説明

暖房装置

【課題】暖房端末が流量調整手段を有するか否かによって制御の切り換えを可能とする。
【解決手段】手動により操作される端末識別用スイッチ49を備える。端末識別用スイッチ49は、暖房ユニット40に床暖房パネル71が接続された場合にはOFF状態に切り換えられると共に、流量調整手段であるサーモバルブ72aが設けられたラジエータ72が接続された場合にはON状態に切り換えられる。端末識別用スイッチ49がOFF状態である場合には、制御部による制御は、戻り管50aを流れる温調水の温度を制御する戻り水温制御状態となる。一方、端末識別用スイッチ49がON状態である場合には、制御部による制御は、往き管50bを流れる温調水の温度を制御する往き水温制御状態となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、暖房端末と、暖房端末に供給される温調水を加熱する暖房ユニットとを備えた暖房装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
暖房装置として、ヒートポンプユニットと、暖房端末である床暖房パネルと、ヒートポンプユニットから供給された冷媒によって床暖房パネルに供給される温調水を加熱する暖房ユニットとを備えたものがある(例えば、特許文献1)。この暖房ユニットは、ヒートポンプユニットから供給された冷媒と、床暖房パネルに供給される温調水との間で熱交換させる水熱交換器を備えている。
【0003】
そして、暖房ユニットにおいて、温水循環回路に設けられたポンプなどが制御されることによって、温水循環回路を流れる温水の温度が制御される。特許文献1の暖房装置では、床暖房パネルから流出した温調水の温度である戻り水温が、目標温度になるように制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−139082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、暖房ユニットに対して、暖房端末として、床暖房パネルの代わりに、ラジエータが接続されることがある。このラジエータには、ユーザによって手動で操作される暖房能力調整用の流量変更バルブが設けられている場合が多い。そして、ユーザが、例えばラジエータの暖房能力を低下させるために、流量変更バルブを閉じてラジエータへの流量を低下させバイパス量を増やすことで戻り水温が高くなる。
【0006】
しかしながら、暖房端末として床暖房パネルが接続された場合と同様に、ラジエータから流出した温調水の温度である戻り水温に基づいて制御されると、戻り水温が高いと判断し、能力を抑えることで往き温度が低下する。この状態になるとラジエータ側の流量変更バルブが開き、今度はバイパス量を減らすことで戻り温度が低くなる。結果今度は往き温度を高くする制御となる。このように床暖房側でも暖房端末のラジエータ側双方で温調水を制御しようとするため、うまく温度制御ができない。
【0007】
そこで、本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、暖房端末が流量調整手段を有するか否かによって制御を切り換えることができる暖房装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明にかかる暖房装置は、ヒートポンプユニットからの冷媒が流れる熱交換器によって加熱された温調水を往き配管を介して暖房端末に供給すると共に、前記暖房端末から流出した温調水を戻り配管を介して前記熱交換器へ流す循環回路と、前記暖房端末についての設定温度を変更する設定温度変更手段と、前記設定温度変更手段により変更された設定温度に基づいて前記循環回路を流れる温調水の温度を制御する制御手段と、前記制御手段による制御が前記往き配管を流れる温調水の温度に基づく制御である往き水温制御状態と、前記制御手段による制御が前記戻り配管を流れる温調水の温度に基づく制御である戻り水温制御状態とのいずれかに切り換える切り換え手段とを備える。
【0009】
なお、「暖房端末についての設定温度」とは、流量調整手段を有さない暖房端末の場合は、暖房端末の暖房能力に対応した設定温度であり、流量調整手段を有する暖房端末の場案は、暖房端末に供給される温調水の設定温度を意味する。
【0010】
この暖房装置では、暖房端末が流量調整手段を有さないものである場合には、戻り水温制御状態とすることで、暖房端末側の暖房負荷にあった温調水制御ができる。また、暖房端末が流量調整手段を有するものである場合には、往き温度を一定温度に制御することで、暖房端末側での暖房負荷調整が可能となる。したがって、暖房端末の流量調整手段の有無にかかわらず、循環回路を流れる温調水の温度制御を適正に行うことができる。
