説明

暖房装置およびそれを用いた座席

【課題】ステアリングヒータの以外の構成で手部を温めることができる暖房装置を提供する。
【解決手段】在席者が発熱手段4の配設された座席2の座面周縁部9から底面周縁部10に至る少なくとも一部を触れることにより手部13の暖房が可能となり、寒冷下での快適性が向上する。特に、自動車の暖房においては、助手席や後部座席の乗員が、ドライバーがステアリングヒータにより得られる手部の暖房と同等な暖房を享受できるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体に接触して暖房を行なう暖房装置と、それを用いた座席に関する。
【背景技術】
【0002】
従来この種の車両内での暖房装置としては、ステアリングにヒータを配設してドライバーの手部を暖めるステアリングヒータがあった(例えば特許文献1)。
【特許文献1】特開2006−335147号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、前記従来のステアリングヒータはドライバー席の乗員のみに使用が限定されるので、助手席や後部座席の乗員は手部を暖めることができなかった。
【0004】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、ステアリングヒータ以外の構成で手部を温める暖房装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記従来の課題を解決するために、本発明に係る暖房装置は、座席の座面周縁部から底面周縁部に至る少なくとも一部で、かつ、在席者の手部が接触可能な部位に配設可能な発熱手段と、前記発熱手段の発熱量を制御する制御手段とからなることを特徴とする。
【0006】
この暖房装置では、座席の座面周縁部から底面周縁部に至る少なくとも一部で、かつ、在席者の手部が接触可能な部位に発熱手段を配設して、在席者の手部を接触暖房により暖める。
【発明の効果】
【0007】
本発明の暖房装置は、在席者が発熱手段の配設された座席の座面周縁部から底面周縁部に至る少なくとも一部を触れることにより手部の暖房が可能となり、寒冷下での快適性が向上する。特に、自動車の暖房においては、助手席や後部座席の乗員が、ドライバーがステアリングヒータにより得られる手部の暖房と同等な暖房を享受できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
第1の発明は、座席の座面周縁部から底面周縁部に至る少なくとも一部で、かつ、在席者の手部が接触可能な部位に配設可能な発熱手段と、前記発熱手段の発熱量を制御する制御手段とからなるもので、在席者が発熱手段の配設された座席の座面周縁部から底面周縁部に至る少なくとも一部を触れることにより手部の暖房が可能となる。
【0009】
第2の発明は、特に第1の発明の発熱手段が、座席の座面側に配設されたシートヒータの一部を延出して設けられたもので、発熱手段がシートヒータと一体になっているので、座席への配設が効率的になる。
【0010】
第3の発明は、特に第2の発明の発熱手段の単位面積当たりの発熱量が、シートヒータの単位面積当たりの発熱量よりも大きく設定されたもので、冷え易い手部への発熱量を高めることで、より暖房感を向上させることができる。
【0011】
第4の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の暖房装置を配設した座席であって、発熱手段が配設された部位に手部でホールド可能なホールド部を設けたもので、在席者
が手部を暖めたい時にホールド部が目印になる。また、単に手部を置くのではなく、ホールドして座席を押圧すると手部と座席との接触面積が広がるので、発熱手段から手部への熱伝導が向上して暖房効率が向上する。
【0012】
第5の発明は、特に第4の発明のホールド部が、手部を差し込み可能な袋状に成形されたもので、手部を両側から暖めることができるので暖感が向上する。
【0013】
第6の発明は、特に第5または第6の発明のホールド部に、温風吹き出し可能な吹き出し口を設けたもので、接触による暖房と、温風による暖房の双方により手部の暖感がさらに向上する。
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0015】
(実施の形態1)
本発明の第1の実施の形態を図1〜図3を参照して説明する。
【0016】
