説明

暖房床

【課題】ヘッダー配置部の周辺部でも踏み心地の変化がほとんどない暖房床を提供する。
【解決手段】板状体層1、流体配管4が組み込まれたマット層2及びクッション層3がこの順に積層された基本構造を有し、発泡体層及びクッション層の一部にヘッダー5が配置されている暖房床であって、ヘッダーの配置位置の周囲において、クッション層が硬質層に置換されている暖房床、及び、板状体層、流体配管が組み込まれたマット層及びクッション層がこの順に積層された構造を有し、発泡体層及びクッション層の一部にヘッダーが配置されている暖房床であって、ヘッダーの配置位置の周囲において、板状体層とマット層との間に弾性層が配置されている暖房床。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッダー配置部の周辺部でも踏み心地の変化がほとんどない暖房床に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、床暖房需要の増加により、樹脂発砲体に溝付け加工を施し、温水等の流体を流すための流体配管を配置した暖房床が多く設置されている。
これらの暖房床としては、温水等の流体を通す流体配管が組み込まれたマット層を、例えば、一戸建て住宅にあっては、大引と床板との間、大引の上に敷いた下張合板の上面等に、マンション等のような集合住宅にあっては、スラブ床の上面に直接、又は、スラブ床の上面に敷いた下張合板の上等に敷き、該マット層上にフローリング材等の板状体(仕上げ材)を敷く形式のものが広く普及している(例えば、特許文献1等)。また、特にマンション等のような集合住宅にあっては、高い防音性能を発揮するためにマット層の下に軟らかいクッション層を配置することが多い。
【0003】
ところで、屋外に配置した給湯器で生成した温水等の流体をマット層に組み込まれた流体配管に導くには、ヘッダーと呼ばれる器具を介して管同士を結合することが行われる。図4に、ヘッダーの一例を表す模式図を示した。ヘッダーには、充分な強度が必要であり、また、加工が容易であることから、通常は金属からなるものが用いられている。
【0004】
図3に、板状体層、流体配管が組み込まれたマット層及びクッション層がこの順に積層された構造を有する通常の暖房床におけるヘッダーの配置位置を模式的に説明する断面図を示した。図3に示した暖房床は、板状体層1、流体配管4が組み込まれたマット層2、及び、クッション層3からなる積層体が基本構造である。この基本構造に加えて、要所要所にヘッダー5が配置される。ヘッダー5の配置部分では、マット層2、クッション層5が除かれている。
【0005】
このような構造からなる暖房床では、要所要所に配置されたヘッダー5を介して温水等の流体が高効率に供給されることから、極めて高い暖房性能を発揮することができる。
しかしながら、金属からなるヘッダー5は、マット層2、クッション層3に比べて極端に硬く柔軟性が皆無である。そのため、ヘッダーの上を踏んだとき、周辺部ではクッション層がへこむのに対して、ヘッダー部分はへこまないため、暖房床上の歩行者にとって、ヘッダーが配置された部分とその周辺部とでは踏み心地が極端に異なり、違和感があるいう問題があった。
【特許文献1】特開平07−217920号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記現状に鑑み、ヘッダー配置部の周辺部でも踏み心地の変化がほとんどない暖房床を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明1は、板状体層、流体配管が組み込まれたマット層及びクッション層がこの順に積層された基本構造を有し、前記発泡体層及びクッション層の一部にヘッダーが配置されている暖房床であって、前記ヘッダーの配置位置の周囲において、前記クッション層が硬質層に置換されている暖房床である。
本発明2は、板状体層、流体配管が組み込まれたマット層及びクッション層がこの順に積層された構造を有し、前記発泡体層及びクッション層の一部にヘッダーが配置されている暖房床であって、前記ヘッダーの配置位置の周囲において、前記板状体層とマット層との間に弾性層が配置されている暖房床である。
以下に本発明を詳述する。
【0008】
本発明の暖房床は、板状体層、マット層及びクッション層がこの順に積層された基本構造を有する。
上記板状体層を構成する板状体としては特に限定されず、例えば、フローリング、コルク、タイル、畳、カーペット、化粧板等が挙げられる。一般的には、木質材料で作られたフローリングが用いられることが多い。このようなフローリングの基材としては、例えば、スギ、ヒノキ等の天然木の他、合板、パーチクルボード、ウエハーボード、MDF等の木質ボード類等も挙げられる。また、必要に応じて、突板、合成樹脂シート、合成樹脂発泡シート、化粧紙、合成樹脂含浸シート等の表面化粧材を積層し、木目調や大理石調に加飾したものも用いることができる。更に、意匠性、木質感、耐傷性等を付与するために、印刷、塗装、着色、コーティング、溝切加工等を行ってもよい。
なお、表面に突板を接着する場合には、反りを防止する目的で、裏面に板、紙等を接着することが好ましい。
【0009】
上記板状体層の厚さとしては特に限定されないが、好ましい下限は1mm、好ましい上限は15mmである。1mm未満であると、板状体の強度が不足することがあり、15mmを超えると、熱伝導に劣り、初期の温まりが遅く、安定時の熱効率が悪くなることがある。より好ましい下限は2mm、より好ましい上限は7mmである。
