説明

有害生物防除剤組成物およびその使用方法

【課題】作業が簡便で、作業中のトラブルがなく、作業終了後の片付けも簡便且つシロアリ防除効果の優れた有害生物防除剤組成物を提供すること。
【解決手段】分子中に少なくとも1個のカルボニル基を有するカルボニル基含有エチレン性不飽和単量体を含む単量体組成物を重合して得られる水溶性高分子(A)を保護コロイドに用いて、エチレン性不飽和単量体を乳化重合して得られる水性樹脂分散体(B)に、殺虫活性を有する化合物を混合し、pH7未満の条件下、分子中に少なくとも2個のヒドラジド基を有するヒドラジド基含有化合物を添加して得られる有害生物防除剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非ウレタン系の二液混合硬化型樹脂を含む有害生物防除剤組成物、特に床下環境に処理するのに適したシロアリ防除組成物とその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建造物、特に木造建造物にとっては、その維持管理のために防湿・防腐・防虫処理を施すことは重要な事柄である。特に、シロアリ等による食害は建造物を破壊することさえあり、深刻な被害をもたらす。シロアリは床下環境からの進入が大部分を占め、床下土壌にシロアリ防除のための処理を施すことは建造物の保護に極めて有効である。
従来、床下土壌へのシロアリ防除処理としては、合成樹脂エマルジョンとシロアリ剤と発泡剤を含む処理液を予め発泡させて散布する方法(例えば、特許文献1を参照。)、水分による硬化型のウレタン樹脂を用いて、シロアリ剤を床下土壌に樹脂層として固着させる方法(例えば、特許文献2乃至5を参照。)、セメントにシロアリ防除剤を混合して床下土壌に塗布する方法(例えば、特許文献6を参照。)等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭59−55940号公報
【特許文献2】特開昭61−57502号公報
【特許文献3】特開昭61−24112号公報
【特許文献4】特開昭63−122601号公報
【特許文献5】特表2000−512669号公報
【特許文献6】特開2007−326843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術によるシロアリ防除方法では作業が煩雑なこと、ウレタン樹脂は水分により硬化するため作業中のウレタン樹脂の硬化による散布ノズルの目詰まり、作業終了後に散布器具を水を含まない非アルコール系の有機溶媒で洗浄する必要がある等の課題があった。従って、作業が簡便で、作業中のトラブルがなく、作業終了後の片付けも簡便且つシロアリ防除効果の優れた有害生物防除剤組成物とその使用方法が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討した結果、非ウレタン系の二液混合硬化型樹脂を含む有害生物防除剤組成物が上記課題を解決し、且つ良好なシロアリ防除効果を有し、更には防湿効果による木材腐朽菌やカビの発生を抑えることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は
(1) 分子中に少なくとも1個のカルボニル基を有するカルボニル基含有エチレン性不飽和単量体を含む単量体組成物を重合して得られる水溶性高分子(A)を保護コロイドに用いて、エチレン性不飽和単量体を乳化重合して得られる水性樹脂分散体(B)に、殺虫活性を有する化合物を混合し、pH7未満の条件下、分子中に少なくとも2個のヒドラジド基を有するヒドラジド基含有化合物を添加して得られる有害生物防除剤組成物、
(2) 前記水溶性高分子(A)に占める前記カルボニル基含有エチレン性不飽和単量体の固形分量が、30〜100質量%である前記(1)に記載の有害生物防除剤組成物、
(3) 前記水溶性高分子(A)の重量平均分子量が10,000〜300,000である前記(1)又は(2)に記載の有害生物防除剤組成物、
(4) 前記水性樹脂分散体(B)に占める前記水溶性高分子(A)の固形分量が、2〜20質量%である前記(1)乃至(3)のいずれか1項に記載の有害生物防除剤組成物、
(5) 前記水性樹脂分散体(B)のガラス転移点が−30〜30℃である前記(1)乃至(4)のいずれかに記載の有害生物防除剤組成物、
(6) 前記殺虫活性を有する化合物がシロアリ防除剤である前記(1)乃至(5)のいずれかに記載の有害生物防除剤組成物、
(7) 前記シロアリ防除剤が、ペルメトリン、プラレトリン、エトフェンプロックス、シラフルオフェン、シフェノトリン、イミダクロプリド、クロルフェナピル、フィプロニル、クロチアニジン、チアクロプリド、チアメトキサム、インドキサカルブ、ジノテフラン、ニテンピラム、アセタミプリド及びメタフルミゾンから選択される1種又は2種以上の化合物である前記(6)に記載の有害生物防除剤組成物、
(8) 有害生物防除剤100質量%中に占める前記シロアリ防除剤の割合が、0.001〜10質量%である前記(6)又は(7)に記載の有害生物防除剤組成物、
(9) 前記ヒドラジド基含有化合物は、前記殺虫活性を有する化合物を混合した水性樹脂分散体(B)に含まれるカルボニル基1モルに対して、ヒドラジド基が0.1〜1.2モルとなるように添加される前記(1)乃至(8)のいずれかに記載の有害生物防除剤組成物、
(10) 前記水性樹脂分散体(B)に殺虫活性を有する化合物を混合した混合液と、分子中に少なくとも2個のヒドラジド基を有するヒドラジド基含有化合物とを、床下環境中で混合しながら土壌に散布処理することを特徴とする前記(1)乃至(9)のいずれかに記載の有害生物防除剤組成物の使用方法、および
(11) 前記水性樹脂分散体(B)に殺虫活性を有する化合物を混合した混合液と、分子中に少なくとも2個のヒドラジド基を有するヒドラジド基含有化合物とを、床下土壌に1.0〜5.0L/m散布処理することを特徴とする前記(1)乃至(9)のいずれかに記載の有害生物防除剤組成物の使用方法、
