説明

曲げ不感性マルチモードファイバにおける高次モードのモード遅延の均等化

【課題】高次モードのモード遅延の差が曲げ不感性MMFについて低減されるマルチモード光ファイバを提供する。
【解決手段】本願発明によって、低い微分モード遅延と高帯域幅の保持を達成すると同時に低曲げ損失を達成する。本願発明の設計は、コアプロファイル、およびコアプロファイルに関連する半径位置に配される負の溝を有するクラッド構造の組合せを選択することに基づく。好ましい実施例の特徴は、混成屈折率プロファイルを有するコアである。混成屈折率プロファイルは、基本的に標準のアルファプロファイルとアルファプロファイルの外側エッジにおける段状のプロファイルとの組合せである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は優れた曲げ損失特性を持つように設計されたマルチモード光ファイバに関連する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバが曲げられたとき光エネルギーを漏出する傾向は、技術の揺籃期以来知られていることである。光は真っ直ぐな経路に沿って進むが、低屈折率の物質によって囲まれた高屈折率の物質の経路を与えられると、それが曲がった経路であってもある程度までそれに沿って導かれるということがよく知られている。しかし、現実にはその原理は限定されていて、光ファイバは導波路が光を保持する可能性を越える曲率でしばしば曲げられる。
【0003】
曲げられた時の伝送特性を制御することはほぼすべての実用的な光ファイバ設計における問題点である。最初の取組みであり、いまだに一般的である取組みは光ファイバの物理的な曲げを妨げる、あるいは最小にすることである。このことは長距離伝送においては頑丈なケーブル設計することにより、あるいは短距離においては光ファイバを小さなダクトに納めることにより大部分達成されているが、すべての場合において光ファイバはそれぞれの端部において終端されねばならない。したがって、もっとも好ましい条件のもとでも、曲げ、しばしば厳しい曲げが光ファイバの終端部に出現する。
【0004】
曲げ損失を制御することは光ファイバそれ自体の物理的な設計によっても対処が可能である。したがって、曲げ損失を制御するために、リング特性、あるいは溝特性、あるいはそれらの組合せが光ファイバの屈折率プロファイルの外側に一般的に見られる。例えば、参照のため、すべてここに引用される米国特許第4,691,990号明細書および同4,852,968号明細書、並びに2009年8月17日に出願された米国特許出願第12/583,212号を参照のこと。
【0005】
曲げ損失はシングルモード、およびマルチモード光ファイバの両方に生じる。マルチモード光ファイバはデータセンター、企業内LAN、SANなどのような短距離の通信において一般的に使われる。マルチモードファイバの利点は主としてこのファイバを簡単でコスト的により有利な光源と結合可能なことにある。過去においては、これらの光源は主として波長が850nm付近のLEDであった。最近は、レーザダイオードと光ファイバとの間で効果的な結合を可能にする垂直共振器を持った低価格な垂直共振器面発光レーザ(VCSEL)が市場に現れている。これらのレーザダイオードは、例えば10.3125Gbpsまでの高い変調率も達成している。高性能コンピュータ、データセンター、およびSAN用途における40G/100Gのために、IEEEp802.3baは、個々のチャンネルが10.3125Gbps、かつ/あるいは25Gbpsまでの高速、および/あるいはWDMの並行型VCSELアレイのための標準を提案している。
【0006】
曲げ条件下での光ファイバの性能問題は、通常、曲げ部分における光ファイバからの光の漏れによる一般的な光パワーの損失を含むと考えられてきている。シングルモード光ファイバにおいては、すべての漏れは光ファイバの基底モードの光を含むので、一般的なパワー損失が主たる考慮の対象である。しかし、マルチモード光ファイバにおいては、モード構造が損失に影響し、低次モードより高次モードの方が損失が大きくなる。マルチモード光ファイバにおいては高次、および低次モードの組合せが光ファイバの帯域幅、したがって信号伝送容量を決定する。
【0007】
高帯域幅のためには、マルチモードファイバのいろいろなモードの群速度を可能なかぎり等しくなるように接近するべきである。微分群速度はコアを構成する物質の屈折率を等級分けすることによって制御可能であり、それは屈折率の関数形式をファイバ半径の関数として規定することを意味する。従来のマルチモードファイバにおいては、設計の目安はα形を達成することであって、α形は以下の式で規定されている。
【数1】

