有機エレクトロルミネッセンス発光部の駆動方法
【課題】表示画面の輝度均一性の悪化を抑制することができる有機エレクトロルミネッセンス発光部の駆動方法を提供する。
【解決手段】有機EL素子は、駆動回路及び発光部ELPを備え、駆動回路は、駆動トランジスタTDrv、映像信号書込みトランジスタTSig、発光制御トランジスタTEL_C、コンデンサ部C1から構成され、駆動トランジスタTDrvの他方のソース/ドレイン領域は、発光部ELPのアノード電極に接続され、且つ、コンデンサ部C1の一方の電極に接続されて第2ノードND2を構成し、発光制御トランジスタTEL_Cのゲート電極には閾値電圧キャンセル処理において第1の電圧V1_ONと第2の電圧V2_OFFが順次印加され、発光時には第3の電圧V3_ONが印加され、|V1_ON−V2_OFF|<|V3_ON−V2_OFF|を満たす。
【解決手段】有機EL素子は、駆動回路及び発光部ELPを備え、駆動回路は、駆動トランジスタTDrv、映像信号書込みトランジスタTSig、発光制御トランジスタTEL_C、コンデンサ部C1から構成され、駆動トランジスタTDrvの他方のソース/ドレイン領域は、発光部ELPのアノード電極に接続され、且つ、コンデンサ部C1の一方の電極に接続されて第2ノードND2を構成し、発光制御トランジスタTEL_Cのゲート電極には閾値電圧キャンセル処理において第1の電圧V1_ONと第2の電圧V2_OFFが順次印加され、発光時には第3の電圧V3_ONが印加され、|V1_ON−V2_OFF|<|V3_ON−V2_OFF|を満たす。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス発光部の駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、単に、有機EL素子と略称する)を発光素子として用いた有機エレクトロルミネッセンス表示装置(以下、単に、有機EL表示装置と略称する)において、有機EL素子の輝度は、有機EL素子を流れる電流値によって制御される。そして、液晶表示装置と同様に、有機EL表示装置においても、駆動方式として、単純マトリクス方式、及び、アクティブマトリクス方式が周知である。アクティブマトリクス方式は、単純マトリクス方式に比べて構造が複雑となるといった欠点はあるが、画像の輝度を高いものとすることができる等、種々の利点を有する。
【0003】
有機EL素子を構成する有機エレクトロルミネッセンス発光部(以下、単に、発光部と略称する)を駆動するための回路として、5つのトランジスタと1つのコンデンサ部から構成された駆動回路(5Tr/1C駆動回路と呼ぶ)が、例えば、特開2006−215213号公報から周知である。5Tr/1C駆動回路は、図2に示すように、映像信号書込みトランジスタTSig、駆動トランジスタTDrv、発光制御トランジスタTEL_C、第1ノード初期化トランジスタTND1、第2ノード初期化トランジスタTND2の5つのトランジスタから構成され、更には、1つのコンデンサ部C1から構成されている。ここで、駆動トランジスタTDrvの他方のソース/ドレイン領域は第2ノードND2を構成し、駆動トランジスタTDrvのゲート電極は第1ノードND1を構成する。
【0004】
尚、これらのトランジスタ及びコンデンサ部については、後に詳しく説明する。
【0005】
例えば、各トランジスタはnチャネル型の薄膜トランジスタ(TFT)から成り、発光部ELPは、駆動回路を覆うように形成された層間絶縁層等の上に設けられている。発光部ELPのアノード電極は、駆動トランジスタTDrvの他方のソース/ドレイン領域に接続されている。一方、発光部ELPのカソード電極には、電圧VCat(例えば、0ボルト)が印加される。符号CELは発光部ELPの寄生容量を表す。
【0006】
駆動のタイミングチャートを模式的に図4に示し、各トランジスタのオン/オフ状態等を模式的に図6の(A)〜(D)及び図7の(A)〜(E)に示す。図4に示すように、[期間−TP(5)1]において、閾値電圧キャンセル処理を行うための前処理が実行される。即ち、図6の(B)に示すように、第1ノード初期化トランジスタTND1及び第2ノード初期化トランジスタTND2をオン状態とすることで、第1ノードND1の電位は、VOfs(例えば、0ボルト)となる。一方、第2ノードND2の電位は、VSS(例えば、−10ボルト)となる。そして、これによって、駆動トランジスタTDrvのゲート電極と他方のソース/ドレイン領域との間の電位差が、駆動トランジスタTDrvの閾値電圧Vth以上となる。駆動トランジスタTDrvはオン状態である。
【0007】
次いで、図4に示すように、[期間−TP(5)2]〜[期間−TP(5)3]において、閾値電圧キャンセル処理が行われる。図6の(D)に示すように、第1ノード初期化トランジスタTND1のオン状態を維持したまま、発光制御トランジスタTEL_Cをオン状態とする。その結果、第1ノードND1の電位から駆動トランジスタTDrvの閾値電圧Vthを減じた電位に向かって、第2ノードND2の電位は変化する。即ち、浮遊状態の第2ノードND2の電位が上昇する。そして、駆動トランジスタTDrvのゲート電極と他方のソース/ドレイン領域との間の電位差がVthに達すると、駆動トランジスタTDrvがオフ状態となる。この状態にあっては、第2ノードの電位は、概ね(VOfs−Vth)である。その後、[期間−TP(5)3]において、第1ノード初期化トランジスタTND1のオン状態を維持したまま、発光制御トランジスタTEL_Cをオフ状態とする。次に、[期間−TP(5)4]において、第1ノード初期化トランジスタTND1をオフ状態とする。
【0008】
次いで、図4に示すように、[期間−TP(5)5]において、駆動トランジスタTDrvに対する書込み処理を行う。具体的には、図7の(C)に示すように、第1ノード初期化トランジスタTND1、第2ノード初期化トランジスタTND2、及び、発光制御トランジスタTEL_Cのオフ状態を維持したまま、データ線DTLの電位を映像信号に相当する電圧[発光部ELPにおける輝度を制御するための映像信号(駆動信号、輝度信号)VSig]とし、次いで、走査線SCLをハイレベルとすることによって映像信号書込みトランジスタTSigをオン状態とする。その結果、第1ノードND1の電位は、VSigへと上昇する。第1ノードND1の電位の変化分に基づく電荷は、コンデンサ部C1、発光部ELPの寄生容量CEL、駆動トランジスタTDrvのゲート電極とソース領域との間の寄生容量に振り分けられる。従って、第1ノードND1の電位が変化すると、第2ノードND2の電位も変化する。しかし、発光部ELPの寄生容量CELの容量値が大きな値である程、第2ノードND2の電位の変化は小さくなる。そして、一般に、発光部ELPの寄生容量CELの容量値は、コンデンサ部C1の容量値及び駆動トランジスタTDRVの寄生容量の値よりも大きい。そこで、第2ノードND2の電位は殆ど変化しないとすれば、駆動トランジスタTDrvのゲート電極と他方のソース/ドレイン領域との間の電位差Vgsは、以下の式(A)のとおりとなる。
【0009】
Vgs≒VSig−(VOfs−Vth) (A)
【0010】
その後、図4に示すように、[期間−TP(5)6]において、駆動トランジスタTDrvの特性(例えば、移動度μの大小等)に応じて駆動トランジスタTDrvの他方のソース/ドレイン領域の電位(即ち、第2ノードND2の電位)を上昇させる移動度補正処理を行う。具体的には、図7の(D)に示すように、駆動トランジスタTDrvのオン状態を維持したまま、発光制御トランジスタTEL_Cをオン状態とし、次いで、所定の時間(t0)が経過した後、映像信号書込みトランジスタTSigをオフ状態とする。その結果、駆動トランジスタTDrvの移動度μの値が大きい場合、駆動トランジスタTDrvの他方のソース/ドレイン領域における電位の上昇量ΔV(電位補正値)は大きくなり、駆動トランジスタTDrvの移動度μの値が小さい場合、駆動トランジスタTDrvの他方のソース/ドレイン領域における電位の上昇量ΔV(電位補正値)は小さくなる。ここで、駆動トランジスタTDrvのゲート電極と他方のソース/ドレイン領域との間の電位差Vgsは、式(A)から以下の式(B)のように変形される。尚、移動度補正処理を実行するための所定の時間([期間−TP(5)6]の全時間(t0)は、有機EL表示装置の設計の際、設計値として予め決定しておけばよい。
【0011】
Vgs≒VSig−(VOfs−Vth)−ΔV (B)
【0012】
以上の操作によって、閾値電圧キャンセル処理、書込み処理、移動度補正処理が完了する。そして、その後の[期間−TP(5)7]において、映像信号書込みトランジスタTSigがオフ状態となり、第1ノードND1、即ち、図7の(E)に示すように、駆動トランジスタTDrvのゲート電極は浮遊状態となる一方、発光制御トランジスタTEL_Cはオン状態を維持しており、発光制御トランジスタTEL_Cの一方のソース/ドレイン領域は、発光部ELPの発光を制御するための電流供給部(電圧VCC、例えば20ボルト)に接続された状態にある。従って、以上の結果として、第2ノードND2の電位が上昇し、所謂ブートストラップ回路におけると同様の現象が駆動トランジスタTDrvのゲート電極に生じ、第1ノードND1の電位も上昇する。その結果、駆動トランジスタTDrvのゲート電極と他方のソース/ドレイン領域との間の電位差Vgsは、式(B)の値を保持する。また、発光部ELPを流れる電流は、駆動トランジスタTDrvのドレイン領域からソース領域へと流れるドレイン電流Idsであるので、式(C)で表すことができる。発光部ELPは、ドレイン電流Idsの値に応じた輝度で発光する。
【0013】
Ids=k・μ・(Vgs−Vth)2
=k・μ・(VSig−VOfs−ΔV)2 (C)
【0014】
以上に概要を説明した5Tr/1C駆動回路の駆動等についても、後に詳しく説明する。
【0015】
ところで、有機EL表示装置は、図3に概念図を示すように、
(1)走査回路101、
(2)映像信号出力回路102、
(3)第1の方向にN個、第1の方向とは異なる第2の方向(具体的には、第1の方向に直交する方向)にM個、合計N×M個の、2次元マトリクス状に配列され、それぞれが有機エレクトロルミネッセンス発光部ELP、及び、有機エレクトロルミネッセンス発光部ELPを駆動するための駆動回路を備えている有機エレクトロルミネッセンス素子10、
(4)走査回路101に接続され、第1の方向に延びるM本の走査線SCL、
(5)映像信号出力回路102に接続され、第2の方向に延びるN本のデータ線DTL、並びに、
(6)電流供給部100、
を備えている。尚、図3においては、便宜のため3×3個の有機EL素子10を示したが、これは単なる例示に過ぎない。
【0016】
