説明

有効医薬成分の寒冷顆粒化及び貯蔵の方法

【課題】取扱い及び貯蔵に適したアレルゲン物質を提供する。
【解決手段】抽出物、精製アレルゲン、修飾アレルゲン、組換えアレルゲン又は組換えアレルゲンの変異体の形態であるアレルゲン物質の液体組成物の寒冷顆粒。寒冷顆粒は,0.1〜10mmの直径を有し、1年より長い期間、アレルゲン物質の活性を損失することなく貯蔵することが可能である。また、秤量され、適切な用量に製剤化されるが、製剤化の前に凍結乾燥されないものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、有効医薬成分のバッチの製造方法に関する。本発明は、アレルゲン物質の液体組成物の寒冷顆粒(cryogranules)を含む密閉された容器、及びアレルゲン物質の寒冷顆粒にも関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
広い範囲の有効医薬成分、特にタンパク質ベースの構成成分の製造及びその後の製剤化は、一般的に、このような製造及び製剤化に用いられるバルク材の貯蔵安定性、均質性及び取扱い容易性に関するある要件を限定する。アレルゲン物質は、このようなバルク材の例である。アレルゲン物質は、水溶液でしばしば得られ、このような水性溶液は、多くの場合、貯蔵の前に凍結乾燥される。しかし、工業的な規模の製造及び製剤化については特に、凍結乾燥は、(i) 大量の材料を凍結乾燥することが面倒かつ労働力の浪費であり、(ii) 凍結乾燥が高価な設備を必要とし、(iii) 該物質の再生(reconstitution)が面倒かつ時間の浪費であるという事実から、適切ではない。
【0003】
WO 00/06179 (Eli Lilly & Co.)は、活性プロテインC (aPC)の水溶液の貯蔵、取扱い及び再生に適する状態への加工の方法を開示している。この方法は、(i) 溶液を滴に分割し、そして(ii) 液体窒素流を用いて該滴を寒冷顆粒に凍結させる各工程を含む。液体窒素流及び寒冷顆粒は、その後、コンベアに導かれ、該コンベアが寒冷顆粒を制御して(hold back)液体窒素を通過させる(fall through)。寒冷顆粒は、密閉容器に回収されて貯蔵される。その後、寒冷顆粒は、医薬組成物の工業的規模の生産において原材料として用いることができる。しかし、寒冷顆粒の製造は、複雑な設備、例えば上記のコンベアを含む寒冷顆粒化ユニットを必要とし、これは維持及び洗浄が困難である。さらに、寒冷顆粒化ユニットを用いるためのGMPの履行は面倒であり時間の浪費である。
【0004】
WO 03/20959 (BTF Pty Ltd)は、特定量(quantum)の生物学的粒子(bioparticles)を含有する物質の製造方法を開示し、該方法は、極低温液体を含む容器内に液滴を入れることにより固形物を形成して凍結体を形成し、その後、該凍結体を乾燥(例えば凍結乾燥)させることにより実質的に乾燥した固体物質を容器内で形成し、所望により該物質の貯蔵及び輸送のために容器にふたをするか(capping)又は密閉する(sealing)工程を含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のことにもかかわらず、取扱い及び貯蔵に適した有効医薬成分のバッチの工業的規模の製造のためのより合理的な方法に対する要求が未だに存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の簡単な説明
本発明は、取扱い及び貯蔵に適した有効医薬成分のバッチの工業的規模の製造のためのより合理的な方法を提供する。
本発明の第一の観点は、請求項1に規定される方法に関する。
本発明の第二の観点は、請求項2に規定される方法に関する。
本発明の第三の観点は、請求項3に規定される方法に関する。
【0007】
本発明は、さらに、アレルゲン物質の液体組成物の寒冷顆粒を含む容器を提供する。
さらに本発明は、アレルゲン物質の液体組成物の寒冷顆粒を提供する。
本発明は、よって、従来技術の問題点を解決する、つまり複雑な寒冷顆粒化装置又は冗長な凍結乾燥工程を必要としない効率的な方法を提供する。さらに、本発明の方法は、滅菌寒冷顆粒の製造を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の方法に有用な簡単な機構を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図面の簡単な説明