ここでrはファイバの半径、rcoreはコアの半径、ncladはクラッドの屈折率、かつαおよびΔは任意のパラメータである。これがいわゆるα形プロファイルである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第4,691,990号明細書
【特許文献2】米国特許第4,852,968号明細書
【特許文献3】米国出願出願第12/583,212号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
α形プロファイル設計に固有の制約は、コアのエッジにおけるクラッドモードへの結合に起因して高次モードが適切に補償されないということである。したがって高次モードのモード遅延は低次、および中次モードからずれる。OM3、およびOM4など従来のα形MMFに対して高次モードの微分モード減衰は大きく、それが微分モード遅延、およびその結果としての帯域幅への高次モードの影響を最小にする。OM3、およびOM4は通信工業協会(TIA)のよく知られたMMF性能標準である。低曲げ損失用に設計されるMMFにおいては、同じ高次モードであっても微分モード減衰がより少ない。その結果として、帯域幅への微分モード遅延の影響は無視できない。したがって、高次モードのモード遅延を均等にする方法が高速度デジタル伝送で使われる曲げ不感性MMF(BIMMF)のために必要とされる。現時点の技術においては、光データシステムのための高速度伝送は一般に10Gbpsあるいはそれ以上であると考えられる。
【0010】
スーパーコンピュータ用途において予想される高い実装密度を支えるために、帯域幅の最適化、VCSEL結合の緩い公差、および曲げ損失の低減のための新しい設計概念が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
われわれは高次モードのモード遅延における微分が曲げ不感性MMF用に低減されているマルチモード光ファイバを設計した。その結果、低い微分モード遅延と高い帯域幅が保持されながら、低い曲げ損失が達成されている。設計は、コアプロファイル、およびコアプロファイルに関連する半径位置に配される負の溝を有するクラッド構造の組合せを選択することに基づいている。好ましい実施例の特徴は複合型の屈折率プロファイルを有するコアである。複合型の屈折率プロファイルは基本的に標準のアルファプロファイルとアルファプロファイルの外側のエッジにおける段階状プロファイルとの組合せである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】dB/mで表した代表的な溝付きBIMMF光ファイバの微分モード減衰(DMA)を示し、また溝無しのアルファプロファイルを有する標準的な光ファイバとの比較を示すプロットである。
【図2】溝付き、および溝無しの修正コアプロファイルにおけるLP(0、10)、およびLP(18、1)のE場分布をクラッドに溝のないアルファプロファイルのそれとの比較を示す。
【図3】は、溝無し(円印)のα形プロファイルのファイバ、および5μm(星印)、1.5μm(四角印)、および0μm(ダイヤモンド印)の位置に溝を有する3つのBIMMFに対するすべての導波モードのモード遅延対有効屈折率のプロットである。
【図4】図3に四角印で示されるBIMMFに対するモード遅延対有効屈折率を示す。星印はそれぞれの主モード群(PMG)に対する平均モード遅延である。
【図5】有効屈折率差(1E−6)対PMG#19の50μmMMFに対するモードを示し、いろいろな異なるファイバ構造を比較している。
【図6】1.05%のデルタ、および溝を有する50μmMMFのモード遅延を図解している。黒印はDNtr(溝の屈折率差)、および溝の位置が(−0.003/0.68μm)、(−0.005/1.05μm)、(−0.007/1.25μm)、および(−0.011/1.5μm)である設計に該当する。線はそれぞれの主モード群の平均モード遅延である。
【図7】溝のDN対高次モードのモード遅延を等しくするべく最適化された溝の半径方向の開始位置のプロットである。
【図8】従来のα形MMFの有効屈折率差と比較するために、溝付き、および溝無しの変形コアを有する二つのMMFについてPMG19のLP(18、1)の有効屈折率差をゼロとしたすべてのモードの有効屈折率差のプロットである。
【図9】ファイバのステップF1(オープンブラックダイヤモンド印)、およびステップBIMMF1(黒星印)についてすべてのモードのモード遅延を示す。線はそれぞれのPMGに対する平均のモード遅延を示す。
【図10】ファイバのステップF2(オープンブラックダイヤモンド印)、およびステップBIMMF1(黒星印)についてすべてのモードのモード遅延を示す。線はそれぞれのPMGに対する平均のモード遅延を示す。
【図11】本発明の第二の実施例によるコアエッジの変形の説明である。
【図12】式5における二つの例のすべての主モード群の平均モード遅延を示す。
【図13】高速度伝送リンク配置の図解である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1において、溝無しのα形プロファイル設計の高次モードに対する微分モード減衰(DMA)がBIMMF光ファイバのDMAと比較され、α形プロファイルの高次モードがますます減衰することを示している。従来のα形MMFについては、高次モードの微分モード減衰が大きく、それは微分モード遅延、したがって帯域幅への高次モードの影響を最小にする。低曲げ損失(溝付き設計)用に設計されたMMFにおいては、同じ高次モードの微分モード減衰がより小さい。したがって微分モード遅延、および帯域幅により影響する。微分モード遅延は溝を正しく配置すること、およびコアプロファイル、特にコアエッジの変形によって低減することが出来る。
【0014】
知見を得るために、図2に示されるようにクラッド内の溝、およびコアエッジの変形の存在による高次モードのE場への影響が検証される。コア軸のコア径が50μmでデルタが1.05%の勾配型屈折率のMMFにおいては、もっとも高い主モード群(PMG)は19である。PMG19には10個の異なる(L、P)モードがあり、それはLP(0、10)、LP(2、9)、LP(4、8)、LP(6、7)、LP(8、6)、LP(10、5)、LP(12、4)、LP(14、3)、LP(16、2)、およびLP(18、1)である。これら10個のモードの内で、LP(0、10)はクラッドの中に広がるもっとも長いエバネセントな尾を有し、それに対してLP(18、1)はクラッドとの結合がもっとも少ない。クラッドに結合しているモードはより早く移動する。コアエッジが変形されると、LP(0、10)のエバネセントな尾はコアの方向に向けて収縮する。負の屈折率を有する溝が付加されると、LP(0、10)のエバネセントな尾はさらに溝領域内に収縮し、それはクラッドへの結合がより小さくなり、モードの伝播がゆっくりになることを示す。既に)コアの内部にあるLP(18、1)のR(r)のエバネセントな尾は溝によってそれほど影響されない。
【0015】
本発明の第一の実施例において、光ファイバは4つの領域からなる:(a)シリカのクラッドに比較して正の屈折率を有するα形コア、(b)コアに隣接する環状領域、(c)環状領域に隣接する負の屈折率を有する溝、(d)溝に隣接するシリカのクラッド。4つの領域は(2)式のように表される。
【数2】

