説明

有機エレクトロルミネッセンスパネルの製造方法

【課題】有機機能層に使用する材料の範囲をなくし、活性化処理を行っても作製される有機ELパネルの性能が向上するロールツーロール方式による有機ELパネルの製造方法の提供。
【解決手段】帯状の基材の上に、第1電極と、少なくとも1層の有機機能層と、第2電極とを有する有機エレクトロルミネッセンスパネルの製造方法において、前記有機機能層は、有機機能層形成用塗布液を塗布し、乾燥した後、一旦巻き取りロール状とし、加熱処理を行うことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンスパネルの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロールツーロール方式による有機エレクトロルミネッセンスパネル(以下、有機ELパネルとも言う)の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自発光素子として有機ELパネルが注目されている。有機ELパネルは、ガラス等の基材上に有機化合物の発光層(以下有機発光層或いは有機層とも言う)を陰電極と陽電極との間に少なくとも1層の有機発光層を有する有機機能層を挟持した構成である有機EL構造体を有しており、陰電極及び陽電極間に電流を供給することにより有機発光層の発光を行うパネルである。最近では、有機ELパネルの用途の拡大等により、樹脂フィルム等の可撓性の基材を用いた有機ELパネルも登場しており、例えば国際公開第01/005194号パンフレットに記載されているロールツーロール方式にて有機ELパネルの製造も行われる様になってきている。
【0003】
ここで、ロールツーロール方式の製造方法とは、ロール状に巻かれた基材を繰り出して基材上に有機EL構造体の少なくとも一部を形成し、有機EL構造体少なくとも一部を形成した基材を再度ロールに巻き取る形態の製造方法を称する。ロールツーロール方式による製造は、連続生産が可能なので生産効率を向上させることが出来るというメリットを有する。
【0004】
最近の傾向として、例えば、有機ELパネルは高発光効率と長寿命とが求められて来ており、これらに対応するために構成する有機機能層毎に条件の異なる加熱により、有機層の組成変更や含有不純物の除去を行うことが必要になっている。
【0005】
即ち、有機機能層形成用塗布液を塗布・乾燥して、有機機能層を形成した後、活性化処理を行うことで形成された有機機能層の高機能化が行われている。
【0006】
ロールツーロール方式による製造では、有機機能層は有機機能層形成用塗布液を塗布した後、乾燥し、更に高機能化(例えば、高発光効率と長寿命化)のために、引き続き活性化処理が行われている。活性化処理としては、例えば、加熱装置による加熱処理を行う方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の方法は、次の欠点を有していることが判った。
1.活性化処理として長尺の基材を搬送しながら加熱処理するため、工程全体が長くなる。そのため、工程設置の制約上、加熱時間に限界がある。
2.工程設置に制約が掛かるため、工程を短くして加熱処理を行うため、加熱時間が短くなり本来の有機機能層の機能を出し切らずに使用することとなり、有機ELパネルの性能の向上が困難となる。
3.性能向上のための材料変更等により加熱条件を変更する場合には、加熱工程長さの変更する必要があり、大幅な設備変更を伴う。或いは、工程設置の制約により加熱時間が短くなり、性能が低下する。
4.生産性向上のために工程速度アップする場合には、加熱工程長さの変更する必要があり、大幅な設備変更を伴う。或いは、工程設置の制約により加熱時間が更に短くなり、性能が低下する。
【0008】
この様な、状況から工程設置に制約が掛かることがなく、且つ、長時間の活性化処理を行うことが可能な設備で、活性化条件の変更や工程速度アップによる設備変更が不要であり、ロールツーロール方式により高機能性を有する有機ELパネルの製造方法の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−149589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明はこの様な状況に鑑みなされたものであり、その目的は工程設置に制約が掛かることがなく、且つ、長時間の活性化処理を行うことが可能な設備で、活性化条件の変更や工程速度アップによる設備変更が不要であり、ロールツーロール方式により高機能性を有する有機ELパネルの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成された。
【0012】
1.帯状の基材の上に、第1電極と、少なくとも1層の有機機能層と、第2電極とを有する有機エレクトロルミネッセンスパネルの製造方法において、
前記有機機能層は、有機機能層形成用塗布液を塗布し、乾燥した後、一旦巻き取りロール状とし、活性化処理を行い形成することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンスパネルの製造方法。
【0013】
2.前記帯状の基材の搬送方向に直交する幅方向の少なくとも両側縁部に沿って、通気性を有する活性化均一化手段が設けられていることを特徴とする前記1に記載の有機エレクトロルミネッセンスパネルの製造方法。
【発明の効果】
【0014】
工程設置に制約が掛かることがなく、且つ、長時間の活性化処理を行うことが可能な設備で、活性化条件の変更や工程速度アップによる設備変更が不要であり、ロールツーロール方式により高機能性を有する有機ELパネルの製造方法を提供することが出来た。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の有機ELパネルの製造方法により製造された有機ELパネルの一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明の有機ELパネルの製造方法の概略工程フロー図である。
【図3】図3は活性化均一化手段が設けられた基材の一例を示す概略平面図である。
【図4】図3のSで示される部分の概略拡大図である。
【図5】図4に示す活性化均一化手段としての凸状物を形成する工程の概略平面図である。
【図6】図2に示す活性化処理工程で使用している活性化処理装置の概略図である。
【図7】図6に示す加熱処理箱にロール体を収納した内部の状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施擦るための形態を図1から図4を参照しながら説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0017】
図1は本発明の有機ELパネルの製造方法により製造された有機ELパネルの一例を示す概略断面図である。
【0018】
(a)に付き説明する。
【0019】
図中、1は有機ELパネルを示す。101は基材を示す。102は第1電極(陽極)を示し、102aは第1電極(陽極)102の第1電極用外部接続用電極を示す。104aは第2電極用外部接続用電極を示す。第2電極用外部接続用電極104aは第1電極(陽極)102を形成する際に基材101上に第1電極(陽極)102と分離された位置に形成されたリード部102bと第2電極(陰極)104とが接合されることで形成される。103は第1電極用外部接続用電極102aの上を除いて第1電極(陽極)102の上及び周囲に形成された発光層を含む有機機能層を示す。104は有機機能層103の上及びリード部102bの一部を被覆する様に形成された第2電極(陰極)を示す。105は第1電極用外部接続用電極102a及び第2電極用外部接続用電極104aの一部を除き第2電極(陰極)104の上と周囲に設けられた接着剤層を示す。106は封止層を示し、例えば、接着剤層105を介して貼着された封止部材である。
【0020】
(b)に付き説明する。
【0021】
図中、1′は有機ELパネルを示す。101′は基材を示す。102′は第1電極(陽極)を示し、102′aは第1電極(陽極)102′の第1電極用外部接続用電極を示す。104′aは第2電極用外部接続用電極を示す。第2電極用外部接続用電極104′aは第1電極(陽極)102′を形成する際に基材101′上に第1電極(陽極)102′と分離された位置に形成されたリード部102′bと第2電極(陰極)104′とを導電層105′で接合されることで形成される。103′は第1電極用外部接続用電極102′aの上を除いて第1電極(陽極)102′の上及び周囲に形成された発光層を含む有機機能層を示す。104′は有機機能層103′の上に第1電極(陽極)102′の大きさに合わせ形成された第2電極(陰極)を示す。107′は導電層を示し、第2電極104′とリード部102′bとを接合するように形成されている。
