説明

書類処理装置及び書類処理方法

【目的】 各種仕様の書類に対して、識別情報を印刷し、印刷した識別情報を確実に認識することができる書類処理装置及び書類処理方法を提供する。
【構成】 書類の識別情報として互いに仕様の異なる異種類のバーコード、例えば1次元バーコードと2次元バーコードを同時に印刷し、読み取り可能にすることにより、書類の仕様に制限を設けることなく、例えバーコード印刷領域に他の情報が印刷されていても、確実に印刷した識別情報を認識可能とする。更に2次元バーコードの印刷は、印刷する用紙の滲み度に応じて最適な印刷パラメータを設定して印刷パターンを変え、インクジェットプリンタで印刷後の印刷パターンが用紙の滲み度に関わりなく同じような印刷パターンとなるように制御して読み取りを確実なものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多種類業務に係る多種の書類を一括処理可能な書類処理装置及び書類処理方法に関し、例えば処理するべき書類を識別するために書類にバーコードを印刷し、印刷したバーコードを参照して書類を処理する書類処理装置及び書類処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年おける業務の多様化に伴い、様々な業種において多種多様の書類や伝票、帳票等が扱われており、それらを短時間に確実かつ効率的に処理する必要がある。そのため、高速で帳票等の判別や分類ができる書類処理装置が必要とされ、帳票の表面と裏面の画像を効率的に読み取るための装置も提案されている。例えば、表面の画像を読み取ったときに所定の管理データをマーカとして帳票上に印刷し、それに基づいて、読み込んだ帳票の表面と裏面の画像それぞれを関連付ける帳票読み取り装置がある(例えば、特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開2000−20611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1に記載の帳票読み取り装置は、1次元バーコードを識別情報として印刷するものであり、図3に示されているように、特定仕様の帳票のみを対象としており、何も印刷されていない領域に管理データを印刷することを前提としたもので、帳票によっては既印刷領域に管理データを印刷しなければならない場合があることを前提としていない。
【0005】
1次元バーコード情報を印刷した領域がバーコード印刷以前に何も印刷されていない領域であった場合には、正確にバーコード情報が印刷されているため、確実に読み取ることができる、また、バーコード印刷以前に斜め方向の線や横方向の線が表示されている領域に1次元バーコードを印刷した場合であっても、ほぼ問題なく読み取ることができる。
【0006】
しかしながら、バーコード印刷領域に既に縦方向の線が表示されている(バーコードのバーの方向と同じ方向の線が表示されている)様な場合には、この線をバーコードの一部と認識する可能性があり、このような場合には識別番号の読み取りミスとなってしまっていた。このため、自動的に付与された識別番号を確認できない結果となり、別途特別の処理で書類イメージに対して識別番号の付与を行う必要があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述した課題を解決することを目的としてなされたもので、書類の所定領域に、識別情報を表示した場合において、確実に表示されている識別情報を認識することができる書類処理装置及び書類庶路方法を提供することにある。
【0008】
係る目的を達成する一手段として例えば以下の構成を備える。すなわち、多種業務に係る多種の書類を1枚ごとに搬送して一括処理可能な書類処理装置であって、処理対象書類の少なくとも一方面に識別情報を印刷する印刷手段と、少なくとも仕様の異なる2種のバーコードパターンとして同じ識別情報を前記印刷手段から印刷させる印刷制御手段とを備え、前記印刷制御手段は、前記処理対象書類の一方面にほぼ隣接させて前記仕様の異なる2種のバーコードパターンを印刷させることを特徴とする書類処理装置とする。
【0009】
そして例えば、前記印刷制御手段は、仕様の異なる2種のバーコードパターンとして、1次元バーコードパターンと2次元バーコードパターンを印刷させることを特徴とする。
【0010】
