説明

有効成分の拡散の分野において適用できる活性分子のベクターの製造方法及びそのようにして得られるベクター

本発明は、以下の工程:
−少なくとも4個の炭素によって分離された少なくとも2個のNH基を有する単量体を水に希釈すること、
−pHを6.5〜7.5の範囲の数値に調整すること、
−グルタルアルデヒド、OHC−(CH−COHを添加すること、及び
−縮合重合反応及びイミンの形成を生じさせること、及び
−得られたポリ(単量体−G)を回収すること
を含むことを特徴とする、生物医学の分野において適用できる活性分子のベクターの製造方法に関する。前記単量体は、L−オルニチン、L−リシン又はL−シトルリンから選択される。本発明はまた、そのようにして得られる生物医学的ベクター、及び静菌、抗アレルギー、抗寄生生物、抗捕食生物又は抗真菌、抗炎症又は免疫調節作用を提供するための、脂肪酸、抗酸化薬、ビタミン化合物又は神経伝達物質などの活性分子のベクターとしてのその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有効成分の拡散のために生物医学の分野において適用できる、活性分子のベクターの製造方法に関する。
【0002】
そのようなベクターは、ヒト、動物及び植物の分野において有効成分の拡散に適用できる。
【0003】
本発明はまた、この方法から生じる生物医学的ベクターに関する。
【背景技術】
【0004】
例えば人体の治療又は植物の処理の領域において、一部の有効成分は、それらの標的に達する前にあまりに早期に代謝されてしまうことが知られている。
【0005】
また一部の分子は、十分な治療作用を発揮できるためには、それらの分子をベクター上に移植しなければならない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明に有用であり、例として示す活性分子として、脂肪酸、抗酸化薬、ホルモン、ビタミン化合物、薬剤又は神経伝達物質が挙げられる。
【0007】
ベクターによって提供されるそのような活性分子は、静菌、抗アレルギー、抗寄生生物、抗捕食生物又は抗真菌、免疫調節又は抗炎症作用を有する。
【0008】
小さな分子は速やかに拡散するが、速やかに代謝され、一方、移植された同じ分子はそれほど迅速に代謝されないので、より長い寿命を有する。
【0009】
適合させたベクター上に移植された活性分子の拡散は上昇し、そのことは、有効成分を、代謝されるより前に及び強力な作用を伴って、作用部位のより近くに移動させることを可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的は、それ故、強い効力を得るためだけでなく、強力な拡散性を確実にするベクター上にそれらを移植するためにも十分な大きさの、移植された分子と共にベクターを使用できることである。
【0011】
もう1つの重要なパラメータは、移植によってこれらの活性分子を受け入れるベクターの能力である。
【0012】
強い拡散性を伴って活性分子の支持の役割を確実にする、重合体型のベクターの生成を可能にすることが本発明の目的である。特に、重合の割合を変化させることによって、この拡散性を調節することができる。
【0013】
本発明はまた、いかなる不活性支持体も必要としない重合体形態の活性分子のベクターを生成することができる方法を提示する。
【0014】
この同じベクターはまた、重金属及びウシ血清アルブミンのような免疫応答を誘導するタンパク質に結合した金属元素を有する化合物を捕獲することができる。
【0015】
アミンから重合体を得ることができる、特に特許出願第PCT/FR99/00103号に述べられている手法が公知である。
【0016】
そのために、重合体網状化剤の存在下で重合するジアミンが使用される。
【0017】
これらの公知の方法では、ポリアミンは、ポリ(L−オルニチン−R)、ポリ(プトレシン−R)、ポリ(カダベリン−R)、ポリ(L−カルノシン−R)、ポリ(スペルミジン−R)又はポリ(スペルミン−R)又はこれらの混合物である。−Rは、水素化ホウ素ナトリウムに還元される重合剤を表わす。
【0018】
使用する重合体網状化剤は、ホルムアルデヒド、グリオキサール、原価が非常に高いが、マロンジアルデヒド、又はグルタルアルデヒドから選択される。
【0019】
もう1つの重合体網状化剤は、1,1,3,3−テトラメトキシプロパンである。
【0020】
使用する重合の方法は、ジアミンをpH8.0以上の塩基性溶液への溶解及びそこにグルタルアルデヒドを添加することから成る。
【0021】
二重結合の減少はまた、水素化ホウ素ナトリウムの溶液と、それに続く一連の透析によっても得られる。
【0022】
重合の収率は次のような順序に等級づけられる:ポリ(プトレシン−G)>ポリ(カダベリン−G)>ポリ(L−オルニチン−G)>ポリ(スペルミジン−G)>ポリ(L−カルノシン−G)。
【0023】
これらの化合物において、−Gは、水素化ホウ素ナトリウムに還元されるグルタルアルデヒドを表わす。
【0024】
グルタルアルデヒドによって形成されるアミン結合はよく知られていても、グルタルアルデヒドで形成される重合体は知られていない。
【0025】
液体の処理のために使用するときこれらの重合体によって提起される問題は、pH8.0以上の強アルカリ性媒質中で作業する必要があることである。ポリ(プトレシン−G)及びポリ(L−カルノシン−G)は8.0未満のpHでは重合することができない。