ここで、n(r)は半径位置rにおける絶対屈折率、ncladはクラッドの絶対屈折率、Δ、Δ、Δは相対屈折率、rは半径位置、rcoreはコア半径、rはrcoreより短い、あるいは等しい位置であり、かつαは好ましくは1.9から2.2の値を有する。Δ・ncladもまた溝DN、あるいはDNtrとして表される。
【0016】
負の屈折率を有する溝の内壁は高次モードのモード遅延を最適化するために正確に形成される必要があるという考え方とは逆に、正しい深さで正しい位置に配される段のある溝が高次モードのモード遅延を形作るために使われてもよい。実際に、r=rcoreであるいくつかの場合について以下に示されるように、高次モードのモード遅延を等しく出来る。
【0017】
図3は溝がない標準的なMMF、および3つのBIMMFに対するすべての導波モードのモード遅延対有効屈折率を図解している。白丸は標準的なMMFを表す。星印はコアエッジから5μm離れたところに位置するDN=−0.011の溝を有するBIMMFを表す。白ダイヤモンドはコアに接するDN=−0.011の溝を有するBIMMFを表す。白四角はコアエッジから1.5μm離れたところに位置するDN=−0.011の溝を有するBIMMFを表す。溝がコアの近くに移動するとき、低次の主モード群(より大きなneff−nclad)は明らかな変化を示さない。しかし、高次の主モード群のモード遅延は負から正に変化する。すべてのモードのモード遅延は、溝がコアエッジから1.5μm離れたところに配される時、ほぼ等しくなる。図4に示されるように、1.05%のデルタ、50μmのコア、および1.5μmに配される溝(DNtr=−0.011)からなるBIMMFのすべての主モード群の平均のモード遅延の変化量は0.1ps/m(最大0.025ps/m、最小−0.053ps/m)より小さい。異なる溝の深さに対しては最適な溝位置がある。図7に示されるように、すべての主モード群の平均的なモード遅延は、溝のDN/位置が−0.003/0.68μm、−0.005/1.05μm、−0.007/1.25μm、および−0.011/1.5μmであるBIMMFに対してほぼ等しい(0.1ps/mより小さい)。
【0018】
図5は、いろいろな溝パラメータに対する主モード群における10モードの有効屈折率差を示す。(有効屈折率差は)LP(18、1)の有効屈折率差をゼロとする。モードが図の上部に示される。PMG19の10モード(LP(18、1)からLP(0、10))の有効屈折率差が0から−131±−3(×1e−6)(白三角印、白丸印、星印、および白四角印)の範囲で単調に減少する時、平均的なモード遅延は図6に示されるようにほぼ等しくなる。負のモード遅延(早い)高次モードのMMF(例えば、溝無しMMFを表す黒丸印、およびコアから5μm離れた溝DNtr=−0.011を有するBIMMFを表す黒星印)に対しては、PMG19の10モードの有効屈折率差は最適化された曲線の上方にある。最適化された曲線(例えば、コアエッジに隣接する溝DNtr=−0.011を表す黒ダイヤモンド印)の下方にあるPMG19の10モードの有効屈折率を有するMMFに対しては、高次の主モード群は正のモード遅延を有する、あるいは低い主モード群よりもゆっくりと移動する。
【0019】
1.05%デルタ、および50μm直径のコアプロファイルを有する例と同様に、高次モードのモード遅延は異なる直径、およびデルタを有するプロファイルに対して低減することが出来る。異なるデルタ、および直径のコアを有する光ファイバのための設計情報が以下の表に与えられている。
【表1】

