説明

時間差アクセス方式を利用した無線通信システム及び無線通信方法

【課題】基地局と複数の端末との間の無線チャネルアクセスの競合を回避可能にしつつ、端末での電力消費を抑制可能な無線通信システム及び無線通信方法を提供する。
【解決手段】通信システム10はビーコンを送信する基地局1と複数の端末2A〜2Cとを備える。ビーコン周期Tはビーコン区間Tと通信区間Tとからなる。基地局は、通信区間内のスロットTを、予約状態の端末の次周期以降のデータ送信のために割り当てる予約スロットと、予約状態に無い端末のデータ送信のために割り当てる未予約スロットと、に区分する。予約の無い端末は、基地局から受信したビーコンに付加された未予約スロットからランダムに選択したスロットにてデータ送信開始時刻を設定し、データ送信の際にはランダムバックオフを行う。これに対し、予約有りの端末は、予約スロットにてデータ送信開始時刻を設定し、データ送信の際にはランダムバックオフの省略を可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CSMA/CA通信方式に改良を施した無線通信システムに関し、より具体的には、基地局と複数の端末との間の無線チャネルアクセスの競合を回避可能にしつつ、端末での電力消費を抑制可能な無線通信システム及び無線通信方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、低酸素社会や持続的社会の実現に向け、電気などのエネルギー利用の効率化のための情報通信技術の利用に関する研究開発が、日本国内外を問わず活発化している。特に、国土レベルでの広範なエリアに存在する多数の端末が生成するデータ流をインターネット経由でデータセンタ等へ配送する通信システムでは、各端末とインターネット・ゲートウェイとを接続する省資源・省電力型の無線センサデータ中継網の構築が要望されている。
【0003】
例えば、電力利用の最適化を目的とするスマートグリッド(次世代送電網)、スマートメータ(通信機能を備えた電気、ガス、水道などの自動検針装置)が注目を集めているが、このようなシステムやサービスで観測を行うエリアは、一般に広域であり、田園地域や人口密集地域など様々な環境が含まれる。対象エリアに複数の基地局を配置し、周辺の各端末から観測データを受け取る。端末は、静止した物体に固定的に配置される場合と鳥獣、歩行者、自転車、車などの移動体に取り付けられる場合とが想定される。このように、端末は、電力を常に供給できる場所に置かれているわけではない。従って、多数の端末における電力エネルギーと無線通信帯域とを効率的に利用しながらデータ配送を行うための無線センサデータ中継網の構築が望まれる。
【0004】
端末と基地局との間の無線通信に関する従来技術として、無線LANが挙げられる。無線LANでは基地局のことをアクセスポイントと呼ぶ。周辺の端末がアクセスポイントと通信を行う。この際、端末から同時にデータが送信されることによるアクセス競合を制御するため、CSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access With Collision Avoidance)と呼ばれる技術が利用される(非特許文献1を参照)。無線LANの通信環境では、通常、各端末は独立に動作し、必要時にアクセスポイントへアクセスする。
【0005】
しかしながら、スマートグリッドやスマートメータ等の無線通信システムでは、基地局からビーコンを受信した全ての端末が一斉に基地局へアクセスすることになる。このため、無線LANに比べて、無線チャネルアクセスの集中・競合が生じ、送信処理時間の増大ひいては各端末等のシステム構成機器での消費電力の浪費につながることが予想される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】マシュー・ガスト(Matthew Gast)、「802.11無線ネットワーク管理 第2版」、株式会社オライリー・ジャパン、2006年11月17日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、基地局と複数の端末との間の無線チャネルアクセスの競合を回避可能にしつつ、端末での電力消費を抑制可能な無線通信システム及び無線通信方法を提供することを目的とする。言い換えれば、各端末における電力エネルギーと無線通信帯域とを効率的に利用しながら基地局と各端末との間のデータ配送を行う無線通信システム及び無線通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は、例えば、以下の構成・特徴を備えるものである。
(態様1)
一定時間長のスロット単位に分割可能なビーコン周期を有したビーコンを送信する少なくとも1つの基地局と、
前記基地局と時刻同期し、かつ、前記ビーコン周期を共有する複数の端末と、
を備えた無線通信システムであって、
前記ビーコン周期は、前記基地局と前記端末との間で前記ビーコンを送受信するビーコン区間と、前記基地局と前記端末との間で前記端末に蓄積されたデータを送受信する通信区間と、を含み、
前記基地局は、前記データの送信に成功した前記端末には確認応答を通知することで前記端末が予約状態であることを通知し、かつ、前記通信区間内の前記スロットを、前記予約状態の前記端末の次周期以降の前記データ送信のために割り当てる予約スロットと、前記予約状態に無い前記端末の次周期以降の前記データ送信のために割り当てる未予約スロットと、に区分し、かつ、前記ビーコンに前記未予約スロットに関する情報を付加させ、
前記予約状態に無い前記端末は、前記基地局から受信した前記ビーコンに付加された前記未予約スロットからランダムに選択したスロットにてデータ送信開始時刻を設定し、前記データ送信の際にはランダムバックオフを行うのに対し、
前記予約状態に有る前記端末は、前記予約スロットにてデータ送信開始時刻を設定し、前記データ送信の際にはランダムバックオフの省略を可能とすることを特徴とする無線通信システム。
(態様2)
前記端末に通知される前記確認応答には、前記端末に割り当てられた前記予約スロットが付加されており、かつ、
前記ビーコンに付加された前記未予約スロットに関する前記情報は、前記通信区間における前記予約スロットの最大番号を含むことを特徴とする態様1に記載の無線通信システム。
(態様3)
前記端末は、データ送信開始時刻を前記通信区間の前記スロットの開始時刻に合わせた送信スロットを逐次管理し、
前記端末への前記確認応答の通知によって、前記送信スロットが前記端末に割り当てられた前記予約スロットに設定され、
