説明

曲面壁に支持リングを構築する方法

曲面壁に、特に高温送風加熱炉の曲面壁内の開口の周りに、支持リングを構築する方法を提案する。複数の標準化楔形煉瓦(12、14、16、18、20、22)を用意する。それ等の側面は、隣接する煉瓦の側面と協働する舌状及び溝状(36、38)の輪郭部をもつ。煉瓦の軸方向厚み(T)は煉瓦の所望最終厚み(t)より厚くする。曲面壁における個々の煉瓦の予定位置を特定し、この予定位置に基づいて、煉瓦の前面及び後面(24、26)を付形するための前部切断線(56)と後部切断線(58)を特定する。次いで、前後面(24、26)は斯く特定された前部及び後部切断線(56、58)に従って、切断工具を用いて付形される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は曲面壁に支持リングを構築する方法、より詳しくは、高温送風加熱炉又は高炉の曲面壁における開口の周りに耐火材の支持リングを構築する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高炉のための空気予備加熱は通常、高温送風加熱炉として知られる隣接の蓄熱式加熱器で行われる。これ等の加熱炉は一般に、内燃室を備える加熱炉では、円筒状耐火壁と、加熱炉を内燃室とチェッカー煉瓦含有チェッカー室に区分する内部垂直隔壁とから、或いは、外燃室を備える加熱炉では、連結ドームをもつ2つの円筒状耐火物内張り室から成立っている。空気及び燃料は開口1つ又は2つを通って燃焼のため内燃室内の所謂セラミックバーナー又は金属バーナーに導入され、結果として生ずる燃焼ガスは燃焼室から上方に、チェッカー作用室を通って下方に燃焼室にまで流れ、燃焼室の基部で最終的に排気される。チェッカー煉瓦が十分高い温度に達した後、加熱炉内の流体流の方向が反転される。チェッカー室の基部で冷風が導入され、チェッカー煉瓦からの熱吸収の後、この空気は隔壁に亘って、且つ燃焼室を通って流れ、そこで加熱炉の外殻における高温送風排気口を通って加熱炉を出て、送風炉に送られる。
【0003】
高温送風排出口、排ガス排出口又はバーナー吸気口では高温となるため、これ等開口は一般に周囲が、耐火煉瓦の1つ以上のリングから成る耐火性支持リングで囲繞されている。
【0004】
高温送風加熱炉の外壁は曲面であるため、そのような支持リングの構築には多種の煉瓦形状が要求される。そのような支持リングの構築は従って、一般にコスト高、且つ時間のかかる仕事となる。
【0005】
そのような支持リングの製造のため、多数の解決策が提案されている。
【0006】
一つの方法は、木製又はプラスチック製の型に高アルミナ材料を充填し、次いで手でランマーし及び焼成に進むものである。この方法の主な不利は、結果として生ずる煉瓦の品質が一般に、より不良であることである。
もう一つの方法は、型内にリングの全区分を形成し、鋼板が個々の煉瓦の境界を定めるようにするものである。この方法は煉瓦間に望ましくない、厚いモルタルの継ぎ目をもつ支持リングを生じることになる。更に、鋼板は曲がってしまい、構造全体の強度を損なうこともある。また、1つの煉瓦が割れると、支持リングの全部を交換しなければならなくなり、不要な廃棄物を生じることになる。
更にもう一つの方法は、個々の鋼金型に煉瓦を液圧プレスするものである。この方法によれば高品質の煉瓦を製造できるが、それに伴うコストは極めて高くなる。
【0007】
そのような多種の煉瓦形状の製造は低品質であるかコストが多大であるので、異なる煉瓦形状の数を少なくできる方法の提供が必要となる。
【0008】
