説明

曳舟収容バケツ

【課題】より軽快に友釣りを楽しみたいという釣人の要請に応えるべく、曳舟が釣場までのオトリ缶として使用される際に当該曳舟を安定的に収容保持する曳舟収容バケツの提供。
【解決手段】オトリ鮎が収容された曳舟20は、船尾60が底面38に当接するように起立姿勢でバケツ本体30に収容される。ポケット12にはエアポンプが収容されており、このエアポンプから曳舟20の収容室に空気が供給される。バケツ本体30は、曳舟20を収容するのに適している。すなわち、バケツ本体30は、底面38の面積が450cm程度に設定されている。また、バケツ本体30は、軸方向寸法Hが47cm程度に設定されている。さらに、バケツ本体30には、上面37の面積よりも底面38の面積が小さくなるように87/1000程度のテーパが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣りに使用される容器、特に鮎釣りに使用される鮎釣用曳舟(以下、単に「曳舟」とも称される。)を収容するバケツの構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鮎釣りでは、「友釣り」と称される釣法が採用されることが多い。友釣りでは、釣人が釣竿を操作することによって、掛針が取り付けられたオトリ鮎を所望のポイントへ泳がせる。そして、このオトリ鮎がターゲットとなる鮎のテリトリーに侵入すると、ターゲットとなる鮎は、オトリ鮎にアタックし、その結果、上記掛針に引っ掛かって釣り上げられる。
【0003】
一般に友釣りの実釣では、釣人は、予め釣餌店等で数尾のオトリ鮎を購入する。釣人は、購入したオトリ鮎を水と共に「オトリ缶」(例えば、特許文献1および特許文献2参照。)と称される容器に収容し、これを釣場まで携帯する。このとき、釣人は、オトリ缶と共に「曳舟」と称される船形に形成された容器も携帯する(例えば、特許文献3および特許文献4参照。)。釣人は、釣場に到着したならば、3〜4尾のオトリ鮎をオトリ缶から曳舟へ移し、この曳舟を川面に浮かべた状態で自己の身体に係留し、釣場を移動する。なお、オトリ缶は釣場の所望の位置に固定され、釣人は、釣れた鮎の保管やオトリ鮎の補充その他必要な場合に、このオトリ缶の位置まで戻る。
【0004】
【特許文献1】特開2005−40026号公報
【特許文献2】特開2005−40028号公報
【特許文献3】特開2005−295936号公報
【特許文献4】特開平7−95840号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように従来の鮎釣り(友釣り)では、釣人は、釣竿や仕掛け等のほかオトリ缶や曳舟を携帯して釣場へ赴く必要がある。そのため、友釣りは、重装備を強いられる釣りであり、入門者にとっては、いわゆる敷居の高い釣りである。したがって、もし釣人がオトリ缶を携帯することなく釣場まで移動することができれば、友釣りはもっと手軽な釣りになる。
【0006】
ところで、曳舟は実釣中に川面に浮かべて使用される。その際、曳舟内に常に新鮮な水が流れるように、曳舟には複数の通水孔が設けられている。この通水孔は、一般に曳舟の前面及び側面の中央に設けられており、曳舟の中央から後方部分は、外部と連通する孔や窓が設けられていない。したがって、曳舟は、後端(船尾)を下にして起立された場合には、内部の中央から後方側に貯水することが可能である。つまり、曳舟は、3〜4尾のオトリ鮎を収容することができるオトリ缶として機能する。ただし、曳舟には上記通水孔が設けられているから、釣人が釣場までのオトリ鮎の搬送用容器として曳舟を使用した場合、すなわち、この曳舟が自動車内に配置された場合には、自動車の走行中に曳舟の内部の水が上記通水孔から溢れてしまうおそれがある。
【0007】
本発明は、かかる背景のもとになされたものであり、その目的は、より軽快に友釣りを楽しみたいという釣人の要請に応えるべく、曳舟が釣場までのオトリ缶として使用される際に当該曳舟を安定的に収容保持する曳舟収容バケツを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1) 上記目的が達成されるため、本発明に係る曳舟収容バケツは、内部にオトリ鮎を収容する収容室が区画され船首前面および左右両舷側面に外から上記収容室に連通する通水孔が設けられた鮎釣用曳舟を収容する曳舟収容バケツであって、開口が設けられた上面を有し上記鮎釣用曳舟の船尾が底面に当接するように当該鮎釣用曳舟が起立姿勢で収容されるバケツ本体と、上記バケツ本体に収容された鮎釣用曳舟の収容室に空気を供給するエアポンプを収容するポケットとを有し、上記バケツ本体は、上記底面の面積が310cm〜500cmの範囲内に設定され、軸方向寸法が30cm〜50cmの範囲内に設定され、且つ上記上面の面積よりも上記底面の面積が小さくなるように80/1000〜95/1000のテーパが設けられている。
