説明

時間変動する磁場又は磁場勾配を測定するための測定機器、電気抵抗素子及び測定システム

本発明は、時間変動する磁束又は磁束勾配のための測定機器、電気抵抗素子及び本発明による測定機器又は電気抵抗素子を備える測定システムに関する。測定機器の主要部品は、超電導状態に相転移する母材から成る磁束変換器である。本発明によれば、この磁束変換器は、前記母材が超電導状態にあるときにも、導体ループ内の電気エネルギーを消費するために零でない電気抵抗を有する少なくとも1つの電力消費領域を備える。その際、本発明によれば、導体ループと磁場源は一平面内に配置され、通常はフォトリソグラフィによって構造化される。測定機器の主要構成要素として、抵抗値が≦10−4Ωの本発明による抵抗素子を使用可能である。本発明によれば、当技術分野の従来の測定機器又は測定システムで可能であったよりも小さい雑音及び高い感度で、広い周波数範囲での測定が可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時間変動する磁場又は磁場勾配のための測定機器、前記測定機器で主要構成要素として使用可能な電気抵抗素子及び本発明による測定機器又は電気抵抗素子を備える測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
超電導量子干渉素子(SQUIDs)が、磁場に関して現在最も高感度のセンサである。しかし、そのダイナミックレンジは限られている。測定位置に、測定対象の時間変動する磁場が広がっているだけでなく、数桁高い擾乱静磁場又は非常にゆっくりとだけ変化する擾乱磁場も広がっている場合、センサは、擾乱磁場のみによってしばしば飽和してしまう。実際の測定信号は、擾乱磁場による影響を受ける高いバックグラウンド信号上での非常に小さな変調にすぎない。
【0003】
測定信号をバックグラウンド信号から分離するために、磁束変換器が使用される。磁束変換器は、受電コイル(ピックアップコイル)によって、測定対象の磁場がこのピックアップコイルで発生する磁束の時間変動する部分を電流に変換する。この電流は、磁場源、通常はコイル(結合コイル)に流れ、このコイルがさらに補助磁場を発生する。この補助磁場は、実際のセンサ、通常はSQUIDによって測定される。
【0004】
その際、低い周波数で最高感度の測定をできるように、通常は、信号損失を最小にするために超電導磁束変換器が使用される(非特許文献1参照)。ピックアップコイルと磁場源から成る電流回路内に、強い擾乱静磁場及び非常にゆっくりと変化する(時定数>10分)擾乱磁場に起因する漸進的擾乱成分が蓄積することが欠点である。これにより、測定システムのダイナミックレンジ及び感度が次第に低下する。
【0005】
常導電性の磁束変換器は、例えば非特許文献2及び非特許文献3から知られている。欠点として、これらの磁束変換器は、緩和時定数が約10μsと非常に短く、そのため約100kHz未満の低い周波数では非常に大きな損失が生じ、したがって得られる測定結果はもはや妥当なものでなくなる。同時に、これらの磁束変換器は、この周波数範囲で測定信号に大きな雑音を加える。
【0006】
非特許文献4から、ピックアップコイルと結合コイルがそれぞれ帯状ワイヤからなり、帯状の二重導線によって互いに接続されている磁束変換器が知られている。コイルと二重導線との常導電性の溶接位置を通して、超電導コイル内に蓄積した擾乱成分が消費される。欠点として、この構成の感度は、特に生体磁気測定及び地磁気測定には十分でない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】J. E. Zimmermann, N. V. Frederick, ”Miniature Ultrasensitive Superconducting Magnetic Gradiometer and Its Use in Cardiography and Other Applications“,Appl. Phys. Lett 19, 16 (1971)
【非特許文献2】T. Q. Yang, Kenichiro Yao, Daisuke Yamaski, Keiji Enpuku, ”Magnetometer utilizing SQUID picovoltmeter and cooled normal pickup coil“, Physica C 426−431, 1596−1600 (2005)
【非特許文献3】D. F. He, H. Itozaki, M. Tachiki, ”Improving the sensitivity of a high−Tc SQUID at MHz frequency using a normal metal transformer“,Superconductor Science and Technology 19, S231−S234 (2006)
【非特許文献4】H. Dyvorne, J. Scola, C. Fermon, J. F. Jacquinot, M. Pannetier−Lecoeur, ”Flux transformers made of commercial high critical temperature superconducting wires“,Review of Scientific Instruments 79, 025107 (2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の課題は、従来技術で可能なよりも広い範囲で選択可能な時定数で、高い感度で、さらに同時に小さい雑音で、高周波数と同様に低周波数でも時間変動する磁場又は磁場勾配を測定することができる測定機器及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は、本発明によれば、独立請求項による測定機器によって、及び別の従属請求項による、測定機器で主要構成要素として使用可能な電気抵抗素子によって、さらに、別の従属請求項による測定システムによって解決される。さらなる有利な形態は、従属請求項にそれぞれ依拠する下位請求項から得られる。
【0010】
本発明の枠内で、時間変動する磁場又は磁場勾配のための測定機器が開発された。この測定機器は磁束変換器を備える。この磁束変換器は、時間変動する磁束又は磁束勾配を電流に変換するための、超電導状態に相転移する母材を含む導体ループ(「ピックアップコイル」)と、電流を補助磁場に変換するための、導体ループから電流を流される磁場源とを有する。その際、有利には、磁場源の材料も超電導状態に相転移する。有利には、時間変動する磁束又は磁束勾配は、測定対象の磁場又は磁場勾配の時間変動する部分のみによって生成される。この測定機器は、補助磁場のためのセンサ、例えばSQUIDを備える。