【0022】
105′は第1電極用外部接続用電極102′a及び第2電極用外部接続用電極104′aの一部を除き第2電極(陰極)104′の上及び導電層105′の上と周囲に設けられた接着剤層を示す。106′は封止層を示し、例えば、接着剤層105′を介して貼着された封止部材である。
【0023】
(c)に付き説明する。
【0024】
図中、1″は有機ELパネルを示す。101″は基材を示す。102″は第1電極(陽極)を示し、102″aは第1電極(陽極)102″の第1電極用外部接続用電極を示す。103″は第1電極用外部接続用電極102″aの上を除いて第1電極(陽極)102″の上、及び周囲に形成された発光層を含む有機機能層を示す。104″は第1電極(陽極)102″の大きさに合わせ、有機機能層の上と基材101″の上に形成された第2電極(陰極)を示す。104″aは第2電極(陰極)104″と一体で形成された第2電極(陰極)の第2電極用外部接続用電極を示す。105″は第1電極用外部接続用電極102″a及び第2電極用外部接続用電極104″aの一部を除き第2電極(陰極)104″の上と周囲に設けられた接着剤層を示す。106″は封止層を示し、例えば、接着剤層105″を介して貼着された封止部材である。
【0025】
本発明は、図1の(a)、(b)、(c)に示される有機ELパネルを作製する際、工程設置に制約を受けることがなく長時間活性化処理が可能なロールツーロール方式による高機能性を有する有機ELパネルの製造方法に関するものである。
【0026】
有機機能層とは、単層であっても多層であってもよく、例えば正孔注入・輸送層/発光層/電子注入・輸送層である。有機ELパネルの構成に関しては後述する。
【0027】
図2は本発明の有機ELパネルの製造方法の概略工程フロー図である。尚、本図は図1の(a)に示される構成の有機ELパネルの製造方法の概略工程フロー図を示す。
【0028】
図中、2は有機ELパネルの製造ラインを示す。製造ライン2は、第1電極形成ライン2a、塗布ライン2b、活性化処理ライン2c、第2電極形成ライン2d、封止・断裁ライン2eとを有する5つの製造ラインを有している。
【0029】
第1電極形成ライン2aは、第1基材供給工程201と、第1電極(陽極)形成工程202と、第1回収工程203とを有している。
【0030】
塗布ライン2bは、第2基材供給工程204と、有機機能層塗布工程205と、乾燥工程206と、有機機能層除去工程207と、第2回収工程208とを有している。
【0031】
活性化処理ライン2cは、活性化処理工程209を有している。
【0032】
第2電極形成ライン2dは、第3基材供給工程210と、第2電極(陰極)形成工程211と、第3回収工程212とを有している。
【0033】
封止・断裁ライン2eは、第4基材供給工程213と、封止工程214と、断裁工程215と、第3回収工程216とを有している。尚、工程間に速度差が発生する可能性がある場合には、各工程間にはアキュームレター(不図示)を配設することが好ましい。
【0034】
第1電極形成ライン2aは、第1電極形成工程202で、第1基材供給工程201から供給された基材101の上に第1電極用外部接続用電極を形成する部分を含む第1電極(陽極)102(図1参照)と、リード部102b(図1参照)がパターニングされた状態で形成される。尚、第1基材供給工程201から全面に第1電極(陽極)が形成された基材を供給して、第1電極形成工程202でパターニングしても、第1基材供給工程201から基材を供給して、第1電極形成工程202で第1電極(陽極)を基材上にパターンで形成しても構わない。前者は、フォトリソやレジスト印刷後のエッチングやレーザーによる不要部分の除去、後者は、インクジェット等の印刷によるパターン形成が挙げられる。
【0035】
第1電極形成工程202で第1電極(陽極)102(図1参照)と、リード部102b(図1参照)がパターニングされた後、第1回収工程203でロール状に巻き取り回収される。尚、巻き取らずに連続して有機機能層塗布工程205に供給しても構わない。
【0036】
塗布ライン2bでは、有機機能層塗布工程205で、第2基材供給工程204から供給される第1電極用外部接続用電極102aを形成する部分を含む第1電極102(図1参照)と、リード部102b(図1参照)とが形成された基材101(図1参照)の全面、又はパターンで有機機能層形成用塗布液が塗布される。
【0037】
乾燥工程206では、有機機能層塗布工程205から供給される基材101(図1参照)の全面、又はパターンで有機機能層形成用塗布液が塗布された状態の基材101(図1参照)の塗布層から溶媒が除去され有機機能層103(図1参照)が形成される。
【0038】
有機機能層除去工程207は、有機機能層103(図1参照)の不要領域(例えば、発光層の場合は、非発光領域として第1電極用外部接続用電極を形成する部分、リード部102b(図1参照)の上)を除去する工程であり、有機機能層103(図1参照)が多層の場合には、各層毎とに除去しても、多層まとめて除去しても構わない。有機層除去方法としては、有機機能層を溶解する溶媒を使用した払拭方式(特表2007−515756号公報参照)や公知のドライエッチング方式、レーザー除去方式等が挙げられるが、ゴミの発生が少ない点から有機溶媒により拭き取り除去する方法が望ましい。尚、有機機能層をパターンで塗布する場合には、有機機能層除去工程207が不要な場合もある。
【0039】
第2回収工程208では、有機層除去工程207で有機機能層の不要領域が除去され、パターン化した有機機能層103(図1参照)が形成された基材をロール状に巻き取り回収される。
【0040】
活性化処理ライン2cでは、活性化処理工程209で、ロール状に巻き取られたパターン化した有機機能層103(図1参照)を形成した基材101(図1参照)が巻き取られた状態で有機機能層103(図1参照)の活性化処理が行われる。
【0041】
本発明において活性化処理とは、有機機能層の高機能化(例えば、外部取り出し量子効率(高発光効率)、長寿命化、駆動電圧の低減)を目的とした処理を言う。
【0042】
活性化処理としては、活性エネルギー線照射、加熱、活性エネルギー線照射と加熱等が挙げられ、有機機能層103(図1参照)に使用される有機材料の種類により活性化処理の条件を適宜選択することが可能となっている。
【0043】
活性化処理の一例としては、例えば発光層にホスト材のポリビニルカルバゾール(PVK)にドーパント材Ir(ppy)を5質量%、1,2−ジクロロエタン中に溶解し1%溶液とし、緑色発光層形成用塗布液を使用した場合、加熱温度220℃、時間30分が挙げられる。
【0044】
活性化処理工程209は、有機機能層103(図1参照)が多層で、各層の必要とする条件で各層毎に行うことが必要である場合には、各層の塗布・乾燥・巻き取りと各層の必要とする条件での活性化処理が繰り返し実施される。尚、多層を塗布した後に一括で活性化処理が出来る場合は、勿論一括で活性化処理することが可能である。
【0045】
有機機能層の多層塗布及び各層ごとに活性化処理する場合には、有機機能層の数だけ塗布ライン2bでの単層塗布と活性化処理ライン2cでの活性化処理が繰り返される。
【0046】
有機機能層の多層塗布及び一括活性化処理する場合には、有機機能層の数だけ塗布ライン2bで複数塗布が行われた後に活性化処理ライン2cで活性化処理を行う。
【0047】
第2電極形成ライン2dでは、第2電極(陰極)形成工程211で、第3基材供給工程210から供給される基材101(図1参照)の上に形成されている第1電極(陽極)102(図1参照)上の有機機能層103(図1参照)の上に第1電極(陽極)102(図1参照)の大きさに合わせリード部102b(図1参照)と接合する様に第2電極(陰極)104(図1参照)が形成される。リード部102b(図1参照)は第2電極(陰極)104(図1参照)と接合することで第2電極用外部接続用電極104a(図1参照)となる。
【0048】
第3回収工程212では、第2電極104(図1参照)と第2電極用外部接続用電極104a(図1参照)が形成された基材101(図1参照)をロール状に巻き取り回収される。尚、巻き取らずに連続して封止工程214に供給しても構わない。
【0049】
封止・断裁ライン2eでは、封止工程214で、第4基材供給工程213から供給される基材101(図1参照)の上に形成されている、第1電極用外部接続用電極102a(図1参照)と、第2電極用外部接続用電極104a(図1参照)との一部を除き第2電極104(図1参照)の上と周囲に設けられた接着剤層105(図1参照)を介して封止部材を貼着した封止層106(図1参照)を形成した複数の有機ELパネル(図1の(a)の構成)が連続的に繋がっている状態の帯状の有機ELパネル連続体が作製される。
【0050】