ここで、各有機EL素子10は、上述したとおり、5Tr/1C駆動回路、及び、発光部ELPを備えている。発光制御トランジスタTEL_Cの動作は、発光制御トランジスタ制御回路103に接続された発光制御トランジスタ制御線CLEL_Cに印加される電圧によって規定される。上述した閾値電圧キャンセル処理にあっては、発光制御トランジスタ制御回路103の動作に基づき、[期間−TP(5)2]において発光制御トランジスタTEL_Cをオン状態とするための所定の電圧(例えば30ボルト)が発光制御トランジスタ制御線CLEL_Cに印加される。また、[期間−TP(5)3]において発光制御トランジスタTEL_Cをオフ状態とするための所定の電圧(例えば−10ボルト)が発光制御トランジスタ制御線CLEL_Cに印加される。更には、[期間−TP(5)6]以降において、上述した発光制御トランジスタTEL_Cをオン状態とするための所定の電圧(30ボルト)が発光制御トランジスタ制御線CLEL_Cに印加される。従って、後述する図20に示すように、発光制御トランジスタ制御回路103の信号の波形AF0は、基本的に、−10ボルトと30ボルトの2値からなる矩形波である。
【0017】
【特許文献1】特開2006−215213号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
一般に、配線を伝わる信号の形状は、分布容量等の影響により信号の立ち上がり/立ち下がりが鈍り、変形する。そして、変形の程度は、信号が伝達する経路が長くなればなる程、顕著になる。例えば、発光制御トランジスタ制御回路103の信号に着目すると、図3に示す有機EL表示装置において、発光制御トランジスタ制御回路103に最も近い有機EL素子10(左端に配列された有機EL素子10)と、発光制御トランジスタ制御回路103から最も離れた有機EL素子10(右端に配列された有機EL素子10)とでは、信号が伝達する経路長(換言すれば、各有機EL素子10から発光制御トランジスタ制御回路103に至る部分の発光制御トランジスタ制御線CLEL_Cの長さ)が相違する。図19に、図3に示す有機EL表示装置について、第1行目の有機EL素子10と、発光制御トランジスタ制御回路103と、発光制御トランジスタ制御線CLEL_Cとの関係を模式的に示す。
【0019】
図19に示す例では、有機EL素子101の経路長が最も短く、有機EL素子10Nの経路長が最も長い。従って、発光制御トランジスタ制御回路103の信号の波形AF0は、左端に配列された有機EL素子10Nに、より変形して伝達される。図19に、上述した[期間−TP(5)2]〜[期間−TP(5)7]において、有機EL表示装置の発光制御トランジスタ制御線CLEL_Cを伝達する信号の波形AF0,AF1,AFNを模式的に示した。発光制御トランジスタ制御回路103の信号の波形AF0は、発光制御トランジスタTEL_Cをオン状態とするための電圧(例えば30ボルト)と、オフ状態とするための電圧(例えば−10ボルト)の2値からなる矩形波であり、発光制御トランジスタTEL_Cのゲート電極に印加される。図19に示すように、有機EL素子101には、元波形、即ち波形AF0に対して、殆ど劣化のない波形AF1が伝達され、有機EL素子101の発光制御トランジスタTEL_Cのゲート電極に印加される。一方、有機EL素子10Nには変形した略台形状の波形AFNが伝達され、有機EL素子10Nの発光制御トランジスタTEL_Cのゲート電極に印加される。図20に、図19に示す波形AF0,AF1,AFNと、図4の上段に示すタイミングチャートとを対比して示す。
【0020】
ここで、上述した閾値電圧キャンセル処理が行われる[期間−TP(5)2]及びこの前後において、発光制御トランジスタTEL_Cのゲート電極に上述した波形AF1が印加された場合と、波形AFNが印加された場合とで、発光制御トランジスタTEL_Cと駆動トランジスタTDrvとの接続部(より具体的には、後述するソース/ドレイン領域A1,A2)に起きる電位変動の差について考察する。図21の(A)及び(B)は、上述した[期間−TP(5)2]〜[期間−TP(5)3]における、駆動回路の動作を説明するための等価回路図である。発光制御トランジスタTEL_Cのゲート電極とソース/ドレイン領域A1との間の寄生容量を符号CA1、駆動トランジスタTDrvのゲート電極とソース/ドレイン領域A2との間の寄生容量を符号CA2で表す。
【0021】
上述したように、[期間−TP(5)2]の始期においては、駆動トランジスタTDrvはオン状態にある。そして、発光制御トランジスタTEL_Cをオン状態とする結果、浮遊状態の第2ノードND2の電位が上昇し、駆動トランジスタTDrvのゲート電極と他方のソース/ドレイン領域との間の電位差がVthに達すると、駆動トランジスタTDrvがオフ状態となる。これにより、図21の(A)の左側に示すように、波形AF1、波形AFNの立ち下がり時において、駆動トランジスタTDrvはオフ状態にある。従って、波形AF1、波形AFNの立ち下がり時において、ソース/ドレイン領域A1,A2は、発光制御トランジスタTEL_Cがオン状態であれば電圧VCCが印加されており浮遊状態ではないが、発光制御トランジスタTEL_Cがオフ状態となると浮遊状態となる。発光制御トランジスタTEL_Cと駆動トランジスタTDrvとの接続部(ソース/ドレイン領域A1,A2)が浮遊状態にあるとき、発光制御トランジスタTEL_Cのゲート電極の電位が変化すると、寄生容量CA1等による静電結合により、ソース/ドレイン領域A1,A2の電位も変化する。
【0022】
ここで、波形AFNは波形AF1に対し立ち下がりが鈍っている。図20の下段、及び、図21の(A)に示すΔT1は、波形AF1の立ち下がりにおいて、発光制御トランジスタTEL_Cのオン状態とオフ状態が切り替わる迄の時間を示す(理想的な矩形波であれば、ΔT1は0である)。同様に、図20の下段、及び、図21の(A)に示すΔTnは、波形AFNの立ち下がりにおいて、発光制御トランジスタTEL_Cのオン状態とオフ状態が切り替わる迄の時間を示す。図から明らかなように、ΔT1<ΔTnである。上述したように、ソース/ドレイン領域A1,A2は、発光制御トランジスタTEL_Cがオン状態であれば電圧VCCが印加される。従って、波形AFnの立ち下がりにおいては、波形AF1の立ち下がりに対して、(ΔTn−ΔT1)だけ長くソース/ドレイン領域A1,A2に電圧VCCが印加された状態となる。換言すれば、波形AFnの立ち下がりにおいては、波形AF1の立ち下がり対して、ソース/ドレイン領域A1,A2の電位はより電圧VCC側に保持される。これにより、図21の(B)に示すように、波形AF1、波形AFNの立ち下がり時において、静電結合によるソース/ドレイン領域A1,A2の電位変動は、波形AF1においてより顕著に現れる。より具体的には、波形AF1が印加される駆動回路と、波形AFNが印加される駆動回路とを比較すると、前者の駆動回路における発光制御トランジスタTEL_Cと駆動トランジスタTDrvとの接続部の電位が、よりマイナス側に変化する。
【0023】
発光制御トランジスタTEL_Cと駆動トランジスタTDrvとの接続部の電位変動は、寄生容量CA2等を介した静電結合により、最終的には第2ノードND2に伝播する。これにより、波形AF1が印加される駆動回路と、波形AFNが印加される駆動回路とでは、第2ノードND2の電位に若干の差が生ずる。これに起因して[期間−TP(5)7]におけるドレイン電流の値が変動する。即ち、左端に配列された有機EL素子101と、右端に配列された有機EL素子10Nとで、発光部ELPの輝度に差が生ずる。また、他の有機EL素子10においても同様の現象が起こるが、その程度は、信号波形の変形の程度に応じて変化する。上述したように、信号波形の変形の程度は、各有機EL素子10から発光制御トランジスタ制御回路103に至る部分の発光制御トランジスタ制御線CLEL_Cの長さに応じて変化する。結局、図19に示す例では、有機EL表示装置の輝度が画面の左端から右端に向かって徐々に変化する現象が起こり、表示画面の輝度均一性が悪化する。
【0024】
従って、本発明の目的は、発光制御トランジスタ制御線CLEL_Cを伝達する信号波形の変形に起因する表示画面の輝度均一性の悪化を抑制することができる有機エレクトロルミネッセンス発光部の駆動方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上記の目的を達成するための本発明の有機エレクトロルミネッセンス発光部の駆動方法は、
(1)走査回路、
(2)映像信号出力回路、
(3)第1の方向にN個、第1の方向とは異なる第2の方向にM個、合計N×M個の、2次元マトリクス状に配列され、それぞれが有機エレクトロルミネッセンス発光部、及び、有機エレクトロルミネッセンス発光部を駆動するための駆動回路を備えている有機エレクトロルミネッセンス素子、
(4)走査回路に接続され、第1の方向に延びるM本の走査線、
(5)映像信号出力回路に接続され、第2の方向に延びるN本のデータ線、並びに、
(6)電流供給部、
を備えた有機エレクトロルミネッセンス表示装置における、有機エレクトロルミネッセンス発光部の駆動方法に関する。
【0026】
上述した有機エレクトロルミネッセンス発光部を駆動するための駆動回路は、
(A)ソース/ドレイン領域、チャネル形成領域、及び、ゲート電極を備えた駆動トランジスタ、
(B)ソース/ドレイン領域、チャネル形成領域、及び、ゲート電極を備えた映像信号書込みトランジスタ、
(C)ソース/ドレイン領域、チャネル形成領域、及び、ゲート電極を備えた発光制御トランジスタ、並びに、
(D)一対の電極を備えたコンデンサ部、
から構成されており、
駆動トランジスタにおいては、
(A−1)一方のソース/ドレイン領域は、発光制御トランジスタの他方のソース/ドレイン領域に接続されており、
(A−2)他方のソース/ドレイン領域は、有機エレクトロルミネッセンス発光部に備えられたアノード電極に接続され、且つ、コンデンサ部の一方の電極に接続されており、第2ノードを構成し、
(A−3)ゲート電極は、映像信号書込みトランジスタの他方のソース/ドレイン領域に接続され、且つ、コンデンサ部の他方の電極に接続されており、第1ノードを構成し、 映像信号書込みトランジスタにおいては、
(B−1)一方のソース/ドレイン領域は、データ線に接続されており、
(B−2)ゲート電極は、走査線に接続されており、
発光制御トランジスタにおいては、
(C−1)一方のソース/ドレイン領域は、電流供給部に接続されており、
(C−2)ゲート電極は、発光制御トランジスタ制御線に接続されている。
【0027】
上記の目的を達成するための本発明の有機エレクトロルミネッセンス発光部の駆動方法は、上述した駆動回路を用いて、
(a)第1ノードと第2ノードとの間の電位差が、駆動トランジスタの閾値電圧を越え、且つ、第2ノードと有機エレクトロルミネッセンス発光部に備えられたカソード電極との間の電位差が、有機エレクトロルミネッセンス発光部の閾値電圧を越えないように、第1ノードに第1ノード初期化電圧を印加し、第2ノードに第2ノード初期化電圧を印加する前処理を行い、次いで、
(b)第1ノードの電位を保った状態で、第1ノードの電位から駆動トランジスタの閾値電圧を減じた電位に向かって、第2ノードの電位を変化させる閾値電圧キャンセル処理を行い、その後、
(c)走査線からの信号によりオン状態とされた映像信号書込みトランジスタを介して、データ線から映像信号を第1ノードに印加する書込み処理を行い、次いで、
(d)走査線からの信号により映像信号書込みトランジスタをオフ状態とすることにより第1ノードを浮遊状態とし、電流供給部から、発光制御トランジスタと駆動トランジスタとを介して、第1ノードと第2ノードとの間の電位差の値に応じた電流を有機エレクトロルミネッセンス発光部に流す、