前記ビーコンに付加された前記未予約スロットに関する前記情報は、前記通信区間において設定された前記予約スロットと前記未予約スロットとからなるビットマップを含むことを特徴とする態様1に記載の無線通信システム。
(態様4)
前記基地局は初期状態では、一定時間とランダムバックオフ時間との後に前記ビーコン送信し、この送信に成功すると、次周期以降は前周期と同じタイミングで前記ビーコン送信を行い、前記端末は、初期状態では前記ビーコン区間に亘って前記ビーコン受信のために待機し、
前記端末は、前記ビーコンを受信するためのビーコン受信タイミングを検出し、
前記端末は、前記ビーコン受信を繰り返し、前記ビーコン周期において検出した前記ビーコン受信タイミングが前回の前記周期での前記ビーコン受信タイミングと同一か否かを判定し、
前記端末が、複数回連続して同一の前記判定が得られた場合には、前記ビーコン受信タイミングに整合した時間だけ待機することを特徴とする態様1〜3のいずれかに記載の無線通信システム。
(態様5)
少なくとも1つの基地局から複数の端末に向けて、一定時間長のスロット単位に分割されたビーコン周期を有したビーコンを送信し、
前記端末では、前記基地局と時刻同期させ、かつ、前記ビーコン周期を共有させ、
前記基地局にて、前記ビーコン周期を、前記基地局と前記端末との間で前記ビーコンを送受信するビーコン区間と、前記基地局と前記端末との間で前記端末に蓄積されたデータを送受信する通信区間と、に少なくとも区分し、
前記基地局に、前記データの送信に成功した前記端末に向けて確認応答を通知させることで前記端末が予約状態であることを通知させ、
前記基地局にて、前記通信区間内の前記スロットを、前記予約状態の前記端末の次周期以降の前記データ送信のために割り当てる予約スロットと、前記予約状態に無い前記端末の次周期以降の前記データ送信のために割り当てる未予約スロットと、に区分させ、かつ、前記ビーコンに前記未予約スロットに関する情報を付加させ、
前記予約状態に無い前記端末では、前記基地局から受信した前記ビーコンに付加された前記未予約スロットからランダムに選択したスロットにてデータ送信開始時刻を設定し、前記データ送信の際にはランダムバックオフを実行させるのに対し、
前記予約状態に有る前記端末では、前記予約スロットにてデータ送信開始時刻を設定し、前記データ送信の際にはランダムバックオフの省略を可能とすることを特徴とする無線通信方法。
(態様6)
前記端末に通知される前記確認応答には、前記端末に割り当てられた前記予約スロットを付加し、かつ、
前記ビーコンに付加された前記未予約スロットに関する前記情報には、前記通信区間における前記予約スロットの最大番号を含ませることを特徴とする態様5に記載の無線通信方法。
(態様7)
前記端末には、データ送信開始時刻を前記通信区間の前記スロットの開始時刻に合わせた送信スロットを逐次管理させ、
前記基地局から前記端末への前記確認応答の通知によって、前記送信スロットを前記端末に割り当てられた前記予約スロットに設定し、
前記ビーコンに付加された前記未予約スロットに関する前記情報には、前記通信区間において設定された前記予約スロットと前記未予約スロットとからなるビットマップを含ませることを特徴とする態様5に記載の無線通信方法。
(態様8)
前記基地局が、初期状態では、一定時間とランダムバックオフ時間との後に前記ビーコンを送信し、この送信に成功すると、次周期以降は前周期と同じタイミングで前記ビーコン送信を行うよう前記基地局に設定し、
前記端末には、初期状態では前記ビーコン区間に亘って前記ビーコン受信のために待機させ、
前記端末が、前記ビーコンを受信するためのビーコン受信タイミングを検出し、かつ、
前記端末が、前記ビーコン受信を繰り返し、前記ビーコン周期において検出した前記ビーコン受信タイミングが前回の前記周期での前記ビーコン受信タイミングと同一か否かを判定し、かつ、
前記端末が、複数回連続して同一の前記判定が得られた場合には、前記ビーコン受信タイミングに整合した時間だけ待機するよう前記端末に設定することを特徴とする態様5〜7のいずれかに記載の無線通信方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の無線通信システム及び無線通信方法によれば、上述のように、データ送信に成功したか否かの情報を基に端末を予約状態に有るか無いかに区分し、予約状態に有る端末には当該端末だけに割り当てられた予約スロットで次周期以降のデータ送信を許可し、未予約状態の端末には未予約区間にてデータ送信を許可するとともに、予約状態に有る端末のデータ送信はランダムバックオフのスキップ(省略)を可能とさせるものである。従って、基地局と各端末との間の無線チャネルアクセスの競合を排除もしくは回避可能となるとともに、各端末での毎回のデータ送信時間の短縮及び、消費電力の削減が図られる。なお、予約スロットでデータ送信を行っても外部からの電波の干渉でバックオフが中断したり、隠れ端末によるデータ送信との衝突により、最大再送回数以内であってもデータ送信に想定以上の時間が掛り、データ送信が予約スロット内で完了せず、その後のスロットでもデータ再送が続くことも考えられる。この場合、その後のスロットを予約していた端末は結果として、予約スロットでは送信が開始できず、送信開始が遅れることになる。そのような場合でも、無線チャネルアクセスの競合は限定的なものであり、上述の発明の効果は期待できる。
【0010】
本発明の好適な態様では、基地局は初期状態では、一定時間とランダムバックオフの後にビーコンを送信し、この送信に成功すると、次周期以降は前周期と同じタイミングでビーコン送信を行う。一方、端末は初期状態ではビーコン区間に亘って待機してビーコン受信を試みるが、ビーコン受信タイミングの検出も毎回行う。一定回数同じビーコン受信タイミングで基地局からのビーコン受信が出来ていることを確認すると、ビーコン待機時刻をビーコン受信タイミングに整合した時刻に設定する。なお、一定回数同じタイミングでのビーコン受信が確認できない場合には初期状態に戻る。このような好適な構成により、端末にて毎回行われるビーコン待機に要する時間及び消費電力を大幅に短縮及び削減することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る無線通信システムの概略を説明した図である。
【図2】ビーコン送受信とデータ送受信とのタイミングを示した図である。
【図3】本発明の時間差アクセス方式1の処理の一例を示した図である。(実施例1)
【図4】本発明の時間差アクセス方式1の処理の別例を示した図である。(実施例1)
【図5】本発明の時間差アクセス方式2の処理の一例を示した図である。(実施例2)
【図6】本発明の端末におけるビーコン受信待機処理の一例を示した図である。
【図7】基地局の機能ブロック図である。