【0011】
第2の発明にかかる暖房装置では、第1の発明にかかる暖房装置において、前記設定温度変更手段が、複数の設定温度にそれぞれ対応した異なる表示を表示する表示部を有しており、前記制御手段は、往き水温制御状態において、前記設定温度変更手段により前記表示部における所定の表示に対応した所定設定温度に変更された場合に、前記所定設定温度を往き水温テーブルにしたがって変換した温度に基づいて前記往き配管を流れる温調水の温度を制御すると共に、戻り水温制御状態において、前記設定温度変更手段により前記表示部における所定の表示に対応した所定設定温度に変更された場合に、前記所定設定温度を戻り水温テーブルにしたがって変換した温度に基づいて前記戻り配管を流れる温調水の温度を制御する。
【0012】
この暖房装置では、往き水温制御状態と戻り水温制御状態とで、表示部における表示は同じであっても、その表示に対応した設定温度を異なるテーブルに基づいて変換した温度で温調水の制御が行われる。したがって、ユーザは、どちらの制御状態であるかにかかわらず、表示部に所望の設定温度に対応する表示が表示されるように温度設定を行えばよい。すなわち、制御状態に応じて温度設定方法を変更する必要がないので、利便性が向上する。
【発明の効果】
【0013】
以上の説明に述べたように、本発明によれば、以下の効果が得られる。
【0014】
第1の発明では、暖房端末が流量調整手段を有さないものである場合には、戻り水温制御状態とすることで、暖房端末側の暖房負荷にあった温調水制御ができる。また、暖房端末が流量調整手段を有するものである場合には、往き温度を一定温度に制御することで、暖房端末側での暖房負荷調整が可能となる。したがって、暖房端末の流量調整手段の有無にかかわらず、循環回路を流れる温調水の温度制御を適正に行うことができる。
【0015】
第2の発明では、往き水温制御状態と戻り水温制御状態とで、表示部における表示は同じであっても、その表示に対応した設定温度を異なるテーブルに基づいて変換した温度で温調水の制御が行われる。したがって、ユーザは、どちらの制御状態であるかにかかわらず、表示部に所望の設定温度に対応する表示が表示されるように温度設定を行えばよい。すなわち、制御状態に応じて温度設定方法を変更する必要がないので、利便性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態にかかる暖房装置を備えた温調システムの概略構成を示す回路図である。
【図2】図1の暖房装置の詳細な構成を示す回路図であり、(a)は暖房端末として床暖房パネルが接続されている状態を示しており、(b)は暖房端末としてラジエータが接続されている状態を示している。
【図3】図1のワイヤードリモコンを示す図である。
【図4】図2の暖房装置を制御する制御部の概略構成を示すブロック図である。
【図5】図4の水温テーブル記憶部に記憶されるテーブルを示す図であり、(a)は戻り温度テーブル、(b)は往き温度テーブルである。
【図6】図4の制御部で行われる制御手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態にかかる暖房装置を備えた温調システム100について、図面を参照しつつ説明する。
【0018】
<温調システム100の構成>
図1に示すように、本実施形態の温調システム100は、室外機10(ヒートポンプユニット)と、2つの室内ユニット30と、暖房ユニット40と、暖房ユニット40に接続される複数の暖房端末70とを備えている。
【0019】
室外機10は、暖房ユニット40および室内ユニット30のいずれかが接続される複数対(本実施形態においては3対)の接続部11a、11bを有している。なお、図1においては、1つの暖房ユニット40および2つの室内ユニット30が室外機10に接続されているが、2つ以上の暖房ユニット40が室外機10に接続されていてもよい。
【0020】
室外機10は、接続部11aと接続部11bとの間において、圧縮機12、室外熱交換器15および電動膨張弁16を順に接続して形成された冷媒流路を備えている。より詳細に説明すると、冷媒流路において、圧縮機12の吐出管12aと吸入管12bとが、四路切換弁13の1次ポートに接続されている。吸入管12bには、アキュムレータ14が介設されている。吐出管12aには、吐出管温度検知サーミスタ25が付設されている。一方、四路切換弁13の2次ポートには、ヘッダ17に至る第1ガス管20aと、室外熱交換器15に至る第2ガス管20bとが接続されている。ヘッダ17は、第1ガス管20aを3本の分岐ガス管21に分岐するものである。各分岐ガス管21のヘッダ17側とは反対側の端部は、接続部11aに接続されている。分岐ガス管21には、ガス管温度検知サーミスタ26がそれぞれ付設されている。
