層が下位層となる。上位層は、上位層独自の時計を備えており、その時計を互いに同期させる方法として、一つの通信装置を、上位層レベルにおけるクロックマスタとする方法を採用している。
【0012】
図10に示すように、クロックマスタは、定期的に自局時計をサンプリングし、サンプリングにより取得した時刻を、同期用のマルチキャストフレーム(フレームの識別子情報をnと記す)に入れ、時刻を共有したい他の通信装置に対し、送信する。
【0013】
クロックマスタは、自局が同期用マルチキャストフレームの最後尾部を送信または受信した瞬間のタイミングを知ることができ、その瞬間における上位層の時計の時刻(tTX[n]と記す)を記録する。
【0014】
また、非クロックマスタである他の通信装置は、同フレームの最後尾部を受信した瞬間のタイミングを知ることができ、その瞬間における上位層の時計の時刻(tRX[n]と記す)を記録する。
【0015】
なお、無線LAN層が、上記のフレームの最後尾部を送信または受信したタイミングを上位層に対して精度良く通知出来るように、通信装置を設計しておく必要がある。
【0016】
クロックマスタは、自局が前回送付した同期用のマルチキャストフレームの識別子情報nと時刻tTX[n]とを、次の同期用マルチキャストフレーム(フレームの識別子情報はn+1)に入れ、非クロックマスタに対し、送信する。
【0017】
非クロックマスタは、識別子情報が(n+1)である同期用マルチキャストフレームを受信した際に、その中に埋め込まれている時刻tTX[n]と、自局が保持している時刻tRX[n]とを比較することにより、識別子情報がnである同期用マルチキャストフレームを送信または受信した瞬間における両局の上位層の時計の時刻を比較することが出来る。
【0018】
マルチキャストフレームは、送達確認(ACK)を伴わない手法で送信されるので、両局が同フレームを送信または受信した時刻は、ほぼ同じであると想定出来る。従って、この二つの時刻の比較により、非クロックマスタ局は、自局の時計の時刻がクロックマスタの時計の時刻に対して早いか遅いかを知ることができ、それをもとに自局の時計の時刻をクロックマスタの時計の時刻に合わせる調整を行うことが出来る。
【特許文献1】米国特許出願公開第2003/0172179号明細書(2003年9月11日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
しかしながら、特許文献1において開示された同期方式をIEEE802.11eに用いる場合、無線LAN層においてマルチキャストフレームを送信出来る通信装置は、中央局であるAP(Access Point)に限定されている。
【0020】
このため、クロックマスタがAPでは無い場合、クロックマスタは、まず最初に同期用マルチキャストフレームをAPに伝送し、次にAPは受信したフレームを全局に対し、マルチキャストし直す必要があった。つまり、通信は二回に分けて行うことになり、そのための帯域が無駄になるという課題がある。
【0021】
また、特許文献1の同期方式を用いた場合、下位層であるMAC層では、この方式で用いる特殊なマルチキャストフレームを、他のフレームから区別して即時に上位層に知らせる機能が要求される。従って、MAC層は、この特殊なマルチキャストフレームを認識する必要がある。
【0022】
ところで、ネットワークAV機器は、複数のブロックから構成されていて、ネットワークAV機器の上位層に接続されているブロックとしては、例えば下位層とAV層がある。AV層は、例えばMPEG(Moving Picture Experts Group)などAVの処理を行う層である。各ブロックの技術は異なるため、各ブロックは、通常、別々のメーカにより作成される。
【0023】
このため、特許文献1の同期方式を実現する場合、上位層は、他のメーカにより作成された下位層を使うが、この下位層は、特許文献1の同期方式に対応した下位層である必要がある。
【0024】
しかしながら、唯一この機能を実現する可能性があるMAC層は、IEEE802.11e準拠のチップセットである。しかし、この機能はIEEE802.11e規格ではオプションのため、実現される可能性は低い。また、IEEE802.11e以外の標準規格ではこの機能は定義されていないため、例えばPLC(Power Line Communication)などで実現される可能性は無いに等しい。
【0025】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、複数の時計装置が通信を行う時計システムを構成する時計装置において、時刻検知を各時計装置において同時に行うこと無く、各時計装置の装置時刻を同期することが出来る時計装置、時計システム、同期方法、時計装置制御プログラム、および時計装置制御プログラムを記録した記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0026】
(A)本発明に係る時計装置は、上記の課題を解決するために、クロックマスタである時計装置において、自装置の時刻である第1の装置時刻を計時する第1の装置時刻計時手段と、非クロックマスタの参照する第2の参照時刻と同期している第1の参照時刻と、前記第1の装置時刻とをほぼ同時に検知する時刻検知処理を行う第1の時刻検知手段と、検知された前記第1の装置時刻と前記第1の参照時刻とを、前記非クロックマスタへ送信する送信手段とを備えたことを特徴とする。
【0027】
また、本発明に係る通信装置は、上記の課題を解決するために、クロックマスタの第1の装置時刻と自装置の時刻である第2の装置時刻とを同期する、非クロックマスタである時計装置において、前記第2の装置時刻を計時する第2の装置時刻計時手段と、クロックマスタの参照する第1の参照時刻に同期している第2の参照時刻と、前記第2の装置時刻とをほぼ同時に検知する時刻検知処理を行う第2の時刻検知手段と、クロックマスタから送信された、前記第1の装置時刻と前記第1の参照時刻とを受信する受信手段と、検知された、前記第2の装置時刻および前記第2の参照時刻と、受信された、前記第1の装置時刻および前記第1の参照時刻とに基づいて、前記第2の装置時刻を調整する時刻調整手段とを備えたことを特徴とする。
【0028】
また、本発明に係る時計システムは、上記の課題を解決するために、クロックマスタである時計装置であって、自装置の時刻である第1の装置時刻を計時する第1の装置時刻計時手段と、非クロックマスタの参照する第2の参照時刻と同期している第1の参照時刻と、前記第1の装置時刻とをほぼ同時に検知する時刻検知処理を行う第1の時刻検知手段と、検知された前記第1の装置時刻と前記第1の参照時刻とを、前記非クロックマスタへ送信する送信手段とを備えた時計装置と、クロックマスタの第1の装置時刻と自装置の時刻である第2の装置時刻とを同期する、非クロックマスタである時計装置であって、前記第2の装置時刻を計時する第2の装置時刻計時手段と、クロックマスタの参照する第1の参照時刻に同期している第2の参照時刻と、前記第2の装置時刻とをほぼ同時に検知する時刻検知処理を行う第2の時刻検知手段と、クロックマスタから送信された、前記第1の装置時刻と前記第1の参照時刻とを受信する受信手段と、検知された、前記第2の装置時刻および前記第2の参照時刻と、受信された、前記第1の装置時刻および前記第1の参照時刻とに基づいて、前記第2の装置時刻を調整する時刻調整手段とを備えた時計装置とを含んで構成されることを特徴とする。
【0029】
また、本発明に係る時計装置の同期方法は、上記の課題を解決するために、クロックマスタの時刻である第1の装置時刻と、非クロックマスタの時刻である第2の装置時刻とを同期させる同期方法において、クロックマスタである時計装置において実行される、第1の装置時刻計時手段が、前記第1の装置時刻を計時する第1の装置時刻計時ステップと、第1の時刻検知手段が、非クロックマスタの参照する第2の参照時刻と同期している第1の参照時刻と、前記第1の装置時刻とをほぼ同時に検知する第1の時刻検知ステップと、送信手段が、検知された前記第1の装置時刻と前記第1の参照時刻とを、前記非クロックマスタへ送信する送信ステップと、非クロックマスタである時計装置において実行される、第2の装置時刻計時手段が、前記第2の装置時刻を計時する第2の装置時刻計時ステップと、第2の時刻検知手段が、前記第2の参照時刻と、前記第2の装置時刻とをほぼ同時に検知する第2の時刻検知ステップと、受信手段が、前記第1の装置時刻と前記第1の参照時刻とを受信する受信ステップと、時刻調整手段が、検知された、前記第2の装置時刻および前記第2の参照時刻と、受信された、前記第1の装置時刻および前記第1の参照時刻とに基づいて、前記第2の装置時刻を調整する時刻調整ステップとを含んだことを特徴とする。
【0030】
クロックマスタは、第1の装置時刻計時手段、第1の時刻検知手段、および送信手段から構成されている。第1の時刻検知手段が、第1の装置時刻計時手段が表す第1の装置時刻と第1の参照時刻とをほぼ同時に検知する。第1の時刻検知手段は、検知した両方の時刻を、送信手段を介して非クロックマスタに伝送する。
【0031】
非クロックマスタは、第2の装置時刻計時手段、第2の時刻検知手段、受信手段、および時刻調整手段から構成されている。第2の時刻検知手段は、第2の装置時刻計時手段が表す第2の装置時刻と第2の参照時刻とをほぼ同時に検知する。また、受信手段は、クロックマスタにより送信された第1の装置時刻および第1の参照時刻を受信する。
【0032】
ここで、ほぼ同時とは、第1の装置時刻と第1の参照時刻との検知が完全に同時に行われる場合と、第2の装置時刻と第2の参照時刻との検知が完全に同時に行われる場合と、一方の時刻を検知した直後に他方の時刻を検知する、検知時刻に微小なずれがある場合とを含んでいる。
【0033】
上記の構成または方法において、時刻調整手段は、受信された、第1の装置時刻および第1の参照時刻と、検知された、第2の装置時刻および第2の参照時刻とを用いて、第2の装置時刻計時手段の時刻の調整を行う。なお、第1の参照時刻と第2の参照時刻とは同期している。
【0034】