断裁工程215では、封止工程214から供給される帯状の有機ELパネル連続体から有機ELパネルが断裁される。
【0051】
回収工程216では、断裁工程215で断裁された有機ELパネルが集積回収される。
【0052】
尚、本図では封止工程214と断裁工程215とが連続した場合を示しているが、封止工程214で形成された帯状の有機ELパネルをロール状に回収した後に別工程で必要なユニットに断裁しても構わない。
【0053】
本発明は、本図に示す様に有機機能層形成用塗布液を塗布した後、乾燥工程と活性化処理工程とを分離して、ロール状態で活性化処理を行うことを特徴としており、これにより次の効果が得られる。
1.活性化処理をロール状態で活性化処理するため、搬送しながら活性化処理すること場合に比べ工程全体の長さが短い。
2.活性化処理の時間が変更になった場合でも、活性化処理工程の長さを変更する必要がなく、大幅な設備変更が不要。
3.生産性向上のために工程速度アップする場合でも、活性化処理工程の長さを変更する必要がなく、大幅な設備変更が不要。
【0054】
次に、表1から表5に図2に示す有機ELパネルの製造ライン2の、第1電極形成ライン2a、塗布ライン2b、活性化処理ライン2c、第2電極形成ライン2d、封止・断裁ライン2eでの作業フローの一例を示す。
【0055】
【表1】

【0056】
【表2】

【0057】
【表3】

【0058】
【表4】

【0059】
【表5】

【0060】
図3は巻き取られた状態で活性化処理に用いられる活性化均一化手段が設けられた基材の一例を示す概略平面図である。
【0061】
活性化均一化手段とは、ロール状に巻き取り活性化処理のために加熱する場合に、巻き芯、巻き中、巻き外の端部から端部での熱の伝わりを均一にする手段であり、通気可能な状態で基材間を非接触状態で巻き取ることが出来れば限定はなく、例えば基材の両端に凸状物を設ける、基材の両端に発泡基材で作製したテープの様な通気性のあるスペーサーを一緒に巻き取る等が挙げられる。通気性のあるスペーサテープとしては、例えば、東洋紡製クリスパーが挙げられる。
【0062】
(a)は基材の巻き取り方向に直交する幅方向の両側縁部に沿って、活性化均一化手段が設けられている場合を示す。
【0063】
(b)は基材の巻き取り方向に直交する幅方向の中央部及び両側縁部に沿って、活性化均一化手段が設けられている場合を示す。
【0064】
(a)に示される活性化均一化手段が設けられた基材に付き説明する。
【0065】
図中、2aは基材を示す。2a1は基材2aの巻き取り方向(図中の矢印方向)に直交する幅方向の一方の側縁部に沿って設けられた加熱均一化手段を示し、2a2は基材2aの他方の側縁部に沿って設けられた加熱均一化手段を示す。
【0066】
(b)に示される活性化均一化手段が設けられた基材に付き説明する。
【0067】
図中、2bは基材を示す。2b1は基材2bの搬送方向(図中の矢印方向)に直交する幅方向の一方の側縁部に沿って設けられた活性化均一化手段を示し、2b2は基材2aの搬送方向(図中の矢印方向)に直交する幅方向の中央部に沿って設けられた加熱均一化手段を示し、2b3は基材2bの巻き取り方向(図中の矢印方向)に直交する幅方向の他方の側縁部に沿って設けられた活性化均一化手段を示す。
【0068】
活性化均一化手段を設ける位置や数は、使用する基材の幅により適宜選択することが可能であり、(a)で示される加熱均一化手段の配置は幅が狭い基材の場合に適しており、(b)で示される加熱均一化手段の配置は幅が広い基材の場合に適している。
【0069】
図4は図3のSで示される部分の概略拡大図である。図4(a)は図3のSで示される部分の概略拡大平面図である。図4(b)は図4(a)のA−A′に沿った概略拡大断面図である。
【0070】
図中、2a11は基材2aの搬送方向に直交する幅方向の側縁部に沿って設けられた活性化均一化手段の凸状物を示す。凸状物2a11は帯状の基材2aの塗布面側又は裏面側、或いは塗布面側と裏面側との両面であっても構わず、必要に応じて適宜選択することが可能である。尚、本図に示される凸状物2a11は同時に側縁部2a1及び側縁部2a2(図3参照)形成されていてもよいし、交互に片側縁部に設けてもよい。
【0071】
交互に片側縁部に設けるとは、例えば図3(a)に示される様に両側縁部に沿って凸状物を設ける場合、一方の側縁部に凸状物を設ける領域と、設けない領域とを有する様に凸状物を形成する。これに対して、対向する他方の側縁部には、凸状物が設けた領域には凸状物を設けず、凸状物が設けていない領域には凸状物を設けることを言う。
【0072】
凸状物2a11の形状は特に限定はなく、例えば断面形状がドーム型、矩形、台形等が挙げられる。これらの中でもドーム型が製造する面から好ましい。
【0073】
凸状物2a11の配列は特に限定はなく、例えば帯状の基体2aの搬送方向(図中の矢印方向)に千鳥配置、搬送方向・幅方向で揃って整列配置、ランダム配置等が挙げられる。
【0074】
Fは凸状物2a11が設けられている幅を示す。凸状物2a11を設ける位置や数は、使用する基材の幅により適宜選択することが可能であり、凸状物2a11が設けられている幅の合計は、帯状の基材の幅に対して通気性(加熱均一性)、基材の有効面積(材料収率)、巻き取り性、巻き出し性等を考慮し、2%から20%が好ましい。
【0075】
活性化均一化手段にスペーサテープを用いる場合には、帯状の基材の幅に対するテープ幅の合計の比率がこれに該当する。
【0076】
具体的には、帯状の基材の両側縁部に沿って凸状物を配設する時は、両側縁部の凸状物を配設する幅は同じであることが好ましい。又、両側縁部及び中間に凸状物を配設する時は適宜2%から20%の範囲で分割して配設することが好ましい。
【0077】
Gは凸状物2a11の基材2aからの高さを示す。高さGは、通気性(加熱均一性)、凸状物の接着強度、ロール品の取り扱い性(巻き径)等を考慮し、60μmから300μmが好ましい。高さGは、厚み測定機(ミツトヨ(株)製 シックネスゲージ)を使用して測定した値を示す。
【0078】
Hは凸状物2a11の直径を示す。凸状物2a11の直径Hは、通気性(加熱均一性)、巻き取り性、巻き出し性などを考慮し、ドーム型凸状物2a11の場合、凸状物の直径Hは60μmから300μmであることが好ましい。直径Hの測定は、寸法測定顕微鏡(ミツトヨ(株)製 測定顕微鏡+2次元データ処理装置)を使用して測定した値を示す。
【0079】
凸状物2a11の密度は、通気性(加熱均一性)、巻き取り性、巻き出し性などを考慮し、直径H60μm、高さG80μmのドーム型凸状物2a11の場合、2個/cmから200個/cmであることが好ましい。
【0080】
Iは隣接する凸状物2a11間のピッチを示す。ピッチIは、通気性(加熱均一性)、巻き取り性、巻き出し性等を考慮し、直径H60μm、高さG80μmのドーム型凸状物2a11の場合、1mmから10mmが好ましい。
【0081】
尚、本図に示す活性化均一化手段の高さ、体積、幅、密度、間隔は、図3(a)の活性化均一化手段2a2、図3(b)の活性化均一化手段2b1から2b3に適用することが可能である。
【0082】
活性化均一化手段の高さ等は、基材の種類、加熱条件、活性化均一化手段の種類によって異なる。ロール状の基材を非接触に保ち、加熱風を通過させて活性化処理する目的を達成できればそれでよい。
【0083】
活性化均一化手段2a11を配設する方法は特に限定はなく、例えばエンボスリング、ローレットローラといった多数の突起部が形成された粗面体を押し付けることにより凹凸を形成する方法、インクジェットによる塗布方法、通気性のあるスペーサテープを貼り付ける方法等が挙げられる。これらの中でも、基材そのものの変形、凸状物の高さ、厚みの薄い基材への適性、生産性、通気性等を考慮し、インクジェットヘッドを用いたインクジェットによる塗布方法による凸状物を形成が好ましい。図5に剪断モード型(ピエゾ型)インクジェットヘッドを用いて凸状物を形成する方法に付き説明する。
【0084】
図5は図4に示す活性化均一化手段としての凸状物を形成する工程の概略平面図である。
【0085】
図中、3は凸状物形成工程を示す。凸状物形成工程3はインクジェットヘッド301を使用している。インクジェットヘッド301は、インクジェットヘッド301Aとインクジェットヘッド301Bとを有している。インクジェットヘッド301Aは帯状の基材2aの搬送方向(図中の矢印方向)に対して左側(図面の上側)の側縁部2a1に凸状物2a11(図4参照)を形成するために配設されている。インクジェットヘッド301Bは可撓性帯状基材2aの搬送方向(図中の矢印方向)に対して右側(図面の下側)の側縁部2a2に凸状物2a11と同じ凸状物を形成するために配設されている。
【0086】
