説明

有機エレクトロルミネッセンスパネル

【課題】 本発明の目的は、ボトムエミッション型有機EL素子において、発光エリアのエッジから発光が損なわれ発光面積が縮小することを防止乃至遅らせた有機ELパネルを提供することにある。
【解決手段】 発光エリアの端部を示す外周線上の90%以上の部分において、発光エリアの端部より外側に反射電極形成面の端部が存在することを特徴とするボトムエミッション型有機エレクトロルミネッセンスパネル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平面光源やディスプレイ等に用いられるボトムエミッション型有機エレクトロルミネッセンス(EL)パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子が広く開発されている。有機EL素子は少なくとも1層以上の有機層(発光層を含む)が電極薄膜で挟まれた薄膜素子であり、有機層を様々の有機低分子化合物や高分子化合物の蛍光体の中から(適当なものを)選択し形成することで、赤から青までの発光色が得られ、各種表示への応用が試みられている。
【0003】
ボトムエミッション型の有機EL素子は、ガラスなどの透明基板上に、下部電極として、例えばITO膜などの透明導電膜をパターニングし、この陽極上に発光層を含む有機層、更に反射電極として陰極が積層された構成であり基板側から発光を取り出す構成となっている。
【0004】
図1は単純マトリクス型のボトムエミッションタイプの有機EL素子の例を示す図である。単純マトリクス型においては、ガラス基板1上にストライプ状にITO膜をパターニングし透明電極(陽極)2を形成し、更に有機層3を設けた後、透明電極パターンと直交する形で、例えばアルミニウム等により反射電極(陰極)4をやはりストライプ状に設け形成される(有機層は全面を覆って形成されているので図1(a)では省略されている。)。
【0005】
これらの素子においては、陽極と陰極との重なり部分が発光エリアとなるが、点灯、即ち通電を長時間続けると、発光エリアの反射電極(陰極)のエッジ部分から発光しなくなる現象があり発光面積が縮小してゆくことが判った(図1(a)および(b)において5がその領域を示す)。これは反射電極が外側(大気側)にあることと関係すると思われる。
【0006】
本発明は、ボトムエミッション型の有機EL素子において電極の配置を工夫し前記の発光面積の縮小を防止或いは、低減するものである。
【0007】
尚、アルミニウム等の仕事関数4.8eV以下の金属からなる薄膜を、本発明に似たかたちでITO電極周囲に配置した、ボトムエミッション型のセグメント発光有機EL素子の例は知られているが(例えば特許文献1参照)、本発明とは、目的において異なるものである。
【特許文献1】特開2000−357589号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、ボトムエミッション型有機EL素子において、発光エリアのエッジから発光が損なわれ発光面積が縮小することを防止乃至遅らせた有機ELパネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記課題は以下の手段により達成されるものである。
【0010】
1.発光エリアの端部を示す外周線上の90%以上の部分において、発光エリアの端部より外側に反射電極形成面の端部が存在することを特徴とするボトムエミッション型有機エレクトロルミネッセンスパネル。
【0011】
2.白色発光することを特徴とする前記1記載のボトムエミッション型有機エレクトロルミネッセンスパネル。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、点灯を続けても、反射電極のエッジからおこる発光面積の縮小が少ないボトムエミッション型有機ELパネルが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0014】
本発明は、発光エリアの端部を示す外周線上の90%以上の部分において、発光エリアの端部より外側に反射電極形成面の端部が存在するようにボトムエミッション型有機エレクトロルミネッセンスパネルを構成することからなる。
【0015】
図1で示される単純マトリクス駆動タイプの有機EL素子においては、それぞれ直交した陽極と陰極の重なり部分が発光する。ガラス基板上に透明電極(陽極例えばITO)/有機層/反射電極(陰極例えばアルミニウム)と順次積層されたボトムエミッション型発光素子の場合、発光エリアのうち、反射電極のエッジによって決まる部分からの発光面積の減少が劣化の大きな部分である。つまり点灯を継続すると、反射電極幅よりも発光面積が細ってくる現象が起こる。一方、透明電極幅方向の発光面積の細りはない。これは、その部分は反射電極膜によってカバーされているために、その部分には外部からの水分或いは酸素等のガスの浸入が防止されているためと考えられる。即ち、電極間に挟持された発光層を含む有機層中には電流が流れているが、この様な状態において外部から水分或いは酸素等が浸入すると、有機層中の有機化合物の変化或いは変質により発光機能が低下或いは破壊されると考えられる。
【0016】
従って、本発明は、発光面積はなるべく透明電極(例えばITO)のパターンで決定し、反射電極(例えばアルミニウムによる陰極)はそれより大きなパターンで形成することによって、水分が浸入する部分をなくすものである。
【0017】
従って、ITO等基板上に形成される透明電極取出部分はなるべく小さくし、外部と接する発光エリアのエッジの長さをなるべく短くする。
