説明

普通系コムギを定性的及び定量的に検出する方法

【課題】食品原料や加工食品など各種被検試料に含まれるコムギのうち、普通系コムギを特異的に且つ高感度で、定性的及び/又は定量的に検出する方法を提供する。
【解決手段】被検試料から抽出した核酸を鋳型として、特定な配列からなる塩基配列を有するプライマーと、前記プライマーと異なる、特定な配列からなる塩基配列を有するプライマーとを用いて、PCR法を実施し、PCR増幅産物の存在を検出する方法、及び普通系コムギ検出用キット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PCR法を利用した普通系コムギの特異的な検出法に関する。本発明は具体的には、食品原料や加工食品など各種被検試料に含まれる普通系コムギを特異的に定性的及び/又は定量的に検出する方法に関する。本発明は、さらに、被検試料に含まれるコムギが普通系コムギであるか、又は普通系コムギ以外の例えばデュラムコムギなどであるかの判別をすることができ、さらにはその双方が存在することを検出できる方法に関する。本発明はまた、上記の検出方法に用いるプライマーセット、核酸プローブ及び検出用キットに関する。
【背景技術】
【0002】
食の安全・安心の観点から、消費者は食品の表示制度に高い関心を寄せている。食品への表示は、消費者自らが食品の品質を判断し選択する上でなくてはならないものとなっている。小麦は様々な加工工程を経て各種製品となり、市場に流通している。その代表的な製品の一つであるマカロニ類の表示は加工食品品質表示基準及びマカロニ類品質表示基準に定められており、「デュラムコムギのセモリナ」、「デュラムコムギ粉」、「強力小麦のファリナ」又は「強力小麦粉」を使用した原料小麦粉の多いものから順に表示することとなっている。製造過程における追跡調査を除けば、それら小麦加工食品に含まれる普通系コムギとデュラムコムギとを定性的及び/又は定量的に判別可能な技術は存在せず、その技術の開発が求められている。
【0003】
これまでに様々な技術を駆使してコムギを特異的且つ高感度に検出するための手法が考案されてきた。それらの手法は、基本的に被検試料中に含まれるコムギ由来のタンパク質ないしはDNAを検出対象としている手法に分類される。
タンパク質を検出する手法としては、電気泳動法、ウエスタンブロッティング法、免疫化学的方法、あるいはそれらを組み合わせた方法などが挙げられる。特にELISA法は、周辺機器や試薬類が取り揃えられているため、広く市場に受け入れられている。
しかしながら、普通系コムギとデュラムコムギの種の起源は共通性が極めて高く、それら個体を形成する諸成分も近似している。タンパク質も例外ではなく、タンパク質の構成比は異なるものの、各コムギに含まれるタンパク質の種類に差はほとんど無い。それ故、タンパク質レベルで普通系コムギとデュラムコムギを判別することは困難である。
他方で、遺伝子増幅技術の一つであるPCR法を用いてコムギを特異的に検出するための技術も幾つか考案されてきた。しかしながら、コムギのDNAや遺伝子の解析が必ずしも十分ではないために、最適な検査方法の開発には困難をきたしている。
【0004】
非特許文献1では、コムギDゲノムにコードされているWx−D1遺伝子を標的として、PCRを利用したコムギ検出法が報告された。この検査法は、極めて特異性高く普通系コムギを検出することが可能であり、植物体・穀粒・コムギ粉等のコムギ加工品の検査には最適である。当該検査法では、Dゲノムを有しないデュラムコムギは検出されない。
一方、特許文献1では、コムギA、B、DゲノムにコードされるスターチシンターゼII(Starch Synthase II、略称:SSII)遺伝子を標的としてPCRを利用した定性的及び/又は定量的にコムギを検出する方法が開示された。この検出法によると、SSII−A、B、Dの共通領域を標的として特異的且つ高感度にコムギを検出することが可能である。特許文献1でSSII−Dを特異的に判別するプライマーセットが開示されたが、必ずしも特異性が保障されるものではなく、更に定量的測定には不適であった。
非特許文献2では、加熱などの中・高度加工過程において原料のゲノムが物理的に切断される事が報告された。コムギゲノムのPCR増幅標的領域が長いと加工工程によってその内部が切断されるため、定量的PCRによる測定値が実際のコムギの含有量を反映しない可能性がある。それ故、中・高度加工を受けてコムギゲノムが断片化されたとしても、PCR標的領域が断片化を受ける可能性が低くなるようにする工夫が必要である。
従って、食品原材料や加工処理された食品に含まれる普通系コムギを高い特異性をもって且つ高感度で検出する方法が望まれている。また、食品原材料や加工処理された食品に含まれる普通系コムギと、普通系コムギ以外の例えばデュラムコムギを定性的及び/又は定量的に判別して検出する適切な手法が未だ存在せず、その検出方法の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−5588号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】イイダ・エト・オル、デヴェロップメント・オブ・タキソン−スペシフィック・シークエンス・オブ・コモン・ウィート・フォオ・ザ・デテクション・オブ・ジェネティカリィ・モディファイド・ウィート、ジャーナル・オブ・アグリカルチャア・フード・ケミストリー、2005年、8月号、10;53(16):6294−300(Iida M et al.、Development of taxon−specific sequences of common wheat for the detection of genetically modified wheat. J Agric Food Chem. 2005 Aug 10;53(16):6294−300.)
【非特許文献2】ヨシムラ・エト・オル、コンパラティブ・スタディーズ・オブ・ザ・クアンティフィケイション・オブ・ジェネティカリー・モディファイド・オーガニズムズ・イン・フーズ・プロセスド・フロム・マイズ・アンド・ソイ・ユージング・トライアル・プロデューシング、ジャーナル・オブ・アグリカルチャア・フード・ケミストリー、2005年、5月号、23;53(6):2060−9(Yoshimura T et al.、Comparative studies of the quantification of genetically modified organisms in foods processed from maize and soy using trial producing. J Agric Food Chem. 2005 Mar 23;53(6):2060−9.)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、食品原料や加工食品など各種被検試料に含まれるコムギのうち、普通系コムギを特異的に且つ高感度で、定性的及び/又は定量的に検出する方法を提供することである。本発明はまた、食品原材料や加工処理された食品に含まれる普通系コムギと、普通系コムギ以外のコムギ、例えばデュラムコムギとを、定性的及び/又は定量的に判別し検出する方法を提供することを目的とする。
本発明はさらに、PCR法を用いた上記の検出方法に使用することができる、プライマーセット、核酸プローブ、及び検出用キットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を達成するために鋭意研究を重ねた結果、コムギのDゲノム上にコードされているSSII(Starch Synthase II−D、略称:SSII−D)に特異的な塩基配列を見出し、この塩基配列を基盤としてプライマーセットを設計し、これを用いてPCR法を実施することにより、被検試料中に含まれるコムギのうち普通系コムギを特異的且つ高感度で検出することを見出した。本発明者らはまた、定量PCR法を実施するに当たって有用な核酸プローブを見出すべく、SSII−D遺伝子上、上記のプライマーセットに挟まれる領域の塩基配列の中から、特定の核酸プローブを設計した。
本発明者らはさらに、上記の普通系コムギを検出する方法と、コムギのA、B、Dゲノム上にコードされるSSIIの共通領域を特異的且つ高感度で検出して、コムギを広範囲に検出する方法とを組み合わせて、これらの方法から得られる結果を相対比較及び/又は絶対比較することにより、被検試料中に含まれる普通系コムギと普通系コムギ以外の例えばデュラムコムギとを判別できることを見出した。
【0009】
コムギのゲノムはA、B、Dと称される3種類のゲノムから構成されており、各々7本の染色体を有している。普通系コムギはAABBDDの六倍体であり、デュラムコムギはAABBの四倍体である。これまでに数多くのコムギ遺伝子が同定されており、それら遺伝子の配座に関する情報も蓄積されているが、それらは必ずしも十分ではない。
本発明では、その中でも特にA、B、Dの各ゲノムにおける配座が決定されているStarch Synthase II(略称SSII−A、SSII−B、SSII−D)に着目した。これらSSIIはコムギA、B、Dゲノム各々の7番染色体の短腕にコードされていることが報告されている(シンバタ・エト・オル、ミューテーションズ・イン・ウィート・スターチ・シンターゼ・II・ジーンズ・アンド・ピーシーアール・ベースド・セレクション・オブ・ア・エスジーピー−1・ヌル・ライン、セオリティカル・アンド・アプライド・ジェネティクス、2005年、10月号、111(6):1072−9.(Shimbata T et al.、 Mutations in wheat starch synthase II genes and PCR−based selection of a SGP−1 null line. Theor Appl Genet. 2005 Oct;111(6):1072−9.)