に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、非ウレタン系の二液混合硬化型樹脂を用いることにより、作業中の散布ノズルの目詰まり等のトラブルがなく、作業終了後の片付けも水洗いができる等簡便になり、且つシロアリ防除効果の優れた有害生物防除剤組成物とその使用方法を提供できる。また、二液混合硬化型樹脂を床下土壌にコーティングすることにより防湿効果が発揮され、この防湿効果により木材腐朽菌やカビの発生を抑えることも本発明の効果として挙げることができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の有害生物防除剤組成物は、分子中に少なくとも1個のカルボニル基を有するカルボニル基含有エチレン性不飽和単量体を含む単量体組成物を重合して得られる水溶性高分子(A)を保護コロイドに用いて、エチレン性不飽和単量体を乳化重合して得られる水性樹脂分散体(B)に、殺虫活性を有する化合物を混合し、pH7未満の条件下、分子中に少なくとも2個のヒドラジド基を有するヒドラジド基含有化合物を添加して得られる。
上記水性樹脂分散体(B)とpH7未満の条件下、分子中に少なくとも2個のヒドラジド基を有するヒドラジド基含有化合物を添加して得られる樹脂は、非ウレタン系の二液混合硬化型樹脂であり、本発明はこの特定の樹脂を用いることにより完成された。
【0008】
本発明の水性樹脂分散体(B)は、特開2006−348219号公報に記載の方法により製造することができる。その製造における水溶性高分子(A)は、分子中に少なくとも1個のカルボニル基を有するカルボニル基含有エチレン性不飽和単量体を含む単量体組成物をラジカル重合して得られるものである。ラジカル重合反応は、好ましくは約60〜130℃、より好ましくは約70〜90℃の温度で行われる。この重合で得られる水溶性高分子(A)の重量平均分子量は、次工程の乳化重合においてより安定な水性樹脂分散体(B)を得る観点から、約10,000〜300,000であることが好ましく、約30,000〜200,000であることがさらに好ましい。水溶性高分子(A)の分子量を調整する際は、連鎖移動剤を用いてもかまわない。このような連鎖移動剤としては、例えば、n−ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、n−ブチルメルカプタン、2−エチルヘキシルチオグリコレート、β−メルカプトプロピオン酸等が挙げられる。
【0009】
水溶性高分子(A)の重合に使用するカルボニル基含有エチレン性不飽和単量体としては、例えば、アクロレイン、ジアセトンアクリルアミド、ジアセトンメタクリルアミド、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソブチルケトン、アクリルオキシアルキルプロパナール類、メタクリルオキシアルキルプロパナール類、ジアセトンアクリレート、ジアセトンメタクリレート、アセトニトリルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレートアセチルアセテート、ブタンジオールアクリレートアセチルアセテート等が挙げられ、これらを単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、他のエチレン性不飽和単量体との反応性に富み、さらに架橋剤であるヒドラジド基との反応性も良好であるジアセトンアクリルアミド、ジアセトンメタクリルアミドが好ましい。ただし、ここでいうカルボニル基含有エチレン性不飽和単量体には、カルボン酸やエステル類の持つカルボニル基を有するエチレン性不飽和単量体は含まれない。
【0010】
ここで、最終的に得られる有害生物防除剤組成物の架橋速度および耐水性をより向上させる観点から、水溶性高分子(A)に占めるカルボニル基含有エチレン性不飽和単量体の固形分量は、約30〜100質量%であることが好ましく、約40〜80質量%であることがさらに好ましい。
【0011】
また、上記水溶性高分子(A)を重合する際、本発明の効果を損なわない範囲で、上記カルボニル基含有エチレン性不飽和単量体以外の単量体を併用することができる。このような単量体としては、少なくとも1個の重合可能なビニル基を有し、上記カルボニル基含有不飽和単量体と共重合可能なものであれば特に限定されるものではなく、例えば、直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアルキル鎖を有する(メタ)アクリル酸エステル類、芳香族ビニル化合物(スチレン、α−メチルスチレン、エチルビニルベンゼン等)、複素環式ビニル化合物(ビニルピロリドン等)、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、グリコールジ(メタ)アクリレート、アルキルアミノ(メタ)アクリレート、ビニルエステル類(蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アルカン酸ビニル等)、モノオレフィン類(エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン等)、共役ジオレフィン類(ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等)、α,β−不飽和モノあるいはジカルボン酸(アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸等 、カルボキシル基含有ビニル化合物、シアン化ビニル化合物(アクリロニトリル、メタクリロニトリル等)、アミド基もしくは置換アミド基含有α,β−エチレン性不飽和化合物((メタ)アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等)、スルホン酸基含有α,β−エチレン性不飽和化合物(スルホン酸アリル、p−スチレンスルホン酸ナトリウム等)等が挙げられる。より具体的には、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、アクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミドが挙げられる。これらの中でも、アクリルアミド、メタクリルアミドをカルボニル基含有エチレン性不飽和単量体と併用することで、速乾性をより向上させることができる。
