説明

書籍用紙

【課題】環境負荷が小さく、経時による対褪色性に優れ、かつオフセット印刷に耐えうる表面強度を備えた書籍用紙を提供する。
【解決手段】パルプを含有する原料を抄紙してなる書籍用紙であって、パルプとして少なくとも機械パルプを含有し、書籍用紙の機械パルプの含有量が全パルプ含有量の50質量%以下であり、書籍用紙が黄色系着色剤を含有し、黄色系着色剤の含有量が機械パルプの含有量に対して0.1〜1質量%であり、書籍用紙が外添紙力増強剤を含有し、外添紙力増強剤の含有量が書籍用紙1m当り5g以下であることを特徴とする書籍用紙である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、書籍用紙に関するものであり、さらに詳しくは、機械パルプ、黄色系着色剤を含有する紙料を抄紙してなる書籍用紙であって、環境負荷が小さく、経時による耐変色性に優れ、かつオフセット印刷に耐えうる表面強度を備えた書籍用紙に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、各産業において、環境保護の観点から化学薬品使用量を削減し、環境負荷を低減させることが必要となっている。
【0003】
製紙産業においては、紙の主原料であるパルプの製造に多量の薬品が使用されている。一般的に製紙用パルプには木材パルプが使用されているが、その中でも化学薬品により繊維中のリグニンを抽出除去して得られる化学パルプが主に使用されている。また、化学パルプ以外のパルプとして、化学薬品を使用せずグラインダーで木材を磨り潰して得られる砕木パルプや、リファイナーで木材を解繊して得られるサーモメカニカルパルプ、さらに、少量の化学薬品を木材に吸収させて加熱した後にリファイナーで木材を解繊して得られるケミサーモメカニカルパルプのような機械パルプが使用されている。
【0004】
化学薬品使用量削減の観点からは、化学パルプよりも機械パルプを使用する方が望ましい。しかし、機械パルプを含有する紙を長時間日光に暴露すると、機械パルプ中に含有されるリグニンが紫外線により分解、着色し、紙の変色(紙の黄色変色)が発生して紙の外観を著しく損なう。特に書籍の天、地、小口部分が変色すると、販売前に書籍の商品価値を失うことに繋がりかねない。
【0005】
機械パルプ中のリグニンの分解、着色を防止する方法として、紫外線吸収剤を紙に含有させ、リグニンの分解を抑制する方法が知られている(特許文献1)。しかし、この方法ではリグニンを抽出除去する薬品の代替で紫外線吸収剤を使用することになり、化学薬品使用量の削減にならない。
【0006】
また、機械パルプの使用量を多くすると、書籍用紙の表面強度が低下する。
【0007】
書籍用紙の表面強度を向上させる方法として、書籍用紙の表面に外添紙力増強剤を塗布して含有させる方法が、製紙業界では周知技術である。しかし、機械パルプの使用量を増加させ、同時に外添紙力増強剤の使用量を増加させる方法では、化学薬品使用量の削減にならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平05−279987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、環境負荷が小さく、経時による耐変色性に優れ、かつオフセット印刷に耐えうる表面強度を備えた書籍用紙を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、鋭意検討した結果、(1)パルプの特定の含有量を機械パルプとし、(2)黄色系着色剤を含有し、黄色系着色剤の含有量を特定の範囲とし、(3)外添紙力増強剤を含有し、外添紙力増強剤の含有量を特定の範囲とすることにより、本発明の上記の課題を解決するに至った。
【0011】