図1は、本発明の方法に有用な簡単な機構を示す。液体窒素は、適切な容器(例えば一次包装(primary packaging))にまず加える。液体窒素を入れた後、有効医薬成分を、分配ポンプ(dispensing pump)、例えば蠕動ポンプにより貯蔵槽(reservoir)から充填頭部(filling head)にポンプで送り出す。充填頭部の下部の孔から液滴が形成され、該液滴が充填頭部を離れて容器内の極低温媒体(cryogenic medium) (窒素)の中へ落下し、それにより寒冷顆粒が形成される。上記の容器は、液体窒素の蒸発及び有効医薬成分の寒冷顆粒の形成を追跡する目的ではかりの上においてもよい。
【0010】
発明の詳細な説明
上記のように、本発明は、有効医薬成分のバッチの製造方法を提供する。
【0011】
工程(a)−液体組成物
本発明の方法は、(a) 有効医薬成分を含み、凝固温度(freezing temperature)を有する液体組成物を準備する第一の工程を含む。
【0012】
液体組成物は、好ましくは水性の溶液又は懸濁液であり、好ましくは水溶液である。水溶液は、一般的に、少なくとも50% (v/v)の水を含む液体溶液である。その例は、純水又は1又はそれより多い混和性の溶媒、例えば短鎖アルコール、例えばメタノール、エタノール、n-プロパノール及びイソプロパノール、短鎖ケトン、例えばアセトン並びにポリアルコール、例えばグリセロールと組み合わせた水である。液体組成物(例えば水溶液)は、医薬的に許容される溶質、例えば糖、例えばスクロース及び界面活性剤、例えば非イオン界面活性剤をさらに含み得る。
【0013】
本発明を特に適用可能な有効医薬成分は、せん断力、例えば凍結−解凍サイクルの繰返しによる分解の影響を受けやすいものである。その具体的な例は、アレルゲン物質及びタンパク質ベースの成分、例えば酵素調製物(enzyme preparation)などである。現在最も興味がある有効医薬成分は、アレルゲン物質である。
【0014】
本明細書及び特許請求の範囲において、「アレルゲン物質」とは、ヒト又は動物におけるアレルギー反応の治療、緩和又は予防に有用な物質を意味することを意図する。特に適切な「アレルゲン物質」は、個体への曝露の繰返しによりアレルギー反応、すなわちIgE媒介反応を誘導することが報告されている天然のタンパク質を含む。天然のアレルゲンの例は、花粉アレルゲン(樹木、ハーブ、雑草(weed)及び草(grass)の花粉アレルゲン)、昆虫アレルゲン(吸入性、唾液及び毒液アレルゲン、例えばダニアレルゲン、ゴキブリ及びユスリカ類アレルゲン、膜翅類毒液アレルゲン)、動物の体毛及びふけのアレルゲン(例えばイヌ、ネコ、ウマ、ラット、マウスなどから)並びに食物アレルゲンである。樹木、草及びハーブからの重要な花粉アレルゲンは、例えばシラカバ(Betula)、ハンノキ(Alnus)、ハシバミ(Corylus)、ツノギ(Carpinus)及びオリーブ(Olea)、セイヨウスギ(Cryptomeria及びJuniperus)、プラタナス(Platanus)、及びFagales、Oleales、Pinales及びplatanaceaeの分類学上の目、Lolium、Phleum、Poa、Cynodon、Dactylis、Holcus、Phalaris、Secale及びSorghum属の草を含むPoales目、Ambrosia、Artemisia及びParietaria属を含むAsterales及びUrticalesの目からのものである。他の重要な吸入性アレルゲンは、Dermatophagoides及びEuroglyphusの属のハウスダストマイト、貯蔵マイト、例えばLepidoglyphys、Glycyphagus及びTyrophagus、ゴキブリ、ユスリカ及びノミ、例えばBlatella、Periplaneta、Chironomus及びCtenocepphalidesからのもの、ネコ、イヌ及びウマのような哺乳動物からのもの、例えばミツバチ(Apidae超科)、スズメバチ(Vespidea超科)及びアリ(Formicoidae超科)を含む分類学上のHymenoptera目からのもののような有刺又は有咬昆虫に由来するものを含む毒物アレルゲンである。真菌からの重要な吸入性アレルゲンは、Alternaria及びCladosporium属に由来するようなものである。