【0010】
上記マット層としては、適度な断熱性を有し柔軟性、強靱性、変形に対する回復性等の物理的性能を発揮できるものであれば特に限定されず、例えば、ポリスチレン系樹脂発泡体やポリオレフィン系樹脂発泡体等が挙げられる。なかでも、厚さ方向にリブ構造を有する硬質発泡体であって、シート状の連続発泡層の少なくとも一方の面に凸状に形成された高発泡体部を備え、該高発泡体部の全表面が前記連続発泡層及び低発泡体層により被覆され、前記低発泡体層により被覆された相隣接する前記高発泡部間に凹部が形成されることにより凹凸が形成されているものが好適である。
【0011】
上記マット層の厚さとしては特に限定されないが、好ましい下限は7mm、好ましい上限は15mmである。7mm未満であると、流体配管を収納することができなかったり、また、充分な柔軟性、強靱性を発揮できなかったりすることがある。15mmを超えると、床への収まりが悪くなったり、施工が困難になったりすることがある。より好ましい下限は9mm、より好ましい上限は12mmである。
【0012】
上記マット層中には、流体配管が組み込まれている。上記流体配管は、熱源で温められた温水や不凍液等が流すための経路である。上記流体配管には、内径が4〜10mm程度、断面が真円状、楕円状、小判状、多角形状、袋状である管の他、温水が漏れなく流れ、放熱体として機能する限りにおいて、マット層自体に加工を施してこれを流路とする場合を含む。
上記流体配管としては特に限定されず、例えば、耐熱性ポリエチレン、架橋ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等からなる樹脂管;銅等からなる金属管;金属層と樹脂層とを有する金属強化樹脂管等が挙げられる。
【0013】
上記クッション層は、本発明の暖房床に適度な歩き心地と、より高い防音性とを付与するものである。
上記クッション層としては特に限定されないが、例えば、発泡ポリエチレン、発泡ポリウレタン、発泡ポリプロピレン、発泡ポリスチレン等の軟質発泡体;不織布等からなるものが挙げられる。なかでも、防音効果が特に高いことから、発泡ポリウレタンが好適である。
【0014】
上記クッション層の厚さとしては特に限定されず、好ましい下限は1mm、好ましい上限は5mmである。1mm未満であると、充分な防音性を発揮できないことがあり、5mmを超えると、踏み心地が劣ることがある。より好ましい下限は2mm、より好ましい上限は4mmである。
【0015】
本発明の暖房床では、上記基本構造の発泡体層及びクッション層の一部にヘッダーが配置されている。ヘッダー一例、及び、ヘッダーの配置方法の一例は図4及び図3に示した通りである。
上記ヘッダーとしては、通常の金属からなるものを用いることができる。
【0016】
本発明1の暖房床においては、上記ヘッダーの配置位置の周囲において、上記クッション層が硬質層に置換されている。図1に、本発明1の暖房床の一態様を模式的に説明する断面図を示した。図1に示した暖房床では、ヘッダー5の周辺部分のクッション層3が除かれ、代わりに硬質層6が配置されている。このような硬質層を設けることにより、ヘッダーの周辺部を踏んだときに、クッション層のへこみによる沈み込み感を感じない範囲が拡大するため、踏み心地の違和感が大幅に緩和される。
【0017】
上記硬質層としては、上記クッション層に比べて充分に硬いものであれば特に限定されないが、例えば、JIS K 7220に準じて常温下、圧縮速度10mm/minの条件で測定される圧縮降伏応力が0.5MPa以上であるものが好適である。
このような圧縮降伏応力を満たすものとしては特に限定されず、例えば、合板、パーチクルボード、MDF等の木質シート;ポリエチレン、ポリスチレン、塩化ビニール等からなる合成樹脂シート等が好適である。
【0018】
上記硬質層の厚さとしては、上記クッション層と略同一であることが好ましい。
上記クッション層を上記硬質層で置換する範囲としては特に限定されないが、好ましい下限はヘッダーの周囲1cm、好ましい上限は10cmである。1cm未満であると、充分な踏み心地の改善効果が得られないことがある。10cmを超えても、踏み心地の改善効果は向上しないのに対して、クッション層による防音効果が得られない範囲が広がる。より好ましい下限はヘッダーの周囲2cm、より好ましい上限は5cmである。
【0019】
本発明2の暖房床においては、上記ヘッダーの配置位置の周囲において、上記板状体層とマット層との間に弾性層が配置されている。図2に、本発明2の暖房床の一態様を模式的に説明する断面図を示した。図2に示した暖房床では、ヘッダー5の周辺部分において、板状体層1とマット層2との間に弾性層7が挿入されている。このような弾性層を設けることにより、ヘッダーから周辺に向かって段階的に沈み込み量が増えるため、踏み心地の違和感が大幅に緩和される。
【0020】
上記弾性層としては、充分な弾性を有するものであれば特に限定されないが、例えば、JIS K 6767に準拠した方法により測定した25%圧縮硬さが20〜350kPaであるであるものが好適である。
このような曲げ弾性率を満たすものとしては特に限定されず、例えば、発泡ポリエチレン、発泡ポリウレタン、EVA、発泡軟質塩化ビニールからなるシート等が好適である。
【0021】