【0020】
表1に示されるように、コア直径が30μm、40μm、50μm、およびデルタが1.05%、および0.8%であるいろいろな設計について、溝DN、および位置が最適化された設計は、モード遅延がほぼ等しくなっている(それぞれの設計におけるすべてのモードの中で最小のモード遅延、および最大のモード遅延によって示される)。最も高い主モード群のモードの有効屈折率差は、アルファ形、かつデルタが1.05%でコア直径が40μm、および30μmのBIMMFについて126(×1e−6)および120(×1e−6)である。コアのデルタが0.8%に低減されたBIMMFに対する有効屈折率差は、コアの直径30μm、40μm、50μmのそれぞれについて96(×1e−6)と106(×1e−6)との間にある。溝対溝DNの最適化された半径の関係が図7に示されている。コア直径、およびデルタについて五つのケースが示される:(50μm、1.05%)、(40μm、1.05%)、(30μm、1.05%)、(50μm、0.9%)、(50μm、0.8%)。高次モードの最も最適化されたモード遅延についての溝DNtr、およびrtr1位置は多項式でおおよそ当てはめることが出来る。
【数3】

ここで、aは−0.010から−0.040の範囲、aは−0.002から−0.02の範囲、aは−0.0045から−0.0066の範囲であり、xは以下の表の値をとる。
【表2】

【0021】
溝の半径方向の位置、および深さをあらかじめ決めることにより、いかにして高次モードのモード遅延が等しくなるかが上に示されている。例えば、これらのモードの相対有効屈折率が、コアのデルタが1.05%である50μmMMFについて−134(×1e−6)から−126(×1e−6)の間のスパンで単調に減少するように調節されてよい。本発明の第二の実施例によって、溝のパラメータを制御することに加えて、コアプロファイル、特にエッジの微妙な変形が高次モードの等化をもたらす可能性がある。
【0022】
この別の実施例において、ファイバは4つの領域からなる:(a’)変形されたα形コア、(b’)コアに隣接する環状領域、(c’)環状領域に隣接する負の屈折率を有する溝、(d’)溝に隣接するシリカのクラッド。この実施例に対する屈折率プロファイルの式は以下のように記述できる。
【数4】