即ち、本発明の課題は、パルプを含有する原料を抄紙してなる書籍用紙であって、パルプとして少なくとも機械パルプを含有し、書籍用紙の機械パルプの含有量が全パルプ含有量の50質量%以下であり、かつ書籍用紙が黄色系着色剤を含有し、黄色系着色剤の含有量が機械パルプの含有量に対して0.1〜1質量%であり、書籍用紙が外添紙力増強剤を含有し、外添紙力増強剤の含有量が書籍用紙1m当り5g以下であることを特徴とする書籍用紙によって達成された。
【0012】
また好ましくは、機械パルプの含有量は全パルプ含有量の10〜30質量%である。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、環境負荷が小さく、経時による耐変色性に優れ、かつオフセット印刷に耐えうる表面強度を備えた書籍用紙を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の書籍用紙について、詳細に説明する。
【0015】
本発明の書籍用紙は、パルプおよび黄色系着色剤を含有する原料を抄紙してなる。パルプとして少なくとも機械パルプを含有する。機械パルプとしては、砕木パルプ(GP)、ケミグランドパルプ(CGP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、晒ケミサーモメカニカルパルプ(BCTMP)を挙げることができる。
【0016】
本発明の書籍用紙は、機械パルプ以外のパルプとして、従来公知の木材パルプを用いることができ、例えば広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹晒サルファイトパルプ(LBSP)、針葉樹晒サルファイトパルプ(NBSP)等の化学パルプや、古紙パルプ(DIP)を挙げることができる。また、バガス、ケナフ、竹、麻、コットン、楮、三椏、雁皮等の非木材パルプも用いることができる。
【0017】
本発明の書籍用紙が含有する機械パルプの含有量は、JIS−P8120に規定された方法を用いて測定することができる。本発明の書籍用紙が含有する機械パルプの含有量は、全パルプ含有量の50質量%以下である。好ましくは10〜30質量%である。
【0018】
本発明の黄色系着色剤は、染料系着色剤および顔料系着色剤が使用できる。好ましくは、黄色系着色剤の光学濃度残存率が90%以下となる黄色系着色剤である。後述の機械パルプに起因する黄色変色との相殺の点で、好ましくは黄色系着色剤の光学濃度残存率が10%以上90%以下であり、最も好ましくは70%以上90%以下である。光学濃度残存率は、黄色系着色剤を坪量100g/mの濾紙にトーコープにて0.05g/m塗布し、キセノン光照射試験機によって、放射強度0.5W/mで24時間照射した際、照射前の光学濃度の値に対する照射後の光学濃度の値の百分率として求められる。
【0019】
本発明の黄色系着色剤としては、アゾ化合物(ジチゾン、ホルマザン)、キノン系(ナフトキノン、アントラキノン、アクリドン、アントアントロン、インダントレン、ピレンジオン、ビオラントロン)、アジン、オキサジン、チアジン、硫化染料、トリフェニルメタン系(フルオラン、フルオレセイン、ローダミン)、フェロセン、フルオレノン、フルギド、ペリレン、フェナジン、フェノチアジン、ピラロゾン、ポリエン系(カロテン、マレイン酸誘導体、スチルベン、スチリル)、ポリメチン系(シアニン、ピリジニウム、ピリリウム、キノリニウム)、キサンテン、アリザリン、アクリジン、アクリジノン等を挙げることができる。従来、着色剤の分解・劣化による変色を抑制するため書籍用紙に酸化防止剤等を含有することが行われているが、環境負荷の点で本発明では好ましくない。本発明は着色剤の分解・劣化を利用するものである。
【0020】
本発明において、黄色系着色剤を含有することによって書籍用紙は黄色味を帯びて目の疲労を軽減することができ、経時による機械パルプに起因する黄色変色を見た目上抑制することができる。青色系着色剤ではこのような効果は得られない。
【0021】