【図8】端末の機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を図面に示す実施の形態に基づき説明するが、本発明は、下記の具体的な実施態様に何等限定されるものではない。なお、各図において同一又は対応する要素には同一符号を用いる。
【0013】
(無線通信システムの構成の概略)
図1は、本発明に係る無線通信システム10の概略を説明した図である。本発明の無線通信システム10は、図1に示すように、少なくとも、複数の端末(図示では、符号2A,2B,2Cで示した3つの端末)と、自己の通信圏(図示では破線で示した円)内に存在する端末2A,2B,2Cとの間でデータの送受信を行う基地局1と、から構成される。なお、図示しないが基地局1が複数存在してもよく、この場合は、基地局1同士がランダムバックオフとキャリアセンスによりビーコン衝突の可能性を低減することが可能であることが好ましい。なお、端末2A,2B,2Cは、鳥獣や車両等の移動体に装着されていてもよいし、静止物体に装着されていてもよい。
【0014】
(ビーコン送受信のタイミング及びデータ送受信のタイミング)
基地局1は、図1及び図2に示すように、通信圏内にある端末2A,2B,2Cに向けて一定の周期T(以下、「ビーコン周期」とも呼ぶ。)でビーコンを送信する。このビーコン周期Tのうち最初の一定時間は、基地局1がビーコンを送信するとともに通信圏内の各端末2A,2B,2Cがビーコンを受信するために要する時間T(以下、「ビーコン区間」とも呼ぶ。)に使用され、残りの時間を各端末2A,2B,2Cから基地局1へのデータ送信と基地局1から各端末2A,2B,2Cへの確認応答が行われる時間T(以下、「通信区間」とも呼ぶ。)に使用される。なお、各区間T,Tに要する時間長さをそれぞれ「ビーコン区間長」と「通信区間長」と呼ぶことにする。
【0015】
つまり、基地局1と端末2A,2B,2Cとは時刻同期しており、基準となるビーコン周期タイミングを共有する。このビーコン周期はビーコンの送受信を行うビーコン区間Tと、通信区間Tと、からなる(図2参照)。
【0016】
(CSMA/CA通信方式の利用とその問題点)
端末2A,2B,2Cと基地局1との間の通信にはCSMA/CAをベースとした無線通信方式を用いる。しかしながら、従来のCSMA/CAをままでは、以下のような問題が発生する。
【0017】
ビーコンを受信できた端末(例えば、2A)は基地局1へ直前の周期で取得したデータを送信する。一方、端末2Aがビーコンを受信できなかった場合、直前の周期で取得したデータは端末2A内のメモリ等に蓄積され、次の周期以降にまとめて送信される。なお、端末2A,2B,2Cは所定数までのデータを一つのパケットにまとめて送信することが可能である。一つの基地局1の通信圏内に多数の端末2A,2B,2Cが存在する場合は、一斉に送信処理を開始すると通信区間内でアクセス競合(他の端末が送信中の際の送信終了待ち、隠れ端末によるパケット衝突・再送など)が発生してしまい、各端末2A,2B,2Cがデータの送信処理を完了するまでに時間が掛ってしまう。また、これに伴い各端末2A,2B,2Cでの消費電力も増加する。
【0018】
なお、CSMA/CAの無線通信方式では、端末2Aから基地局1へデータの送信に際して、一定時間及びランダムバックオフ(以下、単に「バックオフ」とも呼ぶ。)の時間を付与し、これらの時間に基地局1が他の端末2B,2Cからの電波を受信しているか否かの検出(すなわち、キャリアセンス)を行う。端末2Aがキャリアを検出した場合、バックオフ時間の進行を一時中断し、所定時間経過した後に再度キャリアセンスを行う。
【0019】
一方、端末2Aがキャリアを検出しなかった場合、当該端末2Aにてデータ送信処理が開始され、基地局1へデータを送信する。端末2Aは、データ送信後、基地局1からの確認応答(Acknowledgement、以下、「ACK」とも呼ぶ。)を待つ。ACKが端末2Aに通知されればデータ送信は成功であり、一方、所定時間経過しても端末2AにACKが通知されなければ、当該端末2Aは送信不調とみなしてデータ再送を行う。任意に決めた回数、データ再送を繰り返してもACKが基地局1から端末2Aへ通知されなければ、端末2Aは、データ送信の失敗と判断して当該通信区間Tにおける基地局1へのアクセスを終了する。
【0020】
以上のように、従来のCSMA/CAを利用した無線通信方式では、端末2Aは、基地局1へのデータ送信を試みる度毎に、一定時間と、バックオフ時間(以下、「送信準備時間」とも呼ぶ。)と、データ送信開始からACKが通知されるまでの時間(以下、「実質送信時間」とも呼ぶ。)と、を合わせた時間が使用される。この実質送信時間は一定値というわけではなく、データ再送回数が多い程、大きい値となる。
【0021】
このように、通信区間Tでは複数の端末2A,2B,2Cが基地局1に同時にアクセスすることができないため、本発明では、端末2A,2B,2Cが基地局1にデータ送信を行うタイミングに関して以下に詳述するように端末2A,2B,2C毎に時間差を付けることで、効率的なデータ送信と端末2A,2B,2Cにおける消費電力の大幅な削減を達成できる。
【実施例1】
【0022】
(時間差アクセス方式1)
本発明の実施例1に係る時間差アクセス方式を以下に説明する。図3は、実施例1における各端末2A,2B,2Cから基地局1へのアクセスを説明した図である。
【0023】
通信区間Tは、所定の時間(以下に定義する「スロット長」)を有した複数の時間枠T(以下、「スロット」と呼ぶ。)に分割され、各スロットTには順番に番号(以下、「スロット番号」と呼ぶ。)が付される。
【0024】
ここで、スロット長は、実質送信時間の最小値(すなわち、再送無しである端末から基地局へデータが送られた場合の時間)と最大値(すなわち、任意に定めた最大再送回数でデータが送られた場合の時間)の間で自由に選択可能な時間である。このスロット長は、基地局1ないしは本通信システム10外のデータセンタ3等の外部装置で選択・設定することができ、ビーコン周期Tの長さと、ビーコン区間長と、通信区間長と、ともに基地局1から端末2A,2B,2Cに通知される。なお、スロット長は、原則、上述の実質送信時間からなるが、上述の送信準備時間を含めるようにスロット長を設定してもよい。また、後述の予約区間内のスロットと未予約区間内のスロットとでは、異なるスロット長を有するように設定してもよい。
【0025】
ビーコン周期Tの中のビーコン区間Tに続く通信区間Tを上述のスロット長で区切ると、図3に示すように、スロット番号がそれぞれ1,2,3,・・・,nと表示可能なn個のスロットTに分けることができる。
【0026】
(予約スロットと未予約スロット)