また例えば、更に、処理対象書類の紙仕様に対応したバーコード印刷パターンを印刷させるための印刷パラメータを登録する登録手段を備え、前記印刷制御手段は、バーコードパターンを印刷するべき処理対象書類の仕様に対応した前記登録手段に登録された印刷パラメータを選択し、前記印刷手段を制御して選択した印刷パラメータに従ったバーコードパターンを印刷することを特徴とする。
【0011】
更に例えば、前記印刷手段はインクジェット方式のプリンタであり、前記登録手段は印刷するべき処理対象書類のインクの滲みに応じてインク噴射面積を制御する印刷パラメータを登録することを特徴とする。あるいは、前記印刷制御手段は、前記1次元バーコードパターン下部に識別情報を文字キャラクタとして目視確認可能に表示させることを特徴とする。
【0012】
または、多種業務に係る多種の書類を1枚ごとに搬送して一括処理可能な書類処理装置における書類処理方法であって、処理対象書類の少なくとも一方面に識別情報を印刷して当該処理対象書類を特定可能とするために、少なくとも仕様の異なる2種のバーコードパターンとして同じ識別情報を前記処理対象書類の一方面にほぼ隣接させて前記仕様の異なる2種のバーコードパターンを印刷させる書類処理方法であることを特徴とする。
【0013】
そして例えば、前記仕様の異なる2種のバーコードパターンとして、1次元バーコードパターンと2次元バーコードパターンを印刷させることを特徴とする。あるいは、更に、処理対象書類の紙仕様に対応したバーコード印刷パターンを印刷させるための印刷パラメータをあらかじめ登録しておき、バーコードパターンを印刷するべき処理対象書類の仕様に対応した前記登録された印刷パラメータを選択し、選択した印刷パラメータに従ったバーコードパターンを印刷する書類処理方法であることを特徴とする。
【0014】
また例えば、前記識別情報の印刷はインクジェット方式のプリンタにより行い、前記印刷パラメータは印刷するべき処理対象書類のインクの滲みに応じてインク噴射面積を制御する印刷パラメータであることを特徴とする。あるいは、前記1次元バーコードパターン下部に識別情報を文字キャラクタとして目視確認可能に表示させる書類処理方法であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、書類の所定領域に、他の情報が印刷などされているような場合であっても、確実に識別情報を表示し、認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る一実施の形態例の書類処理装置の全体構成を示す正面図である。
【図2】本実施の形態例に係る書類処理装置の上面の外観構成を示す図である。
【0017】
【図3】本実施の形態例における識別情報としての印刷例を説明するための図である。
【図4】本実施の形態例の識別情報印刷処理を説明するためのフローチャートである。
【図5】本実施の形態例の2次元バーコードの印刷パラメータに従った印刷パターンと印刷結果を説明するための図である。
【符号の説明】
【0018】
10 ホッパ装置(フィーダ装置)
20 印刷装置
24 カバー部材
30 読取装置
32 光学読取装置(バーコードリーダー)
35 撮像装置(イメージリーダ)
40 中央制御部
45 データベース・印刷パラメータ記憶部
50 スタッカ装置
60 モニタ装置
【0019】
100 書類処理装置
101,207 搬送ベルト部
102 パドル部
103 ピッカー部
104 センサ部
107 書類ガイド部
130 フィーダ部
131 ピックアップローラ
201 ホッパ部
202 送出し部
203 搬送部
205 搬送面
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る一発明の実施の形態例について添付図面を参照して詳細に説明する。まず図1を参照して本発明に係る一発明の実施の形態例の書類処理装置の全体構成を説明する。図1は、本発明に係る一発明の実施の形態例に係る書類処理装置の全体構成を説明するための図である。
【0021】
図1に示すように、本実施の形態例に係る書類処理装置100は、ホッパ装置(フィーダ装置)10、印刷装置20、読取装置30、中央制御部40、スタッカ装置50、およびモニタ装置60により構成され、詳細を後述する書類の搬送、イメージ解析、分類等を行う。
【0022】