本発明において、書籍用紙が含有する着色剤の含有量は、以下の方法によって測定することができる。(1)書籍用紙抄造時の白水を採取し、遠心分離装置にて(5000rpm、10分)微細繊維および填料を沈降させて、上澄み液を採取する。(2)上澄み液をグラスファイバーフィルターで濾過し、得られた濾液の吸光度を吸光光度計(日本分光社製)を用いて測定する。(3)あらかじめ既知濃度の着色剤を吸光光度計で測定して作成した検量線を用いて、白水中の着色剤濃度を算出する。(4)着色剤の添加量と抄紙時の希釈割合から抄紙原料中の着色剤濃度を算出する。(5)抄紙原料中の着色剤濃度と白水中の着色剤濃度の差から、書籍用紙が含有する着色剤の含有量を算出することができる。
【0022】
本発明において、書籍用紙の黄色系着色剤の含有量は、機械パルプの含有量に対して0.1〜1質量%である。この範囲にすることによって、機械パルプの含有量が全パルプの50質量%以下で、機械パルプに起因する黄色変色と黄色系着色剤に起因する褪色を相殺することができる。この機械パルプおよび黄色系着色剤が上記範囲外であると、うまく相殺することができず、経時により着色や変色が起こる。機械パルプの含有量が10〜30質量%であり、黄色系着色剤の含有量が機械パルプの含有量に対し0.1〜1質量%であると、より変色を抑えることができるために好ましい。
【0023】
本発明の耐変色性は、以下の強制的に経時劣化させる方法によって測定することができる。キセノン光照射試験機を用い、温度40℃湿度50%RH以下、放射強度0.5W/mで24時間照射した書籍用紙を、強制的経時劣化後の書籍用紙とする。強制的経時劣化前後の、CIE Lab(L表色系)で規定されるb値の差を、3以下とすることで見た目の耐変色性が得られる。本発明の機械パルプの含有量と黄色系着色剤の含有量とにすることで、上記のb値の差を3以下にすることができる。
【0024】
本発明の耐変色性は、以下の原理によって発現されるものと考えられる。書籍用紙が含有する機械パルプは、長時間日光に暴露すると書籍用紙が黄色に変色する。一方、書籍用紙が含有する黄色系着色剤は、経時により酸化され、分解・劣化し着色能が失われ褪色する。従って、機械パルプに起因する黄色変色と黄色系着色剤の失活に起因する褪色を相殺するように含有することで、見た目の耐変色性が得られる。
【0025】
本発明の書籍用紙は、外添紙力増強剤を含有する。外添紙力増強剤としては、例えば、酸化澱粉、カチオン化澱粉、両性澱粉、ポリアクリルアミド、酸化グアーガム、カチオン化グアーガム、カルボキシメチルセルロース等を挙げることができる。本発明において、外添紙力増強剤の含有量は、書籍用紙1m当り5g以下である。好ましくは書籍用紙1m当り1〜3gである。特に書籍用紙の機械パルプ含有量が10〜30質量%であり、外添紙力増強剤の含有量が書籍用紙1m当り1〜3gであると、よりうまく化学薬品の使用量が削減でき、かつオフセット印刷に耐えうる表面強度が得られるために好ましい。外添紙力増強剤の含有量が5g超では、本発明にかかる化学薬品使用量を削減とする環境負荷の点で意味を成さない。また、書籍用紙の機械パルプの含有量が全パルプに対し50質量%超であり、外添紙力増強剤の含有量を書籍用紙1m当り5g以下の範囲でない場合は、化学薬品の使用料の削減とオフセット印刷に耐えうる表面強度との両方を得ることができない。
【0026】
本発明において、書籍用紙に外添紙力増強剤を含有させる方法は、例えば、外添紙力増強剤をサイズプレス、ゲートロールコーター、フィルムトランスファーコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、エアーナイフコーター、カーテンコーター等を用いて塗布して含有させる方法である。特に、書籍用紙が、抄紙機に設置されているサイズプレス、ゲートロールコーター、フィルムトランスファーコーターを用いて外添紙力増強剤を塗布し、オンマシンで外添紙力増強剤を含有することが、操業上の点からは好ましい。
【0027】