【0026】
そのような重合体はまた、三次元重合体を生成することができので、非常に興味深い。
【0027】
生物医学的ベクターを生成するためには、この場合、人体のpHである、中性に近い7.0以外のpHで作業することは考えられない。ほとんどの場合植物界においても同様である。
【0028】
本発明は、それ故、ジアミンから出発するが中性又はこの7.0の値に近いpHで作業する、二次元又はより好ましくは三次元重合体を生成できる方法を決定することを対象とする。
【0029】
本発明に従った生成物の多くの利点が以下の詳細な説明から明らかになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明の方法を、非制限的な特定実施形態に従ってここで詳細に述べる。
【0031】
本発明の方法は、ジアミンL−オルニチンを提供すること及びホモポリアミン、ポリ(L−オルニチン−G)を得るためにそれをジアルデヒドファミリーの化合物、特にグルタルアルデヒドの存在下で重合させることから成る。
【0032】
生物医学の分野では、必要量がより低いので、収率はより低くなるが、他のジアミンに関しても同じ方法を実施することができる。例えばD又はL−シトルリン及びL−リシンが挙げられる。
【0033】
この最初の好ましい実施形態の説明はL−オルニチンに限定される。
【0034】
この単量体は4個の炭素と2個のNH基を含む。実際には、前記の2個のNH基は少なくとも4個の炭素によって分離されていなければならない。3個の炭素を有する分子での実験は、重合が起こらないので、満足しうる結果を与えないことが認められている。
【0035】
L−オルニチンの場合は、線状ホモ重合体だけでなく、例えば網状構造を形成するための網状化剤を用いて3Dのホモ重合体を生成することも可能である。
【0036】
このようにして生成されたホモポリアミン、L−オルニチン−Gは新規であり、特に三次元形態の、活性分子のベクターとしてのその機能において特に画期的である。
【0037】
本発明に従ったホモポリアミン、L−オルニチン−Gの製造方法は、
−例えばpHを6.5〜7.5の範囲、特に7.0に調整した、水25ml中のL−オルニチン10g、NH−(CH−CH(NH)−COOH、
−50%グルタルアルデヒド20ml、OHC−(CH−COH
を混合することから成る。
【0038】
生じる反応は、イミンの形成を伴う縮合重合反応である。
【0039】
透析システムを通すことによって使用できる線状重合体が得られる。
【0040】
本発明の方法に従って直接三次元重合体を得るためには、ポリエチレンイミンのような重合体網状化剤を媒質に添加することによってこの重合体の網状構造を確実にする。添加は、この場合には、オルニチン10gにつき1mlの割合で行う。
【0041】
得られる重合体は三次元重合体の形態を有する。
【0042】
得られるホモ重合体のビーズを作製して、より容易に操作できるようにするには、二相性作用を得るために前記重合体を疎水性有機媒質中に入れる。さらに、好都合にはホモ重合体の重合の時間をさらに短縮するためにこの媒質を加熱し、これによって重合はほとんど瞬時となる。
【0043】
このようにして形成されたビーズを収集するには、単に機械的にそれらをフィルター上にとり、その後、一方では水を除去するため及び他方で網状化を完了させるために加熱換気下でそれらを乾燥する。
【0044】
次にこれらのビーズを脱脂し、その後ナトリウムで少なくとも1回、例えば1Mナトリウム200ml中80℃で2時間、処理する。
【0045】
この工程は、さもなければ水素の形成とビーズの機械的破裂を生じさせ、ビーズを容易な操作には不適切なものにする、陽子を除去することができる。
【0046】
この工程は少なくとも1回反復することができる。
【0047】
その後、イミンの二重結合の形成を低下させるために1g/lの水素化ホウ素ナトリウムの存在下に1Mナトリウム溶液中にビーズを入れるので、水素化ホウ素ナトリウムを不必要に消費するのを避けることができる。
【0048】
得られたビーズを、生じうる微量のアルカリを中和するために水及び0.001M塩酸で洗い、その後水で十分に洗浄する。
【0049】
このようにして、強い効力を備えた、活性分子のベクターとして使用しうるホモ重合体、L−オルニチン−Gのビーズが得られる。また、網状化の程度に応じてベクターの大きさ、従って拡散性を選択できることも確認されている。
【0050】
ポリ(オルニチン−G)に移植することができる小さな分子の例として、以下のものがあげられる:
【0051】
【表1】

【0052】
脂肪酸を移植した、本発明の方法に従って得られるホモポリアミン、ポリ(L−オルニチン−G)を、同様に毒性の観点から試験し、基礎試験は毒性を示さなかった。
【0053】
これらの試験は、1mg/mlの脂肪酸を移植したポリ(L−オルニチン−G)の溶液を0.5ml/日の用量で雄性ラットに、投与することから成った。
【0054】
その後150日間にわたって体重の有意の上昇が認められた。付属の図1及び図2にその曲線を示している。
【0055】
L−シトルリン又はL−リシンと比較すると、重合のときに、収率ははるかに低いが、ポリ(シトルリン−G)及びポリ(リシン−G)への重合が得られ、三次元重合体を形成する可能性があることが認められた。