ホッパ装置10は、処理対象とする書類、例えば、帳票、伝票、レセプト等が載置され、それらを保持すると共に一つ毎に分離・搬送するための装置である。本実施の形態例では、処理する書類・帳票等の仕様に制限はなく、通常、種々の厚さを有し、かつ綴じ方も不定であるため、ホッパ装置10は、これらの帳票等を1綴りごとに分離して、次段の印刷装置20、読取装置30へ搬送する機能を有する。そのためホッパ装置10は、書類や帳票の束を載置するパドル部102、不図示の搬送ベルト部等を備えている。
【0023】
また、ホッパ装置10の上部には、操作者が種々の動作指示の入力を受け付けると共に、書類処理装置の動作状態等を表示したり、あるいは、後述するイメージリーダで読み込んだ画像を可視表示するための操作部や表示部等として機能するモニタ装置60が配設されている。このモニタ装置60は任意の位置に配設してよいが、処理対象書類をセットし、容易に確認できるホッパ装置10近傍位置が望ましい。
【0024】
印刷装置20は、ホッパ装置10より搬送された帳票等に対して、所定の文字やコード等を印刷する。読取装置30は、帳票等に記載されている文字、図形等の情報を読み取る。具体的には、撮像装置(イメージリーダ)35により、帳票等の表面または裏面上の文字やイメージを、画像情報として電子的に取り込み、それらの帳票等の所定領域に記載された文字等の画像を解析して、記載内容を抽出した後、その取り込み結果に従った制御をする。
【0025】
また、読取装置30の筐体内には、例えばLSIで構成したマイクロコンピュータチップを搭載したシステムで構成される書類処理装置全体の制御を司る中央制御部40が配設されており、読み取った帳票等のイメージ情報を認識して、その記載内容を電子化するとともに、帳票等の分類仕様に従って、後述するスタッカ装置50における分離・載置部位の決定等を行う。
【0026】
中央制御部40には、大容量記憶装置が備えられており、データベース・印刷パラメータ記憶部45を構成している。データベース部は、撮像装置(イメージリーダ)35で撮像した帳票などのイメージ情報及びイメージ情報の解析結果(自動認識結果)と共に、印刷装置20で印刷した識別情報と関連付けて登録し、任意のタイミングで読み出すことが可能に構成されている。
【0027】
データベース・印刷パラメータ記憶部45には、詳細を後述する印刷パラメータが記憶されており、帳票等の印刷仕様毎に最適の識別情報印刷パターンとするための印刷パラメータを記憶している。
【0028】
読取装置30及び中央制御部40で行う特定領域のイメージ解析結果には、例えば、伝票番号や手形番号などの帳票特定情報、帳票発行先情報、帳票使用先情報、金額情報などの処理が必要な情報、処理すべき日時情報などがある。この情報は処理対象物の仕様に合わせて任意の場所の任意の情報を、必要な各種の認識プログラムを用いて解析する。
【0029】
スタッカ装置50は、搬送されてきた帳票等を、中央制御部40からの指示、すなわち、画像解析や記載内容の抽出結果に従った指示に基づいて、帳票等をポケットに分離、載置する書類収納部として機能する。なお、処理する書類、帳票等の種類やサイズに応じて適宜、ソーター部(ドライバ部)とフィラー部を組み合わせ、それらを所定位置に配した構成としてもよい。
【0030】
以上の構成を備える本実施の形態例に係る書類処理装置における、書類等のフィーダ機構、印刷機構、搬送機構等の詳細について図2を参照して以下説明する。図2は本実施の形態例の書類処理装置100の上面の外観構成を示す斜視図である。図2において、ホッパ装置(フィーダ装置)10のホッパ部201は、種々の厚さの書類、綴じ方の異なる書類等を一綴りごとに分離する。そのため、ホッパ部201は、ピッカー部103と搬送ベルト部101を有し、搬送ベルト部101の一部は、書類の搬送のみならず、パドル部102そのものを移動して、ホッパ部201に載置された書類をピッカー部103へ搬送する機能を有する。分離された書類は、送出し部202を介して所定の速度で印刷装置20、読取装置30へ送られる。
【0031】
搬送ベルト部101のうち一部のベルトは、その表面に一定間隔に配した歯形状のスリット(ベルトの移動方向と垂直な方向に走る突起部と溝部が、一定の間隔で連続する構造)を有する。この溝にパドル部102の底部の一部が係合し、搬送ベルト部101が動くことによる溝部の移動に従って、パドル部102もピッカー部103側へ移動する。これにより、パドル部102の前方に載置された束状の書類・帳票200が搬送によって徐々に減じるのとほぼ同期して、搬送ベルト部101を駆動するという制御が行われる。