【0011】
この磁束変換器は、母材が超電導状態にあるときにも、電流回路内の電気エネルギーを消費するために零でない電気抵抗を有する少なくとも1つの抵抗領域(「電力消費領域」とも呼ぶ)を備える。ここで、電力消費領域は、導体ループ、磁場源、又は導体ループもしくは磁場源の部分領域を含むこともできる。この形態は、例えば導体ループ又は磁場源がタイプII超電導体であり、各用途で超電導状態であるが、その第1の臨界磁場又は第1の臨界電流よりも上で動作されるときに有利である。このとき、超電導材料にアブリコソフの磁束線が通される。これらの磁束線が動く場合、摩擦と関連するこの動きのために、零でない抵抗として作用するエネルギーが必要とされる。しかし通常、電力消費領域は、導体ループ及び磁場源とは別である。このとき、電力消費領域は非超電導材料からなり、導体ループ及び磁場源を含む電流回路内に直列に接続される。
【0012】
本発明によれば、導体ループと磁場源は一平面内に配置される。その際、導体ループ及び/又は磁場源は、特に、層厚さが約1μm以下の薄層の平坦構造として形成することができる。特に、導体ループの母材及び/又は磁場源の材料が高温超電導体であるとき、導体ループ及び/又は磁場源が単結晶基板上にエピタキシャル超電導層として形成されると有利である。そのような層は、例えばフォトリソグラフィによって構造化することができる。薄層構造としての導体ループ及び/又は磁場源の形態は、有利には、測定機器の感度を改良し、雑音を減少させる。
【0013】
非特許文献4で使用されている超電導ワイヤ及び帯状導線は、薄層から成る平坦構造に加工するのが難しい。
【0014】
一平面内での配置は、導体ループと磁場源を同一基板上に構成しなければならないという制限は受けないものと理解すべきである。例えば、導体ループと磁場源を別個の基板上に構造化し、両基板の構造化された表面どうしを合わせて電気的に接続させることができる(「フリップチップ」技術)。その際、特に、一方の基板又は両方の基板上に常導電性層を構成することができる。このとき、これによって基板の合体時に両基板の間に形成される中間層は、導体ループも磁場源も高温超電導材料から作製されているときには、特に導体ループと磁場源の間の電力消費領域として有利に働くことができる。したがって、有利には、セラミック高温超電導体と常導電性金属との接触時に通常生じる難点が克服される。一方、導体ループと磁場源が低温超電導材料から成る場合には、両基板間の電気接続を超電導性で形成し、一方の基板又は両方の基板上で電力消費領域を実現することがより有利である。この製造法は、両基板間に常導電性の中間層を挿入するよりも技術的に制御性及び再現性が高い。
【0015】
超電導性の導体ループと非超電導性の電力消費領域との組合せにより、導体ループ及び磁場源を含む電流回路内で非常に小さい抵抗値を実現することができる。直流抵抗値は、零に非常に近付くように調整することができ、それにより、各用途に関連する緩和時間と共に電流回路からエネルギーが消費される。このプロセスは非特許文献4で観察されている。しかし、ピックアップコイルを通る磁束の一部しか結合コイルに伝達されないので、非特許文献4で開示された構成の感度は、特に生体磁気測定及び地磁気測定には十分でなかった(非特許文献4における図3及び関連の説明参照)。ここで、本発明による一平面内にある導体ループと磁場源の構成により、有利には、導体ループから磁場源への経路での磁束の損失を減少させることができることが分かった。この幾何形状では、有利には、導体ループと磁場源の間の導線の長さを最小限にすることができる。同時に、これは、単位長さ当たりのインダクタンスが最小になるように形成することができる。例えば、導体ループと磁場源の間の往復の導線を、これらの導線の間に囲まれる面積が非常に小さくなるように互いに近くに並べて構造化することができる。特に、往復の導線を上下に積層することができ、その際、導線が薄い絶縁層によって分離される。
【0016】
このようにして、導体ループと磁場源の間の導線の全インダクタンスを最小にすることができることが分かった。このインダクタンスは、導体ループから実際の磁場源への通電時に導体ループと磁場源の間の導線が発生する寄生磁束に関して重要である。この寄生磁束が高ければ高いほど、センサによって記録することができる磁場源が発生する補助磁場が小さくなる。
【0017】
導体ループは、特に、1回巻き又は複数回巻きのワイヤ又は薄層から成るコイルでよい。この実施形態を、以下ではピックアップコイルとも呼ぶ。磁場源は、特に、1回巻き又は複数回巻きのワイヤ又は薄層から成るコイルでよい。この実施形態を、以下では結合コイルとも呼ぶ。有利には、ピックアップコイル及び/又は結合コイルは複数回巻きである。これはそれぞれインダクタンスを高め、それにより、測定対象の磁場又は磁場勾配とピックアップコイル内の電流との間の伝達比を高める。
【0018】
有利には、ピックアップコイルの直径は、1cm以上、好ましくは3cm以上、特に好ましくは5cm以上である。特に、結合コイルの直径が3mm以下であるさらなる有利な形態と関連付けると、そのような寸法により、測定対象の磁場又は磁場勾配によって引き起こされる磁束が、ピックアップコイルから結合コイルへの伝達時に平面的に集中し、したがってセンサでの磁場が増幅される。センサは、そのようにして増幅された磁場をより確実に外部擾乱磁場から区別することができ、これにより測定精度が改善される。そのような擾乱磁場の例は、地磁場や、電流が流れる導線から生じる磁場である。一般に、大きな磁場増幅のために、結合コイルとピックアップコイルの直径の比が大きくても0.1であると有利である。これは、非特許文献4では達成されなかった。
【0019】
3mm以下の結合コイルの直径は、これが通常の高感度磁場センサの感知域の最大寸法に対応するので、磁束変換器の磁場増幅をより良好にし、またセンサへの結合をより良好にする。これらのセンサでは、感知域は、(特にSQUIDsでの)固有雑音及び擾乱を最小にするために意図的に小さく保たれる。さらに、小さい感知域は、より大きい感知域よりもはるかに良好に外部磁場から遮蔽することができる。さらに、広い空間に分布する擾乱磁場、例えば地磁場は、感知域が小さければ小さいほど測定信号への関与が小さくなる。高い増幅のために、最小100μmまでの結合コイルの直径が好適となり得る。これは主に、フォトリソグラフィで構造化された、平坦な基板上の薄層から成る多数回巻きの多層結合コイルによって実現可能である。
