説明

暖房便座装置

【課題】電気を感じることなく、座り心地がよく、省エネルギー化を図ることができる暖房便座装置を提供することを目的とする。
【解決手段】人が着座する着座面を有する便座上板と、前記便座上板と接合され便座の底面を形成する便座底板と、前記便座上板と前記便座底板との間に形成された空洞部に配設された加熱手段と、を備え、前記便座上板は、樹脂により形成された表面部と、前記表面部の下面に密接し前記表面部を下方から支える補強部と、を有することを特徴とする暖房便座装置が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、便器に設けられる便座を暖めることができる暖房便座装置に関する。
【背景技術】
【0002】
冬場などの気温の低いときに冷えた便座に使用者が座ると、その使用者は、冷感を感じる。これに対して、急激に着座面を昇温することができる便座装置や、いわゆる即暖効果に優れた便座を実現することが可能な暖房便座装置がある(特許文献1および2)。
【0003】
特許文献1に記載された便座装置の便座ケーシングは、マグネシウム合金により形成されている。そのため、加熱手段の発生する熱により急激に着座面を昇温することができる。また、便座ケーシングの表面は、テフロン(登録商標)によりコーティングされていたり、テフロンによるコーティングに代えて塗装膜が設けられている。そのため、金属材料であるマグネシウム合金の耐食性を向上させることができる。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された便座装置では、コーティングや塗装膜が剥がれると、金属材料であるマグネシウム合金が表面に露出する。そうすると、使用者は、例えばヒータからの漏電などにより電気を感じるおそれがある。また、マグネシウム合金が表面に露出しなくとも、使用者は、静電気により不快感を感ずるおそれがある。
【0005】
これに対して、特許文献2に記載された暖房便座装置では、人が着座する上部部材は、樹脂により形成されている。そのため、使用者が電気を感じるおそれはない。また、上部部材の肉厚を約0.5〜1mm程度に形成することにより、いわゆる即暖効果に優れた便座を実現することができる。しかしながら、上部部材が薄肉化されているため、中間部材に複数のリブが設けられている。その複数のリブは、使用者の着座による荷重を受ける。そのため、複数のリブを避けるようにヒータを上部部材と中間部材の間に設ける必要がある。つまり、製造が困難であるという点において改善の余地がある。また、複数のリブが使用者の着座による荷重を受けるため、座り心地が良くないという点において改善の余地がある。
【0006】
また、便座本体の表面層と裏面層を有し、その間に面状ヒータを挟み込んで着座板を有する暖房便座装置がある(特許文献3)。特許文献3に記載された暖房便座装置では、裏面層に強化用部材を使用し、補強用のリブが設けられている。しかしながら、表面層と裏面層との間に面状ヒータを挟み込み積層することは、製造上容易ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−310485号公報
【特許文献2】特開2005−152395号公報
【特許文献3】特開平11−299698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、電気を感じることなく、座り心地がよく、省エネルギー化を図ることができる暖房便座装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、人が着座する着座面を有する便座上板と、前記便座上板と接合され便座の底面を形成する便座底板と、前記便座上板と前記便座底板との間に形成された空洞部に配設された加熱手段と、を備え、前記便座上板は、樹脂により形成された表面部と、前記表面部の下面に密接し前記表面部を下方から支える補強部と、を有することを特徴とする暖房便座装置である。
【0010】
この暖房便座装置によれば、補強部は、表面部を下方から支えることができる。そのため、表面部の厚さが、補強部が設けられていない場合の厚さよりも薄くても、便座上板の表面部は、強度を確保することができる。すなわち、便座上板を薄肉化することができる。そうすると、便座上板の熱容量は、より小さくなるため、便座上板の昇温性能は、より高くなる。そのため、待機時の便座の温度をより低く設定し、待機電力を削減することができる。これにより、省エネルギー化を図ることができる。