【0010】
A、B及びDの各ゲノムにコードされているSSIIの塩基配列は微妙に異なっており、プライマーセットの設計次第ではSSII−A、B、Dの各々を特異的に見分けることも可能である。これら情報を総括し、SSII−A、SSII−B、SSII−D間の微妙に異なる特徴的な塩基配列を見出すことによって、Dゲノムを有する普通系コムギ群を特異的に検出することが可能であるという結論を導き出した。
すなわち、普通系コムギを構成するDゲノムにコードされるSSII−Dにおいて特徴的な塩基配列であり、且つDゲノムを有していないデュラムコムギや他の植物に交叉しない塩基配列を選抜し、該塩基配列に相補的にハイブリダイズするプライマーセット及び核酸プローブを設計し、それらを用いたPCR法を実施して、被検試料中に含まれる普通系コムギを検出することに至った。さらに、このPCR法の実施とともに、同一の試料に対して、先に開発した方法、すなわちSSII−A、B、D共通領域を標的としたPCR法を実施し、両PCR法によるPCR増幅産物の発現を相対比較及び/又は絶対比較することによって、被検試料中に含まれるコムギのうち普通系コムギと、普通系コムギ以外のコムギ、例えばデュラムコムギなどとを、定性的及び/又は定量的に判別できることに至った。
【0011】
従って本発明は、被検試料における普通系コムギの存在を検出する方法であって、被検試料から抽出した核酸を鋳型として、配列番号5に示される塩基配列を有するプライマーと配列番号6に示される塩基配列を有するプライマーとを用いて、PCR法を実施し、PCR増幅産物の存在を検出することを含む方法である。ここで、PCR増幅産物の存在は例えば電気泳動法などの公知の手段で確認することができ、PCR増幅産物が認められれば普通系コムギの存在が肯定される。
【0012】
本発明はさらに、上記のプライマーセットと所定の核酸プローブを用いて定量PCR法を実施して、普通系コムギの存在を定性的及び/又は定量的に検出する方法にも向けられている。よって、本発明はまた、被検試料における普通系コムギの存在を検出する方法であって、被検試料から抽出した核酸を鋳型として、配列番号5に示される塩基配列を有するプライマー、配列番号6に示される塩基配列を有するプライマー、及び配列番号11に示される塩基配列を有する核酸プローブとを用いて、定量PCR法を実施し、普通系コムギの存在を定性的及び/又は定量的に検出する方法である。本発明のこの方法の実施態様において、配列番号11に示される塩基配列を有する核酸プローブは具体的には標識核酸プローブであって、PCR中に、該標識核酸プローブがもたらす増幅産物量に応じたシグナルをモニターして増幅曲線を得て、普通系コムギの存在を定性的及び/又は定量的に検出することができる。
上記方法の実施態様において、段階希釈したスタンダードサンプルで定量PCR法を予め実施し、増幅曲線を得て適当な閾値(Threshold)を設定することでCt値(Threshold Cycle)を算出し、初期鋳型量との関連で検量線を作成しておくことにより、この検量線を用いて、被検試料における初期鋳型量を求めることができる。従って、更なる実施態様として、上記定量PCR法の実施に当たって、予め作製した検量線を用いて、普通系コムギの存在を定量的に検出することができる。
本発明はさらに、配列番号5に示される塩基配列を有するプライマーと配列番号6に示される塩基配列を有するプライマーとを含むプライマーセット、及び配列番号11に示される塩基配列を有する核酸プローブ、及び配列番号11に示される塩基配列を有し、その5’末端が蛍光物質で修飾され、及びその3’末端がクエンチャー物質で修飾されている、核酸プローブに向けられている。
【0013】
本発明はまた、被検試料における普通系コムギ及び/又は普通系コムギ以外のコムギの存在を検出する方法であって、
(1)被検試料から核酸を抽出して核酸試料を調製し、
(a) 該核酸試料を用いて、配列番号5に示される塩基配列を有するプライマー、配列番号6に示される塩基配列を有するプライマー、及び配列番号11に示される塩基配列を有する核酸プローブとを用いて、定量PCR法を実施し、該核酸プローブがもたらす増幅産物量に応じたシグナルをモニターして増幅曲線を得て、普通系コムギの存在を検出すること、及び
(b) 該核酸試料を用いて、配列番号9に示される塩基配列を有するプライマー、配列番号10に示される塩基配列を有するプライマー、及び配列番号13に示される塩基配列を有する核酸プローブとを用いて、定量PCR法を実施し、該核酸プローブがもたらす増幅産物量に応じたシグナルをモニターして増幅曲線を得て、コムギの存在を検出すること、及び
(2)(a)と(b)との結果を比較すること
を含む、方法である。
【0014】
上記方法の実施態様において、段階希釈したスタンダードサンプルで定量PCR法を予め実施し、増幅曲線を得て適当な閾値を設定することでCt値を算出し、初期鋳型量との関連で検量線を作成しておくことにより、この検量線を用いて、被検試料における初期鋳型量を求めることができる。
従って、上記方法の実施態様において、(1)(a)において、核酸プローブがもたらす増幅産物量に応じたシグナルをモニターして増幅曲線を得て、予め作成した検量線を用いて、普通系コムギの存在を定量的に検出し、及び(b)において核酸プローブがもたらす増幅産物量に応じたシグナルをモニターして増幅曲線を得て、予め作成した検量線を用いて、コムギの存在を定量的に検出し、及び(2)(a)における定量値と(b)における定量値とを比較することができる。
上記の方法において、例えば(a)において普通系コムギの存在が検出され、その定量値と、(b)におけるコムギの定量値とを比較して、(a)の定量値<(b)の定量値であると、その差異が被検試料中における普通系コムギ以外のコムギに由来することが推測される。また、例えば(a)においてPCR増幅産物が検出されず、一方(b)においてPCR増幅産物が検出されると、被検試料中に普通系コムギではなく、普通系コムギ以外のコムギ、例えばデュラムコムギの存在が肯定される。
【0015】
上記の普通系コムギ及び/又は普通系コムギ以外のコムギの存在を検出する方法の実施にあたり、配列番号11に示される塩基配列を有する核酸プローブ及び配列番号13に示される塩基配列を有する核酸プローブは具体的には、各々、標識核酸プローブであり得る。さらに、配列番号11に示される塩基配列を有する核酸プローブは具体的には、その5’末端が蛍光物質で修飾され、及びその3’末端がクエンチャー物質で修飾されている核酸プローブであり得、及び配列番号13に示される塩基配列を有する核酸プローブは具体的にはその5’末端が蛍光物質で修飾され、及びその3’末端がクエンチャー物質で修飾されている核酸プローブであり得る。
【0016】
本発明はさらに、上記検出方法を実施するための下記のキットに向けられている。
(i)配列番号5に示される塩基配列を有するプライマーと配列番号6に示される塩基配列を有するプライマーとのプライマーセットを含む、普通系コムギ検出用キット、
(ii) 配列番号5に示される塩基配列を有するプライマーと配列番号6に示される塩基配列を有するプライマーとのプライマーセット、及び配列番号11に示される塩基配列を有し、その5’末端が蛍光物質で修飾され、及びその3’末端がクエンチャー物質で修飾されている核酸プローブとを含む、普通系コムギ検出用キット、及び