【0015】
本発明のある好ましい実施形態において、アレルゲンは、Bet v 1、Aln g 1、Cor a 1及びCar b 1、Que a 1、Cry j 1、Cry j 2、Cup a 1、Cup s 1、Jun a 1、Jun a 2、jun a 3、Ole e 1、Lig v 1、Pla l 1、Pla a 2、Amb a 1、Amb a 2、Amb t 5、Art v 1、Art v 2、Par j 1、Par j 2、Par j 3、Sal k 1、Ave e 1、Cyn d 1、Cyn d 7、Dac g 1、Fes p 1、Hol l 1、Lol p 1及び5、Pha a 1、Pas n 1、Phl p 1、Phl p 5、Phl p 6、Poa p 1、Poa p 5、Sec c 1、Sec c 5、Sor h 1、Der f 1、Der f 2、Der p 1、Der p 2、Der p 7、Der m 1、Eur m 2、Gly d 1、Lep d 2、Blo t 1、Tyr p 2、Bla g 1、Bla g 2、Per a 1、Fel d 1、Can f 1、Can f 2、Bos d 2、Equ c 1、Equ c 2、Equ c 3、Mus m 1、Rat n 1、Apis m 1、Api m 2、Ves v 1、Ves v 2、Ves v 5、Dol m 1、Dil m 2、Dol m 5、Pol a 1、Pol a 2、Pol a 5、Sol i 1、Sol i 2、Sol i 3及びSol i 4、Alt a 1、Cla h 1、Asp f 1、Bos d 4、Mal d 1、Gly m 1、Gly m 2、Gly m 3、Ara h 1、Ara h 2、Ara h 3、Ara h 4、Ara h 5並びにこれらのいずれの分子系統の混合(shufflant)ハイブリッドから選択される。
【0016】
本発明の最も好ましい実施形態において、アレルゲンは、草花粉アレルゲン又はダストマイトアレルゲン又はブタクサアレルゲン又はスギアレルゲン又はネコアレルゲン又はシラカバアレルゲンである。
【0017】
本発明の別の実施形態において、アレルゲン物質は、同じアレルゲン起源に由来するか、又は異なるアレルゲン起源に由来する少なくとも2つの異なる種類のアレルゲン、例えば異なる種の草からの草グループ1及び草グループ5アレルゲン、又は異なる種のダニからのダニグループ1及びグループ2アレルゲン、短(short)及び巨大(giant)ブタクサアレルゲンのような雑草アレルゲン、Alternaria及びCladosporiumのような異なる真菌アレルゲン、シラカバ、ハシバミ、ツノギ、オーク、ハンノキのような樹木アレルゲン、ピーナッツ、大豆及びミルクアレルゲンのような食物アレルゲンを含む。
【0018】
アレルゲン物質は、抽出物、精製アレルゲン、修飾アレルゲン、組換えアレルゲン又は組換えアレルゲンの変異体の形であり得る。アレルゲン抽出物は、同じアレルゲンの1又はそれより多いアイソフォームを天然に含むが、組換えアレルゲンは、一般的に、アレルゲンの1つのアイソフォームのみに相当する。好ましい実施形態において、アレルゲンは抽出物の形にある。別の好ましい実施形態において、アレルゲンは組換えアレルゲンである。さらに好ましい実施形態において、アレルゲンは、天然に発生するIgE低結合性変異体又は組換えIgE低結合性変異体である。
【0019】
アレルゲン物質が2又はそれより多いアレルゲンを含有する場合、アレルゲンは等モル量を示すか、又はアレルゲンのモル比は変動することができ、好ましくは20:1〜1:20である。
【0020】
本発明の好ましい実施形態において、IgE低結合性アレルゲンは、WO 99/47680、WO 02/40676又はWO 03/096869 A2によるアレルゲンである。
【0021】
液体組成物中の有効医薬成分の濃度は、一般的に、1〜500 mg/mLの範囲、例えば1〜300mg/mLの範囲、例えば5〜100 mg/mLの範囲、例えば20〜80 mg/mL程度である。
一般的に、液体組成物は、少なくとも-30℃、例えば少なくとも-10℃の凝固温度を有するべきであり、このことにより該組成物の液滴は極低温媒体と接触したときに迅速に凍結する。水溶液は、一般的に、-10℃〜0℃の範囲の凝固温度を有する。
ある具体的な実施形態において、液体組成物は滅菌であり、よって、本方法は滅菌条件下で行うことが好ましい。