【0020】
有利には、結合コイルのインダクタンスは、ピックアップコイルのインダクタンスの80%〜120%であり、特にピックアップコイルと同じである。このとき、ピックアップコイル内で測定対象の磁場又は磁場勾配によって発生される磁束が、結合コイルから生じる磁場に最も効率良く変換される。結合コイルとピックアップコイルの直径が異なる場合、それに対応して、同じインダクタンスを実現するように巻き数を適合させることができる。コイルのインダクタンスは、コイルの直径にほぼ線形比例し、かつコイルの巻き数の2乗に比例する。したがって、結合コイルとピックアップコイルの巻き数の比が、結合コイルとピックアップコイルの直径の比の平方根(以下、qと呼ぶ)と少なくとも同じ大きさであることが有利である。巻き数の比がqにちょうど等しい場合、センサでの磁場が、ピックアップコイルでの磁場に対して最大に増幅される。その際、約100の増幅率を実現することができる。
【0021】
非特許文献4で使用された帯状の超電導体は、5mm未満の半径に曲げられるとその超電導性が失われるので(非特許文献4での「Experimental」の項)、3mm以下の結合コイル直径を実現することはできない。
【0022】
本発明の特に有利な一形態では、磁場源が、導体ループによって包囲されている領域内に少なくとも部分的に配置される。そのような構成では、導体ループと磁場源の間で特に短い導線長さを実現可能である。理想的な場合には、いずれにせよ存在する導体ループ以外には磁場源のための追加のリード線が全く必要ないように、磁場源を導体ループに組み込むことができる。
【0023】
有利には、時定数を約1ms〜約10sの広い範囲で選択することができる。このために、有利には、電力消費領域の電気抵抗は10−11Ω〜10−5Ωの間、好ましくは10−11Ω〜10−6Ωの間である。
【0024】
常導電性の磁束変換器で典型的な1Ωのオーダーでの抵抗は、その熱雑音(ナイキスト雑音)によって既に測定精度を低下させていた。1kHz未満の周波数では、最終的に少なくとも10pT/Hz1/2の雑音でしか磁場測定を行うことができず、したがって生体磁気測定又は地磁気測定は非常に限定的にしか可能でなかった。また、電流回路の、全インダクタンスと全抵抗とからの除算として得られる循環電流に関する緩和時間は、10nH〜100μHの間の典型的なインダクタンスでは10μs未満であった。これは、多くの用途では短すぎた。
【0025】
一方、磁束変換器が、ほぼ0Ωから約10−20Ωの精度までの抵抗で完全に超電導性であった場合、この状態では磁束変換器でエネルギーが全く消費されなかった。したがって、擾乱する外部磁場又は磁場勾配の依然として非常にゆっくりとした各変化が、電気エネルギーの形で磁束変換器に累積された。このエネルギーは、導電性材料がその遷移温度を超えるまで温度上昇されたときに初めて、磁束変換器内で完全に消費された。通常は、導電性材料の臨界電流を短時間だけ超えたときに、このエネルギーが一部のみ消費された。例えばヘリコプターから地磁気磁場測定が行われた場合、ヘリコプターが方向転換した際に地磁場に対する向きを変えたとき、磁束変換器は通常、加熱そして新たな冷却後に初めて再び計測準備状態になった。
【0026】
本発明による測定機器は、どちらの欠点もなくし、そのために感度を損なう必要もない。この測定機器で使用される、抵抗値が非常に小さいが零ではない低雑音抵抗器は、磁束変換器及びセンサにだけでなく、いくつかの別の構造の超電導電子回路、例えばRSFQや量子コンピュータにも使用することができる。
【0027】
磁束変換器のインダクタンスLは、ピックアップコイル、結合コイル、及び全ての接続している要素のインダクタンスの和から構成される。有利には、磁束変換器のインダクタンスLは、全体として1nH〜1mHの間、好ましくは10nH〜100μHの間である。この範囲内のインダクタンスは、本発明のさらなる特に有利な形態を実現するのに特に適している。このさらなる特に有利な形態では、少なくとも母材が超電導状態にあるときに、磁束変換器内を循環する電流の緩和時間τが1ms〜10s、好ましくは3ms〜300sの間である。緩和時間のそのような選択可能範囲により、本発明による測定機器を用いて、1MHzの周波数スケールでの速い現象も、l/(2πτ)のオーダーの周波数で変化する磁場及び磁場勾配も測定することができる。有効な測定のためには、最小回数の振動を当該緩和時間内に検知可能であることがその都度必要である。測定システムの感度に関しては、l/(2πτ)よりも高い周波数では、電力消費領域のナイキスト雑音が大幅に減少することが特に重要である。
【0028】
磁束変換器は、実質的には、時間可変信号に関するRL回路である。このRL回路では、Rは電力消費領域の電気抵抗であり、Lは磁束変換器のインダクタンスである。このRL回路の時定数τにとって重要なパラメータは、その全抵抗である。電力消費領域の抵抗Rが小さければ小さいほど、時定数τ=L/Rが大きくなり、測定機器が測定することができる最小周波数(「カットオフ周波数」)f=R/(2πL)=l/(2πτ)が小さくなる。この測定機器で実現されるほぼ零の抵抗値は、常導電性の磁束変換器を用いた測定に比べて、周波数範囲を下限カットオフ周波数f≒1Hz、さらにはそれ未満まで広げる。したがって、この測定機器によって、1Hz未満〜約1MHzの全周波数範囲をカバーすることができ、この周波数範囲の上限は、物理的な限界ではなく、より速い制御電子回路に対応する使用可能性によって定められる。
【0029】
本発明の特に有利な一形態では、測定対象の磁場又は磁場勾配から補助磁場への変換を記述する磁束変換器の伝達関数は高域通過形である。当該高域のカットオフ周波数fは、有利には、1μHz〜1kHz、好ましくは3mHz〜300Hzである。このとき、磁束変換器は、補助磁場を介さない測定対象の磁場の直接的な測定とは対照的に、特に擾乱静磁場又は静磁場勾配、あるいはゆっくりと変化する擾乱磁場又は磁場勾配が、補助磁場に関与せず、したがって一緒に測定されないという効果をもたらす。したがって、高感度センサが擾乱磁場のみによって既に物理的に飽和限界に達し、実際の測定信号が、高いペデスタル信号(Sockelsignal)上の小さな変調にすぎなくなることが妨げられる。センサの前で擾乱磁場を物理的に分離することにより、センサのダイナミクス及び感度を、磁場の測定対象の時間可変部分のために完全に利用することができる。これは、生体磁気測定及び地磁気測定に関して、及び非破壊材料検査及び材料研究に関して特に有利である。さらに、これらの測定において広い周波数帯域からの信号が生じる。したがって、これらの測定に関して、本発明のさらなる一形態が特に有利であり、その形態は、測定対象の磁束から補助磁場への変換を記述する磁束変換器の伝達関数が、高域のカットオフ周波数f〜1MHzの間の周波数に対して透過性があるようなものである。