(iii)配列番号5に示される塩基配列を有するプライマーと配列番号6に示される塩基配列を有するプライマーとのプライマーセット、配列番号11に示される塩基配列を有し、その5’末端が蛍光物質で修飾され、及びその3’末端がクエンチャー物質で修飾されている核酸プローブ、配列番号9に示される塩基配列を有するプライマーと配列番号10に示される塩基配列を有するプライマーとのプライマーセット、及び配列番号13に示される塩基配列を有し、その5’末端が蛍光物質で修飾され、及びその3’末端がクエンチャー物質で修飾されている核酸プローブとを含む、普通系コムギ検出用キット。
【発明の効果】
【0017】
本発明の普通系コムギの検出方法によって、被検試料における普通系コムギの存在を高い特異性をもって且つ高感度で、定性的及び/又は定量的に検出することができる。また、本発明の方法によって、被検試料に含まれるコムギが普通系コムギであるか、又は普通系コムギ以外の例えばデュラムコムギであるか、又はその双方であるかの判別を高い精度で行うことができる。本発明の方法によればさらに、被検試料に含まれる普通系コムギ及び/又は普通系コムギ以外のコムギ、例えばデュラムコムギを定量的に検出することができる。
本発明の方法は、被検試料、例えば加工食品中に存在するコムギの判別手段として有用であり、該コムギが普通系コムギであるか、又は普通系コムギ以外のコムギ(その代表例としてデュラムコムギ)であるかの判別及び検出手段として有用である。
本発明のプライマーセット、核酸プローブ、又はそれらを含むキットを用いて、本発明の方法を簡便に及び迅速に、及び高い精度をもって実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】PCRによる普通系コムギの検出限界を示す写真である。
【図2】定量PCRにおける普通系コムギ検出用プライマーセット3(SSII−D1769U/1889L:配列番号5/6)及びSSII−D1797T核酸プローブ(配列番号11)の評価(スレッシュホールドラインに達するPCRのサイクル数と鋳型DNAの対数との関係)を示す図である。
【図3】定量PCRによる普通系コムギ検出用プライマーセット3(SSII−D1769U/1889L:配列番号5/6)及びSSII−D1797T核酸プローブ(配列番号11)の評価(普通系コムギに対するプライマーセットと核酸プローブの特異性)を示す図である。
【図4】混合率を変えた普通系コムギのゲノムDNAとDURUMコムギのゲノムDNAとの混合液から、コムギ検出用プライマーセット5(SSII−A3118U/3231L:配列番号9/10)及びSSII−A ex7−T82核酸プローブ(配列番号13)を用いて定量PCRを行った結果を示す図である。
【図5】混合質量を変えた普通系コムギの粉体とDURUMコムギの粉体からゲノムDNAを抽出し、それらを鋳型DNAとし、コムギ検出用プライマーセット5(SSII−A3118U/3231L:配列番号9/10)及びSSII−A ex7−T82核酸プローブ(配列番号13)を用いて定量PCRを行った結果を示す図である。
【図6】適宜混合率を変えた普通系コムギのゲノムDNAとDURUMコムギのゲノムDNAとの混合液から、普通系コムギ検出用プライマーセット3(SSII−D1769U/1889L:配列番号5/6)及びSSII−D1797T核酸プローブ(配列番号11)を用いて定量PCRを行った結果を示す図である。
【図7】適宜混合質量を変えた普通系コムギの粉体とDURUMコムギの粉体からゲノムDNAを抽出し、それらを鋳型DNAとし、普通系コムギ検出用プライマーセット3(SSII−D1769U/1889L:配列番号5/6)及びSSII−D1797T核酸プローブ(配列番号11)を用いて定量PCRを行った結果を示す図である。
【図8】図6の結果から、普通系コムギの混合割合とスレッシュホールドラインに達するPCRのサイクル数との関係を表した図である。
【図9】図7の結果から、普通系コムギの混合割合とスレッシュホールドラインに達するPCRのサイクル数との関係を表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明におけるコムギとは、ゲノム構成がAABBDDの六倍体である普通系コムギ、及びAABBの四倍体である二粒系コムギ(主にデュラムコムギ)を含む食用コムギとして栽培されているコムギ全般を言う。普通系コムギには、一般的に汎用されている普通コムギやクラブコムギ、スペルトコムギなどが分類される。また、二粒系コムギにはデュラムコムギの他、エンマーコムギなどが分類される。
本発明は、食品原料や加工食品など各種被検試料に含まれる普通系コムギとデュラムコムギなどの二粒系コムギとを判別するのに有用である。
【0020】
本発明に使用する被検試料、被検試料からの核酸(例えばDNA)の抽出、核酸試料の調製、検出対象塩基配列、プライマーセット、核酸プローブ、PCR反応条件及び定量PCR法について、以下に詳細に説明する。
被検試料は、被検試料由来のゲノムDNA又はその断片等の核酸を抽出できるものであれば特に制限されるものではなく、植物体、原材料、加工過程にある材料、加工食品等を用いることができる。
例えば、生ないしは乾燥種子、薄力粉等の粉末、グリッツなどの中間加工品、菓子類や麺類等の加熱調理済みの食品などが挙げられる。また、これらの被検試料は、必要に応じて粉砕するなどして、核酸の抽出に適した形状に加工して用いることができる。
【0021】
被検試料に含まれるコムギの含有量は特に指定するものではないが、本発明では、被検試料から核酸を抽出し、調製した検体核酸溶液中にコムギ由来核酸が少なくとも10ppm、好ましくは50ppm以上含まれていれば、被検試料中に存在するコムギの有無を判定することができると共に、コムギの存在を定量的に測定することができる。
また、タンパク質等の生体を構成する化合物と比較して、核酸は加熱や加圧などの物理的加工に対して比較的安定であり、そのような加工に供された加工品の中に微量でも核酸が存在していれば十分に検出することが可能である。
これらのことは、生産者が意図しない各種食品へのコムギの混入を検出するための基礎データを得ることが可能であることを意味する。
【0022】
被検試料由来の核酸は、被検試料に含まれる植物体のゲノムDNAであることが好ましい。被検試料からの核酸の抽出方法は特に制限されず、PCR法に供するに足る品質が保証される方法であればどのような方法又はキットでも使用することができる。例えば、CTAB法やQIAGEN Plant mini Kit(QIAGEN GmbH社製)等の市販キットを用いることができる。
また、必要に応じてこれらの方法を改変することもできる。これらの方法により抽出した核酸は、PCR法の鋳型として用いるのに適した状態で保持することが望ましく、例えば適切な緩衝液に溶解させて低温下で保管することが好ましい。このようにして、核酸試料となる核酸溶液、例えば鋳型DNA溶液を調製することができる。