上記弾性層の厚さの好ましい下限は0.3mm、好ましい上限は3mmである。0.3mm未満であると充分な踏み心地の改善効果が得られないことがあり、3mmを超えると、上記板状体層とマット層との間に配置したときに段差が生じることがある。より好ましい下限は0.5mm、より好ましい上限は2mmである。
【0022】
上記弾性層を配置する範囲としては特に限定されないが、好ましい下限はヘッダーの周囲1cm、好ましい上限は10cmである。1cm未満であると、充分な踏み心地の改善効果が得られないことがある。10cmを超えても、踏み心地の改善効果は向上しない。より好ましい下限は2cm、より好ましい上限は5cmである。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、ヘッダー配置部の周辺部でも踏み心地の変化がほとんどない暖房床を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0025】
板状体層として、厚さ5mm、縦横150mm×900mmが1プライであり、床に敷き詰められるように、おすめす部分が明確になった本さね構造を有する、合成樹脂シートにより表面を木目調に加飾された合板を用いた。また、マット層として、市販の厚さ12mmのポリスチレン発泡体(発泡倍率10倍)を用いた。更に、市販の厚さ2mmのウレタン発泡体(ブリジストン社製、発泡倍率50倍)を軟質層として用いた。
また、ヘッダーとして、図4に示したような形状を有し全体の面積が40cmの真鍮からなるものを用いた。
【0026】
(実施例1)
得られたマット層を縦横900mm×1200mmに組み合わせ、この溝部に架橋ポリエチレン管(PEX−5A、内径5mm、厚さ1.1mm)を1回路でマット全面にいきわたるように挿入し、マット層の上面に板状体を、マット層の下面に軟質層を貼付した。更にマット層と軟質層の一部を切除し、ヘッダーを配置した。
【0027】
次いで、ヘッダーの配置部位から3cmの周辺部の軟質層を切除し、代わりに厚さ2mmの合板製シートを硬質層として設置した。
【0028】
(実施例2)
得られたマット層を縦横900mm×1200mmに組み合わせ、この溝部に架橋ポリエチレン管(PEX−5A、内径5mm、厚さ1.1mm)を1回路でマット全面にいきわたるように挿入し、マット層の上面に板状体を、マット層の下面に軟質層を貼付した。更にマット層と軟質層の一部を切除し、ヘッダーを配置した。
【0029】
次いで、ヘッダーの配置部位から5cmの周辺部において、マット層と板状体層との間に厚さ0.8mmの発泡ポリエチレンシート(積水化学工業株式会社製 ダブルタックテープ #530)を弾性層として設置した。
【0030】
(比較例1)
得られたマット層を縦横900mm×1200mmに組み合わせ、この溝部に架橋ポリエチレン管(PEX−5A、内径5mm、厚さ1.1mm)を1回路でマット全面にいきわたるように挿入し、マット層の上面に板状体を、マット層の下面に軟質層を貼付した。更にマット層と軟質層の一部を切除し、ヘッダーを配置した。
【0031】
(評価)
実施例1、2及び比較例1で作製した暖房床をコンクリートスラブ厚250mmの試作棟地材に両面テープで全面貼付した。
それぞれの暖房床上を歩行する官能試験を行ったところ、実施例1、2で作製した暖房床では、違和感がほとんどなくヘッダーの位置を特定することができなかったのに対し、比較例1で作製した暖房床では、明らかな違和感があって容易にヘッダーの位置を特定できた。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明によれば、ヘッダー配置部の周辺部でも踏み心地の変化がほとんどない暖房床を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明1の暖房床の一態様を模式的に説明する断面図である。
【図2】本発明2の暖房床の一態様を模式的に説明する断面図
【図3】暖房床におけるヘッダーの配置位置を模式的に説明する断面図である。
【図4】ヘッダーの一例を表す模式図である。
【符号の説明】
【0034】
1 板状体層
2 マット層
3 クッション層
4 流体配管
5 ヘッダー
6 硬質層
7 弾性層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状体層、流体配管が組み込まれたマット層及びクッション層がこの順に積層された基本構造を有し、前記発泡体層及びクッション層の一部にヘッダーが配置されている暖房床であって、前記ヘッダーの配置位置の周囲において、前記クッション層が硬質層に置換されていることを特徴とする暖房床。
【請求項2】
板状体層、流体配管が組み込まれたマット層及びクッション層がこの順に積層された構造を有し、前記発泡体層及びクッション層の一部にヘッダーが配置されている暖房床であって、前記ヘッダーの配置位置の周囲において、前記板状体層とマット層との間に弾性層が配置されていることを特徴とする暖房床。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−71417(P2007−71417A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−256240(P2005−256240)
【出願日】平成17年9月5日(2005.9.5)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】