【0012】
また、ラジカル重合時の媒体としては、水単独、水溶性溶媒もしくは親水性溶剤と水との混合物、または水溶性溶剤もしくは親水性溶剤単独等が挙げられる。水溶性溶剤または親水性溶剤を多く用いる場合は、溶液重合終了後、官能基を中和することで水溶性高分子(A)が得られる。水溶性または親水性溶剤としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、アミルアルコール、イソアミルアルコール、エチレングリコール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられ、これらを1種単独でまたは2種以上の混合物として用いることができる。重合開始剤としては、過硫酸カリウムや過硫酸アンモニウムに代表される過硫酸塩系開始剤、アゾ系開始剤、有機過酸化物類、過酸化水素等の公知の水溶性触媒、または2,2−アゾビス−イソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキシド等の油溶性触媒を用いて行われる。なお、必要に応じて還元剤を使用してもよい。
【0013】
次に、本発明における水性樹脂分散体(B)は、上記水溶性高分子(A)を保護コロイドに用いて、エチレン性不飽和単量体を好ましくは乳化重合することで得られる。乳化重合反応は、好ましくは約50〜90℃、より好ましくは約60〜85℃の温度で行われる。なお、水性樹脂分散体(B)を乳化重合によって得る際、必要に応じて連鎖移動剤を使用してもよい。このような連鎖移動剤としては、例えば、n−ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、n−ブチルメルカプタン、2−エチルヘキシルチオグリコレート、β−メルカプトプロピオン酸等が挙げられる。
【0014】
水性樹脂分散体(B)を得る際の乳化重合に使用するエチレン性不飽和単量体としては、少なくとも1個の重合可能なビニル基を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアルキル鎖を有する(メタ)アクリル酸エステル類、芳香族ビニル化合物(スチレン、α−メチルスチレン、エチルビニルベンゼン等)、複素環式ビニル化合物(ビニルピロリドン等)、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、グリコールジ(メタ)アクリレート、アルキルアミノ(メタ)アクリレート、ビニルエステル類(蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アルカン酸ビニル等)、モノオレフィン類(エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン等)、共役ジオレフィン類(ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等)、α,β−不飽和モノあるいはジカルボン酸(アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸等)、カルボキシル基含有ビニル化合物、シアン化ビニル化合物(アクリロニトリル、メタクリロニトリル等)、アミド基もしくは置換アミド基含有α,β−エチレン性不飽和化合物((メタ)アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ) アクリルアミド等)、スルホン酸基含有α,β−エチレン性不飽和化合物(スルホン酸アリル、p−スチレンスルホン酸ナトリウム等)等が挙げられ、これらを1種単独でまたは2種以上の混合物として用いることができる。より具体的には、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、スチレンが挙げられる。これらの中でも、乳化重合時の重合安定性、最終的に得られる有害生物防除剤組成物の速乾性をより向上させる観点から、メチルメタクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、スチレンを用いることが好ましい。
【0015】
ここで、乳化重合時の安定性、得られる水性樹脂分散体(B)の安定性、最終的に得られる有害生物防除剤組成物の耐水性および架橋速度(速乾性)等を考慮すると、水溶性樹脂分散体(B)に占める水溶性高分子(A)の固形分量は、約2〜20質量%であることが好ましく、約3〜10質量%であることがより好ましい。
【0016】
また、エチレン性不飽和単量体を乳化重合して水性樹脂分散体(B)を得る際、重合安定性等の問題が生じた場合には、本発明の効果を損なわない範囲で、市販のアニオン性、カチオン性、ノニオン性、反応性乳化剤を併用してもよい。また、必要に応じて、架橋性エチレン性不飽和単量体を用いてもよい。このような架橋性エチレン性不飽和単量体としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリート等のエポキシ基含有エチレン性不飽和単量体、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の加水分解性アルコキシシリル基含有エチレン性不飽和単量体、ジビニルベンゼンやジアリルフタレート等の多官能ビニル化合物等が挙げられる。
【0017】
乳化重合する際に用いる重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド等の水溶性アゾ系開始剤、クメンヒドロパーオキシド等の有機過酸化物類、過酸化水素等が挙げられ、これらを1種単独でまたは2種以上の混合物として用いることができる。また、必要に応じて、還元剤を使用することもできる。このような還元剤としては、アスコルビン酸、酒石酸、クエン酸、ホルムアルデヒドスルホキシラート金属塩等の還元性有機化合物、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム等の還元性無機化合物等が挙げられる。