【0021】
3つの接続部11bには、ヘッダ18から延びる3本の分岐液管22がそれぞれ接続されている。分岐液管22には、電動膨張弁16が介設されている。電動膨張弁16は、その開度が変化することによって、室内ユニット30または暖房ユニット40に送る冷媒量を変更することができ、減圧機構として機能することができる。また、分岐液管22における電動膨張弁16と接続部11bとの間には、液管温度検知サーミスタ27がそれぞれ付設されている。ヘッダ18は、3本の分岐液管22を液管20cに合流させるものである。液管20cのヘッダ18側とは反対側の端部は、室外熱交換器15に接続されている。室外熱交換器15には、室外熱交温度検知サーミスタ28が付設されている。
【0022】
室外機10には、上述の冷媒流路に加えて、外気温度検知サーミスタ29と、制御部19とが備えられている。制御部19は、後述する室内ユニット30の制御部34、および、暖房ユニット40の制御部50とそれぞれ信号線で接続されている。
【0023】
室内ユニット30は、室外機10に接続するための接続部31a、31bと、接続部31aと接続部31bとの間を結ぶ冷媒流路とを備えている。この冷媒流路には、空気熱交換器である室内熱交換器32が介設されており、室内熱交換器32には、室内熱交温度検知サーミスタ36が付設されている。そして、接続部31aと室内熱交換器32との間を接続する配管には、流入冷媒温度検知サーミスタ37が付設されている。また、室内ユニット30には、室内ユニット30の電気的制御を行う制御部34が備えられている。なお、流入冷媒温度検知サーミスタ37を設けない場合もある。
【0024】
暖房ユニット40は、室外機10に接続するための接続部41a、41bと、接続部41aと接続部41bとの間を結ぶ冷媒流路を備えている。この冷媒流路は、水熱交換器42が介設されている。そして、水熱交換器42と接続部41bとの間を接続する配管には、流出冷媒温度検知サーミスタ57が付設されている。また、暖房ユニット40には、暖房ユニット40の電気的制御を行う制御部50が備えられている。なお、暖房ユニット40の詳細な構成については後述する。
【0025】
温調システム100では、室外機10の接続部11aと暖房ユニット40の接続部41aとが連絡管9aで接続されると共に、室外機10の接続部11bと暖房ユニット40の接続部41bとが連絡管9bで接続されている。また、室外機10の接続部11aと室内ユニット30の接続部31aとが連絡管9aで接続されると共に、室外機10の接続部11bと室内ユニット30の接続部31bとが連絡管9bで接続されている。
【0026】
そして、温調システム100において、室外機10、暖房ユニット40、複数の暖房端末70、およびワイヤードリモコン2によって、暖房装置1が構成される。なお、室外機10は、筐体10a内に上述した冷媒流路が収容されたものであり、暖房ユニット40は、筐体40a内に上述した冷媒流路および後述する温水流路が収容されたものである。すなわち、室外機10と暖房ユニット40とは別体に構成されており、それらは連絡管9a、9bで接続される。そして、暖房装置1においては、連絡管9a、9bによって、室外機10内に構成された冷媒流路と暖房ユニット40内に構成された冷媒流路とが接続され、圧縮機12、水熱交換器42、電動膨張弁16、および室外熱交換器15が順に接続された冷媒循環回路が形成されている。この冷媒循環回路においては、連絡管9aを介して室外機10から送られた冷媒が、接続部41aから暖房ユニット40内に流れ込み、水熱交換器42を通過した後、接続部41bから流出する。
【0027】
また、温調システム100においては、室外機10、室内ユニット30、およびワイヤレスリモコン35によって、空気調和機が構成される。室外機10と室内ユニット30とは、連絡管9a、9bで接続される。そして、空気調和機においては、連絡管9a、9bによって、室外機10内に構成された冷媒流路と室内ユニット30内に構成された冷媒流路とが接続され、圧縮機12、室内熱交換器32、電動膨張弁16、および室外熱交換器15が順に接続された冷媒循環回路が形成されている。この冷媒循環回路においては、連絡管9aを介して室外機10から送られた冷媒は、接続部31aから室内ユニット30内に流れ込み、室内熱交換器32を通過した後、接続部31bから流出する。
【0028】
暖房装置1および空気調和機に設けられたリモコン2、35では、ユーザによって、運転の開始/停止の操作や、温度設定などが行われる。