【0011】
また、補強部は、表面部の下面に密接している。そのため、例えば補強部が複数の凸部を有する場合のようには、表面部と補強部とが互いに間隔を置いて接触することはない。そのため、便座上板が使用者の着座による荷重を受けても、便座の表面に凹凸が生ずることはない。あるいは、使用者が便座に着座したときに、例えば「おしり」や「大腿部」などを間隔を置いて部分的に支持されているような違和感を感ずることはない。これにより、便座の良好な座り心地が得られる。
【0012】
また、第2の発明は、第1の発明において、前記補強部は、強化繊維を編んだ織物と、前記織物を固めた樹脂と、を有することを特徴とする暖房便座装置である。
【0013】
この暖房便座装置によれば、補強部は、例えばガラス繊維や、炭素繊維や、アラミド繊維などの強化繊維を編んだ織物と、織物を固めた樹脂と、を有する。この織物は、強化繊維を編んでいるため、強化繊維の方向への引張りに対する強度が高い。そのため、補強部の強度は、補強部が織物を有してしない場合よりも高い。これによれば、便座上板の曲げを抑えることができ、便座の座り心地を維持することができる。
【0014】
また、第3の発明は、第2の発明において、前記表面部と前記補強部とは、結合し一体化されてなることを特徴とする暖房便座装置である。
【0015】
この暖房便座装置によれば、表面部と補強部とは、結合し一体化されているため、表面部と補強部との間に水が浸透することを防止することができる。そのため、加熱手段が配設された空洞部へ水が浸入することを防止することができる。これにより、加熱手段や便座の温度を検知するサーミスタなどが腐食することを防止することができる。
【0016】
また、第4の発明は、第2または第3の発明において、前記表面部は、補強材を含有し、前記補強材が分散した分散部と、前記補強材の含有率が前記分散部よりも低い表皮部と、を有し、前記補強部と前記分散部と前記表皮部とは、この順に下から配設されたことを特徴とする暖房便座装置である。
【0017】
この暖房便座装置によれば、補強部の織物は、表面部の補強材の下側に配設されている。つまり、補強部の織物は、便座上板が使用者の着座による荷重を受けたときに引っ張り力が生ずる側に配設されている。そのため、便座上板の曲げをより効率的に抑えることができる。また、表面部は、例えばガラス繊維や、炭素繊維や、アラミド繊維などの補強材を含有するため、便座上板の強度は、より高い。そのため、便座上板の曲げをさらに効率的に抑えることができる。これにより、便座上板をさらに薄肉化することができ、省エネルギー化を図ることができる。
【0018】
また、補強部よりも上側に配設された表面部は、補強材が分散した分散部と、補強材の含有率が分散部よりも低い表皮部と、を有する。表皮部では、補強材の含有率が分散部よりも低いため、その表皮部は、見栄えのより良い状態を確保することができる。また、表皮部は、分散部よりも上側、すなわち着座面の近傍に配設されている。そのため、本発明の暖房便座装置によれば、便座の着座面の見栄えをより良くすることができる。
なお、本発明において、含有率は、質量比によるものである。
【0019】
また、第5の発明は、第1〜第4のいずれか1つの発明において、前記補強部は、前記表面部よりも高い熱伝導率を有することを特徴とする暖房便座装置である。
【0020】
この暖房便座装置によれば、加熱手段に近い補強部の熱伝達率を、表面部よりも高くしたので、加熱手段の熱が補強部で拡散されて表面部に伝達される。そのため、加熱手段の熱が表面部にむらなく均一に伝わりやすい。そのため、便座の表面に温度むらが生ずることを抑制できる。
【0021】
また、第6の発明は、第4の発明において、前記補強部は、前記表面部における補強材の含有率よりも高い含有率で前記強化繊維を含ませて、前記表面部よりも高い熱伝導率としたことを特徴とする暖房便座装置である。
【0022】
この暖房便座装置によれば、表面部と補強部とに含有させる強化繊維や補強材の含有率を調整することにより、補強部の熱伝達率を表面部よりも高くするので、加熱手段の熱を拡散するために専用部材を備える必要がなく、コスト高を招くことがない。
【発明の効果】
【0023】
