説明

暗証入力装置

【課題】 機械的劣化が無く、その存在を第三者に悟られることがない暗証入力装置を提供する。
【解決手段】 暗証入力装置において、複数の検知エリア1A,1B,1Cを有するセンサ部1と、少なくとも2つの前記検知エリアにおける検知情報に基づいて、被検知体が前記検知エリア間を移動する複数の移動方向及びそれらの複数の移動方向の順序を所定期間記憶し前記被検知体の動作を認識する動作認識回路2と、この動作認識回路2で記憶された複数の移動方向とそれらの複数の移動方向の順序に基づいて、判定信号を出力する判定回路3と、この判定回路3からの判定信号に基づいて負荷5を駆動させる負荷駆動手段4とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、暗証入力装置に係り、特に非接触で検知エリア内の動きを検知するため、特定の部位の劣化が無く、第三者にその暗証入力方法を悟られることを防ぐことができる暗証入力装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の暗証入力装置においては、押しボタン式の場合、利用者はセットされた特定の番号のボタンのみを繰り返し押下するようになっている。
【特許文献1】なし
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の押しボタン式の場合、利用者は特定の番号のボタンのみを繰り返し押下するため、そのボタンのみが劣化してしまい、それにより知られたくない第三者にまでも暗証番号を悟られやすくなってしまうという問題があった。その問題を解決するために、数字の配列をその都度変更する液晶表示のものもあるが、液晶画面は高齢者にとっては見づらく、変更した数字の配列を確認することが困難である。
【0004】
本発明は、上記状況に鑑みて、機械的劣化が無く、第三者にその存在を悟られることがない暗証入力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕暗証入力装置において、複数の検知エリアを有するセンサ部と、少なくとも2つの前記検知エリアにおける検知情報に基づいて、被検知体が前記検知エリア間を移動する複数の移動方向及びそれらの複数の移動方向の順序を所定期間記憶し前記被検知体の動作を認識する動作認識回路と、この動作認識回路で記憶された複数の移動方向とそれらの複数の移動方向の順序に基づいて、判定信号を出力する判定回路と、この判定回路からの判定信号に基づいて負荷を駆動させる負荷駆動手段とを備えたことを特徴とする。
【0006】
〔2〕上記〔1〕記載の暗証入力装置において、前記センサ部は、前方に電波ビームを放射するドップラーセンサと、このドップラーセンサを収納する筐体からなることを特徴とする。
【0007】
〔3〕上記〔1〕記載の暗証入力装置において、前記センサ部は、電波ビームの放射方向を複数の方向に切替え可能なドップラーセンサと、このドップラーセンサを収納する筐体からなることを特徴とする。
【0008】
〔4〕上記〔2〕又は〔3〕の何れか一項記載の暗証入力装置において、前記筐体表面に前記ドップラーセンサの位置を認識させ得る標識部を設けたことを特徴とする。
【0009】
〔5〕上記〔4〕記載の暗証入力装置において、前記標識部は、前記ドップラーセンサの中心位置もしくは前記ドップラーセンサの外形線いずれか一方を示すことを特徴とする。
【0010】
〔6〕上記〔1〕から〔5〕の何れか一項記載の暗証入力装置において、前記ドップラーセンサを室内の壁や扉に隠蔽して、隠しキーや非常通報装置として用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、以下のような効果を奏することができる。
【0012】
(1)機械的劣化がないので、その存在を第三者に悟られることがなく、セキュリティー性の向上を図ることができる。
【0013】
(2)筐体表面に前記ドップラーセンサの位置を認識させ得る標識部を設けるようにしたので、利用を的確なものにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の暗証入力装置は、複数の検知エリアを有するセンサ部と、少なくとも2つの前記検知エリアにおける検知情報に基づいて、被検知体が前記検知エリア間を移動する複数の移動方向及びそれらの複数の移動方向の順序を所定期間記憶し前記被検知体の動作を認識する動作認識回路と、この動作認識回路で記憶された複数の移動方向とそれらの複数の移動方向の順序に基づいて、判定信号を出力する判定回路と、この判定回路からの判定信号に基づいて負荷を駆動させる負荷駆動手段とを備えた。
【実施例】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0016】
図1は本発明の実施例を示す暗証入力装置の全体構成図である。
【0017】