305はインクジェットヘッド301(301A、301B)に凸状物形成用塗布液を供給する供給タンクを示す。306はインクジェットヘッド301(301A、301B)の圧電性基盤を駆動させるための制御部を示し、コネクタを介して各インクジェットヘッド301(301A、301B)に接続されている。制御部306により、塗布液射出時の圧電性基盤の動作強度や周波数の選択等が行われる。
【0087】
各インクジェットヘッド301A(301B)の配置は特に限定はなく、例えば帯状の基材2aの搬送方向(図中の矢印方向)に対してノズル列が並んでいる方向を直交させて配置、傾けた状態で配置してもよい。又、配置するインクジェットヘッドの台数は凸状物を形成する側縁部の幅、凸状物のパターンに合わせ複数台を配置しても構わない。
【0088】
本図に示される凸状物が形成されている箇所は帯状の基材2aの塗布面側又は裏面側、或いは塗布面側と裏面側との両面であっても構わず、必要に応じて適宜選択することが可能である。尚、本図に示される凸状物ナーリング部201a及びナーリング部201bは同時に両側縁部に形成されていてもよいし、交互に片側縁部に設けてもよい。
【0089】
又、インクジェットヘッド301を帯状の基材2aの中央部及び両側縁部に、帯状の基材2aの搬送方向とノズル列が並んでいる方向とを直交させて各1台を配置し、帯状の基材2aの中央部に凸状物及び両側縁部に形成(図3(b)参照)しても構わない。この場合も帯状の基材2aの塗布面側又は裏面側、或いは塗布面側と裏面側との両面であっても構わず、必要に応じて適宜選択することが可能である。
【0090】
図3、図4に示す加熱均一化手段を基材に配設することで次の効果が挙げられる。
【0091】
1)活性化処理工程においてロール状で加熱する時、活性化均一化手段により基材間に空間が出来、これにより基材間及び基材の幅方向に熱が均一に入る様になり、均一な加熱が可能になった。
【0092】
2)ロールの芯、中、外での性能変動がなくなることで、安定した性能の有機ELパネルの製造が可能となった。
【0093】
3)ロールの芯、中、外での性能変動がなくなることで、歩留まりが上がり生産効率の向上が可能となった。
【0094】
図6は図2に示す活性化処理工程で使用している活性化処理装置の概略図である。図6(a)は図2に示す活性化処理工程で使用している活性化処理装置の概略斜視図である。図6(b)は図6(a)に示す活性化処理装置の内部を示す概略斜視図である。
【0095】
図中、4は活性化処理装置の加熱処理装置を示す。加熱処理装置4は、加熱処理箱401と、加熱風供給装置402とを有している。加熱処理箱401は、本体401aと蓋体401bとを有している。
【0096】
加熱処理箱401は本体401aにパターン化した有機機能層103(図1参照)を形成した基材101(図1参照)がロール状に巻き取られたロール体5(図7参照)を立てた状態で収納した後、蓋体401bで蓋をして加熱処理する様になっている。本発明における活性化処理とは加熱処理を意味する。
【0097】
本体401aは、底面に加熱風供給箱401a1と、加熱風供給箱401aの周面に外壁401a2とを有し、上は開放された箱型構造となっている。401a3は加熱風供給箱401a1に加熱風を供給する加熱風供給管を示し、加熱風供給装置402へ繋がっている。加熱風供給装置402と加熱風供給箱401a1との間には送風ポンプ(不図示)が配設されており、加熱風の送風量を調整することが可能となっている。
【0098】
有機機能層103の活性化処理するための加熱風は、活性化する有機機能層により異なり、通常は低湿度の窒素または空気を加熱したものであるが、有機機能層103を劣化しないものであればそれに限定するものではない。
【0099】
加熱風供給箱401a1の上面401a11にはパターン化した有機機能層103(図1参照)を形成した基材101(図1参照)がロール状に巻き取られたロール体5(図7参照)を立てた状態で本体401aに収納するために巻き芯5a(図7参照)の径に合わせた孔401a12が配設されている。孔401a12の数は収納するロール体5(図7参照)の本数により適宜設定することが可能となっている。又、ロール体5(図7参照)の端面が接触する上面401a11には、ロール体5(図7参照)の径に合わせ複数の加熱風供給孔401a13が配設されている。
【0100】
蓋体401bは加熱風排気箱401b1と、加熱風排風箱401b1の周面に外壁401b2とを有し、本体401aに対向する側は開放された箱型構造となっている。
【0101】
401b3は加熱風供給箱401a1からロール体5(図7参照)を介して送られてくる加熱風を排気する加熱風排気管を示し、加熱風供給装置402へ繋がっており再加熱及び水分調整し加熱風供給箱401a1へ循環することが可能となっている。加熱風排気箱401b1と加熱風供給装置402との間には排気ポンプ(不図示)が配設されており、加熱風の送風量に合わせ排気量を調整することが可能となっている。
【0102】
加熱風排気箱401b1の下面401b11(図7参照)には、加熱風供給箱401a1の上面401a11に配設されている孔401a12の位置に合わせ孔401b12とロール体5(図7参照)の径に合わせ複数の加熱風排気孔401b13(図7参照)が配設されている。
【0103】
図7は図6に示す加熱処理箱にロール体を収納した内部の状態を示す概略図である。図7(a)は図6に示す加熱処理箱にロール体を収納した内部の状態を示す概略斜視図である。図7(b)は図7(a)のA−A′に沿った概略断面図である。
【0104】
図中、5はパターン化した有機機能層103(図1参照)を形成した基材101(図1参照)がロール状に巻き取られたロール体を示す。5aは巻き芯を示し、5a1は巻き芯5aの一方の端部を示し、5a2は他方の端部を示す。ロール体5は、端部5a1を加熱風供給箱401a1の上面401a11に配設された孔401a12(図6参照)に収納し、他方の端部5a2は加熱風排気箱401b1の下面401b11(図7参照)に配設された孔401b12に収納された状態で加熱処理箱401に収納されている。
【0105】
本図に示す様な状態で加熱処理箱401に収納した後、加熱風供給管401a3から加熱風を供給することで、加熱風は加熱風供給箱401a1の上面401a11に設けられた加熱風供給孔401a13からロール体5の基材間を通り加熱風排風箱401b1の下面401b11に配設された加熱風排気孔401b13を抜け、加熱風排気管401b3を介して加熱風供給装置402へ戻る様になっている。図中の矢印は加熱風の流れを示す。
【0106】
図6、図7に示す加熱処理装置はロール体を立てた状態で加熱処理を行う場合を示したが、加熱処理の方式はロール体の基材間に均一に熱が伝われば特に限定はなく、例えば横置きであっても構わない。但し、横置きの場合は、ロール体の自重により基材間の空隙が狭くならない様にする必要がある。
【0107】
次に本発明の有機ELパネルの製造方法に係わる有機ELパネルの構成に付き説明する。
【0108】
(有機ELパネルの構成)
有機ELパネルは、電極間に、単数又は複数の有機機能層を積層した構成であり、一般的には、第1電極(陽極)上に、有機機能層として、正孔注入・輸送層/発光層/電子注入・輸送層を積層し、その上から第2電極(陰極)が積層された構成をとる。他の代表的な層構成としては次の構成が挙げられる。
【0109】
(1)基材/第1電極(陽極)/発光層/第2電極(陰極)/接着剤層/封止層
(2)基材/第1電極(陽極)/発光層/電子輸送層/第2電極(陰極)/接着剤層/封止層
(3)基材/第1電極(陽極)/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/第2電極(陰極)/接着剤層/封止層
(4)基材/第1電極(陽極)/陽極バッファ層(正孔注入層)/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極バッファ層(電子注入層)/第2電極(陰極)/接着剤層/封止層
(5)基材/第1電極(陽極)/陽極バッファ層(正孔注入層)/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極バッファ層(電子注入層)/第2電極(陰極)/接着剤層/封止層
有機ELパネルを構成する主な各部材について以下述べる。
【0110】
(基材)