【0030】
本発明の特に有利な一形態では、センサは超電導量子干渉素子(SQUID)である。SQUIDsは、多くの他の特性と併せて約1fT/Hz1/2のその感度に関して、多くの用途において依然として最も優れたものである。SQUIDsは、超電導状態を保つために冷却を必要とするが、本発明によれば磁束変換器が既に超電導性構成要素を含むので、冷却に必要な技法は既に備わっている。SQUIDは、超電導性ループを含むことができ、これは、少なくとも1つ(rf−SQUID)又は2つ(dc−SQUID)のジョセフソン接合によって中断される。合計で3つ(3JJ−SQUID)のジョセフソン接合によって中断された2つの超電導性ループを含むこともできる。SQUIDs以外の他の磁場センサを使用することもでき、例えば、磁束変換器によって増幅及びフィルタされた磁場又は磁場勾配を測定するためのGMR、CMR、ホール磁場センサ又はフラックスゲート磁場センサである。これらのセンサはSQUIDよりも感度が低いが、導体ループ及び磁場源しか冷却することができず、センサは冷却することができない用途には特に適している。
【0031】
本発明の特に有利な形態では、磁場源はセンサの一部である。例えば、磁場源としての1回巻きの超電導コイルは、1つ又は複数のジョセフソン接合によって中断することができる。このとき、ジョセフソン接合を有するコイルがSQUIDを形成し、このSQUIDは、導体ループから流された電流が同じコイルを通過する際に発生する磁束を測定する(「直接結合されたSQUID」)。重ね合わせの原理に基づいて、導体ループから流される電流と、ジョセフソン接合で生成される信号とがコイル内で擾乱することなく重畳されるので、そのような構成が可能である。
【0032】
本発明の特に有利な一形態では、導体ループによって囲まれた面積にわたって空間的に均質な測定対象の磁場の変化が磁場源を通る電流を変えないように、導体ループと磁場源が接続される。このとき、この測定機器は、導体ループの位置での磁場の空間的勾配のみを測定するグラジオメータである。
【0033】
本発明の特に有利な一形態では、電力消費領域が、超電導状態に相転移しない材料を含む。そのような材料は、遷移温度未満への母材の冷却時には常導電性又は絶縁性のままであり、そのときには電気抵抗源となる。例えば、電力消費領域は、超電導電極間のトンネル接合のトンネル障壁を含むことができる。このとき、母材及び超電導電極の材料が例えばNb、NbN、NbSN、NbTa、NbTi、又はMgBなどの低温超電導体であるときには、電力消費領域は、AlO、MgO、AlN、又はMgO−NiO−MgOから成る群からの非常に薄い絶縁体材料を含むことが有利である。母材として遷移温度が50Kよりも高い高温超電導体を使用するとき、ここでは特に、式ZBaCu7−xによる化合物が適しており、ここでZは、Y、Nd、Gd、Ho、Sm、Tm、Tb、Dy、Yb、Er、又はEuから成る群からの元素である。例えば、YBaCu7−xは、遷移温度が約93Kである。YBaCu7−xが、母材及び超電導電極の材料であるとき、材料PrBaCu7−x又はSrTiOがトンネル障壁に特に適している。典型的な厚さが100nm未満の絶縁体層を制御下で製造するために、トンネル接合は主に薄層構造である。
【0034】
しかしまた、電力消費領域は、銀、金、白金など常導電性金属、又はそれらの合金を含むこともできる。このとき、複雑なトンネル接合を形成する必要なく、これらの金属の常導電抵抗を利用することができる。母材が、式ZBaCu7−xによる化合物を含む高温超電導体であるとき、特に銀、金、白金、又はそれらの合金を、特に小さい接触抵抗で、この母材から成る電極と結合することができる。母材が、Nb、NbN、NbSN、NbTa、NbTi、又はMgBなどの低温超電導体である場合、銀、金、白金、又はそれらの合金に対する無視できるほど小さい接触抵抗を実現することがさらに簡単になる。さらに、低温超電導体から成る母材では、常導電性金属(例えば銀、金、白金、又はそれらの合金)が下側超電導電極と上側超電導電極の間に配置された積層を形成することができる。さらに、母材として低温超電導体を使用する場合には、常導電性の箔と、この箔の両側に堆積された低温超電導体層とに基づいて、低抵抗の抵抗器を比較的簡単に製造することもできる。
【0035】
本発明の特に有利な一形態では、電力消費領域は、基板上に、互いに離隔された電極から成る同一平面構造を含み、これらの電極は特に導体ループの母材を含むことができる。その際、電極は、特に薄層として形成することができる。電極は、ループ状に形成することができる。遷移温度未満で超電導性を有する電極が、常導電性抵抗層によって接続される。この種の構造は、磁気雑音をわずかしか発生せず、光リソグラフィ又は電子線リソグラフィによって多くの形状に仕上げることができる。これらの構造の抵抗は、超電導電極間の常導電性層の抵抗と、常導電性層と超電導電極の間の2つの接触抵抗との和である。接触抵抗は、できるだけ小さくすべきであり、理想的には無視できるようにする。電極どうしの距離は、一方では、常導電性層の抵抗を最小にするように短くすべきである。しかし、超電導性短絡をなお防げるように十分に長くしなければならない。また、電極が互いに離隔して向かい合いながら延びている可能な限り長い当該距離を実現することが望ましい。これらの電極間の当該距離が長いほど、構造の抵抗は小さい。電極が蛇行状に形成された本発明の有利な一構成において、特に小さい抵抗と同時に比較的小さい磁気雑音が得られる。櫛型構造を用いると、磁気雑音がより高くなるものの、より小さい抵抗を得られる。ここで、常に、それぞれ一方の電極の「指」と他方の電極の「指」が隣接し、互いに離隔して配置される。
【0036】
例えば導体ループの母材が、式ZBaCu7−xによる化合物を含む高温超電導体である場合、同じ材料から成るエピタキシャル層を、最良にはMgO又はSrTiOから成る基板上で成長させる。どちらの材料も絶縁体であり、薄層構造の伝達特性に影響を及ぼさない。抵抗層材料としては、小さな比抵抗と、ZBaCu7−xに対する小さな接触抵抗ゆえに、銀、金、白金、又はそれらの合金を使用するのが有利である。