図1は本発明の第1の実施の形態における暖房装置の外観図である。図中、暖房装置1は、座席2に配設されていて、シートヒータ3と、シートヒータ3の一部を座席2の前面下部方向に延出して設けられた発熱手段4と、シートヒータ3と発熱手段4の発熱量を制御する制御手段5とを備えている。シートヒータ3は、座席2の座面表布下に配設される座面ヒータユニット6と、サイドホールド部7の表布下に配設されるサイドホールドヒーターユニット8とを有し、発熱手段4はサイドホールドヒーターユニット8を延出して設けられている。そして、発熱手段4は座席2の座面周縁部9から底面周縁部10に至る少なくとも一部で、かつ、在席者の手部が接触可能な部位に配設されている。
【0017】
シートヒータ3と発熱手段4は、共に電気ヒータ線11を不織布12に縫製固定して構成されている。図2にシートヒータ3と発熱手段4の外観と電気ヒータ線11の配線パターンを示した。発熱手段4ではシートヒータ3よりも電気ヒータ線11の配線密度を密にすることにより、発熱手段4の単位面積当たりの発熱量が、シートヒータ3の単位面積当たりの発熱量よりも大きくなるよう設定されている。
【0018】
暖房装置の作動をオンオフするメインスイッチ(図示せず)はインパネ部やセンターコンソール部等に配設されていて、前記メインスイッチは制御手段と接続されている。制御手段は車体のバッテリーから電源を供給されている。
【0019】
上記構成による作用を以下に説明する。在席者がメインスイッチをオンしてシートヒータ3と発熱手段4への通電を開始すると、電気ヒータ線11が発熱し、シートヒータ3と発熱手段4とが配設された部位の座席が加熱される。そして、シートヒータ3により在席者の臀部〜大腿部が暖められるとともに、図3に示すように、発熱手段4が配設された部位の座席表面に在席者が手部13を接触させると、手部13の暖房が可能となる。
【0020】
制御手段は、立ち上がりは電気ヒータ線11にフル通電を行って急速に暖房を行い、一定時間後からは間欠的に電気ヒータ線11への通電を行って暖めすぎを抑制して安定した快適性を維持する。
【0021】
ここで、臀部や大腿部は体幹部の体重が印加されるので座席表面との接触圧が比較的高いが、手部13には臀部や大腿部のような体重の印加がないので、手部13と座席表面との接触圧は臀部や大腿部に比して低い。そのため、手部13は座席表面からの熱伝導が加わりにくい。また、臀部や大腿部に比して熱容量が小さいので冷えやすい。しかしながら
、本実施の形態では、発熱手段4の電気ヒータ線12の配線密度をシートヒータ3の電気ヒータ線12の配線密度よりも密にしているので、発熱手段4が配設されている部位の座席表面温度はシートヒータ3が配設されている部位の座席表面温度よりも高くなる。これにより、発熱手段4に対応する部位に手部13を接触させることにより、手部13を十分に加温して、より暖房感を向上させることが可能となり、寒冷下での快適性が向上する。特に、自動車の暖房においては、本実施の形態を助手席や後部座席に適用することにより、ドライバーがステアリングヒータにより得られる手部の暖房と同等な暖房を助手席や後部座席の乗員が享受できるようになる。
【0022】
また、発熱手段4が、座席2の座面側に配設されたシートヒータ3の一部を延出して設けられていて、発熱手段4がシートヒータ3と一体になっているので、座席2への配設が効率的になる。
【0023】
(実施の形態2)
本発明の第2の実施の形態を図4〜図6を参照して説明する。
【0024】
図4は本発明の第2の実施の形態における暖房装置の外観図である。第1の実施の形態では、シートヒータ3の一部を座席2の前面下部方向に延出して発熱手段4を構成したが、本実施の形態では、図4に示すように、シートヒータ3の一部を座席2の側面下部方向に延出して発熱手段4を構成している。図5にこの構成の場合のシートヒータ3と発熱手段4の外観と電気ヒータ線11の配線パターンを示した。図5のように、発熱手段4は、サイドホールドヒーターユニット8を側方に延出して設けられている。そして、発熱手段4を座席2に配設すると、発熱手段4が配設された部位の座席表面に在席者の手部13が接触可能なようになっている。使用の際は、電気ヒータ線9に通電した後、在席者は図6に示すように、発熱手段4が配設された部位の座席表面に手部13を接触させると、手部13の暖房が可能となる。また、第1の実施の形態の構成のように発熱手段4が配設された部位が座席2の前面に設けられた構成の場合、体格の小さい人や子供のように腕の長さが短い人は発熱手段4が配設された部位に手部13がとどかなかったり、姿勢を少し前かがみにする必要があるが、本構成の場合、発熱手段4が配設された部位が座席2の側面に設けられているので、腕の長さが短い人でも発熱手段4が配設された部位に手部13を接触しやすいので、より使い勝手が向上する。
