説明

暖房便座及びそれを有する便器

【課題】 余分な放熱が少なく耐久性の高い暖房便座及びそれを有する便器を提供すること。
【解決手段】 暖房便座10は、内部に空洞を有する便座筐体(1,2)と、便座筐体(1,2)に直接又は間接的に取り付けられたヒータ4と、便座筐体(1,2)の外側において、少なくとも着座面及び前記ヒータに対向する側面1aを覆うよう取り付けられ、便座筐体(1,2)よりも軟質で断熱性を具備する被覆部材3と、便座筐体(1,2)の空洞内に配置された断熱材6と、を備え、被覆部材3と断熱材6によって便座筐体(1,2)及びヒータ4が挟まれた構造を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、暖房便座及びそれを有する便器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の暖房便座は、ポリプロピレン等の樹脂製の筺体内部にヒータ線を、アルミ紙を介して貼り付けている。
【0003】
特許文献1には、便座を便座本体と底板から構成して便座本体と底板の間に閉空間を形成し、便座本体の内面に熱伝導シートを介してヒータ線を貼り付け、底板上にはヒータ線と離間して断熱層を設け、便座本体の上面には保温層と保護層を設けた暖房便座が提案されている。保温層と保護層は、便座本体の側面の上部しか被覆していない。
【0004】
特許文献2には、無数の気孔を有するゴム等の表皮材と下部材とから中空状に形成された便座筐体と、便座筐体内に配置され、ヒータと、ヒータの着座面(上面)側に配設された蓄熱材と、ヒータの下面側に配設された断熱材とから成る放熱体と、を有し、着座時には放熱体と表皮材とが接触する暖房便座が提案されている。
【0005】
特許文献3には、便座を、合成樹脂製の基板と、基板上に載置されるコルク製の上板から構成し、基板上部に形成した凹部内にヒータを配設した暖房便座が提案されている。
【0006】
特許文献4には、樹脂製(ポリプロピレン等)の便座筐体の着座面に軟質樹脂製(軟質ウレタン樹脂等)の座面を載置する便座が提案されている。
【0007】
【特許文献1】特開平11−342095号公報(段落0033、図5)
【特許文献2】特開2003−245225号公報(段落0025、図6)
【特許文献3】特開2004−180929号公報(段落0028、図4)
【特許文献4】特開平5−176865号公報(要約)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1〜4に提案されている従来の暖房便座は、着座面からの放熱や筐体内部への放熱が大きく、すなわち、熱効率が悪いため省エネに関して課題が残っている。特に、特許文献1の暖房便座は、便座本体側面からの放熱が大きいという問題がある。特に、特許文献2の暖房便座は、人が着座する表皮材が放熱体と直接接触するため、耐久性が低いという問題がある。なお、特許文献4の便座のように、便座筺体の着座面に軟質樹脂(軟質ウレタン樹脂等)製の座面を載置する便座は、単に座り疲れを緩和しようとしているものである。
【0009】
本発明の目的は、余分な放熱が少なく耐久性の高い暖房便座及びそれを有する便器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、第1の視点において、内部に空洞を有する便座筐体と、前記便座筐体に直接又は間接的に取り付けられたヒータと、前記便座筐体の外側において、少なくとも着座面及び前記ヒータに対向する側面を覆うよう取り付けられ、該便座筐体よりも軟質で断熱性を具備する被覆部材と、前記便座筐体の前記空洞内に配置された断熱材と、を備え、前記被覆部材と前記断熱材によって前記便座筐体及び前記ヒータが挟まれた構造を有する、ことを特徴とする暖房便座を提供する。
【発明の効果】
【0011】
(1)ヒータが被覆部材と断熱材によって挟まれているため、ヒータ熱が着座面(被覆部材)に多く伝熱され、他に逃げにくい。
(2)被覆部材は、保温性を有するため、着座面からの放熱が減少する。
(3)被覆部材は、便座筐体外側の側面も覆っているため、該側面からの放熱が低減する。
(4)着座面に敷かれた被覆部材によって、座り疲れが改善される。
(5)ヒータが便座筐体に取り付けられ、すなわち、ヒータは便座筐体を介して、被覆部材と断熱材に挟まれているため、本発明の暖房便座は構造的な強度が高くなり、耐久性も高くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の好ましい実施の形態に係る暖房便座は、便座筺体の着座面側が被覆部材(例えば、発泡ウレタン樹脂等)によって覆われ、筺体内部に断熱材(例えば、発泡ウレタン樹脂等)が配置され、便座筐体に対して取り付けられているヒータが、上下から被覆部材及び断熱材によって挟まれる構造を有することにより、ヒータの無駄な放熱が低減される。