【0018】
ここで、水性樹脂分散体(B)のガラス転移点については、低すぎると床下に散布して硬化させた後も表面がタック性を有し、施工後に床下に人が入った場合に作業性が悪くなり、また高すぎると樹脂層が物理的な外力により破壊される危険性が増大するため、ガラス転移点が約−30〜30℃の水性樹脂分散体(B)を使用するのが好ましく、約−20〜0℃のものがより好ましい。
【0019】
次に、得られた水性樹脂分散体(B)に殺虫活性を有する化合物を混合するが、化合物はそのまま又は農薬製造に用いられる製剤に製剤化して混合することができる。水性樹脂分散体(B)中に均一に分散させるためには製剤化して混合するのが好ましい。製剤化の方法としては、殺虫活性を有する化合物を適当な不活性担体に、又は必要に応じて補助剤と一緒に適当な割合に配合して溶解、分離、懸濁、混合、含浸、吸着若しくは付着させて適宜の剤型、例えば、懸濁剤、乳剤、液剤、水和剤、顆粒水和剤、粒剤、粉剤、錠剤、パック剤等に製剤化する。
【0020】
ここで使用できる不活性担体は固体又は液体の何れであっても良い。固体の担体になりうる材料としては、例えば、ダイズ粉、穀物粉、木粉、樹皮粉、鋸粉、タバコ茎粉、クルミ殻粉、ふすま、繊維素粉末、植物エキス抽出後の残渣、粉砕合成樹脂等の合成重合体、粘土類(例えば、カオリン、ベントナイト、酸性白土等)、タルク類(例えば、タルク、ピロフィライト等)、シリカ類{例えば、珪藻土、珪砂、雲母、ホワイトカーボン(含水微粉珪素、含水珪酸ともいわれる合成高分散珪酸で、製品により珪酸カルシウムを主成分として含むものもある。)等}、活性炭、イオウ粉末、軽石、焼成珪藻土、レンガ粉砕物、フライアッシュ、砂、炭酸カルシウム、燐酸カルシウム等の無機鉱物性粉末、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリデン等のプラスチック担体、硫安、燐安、硝安、尿素、塩安等の化学肥料、堆肥等を挙げることができ、これらは単独で若しくは二種以上の混合物の形で使用できる。
【0021】
液体の担体になりうる材料としては、それ自体溶媒能を有するものの他、溶媒能を有さずとも補助剤の助けにより有効成分化合物を分散させうることとなるものから選択され、例えば代表例として次に挙げる担体を例示できるが、これらは単独で若しくは2種以上の混合物の形で使用され、例えば、水、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコール等)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)、エーテル類(例えば、エチルエーテル、ジオキサン、セロソルブ、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフラン等)、脂肪族炭化水素類(例えば、ケロシン、鉱油等)、芳香族炭化水素類(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ソルベントナフサ、アルキルナフタレン等)、ハロゲン化炭化水素類(例えば、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、塩素化ベンゼン等)、エステル類(例えば、酢酸エチル、ジイソプロピルフタレート、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレ−ト等)、アミド類(例えば、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等)、ニトリル類(例えば、アセトニトリル等)、ジメチルスルホキシド類等を挙げることができる。
【0022】
補助剤としては次に例示する界面活性剤、分散安定化、粘着及び/又は結合助剤、流動性改良剤、解こう剤、消泡剤、防腐剤等を挙げることができ、これらの補助剤は目的に応じて使用できる。補助剤は、単独で用いてもよく、ある場合は二種以上の補助剤を併用して用いてもよく、又ある場合には全く補助剤を使用しないこともできる。
界面活性剤は、例えば有効成分化合物の乳化、分散、可溶化及び/又は湿潤の目的のために使用することができる。界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレン高級脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン樹脂酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、アルキルアリールスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸縮合物、リグニンスルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル等が挙げられる。
分散安定化、粘着及び/又は結合助剤は、有効成分化合物の分散安定化を目的として、また粒子成形のための粘着及び/又は結合助剤として使用することができる。分散安定化、粘着及び/又は結合助剤としては、例えば、カゼイン、ゼラチン、澱粉、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アラビアゴム、ポリビニルアルコール、松根油、糠油、ベントナイト、リグニンスルホン酸塩等が挙げられる。
【0023】
流動性改良剤は、固体製品の流動性改良のために使用することができる。流動性改良剤としては、例えば、ワックス、ステアリン酸塩、燐酸アルキルエステル等が挙げられる。解こう剤は、懸濁性製品の分散解こう剤として使用することができる。解こう剤としては、例えば、ナフタレンスルホン酸縮合物、縮合燐酸塩等が挙げられる。
消泡剤としては、例えば、シリコーン油等が挙げられる。
防腐剤としては、例えば、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、パラクロロメタキシレノール、パラオキシ安息香酸ブチル等が挙げられる。