得られた核酸の濃度と純度は、分光光度計を用いて230、260、280、320nmの吸光度を測定することにより検定することができる。PCR法を行う上で、260/230nmの吸光度比が2.0以上、260/280nmの吸光度比が1.8付近と評価された核酸溶液を用いることが好ましい。
この際、260/280nmの比が2.0に近づくに従ってRNAの混入が疑われるので、DNA濃度を検定する際には注意する必要がある。
さらに、抽出したDNAを評価するために、アガロースゲル電気泳動及び被検試料を構成する植物体の種特異的遺伝子に相補的なプライマーセットを用いてPCR反応が進行することを確認してもよい。
【0023】
DNA塩基配列決定方法の改良と共に数多くの遺伝子が同定され、今日に至ってはNCBI(National Center of Biotechnology Information; National Institutes of Health)やDDBJ(DNA Data Bank of Japan、国立遺伝学研究所)などの機関により膨大な塩基配列のデータベースが一般に公開されている。検出対象とするコムギDNA塩基配列は、それらのデータベースを活用してもよいし、自ら実験的に解析・取得した塩基配列を用いてもよい。一般的に、コムギを含む植物体のDNAは、ゲノムDNA、葉緑体DNA、ミトコンドリアDNAで構成されている。細胞内のゲノムDNAは核に1組のみ存在するが、それに対して葉緑体DNAとミトコンドリアDNAの数は細胞内に存在する各オルガネラの数量に依存するので組織や細胞によって異なる。
本発明の目的を達成するために、コムギのDゲノムDNAに特異的であり、コムギのDゲノムDNAにおいてコピー数が特定されているDNA塩基配列を検出対象として選抜する必要があった。選抜した塩基配列を元情報として、PCR法を基盤とした検出方法に適したプライマーセットならびに核酸プローブを設計することができる。
また、プライマーセットの設計には様々な条件が課せられる。すなわち、プライマーセットは、増幅対象となるDNA塩基配列を特異的に増幅できる限りどのようなものであってもかまわないが、被検試料が加工食品である場合には加工工程において被検試料中のゲノムDNA等が断片化されることがあるので、PCR増幅産物が80〜500bpより好ましくは80〜150bp程度になるように設計されることが望ましい。そして、適切なPCR増幅産物を得るために、プライマーセット及び定量PCR法に用いる核酸プローブの塩基配列の様々な制約を満たす必要がある。定量PCR法に用いる核酸プローブは、対応するプライマーセットのTm値よりも10℃程度高く、且つクエンチング効果を維持するために18〜25塩基程度の長さになるように設計されることが望ましい。
【0024】
上記のアプローチを考慮して、本発明者らは特定の塩基配列を見出した。
ここで、配列番号5の塩基配列は、コムギSSII−D遺伝子の位置1769〜1791にある配列であり、配列番号6の塩基配列は、コムギSSII−D遺伝子の位置1889〜1865に相補的な配列であり、これらがプライマーセットとなる。また、配列番号11の塩基配列は、コムギSSII−D遺伝子の位置1797〜1819にある配列である。
また、配列番号9の塩基配列は、コムギSSII−A遺伝子の位置3118〜3136にある配列であり、配列番号10の塩基配列は、コムギSSII−A遺伝子の位置3231〜3211に相補的な配列であって、これらはプライマーセットとなる。また、配列番号13の塩基配列は、コムギSSII−A遺伝子の位置3161〜3185にある配列である。
【0025】
以上のようにして設計されたプライマーセットを用い、あるいは更に核酸プローブを用いて、被検試料から抽出した核酸を鋳型としてPCR法、あるいは定量PCR法を実施することができる。
PCR法又は定量PCR法の実施には、一般に市販されている機器を用いて、公知である種々の方法及びそれらの改良法を用いることができる。PCR法及び定量PCR法を実施する際の具体的な手法は、特に限定されるものではない。
【0026】
本発明は、被検試料における普通系コムギの存在を検出する方法であって、被検試料から抽出した核酸を鋳型として、配列番号5に示される塩基配列を有するプライマーと配列番号6に示される塩基配列を有するプライマーとを用いて、PCR法を実施し、PCR増幅産物の存在を検出することを含む方法に向けられている。
PCR法の実施に当たり、プライマーセット、鋳型となる核酸、Tris−HClなどの適切な緩衝液、dNTP、塩化カリウム、塩化マグネシウム、耐熱性DNA合成酵素などの試薬類をそれぞれ適当な量を混合して、PCR反応液とすることができる。
PCR反応は、鋳型DNAの熱変性、プライマーセットと鋳型DNAとのアニーリング、耐熱性DNA合成酵素によるDNAの合成反応の3つのステップから構成される。各ステップは、それぞれ異なった温度と時間を必要とするので、増幅しようとする領域の塩基配列とその長さを考慮して適切な範囲で設定する。PCR反応の工程の具体的条件は特に限定されるものでなく、例えば、95℃で10分間保持し、以後95℃で30秒、60℃で30秒、72℃で1分を1サイクルとして35〜40サイクルの反復を行い、サイクル終了後に72℃で7分保持し、その後4℃に保持することで行うことができる。
このような反応は、一般に市販されている装置を用いて行うことができ、その中には定量PCR法に対応する装置も含まれる。
【0027】
本発明におけるPCR法による増幅産物の検出は、特に限定されるものではないが、一般的に電気泳動法又は蛍光検出法により行われる。例えば、必要に応じて陰性コントロールや陽性コントロール、マーカーと共に被検試料のPCR増幅産物をアガロース電気泳動に供し、泳動後エチジウムブロマイドなどのインターカレーターで染色し、紫外光照射下で検出される。
この際、PCR増幅産物のバンドが観察されれば、被検試料中に普通系コムギが存在することを意味する。
【0028】
本発明はまた、被検試料における普通系コムギの存在を検出する方法であって、被検試料から抽出した核酸を鋳型として、配列番号5に示される塩基配列を有するプライマー、配列番号6に示される塩基配列を有するプライマー、及び配列番号11に示される塩基配列を有する核酸プローブとを用いて、定量PCR法を実施し、普通系コムギの存在を定性的及び/又は定量的に検出する方法に向けられている。
定量PCR法は一般的に、PCR増幅反応開始時点における反応液中の鋳型核酸量、例えば鋳型DNA量を定量するための一連の反応を実施する方法を指す。定量PCR法として具体的にリアルタイムPCR法を採用することができる。定量PCR法にはインターカレーターを用いる方法と、蛍光標識プローブを用いる方法があり、蛍光標識プローブを用いる方法では、該プローブがPCR増幅反応によって生じた増幅産物の分子数に対応したシグナル変化をもたらす。
本発明では、蛍光標識プローブを用いる方法を好ましく使用することができ、さらにはTaqManプローブ法を採用することが好ましい。配列番号11を有する核酸プローブ、及び配列番号13の塩基配列を有する核酸プローブを、上述のシグナル変化をもたらすTaqManプローブとすることができる。この核酸プローブは通常、DNAが用いられる。