【0018】
即ち、基板上にITO等、透明電極層/有機層/反射電極が順次形成されたボトムエミッション型有機ELパネルにおいて、発光面積はなるべく透明電極であるITOで決定し、反射陰極はそれより大きなパターンで形成することによって、水分が浸入する部分をなくすというものである。ITO等の電極取出し部分はなるべく小さくし、外部と接する発光エリアのエッジ長はなるべく短くする。
【0019】
以上、図1に示した単純マトリクス駆動タイプの有機ELパネルを例にとって発光面積の減少を示したが、本発明の上記考え方は、単純マトリクス駆動タイプのみでなく、セグメント発光型のパネル、例えば白色光源として用いる有機ELパネル、またアクティブマトリクス方式の駆動による有機ELパネルの各画素に等においても適用可能である
前記特許文献1には、ボトムエミッション型有機EL素子において、ITO透明電極よりも外側の領域に、仕事関数4.8eV以下の金属薄膜(例えば、アルミニウム薄膜)を有するセグメントの表示の有機EL素子が開示されているが、ここでは金属膜を反射電極として用いておらず、ホールの注入を抑える作用を利用し絶縁膜の代わりに発光エリア周囲に用いるセグメント表示の有機ELパネルに関するものであり本発明とは目的が異なっている。
【0020】
本発明では、一部引出電極として用いるが、透明電極を発光エリアの決定に用い、反射電極の面積を透明電極よりも大きくして反射電極により素子を封止するところが重要である。
【0021】
以下、セグメント発光型の有機ELパネルを例にとって、図を用いて本発明を詳細に説明する。
【0022】
図2に、本発明に係わる有機ELパネルの電極構造を示す。
【0023】
図2(a)は、基板(例えばガラス)1上に例えばITO薄膜からなる透明電極2、さらに発光層等を含む有機層3、そして、仕事関数4.8eV以下の金属、例えばアルミニウム等の金属薄膜からなる陰極が反射電極4として順次形成されたボトムエミッション型有機ELパネルの一例を示す。
【0024】
発光エリアは、透明電極(陽極)と、反射電極(陰極)との重なり合った部分である。
【0025】
図2(a)は、本発明に係わる有機ELパネルの電極構造を陰極形成面側から見た図であり、図2(b)は同じものを発光面(基板側或いは透明電極側)からみたものである。
尚、図2(c)は、図2(a)におけるA−A断面図、また図2(d)は、B−B断面図である。
【0026】
図2においては、透明電極の引き出し部2′を除き、透明電極2の端部よりも、有機層3の端部、そして反射電極4の外側端部と順に大きくなっており(図2(c)A−A断面図にこれを示した。)、反射電極4は有機層3を覆うように、また有機層3も透明電極2を覆うように形成されている。
【0027】
但し、各電極には取出部が必要であるため、最も面積の小さい透明電極2を反射電極4よりも外側に引き出す取出部2′が形成されており、その端部は有機層よりも外側の部分で基板上に露出している。因みに4′は反射電極の取り出し部である。
【0028】
透明電極2と反射電極4は直接接し短絡しては発光素子として機能しないので、この透明電極取出部2′では、有機層3を反射電極4の外側の端部よりもさらに外側の領域まで形成する。即ち、基板端まで引き出された透明電極の取出部2′の上には反射電極4の外側端部よりも有機層3の端部がより外側に形成されており、反射電極と透明電極が短絡しないよう配置される。
【0029】
図2(d)は、透明電極2の取出部、反射電極4の取出部を含む本発明に係わるパネルのB−B断面図である。
【0030】
発光エリアは、図2において透明電極(陽極)と、反射電極(陰極)との重なり合った部分(図2(e)において塗りつぶした領域)であるが、本発明においては、発光エリアの端部を示す外周線上の90%以上の部分において、反射電極形成面の端部が発光エリア端部より外側に存在するボトムエミッション型有機ELパネルであり、例えば、図の例では、発光エリア全体の周囲長に対し、透明電極引出部における反射電極端部(発光エリア端)の長さを10%未満とすればよい。
【0031】
また、好ましくは、発光エリアの端部を示す外周線上の95%以上の部分において、発光エリアの端部より外側に陰極形成面の端部が存在することが好ましい。
【0032】
発光エリアの端部を示す外周線上の100%の部分において、発光エリアの端部より外側に反射電極(陰極)の端部が存在することが、前記の発光面積の低下防止するという観点では一番好ましく、透明電極引出部の面積が小さい(細い)ほどよいが、ITO膜の比抵抗(ITO膜は金属薄膜よりは比抵抗値が高い)等から膜厚を厚くしないと、引出部の抵抗値が低くならないため、実技上は99.5%以下である。また、90%より小さくなると、発光エリアの周囲長の10%を超える部分において発光面積の低下が起こり、発光の低下が視認される様になる。
【0033】
また、陰極が発光エリアを覆う部分での発光エリア端と陰極端のオーバーラップ幅は、10μmから20mmあればよく、好ましくは100μmから2mm程度である。
【0034】
以上、発光エリア形状が方形のセグメント表示の有機ELパネルを例にして本発明を説明したが本発明は発光エリアの形状には依存しない。
【0035】
以上のように、本発明のボトムエミッション型有機ELパネルにおいては発光エリアは透明電極の形成されたエリアでほぼ決定されるため、本発明においては発光領域周囲の殆どにおいて発光面積低下が起こらない。透明電極取出部の一部においては発光の低下が起こるもののその領域は全体に比べ小さく発光全体への寄与も小さい。
【0036】
