説明

有機エレクトロルミネセンスディスプレイパネル及びその製造方法

【課題】有機EL素子の発光輝度ムラを解消できると共に、有機EL素子をオンオフするスイッチング素子の発熱による輝度劣化の加速を抑制することのできる有機ELディスプレイパネルの製造方法を提供する。
【解決手段】有機EL素子が形成される基板101上に複数の第一電極102をマトリクス配列となるように形成すると共に第一電極102を区画する第一隔壁103を基板101上に格子状に形成し、次いで第一電極102上に発光媒体層108を形成した後、第一電極102と対向する第二電極107を発光媒体層108上に形成するに際して、第一隔壁103上に第二隔壁105を形成した後、第二電極107を発光媒体層108上に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネセンス(以下、「有機EL」という。)表示装置に用いられる有機ELディスプレイパネルとその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機ELディスプレイパネルの発光素子として用いられる有機EL素子は、二つの相対向する二つの電極の間に有機発光層を有し、この有機発光層に電流を流すことで発光する素子である。従って、このような有機EL素子の発光効率や信頼性を高めるためには有機発光層の膜厚が重要である。
また、異なる発光色の有機EL素子を配置することにより、フルカラーの有機ELディスプレイパネルを作製するためには画素ごとに発光層を形成しなければならないので、高精細のパターニングが必要となる。
【0003】
さらに、有機EL素子は有機発光層に電子あるいは正孔を注入するためのキャリア注入層を画素電極と有機発光層との間に有し、キャリア注入層を形成する方法としてはドライ成膜法やウェット成膜法の2種類があるが、ウェット成膜法を用いる場合には、通常、水に分解されたポリチオフェンの誘導体が用いられる。しかし、水系インキは下地の影響を受けやすく、均一にコーティングすることが非常に困難であるのに対し、蒸着による成膜は簡便かつ均一に全面コーティングが可能である。
【0004】
有機発光層を形成する方法もキャリア注入層を形成する方法と同様にドライ成膜法とウェット成膜法の2種類があるが、均一な成膜が容易なドライ成膜法の1つである真空蒸着法を用いる場合には微細パターンのマスクを用いてパターニングする必要があり、大型の基板上に有機EL素子を形成する場合は有機発光層のパターニングに非常な困難を要する。
【0005】
そこで、最近では、有機発光層を含む発光媒体層の形成方法として、高分子材料を溶剤に溶かして塗工液にし、これをウェット成膜法で有機発光層を形成する方法が試みられるようになってきている。そして、上記の方法で発光媒体層を形成する場合、陽極側から正孔輸送層と有機発光層を積層して2層構造とするのが一般的であり、有機ELディスプレイパネルをカラーパネル化する方法として、赤(R)、緑(G)、青(B)の発光色をそれぞれ有する有機発光材料を溶剤中に溶解または安定して分散してなる有機発光インキを用いて有機発光層を塗り分ける方法が知られている(特許文献1、2参照)。
【0006】
また、有機EL素子の二つの電極間には有機発光層以外にもキャリア注入層(キャリア輸送層とも呼ばれる)が形成される。キャリア注入層とは電極から有機発光層へ電子を注入させる際に電子の注入量を制御したり、もう一方の電極から有機発光層へ正孔が注入される際に正孔の注入量を制御したりする層で、電極と有機発光層の間に挿入される層を指す。電子注入層としては、キノリノール誘導体の金属錯体などの電子輸送性の有機物や、Ca、Baなどの仕事関数の比較的小さい例えばアルカリ金属などが用いられ、これらの機能を持つ層を複数積層する場合もある。正孔注入層としては、TPD(トリフェニレンアミン系誘導体)からなるもの(特許文献3参照)、PEDOT(ポリエチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸(PSS)の混合物からなるもの(特許文献4参照)、無機材料の正孔輸送材料からなるもの(特許文献5参照)が用いられ、発光効率を上げる目的で電極と有機発光層との間に形成される。
【0007】
図7は従来の有機ELディスプレイパネルの構造を模式的に示す図で、従来の有機ELディスプレイパネルでは、基板101上に複数の第一電極102をマトリクス配列となるように形成すると共に第一電極102を区画する第一隔壁103を格子状に形成し、次いで第一電極102上にキャリア注入層104と有機発光層106とを含む発光媒体層108を形成した後、発光媒体層108上に第二電極107を形成して基板101上に複数の有機EL素子を形成している。
【0008】
図7に示した有機ELディスプレイパネルでは、基板101上にキャリア注入層104を成膜した後、有機発光層106をストライプ状に成膜して発光媒体層108が形成されるため、有機発光層106を蒸着法によって形成した場合にはシャドーマスクの開口ライン幅のムラが原因で膜厚ムラが生じるという問題がある。また、有機発光層106を印刷法によって形成した場合にはインキの吐出量や転写量によって有機発光層106の膜厚がライン毎に異なることが多く、ライン状の発光ムラが発生するという問題がある。
【0009】
これを解決する手段として、データ化された初期の発光ムラを電流供給部へフィードバックすることで初期の輝度ムラを解消する方法があるが、供給電源が共通なため、有機EL素子の画素電極に電流を供給する薄膜トランジスタ(TFT)のソース−ドレイン間に高い電圧が印加され、その際に発生する熱が画素電極近傍のTFTから発生するため、ディスプレイパネルの輝度劣化を加速させるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2001−93668号公報
【特許文献2】特開2001−155858号公報
【特許文献3】特許第2916098号公報