これらのスロットTは、本発明の無線通信システム10が稼働中には、後述する予約された端末(図3では、2A,2B)に割り当てられる予約スロットと、未だ予約が成されていない端末2Cに割り当てられる未予約スロットと、に分けられる。本発明のシステム10の起動開始時でかつどの端末2A,2B,2Cからも基地局1へのアクセスが未だ成功していないような初期状態では、全てのスロットTが未予約スロットとなる。
【0027】
(端末の予約)
ここで、ある端末(例えば、2A)のためのスロットTの予約とは、当該端末2Aから基地局1へのデータ送信処理の開始から完了までの実質送信時間(開始時期、完了時期、開始から送信まで時間長)の予約が当該スロットTにおいて設定されている状態を意味する。なお、本発明では、実質送信時間に加え送信準備時間も含めて必要なスロットを予約する方法も許容する。この場合は予約スロットにおいてもランダムバックオフを省略しない。
【0028】
実施例1では、予約スロットが複数(k個)存在し、このうちの最大スロット番号をkとするとき、番号1〜番号kまでの最初のスロット区間を予約区間に設定するとともに、番号(k+1)〜番号nまでの残りのスロット区間を未予約区間に設定する。なお、基地局1は、kの値もビーコンに含めて通信圏内の各端末2A,2B,2Cに通知する。
【0029】
(実質送信時間が最大の場合)
仮に、スロット長をデータ実質送信時間の最大値とした場合を例に取り、通信区間T内の処理を説明する。ここでは、実質送信時間の最大値をその最小値の3倍とする。
【0030】
先ず、初期状態では、通信区間Tは全て区間が未予約区間となっている。つまり、全てのスロットTが未予約スロットである。言い換えれば、どの端末2A,2B,2Cも予約された(予約スロットが付与された)状態では無いため、どの端末2A,2B,2Cも基地局1へデータ送信を行う場合には、通常のCSMA/CAに基づく送信処理を開始する。この際、各端末2A,2B,2Cの送信開始時刻は未予約区間内でランダムに選択される。図3では、最初のビーコン周期Tにおいて、ランダムバックオフ(図示では符号RB)の結果、端末2Aがスロット番号2に相当する時間帯(スロット)において再送処理無しでデータ送信に成功し、端末2Bがスロット番号5に相当するスロットにおいて二回の再送処理後にデータ送信に成功した例を示す。なお、図示しないが、端末2Cはデータ送信に失敗したとする。
【0031】
端末2A,2Bから送信されたデータの受信に基地局1が成功すると、基地局1はこれらの端末2A,2Bに対して予約スロットを割り当てる。この予約スロットは、基地局1が各端末2A,2Bからデータを受信した時点で予約されていない最小番号のスロットTが割り当てられる。例えば、図3の例では、最初にデータ送信に成功した端末2Aには、次周期以降のデータ送信のために番号1(r=1)の予約スロットが割り当てられる一方、その次にデータ送信に成功した端末2Bには、次周期以降のデータ送信のために番号2(r=2)の予約スロットが割り当てられる。
【0032】
データ送信に成功した端末2A,2Bには、基地局1にてデータ受信が確認され次第、基地局1から確認応答(図示ではACK)が返信される。実施例1の時間差アクセス方式では、基地局1は、当該端末2A,2Bへ割り当てられた予約スロット番号r(図示の例では、r=1、r=2)もACKが保有する情報に含めて、当該端末2A,2Bに通知する。
【0033】
今回の通信区間Tが終了すると、基地局1は、データ受信に成功した端末2A,2Bの数、すなわち、予約スロットの最大の番号k(図示の例では、k=2)が判明するために、次のビーコン周期T以降の通信区間T内における予約区間を決定できる。これを予約区間(k=2)の情報をビーコンに付加して、各端末2A,2B,2Cに送信する。なお、図3に示す例では、次周期以降の通信区間Tは、始めの時間(図示では番号1,2のスロットT)が予約区間として使用され、残りの時間(図示では番号3〜nのスロットT)が未予約区間として使用される。
【0034】
なお、通信区間TにACKが返信された端末2A,2Bは自身に割り当てられた予約スロットを認識できるため、次のビーコン周期T以降の通信区間Tでは予約区間(1〜k)の当該予約スロット(端末2Aの場合は1番目(r=1)の予約スロット、端末2Bの場合は2番目(r=2)の予約スロット)にてデータ送信処理を開始する。この際、未予約状態でのデータ送信に必須であったバックオフは行わない(つまり、バックオフ時間をゼロに設定する)。これにより、端末(例えば、2A)は他の端末2B,2Cと基地局1との通信状態を確認する必要が無くなり、実質送信時間にだけ電源を起動(ONに)させれば良いため、電力消費を大幅に削減することが可能になる。
【0035】
また、図示しないが、端末(例えば、2C)が現周期における予約スロットでの基地局1とのデータ通信に失敗した場合、最大回数再送後は、ACKが所定時間経過しても当該端末2Cに通知されないため、端末2Cはデータ通信の失敗を認識して未予約状態(初期状態)に戻り、次のビーコン周期T以降の通信区間Tでは予約区間後に設けられた未予約区間にてデータ送信を行う。具体的には、前回(初期状態)と同様に端末2Cはバックオフ(図3の符号RBを参照)を事前に行い、未予約区間において、データ送信を試みる(図3の番号6のスロットを参照)。
【0036】
このように、実施例1の方式では、データ送信に成功した(予約状態の)端末2A,2Bについては、これらの端末2A,2Bが次周期以降のデータ送信に必要とされる時間・時刻を順序立てながら次周期以降の通信区間Tの最初の部分(予約区間)に集め、通信区間Tの残りの部分を他の未予約状態の端末2Cのデータ送信に割り当てようとするものである。
【0037】
(実質送信時間が最小の場合)
また、実施例1のスロット長をデータ実質送信時間の最小値とした場合を、図4を参照しながら以下に説明する。
【0038】
初期状態(未予約状態)にある端末(例えば、2A)は、図4に示すように、最初の通信区間T(区間全体が未予約区間)のあるスロット(番号2)において、一定時間とバックオフ時間(図示ではRB)経過後に再送処理無く基地局1へ最初にデータ送信に成功したと仮定する。この場合、端末2Aがデータ処理に要した時間は、最小の実質送信時間(つまりスロット長)と同等であるため、スロット一個分(スロット番号2)の時間が使用されたことになる。従って、最初にデータ受信を成功した端末2Aに対して、基地局1は次周期T以降の通信のための予約スロット番号r(r=1)を割り当て、ACKの返信により当該番号rを端末2Aに通知する。
【0039】
