説明

普通型コンバイン

【課題】刈取装置3と、扱胴21を有する脱穀装置9と、オペレータが搭乗する運転部5及び走行部2を有する走行機体1とを備え、前記刈取装置3から前記脱穀装置9にフィーダハウス11を介して穀稈を供給する普通型コンバインにおいて、前記運転部5と前記フィーダハウス11との配置関係を改善して、普通型コンバイン全体の重心バランスを向上させる。
【解決手段】前記フィーダハウス11と前記運転部5とを、前記走行機体1の前部に左右並べて設ける。前記フィーダハウス11と前記脱穀装置9との間に穀稈受継用のビータ18を配置する。前記運転部5の左右一側部を、前記フィーダハウス11及び前記ビータ18の一部にオーバーラップさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、圃場の未刈り穀稈を刈取る刈取装置と、刈取り穀稈の穀粒を脱粒する脱穀装置を搭載した普通型コンバインに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、普通型コンバインにおいて、走行部及び運転部を有する走行機体と、刈取装置と、脱穀装置と、刈取装置から脱穀装置に刈取り穀稈を供給するフィーダハウスと、各部及び各装置に対する動力源としてのエンジンと、脱穀装置の脱粒物を選別する穀粒選別機構と、脱穀装置の穀粒を収集するグレンタンクとを備え、圃場の未刈り穀稈を連続的に刈取って脱穀する技術がある(特許文献1参照)。この種の普通型コンバインにおいて、機体左右幅中央に運転部を配置する技術は公知である(特許文献2参照)。また、刈取装置から脱穀装置にフィーダハウス及びビータを介して穀稈を供給する技術もよく知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−263865号公報
【特許文献2】特開2000−14230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前記従来技術では、運転部をフィーダハウスの上方に配置するから、普通型コンバインの重心位置が高くなりがちであり、普通型コンバイン全体の重心バランスひいては走行安定性の点に鑑みて改善の余地があった。また、前記従来技術では、刈取装置及び脱穀装置の左右両側方にエンジンからの動力伝達機構を設けるから、刈取装置及び脱穀装置の左右両側に動力伝達機構の取付けスペースを確保しなければならず、エンジンや脱穀装置等の配置関係が互いに制約されるという構造上の問題もあった。すなわち、前記従来技術では、普通型コンバイン全体の重心バランスや、駆動構造のメンテナンス作業性等を向上させ難いという問題があった。
【0005】
そこで、本願発明は、これらの現状を検討して改善を施した普通型コンバインを提供することを技術的課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、刈取装置と、扱胴を有する脱穀装置と、オペレータが搭乗する運転部及び走行部を有する走行機体とを備え、前記刈取装置から前記脱穀装置にフィーダハウスを介して穀稈を供給する普通型コンバインであって、前記フィーダハウスと前記運転部とが前記走行機体の前部に左右並べて設けられ、前記運転部の左右一側部を、前記フィーダハウスの一部にオーバーラップさせているというものである。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載した普通型コンバインにおいて、前記フィーダハウスと前記脱穀装置との間に穀稈受継用のビータが配置され、前記運転部の左右一側部を、前記フィーダハウスの一部と共に前記ビータの一部にオーバーラップさせているというものである。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載した普通型コンバインにおいて、前記脱穀装置に穀粒選別機構を備え、前記脱穀装置の一側方にグレンタンクが配置され、前記走行機体の後部にエンジンが搭載され、前記扱胴を軸支する前後長手の扱胴軸の後端側に前記エンジンの動力を伝達し、前記扱胴軸の前端側から前記刈取装置及び前記穀粒選別機構に動力伝達するように構成されているというものである。