本発明においては、反射電極は、有機層への水、また酸素等のガスの浸入を防ぐ封止層として作用しており、外気からこれらの浸入を防いでいる。これらの素子を、別に封止材(例えば封止缶や防湿性フィルム)を用い封止した場合でも、完全な封止を行なうことは実際上難しいため、全体に寿命は延びるものの本発明の効果は変わらない。
【0037】
図2においては、セグメント表示の有機ELパネルを例にとり説明したが、本発明は、セグメント発光型のパネルに好適に適用でき、例えば例えば白色光源として用いる有機ELパネルに有用である。しかしながらこれのみでなく、単純マトリクス駆動タイプの有機ELパネル、またアクティブマトリクス方式の駆動による有機EL素子各画素に等においても好適に用いることができる。
【0038】
以下、本発明に係わる有機ELパネルについて詳細に説明する。
【0039】
〔有機EL素子〕
次に、本発明に係わる有機ELパネルの構成層について詳細に説明する。
本発明のボトムエミッション型有機ELパネルは、基板側から光を取り出すものであり、基板上に透明電極を例えば陽極として設け、反射電極である陰極との間に、以下のように有機層を順次形成し挟持して構成される。
(1)陽極(透明電極)/発光層/電子輸送層/陰極(反射電極)
(2)陽極(透明電極)/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極(反射電極)
(3)陽極(透明電極)/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極(反射電極)
(4)陽極(透明電極)/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極バッファー層/陰極(反射電極)
(5)陽極(透明電極)/陽極バッファー層/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極バッファー層/陰極(反射電極)
(陽極)
有機ELパネルにおける陽極としては、仕事関数の大きい(4eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが好ましく用いられる。このような電極物質の具体例としてはAu等の金属、CuI、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO2、ZnO等の導電性透明材料が挙げられる。また、IDIXO(In23−ZnO)等非晶質で透明導電膜を作製可能な材料を用いてもよい。陽極はこれらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により、薄膜を形成させる。フォトリソグラフィー法で所望の形状のパターンを形成してもよく、あるいはパターン精度をあまり必要としない場合は(100μm以上程度)、上記電極物質の蒸着やスパッタリング時に所望の形状のマスクを介してパターンを形成してもよい。陽極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましい。ボトムエミッション型の有機EL素子の場合、この陽極より発光を取り出すため、透過率を10%より大奇異ものが好ましく、特に、インジウムチンオキシド(ITO)が好ましい。膜厚は材料にもよるが、通常10〜1000nm、好ましくは10〜200nmの範囲で選ばれる。
【0040】
(陰極)
一方、陰極(反射電極)としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属(電子注入性金属と称する)、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質、例えば、電子注入性及び酸化等に対する耐久性の点から、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al23)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が好適である。陰極はこれらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することができる。また、陰極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましく、膜厚は通常10nm〜5μm、好ましくは50〜200nmの範囲で選ばれる。
【0041】
通常陰極は反射電極として構成されるが、陰極に上記金属を1〜20nmの膜厚で作製した後に、陽極の説明においてあげられた導電性透明材料をその上に作製することで、透明または半透明の陰極を作製することができ、これを応用することで陽極と陰極の両方が透過性を有する素子を作製することができる。
【0042】
或いは、陽極を金の様な反射電極で構成し、陰極を半透明として、反対の層構成を有するボトムエミッション型有機EL素子とすることもできる。
【0043】
次に、本発明の有機EL素子における有機層(注入層、阻止層、電子輸送層等)について説明する。
【0044】
(注入層:電子注入層、正孔注入層)
注入層は必要に応じて設け、電子注入層と正孔注入層があり、上記の如く陽極と発光層または正孔輸送層の間、及び陰極と発光層または電子輸送層との間に存在させてもよい。
【0045】
注入層とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために電極と有機層間に設けられる層のことで、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(123〜166頁)に詳細に記載されており、正孔注入層(陽極バッファー層)と電子注入層(陰極バッファー層)とがある。