ことにより、有機エレクトロルミネッセンス発光部を駆動する駆動方法に関する。
【0028】
そして、上記の目的を達成するための本発明の有機エレクトロルミネッセンス発光部の駆動方法は、
前記工程(b)は、
(b−1)発光制御トランジスタをオン状態とするための第1の電圧を、発光制御トランジスタ制御線を介して発光制御トランジスタのゲート電極に印加し、オン状態の発光制御トランジスタを介して駆動トランジスタの一方のソース/ドレイン領域を電流供給部と導通させ、以て、駆動トランジスタの一方のソース/ドレイン領域の電位を前記工程(a)における第2ノードの電位よりも高くし、次いで、
(b−2)発光制御トランジスタをオフ状態とするための第2の電圧を、発光制御トランジスタ制御線を介して発光制御トランジスタのゲート電極に印加する、
工程から構成されており、
前記工程(d)において、発光制御トランジスタをオン状態とするための第3の電圧を、発光制御トランジスタ制御線を介して発光制御トランジスタのゲート電極に印加し、オン状態の発光制御トランジスタを介して駆動トランジスタの一方のソース/ドレイン領域を電流供給部と導通させ、以て、第1ノードと第2ノードとの間の電位差の値に応じた電流を有機エレクトロルミネッセンス発光部に流し、
第1の電圧をV1_ON、第2の電圧をV2_OFF、第3の電圧をV3_ONと表すとき、|V1_ON−V2_OFF|<|V3_ON−V2_OFF|を満たすことを特徴とする。
【0029】
また、本発明の有機エレクトロルミネッセンス発光部の駆動方法にあっては、駆動回路は、
(E)ソース/ドレイン領域、チャネル形成領域、及び、ゲート電極を備えた第2ノード初期化トランジスタ、
を更に備えており、
第2ノード初期化トランジスタにおいては、
(E−1)一方のソース/ドレイン領域は、第2ノード初期化電圧供給線に接続されており、
(E−2)他方のソース/ドレイン領域は、第2ノードに接続されており、
(E−3)ゲート電極は、第2ノード初期化トランジスタ制御線に接続されており、
前記工程(a)において、第2ノード初期化トランジスタ制御線からの信号によりオン状態とされた第2ノード初期化トランジスタを介して、第2ノード初期化電圧供給線から第2ノードに第2ノード初期化電圧を印加した後、第2ノード初期化トランジスタ制御線からの信号により第2ノード初期化トランジスタをオフ状態とする構成とすることができる。
【0030】
また、上記の各種の好ましい構成を含む本発明の有機エレクトロルミネッセンス発光部の駆動方法にあっては、駆動回路は、
(F)ソース/ドレイン領域、チャネル形成領域、及び、ゲート電極を備えた第1ノード初期化トランジスタ、
を更に備えており、
第1ノード初期化トランジスタにおいては、
(F−1)一方のソース/ドレイン領域は、第1ノード初期化電圧供給線に接続されており、
(F−2)他方のソース/ドレイン領域は、第1ノードに接続されており、
(F−3)ゲート電極は、第1ノード初期化トランジスタ制御線に接続されており、
前記工程(a)において、第1ノード初期化トランジスタ制御線からの信号によりオン状態とされた第1ノード初期化トランジスタを介して、第1ノード初期化電圧供給線から第1ノードに第1ノード初期化電圧を印加する構成とすることができる。
【0031】
本発明の駆動方法にあっては、第1の電圧V1_ONは、有機EL表示装置の設計に応じて適宜設定すればよい。例えば、発光制御トランジスタの動作が線形領域から非飽和領域に切り替わる臨界値(以下、臨界電圧と呼ぶ場合がある)を目安として、第1の電圧V1_ONを設定することもできる。例えば、発光制御トランジスタがnチャネル型であり、臨界電圧が、臨界電圧の設計値±V0ボルトの範囲でばらつく場合には、ばらつきの下限(上の例では臨界電圧の設計値−V0ボルト)を若干下回る値を目安として、第1の電圧V1_ONを設定することもできる。同様に、pチャネル型の場合には、臨界電圧の設計値+V0ボルトを若干上回る値を目安として設定することもできる。
【0032】
本発明の駆動方法にあっては、工程(b)において、第1ノードの電位から駆動トランジスタの閾値電圧を減じた電位に向かって、第2ノードの電位を変化させる閾値電圧キャンセル処理を行なう。定性的には、閾値電圧キャンセル処理において、第1ノードと第2ノードとの間の電位差(換言すれば、駆動トランジスタのゲート電極とソース領域との間の電位差)が駆動トランジスタの閾値電圧に近づく程度は、閾値電圧キャンセル処理の時間により左右される。従って、例えば閾値電圧キャンセル処理の時間を充分長く確保した形態にあっては、第2ノードの電位は第1ノードの電位から駆動トランジスタの閾値電圧を減じた電位に達する。そして、第1ノードと第2ノードとの間の電位差は駆動トランジスタの閾値電圧に達し、駆動トランジスタはオフ状態となる。一方、例えば閾値電圧キャンセル処理の時間を短く設定せざるを得ない形態にあっては、第1ノードと第2ノードとの間の電位差が駆動トランジスタの閾値電圧より大きく、駆動トランジスタはオフ状態とはならない場合がある。本発明の駆動方法にあっては、閾値電圧キャンセル処理の結果として、必ずしも駆動トランジスタがオフ状態となることを要しない。
【0033】
上述した好ましい構成、形態を含む本発明の有機エレクトロルミネッセンス発光部の駆動方法(以下、単に、本発明の駆動方法と呼ぶ場合がある)にあっては、発光制御トランジスタのゲート電極には、第1の電圧V1_ON、第2の電圧V2_OFF、第3の電圧V3_ONが順次印加される。そして、これらの電圧は、|V1_ON−V2_OFF|<|V3_ON−V2_OFF|という関係を満たす。従来の駆動方法は、工程(b)、工程(d)を問わず、発光制御トランジスタをオン状態とする際に、共に、第3の電圧V3_ONを印加する態様に相当する。これに対して、本発明の駆動方法によれば、閾値電圧キャンセル処理において、発光制御トランジスタをオフ状態とする前の発光制御トランジスタのゲート電極には、第1の電圧V1_ONを印加する。そして、上述した式に示されているように、第1の電圧V1_ONと第2の電圧V2_OFFとの電位差の絶対値は、第3の電圧V3_ONと第2の電圧V2_OFFとの電位差の絶対値よりも小さい。これにより、従来の単純な矩形波を印加する駆動方法に対して、図20、図21の(A)に示すΔTnの値を小さくすることができる。そして、発光制御トランジスタTEL_Cと駆動トランジスタTDrvとの接続部の電位変動の差が小さくなり、上述した表示画面の輝度均一性の悪化を抑制することができる。また、発光時において、駆動トランジスタは上述した式(C)で示すドレイン電流Idsを流すが、駆動トランジスタと直列に接続された発光制御トランジスタのゲート電圧が臨界電圧に近いと、発光制御トランジスタの電流容量の制限により、上述した式(C)に示す値のドレイン電流Idsを流すことができず、表示装置の動作に支障をきたすおそれがある。従って、発光制御トランジスタは、式(C)に示すドレイン電流Idsが表示装置の設計上の最大値となったときでも、支障無く電流を流すことができなければならない。本発明の駆動方法によれば、充分な電流容量が確保できる値の電圧を、第3の電圧V3_ONとして駆動トランジスタのゲートに印加することができるので、表示装置の動作に支障をきたすことがない。
【0034】
本発明の駆動方法にあっては、工程(d)において、走査線からの信号により映像信号書込みトランジスタをオフ状態とする。この時期と、第3の電圧を発光制御トランジスタのゲート電極に印加する時期との先後関係は、有機EL表示装置の設計に応じて適宜設定することができる。例えば、映像信号書込みトランジスタをオフ状態とした後、直ちに、あるいは、所定の間隔を空けて、第3の電圧を発光制御トランジスタのゲート電極に印加する態様であってもよいし、第3の電圧を発光制御トランジスタのゲート電極に印加した後、映像信号書込みトランジスタをオフ状態とする態様であってもよい。尚、第3の電圧を発光制御トランジスタのゲート電極に印加した後、映像信号書込みトランジスタをオフ状態とする態様にあっては、発光制御トランジスタと映像信号書込みトランジスタとが共にオン状態となる期間が存在する。この期間において、駆動トランジスタの特性に応じて第2ノードの電位を上昇させる移動度補正処理の動作が行われる。尚、第3の電圧を発光制御トランジスタのゲート電極に印加した状態で、工程(c)を行う構成とすることもできる。この構成にあっては、書込み処理において実質的に移動度補正処理が併せて行なわれる。
【0035】
以上に説明した各種の好ましい構成を含む本発明の駆動方法(以下、これらを単に、本発明と略称する場合がある)において、走査回路、映像信号出力回路等の各種の回路、走査線、データ線等の各種の配線、電流供給部、有機エレクトロルミネッセンス発光部(以下、単に、発光部と呼ぶ場合がある)の構成、構造は、周知の構成、構造とすることができる。具体的には、発光部は、例えば、アノード電極、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、カソード電極等から構成することができる。
【0036】
駆動回路の詳細は後述するが、例えば、5つのトランジスタと1つのコンデンサ部から構成された駆動回路(5Tr/1C駆動回路)、4つのトランジスタと1つのコンデンサ部から構成された駆動回路(4Tr/1C駆動回路と呼ぶ)、3つのトランジスタと1つのコンデンサ部から構成された駆動回路(3Tr/1C駆動回路と呼ぶ)から構成することができる。
【0037】
駆動回路を構成するトランジスタとして、nチャネル型の薄膜トランジスタ(TFT)を挙げることができるが、場合によっては、例えば、発光制御トランジスタや映像信号書込みトランジスタ等にpチャネル型の薄膜トランジスタを用いることもできる。コンデンサ部は、一方の電極、他方の電極、及び、これらの電極に挟まれた誘電体層(絶縁層)から構成することができる。駆動回路を構成するトランジスタ及びコンデンサ部は、或る平面内に形成され(例えば、支持体上に形成され)、発光部は、例えば、層間絶縁層を介して、駆動回路を構成するトランジスタ及びコンデンサ部の上方に形成されている。また、駆動トランジスタの他方のソース/ドレイン領域は、発光部に備えられたアノード電極に、例えば、コンタクトホールを介して接続されている。尚、半導体基板等にトランジスタを形成した構成であってもよい。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、発光制御トランジスタのゲート電極には、第1の電圧V1_ON、第2の電圧V2_OFF、第3の電圧V3_ONが順次印加される。そして、これらの電圧は、|V1_ON−V2_OFF|<|V3_ON−V2_OFF|という関係を満たす。これにより、図20、図21の(A)に示すΔTnの値を小さくできるので、発光制御トランジスタTEL_Cと駆動トランジスタTDrvとの接続部の電位変動の差が小さくなる。従って、寄生容量等を介した静電結合により生ずる第2ノードの電位変動の差も抑制されるので、背景技術において説明した表示画面の輝度均一性の悪化が抑制される。また、発光時において、駆動トランジスタは上述した式(C)で示すドレイン電流Idsを流すが、駆動トランジスタと直列に接続された発光制御トランジスタのゲート電圧が臨界電圧に近いと、発光制御トランジスタの電流容量の制限により表示装置の動作に支障をきたすおそれがある。本発明の駆動方法によれば、充分な電流容量が確保できる値の電圧を、第3の電圧V3_ONとして駆動トランジスタのゲートに印加することができるので、表示装置の動作に支障をきたすことがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、図面を参照して、実施例に基づき本発明を説明する。