次に、未予約状態の端末2Bが、最初の周期Tの通信区間Tにおいて、バックオフ(RB)の後、再送処理を2回行った上で基地局1とのデータ送信に成功したと仮定する。この場合、端末2Bがデータ処理に要した時間は、スロット長の3個分に相当するため、スロット番号5、6、7のスロット3個分の時間が使用されたことになる。従って、次にデータ受信を成功した端末2Bに対して、基地局1は次周期以降の通信のための予約スロット番号r(r=2〜4)を割り当て、ACKの返信により当該番号rを端末2Bに通知する。なお、図示しないが、この通知の際に、一つの端末(図示では2B)に付与する予約スロット数に上限(例えば、2)を持たせ、データ処理に要したスロット数が上限を超えた場合には上限数以下(例えば、2個)のスロットを予約するようにしてもよい。これにより、ある端末2Bでは、たまたま現周期でデータ再送2回を要したが、通常は再送1回で済むような場合は、無駄な予約スロットの発生を抑えることができる。
【0040】
今回の通信区間Tでデータ送信が成功した端末が2A、2Bのみだったとした場合、基地局1では、予約スロットの最大番号kを4に設定し、次周期以降のスロット番号1〜kに相当する区間を予約区間に設定し、スロット番号k+1〜nに相当する区間を未予約区間として設定する。基地局1は、通信区間長を決定するスロット番号の最大値nの他、予約区間と未予約区間とを区分する予約スロット番号rの最大値kもビーコン情報に含めて、通信圏内の各端末2A、2Bに通知することになる。
【0041】
従って、次周期以降、端末2Aと端末2Bとは、それぞれバックオフ(RB)させる事無く、予約区間の各々の予約スロット番号(r=1と、r=2〜4と、)にて基地局1へのデータ送信を行うようになる。一方、未予約状態のその他の端末2Cが基地局1の通信圏内にあるときは、端末2Cは、予約区間の終了した後の未予約区間のスロット番号5〜nまでの間のいずれかの時間帯(図4ではスロット番号6)で、バックオフ(RB)を行った上で基地局1へのデータ送信を試みることになる。
【0042】
スロット長を上述の実質送信時間の最大値に設定した場合と比較すると、この時間を最小値に設定した場合は、再送無くデータ送信に成功した端末2Aや(再送があったとしても)最大再送回数よりも小さい再送回数でデータ送信に成功した端末2Bでは、次周期以降に毎回使用される実質送信時間をさらに短縮できること(ひいては端末2A、2Bでの消費電力をさらに抑制できること)がメリットになる。
【実施例2】
【0043】
(時間差アクセス方式2)
次に、別の実施例(実施例2)に係る時間差アクセス方式を説明する。図5は、実施例2における各端末2A,2B,2Cから基地局1へのアクセスを説明した図である。
【0044】
ここでは、実施例2にて特徴的な事項について説明を行い、実施例1と共通する事項については説明を省略する。なお、実施例2では、スロット長を実質送信時間の最小値に設定した場合を仮定する。
【0045】
通信区間Tは、実施例1で定義したようなスロット長を有するスロットTによってn個に分割される。実施例2では、基地局1が通信区間T内のスロットTの個数nとその予約状態に対応したビットマップBMを保持することを特徴とする。ビットマップBMは、例えば、予約スロットを1で表し、未予約スロットを0で表すことで全て表示することが可能になる。初期状態では、通信区間T全体は未予約区間であるため、ビットマップBMは、0がn個並んだ(0000000・・・0)と表示できる。基地局1は、ビーコン周期T毎に、通信区間Tの通信状態を反映したビットマップBMを更新し、これをビーコン情報に含め、通信圏内にある端末2A,2B,2Cに通知する。
【0046】
実施例1と同様に、初期状態では端末2A,2B,2Cはランダムに送信処理を開始する。図5に示す例では、初期状態にあった端末2AがバックオフRBを行い、再送処理無く、未予約区間のスロット番号2でデータ送信を成功したとする。一方、初期状態にあった端末2Bが、バックオフRBを行い、スロット番号5の時点から基地局1とのアクセスを開始し、再送処理を2回繰り返した後でデータ送信を成功したとする。つまり、スロット番号5,6、7の時間帯でデータ送信に成功したことになる。基地局1は端末2A,2Bからのデータの受信に成功すると、当該端末2A,2BにACKを返信する。ACKを返された端末2A,2Bはデータ送信が成功したスロットTを予約スロットとして次周期以降、維持することになる。端末2Aの場合はスロット番号2を予約スロット番号r(r=2)として維持され、端末2Bの場合は5、6、及び7のスロット番号を予約スロット番号r(r=5〜7)として維持される。なお、図示しないが、仮にデータ送信に失敗した端末2Cがあった場合には、端末2Cには所定時間経過しても基地局1からACKが通知されないため、端末2Cは未予約状態に戻る。
【0047】
一方、基地局1は、データ送信に成功する度毎に、ビットマップBMの対応箇所を予約スロットに設定(つまり、0から1に変更)する。通信区間Tでデータ送信が成功した端末2A,2Bがこれら以外に無ければ、通信区間Tの終了後、基地局1にてビットマップBMは(01001110・・・0)に更新される。すなわち、実施例2の場合、次周期以降の通信区間Tにおいては、実施例1の場合と異なり、予約区間と未予約区間とが不規則かつ交互に並ぶことになる。なお、実施例1の場合では、予約区間と未予約区間とはそれぞれ1つだけ存在する。
【0048】
基地局1は、以上のように更新したビットマップBMをビーコンに含め、次周期のビーコン区間Tに基地局1の通信圏内の端末2A,2B,2Cに通知されることになる。既に予約状態に設定された端末2A,2Bは、上述のようにACKの通知により次周期以降に自己が基地局1へデータ送信すべきタイミングが決定されているため、ビットマップBMの更新情報は余り意味を持たない。しかしながら、未予約状態のままの端末2Cにとっては、ビットマップBMの更新情報は、端末2Cが予約区間を避けながら未予約区間にて基地局1へアクセスを行うために必要不可欠となる。
【0049】
端末2Cはバックオフ(図5では符号RB)を事前に行い、ビットマップBMに指定された未予約区間(図5では番号4の未予約スロット)に行き当たれば、データ送信を試みる。端末2Cが仮にバックオフ中に予約区間(の予約スロット)に行き当たってしまった場合は、バックオフタイマーを一時中断し、未予約区間で再開するように処理できるようにしてもよい(以下、「仮想キャリアセンス」とも呼ぶ。)。
【0050】
(ビーコン受信待機)
ところで、端末2A,2B,2Cはビーコン区間Tにおいて(通常、ビーコン区間Tに亘って)受信待機を行う。ビーコン区間Tは隣接する基地局1の数などによってそのビーコン区間長が設定されている。受信待機時間が長くなる程、端末2A,2B,2Cは電力を消費する結果となる。