【0025】
(実施の形態3)
本発明の第3の実施の形態を図7を参照して説明する。
【0026】
図7は発熱手段4が座席側面に配設された場合の発熱手段4の位置における座席の断面図である。図7に示すように、本実施の形態では、座面のクッションの厚みが薄い座席を対象とし、発熱手段4を座席2の座面周縁部9から底面周縁部10にかけて配設し、座席2の側面の一部を上下にカバーするように発熱手段4を配設する構成としている。この構成により、在席者は図7のように、座席2の底面側に指をかけて手部13の座面への接触圧を高めることにより、発熱手段4からの熱伝道を高めることができ、暖感が向上する。
【0027】
尚、本実施例で、発熱手段4の電気ヒータ線密度をさらに部分的に密にする構成としてもよい。特に、座席2の底面側で指先が接触する領域(図7のF領域)に対応した部位の電気ヒータ線密度を高める構成が好ましく、指先が接触する領域の座席表面温度をさらに高められる。これにより、温感の受容器である温冷点が多い指先をさらに暖めることができるので、暖感を一層高めることができる。
【0028】
(実施の形態4)
本発明の第4の実施の形態を図8を参照して説明する。
【0029】
図8は本発明の第4の実施の形態における暖房装置の外観図である。図8に示したように、本実施の形態では、座面側前方のコーナー部14の表布下に発熱手段4を配設するとともに、コーナー部14を略半球状に形成することにより手部でホールド可能なホールド部15を設けている。
【0030】
上記構成により、在席者が手部を暖めたい時にホールド部15が目印になる。また、単に手部を置くのではなく、ホールドして座席を押圧すると手部と座席との接触面積が広がるので、発熱手段4から手部への熱伝導が向上して暖房効率が向上する。
【0031】
(実施の形態5)
本発明の第5の実施の形態を図9を参照して説明する。
【0032】
図9は本発明の第5の実施の形態における暖房装置の外観図である。図9に示すように、本実施の形態では、座席側面の一部に手部を差し込み可能な袋状の穴部16を形成してホールド部17を構成し、穴部16に沿って発熱手段4を配設している。この構成により、ホールド部17に手部を差し込むことにより手部を両側から暖めることができるので暖感が向上する。
【0033】
(実施の形態6)
本発明の第6の実施の形態を図10を参照して説明する。
【0034】
図10は本実施の形態の暖房装置の発熱手段4の位置における座席の断面図である。ここで、本実施の形態では第5の実施の形態と同様なホールド部17を座席側面に備えている。そして、本実施の形態が第5の実施の形態と相違する点は、図10に示すように、ホールド部17に温風吹き出し可能な吹き出し口18を設けた点にある。温風の供給は、例えば、カーエアコンの温風ヒータからダクトを座席下まで配設して行う。この構成により、ホールド部17に手部を差し込むことにより、接触による暖房と、温風による暖房の双方により手部の暖感がさらに向上する。
【0035】
以上、第1〜6の実施の形態では、シートヒータ3と発熱手段4は1本の電気ヒータ線11で構成していたが、臀部〜大腿部のみを暖めたい場合や、手部のみを暖めたい場合に対応して、シートヒータ3と発熱手段4との電気ヒータ線の配線を別々にして、それぞれに制御手段やメインスイッチを設けた構成としてもよく、使い勝手が向上する。
【0036】
また、シートヒータ3は座面のみでなく、背面側にも配設した構成としてもよく、在席者の背面〜臀部〜大腿部にかけて暖房が可能となる。
【0037】
また、第1〜6の実施の形態では、座席に発熱手段を配設した構成であったが、手部を効率的に暖める他の構成として、発熱手段ををサイドドアの車室内側の握り手部やシフトレバー、センターコンソールの前端部、肘掛の前端部等に配設してもよく、乗員が握り手部やシフトレバー、センターコンソールの前端部、肘掛の前端部等を握ることにより手部が暖められて暖感を得ることができる。
【0038】
また、シートヒータ3や発熱手段4に温度センサを配設したり、室温センサを設けて、シートヒータ3や発熱手段4の温度や室温を検出して電気ヒータ線11への通電を制御する構成としてもよい。この場合、メインスイッチをオンした後の一定時間はフル通電し、一定時間経過後は、シートヒータ3や発熱手段4の温度が予め設定された設定温度で維持されるよう制御手段により通電を制御したり、室温が予め設定された設定室温に到達するまではフル通電し、一定時間経過後は、シートヒータ3や発熱手段4の温度が予め設定さ