ここでn(r)は半径位置rにおける絶対屈折率、ncladはクラッドの絶対屈折率、rは半径位置;rcoreはコア半径、αは好ましくは1.9から2.2の値を有し、Jは値が0から0.002の間のステップ屈折率の補正項;mは値が0から0.00025(表3では、0.0001から0.0002)の間の線形屈折率補正項の傾斜係数であり、rは値が≧0.80rcoreである線形補正項の半径方向の開始位置である。Δ・ncladもまた溝DNあるいはDNtrとして表される。
【0023】
式4に示されるように、コアエッジを変形したコアプロファイルは基本的にアルファ屈折率コアとステップ屈折率コアとの混成である。表3は式4のように変形されたコアプロファイルを有するBIMMFの3つの例を示す。2つは比較のための溝無し設計である。ステップBIMMF F1として記されたBIMMF設計は、ステップ屈折率パラメータがJ=0.00155、リニア補正パラメータがm=0.0001である。平均的なモード遅延の最大/最小は、溝無し形について0.081/−0.909ps/mである。平均的なモード遅延の最大/最小は、コアエッジから3.5μm離れたところにあるDN=−0.011の溝あり形について0.146/−0.012ps/mである。ステップBIMMF F2として表されるBIMMF設計はステップ屈折率パラメータがJ=0.00185、リニア補正パラメータがm=0.0002である。平均的なモード遅延の最大/最小は、溝無し形について0.249/−0.265ps/m、コアエッジから6μm離れたところにDN=−0.011の溝がある形について0.277/−0.11ps/mである。ステップBIMMF F3として表されるBIMMF設計はステップ屈折率パラメータがJ=0.0013、リニア補正パラメータがm=0.0001である。平均的なモード遅延の最大/最小は、0.049/−0.206ps/mである。図8は、2つの変形された溝あり、溝無し設計の主モード群19における10モードの有効屈折率差を示す。有効屈折率差は単調に減少する。(溝無しについてステップF1、溝付きについてステップBIMMF F1として表される)例1、および(溝無しについてステップF2、溝付きについてステップBIMMF F2として表される)例2についてLP(18、1)、およびLP(0、10)の有効屈折率の間の差は−123(×1e−6)、−133(×1e−6)、−145(×1e−6)、−136(×1e−6)である。以下の表は図8−10の光ファイバ設計に対するパラメータを与える。
【表3】

【0024】
図9は光ファイバステップF1、およびステップBIMMF F1のモード遅延を示す。図10は光ファイバステップF2、およびステップBIMMF F2のモード遅延を示す。前記の例における溝の位置はコアエッジから3.5μm(ステップBIMMF1)、および6μm(ステップBIMMF2)離れたところにある。このことは、コアエッジの特徴の変形は急速に溝を半径方向の外方に動かし、一方、高次モード群についてモード遅延の広がりを小さく維持することを可能にする。溝の深さ対その半径位置の関係は表2と同じような関係にあり、かつxを除いて式(4)は大きくなる。
【0025】
図11の屈折率プロファイルは本発明によるコアプロファイルの変形の模式図であって、プロファイルの点線の曲線部はほぼアルファプロファイルを示し、コアプロファイルのエッジ、rの位置における垂直の段がステップを表す。rnomに続く点線はアルファプロファイルコアのこの領域での名目上の屈折率プロファイルである。本発明のこの実施例の良さを実現するために薦めることのひとつは、コアエッジの変形を形成するステップは、コア中心部の最大の屈折率高さが0.05から0.155(表3で0.1から0.155)であり、位置rはrnomが0.92から0.98の間であるべきということである。
【0026】
高次モードのモード遅延は、以下の式に示されるように、コア領域を低い位置に下げることによりすべてのモード、あるいは二つの最も高い次数の主モード群のいくつかのモードの漏洩損失を増加させることによってさらに最適化できる。
【数5】