【特許文献4】特許第2851185号公報
【特許文献5】特開平9−63771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来の有機EL素子の構造においては、ウェット法にて有機発光層あるいはキャリア注入層を成膜する際に生じる膜厚ムラによりライン状の発光輝度ムラが生じてしまうという問題があった。
そこで本発明は、有機EL素子の発光輝度ムラを解消できると共に、有機EL素子をオンオフするTFTの発熱による輝度劣化の加速を抑制することのできる有機ELディスプレイパネル及びその製造方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1に係る発明は、基板と、該基板上に形成された複数の有機エレクトロルミネセンス素子とを備えてなるアクティブマトリクス駆動型有機エレクトロルミネセンスディスプレイパネルの製造方法であって、前記基板上に複数の第一電極を形成すると共に前記第一電極を区画する第一隔壁を形成し、次いで前記第一電極上に、ストライプ状に一つの発光波長の発光層が配列するようにウェットプロセスで形成した発光層を含む発光媒体層を形成した後、前記第一電極と対向する第二電極を前記発光媒体層上に形成するに際して、前記第一隔壁上に前記発光層のストライプ方向に平行な第二隔壁を形成した後、前記発光媒体層上に前記第二隔壁により分割された前記第二電極を形成することを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項2に係る発明は、請求項1記載の有機エレクトロルミネセンスディスプレイパネルの製造方法において、前記第一隔壁上に縦断面が先太り状または矩形状の前記第二隔壁を形成した後、前記第二電極を前記発光媒体層上に形成することを特徴とする。
本発明の請求項3に係る発明は、請求項1または2記載の有機エレクトロルミネセンスディスプレイパネルの製造方法において、無機材料からなる前記第一隔壁上に前記第二隔壁を形成した後、前記第二電極を前記発光媒体層上に形成することを特徴とする。
【0014】
本発明の請求項4に係る発明は、請求項1〜3のいずれか一項記載の有機エレクトロルミネセンスディスプレイパネルの製造方法において、前記基板上に複数の第一電極を形成すると共に前記第一電極を区画する第一隔壁を2μm以下の高さで形成し、次いで前記第一電極上に発光媒体層を形成した後、前記第一電極と対向する第二電極を前記発光媒体層上に形成するに際して、前記第一隔壁上に第二隔壁を100nm以上の高さで形成した後、前記第二電極を前記発光媒体層上に形成することを特徴とする。
【0015】
本発明の請求項5に係る発明は、基板と、該基板上に形成された複数の有機エレクトロルミネセンス素子とを備えてなり、各有機エレクトロルミネセンス素子が前記基板上に形成された第一電極と、該第一電極を区画するように前記基板上に形成された第一隔壁と、該第一隔壁により区画された前記第一電極上に形成され、ストライプ状に一つの発光波長の発光層が配列するように各第一電極上にウェットプロセスで形成した発光層を含む発光媒体層と、該発光媒体層を介して前記第一電極と対向する第二電極とを有するアクティブマトリクス駆動型有機エレクトロルミネセンスディスプレイパネルであって、前記第二電極を前記第一隔壁上で分断して前記第二電極の電位を分断された領域ごとに変化させるための第二隔壁が前記第一隔壁上に前記発光層のストライプ方向に平行となるように形成されていることを特徴とする。
本発明の請求項6に係る発明は、請求項5記載の有機エレクトロルミネセンスディスプレイパネルにおいて、前記第二隔壁の縦断面が先太り状または矩形状であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の請求項1〜6に係る発明によれば、第二電極が第一隔壁を跨いで発光媒体層上に形成されなくなり、発光媒体層上のみに第二電極を形成することが可能となり、これにより、第二電極の電位を分断されたごとに変化させて有機EL素子の発光輝度を画素ごとに調整することが可能となるので、有機EL素子の発光輝度ムラを解消することができる。また、輝度補正の必要のない箇所にも接続されている電源電圧の過剰電圧分をTFTで消費せずにパネル外部で消費することが可能となり、発生するジュール熱とディスプレイパネルとを分離できるので、TFTの発熱による輝度劣化の加速を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る有機ELディスプレイパネルの構造を模式的に示す図である。
【図2】図1に示す有機ELディスプレイパネルの一部を拡大して示す図である。
【図3】アクティブマトリクス駆動型有機EL表示装置に本発明を適用した場合のTFT基板の一例を示す図である。
【図4】1つの画素中に2つ以上のTFTが配置される場合の有機ELディスプレイパネルの構造を模式的に示す図である。
【図5】凸版印刷装置の概略構成を示す図である。
【図6】本発明の実施例と比較例を説明するための有機ELディスプレイパネルの回路構成を示す図である。
【図7】従来の有機ELディスプレイパネルの構造の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1及び図2は、本発明の一実施形態に係る有機ELディスプレイパネルの構造を模式的に示す図である。図1に示すように、本発明の一実施形態に係る有機ELディスプレイパネルは絶縁材料からなる基板101を有し、この基板101上には有機EL素子の画素電極を形成する複数の第一電極102がマトリクス配列となるように形成されているとともに、第一電極102を区画する複数の第一隔壁103が格子状に形成されている。
【0019】
第一隔壁103により区画された第一電極102の表面には、有機EL素子のキャリア注入層104が形成されている。このキャリア注入層104はその表面に形成された有機発光層106と共に発光媒体層108を形成しており、この発光媒体層108の上面には第二電極107が形成されている。