本発明の書籍用紙は、パルプ、黄色系着色剤および外添紙力増強剤以外にその他の原料として、製紙工程で従来公知の薬剤を含有することができる。薬剤としては、例えば、填料、内添紙力増強剤、顔料分散剤、増粘剤、サイズ剤、流動性改良剤、消泡剤、抑泡剤、離型剤、発泡剤、浸透剤、防腐剤、防バイ剤等を挙げることができる。
【0028】
本発明において、パルプおよび黄色系着色剤を含有する原料を抄紙する抄紙機として、従来公知の抄紙機を用いることができる。抄紙機としては、例えば、長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機、コンビネーション抄紙機、円網抄紙機、ヤンキー抄紙機等を挙げることができる。
【実施例】
【0029】
以下に、本発明の実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0030】
(実施例1)
機械パルプとして、濾水度320mlcsfのBCTMPが15部、機械パルプ以外のパルプとして、濾水度400mlcsfのLBKPが85部からなるパルプスラリーに、黄色系着色剤(商品名:カヤフェクトイエローY、日本化薬社製)0.02部、填料として軽質炭酸カルシウム(商品名:TP−121、奥多摩工業社製)30部、両性澱粉(商品名:Cato3210、日本エヌエスシー社製)1.0部、硫酸バンド1.0部、アルキルケテンダイマー型サイズ剤(商品名:サイズパインK903、荒川化学工業社製)0.3部を添加して、長網抄紙機で抄紙し乾燥した。その後、外添紙力増強剤として酸化澱粉(商品名:MS#3800、日本食品化工社製)の糊液を、ゲートロールコーターを用いて乾燥含有量で2.5g/mとなるように塗布した。その後、マシンカレンダー処理をして坪量81.4g/m、密度0.65g/cmの実施例1の書籍用紙を作製した。この時、機械パルプの含有量は全パルプ含有量の10質量%、黄色系着色剤の含有量は機械パルプの含有量に対して0.2質量%であった。本黄色系着色剤を、坪量100g/mの濾紙にトーコープにて0.05g/m塗布し、キセノン光照射試験機(アトラス社製Ci−4000)にて、放射強度0.5W/mで24時間照射した際の光学濃度残存率は82%であった。
【0031】
(実施例2)
機械パルプとして、濾水度320mlcsfのBCTMPの配合部数を35部、機械パルプ以外のパルプとして、濾水度400mlcsfのLBKPの配合部数を65部としてパルプスラリーを調成し、黄色系着色剤の配合部数を0.06部とした以外は、実施例1と同様にして実施例2の書籍用紙を作製した。この時、機械パルプの含有量は全パルプ含有量の30質量%、黄色系着色剤の含有量は機械パルプの含有量に対して0.2質量%であった。
【0032】
(実施例3)
機械パルプとして、濾水度320mlcsfのBCTMPの配合部数を60部、機械パルプ以外のパルプとして、濾水度400mlcsfのLBKPの配合部数を40部としてパルプスラリーを調成し、黄色系着色剤の配合部数を0.1部とし、外添紙力増強剤の乾燥含有量を5.0g/mとなるように塗布した以外は、実施例1と同様にして実施例3の書籍用紙を作製した。この時、機械パルプの含有量は全パルプ含有量の50質量%、黄色系着色剤の含有量は機械パルプの含有量に対して0.2質量%であった。
【0033】
(実施例4)
機械パルプとして、濾水度320mlcsfのCGPを用いてパルプスラリーを調成した以外は、実施例2と同様にして実施例4の書籍用紙を作製した。この時、機械パルプの含有量は全パルプ含有量の30質量%、黄色系着色剤の含有量は機械パルプの含有量に対して0.2質量%であった。
【0034】
(実施例5)
黄色系着色剤としてカヤフェクトオレンジS(日本化薬社製)を用いた以外は、実施例2と同様にして実施例5の書籍用紙を作製した。この時、機械パルプの含有量は全パルプ含有量の30質量%、黄色系着色剤の含有量は機械パルプの含有量に対して0.2質量%であった。本黄色系着色剤を、坪量100g/mの濾紙にトーコープにて0.05g/m塗布し、キセノン光照射試験機(アトラス社製Ci−4000)にて、放射強度0.5W/mで24時間照射した際の光学濃度残存率は75%であった。