【0056】
比較試験では、L−オルニチン100mg及びD,L−シトルリン100mgを、3M酢酸塩3ml、水1ml及び5%グルタルアルデヒド3mlの存在下に置く。
【0057】
凍結乾燥後に測定された重合体の重量の値は、それぞれポリ(オルニチン−G)23.2mg及びポリ(シトルリン−G)7.2mgであった。
【0058】
NH基が重合に使用される可能性を低下させるのは、主としてCONH基に起因する。
【0059】
アミド結合によって脂肪酸を移植したポリ(オルニチン−G)を、慢性疾患の実験動物モデルにおいてその生物活性に関して評価した。
【0060】
実験的脳炎のモデルに関して、4〜5×10−5モルの濃度で脂肪酸を移植したこの重合体は、発作(多発性硬化症の急性発症に等しい)の著明な低下によって生物活性を明らかにした。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】日数に対する体重の変化を示す。
【図2】日数に対する体重の変化を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程:
−少なくとも4個の炭素によって分離された少なくとも2個のNH基を有する単量体を水に希釈すること、
−pHを6.5〜7.5の範囲の数値に調整すること、
−グルタルアルデヒド、OHC−(CH−COHを添加すること、及び
−縮合重合反応及びイミンの形成を生じさせること、及び
−得られたポリ(単量体−G)を回収すること
を含むことを特徴とする、生物医学の分野において適用できる活性分子のベクターの製造方法。
【請求項2】
前記モノマーが、ポリ(L−オルニチン−G)、ポリ(L−リシン−G)、ポリ(L−シトルリン−G)の形成を得るためのL−オルニチン、L−リシン又はL−シトルリンであることを特徴とする、生物医学の分野において適用できる活性分子のベクターの製造方法。
【請求項3】
得られる重合体が線状であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の生物医学の分野において適用できる分子のベクターの製造方法。
【請求項4】
ポリ(L−オルニチン−G)、ポリ(L−リシン−G)、ポリ(L−シトルリン−G)の三次元網状構造を得るために重合体網状化剤を添加することを特徴とする、請求項1又は2に記載の生物医学の分野において適用できる分子のベクターの製造方法。
【請求項5】
前記重合体網状化剤がポリエチレンイミンであることを特徴とする、請求項4に記載の生物医学の分野において適用できる分子のベクターの製造方法。
【請求項6】
ポリ(L−オルニチン−G)、ポリ(L−リシン−G)又はポリ(L−シトルリン−G)のビーズを作製するための二相性作用を得るために、得られた前記ホモ重合体を疎水性有機媒質中に分散させることを特徴とする、請求項4又は5に記載の生物医学の分野において適用できる分子のベクターの製造方法。
【請求項7】
前記のようにして形成されたビーズを収集するために、前記ビーズを機械的にフィルター上にとり、次にそれらを加熱換気下で乾燥することを特徴とする、請求項6に記載の生物医学の分野において適用できる分子のベクターの製造方法。
【請求項8】
使用する疎水性有機媒質中の加熱を実施することを特徴とする、請求項6又は7に記載の生物医学の分野において適用できる分子のベクターの製造方法。
【請求項9】
イミンの二重結合を低下させ、アミンを得るために、以下の操作:
−縮合反応から得られる重合体の脱脂、
−ナトリウムによる少なくとも1回の処理、及び
−前記重合体を水素化ホウ素ナトリウムに接触させること
を実施することを特徴とする、前記請求項のいずれかに記載の、水の処理の分野において適用できる分子のベクターの製造方法。
【請求項10】
静菌、抗アレルギー、抗寄生生物、抗捕食生物、抗真菌、抗炎症又は免疫調節作用を提供するための脂肪酸、抗酸化薬、ビタミン化合物、ホルモン、薬剤又は神経伝達物質などの活性分子が移植されたポリ(L−オルニチン−G)、ポリ(L−リシン−G)又はポリ(L−シトルリン−G)を含むことを特徴とする、生物医学の分野において適用できる分子のベクター。
【請求項11】
静菌、抗アレルギー、抗寄生生物、抗捕食生物、抗真菌、抗炎症又は免疫調節作用を提供するための脂肪酸、抗酸化薬、ビタミン化合物又は神経伝達物質を受け入れるために使用されることを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の方法に従って得られる、請求項10に記載のベクターの使用。















































【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2006−512435(P2006−512435A)
【公表日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−563322(P2004−563322)
【出願日】平成15年12月23日(2003.12.23)
【国際出願番号】PCT/FR2003/050204
【国際公開番号】WO2004/058842
【国際公開日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(505224927)
【Fターム(参考)】