ここで、ここでn(r)は半径位置rにおける絶対屈折率、ncladはクラッドの絶対屈折率、rは半径位置、rはコアのエッジ、rcoreは名目上のα形プロファイルの半径であって、αは好ましくは値が1.9から2.2であり、DNは押しつぶされた肩部の屈折率、DNtrは溝の屈折率、rtr1は溝の内側半径であり、rtr2は溝の外側半径である。rはμm単位でrcore−0.5からrcore−2.0(あるいは0.92から0.98rcore)である。DNはクラッドの屈折率より低く、好ましくは0から−0.002の範囲である。rtr1はrcore+2μmより大きく、rtr2はrtr1+2μmより大きい。
【0027】
tr1が十分に大きいとき、モード遅延の構造は主としてコアパラメータのアルファ、DNcore、r、およびrcoreによって決定され、導かれるPMGの数はDN1によって仲介される。例として、図12は式5の2つの設計の平均モード遅延を示す。2つの設計はDNcore=0.01407、rcore=27μm、=26μm、DNtr=−0.006、rtr1=34μm、rtr2=38μmである。第一の設計例はDN=0、第二の設計例はDN=−0.00098である。第二の設計は基本的にコア、およびDNだけ低い方にずれた第一のクラッド屈折率を有する第一の設計である。1から18までのPMGのモード遅延はDN=0、かつDN=−0.00098である設計に対して同じであり、それはモード遅延構造はコア、および肩部の設計の特長によって決定されるということを明らかに示している。PMG#19、およびPMG#20はDN=0である設計の最適条件からずれたモード遅延を有する2つの高次主モード群である。PMG#20はもはやDN=−0.00098によって導かれない。低い方位角のモード数のモードもまた漏れやすいモードとなる。高い方位角のモード数である半数のモードだけが導かれ、それはPMG#19の平均モード遅延を変化させる。結果として第二の設計により導かれたモードの平均モード遅延の広がりは大きく低減され、最大−最小<0.1ps/mである。表4はシミュレートされたDMD(微分モード遅延)、主たるモード遅延、平均モード遅延、および表1、表3、および図12のDN=−0.00098のいくつかのBIMMFの例に対する3dB有効モード帯域幅を示す。
【表4】

【0028】
図13は先に述べられた光ファイバ設計を用いる伝送リンクの模式図である。ビットエラー率(BER)の急増曲線が、曲げ無し、および直径5mm、10mm、および15mmの小さな曲げで10回ループにした550mのファイバを例として市場で入手可能な10Gbps−SRトランシーバを用いて測定される。10Gbps−SRトランシーバは850nmVCSELで作られる10.3125Gbpsトランスミッタで構成される。分散のパワーのペナルティー(連続リンクと、BER=1E−12のテストリンク下にあるファイバとの間の応力をかけた受信機の感度の差として定義される)はすべてのケースについて2dBより少ない。伝送リンクの10回のループ曲げに対する曲げ損失は、曲げ直径5mm、10mm、および15mmのそれぞれについて0.26dB、0.01dB、および0.01dBである。エラーフリー(BER<1E−12として定義される)伝送も商用の10Gbps−SRトランシーバでサンプルファイバ771mにわたって達成される。10.3125GbpsVCSELに結合されるDN=−0.011、および厚さ(or 深さ)10μmの溝を有する他のサンプルファイバの曲げ損失は、曲げ直径5mmの10回ループについてわずか0.068dBである。
【0029】
外側クラッド領域の屈折率、つまりシリカの屈折率よりも大きな有効屈折率を持つすべての導波モードについて等しいモード遅延という目的は、現実には正確には実現できないかもしれないが、いずれの実際的な光ファイバ設計においても、モード遅延を等しくするというゴールは明らかであって、その特性はそのように解釈されるべきである。
【0030】
詳細な記述の締めくくりとして、本発明の本質から実質的に離れることなく多くの変形、および修正が好ましい実施例になされてもよいことが当業者には明らかであろうということが注目されるべきである。以下の請求の範囲に説明されるように、そのようなすべての変形、修正、および同等のことは本発明の範囲内に含まれるべく意図されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチモード光ファイバであって、断面で、
a.予め定められた屈折率を有する材料によるコアと、
b.前記コアを取り囲みかつ前記コアに接触する第1のクラッドとを備え、前記第1のクラッドは前記コアの屈折率よりも低い屈折率を有し、さらに、
c.前記第1のクラッドを取り囲む第2のクラッドを備え、前記第2のクラッドは前記第1のクラッドの屈折率よりも低い屈折率を有し、さらに、
d.前記第2のクラッドを取り囲む第3のクラッドを備え、前記第3のクラッドはシリカの屈折率にほぼ等しい屈折率を有し、
前記光ファイバが、
前記クラッドdの屈折率よりも高い有効屈折率ですべての導波モードに対してほぼ等しいモード遅延と、
850nmにおいて10Gbpsあるいはより高いビット率のVCSELと結合されたときには、≦10mmの曲げ直径で曲げ損失が0.1dB/ループより小さく、かつ≦5mmの曲げ直径で曲げ損失が0.3dB/ループより小さく、
前記光ファイバの屈折率プロファイルが
【数1】