【0046】
陽極バッファー層(正孔注入層)は、特開平9−45479号公報、同9−260062号公報、同8−288069号公報等にもその詳細が記載されており、具体例として、銅フタロシアニンに代表されるフタロシアニンバッファー層、酸化バナジウムに代表される酸化物バッファー層、アモルファスカーボンバッファー層、ポリアニリン(エメラルディン)やポリチオフェン等の導電性高分子を用いた高分子バッファー層等が挙げられる。
【0047】
陰極バッファー層(電子注入層)は、特開平6−325871号公報、同9−17574号公報、同10−74586号公報等にもその詳細が記載されており、具体的にはストロンチウムやアルミニウム等に代表される金属バッファー層、フッ化リチウムに代表されるアルカリ金属化合物バッファー層、フッ化マグネシウムに代表されるアルカリ土類金属化合物バッファー層、酸化アルミニウムに代表される酸化物バッファー層等が挙げられる。上記バッファー層(注入層)はごく薄い膜であることが望ましく、素材にもよるがその膜厚は0.1nm〜5μmの範囲が好ましい。
【0048】
(阻止層:正孔阻止層、電子阻止層)
阻止層は、上記の如く、有機化合物薄膜の基本構成層の他に必要に応じて設けられるものである。例えば、特開平11−204258号公報、同11−204359号公報、及び「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の237頁等に記載されている正孔阻止(ホールブロック)層がある。
【0049】
正孔阻止層とは広い意味では電子輸送層の機能を有し、電子を輸送する機能を有しつつ正孔を輸送する能力が著しく小さい正孔阻止材料からなり、電子を輸送しつつ正孔を阻止することで電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。また、後述する電子輸送層の構成を必要に応じて、本発明に係わる正孔阻止層として用いることができる。
【0050】
一方、電子阻止層とは広い意味では正孔輸送層の機能を有し、正孔を輸送する機能を有しつつ電子を輸送する能力が著しく小さい材料からなり、正孔を輸送しつつ電子を阻止することで電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。また、後述する正孔輸送層の構成を必要に応じて電子阻止層として用いることができる。
【0051】
(発光層)
本発明に係る発光層は、電極または電子輸送層、正孔輸送層から注入されてくる電子及び正孔が再結合して発光する層であり、発光する部分は発光層の層内であっても発光層と隣接層との界面であってもよい。
【0052】
本発明にかかわる有機ELパネルの発光層には、以下に示すホスト化合物とドーパント化合物が含有されることが好ましい。これにより、より一層発光効率を高くすることができる。
【0053】
発光ドーパントは、大きく分けて、蛍光を発光する蛍光性ドーパントとリン光を発光するリン光性ドーパントの2種類がある。
【0054】
前者(蛍光性ドーパント)の代表例としては、クマリン系色素、ピラン系色素、シアニン系色素、クロコニウム系色素、スクアリウム系色素、オキソベンツアントラセン系色素、フルオレセイン系色素、ローダミン系色素、ピリリウム系色素、ペリレン系色素、スチルベン系色素、ポリチオフェン系色素、または希土類錯体系蛍光体等が挙げられる。
【0055】
後者(リン光性ドーパント)の代表例としては、好ましくは元素の周期表で8属、9属、10属の金属を含有する錯体系化合物であり、さらに好ましくは、イリジウム化合物、オスミウム化合物であり、中でも最も好ましいのはイリジウム化合物である。具体的には以下の特許公報に記載されている化合物である。
【0056】
国際公開第00/70655号パンフレット、特開2002−280178号公報、同2001−181616号公報、同2002−280179号公報、同2001−181617号公報、同2002−280180号公報、同2001−247859号公報、同2002−299060号公報、同2001−313178号公報、同2002−302671号公報、同2001−345183号公報、同2002−324679号公報、国際公開第02/15645号パンフレット、特開2002−332291号公報、同2002−50484号公報、同2002−332292号公報、同2002−83684号公報、特表2002−540572号公報、特開2002−117978号公報、同2002−338588号公報、同2002−170684号公報、同2002−352960号公報、国際公開第01/93642号パンフレット、特開2002−50483号公報、同2002−100476号公報、同2002−173674号公報、同2002−359082号公報、同2002−175884号公報、同2002−363552号公報、同2002−184582号公報、同2003−7469号公報、特表2002−525808号公報、特開2003−7471号公報、特表2002−525833号公報、特開2003−31366号公報、同2002−226495号公報、同2002−234894号公報、同2002−235076号公報、同2002−241751号公報、同2001−319779号公報、同2001−319780号公報、同2002−62824号公報、同2002−100474号公報、同2002−203679号公報、同2002−343572号公報、同2002−203678号公報等。
【0057】
その具体例の一部を下記に示す。
【0058】
【化1】

【0059】
【化2】

【0060】
【化3】