当該構成においては、第1の参照時刻を検知するタイミングと第1の装置時刻を検知するタイミングとを対応させ、第2の参照時刻を検知するタイミングと第2の装置時刻を検知するタイミングとを対応させている。
【0035】
なお、第1の参照時刻を検知するタイミングと第1の装置時刻を検知するタイミングとは同時であることが理想的であるが、システムにより多少ずれが生じる場合がある。
【0036】
ここで、第1の装置時刻の検知タイミングと第2の装置時刻の検知タイミングとの時間差は、第1の参照時刻の検知タイミングと第2の参照時刻の検知タイミングとの時間差TDに近い値になる。
【0037】
従って、第1の装置時刻と第2の装置時刻とは同時に検知されないが、時間差TDを、検知した第1の装置時刻および第2の装置時刻に反映することにより、第1の装置時刻と第2の装置時刻とを同時に検知する、特許文献1に記載の従来技術と同様の結果を得ることが出来る。
【0038】
上記の構成によれば、第1の装置時刻と第2の装置時刻との同期には、第2の参照時刻と第1の参照時刻との差を用いるので、上記従来技術とは異なり、第1の装置時刻と第2の装置時刻とを同時に検知する必要が無いという効果を奏する。
【0039】
そして、第1の装置時刻と第2の装置時刻とを同時に検知する必要が無いので、上記従来技術の同期方式において同時サンプリングを行うために用いられたマルチキャストフレームが不要になるという効果も奏する。
【0040】
さらに、マルチキャストフレームが不要、すなわち、第1の装置時刻および第1の参照時刻をクロックマスタから非クロックマスタへ伝送するために使用するフレームは、マルチキャストフレームである必要は無いので、伝送方式にIEEE802.11e規格を用いた場合でも、第1の装置時刻および第1の参照時刻を、ユニキャストフレームを用いて伝送することが出来る。
【0041】
すなわち、APを介して二回に分けて伝送する従来方式とは異なり、APを通さずに一回で伝送することが出来るので、非クロックマスタが一台の場合、本発明に係る同期方式は、IEEE802.11e規格に準拠した無線LANにおいて、より少ない帯域を利用して同期を行うことが出来るという効果を奏する。
【0042】
(B)また、本発明の時計装置では、上記構成に加えて、前記時刻調整手段は、前記第2の装置時刻計時手段の調整を、以下の式、
調整値=(第2の装置時刻−第1の装置時刻)−(第2の参照時刻−第1の参照時刻)
により求まる調整値により行うことを特徴とする。
【0043】
上記の構成によれば、時刻調整手段は、第1の装置時刻、第2の装置時刻、第1の参照時刻、および第2の参照時刻の4つの時刻情報を取得するので、第2の装置時刻計時手段の調整を上記の式に基づき一意に求められる調整値により調整することが出来るという効果を奏する。
【0044】
(C)また、本発明の時計装置では、上記構成に加えて、前記時刻調整手段は、前記第1の装置時刻と前記第2の装置時刻とのずれが所定値を超える場合は、前記第2の装置時刻計時手段の現在時刻として、受信された前記第1の装置時刻を設定し、前記第1の装置時刻と前記第2の装置時刻とのずれが前記所定値以下の場合は、ずれの度合いに応じて前記装置時刻計時手段の計時速度を速めるか遅らせる度合いを調整することを特徴とする。
【0045】
当該構成において、時刻調整手段は、第1の装置時刻と第2の装置時刻とのずれが所定値を超えている場合、クロックマスタと非クロックマスタとの同期が外れていると判断し、クロックマスタに対して、第1の装置時刻および第1の参照時刻を送るように通知する。時刻調整手段は、受信した第1の参照時刻と第1の装置時刻とを用いて、第2の装置時刻計時手段の現在あるべき時刻を求め、求めた現在時刻を第2の装置時刻計時手段に直接設定する。
【0046】
また、時刻調整手段は、第1の装置時刻と第2の装置時刻とのずれが前記所定値以下の場合、クロックマスタと非クロックマスタとの同期がとれていると判断し、クロックマスタに対して、検知した第1の参照時刻と第1の装置時刻との差分を送るように通知する。時刻調整手段は、受信した差分を用いて、第2の装置時刻計時手段の進み具合を微調整する。
【0047】
上記の構成によれば、第1の装置時刻と第2の装置時刻との同期が外れている場合には、第1の装置時刻を第2の装置時刻計時手段に直接設定するので、同期を素早く行うことが出来るという効果を奏する。
【0048】
また、第1の装置時刻と第2の装置時刻とが同期している場合には、第2の装置時刻計時手段の計時速度を速めたり遅めたりして微調整し同期を保つことが出来るという効果を奏する。
【0049】
(D)また、本発明の時計装置は、上記構成に加えて、前記第1の参照時刻を計時する第1の参照時刻計時手段を備え、前記第1の時刻検知手段は、前記第1の参照時刻計時手段から第1の参照時刻を検知することを特徴とする。また、前記第2の参照時刻を計時する第2の参照時刻計時手段を備え、前記第2の時刻検知手段は、前記第2の参照時刻計時手段から第2の参照時刻を検知するたことを特徴とする。
【0050】
当該構成において、本発明の同期技術を用いて非クロックマスタをクロックマスタに同期させるためには、クロックマスタの第1の参照時刻計時手段と非クロックマスタの第2の参照時刻計時手段とが同期している必要がある。下位層となる、無線LAN、PLC、またはイーサネット(登録商標)の規格では、それぞれの局において、同期した時計を有することが、その規格上に規定されている。従って、第1の装置時刻計時手段および第2の装置時刻計時手段を上位層の時計とした場合、第1の参照時刻計時手段および第2の参照時刻計時手段として、下位層の規格上の時計を利用することが出来る。
【0051】
この場合、第1の参照時刻と第1の装置時刻との検知を行う第1の時刻検知手段と、第2の参照時刻と第2の装置時刻との検知を行う第2の時刻検知手段とは、第1および第2の装置時刻計時手段と同じ上位層に備えられるため、上位層から第1および第2の参照時刻計時手段の時刻を検知する機能が必要となる。第1および第2の参照時刻は、通常、例えばPCI(Peripheral Component Interconnect)バスなどを介して上位層から参照出来るので、本発明に係る同期方式では、下位層には新たな機能備える必要が無い。
【0052】
これに対して、上記従来技術では、同期用の特殊なマルチキャストフレームを下位層が認識し、そのフレームの最後尾部分が送受信された時刻を上位層に知らせる機能が必要となる。この機能に対応した標準技術は、IEEE802.11e規格に規定されているが、この機能は規格上オプションとしての取り扱いであるため、この機能を実装した、無線LANのチップセットは少ないと思われる。
【0053】
上記の構成によれば、下位層に新たな機能備える必要が無いので、無線LAN、PLC、またはイーサネット(登録商標)など、幅広い種類の下位層を利用することが出来るという効果を奏する。
【0054】
(E)また、本発明の時計装置では、上記構成に加えて、前記送信手段は、前記第1の装置時刻と前記第2の装置時刻とのずれが所定値を超える場合は、前記第1の参照時刻および前記第1の装置時刻を前記非クロックマスタに送信し、前記第1の装置時刻と前記第2の装置時刻とのずれが前記所定値以下の場合は、前記第1の参照時刻と前記第1の装置時刻との差分を前記非クロックマスタに送信することを特徴とする。また、前記受信手段は、前記第1の装置時刻と前記第2の装置時刻とのずれが所定値を超える場合は、前記第1の参照時刻および前記第1の装置時刻を前記クロックマスタから受信し、前記第1の装置時刻と前記第2の装置時刻とのずれが前記所定値以下の場合は、前記第1の参照時刻と前記第1の装置時刻との差分を前記クロックマスタから受信することを特徴とする。
【0055】
当該構成において、時刻調整手段は、第1の装置時刻と第2の装置時刻とのずれが所定値を超えている場合、クロックマスタと非クロックマスタとの同期が外れていると判断し、クロックマスタに対して、第1の装置時刻および第1の参照時刻を送信手段を介して送るように通知する。時刻調整手段は、受信手段を介して受信した第1の参照時刻と第1の装置時刻とを用いて、第2の装置時刻計時手段の現在あるべき時刻を求め、求めた現在時刻を第2の装置時刻計時手段に直接設定する。
【0056】
また、時刻調整手段は、第1の装置時刻と第2の装置時刻とのずれが前記所定値以下の場合、クロックマスタと非クロックマスタとの同期がとれていると判断し、クロックマスタに対して、検知した第1の参照時刻と第1の装置時刻との差分を送るように送信手段を介して通知する。時刻調整手段は、受信手段を介して受信した差分を用いて、第2の装置時刻計時手段の進み具合を微調整する。
【0057】
上記の構成によれば、同期が取れている場合、伝送する情報は第1の参照時刻と第1の装置時刻との差分情報であるため、伝送する情報量を少なくすることが出来るという効果を奏する。
【0058】
(F)また、本発明の時計装置では、上記構成に加えて、前記第1の時刻検知手段は、前記第1の参照時刻を検知してから、前記第1の装置時刻を検知することを特徴とする。また、前記第2の時刻検知手段は、前記第2の参照時刻を検知してから、前記第2の装置時刻を検知することを特徴とする。
【0059】
当該構成において、第1の時刻検知手段が、上位層にある第1の装置時刻計時手段から第1の装置時刻を検知し、下位層から第1の参照時刻を検知し、第2の時刻検知手段が、上位層にある第2の装置時刻計時手段から第2の装置時刻を検知し、下位層から第2の参照時刻を検知する。しかし、例えば、上位層と下位層が別々のハードウェア(チップ)上において実装されている場合には、上位層にある第1の時刻検知手段は、両方のチップを結ぶPCIバスを介して、別のチップ上にある第1の参照情報を検知し、上位層にある第2の時刻検知手段は、両方のチップを結ぶPCIバスを介して、別のチップ上にある第2の参照情報を検知する。この場合、より検知に時間がかかり、その検知に要する時間も定まらない、第1および第2の参照時刻の検知を、検知に時間がかからず、検知に要する時間も一定である、第1および第2の装置時刻の検知よりも先に行う。