更に、必要に応じて機能性展着剤、ピペロニルブトキサイド等の代謝分解阻害剤等の活性増強剤、プロピレングリコール等の凍結防止剤、BHT(ジブチルヒドロキシトルエン)等の酸化防止剤、紫外線吸収剤等その他の添加剤等も加えることができる。
製剤中の補助剤の配合割合は必要に応じて加減することができ、製剤100質量%中、約0.01〜90質量%の範囲から適宜選択して使用すれば良く、例えば、乳剤、水和剤、粉剤又は粒剤とする場合は約0.1〜50質量%が適当である。
【0024】
本発明で使用できる殺虫活性を有する化合物は液体であっても固体であってもよい。その種類は特に限定されないが、シロアリ活性を有する化合物(シロアリ防除剤)が好ましく、特にペルメトリン、プラレトリン、エトフェンプロックス、シラフルオフェン、シフェノトリン、イミダクロプリド、クロルフェナピル、フィプロニル、クロチアニジン、チアクロプリド、チアメトキサム、インドキサカルブ、ジノテフラン、ニテンピラム、アセタミプリド、メタフルミゾン等が具体的化合物として例示できる。これらの化合物は水性樹脂分散体に混合して使用するため、水溶解度の高い化合物がよく、20℃又は25℃における水溶解度が約150mg/L以上のものが好ましい。最適には、イミダクロプリド[610mg/L(20℃)]、クロチアニジン[327mg/L(20℃)]、チアクロプリド[185mg/L(20℃)]、チアメトキサム[4100mg/L(20℃)]、ジノテフラン[54.3g/L(20℃)]、ニテンピラム[840g/L(20℃)]、アセタミプリド[4200mg/L(25℃)]等のネオニコチノイド系化合物である。これらは1種又は2種以上混合して使用することもできる。本発明で使用する殺虫活性を有する化合物の有害生物防除剤100質量%中に占める配合量は、化合物の種類によって変化するが、約0.001〜10質量%が好ましく、更に好ましくは約0.005〜1質量%、特に好ましくは約0.01〜0.5質量%である。
更に保存中又は処理後の樹脂の防腐・防かびのために一般に殺菌剤として知られている化合物を混ぜても良い。
【0025】
続いて、殺虫活性を有する化合物を混合した水性樹脂分散体(B)に、pH7未満の条件下で、分子中に少なくとも2個のヒドラジド基を有するヒドラジド基含有化合物を添加することが必要である。カルボニル基とヒドラジド基の架橋反応は、pHが酸性サイドで容易に進行するが、pHが7以上、特にpHが8以上では架橋反応速度が急激に低下するため、十分な速乾性が得られない。最終的に得られる有害生物防除剤組成物の速乾性とポットライフとのバランスを考慮すると、分子中に少なくとも2個のヒドラジド基を有するヒドラジド基含有化合物は、pH7未満の条件下で添加されることが好ましく、pH2〜6の条件下で添加されることがより好ましい。またこの速乾性はpHに依存し、pHが小さいと硬化が速くなり、pH7に近づくにつれて遅くなる傾向があるので、使用場面、使用状況等に応じて随時調整が可能である。殺虫活性を有する化合物を混合した水性樹脂分散体(B)のpH調整は、酸または塩基を添加することで行うことができる。ここで使用する酸としては、酢酸、乳酸、塩酸、燐酸、硫酸等が挙げられ、塩基としては、トリエチルアミン、アンモニア、ジエタノールアミン等のアミン化合物、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物が挙げられる。最終的に得られる有害生物防除剤組成物の耐水性を考慮すると、酸、塩基ともに揮発性のものが好ましい。さらに、必要に応じて、増粘剤、消泡剤、顔料、分散剤、防腐剤、可塑剤、成膜助剤等を添加することができる。
【0026】
殺虫活性を有する化合物を混合した水性樹脂分散体(B)に添加されるヒドラジド基含有化合物としては、ポリヒドラジド化合物、ポリセミカルバジド化合物等が挙げられる。より具体的には、蓚酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、グルタン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド等の飽和脂肪酸カルボン酸ジヒドラジド、イタコン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等のジカルボン酸ジヒドラジド類、クエン酸トリヒドラジド等のトリカルボン酸トリヒドラジド類等が挙げられる。これらの中でも、架橋体の耐水性をより向上させる観点から、アジピン酸ジヒドラジドが好ましい。このヒドラジド基含有化合物は、最終的に得られる水性樹脂分散体速乾性および耐水性をより向上させる観点から、殺虫活性を有する化合物を混合した水性樹脂分散体(B)に含まれるカルボニル基1モルに対して、ヒドラジド基が約0.1〜1.2モルとなるように添加することが好ましく、約0.6〜1.0モルとなるように添加することがさらに好ましい。
【0027】
有害生物防除組成物中の水性樹脂分散体(B)と水溶性高分子(A)を合わせた固形分量としては、通常は約10〜40%の範囲が好ましく、約20〜35%がより好ましい。これ以上の濃度になると粘度が高く作業性が悪くなり、またこれ以下であると硬化するのに時間がかかりすぎる。更に固形分量は床下の土壌の含水率により適宜変化させれば良く、乾燥した土壌では有害生物防除組成物中の水分が土壌に奪われて硬化時間が早くなるため、あらかじめ有害生物防除組成物中の水分を増やして固形分量を少なくすればよいし、含水率の高い土壌では固形分量を多くすればよい。
【0028】
硬化させた樹脂を補強する等の目的で、他の水性樹脂を混合して使用しても良い。水性樹脂としてはアクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール等を例示することができる。また固体の樹脂繊維や樹脂粉末等も混合することができる。
【0029】