【0009】
鮎釣用曳舟の内部には、収容室が区画されている。友釣りで使用されるオトリ鮎は、この収容室に収容される。鮎釣用曳舟には、船首前面および左右両舷側面に通水孔が設けられている。このため、鮎釣用曳舟が川面に浮かべられた際に、船首前面の通水孔から収容室に新鮮な水が流入する。鮎釣用曳舟の左右両舷に設けられた通水孔よりも後方側には、外部と連通する孔や窓は設けられていない。したがって、鮎釣用曳舟がその船尾を下にして起立された姿勢では、鮎釣用曳舟はオトリ缶として機能する。
【0010】
本発明の曳舟収容バケツは、鮎釣用曳舟を収容するのに適している。曳舟収容バケツは、バケツ本体とポケットとを有している。バケツ本体の上面には開口が設けられており、曳舟はこの開口からバケツ本体に収容される。鮎釣用曳舟は、その船尾がバケツ本体の底面に当接するように起立した姿勢で当該バケツ本体に収容される。ポケットにはエアポンプが収容されており、このエアポンプからバケツ本体に収容された鮎釣用曳舟の収容室に空気が供給される。
【0011】
上述のバケツ本体は、底面の面積が310cm〜500cmの範囲内に設定されている。すなわち、バケツ本体の底面の面積は、一般的な鮎釣用曳舟の船尾の面積に対応されている。また、バケツ本体には、上面の面積よりも底面の面積が小さくなるように80/1000〜95/1000のテーパが設けられている。このため、バケツ本体に鮎釣用曳舟を入れやすく、しかも、鮎釣用曳舟は、船尾が下となるように起立した姿勢でバケツ本体に安定的に収容保持される。また、バケツ本体の軸方向寸法は、30cm〜50cmの範囲内に設定されている。このため、バケツ本体の上面は、上述のように収容保持された鮎釣用曳舟の少なくとも左右両舷の通水孔よりも充分に高い位置となる。したがって、鮎釣用曳舟の通水孔から水が溢れたとしても、溢れた水がバケツ本体から流出することが効果的に防止される。
【0012】
(2) 上記上面を開閉する蓋が設けられていてもよい。
【0013】
釣人は、バケツ本体の開口を開放するために蓋を開く。これにより、バケツ本体の内側が露出されるので、釣人にとって鮎釣用曳舟を収容しやすい。また、釣人が蓋を閉じることによりバケツ本体の上面が閉塞される。このため、鮎釣用曳舟の通水孔から水が溢れたとしても、溢れた水がバケツ本体から流出することが確実に防止される。
【0014】
(3) 上記バケツ本体の両側面に掛け渡されたベルト本体と、当該ベルト本体に設けられ、自動車のシートのヘッドレストの前面側に係止され得る係止パッドとを備えた吊下ベルトが設けられていてもよい。
【0015】
この構成では、曳舟収容バケツが自動車のシートに吊り下げられるようにして支持されるので、自動車の走行中における曳舟収容バケツの揺れが軽減される。このため、鮎釣用曳舟がより安定的に収容保持される。
【0016】
(4) 上記バケツ本体は、可撓性を有する材料からなることが好ましい。
【0017】
この構成により、移送中の曳舟収容バケツに対する衝撃が緩和される。このため、鮎釣用曳舟の揺れが軽減され、鮎釣用曳舟がより安定的に収容保持される。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、鮎釣用曳舟が起立状態で安定的に保持される。したがって、鮎釣用曳舟がオトリ缶として使用された場合であっても、搬送中の水の漏れが確実に防止される。その結果、釣人は、友釣りの際に従来のような重装備でなく、オトリ缶を兼ねる鮎釣用曳舟のみを携帯した軽装備で釣場に赴くことができる。すなわち、釣人は軽快に友釣りを楽しむことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0020】
図1は、本発明の実施形態に係る曳舟収容バケツ10の前面側を示す斜視図である。図2は、曳舟収容バケツ10の背面側を示す斜視図である。
【0021】
友釣りでは、オトリとして使用される鮎(オトリ鮎)を生きたまま保存するために鮎釣用曳舟20(図3〜図6参照)が使用される。曳舟収容バケツ10は、この鮎釣用曳舟(以下、単に「曳舟」と称される。)20を起立姿勢で収容するものである。この曳舟収容バケツ10の特徴とするところは、バケツ本体30が曳舟20を収容するために最適な大きさ及び形状に構成されている点である。これにより、曳舟20が釣場までのオトリ鮎の搬送容器、すなわちオトリ缶として使用される際に、曳舟20が曳舟収容バケツ10によって安定的に収容保持される。換言すれば、起立姿勢の曳舟20が倒れたりすることなく、バケツ本体30によって安定的に支持される。