【0060】
上記の構成によれば、一定せずかつ時間のかかる第1の参照時間の検知を終えた直後に、一定した微小時間で行える第1の装置時刻の検知を行い、一定せずかつ時間のかかる第2の参照時間の検知を終えた直後に、一定した微小時間で行える第2の装置時刻の検知を行うので、参照時刻の検知と装置時刻の検知のタイミングのずれを少なくし、ずれの揺らぎを防止することが出来るという効果を奏する。
【0061】
(G)また、本発明の時計装置では、上記構成に加えて、前記第1の時刻検知手段は、前記時刻検知処理を、予め決められた処理実行予定時刻に行うことを特徴とする。また、前記第2の時刻検知手段は、前記時刻検知処理を、予め決められた処理実行予定時刻に行うことを特徴とする。
【0062】
当該構成において、クロックマスタと非クロックマスタとにおいて、同時刻に時刻検知処理を行うよう、処理実行予定時刻を予め決めておく。第2の装置時刻計時手段の調整は、第2の装置時刻−第1の装置時刻−(第2の参照時刻−第1の参照時刻)の式により求まる値により行われるので、同時刻に時刻検知処理を行うと、上記式の、(第2の参照時刻−第1の参照時刻)の部分の値をが小さくなり、誤差要因が減少する。
【0063】
上記の構成によれば、クロックマスタと非クロックマスタとにおいて、予め決められた時刻に同時に時刻検知処理を行い、誤差要因が減少するので、クロックマスタと非クロックマスタとの同期精度を向上させることが出来るという効果を奏する。
【0064】
(H)また、本発明の時計装置では、上記構成に加えて、前記時刻検知処理は、周期的な前記処理実行予定時刻に行われることを特徴とする。
【0065】
当該構成において、例えばインターバルを定めて、周期的に時刻検知処理を行う。
【0066】
上記の構成によれば、定めたインターバルにより時刻検知処理を開始すればよいので、時刻検知処理を開始する処理実行予定時刻の制御が容易になるという効果を奏する。
【0067】
(I)また、本発明の時計装置では、上記構成に加えて、前記第1の時刻検知手段は、前記時刻検知処理を行った後、前記時刻検知処理を次に行うまでの待機時間と、前記時刻検知処理を最後に行った時刻とから、前記時刻検知処理を次に行う前記処理実行予定時刻を求めることを特徴とする。また、前記第2の時刻検知手段は、前記時刻検知処理を行った後、前記時刻検知処理を次に行うまでの待機時間と、前記時刻検知処理を最後に行った時刻とから、前記時刻検知処理を次に行う前記処理実行予定時刻を求めることを特徴とする。
【0068】
上記の構成によれば、次に時刻検知処理を行う処理実行予定時刻を、時刻検知処理を最後に行った時刻に待機時間を加算することで求めるので、簡単に次の時刻検知処理を行う時刻を決めることが出来るという効果を奏する。
【0069】
(J)また、本発明の時計装置では、上記構成に加えて、前記第1の時刻検知手段は、前記第1の装置時刻、前記第1の参照時刻、または他の時刻情報のうち少なくとも一つの時刻を定期的に求め、求めた該時刻が、前記処理実行予定時刻に等しいまたは前記処理実行予定時刻より遅い時刻になると、前記時刻検知処理を行うことを特徴とする。また、前記第2の時刻検知手段は、前記第2の装置時刻、前記第2の参照時刻、または他の時刻情報のうち少なくとも一つの時刻を定期的に求め、求めた該時刻が、前記処理実行予定時刻に等しいまたは前記処理実行予定時刻より遅い時刻になると、前記時刻検知処理を行うことを特徴とする。
【0070】
当該構成において、時刻検知手段は、予め決められた処理実行予定時刻になると、時刻検知処理を行う。
【0071】
上記の構成によれば、例えばOS(Operating System)に指定された時間を待つ機能が無い場合でも定期的に時刻を求めるので、次の時刻検知処理を行う処理実行予定時刻を決定することが出来るという効果を奏する。
【0072】
(K)また、本発明の時計システムでは、上記構成に加えて、前記第1の参照時刻および前記第2の参照時刻は、同一の外部時計が表す時刻であることを特徴とする。
【0073】
上記の構成によれば、例えば電波時計やGPSの同期方式で伝送される時刻情報を第1および第2の参照時刻とすることが出来るので、時計装置の外部にある時計の時刻情報を用いて時計装置同士を同期することが出来るという効果を奏する。
【0074】
(L)ところで、上記時計装置は、ハードウェアで実現してもよいし、プログラムをコンピュータに実行させることによって実現してもよい。具体的には、本発明に係るプログラムは、少なくとも上述した第1および第2の時刻検知手段・時刻調整手段としてコンピュータを動作させる時計装置制御プログラムであり、本発明に係る記録媒体には、当該時計装置制御プログラムが記録されている。
【0075】
この時計装置制御プログラムがコンピュータによって実行されると、当該コンピュータは、上記時計装置として動作する。従って、上記時計装置と同様に、第1の装置時刻と第2の装置時刻との同期には、第2の参照時刻と第1の参照時刻との差を用いるので、上記従来技術とは異なり、第1の装置時刻と第2の装置時刻とを同時に検知する必要が無いという効果を奏する。そして、第1の装置時刻と第2の装置時刻とを同時に検知する必要が無いので、上記従来技術の同期方式において同時サンプリングを行うために用いられたマルチキャストフレームが不要になるという効果も奏する。さらに、APを介して二回に分けて伝送する従来方式とは異なり、APを通さずに一回で伝送することが出来るので、非クロックマスタが一台の場合、本発明に係る同期方式は、IEEE802.11e規格に準拠した無線LANにおいて、より少ない帯域を利用して同期を行うことが出来るという効果を奏する。
【発明の効果】
【0076】
本発明に係る時計装置は、以上のように、自装置の時刻である第1の装置時刻を計時する第1の装置時刻計時手段と、非クロックマスタの参照する第2の参照時刻と同期している第1の参照時刻と、前記第1の装置時刻とをほぼ同時に検知する時刻検知処理を行う第1の時刻検知手段と、検知された前記第1の装置時刻と前記第1の参照時刻とを、前記非クロックマスタへ送信する送信手段とを備えたことを特徴とする。
【0077】
また、本発明に係る時計装置は、以上のように、前記第2の装置時刻を計時する第2の装置時刻計時手段と、クロックマスタの参照する第1の参照時刻に同期している第2の参照時刻と、前記第2の装置時刻とをほぼ同時に検知する時刻検知処理を行う第2の時刻検知手段と、クロックマスタから送信された、前記第1の装置時刻と前記第1の参照時刻とを受信する受信手段と、検知された、前記第2の装置時刻および前記第2の参照時刻と、受信された、前記第1の装置時刻および前記第1の参照時刻とに基づいて、前記第2の装置時刻を調整する時刻調整手段とを備えたことを特徴とする。
【0078】
また、本発明に係る時計システムは、以上のように、クロックマスタである時計装置であって、自装置の時刻である第1の装置時刻を計時する第1の装置時刻計時手段と、非クロックマスタの参照する第2の参照時刻と同期している第1の参照時刻と、前記第1の装置時刻とをほぼ同時に検知する時刻検知処理を行う第1の時刻検知手段と、検知された前記第1の装置時刻と前記第1の参照時刻とを、前記非クロックマスタへ送信する送信手段とを備えた時計装置と、クロックマスタの第1の装置時刻と自装置の時刻である第2の装置時刻とを同期する、非クロックマスタである時計装置であって、前記第2の装置時刻を計時する第2の装置時刻計時手段と、クロックマスタの参照する第1の参照時刻に同期している第2の参照時刻と、前記第2の装置時刻とをほぼ同時に検知する時刻検知処理を行う第2の時刻検知手段と、クロックマスタから送信された、前記第1の装置時刻と前記第1の参照時刻とを受信する受信手段と、検知された、前記第2の装置時刻および前記第2の参照時刻と、受信された、前記第1の装置時刻および前記第1の参照時刻とに基づいて、前記第2の装置時刻を調整する時刻調整手段とを備えた時計装置とを含んで構成されることを特徴とする。
【0079】
また、本発明に係る時計装置の同期方法は、以上のように、クロックマスタの時刻である第1の装置時刻と、非クロックマスタの時刻である第2の装置時刻とを同期させる同期方法において、クロックマスタである時計装置において実行される、第1の装置時刻計時手段が、前記第1の装置時刻を計時する第1の装置時刻計時ステップと、第1の時刻検知手段が、非クロックマスタの参照する第2の参照時刻と同期している第1の参照時刻と、前記第1の装置時刻とをほぼ同時に検知する第1の時刻検知ステップと、送信手段が、検知された前記第1の装置時刻と前記第1の参照時刻とを、前記非クロックマスタへ送信する送信ステップと、非クロックマスタである時計装置において実行される、第2の装置時刻計時手段が、前記第2の装置時刻を計時する第2の装置時刻計時ステップと、第2の時刻検知手段が、前記第2の参照時刻と、前記第2の装置時刻とをほぼ同時に検知する第2の時刻検知ステップと、受信手段が、前記第1の装置時刻と前記第1の参照時刻とを受信する受信ステップと、時刻調整手段が、検知された、前記第2の装置時刻および前記第2の参照時刻と、受信された、前記第1の装置時刻および前記第1の参照時刻とに基づいて、前記第2の装置時刻を調整する時刻調整ステップとを含んだことを特徴とする。
【0080】
それ故、第1の装置時刻と第2の装置時刻との同期には、第2の参照時刻と第1の参照時刻との差を用いるので、上記従来技術とは異なり、第1の装置時刻と第2の装置時刻とを同時に検知する必要が無いという効果を奏する。そして、第1の装置時刻と第2の装置時刻とを同時に検知する必要が無いので、上記従来技術の同期方式において同時サンプリングを行うために用いられたマルチキャストフレームが不要になるという効果も奏する。さらに、APを介して二回に分けて伝送する従来方式とは異なり、APを通さずに一回で伝送することが出来るので、非クロックマスタが一台の場合、本発明に係る同期方式は、IEEE802.11e規格に準拠した無線LANにおいて、より少ない帯域を利用して同期を行うことが出来るという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0081】