基材に用いられる帯状の可撓性基材としては、透明な樹脂フィルムが挙げられる。樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロファン、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、セルロースアセテートフタレート(TAC)、セルロースナイトレート等のセルロースエステル類又はそれらの誘導体、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、シンジオタクティックポリスチレン、ポリカーボネート、ノルボルネン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン類、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトンイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、ナイロン、ポリメチルメタクリレート、アクリル或いはポリアリレート類、アートン(商品名JSR社製)或いはアペル(商品名三井化学社製)といったシクロオレフィン系樹脂等が挙げられる。
【0111】
(ガスバリア層)
帯状の可撓性基材の表面に必要に応じて設けるガスバリア層としては無機物、有機物の被膜又はその両者のハイブリッド被膜が挙げられる。ガスバリア膜の特性としては、水蒸気透過度が0.01g/m・day以下であることが好ましい。更には、酸素透過度0.1ml/m・day・MPa以下、水蒸気透過度10−5g/m・day以下の高バリア性フィルムであることが好ましい。ガスバリア膜を形成する材料としては、水分や酸素など素子の劣化をもたらすものの浸入を抑制する機能を有する材料であればよく、例えば、酸化珪素、二酸化珪素、窒化珪素などを用いることが出来る。更に該膜の脆弱性を改良するためにこれら無機層と有機材料からなる層の積層構造を持たせることがより好ましい。無機層と有機層の積層順については特に制限はないが、両者を交互に複数回積層させることが好ましい。バリア膜の形成方法については、特に限定はなく、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、分子線エピタキシー法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法、大気圧プラズマ重合法、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、コーティング法などを用いることが出来るが、特開2004−68143号に記載されている様な大気圧プラズマ重合法によるものが特に好ましい。これらのガスバリア層に使用した材料は第2の帯状可撓性基材、帯状可撓性接着部材への使用も可能である。
【0112】
(第1電極)
第1電極は、陰極、陽極は特に限定せず、素子構成により選択することが出来るが、好ましくは透明電極を陽極として用いることである。例えば、陽極として用いる場合、好ましくは380nmから800nmの光を透過する電極である。材料としては、4eVより大きな(深い)仕事関数を持つものが適しており、例えば、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO2、ZnO等の透明導電性金属酸化物、金、銀、白金等の金属薄膜、金属ナノワイヤー、カーボンナノチューブ等を用いることが出来る。
【0113】
(正孔輸送層)
正孔輸送層とは、正孔を輸送する機能を有する正孔輸送材料からなり、広い意味で正孔注入層、電子阻止層も正孔輸送層に含まれる。正孔輸送層は単層又は複数層設けることが出来る。正孔輸送材料としては、正孔の注入又は輸送、電子の障壁性の何れかを有するものであり、有機物、無機物の何れであってもよい。例えば、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、又導電性高分子オリゴマー、特にチオフェンオリゴマー等が挙げられる。
【0114】
正孔輸送材料としては上記のものを使用することが出来るが、ポルフィリン化合物、芳香族第3級アミン化合物及びスチリルアミン化合物、特に芳香族第3級アミン化合物を用いることが好ましい。芳香族第3級アミン化合物及びスチリルアミン化合物の代表例としては、N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノフェニル;N,N′−ジフェニル−N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−〔1,1′−ビフェニル〕−4,4′−ジアミン(TPD);2,2−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)プロパン;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン;N,N,N′,N′−テトラ−p−トリル−4,4′−ジアミノビフェニル;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン;ビス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)フェニルメタン;ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)フェニルメタン;N,N′−ジフェニル−N,N′−ジ(4−メトキシフェニル)−4,4′−ジアミノビフェニル;N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル;4,4′−ビス(ジフェニルアミノ)クオードリフェニル;N,N,N−トリ(p−トリル)アミン;4−(ジ−p−トリルアミノ)−4′−〔4−(ジ−p−トリルアミノ)スチリル〕スチルベン;4−N,N−ジフェニルアミノ−(2−ジフェニルビニル)ベンゼン;3−メトキシ−4′−N,N−ジフェニルアミノスチルベンゼン;N−フェニルカルバゾール、更には米国特許第5,061,569号明細書に記載されている2個の縮合芳香族環を分子内に有するもの、例えば、4,4′−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル(NPD)、特開平4−308688号公報に記載されているトリフェニルアミンユニットが3つスターバースト型に連結された4,4′,4″−トリス〔N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ〕トリフェニルアミン(MTDATA)等が挙げられる。
【0115】
更にこれらの材料を高分子鎖に導入した、又はこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることも出来る。又、p型−Si、p型−SiC等の無機化合物も正孔注入材料、正孔輸送材料として使用することが出来る。
【0116】
又、特開平11−251067号公報、J.Huang et.al.著文献(Applied Physics Letters 80(2002),p.139)に記載されている様な所謂p型正孔輸送材料を用いることも出来る。本発明においては、より高効率の発光素子が得られることから、これらの材料を用いることが好ましい。
【0117】
(発光層)
発光層に使用する材料は特に限定はなく、例えば、株式会社 東レリサーチセンター『フラットパネルディスプレイの最新動向 ELディスプレイの現状と最新技術動向』228から332頁に記載されている如き各種材料が挙げられる。
【0118】
発光層には、発光層の発光効率を高くするために公知のホスト化合物と、公知のリン光性化合物(リン光発光性化合物とも言う)を含有することが好ましい。ホスト化合物とは、発光層に含有される化合物の内で、その層中での質量比が20%以上であり、且つ室温(25℃)においてリン光発光のリン光量子収率が、0.1未満の化合物と定義される。好ましくはリン光量子収率が0.01未満である。ホスト化合物を複数種併用して用いてもよい。ホスト化合物を複数種用いることで、電荷の移動を調整することが可能であり、有機EL素子を高効率化することが出来る。又、リン光性化合物を複数種用いることで、異なる発光を混ぜることが可能となり、これにより任意の発光色を得ることが出来る。リン光性化合物の種類、ドープ量を調整することで白色発光が可能であり、照明、バックライトへの応用も出来る。
【0119】
これらのホスト化合物としては、正孔輸送能、電子輸送能を有しつつ、且つ発光の長波長化を防ぎ、尚且つ高Tg(ガラス転移温度)である化合物が好ましい。公知のホスト化合物としては、例えば、特開2001−257076号公報、同2002−308855号公報、同2001−313179号公報、同2002−319491号公報、同2001−357977号公報、同2002−334786号公報、同2002−8860号公報、同2002−334787号公報、同2002−15871号公報、同2002−334788号公報、同2002−43056号公報、同2002−334789号公報、同2002−75645号公報、同2002−338579号公報、同2002−105445号公報、同2002−343568号公報、同2002−141173号公報、同2002−352957号公報、同2002−203683号公報、同2002−363227号公報、同2002−231453号公報、同2003−3165号公報、同2002−234888号公報、同2003−27048号公報、同2002−255934号公報、同2002−260861号公報、同2002−280183号公報、同2002−299060号公報、同2002−302516号公報、同2002−305083号公報、同2002−305084号公報、同2002−308837号公報等に記載の化合物が挙げられる。