【0009】
請求項4の発明は、請求項3に記載した普通型コンバインにおいて、前記刈取装置への動力伝達用の刈取り駆動ベルトと、前記穀粒選別機構への動力伝達用の選別駆動ベルトとが、前記脱穀装置の他側方で前後に振り分けて配置されているというものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によると、刈取装置と、扱胴を有する脱穀装置と、オペレータが搭乗する運転部及び走行部を有する走行機体とを備え、前記刈取装置から前記脱穀装置にフィーダハウスを介して穀稈を供給する普通型コンバインであって、前記フィーダハウスと前記運転部とが前記走行機体の前部に左右並べて設けられ、前記運転部の左右一側部を、前記フィーダハウスの一部にオーバーラップさせているから、前記運転部の下方空間を有効利用して、前記フィーダハウスを前記走行機体の前部に連結できると共に、前記走行機体に対する前記運転部の位置をあまり高くせずに、前記運転部と前記フィーダハウスとを前記走行機体の左右幅中央側に寄せてコンパクトに配置できる。このため、前記フィーダハウスの後方に位置する前記脱穀装置を前記走行機体の左右幅中央側に寄せて配置できることになり、普通型コンバイン全体の重心バランスを向上させ(低重心化を図れ)、走行安定性の改善を図れるという効果を奏する。
【0011】
請求項2の発明によると、請求項1に記載した普通型コンバインにおいて、前記フィーダハウスと前記脱穀装置との間に穀稈受継用のビータが配置され、前記運転部の左右一側部を、前記フィーダハウスの一部と共に前記ビータの一部にオーバーラップさせているから、前記運転部のすぐ後方に前記脱穀装置を位置させることが可能になる。このため、前記ビータの存在によって前記刈取装置から前記脱穀装置への穀稈受継能力を確保しながら、普通型コンバインの前後方向長さのコンパクト化にも寄与できるという効果を奏する。
【0012】
請求項3の発明によると、請求項1又は2に記載した普通型コンバインにおいて、前記脱穀装置に穀粒選別機構を備え、前記脱穀装置の一側方にグレンタンクが配置され、前記走行機体の後部にエンジンが搭載され、前記扱胴を軸支する前後長手の扱胴軸の後端側に前記エンジンの動力を伝達し、前記扱胴軸の前端側から前記刈取装置及び前記穀粒選別機構に動力伝達するように構成されているから、前記エンジンから前記刈取装置や前記穀粒選別機構への伝動経路を簡単に構成できる。前記刈取装置や前記穀粒選別機構等の駆動構造に対するメンテナンス作業性の向上にも貢献できる。また、高回転側(唐箕ファン)から順に配列される前記穀粒選別機構の複数入力部を、簡単なベルト駆動構造にて効率よく駆動させることが可能になる。例えば、唐箕ファン、一番コンベヤ機構、二番コンベヤ機構及び揺動選別盤等を、少ない本数の選別駆動ベルトにて適正回転数で作動できる。
【0013】
請求項4の発明によると、請求項3に記載した普通型コンバインにおいて、前記刈取装置への動力伝達用の刈取り駆動ベルトと、前記穀粒選別機構への動力伝達用の選別駆動ベルトとが、前記脱穀装置の他側方で前後に振り分けて配置されているから、前記刈取り駆動ベルトや前記選別駆動ベルトの交換又はメンテナンス作業を、前記グレンタンク設置側と反対側から簡単に行えることになり、メンテナンス作業性が向上する。また、前記刈取装置及び前記脱穀装置の左右両側に動力伝達機構の取付けスペースを確保する必要がないから、前記エンジンや前記脱穀装置等の配置関係の制約を少なくできる(配置自由度を向上できる)。更に、前記脱穀装置と前記グレンタンクとの間に前記選別駆動ベルトの設置スペースを確保する必要もないから、前記脱穀装置と前記グレンタンクとを互いに接近させて配置でき、普通型コンバインの重心バランス向上にも貢献する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】普通型コンバインの左側面図である。