床下への散布方法としては、殺虫活性を有する化合物を混合した水性樹脂分散体(B)とヒドラジド基含有化合物とをあらかじめ混合し、硬化しないうちに一般の散布方法で散布しても良いが、床下環境中で殺虫活性を有する化合物を混合した水性樹脂分散体(B)とヒドラジド基含有化合物とを混合しながらシロアリなどの有害生物の進入する恐れのある場所に散布処理することが後始末を考える上で好ましい。また床下への散布量はシロアリなどの有害生物に対する効果と防湿性能を勘案して決めればよいが、約1.0〜5.0L/mを処理するのが好ましく、約2.0〜4.0L/mがより好ましい。
【0030】
散布する場所としては、シロアリなどの有害生物の進入する恐れのある場所に散布すればよく、例えば、床下の土壌、コンクリート部分、布基礎の立ち上がり部分、布基礎と土間コンクリートとが接触する継目部分又は基礎の上に敷設される木材と基礎が接触する部分が好ましい。
【0031】
本発明における有害生物は特に限定されず、例えばシロアリ(等翅目)に属する昆虫、カビなどが挙げられる。シロアリ(等翅目)に属する昆虫としては、具体的には、例えば、イエシロアリ(Coptotermes formosanus)、ヤマトシロアリ(Reticulitermes speratus)などのミゾガシラシロアリ科に属するもの、アメリカカンザイシロアリ、ダイコクシロアリなどのレイビシロアリ科に属するもの等が挙げられる。
なお、有害生物に対する防除(有害生物の駆除および有害生物による被害の予防)とは、殺傷のみならず、忌避、摂食阻害をも含めた意味に用いている。
【実施例】
【0032】
以下に本発明の代表的な実施例、試験例及び参考例を例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、各例中、「部」とあるのは質量部を、「%」は質量%を、「RH」は相対湿度(Relative Humidity)を示す。又、防蟻試験例の試験方法は(社)日本木材保存協会規格第13号1987「土壌処理用防蟻剤の防蟻効力試験方法及び性能基準(I)」を本有害生物防除組成物の評価に適した下記方法に一部改変して行った。
【0033】
参考例1.水溶性高分子(A)の調製(調製例A−1)
攪拌装置、温度計、還流冷却器及び2個の滴下ロートを備えた反応容器にイオン交換水90部、イソプロピルアルコール20部を仕込み、75℃に昇温した。モノマー混合物として、ジアセトンアクリルアミド150部をイオン交換水(温水)413.5部に溶解した後、50%アクリルアミド300部を加え、攪拌したものを準備した。重合開始剤として、過硫酸アンモニウム0.5部を加え、同時にモノマー混合物の滴下を開始した。過硫酸アンモニウム1.0部をイオン交換水25部に溶解したものおよびモノマー混合物を2時間かけて滴下した。なお、反応装置内の温度は80℃に保った。滴下終了後、80℃で1時間30分保持し、冷却した後、反応装置から内容物を取り出した。得られた水溶性高分子(A−1)は、不揮発分31.5%、23℃における粘度900mPa・s、pH4.0、重量平均分子量57,900であった。また、水溶性高分子(A−1)に占めるカルボニル基含有エチレン性不飽和単量体の固形分量は50質量%(理論値)である。
【0034】
参考例2.水性樹脂分散体(B)の調整(調整例B−1)
攪拌装置、温度計、還流冷却器及び2個の滴下ロートを備えた反応容器にイオン交換水242部、水溶性高分子(A−1)72部を仕込み、75℃に昇温した。スチレン101部、メチルメタクリレート101部、2−エチルヘキシルアクリレート207部、メタクリル酸2.5部、アニオン性乳化剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩;商品名ハイテノール08E、第一工業製薬株式会社製)7部、イオン交換水224部を混合し、ホモミキサーで乳化した。過硫酸アンモニウム0.6部を反応器に投入後、モノマー乳化物とイオン交換水30部に溶解させた過硫酸アンモニウム1.2部とを3時間かけて連続滴下した。なお、反応温度は約80℃に保った。モノマー乳化物および重合開始剤の滴下終了後、約80℃で1時間保持した後、室温まで冷却した。得られた水性樹脂分散体(B−1)は不揮発分45.1%、23℃における粘度2120mPa・s、pH2.3であった。また、水性樹脂分散体(B−1)に占める水溶性高分子(A−1)の固形分量は、5質量%(理論値)である。更に、水性樹脂分散体(B−1)を23℃、65%RH条件下で1週間乾燥させた後、示差走査熱量計(DSC、セイコーインスツルメンツ株式会社製SSC5200)を用いてガラス転移温度を測定した結果、0℃だった。
【0035】
実施例1.
参考例2にて製造した水性樹脂分散体(B−1)100部、水18.95部、フィプロニル2%、プラレトリン1%を含むマイクロカプセル製剤(グレネードMC:日本農薬製)1.05部を混合攪拌し、均一な分散体である主剤を得た。これに硬化剤であるアジピン酸ジヒドラジド5%水溶液(ヒドラジド基/カルボニル基=1.0モル)11.3部を添加し、有害生物防除組成物(C−1)を得た。
【0036】
実施例2.
参考例2にて製造した水性樹脂分散体(B−1)100部、水97.89部、ビフェントリン5%を含むマイクロエマルション製剤(アリピレスME:日本農薬製)2.11部を混合攪拌し、均一な分散体である主剤を得た。これに硬化剤であるアジピン酸ジヒドラジド5%水溶液(ヒドラジド基/カルボニル基=1.0モル)11.3部を添加し、有害生物防除組成物(C−2)を得た。
【0037】
実施例3.
参考例2にて製造した水性樹脂分散体(B−1)100部、水19.34部、クロルフェナピル21%を含む水懸濁製剤(ステルスSC:BASFアグロ製)0.66部を混合攪拌し、均一な分散体である主剤を得た。これに硬化剤であるアジピン酸ジヒドラジド5%水溶液(ヒドラジド基/カルボニル基=1.0モル)11.3部添加し、有害生物防除組成物(C−3)を得た。
【0038】
実施例4.
参考例2にて製造した水性樹脂分散体(B−1)81部、水9.5部、イミダクロプリド20%を含む水性懸濁製剤(ハチクサンFL:バイエルクロップサイエンス製)0.5部を混合攪拌し、均一な分散体である主剤を得た。これに硬化剤であるアジピン酸ジヒドラジド5%水溶液(ヒドラジド基/カルボニル基=1.0モル)9部を添加し、イミダクロプリド0.1%を含む有害生物防除組成物(D−1)を得た。
【0039】
実施例5.