【0022】
図3は、左舷前方から見た曳舟20の斜視図である。図4は、曳舟20の左側面図である。図5は、曳舟20の右側面図である。図6は、曳舟20の背面図であって、船尾60の外面61の形状が示されている。
【0023】
曳舟20は、実釣中においては、釣人の身体等に係留された状態で川面に浮かべられる。曳舟20は、曳舟本体21と、係留ロープ22(図3参照)とを備えている。この係留ロープ22の一端は、曳舟本体21の船首に設けられたロープアンカー23(図3〜図5参照)に連結され、他端が例えば釣人の腰部に繋がれる。
【0024】
図3〜図6が示すように、曳舟本体21は、ボート状の外観を呈している。この曳舟本体21は、例えばアクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体(ABS)やポリプロピレン(PP)等の樹脂から構成される。図には表れていないが、曳舟本体21の内部は空洞になっており、この空洞内にオトリ鮎を収容する収容室が区画されている。
【0025】
曳舟本体21の上面24には、上蓋25が設けられている。この上蓋25は、上面24に形成された開口を開閉するものであり、ヒンジ26を介して曳舟本体21に取り付けられている。上蓋25は、倒伏して開口を閉塞する姿勢(図3〜図6が示す状態)と、上面24に対して起立して開口を開放する姿勢との間で回動自在に構成されている。この上蓋25が起立姿勢となったときは、上蓋25によって閉塞されていた開口が露出する。この開口は上記収容室と連通しており、釣人は、上蓋25を開いた状態で容易にオトリ鮎を上記収容室に出し入れすることができる。上蓋25には、上蓋25をロックしそのロックを解除するためのノブ27が設けられている(図3〜図5参照)。釣人は、このノブ27を操作することによって上蓋25を開閉することができる。また、上蓋25には扉28(図3参照)が設けられている。この扉28は、いわゆる観音開き式の扉であり、曳舟本体21の内側に開閉するようになっている。このため、釣人は、上蓋25を開くことなく釣れた鮎を扉28から容易に上記収容室へ入れることができる。
【0026】
図3〜図5が示すように、曳舟本体21には、曳舟本体21の外から上記収容室に連通する通水孔50〜55が設けられている。通水孔50〜52は、曳舟本体21の船首前面57(図4において曳舟本体21の左側)に設けられている。各通水孔50〜52は、船首前面57に左右対称に配置されている(図4および図5参照)。通水孔53〜55は、曳舟本体21の左右両舷側面に設けられている。すなわち、通水孔53〜55は、曳舟本体21の左舷側面58(曳舟本体21の進行方向左側面,図4参照)および右舷側面59(曳舟本体21の進行方向右側面,図5参照)に設けられている。
【0027】
曳舟本体21は、実釣中は係留ロープ22が釣人に係留された状態で川面に浮かべられる。この状態では、川の水が曳舟本体21の正面から船首前面57に当たる。このため、通水孔50〜52から曳舟本体21内部の収容室へ川の水が流入する。流入した水は、曳舟本体21の左舷側面58および右舷側面59に設けられた通水孔53〜55から外部へ排出される。このように、曳舟本体21に通水孔50〜55が設けられていることにより、曳舟本体21の収容室に川の水が円滑に供給される。
【0028】
曳舟本体21の船尾60の外面61は、ほぼ平らに形成されている(図4および図5参照)。また、曳舟本体21は、通水孔50〜55よりも船尾60(曳舟本体21の後端)側には外部と連通する孔や窓が設けられていない。このため、曳舟20は、船尾60(図6参照)が下となるように起立された姿勢(以下、「起立姿勢」とも称される。)で自立し、この状態で貯水できるように構成されている。本実施形態で例示された曳舟20は、約4リットルの水を貯水できるように構成されている。したがって、曳舟20は、起立姿勢において3〜4尾のオトリ鮎を収容することができるオトリ缶として機能する。
【0029】
図1および図2が示すように、曳舟収容バケツ10は、曳舟20が釣場までのオトリ缶として使用される際に当該曳舟20を収容するものである。この曳舟収容バケツ10は、バケツ本体30と、バケツ本体30の前面31に設けられたポケット12と、バケツ本体30の両側面32,33に掛け渡された吊下ベルト16とを有している。
【0030】
図7は、バケツ本体30の開口36を示す曳舟収容バケツ10の斜視図である。