【0037】
本発明の有利な代替形態では、電力消費領域が、電極と、電極間に配置された抵抗層とから成る積層を含む。その際、電極は、その遷移温度未満で超電導性である。電極は、抵抗層によって電気的に接続される。この形態は、電極が母材からなり、この母材がニオブなどの低温超電導体であるときに特に有用である。電極が高温超電導体から成る場合、そのような積層をいわゆるフリップチップ技術で実現することができる。2つの異なる基板上に2つの超電導電極をエピタキシャル成長させて製造し、フォトリソグラフィで構造化し、基板間に配置された常導電性層によって電気的に互いに接続することができる。その際、常導電性層は特に、基板の合体前に一方の基板又は両方の基板上に存在する層から形成することができる。
【0038】
磁場源と電力消費領域を同じ基板上に薄層として構造化することができ(「一体化」)、あるいは別個の基板上に構造化し、基板の構造化された表面どうしを合わせることもできる(「フリップチップ」技術)。また、導体ループと磁場源を同じ基板上に薄層として構造化することができ(「一体化」)、あるいは別個の基板上に構造化し、基板の構造化された表面どうしを合わせることもできる(「フリップチップ」技術)。センサと磁場源を同じ基板上に構造化することができ(「一体化」)、あるいは別個の基板上に構造化し、基板の構造化された表面どうしを合わせることもできる(「フリップチップ」技術)。磁場源とセンサの一体化は、磁場源がセンサの一部となるように行うこともできる。センサがSQUIDである好ましい形態では、特に、1つ又は複数のジョセフソン接合によって中断されたSQUIDの導体ループが同時に磁場源として働くことができ、この磁場源が、導体ループによって画定された面に補助磁場を印加する。この原理は、母材が高温超電導体であるときに最も良く適している。それに対し、母材が低温超電導体であるときには、磁場源がSQUIDから電気的に絶縁され、したがってSQUIDに誘導結合しかされていないときに、より良い結果が達成される。
【0039】
これらの形態は全て、大量生産で一般によく用いられるフォトリソグラフィ構造化技法を用いて製造することができるという利点を有する。
【0040】
本発明のさらなる有利な一形態では、センサと磁場源が磁気遮蔽内にある。このとき、導体ループは、依然として遮蔽の外に置くことができる。導体ループが、ゆっくりと変化する外部擾乱磁場を受けるか、又はそのような磁場によって移動される場合、それにより導体ループに及ぼされた電気エネルギーは、電力消費領域によって消費される。
【0041】
本発明による測定機器は、ほぼ零に調整された電力消費領域の抵抗値を利用する。既に上述したように、そのような低雑音抵抗器は、磁束変換器及びセンサにだけでなく、いくつかの別の構造の超電導電子回路、例えばRSFQや量子コンピュータにも使用することができる。したがって、本発明はまた、一般に、10−4Ω以下、好ましくは10−6Ω以下の零でない抵抗値を有する電気抵抗素子に関する。この抵抗素子は、2つの特に有利な実施形態を有することができる。
・互いに離隔された電極から成る同一平面構造であって、電極は、常導電性抵抗層によって電気的に接続され、特に基板上に配置することができ、電極を特に蛇行状に形成することができる、及び/又は構造を櫛型構造で形成することができる同一平面構造。及び/又は
・間に常導電性抵抗層が配置された電極から成る積層。
【0042】
その際、電極の材料は、それぞれ超電導状態に相転移する。電極は、特にフォトリソグラフィで構造化することができる。
【0043】
常導電性抵抗層は、特に、常導電性金属、特に好ましくは金、銀、白金、又はこれらの元素を含む合金から成ることがある。また、積層は、常導電性金属から成る薄い箔を含むこともでき、箔は両側を、超電導状態に相転移する材料でそれぞれ被覆される。
【0044】
この構成手法、及び抵抗素子を使用する超電導回路内の場所に関するさらなる境界条件を基に、当業者は、当業者に周知の従来の電気力学的な方法を用いて、所与の抵抗値を有する具体的な形態を実現することができる。
【0045】
本発明による測定機器(これはまた、以下に説明する本発明による方法を実施するための装置の最初の実現形態である)の主要素として抵抗素子を使用可能であるので、測定機器に関連して提示する抵抗素子に関する開示の範囲は、明示的に、抵抗素子自体にも及ぶ。
【0046】
本発明はまた、生体磁気測定用、地磁気測定用、非破壊材料検査用、及び/又は材料研究用の測定システムであって、本発明による測定機器又は本発明による電気抵抗素子を含む測定システムに関する。これらの用途では、本発明による各利点が、測定システムの感度、スペクトル帯域幅、及びダイナミックレンジの面で特に有用となる。
【0047】
以下、本発明の対象を図面に基づいてより詳細に説明するが、それによって本発明の対象を限定はしない。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明による測定機器の実施例を示す図である。
【図2】本発明による抵抗素子(「電力消費領域」)の可能な形態を示す図である。:中間層として抵抗層又はトンネル障壁を有する積層(図2a)、2つの蛇行状に形成された電極の同一平面構造(図2b)、及び2つの電極の櫛型構造(図2c)。
【図3】「フリップチップ」技術で製造可能な本発明による測定機器のさらなる実施例を示す図である(図3a);構造要素にセンサ及び磁場源として直接結合されたSQUIDを示す図である(図3b)。
【図4】それぞれグラジオメータとして作用する、ピックアップコイルと結合コイルの回路構成の実施例を示す図である:中央に接続部として結合コイルを有する構造(図4a及び図4b)と、2つの交差する部分ループを有する構造(図4c)又は3つの交差する部分ループを有する構造(図4d)。
【発明を実施するための形態】
【0049】
図1に、本発明による測定機器の実施例を示す。この磁束変換器は、ピックアップコイル1としての超電導性導体ループと、電力消費領域としての低抵抗の抵抗器2と、結合コイルとしての超電導コイル3との直列接続から成る電流回路である。この実施形態では、ピックアップコイル1を通る磁束の各変化が、コイル3を通る電流に作用し、したがってコイル3によって発生される補助磁場に関与する。補助磁場は、超電導量子干渉素子(SQUID)4によって測定される。
【0050】
図2は、電力消費領域2として使用することができる本発明による電気抵抗素子の3つの可能な形態を示す。
