説明

曲げ加工装置及び曲げ部材の製造方法

【課題】装置全体の設置スペースの小型化及び設備コストの抑制と、動作速度の抑制とを図ることができ、これにより、寸法精度が優れた曲げ部材を高い生産性でかつ低コストで製造できる曲げ加工装置及び曲げ部材の製造方法を提供する。
【解決手段】(i)鋼管25の一端側を固定するクランプ22と、(ii)鋼管25を加熱し、加熱された部分を冷却する加熱冷却ユニット23と、(iii)少なくとも6自由度を有し、鋼管25の他端部を保持しながら並進3自由度及び回転3自由度の荷重を与えることにより、鋼管25における高温部分に曲げモーメントを与える第1マニピュレータ24と、(iv)加熱冷却ユニット23を保持し、第1マニピュレータ24が曲げモーメントを与える際に、加熱冷却ユニット23の位置を鋼管25の多端側から一端側に接近する位置へ変更する第2マニピュレータ29とを有する曲げ加工装置20である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、曲げ加工装置及び曲げ部材の製造方法に関し、具体的には、閉断面を有する長尺の金属製の素材に曲げ加工を行って曲げ部材を製造する方法と、そのための曲げ加工装置とに関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、自動車や各種機械等に用いられる、屈曲した形状を有する金属製の強度部材、補強部材又は構造部材には、高強度、軽量かつ小型であること等が求められる。従来より、この種の曲げ部材は、例えば、プレス加工品の溶接、厚板の打ち抜き、さらには鍛造等により製造されてきた。しかし、これらの製造方法により製造される曲げ部材の軽量化及び小型化には限界があり、その実現は容易なことではない。
【0003】
近年では、例えば非特許文献1に開示されるように、いわゆるチューブハイドロフォーミングによりこの種の曲げ部材を製造することも積極的に検討されている。非特許文献1の28頁にも記載されているように、チューブハイドロフォーミング工法は、素材となる材料の開発や成形可能な形状の自由度の拡大等といった様々な課題があり、今後よりいっそうの開発が必要である。
【0004】
一方、これまでにも金属管に曲げ加工を行って、所望の形状を有する曲げ部材を製造するための発明が多数提案されている。
特許文献1には、金属管等を熱処理しながら曲げ加工する発明が開示され、特許文献2には、湾曲した異形断面らせん条材を製造する発明が開示され、特許文献3には、押し曲げ方式の高周波加熱ベンダーに係る発明が開示され、特許文献4には、金属部材の曲げ加工装置に係る発明が開示されている。
【0005】
本出願人も、先に、特許文献5により、金属材の曲げ加工方法及び曲げ加工装置に係る発明を開示した。図4は、この曲げ加工装置0の概略を示す説明図である。
【0006】
図4に示すように、この発明は、基本的に、支持手段2及びチャック機構7によりその軸方向へ移動自在に支持された鋼管1を上流側から下流側へ向けて、例えばボールネジを用いた送り装置3により送りながら、支持手段2の下流で曲げ加工を行う曲げ加工方法を用いて曲げ部材8を製造するものである。すなわち、支持手段2の下流で高周波加熱コイル5により鋼管1を部分的に焼入れが可能な温度域に急速に加熱するとともに高周波加熱コイル5の下流に配置される水冷装置6により鋼管1を急冷する。そして、鋼管1を送りながら支持可能であるロール対4aを少なくとも一組有する可動ローラーダイス4の位置を二次元又は三次元で変更して鋼管1の高温部分に曲げモーメントを付して曲げ加工を行う。このため、この発明によれば、十分な曲げ加工精度を確保しながら高い作業能率で曲げ部材を製造することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭50−59263号公報
【特許文献2】特許第2816000号明細書
【特許文献3】特開2000−158048号公報
【特許文献4】特許第3195083号明細書
【特許文献5】特開2007−83304号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】自動車技術 Vol.57,No.6,2003 23〜28頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図5(a)〜図5(d)は、本出願人が特許文献5により開示された発明をさらに改良すべく、特願2008−276494号により提案した発明により曲げ部材13を製造する状況を経時的に示す説明図である。
【0010】
図5(a)〜図5(d)に示すように、送り装置10により素材である金属材9をその軸方向へ送りながら、加熱および冷却装置11により急速に加熱および冷却し、例えば多関節型の産業用ロボット14により把持手段12を支持し、この把持手段12の位置を、破線矢印で示すように、二次元または三次元の方向へ変更して金属材9における加熱された高温部分に曲げモーメントを与えることによって、曲げ部材13を製造する。