【0051】
これに対処するため、本発明では、ビーコン区間Tを以下のように設定することが好ましい。例えば、複数の基地局(例えば、符号1A及び1B、図6を参照)が隣接していると仮定する。本発明の好ましい態様では、どの基地局1A,1Bにおいても最初のビーコン送信は、ビーコン送信中の他の基地局1B,1Aが無いことを確認(キャリアセンス)しつつ、ランダムバックオフを行った上で行うものとする。しかしながら、ビーコン送信が成功した基地局1A,1Bでは、この成功したタイミングで次のビーコン周期T以降のビーコン送信を行うこととする。
【0052】
一方、基地局(例えば、1B)の通信圏内にある端末2A,2B,2Cは、初期状態ではビーコン区間T全体に亘って受信待機を行うものとする。また端末2A,2B,2Cはビーコン(図6では、破線の矢印)を受信するタイミング(以下、「ビーコン受信タイミング」とも呼ぶ。)を毎回検出する。端末2A,2B,2Cが一定回数連続して前周期Tのビーコン受信タイミングと同一のタイミングでビーコンを正しく受信できた場合は、その後の周期T以降は、このビーコン受信タイミングに合わせて受信待機時刻を設定する(図6を参照)。
【0053】
これに対して、ビーコン受信タイミングでのビーコン受信が一定回数連続しないようであれば、その次の周期Tも、ビーコン区間Tの開始から終了までを受信待機時刻を設定する。つまり、初期状態と変わらない受信待機時刻(ビーコン区間T)が維持される。
【0054】
以上のような方法によれば、端末2A,2B,2Cのビーコン待機時間をほぼビーコン受信時間に整合させることができ、ビーコン待機時間を最小限にすることができる。従って、各端末2A,2B,2Cのビーコン区間Tにおける消費電力も格段に抑制することが可能になる。
【0055】
(基地局の機能ブロック図)
次に、上述の時間差アクセス方式を実現可能にする無線通信システム10の構成要素について詳述する。図7は、基地局1における論理的な構成を示す機能ブロック図である。
【0056】
図7に示すように、基地局1には、制御情報設定部102、同期クロック103、ビーコンタイミング作成部104、ビーコン情報作成部105、無線送信機106、無線受信機107、データ蓄積部108、データ送信部109、予約スロット管理部110、確認応答作成部111などが設けられる。この制御情報設定部102では、ビーコン周期T、ビーコン区間長、通信区間長、スロット長など基地局1と端末2A,2B,2Cとのアクセスに必要な情報が設定され、蓄積される。基地局1には制御情報通信部101が設けられても良く、これにより、基地局1は、上記情報の一部若しくは全部、又は上記情報の設定必要な補足情報をデータセンタ3等の外部装置から獲得できるようになり、基地局1構成の簡素化が図られる。
【0057】
また、ビーコンタイミング作成部104は、制御情報設定部102や同期クロック103からビーコン周期T等の情報や時刻情報を取得して端末2に向けてビーコンを送信するタイミングを決定し、この結果を無線通信機107に送る。このタイミングを決定する際に、ビーコン送信中の他の基地局1が無いか否かをキャリアセンスし、バックオフを行う。さらに、上述のように、ビーコン区間T内のあるタイミングでビーコン送信に成功した場合、次周期以降のビーコン送信タイミングを当該タイミングに設定することが好ましい。
【0058】
また、ビーコン情報作成部105は、制御情報設定部102から取得した幾つかの情報をビーコンに包含(付加)させる。ビーコンに含められる情報には、ビーコン区間長、通信区間長、スロット長の他、予約区間と未予約区間とを区分する予約スロットの最大番号kや初期状態或いは更新されたビットマップBMの情報が挙げられる。これらの情報は、ビーコン情報作成部105から無線送信機106に送られる。無線送信機106は、ビーコンタイミング作成部104で決定されたタイミングで、ビーコン情報作成部105で作成された情報を含んだビーコンを端末2に向けて送信する。また、基地局1が端末(例えば、2A)からのデータ受信に成功すると、無線送信機106は、確認応答(ACK)を端末2Aに送信する。
【0059】
端末2から送られたデータは、無線受信機107で受信され、データ蓄積部108にて蓄積される。図7に示す例では、基地局1は、データ送信部109を有し、蓄積されたデータをデータセンタ3に送信する。
【0060】
また、基地局1の予約スロット管理部110では、制御情報設定部102と同期クロック103とから端末2A,2B,2Cとのアクセスに必要な情報と時刻情報を得ながら、各端末2A,2B,2Cからのデータ送信に対する無線受信機107のデータ受信の度毎に予約スロットの状況(例えば、予約区間と未予約区間とを区分する予約スロットの最大番号kや上述のビットマップBM)を更新する。予約スロットの更新状況に関する情報は、次のビーコン周期Tの開始までにビーコン情報作成部105に送られ、ビーコン情報に付加される。
【0061】
また、基地局1の確認応答作成部111では、端末(例えば、2A)から送信されたデータを基地局1が受信したことを当該端末2Aに通知する確認応答(ACK)を作成する。なお、上述の実施例1で示したように、この確認応答作成部111にて、予約スロット管理部110で当該端末2Aに割り当てられた予約スロット情報を、ACKに付加させて、これを無線送信機106に送るようにしてもよい。
【0062】
(端末の機能ブロック図)
図8は、端末2A,2B,2Cにおける論理的な構成を示す機能ブロック図である。端末(例えば、2A)は、制御情報設定部201、同期クロック202、ビーコン受信タイミング検出部203、ビーコン待機時刻設定部204、無線受信機205、無線送信機206、送信データ管理部207、確認応答分析部208、予約スロット管理部209、送信スロット報告部210、ビーコン情報分析部211、予約スロット設定部212、未予約スロット設定部213、データ送信タイミング作成部214などを備える。
【0063】
端末2Aは、無線受信機205にて基地局1から送信されたビーコンを受信する。ビーコンを受信した無線受信機205は、ビーコンに含められていた情報のうち、ビーコン周期T、ビーコン区間長、通信区間長、スロット長などの更新情報を、ビーコン情報分析部211を介して制御情報設定部201に送る。なお、制御情報設定部201は初期状態でもこれらのパラメータの初期情報を保有する。
【0064】