<本発明の概要について>
本発明の概要を図1を用いて説明する。通信装置100(時計装置)がクロックマスタの通信装置であり、通信装置200(時計装置)が非クロックマスタの通信装置である。通信装置100と通信装置200とは、動画コンテンツの伝送および再生など、両装置間において時刻を同期させて行わなければならない処理を行う。
【0082】
通信装置100は、上位時計111(第1の装置時刻計時手段)、時刻検知部113(第1の時刻検知手段)、および送信部123(送信手段)から構成されている。時刻検知部113が、上位時計111が表す第1の装置時刻と第1の参照時刻とを検知する。検知された両方の時刻は、検知時刻情報として、送信部123を介して通信装置200に伝送される。
【0083】
通信装置200は、上位時計211(第2の装置時刻計時手段)、時刻検知部213(第2の時刻検知手段)、受信部223(受信手段)、および調整部214(時刻調整手段)から構成されている。時刻検知部213は、上位時計211が表す第2の装置時刻と第2の参照時刻とを検知する。また、受信部223は、通信装置100により送信された検知時刻情報を受信する。
【0084】
上記の構成において、調整部214は、検知時刻情報と、検知された第2の装置時刻および第2の参照時刻とを用いて、上位時計211の調整を行う。なお、第1の参照時刻と第2の参照時刻とは同期している。
【0085】
当該構成においては、図2に示すように、第1の参照時刻を検知するタイミングと第1の装置時刻を検知するタイミングとを対応させ、第2の参照時刻を検知するタイミングと第2の装置時刻を検知するタイミングとを対応させている。
【0086】
なお、第1の参照時刻を検知するタイミングと第1の装置時刻を検知するタイミングとは同時であることが理想的であるが、システムにより多少ずれが生じる場合がある。図2においては、このずれをD1により示している。同様に、第2の参照時刻を検知するタイミングと第2の装置時刻を検知するタイミングとにもシステムにより多少のずれD2が生じる場合がある。
【0087】
ここで、第1の参照時刻の検知タイミングと第2の参照時刻の検知タイミングとの時間差をTDとすると、第1の装置時刻を検知した時点と第2の装置時刻を検知した時点との差もTDに近い値になる。
【0088】
従って、第1の装置時刻と第2の装置時刻とは同時に検知されないが、時間差TDを、検知した第1の装置時刻および第2の装置時刻に反映することにより、第1の装置時刻と第2の装置時刻とを同時に検知する従来技術と同様の結果を得ることが出来る。
【0089】
具体的な事例として、検知された第1の参照時刻が1100μs、第1の装置時刻が330μs、第2の参照時刻が1005μs、第2の装置時刻が220μsとすると、第2の参照時刻と第1の参照時刻との差は、1005μs−1100μs=−95μsである。
【0090】
この差を、例えば第1の装置時刻に反映すると、330μs−95μs=225μsとなり、上位時計211を調整する場合には、この225μsと、第2の装置時刻(220μs)とを比較(差分は220μs−225μs=−5μs)し、その差分の量に応じて上位時計211の調整を行う。
【0091】
これに対し、従来技術では、非クロックマスタは、クロックマスタの時計の時刻tTX[n]と自局の時計の時刻tRX[n]との2つの情報を用いて自局の時計の調整を行う。非クロックマスタの時計の同期精度を悪化させないため、上記の2つの情報を同時にサンプリング(検知)する必要がある。このため、マルチキャストフレームを用い、マルチキャストフレームの最後尾部を送信または受信した時点を基準点とし、クロックマスタおよび非クロックマスタそれぞれにおいて同時に、自局の時計の時刻をサンプリングしている。
【0092】
しかし、同時にサンプリングする場合でも、実際には、図11に示すように、フレームの伝送時間の違いやフレームの処理時間の違いのため、サンプリングする時点に多少ずれが生じる。
【0093】
伝送時間の違いは、無線の伝送路では電波が送信側から受信側に辿り着くまでに複数個所で反射するために発生する。例えば、人間が動いた場合、電波の反射パターンが変わり、人間の居る場所や動きによって伝送時間に違いが生じる。
【0094】
また、クロックマスタの下位層は、送信したマルチキャストフレームの最後尾部の基準点を上位層に知らせる必要があり、非クロックマスタの下位層は、受信したマルチキャストフレームの最後尾部の基準点を上位層に知らせる必要があるが、送信と受信とでは処理が異なるため、それぞれの下位層がマルチキャストフレームの送受信処理を開始してから最後尾部を認識して上位層に知らせるまでのフレーム処理時間に違いが生じる。
【0095】
また、上記従来技術の同期方式をIEEE802.11eに用いた場合であり、かつクロックマスタがAPではない場合、同期用のマルチキャストフレームを、クロックマスタからAPへの伝送と、APから非クロックマスタへの伝送との二回に分けて伝送する必要がある。
【0096】
上記の構成によれば、第1の装置時刻と第2の装置時刻との同期には、第2の参照時刻と第1の参照時刻との差を用いるので、上記従来技術とは異なり、第1の装置時刻と第2の装置時刻とを同時に検知する必要が無い。
【0097】
そして、第1の装置時刻と第2の装置時刻とを同時に検知する必要が無いので、上記従来技術の同期方式において同時サンプリングを行うために用いられたマルチキャストフレームが不要になる。
【0098】
さらに、マルチキャストフレームが不要、すなわち、検知時刻情報をクロックマスタから非クロックマスタへ伝送するために使用するフレームは、マルチキャストフレームである必要は無いので、伝送方式にIEEE802.11e規格を用いた場合でも、検知時刻情報を、ユニキャストフレームを用いて伝送することが出来る。
【0099】
APを介して二回に分けて伝送する従来方式とは異なり、APを通さずに一回で伝送することが出来るので、非クロックマスタが一台の場合、本発明に係る同期方式は、IEEE802.11e規格に準拠した無線LANにおいて、より少ない帯域を利用して同期を行うことが出来る。
【0100】
なお、特に映像伝送の場合、家庭内における映像サーバからの映像伝送が期待される。この場合、一対一の伝送、つまり非クロックマスタが一台の場合が想定されるので、非クロックマスタが一台の場合に同期に利用する帯域を、従来技術に較べより少なく出来る本発明は有用である。
【0101】
〔第1の実施形態〕
本発明の一実施形態について図面に基づいて説明すると以下の通りである。
【0102】
<通信システム400の構成について>
図3において、本実施形態に係る通信システム400の概略構成を示す。通信システム400は、通信装置100および通信装置200を含んで構成され、通信装置100および通信装置200は、互いにネットワーク300を介して時刻情報を伝送する際に通信するように接続されている。
【0103】
<通信装置100・200の構成について>
通信装置100および通信装置200は、それぞれ、通信を行うためのプロトコルスタックとして、上位層110・210および下位層120・220を備え、上位層110と上位層210とは、下位層120・220およびネットワーク300を介して、通信を行う。なお、下位層120・220が、有線LAN、無線LAN、PLCなどのMAC層に相当する。
【0104】
<参照時刻を下位時計121・221から取得する構成について>
本実施形態では、参照時刻の取得先として、通信装置100の下位層120は、参照時刻を提供する下位時計121を備え、通信装置200の下位層220は、参照時刻を提供する下位時計221を備えている場合について説明を行う。
【0105】
通信装置100の上位層110は、上位時計111、時刻検知部113、および上位サンプラ112(第1の時刻検知手段)を備え、下位層120は、下位時計121(第1の参照時刻計時手段)、下位サンプラ122(第1の時刻検知手段)、および通信部123を備えている。
【0106】
通信装置200の上位層210は、上位時計211、時刻検知部213、上位サンプラ212(第1の時刻検知手段)、および調整部214(時刻調整手段)を備え、下位層220は、下位時計221(第2の参照時刻計時手段)、下位サンプラ222(第2の時刻検知手段)、および通信部223を備えている。
【0107】
ここで、下位時計121と下位時計221とは、互いに同期が取れているとする。
【0108】
例えば、下位層がIEEE802.11規格に準拠している場合、下位時計121と下位時計221とは、TSF(Timing Synchronization Function)により同期することが出来る。すなわち、下位時計121を通信装置100の無線LAN層のTSF Timerとし、下位時計221を通信装置200の無線LAN層のTSF Timerとすることである。従って、通信装置100の無線LAN層のTSF Timer(下位時計121)と通信装置200の無線LAN層のTSF Timer(下位時計221)とは、IEEE802.11規格に従い、同期されている。下位層が、有線LANやPLCであった場合も、同様に、下位時計121と下位時計221とは、規格により時計同士の同期が保証されている。
【0109】
通信装置100の時刻検知部113は、上位時計111の時刻tHTX(第1の装置時刻)と、下位時計121の時刻tLTX(第1の参照時刻)とを検知する。検知された時刻tHTXおよび時刻tLTXは、通信部123を介して、通信装置200に送信される。
【0110】
なお、時刻検知部113は、下位時計121の時刻tLTXを検知する際、最初に下位サンプラ122に検知要求を出す。次に、下位サンプラ122が、下位時計121の時刻tLTXをサンプリングし、サンプリングした時刻tLTXを時刻検知部113に渡す。
【0111】
同様に、時刻検知部113は、上位時計111の時刻tHTXを検知する際、最初に上位サンプラ112に検知要求を出す。次に、上位サンプラ112が、上位時計111の時刻tHTXをサンプリングし、サンプリングした時刻tHTXを時刻検知部113に渡す。