US4478575に提案の方法によれば、支持リングの構築のために唯一種の煉瓦が用いられる。この方法は一特定形状の煉瓦を用い、これ等煉瓦を組み立てて支持リングを構築するようにする。煉瓦は複数方向に楔形の断面をもつ。この方法では、煉瓦の異なる楔角が所望の支持リングの構築のために極めて重要である。この方法では支持リングを容易、且つ速やかに構築できるが、これは用いられる煉瓦が正確な形状をもつ場合に限られる。特定形状の煉瓦が特定の開口径及び加熱炉壁曲率に対して必要となる。支持リングの構築を可能にする前に、楔形状煉瓦は強化のため、開口の特定開口径と加熱炉壁曲率に従って設計して製造されなければならない。煉瓦の設計はかなり複雑な仕事であり、楔角にどんな誤差があっても煉瓦を、その特定支持リングに使用することはできない。その場合、これ等煉瓦は放棄されなければならず、全工程はスクラッチから始めなければならない。廃棄物の可能性は従って、極めて高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】US4478575
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明の目的は曲面壁に支持リングを構築する、より迅速、且つより経済的な方法を提供することにある。この目的は、請求項1に記載の方法によって達成される。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的を達成するため、本発明は曲面壁に、特に高温送風加熱炉の曲面壁における開口の周りに、支持リングを構築する方法を提案する。本発明によれば、この方法は(a)複数の標準化楔形煉瓦を用意する工程と、(b)曲面壁における各個々の煉瓦の予定位置を特定する工程と、(c)曲面壁における個々の煉瓦の予定位置に基づいて、煉瓦の前面を付形するための前部切断線の位置と煉瓦の後面を付形するための後部切断線の位置を特定する工程と、(d)斯く特定された前後部切断線に従って、煉瓦の前後面を切断工具により付形(成形)する工程とを含んで成る。工程(a)において用意される標準化楔形煉瓦は前面及び対向する後面と、内側基部及び対向する外側基部と有し、内側基部は外側基部より小さく、支持リングの中心に向かって向いており、また標準化楔形煉瓦は隣接する煉瓦を連結する2つの側面を有し、これ等側面には隣接煉瓦の側面と協働する舌状及び溝状の輪郭部が設けられる。1つの煉瓦の軸方向は前後面を通り、複数の煉瓦が並べられて支持リングを形成するとき支持リングの軸に平行となるものと定義される。煉瓦の半径方向は内側及び外側基部を通り、複数の煉瓦が並べられて支持リングを形成するとき支持リングの軸に対し直角となり、支持リングの中心から煉瓦に向かって延びるものと定義される。本発明の一つの重要な特徴によれば、煉瓦の軸方向の厚みは煉瓦の所望最終厚みより厚いものとする。
【0012】
本方法は支持リングの構築のため、加熱炉壁の曲率によらず標準化煉瓦を用いることができる。煉瓦は予備製造して使用のために保存できるもので、支持リングの開口径を定める楔形断面をもつ。当初、加熱炉壁の曲率は考慮されない。軸方向の厚みが所望の最終厚みより厚い煉瓦を用意することにより、これ等煉瓦は切断により所望形状に付形することができる。本方法は各煉瓦の、支持リングにおけるその予定位置に基づく個別付形を提案するものである。個々の煉瓦を付形することにより、支持リングを加熱炉壁の曲率に合わせることができる。
【0013】
従って、本発明による方法は曲面壁に支持リングを構築する、より速く、且つより経済的な方法である。
【0014】
好ましくは、本方法は工程(d)の後、個々の煉瓦をそれ等の曲面壁内に予め特定された予定位置に配置及び固定する工程を含んで成る。
【0015】
1つの好適な実施態様によれば、工程(b)において、個々の煉瓦の曲面壁における予定位置がコンピュータプログラムを活用して計算される。
【0016】