【0120】
複数の発光層を有する場合、これら各層のホスト化合物の50質量%以上が同一の化合物であることが、有機層全体にわたって均質な膜性状を得やすいことから好ましく、更にはホスト化合物のリン光発光エネルギーが2.9eV以上であることが、ドーパントからのエネルギー移動を効率的に抑制し、高輝度を得る上で有利となることからより好ましい。リン光発光エネルギーとは、ホスト化合物を基材上に100nmの蒸着膜のフォトルミネッセンスを測定し、そのリン光発光の0−0バンドのピークエネルギーを言う。
【0121】
ホスト化合物は、有機EL素子の経時での劣化(輝度低下、膜性状の劣化)、光源としての市場ニーズ等を考慮し、リン光発光エネルギーが2.9eV以上且つTgが90℃以上のものであることが好ましい。即ち、輝度と耐久性の両方を満足するためには、リン光発光エネルギーが2.9eV以上且つTgが90℃以上のものであることが好ましい。Tgは、更に好ましくは100℃以上である。
【0122】
リン光性化合物(リン光発光性化合物)とは、励起三重項からの発光が観測される化合物であり、室温(25℃)にてリン光発光する化合物であり、リン光量子収率が、25℃において0.01以上の化合物である。先に説明したホスト化合物と合わせ使用することで、より発光効率の高い有機EL素子とすることが出来る。
【0123】
リン光性化合物は、リン光量子収率は好ましくは0.1以上である。上記リン光量子収率は、第4版実験化学講座7の分光IIの398頁(1992年版、丸善)に記載の方法により測定出来る。溶液中でのリン光量子収率は種々の溶媒を用いて測定出来るが、本発明に用いられるリン光性化合物は、任意の溶媒の何れかにおいて上記リン光量子収率が達成されればよい。
【0124】
リン光性化合物の発光は原理としては2種挙げられ、1つはキャリアが輸送されるホスト化合物上でキャリアの再結合が起こってホスト化合物の励起状態が生成し、このエネルギーをリン光性化合物に移動させることでリン光性化合物からの発光を得るというエネルギー移動型、もう一つはリン光性化合物がキャリアトラップとなり、リン光性化合物上でキャリアの再結合が起こりリン光性化合物からの発光が得られるというキャリアトラップ型であるが、何れの場合においても、リン光性化合物の励起状態のエネルギーはホスト化合物の励起状態のエネルギーよりも低いことが条件である。
【0125】
リン光性化合物は、有機EL素子の発光層に使用される公知のものの中から適宜選択して用いることが出来る。リン光性化合物としては、好ましくは元素の周期表で8族−10族の金属を含有する錯体系化合物であり、更に好ましくはイリジウム化合物、オスミウム化合物、又は白金化合物(白金錯体系化合物)、希土類錯体であり、中でも最も好ましいのはイリジウム化合物である。
【0126】
リン光性化合物のリン光発光極大波長としては特に制限されるものではなく、原理的には中心金属、配位子、配位子の置換基等を選択することで得られる発光波長を変化させることが出来る。
【0127】
化合物の発光する色は、「新編色彩科学ハンドブック」(日本色彩学会編、東京大学出版会、1985)の108頁の図4.16において、分光放射輝度計CS−1000(コニカミノルタセンシング社製)で測定した結果をCIE色度座標に当て嵌めた時の色で決定される。
【0128】
(電子輸送層)
他に発光層側に隣接する電子輸送層に用いられる電子輸送材料(正孔阻止材料を兼ねる)としては、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有していればよく、その材料としては従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることが出来、例えば、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタン及びアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体等が挙げられる。更に、上記オキサジアゾール誘導体において、オキサジアゾール環の酸素原子を硫黄原子に置換したチアジアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有するキノキサリン誘導体も、電子輸送材料として用いることが出来る。更にこれらの材料を高分子鎖に導入した、又はこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることも出来る。
【0129】
又、8−キノリノール誘導体の金属錯体、例えば、トリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alq)、トリス(5,7−ジクロロ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5,7−ジブロモ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(2−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、ビス(8−キノリノール)亜鉛(Znq)等、及びこれらの金属錯体の中心金属がIn、Mg、Cu、Ca、Sn、Ga又はPbに置き替わった金属錯体も、電子輸送材料として用いることが出来る。その他、メタルフリー若しくはメタルフタロシアニン、又はそれらの末端がアルキル基やスルホン酸基等で置換されているものも、電子輸送材料として好ましく用いることが出来る。又、ジスチリルピラジン誘導体も、電子輸送材料として用いることが出来るし、正孔注入層、正孔輸送層と同様に、n型−Si、n型−SiC等の無機半導体も電子輸送材料として用いることが出来る。電子輸送層の膜厚については特に制限はないが、通常は5nmから5μm程度、好ましくは5から200nmである。電子輸送層は上記材料の1種又は2種以上からなる一層構造であってもよい。
【0130】
又、不純物をドープしたn性の高い電子輸送層を用いることも出来る。その例としては、特開平4−297076号公報、特開平10−270172号公報、特開2000−196140号公報、特開2001−102175号公報、J.Appl.Phys.,95,5773(2004)などに記載されたものが挙げられる。この様なn性の高い電子輸送層を用いることがより低消費電力の素子を作製することが出来るため好ましい。電子輸送層は上記電子輸送材料を、例えば、ウェット方式、ドライ方式等の公知の方法により、薄膜化することにより成膜し形成することも出来る。
【0131】
(第2電極)
第2電極は陰極、陽極は特に限定せず、素子構成により選択することが出来るが、好ましくは透明電極を陽極として用いることである。例えば、陰極として用いる場合、好ましくは仕事関数が4eV以下(浅い)の金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。この様な電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。これらの中で、有機機能層との電気的な接合、及び酸化等に対する耐久性の点から、これら金属とこれより仕事関数の値が大きく(深く)安定な金属である第二の金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム単独等が好適である。
【0132】
第2電極はこれらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することが出来る。又、膜厚は通常10nmから5μm、好ましくは50nmから200nmの範囲で選ばれる。
【0133】
第2電極として反射率の高い金属材料を用いれば、例えば有機EL素子において、発光した光の一部を反射して外部に取り出すことが出来、又、有機PV素子においては、光電変換層を通過した光を反射し、再度、光電変換層に戻すことで光路長を稼ぐ効果が得られ、何れにおいても外部量子効率の向上が期待出来る。
【0134】
更に、金属(例えば金、銀、銅、白金、ロジウム、ルテニウム、アルミニウム、マグネシウム、インジウム等)、又は炭素からなるナノ粒子、ナノワイヤー、ナノ構造体であってもよく、ナノ粒子やナノワイヤーの高分散性なペーストであれば、透明で導電性の高い対電極を塗布法や印刷法により形成出来好ましい。