【0112】
通信装置200の時刻検知部213は、上位時計211の時刻tHRX(第2の装置時刻)と、下位時計221の時刻tLRX(第2の参照時刻)とを検知する。受信部223は、通信装置100により送信された検知時刻情報を受信する。調整部214は、時刻tHRX、時刻tLRX、および検知時刻情報を用いて、上位時計211の時刻調整を行う。
【0113】
なお、時刻検知部213は、下位時計221の時刻tLRXを検知する際、最初に下位サンプラ222に検知要求を出す。次に、下位サンプラ222は、下位時計221の時刻tLRXをサンプリングし、サンプリングした時刻tLRXを時刻検知部213に渡す。
【0114】
同様に、時刻検知部213は、上位時計211の時刻tHRXを検知する際、最初に上位サンプラ212に検知要求を出す。次に、上位サンプラー212は、上位時計211の時刻tHRXをサンプリングし、サンプリングした時刻tHRXを時刻検知部213に渡す。
【0115】
<上位時計211の調整について>
なお、上位時計211を調整するために、通常、調整部214には、PLL(Phase Locked Loop)が用いられる。
【0116】
PLLを用いて調整を行う際に、例えば、通信装置200の初期化時のように、上位時計111の時刻と上位時計211の時刻との差分(ずれ)が所定値THを超えている場合は同期が外れていると判断されるので、上位時計211の時刻を時間をかけて微調整するのではなく、上位時計111の時刻を上位時計211の時刻として設定する必要がある。なお、所定値THは目的とする同期精度より大きい値に設定する。
【0117】
また、上位時計211の時刻と上位時計111の時刻との差分が所定値TH以下の場合は同期が取れていると判断されるので、同期を保つために、PLLを用いて、上位時計211の進行速度を順次調整する。
【0118】
すなわち、上位時計111と上位時計211とが、同じ時点において表す時刻の差分を用いてPLLの調整を行うことが理想的である。
【0119】
しかしながら、本システムでは、上位時計111の時刻と上位時計211の時刻とは、図2に示すように、同時にはサンプリングされず、サンプリングの時点がずれてしまう。そのため、このずれTDを補償するために、同期が取れている下位時計121の時刻tLTXと下位時計221の時刻tLRXとを利用する。
【0120】
このため、PLLの調整は、以下の数式(1)を用いて求められた、上位時計111・211の時刻のずれに対して、下位時計121・221の時刻のずれの差分をとることにより行う:
PLL調整値 = tHRX−tHTX−(tLRX−tLTX) (1)
なお、数式(1)の(tLRX−tLTX)部分が、図2に示すTDを表している。
【0121】
上記の数式(1)は、以下の数式(2)に示す形に書き換えることが出来る:
PLL調整値 = tHRX−tLRX―(tHTX−tLTX) (2)
上記の数式(2)において、(tHTX−tLTX)の部分は、時刻検知部113が検知した、参照時刻tLTXと装置時刻tHTXとの差分を表している。
【0122】
すなわち、クロックマスタである通信装置100が、時刻検知部113が検知した、参照時刻tLTXと装置時刻tHTXとの差分を、非クロックマスタである通信装置200に伝送するだけで、通信装置200は、上位時計211の時刻を調整することが出来る。
【0123】
ただし、この場合、上位時計111の時刻と上位時計211の時刻との差分が所定値THより大きい場合は同期が外れていると判断されるので、上位時計111の時刻を上位時計211の時刻として設定する必要がある。そのため、参照時刻tLTXおよび装置時刻tHTXの両方を非クロックマスタに伝送する必要がある。
【0124】
このため、非クロックマスタの調整部214およびクロックマスタの時刻検知部113はそれぞれ、上位時計211が上位時計111に対し、同期が取れている状態であるか否かを知っておく必要がある。
【0125】
初期状態では、調整部214および時刻検知部113は、同期が外れている状態であると認識する。
【0126】
クロックマスタは、同期が外れている場合、非クロックマスタに対して参照時刻tLTXと装置時刻tHTXとの両方を伝送する。同期が取れている場合は、参照時刻tLTXと装置時刻tHTXとの差分を伝送する。
【0127】
非クロックマスタは、同期が外れている場合、参照時刻tLTXおよび装置時刻tHTXを受信し、上位時計111の時刻を上位時計211の時刻として設定する。この設定により、上位時計211は同期状態に入るので、調整部214は、同期状態である旨をクロックマスタに通知する。
【0128】
一方、非クロックマスタの同期が取れている状態の場合、非クロックマスタは、参照時刻tLTXと装置時刻tHTXとの差分を受信し、PLLの調整値を求める。
【0129】
PLL調整値が所定値THを超えた場合は、同期が外れたと判断される。調整部214は、同期が外れた状態に入り、この旨をクロックマスタに通知する。
【0130】
PLL調整値が所定値TH以下の場合、調整部214は、同期が取れている状態であると判断し、PLLの調整を行う。
【0131】
非クロックマスタは、同期状態をクロックマスタに通知するため、図示しない送信部を備え、また、クロックマスタは、図示しない受信部を備える。そして、非クロックマスタの調整部214が上述のように同期状態をクロックマスタに通知する必要があると判断した場合、この旨を非クロックマスタの送信部を介してクロックマスタに通知する。クロックマスタの受信部はこの通知を受信し、時刻検知部113に知らせる。時刻検知部113は、通知の内容に応じて同期状態を更新する。
【0132】
<時刻検知処理について>
なお、時刻検知部113が上位時計111の時刻と下位時計121の時刻とを検知する際、これら2つの検知を行う時点は、互いに対応している必要がある。
【0133】
つまり、クロックマスタである通信装置100において、上位時計111の時刻と下位時計121の時刻とを同時に検知するか、または、上位時計111の時刻を検知する直前か直後に下位時計121の時刻を検知することが重要である。
【0134】
非クロックマスタである通信装置200においても同様に、時刻検知部213が上位時計211の時刻を検知する時点と、下位時計221の時刻を検知する時点とが対応している必要がある。
【0135】
これは、時刻検知部113が、上位時計111の時刻を検知した時点と下位時計121の時刻を検知した時点との時間差、または、時刻検知部213が、上位時計211の時刻を検知した時点と下位時計221の時刻を検知した時点との時間差が大きくなると、上位時計211の、上位時計111に対する同期精度が悪化するためである。
【0136】
よって、時刻検知部113が上位時計111の時刻と下位時計121の時刻とを同時に検知し、時刻検知部213が上位時計211の時刻と下位時計221の時刻とを同時に検知することが理想的である。以下の説明においては、この二つの時刻を同時に検知する処理を、時刻検知処理と呼ぶ。
【0137】
1つのメーカが、通信装置100および通信装置200のシステム全体を設計するのであれば、上述の時刻検知処理をハードウエアを用いて行うことにより、2つの時刻を同時に検知出来るように全体を設計する事は可能である。
【0138】
しかし、下位層120・220と上位層110・210とは、別のメーカにより設計されるのが通常であり、メーカ同士が設計を合わせない限り、2つの時刻を同時に検知出来るように最適化された設計とはならない可能性がある。よって、このような場合には、時刻検知処理において、2つの時刻を同時に検知することは困難になる。
【0139】
このような場合でも、時刻検知部113は、上位時計111の時刻と下位時計121の時刻とを検知する時間差を小さくし、時刻検知部213は、上位時計211の時刻と下位時計221の時刻とを検知する時間差を小さくすることが望ましい。
【0140】
一方、有線LANカードまたは無線LANカードなどに実装されている下位層120・220が、通信装置100・200の本体等に実装されている上位層110・210とデータ交換を行うためには、通常、PCIカードインタフェースまたはそれと同等なインタフェースが用いられる。
【0141】
上位層110・210に位置する時刻検知部113・213が、これらのインタフェースを用いて、下位層120・220に位置する下位サンプラ122・222の内部レジスタを読み出すためには、まず最初に下位サンプラ122・222に対して読み出し要求を出す。次に、下位サンプラ122・222は、読み出し要求に応じて、内部レジスタから読み出した情報を返す。
【0142】
しかしながら、有線LANカードや無線LANカードは、通常、様々な処理を行っているため、時刻検知部113・213からの要求に応じるまでには時間か掛かる。さらに、この要求に応じるまでの時間が、毎回同じであるとは限らない。
【0143】
よって、時刻検知部113が、まず上位時計111の時刻を検知し、次に下位時計121の時刻を検知する場合、これら2つの時刻を検知する時点の時間差は毎回変わるので、上位時計211の、上位時計111に対する同期精度が悪化する。
【0144】
それに対し、最初に下位時計121の時刻を検知し、次に上位時計111の時刻を検知する場合、上位時計111および時刻検知部113は、同じ上位層110内において設計されるため、時刻検知部113が、上位時計111の時刻の検知要求を出してから、時刻が時刻検知部113に返されるまでの時間のずれを小さくすることは容易なので、上位時計111の時刻の検知に掛かる時間は一定となる。
【0145】
従って、これら2つの時刻を検知する時点の時間差は一定になるので、上位時計211の、上位時計111に対する同期精度を向上させることが出来る。
【0146】
非クロックマスタである通信装置200においても同様に、時刻検知部213が、最初に下位時計221の時刻を検知し、次に上位時計211の時刻を検知することにより、上位時計211の、上位時計111に対する同期精度を向上させることが出来る。
【0147】