【実施例】
【0040】
実施例の有機EL表示装置は、図14に有機EL回路の概念図を示すように、
(1)走査回路101、
(2)映像信号出力回路102、
(3)第1の方向にN個、第1の方向とは異なる第2の方向(具体的には、第1の方向に直交する方向)にM個、合計N×M個の、2次元マトリクス状に配列され、それぞれが有機エレクトロルミネッセンス発光部ELP、及び、有機エレクトロルミネッセンス発光部ELPを駆動するための駆動回路を備えている有機エレクトロルミネッセンス素子10、
(4)走査回路101に接続され、第1の方向に延びるM本の走査線SCL、
(5)映像信号出力回路102に接続され、第2の方向に延びるN本のデータ線DTL、並びに、
(6)電流供給部100、
を備えている。尚、図14あるいは、後述する図3、図9においては、3×3個の有機EL素子10を図示しているが、これは、あくまでも例示に過ぎない。
【0041】
上述したように、各有機EL素子10は、駆動回路、及び、発光部ELPを備えている。ここで、発光部ELPは、例えば、アノード電極、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、カソード電極等の周知の構成、構造を有する。また、走査線SCLの一端に走査回路101が設けられている。更には、走査回路101、映像信号出力回路102、走査線SCL、データ線DTL、電流供給部100の構成、構造は、周知の構成、構造とすることができる。
【0042】
駆動回路は、基本的に、3つのトランジスタと1つのコンデンサ部C1から構成された駆動回路(3Tr/1C駆動回路)である。即ち、実施例の駆動回路は、図13に示すように、(A)駆動トランジスタTDrv、(B)映像信号書込みトランジスタTSig、(C)発光制御トランジスタTEL_C、(D)一対の電極を備えたコンデンサ部C1から構成されている。尚、図8に示す駆動回路は、更に、(E)第2ノード初期化トランジスタTND2を備えた駆動回路(4Tr/1C駆動回路)である。また、図2に示す駆動回路は、これに加えて、(F)第1ノード初期化トランジスタTND1を備えた駆動回路(5Tr/1C駆動回路)である。
【0043】
上述した駆動トランジスタTDrv、映像信号書込みトランジスタTSig、発光制御トランジスタTEL_C、第1ノード初期化トランジスタTND1、及び、第2ノード初期化トランジスタTND2は、それぞれ、ソース/ドレイン領域、チャネル形成領域、及び、ゲート電極を備えた、nチャネル型のTFTから成る。後述する他の実施例においても同様である。尚、映像信号書込みトランジスタTSig、発光制御トランジスタTEL_C、第1ノード初期化トランジスタTND1、及び、第2ノード初期化トランジスタTND2をpチャネル型のTFTから形成してもよい。
【0044】
ここで、駆動トランジスタTDrvにおいては、
(A−1)一方のソース/ドレイン領域は、発光制御トランジスタTEL_Cの他方のソース/ドレイン領域に接続されており、
(A−2)他方のソース/ドレイン領域は、発光部ELPに備えられたアノード電極に接続され、且つ、コンデンサ部C1の一方の電極に接続されており、第2ノードND2を構成し、
(A−3)ゲート電極は、映像信号書込みトランジスタTSigの他方のソース/ドレイン領域に接続され、且つ、コンデンサ部C1の他方の電極に接続されており、第1ノードND1を構成する。
【0045】
また、映像信号書込みトランジスタTSigにおいては、
(B−1)一方のソース/ドレイン領域は、データ線DTLに接続されており、
(B−2)ゲート電極は、走査線SCLに接続されている。走査線SCLは、走査回路101に接続されている。
【0046】
そして、発光制御トランジスタTEL_Cにおいては、
(C−1)一方のソース/ドレイン領域は、電流供給部100に接続されており、
(C−2)ゲート電極は、発光制御トランジスタ制御線CLEL_Cに接続されている。発光制御トランジスタ制御線CLEL_Cは、発光制御トランジスタ制御回路103に接続されている。
【0047】
尚、図8に示す4Tr/1C駆動回路、及び、図2に示す5Tr/1C駆動回路においては、更に、第2ノード初期化トランジスタTND2を備えている。第2ノード初期化トランジスタTND2においては、
(E−1)一方のソース/ドレイン領域は、第2ノード初期化電圧供給線PSND2に接続されており、
(E−2)他方のソース/ドレイン領域は、第2ノードND2に接続されており、
(E−3)ゲート電極は、第2ノード初期化トランジスタ制御線AZND2に接続されている。第2ノード初期化トランジスタ制御線AZND2は、第2ノード初期化トランジスタ制御回路105に接続されている。
【0048】
また、図2に示す5Tr/1C駆動回路においては、更に、第1ノード初期化トランジスタTND1を備えている。第1ノード初期化トランジスタTND1においては、
(F−1)一方のソース/ドレイン領域は、第1ノード初期化電圧供給線PSND1に接続されており、
(F−2)他方のソース/ドレイン領域は、第1ノードND1に接続されており、
(F−3)ゲート電極は、第1ノード初期化トランジスタ制御線AZND1に接続されている。第1ノード初期化トランジスタ制御線AZND1は、第1ノード初期化トランジスタ制御回路104に接続されている。
【0049】
図18に有機EL素子の一部分の模式的な一部断面図を示すように、駆動回路を構成する各トランジスタ及びコンデンサ部C1は支持体20上に形成され、発光部ELPは、例えば、層間絶縁層40を介して、駆動回路を構成するトランジスタ及びコンデンサ部C1の上方に形成されている。また、駆動トランジスタTDrvのソース領域は、発光部ELPに備えられたアノード電極に、コンタクトホールを介して接続されている。尚、図18においては、駆動トランジスタTDrvのみを図示する。駆動トランジスタTDrv以外のトランジスタは隠れて見えない。
【0050】
より具体的には、駆動トランジスタTDrvは、ゲート電極31、ゲート絶縁層32、半導体層33、半導体層33に設けられたソース/ドレイン領域35、及び、ソース/ドレイン領域35の間の半導体層33の部分が該当するチャネル形成領域34から構成されている。一方、コンデンサ部C1は、他方の電極36、ゲート絶縁層32の延在部から構成された誘電体層、及び、一方の電極37(第2ノードND2に相当する)から成る。ゲート電極31、ゲート絶縁層32の一部、及び、コンデンサ部C1を構成する他方の電極36は、支持体20上に形成されている。駆動トランジスタTDrvの一方のソース/ドレイン領域35は配線38に接続され、他方のソース/ドレイン領域35は一方の電極37(第2ノードND2に相当する)に接続されている。駆動トランジスタTDrv及びコンデンサ部C1等は、層間絶縁層40で覆われており、層間絶縁層40上に、アノード電極51、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、及び、カソード電極53から成る発光部ELPが設けられている。尚、図面においては、正孔輸送層、発光層、及び、電子輸送層を1層52で表した。発光部ELPが設けられていない層間絶縁層40の部分の上には、第2層間絶縁層54が設けられ、第2層間絶縁層54及びカソード電極53上には透明な基板21が配置されており、発光層にて発光した光は、基板21を通過して、外部に出射される。尚、一方の電極37(第2ノードND2)とアノード電極51とは、層間絶縁層40に設けられたコンタクトホールによって接続されている。また、カソード電極53は、第2層間絶縁層54、層間絶縁層40に設けられたコンタクトホール56,55を介して、ゲート絶縁層32の延在部上に設けられた配線39に接続されている。
【0051】
以上、実施例の有機EL表示装置、及び、発光部ELPを駆動するための駆動回路の構成について説明した。
【0052】
後述する図1及び図5に示すように、実施例の駆動方法によれば、各有機EL素子10には、発光制御トランジスタ制御線CLEL_Cから第1の電圧V1_ON、第2の電圧V2_OFF、第3の電圧V3_ONから成る波形BF0〜BFNで示す電圧が印加される。従来の駆動方法は、発光制御トランジスタTEL_Cのゲート電極に第3の電圧V3_ON、第2の電圧V2_OFFを順次印加する態様に相当する。実施例の駆動方法によれば、後述するように、閾値電圧キャンセル処理を行うに際し、オフ状態とする前の発光制御トランジスタTEL_Cのゲート電極には第1の電圧V1_ONが印加される。そして、これらの電圧は、|V1_ON−V2_OFF|<|V3_ON−V2_OFF|という関係を満たす。
【0053】
以下、実施例の駆動方法について説明するが、上述した背景技術における駆動回路の動作との対比の便宜上、ここでは、図2に示す5Tr/1C駆動回路の動作に基づいて説明する。
【0054】
図1は、実施例の駆動方法において、図4に示す[期間−TP(5)2]〜[期間−TP(5)7]において、有機EL表示装置の発光制御トランジスタ制御線CLEL_Cを伝達する信号の波形BF0,BF1,BFNを模式的に示した図である。5Tr/1C駆動回路の等価回路図を図2に示し、有機EL表示装置の概念図を図3に示し、駆動のタイミングチャートを模式的に図4に示す。図5は背景技術において参照した図20に対応し、図1に示す波形BF0,BF1,BFNと、図4の上段に示すタイミングチャートとを対比して示した図である。各トランジスタのオン/オフ状態等を模式的に図6の(A)〜(D)及び図7の(A)〜(E)に示す。
【0055】
実施例の駆動方法においては、背景技術で概略を述べたように、
(a)第1ノードND1と第2ノードND2との間の電位差が、駆動トランジスタTDrvの閾値電圧Vthを越え、且つ、第2ノードND2と発光部ELPに備えられたカソード電極との間の電位差が、発光部ELPの閾値電圧Vth-ELを越えないように、第1ノードND1に第1ノード初期化電圧を印加し、第2ノードND2に第2ノード初期化電圧を印加する前処理を行い、次いで、
(b)第1ノードND1の電位を保った状態で、第1ノードND1の電位から駆動トランジスタTDrvの閾値電圧Vthを減じた電位に向かって、第2ノードND2の電位を変化させる閾値電圧キャンセル処理を行い、その後、
(c)走査線SCLからの信号によりオン状態とされた映像信号書込みトランジスタTSigを介して、データ線DTLから映像信号を第1ノードND1に印加する書込み処理を行い、次いで、
(d)走査線SCLからの信号により映像信号書込みトランジスタTSigをオフ状態とすることにより第1ノードND1を浮遊状態とし、電流供給部100から、発光制御トランジスタTEL_Cと駆動トランジスタTDrvとを介して、第1ノードND1と第2ノードND2との間の電位差の値に応じた電流を発光部ELPに流すことにより、発光部ELPを駆動する。