第二電極107は有機EL素子の対向電極を形成しており、この第二電極107は第一隔壁103の上面に縦断面が先太り状または矩形状の第二隔壁105を形成した後、発光媒体層108上に形成されている。
【0020】
このように、有機EL素子が形成される基板101上に複数の第一電極102をマトリクス配列となるように形成すると共に第一電極102を区画する第一隔壁103を格子状に形成し、次いで第一電極102上にキャリア注入層104と有機発光層106とを含む発光媒体層108を形成した後、発光媒体層108上に第二電極107を形成するに際して、第一隔壁103上に第二隔壁105を形成した後、第二電極107を発光媒体層108上に形成すると、第二電極107が第一隔壁103を跨いで発光媒体層108上に形成されなくなり、発光媒体層108上のみに形成される。これにより、第二電極107の電位を分割された単位ごとに変化させて有機EL素子の発光輝度を第二電極の分割された単位領域ごとに調整することが可能となるので、有機EL素子の発光輝度ムラを解消することができる。
【0021】
また、有機EL素子の画素電極を形成する第一電極102に薄膜トランジスタ(TFT)をそれぞれ接続すると共に、第一隔壁103上で分断された第二電極107に電極電位を可変できるような電源をライン毎に接続し、高電圧を印加する必要のないラインの第二電極107の電極電位を上げてやることで、TFTに過剰な電圧が印加されることがなくなるので、TFTの発熱を抑えることが可能となる。
なお、発光媒体層108としては、陰極側の電極と有機発光層106との間に電子注入層や正孔ブロック層(インターレイヤー)が形成されたもの、あるいは陽極側の電極と有機発光層106との間に正孔注入層や電子ブロック層(インターレイヤー)が形成されたものであってもよい。
【0022】
また、フルカラーの有機ELディスプレイパネルを作製する場合には、各画素を構成する有機発光層106を例えばR(赤)、G(緑)、B(青)の3色に塗り分けてやればよい。
以下、本発明に係る有機ELディスプレイパネルの構成について詳細に説明する。本発明に係る有機ELディスプレイパネルを説明するための例として、第一電極102を陽極、第二電極107を陰極としたアクティブマトリクス駆動型有機EL表示装置について説明する。この場合、第一電極102は画素ごとに第一隔壁103で区画された画素電極として形成され、第二電極107は第二隔壁105で分離形成された対向電極となる。また、キャリア注入層104は正孔輸送性の正孔注入層となるが、第一電極側を陽極とした逆構造の有機EL素子としてもよい。ただし、この場合にはキャリア注入層104は電子輸送性の電子注入層となる。
【0023】
<基板>
図3は、本発明で使用することのできる隔壁付きTFT基板の一例を示す図である。図3に示すTFT基板(バックプレーン)308の表面には、薄膜トラジスタ(TFT)と有機EL素子の下部電極(画素電極)302が形成されており、TFTと有機EL素子の下部電極302とは電気的に接続されている。
【0024】
TFTやその上方に構成されるアクティブマトリクス駆動型有機EL表示装置は支持体である基板308で支持される。支持体としては機械的強度、絶縁性を有し寸法安定性に優れた支持体であれば如何なる材料も使用することができる。例えば、ガラスや石英、ポリプロピレン、ポリエーテルサルフォン、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、ポリアリレート、ポリアミド、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のプラスチックフィルムまたはプラスチックシートなどを用いることができ、さらに酸化珪素、酸化アルミニウム等からなる金属酸化物層または弗化アルミニウム、弗化マグネシウム等からなる金属弗化物層または窒化珪素、窒化アルミニウム等からなる金属窒化物層または酸窒化珪素等からなる金属酸窒化物層またはアクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂等からなる高分子樹脂層をプラスチックフィルムもしくはプラスチックシート上に形成した透光性基材、あるいは上記の金属酸化物層、金属窒化物層、金属酸窒化物層、高分子樹脂層のうち少なくとも二つの層をプラスチックフィルムまたはプラスチックシート上に積層した透光性基材などを用いることができる。また、上記以外に、例えばアルミニウム、ステンレス鋼等からなる金属箔または金属シートまたは金属板や、アルミニウム、銅、ニッケル、ステンレス鋼等からなる金属膜をプラスチックフィルムあるいはプラスチックシート上に積層させた非透光性基材などを用いることができ、光取出しをどちらの面から行うかに応じて支持体の透光性を選択すればよい。これらの材料からなる支持体は、有機EL表示装置内への水分の侵入を避けるために、無機膜を形成したり、フッ素樹脂を塗布したりして、防湿処理や疎水性処理を施してあることが好ましい。特に、発光媒体層108への水分の侵入を避けるために、支持体における含水率およびガス透過係数を小さくすることが好ましい。
【0025】
支持体である基板308上に形成される薄膜トランジスタは、公知の薄膜トランジスタを用いることができる。例えば、図3に示すように、ソース/ドレイン領域及びチャネル領域が形成される活性層311、ゲート絶縁膜309及びゲート電極314から構成される薄膜トランジスタが挙げられる。薄膜トランジスタの構造としては、特に限定されるものではなく、例えば、スタガ型、逆スタガ型、トップゲート型、コプレーナ型等が挙げられる。
【0026】