なお、下位時計を検知する時刻と上位時計を検知する時刻との差を毎回固定(例えば5秒)とする場合などが考えられるが、この場合でも、下位時計および上位時計の計時速度は変化するため、同期の精度が悪くなるので、この方法は好ましくない。
【0148】
例えば、下位時計を検知する時刻と上位時計を検知する時刻の差が100msとする。ここで、クロックマスタでは、最初には下位時計と上位時計との計時速度の差が0ppmであるとし、tHTX−tLTX= T1 とする。次に、調整により、下位時計と上位時計の計時速度の差が20ppmになると、tHTX−tLTX= T1+2μsになる。このように、2μsのジッタが発生する。非クロックマスタでも同様である。
【0149】
従って、下位時計を検知する時刻と上位時計を検知する時刻との差を小さくすることにより、同期精度の悪化を避けることができる。
【0150】
<上位時計211の時刻調整手順について>
図4において、調整部214が、上述の手順を用いて上位時計211の時刻調整を行う処理のシーケンスを示し、以下にその説明を行う。
【0151】
クロックマスタである通信装置100側の時刻検知処理として、時刻検知部113は、最初に、T1の時点において、下位層120の下位サンプラ122に対し、下位時計121の時刻tLTXを求める要求を出す。
【0152】
次に、下位サンプラ122が、T2の時点において、時刻検知部113の要求に応じ、この時点で、時刻検知部113は、時刻tLTXを取得する。
【0153】
直後のT3の時点において、時刻検知部113は、上位サンプラ112に対し、上位時計111の時刻tHTXの検知要求を出す。従って、時刻検知部113は、T2の時点とほぼ同じ時点であるT3の時点において、時刻tHTXを取得することが出来る。
【0154】
同様に、非クロックマスタである通信装置200側の時刻検知処理として、時刻検知部213は、最初に、T4の時点において、下位層220の下位サンプラ222に対し、下位時計221の時刻tLRXを求める要求を出す。
【0155】
次に、下位サンプラ222が、T5の時点において、時刻検知部213の要求に応じ、この時点で、時刻検知部213は、時刻tLRXを取得する。
【0156】
直後のT6の時点において、時刻検知部213は、上位サンプラ212に対し、上位時計211の時刻tHRXの検知要求を出す。従って、時刻検知部213は、T5の時点とほぼ同じ時点であるT6の時点において、時刻tHRXを取得することが出来る。
【0157】
なお、時刻検知部113が、下位サンプラ122に対し時刻tLTXの検知要求を出すT1の時点と、時刻検知部213が、下位サンプラ222に対し時刻tLRXの検知要求を出すT4の時点とは、どちらが先であっても構わない。T1がT4より先でも良いし、T4がT1より先で良いし、T1とT4とが同時でも良い。
【0158】
なお、T2の時点とT1の時点との時間差である、ずれD1に関して、D1の絶対値はtLTXの検知要求の周期に対し、比較的大きくても良い。
【0159】
例えば、通信装置100の時刻検知部113がT1の時点において時刻tLTXの検知要求を出してから、次の周期、つまり時刻検知部113がT1’の時点において時刻tLTXの検知要求を出すまでの時間間隔が100msである場合、D1は、数ms程度であっても良い。また、T5の時点とT4の時点の時間差であるD4についても同様である。
【0160】
また、T3の時点とT2の時点との時間差である、ずれD2は、上記の例であれば、T1とT1’との時間間隔である100msに比べ、数オーダ小さいことが望ましいく、これは通常、可能である。また、T6の時点とT5の時点との時間差である、ずれD5に関しても、同様である。
【0161】
図4に示すシーケンス図においては、次に、送信部123が、通信装置100の時刻検知部113により検知された時刻tHTXおよび時刻tLTXを、T7の時点において、通信装置200に送信する。
【0162】
次に、通信装置200の受信部223が、T8の時点において、通信装置100から送信された、時刻tHTXおよび時刻tLTXを受信する。
【0163】
次に、調整部214が、T9の時点において、時刻検知部213により検知された時刻tHRXおよび時刻tLRXと、受信部223により受信された時刻tHTXおよび時刻tLTXとを用いて、数式(1)または(2)に示す演算を行い、演算結果に基づいて、PLLの調整、すなわち上位時計211の調整を行う。
【0164】
<各通信装置100・200における時刻検知処理のタイミングについて>
本実施形態では、下位時計121・221同士が同期している前提において、上位時計111・211同士の同期を行うことが目的であるので、図9に示す例と同じく、上位時計111・211同士、そして下位時計121・221同士は、同期しているが、下位時計121と上位時計111、また下位時計221と上位時計211とは、通常、同期していない。
【0165】
このため、時間が経過するほど、下位時計121の表す時刻と上位時計111の表す時刻とのずれ、また下位時計221の表す時刻と上位時計211の表す時刻とのずれは大きくなる。
【0166】
例えば、下位時計121が下位層のクロックマスタの時計であり、下位時計121と上位時計111との精度の差が20ppmである場合、下位時計121の時刻と上位時計111の時刻とは10ms毎に0.2μsずれる。ここで、下位時計221は非クロックマスタの時計であり、上位時計211も非クロックマスタの時計であるため、長期的な平均では下位時計221と上位時計211の精度の差も20ppmである。
【0167】
一方、従来方式ではクロックマスタの上位時計と非クロックマスタの上位時計の時刻を同時に検知していたことに対し、本発明では上位時計111の時刻tHTXと上位時計211の時刻tHRXとを同時には検知しない。しかし、下位時計121の時刻tLTXとと下位時計221の時刻tLRXとを反映することにより、時刻tHTXと時刻tHRXとを同時に検知したことと同じ結果とすることが出来る。
【0168】
しかしながら、以上のように、下位時計121・221および上位時計111・121の精度に差があるため、時刻tLTXと時刻tHTXとを検知する時刻と、時刻tLRXと時刻tHRXとを検知する時刻との差が大き過ぎる場合、上位時計211の調整に用いられる情報の誤差も大きくなり、同期精度が悪くなる。
【0169】
例えば、下位時計121と上位時計111との精度の差が20ppmであり、tLRX−tLTX=10msの場合、tHRX−tHTX=10ms+0.2μsとなり、0.2μsの誤差が追加される。tLRX−tLTX=30msの場合、tHRX−tHTX=30ms+0.6μsになり、0.6μsの誤差が追加される。
【0170】
従って、上位時計211に対するPLLを、PLL調整値tHRX−tHTX−(tLRX−tLTX)により調整することから、tLRX−tLTXを小さくすることにより、上位時計211の同期精度を良くすることが出来る。
【0171】
すなわち、同期の精度を劣化させないためには、時刻tLTXの検知要求を出すT1の時点と、時刻tLRXの検知要求を出すT4の時点との時間差を小さくすることが望ましい。
【0172】
なお、T1’−T1、すなわち、通信装置100において時刻検知処理を行ってから次に行うまでの時間は、通信装置100において時刻検知処理を行い、検知時刻情報を通信装置200まで伝送し、通信装置200において上位時計211の時刻を調整するまでの時間より大きくすることが望ましい。
【0173】
このT1とT4との時間差を小さくするには、T1(T1’)およびT4(T4’)の時刻、すなわち、通信装置100・200において時刻検知処理を開始する時刻を、通信装置100の時刻検知部113と通信装置200の時刻検知部213とが、予め決めておけばよい。時刻を予め決めるには、例えばインターバルを定めて周期的に時刻検知処理を行うことにより、時刻検知処理を開始する時刻の制御が容易になる。
【0174】
但し、T1およびT4のタイミングの差を小さくすることは、時刻tHTXと時刻tHRXとを同時に検知する意味にはならない。これは、ずれD1およびずれD4は、同期精度と比較して大きなずれとなるためである。
【0175】
<時刻検知部113・213が予め決められた時刻を認識する方法について>
ここで、時刻検知部113・213がハードウェアにより実装されており、かつ上位時計111・211と時刻検知部113・213とが直接接続されている場合、時刻検知部113・213は、上位時計111・211の信号を直接受け取ることが出来る、すなわち、時刻検知部113・213は、上位時計111・211の時刻を、常に知ることが、出来る。
【0176】
この場合、時刻検知部113・213は、上記の予め決められた時刻、つまり次に時刻tLTXまたは時刻tLRXの検知要求を出す時刻に至ったことを、その時点で知ることが出来る。
【0177】
一方、時刻検知部113・213がソフトウェアにより実装されている場合、ソフトウェアにより実現される機能ブロックである時刻検知部113・213は、ハードウェアである上位時計111・211とは直接接続されていないので、上位時計111・211の時刻を、常に知ることは、出来ない。
【0178】
このような場合、次に時刻tLTXまたは時刻tLRXの検知要求を出す時刻が予め決っていても、時刻検知部113・213は、その時刻に至ったことをその時点では認識できない。そのため、時刻検知部113・213は、他の方法によりその時刻に至ったことを認識する必要がある。
【0179】
他の方法としては、OSの時計を利用することが出来る。OSの時計は、上位時計111・211、下位時計121・221、または別の時計であっても良いが、上位時計111・211が時刻検知部113・213と同じ上位層110・210に位置することから、上位時計111・211をOSの時計とし、基準として予め決められた時刻を判断する方が望ましい。
【0180】
また、以上のように、時刻検知部113・213による時刻検知処理がソフトウェアにより行われる場合、OSの時計が予め決まった時刻に至ったこと認識する方法は複数ある。それらの詳細は後述する。