【0011】
しかし、特願2008−276494号により提案した発明では、把持手段12を広い範囲で移動させる必要があり、把持手段12を支持する産業用ロボット14には、リーチが長いロボットを用いざるを得なくなり、設備全体を大型化せざるを得ない。
【0012】
すなわち、特願2008−276494号により提案した発明のみならず、特許文献1〜5により開示されたいずれの発明も、素材である金属材の送り方向は、すべて金属材の軸方向であって曲げ加工の間は変更されない。このため、曲げ加工を行うための装置の設置スペースが嵩んで装置全体が大型化し、省スペース化の要請に反するという問題がある。
【0013】
また、特願2008−276494号により提案した発明では、把持手段12を支持する産業用ロボット14を高速から低速までの広い速度域で動作させることとなるので動作速度の変化が大きくなり、動作時に振動が発生し易くなり、曲げ部材13の寸法精度が低下する。振動を抑制するためには、動作速度を低く設定すればよいが、これでは、生産速度すなわち生産性が低下してしまう。
さらに、この発明では、素材である金属材9の供給装置の設置スペースも嵩んでしまう。
【0014】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、装置全体の設置スペースの小型化を図りながら、特に特願2008−276494号により提案した発明においては、把持手段の動作範囲を可及的抑制することによって装置のコンパクト化及び設備コストの抑制と、把持手段の動作速度を可及的抑制することによる動作速度の変化及び動作時の振動の抑制とを図ることができ、これにより、寸法精度が優れた曲げ部材を高い生産性でかつ低コストで製造することができる曲げ加工装置及び曲げ部材の製造方法を提供することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、閉じた断面を有する中空の金属材の一端側を固定するクランプと、金属材を加熱する加熱手段と、加熱手段により加熱された部分を冷却する冷却手段とを有する加熱冷却ユニットと、金属材の他端側を保持し、金属材における加熱手段により加熱された高温部分に曲げモーメントを与える第1マニピュレータとを有することを特徴とする曲げ加工装置である。
【0016】
別の観点からは、本発明は、閉じた断面を有する中空の金属材の一端側をクランプによって固定し、金属材を加熱手段により加熱し、金属材の他端側を保持し、金属材における加熱手段により加熱された高温部分に第1マニピュレータにより曲げモーメントを与え、加熱手段により加熱された部分を冷却手段により冷却することを特徴とする曲げ部材の製造方法である。
【0017】
これらの本発明では、第1マニピュレータは少なくとも6自由度を有し、金属材の他端部に並進3自由度及び回転3自由度の荷重を与えることが好ましい。
また、加熱冷却ユニットを保持し、第1マニピュレータが金属材に曲げモーメントを与える際に、加熱冷却ユニットを金属材の所定の部位に移動させる第2マニピュレータを有していることが好ましい。
また、これらの本発明では、第2マニピュレータは、加熱手段及び冷却手段の配置位置を、鋼管の多端側から一端側に接近する位置へ変更することが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、曲げ部材の製造にかかる装置全体の設置スペースの小型化を図りながら、特に特願2008−276494号により提案した発明に比較して、送り装置を設ける必要がないため、把持手段の動作範囲を可及的抑制することによって装置のコンパクト化及び設備コストの抑制と、把持手段の動作速度を可及的抑制することによる動作速度の変化及び動作時の振動の抑制とを図ることができる。
【0019】
これにより、寸法精度が優れた曲げ部材を高い生産性でかつ、設備コストの上昇を可及的に抑制して、製造することができるようになる。
このため、本発明によれば、例えば自動車用の、屈曲した形状を有する金属製の強度部材、補強部材又は構造部材を、優れた寸法精度で、かつ低コストで供給できることとなり、本発明の実用上の意義は極めて著しい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係る曲げ加工装置の全体構成を模式的に示す説明図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る曲げ加工装置の全体構成を模式的に示す説明図である。
【図3】図3(a)〜図3(d)は、いずれも本発明の一実施形態に係る曲げ加工装置により曲げ部材を製造する状況を、経時的に示す説明図である。
【図4】特許文献5により開示された曲げ加工装置の概略を示す説明図である。