本発明の態様によれば、電気を感じることなく、座り心地がよく、省エネルギー化を図ることができる暖房便座装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態にかかる暖房便座装置を備えたトイレ装置を例示する斜視模式図である。
【図2】本実施形態の便座の断面を表す断面模式図である。
【図3】本実施形態の便座上板の具体例を例示する斜視模式図である。
【図4】本具体例の便座上板の内部構造を例示する断面模式図である。
【図5】本具体例の便座上板に上方から荷重が加わった場合について説明するための断面模式図である。
【図6】本実施形態の便座上板の他の具体例を例示する斜視模式図である。
【図7】本具体例の便座上板の内部構造を例示する断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、本発明の実施の形態にかかる暖房便座装置を備えたトイレ装置を例示する斜視模式図である。
また、図2は、本実施形態の便座の断面を表す断面模式図である。
なお、図2は、図1に表したA−A切断面における断面模式図である。
【0026】
図1に表したトイレ装置は、洋式腰掛便器800と、その上に設けられた暖房便座装置100と、を備える。暖房便座装置100は、暖房便座機能部400と、便座200と、便蓋300と、を有する。便座200と便蓋300とは、暖房便座機能部400に対して開閉自在にそれぞれ軸支されている。
【0027】
便座200は、図2に表したように、人が着座する着座面220Aと、着座面220Aの内周側および外周側に連なる側面220B、220Cと、を有する便座上板220と、便座200の底面を形成する便座底板230と、を有する。便座上板220と便座底板230とは、互いに接合されている。便座上板220および便座底板230は、例えば繊維強化プラスチック(FRP:Fiber Reinforced Plastics)等の樹脂を有する材料により形成されている。便座上板220の具体例については、後に詳述する。
【0028】
便座上板220と便座底板230との間には、図2に表したように、空洞部が形成されている。その空洞部には、ヒータ(加熱手段)210が配設されている。つまり、便座200は、ヒータ210を内蔵する。ヒータ210は、通電されて発熱することにより、便座200を暖めることができる。つまり、ヒータ210は、便座上板220の表面(着座面)に伝えられる熱を発生する。なお、図2に表したヒータ210の設置形態は、これだけに限定されるわけではなく、適宜変更することができる。
【0029】
ヒータ210としては、いわゆる「チュービングヒータ」や、「シーズヒータ」、「ハロゲンヒータ」、「カーボンヒータ」などを用いることができる。また、ヒータ210の形状は、ワイヤ状やシート状やメッシュ状などのいずれであってもよい。
なお、便座上板220と便座底板230との間の空洞部には、便座200の下への放熱を抑制する図示しない断熱材が設けられていてもよい。
【0030】
また、暖房便座機能部400は、衛生洗浄装置としての機能部を併設してもよい。すなわち、暖房便座機能部400は、便座200に座った使用者の「おしり」などに向けて水を噴出する図示しない吐水ノズルを有する衛生洗浄機能部などを適宜備えてもよい。なお、本願明細書において「水」という場合には、冷水のみならず、加熱されたお湯も含むものとする。
【0031】
またさらに、暖房便座機能部400には、便座200に座った使用者の「おしり」などに向けて温風を吹き付けて乾燥させる「温風乾燥機能」や「脱臭ユニット」や「室内暖房ユニット」などの各種の機構が適宜設けられていてもよい。この際、暖房便座機能部400の側面には、脱臭ユニットからの排気口453及び室内暖房ユニットからの排出口455が適宜設けられる。ただし、本発明においては、衛生洗浄機能部やその他の付加機能部は必ずしも設けなくてもよい。
【0032】
次に、本実施形態の便座上板220の具体例について、図面を参照しつつ説明する。
図3は、本実施形態の便座上板の具体例を例示する斜視模式図である。
また、図4は、本具体例の便座上板の内部構造を例示する断面模式図である。
なお、図3および図4は、図2に表した領域Aを拡大して眺めた斜視模式図および断面模式図である。
【0033】