【0031】
図7が示すように、バケツ本体30は、開口36(図7および図12参照)が設けられた上面37(図7および図12参照)を有する有底筒状部材からなる。換言すれば、バケツ本体30は、上面37に開口36を有し、かつ底面38を有する容器状に構成されている。バケツ本体30は、底面38と底面38の周縁に立設された壁部35とを備えている(図1、図2および図7参照)。バケツ本体30の底面38および壁部35は、可撓性を有する材料からなる。具体的には、底面38および壁部35は、シート状の合成樹脂から構成されている。合成樹脂としては、例えばエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)が好適に採用される。
【0032】
底面38は、シート状の合成樹脂が略長方形に成形されたものである。壁部35は、シート状の合成樹脂の両側縁40,41が背面34側で互いに溶着されることにより筒状に成形されたものである(図2および図10参照)。壁部35は、その下端の周縁が底面38の周縁に溶着されており、これによりバケツ本体30が構成されている。バケツ本体30は、上面37の面積よりも底面38の面積が小さくなるように壁部35が構成されている。すなわち、バケツ本体30は、上面37から底面38に向けて徐々に縮径されている。この壁部35に設けられたテーパについては、後に詳述される。図には表れていないが、壁部35の上端には矩形に屈曲形成された芯材が設けられている。すなわち、この芯材は、上記開口36の周縁に沿って配置されている。壁部35の上端は、この芯材の内側から外側へ巻き掛けられ、壁部35の外周面に溶着されている。これにより、壁部35の上端に上記上面37が構成され、芯材の内側に上記開口36が形成されている(図7参)。このようにバケツ本体30が構成されることにより、バケツ本体30は、上面37に底面38と相似形で底面38よりも広い開口36が形成される(図7参照)。なお、バケツ本体30は、外部に水が漏れることがないように、防水構造が採用されている。
【0033】
図1および図8が示すように、壁部35の前面31にはポケット12が設けられている。このポケット12は、その背面が壁部35の前面31に溶着されている。ポケット12は、ファスナー13を備えている。このファスナー13が開かれることによりポケット12の開口が開放され、エアポンプがポケット12内部に収容可能となる。なお、図1および図8には、エアポンプがポケット12に収容され、一端がエアポンプに連結されたチューブ11がバケツ本体30の内部に収められた状態が示されており、エアポンプは図には表れていない。エアポンプは、ファスナー13が開かれた状態でポケット12に入れられた後にファスナー13が閉じられることによりバケツ本体30の前面31に固定される。すなわち、ポケット12は、エアポンプを出入自在に収容するものである。このようにバケツ本体30の外側に固定されたエアポンプにより、バケツ本体30の内部に収容された曳舟20の収容室に空気が供給される。なお、ポケット12の位置は壁部35の前面31に限定されるものではない。すなわち、ポケット12は、壁部35の左側面32、右側面33、または背面34に設けられてもよい。
【0034】
図8は、バケツ本体30に設けられた吊下ベルト16を示す斜視図である。図9は、バケツ本体30の左側面32に設けられた取付具43aの拡大斜視図である。
【0035】
図1、図2、図7〜図9が示すように、バケツ本体30の両側面32,33には取付具43が設けられている。すなわち、バケツ本体30の左側面32に取付具43aが設けられ、バケツ本体30の右側面33に取付具43bが設けられている。取付具43a,43bは、吊下ベルト16をバケツ本体30に取り付けるためのものであり、同一形状のものである。図9が示すように、取付具43aは、取付具本体44、ガイド部46および巻掛部47を有しており、これらは一体的に構成されている。取付具本体44は、その周縁が壁部35の左側面32に溶着されている。ガイド部46は、取付具本体44の両側に掛け渡されるように設けられている。このガイド部46と取付具本体44との間には空間が設けられており、これによりベルト挿通孔45が形成されている。ベルト挿通孔45の下方には、巻掛部47が設けられている。巻掛部47は、ガイド部46と同様に取付具本体44の両側に掛け渡されるように設けられている。
【0036】