【0051】
図2aは、電極21a及び21bと、電極間に配置された抵抗層22とから成る積層に関する実施例を通る断面図である。電極21a及び21bは、低温超電導母材(Nb、NbN、NbSn、NbTa、NbTi、又はMgB)又は高温超電導母材(例えば、式ZBaCu7−x(ここでZは特にイットリウムでよい)による超電導材料)から成る。抵抗層22としては、絶縁体を提供することができ(トンネル障壁の場合のみ)、又は常電導性材料を提供することができる。
【0052】
図2bは、縮尺通りには示されていない、超電導電極23aと23bの同一平面構造に関する実施例の概略上面図である。電極は、低温超電導母材(Nb、NbN、NbSn、NbTa、NbTi、又はMgB)又は高温超電導母材(例えば、式ZBaCu7−x(ここでZは特にイットリウムでよい)による超電導材料)からなり、MgO又はSrTiOから成る絶縁基板(図2bには図示せず)の上に堆積される。電極23aと電極23bは、例えば50μmの距離だけ離して互いに隣接して配置される。したがって、電極23aと電極23bは、離隔して隣接して配置され、常電導性材料24によって互いに電気的に接続される。常電導性材料24に沿った蛇行経路はかなりの長さを有する。この経路は、約1cmである全体構造の辺の長さよりも明らかに長い。例えば、常電導性材料24は、図2b下の断面図で明らかなように、横方向構造化抵抗層として電極23a及び23bの上に堆積することができる。
【0053】
そのようにして形成された抵抗素子の全抵抗は、以下のように与えられる。
【数1】

ここで、ρは、常導電性抵抗層を形成する材料(例えば銀)の比抵抗であり、dは、抵抗層の厚さ(典型的には約1μm)である。lは、2つの超電導電極23aと23bの間の距離(典型的には50μm)であり、wは、超電導電極23aと23bの間の蛇行状の常導電性接続に沿って測定された、常導電性抵抗層24(「電力消費領域」)の実効幅(約100cm)である。抵抗層の材料である銀は、低温で約1μΩcmの比抵抗ρを有し、したがって、図2bに示される構成に関して、電極23a及び23bが超電導状態である限り、抵抗Rは全体として5×10−7Ωになる。
【0054】
図2cは、縮尺通りには示されていない、超電導電極25a及び25bの櫛型構造に関する実施例の概略上面図を示す。電極は、低温超電導母材(Nb、NbN、NbSn、NbTa、NbTi、又はMgB)又は高温超電導母材(例えば、式ZBaCu7−x(ここでZは特にイットリウムでよい)による材料)からなり、MgO又はSrTiOから成る絶縁基板(図2cには図示せず)の上に堆積される。それぞれ電極25aの「指」26aと電極25bの「指」26bは、例えば50μmの距離だけ離して互いに隣接して配置される。したがって、電極25aと電極25bは、離隔して隣接して配置され、常電導性材料27によって互いに電気的に接続される。2つの指型電極26aと26bの間隙での蛇行経路は、かなりの長さを有する。この経路は、約1cmである全体構造の典型的な辺の長さよりも明らかに長い。この経路に沿って、電極25aと25bの間の抵抗を有する電気接続部分が、櫛型構造の上に堆積される抵抗層によって形成される。構造の辺の長さを同じと仮定すると、図2cによる構成は、図2bによる構造よりも抵抗が小さいが、雑音がかなり大きいと予想することができる。
【0055】
図3aは、縮尺通りには示されていない、本発明による測定機器のさらなる実施例の概略上面図を示す。第1の基板5aの上に超電導ピックアップコイル1が構造化され、ピックアップコイル1は、低抵抗の抵抗器2を介して結合コイル3に電流を流し、結合コイル3は、ここでは渦巻形の超電導コイルとして構成され、同じ基板5aの上に構造化される。この結合コイル3は、ピックアップコイル1によって包囲されている領域内に配置される。ここで、センサ4は、SQUIDとして構成され、超電導体41を含み、この超電導体41は、2つのジョセフソン接合42a及び42bによって中断され、2つの金属接点43a及び43bによって評価ユニット(図3には図示せず)と接触される。センサ4は、第2の基板5bの上に構造化される。2つの基板5aと基板5bの構造化された表面どうしを合わせることによって一体化して、本発明による測定機器を形成する。そのために、例えば基板5aを基板5bの上に被せることができる(「フリップチップ」技法)。ここで、コイル3は超電導体41の中に位置し、それにより、コイル3によって発生される補助磁場をSQUID4によって記録することができる。
【0056】
図3bは、本発明による測定機器の実施例を示し、この実施形態では、磁場源3がセンサ4(ここではSQUIDとして形成されている)の一部である。磁場源3(ここでは結合コイル)は、同時に1回巻きのコイルでもあり、このコイルは、2つのジョセフソン接合によって中断され、それによりSQUID4を形成する。ピックアップコイル1から結合コイル3に流される電流は、SQUIDが感度を持つ領域の境界に沿って流れるが、ジョセフソン接合を通っては流れない(図3bの矢印によって示される)。したがって、この電流は、SQUID内で補助磁場を直接発生し、同時にこの補助磁場の測定を擾乱することはない。
【0057】
図4は、結合コイル3及び超電導ピックアップコイル1の回路構成の4つの実施例を示し、ピックアップコイル1にわたって均質な測定対象の磁束の変化は、超電導結合コイル3を通る電流を変えない。図4a〜図4dはそれぞれ、縮尺通りには示されていない概略上面図である。
【0058】
図4aでは、ピックアップコイル1は楕円形に構成される。その短軸に、渦巻形のコイル3と低抵抗の抵抗器2から成る直列接続が配置される。ピックアップコイル1にわたって空間的に均質な測定対象の磁場の変化により、2つの大きさが同じであり逆向きの電流AとBがピックアップコイル1内で誘発され、これらが互いに打ち消し合い、したがって結合コイル3を通る電流に関与しない。図4bでは、ピックアップコイル内に2つのさらなる抵抗器(「電力消費領域」)がさらに組み込まれ、それらの抵抗器によって、電流AとBはさらにピックアップコイル内で高域フィルタにかけられて消費される。
【0059】
同じ原理が図4cでも実現される。ここでは、ピックアップコイル1が、2つの交差する同一平面内の部分ループからなり、数学の無限の記号(∞)の形状を有する。
【0060】