【0022】
工程(b)−容器及び極低温媒体
本方法は、(b) 液体組成物の凝固温度より低い沸騰温度を有する極低温媒体を中に含む容器を準備する工程をさらに含む。
本発明の関係において用いられる容器は、一般的に、-200℃〜+120℃までの温度変化に耐え得るべきである。これは、一方は大気圧での液体窒素の沸騰温度と、他方は設備の滅菌に用いられる一般的な温度に相当する。よって、容器は、一般的に、金属若しくは合金、セラミック材料、ガラス、プラスチック又はボール紙材料、特に金属又は合金、例えばアルミニウム若しくはステンレス鋼、又はガラス又はセラミック材料からつくられる。
【0023】
ある実施形態において、容器は、円筒形容器、例えば円筒形アルミニウム容器である。円筒形又は曲線的な容器は、端部及び角部がないので、使用後に洗浄が容易であるという利点を有する。
あるいは、容器は、容器に多数の液滴を同時に加えることができるようなトレーの形であってもよい。
【0024】
工業的な規模の方法について、容器の容量は、一般的に、少なくとも1 L、例えば5 L又はそれより多く、例えば20 L又はそれより多く、さらに60 L又はそれより多い。工業的な規模のバッチに適用可能であることが本発明の方法の特徴である。各容器内の液体組成物の寒冷顆粒の荷重は、例えば60 Lの容器に対して30 kgであり得る。
【0025】
本発明の特徴は、有効医薬成分を含む組成物の寒冷顆粒のバッチを貯蔵及び取扱いに適する容器内に直接入れることでもある。よって、密閉可能な容器の開口部は、一般的に、容器内に含有された極低温媒体に、液滴の形の液体組成物を適度な速度で加えることができるのに充分な断面積を有するべきである。該開口部の断面積は、容器の内部の断面積の5〜100%が好ましく、このことにより極低温媒体の表面の実質的な面積に液滴を同時に加えることができる。
【0026】
寒冷顆粒が形成される容器は、極低温媒体への液体組成物の添加の後に密閉されるのが好ましいが、最も頻繁には極低温媒体の少なくとも部分的な除去の後である。よって、本発明の方法の好ましい実施形態において、容器は密閉手段により密閉される。
【0027】
容器の密閉手段は、口金(cap)、ねじ込み口金、栓(plug)、ふた(lid)、ホイル(例えばプラスチック又は金属のホイル)などの形であり得る。もちろん当業者は、容器を密閉した後に湿気、汚れ及び空気が容器内に入るのを効果的に妨げることを確実にするために適切な密閉手段を選択することができる。さらに、密閉手段は、有効医薬成分が容器外へ昇華できないことを確実にすることが好ましい。ある実施形態において、密閉手段はブチルラバーのディスク又は栓を含む口金である。適用可能であれば、容器は選択された種類の密閉手段に対応するフランジ又はへり(lip)を含むべきである。
【0028】
トレーの形態の容器は、例えば、トレーをふたで覆うか、トレーをプラスチック又は金属のホイルで包むか、あるいはトレーをプラスチック又は金属のホイルのバッグに入れることにより密閉することができる。
【0029】
ある実施形態において、密閉手段又は容器の壁は、密閉された容器内の過剰の圧力が逃げることを可能にする一方バルブを含む。ある実施形態において、一方バルブは、容器の壁に備えられる。別の実施形態において、一方バルブは密閉手段に備えられる。さらに別の実施形態において、一方バルブの機能は、密閉手段が容器の開口部と相互作用するような方法により得られる。一方バルブを組み込むことは、極低温媒体の全てが容器から出される前に容器が密閉される場合に特に適切である。また、一方バルブは、容器内の圧力が予想外に増加する場合に、シールの破裂又は破壊の危険性をなくす。一方バルブは、ある閾値より低い過剰圧力(例えば、周囲圧力に対して100 kPaまで〜50 kPaまでの過剰圧力)を容器内に存在させて、密閉された容器に空気及び湿気が侵入することをさらに防ぐ。
【0030】
極低温媒体は、高くて-40℃、例えば高くて-75℃、好ましくは高くて-150℃の沸騰温度を有するのが好ましい。極低温媒体は、一般的に、液体窒素、液体ヘリウム及び液体酸素から選択され、好ましくは液体窒素である。
【0031】
上記の容器には、一般的に、10〜100%、例えば50〜95%、例えば60〜90%の範囲の極低温媒体、例えば液体窒素を仕込む。