【0056】
尚、実施例の理解の便宜を図るため、上記の工程(a)、工程(c)の詳細は、後程、図4、図6の(A)〜(C)を参照しつつ詳細に説明する。
【0057】
以下、説明の便宜のため、発光制御トランジスタTEL_Cのゲート電極の電圧として20ボルトを境として、発光制御トランジスタTEL_Cの動作が線形領域から非飽和領域に切り替わるとする。即ち、臨界電圧は20ボルトである。
【0058】
発明が解決しようとする課題の欄において説明したが、図4に示す[期間−TP(5)2]及びこの前後において、閾値電圧キャンセル処理が行われる。そして、従来の駆動方法にあっては、図20に示すように、発光制御トランジスタ制御回路103の信号の波形AF0は、発光制御トランジスタTEL_Cをオン状態とするための電圧(例えば30ボルト)と、オフ状態とするための電圧(例えば−10ボルト)の2値から成る矩形波であった。
【0059】
一方、実施例にあっては、閾値電圧キャンセル処理を行う前記工程(b)は、以下の工程(b−1)、工程(b−2)から構成されている。
【0060】
[工程(b−1)]
[期間−TP(5)2]の始期において発光制御トランジスタ制御回路103の動作に基づき、発光制御トランジスタTEL_Cをオン状態とするための第1の電圧V1_ON(例えば18ボルト)を、発光制御トランジスタ制御線CLEL_Cを介して発光制御トランジスタTEL_Cのゲート電極に印加する。そして、オン状態の発光制御トランジスタTEL_Cを介して駆動トランジスタTDrvの一方のソース/ドレイン領域を電流供給部100と導通させ、以て、駆動トランジスタTDrvの一方のソース/ドレイン領域の電位を前記工程(a)における第2ノードND2の電位よりも高くする。より具体的には、前記工程(a)における第2ノードND2の電位に駆動トランジスタTDrvの閾値電圧Vthを加えた電圧を越える電圧を、電流供給部100から駆動トランジスタTDrvの一方のソース/ドレイン領域に印加する。その結果、第1ノードND1の電位から駆動トランジスタTDrvの閾値電圧Vthを減じた電位に向かって、第2ノードND2の電位は変化する。
【0061】
[工程(b−2)]
次いで、[期間−TP(5)3]の始期において、発光制御トランジスタ制御回路103の動作に基づき、発光制御トランジスタTEL_Cをオフ状態とするための第2の電圧V2_OFF(例えば−10ボルト)を、発光制御トランジスタ制御線CLEL_Cを介して発光制御トランジスタTEL_Cのゲート電極に印加する。
【0062】
そして、工程(d)において、発光制御トランジスタTEL_Cをオン状態とするための第3の電圧V3_ON(例えば30ボルト)を、発光制御トランジスタ制御線CLEL_Cを介して発光制御トランジスタTEL_Cのゲート電極に印加し、[期間−TP(5)7]においてオン状態の発光制御トランジスタTEL_Cを介して駆動トランジスタTDrvの一方のソース/ドレイン領域を電流供給部100と導通させ、以て、第1ノードND1と第2ノードND2との間の電位差の値に応じた電流を発光部ELPに流す。尚、実施例においては、第1ノードND1を浮遊状態とする前から、第3の電圧V3_ONを発光制御トランジスタTEL_Cのゲート電極に印加することにより、上述した移動度補正処理をも行う態様とした。
【0063】
以下の工程(b−1)、工程(b−2)、工程(d)における駆動回路の動作の詳細は、後ほど図4、図6の(D)、図7の(A)〜(E)を参照しつつ詳細に説明する。
【0064】
発光制御トランジスタ制御回路103の信号の波形BF0は、図5に示すように、上述した工程(b−1)、工程(b−2)、工程(d)に対応し、上述した第1の電圧V1_ON、第2の電圧V2_OFF、第3の電圧V3_ONの3値から成る。これらの電圧は|V1_ON−V2_OFF|<|V3_ON−V2_OFF|を満たす関係にある。
【0065】
背景技術で説明したと同様に、上記の波形BF0も発光制御トランジスタ制御線CLEL_Cを伝搬する際に立ち上がり/立ち下がりが鈍り、変形する。図1及び図5に示す波形BF1,BFNは、図19及び図20に示した波形AF1,AFNと同様に、発光制御トランジスタ制御回路103に最も近い、左端の有機EL素子101と、発光制御トランジスタ制御回路103から最も離れた、右端の有機EL素子10Nとに印加される波形を示す。図1の下段、及び、図5に示すΔT1’は、波形BF1の立ち下がりにおいて、発光制御トランジスタTEL_Cのオン状態とオフ状態が切り替わる迄の時間を示し(理想的には、ΔT1’は0である)、ΔTn’は、波形BFNの立ち下がりにおいて、発光制御トランジスタTEL_Cのオン状態とオフ状態が切り替わる迄の時間を示す。
【0066】
従来の駆動方法においては、工程(b)において、発光制御トランジスタTEL_Cをオフ状態とする前のゲート電極の電圧は30ボルトであった。一方、実施例の駆動方法においては、発光制御トランジスタTEL_Cをオフ状態とする前のゲート電極の電圧はV1_ON(18ボルト)である。従って、図5に示すように、[期間−TP(5)2]の波形BFNの立ち下がりにおける時間ΔTn’は、図20の時間ΔTnよりも短い。即ち、図20に示すΔT1、ΔTnとの関係において、|ΔTn−ΔT1|>|ΔTn’−ΔT1’|である。即ち、波形の立ち下がりにおいてソース/ドレイン領域A1,A2の電位が電圧VCC側に保持される時間の差が減少する。これにより、左端の有機EL素子101における発光制御トランジスタTEL_Cと駆動トランジスタTDrvとの接続部の電位変動と、右端の有機EL素子10Nにおける発光制御トランジスタTEL_Cと駆動トランジスタTDrvとの接続部の電位変動との差が小さくなる。
【0067】
発明が解決しようとする課題の欄において説明したように、発光制御トランジスタTEL_Cと駆動トランジスタTDrvとの接続部の電位変動は、最終的には第2ノードND2に伝播する。そして、これに起因して[期間−TP(5)7]におけるドレイン電流の値が変動する。実施例においては、上述したように、発光制御トランジスタ制御回路103に最も近い左端の有機EL素子101と、発光制御トランジスタ制御回路103から最も離れた右端の有機EL素子10Nにおける電位変動との差が小さくなる。他の有機EL素子10においても同様である。従って、[期間−TP(5)7]におけるドレイン電流の値の変動が小さくなり、表示画面の輝度均一性の悪化を抑制することができる。
【0068】
また、図5と図20に示すように、[期間−TP(5)7]においては、発光制御トランジスタTEL_Cをオン状態とするために、従来の駆動方法と同様の値の第3の電圧V3_ONをゲート電極に印加する。従って、工程(d)における発光制御トランジスタの電流容量は従来の駆動方法と同様となり、発光部の発光輝度に影響を与えることもない。
【0069】
以上、実施例の駆動方法について説明した。
【0070】
以下、5Tr/1C駆動回路、4Tr/1C駆動回路、3Tr/1C駆動回路、及び、これらの駆動回路を用いた発光部ELPの駆動方法を説明する。
【0071】
有機EL表示装置は、(N/3)×M個の2次元マトリクス状に配列された画素から構成されているが、以下の説明において、1つの画素は、3つの副画素(赤色を発光する赤色発光副画素、緑色を発光する緑色発光副画素、青色を発光する青色発光副画素)から構成されているとする。また、各画素を構成する有機EL素子10は、線順次駆動されるとし、表示フレームレートをFR(回/秒)とする。即ち、第m行目(但し、m=1,2,3・・・M)に配列された(N/3)個の画素(N個の副画素)のそれぞれを構成する有機EL素子10が同時に駆動される。換言すれば、1つの行を構成する各有機EL素子10にあっては、その発光/非発光のタイミングは、それらが属する行単位で制御される。尚、1つの行を構成する各画素について映像信号を書き込む処理は、全ての画素について同時に映像信号を書き込む処理(以下、単に、同時書込み処理と呼ぶ場合がある)であってもよいし、各画素毎に順次映像信号を書き込む処理(以下、単に、順次書込み処理と呼ぶ場合がある)であってもよい。いずれの書込み処理とするかは、駆動回路の構成に応じて適宜選択すればよい。
【0072】
ここで、原則として、第m行目、第n列(但し、n=1,2,3・・・N)に位置する画素における1つの副画素を構成する有機EL素子10に関する駆動、動作を説明するが、係る副画素あるいは有機EL素子10を、以下、第(n,m)番目の副画素あるいは第(n,m)番目の有機EL素子10と呼ぶ。そして、第m行目に配列された各有機EL素子10の水平走査期間(第m番目の水平走査期間)が終了するまでに、各種の処理(後述する閾値電圧キャンセル処理、書込み処理、移動度補正処理)が行われる。尚、書込み処理や移動度補正処理は、第m番目の水平走査期間内に行われる必要がある。一方、駆動回路の種類によっては、閾値電圧キャンセル処理やこれに伴う前処理を第m番目の水平走査期間より先行して行うことができる。
【0073】
そして、上述した各種の処理が全て終了した後、第m行目に配列された各有機EL素子10を構成する発光部を発光させる。尚、上述した各種の処理が全て終了した後、直ちに発光部を発光させてもよいし、所定の期間(例えば、所定の行数分の水平走査期間)が経過した後に発光部を発光させてもよい。この所定の期間は、有機EL表示装置の仕様や駆動回路の構成等に応じて、適宜設定することができる。尚、以下の説明においては、説明の便宜のため、各種の処理終了後、直ちに発光部を発光させるものとする。そして、第m行目に配列された各有機EL素子10を構成する発光部の発光は、第(m+m’)行目に配列された各有機EL素子10の水平走査期間の開始直前まで継続される。ここで、「m’」は、有機EL表示装置の設計仕様によって決定される。即ち、或る表示フレームの第m行目に配列された各有機EL素子10を構成する発光部の発光は、第(m+m’−1)番目の水平走査期間まで継続される。一方、第(m+m’)番目の水平走査期間の始期から、次の表示フレームにおける第m番目の水平走査期間内において書込み処理や移動度補正処理が完了するまで、第m行目に配列された各有機EL素子10を構成する発光部は、非発光状態を維持する。上述した非発光状態の期間(以下、単に、非発光期間と呼ぶ場合がある)を設けることにより、アクティブマトリクス駆動に伴う残像ボケが低減され、動画品位をより優れたものとすることができる。但し、各副画素(有機EL素子10)の発光状態/非発光状態は、以上に説明した状態に限定するものではない。また、水平走査期間の時間長は、(1/FR)×(1/M)秒未満の時間長である。(m+m’)の値がMを越える場合、越えた分の水平走査期間は、次の表示フレームにおいて処理される。
【0074】