もう1つの好適な実施態様によれば、工程(b)は、支持リング予備成形体を形成するように複数の煉瓦を仮想的及び/又は物理的にレイアウトすることを含んで成る。コンピュータプログラムを用いることにより、煉瓦を仮想的にレイアウトし、煉瓦の予定位置を支持リング内、そして曲面壁内に特定することできる。或いはまた、煉瓦はそれ等を床上に隣接して配置して支持リング予備成形体を形成することにより、物理的にレイアウトしても良い。
【0017】
前部切断線と後部切断線の位置を工程(c)で、コンピュータプログラムを活用して計算すると有利である。次いで、煉瓦は切断工具を用いて、これ等前後部切断線に沿って切断され、煉瓦の前後部を除去することができる。煉瓦の残る中央部が、曲面壁に設置されるべき、所望の形状と寸法を有する、付形化された煉瓦を表す。
【0018】
個々の煉瓦の外側基部は、支持リング予備成形体の外縁を形成する。方法は好ましくは、支持リング予備成形体の外縁を所定の形状に切断する更なる工程を含む。外縁を直線部に切断すると有利である。水平部及び垂直部は、既存の煉瓦積みに容易に組み込むことができる。中間部の組み込みも、容易に行うことができる。好ましくは、中間部は水平部に対して45°の角度とする。一側面が45°の角度で切断される煉瓦積み部を用いると、そのような中間部を高温送風加熱炉の煉瓦積みに組み込むことが容易になる。
【0019】
支持リング予備成形の外縁は好ましくは、工程(d)で切断される。側面の舌状及び溝状輪郭部は好ましくは、不規則なものとし、それにより煉瓦は互いに所定の関係に確実に留まるようになる。
【0020】
側面の舌状輪郭部と溝状輪郭部を楔形とし、それ等が略軸方向に延びるようにすると有利である。そのような舌状輪郭部と溝状輪郭部は特定の煉瓦が、一方の側の隣接煉瓦との連結により軸方向内側に移動するのを阻止する。軸方向外側への移動は、舌状及び溝状輪郭部の他方の側での、隣接する煉瓦への連結により阻止される。半径方向外側への移動もまた、舌状及び溝状輪郭部の略軸方向の連結により阻止される。最後に、半径方向内側への移動は舌状及び溝状輪郭部の略軸方向の連結と煉瓦の楔形により阻止される。従って、煉瓦が2つの隣接する煉瓦に挟まれると、如何なる方向へのその煉瓦の移動も阻止される。
【0021】
好適な実施態様によれば、その両側面に溝状輪郭部を備えるスタータ煉瓦少なくとも1つが設けられ、また、その両側面に舌状輪郭部を備えるエンド煉瓦少なくとも1つが設けられる。スタータ及びエンド煉瓦を用いることにより、エンド煉瓦の軸方向導入により支持リングを完成することができる。それにより、支持リングの構築が簡単になる。
【0022】
複数の標準化楔形煉瓦には、それ等の第1の側面に溝状輪郭部を備え、それ等の第2の側面に舌状輪郭部を備える時計回り方向の煉瓦と、それ等の第1の側面に舌状輪郭部を備え、それ等の第2の側面に溝状輪郭部を備える反時計回り方向の煉瓦が含まれる。そのような時計回り方向の煉瓦と反時計回り方向の煉瓦は、上記スタータ及びエンド煉瓦との関連において特に重要である。
【0023】
本発明の特に好適な実施態様によれば、支持リング(予備成形体)は、(a)第1のスタータ煉瓦及び直径方向に対向する第2のスタータ煉瓦と、(b)第1のエンド煉瓦及び直径方向に対向する第2のエンド煉瓦と、ここでエンド煉瓦はスタータ煉瓦間の中間にあって、(c)第1のスタータ煉瓦と第1のエンド煉瓦との間及び第2のスタータ煉瓦と第2のエンド煉瓦との間に配置される複数の時計回り方向の煉瓦と、(d)第1のスタータ煉瓦と第2のエンド煉瓦との間及び第2のスタータ煉瓦と第1のエンド煉瓦との間に配置される複数の反時計回り方向の煉瓦とを含んで成る。
【0024】