容器内で適切な低温を維持するために、容器は断熱されていてもよいし、又は二重壁を有していてもよく、例えば真空チャンバである。断熱は、断熱材、例えば発泡ポリスチレンの外被(Flamingo)により行うこともできる。
【0032】
工程(c)−寒冷顆粒の形成
本発明の方法は、さらに、(c) 液体組成物を液滴に分割し、そして該液滴を容器内の極低温媒体に加えることにより該液滴を凍結させて液体組成物の寒冷顆粒を形成する工程を含む。
【0033】
液体組成物は、一般的に、1又はそれより多い孔(例えばノズル又はニードル)、好ましくは複数の孔を含む充填頭部により液滴に分割される。各孔の開口部は、一般的に、液滴の(それにより寒冷顆粒も)平均直径が0.1〜20 mm、例えば0.5〜10 mm、例えば1〜5 mmの範囲になるものである。
【0034】
本発明の方法において形成される寒冷顆粒の形状は方法の条件に依存し、寒冷顆粒の形状は、ほぼ球状の形から全く不規則な形まで変動する。本発明に関して、寒冷顆粒に関する「直径」の表現は、寒冷顆粒の最大寸法を意味する。
【0035】
各液滴に必要とされる液体組成物の量は、一般的に、0.5〜250μL、例えば1〜100μL、例えば2〜20μLの範囲である。特に重要ではないが、寒冷顆粒の均一性が通常望ましく、孔への流速は調節されることが好ましく、それにより極低温媒体の表面での液滴の過剰な凝集が抑制される。一般的な流速は、孔当たり0.060〜25 mL/分である。液体組成物は、一般的に、1秒当たり1〜4、例えば1〜2滴が形成されるように各孔に供給される。
インクジェットプリンタから通常知られている液滴形成技術が、液体組成物の液滴の形成に有用であろうことも考えられる。
【0036】
液滴の粘度及び/又は表面張力は、溶媒の適切な選択及び医薬的に許容される溶質、例えば糖類及び非イオン界面活性剤の添加により任意に調節することができる。
【0037】
液滴は、孔を離れた後、極低温媒体に直接加えられ、通常、かなり迅速に凍結して液体組成物の寒冷顆粒を形成する。
「寒冷顆粒」の表現は、極低温媒体(例えば液体窒素)との接触の後に得られる液体組成物の凍結した顆粒を意味することを意図する。既に凍結した液滴(寒冷顆粒)のいくつかが極低温媒体の表面を浮遊する傾向にあり、それによりその後に加えられた液滴がぶつかって最初に形成された寒冷顆粒と凝集する傾向にあるという事実のために、「寒冷顆粒」は2又はそれより多い液滴から形成され得ることが理解されるべきである。よって、ある実施形態において、寒冷顆粒は2〜50の凝集した液滴、より典型的には2〜20の凝集した液滴から形成され得ることが理解されるべきである。
このことにより、寒冷顆粒のバッチが、多くの場合、1つの凍結した液滴に対応する寒冷顆粒と2又はそれより多い凍結した液滴の凝集体に対応する寒冷顆粒との混合物であるといえる。よって、寒冷顆粒の(数)「平均直径」は、寒冷顆粒のこのようなバッチ(混合物)のことをいう。
【0038】
寒冷顆粒のその後の取扱いの目的のために、寒冷顆粒の1%未満が25より多くの液滴の凝集体であることがしばしば好ましい。
【0039】
そこから液滴が形成される充填頭部及びノズルは、一般的に、容器の開口部のすぐ上、開口部の軌道(opening path)内又は容器内に配置される。
【0040】
ある実施形態において、充填頭部は充分数の孔を有し、それにより容器の開口部の断面積より少し小さい(例えば90%)に相当する断面積にわたって液滴が分配される。
【0041】
例えば円筒形容器に適用可能な別の実施形態において、特に容器の開口部の断面積が容器の断面積の80%未満、又は60%未満であるときに、充填頭部は、容器内に配置され得るように構成することができ、それにより容器の開口部の断面積よりも大きい断面積をカバーすることができる。この実施形態は、水平に配置された孔を有する回転バーの形の充填頭部を用いることにより実現することができる。バーは、容器内に、極低温媒体の面の高さのすぐ上に位置することができ、供給及びバーの回転により、断面積の実質的に全体にわたって液滴を分配することが可能になる。
【0042】
どちらの実施形態においても、個々の液滴がそれぞれの孔を離れる前に液滴の凍結が起こらない様式で充填頭部が配置されるのが好ましい。
寒冷顆粒の一般的な考察は、US 5,275,016、US 4,848,094、WO 00/06179及びWO 03/020959に見出すことができる。
【0043】
工程(d)−貯蔵