図1、図2、図7および図8が示すように、バケツ本体30は吊下ベルト16を備えている。吊下ベルト16は、曳舟収容バケツ10を自動車のシートに吊り下げるためのものである(図13参照)。吊下ベルト16は、ベルト本体17、係止パッド18および係止具19を備えている(図8参照)。ベルト本体17は、細長帯状に形成され、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)等からなる。ベルト本体17は、バケツ本体30の両側面32,33に掛け渡されている。すなわち、ベルト本体17は、取付具43aおよび取付具43bに取り付けられている。
【0037】
ベルト本体17は、以下の要領で取付具43a,43bに取り付けられる。すなわち、図8が示すように、ベルト本体17は、その一端が係止具19に固定される。このベルト本体17は、図9が示すように、取付部43aのベルト挿通孔45に上から挿入され、巻掛部47と左側面32との間の空間に挿通される。挿通されたベルト本体17は、巻掛部47を巻き込むようにして上方へ折り返される。そして、ベルト本体17はベルト挿通孔45を介して取付部43aの上方へ案内され、係止具19に設けられたベルト挿通孔に挿通される。このベルト本体17は、その一端側と同じ要領でその他端が取付具43bに取り付けられる。すなわち、ベルト本体17は、その他端が取付具43bの巻掛部47に引っ掛けられた状態で折り重ねられ、重なり合ったベルト本体17が互いに縫い合わされる(図7参照)。
【0038】
図8が示すように、ベルト本体17には係止パッド18が設けられている。係止パッド18は、ネオプレンゴム等の弾性に富む材料からなる。これにより、係止パッド18は、自動車のシート70のヘッドレスト71の前面側に容易に係止される(図13参照)。係止パッド18は、ベルト本体17よりも幅寸法が大きく、ベルト本体17の長手方向にスライド可能に構成されている。したがって、釣人は、係止パッド18の位置をベルト本体17における任意の位置に容易に変更することができる。係止パッド18は、合成樹脂などがベルト本体17の長手方向を長辺とする平板形状に成形されたものであるが、この係止パッド18に衝撃を吸収する緩衝部材がさらに設けられてもよい。
【0039】
図10は、バケツ本体30の開口36が閉塞された状態を示す曳舟収容バケツ10の背面側の拡大斜視図である。
【0040】
バケツ本体30には、上面37を開閉する蓋62が設けられている。蓋62は、開口36の水平断面と略同形状に成形されたシート状の合成樹脂からなる。蓋62は、バケツ本体30の背面34の上縁39に連結されている。具体的には、図7および図10が示すように、バケツ本体30の上縁39と蓋62の背面側との間に掛け渡すように連結シート65が縫い付けられている。この連結シート65は、上縁39と蓋62の背面側との間に架け渡すように配置されている。この連結シート65はヒンジを構成しており、蓋62はバケツ本体30に対して回動自在となっている。換言すれば、蓋62はバケツ本体30の上縁39にヒンジ結合されており、バケツ本体30の開口36を開放する開姿勢(図7および図12参照)と、バケツ本体30の開口36を閉塞する閉姿勢(図1、図8および図10参照)との間で姿勢変化可能となっている。
【0041】
また、図1および図7が示すように、バケツ本体30の上面37の周縁および蓋62の周縁に沿ってファスナー63が設けられている。ファスナー63は、連結シート65の両側からバケツ本体30の前面31側にわたって設けられている。このファスナー63が開かれることにより蓋62がバケツ本体30に対して回動可能となり、開口36が開閉される。逆に、ファスナー63が閉じられることにより、開口36が閉塞される。このファスナー63が設けられているので、釣人は、バケツ本体30の開口36を確実かつ容易に開閉することができる。
【0042】
上記構成を備える曳舟収容バケツ10は、曳舟20が安定的に収容保持されるように各寸法が以下のように設定されている。バケツ本体30の底面38の面積は、曳舟20の船尾60(図6参照)の面積に対応するように設定されている。本実施形態においては、曳舟本体21の船尾60の幅Mは19cm程度に設定され、船尾60の高さNは13.5cm程度に設定されている(図6参照)。すなわち、曳舟本体21の船尾60の面積は257cm程度である。これに対して、バケツ本体30の底面38は、略長方形の船尾60と互いに略相似形の関係となるように、幅Wおよび奥行きD(図1参照)が設定されている。ここでは、底面38の幅Wおよび奥行きDは、船尾60の幅Mおよび高さNのそれぞれ130%程度に設定されている。すなわち、底面38は、幅Wが25cm程度に設定され、奥行きDが18cm程度に設定されている。したがって、本実施形態におけるバケツ本体30の底面38の面積は、450cm程度に設定されている。なお、ここで底面38の幅Wおよび奥行きDが船尾60の幅Mおよび高さNのそれぞれ130%程度に設定されているのは、曳舟20をバケツ本体30に入れやすく、且つ曳舟20がバケツ本体30に安定的に支持されるようにするためである。したがって、この点を考慮して、底面38の幅Wおよび奥行きDは、船尾60の幅Mおよび高さNのそれぞれ120%〜135%程度の範囲内に設定されることが好ましい。
【0043】
ところで、友釣りでは、収容室に収容されるオトリ鮎の数等に応じて様々な大きさの曳舟が収容される。曳舟20は、これらの曳舟の一例である。したがって、バケツ本体30に収容される曳舟20の大きさが変われば、それに応じてバケツ本体30の底面38の面積も変更される。このため、底面38の面積は、本実施形態で例示した面積450cm程度の70〜110%程度となるように、310cm〜500cmの範囲内に設定される。ただし、底面38の面積は、曳舟20の船尾60の面積に対応するように決定されるものである。したがって、バケツ本体30に収容される曳舟20が小型のものであれば底面38の面積はそれに応じて小さい値(例えば310cm)に設定され、バケツ本体30に収容される曳舟20が大型のものであれば底面38の面積はそれに応じて大きい値(例えば480cm)に設定される。
【0044】
また、バケツ本体30の軸方向寸法(高さ)Hは、以下のように設定されている。軸方向寸法Hは、曳舟20の船尾60から通水孔55の先端までの長さK(図4参照)と、曳舟20の船首56から船尾60までの長さL(図4参照)とを考慮して設定されている。本実施形態においては、長さLが45cm程度、長さKが26cm程度に設定されている。このため、バケツ本体30の軸方向寸法Hは、この長さLよりも若干大きくなるように、47cm程度に設定されている。なお、軸方向寸法Hは、これに限定されるものではなく、少なくとも長さLよりも大きければよく、長さLよりも若干大きければより好ましい。また、上述のように、友釣りでは様々な大きさの曳舟20が使用される。したがって、バケツ本体30の軸方向寸法Hは、これらのことを考慮して30cm〜50cmの範囲内に設定される。すなわち、軸方向寸法Hは、長さL及び長さKの少なくともいずれか一方を考慮して設定される。
【0045】
また、バケツ本体30には、上面37の面積よりも底面38の面積が小さくなるように87/1000程度のテーパが設けられている。もっとも、このテーパは、80/1000〜95/1000の範囲内で設定される。なお、バケツ本体30の各寸法および形状がこのように設定されることによる作用効果については後に詳述される。
【0046】
図11は、バケツ本体30に曳舟20が収容される様子を示す斜視図である。図12は、曳舟20が収容されたバケツ本体30を示す斜視図である。
【0047】
本実施形態に係る曳舟収容バケツ10は、オトリ缶として以下のように使用される。
【0048】
釣人は、曳舟20(図3〜図6参照)を船尾60が下となるように起立させてその内部に注水する。これにより、曳舟本体21内部の中央から後方(船尾60)側に貯水される。この状態で、釣人は、ノブ27を操作して上蓋25を開き、釣餌店等で予め購入したオトリ鮎を曳舟20の内部に投入する。
【0049】
次に、釣人は、ファスナー63を操作してバケツ本体30の蓋62を開く。これにより、バケツ本体30の開口36が開放され、バケツ本体30の内側が露出される(図7参照)。釣人は、オトリ鮎が収容された曳舟20をそのままの姿勢(起立姿勢)でバケツ本体30に入れる(図11参照)。このバケツ本体30には、上面37の面積よりも底面38の面積が小さくなるように87/1000程度のテーパが設けられている。すなわち、曳舟20の船尾60の形状に対応して形成された底面38の面積よりも上面37の面積の方が広くなっている。したがって、釣人にとって曳舟20を収容しやすいという利点がある。もっとも、かかる作用効果は、上記テーパが80/1000〜95/1000の範囲に設定されることにより奏される。
【0050】
バケツ本体30に入れられた曳舟20は、船尾60がバケツ本体30の底面38に当接するように起立した姿勢でバケツ本体30に収容される(図12参照)。このバケツ本体30は、上述のようにテーパが設けられると共に底面38の面積が310cm〜500cmの範囲内に設定されている。すなわち、バケツ本体30の底面38の面積は、曳舟20の船尾60の面積に対応されている。したがって、曳舟20は、船尾60が下となるように起立した姿勢でバケツ本体30に安定的に収容保持される。これにより、曳舟20が収容された曳舟収容バケツ10を運ぶ際に、曳舟20がぐらつくことが効果的に抑制される。
【0051】
バケツ本体30には、予めポケット12にエアポンプが収容されている。釣人は、このエアポンプに接続されているチューブ11を扉28から曳舟20の内部に挿し込み、エアポンプの電源を投入する。これにより、バケツ本体30に収容された曳舟20の収容室に空気が供給される。釣人は、ファスナー63を操作してバケツ本体30の上面37を閉塞する。曳舟20は、このようにして曳舟収容バケツ10に収容される。
【0052】
なお、バケツ本体30の軸方向寸法Hは、30cm〜50cmの範囲内に設定されている。このため、バケツ本体30の上面37は、バケツ本体30に収容保持された曳舟20の少なくとも左右両舷58,59の通水孔53〜55よりも充分に高い位置となる。軸方向寸法Hは、本実施形態においては、曳舟20の長さL(45cm)よりも大きくなるように47cm程度に設定されている。このため、バケツ本体30の上面37は、バケツ本体30に収容保持された曳舟20の船首56よりも高い位置となる。したがって、曳舟20の通水孔53〜55から水が溢れたとしても、溢れた水がバケツ本体30から流出することが効果的に防止される。
【0053】
加えて、本実施形態においては、バケツ本体30の上面37が蓋62によって閉塞されるように構成されている。したがって、曳舟収容バケツ10が大きく揺れて曳舟20の通水孔50〜52から水が溢れたとしても、溢れた水がバケツ本体30から流出することはない。
【0054】
図13は、ヘッドレスト71に吊り下げられた曳舟収容バケツ10を示す斜視図である。
【0055】
釣人は、上述のように曳舟20が収容された曳舟収容バケツ10を自動車のシート70のヘッドレスト71に吊り下げる。具体的には、釣人は、曳舟20が収容されているバケツ本体30をシート70の後ろに配置し、係止パッド18がヘッドレスト71の前面側に係止されるように、吊下ベルト16をヘッドレスト71に引っ掛ける。これにより、バケツ本体30が宙づりの状態でヘッドレスト71に支持される。このように、曳舟収容バケツ10がシート70に吊り下げられるようにして支持されるので、自動車の走行中における曳舟収容バケツ10の揺れが軽減される。また、バケツ本体30は、可撓性を有する材料から構成されているので、移送中の曳舟収容バケツ10に対する衝撃が緩和される。したがって、曳舟20が曳舟収容バケツ10によって安定的に収容保持され、曳舟20に対する揺れも軽減されるので、オトリ鮎の体力の消耗が最小限に抑えられる。
【0056】
図14は、バケツ本体30の背面側にゴムシート68が設けられた曳舟収容バケツ10の背面側の拡大斜視図である。
【0057】
図14が示すように、バケツ本体30の背面34にゴムシート68が設けられてもよい。ゴムシート68は、帯状のものであり、連結シート65を覆うように設けられている。ゴムシート68は、例えばアクリロニトリル ブタジエンゴム(NBR)などの合成ゴムから構成される。このゴムシート68は、連結シート65の両側に位置するファスナー生地64(図14参照)に掛け渡されている。具体的には、ゴムシート68は、連結シート65を覆い、ゴムシート68の両端がファスナー生地64に接着剤により貼着されている。
【0058】
バケツ本体30が宙づりの状態でヘッドレスト71に支持された状態(図13参照)では、ゴムシート68はシート70の背面側に当接する。このため、背面34にゴムシート68が設けられていない場合に比べて、曳舟収容バケツ10が揺れた際のシート70に対するバケツ本体30の摺動抵抗が大きくなる。したがって、シート70に対する曳舟収容バケツ10の滑りが抑制される。その結果、移送中における曳舟収容バケツ10の揺れがさらに低減される。なお、ゴムシート68を貼着する位置は、連結シート65を覆う位置に限定されるものではなく、バケツ本体30におけるシート70との接触面であれば、例えば上縁39(連結シート65の下方)でもよい。
【0059】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、以下の形態であってもよい。
【0060】
上記実施形態では、上面37を開閉する蓋62がバケツ本体30に設けられているが、バケツ本体30には必ずしも蓋62を設ける必要はない。ただし、蓋62を設けた場合、釣人が蓋62を閉じることによりバケツ本体30の上面37が閉塞される。このため、曳舟20の通水孔50〜55から水が溢れたとしても、溢れた水がバケツ本体30から流出することが確実に防止される。したがって、バケツ本体30には蓋62を設けることが好ましい。