【0181】
なお、OSは複数の処理を同時並行して行っている可能性が高いため、リアルタイムOSを除き、予め決められた時刻に、正確に時刻tLTXの検知要求または時刻tLRXの検知要求を出すことが出来ない。ソフトウェアにより処理を行う場合、決められた時刻に対し、実際に処理を開始するまでには数msのずれが生じる。
【0182】
OSにより、指定された時間を待つ機能、すなわちタイマ割り込み処理機能を有するOSがある。タイマ割り込み処理機能を有する場合、時刻検知部113・213は、最後に時刻検知処理を行った時点から、次に時刻tLTXまたは時刻tLRXの検知要求を出すまでの待機時間を計算し、この待機時間だけ時刻検知処理を待つ。
【0183】
例えば、時刻検知部113・213が時刻tLTXまたは時刻tLRXの検知要求を出す際に時刻を判断する基準として上位時計111・211を用いる場合、時刻tHTXまたは時刻tHRXを検知してから、次に時刻tLTXまたは時刻tLRXの検知要求を出すまでの待機時間は、上位時計111・211における時刻に基づき計算する。
【0184】
一方、OSにタイマ割り込み処理機能が無い場合、例えば、定期的に、基準として決められた時計の時刻を読み、この時刻が、時刻tLTXまたは時刻tLRXの検知要求を出す時刻に、等しいかまたはより遅ければ、時刻tLTXまたは時刻tLRXの検知要求を出すようにすれば良い。
【0185】
<ずれ等の数値の具体例について>
なお、具体的な数値の例を以下に示す。同期の周期が100ms程度であり、数百nsの同期精度を達成するためには、ずれ等を以下に示す値以下に抑えることが望ましい:
1.T1およびT4のジッタ:10ms以下
2.D1およびD4のずれ:10ms以下
3.D2およびD5のずれ:数μs以下
なお、上記ジッタとは、時刻tLTXまたは時刻tLRXの検知要求を出す処理に関して、予め決められている要求を出す時刻と、実際に要求が出された時刻とのずれのことである。
【0186】
上記3つの条件は、現在の技術水準において、いずれも問題なく達成可能である。
【0187】
上記の値を満足することにより、時刻tLTXを取得した時点(T2=T1+D1)と時刻tLRXを取得した時点(T5=T4+D4)との時間差を20ms以下に抑えることが出来る。
【0188】
下位時計121と上位時計111とは、または下位時計221と上位時計211とは同期していないため、この二つの時計の精度の差が20ppmの場合、T2とT5の時間差が20ms以下であれば、下位時計121・221と上位時計111・211との精度の誤差(ずれ)は、0.4μs以下となる。この0.4μs以下のずれにD2およびD5の数μsのずれと、上位時計111の時刻と上位時計211の時刻との誤差とが加算され、PLLの調整に入力される誤差になる。PLLはこの誤差を小さくし、上位時計111の時刻と上位時計211の時刻との誤差を数百ns程度に抑えることが出来る。
【0189】
〔第2の実施形態〕
本発明の一実施形態について図面に基づいて説明すると以下の通りである。なお、本実施の形態の説明では、第1の実施形態と異なる部分のみを説明する。
【0190】
<通信システム400bの構成について>
図5において、本実施形態に係る通信システム400bの概略構成を示す。通信システム400bは、通信装置100b、通信装置200b、および通信装置500を含んで構成され、通信装置100b、通信装置200b、および通信装置500は、互いにネットワーク300を介して通信接続されている。
【0191】
第1の実施形態では、下位時計121・221が参照時刻を提供したが、本実施形態では、通信装置500が、通信装置100bおよび通信装置200bに対して参照時刻を送信することにより提供する。
【0192】
ここで送信された参照時刻のうち、通信部123bが受信したものが時刻tLTXとなり、通信部223bが受信したものが時刻tLRXとなる。これらの参照時刻は、両方とも通信装置500内部の時計521(外部時計)の時刻を検知した値である。
【0193】
通信装置500は、例えば、電波時計の電波の送信局に備えられている時刻サーバやGPS電波を発信するGPS衛星に備えられている時刻サーバである。通信装置500が通信装置100bおよび通信装置200b2と通信する伝送方式と、通信装置100bと通信装置200b2とが通信する伝送方式とは、同じである必要はない。
【0194】
こうすると例えば、通信装置100bと通信装置200bとが通信に用いる伝送方式を有線LANや無線LANにすることにより、通信装置100bと通信装置200bとは高速にデータ交換を行うことが出来る。よって、本実施形態では、通信装置500が通信装置100bおよび通信装置200bにデータを送信する際に用いる伝送方式と、通信装置100bと通信装置200bとが通信する際に用いる伝送方式とは別とする。
【0195】
なお、通信装置500が通信装置100bおよび通信装置200bにデータを送信する方式がブロードキャストあるいはマルチキャストである場合、時刻tLTXおよび時刻tLRXは、同じ値であっても良い。
【0196】
<参照時刻を通信装置500から取得する構成について>
通信装置100bおよび通信装置200bは、両方とも下位層120b・220bおよび上位層110・210により通信を行う。
【0197】
通信装置100bの上位層110は、上位時計111、時刻検知部113、上位サンプラ112を備え、下位層120bは、通信部123b(送信手段)を備えている。
【0198】
通信装置200bの上位層210は、上位時計211、時刻検知部213、上位サンプラ21、調整部214を備え、下位層220bは、通信部223b(受信手段)を備えている。
【0199】
通信装置100bの時刻検知部113は、上位時計111の時刻tHTXと通信装置500から受信した時刻tLTXとの両方の時刻を検知する。検知した時刻は、検知時刻情報として、通信部123bを介して通信装置200bに送信される。なお、通信装置500から送信された参照時刻は、通信部123bにより受信され、時刻tLTXとして、時刻検知部113に渡される。時刻検知部113が上位時計111の時刻を検知する際、最初に上位サンプラ112に要求を出す。次に、上位サンプラ112が、上位時計111の時刻をサンプリングし、時刻tHTXを時刻検知部113に渡す。
【0200】
通信装置200bの時刻検知部213は、上位時計211の時刻tHRXと通信装置500から受信した時刻tLRXとの両方の時刻を検知する。通信部223bは、通信装置100bが送信した検知時刻情報を受信し、調整部214に渡す。調整部214は、これらの時刻情報を用いて、上位時計210の時刻調整を行う。なお、通信装置500から送信された参照時刻は、通信部223bにより受信され、時刻tLRXとして、時刻検知部213に渡される。時刻検知部213が上位時計211の時刻を検知する際、最初に上位サンプラ212に要求を出す。次に、上位サンプラ212は、上位時計211の時刻をサンプリングし、時刻tLRXを時刻検知部213に渡す。
【0201】
<補足事項>
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0202】
最後に、通信装置100・200の各ブロック、特に時刻検知部113・213および調整部214は、ハードウェアロジックによって構成してもよいし、次のようにCPUを用いてソフトウェアによって実現してもよい。
【0203】
すなわち、通信装置100・200・100b・200bは、各機能を実現する制御プログラムの命令を実行するCPU(central processing unit)、上記プログラムを格納したROM(read only memory)、上記プログラムを展開するRAM(random access memory)、上記プログラムおよび各種データを格納するメモリ等の記憶装置(記録媒体)などを備えている。そして、本発明の目的は、上述した機能を実現するソフトウェアである通信装置100・200・100b・200bの制御プログラムのプログラムコード(実行形式プログラム、中間コードプログラム、ソースプログラム)をコンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体を、上記通信装置100・200・100b・200bに供給し、そのコンピュータ(またはCPUやMPU)が記録媒体に記録されているプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成可能である。
【0204】
上記記録媒体としては、例えば、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フロッピー(登録商標)ディスク/ハードディスク等の磁気ディスクやCD−ROM/MO/MD/DVD/CD−R等の光ディスクを含むディスク系、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード系、あるいはマスクROM/EPROM/EEPROM/フラッシュROM等の半導体メモリ系などを用いることが出来る。
【0205】
また、通信装置100・200・100b・200bを通信ネットワークと接続可能に構成し、上記プログラムコードを通信ネットワークを介して供給してもよい。この通信ネットワークとしては、特に限定されず、例えば、インターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN、ISDN、VAN、CATV通信網、仮想専用網(virtual private network)、電話回線網、移動体通信網、衛星通信網等が利用可能である。また、通信ネットワークを構成する伝送媒体としては、特に限定されず、例えば、IEEE1394、USB、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL回線等の有線でも、IrDAやリモコンのような赤外線、Bluetooth(登録商標)、802.11無線、HDR、携帯電話網、衛星回線、地上波デジタル網等の無線でも利用可能である。なお、本発明は、上記プログラムコードが電子的な伝送で具現化された、搬送波に埋め込まれたコンピュータデータ信号の形態でも実現され得る。