【0061】
発光ドーパントは複数種の化合物を混合して用いてもよい。
【0062】
〈発光ホスト〉
発光ホスト(単にホストともいう)とは、2種以上の化合物で構成される発光層中にて混合比(質量)の最も多い化合物のことを意味し、それ以外の化合物については「ドーパント化合物(単に、ドーパントともいう)」という。例えば、発光層を化合物A、化合物Bという2種で構成し、その混合比がA:B=10:90であれば化合物Aがドーパント化合物であり、化合物Bがホスト化合物である。さらに、発光層を化合物A、化合物B、化合物Cの3種から構成し、その混合比がA:B:C=5:10:85であれば、化合物A、化合物Bがドーパント化合物であり、化合物Cがホスト化合物である。
【0063】
本発明に用いられる発光ホストとしては、構造的には特に制限はないが、代表的にはカルバゾール誘導体、トリアリールアミン誘導体、芳香族ボラン誘導体、含窒素複素環化合物、チオフェン誘導体、フラン誘導体、オリゴアリーレン化合物等の基本骨格を有するもの、または、カルボリン誘導体やジアザカルバゾール誘導体(ここで、ジアザカルバゾール誘導体とは、カルボリン誘導体のカルボリン環を構成する炭化水素環の少なくとも一つの炭素原子が窒素原子で置換されているものを表す。)等が挙げられる。
【0064】
中でもカルボリン誘導体、ジアザカルバゾール誘導体等が好ましく用いられる。
【0065】
以下に、カルボリン誘導体、ジアザカルバゾール誘導体等の具体例を挙げるが、本発明
はこれらに限定されない。
【0066】
【化4】

【0067】
【化5】

【0068】
また、本発明に用いられる発光ホストは低分子化合物でも、繰り返し単位をもつ高分子化合物でもよく、ビニル基やエポキシ基のような重合性基を有する低分子化合物(蒸着重合性発光ホスト)でもいい。
【0069】
発光ホストとしては、正孔輸送能、電子輸送能を有しつつ、かつ、発光の長波長化を防ぎ、高Tg(ガラス転移温度)である化合物が好ましい。発光ホストの具体例としては、以下の文献に記載されている化合物が好適である。例えば、特開2001−257076号公報、同2002−308855号公報、同2001−313179号公報、同2002−319491号公報、同2001−357977号公報、同2002−334786号公報、同2002−8860号公報、同2002−334787号公報、同2002−15871号公報、同2002−334788号公報、同2002−43056号公報、同2002−334789号公報、同2002−75645号公報、同2002−338579号公報、同2002−105445号公報、同2002−343568号公報、同2002−141173号公報、同2002−352957号公報、同2002−203683号公報、同2002−363227号公報、同2002−231453号公報、同2003−3165号公報、同2002−234888号公報、同2003−27048号公報、同2002−255934号公報、同2002−260861号公報、同2002−280183号公報、同2002−299060号公報、同2002−302516号公報、同2002−305083号公報、同2002−305084号公報、同2002−308837号公報等。
【0070】
さらに公知のホスト化合物を複数種併用して用いてもよい。また、ドーパント化合物を複数種用いることで、異なる発光を混ぜることが可能となり、これにより任意の発光色を得ることができる。リン光性化合物の種類、ドープ量を調整することで白色発光が可能であり、セグメント表示をさせることで、白色の照明、バックライトへの応用ができる。
【0071】
本発明の有機EL素子の発光する色は、「新編色彩科学ハンドブック」(日本色彩学会編、東京大学出版会、1985)の108頁の図4.16において、分光放射輝度計CS−1000(コニカミノルタセンシング社製)で測定した結果をCIE色度座標に当てはめたときの色で決定される。
【0072】
発光層は上記化合物を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法、インクジェット法等の公知の薄膜化法により成膜して形成することができる。発光層としての膜厚は特に制限はないが、通常は5nm〜5μm、好ましくは5〜200nmの範囲で選ばれる。この発光層はこれらのリン光性化合物やホスト化合物が1種または2種以上からなる一層構造であってもよいし、あるいは同一組成または異種組成の複数層からなる積層構造であってもよい。
【0073】
(正孔輸送層)
正孔輸送層とは正孔を輸送する機能を有する正孔輸送材料からなり、広い意味で正孔注入層、電子阻止層も正孔輸送層に含まれる。正孔輸送層は単層または複数層設けることができる。
【0074】
正孔輸送材料としては、正孔の注入または輸送、電子の障壁性のいずれかを有するものであり、有機物、無機物のいずれであってもよい。例えば、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、また導電性高分子オリゴマー、特にチオフェンオリゴマー等が挙げられる。
【0075】
正孔輸送材料としては上記のものを使用することができるが、ポルフィリン化合物、芳香族第3級アミン化合物及びスチリルアミン化合物、特に芳香族第3級アミン化合物を用いることが好ましい。
【0076】