【0061】
また、本実施形態では、バケツ本体30に吊下ベルト16が設けられているが、必ずしも吊下ベルト16を設ける必要はない。ただし、吊下ベルト16を設けた場合、曳舟収容バケツ10を自動車のシートに吊り下げることによって自動車の走行中における曳舟収容バケツ10の揺れが大幅に軽減される。したがって、バケツ本体30に吊下ベルト16を設けることが好ましい。
【0062】
また、バケツ本体30の材料は、可撓性を有するものに限定されるものではない。バケツ本体30は、可撓性に乏しい、例えばアクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体(ABS)やポリプロピレン(PP)等から構成されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、釣りに使用される容器、特に鮎釣りに使用される鮎釣用曳舟を収容するバケツに適用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係る曳舟収容バケツ10の前面側を示す斜視図である。
【図2】図2は、曳舟収容バケツ10の背面側を示す斜視図である。
【図3】図3は、左舷前方から見た曳舟20の斜視図である。
【図4】図4は、曳舟20の左側面図である。
【図5】図5は、曳舟20の右側面図である。
【図6】図6は、曳舟20の背面図である。
【図7】図7は、バケツ本体30の開口36を示す曳舟収容バケツ10の斜視図である。
【図8】図8は、バケツ本体30に設けられた吊下ベルト16を示す斜視図である。
【図9】図9は、バケツ本体30の左側面32に設けられた取付具43aの拡大斜視図である。
【図10】図10は、バケツ本体30の開口36が閉塞された状態を示す曳舟収容バケツ10の背面側の拡大斜視図である。
【図11】図11は、バケツ本体30に曳舟20が収容される様子を示す斜視図である。
【図12】図12は、曳舟20が収容されたバケツ本体30を示す斜視図である。
【図13】図13は、ヘッドレスト71に吊り下げられた曳舟収容バケツ10を示す斜視図である。
【図14】図14は、バケツ本体30の背面側にゴムシート68が設けられた曳舟収容バケツ10の背面側の拡大斜視図である。
【符号の説明】
【0065】
10・・・曳舟収容バケツ
12・・・ポケット
16・・・吊下ベルト
17・・・ベルト本体
18・・・係止パッド
20・・・曳舟(鮎釣用曳舟)
30・・・バケツ本体
32・・・左側面
33・・・右側面
36・・・開口
37・・・上面
38・・・底面
50,51,52,53,54,55・・・通水孔
57・・・船首前面
58・・・左舷側面
59・・・右舷側面
60・・・船尾
62・・・蓋
70・・・シート
71・・・ヘッドレスト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にオトリ鮎を収容する収容室が区画され船首前面および左右両舷側面に外から上記収容室に連通する通水孔が設けられた鮎釣用曳舟を収容する曳舟収容バケツであって、
開口が設けられた上面を有し上記鮎釣用曳舟の船尾が底面に当接するように当該鮎釣用曳舟が起立姿勢で収容されるバケツ本体と、
上記バケツ本体に収容された鮎釣用曳舟の収容室に空気を供給するエアポンプを収容するポケットとを有し、
上記バケツ本体は、上記底面の面積が310cm〜500cmの範囲内に設定され、軸方向寸法が30cm〜50cmの範囲内に設定され、且つ上記上面の面積よりも上記底面の面積が小さくなるように80/1000〜95/1000のテーパが設けられている曳舟収容バケツ。
【請求項2】
上記上面を開閉する蓋が設けられている請求項1に記載の曳舟収容バケツ。
【請求項3】
上記バケツ本体の両側面に掛け渡されたベルト本体と、
当該ベルト本体に設けられ、自動車のシートのヘッドレストの前面側に係止され得る係止パッドとを備えた吊下ベルトが設けられている請求項1または2に記載の曳舟収容バケツ。
【請求項4】
上記バケツ本体は、可撓性を有する材料からなる請求項1から3のいずれかに記載の曳舟収容バケツ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2008−72970(P2008−72970A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−256851(P2006−256851)
【出願日】平成18年9月22日(2006.9.22)
【出願人】(000002439)株式会社シマノ (1,038)
【Fターム(参考)】