参考例2にて製造した水性樹脂分散体(B−1)81部、水8部、クロチアニジン5%を含むマイクロカプセル製剤(タケロックMC50E:日本エンバイロケミカルズ製)2部を混合攪拌し、均一な分散体である主剤を得た。これに硬化剤であるアジピン酸ジヒドラジド5%水溶液(ヒドラジド基/カルボニル基=1.0モル)9部を添加し、クロチアニジン0.1%を含む有害生物防除組成物(D−2)を得た。
【0040】
実施例6.
参考例2にて製造した水性樹脂分散体(B−1)81部、水9部、ジノテフラン20%を含む顆粒水和剤(スタークル顆粒水溶剤:三井化学製)1部を混合攪拌し、均一な分散体である主剤を得た。これに硬化剤であるアジピン酸ジヒドラジド4.25%水溶液(ヒドラジド基/カルボニル基=1.0モル)9部を添加し、ジノテフラン0.2%を含む有害生物防除組成物(D−3)を得た。
【0041】
実施例7.
参考例2にて製造した水性樹脂分散体(B−1)81部、水9.6部、チアメトキサム25%を含む顆粒水和剤(アクタラ顆粒水溶剤:シンジェンタ製)0.4部を混合攪拌し、均一な分散体である主剤を得た。これに硬化剤であるアジピン酸ジヒドラジド3%水溶液(ヒドラジド基/カルボニル基=1.0モル)9部を添加し、チアメトキサム0.1%を含む有害生物防除組成物(D−4)を得た。
【0042】
実施例8.
アセタミプリド0.1部をハイモールPM(東邦化学工業製)1.9部に溶解させ、参考例2にて製造した水性樹脂分散体(B−1)69部、水20部を加えて混合攪拌し、均一な分散体である主剤を得た。これに硬化剤であるアジピン酸ジヒドラジド4.25%水溶液(ヒドラジド基/カルボニル基=1.0モル)9部を添加し、アセタミプリド0.1%を含む有害生物防除組成物(D−5)を得た。
【0043】
実施例9.
アセタミプリド0.05部をハイモールPM(東邦化学工業製)0.95部に溶解させ、参考例2にて製造した水性樹脂分散体(B−1)69部、水21部を加えて混合攪拌し、均一な分散体である主剤を得た。これに硬化剤であるアジピン酸ジヒドラジド4.25%水溶液(ヒドラジド基/カルボニル基=1.0モル)9部を添加し、アセタミプリド0.05%を含む有害生物防除組成物(D−6)を得た。
以下、実施例8および9と同様の調製方法により、アセタミプリド0.02%及び0.01%を含む有害生物防除組成物(D−7及びD−8)を得た。
【0044】
比較例1.
参考例2にて製造した水性樹脂分散体(B−1)81部、水10部、を加えて混合攪拌し、均一な分散体である主剤を得た。これに硬化剤であるアジピン酸ジヒドラジド4.25%水溶液(ヒドラジド基/カルボニル基=1.0モル)9部を添加し、比較組成物(E−1)を得た。
【0045】
試験例1.防蟻試験−1
内径約5cm、高さ約12cmのガラス円筒2本を、底面から約2cmの所で内径約1.5cm、長さ約10cmのガラス管(中央部分に長さ5cmで5mmずつの目盛りを付けたもの)で連結した試験系を使用し、一方のガラス円筒に含水率約25%に調整した無処理土壌約60g、他方に濾紙(直径5.5mm)約0.29gを入れた。20メッシュの篩を通過した砂壌土を温度60±2℃で恒量になるまで乾燥した無処理乾燥土壌12.0gに水2.0gを加え混合したものと、実施例1で調製した有害生物防除組成物(C−1)3.0gとを素早く十分に混合した後にガラス管に隙間ができないように詰め3日間室温で放置した。このガラス管をガラス円筒に連結し、無処理土壌を入れたガラス円筒にイエシロアリの職蟻200頭と兵蟻20頭を投入し、試験系を温度28±2℃、湿度70%以上の恒温室に静置した。イエシロアリ投入14日後に薬剤処理層をイエシロアリが何cm貫通したかを判定し、また濾紙の食害、殺蟻効果を調査し、効果の判定を下記の基準に従って行った。
【0046】
食害: − 食害無し、
+ 無処理対比10%以下
++ 無処理対比11〜50%以下
+++ 無処理対比51%以上
殺蟻効果: A 死虫率100%
B 死虫率 80〜99%
C 死虫率 50〜79%
D 死虫率 49%以下
以下、同様の方法により有害生物防除組成物(C−2)及び(C−3)を評価した。結果を表1に示す。
【0047】
【表1】

【0048】
試験例2.防蟻試験−2
内径約5cm、高さ約12cmのガラス円筒2本を、底面から約2cmの所で内径約1.5cm、長さ約10cmのガラス管(中央部分に長さ5cmで5mmずつの目盛りを付けたもの)で連結した試験系を使用し、一方のガラス円筒に含水率約25%に調整した無処理土壌約60g、他方に濾紙(直径5.5mm)約0.29gを入れた。20メッシュの篩を通過した砂壌土を温度60±2℃で恒量になるまで乾燥した無処理乾燥土壌12.0gを上記ガラス管に隙間ができないように詰め、該ガラス管の一方に実施例4で調製した本願有害生物防除組成物(D−1)0.53g(3L/m相当)を滴下し、3日間室温で放置した。その後本願有害生物防除組成物を処理しなかった方に水3mLを添加して水をしみ込ませた。本願の有害生物防除組成物を滴下した方を濾紙側、水を処理した方を無処理土壌側となるようにこのガラス管を前記ガラス円筒に連結した。無処理土壌を入れたガラス円筒にイエシロアリの職蟻200頭と兵蟻20頭を投入し、試験系を温度28±2℃、湿度70%以上の恒温室に静置した。イエシロアリ投入14日後に薬剤処理層(樹脂層)をイエシロアリが貫通したかどうかによりイエシロアリに対するバリア効果を判定し、また濾紙の食害、殺蟻効果を調査し、効果の判定を下記の基準に従って行った。