【0029】
<暖房ユニット40の構成>
図2に示すように、暖房ユニット40は、上述の冷媒流路に加えて、複数の暖房端末70を接続するための複数対(本実施形態においては4対)の接続部43a、43bと、接続部43aと接続部43bとを結ぶ温水流路とを備えている。
【0030】
4つの接続部43aには、ヘッダ47から延びる4本の戻り分岐管51がそれぞれ接続されている。ヘッダ47は、4本の戻り分岐管51を戻り管50aに合流させるものである。戻り管50aのヘッダ47側とは反対側の端部は、水熱交換器42に接続されている。戻り管50aには、戻り水温検知サーミスタ58が付設されている。
【0031】
水熱交換器42には、上述の戻り管50aに加えて、ヘッダ48に至る往き管50bが接続されている。往き管50bには、水熱交換器42側から順に、膨張タンク45および循環ポンプ46が介設されている。また、往き管50bにおける膨張タンク45と循環ポンプ46との間には、往き水温検知サーミスタ59が付設されている。なお、往き水温検知サーミスタ59は、循環ポンプ46とヘッダ48の間に付設されていてもよい。ヘッダ48は、往き管50aを4本の往き分岐管52に分岐するものである。各往き分岐管52のヘッダ48側とは反対側の端部は、接続部43bに接続されている。各往き分岐管52には、熱動弁53が介設されている。熱動弁53は、暖房ユニット40に接続される暖房端末70に送る温調水の流量を変更するためのものである。
【0032】
暖房ユニット40に設けられた4対の接続部43a、43bには、暖房端末70がそれぞれ取り付けられている。そして、暖房端末70を介して、暖房ユニット40内に構成された温水流路の端部としての接続部43aと接続部43bとが接続され、水熱交換器42、循環ポンプ46、熱動弁53、および暖房端末70が順に接続された温水循環回路が形成される。よって、暖房装置1においては、室外機10からの冷媒が流れる水熱交換器42によって加熱された温調水を暖房端末70に供給し、暖房端末70から流出した温調水を水熱交換器42に戻すことができる。
【0033】
本実施形態においては、暖房端末70として、床暖房パネル71(図2(a)参照)またはラジエータ72(図2(b)参照)のいずれかが接続される。図2(a)に示すように、暖房ユニット40に接続される4つの床暖房パネル71は、2つのエリア75、76に分けられている。すなわち、3つの床暖房パネル71はエリア75に属しており、残りの1つの床暖房パネルはエリア76に属している。図2(b)に示すように、ラジエータ72には、流量調整手段として、サーモバルブ72aが設けられている。サーモバルブ72aは、ユーザが手動で操作する操作部72bを有しており、ラジエータ72の暖房能力を調整するためのものである。暖房ユニット40から4つのラジエータ72に対して同一温度の温調水が供給されているが、ユーザは、ラジエータ72の暖房能力を低くする場合、ラジエータ72に供給される温調水の流量を減らすために、操作部72bを操作することによって温調水の流路を絞り、一方、暖房能力を高くする場合、ラジエータ72に供給される温調水の流量を増やすために、操作部72bを操作することによって温調水の流路を大きくする。
【0034】
なお、本実施の形態においては、暖房端末70が床暖房パネル71である場合には、床暖房ユニット40に対して2つのワイヤードリモコン2が設けられている。ワイヤードリモコン2は、床暖房パネル71の設定温度をエリアごとに個別に変更できるようになっている。一方、暖房端末70がラジエータ72である場合には、1つの暖房ユニット40に1つのワイヤードリモコン2が設けられており、このワイヤードリモコン2で全てのラジエータ72の操作を行う。よって、4つのラジエータ72には、ワイヤードリモコン2で変更された設定温度に対応した同一温度の温調水が供給される。そして、各ラジエータ72の暖房能力を個別に変更する場合には、各ラジエータ72に設けられた操作部72bを操作する必要がある。
【0035】
暖房ユニット40には、それに接続されている暖房端末70が、床暖房パネル71であるかラジエータ72であるかを識別するための端末識別用スイッチ49が設けられている。この端末識別用スイッチ49は、暖房ユニット40に暖房端末70を接続する際に、設置業者等によって手動で操作されるものであって、暖房端末70が床暖房パネル71である場合にはOFF状態とされ、暖房端末70がラジエータ72である場合にはON状態とされる。後述するように、暖房装置1においては、床暖房パネル71が接続されている場合とラジエータ72が接続されている場合とで異なる制御が行われる。端末識別用スイッチ49は、暖房装置1で行われる制御を、それに接続されている暖房端末70の種類に応じた制御に切り換えるための切り換え手段として機能する。なお、図1および図2では、端末識別用スイッチ49は、筐体40aに設置されているが、筐体40a内の制御部50に設けられていてもよい。