本具体例の便座上板220は、図3および図4に表したように、樹脂226により形成された表面部221と、表面部221を下方から支える補強部223と、を有する。樹脂226は、表面部221だけではなく補強部223にも存在する。補強部223は、表面部221の下面に密接しているが、表面部221と補強部223との間の境界は、必ずしも明確というわけではない。つまり、便座上板220の上面(着座面)から下面へ向かってみた場合には、便座上板220の内部構造は、表面部221から補強部223へ遷移する。
【0034】
本具体例では、表面部221は、ガラス繊維や、炭素繊維や、アラミド繊維などの補強材(強化繊維)222を含有する。表面部221は、補強材222が不規則に分散した分散部221bと、補強材222の含有率が分散部221bよりも低い表皮部221aと、を有する。表皮部221aは、便座上板220の製造過程において、表面部分が内部よりも先に硬化していくことにより自然に生成される部である。
【0035】
また、本具体例では、補強部223は、ガラス繊維や、炭素繊維や、アラミド繊維などの強化繊維を編んだ織物224と、織物224を固めた樹脂226と、を有する。補強部223は、強化繊維の含有率および強化繊維の密度が分散部221bよりも高い。
便座上板220がこのような構造を有することにより、織物224と補強材222とは、この順に下から配設されている。
【0036】
ここで、本具体例の便座上板220の製造方法の一例について説明する。
まず、繊維強化プラスチックを用意する。本具体例では、熱硬化性樹脂であるSMC(Sheet Molding Compound)を用意する。SMCに含まれる補強材222は、特に限定されるわけではない。但し、便座200の昇温性能および暖房便座装置100の省エネルギー化を考慮すると、SMCに含まれる補強材222は、熱伝導率が樹脂226の熱伝導率よりも高い炭素繊維またはガラス繊維であることがより好ましい。
【0037】
また、プリプレグを用意する。プリプレグは、ガラス繊維や、炭素繊維や、アラミド繊維などの強化繊維の織物に、半硬化の熱硬化性樹脂を予め含浸させたシートである。予め含浸させる熱硬化性樹脂は、特に限定されるわけではない。本具体例では、SMCと同じ組成の樹脂226を織物224に予め含浸させたプリプレグを用意する。また、SMCの補強材222と同様に、織物224は、熱伝導率が樹脂226の熱伝導率よりも高い炭素繊維またはガラス繊維により形成されることがより好ましい。
【0038】
続いて、便座上板220の形状に基づいて製作された金型にプリプレグおよびSMCを載置する。続いて、金型を締め、高圧および高温にてプレス成形を行う。そうすると、SMCを組成する樹脂226と、プリプレグに含浸された樹脂226と、が一体化する。このとき、SMCを組成する樹脂226と、プリプレグに含浸された樹脂226と、は同じ組成であるため化学的に結合する。なお、プリプレグおよびSMCの載置数は、適宜設定することができる。
【0039】
このようにして便座上板220が製造された結果、図3および図4に表したように、SMCが、表面部221を形成し、プリプレグが、補強部223を形成する。但し、前述したように、SMCを組成する樹脂226と、プリプレグに含浸された樹脂226と、は化学的に結合し一体化する。つまり、表面部221と補強部223とは、化学的に結合し一体化する。そのため、製造後のSMCとプリプレグとの間の境界は、必ずしも明確というわけではない。
【0040】
ここで、製造前の段階でのプリプレグへの強化繊維の含有率をSMCより高くしておくことにより、補強部223への強化繊維の含有率を表面部221より高くすることができる。
なお、便座上板220の着座面220Aでは、表面部221の厚みが1.2mm、補強部223の厚みが0.3mmであるのに対し、側面220B、220Cでは、表面部221の厚みが5.0mm、補強部223の厚みが0.3mmとなっている。つまり、着座面220Aよりも側面220B、220Cの方が、補強部223に対する表面部221の厚みの割合が増している。
【0041】
図5は、本具体例の便座上板に上方から荷重が加わった場合について説明するための断面模式図である。
なお、図5は、図2に表した領域Aを拡大して眺めた断面模式図である。
【0042】
便座上板220の着座面220Aは、例えば使用者の着座による荷重Pを受けると、図5に表した二点鎖線のように曲がる。このとき、中立軸Xよりも下側には、図5に表した矢印W1、W2のように引っ張り力が生ずる。一方、中立軸Xよりも上側には、図5に表した矢印W3、W4のように圧縮力が生ずる。
【0043】