第1及び第2のスタータ煉瓦は、支持リング(予備成形体)の対向する側端部に設置することができる。次に、支持リング(予備成形体)を構築するように、時計回り方向の煉瓦及び反時計回り方向の煉瓦は両側でそれ等に夫々連結できる。最後に、時計回り方向の煉瓦と反時計回り方向の煉瓦が第1のスタータ煉瓦と第2のスタータ煉瓦の間の中間で出会う前に、第1及び第2のエンド煉瓦が挿入され支持リング(予備成形体)を完成する。
【0025】
第1の群の煉瓦が第1の楔角を、少なくとも1つ群の第2の煉瓦が第1の楔角とは異なる第2の楔角を有し、支持リングの種々の内径が上記第1の群からの煉瓦と上記少なくとも1つの第2の群からの煉瓦との組み合わせにより得られるようにすることができる。第1の群の煉瓦に対して第2の群の煉瓦の数及び頻度を変更することにより、支持リングの内径を選ぶことができる。各煉瓦がそれ自体の楔角をもつ複数の第2の煉瓦群を用いることにより、少なくとも3つの異なる楔角の煉瓦を用いることができ、それにより支持リングの内径を更に調整することができる。
【0026】
本発明の更なる実施態様によれば、支持リング予備成形体を形成するように複数の煉瓦を仮想的及び/又は物理的にレイアウトする工程が、支持リング予備成形体を直径方向に対向する下部2つと直径方向に対向する上部2つとに分割し、上記上部2つが上記下部2つに対して隆起する関係になるように煉瓦をレイアウトして成る。中間部を更に、これ等上部と下部間に設けることができる。これにより、支持リングは、支持リングが挿入されるべき曲面壁の曲率に大半対応するようにレイアウトできるようになる。それにより、煉瓦から除去されるべき前後部の寸法を小さくできる。
【0027】
個々の煉瓦を、例えば鋼金型に、プレス成形、好ましくは液圧プレス成形すると有利である。これにより、高品質の煉瓦が確実に製造されるようになる。
本発明は、添付図面を参照する、非限定実施態様の以下の記載からより明らかになるであろう。これ等図面において、同一参照番号は同一又は類似素子を示すのに用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明による方法を用いて構築される支持リング予備成形体(プリフォーム)の斜視図である。
【図2】図1の支持リング予備成形体の構築に用いられる標準化煉瓦1つの斜視図である。
【図3】図1の、外側縁部が適宜寸法に切断された支持リング予備成形体の斜視図である。
【図4】図2の煉瓦の斜視図であり、前部及び後部切断線を示す。
【図5】図2の、前部及び後部が切断された煉瓦の斜視図である。
【図6】曲面壁に即時設置可能な組立支持リングの斜視図である。
【図7】本発明の第2実施態様による方法を用いて構築された支持リング予備成形体の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は本発明の好適な実施態様に従って、複数の楔形煉瓦から構築される支持リング予備成形体(プリフォーム)10を示す。この実施態様では、支持リング予備成形体10は第1のスタータ煉瓦12と、正反対(直径)方向に対向する第2のスタータ煉瓦14と、第1のエンド煉瓦16と、正反対)(直径)方向に対向する第2のエンド煉瓦18とを含み、これ等エンド煉瓦16、18はスタータ煉瓦12、14間の中間に配置されている。スタータ及びエンド煉瓦12、14、16、18間には、複数の時計回り方向及び反時計回り方向の煉瓦20、22が配置され支持リング予備成形体10を完成させている。
【0030】
より詳細には、時計回り方向の煉瓦20は第1のスタータ煉瓦12と第1のエンド煉瓦16との間と、第2のスタータ煉瓦14と第2のエンド煉瓦18との間に配置され、反時計回り方向の煉瓦22は第1のスタータ煉瓦12と第2のエンド煉瓦18との間と、第2のスタータ煉瓦14と第1のエンド煉瓦16との間に配置されている。時計回り方向の煉瓦と反時計回り方向の煉瓦の違いは以下、明らかになろう。