TaqManプローブ法を採用するに当たって、蛍光物質とクエンチャー物質(クエンチング効果を有する物質)とによって二重標識した上記核酸プローブを用いる。通常、核酸プローブの5’末端を蛍光物質で修飾し、3’末端をクエンチャー物質で修飾する。蛍光物質の例としてFAM、HEX、TET、FITCなどが挙げられ、クエンチャー物質としては、TAMRA、Eclipse、DABCYLなどが挙げられる。蛍光物質及びクエンチャー物質は特に限定されるものではなく、TaqManプローブ法の実施に適合する蛍光物質及びクエンチャー物質を適宜選択して用いることができる。
PCR増幅反応に依存して上記のTaqManプローブはDNA polymeraseによって消化され、蛍光物質が遊離することによりPCR反応溶液中の蛍光量が増加する。その蛍光により検出したシグナル強度をモニターすることで増幅曲線が得られる。蛍光量の増加はPCR増幅産物の増加の程度を反映する指標となる。これにより、PCRにおける増幅の様子をリアルタイムで簡便に検出することができる。
定量PCR法の実施にあたって、段階希釈したスタンダードサンプルで定量PCR法を予め実施し、増幅曲線を得て適当な閾値(Threshold)を設定することでCt値(Threshold Cycle)を算出し、初期鋳型量との関連で検量線を作成しておくことにより、この検量線を用いて、被検試料における初期鋳型量を求めることができる。すなわち被検試料について、スタンダードサンプルと同様にCt値を算出し、この検量線に当てはめることで、初期鋳型量を求めることができる。
定量PCR法の実施にあたり、プライマーセット、核酸プローブ、鋳型となる核酸、適切な緩衝液、dNTP、塩化カリウム、塩化マグネシウム、耐熱性DNA合成酵素などの試薬類をそれぞれ適当な量を混合して、PCR反応液とすることができる。定量PCR法における反応条件は、上述のPCR法で述べたのと同様に設定することができる。また、定量PCR法を実施する装置としては、公知のものが使用できる。
【0029】
本発明はさらに、定量PCR法を用いた上記の被検試料における普通系コムギの存在を検出する方法と、定量PCR法を用いたコムギを広範囲に検出する方法とを組み合わせた検出方法にも向けられている。
それは、被検試料における普通系コムギ及び/又は普通系コムギ以外のコムギの存在を検出する方法であって、具体的には
(1)被検試料から核酸を抽出して核酸試料を調製し、
(a) 該核酸試料を用いて、配列番号5に示される塩基配列を有するプライマー、配列番号6に示される塩基配列を有するプライマー、及び配列番号11に示される塩基配列を有する標識核酸プローブとを用いて、定量PCR法を実施し、該標識核酸プローブがもたらす増幅産物量に応じたシグナルをモニターして増幅曲線を得て、予め作成した検量線を用いて、普通系コムギの存在を定量的に検出し、普通系コムギの存在を定量的に検出すること、及び
(b) 該核酸試料を用いて、配列番号9に示される塩基配列を有するプライマー、配列番号10に示される塩基配列を有するプライマー、及び配列番号13に示される塩基配列を有する標識核酸プローブとを用いて、定量PCR法を実施し、該標識核酸プローブがもたらす増幅産物量に応じたシグナルをモニターして増幅曲線を得て、予め作成した検量線を用いて、コムギの存在を定量的に検出すること、及び
(2)(a)と(b)との結果を比較すること
が できる。
例えば、被検試料から核酸を抽出し調製した核酸試料を少なくとも2分割し、例えば等容量に少なくとも2分割し、それらをそれぞれ上記(a)及び(b)の定量PCR反応に供することもできる。
【0030】
上記の方法において、例えば(a)において普通系コムギの存在が検出され、その定量値と、(b)におけるコムギの定量値とに差異がなければ、普通系コムギの存在が肯定される。また、例えば(a)において普通系コムギの存在が検出され、その定量値と、(b)におけるコムギの定量値とを比較して、(a)の定量値<(b)の定量値であると、その差異は被検試料中における普通系コムギ以外のコムギに由来することが推測され、被検試料における普通系コムギと普通系コムギ以外のコムギの共存が推測される。また、例えば(a)においてPCR増幅産物が検出されず、一方(b)においてPCR増幅産物が検出されると、被検試料中に普通系コムギではなく、普通系コムギ以外のコムギ、例えばデュラムコムギの存在が肯定される。
このような方法を用いて、同時に作成した検量線を用いた数学的演算により、被検試料中の普通系コムギ及びコムギの存在を定量的に検出することができる。
【0031】
本発明のキットは、本発明の方法においてPCR法又は定量PCR法を実施するに当たり、試薬キットとして用いることができる。本発明のキットには、PCRを実施するための最適な各種試薬類ならびに検出するための試薬類が付属されていてもよい。
本発明のキットによれば、微量のコムギ及び/又は普通系コムギを検出することができるので、被検試料中にコムギが含まれる旨の情報だけではなく、普通系コムギとデュラムコムギの有無とそれぞれの量を把握することが可能である。そのため、マカロニ類などのデュラムコムギを使用した製品において、使用した原料コムギ粉の種別を表示することが可能となる。
【実施例】
【0032】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
1.普通系コムギ検出のためのプライマーセット及び定量用核酸プローブの構築方法
<標的遺伝子の選抜>
一般的にコムギのゲノムDNAは3種類のゲノムから構成されており、各々A、B、Dゲノムと称されている。普通系コムギはAABBDDゲノムを有する六倍体であり、デュラムコムギはAABBゲノムを有する四倍体である。本発明で標的遺伝子としたStarch Synthase IIは、コムギのA、B、Dゲノム各々の7番染色体の短腕にコードされており、これらの遺伝子は各々SSII−A、SSII−B、SSII−Dと略称される(シンバタ・エト・オル、ミューテーションズ・イン・ウィート・スターチ・シンターゼ・II・ジーンズ・アンド・ピーシーアール・ベースド・セレクション・オブ・ア・エスジーピー−1・ヌル・ライン、セオリティカル・アンド・アプライド・ジェネティクス、2005年、10月号、111(6):1072−9.(Shimbata T et al.、 Mutations in wheat starch synthase II genes and PCR−based selection of a SGP−1 null line. Theor Appl Genet. 2005 Oct;111(6):1072−9.)。
これらの遺伝子を標的遺伝子とし、且つDゲノム上の塩基配列に特異的にハイブリダイズするプライマーセットを用いて、PCRによる普通系コムギの検出法を構築することができれば、本課題の目的を達成できると判断し、SSII−D(Triticum aestivum wSSII−D gene for starch synthase II−D、complete cds.、Accession No. AB201447、全長7010bp)(配列番号12)を検出標的遺伝子として選択した。
【0033】