また、端末2Aは、上述の好適なビーコン受信待機処理を行うため、ビーコン受信タイミング検出部203とビーコン待機時刻設定部204とを備えることが好ましい。これにより、ビーコン受信タイミング検出部203は、端末2Aが上述のようにビーコン区間長のどのタイミングでビーコン受信を行っているか、一定回数連続しているか否かを検出・判定することができる。また、ビーコン待機時刻設定部204は、初期状態では、制御情報設定部201にあるビーコン区間長をビーコン待機時刻として設定するが、ビーコン受信タイミング検出部203より一定回数連続して同じタイミングでビーコン受信が行われていることを通知されると、そのビーコン受信タイミングと整合したビーコン待機時刻を設定する。設定されたビーコン待機時刻が通知された無線受信機205は、次の周期T以降、ビーコン待機時刻に対応した動作を行うことができる。
【0065】
また、端末2Aは無線送信機206を介して送信データ管理部207で蓄積していたデータを基地局1に向けて送信する。
【0066】
実施例1の方式で端末2Aがデータ送信に成功すると、当該端末2Aに割り当てられた次周期以降の予約スロット番号rを含んだ確認応答(ACK)が基地局1から送信される。確認応答は無線受信機205を介して確認応答分析部208に送られる。確認応答分析部208は、ACKに含められた予約スロット番号rを確認し、この番号rを予約スロット管理部209に報告する。一方、データ送信の不調の場合は、一定時間経過しても端末2Aは無線受信機205にてACKを受信しないために、無線送信機206からデータ再送を行う。このデータ再送を何度か繰り返してもACK受信出来ない場合、データ送信に失敗したとして確認応答分析部208を介して予約スロット管理部209に予約失敗(未予約状態)を通知する。
【0067】
一方、実施例2の方式では、無線送信機206は、データ送信を行う度に送信スロット報告部210がその実質送信時間帯を確認し、データ送信に要したスロット番号を予約スロット管理部209に報告する。その後、データ送信に成功すると、実施例1の場合と同様に基地局1から確認応答が無線受信機205を介して確認応答分析部208に送られる。なお、実施例2の方式では、予約された端末2Aのための予約スロット番号rに関する情報はACKに付加されていない。従って、端末2Aがデータ送信に成功したこと(次周期以降に予約されたこと)のみが予約スロット管理部209に伝えられる。
【0068】
しかしながら、実施例2の場合、予約スロット管理部209では、確認応答分析部208からのデータ送信成功の通知だけでなく、送信スロット報告部210からデータ送信成功の際に使用された送信スロットも報告されているので、この送信スロットを当該端末2Aのための次周期以降の予約スロットとして割り当てることができる。
【0069】
一方、データ送信の不調の場合は、一定時間経過しても端末2Aは無線受信機205にてACKを受信しないために、無線送信機206からデータ再送を行う。データ再送後にACKの受信に成功した場合は、上述のように確認応答分析部208から当該端末2Aが予約された旨が予約スロット管理部209に通知され、送信スロット報告部210からは最初のデータ送信から最後のデータ再送にまで要した送信スロットが予約スロット管理部209に通知される。このデータ再送を何度か繰り返してもデータ送信出来ない場合、データ送信に失敗したとして確認応答分析部208を介して予約スロット管理部209に予約失敗(未予約状態)を通知する。
【0070】
上述したように、あるビーコン周期Tの通信区間Tにて当該端末2Aのデータ送信が終了(成功或いは失敗の場合も含めて)すると、次のビーコン周期Tのビーコン区間Tにおいて、基地局1から再度、ビーコンが端末2Aへ向けて送信される。端末2Aは、無線受信機205を介して受信したビーコンが含んでいる情報をビーコン情報分析部211に送る。ビーコン情報分析部211では、基地局1で更新されたビーコン情報を取得して、制御情報設定部201に送るとともに、基地局1で更新された通信区間Tを構成するスロットの予約状態(例えば、予約スロットの最大番号kやビットマップBMの状態)に関する情報も検出し、この検出結果を未予約スロット選択部213に送る。
【0071】
予約スロット管理部209では、先のビーコン周期Tが終了するまでに当該端末2Aが予約されているか否かの情報が与えられている。予約有りの場合は、予約スロット設定部212にて次周期以降の予約区間において当該端末2Aがデータ送信すべき予約スロットを設定する。一方、予約無し(初期状態も含む。)の場合は、未予約スロット設定部213にて、次周期以降の未予約区間において当該端末2Aがデータ送信すべき送信スロットを設定する。未予約区間については、最新の予約スロット最大番号kやビットマップ情報がビーコン情報分析部211から未予約スロット設定部213に通知されている。このように、未予約スロット設定部213は、未予約区間で空いているスロットを選択するわけであるが、その選択の際には、キャリアセンスやバックオフの送信準備時間を含める。
【0072】
データ送信タイミング作成部214では、予約スロット設定部212或いは未予約スロット設定部213から通知された情報(予約スロットや未予約スロットに関する情報)を基に、次周期以降に当該端末2A(より詳細には送信データ管理部207)に蓄積されたデータを送信するタイミング(送信スロット)を決定し、無線送信機206に通知する。無線送信機206はこの送信スロットにて基地局1へのデータ送信を行うことになる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明の無線通信技術は、集中豪雨による土石流・土砂崩れなどの検知、交通事故防止、児童見守り、強盗・密漁防止、大規模災害時の遭難者・被災者の捜索・把握等を目的とした通信システムへの応用が考えられる。
【0074】
また、本発明の無線通信技術は、生育状況把握と温度湿度管理の自動化等による生産性向上等を目的とした通信システムへの応用が考えられる。
【0075】
また、本発明の無線通信技術は、電気・ガス・水道使用量のリアルタイム把握と利用最適化制御、産業廃棄物・汚水などの不法投棄監視、人的環境破壊の防止、山火事の検知、気象観測、大気・河川汚染の監視、野生動植物の生息環境調査、里山・山林保全等を目的とした通信システムへの応用が考えられる。従って、本発明は産業上の利用可能性が高い。
【符号の説明】
【0076】
1 基地局
2,2A,2B,2C 端末
10 無線通信システム
T ビーコン周期
ビーコン区間
通信区間
スロット
r 予約スロット番号
k 予約スロット番号の最大値
BM ビットマップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定時間長のスロット単位に分割可能なビーコン周期を有したビーコンを送信する少なくとも1つの基地局と、
前記基地局と時刻同期し、かつ、前記ビーコン周期を共有する複数の端末と、
を備えた無線通信システムであって、