この図において、1はセンサ部であり、このセンサ部1には非接触で暗証入力動作を検知する複数のセンサ(ここでは3個のセンサ)が設けられており、これらセンサは複数の検知エリア(ここでは3個の検知エリア)1A,1B,1Cに対応している。この検知エリア1A〜1C内で、利用者の動きによってセンサ部1への暗証入力が行われる。2はセンサ部1に接続される動作認識回路であり、この動作認識回路2は、少なくとも2つの検知エリア間の被検知体としての利用者の人体の四肢のうち少なくとも1つの部位、例えば、指や手が移動する複数の方向及びそれらの複数の方向の順序を記憶し被検知体の動作を認識することができる。3は動作認識回路2に接続される判定回路であり、動作認識回路2で記憶された複数の移動方向とそれらの複数の移動方向の順序に基づいて、予め記憶されている複数の移動方向とそれらの複数の移動方向の順序からなる参照情報と比較して被検知体による暗証入力の正否を判定し、判定信号を出力することができる。つまり、複数の検知エリア1A,1B,1Cを有するセンサ部1が配置されており、この検知エリア1A,1B,1Cにおける検知情報に基づいて、被検知体の検知エリア1A,1B,1C間の複数の移動方向及びその複数の移動方向の順序、すなわち、被検知体の動作を認識する動作認識回路2を備えており、所定期間、この動作認識回路2で得られた複数の移動方向及びそれらの記憶された複数の移動方向の順序に基づいて、判定回路3で判定信号を出力する。4は判定回路3に接続される負荷駆動手段であり、この負荷駆動手段4は、判定回路3から出力された判定信号に基づいて負荷5を駆動させる。
【0018】
例えば、検知エリア1Aから1Bへ、続いて、検知エリア1Bから1Aと被検知体が移動すると、検知エリア1Aから1Bへ、更に検知エリア1Bから1Aへと被検知体が移動したことをセンサ部1で検知して、その複数の移動方向及びその移動方向の順序を所定期間記憶し前記被検知体の動作を動作認識回路2で認識する。判定回路3では動作認識回路2で得た複数の移動方向とその複数の移動方向の順序の情報(ここでは、検知エリア1A→1B→1Aの動作情報)に基づいて、その検知エリア1Aから1Bへ、更に検知エリア1Bから1Aへの移動が意味する予め記憶されている情報(参照情報)と比較して判定を行う。
【0019】
このように構成したので、検知エリア1A,1B,1C内の被検知体の動作を非接触でセンサ部1で検知することができる。よって、従来の押しボタンのように特定の部位の劣化が無く、第三者にその暗証入力方法を悟られることを防ぐことができる。また、本発明における暗証入力装置は利用者の四肢のうち少なくとも1つの部位の複数の移動方向及びその順序を非接触で入力するものであるため、押しボタン式のようにその都度番号の配列を確認する必要が無く、簡便に利用することができる。また、暗証入力情報は、利用者と設置者との合意のもとに判定回路3の参照情報の変更により容易に変更が可能ある。
【0020】
図2は本発明の実施例を示す暗証入力装置のセンサ部(ドップラーセンサ)のブロック図、図3は本発明の第1実施例を示す暗証入力装置のセンサ部(ドップラーセンサ)の模式図である。
【0021】
図3において、11〜14はドップラーセンサであり、このドップラーセンサ11〜14は筐体15内に隠蔽されている。
【0022】
ドップラーセンサ11〜14は、被検知体である利用者の人体四肢のうち少なくとも1つの部位、例えば手や指が動作すると、その動作状態を周波数に換算し、動作認識回路2に出力する。すなわち、図2に示すように、ドップラーセンサ11〜14は、送信波を発生する発振器16と、その送信波が前方に放射され、動作した被検知体に衝突することで戻ってきた反射波を受信波として受信するアンテナ17と、送信波と受信波の周波数の差分を抽出する検波器18とを備えている。
【0023】
この実施例では、図3に示すように、ドップラーセンサ11〜14の発振器16からはそれぞれ前方へ向けて水平方向電波ビーム(送信波)11A〜14Aが放射されている。その電波ビーム11A〜14Aは各センサの検知エリア内での被検知体の動作により反射され、その動きによって、それぞれの電波ビーム11A〜14Aの反射状態が変化する。検波器18ではアンテナ17で受信された反射波と送信した電波ビームの周波数の差分を抽出し、それに基づいて、図1に示した動作認識回路2で被検知体の移動方向及びその移動方向の順序を検出する。
【0024】
動作認識回路2は、ドップラーセンサ11〜14のそれぞれの検波器18から出力された検知信号を増幅する増幅回路(図示なし)と、この増幅回路により増幅した検知信号により、被検知体の移動方向及びその移動方向の順序を算出するCPU(中央演算処理装置)とを備えている。
【0025】
そして、動作認識回路2から被検知体の移動方向及びその移動方向の順序の複数の情報が判定回路3に送られる。判定回路3は記憶装置(図示なし)を備えており、その記憶装置には参照情報として暗証入力の正否を判断するための被検知体の正しい動作情報が記憶されており、この予め記憶されている参照情報と、動作認識回路2からの被検知体の移動方向及びその移動方向の順序の情報が比較されて正否が判定される。
【0026】
暗証入力された情報が判定回路3で正しいと判定された場合には、負荷駆動手段4が負荷5を駆動する。ここで、負荷としては、例えば、扉の隠しスイッチや金融機関の窓口の壁に設置する非常通報装置などを挙げることができる。
【0027】
このように、被検知体の動作の検知手段として、ドップラーセンサ11〜14を用いる。そのドップラーセンサ11〜14は筐体15内に隠蔽することができるので、暗証入力装置の設置位置を第三者に悟られることがなくなり、セキュリティ性の向上を図ることができる。
【0028】
図4は本発明の第2実施例を示す暗証入力装置のセンサ部の構成図である。
【0029】
この図において、21は電波ビームの放射方向を複数の方向に切替え可能なドップラーセンサであり、このドップラーセンサ21は、第1実施例と同様に筐体22内に隠蔽されている。
【0030】