<SSII−Dに特異的なプライマーセットの設計>
SSII−D遺伝子を対象として、遺伝子工学用ソフトウェアPrimer Express ver.2.0.0(アプライドバイオシステムズ社製)を用いてプライマーの候補となる塩基配列の検索を実施した。最適なプライマーを設計するには、GC含量やTm値、塩基配列長、PCR産物長など各種条件を満たす必要がある。その結果、複数のプライマーの候補塩基配列を選抜することができた。選抜した塩基配列をBLAST検索することにより、コムギSSIIを特異的に認識する可能性が高いプライマーを絞り込み、最終的に4組のプライマーセットを選抜した。これら4組のプライマーセットのTm値は、塩基配列より理論的に算出し、PCR反応における最適なアニール温度を設定するための指標とした。これらの4組のプライマーセットは、後述の表2に示される配列番号1と2、配列番号3と4、配列番号5と6、及び配列番号7と8である。
【0034】
<SSII−Dに特異的な定量的PCR用核酸プローブの設計>
定量的PCRの手法は既に幾通りか報告されているが、解析機器や反応試薬が充実していることから、定量PCR法の一種であるTaqManプローブ法を採用した。各プライマーセットに対応する核酸プローブは、Primer Express ver.2.0.0(アプライドバイオシステムズ社製)を使用して設計した。
なお、核酸プローブの標識化合物には、蛍光物質としてFAM(アプライドバイオシステムズ社製)を、クエンチング効果を有する物質としてTAMRA(アプライドバイオシステムズ社製)を用いた。
【0035】
2.PCRに用いた鋳型DNAの抽出
各種植物の種子を用いて、鋳型DNA試料を調製した。後述の表3に各植物種を示す。
コムギ及びその他イネ科植物やマメ科植物等の種子は、その表面を界面活性化剤SDSの1.0%溶液で洗浄後、蒸留水で良く濯ぎ洗いをし、凍結乾燥した。この種子をマルチビーズショッカー(安井機器社製)もしくは超遠心粉砕機(レッチェ社製)を用いて微粉砕した。
各粉砕試料からDNA Plant Mini kit(QIAGEN社製)を用いてゲノムDNAを抽出した。抽出操作については、DNA Plant Mini Handbookを参照し、一部に改良を加えた方法にて実施した。すなわち、粉砕試料をAP1緩衝液とRNase AおよびProteinase Kの混合液に懸濁し、これを37℃に加温した反応層で2時間保持した。この後の操作については前出のHandbookに従って実施した。
なお、Proteinase Kについては、0.1g粉砕試料あたり5μlの20mg/ml Proteinase K溶液(タカラバイオ社製)を添加することとした。この添加量については、種子の種類や状態により適当量に変更することができる。
抽出したDNAは、分光光度計により230、260、280、320nmの吸光度を測定してその純度と濃度を求め、0.8%アガロースゲル電気泳動に供した。その後、純水あるいはTE緩衝液を添加して20ng/μlに希釈してPCRの鋳型DNA溶液とした。
【0036】
3.PCRとPCR増幅産物の検出方法
PCRには、AmpliTaq(登録商標) Gold DNA Polymerase(アプライドバイオシステムズ社製)とその付属試薬を用い、次のような組成でPCR反応液を調製した。
すなわち、2.5μlのPCR buffer II、2.5μlの2mM dNTP mix、1.5μlの25mM塩化マグネシウム、0.125μlの5units/μl AmpliTaq Gold DNA Polymerase、2μlの2.5μM プライマーセットおよび13.875μlの滅菌水を十分に混合した溶液に2.5μlの20ng/μl鋳型DNA溶液を添加して全量を25μlとした。
PCR増幅装置には2720 Thermal Cycler(アプライドバイオシステムズ社製)を用い、以下の表1に示した反応条件で実施した。アニール温度は、前出の計算法で求めた個々のプライマーのTm値を基準にして実験的に検証されるので、PCRに用いるプライマーセット毎に最適な温度を設定した。
PCR増幅産物の電気泳動に際して、PCR反応液とローディング緩衝液とを適量混合し、3%アガロースゲルに供した。
電気泳動後、エチジウムブロマイド染色を行い、各プライマーセットによる至適サイズのPCR増幅産物を確認することによりサンプル中の普通系コムギの有無を判定した。この際、陽性コントロールおよび陰性コントロールの増幅バンドの有無によりPCRの妥当性を確認した。
【0037】
表1:PCRの反応条件

*アニール温度は、用いるプライマーセットにより異なり、アニール温度は、配列番号1と2のセット、配列番号3と4のセット及び配列番号7と8のセットでは55℃に設定し、配列番号5と6のセットでは60℃に設定し、及び配列番号9と10のセットでは56に設定した(後述の表2参照)。
【0038】
4.各種プライマーセットによる普通系コムギの検出
コムギDゲノムにコードされているSSII−D(配列番号12)を元配列として設計した各種プライマーセット1〜4、及びコムギAゲノムにコードされているSSII−A(配列番号14)を元配列として設計したプライマーセット5を以下の表2に示す。
配列番号1の塩基配列は、コムギSSII−D遺伝子の位置4015〜4037にある配列であり、配列番号2の塩基配列は、コムギSSII−D遺伝子の位置4142〜4122に相補的な配列であって、配列番号3の配列はコムギSSII−D遺伝子の位置4469〜4487にある配列であって、配列番号4の配列はコムギSSII−D遺伝子の位置4555〜4531に相補的な配列であって、配列番号7はコムギSSII−D遺伝子の位置937〜955にある配列であり、配列番号8はコムギSSII−D遺伝子の位置1080〜1061に相補的な配列である。なお、配列番号9及び10の配列は各々、特開2009−5588号公報に開示された配列番号3及び4の配列に相当する。
【0039】
表2

【0040】
これらのプライマーセットを用いて、上記「3.PCRとPCR増幅産物の検出方法」に述べた手法に従って、上記で得た各植物種からの鋳型DNA試料を用いて、PCR法を実施した。その結果、各プライマーセットによる、至適サイズのPCR増幅産物の有無を、表3中に+、−で表した。
表3

【0041】
プライマーセット3(SSII−D1769U/1889L:配列番号5/6)は、普通系コムギの試料のみで目的の長さのPCR増幅産物が得られ、一方デュラムコムギ、オオムギ、ライムギ、ソバ、コメ、トウモロコシ、ダイズの各植物種ではPCR増幅産物は得られなかった。この結果は、このプライマーセットが普通系コムギを特異的に認識していることを示した。
一方、他のプライマーセットでは、デュラムコムギの試料についてもPCR増幅産物が得られた。
【0042】
5.PCR法による検出限界の評価
好適に普通系コムギを特異的に検出するプライマーセット3(SSII−D1769U/1889L:配列番号5/6)を用いたPCRにより、普通系コムギDNAの半定量的な検出限界を検討した。サケ精子DNA溶液を希釈母体として、普通系コムギから抽出したゲノムDNAを20ng/μl、10ng/μl、1ng/μl、0.1ng/μl、50pg/μl、10pg/μl、1pg/μlになるように段階的に希釈した。