これに対して、本具体例の着座面220Aは、表面部221を下方から支える補強部223を有する。その補強部223は、ガラス繊維や、炭素繊維や、アラミド繊維などの強化繊維を編んだ織物224を有する。また、その補強部223は、着座面220Aの下面を有する。そのため、中立軸Xよりも下側は、補強部223が設けられていない場合よりも伸びにくい。これにより、便座上板220の着座面220Aは、補強部223を有していない場合よりも曲がりにくい。このように、補強部223は、引っ張り力が生ずる側に設けられることにより、着座面220Aの曲げを抑えることができる。
【0044】
一方、便座上板220の側面220B、220Cは、例えば使用者の着座による荷重Pを受けると、図2において外側に広がるように曲がる。これに対して、側面220B,220Cでは、前述したように表面部221の厚さが着座面220Aよりも厚くなっている。このように表面部221を厚肉化することにより、側面220B、220Cにかかる荷重Pによる曲げを抑えることができる。
すなわち、便座上板220に荷重Pがかかると、引っ張りに強い補強部223により着座面220Aの曲げが抑えられ、厚肉化された表面部221により側面220B、220Cの曲げが抑えられる。
【0045】
これによれば、表面部221の厚さが、補強部223が設けられていない場合の厚さよりも薄くても、便座上板220の表面部221は、強度を確保することができる。そのため、便座上板220を薄肉化することができる。そうすると、便座上板220の熱容量は、より小さくなるため、便座上板220の昇温性能は、より高くなる。そのため、待機時の便座200の温度をより低く設定し、待機電力を削減することができる。これにより、省エネルギー化を図ることができる。
【0046】
また、図3および図4に関して前述したように、便座上板220の製造過程において、表面部221と補強部223とは、化学的に結合し一体化される。そのため、例えば補強部が複数の凸部を有する場合のようには、表面部221と補強部223とが互いに間隔を置いて接触するということはない。そのため、便座上板220が使用者の着座による荷重Pを受けても、便座200の表面に凹凸が生ずることはない。あるいは、使用者が便座200に着座したときに、例えば「おしり」や「大腿部」などを間隔を置いて部分的に支持されているような違和感を感ずることはない。これにより、便座200の良好な座り心地が得られる。
【0047】
さらに、本具体例の便座上板220は、樹脂226により形成されている。そのため、金属が便座200の表面に露出することはない。これにより、使用者が、例えばヒータからの漏電などにより電気を感じたり、静電気により不快感を感じたりするおそれはない。
【0048】
また、補強部223は、ガラス繊維や、炭素繊維や、アラミド繊維などの強化繊維を編んだ織物224と、織物224を固めた樹脂226と、を有する。そのため、補強部223の強度は、補強部223が織物224を有していない場合よりも高い。これによれば、便座上板220の曲げをさらに抑えることができ、便座200の座り心地を維持することができる。
【0049】
また、便座上板220の製造過程において、表面部221と補強部223とは、化学的に結合し一体化するため、表面部221と補強部223との間に水が浸透することを防止することができる。また、便座上板220と便座底板230との間には、図示しないシール機構が設けられている。そのため、ヒータ210が配設された空洞部へ水が浸入することを防止することができる。これにより、ヒータ210や、便座200の温度を検知する図示しないサーミスタなどが腐食することを防止することができる。
【0050】
また、織物224を形成する繊維がガラス繊維または炭素繊維である場合には、ヒータ210の熱が補強部223で拡散した後に表面部221に伝わる。そのため、表面部221および便座200の表面に略均一に伝わりやすい。また、表面部221が有する補強材222がガラス繊維または炭素繊維である場合には、補強部223で拡散された熱が、さらに表面部221の繊維で拡散されるので、ヒータ210の熱が便座の表面により均一に伝わりやすい。そのため、便座200の表面に温度むらが生ずることを抑制できる。
なお、本具体例では、補強部223にプリプレグを用いたが、樹脂が含浸されていない織物を用いることもできる。この場合、プレス成形時にSMCの樹脂が溶融して織物の繊維の間に入り込み、その後硬化する。
【0051】