このように被検知体の動作の検知手段として、電波ビームの放射方向を複数の方向に切替え可能なドップラーセンサ21をセンサ部1として用いることにより、第1実施例に示すような複数のドップラーセンサを用いる場合と比較してドップラーセンサの数を減らすことができるので消費電力を低減できるとともに、センサ部の小型化とコストの低減を図ることができる。
【0031】
図5は本発明の第3実施例を示す暗証入力装置のセンサ部の構成図であり、図5(a)は第1の標識(表示)手段を示す図、図5(b)は第2の標識(表示)手段を示す図である。これらの図において、31は電波ビームを放射するドップラーセンサ、32はそのドップラーセンサ31を隠蔽する筐体である。
【0032】
図5(a)は、第1の標識(表示)手段を示しており、筐体32の表面にドップラーセンサ31の中心位置を示す標識(表示)部33を配置するようにしている。また、図5(b)は第2の標識(表示)手段を示しており、筐体32の表面にはドップラーセンサ31の外形線を示す標識(表示)部34を配置するようにしている。
【0033】
ドップラーセンサ31を筐体32内に隠蔽した場合、利用者もドップラーセンサ31の位置が分からなくなる場合が考えられる。その際に、詳細な使用方法を筐体32の表面に明記してしまうと、第三者に暗証入力装置の存在や、使用方法を悟られてしまう。
【0034】
そこで、図5(a)に示すように、筐体32の表面にドップラーセンサ31の中心位置を示す標識部33を設けるようにすると、利用者は、ドップラーセンサ31の存在位置と、その標識部33を中心に入力すればよいことが分かり、使い勝手が向上する。
【0035】
また、第三者にとっては、図5(a)のような標識部33があるだけでは、その表示が何を示唆しているのか認識することができないので、セキュリティ性は保たれる。
【0036】
このような標識(表示)手段としては、図5(a)に示すようなドップラーセンサ31の中心位置を示す標識部33の他に、図5(b)に示すようなドップラーセンサ31の外形線のみを示す標識部34を設けるようにしてもよい。
【0037】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の暗証入力装置は、強盗など第三者にその存在や利用方法を気づかれることのない壁などに隠蔽される非常通報装置や扉の隠しキーなどの暗証入力装置として利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施例を示す暗証入力装置の全体構成図である。
【図2】本発明の実施例を示す暗証入力装置のセンサ部(ドップラーセンサ)のブロック図である。
【図3】本発明の第1実施例を示す暗証入力装置のセンサ部(ドップラーセンサ)の模式図である。
【図4】本発明の第2実施例を示す暗証入力装置のセンサ部の構成図である。
【図5】本発明の第3実施例を示す暗証入力装置のセンサ部の構成図である。
【符号の説明】
【0040】
1 センサ部
1A,1B,1C 検知エリア
2 動作認識回路
3 判定回路
4 負荷駆動手段
5 負荷
11,12,13,14,31 ドップラーセンサ
11A,12A,13A,14A 水平方向電波ビーム
15,22,32 筐体
16 発振器
17 アンテナ
18 検波器
21 電波ビームの放射方向を複数の方向に切替え可能なドップラーセンサ 33 ドップラーセンサの中心位置を示す標識部
34 ドップラーセンサの外形線を示す標識部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)複数の検知エリアを有するセンサ部と、
(b)少なくとも2つの前記検知エリアにおける検知情報に基づいて、被検知体が前記検知エリア間を移動する複数の移動方向及び該複数の移動方向の順序を所定期間記憶し前記被検知体の動作を認識する動作認識回路と、
(c)該動作認識回路で記憶された複数の移動方向と該複数の移動方向の順序に基づいて、判定信号を出力する判定回路と、
(d)該判定回路からの判定信号に基づいて負荷を駆動させる負荷駆動手段とを備えたことを特徴とする暗証入力装置。
【請求項2】
前記センサ部は、前方に電波ビームを放射するドップラーセンサと、該ドップラーセンサを収納する筐体からなることを特徴とする請求項1記載の暗証入力装置。
【請求項3】
前記センサ部は、電波ビームの放射方向を複数の方向に切替え可能なドップラーセンサと、該ドップラーセンサを収納する筐体からなることを特徴とする請求項1記載の暗証入力装置。
【請求項4】
前記筐体表面に前記ドップラーセンサの位置を認識させ得る標識部を設けたことを特徴とする請求項2又は3の何れか一項記載の暗証入力装置。
【請求項5】
前記標識部は、前記ドップラーセンサの中心位置もしくは前記ドップラーセンサの外形線いずれか一方を示すことを特徴とする請求項4記載の暗証入力装置。
【請求項6】
前記ドップラーセンサを室内の壁や扉に隠蔽して、隠しキーや非常通報装置として用いることを特徴とする請求項1から5の何れか一項記載の暗証入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−157857(P2009−157857A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−338499(P2007−338499)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(000230722)日本開閉器工業株式会社 (79)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】