活性層311は、特に限定されるものではなく、例えば、非晶質シリコン、多結晶シリコン、微結晶シリコン、セレン化カドミウム等の無機半導体材料又はチオフエンオリゴマー、ポリ(p−フェリレンビニレン)等の有機半導体材料により形成することができる。これらの活性層は、例えば、アモルファスシリコンをプラズマCVD法により積層し、イオンドーピングする方法、SiH4ガスを用いてLPCVD法によりアモルファスシリコンを形成し、固相成長法によりアモルファスシリコンを結晶化してポリシリコンを得た後、イオン打ち込み法によりイオンドーピングする方法、Si2H6ガスを用いたLPCVD法又はSiH4ガスを用いたPECVD法によりアモルファスシリコンを形成し、エキシマレーザー等のレーザーによりアニールし、アモルファスシリコンを結晶化してポリシリコンを得た後、イオンドーピング法によりイオンドーピングする方法(低温プロセス)、減圧CVD法又はLPCVD法によりポリシリコンを積層し、1000℃以上で熱酸化してゲート絶縁膜を形成し、その上にn+ポリシリコンのゲート電極308を形成し、その後、イオン打ち込み法によりイオンドーピングする方法(高温プロセス)等が挙げられる。
【0027】
ゲート絶縁膜309としては、通常、ゲート絶縁膜として使用されているものを用いることができ、例えば、PECVD法、LPCVD法等により形成されたSiO2や、ポリシリコン膜を熱酸化して得られるSiO2等を用いることができる。
ゲート電極314としては、通常、ゲート電極として使用されているものを用いることができ、例えば、アルミニウム、銅等の金属、チタン、タンタル、タングステン等の高融点金属、ポリシリコン等の高融点金属のシリサイド、ポリサイド等が挙げられる。
【0028】
基板308上に形成される薄膜トランジスタは、シングルゲート構造、ダブルゲート構造、ゲート電極が3つ以上のマルチゲート構造であってもよい。また、LDD構造、オフセット構造を有していてもよい。さらに、1つの画素中に2つ以上の薄膜トランジスタが配置されていてもよい。
また、基板308上に形成される薄膜トランジスタは、有機EL素子のスイッチング素子として機能する必要があるため、トランジスタのドレイン電極310が有機EL素子の画素電極302と電気的に接続される。
【0029】
<画素電極>
TFT基板308上に有機EL素子の下部電極(画素電極)302を形成する場合は、画素電極である第一電極102を基板上に成膜した後、必要に応じてパターニングをおこなう。第一電極102は第一隔壁103により区画されることで各画素に対応した画素電極となる。画素電極の材料としては、ITO(インジウムスズ複合酸化物)、インジウム亜鉛複合酸化物、亜鉛アルミニウム複合酸化物などの金属複合酸化物または金、白金などの金属材料を使用できる以外に、金属酸化物や金属材料の微粒子をエポキシ樹脂やアクリル樹脂などに分散した微粒子分散膜を単層もしくは積層したものも使用することができる。
【0030】
画素電極302を陽極とする場合には、ITOなど仕事関数の高い材料を選択することが好ましい。下方から光を取り出す、いわゆるボトムエミッション構造の場合は透光性のある材料を選択する必要がある。必要に応じて、画素電極の配線抵抗を低くするために、銅やアルミニウムなどの金属材料を補助電極として併設してもよい。
画素電極302の形成方法としては、材料に応じて、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、反応性蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法などの乾式成膜法や、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの湿式成膜法などを用いることができる。また、画素電極のパターニング方法としては、材料や成膜方法に応じて、マスク蒸着法、フォトリソグラフィー法、ウェットエッチング法、ドライエッチング法などの既存のパターニング法を用いることができる。基板としてTFTを形成したものを用いる場合は下層の画素に対応して導通を図ることができるように形成することが好ましい。
【0031】
<第一隔壁>
図1に示した第一隔壁103は、画素に対応した発光領域を区画するように基板308上に格子状に形成される。また、図2に示すように、第一隔壁103は画素電極である第一電極102の端部を覆うように形成されるのが好ましい。一般的にアクティブマトリクス駆動型の表示装置は各画素(サブピクセル)に対して画素電極302が形成され、それぞれの画素ができるだけ広い面積を占有しようとするため、画素電極302の端部を覆うように形成される第一隔壁103の最も好ましい形状は各画素電極を最短距離で区切る格子状を基本とする。
【0032】
第一隔壁103の形成方法としては、従来と同様、基板上に無機膜を一様に形成し、レジストでマスキングした後、ドライエッチングを行う方法や、基板上に感光性樹脂を積層し、フォトリソ法により所定のパターンとする方法が挙げられる。必要に応じて撥水剤を添加したり、プラズマやUVを照射して形成後にインクに対する撥液性を付与することもできる。第一隔壁103の好ましい高さは0.1μm〜10μmであり、より好ましくは0.5μm〜2μmである。
【0033】
<第二隔壁>
図1に示した第二隔壁105は、第一隔壁103上で後述の発光層のストライプ方向と平行に形成される。このように形成することによって、後述のように第二電極を第二隔壁で挟まれた領域ごとに分割し、当該領域ごとに印加電圧を制御することが可能となる。第二隔壁の間隔は、図1に示すように発光層の各ストライプごとに形成しても良く、あるいは図2に示すように複数の発光層のストライプラインを挟んだ一定間隔、例えば、R(赤)、G(緑)、B(青)の3色の発光層ごとに設けても良い。
第二隔壁には第一隔壁と同様の樹脂材料、製造方法を適用することができる。なお、第二隔壁105の高さは特に制約を受けるものではないが、例えば第一隔壁103の高さが2μm以下の場合には100nm以上であることが好ましい。
【0034】
<キャリア注入層>