【0031】
本質的に、支持リング予備成形体10の楔形煉瓦12、14、16、18、20、22の全ては形状及び寸法が略同一である。これ等煉瓦をより綿密に記載する目的のため、時計回り方向の煉瓦20の斜視図が図2に描かれている。そのような煉瓦20は前面24及び反対側の後面26と、内側基部28及び反対側の外側基部30を有し、内側基部28は外側基部30より小さく、支持リング予備成形体10の中心に向かって向いている。時計回り方向の楔状煉瓦20にはまた、隣接煉瓦20’、20”に連結するための2つの側面32、34があり、側面32、34には隣接する時計回り方向の煉瓦20’、20”の側面と協働するための舌状(凸状)及び溝状(凹状)輪郭部36、38が設けられている。時計回り方向の煉瓦20は前面24及び後面26を通る軸方向40と、内側基部28及び外側基部30を通る半径方向42とを有し、軸方向40は支持リング予備成形体10の軸と平行であり、半径方向42は支持リング予備成形体10の軸に対して直角であり、支持リング予備成形体の中心から時計回り方向の煉瓦20に向かって延びている。本発明の重要な特徴によれば、時計回り方向の煉瓦20の軸方向40の厚みTは、時計回り方向の煉瓦20の所望の最終厚みtより厚くなっている。
【0032】
本発明の重要な特徴によれば、煉瓦20の前面24から略軸方向40に後面26に延びると共に後面26の方向に狭まる輪郭部36、38を側面32、34が有している。時計回り方向の煉瓦20が2つの隣接する時計回り方向の煉瓦20’、20”間に挟まれると、その煉瓦20はどんな方向の移動も阻止される。軸方向内側への移動は一方の隣接時計回り方向の煉瓦20’への舌状及び溝状連結により妨げられ、軸方向外側への移動は他方の隣接時計回り方向の煉瓦20”への舌状及び溝状連結により妨げられる。半径方向外側への移動は略軸方向の舌状及び溝状連結により阻止され、半径方向内側への移動は煉瓦20の楔形により阻止される。
【0033】
尚、楔状煉瓦の上記記載は時計回り方向の煉瓦20に関してなされているが、この記載はスタータ煉瓦12、14、エンド煉瓦16、18及び反時計回り方向の煉瓦22に対しても有効である。だが、煉瓦はそれ等の舌状及び溝状輪郭部36、38の配置において異なることもある。
【0034】
スタータ煉瓦12、14はその側面32、34の両方に溝状輪郭部38を、エンド煉瓦16、18はその側面32、34の両方に舌状輪郭部36を有しても良い。時計回り方向の煉瓦20は第1の側面32に溝状輪郭部38を、第2の側面34に舌状輪郭部36を、反時計回り方向の煉瓦22は第1の側面32に舌状輪郭部36を、第2の側面34に溝状輪郭部38をもつ。
【0035】
図1の実施態様において、第1と第2のスタータ煉瓦12、14は支持リング予備成形体10の対向する側端に設置される。次いで、時計回り方向及び反時計回り方向の煉瓦20、22はそれ等に夫々、両側で連結され、支持リング予備成形体10を構築する。最後に、時計回り方向及び反時計回り方向の煉瓦20、22が第1と第2のスタータ煉瓦12、14間の中間で出会う直前に、第1と第2のエンド煉瓦16、18が挿入され支持リング予備成形体10を完成させる。
【0036】
だが、原則として一種のみの煉瓦、例えば各々が舌状輪郭部36付き第1の側面32と溝状輪郭部38付き第2の側面34を有する煉瓦を用いることもできる。
【0037】
本発明によれば、支持リング予備成形体10は一旦レイアウトされたら、例えば高温送風加熱炉の、曲面壁(図示せず)内の開口に合うように付形されなければならない。
【0038】