前記ビーコン周期は、前記基地局と前記端末との間で前記ビーコンを送受信するビーコン区間と、前記基地局と前記端末との間で前記端末に蓄積されたデータを送受信する通信区間と、を含み、
前記基地局は、前記データの送信に成功した前記端末には確認応答を通知することで前記端末が予約状態であることを通知し、かつ、前記通信区間内の前記スロットを、前記予約状態の前記端末の次周期以降の前記データ送信のために割り当てる予約スロットと、前記予約状態に無い前記端末の次周期以降の前記データ送信のために割り当てる未予約スロットと、に区分し、かつ、前記ビーコンに前記未予約スロットに関する情報を付加させ、
前記予約状態に無い前記端末は、前記基地局から受信した前記ビーコンに付加された前記未予約スロットからランダムに選択したスロットにてデータ送信開始時刻を設定し、前記データ送信の際にはランダムバックオフを行うのに対し、
前記予約状態に有る前記端末は、前記予約スロットにてデータ送信開始時刻を設定し、前記データ送信の際にはランダムバックオフの省略を可能とすることを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
前記端末に通知される前記確認応答には、前記端末に割り当てられた前記予約スロットが付加されており、かつ、
前記ビーコンに付加された前記未予約スロットに関する前記情報は、前記通信区間における前記予約スロットの最大番号を含むことを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記端末は、データ送信開始時刻を前記通信区間の前記スロットの開始時刻に合わせた送信スロットを逐次管理し、
前記端末への前記確認応答の通知によって、前記送信スロットが前記端末に割り当てられた前記予約スロットに設定され、
前記ビーコンに付加された前記未予約スロットに関する前記情報は、前記通信区間において設定された前記予約スロットと前記未予約スロットとからなるビットマップを含むことを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項4】
前記基地局は初期状態では、一定時間とランダムバックオフ時間との後に前記ビーコン送信し、この送信に成功すると、次周期以降は前周期と同じタイミングで前記ビーコン送信を行い、前記端末は、初期状態では前記ビーコン区間に亘って前記ビーコン受信のために待機し、
前記端末は、前記ビーコンを受信するためのビーコン受信タイミングを検出し、
前記端末は、前記ビーコン受信を繰り返し、前記ビーコン周期において検出した前記ビーコン受信タイミングが前回の前記周期での前記ビーコン受信タイミングと同一か否かを判定し、
前記端末が、複数回連続して同一の前記判定が得られた場合には、前記ビーコン受信タイミングに整合した時間だけ待機することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の無線通信システム。
【請求項5】
少なくとも1つの基地局から複数の端末に向けて、一定時間長のスロット単位に分割されたビーコン周期を有したビーコンを送信し、
前記端末では、前記基地局と時刻同期させ、かつ、前記ビーコン周期を共有させ、
前記基地局にて、前記ビーコン周期を、前記基地局と前記端末との間で前記ビーコンを送受信するビーコン区間と、前記基地局と前記端末との間で前記端末に蓄積されたデータを送受信する通信区間と、に少なくとも区分し、
前記基地局に、前記データの送信に成功した前記端末に向けて確認応答を通知させることで前記端末が予約状態であることを通知させ、
前記基地局にて、前記通信区間内の前記スロットを、前記予約状態の前記端末の次周期以降の前記データ送信のために割り当てる予約スロットと、前記予約状態に無い前記端末の次周期以降の前記データ送信のために割り当てる未予約スロットと、に区分させ、かつ、前記ビーコンに前記未予約スロットに関する情報を付加させ、
前記予約状態に無い前記端末では、前記基地局から受信した前記ビーコンに付加された前記未予約スロットからランダムに選択したスロットにてデータ送信開始時刻を設定し、前記データ送信の際にはランダムバックオフを実行させるのに対し、
前記予約状態に有る前記端末では、前記予約スロットにてデータ送信開始時刻を設定し、前記データ送信の際にはランダムバックオフの省略を可能とすることを特徴とする無線通信方法。
【請求項6】
前記端末に通知される前記確認応答には、前記端末に割り当てられた前記予約スロットを付加し、かつ、
前記ビーコンに付加された前記未予約スロットに関する前記情報には、前記通信区間における前記予約スロットの最大番号を含ませることを特徴とする請求項5に記載の無線通信方法。
【請求項7】
前記端末には、データ送信開始時刻を前記通信区間の前記スロットの開始時刻に合わせた送信スロットを逐次管理させ、
前記基地局から前記端末への前記確認応答の通知によって、前記送信スロットを前記端末に割り当てられた前記予約スロットに設定し、
前記ビーコンに付加された前記未予約スロットに関する前記情報には、前記通信区間において設定された前記予約スロットと前記未予約スロットとからなるビットマップを含ませることを特徴とする請求項5に記載の無線通信方法。
【請求項8】
前記基地局が、初期状態では、一定時間とランダムバックオフ時間との後に前記ビーコンを送信し、この送信に成功すると、次周期以降は前周期と同じタイミングで前記ビーコン送信を行うよう前記基地局に設定し、
前記端末には、初期状態では前記ビーコン区間に亘って前記ビーコン受信のために待機させ、
前記端末が、前記ビーコンを受信するためのビーコン受信タイミングを検出し、かつ、
前記端末が、前記ビーコン受信を繰り返し、前記ビーコン周期において検出した前記ビーコン受信タイミングが前回の前記周期での前記ビーコン受信タイミングと同一か否かを判定し、かつ、
前記端末が、複数回連続して同一の前記判定が得られた場合には、前記ビーコン受信タイミングに整合した時間だけ待機するよう前記端末に設定することを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の無線通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−9210(P2013−9210A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−141327(P2011−141327)
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【出願人】(304027279)国立大学法人 新潟大学 (310)
【Fターム(参考)】