【図2】普通型コンバインの前部を示す平面図である。
【図3】普通型コンバインの前部を示す斜視図である。
【図4】コンバインの駆動系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本願発明を具体化した実施形態を普通型コンバイン(以下、単にコンバインと称する)に適用した図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、走行機体1の前進方向に向かって左側を単に左側と称し、同じく前進方向に向かって右側を単に右側と称する。
【0016】
まず、図1乃至図3を参照しながら、コンバインの概略構造について説明する。図1乃至図3に示す如く、実施形態のコンバインは、走行部としての鉄製の左右一対の履帯2にて支持された走行機体1を備えている。走行機体1の前部には、稲(又は麦又は大豆又はトウモロコシ)等の未刈り穀稈を刈取りながら取込む刈取装置3が単動式の昇降用油圧シリンダ4にて昇降調節可能に装着されている。
【0017】
走行機体1の前部には、オペレータが搭乗する運転部としての運転台5を搭載する。運転台5の後方には、脱穀後の穀粒を貯留するためのグレンタンク6を配置する。グレンタンク6の後方には、動力源としてのエンジン7を配置する。グレンタンク6の後部右側には、穀粒排出オーガ8を旋回可能に設ける。グレンタンク6内の穀粒は、排出オーガ8先端の籾投げ口8aから例えばトラックの荷台やコンテナ等に搬出される。走行機体1の他側(実施形態では左側)には、刈取装置3から供給された刈取穀稈を脱穀処理するための脱穀装置9を搭載する。脱穀装置9の下部には、揺動選別及び風選別を行うための穀粒選別機構10を配置する。
【0018】
刈取装置3は、脱穀装置9前部の扱口9aに連通したフィーダハウス11と、フィーダハウス11の前端に連設された横長バケット状の穀物ヘッダ12とを備えている。穀物ヘッダ12内に掻込みオーガ13を回転可能に軸支する。掻込みオーガ13の前部上方にタインバー付き掻込みリール14を配置する。穀物ヘッダ12の前部にバリカン状の刈刃15を配置する。穀物ヘッダ12前部の左右両側には分草体16を突設する。フィーダハウス11内には、供給コンベヤ17を設けている。供給コンベヤ17の送り終端と扱口9aとの間に穀稈受継用のビータ18を設けている。なお、フィーダハウス11の下面部と走行機体1の前端部とが昇降用油圧シリンダ4を介して連結され、刈取装置3が昇降用油圧シリンダ4にて昇降動する。
【0019】
上記の構成において、左右の分草体16間の未刈り穀稈の穂先側が掻込みリール14にて掻込まれ、未刈り穀稈の稈側が刈刃15にて刈取られ、掻込みオーガ13の回転駆動によって穀物ヘッダ12の左右幅の中央部付近に集められる。穀物ヘッダ12の刈取り穀稈の全量は、供給コンベヤ17にて搬送され、ビータ18にて脱穀装置9の扱口9aに投入される。
【0020】
また、図1乃至図3に示す如く、脱穀装置9の扱室内に扱胴21を回転可能に設ける。走行機体1の前後方向に延長させた扱胴軸20に扱胴21を軸支する。扱胴21の下方側には、穀粒を漏下させる受網24(コンケーブ)を張設する。なお、扱胴21前部の外周面には、螺旋状のスクリュー羽根状の取込み羽根25が半径方向外向きに突設されている。
【0021】