第1の付形工程で、個別の煉瓦12、14、16、18、20、22の外側基部により形成される支持リング予備成形体10の外縁44は、曲面壁内の開口に合うように切断される。そのような支持リング予備成形体10は図3に描かれている。外縁44は好ましくは、水平部46と、垂直部48と、水平部に対して45°の中間部50とから成る直線部に切断される。これ等部分の1つ以上に、高温送風加熱炉の曲面壁に適合する、例えば図3に示すような突起部52を設けることができる。水平及び垂直部46、48は、曲面壁の標準的煉瓦積みにおける一体化に特に適する。中間部50はまた、一側面を角度45°で切断させた煉瓦積み部(図示せず)の補助で、曲面壁の標準的煉瓦積みに容易に一体化することもできる。
【0039】
本発明の重要な特徴によれば、支持リング予備成形体10の煉瓦は軸方向40の厚みTを有し、これは支持リングの所望最終厚みtを上回る。個々の煉瓦12、14、16、18、20、22の前及び後面24、26によりそれぞれ形成される支持リング予備成形体10の前及び後側54、56は図1及び3に見られるように、略平らである。前及び後側54、56を曲面壁の曲率に合わせるため、前及び後側54、56は付形されなければならない。これは、各煉瓦12、14、16、18、20、22の前及び後部62、64を正確な切断線に従って切断することにより達成される。
【0040】
個々の煉瓦12、14、16、18、20、22の付形を、再び時計回り方向の煉瓦20に付いて図4を利用して説明する。
【0041】
先ず、特定煉瓦、例えば時計回り方向の煉瓦20の曲面壁における予定位置を決定する。これは、コンピュータプログラムを活用して行うことができる。次に、時計回り方向の煉瓦20の曲面壁における決定予定位置に基づいて、コンピュータプログラムが時計回り方向煉瓦20の付形のための前部及び後部切断線58、60を特定する。切断工具(図示せず)を用いて、時計回り方向煉瓦20は前部及び後部切断線58、60に沿って最終的に切断され、時計回り方向の煉瓦20の前及び後部62、64を除去する。時計回り方向煉瓦20の残る中央部66は図5に示すように、曲面壁における、その予定位置に合う形状と所望端部厚みtをもつ付形された時計回り方向煉瓦20を表す。
【0042】
個々の煉瓦12、14、16、18、20、22が上記方法により付形された後、それ等は図6に示すように付形化支持リング68に組み立てることができる。
【0043】
付形化支持リング68の後側56の曲率は高温送風加熱炉の曲面壁内側の曲率に対応し、付形化支持リング68の表側54の曲率は高温送風加熱炉の曲面壁外側の曲率に対応する。個々の煉瓦12、14、16、18、20、22を曲面壁における特定予定位置に設置及び固定した後には、付形化支持リング64は曲面壁と、内側でも外側でも、同一平面となる。
【0044】
本方法の利点は特に、多種多様な曲率に対して支持リングを構築できることである。
【0045】
支持リングの内径は楔形煉瓦の楔角Aにより決定されることが容易に理解されよう。図1〜6に示す実施態様によれば、煉瓦12、14、16、18、20、22は全て、楔角Aが同一である。
【0046】
添付図面には示されていないが、煉瓦12、14、16、18、20、22の幾つかが異なる楔角を有しても良い。2つの異なる楔角A、A'を用いることにより、支持リングの内径を異なる煉瓦の配置に応じて調節することができる。尚、支持リングの内径を更に調節するため、2つ以上の楔角を用いることもできる。
【0047】
異なる種の煉瓦の多様性をできるだけ小さく保つため、異なる楔角を2つにとどめるのが良い。そのような煉瓦の異なる組み合わせを用いて、所望の内径を得ることができる。
【0048】