本発明の方法に共通する特徴は、寒冷顆粒がそのまま、例えば乾燥(例えば凍結乾燥)されることなく貯蔵されることである。本発明の簡便な特徴は、寒冷顆粒が、寒冷顆粒の形成に用いられた容器と同じ容器内で貯蔵できることでもある。
【0044】
よって、本発明の第一の観点によると、本方法の最終工程は、密閉手段を用いて液体組成物の寒冷顆粒を含有する容器を密閉し、そして該容器を貯蔵することを含む。もちろん、密閉は、一般的に、選択された密閉手段により行なわれる。
【0045】
本発明の第二の観点によると、該方法の最終工程は、液体組成物の寒冷顆粒を含有する容器を24時間以上の期間貯蔵することを含む。より典型的には、該容器は48時間以上、例えば96時間以上、例えば1又は4週間の期間貯蔵される。
【0046】
本発明の第三の観点によると、該方法の最終工程は、液体組成物の寒冷顆粒を含有する容器を貯蔵することを含むが、但し液体組成物の寒冷顆粒は、工程(c)又は工程(d)の後に凍結乾燥工程に付されない。
【0047】
全ての場合において、密閉された容器は、寒冷顆粒の取扱いを困難にし得る寒冷顆粒の凝固又は凝集を避けるために、液体組成物の臨界導電温度(critical conductivity temperature)より低い温度で実質的に貯蔵されるのが好ましい。
「臨界導電温度」は、電気伝導度の変化割合、すなわち一次導関数が大きい温度として決定される。臨界導電温度を決定する実際の方法は、(a) 広い温度範囲にわたって電気伝導度をスキャンして、電気伝導度対温度のプロットを作成し、(b) 電気伝導度の一次導関数を計算し、そして(c) 電気伝導度の変化割合(一次導関数)が大きい温度として臨界導電温度を決定することである。
【0048】
ほとんどの実施形態において、容器(密閉されたかまたはされていない)は、-80℃〜0℃、例えば-40℃〜-10℃の範囲の温度で貯蔵するのが好ましい。貯蔵時間(これは、容器の輸送のような取扱いも含み得る)は、一般的に、24時間以上の期間である。多くの場合、容器は、寒冷顆粒がさらに加工される前に48時間以上、例えば96時間以上、例えば1又は4週間の期間貯蔵される。好ましくは、液体組成物の寒冷顆粒を含有する容器は、6ヶ月より長く、好ましくは1年より長く、好ましくは5年より長い期間、有効医薬成分の活性を損失することなく貯蔵されることが可能である。
【0049】
本発明の全ての観点において、容器は、貯蔵の前に密閉手段を用いて密閉されるのが好ましい。密閉により、湿気、汚れ及び空気が容器内に侵入するのを効果的に妨げることを確実にする。
【0050】
その重要なある実施形態において、該方法は、容器を密閉する前に、容器から実質的に全ての極低温媒体を除去するさらなる工程を含む。極低温媒体の除去は、極低温媒体の蒸発、極低温媒体のデカンテーション、又はこれら2つの組み合わせにより行うことができる。極低温媒体の除去は、密閉の後に容器内に危険な過剰圧力が発生することを避けるために、特に適切である。寒冷顆粒のさらなる凝固又は凝集を避けるために、寒冷顆粒の温度は、極低温媒体の除去の間、液体組成物の臨界導電温度より低く保つのが好ましい。
【0051】
密閉の際に容器内に極低温媒体の少なくとも一部分がまだ存在している別の実施形態において、密閉手段又は容器の壁のいずれかが一方バルブを含むのが特に望ましい。この実施形態は、容器が極低温媒体、寒冷顆粒及び極低温媒体に対応するガス(例えば窒素ガス)で完全に占められているうちに容器を密閉することにより、容器から空気及び湿気が排除されるという利点を有する。さらに、特に工業的規模に適する利点は、液滴の添加の後に容器を直ちに密閉できるので、容器を取り扱うことができる前に、損害の大きい待ち時間が排除されることである。
【0052】
本発明のある特定の実施形態において、本方法は、
(a) アレルゲン物質を含み、少なくとも-30℃の凝固温度を有する液体組成物を準備し;
(b) 液体窒素を含む容器と該容器を密閉するのに適切な密閉手段とを準備し;
(c) 前記液体組成物を液滴に分割し、そして該液滴を容器内の極低温媒体に加えることにより液滴を凍結させて0.5〜10 mmの範囲の平均直径を有する液体組成物の寒冷顆粒を形成し;そして
(d) 該寒冷顆粒の温度を液体組成物の臨界導電温度より低く保つ間に、実質的に全ての極低温媒体を除去し、そして液体組成物の寒冷顆粒を含有する該容器を密閉する
各工程を含む。この実施形態の特定の変形によると、密閉手段又は容器の壁は、密閉された容器内の過剰の圧力が逃げることを可能にする一方バルブを含む。