【0135】
又、対電極側を光透過性とする場合は、例えば、アルミニウム及びアルミニウム合金、銀及び銀化合物等の対電極に適した導電性材料を薄く1nmから20nm程度の膜厚で作製した後、上記透明電極の説明で挙げた導電性光透過性材料の膜を設けることで、光透過性の電極とすることも出来る。
【0136】
(接着剤層)
接着剤層に用いられる接着剤としては液状接着剤、シート状接着剤、熱可塑性樹脂等が挙げられる。液状接着剤としては、アクリル酸系オリゴマー、メタクリル酸系オリゴマーの反応性ビニル基を有する光硬化及び熱硬化型シール剤、2−シアノアクリル酸エステルなどの湿気硬化型等の接着剤、エポキシ系などの熱及び化学硬化型(2液混合)等の接着剤、又、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリオレフィン系のホットメルト型接着剤、カチオン硬化タイプの紫外線硬化型エポキシ樹脂接着剤等を挙げることが出来る。尚、素子を構成する有機層が熱処理により劣化する場合があるので、室温から80℃までに接着硬化出来るものが好ましい。又、帯状可撓性接着部材の接着剤層の裏面側には前述のガスバリア層が必要に応じて形成されることが好ましい。
【0137】
シート状の接着剤としては、常温(25℃程度)では非流動性を示し、且つ、加熱すると50℃から100℃の範囲で流動性を発現し、シート状に成形された接着剤を言う。使用する接着剤としては、例えば分子の末端又は側鎖にエチレン性二重結合を有する化合物と、光重合開始剤とを主成分とする光硬化性樹脂が挙げられる。使用に際しては、例えば、予め、封止部材側に貼合して常温(25℃程度)以下にして使用することが好ましい。
【0138】
熱可塑性樹脂としては、JIS K 7210規定のメルトフローレートが5から20g/10minである熱可塑性樹脂が好ましく、更に好ましくは、6から15g/10min以下の熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。これは、メルトフローレートが5(g/10min)以下の樹脂を用いると、各電極の取出し電極の段差により生じる隙間部を完全に埋めることが出来ず、20(g/10min)以上の樹脂を用いると引っ張り強さや耐ストレスクラッキング性、加工性などが低下するためである。これらの熱可塑性樹脂をフィルム状に成形し可撓性封止部材(帯状可撓性封止部材、枚葉シート状可撓性封止部材)に貼合して使用することが好ましい。貼合方法は一般的に知られている各種の方法、例えばウェットラミネート法、ドライラミネート法、ホットメルトラミネート法、押出しラミネート法、熱ラミネート法を利用して作ることが可能である。
【0139】
熱可塑性樹脂は、上記数値を満たすものであれば特に限定されるものではないが、例えば機能性包装材料の新展開(株式会社東レリサーチセンター)に記載の高分子フィルムである低密度ポリエチレン(LDPE)、HDPE、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン、未延伸ポリプロピレン(CPP)、OPP、ONy、PET、セロファン、ポリビニルアルコール(PVA)、延伸ビニロン(OV)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVOH)、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、塩化ビニリデン(PVDC)等の使用が可能である。これらの熱可塑性樹脂の中で特にLDPE、LLDPE及びメタロセン触媒を使用して製造したLDPE、LLDPE、又、LDPE、LLDPEとHDPEフィルムの混合使用した熱可塑性樹脂を使用することが好ましい。
【0140】
(封止層)
封止層に用いられる封止部材の基材としては特に限定はなく、例えばエチレンテトラフルオロエチル共重合体(ETFE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、延伸ポリプロピレン(OPP)、ポリスチレン(PS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、延伸ナイロン(ONy)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド、ポリエーテルスチレン(PES)など一般の包装用フィルムに使用されている熱可塑性樹脂フィルム材料、ガラス、金属箔等を使用することが出来る。又、これら熱可塑性樹脂フィルムは、必要に応じて異種フィルムと共押出しで作った多層フィルム、延伸角度を変えて貼り合せて作った多層フィルム等も当然使用出来る。更に必要とする物性を得るために使用するフィルムの密度、分子量分布を組合せて作ることも当然可能である。
【実施例】
【0141】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0142】
(有機ELパネルの作製)
図2に示す製造工程により、図1(a)に示される基材/第1電極(陽極)/有機機能層/第2電極(陰極)/接着剤層/封止部材の構成の有機ELパネルを作製した。尚、有機機能層として正孔輸送層/発光層/電子輸送層の構成とし、正孔輸送層、発光層及び電子輸送層は湿式塗布方式で形成した。
【0143】
〈基材の準備〉
基材として、幅200mm、長さ500mの厚さ100μmの帯状のポリエチレンナフタレートフィルム(帝人・デュポン社製フィルム、以下、PENフィルムと略記する)を準備した。尚、予め形成する第1電極(陽極)の位置に合わせアライメントマーク及び第1電極用外部接続用電極、リード部が形成される位置に位置指定マークを付けた。
【0144】
(活性化均一化手段の配設)
(凸状物形成用塗布液の調製)
ジペンタエリストールヘキサアクリレート(2量体及び3量体以上の成分を含む)
100質量部
光反応開始剤(ジメトキシベンゾフェノン) 4質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 30質量部
メチルエチルケトン 100質量部
(凸状物形成用塗布液の塗布)
図5に示す凸状物を形成する工程を使用し、図3(a)に示す様に、準備したPENフィルムの両側縁部に沿ってインクジェット法により加熱均一化手段の凸状物を剪断モード型(ピエゾ型)インクジェットヘッドで液滴を1箇所に1000滴着弾させ、20秒後に温度100℃で乾燥し、続いて硬化処理装置より150mJ/cmの照射強度で紫外線を照射し図4に示す様なドーム型の凸状物で構成された加熱均一手段を設けた。
【0145】
剪断モード型(ピエゾ型)インクジェットヘッド
ノズル吐出口の間隔:0.05mm
ノズル吐出口の数:500個
1滴の平均射出量:50pl(ピコリットル)
剪断モード型(ピエゾ型)インクジェットヘッドの配置:ノズル吐出口の並んだ方向がPENフィルムの搬送方向と直交する様に配置
ノズル表面とPENフィルムの表面との間隔:1mm
PENフィルムの搬送速度:10m/min
活性化均一化手段を配設するPENフィルムの両側縁部の全幅に対する割合:4%
活性化均一化手段を構成するドーム型の凸状物の形状
ドーム型の凸状物の直径:60μm
ドーム型の凸状物の高さ:80μm
ドーム型の凸状物の密度:50個/cm
隣接するドーム型の凸状物間のピッチ:2mm
ドーム型の凸状物の高さは、厚み測定機(ミツトヨ(株)製 シックネスゲージ)を使用して測定した値を示す。
【0146】
ドーム型の凸状物の直径は、寸法測定顕微鏡(ミツトヨ(株)製 測定顕微鏡+2次元データ処理装置)を使用して測定した値を示す。
【0147】
ドーム型の凸状物の密度は、10cm×10cmの試料をルーペで目視で観察し、ドーム型の凸状物の個数を数え、1cm当たりの個数に換算した値を示す。
【0148】
(第1電極(陽極)の形成)
準備したPENフィルムの上に厚さ120nm、幅70mm×長さ100mmで第1電極用外部接続用電極を有する第1電極(陽極)及びリード部を、ITO(インジウムチンオキシド)を蒸着法によりパターニングし、第1電極及びリード部を帯状可撓性支持体の長さ方向に20mm間隔、幅方向に30mm間隔両端に15mmを空けて2列形成し、巻き芯に巻き取りロール状とした。
【0149】
〈正孔輸送層の形成〉
(正孔輸送層形成用塗布液の準備)
ポリエチレンジオキシチオフェン・ポリスチレンスルホネート(PEDOT/PSS、Bayer社製 Bytron P AI 4083)を純水で65%、メタノール5%で希釈した溶液を正孔輸送層形成用塗布液として準備した。
【0150】
(正孔輸送層形成用塗布液の塗布)