【0035】
(実施例6)
機械パルプとして、濾水度320mlcsfのBCTMPの配合部数を10部、機械パルプ以外のパルプとして、濾水度400mlcsfのLBKPの配合部数を90部としてパルプスラリーを調成し、黄色系着色剤の配合部数を0.01部とした以外は、実施例1と同様にして実施例6の書籍用紙を作製した。この時、機械パルプの含有量は全パルプ含有量の5質量%、黄色系着色剤の含有量は機械パルプの含有量に対して0.2質量%であった。
【0036】
(実施例7)
黄色系着色剤の配合部数を0.03部とした以外は、実施例2と同様にして実施例7の書籍用紙を作製した。この時、機械パルプの含有量は全パルプ含有量の30質量%、黄色系着色剤の含有量は機械パルプの含有量に対して0.1質量%であった。
【0037】
(実施例8)
黄色系着色剤の配合部数を0.24部とした以外は、実施例2と同様にして実施例8の書籍用紙を作製した。この時、機械パルプの含有量は全パルプ含有量の30質量%、黄色系着色剤の含有量は機械パルプの含有量に対して0.8質量%であった。
【0038】
(実施例9)
黄色系着色剤の配合部数を0.3部とした以外は、実施例2と同様にして実施例9の書籍用紙を作製した。この時、機械パルプの含有量は全パルプ含有量の30質量%、黄色系着色剤の含有量は機械パルプの含有量に対して1.0質量%であった。
【0039】
(比較例1)
パルプとして、機械パルプの配合部数を0部、濾水度400mlcsfのLBKPの配合部数を100部としてパルプスラリーを調成した以外は、実施例1と同様にして、比較例1の書籍用紙を作製した。
【0040】
(比較例2)
黄色系着色剤を添加しないこと以外は、実施例2と同様にして比較例2の書籍用紙を作製した。この時、機械パルプの含有量は全パルプ含有量の30質量%であった。
【0041】
(比較例3)
黄色系着色剤の配合部数を0.015部とした以外は、実施例2と同様にして比較例3の書籍用紙を作製した。この時、機械パルプの含有量は全パルプ含有量の30質量%、黄色系着色剤の含有量は機械パルプの含有量に対して0.05質量%であった。
【0042】
(比較例4)
黄色系着色剤の配合部数を0.45部とした以外は、実施例2と同様にして比較例4の書籍用紙を作製した。この時、機械パルプの含有量は全パルプ含有量の30質量%、黄色系着色剤の含有量は機械パルプの含有量に対して1.5質量%であった。
【0043】
(比較例5)
機械パルプとして、濾水度320mlcsfのBCTMPの配合部数を70部、機械パルプ以外のパルプとして、濾水度400mlcsfのLBKPの配合部数を30部としてパルプスラリーを調成し、黄色系着色剤の配合部数を0.3部とした以外は、実施例1と同様にして比較例5の書籍用紙を作製した。この時、機械パルプの含有量は全パルプ含有量の60質量%、黄色系着色剤の含有量は機械パルプの含有量に対して0.5質量%であった。
【0044】
(比較例6)
黄色系着色剤の代わりに青色系着色剤(商品名:カヤセルターコイズA−Gリキッド、日本化薬社製)を用いた以外は、実施例2と同様にして比較例6の書籍用紙を作製した。この時、機械パルプの含有量は全パルプ含有量の質量30%、青色系着色剤の含有量は機械パルプの含有量に対して0.2質量%であった。本青色系着色剤を、坪量100g/mの濾紙にトーコープにて0.05g/m塗布し、キセノン光照射試験機(アトラス社製Ci−4000)にて、放射強度0.5W/mで24時間照射した際の光学濃度残存率は67%であった。
【0045】
(比較例7)