芳香族第3級アミン化合物及びスチリルアミン化合物の代表例としては、N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノフェニル;N,N′−ジフェニル−N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−〔1,1′−ビフェニル〕−4,4′−ジアミン(TPD);2,2−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)プロパン;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン;N,N,N′,N′−テトラ−p−トリル−4,4′−ジアミノビフェニル;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン;ビス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)フェニルメタン;ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)フェニルメタン;N,N′−ジフェニル−N,N′−ジ(4−メトキシフェニル)−4,4′−ジアミノビフェニル;N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル;4,4′−ビス(ジフェニルアミノ)クオードリフェニル;N,N,N−トリ(p−トリル)アミン;4−(ジ−p−トリルアミノ)−4′−〔4−(ジ−p−トリルアミノ)スチリル〕スチルベン;4−N,N−ジフェニルアミノ−(2−ジフェニルビニル)ベンゼン;3−メトキシ−4′−N,N−ジフェニルアミノスチルベンゼン;N−フェニルカルバゾール、さらには米国特許第5,061,569号明細書に記載されている2個の縮合芳香族環を分子内に有するもの、例えば、4,4′−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル(NPD)、特開平4−308688号公報に記載されているトリフェニルアミンユニットが3つスターバースト型に連結された4,4′,4″−トリス〔N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ〕トリフェニルアミン(MTDATA)等が挙げられる。
【0077】
さらにこれらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。また、p型−Si、p型−SiC等の無機化合物も正孔注入材料、正孔輸送材料として使用することができる。
【0078】
正孔輸送層は上記正孔輸送材料を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法を含む印刷法、LB法等の公知の方法により、薄膜化することにより形成することができる。正孔輸送層の膜厚については特に制限はないが、通常は5nm〜5μm程度、好ましくは5〜200nmである。この正孔輸送層は上記材料の1種または2種以上からなる一層構造であってもよい。
【0079】
また、不純物をドープしたp性の高い正孔輸送層を用いることもできる。その例としては、特開平4−297076号、特開2000−196140号、特開2001−102175号、J.Appl.Phys.,95,5773(2004)等に記載されたものが挙げられる。
【0080】
(電子輸送層)
電子輸送層とは電子を輸送する機能を有する材料からなり、広い意味で電子注入層、正孔阻止層も電子輸送層に含まれる。電子輸送層は単層または複数層設けることができる。
【0081】
従来、単層の電子輸送層、及び複数層とする場合は発光層に対して陰極側に隣接する電子輸送層に用いられる電子輸送材料(正孔阻止材料を兼ねる)としては、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有していればよく、その材料としては従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができ、例えば、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタン及びアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体等が挙げられる。さらに、上記オキサジアゾール誘導体において、オキサジアゾール環の酸素原子を硫黄原子に置換したチアジアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有するキノキサリン誘導体も、電子輸送材料として用いることができる。さらにこれらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
【0082】
また、8−キノリノール誘導体の金属錯体、例えば、トリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alq)、トリス(5,7−ジクロロ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5,7−ジブロモ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(2−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、ビス(8−キノリノール)亜鉛(Znq)等、及びこれらの金属錯体の中心金属がIn、Mg、Cu、Ca、Sn、GaまたはPbに置き替わった金属錯体も、電子輸送材料として用いることができる。その他、メタルフリーもしくはメタルフタロシアニン、またはそれらの末端がアルキル基やスルホン酸基等で置換されているものも、電子輸送材料として好ましく用いることができる。また、発光層の材料として例示したジスチリルピラジン誘導体も、電子輸送材料として用いることができるし、正孔注入層、正孔輸送層と同様に、n型−Si、n型−SiC等の無機半導体も電子輸送材料として用いることができる。