【産業上の利用可能性】
【0206】
本発明は、複数の時計装置が通信を行う時計システムを構成する時計装置において、時刻検知を各時計装置において同時に行うこと無く、各時計装置の装置時刻を同期することが出来るので、通信ネットワークに対応した、音響機器、テレビ受像器、ホームシアター、プロジェクタなどにも好適に使用出来る。
【図面の簡単な説明】
【0207】
【図1】本発明の基本的な概念を示す図である。
【図2】本発明における時刻検知タイミングのずれを説明するタイミングチャートである。
【図3】第1の実施形態における通信システムの概略構成を示す機能ブロック図である。
【図4】第1の実施形態における時刻同期の手順を示すタイミングチャートである。
【図5】第2の実施形態における通信システムの概略構成を示す機能ブロック図である。
【図6】従来技術における通信システムの概略図である。
【図7】時間経過と時刻のずれの関係を示すグラフである。
【図8】従来技術における通信システムの時刻のずれを示す図である。
【図9】通信装置の上位層および下位層同士の同期に関する関係を示す図である。
【図10】従来技術における時刻同期の手順を示す図である。
【図11】従来技術における時刻検知タイミングのずれを説明するタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0208】
100 通信装置(時計装置)
100b 通信装置(時計装置)
111 上位時計(第1の装置時刻計時手段)
112 上位サンプラ(第1の時刻検知手段)
113 時刻検知部(第1の時刻検知手段)
121 下位時計(第1の参照時刻計時手段)
122 下位サンプラ(第1の時刻検知手段)
123 送信部(送信手段)
123b 送信部(送信手段)
200 通信装置(時計装置)
200b 通信装置(時計装置)
211 上位時計(第2の装置時刻計時手段)
212 上位サンプラ(第2の時刻検知手段)
213 時刻検知部(第2の時刻検知手段)
214 調整部(時刻調整手段)
221 下位時計(第2の参照時刻計時手段)
222 下位サンプラ(第2の時刻検知手段)
223 受信部(受信手段)
223b 受信部(受信手段)
400 通信システム(時計システム)
400b 通信システム(時計システム)
521 時計(外部時計)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロックマスタである時計装置において、
自装置の時刻である第1の装置時刻を計時する第1の装置時刻計時手段と、
非クロックマスタの参照する第2の参照時刻と同期している第1の参照時刻と、前記第1の装置時刻とをほぼ同時に検知する時刻検知処理を行う第1の時刻検知手段と、
検知された前記第1の装置時刻と前記第1の参照時刻とを、前記非クロックマスタへ送信する送信手段と
を備えたことを特徴とする時計装置。
【請求項2】
前記第1の参照時刻を計時する第1の参照時刻計時手段を備え、
前記第1の時刻検知手段は、
前記第1の参照時刻計時手段から第1の参照時刻を検知する
ことを特徴とする請求項1に記載の時計装置。
【請求項3】
前記第1の時刻検知手段は、
前記第1の参照時刻を検知してから、前記第1の装置時刻を検知することを特徴とする請求項1に記載の時計装置。
【請求項4】
前記第1の時刻検知手段は、
前記時刻検知処理を、予め決められた処理実行予定時刻に行うことを特徴とする請求項1に記載の時計装置。
【請求項5】
前記時刻検知処理は、周期的な前記処理実行予定時刻に行われることを特徴とする請求項4に記載の時計装置。
【請求項6】
前記第1の時刻検知手段は、
前記時刻検知処理を行った後、前記時刻検知処理を次に行うまでの待機時間と、
前記時刻検知処理を最後に行った時刻と
から、前記時刻検知処理を次に行う前記処理実行予定時刻を求めることを特徴とする請求項4または5に記載の時計装置。
【請求項7】
前記第1の時刻検知手段は、
前記第1の装置時刻、
前記第1の参照時刻、または
他の時刻情報
のうち少なくとも一つの時刻を定期的に求め、
求めた該時刻が、
前記処理実行予定時刻に等しい
または
前記処理実行予定時刻より遅い
時刻になると、
前記時刻検知処理を行うことを特徴とする請求項4または5に記載の時計装置。
【請求項8】
前記送信手段は、
前記第1の装置時刻と前記第2の装置時刻とのずれが所定値を超える場合は、
前記第1の参照時刻および前記第1の装置時刻を前記非クロックマスタに送信し、
前記第1の装置時刻と前記第2の装置時刻とのずれが前記所定値以下の場合は、
前記第1の参照時刻と前記第1の装置時刻との差分を前記非クロックマスタに送信する
ことを特徴とする請求項1に記載の時計装置。
【請求項9】
クロックマスタの第1の装置時刻と自装置の時刻である第2の装置時刻とを同期する、非クロックマスタである時計装置において、
前記第2の装置時刻を計時する第2の装置時刻計時手段と、
クロックマスタの参照する第1の参照時刻に同期している第2の参照時刻と、前記第2の装置時刻とをほぼ同時に検知する時刻検知処理を行う第2の時刻検知手段と、
クロックマスタから送信された、前記第1の装置時刻と前記第1の参照時刻とを受信する受信手段と、
検知された、前記第2の装置時刻および前記第2の参照時刻と、
受信された、前記第1の装置時刻および前記第1の参照時刻と
に基づいて、前記第2の装置時刻を調整する時刻調整手段と
を備えたことを特徴とする時計装置。
【請求項10】
前記時刻調整手段は、前記第2の装置時刻計時手段の調整を、以下の式、
調整値=(第2の装置時刻−第1の装置時刻)−(第2の参照時刻−第1の参照時刻)
により求まる調整値により行うことを特徴とする請求項9に記載の時計装置。
【請求項11】
前記時刻調整手段は、
前記第1の装置時刻と前記第2の装置時刻とのずれが所定値を超える場合は、
前記第2の装置時刻計時手段の現在時刻として、受信された前記第1の装置時刻を設定し、
前記第1の装置時刻と前記第2の装置時刻とのずれが前記所定値以下の場合は、
ずれの度合いに応じて前記装置時刻計時手段の計時速度を速めるか遅らせる度合いを調整する
ことを特徴とする請求項9に記載の時計装置。
【請求項12】
前記第2の参照時刻を計時する第2の参照時刻計時手段を備え、
前記第2の時刻検知手段は、
前記第2の参照時刻計時手段から第2の参照時刻を検知する
たことを特徴とする請求項9に記載の時計装置。
【請求項13】
前記第2の時刻検知手段は、
前記第2の参照時刻を検知してから、前記第2の装置時刻を検知することを特徴とする請求項9に記載の時計装置。
【請求項14】
前記第2の時刻検知手段は、
前記時刻検知処理を、予め決められた処理実行予定時刻に行うことを特徴とする請求項9に記載の時計装置。
【請求項15】
前記処理実行予定時刻は、周期的であることを特徴とする請求項14に記載の時計装置。
【請求項16】
前記第2の時刻検知手段は、
前記時刻検知処理を行った後、前記時刻検知処理を次に行うまでの待機時間と、
前記時刻検知処理を最後に行った時刻と
から、前記時刻検知処理を次に行う前記処理実行予定時刻を求めることを特徴とする請求項14または15に記載の時計装置。
【請求項17】
前記第2の時刻検知手段は、
前記第2の装置時刻、
前記第2の参照時刻、または
他の時刻情報
のうち少なくとも一つの時刻を定期的に求め、
求めた該時刻が、
前記処理実行予定時刻に等しい
または
前記処理実行予定時刻より遅い
時刻になると、
前記時刻検知処理を行うことを特徴とする請求項14または15に記載の時計装置。
【請求項18】
前記受信手段は、
前記第1の装置時刻と前記第2の装置時刻とのずれが所定値を超える場合は、
前記第1の参照時刻および前記第1の装置時刻を前記クロックマスタから受信し、
前記第1の装置時刻と前記第2の装置時刻とのずれが前記所定値以下の場合は、
前記第1の参照時刻と前記第1の装置時刻との差分を前記クロックマスタから受信する
ことを特徴とする請求項9に記載の時計装置。
【請求項19】
請求項1に記載の時計装置と
請求項9に記載の時計装置と
を含んで構成されることを特徴とする時計システム。
【請求項20】
前記第1の参照時刻および前記第2の参照時刻は、
同一の外部時計が表す時刻であることを特徴とする請求項19に記載の時計システム。
【請求項21】
クロックマスタの時刻である第1の装置時刻と、非クロックマスタの時刻である第2の装置時刻とを同期させる同期方法において、
クロックマスタである時計装置において実行される、
第1の装置時刻計時手段が、前記第1の装置時刻を計時する第1の装置時刻計時ステップと、
第1の時刻検知手段が、非クロックマスタの参照する第2の参照時刻と同期している第1の参照時刻と、前記第1の装置時刻とをほぼ同時に検知する第1の時刻検知ステップと、
送信手段が、検知された前記第1の装置時刻と前記第1の参照時刻とを、前記非クロックマスタへ送信する送信ステップと、
非クロックマスタである時計装置において実行される、
第2の装置時刻計時手段が、前記第2の装置時刻を計時する第2の装置時刻計時ステップと、
第2の時刻検知手段が、前記第2の参照時刻と、前記第2の装置時刻とをほぼ同時に検知する第2の時刻検知ステップと、
受信手段が、前記第1の装置時刻と前記第1の参照時刻とを受信する受信ステップと、
時刻調整手段が、
検知された、前記第2の装置時刻および前記第2の参照時刻と、
受信された、前記第1の装置時刻および前記第1の参照時刻と
に基づいて、前記第2の装置時刻を調整する時刻調整ステップと
を含んだことを特徴とする時計装置の同期方法。
【請求項22】
請求項1から18のいずれか一項に記載の時計装置の各手段として、コンピュータを機能させるための時計装置制御プログラム。
【請求項23】
請求項22に記載の時計装置制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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