【0036】
<ワイヤードリモコン2>
ここで、図3を参照しつつ、暖房端末70についての設定温度を変更するためのワイヤードリモコン2について説明する。ワイヤードリモコン2は、本発明の設定温度変更手段として機能するものであり、暖房端末70についての設定温度を入力する入力部2aと、入力部2aによって入力された設定温度を表示する表示部2bとを備えている。本実施形態においては、設定温度はレベル0〜8までの9段階の中から選択できるようになっている。なお、レベル0とは、外出中等に設定しておくキープ運転モードである。
【0037】
入力部2aは、円環状のボタンであり、その上部を押すことで設定温度を上げ、下部を押すことで設定温度を下げることができる。表示部2bには、最も短いものから順に左側から右側に向かって並んだ9本の棒状部が表示可能となっている。この9本の棒状部のうちで表示される数は、9段階の設定温度にそれぞれ対応している。
【0038】
そして、例えば、入力部2aによって9段階中で最も低い設定温度に対応したレベル0に変更される場合は、最も左側に位置する1つの棒状部だけが表示される。また、入力部2aによって9段階中で5番目に高い設定温度に対応したレベル4に変更される場合は、図3に示すように、最も左側に位置する棒状部から、左側から5番目に位置する棒状部までの5つの棒状部が表示される。ここで、図3において、最も右側に位置する棒状部から、右側から4番目に位置する棒状部までは、表示されていないことを示している。
【0039】
このように、ワイヤードリモコン2の表示部2bにおいては、1つから9つまでの棒状部の表示が、9段階の設定温度にそれぞれ対応している。
【0040】
<制御部60>
次に、図4を参照しつつ、暖房装置1を制御する制御部60について説明する。制御部60は、上述のように室外機10に備えられた制御部19と暖房ユニット40に備えられた制御部50とで構築されるものである。制御部60は、端末識別部61、設定温度記憶部62、水温テーブル記憶部64、温度変換部65、圧縮機制御部66、膨張弁制御部67、循環ポンプ制御部68、および熱動弁制御部69を備えている。
【0041】
端末識別部61は、端末識別用スイッチ49の状態に基づいて、暖房ユニット40に接続されている暖房端末70が床暖房パネル71であるかラジエータ72であるかを識別する。すなわち、端末識別用スイッチ49がOFFである場合には、床暖房パネル71であると識別し、ONである場合には、ラジエータ72であると識別する。
【0042】
設定温度記憶部62は、レベル0〜8の9段階の設定温度のいずれかを設定温度として記憶する。この設定温度記憶部62では、ユーザによりワイヤードリモコン2が操作されて設定温度の変更が行われた場合に、それに記憶されている設定温度が書き換えられる。すなわち、設定温度記憶部62の記憶内容は、ユーザによってワイヤードリモコン2が操作されて設定温度が変更された際に、表示部2bに表示された表示に対応した設定温度に書き換えられる。
【0043】
水温テーブル記憶部64は、戻り水温テーブル記憶部64aと、往き水温テーブル記憶部64bとを有している。戻り水温テーブル記憶部64aは、ユーザにより設定される設定温度と、暖房ユニット40内の戻り管50aを流れる温調水である戻り温水の目標温度とを対応付ける戻り水温テーブル(図5(a)参照)を記憶するものである。往き水温テーブル記憶部64bは、ユーザにより設定される設定温度と、暖房ユニット40内の往き管50bを流れる温調水である往き温水の目標温度とを対応付ける往き水温テーブル(図5(b)参照)を記憶するものである。図5に示すように、戻り水温テーブルおよび往き温水テーブルでは、設定温度のレベル0〜8のそれぞれに、各目標温度が対応付けられている。
【0044】
ここで、図5(a)は、戻り水温テーブルの一例を示しており、図5(b)は、往き水温テーブルの一例を示している。図5(a)の戻り水温テーブルでは、設定温度レベル0〜8までの9段階に対して、戻り温水の目標温度a0、a1、a2・・・a8が対応している。