図1に示したキャリア注入層104は、画素電極302を覆うようにパターンあるいは全面に成膜される。キャリア注入層104を形成する正孔輸送材料としてはポリアニリン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリビニルカルバゾール(PVK)誘導体、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)などが挙げられる。これらの材料は溶媒に溶解または分散させ、スピンコーター等を用いた各種塗布方法や凸版印刷方法を用いて形成される。
【0035】
また、正孔輸送材料として無機材料を用いる場合は、無機材料として、Cu2O,Cr2O3,Mn2O3,FeOx(x〜0.1),NiO,CoO,Pr2O3,Ag2O,MoO2,Bi2O3、ZnO,TiO2,SnO2,ThO2,V2O5,Nb2O5,Ta2O5,MoO3,WO3,MnO2等の遷移金属酸化物およびこれらの窒化物、硫化物を一種以上含んだ無機化合物を用いることができる。ただし材料はこれらに限定されるものではない。無機材料は耐熱性および電気化学的安定性に優れている材料が多いため好ましい。これらは単層もしくは複数の層の積層構造、又は混合層として形成することができる。好ましい膜厚は5nm以上であり、より好ましくは15nm程度以上である。
【0036】
正孔輸送層の形成法としては、材料に応じて、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、反応性蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法などのドライ成膜法や、スピンコート法、ゾルゲル法、などのウェット成膜法など既存の成膜法を用いることができるが本発明ではこれらに限定されず、一般的な成膜法を用いることができる。
キャリア注入層104を形成後、インターレイヤーを形成することができる。インターレイヤーに用いる材料として、ポリビニルカルバゾール若しくはその誘導体、側鎖若しくは主鎖に芳香族アミンを有するポリアリーレン誘導体、アリールアミン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体などの、芳香族アミンを含むポリマーなどが挙げられる。これらの材料は溶媒に溶解または分散させ、スピンコーター等を用いた各種塗布方法や凸版印刷方法を用いて形成される。
【0037】
<有機発光層>
図1に示した有機発光層106は、画素電極302上にキャリア注入層104を形成した後に形成される。有機発光層106は電流を通すことで発光する層であり、有機発光層106から放出される表示光が単色の場合、キャリア注入層104を被覆するように有機発光層106が形成されるが、多色の表示光を得るには必要に応じてパターニングを行うことにより好適に用いることができる。本発明ではウェットプロセスを用いて画素列に対して塗布することにより、同発光色の発光層がライン状に各画素に配列するように形成される。すなわち、ストライプ状に発光層が形成される。
【0038】
有機発光層106を形成する有機発光材料は、例えばクマリン系、ペリレン系、ピラン系、アンスロン系、ポルフィレン系、キナクリドン系、N,N’−ジアルキル置換キナクリドン系、ナフタルイミド系、N,N’−ジアリール置換ピロロピロール系、イリジウム錯体系などの発光性色素をポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルカルバゾール等の高分子中に分散させたものや、ポリアリーレン系、ポリアリーレンビニレン系やポリフルオレン系の高分子材料が挙げられるが、本発明ではこれらに限定されるものではない。
【0039】
これらの有機発光材料は溶媒に溶解または安定に分散させることで有機発光インキとなる。有機発光材料を溶解または分散させるための溶媒としては、トルエン、キシレン、アセトン、アニソール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどの単独またはこれらの混合溶媒が挙げられ、これらの中でもトルエン、キシレン、アニソールといった芳香族有機溶媒が有機発光材料の溶解性の面から好適である。また、有機発光インキには必要に応じて、界面活性剤、酸化防止剤、粘度調整剤、紫外線吸収剤等が添加されてもよい。
【0040】
上述した高分子材料に加え、9,10−ジアリールアントラセン誘導体、ピレン、コロネン、ペリレン、ルブレン、1,1,4,4−テトラフェニルブタジエン、トリス(8−キノラート)アルミニウム錯体、トリス(4−メチル−8−キノラート)アルミニウム錯体、ビス(8−キノラート)亜鉛錯体、トリス(4−メチル−5−トリフルオロメチル−8−キノラート)アルミニウム錯体、トリス(4−メチル−5−シアノ−8−キノラート)アルミニウム錯体、ビス(2−メチル−5−トリフルオロメチル−8−キノリノラート)[4−(4−シアノフェニル)フェノラート]アルミニウム錯体、ビス(2−メチル−5−シアノ−8−キノリノラート)[4−(4−シアノフェニル)フェノラート]アルミニウム錯体、トリス(8−キノリノラート)スカンジウム錯体、ビス[8−(パラ−トシル)アミノキノリン]亜鉛錯体及びカドミウム錯体、1,2,3,4−テトラフェニルシクロペンタジエン、ポリ−2,5−ジヘプチルオキシ−パラ−フェニレンビニレンなどの低分子系発光材料が使用できる。
【0041】
有機発光層106の形成方法としては、材料に応じて、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、反応性蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法などのドライ成膜法や、インクジェット印刷法、凸版印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などのウェット成膜法など既存の成膜法を用いることができるが、本発明ではこれらの方法に限定されるものではない。
【0042】
<発光媒体層の形成方法>