【0032】
ピッカー部103には、上述した搬送ベルト101を動作させるため、ピックアップローラ131の下部に位置する書類の厚みによって、ピックアップローラ131の位置を検出するセンサ部104が配されている。また、ホッパ装置(フィーダ装置)10に積載された書類の手前側のエッジを揃えるため、搬送ベルト部101の手前側に、それと並行して走る書類ガイド部107が設けられている。送出し部202は、書類の分離・送り機構としてのフィーダ部130を有する。このフィーダ部130は、図2に示すように安全用の覆いが被せられ、相互に接触しながら反対方向へ回転移動する2つの搬送ベルトによって、書類や帳票の分離および搬送を行う。
【0033】
読取装置30上面の搬送部203の上流側のホッパ装置(フィーダ装置)10側の端部には、搬送面205と同一の面位置に印刷装置20が設けられている。この印刷装置20は、着脱自在のインクジェット・カートリッジが収容されており、インクジェット・カートリッジはインクとインクを噴射するプリンタヘッドから構成されている。
【0034】
プリンタヘッド面は、搬送面205とほぼ同一か、あるいはそれよりも僅かに垂直下方に位置している。ホッパ装置(フィーダ装置)10から読取装置30へ搬送される書類や帳票の裏面所定領域に帳票毎に特有の識別情報を下方から上方に(搬送面方向に)インクを噴射して印刷可能に構成されている。
【0035】
なお、印刷装置20に使用されるインクとしては、速乾性のインク、例えば、HP社のversatile blackと呼ばれる速乾性顔料ベースのインクを使用することが望ましい。これにより、書類・帳票200の裏面から印刷しても、インクが飛び散ったり、搬送面に付着などすることのない印刷が可能となる。
【0036】
また、インクジェット・カートリッジのヘッド部分に埃等が堆積したり、誤って触れて損傷を与えることがないようにするため、印刷装置20の上面全体を覆うように略コの字型のカバー部材24が配されている。そして、カバー部材24のプリンタヘッド対向位置には、プリンタヘッドより噴射されるインクを受け止め吸収するインク吸収パッドが配設されている。
【0037】
読取装置30は、上述した印刷装置20の下流側において、搬送されてきた帳票等に記載された画像情報をイメージとして読み込むための撮像装置(イメージリーダ)35を備える。さらに、印刷装置20の下流側には、印刷装置20が印刷した識別情報を読み取るための光学読取装置(バーコードリーダー)32が配されている。この光学読取装置32も、搬送面205とほぼ同一か、あるいはそれよりも僅かに垂直下方に位置するように搬送面205に配設されている。
【0038】
イメージ読取装置30は、スタッカ装置50に対して帳票等を搬送するために、複数本の搬送ベルト207を有する。これらの搬送ベルト207は、一定の距離をおいて相互に平行に隣り合う位置関係を維持している。また、搬送ベルト207は、不図示の駆動モータで回転駆動されており、相互に同期して同一方向へ同じ速度で移動する。
【0039】
次に、以上の構成を備える本実施の形態例の、書類毎に印刷される識別情報の詳細を図3を参照して以下に説明する。図3は、本実施の形態例における識別情報としての印刷例を説明するための図である。
【0040】
本実施の形態例では、識別情報を表すのに、1次元バーコードと2次元バーコードの2つのバーコード情報を互いに隣接させて(図3の例では横に並べて)印刷している。1次元バーコードは横幅があるため、下部に識別情報をキャラクタ表示(数字表示)し、操作者などが目視確認可能なように表されている。
【0041】
このように互いに全く仕様の異なる2種類のバーコード情報を印刷することにより、バーコード印刷箇所に既に他の情報が印刷されているような場合においても、識別情報を正しく読み込むことが可能となる。例えば、縦方向の太線が1次元バーコードの印刷色と同じ色で印刷されているような場合には、1次元バーコード情報のみの印刷では、正確な読取は困難な場合があったが、本実施の形態例のように2次元バーコードも隣接して印刷されているため、この2次元バーコードでは問題なく読み取ることができる。横線が印刷されているような場合には1次元バーコードが正確に読み取ることができるなど、互いに不得手とする印刷がなされているような場合であっても、互いに補い合ってどちらかのバーコードで正確に読み込むことができ、従来に比し大幅に読取精度を上げることができる。