準備したロール状とした第1電極(陽極)とリード部とが形成されたPENフィルム全面に、準備した正孔輸送層形成用塗布液を押出し塗布機を用いてドライエアー雰囲気で塗布速度2m/minで塗布した後、製膜面に向け高さ100mm、吐出風速1m/s、幅手の風速分布5%、温度100℃で溶媒を除去し、厚みが50nmの正孔輸送層を形成し巻き芯に巻き取り保管した。正孔輸送層形成用塗布液を塗布する前に、PENフィルムの洗浄表面改質処理を、波長184.9nmの低圧水銀ランプを使用し、照射強度15mW/cm、距離10mmで実施した。帯電除去処理は、微弱X線による除電器を使用し行った。
【0151】
(活性化処理)
乾燥し正孔輸送層を形成したロール状のPENフィルムに加熱処理装置で30分間、温度120℃のドライエアーを供給することで活性化処理(加熱処理)を行った。
【0152】
〈発光層の形成〉
(緑色発光層形成用塗布液の準備)
ホスト材のポリビニルカルバゾール(PVK)にドーパント材Ir(ppy)を5質量%、1,2−ジクロロエタン中に溶解し1%溶液とし、緑色発光層形成用塗布液として準備した。
【0153】
(緑色発光層形成用塗布液の塗布)
正孔輸送層迄を形成したPENフィルムの全面に、準備した緑色発光層形成用塗布液を押出し塗布機を用いて、ドライ窒素ガス雰囲気中で、塗布速度2m/minで塗布した後、製膜面に向け高さ100mm、吐出風速1m/s、幅手の風速分布5%、温度60℃で溶媒を除去し厚みが100nmの発光層を形成し巻き取り保管した。
【0154】
(活性化処理)
乾燥し緑色発光層を形成したロール状のPENフィルムに加熱処理装置で30分間、温度220℃のドライ窒素を供給することで活性化処理(加熱処理)を行った。
【0155】
〈電子輸送層の形成〉
(電子輸送層形成用塗布液の準備)
電子輸送層はAlqを1,2−ジクロロエタン中に溶解し0.5質量%溶液とし電子輸送層形成用塗布液とした。
【0156】
(電子輸送層形成用塗布液の塗布)
発光層迄を形成したPENフィルムの発光層の上に、準備した電子輸送層形成用塗布液を押出し塗布機を用い、ドライ窒素ガス雰囲気中で押出し、塗布速度2m/min塗布した後、製膜面に向け高さ100mm、吐出風速1m/s、幅手の風速分布5%、温度60℃で溶媒を除去し、厚みが30nmの電子輸送層を形成し、巻き芯に巻き取り保管した。
【0157】
(活性化処理)
乾燥し電子輸送層を形成したロール状のPENフィルムに、加熱処理装置で30分間温度200℃のドライ窒素を供給することで活性化処理を行った。
【0158】
(有機機能層の不要領域の払拭処理)
有機機能層(正孔輸送層/発光層/電子輸送層)の不要領域(PENフィルムの搬送方向の第1電極用外部接続用電極及びリード部上の有機機能層)を溶媒としてアセトンを使用し払拭し除去し巻き芯に巻き取り保管した。
【0159】
(第2電極の形成)
第1電極用外部接続用電極、リード部及び電子輸送層までが形成されたPENフィルムの上に第1電極用外部接続用電極の部分を除き、電子輸送層の上及びリード部の一部に5×10−4Paの真空下にて第2電極形成材料としてアルミニウムを使用し、蒸着法にて第1電極(陽極)と同じ大きさにマスクパターン成膜し、厚さ100nmの第2電極を積層した。リード部は第2電極と接続することで第2電極用外部接続用電極となる。
【0160】
(封止部材の貼合)
厚さ50μmのPETに、防湿層として厚さ30μmのアルミ箔、接着剤として厚さ20μm(株)スリーボンド製16X−098を積層した封止部材を第2電極までを形成したPENフィルムの上に積重し、押圧0.5MPaで貼合し、温度100℃で接着固定化した。帯状の有機ELパネルが製造した。
【0161】
(帯状の機ELパネルの打ち抜き断裁)
ダイと、ダイの形状に合わせたパンチとを装着した打ち抜き断裁装置を準備し、作製した帯状の有機ELパネルを打ち抜き断裁速度30個/minで400個打ち抜き断裁し、個別の有機ELパネルを作製し、試料No.101とした。
【0162】
(比較試料の作製)
有機機能層として正孔輸送層、発光層及び電子輸送層を形成する時に、乾燥工程と活性化処理工程とを連結し、基材を搬送しながら活性化処理を行った以外は全て同じ条件で有機EL素子を作製し、試料No.102とした。
【0163】
評価
作製した各試料No.101、102に付き、性能(外部取り出し量子効率、駆動電圧、寿命)に付き以下に示す評価方法に従って評価した。
【0164】
評価試料のサンプリング
試料No.101はロール状で活性化処理を行った時の巻き芯、巻き中、巻き外の各5mから個別の有機ELパネルを各10個サンプリングし評価試料とした。
【0165】
試料No.102は、試料No.101と同じ位置から個別の有機ELパネルを各10個サンプリングし評価試料とした。
【0166】
外部取り出し量子効率の測定方法
有機ELパネルを室温(約23〜25℃)、2.5mA/cmの定電流条件下による点灯を行い、点灯開始直後の発光輝度(L)[cd/m]を測定することにより、外部取り出し量子効率(η)を算出した。尚、測定には分光放射輝度計CS−1000(コニカミノルタセンシング製)を用いた。
【0167】
駆動電圧の測定方法
駆動電圧とは、2.5mA/cmで駆動した時の電圧を求めた。
【0168】
寿命
2.5mA/cmの一定電流で駆動した時に、輝度が発光開始直後の輝度(初期輝度)の半分に低下するのに要した時間を測定し、これを半減寿命時間(τ0.5)として寿命の指標とした。尚、測定には分光放射輝度計CS−1000(コニカミノルタセンシング製)を用いた。
【0169】
この結果、本発明の活性化処理による方法で作成した試料No.101は、性能(外部取り出し量子効率、駆動電圧、寿命)において、基材を搬送しながら活性化処理を行う従来方法で作製した試料No.102と同じ性能を示すことが確認された。
【0170】
又、各試料No.101、102を作製する時に使用した活性化処理ラインの長さに付き実測した結果、本発明の有機エレクトロルミネッセンスパネルの製造方法に係わる活性化処理による方法で作成した試料No.101の場合は、5mであった。又、本発明の有機エレクトロルミネッセンスパネルの製造方法に係わる活性化処理ラインは正孔輸送層、発光層、電子輸送層の活性化処理が1つの活性化処理ラインが共用出来るので積層する層の数に関係なく5mであった。ロールツーロール方式で製造ラインのコンパクト化が実現出来ることが確認された。
【0171】
従来の活性化処理による方法で作製した試料No.102の場合は、1層が50mであった。又、従来の製造方法に係わる活性化処理ラインはロールツーロール方式では正孔輸送層、発光層、電子輸送層の活性化処理を別に行わなければならないため積層する層の数に応じて配設しなければならず全体として50mの活性化処理ラインが3ライン必要となり製造ラインが長大化することが確認された。本発明の有効性が確認された。
【符号の説明】
【0172】
1、1′、1″ 有機ELパネル
101、101′、101″、2a 基材
102、102′、102″ 第1電極(陽極)
102a、102′a、102″a 第1電極用外部接続用電極
102b、102′b リード部
103、103′、103″ 有機機能層
104、104′、104″ 第2電極(陰極)
104a、104′a、104″a 第2電極用外部接続用電極
105、105′、105″ 接着剤層
107′ 導電層
106、106′、106″ 封止部材
2 有機ELパネルの製造工程
201 第1基材供給工程
202 第1電極(陽極)形成工程
203 第1回収工程
204 第2基材供給工程
205 有機機能層塗布工程
206 乾燥工程
207 有機機能層除去工程
208 第2回収工程
209 活性化処理工程(加熱処理工程)
210 第3基材供給工程
211 第2電極(陰極)形成工程
212 第3回収工程
213 第4基材供給工程
214 封止工程
215 断裁工程
216 第4回収工程
2a1、2a2、2b1から2b3 活性化均一化手段
2a11 凸状物
F 幅
G 高さ
H 直径
I ピッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の基材の上に、第1電極と、少なくとも1層の有機機能層と、第2電極とを有する有機エレクトロルミネッセンスパネルの製造方法において、
前記有機機能層は、有機機能層形成用塗布液を塗布し、乾燥した後、一旦巻き取りロール状とし、活性化処理を行い形成することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンスパネルの製造方法。
【請求項2】
前記帯状の基材の搬送方向に直交する幅方向の少なくとも両側縁部に沿って、通気性を有する活性化均一化手段が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンスパネルの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate