曲線管推進装置
【課題】 導坑の断面積の大径化ないしは曲線管の短尺化の回避
【解決手段】 推進装置10は、固定架台30と、推進架台32と、推進移動機構34とを備えている。架台30は、先進導抗12内に固定設置される。架台32は、先進導坑12内の横断面方向に沿って移動可能に固定架台30に支持され、側方の一端が開口されて、当該開口から曲線管14の収納を許容するとともに、上下面に曲線管14と同じ曲率で湾曲する上および下湾曲枠32a,32bを備えている。架台32は、複数のガイドローラ42上に、搭載支持されている。上,下湾曲枠32a,32bには、把持ピンジッャキ32dが設けられている。ピンジャッキ32dは、曲線管14を把持固定するとともに、推進移動機構34の推進力を曲線管14に伝達するために用いられる。推進移動機構34は、ラック34aと、このラック34aと歯合する複数のピニオン34bと、各ピニオン34bの回転駆動部34cとで構成されている。
【解決手段】 推進装置10は、固定架台30と、推進架台32と、推進移動機構34とを備えている。架台30は、先進導抗12内に固定設置される。架台32は、先進導坑12内の横断面方向に沿って移動可能に固定架台30に支持され、側方の一端が開口されて、当該開口から曲線管14の収納を許容するとともに、上下面に曲線管14と同じ曲率で湾曲する上および下湾曲枠32a,32bを備えている。架台32は、複数のガイドローラ42上に、搭載支持されている。上,下湾曲枠32a,32bには、把持ピンジッャキ32dが設けられている。ピンジャッキ32dは、曲線管14を把持固定するとともに、推進移動機構34の推進力を曲線管14に伝達するために用いられる。推進移動機構34は、ラック34aと、このラック34aと歯合する複数のピニオン34bと、各ピニオン34bの回転駆動部34cとで構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、曲線管推進装置に関し、特に、トンネルの内部から曲線管を周回状などに推進させる推進装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、都市部などの未固結地山や高含水土砂地山において、非開削トンネルを構築する場合、本坑掘削時に周辺地下水の水位低下や、地表面の沈下などを制御する方法として、トンネル切羽前方を薬液などで固化させる注入工法、地山内の地下水を凍結させる凍結工法が知られている。
【0003】
ところが、このような工法には、注入の確実性や、凍結までに時間がかかるという問題があった。また、補助工法として、切羽からの注入工法や、先受け工法を行う場合、本坑掘削と交互作業になり、施工速度が著しく低下する。
【0004】
そこで、例えば、特許文献1〜4には、先進導坑を掘削した後に、導坑内から上半部分に、本坑の輪郭に沿って曲線管を設置して、注入材などを注入することにより地山の保持部を設けた後に、本坑トンネルを掘削構築する工法が開発,提案されている。
【0005】
これらの公報に開示されている工法では、曲線管の推進設置が行われ、例えば、特許文献5には、その推進装置の一例が提案されている。この特許文献5に開示されている推進装置は、トンネル内の底部に設置される架台上に固定されるものであって、曲線状のガイド部を備えた支持枠と、ガイド部に沿って移動する曲線管の保持用パイプホルダと、パイプホルダをトンネルの径方向に移動させる推進シリンダとを有している。
【0006】
このような推進装置では、先端側に掘削機を設けた曲線管を順次、後端側から推進させて、例えば、曲線管が先進導坑の外周を周回するように設置することになる。しかしながら、このような従来の曲線管の推進装置には、以下に説明する技術的な課題があった。
【特許文献1】特開平10−046978号公報
【特許文献2】特開平11−159275号公報
【特許文献3】特開2000−160980号公報
【特許文献4】特開2002−242581号公報
【特許文献5】特許第3380440号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
すなわち、上記特許文献5に記載されている曲線管の推進装置は、曲線管の把持部であるパイプホルダが、直線構造であるため、曲線管は、その接線方向に推進されることになり、このような構成であると、施工精度の確保や大きな推進力が必要になるという問題があった。
【0008】
また、曲線管は、その後方からジャッキや推進シリンダで推進させるため、トンネル径方向にスペーサが必要になり、先進導坑の断面積を大きくするか、あるいは、順次継足される曲線管の単位長さを短くするといった対策が必要になる。
【0009】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、大きな推進力を必要としないで、また、導坑の断面積の大径化ないしは曲線管の短尺化を回避しつつ、施工精度を確保することができる曲線管推進装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、先進導坑を構築した後に、前記先進導坑内から順次相互に連結される曲線管を地山側に推進させて、前記先進導坑の外周に前記曲線管を連結したパイプルーフを形成し、この後に、前記パイプルーフ内を掘削して本坑トンネルを構築する際に用いる曲線管推進装置において、前記先進導坑内に固定設置される固定架台と、前記先進導坑内の横断面方向に沿って移動可能に前記固定架台に支持され、側方の一端が開口されて、当該開口から前記曲線管の収納を許容するとともに、上下面に前記曲線管と同じ曲率で湾曲する湾曲部を備え、前記曲線管を内部に把持する推進架台と、前記推進架台の上下方向のいずれか一方、または、双方に設けられた前記推進架台の推進移動機構とを備えている。
【0011】
以上のように構成された曲線管推進装置によれば、先進導坑内の横断面方向に移動可能に固定架台に支持され、側方の一端が開口されて、当該開口から曲線管の収納を許容するとともに、上下面に曲線管と同じ曲率で湾曲する湾曲部を備えた推進架台で、曲線管を内部に把持するので、従来のこの種の装置のように、曲線管の把持部が直線構造とすることに起因する、施工精度の確保や大きな推進力が必要になるといった問題が解消される。
【0012】
また、上記構成の曲線管推進装置では、推進移動機構は、推進架台の上下方向のいずれか一方、または、双方に設けられているので、推進移動機構を推進架台の後端側に設ける場合のように、トンネル径方向にスペーサが不要になり、先進導坑の断面積を大きくするか、あるいは、順次継足される曲線管の単位長さを短くするといった対策も不要になる。
【0013】
前記推進移動機構は、前記推進架台の前記湾曲部の外面に固設されたラックと、このラックと歯合するピニオンと、前記ピニオンの回転駆動部とで構成することができる。
【0014】
前記推進架台は、前記固定架台に支持されて、前記湾曲部の下方側の外面に当接する高さ位置の調整が可能なガイドローラ上に設置することができる。
【0015】
前記固定架台は、前記先進導坑内に敷設されるレール上を走行可能に設置し、前記先進導坑内の所定位置で前記固定架台を固定して、前記推進架台の移動の際に反力を確保する反力ジャッキを設けることができる。
【0016】
前記曲線管の先端には、掘削,排土機能を有する曲線掘削機を配置することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明にかかる曲線管推進装置によれば、大きな推進力を必要としないで、また、導坑の断面積の大径化ないしは曲線管の短尺化を回避しつつ、施工精度を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施の形態について、添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0019】
図1から図14は、本発明にかかる曲線管推進装置10の一実施例を示している。これらの図に示した曲線管推進装置10は、図1に示すように、先進導坑12を、例えば、シールド工法により構築した後に、先進導坑12内から、順次、相互に連結される曲線管14を地山側に推進させる。
【0020】
複数の曲線管14は、先進導抗12の外周に連結されて、パイプルーフ16が形成され、このようなパイプルーフ16は、先進導坑12のトンネル軸方向に沿って形成され、この後に、パイプルーフ16内を、上半掘削18,下半掘削20,インバート掘削23の順に施工して、パイプルーフ16の内側に覆工コンクリート22を形成して、本坑トンネル24を構築する。本実施例の曲線管推進装置10は、このような場合に適用される。
【0021】
この場合、曲線管14は、所定長さの中空な円筒状の管体であり、これらの複数本を連結したパイプルーフ16は、図示した例では、先端側が先進導坑12内に戻るように形成して、これが1周するように配置している。
【0022】
なお、本実施例の曲線管推進装置10では、図1に示したような形状のパイプルーフ16だけでなく、例えば、先進導坑12を本坑トンネル24の上部側に配置して、この先進導坑12内から、左右の下方向に曲線管14を順次推進させ、かつ、その先端同士が相互に連通することなく、途中で終わるような形態にも適用することができる。
【0023】
図2は、曲線管推進装置10の一部を破断した斜視図であり、図3は、同装置10の側面図である。これらの図に示した曲線管推進装置10は、固定架台30と、推進架台32と、推進移動機構34とを備えている。
【0024】
固定架台30は、先進導抗12内に固定設置されるものであって、複数の鋼材を立方体の各辺上に配置した形状に形成され(図2では、内部構造を明確にするために、外周の一部が省略されている。)、下端の四隅に移動車輪36が配置されている。
【0025】
この移動車輪36は、その上方に配置された車輪伸縮装置37に連結されていて、固定架台30を移動させる際には、先進導抗12内に敷設されたレール38上で転動するものであり、固定架台10を固定する際には、車両伸縮装置37により、レール38から上方に離間するように制御される。
【0026】
レール38は、複数の坑内枕木39により支持されていて、先進導抗12内のトンネル軸方向に沿って延設されている。また、固定架台30には、先進導抗12のトンネル軸方向と直交する方向に伸縮自在な反力ジャッキ40が、各隅部に合計8本配置されていて、この反力ジャッキ40は、固定架台30を先進導抗12内の所定の位置に固定する場合には、伸長させて、先進導抗12内の壁面などに当接させ、これにより、後述する推進架台32を推進移動させる際の反力受けとしても機能する。
【0027】
推進架台32は、先進導坑12内の横断面方向に沿って移動可能に固定架台30に支持され、図4に示すように、側方の一端が開口されて、当該開口から曲線管14の収納を許容するとともに、上下面に曲線管14と同じ曲率で湾曲する上および下湾曲枠32a,32bを備えている。なお、本実施例では、湾曲部として、枠状の上および下湾曲枠32a,32bを例示しているが、この湾曲部は、板状のものであってもよい。
【0028】
上下方向に所定の間隔を隔てて配置された、上,下湾曲枠32a,32bは、その側方に固設された複数の支柱32cにより支持されている。このように構成された推進架台32は、複数のガイドローラ42上に、下湾曲枠32bが当接するようにして、搭載支持されている。
【0029】
複数のガイドローラ42は、図3に示すように、推進架台32の移動方向に沿って、2列状に配置されていて、各ガイドローラ42は、固定架台30に支持されていて、高さ位置の調整が可能な構造になっている。
【0030】
本実施例の場合、下湾曲枠32bが曲線管14の湾曲と同じ曲率に湾曲しているので、この湾曲に沿って、下湾曲枠32bの下面側に当接するように、各ガイドローラ42の高さが調整されている。なお、このような高さ調整が可能なガイドローラ42を採用すると、推進すべき湾曲管の曲率が異なる場合でも、ガイドローラ42の高さを調整することで対応することが可能になる。
【0031】
また、上,下湾曲枠32a,32bの移動方向の両端と中央部には、把持ピンジャッキ32dが設けられている。この把持ピンジャッキ32dは、図5にその概略を図示するように、推進架台32内に曲線管14が挿入された際に、ジャッキ32dを操作することにより、予め、各曲線管14の両端部に設けられる嵌合孔14a内に、把持ピンが挿入嵌合されて、曲線管14を推進架台32に把持固定するとともに、推進移動機構34の推進力を、推進架台32を介して曲線管14に伝達するために用いられる。
【0032】
一方、推進移動機構34は、本実施例の場合、推進架台32の上,下湾曲枠32a,32bの外面にそれぞれ固設されたラック34aと、このラック34aと歯合する複数のピニオン34bと、各ピニオン34bの回転駆動部34cとで構成されている。
【0033】
本実施例の場合、このような推進移動機構34は、推進架台32の上下方向にそれぞれ設けられているが、これは、上下方向のいずれか1つであってもよい。また、本実施例の場合には、複数のピニオン34bにそれぞれ回転駆動部34cを配置しているので、これらの各回転駆動部34cを同期回転させる必要がある。 なお、本実施例の回転駆動部34cには、油圧パワーユニットで駆動される油圧モータや、電気駆動の減速機付き電動機を用いることができる。
【0034】
次に、上記構成の曲線管推進装置10を用いて、曲線管14を推進させて、パイブルーフ16を形成する手順について説明する。パイプルーフ16を形成する際には、まず、固定架台30を反力ジッャキ40で固定する。
【0035】
この場合、架台30の固定位置は、曲線管14を地山側に向けて推進する位置であって、この位置は、予め決定され、曲線管14の推進位置には、止水性の発進エントランス46と、開口部補強鋼材48が配置される。
【0036】
この発進エントランス46と開口部補強鋼材48の詳細を図6に示している。発進エントランス46は、補強鋼材48の開口端に周縁が固設されたリング状のゴムパッキン46aと、ゴムパッキン46aの押え板46bとを備えていて、ゴムパッキン46aは、曲線管14が推進されると、内端側が弾性変形して、曲線管14の外周面に摺接する。
【0037】
このように弾性変形したゴムパッキン46aの背面側には、グリス注入管50を介して、グリスが注入充填され、これにより外周面に摺接しているゴムパッキン46aに圧力が加えられて、曲線管14の外周面の止水性が確保される。
【0038】
開口部補強用鋼材48は、先進導抗12の壁面を切削して、これを開口した場合の補強用の部材であって、中心に、曲線管14の挿通が可能な貫通孔が設けられている。なお、先進導抗12の開口部の形成個所は、切削が容易なFRPセグメントを用いるとよい。
【0039】
固定架台30が所定の位置にセットされると、移動車輪36を車輪伸縮装置37により上方に引き上げた状態で、反力ジャッキ40を伸長させて、固定架台30を固定する。次に、図7に示すように、曲線掘削機52が、推進架台32の側方からその内部に挿入設置される。図8は、曲線掘削機52の設置状態の詳細斜視図である。
【0040】
曲線掘削機52は、先端側に設けられた掘削機構52a,中折れ機構52b,排土機構52c,推進機駆動システムなどを備え、遠隔操作により、掘削土砂を排土しながら掘削することができるものであり、曲線管14の直径とほぼ同じ外径を有している。
【0041】
曲線掘削機52が推進架台32内に設置されると、次に、図9に示すように、推進架台32を後方に移動させた後に、掘削機52の後端に、長さ調整用曲線管140を連結固定した後に、推進移動機構34の回転駆動部34cを駆動させて、ピニオン34bの回転により、上,下湾曲枠32a,32bを、先進導抗12の横断面方向に沿って前進移動させて、曲線掘削機52の先端を先進導抗12の壁面に当接させながら、その掘削機構52aを作動させて、FRPセグメントを切削除去して、曲線掘削機52を地山側に推進させる。なお、長さ調整用曲線管140は、曲線管14と同じ曲率で湾曲し、かつ、同じ直径を有していて、長さだけが若干短いものである。
【0042】
そして、曲線掘削機52が所定の長さだけ地山側に突出すると、図10に示すように、一旦、推進および掘削作業を中断して、掘削機52と曲線管140との後退を押える操作を行う。(この際の後退防止手段および操作の詳細は、後述する。)
【0043】
しかる後に、図11に示すように、推進移動機構34の回転駆動部34cを逆回転させて、後退防止操作を行った後に、推進架台32だけを後退移動させる。次に、図12に示すように、推進架台32による曲線管140の把持ピンジッャキ32dによる把持位置を、後方側に盛り変えた後に、推進移動機構34の回転駆動部34cを駆動させて、曲線掘削機52を地山側に前進させる。
【0044】
そして、曲線掘削機52が地山側に所定量突出すると、この後に、図13に示すように、推進架台32だけを後退移動させて、推進架台32内に、正規の長さの曲線管14を挿入して、これと曲線管140の端部同士を、溶接やボルトナットの機械結合で連結して、曲線管14を把持ピンジャッキ34dで、把持固定した後に、図14に示すように、推進移動機構34の回転駆動部34cの駆動により前進移動させる。
【0045】
なお、推進架台32だけを後退移動させる場合には、前期と同様に、掘削機52などの後退防止操作を行うとともに、前進移動の際には、曲線掘削機52を作動させて、地山の掘削も同時進行される。
【0046】
上記した前進移動により、掘削機52や曲線管14が所定距離だけ推進移動されると、後退防止操作を施した後に、推進架台32だけを後退移動させて、その後に、別の曲線管14を推進架台32内に挿入して、曲線管14同士を連結した後に、これを再び前進させて推進させる操作を繰り返す。
【0047】
図5には、一旦前進移動させた掘削機52や曲線管140,14の後退防止手段の構成および操作の一例が示されている。同図に示した例では、固定架台30にジャッキにより出没移動される把持ピン30aを配置しておき、後退を阻止する際には、曲線管140,14に設けられている嵌合孔14a内に、把持ピン30aを嵌合させることで、掘削機52などの後退移動が阻止される。
【0048】
以上のような操作を繰り返して、先端側に設けられた曲線掘削機52が、先進導抗14側に戻ってくると、この到達位置には、止水性の到達エントランス54と開口部補強鋼材56とが予め設けられている。
【0049】
図15は、その一例を示す詳細図であり、同図に示した例では、到達エントランス54は、リング状のゴムパッキン54aと、ゴムパッキン54aの内端側に固設されたワイヤ54bとを備えていて、ゴムパッキン54aの外周は、リング状の押え板54cにより、補強鋼材56に固定されている。
【0050】
このような到達エントランス54では、曲線掘削機52が、先進導抗12の側壁に開口部を切削して、内部に取り込まれた後に、曲線管14がここに到達すると、その外周面に沿って、ゴムパッキン54aが弾性変形して、摺接することて止水性が確保される。
【0051】
なお、図15に示した到達エントランス54は、比較的水圧が低い場合に採用される構造であり、高水圧の場合には、図16に示す構造が好適である。図16に示した到達エントランス54’では、一端が補強鋼材56に固設されたリング板54dの内面に、環状のチューブ54eを固設し、このチューブ54eに加圧気体を注入することで拡径させて、拡径したチューブ54eが曲線管14の外周面に圧着するようにして、止水性を確保している。
【0052】
以上のようにして、1本分のパイプルーフ16が設置されると、次に、固定架台30を先進導抗12内のトンネル軸方向に移動させて、次のパイプルーフ16を設置することになる。なお、固定架台30を移動させる際には、反力ジャッキ40を収縮させて、車輪伸縮装置37の駆動により、移動車輪36をレール38上に載せて、車輪36を回転させることで行う。
【0053】
さて、以上のように構成した曲線管推進装置10よれば、先進導坑12内の横断面方向に移動可能に固定架台30に支持され、側方の一端が開口されて、当該開口から曲線管14の収納を許容するとともに、上下面に曲線管14と同じ曲率で湾曲する湾曲枠32a,32bを備えた推進架台32で、曲線管14を内部に把持するので、従来のこの種の装置のように、曲線管の把持部が直線構造の場合に、施工精度の確保や大きな推進力が必要になるといった問題がなくなる。
【0054】
また、上記構成の曲線管推進装置10では、推進移動機構34は、推進架台32の上下方向のいずれか一方、または、双方に設けられているので、推進移動機構34を推進架台32の後端側に設ける場合のように、トンネル径方向にスペーサが不要になり、先進導坑12の断面積を大きくするか、あるいは、順次継足される曲線管14の単位長さを短くするといった対策も不要になる。
【0055】
なお、上記実施例では、曲線管14を連結したパイプルーフ16は、1周回するように形成する場合を例示したが、本発明の曲線管推進装置10は、このような場合以外にも用いることができる。
【0056】
その例としては、例えば、先進導抗12を本坑トンネル26の上部側に配置し、導抗12内から左右方向に、先端同士が連結されない、所定長さのパイプルーフを形成する場合にも用いることができる。
【0057】
この場合、曲線掘削機には、例えば、特開2001−49990号公報に開示されているように、掘削を終えると、掘削機の管内径やり張り出した部分を、管内に収まる位置まで縮退させて、掘削機と管との連結を解いて、掘進機を掘削発進場所まで引き戻して回収できるようにしたものを採用すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明にかかる曲線管推進装置によれば、大きな推進力を必要としないで、また、導坑の断面積の大径化ないしは曲線管の短尺化を回避しつつ、施工精度を確保することができるので、本坑の輪郭に沿って曲線管を設置して、その後に、本坑を掘削構築する工法に有効に活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明にかかる曲線管推進装置が用いられるトンネル構築工法の一例を示す断面説明図である。
【図2】本発明にかかる曲線管推進装置の詳細を示す斜視図である。
【図3】図2の側面図である。
【図4】図3の側面説明図である。
【図5】図2に示した推進装置の推進架台における曲線管の把持構造の説明図である。
【図6】図3に示した先進導抗の発進エントランスの詳細図である。
【図7】図2に示した推進装置で曲線管を推進施工する際の初期工程の側面説明図である。
【図8】図7の斜視図である。
【図9】図7に引き続いて行われる工程の側面説明図である。
【図10】図9に引き続いて行われる工程の側面説明図である。
【図11】図10に引き続いて行われる工程の側面説明図である。
【図12】図11に引き続いて行われる工程の側面説明図である。
【図13】図12に引き続いて行われる工程の側面説明図である。
【図14】図13に引き続いて行われる工程の側面説明図である。
【図15】図3に示した到達エントランスの詳細図である。
【図16】図3に示した到達エントランスの他の例を示す詳細図である。
【符号の説明】
【0060】
10 曲線管推進装置
12 先進導抗
14 曲線管
140 曲線管
30 固定架台
32 推進架台
32a 上湾曲枠
32b 下湾曲枠
34 推進移動機構
34a ラック
34b ピニオン
34c 回転駆動部
【技術分野】
【0001】
この発明は、曲線管推進装置に関し、特に、トンネルの内部から曲線管を周回状などに推進させる推進装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、都市部などの未固結地山や高含水土砂地山において、非開削トンネルを構築する場合、本坑掘削時に周辺地下水の水位低下や、地表面の沈下などを制御する方法として、トンネル切羽前方を薬液などで固化させる注入工法、地山内の地下水を凍結させる凍結工法が知られている。
【0003】
ところが、このような工法には、注入の確実性や、凍結までに時間がかかるという問題があった。また、補助工法として、切羽からの注入工法や、先受け工法を行う場合、本坑掘削と交互作業になり、施工速度が著しく低下する。
【0004】
そこで、例えば、特許文献1〜4には、先進導坑を掘削した後に、導坑内から上半部分に、本坑の輪郭に沿って曲線管を設置して、注入材などを注入することにより地山の保持部を設けた後に、本坑トンネルを掘削構築する工法が開発,提案されている。
【0005】
これらの公報に開示されている工法では、曲線管の推進設置が行われ、例えば、特許文献5には、その推進装置の一例が提案されている。この特許文献5に開示されている推進装置は、トンネル内の底部に設置される架台上に固定されるものであって、曲線状のガイド部を備えた支持枠と、ガイド部に沿って移動する曲線管の保持用パイプホルダと、パイプホルダをトンネルの径方向に移動させる推進シリンダとを有している。
【0006】
このような推進装置では、先端側に掘削機を設けた曲線管を順次、後端側から推進させて、例えば、曲線管が先進導坑の外周を周回するように設置することになる。しかしながら、このような従来の曲線管の推進装置には、以下に説明する技術的な課題があった。
【特許文献1】特開平10−046978号公報
【特許文献2】特開平11−159275号公報
【特許文献3】特開2000−160980号公報
【特許文献4】特開2002−242581号公報
【特許文献5】特許第3380440号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
すなわち、上記特許文献5に記載されている曲線管の推進装置は、曲線管の把持部であるパイプホルダが、直線構造であるため、曲線管は、その接線方向に推進されることになり、このような構成であると、施工精度の確保や大きな推進力が必要になるという問題があった。
【0008】
また、曲線管は、その後方からジャッキや推進シリンダで推進させるため、トンネル径方向にスペーサが必要になり、先進導坑の断面積を大きくするか、あるいは、順次継足される曲線管の単位長さを短くするといった対策が必要になる。
【0009】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、大きな推進力を必要としないで、また、導坑の断面積の大径化ないしは曲線管の短尺化を回避しつつ、施工精度を確保することができる曲線管推進装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、先進導坑を構築した後に、前記先進導坑内から順次相互に連結される曲線管を地山側に推進させて、前記先進導坑の外周に前記曲線管を連結したパイプルーフを形成し、この後に、前記パイプルーフ内を掘削して本坑トンネルを構築する際に用いる曲線管推進装置において、前記先進導坑内に固定設置される固定架台と、前記先進導坑内の横断面方向に沿って移動可能に前記固定架台に支持され、側方の一端が開口されて、当該開口から前記曲線管の収納を許容するとともに、上下面に前記曲線管と同じ曲率で湾曲する湾曲部を備え、前記曲線管を内部に把持する推進架台と、前記推進架台の上下方向のいずれか一方、または、双方に設けられた前記推進架台の推進移動機構とを備えている。
【0011】
以上のように構成された曲線管推進装置によれば、先進導坑内の横断面方向に移動可能に固定架台に支持され、側方の一端が開口されて、当該開口から曲線管の収納を許容するとともに、上下面に曲線管と同じ曲率で湾曲する湾曲部を備えた推進架台で、曲線管を内部に把持するので、従来のこの種の装置のように、曲線管の把持部が直線構造とすることに起因する、施工精度の確保や大きな推進力が必要になるといった問題が解消される。
【0012】
また、上記構成の曲線管推進装置では、推進移動機構は、推進架台の上下方向のいずれか一方、または、双方に設けられているので、推進移動機構を推進架台の後端側に設ける場合のように、トンネル径方向にスペーサが不要になり、先進導坑の断面積を大きくするか、あるいは、順次継足される曲線管の単位長さを短くするといった対策も不要になる。
【0013】
前記推進移動機構は、前記推進架台の前記湾曲部の外面に固設されたラックと、このラックと歯合するピニオンと、前記ピニオンの回転駆動部とで構成することができる。
【0014】
前記推進架台は、前記固定架台に支持されて、前記湾曲部の下方側の外面に当接する高さ位置の調整が可能なガイドローラ上に設置することができる。
【0015】
前記固定架台は、前記先進導坑内に敷設されるレール上を走行可能に設置し、前記先進導坑内の所定位置で前記固定架台を固定して、前記推進架台の移動の際に反力を確保する反力ジャッキを設けることができる。
【0016】
前記曲線管の先端には、掘削,排土機能を有する曲線掘削機を配置することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明にかかる曲線管推進装置によれば、大きな推進力を必要としないで、また、導坑の断面積の大径化ないしは曲線管の短尺化を回避しつつ、施工精度を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施の形態について、添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0019】
図1から図14は、本発明にかかる曲線管推進装置10の一実施例を示している。これらの図に示した曲線管推進装置10は、図1に示すように、先進導坑12を、例えば、シールド工法により構築した後に、先進導坑12内から、順次、相互に連結される曲線管14を地山側に推進させる。
【0020】
複数の曲線管14は、先進導抗12の外周に連結されて、パイプルーフ16が形成され、このようなパイプルーフ16は、先進導坑12のトンネル軸方向に沿って形成され、この後に、パイプルーフ16内を、上半掘削18,下半掘削20,インバート掘削23の順に施工して、パイプルーフ16の内側に覆工コンクリート22を形成して、本坑トンネル24を構築する。本実施例の曲線管推進装置10は、このような場合に適用される。
【0021】
この場合、曲線管14は、所定長さの中空な円筒状の管体であり、これらの複数本を連結したパイプルーフ16は、図示した例では、先端側が先進導坑12内に戻るように形成して、これが1周するように配置している。
【0022】
なお、本実施例の曲線管推進装置10では、図1に示したような形状のパイプルーフ16だけでなく、例えば、先進導坑12を本坑トンネル24の上部側に配置して、この先進導坑12内から、左右の下方向に曲線管14を順次推進させ、かつ、その先端同士が相互に連通することなく、途中で終わるような形態にも適用することができる。
【0023】
図2は、曲線管推進装置10の一部を破断した斜視図であり、図3は、同装置10の側面図である。これらの図に示した曲線管推進装置10は、固定架台30と、推進架台32と、推進移動機構34とを備えている。
【0024】
固定架台30は、先進導抗12内に固定設置されるものであって、複数の鋼材を立方体の各辺上に配置した形状に形成され(図2では、内部構造を明確にするために、外周の一部が省略されている。)、下端の四隅に移動車輪36が配置されている。
【0025】
この移動車輪36は、その上方に配置された車輪伸縮装置37に連結されていて、固定架台30を移動させる際には、先進導抗12内に敷設されたレール38上で転動するものであり、固定架台10を固定する際には、車両伸縮装置37により、レール38から上方に離間するように制御される。
【0026】
レール38は、複数の坑内枕木39により支持されていて、先進導抗12内のトンネル軸方向に沿って延設されている。また、固定架台30には、先進導抗12のトンネル軸方向と直交する方向に伸縮自在な反力ジャッキ40が、各隅部に合計8本配置されていて、この反力ジャッキ40は、固定架台30を先進導抗12内の所定の位置に固定する場合には、伸長させて、先進導抗12内の壁面などに当接させ、これにより、後述する推進架台32を推進移動させる際の反力受けとしても機能する。
【0027】
推進架台32は、先進導坑12内の横断面方向に沿って移動可能に固定架台30に支持され、図4に示すように、側方の一端が開口されて、当該開口から曲線管14の収納を許容するとともに、上下面に曲線管14と同じ曲率で湾曲する上および下湾曲枠32a,32bを備えている。なお、本実施例では、湾曲部として、枠状の上および下湾曲枠32a,32bを例示しているが、この湾曲部は、板状のものであってもよい。
【0028】
上下方向に所定の間隔を隔てて配置された、上,下湾曲枠32a,32bは、その側方に固設された複数の支柱32cにより支持されている。このように構成された推進架台32は、複数のガイドローラ42上に、下湾曲枠32bが当接するようにして、搭載支持されている。
【0029】
複数のガイドローラ42は、図3に示すように、推進架台32の移動方向に沿って、2列状に配置されていて、各ガイドローラ42は、固定架台30に支持されていて、高さ位置の調整が可能な構造になっている。
【0030】
本実施例の場合、下湾曲枠32bが曲線管14の湾曲と同じ曲率に湾曲しているので、この湾曲に沿って、下湾曲枠32bの下面側に当接するように、各ガイドローラ42の高さが調整されている。なお、このような高さ調整が可能なガイドローラ42を採用すると、推進すべき湾曲管の曲率が異なる場合でも、ガイドローラ42の高さを調整することで対応することが可能になる。
【0031】
また、上,下湾曲枠32a,32bの移動方向の両端と中央部には、把持ピンジャッキ32dが設けられている。この把持ピンジャッキ32dは、図5にその概略を図示するように、推進架台32内に曲線管14が挿入された際に、ジャッキ32dを操作することにより、予め、各曲線管14の両端部に設けられる嵌合孔14a内に、把持ピンが挿入嵌合されて、曲線管14を推進架台32に把持固定するとともに、推進移動機構34の推進力を、推進架台32を介して曲線管14に伝達するために用いられる。
【0032】
一方、推進移動機構34は、本実施例の場合、推進架台32の上,下湾曲枠32a,32bの外面にそれぞれ固設されたラック34aと、このラック34aと歯合する複数のピニオン34bと、各ピニオン34bの回転駆動部34cとで構成されている。
【0033】
本実施例の場合、このような推進移動機構34は、推進架台32の上下方向にそれぞれ設けられているが、これは、上下方向のいずれか1つであってもよい。また、本実施例の場合には、複数のピニオン34bにそれぞれ回転駆動部34cを配置しているので、これらの各回転駆動部34cを同期回転させる必要がある。 なお、本実施例の回転駆動部34cには、油圧パワーユニットで駆動される油圧モータや、電気駆動の減速機付き電動機を用いることができる。
【0034】
次に、上記構成の曲線管推進装置10を用いて、曲線管14を推進させて、パイブルーフ16を形成する手順について説明する。パイプルーフ16を形成する際には、まず、固定架台30を反力ジッャキ40で固定する。
【0035】
この場合、架台30の固定位置は、曲線管14を地山側に向けて推進する位置であって、この位置は、予め決定され、曲線管14の推進位置には、止水性の発進エントランス46と、開口部補強鋼材48が配置される。
【0036】
この発進エントランス46と開口部補強鋼材48の詳細を図6に示している。発進エントランス46は、補強鋼材48の開口端に周縁が固設されたリング状のゴムパッキン46aと、ゴムパッキン46aの押え板46bとを備えていて、ゴムパッキン46aは、曲線管14が推進されると、内端側が弾性変形して、曲線管14の外周面に摺接する。
【0037】
このように弾性変形したゴムパッキン46aの背面側には、グリス注入管50を介して、グリスが注入充填され、これにより外周面に摺接しているゴムパッキン46aに圧力が加えられて、曲線管14の外周面の止水性が確保される。
【0038】
開口部補強用鋼材48は、先進導抗12の壁面を切削して、これを開口した場合の補強用の部材であって、中心に、曲線管14の挿通が可能な貫通孔が設けられている。なお、先進導抗12の開口部の形成個所は、切削が容易なFRPセグメントを用いるとよい。
【0039】
固定架台30が所定の位置にセットされると、移動車輪36を車輪伸縮装置37により上方に引き上げた状態で、反力ジャッキ40を伸長させて、固定架台30を固定する。次に、図7に示すように、曲線掘削機52が、推進架台32の側方からその内部に挿入設置される。図8は、曲線掘削機52の設置状態の詳細斜視図である。
【0040】
曲線掘削機52は、先端側に設けられた掘削機構52a,中折れ機構52b,排土機構52c,推進機駆動システムなどを備え、遠隔操作により、掘削土砂を排土しながら掘削することができるものであり、曲線管14の直径とほぼ同じ外径を有している。
【0041】
曲線掘削機52が推進架台32内に設置されると、次に、図9に示すように、推進架台32を後方に移動させた後に、掘削機52の後端に、長さ調整用曲線管140を連結固定した後に、推進移動機構34の回転駆動部34cを駆動させて、ピニオン34bの回転により、上,下湾曲枠32a,32bを、先進導抗12の横断面方向に沿って前進移動させて、曲線掘削機52の先端を先進導抗12の壁面に当接させながら、その掘削機構52aを作動させて、FRPセグメントを切削除去して、曲線掘削機52を地山側に推進させる。なお、長さ調整用曲線管140は、曲線管14と同じ曲率で湾曲し、かつ、同じ直径を有していて、長さだけが若干短いものである。
【0042】
そして、曲線掘削機52が所定の長さだけ地山側に突出すると、図10に示すように、一旦、推進および掘削作業を中断して、掘削機52と曲線管140との後退を押える操作を行う。(この際の後退防止手段および操作の詳細は、後述する。)
【0043】
しかる後に、図11に示すように、推進移動機構34の回転駆動部34cを逆回転させて、後退防止操作を行った後に、推進架台32だけを後退移動させる。次に、図12に示すように、推進架台32による曲線管140の把持ピンジッャキ32dによる把持位置を、後方側に盛り変えた後に、推進移動機構34の回転駆動部34cを駆動させて、曲線掘削機52を地山側に前進させる。
【0044】
そして、曲線掘削機52が地山側に所定量突出すると、この後に、図13に示すように、推進架台32だけを後退移動させて、推進架台32内に、正規の長さの曲線管14を挿入して、これと曲線管140の端部同士を、溶接やボルトナットの機械結合で連結して、曲線管14を把持ピンジャッキ34dで、把持固定した後に、図14に示すように、推進移動機構34の回転駆動部34cの駆動により前進移動させる。
【0045】
なお、推進架台32だけを後退移動させる場合には、前期と同様に、掘削機52などの後退防止操作を行うとともに、前進移動の際には、曲線掘削機52を作動させて、地山の掘削も同時進行される。
【0046】
上記した前進移動により、掘削機52や曲線管14が所定距離だけ推進移動されると、後退防止操作を施した後に、推進架台32だけを後退移動させて、その後に、別の曲線管14を推進架台32内に挿入して、曲線管14同士を連結した後に、これを再び前進させて推進させる操作を繰り返す。
【0047】
図5には、一旦前進移動させた掘削機52や曲線管140,14の後退防止手段の構成および操作の一例が示されている。同図に示した例では、固定架台30にジャッキにより出没移動される把持ピン30aを配置しておき、後退を阻止する際には、曲線管140,14に設けられている嵌合孔14a内に、把持ピン30aを嵌合させることで、掘削機52などの後退移動が阻止される。
【0048】
以上のような操作を繰り返して、先端側に設けられた曲線掘削機52が、先進導抗14側に戻ってくると、この到達位置には、止水性の到達エントランス54と開口部補強鋼材56とが予め設けられている。
【0049】
図15は、その一例を示す詳細図であり、同図に示した例では、到達エントランス54は、リング状のゴムパッキン54aと、ゴムパッキン54aの内端側に固設されたワイヤ54bとを備えていて、ゴムパッキン54aの外周は、リング状の押え板54cにより、補強鋼材56に固定されている。
【0050】
このような到達エントランス54では、曲線掘削機52が、先進導抗12の側壁に開口部を切削して、内部に取り込まれた後に、曲線管14がここに到達すると、その外周面に沿って、ゴムパッキン54aが弾性変形して、摺接することて止水性が確保される。
【0051】
なお、図15に示した到達エントランス54は、比較的水圧が低い場合に採用される構造であり、高水圧の場合には、図16に示す構造が好適である。図16に示した到達エントランス54’では、一端が補強鋼材56に固設されたリング板54dの内面に、環状のチューブ54eを固設し、このチューブ54eに加圧気体を注入することで拡径させて、拡径したチューブ54eが曲線管14の外周面に圧着するようにして、止水性を確保している。
【0052】
以上のようにして、1本分のパイプルーフ16が設置されると、次に、固定架台30を先進導抗12内のトンネル軸方向に移動させて、次のパイプルーフ16を設置することになる。なお、固定架台30を移動させる際には、反力ジャッキ40を収縮させて、車輪伸縮装置37の駆動により、移動車輪36をレール38上に載せて、車輪36を回転させることで行う。
【0053】
さて、以上のように構成した曲線管推進装置10よれば、先進導坑12内の横断面方向に移動可能に固定架台30に支持され、側方の一端が開口されて、当該開口から曲線管14の収納を許容するとともに、上下面に曲線管14と同じ曲率で湾曲する湾曲枠32a,32bを備えた推進架台32で、曲線管14を内部に把持するので、従来のこの種の装置のように、曲線管の把持部が直線構造の場合に、施工精度の確保や大きな推進力が必要になるといった問題がなくなる。
【0054】
また、上記構成の曲線管推進装置10では、推進移動機構34は、推進架台32の上下方向のいずれか一方、または、双方に設けられているので、推進移動機構34を推進架台32の後端側に設ける場合のように、トンネル径方向にスペーサが不要になり、先進導坑12の断面積を大きくするか、あるいは、順次継足される曲線管14の単位長さを短くするといった対策も不要になる。
【0055】
なお、上記実施例では、曲線管14を連結したパイプルーフ16は、1周回するように形成する場合を例示したが、本発明の曲線管推進装置10は、このような場合以外にも用いることができる。
【0056】
その例としては、例えば、先進導抗12を本坑トンネル26の上部側に配置し、導抗12内から左右方向に、先端同士が連結されない、所定長さのパイプルーフを形成する場合にも用いることができる。
【0057】
この場合、曲線掘削機には、例えば、特開2001−49990号公報に開示されているように、掘削を終えると、掘削機の管内径やり張り出した部分を、管内に収まる位置まで縮退させて、掘削機と管との連結を解いて、掘進機を掘削発進場所まで引き戻して回収できるようにしたものを採用すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明にかかる曲線管推進装置によれば、大きな推進力を必要としないで、また、導坑の断面積の大径化ないしは曲線管の短尺化を回避しつつ、施工精度を確保することができるので、本坑の輪郭に沿って曲線管を設置して、その後に、本坑を掘削構築する工法に有効に活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明にかかる曲線管推進装置が用いられるトンネル構築工法の一例を示す断面説明図である。