【0083】
電子輸送層は上記電子輸送材料を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法を含む印刷法、LB法等の公知の方法により、薄膜化することにより形成することができる。電子輸送層の膜厚については特に制限はないが、通常は5nm〜5μm程度、好ましくは5〜200nmである。電子輸送層は上記材料の1種または2種以上からなる一層構造であってもよい。
【0084】
また、不純物をドープしたn性の高い電子輸送層を用いることもできる。その例としては、特開平4−297076号、特開2000−196140号、特開2001−102175号、J.Appl.Phys.,95,5773(2004)等に記載されたものが挙げられる。
【0085】
(基板)
有機ELパネルを構成する基板としては、例えば、ガラス、石英等の基板のほか、光透過性樹脂フィルムが挙げられる。樹脂フィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリイミド、ポリカーボネート(PC)、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)等からなるフィルム等が挙げられる。
【0086】
樹脂フィルムの表面には、ガスバリア性の無機物(例えば、酸化珪素、酸化窒化珪素等)、もしくは有機物の皮膜またはそのハイブリッド皮膜が形成されていてもよく、水蒸気透過率が0.01g/m2・day・atm以下の高バリア性フィルムであることが好ましい。
【0087】
(有機EL素子の作製方法)
有機ELパネル作製は、上記の各構成層を基板上に順次形成させ行う。
【0088】
例えば、先ずガラス等の基板上に陽極用物質からなる薄膜を1μm以下、好ましくは10〜200nmの膜厚になるように、蒸着やスパッタリング、プラズマCVD等の方法により形成させ陽極を作製する。
【0089】
有機材料を有する有機層(正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層、正孔阻止層等)の形成には、均質な膜が得られやすく、かつピンホールが生成しにくい真空蒸着法、スピンコート法、インクジェット法、印刷法等が好ましい。また層毎に異なる成膜法を適用してもよい。成膜に蒸着法を採用する場合、その蒸着条件は使用する化合物の種類等により異なるが、一般にボート加熱温度50〜450℃、真空度10-6〜10-2Pa、蒸着速度0.01〜50nm/秒、基板温度−50〜300℃、膜厚0.1nm〜5μm、好ましくは5〜200nmの範囲で適宜選ぶことが望ましい。
【0090】
これら有機層形成後、更に陰極用物質からなる薄膜を1μm以下好ましくは50〜200nmの範囲で、例えば蒸着やスパッタリング等の方法により形成させ陰極を設ける。有機EL素子の作製は、一回の真空引きで一貫して正孔注入層から陰極まで作製するのが好ましいが、途中で取り出して異なる成膜法を施しても構わない。その際、作業を乾燥不活性ガス雰囲気下で行う等の配慮が必要となる。
【0091】
また作製順序を逆にして、陰極、電子注入層、電子輸送層、発光層、正孔輸送層、正孔注入層、陽極の順に作製することも可能である。このようにして得られた多色の表示装置に、直流電圧を印加する場合には、陽極を+、陰極を−の極性として電圧2〜40V程度を印加すると、発光が観測できる。また交流電圧を印加してもよい。なお、印加する交流の波形は任意でよい。
【0092】
(発明の実施の形態)
以下、本発明に係わる有機EL素子の作製について、好ましい実施態様を説明する。
【0093】
有機EL素子の一例として、ガラス基板上に、透明電極(陽極)/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/反射電極(陰極)からなる構成を有するセグメント表示の白色発光有機ELパネルの作製を図3を用いて説明する。図において長さは全てmmで示した。
【0094】
まず、100mm×100mm×1.1mm(厚み)のガラス基板上にITO(インジウムチンオキシド)を100nm製膜した基板(NHテクノグラス社製NA45)を用いて、ITO膜を、レジストを用い、フォトリソグラフィー法によりパターニングした。即ち、非導電性領域以外の部分をレジストでマスクした後、25%塩酸水溶液に浸漬し非導電性領域部分(露出部分)のITO膜を除去した。この後、1.5%水酸化ナトリウム水溶液に浸してレジストを除去し、さらに水洗と乾燥を行った。
【0095】
100mm×100mmのガラス基板の中央に90mm×90mmの表示部となる透明電極と基板端部までの電極引出部10mm×10mmからなるITOからなる透明電極2のパターンを形成した(図の3(a))。
【0096】
次いで、透明電極パターンを形成したガラス基板の周囲をマスクで覆い、有機EL素子を構成する各有機層を透明電極および引出部を覆うよう真空蒸着により形成した(図3(b)に有機層3のパターンを示す)。基板中央の透明電極を覆う92mm×92mmの領域と透明電極引出部を覆う12mm×4mmの領域に有機層3が形成された。なお、透明電極引出部の基板端部には有機層を形成せず透明電極を露出させた(図3(b))。
【0097】
なお、各有機層の形成は真空蒸着法を用いて以下のように行った。
【0098】
ITO透明電極パターンの形成されたガラス基板をマスクで覆い、市販の真空蒸着装置の基板ホルダーに固定し、以下のように有機層を順次形成した。