黄色系着色剤の代わりに青色系着色剤(商品名:バサゾールバイオレット57L、BASFジャパン社製)を用いた以外は、実施例2と同様にして比較例7の書籍用紙を作製した。この時、機械パルプの含有量は全パルプ含有量の質量30%、青色系着色剤の含有量は機械パルプの含有量に対して0.2質量%であった。本青色系着色剤を、坪量100g/mの濾紙にトーコープにて0.05g/m塗布し、キセノン光照射試験機(アトラス社製Ci−4000)にて、放射強度0.5W/mで24時間照射した際の光学濃度残存率は51%であった。
【0046】
(比較例8)
外添紙力増強剤の乾燥含有量を6.0g/mとなるように塗布した以外は、比較例5と同様にして比較例8の書籍用紙を作製した。この時、機械パルプの含有量は全パルプ含有量の60質量%、黄色系着色剤の含有量は機械パルプの含有量に対して0.5質量%であった。
【0047】
<環境負荷>
実施例1〜9および比較例1〜8の書籍用紙の環境負荷の軽減は化学薬品の含有量の相対比較として、書籍用紙の含有する機械パルプおよび外添紙力増強剤によって下記の基準により評価した。
○:機械パルプの含有量が全パルプの10質量%以上、かつ外添紙力増強剤の含有量
が3.0g/m以下である。
△:少なくとも、機械パルプの含有量が全パルプの0質量%超から10質量%未満ま
たは外添紙力増強剤の含有量が3.0g/m超5.0g/m以下である。
×:少なくとも、機械パルプを含有しないまたは外添紙力増強剤の含有量が5.0g
/m超。
【0048】
<耐変色性>
実施例1〜9、比較例1〜8の書籍用紙を、キセノン光照射試験機(アトラス社製Ci−4000)にて、温度40℃湿度50%RH条件下、放射強度0.5W/mで24時間照射し、照射前後のb値の差(Δb)を求めることで、変色性の度合いを次の基準の通り評価した。評価の×レベルは、実使用上問題となるレベルである。
○:Δb 1.5以下
△:Δb 1.5を超えて3.0以下
×:Δb 3.0を超える
【0049】
<表面強度>
実施例1〜9、比較例1〜8の書籍用紙を、RI印刷適性試験機にて墨色ベタ印刷を施した。印刷は以下の条件で行った。
インキ:IGT測定用インキ 墨 TV.20(DIC社製)
インキ量:1.0cc
印刷回転速度:80rpm
その後、印刷面のピッキングの程度を目視で判定した。評価の×レベルは、実用上問題となるレベルである。
○:ピッキング全くなし。
△:わずかにピッキングが見られる。
×:かなりピッキングが見られる。
【0050】
表1に、実施例1〜9および比較例1〜8の評価結果を示す。
【0051】
【表1】

【0052】
実施例1〜9の結果から本発明の書籍用紙は、環境負荷を軽減でき、耐変色性に優れ、オフセット印刷に対する表面強度が得られることがわかる。一方、比較例1〜8の結果から、パルプ、黄色系着色剤、外添紙力増強剤のいずれかが本発明を満足しない書籍用紙では本発明の効果を得ることができないことがわかる。
【0053】
実施例1〜3、実施例6の結果から、機械パルプの含有量が全パルプの10〜30質量%であると、より環境負荷を軽減でき、耐変色性に優れ、オフセット印刷に対する表面強度が得られることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルプを含有する原料を抄紙してなる書籍用紙であって、パルプとして少なくとも機械パルプを含有し、書籍用紙の機械パルプの含有量が全パルプ含有量の50質量%以下であり、書籍用紙が黄色系着色剤を含有し、黄色系着色剤の含有量が機械パルプの含有量に対して0.1〜1質量%であり、書籍用紙が外添紙力増強剤を含有し、外添紙力増強剤の含有量が書籍用紙1m当り5g以下であることを特徴とする書籍用紙。
【請求項2】
前記機械パルプの含有量が全パルプ含有量の10〜30質量%である請求項1に記載の書籍用紙。

【公開番号】特開2012−112069(P2012−112069A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−261990(P2010−261990)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】