【図2】本発明にかかる曲線管推進装置の詳細を示す斜視図である。
【図3】図2の側面図である。
【図4】図3の側面説明図である。
【図5】図2に示した推進装置の推進架台における曲線管の把持構造の説明図である。
【図6】図3に示した先進導抗の発進エントランスの詳細図である。
【図7】図2に示した推進装置で曲線管を推進施工する際の初期工程の側面説明図である。
【図8】図7の斜視図である。
【図9】図7に引き続いて行われる工程の側面説明図である。
【図10】図9に引き続いて行われる工程の側面説明図である。
【図11】図10に引き続いて行われる工程の側面説明図である。
【図12】図11に引き続いて行われる工程の側面説明図である。
【図13】図12に引き続いて行われる工程の側面説明図である。
【図14】図13に引き続いて行われる工程の側面説明図である。
【図15】図3に示した到達エントランスの詳細図である。
【図16】図3に示した到達エントランスの他の例を示す詳細図である。
【符号の説明】
【0060】
10 曲線管推進装置
12 先進導抗
14 曲線管
140 曲線管
30 固定架台
32 推進架台
32a 上湾曲枠
32b 下湾曲枠
34 推進移動機構
34a ラック
34b ピニオン
34c 回転駆動部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先進導坑を構築した後に、前記先進導坑内から順次相互に連結される曲線管を地山側に推進させて、前記先進導坑の外周に前記曲線管を連結したパイプルーフを形成し、この後に、前記パイプルーフ内を掘削して本坑トンネルを構築する際に用いる曲線管推進装置において、
前記先進導坑内に固定設置される固定架台と、
前記先進導坑内の横断面方向に沿って移動可能に前記固定架台に支持され、側方の一端が開口されて、当該開口から前記曲線管の収納を許容するとともに、上下面に前記曲線管と同じ曲率で湾曲する湾曲部を備え、前記曲線管を内部に把持する推進架台と、
前記推進架台の上下方向のいずれか一方、または、双方に設けられた前記推進架台の推進移動機構とを備えたことを特徴とする曲線管推進装置。
【請求項2】
前記推進移動機構は、前記推進架台の前記湾曲部の外面に固設されたラックと、このラックと歯合するピニオンと、前記ピニオンの回転駆動部とで構成することを特徴とする請求項1記載の曲線管推進装置。
【請求項3】
前記推進架台は、前記固定架台に支持されて、前記湾曲部の下方側の外面に当接する高さ位置の調整が可能なガイドローラ上に設置することを特徴とする請求項1または2記載の曲線管推進装置。
【請求項4】
前記固定架台は、前記先進導坑内に敷設されるレール上を走行可能に設置し、前記先進導坑内の所定位置で前記固定架台を固定して、前記推進架台の移動の際に反力を確保する反力ジャッキを有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の曲線管推進装置。
【請求項5】
前記曲線管の先端には、掘削,排土機能を有する曲線掘削機を配置することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の曲線管推進装置。
【請求項1】
先進導坑を構築した後に、前記先進導坑内から順次相互に連結される曲線管を地山側に推進させて、前記先進導坑の外周に前記曲線管を連結したパイプルーフを形成し、この後に、前記パイプルーフ内を掘削して本坑トンネルを構築する際に用いる曲線管推進装置において、
前記先進導坑内に固定設置される固定架台と、
前記先進導坑内の横断面方向に沿って移動可能に前記固定架台に支持され、側方の一端が開口されて、当該開口から前記曲線管の収納を許容するとともに、上下面に前記曲線管と同じ曲率で湾曲する湾曲部を備え、前記曲線管を内部に把持する推進架台と、
前記推進架台の上下方向のいずれか一方、または、双方に設けられた前記推進架台の推進移動機構とを備えたことを特徴とする曲線管推進装置。
【請求項2】
前記推進移動機構は、前記推進架台の前記湾曲部の外面に固設されたラックと、このラックと歯合するピニオンと、前記ピニオンの回転駆動部とで構成することを特徴とする請求項1記載の曲線管推進装置。
【請求項3】
前記推進架台は、前記固定架台に支持されて、前記湾曲部の下方側の外面に当接する高さ位置の調整が可能なガイドローラ上に設置することを特徴とする請求項1または2記載の曲線管推進装置。
【請求項4】
前記固定架台は、前記先進導坑内に敷設されるレール上を走行可能に設置し、前記先進導坑内の所定位置で前記固定架台を固定して、前記推進架台の移動の際に反力を確保する反力ジャッキを有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の曲線管推進装置。
【請求項5】
前記曲線管の先端には、掘削,排土機能を有する曲線掘削機を配置することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の曲線管推進装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2006−152640(P2006−152640A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−343413(P2004−343413)
【出願日】平成16年11月29日(2004.11.29)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年11月29日(2004.11.29)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】
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