一方、図5(b)の往き水温テーブルでは、設定温度レベル0〜8までの9段階に対して、往き水温の目標温度b0、b1、b2・・・b8が対応している。そして、図5(a)および図5(b)では、同一の設定温度レベルで、戻り水温の目標温度と往き水温の目標温度とを比べた場合、設定温度レベルのいずれにおいても、往き水温の目標温度が、戻り水温の目標温度より高く設定されている。したがって、例えば、設定温度レベル0において、a0<b0であり、設定温度レベル1において、a1<b1であり、設定温度レベル8において、a8<b8となる。
【0045】
温度変換部65は、設定温度記憶部62に記憶されている設定温度を、水温テーブル記憶部64に記憶されているテーブルに基づいて温調水の目標温度に変換するものである。より詳細には、端末識別部61によって、暖房端末70が床暖房パネル71であると識別されている場合には、設定温度記憶部62に記憶されている設定温度を、戻り水温テーブル記憶部64aに記憶されているテーブルに基づいて、戻り温水の目標温度に変換する。一方、端末識別部61によって、暖房端末70がラジエータ72であると識別されている場合には、設定温度記憶部62に記憶されている設定温度を、往き水温テーブル記憶部64bに記憶されているテーブルに基づいて、往き温水の目標温度に変換する。
【0046】
圧縮機制御部66は、室外機10に設けられている圧縮機12の運転周波数を制御する。膨張弁制御部67は、室外機10に設けられている電動膨張弁16の開度を制御する。循環ポンプ制御部68は、暖房ユニット40に設けられている循環ポンプ46の回転数を制御する。熱動弁制御部69は、暖房ユニット40に設けられている熱動弁53の開閉を制御する。
【0047】
圧縮機制御部66、膨張弁制御部67、および循環ポンプ制御部68は、いずれも温度変換部65によって変換された温調水の目標温度に基づいて制御を行う。より詳細には、端末識別部61によって、暖房端末70が床暖房パネル71であると識別されている場合には、これらの制御部66、67、68は、戻り水温検知サーミスタ58で検知される戻り水温DRが、温度変換部65によって変換された温調水の目標温度(戻り温水の目標温度)DRSETに一致する(近づく)ように制御する。なお、戻り水温DRが、戻り温水の目標温度DRSETに一致するように制御される状態が、本発明の「戻り水温制御状態」である。一方、端末識別部61によって、暖房端末70がラジエータ72であると識別されている場合には、これらの制御部66、67、68は、往き水温検知サーミスタ59で検知される往き水温DLが、温度変換部65によって変換された温水の目標温度(往き温水の目標温度)DLSETに一致する(近づく)ように制御する。なお、往き水温DLが、往き温水の目標温度DLSETと一致するように制御される状態が、本発明の「往き水温制御状態」である。
【0048】
具体的には、温調水の検知温度と目標温度との差が大きいほど、圧縮機制御部66は、圧縮機12の周波数が増加するように圧縮機12を制御し、膨張弁制御部67は、暖房ユニット40に供給される冷媒量を多くするように電動膨張弁16を制御する。また、循環ポンプ制御部68は、温調水の検知温度と目標温度との差がある範囲を超えると、循環する温水の流量を増減するように循環ポンプ46を制御する。
【0049】
なお、本実施の形態においては、上述のように、4つの床暖房パネル71をエリアごとに個別に操作する2つのワイヤードリモコン2が設けられており、各床暖房パネル71の温度設定をエリアごとに個別に行うことができる。各エリア75、76に対して、異なる設定温度が設定されている場合には、それらの設定温度の中で高い方の設定温度に対応する戻り温水の目標温度に基づいて、4つの床暖房パネル71から流出した戻り温水の温度が制御される。そして、高い方の設定温度が設定されているエリアに属する床暖房パネル71に温調水を供給する分岐管52に設けられた熱動弁53は、熱動弁制御部69によって開放状態に維持される。もう一方のエリアに属する床暖房パネル71に温調水を供給する分岐管52に設けられた熱動弁53は、熱動弁制御部69によって、それぞれの設定温度にしたがって開状態と閉状態とが交互に繰り返される。また、暖房端末70がラジエータ72である場合には、熱動弁制御部69は、全ての熱動弁53が常に開放状態に維持される。
【0050】
<制御手順>
ここで、図6を参照しつつ、制御部60における制御手順について説明する。
まず、ワイヤードリモコン2によって設定温度の変更が行われた否かの判断が行われる(ステップS1)。設定温度の変更が行われていない場合には(ステップS1:NO)、設定温度の変更が行われるまで、ステップS1での判断が繰り返し行われる。一方、設定温度の変更が行われた場合(ステップS1:YES)には、設定温度記憶部62に記憶されている設定温度が、変更された設定温度に書き換えられる(ステップS2)。続いて、暖房ユニット40に接続されている暖房端末70が、ラジエータ72であるか否かの判断が行われる(ステップS3)。