図4a〜図4cに示される構成は、1次微分グラジオメータである。ピックアップコイル1にわたって空間的に均質な測定対象の磁場の変化はいずれも、結合コイル3を通る電流を生じない。ピックアップコイル1にわたって空間的に不均質な測定対象の磁束の変化のみが、大きさが異なる電流AとB、したがって結合コイル3を通る差電流を生じ、これが補助磁場を発生する。この補助磁場は、センサ(図4には図示せず)によって記録することができる。
【0061】
図4dは、2次微分グラジオメータを示す。これは、3つの部分ループからなり、時間可変磁場又は時間可変磁場勾配が、各場合に1つの電流A、B、又はCを誘発する。ここで、中央の部分ループは、他の2つの部分ループの和と同じ面積を有する。3つの部分ループは2ヶ所で交差する。空間的に均質な測定対象の磁場の変化の場合にも、1次勾配の形態での変化の場合にも、3つの電流A、B、及びCが打ち消し合い、したがって結合コイル3を通って電流は流れない。2次勾配の場合にのみ、電流が打ち消し合わなくなる。すると、結合コイル3に電流が流れ、センサで検出することができる補助磁場を発生する。
【0062】
同じ原理を高次微分グラジオメータでも使用可能である。
【0063】
全ての4つの構成は、結合コイル3の少なくとも一部がピックアップコイル1によって包囲されている領域内に配置されている点で共通している。むしろ、ピックアップコイル1自体以外に、結合コイル3用の追加のリード線が不要である点が当該構成にとって理想的な場合である。
【符号の説明】
【0064】
1 ピックアップコイル
2 電力消費領域、低抵抗の抵抗器
3 結合コイル
4 センサが超電導量子干渉素子(SQUID)
5a 基板
5b 基板
23a 超電導電極
23b 超電導電極
24 常電導性材料
25a 超電導電極
25b 超電導電極
26a 指
26b 指
27 常電導性材料
41 超電導体
42a ジョセフソン接合
42b ジョセフソン接合
43a 金属接点
43b 金属接点
A 電流
B 電流
C 電流

【特許請求の範囲】
【請求項1】
時間変動する磁場又は磁場勾配のための測定機器であって、
当該測定機器は、磁束変換器を備え、この磁束変換器は、時間変動する磁束又は磁束勾配を電流に変換するための、超電導状態に相転移する母材を有する導体ループと、前記電流を補助磁場に変換するための、前記導体ループから通電された磁場源とを備え、且つ
当該測定機器は、前記補助磁場のためのセンサを備え、前記磁束変換器は、前記母材が超電導状態にある時でも、前記導体ループと前記磁場源とを有する電流回路内の電気エネルギーを消費する少なくとも1つの抵抗領域(電力消費領域)を備える当該測定機器において、
前記導体ループ及び前記磁場源は、一平面内に配置されていることを特徴とする測定機器。
【請求項2】
前記導体ループ及び/又は前記磁場源は、1μm以下の層厚さを有する薄層として形成されていることを特徴とする請求項1に記載の測定機器。
【請求項3】
前記磁場源の材料が、超電導状態に相転移することを特徴とする請求項1又は2に記載の測定機器。
【請求項4】
前記導体ループ(「ピックアップコイル」)及び/又は前記磁場源(「結合コイル」)は、それぞれ少なくとも1回巻きのコイルであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の測定機器。
【請求項5】
前記ピックアップコイルは、1cm以上の直径を有することを特徴とする請求項4に記載の測定機器。
【請求項6】
前記ピックアップコイルは、3cm以上の直径を有することを特徴とする請求項5に記載の測定機器。
【請求項7】
前記ピックアップコイルは、5cm以上の直径を有することを特徴とする請求項6に記載の測定機器。
【請求項8】
前記結合コイルは、3mm以下の直径を有することを特徴とする請求項4〜7のいずれか1項に記載の測定機器。
【請求項9】
結合コイルとピックアップコイルとの直径の比は、最大で0.1であることを特徴とする請求項4〜8のいずれか1項に記載の測定機器。
【請求項10】
前記結合コイルは、前記ピックアップコイルのインダクタンスの80%と120%との間のインダクタンスを有することを特徴とする請求項4〜9のいずれか1項に記載の測定機器。
【請求項11】
前記ピックアップコイルと前記結合コイルは、同じインダクタンスを有することを特徴とする請求項10に記載の測定機器。
【請求項12】
結合コイルとピックアップコイルとの巻き数の比は、結合コイルとピックアップコイルとの直径の比の平方根と少なくとも同じ大きさであることを特徴とする請求項4〜11のいずれか1項に記載の測定機器。
【請求項13】
前記磁場源の少なくとも一部が、前記導体ループによって包囲されている領域内に配置されていることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の測定機器。
【請求項14】
前記電力消費領域は、10−11Ωと10−5Ωとの間の電気抵抗を有することを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載の測定機器。
【請求項15】
前記電力消費領域は、10−11Ωと10−6Ωとの間の電気抵抗を有することを特徴とする請求項14に記載の測定機器。
【請求項16】
前記磁束変換器は、1nHと1mHとの間のインダクタンスを有することを特徴とする請求項1〜15のいずれか1項に記載の測定機器。
【請求項17】
前記磁束変換器は、10nHと100μHとの間のインダクタンスを有することを特徴とする請求項16に記載の測定機器。
【請求項18】
前記母材が、少なくとも超電導状態にある時でも、前記磁束変換器内で循環する電流の緩和時間τは、1msと10sとの間にあることを特徴とする請求項1〜17のいずれか1項に記載の測定機器。
【請求項19】
前記母材が、少なくとも超電導状態にある時でも、前記磁束変換器内で循環する電流の緩和時間τは、3msと300sとの間にあることを特徴とする請求項18のいずれか1項に記載の測定機器。
【請求項20】
測定対象の磁場又は磁場勾配から補助磁場への変換を記述する前記磁束変換器の伝達関数は、高域通過形伝達関数であることを特徴とする請求項1〜19のいずれか1項に記載の測定機器。
【請求項21】
前記高域通過形伝達関数は、1μHzと1kHzとの間のカットオフ周波数fを有することを特徴とする請求項20に記載の測定機器。
【請求項22】
前記高域通過形伝達関数は、3mHzと300Hzとの間のカットオフ周波数fを有することを特徴とする請求項21に記載の測定機器。
【請求項23】
測定対象の磁束から前記補助磁場への変換を記述する前記磁束変換器の伝達関数は、前記高域通過形伝達関数のカットオフ周波数fと1MHzとの間の周波数に対して透過性であることを特徴とする請求項20〜22のいずれか1項に記載の測定機器。