1つのトランジスタの有する2つのソース/ドレイン領域において、「一方のソース/ドレイン領域」という用語を、電源部に接続された側のソース/ドレイン領域といった意味において使用する場合がある。また、トランジスタがオン状態にあるとは、ソース/ドレイン領域間にチャネルが形成されている状態を意味する。係るトランジスタの一方のソース/ドレイン領域から他方のソース/ドレイン領域に電流が流れているか否かは問わない。一方、トランジスタがオフ状態にあるとは、ソース/ドレイン領域間にチャネルが形成されていない状態を意味する。また、或るトランジスタのソース/ドレイン領域が他のトランジスタのソース/ドレイン領域に接続されているとは、或るトランジスタのソース/ドレイン領域と他のトランジスタのソース/ドレイン領域とが同じ領域を占めている形態を包含する。更には、ソース/ドレイン領域は、不純物を含有したポリシリコンやアモルファスシリコン等の導電性物質から構成することができるだけでなく、金属、合金、導電性粒子、これらの積層構造、有機材料(導電性高分子)から成る層から構成することができる。また、以下の説明で用いるタイミングチャートにおいて、各期間を示す横軸の長さ(時間長)は模式的なものであり、各期間の時間長の割合を示すものではない。
【0075】
[5Tr/1C駆動回路]
上述したように、5Tr/1C駆動回路の等価回路図を図2に示し、有機EL表示装置の概念図を図3を示し、駆動のタイミングチャートを模式的に図4に示し、各トランジスタのオン/オフ状態等を模式的に図6の(A)〜(D)及び図7の(A)〜(E)に示した。
【0076】
この5Tr/1C駆動回路は、映像信号書込みトランジスタTSig、駆動トランジスタTDrv、発光制御トランジスタTEL_C、第1ノード初期化トランジスタTND1、第2ノード初期化トランジスタTND2の5つのトランジスタから構成され、更には、1つのコンデンサ部C1から構成されている。
【0077】
[発光制御トランジスタTEL_C]
発光制御トランジスタTEL_Cの一方のソース/ドレイン領域は、電流供給部100(電圧VCC)に接続され、発光制御トランジスタTEL_Cの他方のソース/ドレイン領域は、駆動トランジスタTDrvの一方のソース/ドレイン領域に接続されている。また、発光制御トランジスタTEL_Cのオン/オフ動作は、発光制御トランジスタTEL_Cのゲート電極に接続された発光制御トランジスタ制御線CLEL_Cによって制御される。尚、電流供給部100は、有機EL素子10の発光部ELPに電流を供給し、発光部ELPの発光を制御するために設けられている。また、発光制御トランジスタ制御線CLEL_Cは、発光制御トランジスタ制御回路103に接続されている。
【0078】
[駆動トランジスタTDrv]
駆動トランジスタTDrvの一方のソース/ドレイン領域は、上述のとおり、発光制御トランジスタTEL_Cの他方のソース/ドレイン領域に接続されている。即ち、駆動トランジスタTDrvの一方のソース/ドレイン領域は、発光制御トランジスタTEL_Cを介して、電流供給部100に接続されている。一方、駆動トランジスタTDrvの他方のソース/ドレイン領域は、
(1)発光部ELPのアノード電極、
(2)第2ノード初期化トランジスタTND2の他方のソース/ドレイン領域、及び、
(3)コンデンサ部C1の一方の電極、
に接続されており、第2ノードND2を構成する。また、駆動トランジスタTDrvのゲート電極は、
(1)映像信号書込みトランジスタTSigの他方のソース/ドレイン領域、
(2)第1ノード初期化トランジスタTND1の他方のソース/ドレイン領域、及び、
(3)コンデンサ部C1の他方の電極、
に接続されており、第1ノードND1を構成する。
【0079】
ここで、駆動トランジスタTDrvは、有機EL素子10の発光状態においては、以下の式(1)に従ってドレイン電流Idsを流すように駆動される。有機EL素子10の発光状態においては、駆動トランジスタTDrvの一方のソース/ドレイン領域はドレイン領域として働き、他方のソース/ドレイン領域はソース領域として働く。説明の便宜のため、以下の説明において、駆動トランジスタTDrvの一方のソース/ドレイン領域を単にドレイン領域と呼び、他方のソース/ドレイン領域を単にソース領域と呼ぶ場合がある。尚、
μ :実効的な移動度
L :チャネル長
W :チャネル幅
Vgs:ゲート電極とソース領域との間の電位差
Vth:閾値電圧
Cox:(ゲート絶縁層の比誘電率)×(真空の誘電率)/(ゲート絶縁層の厚さ)
k≡(1/2)・(W/L)・Cox
とする。
【0080】
Ids=k・μ・(Vgs−Vth)2 (1)
【0081】
このドレイン電流Idsが有機EL素子10の発光部ELPを流れることで、有機EL素子10の発光部ELPが発光する。更には、このドレイン電流Idsの値の大小によって、有機EL素子10の発光部ELPにおける発光状態(輝度)が制御される。
【0082】
[映像信号書込みトランジスタTSig]
映像信号書込みトランジスタTSigの他方のソース/ドレイン領域は、上述のとおり、駆動トランジスタTDrvのゲート電極に接続されている。一方、映像信号書込みトランジスタTSigの一方のソース/ドレイン領域は、データ線DTLに接続されている。そして、映像信号出力回路102からデータ線DTLを介して、発光部ELPにおける輝度を制御するための映像信号VSigが、一方のソース/ドレイン領域に供給される。尚、データ線DTLを介して、VSig以外の種々の信号・電圧(プリチャージ駆動のための信号や各種の基準電圧等)が、一方のソース/ドレイン領域に供給されてもよい。また、映像信号書込みトランジスタTSigのオン/オフ動作は、映像信号書込みトランジスタTSigのゲート電極に接続された走査線SCLによって制御される。
【0083】
[第1ノード初期化トランジスタTND1]
第1ノード初期化トランジスタTND1の他方のソース/ドレイン領域は、上述のとおり、駆動トランジスタTDrvのゲート電極に接続されている。一方、第1ノード初期化トランジスタTND1の一方のソース/ドレイン領域には、第1ノードND1の電位(即ち、駆動トランジスタTDrvのゲート電極の電位)を初期化するための電圧VOfsが供給される。また、第1ノード初期化トランジスタTND1のオン/オフ動作は、第1ノード初期化トランジスタTND1のゲート電極に接続された第1ノード初期化トランジスタ制御線AZND1によって制御される。第1ノード初期化トランジスタ制御線AZND1は、第1ノード初期化トランジスタ制御回路104に接続されている。
【0084】
[第2ノード初期化トランジスタTND2]
第2ノード初期化トランジスタTND2の他方のソース/ドレイン領域は、上述のとおり、駆動トランジスタTDrvのソース領域に接続されている。一方、第2ノード初期化トランジスタTND2の一方のソース/ドレイン領域には、第2ノードND2の電位(即ち、駆動トランジスタTDrvのソース領域の電位)を初期化するための電圧VSSが供給される。また、第2ノード初期化トランジスタTND2のオン/オフ動作は、第2ノード初期化トランジスタTND2のゲート電極に接続された第2ノード初期化トランジスタ制御線AZND2によって制御される。第2ノード初期化トランジスタ制御線AZND2は、第2ノード初期化トランジスタ制御回路105に接続されている。
【0085】
[発光部ELP]
発光部ELPのアノード電極は、上述のとおり、駆動トランジスタTDrvのソース領域に接続されている。一方、発光部ELPのカソード電極には、電圧VCatが印加される。発光部ELPの寄生容量を符号CELで表す。また、発光部ELPの発光に必要とされる閾値電圧をVth-ELとする。即ち、発光部ELPのアノード電極とカソード電極との間にVth-EL以上の電圧が印加されると、発光部ELPは発光する。
【0086】
以下の説明において、電圧あるいは電位の値を以下のとおりとするが、これは、あくまでも説明のための値であり、これらの値に限定されるものではない。
【0087】
VSig :発光部ELPにおける輝度を制御するための映像信号
・・・0ボルト〜10ボルト
VCC :発光部ELPの発光を制御するための電流供給部の電圧
・・・20ボルト
VOfs :駆動トランジスタTDrvのゲート電極の電位(第1ノードND1の電位)を初期化するための電圧
・・・0ボルト
VSS :駆動トランジスタTDrvのソース領域の電位(第2ノードND2の電位)を初期化するための電圧
・・・−10ボルト
Vth :駆動トランジスタTDrvの閾値電圧
・・・3ボルト
VCat :発光部ELPのカソード電極に印加される電圧
・・・0ボルト
Vth-EL:発光部ELPの閾値電圧
・・・3ボルト
V1_ON:発光制御トランジスタをオン状態とするための第1の電圧
・・・18ボルト
V2_OFF:発光制御トランジスタをオフ状態とするための第2の電圧
・・・−10ボルト
V3_ON:発光制御トランジスタをオン状態とするための第3の電圧
・・・30ボルト
【0088】
以下、5Tr/1C駆動回路の動作説明を行う。尚、上述したように、各種の処理(閾値電圧キャンセル処理、書込み処理、移動度補正処理)が全て完了した後、直ちに発光状態が始まるものとして説明するが、これに限るものではない。後述する4Tr/1C駆動回路、3Tr/1C駆動回路の説明においても同様である。
【0089】
尚、従来の駆動方法における動作は、実質的に[期間−TP(5)2]において、工程(b−1)で第1の電圧V1_ONの代わりに第3の電圧V3_ONを印加する動作となる点が相違する他、同様の動作となる。
【0090】
[期間−TP(5)-1](図4、図6の(A)参照)
この[期間−TP(5)-1]は、例えば、前の表示フレームにおける動作であり、前回の各種の処理完了後に第(n,m)番目の有機EL素子10が発光状態にある期間である。即ち、第(n,m)番目の副画素を構成する有機EL素子10における発光部ELPには、後述する式(5)に基づくドレイン電流I’dsが流れており、第(n,m)番目の副画素を構成する有機EL素子10の輝度は、係るドレイン電流I’dsに対応した値である。ここで、映像信号書込みトランジスタTSig、第1ノード初期化トランジスタTND1及び第2ノード初期化トランジスタTND2はオフ状態であり、発光制御トランジスタTEL_C及び駆動トランジスタTDrvはオン状態である。第(n,m)番目の有機EL素子10の発光状態は、第(m+m’)行目に配列された有機EL素子10の水平走査期間の開始直前まで継続される。
【0091】
図4に示す[期間−TP(5)0]〜[期間−TP(5)4]は、前回の各種の処理完了後の発光状態が終了した後から、次の書込み処理が行われる直前までの動作期間である。即ち、この[期間−TP(5)0]〜[期間−TP(5)4]は、例えば、前の表示フレームにおける第(m+m’)番目の水平走査期間の始期から、現表示フレームにおける第(m−1)番目の水平走査期間の終期までの或る時間長さの期間である。尚、[期間−TP(5)1]〜[期間−TP(5)4]を、現表示フレームにおける第m番目の水平走査期間内に含む構成とすることもできる。
【0092】
そして、この[期間−TP(5)0]〜[期間−TP(5)4]において、第(n,m)番目の有機EL素子10は非発光状態にある。即ち、[期間−TP(5)0]〜[期間−TP(5)1]、[期間−TP(5)3]〜[期間−TP(5)4]においては、発光制御トランジスタTEL_Cはオフ状態であるので、有機EL素子10は発光しない。尚、[期間−TP(5)2]においては、発光制御トランジスタTEL_Cはオン状態となる。しかし、この期間においては後述する閾値電圧キャンセル処理が行われている。閾値電圧キャンセル処理の説明において詳しく述べるが、後述する式(2)を満たすことを前提とすれば、有機EL素子10が発光することはない。