【0051】
端末識別部61によって、暖房端末70が床暖房パネル71であると識別されている場合(ステップS3:NO)には、戻り水温テーブル記憶部64aに記憶されている戻り水温テーブルに基づいて、目標温度DRSETが設定される(ステップS4)。すなわち、戻り水温テーブルにおいて、設定温度記憶部62に記憶されている設定温度に対応する戻り温水の目標温度が、目標温度DRSETとなる。さらに、戻り水温検知サーミスタ58によって、戻り管50aを流れる温調水の温度である戻り水温DRを検知する(ステップS5)。その後、ステップS5で検知された戻り水温DRが、ステップS4で設定された目標温度DRSETと一致するように、圧縮機制御部66、膨張弁制御部67、および循環ポンプ制御部68によって、圧縮機12、電動膨張弁16、および循環ポンプ46がそれぞれ制御される(ステップS6:戻り水温制御)。
【0052】
一方、端末識別部61によって、暖房端末70がラジエータ72であると識別されている場合(ステップS3:YES)には、往き水温テーブル記憶部64bに記憶されている往き水温テーブルに基づいて、目標温度DLSETが設定される(ステップS7)。すなわち、往き水温テーブルにおいて、設定温度記憶部62に記憶されている設定温度に対応する往き温水の目標温度が、目標温度DLSETとなる。さらに、往き水温検知サーミスタ59って、往き管50bを流れる温調水の温度である往き水温(DL)を検知する(ステップS8)。その後、ステップS8で検知された往き水温DLが、ステップS7で設定された目標温度DLSETに一致するように、圧縮機制御部66、膨張弁制御部67、および循環ポンプ制御部68によって、圧縮機12、電動膨張弁16、および循環ポンプ46がそれぞれ制御される(ステップS9:往き水温制御)。
【0053】
<暖房装置1の特徴>
本実施形態の暖房装置1は、手動により操作される端末識別用スイッチ49を備えており、この端末識別用スイッチ49が、暖房ユニット40に床暖房パネル71が接続された場合にはOFF状態に切り換えられると共に、流量調整手段であるサーモバルブ72aが設けられたラジエータ72が接続された場合にはON状態に切り換えられる。そして、端末識別用スイッチ49がOFF状態である場合(暖房ユニット40に床暖房パネル71が接続されている場合)には、制御部60による制御は、戻り管50aを流れる温調水の温度を制御する戻り水温制御状態となる。一方、端末識別用スイッチ49がON状態である場合(暖房ユニット40にラジエータ72が接続されている場合)には、制御部60による制御は、往き管50bを流れる温調水の温度を制御する往き水温制御状態となる。
したがって、暖房端末70が流量調整手段を有さないものである場合には、戻り水温制御状態とすることで、暖房端末70側の暖房負荷にあった温調水制御ができる。また、暖房端末70が流量調整手段を有するものである場合には、往き温度を一定温度に制御することで、暖房端末側での暖房負荷調整が可能となる。
よって、暖房端末70の流量調整手段の有無にかかわらず、温水循環回路を流れる温調水の温度制御を適正に行うことができる。
【0054】
また、本実施形態の暖房装置1では、ワイヤードリモコン2が、レベル0〜8の9段階の設定温度にそれぞれ対応した異なる表示を表示する表示部2bを有している。制御部60は、戻り水温制御状態において、ワイヤードリモコン2により表示部2bの所定表示に対応する設定温度に変更された場合に、変更された設定温度を戻り温度テーブルにしたがって変換した目標水温(DRSET)に基づいて、戻り管50aを流れる温調水の温度を制御する。また、往き水温制御状態において、ワイヤードリモコン2により表示部2bの所定表示に対応する設定温度に変更された場合に、変更された設定温度を往き温度テーブルにしたがって変換した目標水温(DLSET)に基づいて、往き管50bを流れる温調水の温度を制御する。すなわち、往き水温制御状態と戻り水温制御状態とで、表示部2bにおける表示は同じであっても、その表示に対応した設定温度を異なるテーブルに基づいて変換した目標温度で温調水の制御が行われる。したがって、ユーザは、どちらの制御状態であるかにかかわらず、ワイヤードリモコン2の表示部2bに、所望の設定温度に対応する表示が表示されるように温度設定を行えばよい。すなわち、制御状態に応じて温度設定方法を変更する必要がないので、利便性が向上する。
【0055】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0056】