上記「3.PCRとPCR増幅産物の検出方法」に述べた手法に従って、この溶液2.5μlを鋳型DNA溶液としてPCRを実施し、5.0μlのPCR反応液を電気泳動に供した。その検出結果を図1に示した。
普通系コムギDNA溶液を鋳型とした検出限界は、プライマーセット3において50pg/μlであった。これらのことからプライマーセット3を用いたPCRにより50pg/μlの高感度で普通系コムギゲノムDNAを検出することが可能となった。
【0043】
6.定量PCRによる普通系コムギの特異的検出の確認
普通系コムギを特異的に検出したプライマーセット3(SSII−D1769U/1889L:配列番号5/6)と、それと共に用いる核酸プローブによる、定量PCRにおける普通系コムギの特異的検出の性能を調べた。
鋳型DNAとして、普通系コムギ、デュラムコムギ、オオムギ、コメ、ソバの合計5種類の被検試料から抽出したDNAを用いた。この際、ブランクとして鋳型DNAを含まない滅菌水の増幅シグナルの有無により定量PCRの妥当性を確認した。
定量PCRには、TaqMan Universal PCR Master Mix(アプライドバイオシステムズ社製)を用い、次のような組成で定量用PCR反応液を調製した。すなわち、12.5μlのTaqMan Universal PCR Master Mix(2X)、0.5μlの25μM プライマーセット、0.5μlの10μM核酸プローブおよび9μlの滅菌水を十分に混合した溶液に2.5μlの鋳型DNA溶液を添加して全量を25μlとした。コムギの鋳型DNA溶液には、サケ精子DNA溶液を希釈母体としてコムギゲノムDNAを20ng/μl、10ng/μl、1ng/μl、0.1ng/μl、50pg/μl、10pg/μl、1pg/μlになるように段階的に希釈したコムギDNA溶液を用いた。デュラムコムギ、オオムギ、コメ、ソバの場合には、サケ精子DNA溶液で10ng/μlに希釈したDNA溶液を用いた。なお、この定量PCRに用いた核酸プローブを表4に示す。
【0044】
表4:核酸プローブの配列

この核酸プローブの5’末端をFAMで修飾し、3’末端をTAMRAで修飾した。
【0045】
定量PCR反応は、今回は定量PCR装置Rotor−Gene3000(Corbett Research社製)を用いて行ったが、他社の定量PCR装置を用いても同様の結果が得られている。
反応条件は、反応液を95℃で10分間保持し、以後95℃で15秒、60℃で30秒を1サイクルとして45サイクルの反復を行った。反応過程において各反応ウェル中の蛍光量が経時的に計測され続けるので、反応終了後に反応チューブごとの蛍光量の経時的な変化を解析することで蛍光量の増加があったチューブを特定することができる。標的塩基配列にハイブリダイズした核酸プローブがDNAの伸張反応の過程で分解され、それに伴って蛍光標識された塩基が遊離するので、蛍光量はPCR増幅反応の進行と共に増加する。従って、蛍光量の増加はPCR増幅反応が起こっていることを意味する。
普通系コムギから抽出したDNAを鋳型とした定量PCRの結果を図2に示した。図中の矢印が示しているものは、各濃度の鋳型DNAを用いたときに得られた定量PCRにおける増幅曲線である。プライマーセット3と配列番号11の核酸プローブの組合せによって好適に増幅シグナルが認められ、検出限界は50pg/μlであった。それらの増幅シグナルがスレッシュホールドラインに達するサイクル数と鋳型DNA濃度の対数とは直線関係にあり、好適な定量的PCRが進行していることを示した。
また、普通系コムギ、デュラムコムギ、オオムギ、コメ、ソバから抽出したDNAを鋳型とした定量PCRの結果を図3に示した。普通系コムギでは、増幅シグナルが得られたが、デュラムコムギ、オオムギ、コメ、ソバでは増幅シグナルが得られなかった。
図2、図3の結果は、前記のプライマーセットと核酸プローブの組合せが定量PCRにおいて、高感度で好適に普通系コムギを定量的に検出できることを表している。
【0046】
7.2種の定量PCRの組み合わせによる、普通系コムギ又はデュラムコムギの特異的検出の確認
同一検体に対して、コムギDNAを特異的に検出するプライマーセット及び該塩基配列を特異的に認識する核酸プローブによる定量PCRと、普通系コムギDNAを特異的に検出するプライマーセット及び該塩基配列を特異的に認識する核酸プローブによる定量PCRとを行って、該検体に含まれる普通系コムギとデュラムコムギをそれぞれ定量可能であるかを確認した。
定量PCRは、上記で述べた手法に従って、コムギDNAを特異的に検出するプライマーセット5(SSII−A3118U/3231L:配列番号9/10)と、該プライマーセットに対応する以下の核酸プローブSSII−A ex7−T82を用いた定量PCRと、普通系コムギDNAを特異的に検出するプライマーセット3(SSII−D1769U/1889L:配列番号5/6)と配列番号11の核酸プローブ(SSII−D−1797T)を用いた定量PCRとをそれぞれ行った。
検体とする鋳型DNA溶液として、次の2種類を調製した。
(1)普通系コムギのゲノムDNA溶液と、デュラムコムギのゲノムDNA溶液とを容量比100:0、50:50、5:95、0.5:99.5、0.25:99.75、0:100の比率になるように混合し、総DNA濃度を20ng/μlにした「DNA溶液混合検体」
(2)普通系コムギの粉体とデュラムコムギの粉体とを質量比100:0、50:50、5:95、0.5:99.5、0.25:99.75、0:100の比率になるように混合し、それらからゲノムDNAを抽出し、DNA濃度を20ng/μlに調製した「粉体混合検体」
コムギDNAの定量に用いた核酸プローブを表5に示す。
【0047】
表5:核酸プローブの配列

この核酸プローブの5’末端をFAMで修飾し、3’末端をTAMRAで修飾した。
【0048】
コムギDNAを特異的に検出する定量PCRの結果を図4、図5に示した。図4は「DNA溶液混合検体」を鋳型DNAとして用いた結果を表し、図5は「粉体混合検体」を鋳型DNAとして用いた結果を表している。図中で矢印が示しているものは、各濃度の鋳型DNAを用いたときに得られた定量PCR増幅曲線である。図4及び図5の結果から、プライマーセット5と配列番号13の核酸プローブの組合せで、いずれの鋳型DNAにおいても好適に増幅シグナルが認められ、それらの増幅シグナルが同じ曲線を描くことが分かった。”
普通系コムギDNAを特異的に検出する定量PCRの結果を図6、図7に示した。図6は「DNA溶液混合検体」を鋳型DNAとして用いた結果を表し、図7は「粉体混合検体」を鋳型DNAとして用いた結果を表している。図中で矢印が示しているものは、各濃度の鋳型DNAを用いたときに得られた定量PCR増幅曲線である。図6及び図7の結果から、プライマーセット3と配列番号11の核酸プローブの組合せによって、普通系コムギとデュラム系コムギとの比率が100:0、50:50、5:95、0.5:99.5、0.25:99.75のサンプルについて、好適に増幅シグナルが認められ、普通系コムギ濃度が高いサンプルほど、増幅シグナルが大きく、増幅曲線が早く立ち上がってくることが分かった。ただし、普通系コムギと、デュラム系コムギとを0:100に混合したものについては増幅シグナルが得られなかった。