上記の構成において、扱口9aから投入された刈取り穀稈は、扱胴21の回転にて走行機体1の後方に向けて搬送されながら、扱胴21と受網24との間で混練されて脱穀される。受網24の網目よりも小さい穀粒等の脱穀物は受網24から漏下する。受網24から漏下しない藁屑等は、扱胴21の搬送作用によって、脱穀装置9後部の排塵口から圃場に排出される。
【0022】
なお、扱胴21の上方側には、扱室内の脱穀物の搬送速度を調節する複数の送塵弁(図示省略)を回動可能に枢着する。前記送塵弁の角度調整によって、扱室内における脱穀物の搬送速度(滞留時間)を、刈取穀稈の品種や性状に応じて調節できる。一方、脱穀装置9の下方に配置された穀粒選別機構10として、グレンパン、チャフシーブ、グレンシーブ及びストローラック等を有する比重選別用の揺動選別盤26を備える。また、穀粒選別機構10は、選別風を供給する唐箕ファン29を備える。扱胴21にて脱穀されて受網24から漏下した脱穀物は、揺動選別盤26の比重選別作用と唐箕ファン29の風選別とにより、穀粒(精粒等)の一番物、枝梗付き穀粒等の二番物、及び藁屑等に選別される。
【0023】
揺動選別盤26の下側方には、穀粒選別機構10として、一番コンベヤ機構30及び二番コンベヤ機構31を備える。揺動選別盤26及び唐箕ファン29の選別によって、揺動選別盤26から落下した穀粒等の一番物は、一番コンベヤ機構30及び揚穀コンベヤ32によってグレンタンク6に収集される。枝梗付き穀粒等の二番物は、二番コンベヤ機構31及び二番還元コンベヤ33等を介して揺動選別盤26の選別始端側に戻され、揺動選別盤26によって再選別される。藁屑等は、走行機体1後部の排塵口34から圃場に排出されるように構成する。
【0024】
さらに、図1乃至図3に示す如く、運転台5には、操縦コラム41と、オペレータが座乗する運転座席42とを配置している。操縦コラム41には、走行機体1の進路を変更したり移動速度を変更したりするための操縦レバーとしての左右の変速レバー43,44と、前後方向に傾倒させて刈取装置3を昇降させたり左右方向に傾倒させて掻込みリール14を昇降させるための刈取姿勢レバー45と、エンジン7の回転を制御するアクセルレバー(図示省略)と、穀粒排出オーガ8を作動させる穀粒排出レバー(図示省略)とが配置されている。なお、刈取装置3や脱穀装置9の動力伝達を入り切り操作する作業クラッチレバー(図示省略)等も配置されている。また、運転台5の上方側に支柱48を介して日除け用の屋根体49が取付けられている。
【0025】
図1に示す如く、走行機体1の下面側に左右のトラックフレーム50を配置する。トラックフレーム50には、履帯2にエンジン7の動力を伝える駆動スプロケット51と、履帯2のテンションを維持するテンションローラ52と、履帯2の接地側を接地状態に保持する複数のトラックローラ53と、履帯2の非接地側を保持する中間ローラ54とを設ける。駆動スプロケット51によって履帯2の後側を支持させ、テンションローラ23によって履帯2の前側を支持させ、トラックローラ53によって履帯2の接地側を支持させ、中間ローラ54によって履帯2の非接地側を支持させるように構成する。
【0026】
また、グレンタンク6の底部に配置させる底送りコンベヤ60(図4参照)と、グレンタンク6の後部に配置させる縦送りコンベヤ61とを備える。左右の底送りコンベヤ60は、グレンタンク6の底部で前後方向に延長されていて、垂直に設けた縦送りコンベヤ61の下端側に向けてグレンタンク6底部の穀粒を搬送する。縦送りコンベヤ61は、グレンタンク6の後部で上下方向に延長されていて、グレンタンク6右側にある穀粒排出オーガ8の送り始端側に向けて縦送りコンベヤ61上端側から穀粒を搬送する。グレンタンク6内の穀粒は、排出オーガ8先端(送り終端側)の籾投げ口8aに搬送される。
【0027】