例えば、上述の実施形態では、端末識別用スイッチ49が暖房ユニット40に設けられている場合について説明したが、端末識別用スイッチ49の設置場所はこれに限定されるものではない。すなわち、例えば、室外機10に端末識別用スイッチ49が設けられていてもよい。
【0057】
また、上述の実施形態では、複数の床暖房パネル71の設定温度をエリアごとに個別に操作できる場合について説明したが、暖房ユニット40に接続された全ての床暖房パネル71の設定温度をそれぞれ制御可能であってもよい。また、上述の実施形態では、暖房端末70が床暖房パネル71の場合は、2つのワイヤードリモコン2が設けられている場合について説明したが、1台のワイヤードリモコン2によって、全ての床暖房パネル71を操作するようにしてもよい。
【0058】
また、上述の実施形態では、暖房ユニット40に、床暖房パネル71またはラジエータ72が接続されている場合について説明したが、暖房ユニット40には、暖房端末70として、これら以外のものが接続されてもよい。上述の実施形態において、床暖房パネル71は、流量調整手段を有しない暖房端末の一例であり、ラジエータ72は、流量調整手段を有する暖房端末の一例である。
【0059】
さらに、上述の実施形態では、戻り水温制御状態である場合も往き水温制御状態である場合も、ユーザは、ワイヤードリモコン2の表示部2bに所望の設定温度に対応する同一の表示が表示されるように温度設定が行われる場合について説明したが、これには限定されない。すなわち、戻り水温制御状態である場合と往き水温制御状態である場合とで、ユーザ自身が、所望の設定温度に対する戻り温水の目標温度と往き温水の目標温度との違いを考慮しつつ、温度設定を行うようにしてもよい。
【0060】
また、上述の実施形態では、ワイヤードリモコン2の表示部2bが、9段階の設定温度にそれぞれ対応するように、9本の棒状部を表示可能である場合について説明したが、これには限定されない。したがって、ワイヤードリモコン2の表示部2bが、9段階の設定温度にそれぞれ対応するように、それらの温度を文字や数字で表示可能であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明を利用すれば、暖房端末が流量調整手段を有するか否かによって制御を切り換えることができる。
【符号の説明】
【0062】
2 ワイヤードリモコン(設定温度変更手段)
10 室外機(ヒートポンプユニット)
42 水熱交換器
49 端末識別用スイッチ(切り換え手段)
50a 戻り管
50b 往き管
60 制御部
70 暖房端末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒートポンプユニットからの冷媒が流れる熱交換器によって加熱された温調水を往き配管を介して暖房端末に供給すると共に、前記暖房端末から流出した温調水を戻り配管を介して前記熱交換器へ流す循環回路と、
前記暖房端末についての設定温度を変更する設定温度変更手段と、
前記設定温度変更手段により変更された設定温度に基づいて前記循環回路を流れる温調水の温度を制御する制御手段と、
前記制御手段による制御が前記往き配管を流れる温調水の温度に基づく制御である往き水温制御状態と、前記制御手段による制御が前記戻り配管を流れる温調水の温度に基づく制御である戻り水温制御状態とのいずれかに切り換える切り換え手段とを備えることを特徴とする暖房装置。
【請求項2】
前記設定温度変更手段が、複数の設定温度にそれぞれ対応した異なる表示を表示する表示部を有しており、
前記制御手段は、
往き水温制御状態において、前記設定温度変更手段により前記表示部における所定の表示に対応した所定設定温度に変更された場合に、前記所定設定温度を往き水温テーブルにしたがって変換した温度に基づいて前記往き配管を流れる温調水の温度を制御すると共に、
戻り水温制御状態において、前記設定温度変更手段により前記表示部における所定の表示に対応した所定設定温度に変更された場合に、前記所定設定温度を戻り水温テーブルにしたがって変換した温度に基づいて前記戻り配管を流れる温調水の温度を制御することを特徴とする請求項1に記載の暖房装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−83048(P2012−83048A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−230661(P2010−230661)
【出願日】平成22年10月13日(2010.10.13)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】