れた設定温度で維持されるよう制御手段により通電を制御する。
【0039】
また、発熱手段4に感圧センサを配設して手部の接触の有無を検出し、手部の接触が検出されると制御手段により通電を開始し、手部の接触がなくなると通電を停止する構成としてもよく、手部の接触がある場合のみ通電するので、省エネになるとともに、メインスイッチが不要となり合理化が可能となる。
【0040】
また、発熱手段は電気ヒータ線に限るものではなく、面状のPTCヒータや、蓄熱剤などを使用してもよい。
【0041】
また、本実施の形態は主に冬季の使用を想定しているが、夏場の冷え性対策として使用してもよい。この場合、冷え性モードのスイッチを設けて、冷え性モードの場合は発熱手段への通電を少なくして接触部位の温度を下げて使用する構成にすると、使用時に熱すぎるといったことがなく快適に使用できる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
以上のように、本発明にかかる暖房装置は、自動車や一般住宅、オフィス、航空機、劇場、屋外観戦場所、屋外作業場所等のさまざまな座席での多様な暖房に展開が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の第1の実施の形態における暖房装置の外観図
【図2】同装置のシートヒータ3と発熱手段4の外観図
【図3】同装置を配設した座席に在席者の手部13を接触させた際の外観図
【図4】本発明の第2の実施の形態における暖房装置の外観図
【図5】同装置のシートヒータ3と発熱手段4の外観図
【図6】同装置を配設した座席に在席者の手部13を接触させた際の外観図
【図7】本発明の第3の実施の形態における暖房装置の発熱手段4の位置における座席の断面図
【図8】本発明の第4の実施の形態における暖房装置の外観図
【図9】本発明の第5の実施の形態における暖房装置の外観図
【図10】本発明の第6の実施の形態における暖房装置の発熱手段4の位置における座席の断面図
【符号の説明】
【0044】
1 暖房装置
2 座席
3 シートヒータ
4 発熱手段
5 制御手段
6 座面ヒータユニット
7 サイドホールド部
8 サイドホールドヒーターユニット
9 座面周縁部
10 底面周縁部
11 電気ヒータ線
12 不織布
13 手部
14 コーナー部
15 ホールド部
16 穴部
17 ホールド部
18 吹き出し口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
座席の座面周縁部から底面周縁部に至る少なくとも一部で、かつ、在席者の手部が接触可能な部位に配設可能な発熱手段と、前記発熱手段の発熱量を制御する制御手段とからなる暖房装置。
【請求項2】
発熱手段は、座席の座面側に配設されたシートヒータの一部を延出して設けられた請求項1に記載の暖房装置。
【請求項3】
発熱手段の単位面積当たりの発熱量は、シートヒータの単位面積当たりの発熱量よりも大きく設定された請求項2に記載の暖房装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の暖房装置を配設し、発熱手段が配設された部位に手部でホールド可能なホールド部を設けた座席。
【請求項5】
ホールド部は、手部を差し込み可能な袋状に成形された請求項4に記載の座席。
【請求項6】
ホールド部に温風吹き出し可能な吹き出し口を設けた請求項4または5に記載の座席。

【図2】
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【図5】
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【図7】
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【図10】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−153650(P2009−153650A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−333761(P2007−333761)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】