【0093】
以下、[期間−TP(5)0]〜[期間−TP(5)4]の各期間について、先ず、説明する。尚、[期間−TP(5)1]の始期や、[期間−TP(5)1]〜[期間−TP(5)4]の各期間の長さは、有機EL表示装置の設計に応じて適宜設定すればよい。
【0094】
[期間−TP(5)0]
上述したように、この[期間−TP(5)0]において、第(n,m)番目の有機EL素子10は、非発光状態にある。映像信号書込みトランジスタTSig、第1ノード初期化トランジスタTND1、第2ノード初期化トランジスタTND2はオフ状態である。また、[期間−TP(5)-1]から[期間−TP(5)0]に移る時点で、発光制御トランジスタTEL_Cがオフ状態となるが故に、第2ノードND2(駆動トランジスタTDrvのソース領域あるいは発光部ELPのアノード電極)の電位は、(Vth-EL+VCat)まで低下し、発光部ELPは非発光状態となる。また、第2ノードND2の電位低下に倣うように、浮遊状態の第1ノードND1(駆動トランジスタTDrvのゲート電極)の電位も低下する。
【0095】
[期間−TP(5)1](図4、図5、図6の(B)及び(C)参照)
この期間内に、上記の工程(a)、即ち、上述した前処理を行う。以下、詳細に説明する。
【0096】
即ち、[期間−TP(5)1]の開始時、第1ノード初期化トランジスタ制御回路104及び第2ノード初期化トランジスタ制御回路105の動作に基づき、第1ノード初期化トランジスタ制御線AZND1及び第2ノード初期化トランジスタ制御線AZND2をハイレベルとし、第1ノード初期化トランジスタTND1及び第2ノード初期化トランジスタTND2をオン状態とする。尚、第1ノード初期化トランジスタTND1のオン状態及び第2ノード初期化トランジスタTND2を同時にオン状態としてもよいし、第1ノード初期化トランジスタTND1を先にオン状態としてもよいし、第2ノード初期化トランジスタTND2を先にオン状態としてもよい。そして、オン状態とされた第1ノード初期化トランジスタTND1を介して、第1ノード初期化電圧供給線PSND1から第1ノードND1に第1ノード初期化電圧を印加し、オン状態とされた第2ノード初期化トランジスタTND2を介して、第2ノード初期化電圧供給線PSND2から第2ノードND2に第2ノード初期化電圧を印加する。
【0097】
その結果、第1ノードND1の電位はVOfs(0ボルト)となる。一方、第2ノードND2の電位は、VSS(−10ボルト)となる。第1ノードND1と第2ノードND2との間の電位差は10ボルトであり、駆動トランジスタTDrvの閾値電圧Vthは3ボルトであるので、駆動トランジスタTDrvはオン状態となる。尚、第2ノードND2と発光部ELPに備えられたカソード電極との間の電位差は−10ボルトであり、発光部ELPの閾値電圧Vth-ELを越えない。
【0098】
以上の処理により、駆動トランジスタTDrvのゲート電極とソース領域との間の電位差がVth以上となる。駆動トランジスタTDrvはオン状態である。
【0099】
この[期間−TP(5)1]の完了以前において、第2ノード初期化トランジスタ制御回路105の動作に基づき、第2ノード初期化トランジスタ制御線AZND2をローレベルとすることによって、第2ノード初期化トランジスタTND2をオフ状態とする。
【0100】
[期間−TP(5)2]〜[期間−TP(5)3](図4、図5、図6の(D)、図7の(A)参照)
この期間に、上記の工程(b)、より具体的には、上述した工程(b−1)、工程(b−2)から構成された閾値電圧キャンセル処理を行う。以下、詳細に説明する。
【0101】
先ず、上述した工程(b−1)を行う。即ち、第1ノード初期化トランジスタTND1のオン状態を維持したまま、[期間−TP(5)2]の始期において発光制御トランジスタ制御回路103の動作に基づき、発光制御トランジスタTEL_Cをオン状態とするための第1の電圧V1_ONを、発光制御トランジスタ制御線CLEL_Cを介して発光制御トランジスタTEL_Cのゲート電極に印加する。そして、発光制御トランジスタTEL_Cをオン状態とする。その結果、第1ノードND1の電位は変化しないが(VOfs=0ボルトを維持)、第1ノードND1の電位から駆動トランジスタTDrvの閾値電圧Vthを減じた電位に向かって、第2ノードND2の電位は変化する。即ち、浮遊状態の第2ノードND2の電位が上昇する。そして、駆動トランジスタTDrvのゲート電極とソース領域との間の電位差がVthに達すると、駆動トランジスタTDrvがオフ状態となる。具体的には、浮遊状態の第2ノードND2の電位が(VOfs−Vth=−3ボルト>VSS)に近づき、最終的に(VOfs−Vth)となる。ここで、以下の式(2)が保証されていれば、云い換えれば、式(2)を満足するように電位を選択、決定しておけば、発光部ELPが発光することはない。
【0102】
(VOfs−Vth)<(Vth-EL+VCat) (2)
【0103】
次いで、上述した工程(b−2)を行う。即ち、第1ノード初期化トランジスタTND1のオン状態を維持したまま、[期間−TP(5)3]の始期において、発光制御トランジスタ制御回路103の動作に基づき、発光制御トランジスタTEL_Cをオフ状態とするための第2の電圧V2_OFFを、発光制御トランジスタ制御線CLEL_Cを介して発光制御トランジスタTEL_Cのゲート電極に印加する。その結果、発光制御トランジスタTEL_Cはオフ状態となる。第1ノードND1の電位は変化せず(VOfs=0ボルトを維持)、浮遊状態の第2ノードND2の電位も略(VOfs−Vth=−3ボルト)を保持する。
【0104】
以上説明したように、工程(b−1)、工程(b−2)により、第2ノードND2の電位は、最終的に、(VOfs−Vth)となる。即ち、駆動トランジスタTDrvの閾値電圧Vth、及び、駆動トランジスタTDrvのゲート電極を初期化するための電圧VOfsのみに依存して、第2ノードND2の電位は決定される。そして、発光部ELPの閾値電圧Vth-ELとは無関係である。
【0105】
[期間−TP(5)4](図7の(B)参照)
次いで、第1ノード初期化トランジスタ制御回路104の動作に基づき第1ノード初期化トランジスタ制御線AZND1をローレベルとすることによって、第1ノード初期化トランジスタTND1をオフ状態とする。第1ノードND1及び第2ノードND2の電位は、実質上、変化しない。実際には、寄生容量等の静電結合により電位変化が生じ得るが、通常、これらは無視することができる。
【0106】
次いで、[期間−TP(5)5]〜[期間−TP(5)7]の各期間について説明する。尚、後述するように、[期間−TP(5)5]において書込み処理が行われ、[期間−TP(5)6]において移動度補正処理が行われる。上述したように、これらの処理は、第m番目の水平走査期間内に行われる必要がある。説明の便宜のため、[期間−TP(5)5]の始期と[期間−TP(5)6]の終期とは、それぞれ、第m番目の水平走査期間の始期と終期とに一致するものとして説明する。
【0107】
[期間−TP(5)5](図4、及び、図7の(C)参照)
この期間内に、上記の工程(c)、即ち、上述した書込み処理を、以下のように行う。具体的には、第1ノード初期化トランジスタTND1、第2ノード初期化トランジスタTND2、及び、発光制御トランジスタTEL_Cのオフ状態を維持したまま、映像信号出力回路102の動作に基づき、データ線DTLの電位を、発光部ELPにおける輝度を制御するための映像信号VSigとし、次いで、走査回路101の動作に基づき走査線SCLをハイレベルとすることによって、映像信号書込みトランジスタTSigをオン状態とする。その結果、第1ノードND1の電位は、VSigへと上昇する。
【0108】
ここで、コンデンサ部C1の容量は値c1であり、発光部ELPの寄生容量CELの容量は値cELである。そして、駆動トランジスタTDrvのゲート電極とソース領域との間の寄生容量の値をcgsとする。駆動トランジスタTDrvのゲート電極の電位がVOfsからVSig(>VOfs)に変化したとき、コンデンサ部C1の両端の電位(第1ノードND1及び第2ノードND2の電位)は、原則として、変化する。即ち、駆動トランジスタTDrvのゲート電極の電位(=第1ノードND1の電位)の変化分(VSig−VOfs)に基づく電荷が、コンデンサ部C1、発光部ELPの寄生容量CEL、駆動トランジスタTDrvのゲート電極とソース領域との間の寄生容量に振り分けられる。然るに、値cELが、値c1及び値cgsと比較して十分に大きな値であれば、駆動トランジスタTDrvのゲート電極の電位の変化分(VSig−VOfs)に基づく駆動トランジスタTDrvのソース領域(第2ノードND2)の電位の変化は小さい。そして、一般に、発光部ELPの寄生容量CELの容量値cELは、コンデンサ部C1の容量値c1及び駆動トランジスタTDRVの寄生容量の値cgsよりも大きい。そこで、説明の便宜のため、特段の必要がある場合を除き、第1ノードND1の電位変化により生ずる第2ノードND2の電位変化は考慮せずに説明を行う。他の駆動回路においても同様である。尚、図4に示した駆動のタイミングチャートも、第1ノードND1の電位変化により生ずる第2ノードND2の電位変化を考慮せずに示した。駆動トランジスタTDrvのゲート電極(第1ノードND1)の電位をVg、駆動トランジスタTDrvのソース領域(第2ノードND2)の電位をVsとしたとき、Vgの値、Vsの値は以下のとおりとなる。それ故、第1ノードND1と第2ノードND2の電位差、即ち、駆動トランジスタTDrvのゲート電極とソース領域との間の電位差Vgsは、以下の式(3)で表すことができる。
【0109】
Vg =VSig
Vs ≒VOfs−Vth
Vgs≒VSig−(VOfs−Vth) (3)
【0110】
即ち、駆動トランジスタTDrvに対する書込み処理において得られたVgsは、発光部ELPにおける輝度を制御するための映像信号VSig、駆動トランジスタTDrvの閾値電圧Vth、及び、駆動トランジスタTDrvのゲート電極を初期化するための電圧VOfsのみに依存している。そして、発光部ELPの閾値電圧Vth-ELとは無関係である。
【0111】
[期間−TP(5)6](図7の(D)参照)
その後、駆動トランジスタTDrvの移動度μの大小に基づく駆動トランジスタTDrvのソース領域(第2ノードND2)の電位の補正(移動度補正処理)を行う。
【0112】
一般に、駆動トランジスタTDrvをポリシリコン薄膜トランジスタ等から作製した場合、トランジスタ間で移動度μにばらつきが生じることは避け難い。従って、移動度μに差異がある複数の駆動トランジスタTDrvのゲート電極に同じ値の映像信号VSigを印加したとしても、移動度μの大きい駆動トランジスタTDrvを流れるドレイン電流Idsと、移動度μの小さい駆動トランジスタTDrvを流れるドレイン電流Idsとの間に、差異が生じてしまう。そして、このような差異が生じると、有機EL表示装置の画面の均一性(ユニフォーミティ)が損なわれてしまう。
【0113】