次に、本実施形態の便座上板220の他の具体例について、図面を参照しつつ説明する。
図6は、本実施形態の便座上板の他の具体例を例示する斜視模式図である。
また、図7は、本具体例の便座上板の内部構造を例示する断面模式図である。
なお、図6および図7は、図2に表した領域Aを拡大して眺めた斜視模式図および断面模式図である。
【0052】
本具体例の便座上板220aは、図3および図4に関して前述した便座上板220と同様に、樹脂227により形成された表面部221と、表面部221を下方から支える補強部223と、を有する。本具体例でも、表面部221と補強部223との間の境界は、必ずしも明確というわけではない。つまり、便座上板220aの上面から下面へ向かってみた場合には、便座上板220aの内部構造は、表面部221から補強部223へ遷移する。
【0053】
本具体例では、表面部221は、ガラス繊維や、炭素繊維や、アラミド繊維などの補強材を含有しない。一方、補強部223は、ガラス繊維や、炭素繊維や、アラミド繊維などを編んだ織物224と、織物224を固めた樹脂227と、を有する。図3〜図5に関して前述した具体例の便座上板220の樹脂226が熱硬化性樹脂であるのに対して、本具体例の樹脂227は、例えばポリプロピレン(PP:polypropylene)などの熱可塑性樹脂である。
【0054】
ここで、本具体例の便座上板220aの製造方法の一例について説明する。
まず、熱可塑性樹脂であるPPなどの樹脂227を用意する。また、ガラス繊維や、炭素繊維や、アラミド繊維などを編んだ織物224を用意する。つまり、本具体例では、半硬化の熱硬化性樹脂を予め織物224に含浸させたシートであるプリプレグではなく、樹脂を含浸させていない織物224を用意する。便座200の昇温性能および暖房便座装置100の省エネルギー化を考慮すると、織物224は、熱伝導率が樹脂227の熱伝導率よりも高い炭素繊維またはガラス繊維により形成されることがより好ましい。
【0055】
続いて、便座上板220aの形状に基づいて製作された金型に織物224および樹脂227を載置する。続いて、金型を締め、高圧および高温にてスタンピング成形を行う。あるいは、成形方法は、射出成形であってもよい。そうすると、熱可塑性樹脂である樹脂227は、溶解して織物224の繊維の間に入り込み、その後に硬化して織物224に食い込む。これにより、樹脂227と織物224とは、アンカ効果により機械的に結合し一体化する。このようにして便座上板220aが製造された結果、図6および図7に表したように、樹脂227が表面部221を形成し、織物224および織物224と機械的に結合し一体化した樹脂227が補強部223を形成する。つまり、表面部221と補強部223とは、機械的に結合し一体化する。
【0056】
このように、本願明細書において「一体化」という範囲には、表面部221を形成する樹脂と、補強部223が有する樹脂と、が化学的に結合し一体化する場合だけに限定されず、例えばアンカ効果などにより、表面部221を形成する樹脂と、補強部223が有する織物と、が機械的に結合し一体化する場合も包含されるものとする。つまり、本願明細書において「一体化」という範囲には、表面部221と補強部223とが化学的に結合し一体化する場合だけに限定されず、表面部221と補強部223とが機械的に結合し一体化する場合も包含されるものとする。
【0057】
本具体例によれば、図5に関して前述したように、表面部221の厚さが、補強部223が設けられていない場合の厚さよりも薄くても、便座上板220aの表面部221は、補強部223により強度を確保することができる。そのため、便座上板220aを薄肉化することができる。そうすると、便座上板220aの熱容量は、より小さくなるため、便座上板220aの昇温性能は、より高くなる。そのため、待機時の便座200の温度をより低く設定し、待機電力を削減することができる。これにより、省エネルギー化を図ることができる。
【0058】
また、便座上板220aの製造過程において、樹脂227と織物224とは、アンカ効果により機械的に結合し一体化する。つまり、表面部221と補強部223とは、機械的に結合し一体化される。そのため、例えば補強部が複数の凸部を有する場合のようには、表面部221と補強部223とが互いに間隔を置いて接触するということはない。そのため、便座上板220aが使用者の着座による荷重を受けても、便座200の表面に凹凸が生ずることはない。あるいは、使用者が便座200に着座したしたときに、例えば「おしり」や「大腿部」などを間隔を置いて部分的に支持されているような違和感を感ずることはない。これにより、便座200の良好な座り心地が得られる。