穀粒排出オーガ8は、縦送りコンベヤ61の上端側に上下方向に回動可能に支持され、穀粒排出オーガ8の送り終端側である籾投げ口8a側を昇降可能に構成する。また、縦送りコンベヤ61のコンベヤ軸芯回り(水平方向)に、穀粒排出オーガ8の籾投げ口8a側を移動可能に構成する。すなわち、走行機体1の前部下側に籾投げ口8a側を移動させ、運転台5及びグレンタンク6の右側部にオーガレスト(図示省略)を介して穀粒排出オーガ8を収納する。一方、穀粒排出オーガ8の送り終端側である籾投げ口8a側を上昇させ、走行機体1の側方又は後方に籾投げ口8a側を移動させ、走行機体1の側方又は後方に穀粒排出オーガ8を突出させ、トラックの荷台やコンテナ等に籾投げ口8aを対向させることによって、トラックの荷台やコンテナ等にグレンタンク6内の穀粒が搬出される。
【0028】
次に、主として図4を参照しながら、コンバインの動力伝達構造を説明する。図4に示す如く、一対の斜板可変型の左右走行油圧ポンプ65を有する走行変速用のポンプケース66を備える。走行機体1の右側後部上面にエンジン7を搭載し、エンジン7左側の走行機体1上面にポンプケース66を配置する。また、左右のトラックフレーム50の後端部に左右の減速ギヤケース63をそれぞれ設ける。左右の減速ギヤケース63に走行油圧モータ69をそれぞれ配置する。ポンプケース66から後方に突出させた走行駆動入力軸64と、エンジン7から後方に突出させた出力軸67とを、エンジン出力ベルト231を介して連結する。走行機体1上面側のうち脱穀装置9後部側方に、エンジン7とポンプケース66を設け、エンジン7と脱穀装置9の間にポンプケース66を配置している。
【0029】
なお、昇降用油圧シリンダ4等を駆動するチャージポンプ68も、左右走行油圧ポンプ65と同軸64上に設けている。また、昇降用油圧シリンダ4等を作動させる作業用油圧ポンプ70をエンジン7に配置し、左右走行油圧ポンプ65と同様に、チャージポンプ68及び作業用油圧ポンプ70をエンジン7にて駆動させる。
【0030】
上記の構成により、左右走行油圧ポンプ65に出力軸67を介してエンジン7の駆動出力が伝達される。左右走行油圧ポンプ65によって左右走行油圧モータ69を各別にそれぞれ駆動し、左右走行油圧モータ69によって左右履帯2を正逆転させて前後進移動させる。また、左右走行油圧モータ69の回転速度を制御し、左右走行油圧モータ69によって駆動する左右履帯2の回転速度を異ならせて、走行機体1の移動方向(走行進路)を変更し、圃場の枕地での方向転換等が実行される。
【0031】
すなわち、左右の走行油圧ポンプ65に、閉ループ油圧回路を介して左右一対の走行油圧モータ69が油圧接続される。左右走行油圧モータ69によって、駆動スプロケット51を介して、左右履帯2が前進方向又は後進方向に駆動される。オペレータが左右の変速レバー43,44を操縦操作して、左右の走行油圧ポンプ65の斜板角(変速制御)をそれぞれ調節することによって、左右の走行油圧モータ69の回転数又は回転方向がそれぞれ変更され、左右の履帯2が互いに独立的に駆動されて、走行機体1が前進移動又は後進移動する。
【0032】
図5に示す如く、脱穀装置9の後方には、脱穀入力軸72を軸支した扱胴駆動ケース71を備える。走行駆動入力軸64に脱穀駆動ベルト232を介して脱穀入力軸72を連結する。テンションローラを兼用した脱穀クラッチ233と脱穀駆動ベルト232を介して、走行駆動入力軸64から脱穀入力軸72にエンジン7の動力を伝達させる。脱穀クラッチ233はオペレータのレバー操作によって入り切り制御される。扱胴軸20の一端側(後端側)には、扱胴駆動ベルト234を介して脱穀入力軸72が連結される。脱穀クラッチ233の入り切り操作によって、脱穀入力軸72を介して扱胴21が駆動制御されて、ビータ18から投入された穀稈が扱胴21によって連続的に脱穀される。
【0033】