【0042】
次に以上の構成を備える本実施の形態例の識別情報印刷制御を図4のフローチャートを参照して説明する。図4は本実施の形態例の識別情報印刷処理を説明するためのフローチャートである。
【0043】
まずステップS1でデータベース・印刷パラメータ記憶部45に印刷パラメータが登録されているか否かを確認する。登録されていない場合には、モニタ装置60の表示画面に印刷パラメータ未登録を表示し、印刷パラメータの登録を促すことになる。
【0044】
印刷パラメータが登録されていることを確認後、続くステップS2で処理するべき帳票をホッパ装置10にセットする。所定の操作により処理の開始が指示されると、中央制御部40は、書類・帳票の分離・搬送処理、すなわち、積載された書類等を1枚ずつ連続して読取装置30方向へ給紙する処理を行う。
【0045】
続くステップS5では、搬送されてきた書類上に記載されたイメージを読取装置30で読み取る。すなわち、読取装置30に配した撮像装置35によって順次搬送されてくる書類等に記載されたイメージを読み取るとともに、それをイメージ情報としてデータベース・印刷パラメータ記憶部45に記憶させる。
【0046】
中央制御部40は、続くステップS7で、ステップS5で読み込んだイメージ情報の解析処理を行い、ステップS9で解析結果に基づきイメージを読み込んだ帳票の業務内容、及び用いられている帳票の仕様を判別する。続くステップS11で判別した帳票の仕様に対応した印刷パラメータを選択して当該帳票に対する識別情報印刷時の印刷パラメータとする。
【0047】
その後、ステップS13において処理帳票をスタッカ装置50の特定のスタッカに収納する。続くステップS15でホッパ装置10にセットされた全ての帳票の読み込みが終了したか否かを調べ、ホッパ装置10にセットされた全ての帳票の読み込みが終了していない場合にはステップS5に戻り、次の帳票の搬送を行う。
【0048】
ステップS15でホッパ装置10にセットされた全ての帳票の読み込みが終了した場合にはステップS17に進み、再びイメージ情報を読み込んだ帳票をホッパ装置10にセットする。所定の操作により2回目の搬送処理の開始を指示すると、中央制御部40は、書類・帳票の分離・搬送処理、すなわち、積載された書類等を1枚ずつ連続して読取装置30方向へ給紙する処理を行う。
【0049】
続くステップS19では、読取装置30の搬送路205に埋設された印刷装置200が、ホッパ装置10より順次搬送されてくる書類・帳票の特定個所(例えば、裏面端部近傍)に所定の識別情報をステップS11でセットした印刷パラメータにしたがって印刷する処理を行う。印刷は、印刷装置20のインクジェット・カートリッジのインクジェット・ヘッド部分より垂直上方に向けてインクが噴射され、後述するように、搬送中の書類や帳票の裏面に所定のコードが印刷される。
【0050】
本実施の形態例では、ほとんどの帳票をそのまま直接搬送・処理することが可能であるが、上記した様に識別情報の印刷にインクジェットプリンタを用いている。このため、帳票によってインクの浸透度(滲みやすさ)にばらつきがある。
【0051】
このため、同じパターンのバーコード情報を印刷しても、よく滲む用紙では印刷面積が広くなり、ほとんど滲まない用紙では印刷面積が狭くなることがどうしても避けられなかった。1次元バーコードを印刷する場合には、滲み度に差があっても、読取精度に影響が少なかった。これは、1次元バーコードの場合には、前後のバーの太さの比率を元に読み取るため、バーの太さが数十%変化しても読取精度にさほど影響をあたえなかった。
【0052】
しかしながら、本実施の形態例では、2次元バーコードを使用するため、2次元バーコードでは情報の集積度が高いため、印刷部分と非印刷部分の面積比があまり異なると読取精度が大幅に低下することが考えられる。そこで、本実施の形態例では、インクの浸透度(滲みやすさ)に応じた複数種類の2次元バーコード印刷パラメータをデータベース・印刷パラメータ45に登録しておく。
【0053】
中央制御部40は、ステップS9で処理するべき業務が特定できると、当該業務で処理する書類の仕様を特定し、ステップS11に示すように対応する印刷パラメータを選択することになる。そして、実際に書類に識別情報を印刷する際に、印刷する書類の仕様に対応した印刷パラメータを選択し、選択した印刷パラメータに従った2次元バーコード印刷パターンを生成する。そして、生成した印刷パターンを例えば書類裏面に印刷する。