本発明の更なる実施態様を図7に示す。この図は、支持リング予備成形体が2つの直径方向に対向する下部70、72と、2つの直径方向に対向する上部74、76とに分割されたものを示す。上部74、76の煉瓦12、14、20、22は、下部70、72の煉瓦16、18、20、22に対して軸方向に隆起した関係にある。2つの隣接煉瓦間の軸方向隆起関係は、これ等2つの隣接煉瓦間の溝状輪郭部を拡大することにより達成することができる。そのような配置により、支持リング予備成形体を煉瓦付形前に、曲面壁の曲率に大略合わせることができる。各煉瓦から除去されるべき前及び後部62、64を少なくでき、従って廃棄物を少なくすることができる。
【0049】
添付図面には示されていないが、中間部を下部70、72と上部74、76間に位置付けることができる。そのような中間部は、高温送風加熱炉の曲面壁の曲率によっては有利な場合がある。
【0050】
最後に、煉瓦は、例えばワイヤソー等の適宜であれば、どんな切断工具を用いて付形しても良いことに留意されるべきである。
【符号の説明】
【0051】
10 支持リング予備成形体
12 第1のスタータ煉瓦
14 第2のスタータ煉瓦
16 第1のエンド煉瓦
18 第2のエンド煉瓦
20 時計回り方向の煉瓦
20’ 隣接する時計回り方向煉瓦
20” 隣接する時計回り方向煉瓦
22 反時計回り方向の煉瓦
24 前面
26 後面
28 内側基部
30 外側基部
32 第1の側面
34 第2の側面
36 舌状輪郭部
38 溝状輪郭部
40 軸方向
42 半径方向
T 厚み
t 最終厚み
44 外縁
46 水平部
48 垂直部
50 中間部
52 突起部
54 前側
56 後側
58 前部切断線
60 後部切断線
62 前部
64 後部
66 中央部
68 付形化支持リング
A 楔角
A’ 楔角
70 下部
72 下部
74 上部
76 上部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
曲面壁に、特に高温送風加熱炉、又は高炉の曲面壁における開口の周りに支持リングを構築する方法であって、
(a)複数の楔形煉瓦を用意する工程と、ここで該煉瓦は
‐前面及び反対側の後面と、
‐内側基部及び外側基部と、ここで内側基部は外側基部より小さく、支持リングの中心に向かって向いており、
‐隣接する煉瓦に連結するための2つの側面と、ここで、これ等側面には隣接する煉瓦の側面と協働するための舌状輪郭部と溝状輪郭部が設けられており、
‐上記前後面を通る軸方向と、ここで軸方向は複数の煉瓦がレイアウトされ支持リングを形成するとき支持リングの軸に平行であり、
‐上記内側及び外側基部を通る半径方向と、ここで半径方向は複数の煉瓦がレイアウトされ支持リングを形成するとき支持リングの軸に直角であり、支持リングの中心から煉瓦に向かって延びており、煉瓦の軸方向厚みと、ここで該厚みは煉瓦の所望最終厚みより大きい、
を有しており、
(b)各個別煉瓦の曲面壁における予定位置を特定する工程と、
(c)個々の煉瓦の曲面壁における予定位置に基づいて、
‐煉瓦の前面を付形するための前部切断線の位置と、
‐煉瓦の後面を付形するための後部切断線の位置と
を特定する工程と、
(d)煉瓦の上記前面と後面を切断工具により、上記特定の前及び後部切断線に従って付形する工程と
を含んで成る方法。
【請求項2】
工程(d)の後、個々の煉瓦を前記特定の曲面壁における予定位置に設置して、固定する工程を含んで成る請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(d)において、個々の煉瓦の曲面壁における予定位置がコンピュータプログラムを活用して計算される請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
工程(b)が、支持リング予備成形体を形成するように複数の煉瓦を仮想的及び又は物理的にレイアウトすることを含んで成る請求項1〜3の何れか1つに記載の方法。
【請求項5】