エンジン7及びポンプケース66周辺の動力伝達構造を詳述すると、ポンプケース66から後方に突出した走行駆動入力軸64上に、エンジン出力伝達プーリ280と脱穀出力伝達プーリ281と穀粒排出駆動プーリ282とを軸支する一方、エンジン7の出力軸67上にエンジン出力プーリ283を軸支する。エンジン出力伝達プーリ280とエンジン出力プーリ283との間にエンジン出力ベルト231を巻き掛ける。脱穀入力軸72の一端側(後端側)に大径の上流側脱穀入力プーリ284を軸支し、脱穀出力伝達プーリ281と上流側脱穀入力プーリ284との間に脱穀駆動ベルト232を巻き掛ける。脱穀入力軸72の他端側(前端側)に小径の下流側脱穀入力プーリ285を軸支し、扱胴軸20の一端側(後端側)に固着された扱胴入力プーリ286と、下流側脱穀入力プーリ285との間に、扱胴駆動ベルト234を巻き掛ける。また、底送りコンベヤ軸103の後端側に穀粒排出プーリ287を軸支し、穀粒排出駆動プーリ282と穀粒排出プーリ287との間に、穀粒排出ベルト244を巻き掛ける。
【0034】
上記の構成により、エンジン7から出力された駆動力は、走行駆動入力軸64にて分岐されて伝達される。すなわち、走行駆動入力軸64から左右の走行油圧ポンプ65にエンジン7の出力が伝達され、走行駆動入力軸64上の脱穀出力伝達プーリ281から、脱穀駆動ベルト232及び扱胴駆動ベルト234を介して、脱穀装置9の扱胴軸20にエンジン7の動力が伝達される。一方、走行駆動入力軸64上の穀粒排出駆動プーリ282から、穀粒排出ベルト244を介して、穀粒排出オーガ8にエンジン7の動力が伝達される。
【0035】
図1〜図3に示すように、脱穀装置9の前面壁体に刈取り選別入力ケース73を設ける。刈取り選別入力ケース73には、脱穀装置9の他側方(実施形態ではグレンタンク6と反対側の右側方)に向けて延びる刈取り選別入力軸74を軸支する。扱胴軸20の他端側(前端側)にベベルギヤ75を介して刈取り選別入力軸74の一端側(右側端部)を連結する。ビータ18が軸支されたビータ軸82の長手中途部に、ビータ駆動ベルト238を介して刈取り選別入力軸74の長手中途部を連結する。唐箕ファン29を軸支した唐箕軸76の左側端部に、選別入力ベルト235を介して刈取り選別入力軸74の他端側(左側端部)を連結する。
【0036】
一番コンベヤ機構30における一番コンベヤ軸77の左側端部と、二番コンベヤ機構31における二番コンベヤ軸78の左側端部とに、コンベヤ駆動ベルト237を介して唐箕軸76を連結する。揺動選別盤26後部を軸支したクランク状の揺動駆動軸79の左側端部に、揺動選別ベルト236を介して二番コンベヤ軸78の左側端部を連結する。なお、一番コンベヤ軸77を介して揚穀コンベヤ32が駆動され、一番コンベヤ機構30の一番選別穀粒がグレンタンク6に収集される。また、二番コンベヤ軸78を介して二番還元コンベヤ33が駆動され、二番コンベヤ機構31の藁屑が混在した二番選別穀粒が揺動選別盤26の上面側に戻される。選別入力ベルト235、揺動選別ベルト236及びコンベヤ駆動ベルト237の組合せは、穀粒選別機構10への動力伝達用の選別駆動ベルトに相当するものである。
【0037】
一方、ビータ軸82の左側端部には、刈取り駆動ベルト241及び刈取クラッチ242を介して、供給コンベヤ17の送り終端側が軸支された刈取入力軸89の左側端部を連結する。穀物ヘッダ12に設けたヘッダ駆動軸91に、ヘッダ駆動チェン90を介して刈取入力軸89の右側端部を連結する。掻込みオーガ13を軸支した掻込み軸93に、掻込み駆動チェン92を介してヘッダ駆動軸91を連結する。掻込みリール14を軸支したリール軸94に、中間軸95及びリール駆動チェン96,97を介してヘッダ駆動軸91を連結する。また、ヘッダ駆動軸91の右側端部には、刈刃駆動クランク機構98を介して刈刃15が連結される。刈取クラッチ242の入り切り操作によって、供給コンベヤ17、掻込みオーガ13、掻込みリール14及び刈刃15が駆動制御され、圃場の未刈り穀稈の穂先側が連続的に刈り取られる。