【請求項24】
前記センサは、超電導量子干渉素子(SQUID)であることを特徴とする請求項1〜23のいずれか1項に記載の測定機器。
【請求項25】
前記磁場源は、前記センサの一部であることを特徴とする請求項1〜24のいずれか1項に記載の測定機器。
【請求項26】
前記導体ループによって包囲されている面にわたって空間的に均質な、測定対象の磁場の変化が、前記磁場源に通電する電流を変えないように、前記導体ループと前記磁場源とが接続されていることを特徴とする請求項1〜25のいずれか1項に記載の測定機器。
【請求項27】
前記母材は、Nb、NbSn、NbTa、NbTi、NbN又はMgBを有することを特徴とする請求項1〜26のいずれか1項に記載の測定機器。
【請求項28】
前記母材は、化学式ZBaCu7−xによる化合物を有し、Zは、Y、Nd、Gd、Ho、Tm、Tb、Dy、Yb、Sm、Er又はEuの群に由来する1つの元素であることを特徴とする請求項1〜27のいずれか1項に記載の測定機器。
【請求項29】
前記電力消費領域は、超電導状態に相転移しない材料を有することを特徴とする請求項1〜28のいずれか1項に記載の測定機器。
【請求項30】
前記電力消費領域は、絶縁体材料を有することを特徴とする請求項29に記載の測定機器。
【請求項31】
前記電力消費領域は、トンネル接合を有することを特徴とする請求項29又は30に記載の測定機器。
【請求項32】
前記電力消費領域は、AlO、MgO、AlN、MgO−NiO−MgO、PrBaCu7−x又はSrTiOの群に由来する1つの絶縁体材料を有することを特徴とする請求項30又は31に記載の測定機器。
【請求項33】
前記電力消費領域は、常導電性の金属を有することを特徴とする請求項1〜32のいずれか1項に記載の測定機器。
【請求項34】
前記電力消費領域は、Ag、Au、Pt又はこれらの合金の群に由来する常導電性の金属を有することを特徴とする請求項33に記載の測定機器。
【請求項35】
前記電力消費領域は、前記常導電性の金属から成る箔を有し、前記箔の両面がそれぞれ、低温の超電導母材から成る層を有することを特徴とする請求項33又は34に記載の測定機器。
【請求項36】
前記電力消費領域は、互いに離隔された複数の電極から成る同一平面構造を基板上に有し、前記複数の電極は、常導電性の抵抗層によって電気接続されていることを特徴とする請求項1〜35のいずれか1項に記載の測定機器。
【請求項37】
前記複数の電極は、蛇行状に形成されていることを特徴とする請求項36に記載の測定機器。
【請求項38】
前記複数の電極は、櫛型構造であることを特徴とする請求項36又は37に記載の測定機器。
【請求項39】
前記電力消費領域は、複数の電極から成る積層を有し、常導電性の1つの抵抗層が、これらの電極間に配置されていることを特徴とする請求項1〜38のいずれか1項に記載の測定機器。
【請求項40】
前記磁場源と前記電力消費領域とは、薄層として同じ基板上に構造化されているか、又は別個の基板上に構造化されていて、前記別個の基板の構造化された表面どうしが継ぎ合わされていることを特徴とする請求項1〜39のいずれか1項に記載の測定機器。
【請求項41】
前記導体ループと前記磁場源とは、薄層として同じ基板上に構造化されているか、又は別個の基板上に構造化されていて、前記別個の基板の構造化された表面どうしが継ぎ合わされていることを特徴とする請求項1〜40のいずれか1項に記載の測定機器。
【請求項42】
前記センサと前記磁場源とは、薄層として同じ基板上に構造化されているか、又は別個の基板上に構造化されていて、前記別個の基板の構造化された表面どうしが継ぎ合わされていることを特徴とする請求項1〜41のいずれか1項に記載の測定機器。
【請求項43】
前記センサと前記磁場源とは、磁気遮蔽内にあることを特徴とする請求項1〜42のいずれか1項に記載の測定機器。
【請求項44】
10−4Ω以下の零でない抵抗値を有する電気抵抗素子において、
当該電気抵抗素子は、互いに離隔された複数の電極から成る同一平面構造を有し、これらの電極は、常導電性の抵抗層によって電気接続されていて、これらの電極の材料が、超電導状態に相転移することを特徴とする電気抵抗素子。
【請求項45】
前記電極は、蛇行状に形成されていることを特徴とする請求項44に記載の電気抵抗素子。
【請求項46】
前記同一平面構造は、櫛型に形成されていることを特徴とする請求項44又は45に記載の電気抵抗素子。
【請求項47】
10−4Ω以下の零でない抵抗値を有する電気抵抗素子において、
当該電気抵抗素子は、複数の電極から成る積層を有し、1つの常導電性の抵抗層が、これらの電極間に配置されていて、これらの電極の材料が、超電導状態に相転移することを特徴とする電気抵抗素子。
【請求項48】
前記積層は、常導電性の金属から成る箔を有し、この箔の両面がそれぞれ、超電導状態に相転移する材料で被覆されていることを特徴とする請求項47に記載の電気抵抗素子。
【請求項49】
前記電気抵抗素子は、10−6Ω以下の零でない抵抗値を有することを特徴とする請求項44〜48のいずれか1項に記載の電気抵抗素子。
【請求項50】
生体磁気測定用、地磁気測定用、非破壊材料検査用及び/又は材料研究用の測定システムにおいて、
当該測定システムは、請求項1〜49のいずれか1項に記載の測定機器又は電気抵抗素子を有することを特徴とする測定システム。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図4d】
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【公表番号】特表2012−530895(P2012−530895A)
【公表日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−515351(P2012−515351)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【国際出願番号】PCT/DE2010/000561
【国際公開番号】WO2010/145631
【国際公開日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【出願人】(390035448)フォルシュングスツェントルム・ユーリッヒ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (100)
【Fターム(参考)】