【0053】
本発明の別の特定の実施形態において、本方法は、
(a) アレルゲン物質を含み、少なくとも-30℃の凝固温度を有する液体組成物を準備し;
(b) 液体窒素を含む容器を準備し;
(c) 液体組成物を液滴に分割し、そして該液滴を容器内の極低温媒体に加えることにより液滴を凍結させて0.5〜10 mmの範囲の平均直径を有する液体組成物の寒冷顆粒を形成し;そして
(d) 該寒冷顆粒の温度を液体組成物の臨界導電温度より低く保つ間に、実質的に全ての極低温媒体を除去し、そして液体組成物の寒冷顆粒を含有する該容器を48時間以上の期間貯蔵する
各工程を含む。
【0054】
本発明のさらに別の実施形態において、本方法は、
(a) アレルゲン物質を含み、少なくとも-30℃の凝固温度を有する液体組成物を準備し;
(b) 液体窒素を含む容器を準備し;
(c) 液体組成物を液滴に分割し、そして該液滴を該容器内の極低温媒体に加えることにより液滴を凍結させて0.5〜10 mmの範囲の平均直径を有する液体組成物の寒冷顆粒を形成し;そして
(d) 該寒冷顆粒の温度を液体組成物の臨界導電温度より低く保つ間に、実質的に全ての極低温媒体を除去し、そして液体組成物の寒冷顆粒を含有する該容器を貯蔵する
各工程を含むが、但し液体組成物の寒冷顆粒は、工程(c)又は工程(d)の後に凍結乾燥工程に付されない。
【0055】
本発明のさらにより具体的な実施形態において、本方法は、
(a) アレルゲン物質を含み、少なくとも-30℃の凝固温度を有する液体組成物を準備し;
(b) 液体窒素を含む容器と該容器を密閉するのに適切な密閉手段とを準備し;
(c) 液体組成物を液滴に分割し、そして該液滴を容器内の極低温媒体に加えることにより液滴を凍結させて0.5〜10 mmの範囲の平均直径を有する液体組成物の寒冷顆粒を形成し;そして
(d) 該寒冷顆粒の温度を液体組成物の臨界導電温度より低く保つ間に、実質的に全ての極低温媒体を除去し、液体組成物の寒冷顆粒を含有する容器を密閉し、そして液体組成物の寒冷顆粒を含有する該容器を貯蔵する
各工程を含むが、但し液体組成物の寒冷顆粒は、工程(c)又は工程(d)の後に凍結乾燥工程に付されない。この実施形態の特定の変形によると、密閉手段又は容器の壁は、密閉された容器内の過剰の圧力が逃げることを可能にする一方バルブを含む。
【0056】
上記に続いて、本発明は、アレルゲン物質の液体組成物の寒冷顆粒を含む容器、特に密閉された容器(すなわち密閉手段により密閉された)をも提供し、該寒冷顆粒は0.1〜20 mmの範囲、例えば0.5〜10 mmの範囲の平均直径を有する。ある実施形態において、密閉手段又は容器の壁は、密閉容器内の過剰圧力が逃げることを可能にする一方バルブを含む。該容器は、本発明の方法の記載に関して上記で規定された特徴のいくつかを有するのが好ましい。ある実施形態において、容器は、本明細書で規定される方法により得ることができる。
【0057】
さらに、本発明は、アレルゲン物質の液体組成物の寒冷顆粒を提供し、該寒冷顆粒は0.1〜20 mmの範囲、例えば0.5〜10 mmの範囲の平均直径を有する。寒冷顆粒は、本発明の方法の記載に関して上記で規定された特徴のいくつかを有するのが好ましい。ある実施形態において、寒冷顆粒は、本明細書に記載されるようにして実質的に製造される。
【0058】
上記の寒冷顆粒は、一般的に、適切な製剤化方法において直接用いられる。本明細書で規定する方法の結果として、寒冷顆粒のバッチの個々の一定量は、高い均質性の程度を示し、よって該寒冷顆粒のバッチは、製剤化方法におけるさらなる使用のために容易に標準化することができる。
【実施例】
【0059】
実施例
アレルゲン物質の寒冷顆粒の製造
アレルゲン物質の液体組成物700 mLを、Phleum pratenseの草花粉を起源とする材料からの抽出により、Allergy, principle and practise (S. Manning編) 1993, Mosby-Year Book, St. Louis の第20章"Allergenic extracts", H. Ipsenらに記載される方法論に従って製造した。該液体組成物は、mL当たり約50 mgのアレルゲン物質を含んでいた。
【0060】