【0038】
前述の通り、底送りコンベヤ60における底送りコンベヤ軸103の後端側に穀粒排出プーリ287を軸支し、穀粒排出駆動プーリ282と穀粒排出プーリ287との間に、穀粒排出ベルト244を巻き掛ける。そして、走行駆動入力軸64の後端部に、穀粒排出ベルト244及び穀粒排出クラッチ245を介して、底送りコンベヤ軸103の後端側を連結する。
【0039】
底送りコンベヤ軸103の後端部には、縦送り駆動チェン104を介して下部仲介軸105の一端側も連結する。縦送りコンベヤ61における縦送りコンベヤ軸106の下端側に、ベベルギヤ機構107を介して仲介軸105の他端側を連結する。縦送りコンベヤ軸106の上端側に、ベベルギヤ機構108を介して上部仲介軸109の一端側を連結させる。上部仲介軸109の他端側に穀粒排出駆動チェン110を介して穀粒排出軸111の一端側を連結する。穀粒排出軸111の他端側に、ベベルギヤ機構113を介して穀粒排出オーガ8の排出オーガ軸112の送り始端側を連結する。穀粒排出クラッチ245の入り切り操作によって、底送りコンベヤ60、縦送りコンベヤ61及び穀粒排出オーガ8が駆動制御され、グレンタンク6内の穀粒がトラック荷台又はコンテナ等に排出される。
【0040】
以上のように構成すると、脱穀装置9に穀粒選別機構10を備え、脱穀装置9の一側方にグレンタンク6が配置され、走行機体1の後部にエンジン7が搭載され、扱胴21を軸支する前後長手の扱胴軸20の後端側にエンジン7の動力を伝達し、扱胴軸20の前端側から刈取装置3及び穀粒選別機構10に動力伝達するから、エンジン7から刈取装置3や穀粒選別機構10への伝動経路を簡単に構成できる。刈取装置3や穀粒選別機構10等の駆動構造に対するメンテナンス作業性の向上にも貢献できる。また、高回転側(唐箕ファン29)から順に配列される穀粒選別機構10の複数入力部を、簡単なベルト駆動構造にて効率よく駆動させることが可能になる。例えば、唐箕ファン29、一番コンベヤ機構30、二番コンベヤ機構31及び揺動選別盤26等を、少ない本数の選別駆動ベルト(選別入力ベルト235、揺動選別ベルト236、コンベヤ駆動ベルト237)にて適正回転数で作動できる。
【0041】
また、刈取装置3への動力伝達用の刈取り駆動ベルト241と、前記穀粒選別機構への動力伝達用の選別駆動ベルト235〜237とが、脱穀装置9の他側方で前後に振り分けて配置されているから、刈取り駆動ベルト241や選別駆動ベルト235〜237の交換又はメンテナンス作業を、グレンタンク6設置側と反対側から簡単に行えることになり、メンテナンス作業性が向上する。また、刈取装置3及び脱穀装置9の左右両側に動力伝達機構の取付けスペースを確保する必要がないから、エンジン7や脱穀装置9等の配置関係の制約を少なくできる(配置自由度を向上できる)。更に、脱穀装置9とグレンタンク6との間に選別駆動ベルト235〜237の設置スペースを確保する必要もないから、脱穀装置9とグレンタンク6とを互いに接近させて配置でき、コンバインの重心バランス向上に貢献するのである。
【0042】
次に、図1乃至図3を参照しながら、フィーダハウス11及びビータ18と、運転台5との配置構造について説明する。フィーダハウス11及びビータ18と、運転台5とは、走行機体1の前部に左右並べて設けられている。実施形態では、走行機体1の前部略中央に運転台5が配置され、運転台5の下側に、フィーダハウス11及びビータ18が運転台5中央の運転座席42より左側にずらして配置されている。平面視において運転台5の左右一側部(この場合は右側部)は、フィーダハウス11の一部(この場合は左半部)と、ビータ18を収容するビータケース18aの一部(この場合は左半部)とに上方から被さりオーバーラップしている。従って、フィーダハウス11及びビータケース18aの右半部は、平面視において運転台5から右方向外向きにはみ出した状態になっている。運転台5においてフィーダハウス11及びビータケース18aの左半部に重なる部分には、操縦コラム41の右側部(サイドコラム41a部分)が位置している。実施形態では、運転台5の左右一側板(この場合は右側板)に、ビータケース18aに対応した段部5aが形成されている。ビータケース18aの左半部は、段部5aを介して運転台5の下側に収容されている。