【図5】図5(a)〜図5(d)は、特願2008−276494号により提案した発明により曲げ部材を製造する状況を経時的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以降の説明では本発明における「閉じた断面を有する中空の金属材」が鋼管である場合を例にとるが、本発明の適用対象が鋼管に限定されるものではなく、閉じた断面を有する中空の金属材であれば鋼管以外でも等しく適用される。
【0022】
[全体構成]
図1、2は、いずれも、本発明の一実施形態に係る曲げ加工装置20の全体構成を模式的に示す説明図である。
図1に示すように、曲げ加工装置20は、クランプ22と、加熱冷却ユニット23と、第1マニピュレータ24と、第2マニピュレータ29とを備えている。
【0023】
[クランプ22]
クランプ22は、フロアから立設された基台に取り付けられたチャッキング装置を有しており、鋼管25の一端側が保持され固定されるように構成されている。即ち、クランプ22は、保持された鋼管25に与えられた負荷(モーメント負荷も含む)に対して、十分な反力を与えるようになっている。
【0024】
クランプ22は、後述する第1マニピュレータ24とともに、鋼管25の両端側を保持して、鋼管25に曲げモーメントを与えて、加熱冷却ユニット23により加熱された部分を曲げ変形させて鋼管25を予め設定された形状に曲げ加工するためのものである。
【0025】
[第1マニピュレータ24]
第1マニピュレータ24は、7軸の垂直多関節型ロボットであり、フロアに固定された基台30と、基台30から先端にかけて順々に第1構造材31,第2構造材32,第3構造材33,第4構造材34,第5構造材35,第6構造材36,フランジ37が第1〜7のアクチュエータ(ここでは、サーボモータを有して構成される)により形成される回転関節(第1〜7関節)を介して連結されている。
【0026】
より詳細に説明すると、基台30とアーム構造材31とは、第1アクチュエータ(図示省略)を介して連結されており、第1アクチュエータの駆動により、アーム構造材31が回転するようになっている。アーム構造材31とアーム構造材32とは、第2アクチュエータ(図示省略)を介して連結されており、第2アクチュエータの駆動により、アーム構造材32が旋回するようになっている。
【0027】
アーム構造材32とアーム構造材33とは、第3アクチュエータ(図示省略)を介して連結されており、第3アクチュエータの駆動により、アーム構造材33が回転するようになっている。アーム構造材33とアーム構造材34とは、第4アクチュエータ(図示省略)を介して連結されており、第4アクチュエータの駆動により、アーム構造材34が旋回するようになっている。
【0028】
アーム構造材34とアーム構造材35とは、第5アクチュエータ(図示省略)を介して連結されており、第5アクチュエータの駆動により、アーム構造材35が回転するようになっている。アーム構造材35とアーム構造材36とは、第6アクチュエータ(図示省略)を介して連結されており、第6アクチュエータの駆動により、アーム構造材36が旋回するようになっている。
【0029】
アーム構造材36とフランジ37とは、第7アクチュエータ(図示省略)を介して連結されており、第7アクチュエータの駆動により、フランジ37が回転するようになっている。
【0030】
第1マニピュレータ24には、先端のフランジ37に鋼管25の他端側(一端側の反対側)を保持するエンドエフェクタ24Aが取り付けられており、第1マニピュレータ24が動作することにより鋼管25の他端側に3次元的に曲げモーメントを与えられるようになっている。
【0031】
なお、上述のように第1マニピュレータ24は7個のアクチュエータにより7つの自由度を有しているので、エンドエフェクタ24Aを並進3軸(X,Y,Z)及び回転3軸(θX,θY,θZ)の6自由度で動作させることができる。また、上述の6自由度に加えてさらに1自由度を有しているのでエンドエフェクタ24Aを6自由度で移動させながらも第1マニピュレータ24の各アーム構造材31〜36の姿勢を適宜変更させることができるので、各アーム構造材31〜36をコンパクトに折り畳んで、曲げ加工が施される鋼管25や加熱冷却ユニット23等の周囲の物体との干渉を避ける姿勢をとることができる。
【0032】
[加熱冷却ユニット23]
加熱冷却ユニット23は、鋼管25の送り方向(鋼管25が加熱冷却ユニット23に対して相対的に送られる方向であり、鋼管25の一端側から多端側に向かう方向である)について第1の位置Aよりも下流の第2の位置Bに配置されて、鋼管25の一部又は全部を加熱する加熱手段と、鋼管25の送り方向について第2の位置Bよりも下流の第3の位置Cに配置されて、鋼管25における加熱手段により加熱された部分を冷却する冷却手段とにより構成されるものである。
【0033】