図1に示した発光媒体層108は例えば塗布法を用いて画素電極302上に形成することができ、塗布法で発光媒体層108を形成する場合には、下記の凸版印刷法を用いることができる。特に、有機発光材料を溶媒に溶解または安定に分散させた有機発光インキを用いて有機発光層106を各発光色に塗り分ける場合は、第一隔壁103間にインキを転写してパターニングできる凸版印刷法が好適である。
【0043】
図5に、有機発光材料からなる有機発光インキを画素電極、正孔注入層、インターレイヤーが形成された被印刷基板602上にパターン印刷する際に用いる凸版印刷装置600の概略図を示す。この凸版印刷装置600はインクタンク603と、インクタンク603に収容された有機発光インキをアニロックスロール605の表面に塗布するインクチャンバー604と、アニロックスロール605の表面に塗布された有機発光インキを一定厚さのインキ層609に形成されたドクタ606と、ドクタ606により形成されたインキ層609をステージ601上の被印刷基板602に転写する版銅608とを有し、版銅608の周面上にマウントされた凸版607により所定の印刷パターンが被印刷基板602上に形成され、凸版印刷後に被印刷基板602を乾燥することで被印刷基板602上に有機発光層が形成される。
他の発光媒体層をインキ化して塗工する場合についても同様に上記の方法を用いて有機発光層を形成することができる。
【0044】
<電子注入層>
本発明では、有機発光層106を形成した後、正孔ブロック層や電子注入層等を形成することができる。これらの機能層は、有機ELディスプレイパネルの大きさ等から任意に選択することができる。正孔ブロック層および電子注入層に用いる材料としては、一般に電子輸送材料として用いられているものであれば良く、トリアゾール系、オキサゾール系、オキサジアゾール系、シロール系、ボロン系等の低分子系材料、フッ化リチウムや酸化リチウム等のアルカリ金属やアルカリ土類金属の塩や酸化物等を用いて真空蒸着法による成膜が可能である。また、これらの電子輸送性材料およびこれら電子輸送材料をポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルカルバゾール等の高分子中に溶解させトルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、酢酸ブチル、水等の単独または混合溶媒に溶解または分散させて電子注入塗布液とし、印刷法により成膜できる。
【0045】
<対向電極>
本発明では、有機発光層106を形成した後、対向電極である第二電極107を発光媒体層108上に形成する。対向電極107を陰極とする場合には、有機発光層106への電子注入効率の高い、仕事関数の低い物質(例えば、Mg,Al,Yb等の金属物質)を対向電極材料として用いることが好ましい。また、発光媒体層108と接する界面にLi、酸化Li,LiF等の化合物を1nm程度挟んで、安定性・導電性の高いAlやCuを積層して対向電極を形成してもよいし、電子注入効率と安定性を両立させるため、仕事関数が低いLi,Mg,Ca,Sr,La,Ce,Er,Eu,Sc,Y,Yb等の金属1種以上と、安定なAg,Al,Cu等の金属元素との合金系を用いてもよい。具体的にはMgAg,AlLi,CuLi等の合金が使用できる。
【0046】
対向電極107の形成方法は、材料に応じて、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、反応性蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法を用いることができる。
本発明では、対向電極107をライン状にパターニングする必要があるが、第一隔壁103上に縦断面が先太り状または矩形状の第二隔壁105が形成されているため、シャドーマスクを用いる必要がなく、有機発光層106と平行な方向に狭ピッチでパターニングが可能となり、電気的に分離した対向電極107を発光媒体層108上に形成することができる。
【0047】
<封止体>
有機EL表示装置としては電極間に発光材料を挟み、電流を流すことで発光させることが可能であるが、有機発光材料は大気中の水分や酸素によって容易に劣化してしまうため通常は外部と遮断するための封止体を設ける。封止体は例えば封止材上に樹脂層を設けて作製することができる。
封止材としては、水分や酸素の透過性が低い基材である必要がある。また、材料の一例として、アルミナ、窒化ケイ素、窒化ホウ素等のセラミックス、無アルカリガラス、アルカリガラス等のガラス、石英、耐湿性フィルムなどを挙げることができる。耐湿性フィルムの例として、プラスチック基材の両面にSiOxをCVD法で形成したフィルムや、透過性の小さいフィルムと吸水性のあるフィルムまたは吸水剤を塗布した重合体フィルムなどがあり、耐湿性フィルムの水蒸気透過率は、10−6g/m2/day以下であることが好ましい。
【0048】
樹脂層の材料の一例として、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン樹脂などからなる光硬化型接着性樹脂、熱硬化型接着性樹脂、2液硬化型接着性樹脂や、エチレンエチルアクリレート(EEA)ポリマー等のアクリル系樹脂、エチレンビニルアセテート(EVA)等のビニル系樹脂、ポリアミド、合成ゴム等の熱可塑性樹脂や、ポリエチレンやポリプロピレンの酸変性物などの熱可塑性接着性樹脂を挙げることができる。樹脂層を封止材の上に形成する方法の一例として、溶剤溶液法、押出ラミ法、溶融・ホットメルト法、カレンダー法、ノズル塗布法、スクリーン印刷法、真空ラミネート法、熱ロールラミネート法などを挙げることができる。必要に応じて吸湿性や吸酸素性を有する材料を含有させることもできる。封止材上に形成する樹脂層の厚みは、封止する有機EL表示装置の大きさや形状により任意に決定されるが、5〜500μm程度が望ましい。なお、ここでは封止材上に樹脂層として形成したが直接有機EL表示装置側に形成することもできる。
【0049】