【0013】
本発明の好ましい実施の形態において、前記被覆部材は発泡樹脂であることにより、座り心地、保温性が改善され、無駄な放熱が減少する。例えば、発泡樹脂としては、発泡ウレタン、発泡ポリエチレン等を用いることができる。
【0014】
本発明の好ましい実施の形態において、前記断熱材は、前記便座筐体の内部下面に取り付けられ、前記空洞全体を埋めることにより、便座筐体下部への放熱が減少する。
【0015】
本発明の好ましい実施の形態において、前記断熱材は、前記便座筐体の内部上面に取り付けられ、前記空洞の一部を埋めるプレート状断熱材であることにより、断熱材の使用量を低減することができる。
【0016】
本発明の好ましい実施の形態において、前記ヒータは、前記便座筐体の内面に取り付けられていることにより、ヒータが損傷を受けるおそれが減少する。
【0017】
本発明の好ましい実施の形態において、前記ヒータは、前記便座筐体の外面に取り付けられていることにより、ヒータの取り付けが容易となる。
【0018】
本発明の好ましい実施の形態において、前記被覆部材は、前記便座筐体と着脱可能に凹凸嵌合し、さらに好ましくは、前記凹凸嵌合は、前記被覆部材に形成された突起と、前記便座筐体に形成された穴部とでなされる。この形態によれば、被覆部材の着脱が容易となり、洗浄をすることができる。
【0019】
本発明の暖房便座は、種々の便器に取り付けることができる。
【実施例1】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の第1の実施例に係る暖房便座を説明する。
【0021】
図1は、本発明の第1の実施例に係る暖房便座の外観を示す上面図である。
【0022】
図1を参照すると、暖房便座10は、不図示の便器に蝶番を介して揺動自在に取り付けられる。
【0023】
図2は、図1のA−A断面図であって、本発明の第1の実施例に係る暖房便座の構造を説明するための図である。
【0024】
図1及び図2を参照すると、暖房便座10は、硬質で内部に空洞を有する便座筐体(1,2)と、便座筐体(1,2)に直接又は間接的に取り付けられたヒータ4と、便座筐体(1,2)の外側において、少なくとも着座面及び前記ヒータに対向する側面1aを覆うよう取り付けられ、便座筐体(1,2)よりも軟質で断熱性を具備する被覆部材3と、便座筐体(1,2)の空洞内に配置された断熱材6と、を備え、被覆部材3と断熱材6によって便座筐体(1,2)及びヒータ4が挟まれた構造を有する。
【0025】
暖房便座10は、周知の態様で便器40の後部上面に枢着されており、使用時、便座筐体(1,2)の下側に固定のゴム足50が、便器40のリム面41上に着座する。
【0026】
便座筐体(1,2)は、内部に空洞が形成されるよう、アッパーカバー1とロアーカバー2が組み合わされて構成されている。
【0027】
第1の実施例において、ヒータ4は、便座筐体(1,2)の内面(アッパーカバー1の内面)にアルミ紙5を介して取り付けられ、断熱材6は、断熱材固定用両面テープ7を介して、便座筐体(1,2)の内部下面(ロアーカバー2の上面)に取り付けられ、前記空洞全体を埋めている。
【0028】
図3は、図1のB−B断面図であって、本発明の第1の実施例に係る暖房便座において、特に、被覆部材の取付構造を説明するための図である。
【0029】
図3を参照すると、暖房便座10の外周部(横断面端部)の両側において、被覆部材3には突起8aが形成され、便座筐体(1,2)、特に、アッパーカバー1には穴部8bが形成され、両者は着脱可能に凹凸嵌合する。突起8a,穴部8bは、好ましくは、暖房便座10の先端部と基部両側(蝶番近傍)の計3箇所に設けられる。
【0030】
図4は、図1のB−B断面図であって、本発明の第1の実施例に係る暖房便座において、特に、被覆部材の別の取付構造を説明するための図である。
【0031】
図4を参照すると、暖房便座10の中央部(横断面中央部)において、被覆部材3には突起8aが形成され、便座筐体(1,2)、特に、アッパーカバー1には穴部8bが形成され、両者は着脱可能に凹凸嵌合する。突起8a,穴部8bは、好ましくは、暖房便座10の先端部と基部両側(蝶番近傍)の計3箇所に設けられる。
【0032】
このような凹凸嵌合による被覆部材の取付構造は後述の各実施例にも適用可能である。また、被覆部材3は、便座筐体(1,2)を構成するアッパーカバー1上面に、脱着容易なテープで固定することもできる。
【実施例2】
【0033】
以下、図面を参照して、本発明の第2の実施例に係る暖房便座を説明するが、本実施例が前記第1の実施例と同様の構造を有する点については、適宜前記第1の実施例の記載を参照し、主として、前記第1の実施例との相違点について説明する。
【0034】