また、加熱冷却ユニット23の一端側(上流側)近傍には、支持機構26が第2マニピュレータ29によって支持されている。支持機構26は、図4における支持手段2と同様に、回転可能に配置された2組の支持ローラにより構成されており、鋼管25を支持して鋼管25の自重等に起因する撓みを低減するようになっている。また、支持機構26は、鋼管25に与えられた負荷(モーメント負荷も含む)に対して、十分な反力を与えるようになっている。
【0034】
なお、今回の説明は、支持機構26が回転可能な2組の支持ローラにより構成される場合を例にとったが、被加工材を支持する機構を有すればよく、被加工材の寸法に合わせた孔型を油圧やエアーにより両側あるいは複数の方向により押し付ける方式のものとしても良い。
【0035】
なお、説明を簡略化するため、この説明では、加熱冷却ユニット23として一体に示すが、加熱手段及び冷却手段は独立した装置であることはいうまでもない。
加熱手段は、送られる鋼管25の一部又は全部を加熱するためのものであり、本発明では、加熱手段として、鋼管25の周囲に離れて配置される加熱コイルを有する誘導加熱装置(例えば高周波加熱装置)を用いる。この種の加熱コイルは、当業者にとっては周知慣用であるので、加熱コイルに関するこれ以上の説明は省略する。
【0036】
また、冷却手段は、鋼管25における加熱手段より加熱された部分を冷却するためのものである。本発明では、冷却手段として、鋼管25の外面に離れて配置される冷却水噴射ノズルを有する水冷装置を用いる。このような冷却水噴射ノズルは、当業者にとっては周知慣用であるので、水冷装置に関するこれ以上の説明は省略する。
【0037】
また、加熱冷却ユニット23は、その配置位置を、クランプ22の位置に接近する位置へ変更しながら、曲げ部材21を製造すること、換言すれば、加熱冷却ユニット23は、その配置位置を、クランプ22に接近する位置へ変更する機能を有する。このため、本発明に係る曲げ加工装置20は、省スペース化が図られている。製品の形状にもよるが、例えば、加熱冷却ユニット23を軸方向へ移動することにより、従来の送り装置のスペースが不要になるため、設置スペースを約1/2〜2/3に抑制することができる。
【0038】
[第2マニピュレータ29]
図1及び図2に示すように、第2マニピュレータ29は、6軸の垂直多関節型ロボットであり、フロアに固定された基台40と、基台40から先端にかけて順々に第1構造材41,第2構造材42,第3構造材43,第4構造材44,第5構造材(図示省略),フランジ(図示省略)が第1〜6のアクチュエータにより形成される回転関節(第1〜6関節)を介して連結されている。
【0039】
また、第2マニピュレータ29のフランジには加熱冷却ユニット23を保持するためのエンドエフェクタ(図示省略)が取り付けられている。これにより、加熱冷却ユニット23は第2マニピュレータ29に支持されるとともに、第2マニピュレータ29の各アクチュエータの駆動により加熱冷却ユニット23を並進3軸(X,Y,Z)及び回転3軸(θX,θY,θZ)の6自由度で動作できるようになっている。
【0040】
[作用説明]
本発明に係る曲げ加工装置20は、以上のように構成される。次に、この曲げ加工装置20により、曲げ部材21を製造する状況を説明する。
【0041】
図3(a)〜図3(d)は、いずれも、曲げ加工装置20により曲げ部材21を製造する状況を、経時的に示す説明図である。
まず、図3(a)に示すように、第1マニピュレータ24が図示省略のストッカにある鋼管25の他端側を保持して鋼管25を取り出し、鋼管25の一端側をクランプ22に保持させる。そして、第2マニピュレータ29が動作し、加熱冷却ユニット23を鋼管25の他端側の開始位置に位置決めする。
【0042】
なお、加熱冷却ユニット23の加熱コイルは、加熱対象が円形断面の鋼管25であるので、環状の外形を有する。このため、(i)鋼管25の一端側をクランプに保持させる前に第2マニピュレータ29を動作させて加熱コイルに鋼管25を通すか、あるいは、(ii)鋼管25の一端側をクランプに保持させた後に一旦第1マニピュレータ24を鋼管25から離して第2マニピュレータ29を動作させて加熱コイルに鋼管25を通すことが必要である。
【0043】
そして、第2マニピュレータ29は加熱冷却ユニット23をクランプ22側に移動させる。これと同時に加熱冷却ユニット23により鋼管25を部分的に急速に加熱及び冷却する。
【0044】
この際、図3(b)中に破線矢印で示すように、第1マニピュレータ24を動作させて鋼管25の他端側に予め教示された方向に負荷をかけて鋼管25に曲げモーメントを与えることにより、加熱冷却ユニット23により加熱された箇所が曲げ変形され、その後加熱冷却ユニット23の移動により曲げ変形された箇所が急速に冷却される。
【0045】
さらに、第2マニピュレータ29の動作により、加熱冷却ユニット23の配置角度を、鋼管25の主軸方向の変更に応じて、変更することにより、図3(b)に示すように、鋼管25に一回目の曲げ加工を行う。
【0046】