【0054】
この印刷パラメータに従った印刷パターンの例を図5を参照して説明する。図5は本実施の形態例の2次元バーコードの印刷パラメータに従った印刷パターンと印刷結果を説明するための図である。
【0055】
図5はインクの滲み込みが少ない業務Aに用いられるインク低滲み紙、インクの滲みが標準的な業務Bに用いられるインク普通滲み紙、インクの滲みが大きい業務Cに用いられるインク高滲み紙に対して、それぞれ対応する印刷パラメータが割り当てられ、業務Aに用いられるインク低滲み紙には濃印刷パラメータが、業務Bに用いられるインク普通滲み紙には標準濃度パラメータが、業務Cに用いられるインク高滲み紙には薄印刷パラメータが割り当てられる。
【0056】
薄印刷パラメータは、インクの滲み込み及び拡散を想定して印刷面積を少なく設定しており、標準印刷パラメータはインクの滲み込み及び拡散がさほど多くないと想定して印刷面積を所望バーコードパターンよりやや面積の少ない印刷パターンとしている。濃印刷パラメータは、ほとんどインクの滲み込みがないと想定して印刷面積を所望バーコードパターンとさほど差がない印刷パターンとしている。
【0057】
このように、印刷する用紙の紙質に応じて最適の印刷パラメータを設定して、設定した印刷パラメータに従った印刷パターン展開することで、実際に印刷されてインクが浸透した状態では、それぞれの右側に表示されている様に、ほぼ同じ規格通りの2次元バーコードが印刷された状態となるように制御されている。
【0058】
このため、印刷された用紙に既に他のパターンが印刷されているような場合であっても、より高精度で正しいバーコード読取が実現する。なお、図5の例では、3種類の印刷パラメータのみが例示されているが、印刷するべき帳票の滲む割合に併せて(インクの浸透率に応じて)印刷パラメータを用意することができ、よりきめ細かな印刷パラメータを用意することにより、より高精度の2次元バーコードが印刷できる。
【0059】
このようにしてステップS19における識別情報の印刷が終了すると、同時に読取装置30の光学読取装置32で印刷された識別情報の確認を行うと共に、帳票のイメージを撮像装置35で撮影して誤りがないか(帳票の順番があっているか否か)の確認を行う。
【0060】
そしてステップS21に進み、ステップS9で判別した判別結果に従ったスタッカを選択し、ステップS23に示すように選択したスタッカに識別情報を印刷した帳票を収納する。そして、ステップS25において、中央制御部40はホッパ装置10に収納した全ての帳票の給紙が完了したか否かを判断し、それが完了していなければステップS19に戻り、給紙処理を続行する。一方、給紙処理が完了した場合には、当該処理を終了する。
【0061】
なお、以上の処理は1回目のパスで書類イメージを読み込んで解析し、2回目のパスで識別情報を印刷して対応するスタッカに分離収納する例を説明した。しかしながら本発明は以上の例に限定されるものではなく、予めこれから処理するべき業務や帳票の仕様が判明している場合には、1回目のパスの時に帳票の仕様に対応した印刷パラメータで2次元バーコード等の識別情報を印刷すると共に、印刷した識別情報に対応付けて読み込んだ書類イメージ情報をデータベース・印刷パラメータ記憶部45に記憶させるようにしてもよい。
【0062】
以上に説明したように本実施の形態例によれば、帳票などの処理対象書類に異なる仕様の複数種類のバーコードで識別情報を表示するため、処理対象書類に既に他の情報が印刷されているような場合であっても、印刷した識別情報を高精度で認識できる。
【0063】
また、処理対象書類に紙仕様に対応した印刷パラメータを複数種類用意し、処理対象書類に対応する印刷パラメータに従った識別情報を印刷表示することにより、更に識別情報の読取精度を上げることが可能となる。
【0064】
例えば識別情報を仕様の異なる1次元バーコードと2次元バーコードとを並べて表示させることにより、一方が読み取りづらい様な既印刷情報があったとしても、他方のバーコードでは読み取れることになり、識別情報が読み取れないといった不具合を大幅に低減させることができる。
【0065】