図5は、図1のA−A断面図であって、本発明の第2の実施例に係る暖房便座の構造を説明するための図である。
【0035】
図5を参照すると、第2の実施例において、ヒータ4は、便座筐体(1,2)の外面(アッパーカバー1の外面)にアルミ紙5を介して取り付けられている。
【実施例3】
【0036】
以下、図面を参照して、本発明の第3の実施例に係る暖房便座を説明するが、本実施例が前記第1の実施例と同様の構造を有する点については、適宜前記第1の実施例の記載を参照し、主として、前記第1の実施例との相違点について説明する。
【0037】
図6は、図1のA−A断面図であって、本発明の第3の実施例に係る暖房便座の構造を説明するための図である。
【0038】
図6を参照すると、第3の実施例において、断熱材6は、便座筐体(1,2)の内部上面(アッパーカバー1の下面)に取り付けられ、前記空洞の一部を埋めるプレート状断熱材である。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の暖房便座は、既設の便器の便座と交換して取り付けることもでき、便座と便器が一体の暖房便器の暖房便座としても好適に採用される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の第1の実施例に係る暖房便座の外観を示す上面図である。
【図2】図1のA−A断面図であって、本発明の第1の実施例に係る暖房便座の構造を説明するための図である。
【図3】図1のB−B断面図であって、本発明の第1の実施例に係る暖房便座において、特に、被覆部材の取付構造を説明するための図である。
【図4】図1のB−B断面図であって、本発明の第1の実施例に係る暖房便座において、特に、被覆部材の別の取付構造を説明するための図である。
【図5】図1のA−A断面図であって、本発明の第2の実施例に係る暖房便座の構造を説明するための図である。
【図6】図1のA−A断面図であって、本発明の第3の実施例に係る暖房便座の構造を説明するための図である。
【符号の説明】
【0041】
1 アッパーカバー
1a 側面
2 ロアーカバー
3 被覆部材
4 ヒータ
5 アルミ紙
6 断熱材
7 断熱材固定用両面テープ
8a 突起
8b 穴部
10 暖房便座
40 便器
41 リム面
50 ゴム足

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に空洞を有する便座筐体と、
前記便座筐体に直接又は間接的に取り付けられたヒータと、
前記便座筐体の外側において、少なくとも着座面及び前記ヒータに対向する側面を覆うよう取り付けられ、該便座筐体よりも軟質で断熱性を具備する被覆部材と、
前記便座筐体の前記空洞内に配置された断熱材と、
を備え、
前記被覆部材と前記断熱材によって前記便座筐体及び前記ヒータが挟まれた構造を有する、ことを特徴とする暖房便座。
【請求項2】
前記被覆部材は発泡樹脂であることを特徴とする請求項1記載の暖房便座。
【請求項3】
前記断熱材は、前記便座筐体の内部下面に取り付けられ、前記空洞全体を埋めることを特徴とする請求項1記載の暖房便座。
【請求項4】
前記断熱材は、前記便座筐体の内部上面に取り付けられ、前記空洞の一部を埋めるプレート状断熱材であることを特徴とする請求項1又は2記載の暖房便座。
【請求項5】
前記ヒータは、前記便座筐体の内面に取り付けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一記載の暖房便座。
【請求項6】
前記ヒータは、前記便座筐体の外面に取り付けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一記載の暖房便座。
【請求項7】
前記被覆部材は、前記便座筐体と着脱可能に凹凸嵌合することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一記載の暖房便座。
【請求項8】
前記凹凸嵌合は、前記被覆部材に形成された突起と、前記便座筐体に形成された穴部とでなされることを特徴とする、請求項7記載の暖房便座。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一記載の暖房便座を有することを特徴とする便器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−197962(P2006−197962A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−9791(P2005−9791)
【出願日】平成17年1月18日(2005.1.18)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】