これによれば、加熱冷却ユニット23が鋼管25の他端側から一端側(クランプ22側)にかけて移動しながら鋼管25を加熱し、鋼管25の加熱箇所に応じて第1マニピュレータ24により鋼管25に曲げモーメントが与えられることで鋼管25を自由な方向に曲げ加工することができる。また、鋼管25の角度(主軸方向)の変更に応じて加熱冷却ユニット23の配置角度も変更されるので、第1マニピュレータ24の動作範囲を可及的抑制しながらも所望の曲げ加工を施すことができる。
【0047】
次に、図3(b)に示すように、加熱冷却ユニット23の配置位置を、クランプ22の位置に接近する位置へ変更し、さらに、図3(c)及び図3(d)に示すように加熱位置を二次元又は三次元で変更するとともに第1マニピュレータ24の位置を二次元又は三次元で変更することによって、鋼管25に二回目の曲げ加工を行う。
【0048】
これによれば、加熱冷却ユニット23の配置位置を、クランプ22側に接近する位置へ変更しながら二回目の曲げ加工を行うので第1マニピュレータ24の動作範囲を可及的抑制することができる。
【0049】
このため、本発明に係る曲げ加工装置20によれば、装置のコンパクト化及び設備コストの抑制と、第1マニピュレータ24及び第2マニピュレータ29の動作態様を精度良くすることにより、動作時の振動の抑制とを図ることができ、これにより、寸法精度が優れた曲げ部材21を高い生産性でかつ低コストで製造することができるようになる。
【0050】
このようにして、本発明によれば、曲げ加工装置20の全体の設置スペースの小型化を図りながら、特に特願2008−276494号により提案した発明における把持手段24の動作範囲を可及的抑制することによって装置のコンパクト化及び設備コストの抑制と、把持手段24の動作速度を可及的抑制することによる動作速度の変化及び動作時の振動の抑制とを図ることができ、これにより、寸法精度が優れた曲げ部材21を高い生産性でかつ、設備コストの上昇を可及的に抑制して、製造することができるようになる。
【0051】
このため、本発明によれば、例えば自動車用の、屈曲した形状を有する金属製の強度部材、補強部材又は構造部材を、優れた寸法精度で、かつ低コストで供給できる。
【符号の説明】
【0052】
0 曲げ加工装置
1 鋼管
2 支持手段
3 送り装置
4 可動ローラーダイス
4a ロール対
5 高周波加熱コイル
6 水冷装置
8 曲げ部材
9 金属材
10 送り装置
11 加熱及び冷却装置
12 把持手段
13 曲げ部材
14 産業用ロボット
20 曲げ加工装置
21 曲げ部材
22 クランプ
23 加熱冷却ユニット(加熱手段,冷却手段)
24 第1マニピュレータ
25 鋼管
26 支持機構
29 第2マニピュレータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
閉じた断面を有する中空の金属材の一端側を固定するクランプと、
前記金属材を加熱する加熱手段と、前記加熱手段により加熱された部分を冷却する冷却手段とを有する加熱冷却ユニットと、
前記金属材の他端側を保持し、前記金属材における前記加熱手段により加熱された高温部分に曲げモーメントを与える第1マニピュレータと
を有することを特徴とする曲げ加工装置。
【請求項2】
前記第1マニピュレータは少なくとも6自由度を有し、前記金属材の前記他端部に並進3自由度及び回転3自由度の荷重を与えることを特徴とする請求項1記載の曲げ加工装置。
【請求項3】
前記加熱冷却ユニットを保持し、前記第1マニピュレータが前記曲げモーメントを与える際に、前記加熱冷却ユニットを前記金属材の所定の部位に移動させる第2マニピュレータを有する
ことを特徴とする請求項1又は2記載の曲げ加工装置。
【請求項4】
前記第2マニピュレータは、
前記加熱手段及び前記冷却手段の配置位置を、前記多端側から前記一端側に接近する位置へ変更する
ことを特徴とする請求項3記載の曲げ加工装置。
【請求項5】
閉じた断面を有する中空の金属材の一端側をクランプによって固定し、
前記金属材を加熱手段により加熱し、
前記金属材の他端側を保持し、前記金属材における前記加熱手段により加熱された高温部分に第1マニピュレータにより曲げモーメントを与え、
前記加熱手段により加熱された部分を冷却手段により冷却する
ことを特徴とする曲げ部材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−224606(P2011−224606A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−95931(P2010−95931)
【出願日】平成22年4月19日(2010.4.19)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【出願人】(000002118)住友金属工業株式会社 (2,544)
【出願人】(000229612)住友鋼管株式会社 (26)
【Fターム(参考)】