【0043】
以上のように構成すると、運転台5の左右一側部をフィーダハウス11の一部にオーバーラップさせるので、運転台5の下方空間を有効利用して、フィーダハウス11を走行機体1の前部(脱穀装置9の前面)に連結できると共に、走行機体1に対する運転台5の位置をあまり高くせずに、運転台5とフィーダハウス11とを走行機体1の左右幅中央側に寄せてコンパクトに配置できる。このため、フィーダハウスの後方に位置する脱穀装置9を走行機体1の左右幅中央側に寄せて配置できることになり、コンバイン全体の重心バランスを向上させ(低重心化を図れ)、走行安定性の改善を図れるのである。
【0044】
特に実施形態では、運転台5の左右一側部を、フィーダハウス11と共にビータ18の一部にオーバーラップさせるから、運転台5のすぐ後方に脱穀装置9を位置させることが可能になる。このため、ビータ18の存在によって刈取装置3から脱穀装置9への穀稈受継能力を確保しながら、コンバインの前後方向長さのコンパクト化にも寄与できるのである。
【符号の説明】
【0045】
1 走行機体
2 履帯(走行部)
3 刈取装置
5 運転台(運転部)
6 グレンタンク
7 エンジン
9 脱穀装置
10 穀粒選別機構
11 フィーダハウス
18 ビータ
20 扱胴軸
21 扱胴
241 刈取り駆動ベルト
235 選別入力ベルト(選別駆動ベルト)
236 揺動選別ベルト(選別駆動ベルト)
237 コンベヤ駆動ベルト(選別駆動ベルト)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
刈取装置と、扱胴を有する脱穀装置と、オペレータが搭乗する運転部及び走行部を有する走行機体とを備え、前記刈取装置から前記脱穀装置にフィーダハウスを介して穀稈を供給する普通型コンバインであって、
前記フィーダハウスと前記運転部とが前記走行機体の前部に左右並べて設けられ、前記運転部の左右一側部を、前記フィーダハウスの一部にオーバーラップさせている、
普通型コンバイン。
【請求項2】
前記フィーダハウスと前記脱穀装置との間に穀稈受継用のビータが配置され、
前記運転部の左右一側部を、前記フィーダハウスの一部と共に前記ビータの一部にオーバーラップさせている、
請求項1に記載した普通型コンバイン。
【請求項3】
前記脱穀装置に穀粒選別機構を備え、前記脱穀装置の一側方にグレンタンクが配置され、前記走行機体の後部にエンジンが搭載され、
前記扱胴を軸支する前後長手の扱胴軸の後端側に前記エンジンの動力を伝達し、前記扱胴軸の前端側から前記刈取装置及び前記穀粒選別機構に動力伝達するように構成されている、
請求項1又は2に記載した普通型コンバイン。
【請求項4】
前記刈取装置への動力伝達用の刈取り駆動ベルトと、前記穀粒選別機構への動力伝達用の選別駆動ベルトとが、前記脱穀装置の他側方で前後に振り分けて配置されている、
請求項3に記載した普通型コンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−161265(P2012−161265A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−23080(P2011−23080)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】