【0099】
先ず、真空槽を4×10-4Paまで減圧した後、m−MTDATXAの入ったタンタル製抵抗加熱ボートに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/secで透明支持基板に蒸着し40nmの正孔輸送層を設けた。
【0100】
その後、以下に示すように、発光層A、Bまた中間層1、2の各組成を用い、以下に示すような構成で発光層各層を積層形成した。
【0101】
各発光層は、それぞれホスト化合物、ドーパントを以下の割合となるようそれぞれタンタル製の抵抗加熱ボートに容れ、ボートに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/secで記載された厚みに各発光層を蒸着し形成した。
【0102】
発光層A CDBP:Ir−15(3%) 25nm
中間層1 L−98 3nm
発光層B CDBP:Ir−16(8%) 10nm
ここで各発光層において、CDBP:Ir−15(3%) 25nmとあるのは、ホストであるCDBPに対しドーパントであるIr−15が3質量%含まれる25nmの蒸着膜であることを示す。
【0103】
次いで、その上に正孔阻止層としてL−98を10nm蒸着した。
【0104】
更にAlq3の入った加熱ボートに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/secで前記正孔阻止層上に蒸着して膜厚35nmの電子輸送層を設けた。なお、蒸着時の基板温度は室温で行った。
【0105】
引き続き陰極バッファー層(電子注入層)としてフッ化リチウム0.5nmを蒸着し、た。
【0106】
【化6】

【0107】
次いで、同じ真空蒸着装置を用いて、やはりマスクを用いることで、図3(c)に示すパターンで、有機層上にこれを覆うようにアルミニウム110nmを蒸着して反射電極(陰極)4を形成した。反射電極は基板中央の94mm×94mmの領域および10mm×8mmの引出部からなる。
【0108】
反射電極が透明電極を覆うオーバーラップ部分で透明電極端から2mm外側まで反射電極端が形成されている。また反射電極は透明電極引き出し部においては有機層を形成した領域の内側までしか形成せず透明電極とは短絡しないようにした。これにより、ITO透明電極の引出部の端部を露出させ残し、また、反射電極引出部を有する有機ELパネルが形成された。図3(c)は、形成されたパネルを反射電極側からみた平面図であり、図3(d)はそのC−C断面図を示す。
【0109】
これにより、発光エリア周囲長の殆どにおいて、反射電極が、有機層また透明電極を覆う構成をもち、発光機能が損なわれる反射電極エッジ長が少ない白色発光有機ELパネルが得られる。
【0110】
図3(e)は基板側からみた発光エリアを示す図であり、透明電極と反射電極の重なり合った部分が発光する。この有機ELパネルの例では、発光エリアの周囲長は364mmであり、透明電極が反射電極より外側にある長さは10mmなので、発光エリアの周囲長の97.3%の部分で反射電極(陰極)端が透明電極端よりも外側にある。
【0111】
作製したパネルの電極間に、電流を流すことで、点灯し白色に発光したが、長時間点灯させても発光領域の縮小は目視による観察ではみられない。この様に形成された有機ELパネルは、反射電極(陰極)端部の透明電極引出部と重なったところ(10mm長)で、長時間の点灯により、微視的には発光領域の縮小が観察されるが、全体の寄与としては小さく、発光領域の縮小は目視では確認できなかった。
【0112】
本発明の有機ELパネルは家庭用照明、車内照明、時計や液晶用のバックライト、看板広告、信号機、光記憶媒体の光源、電子写真複写機の光源、光通信処理機の光源、光センサーの光源等に用いることができるがこれらに限定するものではない。
【0113】
本発明の有機EL素子は、表示装置にも適用でき、表示デバイス、ディスプレイ、各種発光光源として用いることができる。表示デバイス、ディスプレイにおいて、青、赤、緑発光の3種の有機EL素子を用いることにより、フルカラーの表示が可能となる。表示デバイス、ディスプレイとしてはテレビ、パソコン、モバイル機器、AV機器、文字放送表示、自動車内の情報表示等が挙げられる。特に静止画像や動画像を再生する表示装置として使用してもよく、動画再生用の表示装置として使用する場合の駆動方式は単純マトリックス(パッシブマトリックス)方式でもアクティブマトリックス方式でもどちらでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】単純マトリクス型のボトムエミッションタイプ有機EL素子の例を示す図である。
【図2】本発明に係わる有機ELパネルの電極構造を示す図である。
【図3】セグメント表示の有機ELパネルの作製例を示す図である。
【符号の説明】
【0115】
1 基板
2 透明電極
3 有機層
4 反射電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光エリアの端部を示す外周線上の90%以上の部分において、発光エリアの端部より外側に反射電極形成面の端部が存在することを特徴とするボトムエミッション型有機エレクトロルミネッセンスパネル。
【請求項2】
白色発光することを特徴とする請求項1記載のボトムエミッション型有機エレクトロルミネッセンスパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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