図1に記載される機構を用いて寒冷顆粒を形成した。液体組成物を、使い捨てのFlexboyバッグ(STEDIM, France)に入れた。このバッグを分配ポンプ(Fill-Masterパワーユニットタイプ042、コントロールユニットタイプ401、ポンプユニットタイプ403及びポンプヘッドタイプ112、全てDelta Scientific Medical製)に、適切なMasterflexパイプ(Rehau)により連結した。分配ポンプに連結されたMasterflexパイプは、充填頭部(均一な滴形成のために下方向に向かった突出を有する5つの孔(φ1 mm)を有する、注文製作のステンレス鋼カップ(φ107 mm))のすぐ上まで続いた。充填頭部は、Pharma 802、5.5Lアルミニウム容器(Tournaire, France)の開口部の15 cm上方に配置された。該容器は、窒素の蒸発及び寒冷顆粒の形成を監視するために、QS32Aはかり(Sartorius)の上に置いた。容器は、ステンレス鋼タンクからの液体窒素で、最初に90%充たされていた。
【0061】
液体組成物は、約14分間の期間をかけて約50 ml/分の速度で充填頭部に加えた。容器は開けたまま約20℃で2時間維持され、それにより液体窒素が蒸発した。まず、容器をブチルラバーの栓とシールレバーリングで密閉することにより、サンプル抜き出しのためにプラグの取り外しを可能にした。その後、ブチルラバーの栓を金属の口金で密閉し、容器を-20℃で、アレルゲン物質を含有する寒冷顆粒を秤量して適切な用量に製剤化するまで(通常、6〜12ヶ月の貯蔵時間)貯蔵した。製剤化の前に、寒冷顆粒を凍結乾燥しなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抽出物、精製アレルゲン、修飾アレルゲン、組換えアレルゲン又は組換えアレルゲンの変異体の形態であるアレルゲン物質の液体組成物の寒冷顆粒。
【請求項2】
0.1〜20mmの範囲の平均直径を有する請求項1に記載の寒冷顆粒。
【請求項3】
0.5〜10mmの範囲の平均直径を有する請求項1に記載の寒冷顆粒。
【請求項4】
1〜5mmの範囲の平均直径を有する請求項1に記載の寒冷顆粒。
【請求項5】
1年より長い期間、アレルゲン物質の活性を損失することなく貯蔵することが可能である請求項1〜4のいずれか1項に記載の寒冷顆粒。
【請求項6】
秤量され、適切な用量に製剤化されるが、製剤化の前に凍結乾燥されない請求項1〜5のいずれか1項に記載の寒冷顆粒。
【請求項7】
アレルゲン物質が花粉アレルゲン、昆虫アレルゲン、動物の体毛若しくはふけのアレルゲン又は食物アレルゲンである請求項1〜6のいずれか1項に記載の寒冷顆粒。
【請求項8】
抽出物、精製アレルゲン、修飾アレルゲン、組換えアレルゲン又は組換えアレルゲンの変異体の形態であるアレルゲン物質の液体組成物の寒冷顆粒を含む容器。
【請求項9】
寒冷顆粒が0.1〜20mmの範囲の平均直径を有する請求項8に記載の容器。
【請求項10】
寒冷顆粒が0.5〜10mmの範囲の平均直径を有する請求項8に記載の容器。
【請求項11】
寒冷顆粒が1〜5mmの範囲の平均直径を有する請求項8に記載の容器。
【請求項12】
1年より長い期間、アレルゲン物質の活性を損失することなく貯蔵することが可能である請求項8〜11のいずれか1項に記載の容器。
【請求項13】
寒冷顆粒の製剤化に関連して使用される請求項8〜12のいずれか1項に記載の容器。
【請求項14】
アレルゲン物質が花粉アレルゲン、昆虫アレルゲン、動物の体毛若しくはふけのアレルゲン又は食物アレルゲンである請求項8〜13のいずれか1項に記載の容器。

【図1】
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【公開番号】特開2011−105719(P2011−105719A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−254955(P2010−254955)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【分割の表示】特願2006−544216(P2006−544216)の分割
【原出願日】平成16年12月17日(2004.12.17)
【出願人】(505193472)
【氏名又は名称原語表記】ALK−ABELLO A/S
【住所又は居所原語表記】Boge Alle 6−8,DK−2970 Horsholm,DENMARK
【Fターム(参考)】