有機EL表示装置と封止体との貼り合わせを封止室で行う。封止体を、封止材と樹脂層の2層構造とし、樹脂層に熱可塑性樹脂を使用した場合は、加熱したロールで圧着のみ行うことが好ましい。熱硬化型接着樹脂を使用した場合は、加熱したロールで圧着した後、さらに硬化温度で加熱硬化を行うことが好ましい。光硬化性接着樹脂を使用した場合は、ロールで圧着した後、さらに光を照射することで硬化を行うことができる。
最後に駆動回路とディスプレイパネルの接続を行う。データドライバとゲートドライバを接続した後、電気的に分離された対向電極107に電源電圧供給ライン502を介して電源504を個別に接続する。
【0050】
以下、図6を参照して本発明の実施例と比較例について説明する。
[実施例1]
基板として、支持体上に設けられたスイッチング素子として機能する薄膜トランジスタと、その上方に形成された画素電極とを備えたアクティブマトリクス基板を用いた。基板のサイズは200mm×200mmでその中に対角5インチ、画素数は320×240のディスプレイが中央に配置されている。基板端に取出し電極とコンタクト部が形成されている。
【0051】
この基板上に設けられている画素電極の端部を被覆し、画素を区画するような形状で第一隔壁を形成した。隔壁の形成は、日本ゼオン社製ポジレジストZWD6216−6をスピンコーターにて基板全面に厚み2μmで形成した後、フォトリソグラフィーによって幅40μmの隔壁を形成した。これによりサブピクセル数960×240ドット、0.12mm×0.36mmピッチ画素領域が区画された。その後、日本ゼオン社製ネガレジストZPN1100を用いて、レジスト膜を5μm成膜し、第一隔壁と重なるようにかつ有機発光層のパターニングと平行になるように露光、現像し、オーバーハング形状の側面を持った第二隔壁として0.12mmピッチのレジストラインを形成した。
その後、モリブデンターゲットが設置されているスパッタリング成膜装置に基板を設置し、取り出し電極やコンタクト部に成膜されないように、表示領域上に第一キャリア注入層をパターン成膜した。このときのスパッタ条件は圧力1Pa、電力1kWで酸素のアルゴンガスに対する流量比が30%であった。膜厚を50nmとした。
【0052】
次に、有機発光材料であるポリフェニレンビニレン誘導体を濃度1%になるようにトルエンに溶解させた有機発光インキを用い、この基板を印刷機にセッティングし、絶縁層に挟まれた画素電極の真上にそのラインパターンに合わせて有機発光層を凸版印刷法で印刷を行った。このとき150線/インチのアニロックスロールおよびピクセルのピッチに対応する感光性樹脂版を使用した。印刷、乾燥後の有機発光層の膜厚は80nmとなった。この工程を計3回繰り返し、R(赤)、G(緑)、B(青)の発光色に対応する有機発光層を各画素に形成した。
その後、電子注入層として真空蒸着法でカルシウムを厚み10nm成膜し、その後、対向電極としてアルミニウム膜を150nmの厚さで成膜した。第二隔壁により電子注入層と対向電極がライン状にパターニングされ、電気的に分離された。
【0053】
その後、封止材としてガラス板を発光領域の全てをカバーするように載せ、約90℃で1時間接着剤を熱硬化して封止を行った。こうして得られたアクティブマトリクス駆動型有機ELディスプレイパネルを駆動させるために、図6(a)に示すように、TFT501のドレイン電極を有機EL素子503の陽極(画素電極)に接続すると共に、有機EL素子503の陰極(対向電極)を電源電圧供給ライン502を介して電源504に対向電極の電位を個別に可変できるように接続した。対向電極の電位を0Vに設定し、輝度のラインムラのアドレスを確認したところ、20本強の輝度の低いラインが確認でき、これらの対向電極の電位をラインの輝度が正常部に対して2%以下になるように調整することで、輝度ムラが目視では判断できないところまで、抑えることができた。またディスプレイパネルの駆動時のパネルの表面温度が駆動環境25℃に対して、30℃であった。
【0054】
[実施例2]
実施例1と同様の基板を用い、基板上に設けられている画素電極の端部を被覆し画素を区画するような形状で隔壁を形成した。隔壁の形成は、日本ゼオン社製ポジレジストZWD6216−6をスピンコーターにて基板全面に厚み2μmで形成した後、フォトリソグラフィーによって幅40μmの隔壁を形成した。これによりサブピクセル数960×240ドット、0.12mm×0.36mmピッチ画素領域が区画された。その後、日本ゼオン社製ネガレジストZPN1100を用いて、レジスト膜を5μm成膜し、第一隔壁と重なるようにかつ有機発光層のパターニングと平行になるように、露光、現像し、オーバーハング形状の側面を持った0.36mmピッチのレジストラインを形成した。その他の膜の成膜条件は実施例1とすべて同じである。
【0055】
その後、モリブデンターゲットが設置されているスパッタリング成膜装置の設置し、取り出し電極やコンタクト部に成膜されないように、表示領域上に第一キャリア注入層をパターン成膜した。このときのスパッタ条件は圧力1Pa、電力1kWで酸素のアルゴンガスに対する流量比が30%であった。膜厚を50nmとした。
その後、封止材としてガラス板を発光領域の全てをカバーするように載せ、約90℃で1時間接着剤を熱硬化して封止を行った。こうして得られたアクティブマトリクス駆動型有機ELディスプレイパネルを駆動させるために、実施例1と同様に、TFT501のドレイン電極を有機EL素子503の陽極(画素電極)に接続すると共に、有機EL素子503の陰極(対向電極)を電源電圧供給ライン502を介して電源504に対向電極の電位を個別に可変できるように接続した。対向電極の電位を0Vに設定し、輝度のラインムラのアドレスを確認したところ、30本強の輝度の低いラインが確認でき、これらの対向電極の電位をラインの輝度が正常部に対して2%以下になるように調整することで、輝度ムラが目視では判断できないところまで、抑えることができた。またディスプレイパネルの駆動時のパネルの表面温度が駆動環境25℃に対して、31℃であった。