また、その他の効果についても、図3〜図5に関して前述した具体例の効果と同様の効果が得られる。
【0059】
以上説明したように、本実施形態によれば、便座上板220、220aは、表面部221を下方から支える補強部223を有する。補強部223は、着座面220Aにおいては引っ張り力が生ずる側に設けられることにより、便座上板220の着座面220Aの曲げを抑えることができる。表面部221の厚さが、補強部223が設けられていない場合の厚さよりも薄くても、便座上板220の表面部221は、強度を確保することができる。すなわち、便座上板220、220aを薄肉化することができる。そうすると、便座上板220、220aの熱容量は、より小さくなるため、便座上板220、220aの昇温性能は、より高くなる。そのため、待機時の便座200の温度をより低く設定し、待機電力を削減することができる。これにより、省エネルギー化を図ることができる。
【0060】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、便座200などが備える各要素の形状、寸法、材質、配置などやヒータ210の設置形態などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、補強部223は便座上板220の全体に設ける必要はない。昇温性能を高くする必要がある着座面220Aのみに補強部223を設けることもできるが、使用者が便座200に着座した際に接触する便座200の内周側の側面220Bの昇温性能を高めるために、少なくとも便座上板220の内周側の側面220Bに補強部223を設けるのが好ましい。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0061】
100 暖房便座装置、 200 便座、 210 ヒータ、 220 便座上板、 220a 便座上板、 220A 着座面、 220B、220C 側面、 221 表面部、 221a 表皮部、 221b 分散部、 222 補強材、 223 補強部、 224 織物、 226 樹脂、 227 樹脂、 230 便座底板、 300 便蓋、 400 暖房便座機能部、 453 排気口、 455 排出口、 800 洋式腰掛便器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人が着座する着座面を有する便座上板と、
前記便座上板と接合され便座の底面を形成する便座底板と、
前記便座上板と前記便座底板との間に形成された空洞部に配設された加熱手段と、
を備え、
前記便座上板は、
樹脂により形成された表面部と、
前記表面部の下面に密接し前記表面部を下方から支える補強部と、
を有することを特徴とする暖房便座装置。
【請求項2】
前記補強部は、強化繊維を編んだ織物と、
前記織物を固めた樹脂と、を有することを特徴とする請求項1記載の暖房便座装置。
【請求項3】
前記表面部と前記補強部とは、結合し一体化されてなることを特徴とする請求項2記載の暖房便座装置。
【請求項4】
前記表面部は、補強材を含有し、前記補強材が分散した分散部と、前記補強材の含有率が前記分散部よりも低い表皮部と、を有し、
前記補強部と前記分散部と前記表皮部とは、この順に下から配設されたことを特徴とする請求項2または3に記載の暖房便座装置。
【請求項5】
前記補強部は、前記表面部よりも高い熱伝導率を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の暖房便座装置。
【請求項6】
前記補強部は、前記表面部における補強材の含有率よりも高い含有率で前記強化繊維を含ませて、前記表面部よりも高い熱伝導率としたことを特徴とする請求項4記載の暖房便座装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−50680(P2012−50680A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−195583(P2010−195583)
【出願日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】