【0049】
食害: − 食害無し、
+ 無処理対比10%以下
++ 無処理対比11〜50%以下
+++ 無処理対比51%以上
殺蟻効果: A 死虫率 100%
B 死虫率 80〜99%
C 死虫率 50〜79%
D 死虫率 49%以下
以下、同様の方法により有害生物防除組成物(D−2)から(D−8)、比較組成物(E−1)を評価した。結果を表2に示す。
【0050】
【表2】

【0051】
試験例3.防湿試験
コンクリートブロックを用いて床下モデル(内寸:縦78cm×横84cm×高さ33cm)を2区作成し、一方の区に実施例1にて調製した有害生物防除組成物C−1を3L/mの割合で土壌表面に均一になるように散布した。各区画に湿度センサを設置し、床下モデルをOSBボードで蓋をして、更に上から換気口を塞がないようにブルーシートで覆い、処理翌日および1ヶ月後の3時間毎の1日の相対湿度を測定した。結果を表3に示す。
【0052】
【表3】

【0053】
処理翌日、処理1ヶ月後ともに、処理区では無処理区に比較して全ての測定時間において相対湿度が低くなっている事が分かる。
【0054】
試験例1及び2に示したように、本有害生物防除組成物は良好な殺蟻効果及び防蟻効果(バリア効果)を示し、また試験例3に示したように土壌からの水分の蒸発を抑え、床下の湿度を低減させることによりカビ等の発生を抑制させることができる。本有害生物防除組成物の主剤および硬化剤はどちらも水ベースの製剤であり水と反応しないため、使用したスプレーガンやホースの目詰まりを起こすこともなく、水で洗浄することができ、後始末も含めて簡単な防湿防蟻工法を提供するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子中に少なくとも1個のカルボニル基を有するカルボニル基含有エチレン性不飽和単量体を含む単量体組成物を重合して得られる水溶性高分子(A)を保護コロイドに用いて、エチレン性不飽和単量体を乳化重合して得られる水性樹脂分散体(B)に、殺虫活性を有する化合物を混合し、pH7未満の条件下、分子中に少なくとも2個のヒドラジド基を有するヒドラジド基含有化合物を添加して得られる有害生物防除剤組成物。
【請求項2】
前記水溶性高分子(A)に占める前記カルボニル基含有エチレン性不飽和単量体の固形分量が、30〜100質量%である請求項1に記載の有害生物防除剤組成物。
【請求項3】
前記水溶性高分子(A)の重量平均分子量が10,000〜300,000である請求項1又は2に記載の有害生物防除剤組成物。
【請求項4】
前記水性樹脂分散体(B)に占める前記水溶性高分子(A)の固形分量が、2〜20質量%である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の有害生物防除剤組成物。
【請求項5】
前記水性樹脂分散体(B)のガラス転移点が−30〜30℃である請求項1乃至4のいずれか1項に記載の有害生物防除剤組成物。
【請求項6】
前記殺虫活性を有する化合物がシロアリ防除剤である請求項1乃至5のいずれか1項に記載の有害生物防除剤組成物。
【請求項7】
前記シロアリ防除剤が、ペルメトリン、プラレトリン、エトフェンプロックス、シラフルオフェン、シフェノトリン、イミダクロプリド、クロルフェナピル、フィプロニル、クロチアニジン、チアクロプリド、チアメトキサム、インドキサカルブ、ジノテフラン、ニテンピラム、アセタミプリド及びメタフルミゾンから選択される1種又は2種以上の化合物である請求項6に記載の有害生物防除剤組成物。
【請求項8】
有害生物防除剤100質量%中に占める前記シロアリ防除剤の割合が、0.001〜10質量%である請求項6又は7に記載の有害生物防除剤組成物。
【請求項9】
前記ヒドラジド基含有化合物は、前記殺虫活性を有する化合物を混合した水性樹脂分散体(B)に含まれるカルボニル基1モルに対して、ヒドラジド基が0.1〜1.2モルとなるように添加される請求項1乃至8のいずれか1項に記載の有害生物防除剤組成物。
【請求項10】
前記水性樹脂分散体(B)に殺虫活性を有する化合物を混合した混合液と、分子中に少なくとも2個のヒドラジド基を有するヒドラジド基含有化合物とを、床下環境中で混合しながら土壌に散布処理することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の有害生物防除剤組成物の使用方法。
【請求項11】
前記水性樹脂分散体(B)に殺虫活性を有する化合物を混合した混合液と、分子中に少なくとも2個のヒドラジド基を有するヒドラジド基含有化合物とを、床下土壌に1.0〜5.0L/m散布処理することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の有害生物防除剤組成物の使用方法。

【公開番号】特開2010−195685(P2010−195685A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−16452(P2009−16452)
【出願日】平成21年1月28日(2009.1.28)
【出願人】(000232623)日本農薬株式会社 (97)
【出願人】(000187068)昭和高分子株式会社 (224)
【Fターム(参考)】