また、2次元バーコードの印刷に際して、印刷する用紙の紙仕様に対応して印刷パラメータを変え、印刷時に印刷インクのよく滲む印刷用紙と、印刷インクのほとんど滲み込まない印刷用紙、普通に滲む用紙など、印刷用紙の仕様に対応して最適な印刷結果が得られる(規格通りの印刷結果の得られる)面積の印刷パターンで印刷することにより、印刷用インクの滲み方が大きく異なるまた、紙質が種々雑多な各種帳票に対しても安定した2次元バーコードの印刷結果が得られる。
【0066】
これにより、処理対象書類の仕様が多様にわたっても、あるいは、従来のこの種の書類処理装置のように、処理対象書類が特定の仕様を満足するような書類に限定することなく、確実に識別情報を認識することができる書類処理装置を提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多種業務に係る多種の書類を1枚ごとに搬送して一括処理可能な書類処理装置であって、
処理対象書類の少なくとも一方面に識別情報を印刷する印刷手段と、
少なくとも仕様の異なる2種のバーコードパターンとして同じ識別情報を前記印刷手段から印刷させる印刷制御手段とを備え、
前記印刷制御手段は、前記処理対象書類の一方面にほぼ隣接させて前記仕様の異なる2種のバーコードパターンを印刷させることを特徴とする書類処理装置。
【請求項2】
前記印刷制御手段は、仕様の異なる2種のバーコードパターンとして、1次元バーコードパターンと2次元バーコードパターンを印刷させることを特徴とする請求項1記載の書類処理装置。
【請求項3】
更に、処理対象書類の紙仕様に対応したバーコード印刷パターンを印刷させるための印刷パラメータを登録する登録手段を備え、
前記印刷制御手段は、バーコードパターンを印刷するべき処理対象書類の仕様に対応した前記登録手段に登録された印刷パラメータを選択し、前記印刷手段を制御して選択した印刷パラメータに従ったバーコードパターンを印刷することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の書類処理装置。
【請求項4】
前記印刷手段はインクジェット方式のプリンタであり、前記登録手段は印刷するべき処理対象書類のインクの滲みに応じてインク噴射面積を制御する印刷パラメータを登録することを特徴とする請求項3記載の書類処理装置。
【請求項5】
前記印刷制御手段は、前記1次元バーコードパターン下部に識別情報を文字キャラクタとして目視確認可能に表示させることを特徴とする請求項2記載の書類処理装置。
【請求項6】
多種業務に係る多種の書類を1枚ごとに搬送して一括処理可能な書類処理装置における書類処理方法であって、
処理対象書類の少なくとも一方面に識別情報を印刷して当該処理対象書類を特定可能とするために、少なくとも仕様の異なる2種のバーコードパターンとして同じ識別情報を前記処理対象書類の一方面にほぼ隣接させて前記仕様の異なる2種のバーコードパターンを印刷させることを特徴とする書類処理方法。
【請求項7】
前記仕様の異なる2種のバーコードパターンとして、1次元バーコードパターンと2次元バーコードパターンを印刷させることを特徴とする請求項6記載の書類処理方法。
【請求項8】
更に、処理対象書類の紙仕様に対応したバーコード印刷パターンを印刷させるための印刷パラメータをあらかじめ登録しておき、
バーコードパターンを印刷するべき処理対象書類の仕様に対応した前記登録された印刷パラメータを選択し、選択した印刷パラメータに従ったバーコードパターンを印刷することを特徴とする請求項6又は請求項7記載の書類処理方法。
【請求項9】
前記識別情報の印刷はインクジェット方式のプリンタにより行い、前記印刷パラメータは印刷するべき処理対象書類のインクの滲みに応じてインク噴射面積を制御する印刷パラメータであることを特徴とする請求項8記載の書類処理方法。
【請求項10】
前記1次元バーコードパターン下部に識別情報を文字キャラクタとして目視確認可能に表示させることを特徴とする請求項7記載の書類処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−53650(P2012−53650A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−195381(P2010−195381)
【出願日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【出願人】(599001389)バンクテック・ジャパン株式会社 (10)
【Fターム(参考)】