【0056】
[比較例]
実施例1と同じ基板を用いて、第一隔壁のみを同様の方法でパターニングし、同じスパッタリング条件で膜厚50nmの膜を形成した。その後は実施例とすべて同様の方法で成膜を行った。
その後、封止材としてガラス板を発光領域の全てをカバーするように載せ、約90℃で1時間接着剤を熱硬化して封止を行った。こうして得られたアクティブマトリクス駆動型有機EL表示装置を駆動したところ、リーク電流により隔壁上が発光し、発光効率が著しく低下した。こうして得られたアクティブマトリクス駆動型有機ELディスプレイパネルを駆動させるために、図6(b)に示すように、TFT501のドレイン電極を有機EL素子503の陽極(画素電極)に接続すると共に、有機EL素子503の陰極(対向電極)を電源電圧供給ライン502に接続して発光させた。輝度のラインムラのアドレスを確認したところ、同様に30本程度の輝度の低いラインが確認でき、共通の供給電源電圧を3V上昇させラインの輝度が正常部に対して2%以下になるように調整することで、輝度ムラが目視では判断できないところまで、抑えることができた。このときのディスプレイパネルの駆動時のパネルの表面温度が駆動環境25℃に対して、40℃であった。
上記の実施例1、2と比較例のディスプレイパネルの画面輝度を300cd/m2に設定し、輝度寿命を測定したところ、実施例1の寿命:実施例2の寿命:比較例の寿命=1:0.9:0.6であった。
【符号の説明】
【0057】
101…基板(支持体)
102…第一電極(画素電極)
103…第一隔壁
104…キャリア注入層
105…第二隔壁
106…有機発光層
107…第二電極(対向電極)
108…発光媒体層
302…画素電極
308…TFT基板
309…ゲート絶縁膜
310…ドレイン電極
311…活性層
312…ソース電極
313…走査線
314…ゲート電極
501…TFT
502…電源供給ライン
503…有機EL素子
504…電源
600…凸版印刷装置
601…ステージ
602…被印刷基板
603…インキタンク
604…インキチャンバ
605…アニロックスロール
606…ドクタ
607…凸版
608…版胴
609…インキ層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、該基板上に形成された複数の有機エレクトロルミネセンス素子とを備えてなるアクティブマトリクス駆動型有機エレクトロルミネセンスディスプレイパネルの製造方法であって、
前記基板上に複数の第一電極を形成すると共に前記第一電極を区画する第一隔壁を形成し、次いで前記第一電極上に、ストライプ状に一つの発光波長の発光層が配列するようにウェットプロセスで形成した発光層を含む発光媒体層を形成した後、前記第一電極と対向する第二電極を前記発光媒体層上に形成するに際して、前記第一隔壁上に前記発光層のストライプ方向に平行な第二隔壁を形成した後、前記発光媒体層上に前記第二隔壁により分割された前記第二電極を形成することを特徴とする有機エレクトロルミネセンスディスプレイパネルの製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の有機エレクトロルミネセンスディスプレイパネルの製造方法において、前記第一隔壁上に縦断面が先太り状または矩形状の前記第二隔壁を形成した後、前記第二電極を前記発光媒体層上に形成することを特徴とする有機エレクトロルミネセンスディスプレイパネルの製造方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の有機エレクトロルミネセンスディスプレイパネルの製造方法において、無機材料からなる前記第一隔壁上に前記第二隔壁を形成した後、前記第二電極を前記発光媒体層上に形成することを特徴とする有機エレクトロルミネセンスディスプレイパネルの製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項記載の有機エレクトロルミネセンスディスプレイパネルの製造方法において、前記基板上に複数の第一電極を形成すると共に前記第一電極を区画する第一隔壁を2μm以下の高さで形成し、次いで前記第一電極上に発光媒体層を形成した後、前記第一電極と対向する第二電極を前記発光媒体層上に形成するに際して、前記第一隔壁上に第二隔壁を100nm以上の高さで形成した後、前記第二電極を前記発光媒体層上に形成することを特徴とする有機エレクトロルミネセンスディスプレイパネルの製造方法。
【請求項5】
基板と、該基板上に形成された複数の有機エレクトロルミネセンス素子とを備えてなり、各有機エレクトロルミネセンス素子が前記基板上に形成された第一電極と、該第一電極を区画するように前記基板上に形成された第一隔壁と、該第一隔壁により区画された前記第一電極上に形成され、ストライプ状に一つの発光波長の発光層が配列するように各第一電極上にウェットプロセスで形成した発光層を含む発光媒体層と、該発光媒体層を介して前記第一電極と対向する第二電極とを有するアクティブマトリクス駆動型有機エレクトロルミネセンスディスプレイパネルであって、前記第二電極を前記第一隔壁上で分断して前記第二電極の電位を分断された領域ごとに変化させるための第二隔壁が前記第一隔壁上に前記発光層のストライプ方向に平行となるように形成されていることを特徴とする有機エレクトロルミネセンスディスプレイパネル。
【請求項6】
前記第二隔壁の縦断面が先太り状または矩形状であることを特徴とする請求項5記載の有機エレクトロルミネセンスディスプレイパネル。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−76914(P2011−76914A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−228288(P2009−228288)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】