また、図6、図7の結果について、それぞれ、普通系コムギの混合割合を横軸に、Ct(スレッシュホールドラインに達したときのサイクル数、Threshold Cycle)を縦軸にプロットしたグラフを図8、図9に表した。図8、図9ともに鋳型DNA中の普通系コムギの混合割合が増えるにつれ、Ctが比例的に小さくなっており、普通系コムギの定量が可能であることがわかった。
【配列表フリーテキスト】
【0049】
配列番号1:PCR用プライマー
配列番号2:PCR用プライマー
配列番号3:PCR用プライマー
配列番号4:PCR用プライマー
配列番号5:PCR用プライマー
配列番号6:PCR用プライマー
配列番号7:PCR用プライマー
配列番号8:PCR用プライマー
配列番号9:PCR用プライマー
配列番号10:PCR用プライマー
配列番号11:PCR用核酸プローブ 修飾:1−FAM−a、23−a−TAMRA
配列番号12:Triticum aestivum wSSII−D遺伝子の配列
配列番号13:PCR用核酸プローブ 修飾:1−FAM−a、25−a−TAMRA
配列番号14:Triticum aestivum wSSII−A遺伝子の配列

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検試料における普通系コムギの存在を検出する方法であって、被検試料から抽出した核酸を鋳型として、配列番号5に示される塩基配列を有するプライマーと配列番号6に示される塩基配列を有するプライマーとを用いて、PCR法を実施し、PCR増幅産物の存在を検出することを含む、上記方法。
【請求項2】
被検試料における普通系コムギの存在を検出する方法であって、被検試料から抽出した核酸を鋳型として、配列番号5に示される塩基配列を有するプライマー、配列番号6に示される塩基配列を有するプライマー、及び配列番号11に示される塩基配列を有する核酸プローブとを用いて、定量PCR法を実施し、普通系コムギの存在を定性的及び/又は定量的に検出する方法。
【請求項3】
配列番号11に示される塩基配列を有する核酸プローブが標識核酸プローブであって、PCR中に、該標識核酸プローブがもたらす増幅産物量に応じたシグナルをモニターして増幅曲線を得ることを含む、請求項2記載の普通系コムギの存在を定性的及び/又は定量的に検出する方法。
【請求項4】
配列番号11に示される塩基配列を有する核酸プローブが標識核酸プローブであって、PCR中に、該標識核酸プローブがもたらす増幅産物量に応じたシグナルをモニターして増幅曲線を得て、予め作成した検量線を用いて、普通系コムギの存在を定量的に検出する、請求項2記載の方法。
【請求項5】
配列番号5に示される塩基配列を有するプライマーと配列番号6に示される塩基配列を有するプライマーとを含むプライマーセット。
【請求項6】
配列番号11に示される塩基配列を有する核酸プローブ。
【請求項7】
配列番号11に示される塩基配列を有し、その5’末端が蛍光物質で修飾され、及びその3’末端がクエンチャー物質で修飾されている、請求項6記載の核酸プローブ。
【請求項8】
被検試料における普通系コムギ及び/又は普通系コムギ以外のコムギの存在を検出する方法であって、
(1)被検試料から核酸を抽出して核酸試料を調製し、
(a) 該核酸試料を用いて、配列番号5に示される塩基配列を有するプライマー、配列番号6に示される塩基配列を有するプライマー、及び配列番号11に示される塩基配列を有する核酸プローブとを用いて、定量PCR法を実施し、該核酸プローブがもたらす増幅産物量に応じたシグナルをモニターして増幅曲線を得て、普通系コムギの存在を検出すること、及び
(b) 該核酸試料を用いて、配列番号9に示される塩基配列を有するプライマー、配列番号10に示される塩基配列を有するプライマー、及び配列番号13に示される塩基配列を有する核酸プローブとを用いて、定量PCR法を実施し、該核酸プローブがもたらす増幅産物量に応じたシグナルをモニターして増幅曲線を得て、コムギの存在を検出すること、及び
(2)(a)と(b)との結果を比較すること
を含む、上記方法。
【請求項9】
(1)(a)において、核酸プローブがもたらす増幅産物量に応じたシグナルをモニターして増幅曲線を得て、予め作成した検量線を用いて、普通系コムギの存在を定量的に検出し、及び
(b)において核酸プローブがもたらす増幅産物量に応じたシグナルをモニターして増幅曲線を得て、予め作成した検量線を用いて、コムギの存在を定量的に検出し、及び
(2)(a)における定量値と(b)における定量値とを比較する、請求項8記載の方法。
【請求項10】
配列番号11に示される塩基配列を有する核酸プローブ及び配列番号13に示される塩基配列を有する核酸プローブが、各々標識核酸プローブである、請求項8又は9記載の方法。
【請求項11】
配列番号11に示される塩基配列を有する核酸プローブがその5’末端が蛍光物質で修飾され、及びその3’末端がクエンチャー物質で修飾されている核酸プローブであって、及び配列番号13に示される塩基配列を有する核酸プローブがその5’末端が蛍光物質で修飾され、及びその3’末端がクエンチャー物質で修飾されている核酸プローブである、請求項8〜10のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
配列番号5に示される塩基配列を有するプライマーと配列番号6に示される塩基配列を有するプライマーとのプライマーセットを含む、普通系コムギ検出用キット。
【請求項13】
さらに、配列番号11に示される塩基配列を有し、その5’末端が蛍光物質で修飾され、及びその3’末端がクエンチャー物質で修飾されている核酸プローブを含む、請求項12記載の普通系コムギ検出用キット。
【請求項14】
さらに、配列番号9に示される塩基配列を有するプライマーと配列番号10に示される塩基配列を有するプライマーとのプライマーセット、及び配列番号13に示される塩基配列を有し、その5’末端が蛍光物質で修飾され、及びその3’末端がクエンチャー物質で修飾されている核酸プローブとを含む、請求項13記載の普通系コムギ検出用キット。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図1】
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【公開番号】特開2011−125309(P2011−125309A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−289340(P2009−289340)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【出願人】(501203344)独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 (827)
【出願人】(000231637)日本製粉株式会社 (144)
【出願人】(000226998)株式会社日清製粉グループ本社 (125)
【Fターム(参考)】