ここで、n(r)は半径位置rにおける絶対屈折率であり、ncladはクラッドの絶対屈折率であり、rは半径位置であり、Δ、Δ、Δは相対屈折率差であり、かつrcoreはコア半径であり、かつαは好ましくは1.9から2.2の値を有する、マルチモード光ファイバ。
【請求項2】
前記コアが基本的にアルファ プロファイルである内側領域の屈折率とステッププロファイルである外側領域とを有する、請求項1に記載のマルチモード光ファイバ。
【請求項3】
前記第1のクラッドが半径方向の幅wを有し、前記第1のクラッドの幅と、前記第2のクラッドの屈折率とを組み合わせて、高次導波された主モード群のモード遅延が増加し、かつ中次および低次導波された主モード群のモード遅延と均等化される、請求項2に記載のマルチモード光ファイバ。
【請求項4】
マルチモード光ファイバであって、前記光ファイバは、
a.エッジが変形されている変形されたα形コアと、
b.前記コアに隣接する環状のシリカ領域と、
c.前記環状の領域に隣接する負の屈折率を有する溝と、
d.前記溝に隣接するシリカクラッド、の4つの領域からなり、
前記4つの領域の屈折率プロファイルが
【数2】

で表され、ここで、n(r)は半径位置rにおける絶対屈折率であり、ncladはクラッドの絶対屈折率であり、rは半径位置であり、Δ、Δ、Δは相対屈折率差であり、かつrcoreはコア半径であり、かつα、Jおよびmはコア形状であり、そして、
前記マルチモード光ファイバが、前記領域dの屈折率よりも大きな有効屈折率ですべての導波モードについてほぼ等しいモード遅延を有する、マルチモード光ファイバ。
【請求項5】
850nmにおいて10Gbpsあるいはより高いビット率のVCSELと結合されたときには、≦10mmの曲げ直径で曲げ損失が0.01dB/ループより小さく、かつ≦5mmの曲げ直径で曲げ損失が0.3dB/ループより小さい、請求項4に記載のマルチモード光ファイバ。
【請求項6】
0<J<0.0025である、請求項4に記載のマルチモード光ファイバ。
【請求項7】
0≧Δ≧−0.02%であり、かつ、1%≧Δ≧0.8%である、請求項4に記載のマルチモード光ファイバ。
【請求項8】
Δ・nclad=a(rtr1−rcore−x+a(rtr1−rcore−x)+a
であり、ここでaは−0.010から−0.040の範囲であり、aは−0.002から−0.02の範囲であり、aは−0.0045から−0.0066の範囲である、請求項4に記載のマルチモード光ファイバ。
【請求項9】
−0.004≧Δ・nclad≧−0.011である
ことを特徴とする請求項4に記載のマルチモード光ファイバ。
【請求項10】
0≦m≦0.0002であり、かつ、rcore−4≦r≦rcore−1である、請求項4に記載のマルチモード光ファイバ。
【請求項11】
マルチモード光ファイバであって、断面で、
a.予め定められた屈折率を有する材料によるコアと、
b.前記コアを取り囲みかつ前記コアに接触する第1のクラッドとを備え、前記第1のクラッドは前記コアの屈折率よりも低い屈折率を有し、さらに、
c.前記第1のクラッドを取り囲む第2のクラッドを備え、前記第2のクラッドは前記第1のクラッドの屈折率よりも低い屈折率を有し、さらに、
d.前記第2のクラッドを取り囲む第3のクラッドを備え、前記第3のクラッドはシリカの屈折率にほぼ同じ屈折率を有し、
前記コアが、名目上rnomまで広がるアルファ屈折率プロファイルを有する第一の部分、及び位置rにおけるコアプロファイルのエッジにステップ屈折率プロファイルを有する第2の部分を有し、前記コアの前記第1の部分が最大屈折率nmaxを有し、かつ前記コアの前記第2の部分は、0.05nから0.155nの範囲に最大屈折率を有し、そして、rnomの0.92から0.98の間の位置rを有する、マルチモード光ファイバ。
【請求項12】
a)高速度レーザ送信機と、
b)高速度光受信機と、
c)前記送信機と前記受信機との間に結合された請求項5に記載のマルチモード光ファイバとを備える、システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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