工程(c)において、前部切断線及び後部切断線の位置がコンピュータプログラムを活用して計算される請求項1〜4の何れか1つに記載の方法。
【請求項6】
個々の煉瓦の外側基部が支持リング予備成形体の外縁を形成するようにし、支持リング予備成形体の外縁を切断する工程を更に含んで成る請求項1〜5の何れか1つに記載の方法。
【請求項7】
請支持リング予備成形体の外縁が工程(d)の前に切断されるようにして成る請求項6に記載の方法。
【請求項8】
上記側面の舌状及び溝状輪郭部が不規則である請求項1〜7の何れか1つに記載の方法。
【請求項9】
上記祖家面の舌状輪郭部及び溝状輪郭部が楔形であり、略軸方向に伸びるようにして成る請求項1〜8の何れか1つに記載の方法。
【請求項10】
スタータ煉瓦が少なくとも1つ設けられ、その両側に溝状輪郭部を有して成る請求項1〜9の何れか1つに記載の方法。
【請求項11】
エンド煉瓦が少なくとも1つ設けられ、その両側に舌状輪郭部を有して成る請求項1〜10の何れか1つに記載の方法。
【請求項12】
複数の標準化煉瓦は
‐その第1の側面に溝状輪郭部が、その第2の側面に舌状輪郭部が設けられた時計回り方向の煉瓦と、
‐その第1の側面に舌状輪郭部が、その第2の側面に溝状輪郭部が設けられた反時計回り方向の煉瓦と
を含んで成る請求項1〜12の何れか1つに記載の方法。
【請求項13】
前記支持リング予備成形体が
‐第1のスタータ煉瓦及び直径方向に対向する第2のスタータ煉瓦と、
‐第1のエンド煉瓦及び直径方向に対向する第2のエンド煉瓦と、ここでエンド煉瓦はスタータ煉瓦間の中間にあって、
‐第1のスタータ煉瓦と第1のエンド煉瓦との間及び第2のスタータ煉瓦と第2のエンド煉瓦との間に配置される複数の時計回り方向と、
‐第1のスタータ煉瓦と第2のエンド煉瓦との間及び第2のスタータ煉瓦と第1のエンド煉瓦との間に配置される複数の反時計回り方向と
を含んで成る請求項10〜12の何れか1つに記載の方法。
【請求項14】
第1の群の煉瓦が第1の楔角を、少なくとも1つ群の第2の煉瓦が第1の楔角とは異なる第2の楔角を有し、支持リングの種々の内径が上記第1の群からの煉瓦と上記少なくとも1つの第2の群の組み合わせにより得られるようにして成る請求項1〜13の何れか1つに記載の方法。
【請求項15】
支持リング予備成形体を形成するように複数の煉瓦を仮想的及び又は物理的にレイアウトする工程が
支持リング予備成形体を直径方向に対向する下部2つと直径方向に対向する上部2つとに分割し、
上記上部2つが上記下部2つに対して隆起する関係になるように煉瓦をレイアウトして成る請求項1〜14の何れか1つに記載の方法。
【請求項16】
中間部少なくとも1つを前記上部と前記下部間に位置付けるようにして成る請求項15に記載の方法。
【請求項17】
個々の煉瓦をプレス成形、特に液圧プレス成形して成る請求項1〜16の何れか1つに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−526277(P2010−526277A)
【公表日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−506901(P2010−506901)
【出願日】平成20年4月30日(2008.4.30)
【国際出願番号】PCT/EP2008/055357
【国際公開番号】WO2008/135505
【国際公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(509299064)ポール ヴルス リフラクトリー アンド エンジニアリング ゲーエムベーハー (6)
【氏名又は名称原語表記】PAUL WURTH REFRACTORY& ENGINEERING GmbH
【Fターム(参考)】