従って、具体的には、駆動トランジスタTDrvのオン状態を維持したまま、発光制御トランジスタ制御回路103の動作に基づき、発光制御トランジスタTEL_Cをオン状態とするための第3の電圧V3_ONを、発光制御トランジスタ制御線CLEL_Cを介して発光制御トランジスタTEL_Cのゲート電極に印加する。次いで、所定の時間(t0)が経過した後、走査回路101の動作に基づき走査線SCLをローレベルとすることによって、映像信号書込みトランジスタTSigをオフ状態とし、第1ノードND1(駆動トランジスタTDrvのゲート電極)を浮遊状態とする。そして、以上の結果、駆動トランジスタTDrvの移動度μの値が大きい場合、駆動トランジスタTDrvのソース領域における電位の上昇量ΔV(電位補正値)は大きくなり、駆動トランジスタTDrvの移動度μの値が小さい場合、駆動トランジスタTDrvのソース領域における電位の上昇量ΔV(電位補正値)は小さくなる。ここで、駆動トランジスタTDrvのゲート電極とソース領域との間の電位差Vgsは、式(3)から以下の式(4)のように変形される。
【0114】
Vgs≒VSig−(VOfs−Vth)−ΔV (4)
【0115】
尚、移動度補正処理を実行するための所定の時間([期間−TP(5)6]の全時間t0)は、有機EL表示装置の設計の際、設計値として予め決定しておけばよい。また、このときの駆動トランジスタTDrvのソース領域における電位(VOfs−Vth+ΔV)が以下の式(2’)を満足するように、[期間−TP(5)6]の全時間t0は決定されている。そして、これによって、[期間−TP(5)6]において、発光部ELPが発光することはない。更には、この移動度補正処理によって、係数k(≡(1/2)・(W/L)・Cox)のばらつきの補正も同時に行われる。
【0116】
(VOfs−Vth+ΔV)<(Vth-EL+VCat) (2’)
【0117】
[期間−TP(5)7](図4、図5、図7の(E)参照)
以上の操作によって、閾値電圧キャンセル処理、書込み処理、移動度補正処理が完了する。その後、この期間内に、上記の工程(d)を以下のように行う。即ち、走査回路101の動作に基づき走査線SCLをローレベルとし、映像信号書込みトランジスタTSigをオフ状態とし、第1ノードND1、即ち、駆動トランジスタTDrvのゲート電極を浮遊状態とする。そして、発光制御トランジスタTEL_Cをオン状態とするための第3の電圧V3_ONを、発光制御トランジスタ制御線CLEL_Cを介して発光制御トランジスタTEL_Cのゲート電極に印加した状態を維持し、発光制御トランジスタTEL_Cのドレイン領域は、発光部ELPの発光を制御するための電流供給部100(電圧VCC、例えば20ボルト)に接続された状態に保つ。従って、以上の結果として、第2ノードND2の電位は上昇する。
【0118】
ここで、上述したとおり、駆動トランジスタTDrvのゲート電極は浮遊状態にあり、しかも、コンデンサ部C1が存在するが故に、所謂ブートストラップ回路におけると同様の現象が駆動トランジスタTDrvのゲート電極に生じ、第1ノードND1の電位も上昇する。その結果、駆動トランジスタTDrvのゲート電極とソース領域との間の電位差Vgsは、式(4)の値を保持する。
【0119】
また、第2ノードND2の電位が上昇し、(Vth-EL+VCat)を越えるので、発光部ELPは発光を開始する。このとき、発光部ELPを流れる電流は、駆動トランジスタTDrvのドレイン領域からソース領域へと流れるドレイン電流Idsであるので、式(1)で表すことができる。ここで、式(1)と式(4)から、式(1)は、以下の式(5)にように変形することができる。
【0120】
Ids=k・μ・(VSig−VOfs−ΔV)2 (5)
【0121】
従って、発光部ELPを流れる電流Idsは、例えば、VOfsを0ボルトに設定したとした場合、発光部ELPにおける輝度を制御するための映像信号VSigの値から、駆動トランジスタTDrvの移動度μに起因した第2ノードND2(駆動トランジスタTDrvのソース領域)における電位補正値ΔVの値を減じた値の2乗に比例する。云い換えれば、発光部ELPを流れる電流Idsは、発光部ELPの閾値電圧Vth-EL、及び、駆動トランジスタTDrvの閾値電圧Vthには依存しない。即ち、発光部ELPの発光量(輝度)は、発光部ELPの閾値電圧Vth-ELの影響、及び、駆動トランジスタTDrvの閾値電圧Vthの影響を受けない。そして、第(n,m)番目の有機EL素子10の輝度は、係る電流Idsに対応した値である。
【0122】
しかも、移動度μの大きな駆動トランジスタTDrvほど、電位補正値ΔVが大きくなるので、式(4)の左辺のVgsの値が小さくなる。従って、式(5)において、移動度μの値が大きくとも、(VSig−VOfs−ΔV)2の値が小さくなる結果、ドレイン電流Idsを補正することができる。即ち、移動度μの異なる駆動トランジスタTDrvにおいても、映像信号VSigの値が同じであれば、ドレイン電流Idsが略同じとなる結果、発光部ELPを流れ、発光部ELPの輝度を制御する電流Idsが均一化される。即ち、移動度μのばらつき(更には、kのばらつき)に起因する発光部の輝度のばらつきを補正することができる。
【0123】
発光部ELPの発光状態を第(m+m’−1)番目の水平走査期間まで継続する。この時点は、[期間−TP(5)-1]の終わりに相当する。
【0124】
以上によって、有機EL素子10[第(n,m)番目の副画素(有機EL素子10)]の発光の動作が完了する。
【0125】
次に、4Tr/1C駆動回路に関する説明を行う。
【0126】
[4Tr/1C駆動回路]
4Tr/1C駆動回路の等価回路図を図8に示し、有機EL表示装置の概念図を図9を示し、駆動のタイミングチャートを模式的に図10に示し、各トランジスタのオン/オフ状態等を模式的に図11の(A)〜(D)及び図12の(A)〜(D)に示す。
【0127】
この4Tr/1C駆動回路においては、前述した5Tr/1C駆動回路から、第1ノード初期化トランジスタTND1が省略されている。即ち、この4Tr/1C駆動回路は、映像信号書込みトランジスタTSig、駆動トランジスタTDrv、発光制御トランジスタTEL_C、第2ノード初期化トランジスタTND2の4つのトランジスタから構成され、更には、1つのコンデンサ部C1から構成されている。
【0128】
[発光制御トランジスタTEL_C]
発光制御トランジスタTEL_Cの構成は、5Tr/1C駆動回路において説明した発光制御トランジスタTEL_Cの構成と同じであるので、詳細な説明は省略する。
【0129】
[駆動トランジスタTDrv]
駆動トランジスタTDrvの構成は、5Tr/1C駆動回路において説明した駆動トランジスタTDrvの構成と同じであるので、詳細な説明は省略する。
【0130】
[第2ノード初期化トランジスタTND2]
第2ノード初期化トランジスタTND2の構成は、5Tr/1C駆動回路において説明した第2ノード初期化トランジスタTND2の構成と同じであるので、詳細な説明は省略する。
【0131】
[映像信号書込みトランジスタTSig]
映像信号書込みトランジスタTSigの構成は、5Tr/1C駆動回路において説明した映像信号書込みトランジスタTSigの構成と同じであるので、詳細な説明は省略する。但し、映像信号書込みトランジスタTSigの一方のソース/ドレイン領域は、データ線DTLに接続されているが、映像信号出力回路102から、発光部ELPにおける輝度を制御するための映像信号VSigだけでなく、駆動トランジスタTDrvのゲート電極を初期化するための電圧VOfsも供給される。この点が、5Tr/1C駆動回路において説明した映像信号書込みトランジスタTSigの動作と相違している。尚、映像信号出力回路102から、データ線DTLを介して、VSigやVOfs以外の信号・電圧(例えば、プリチャージ駆動のための信号)が、一方のソース/ドレイン領域に供給されてもよい。
【0132】
[発光部ELP]
発光部ELPの構成は、5Tr/1C駆動回路において説明した発光部ELPの構成と同じであるので、詳細な説明は省略する。
【0133】
以下、4Tr/1C駆動回路の動作説明を行う。
【0134】
[期間−TP(4)-1](図10、及び、図11の(A)参照)
この[期間−TP(4)-1]は、例えば、前の表示フレームにおける動作であり、5Tr/1C駆動回路において説明した[期間−TP(5)-1]と同じ動作である。
【0135】
図10に示す[期間−TP(4)0]〜[期間−TP(4)4]は、図4に示す[期間−TP(5)0]〜[期間−TP(5)4]に対応する期間であり、次の書込み処理が行われる直前までの動作期間である。そして、5Tr/1C駆動回路と同様に、[期間−TP(4)0]〜[期間−TP(4)4]において、第(n,m)番目の有機EL素子10は非発光状態にある。但し、4Tr/1C駆動回路の動作においては、図10に示す[期間−TP(4)5]〜[期間−TP(4)6]の他、[期間−TP(4)2]〜[期間−TP(4)4]も第m番目の水平走査期間に包含される点が、5Tr/1C駆動回路の動作とは異なる。尚、説明の便宜のため、[期間−TP(4)2]の始期、及び、[期間−TP(4)6]の終期は、それぞれ、第m番目の水平走査期間の始期、及び、終期に一致するものとして説明する。
【0136】
以下、[期間−TP(4)0]〜[期間−TP(4)4]の各期間について、説明する。尚、5Tr/1C駆動回路において説明したと同様に、[期間−TP(4)1]の始期や、[期間−TP(4)1]〜[期間−TP(4)4]の各期間の長さは、有機EL表示装置の設計に応じて適宜設定すればよい。
【0137】
[期間−TP(4)0]
この[期間−TP(4)0]は、例えば、前の表示フレームから現表示フレームにおける動作であり、5Tr/1C駆動回路において説明した[期間−TP(5)0]と、実質的に同じ動作である。
【0138】
[期間−TP(4)1]〜[期間−TP(4)2](図11の(B)及び(C)参照)
この期間に、上記の工程(a)、即ち、上述した前処理を行う。以下、詳細に説明する。
【0139】
[期間−TP(4)1](図11の(B)参照)
この[期間−TP(4)1]は、5Tr/1C駆動回路において説明した[期間−TP(5)1]に相当する。[期間−TP(4)1]の開始時、第2ノード初期化トランジスタ制御回路105の動作に基づき第2ノード初期化トランジスタ制御線AZND2をハイレベルとすることによって、第2ノード初期化トランジスタTND2をオン状態とする。その結果、第2ノードND2の電位は、VSS(例えば、−10ボルト)となる。また、第2ノードND2の電位低下に倣うように、浮遊状態の第1ノードND1(駆動トランジスタTDrvのゲート電極)の電位も低下する。尚、[期間−TP(4)1]における第1ノードND1の電位は、[期間−TP(4)-1]における第1ノードND1の電位(前フレームのVSigの値に応じて定まる)により左右されるので、一定の値をとるものではない。
【0140】
[期間−TP(4)2](図11の(C)参照)
その後、映像信号出力回路102の動作に基づきデータ線DTLの電位をVOfsとし、走査回路101の動作に基づき走査線SCLをハイレベルとすることによって、映像信号書込みトランジスタTSigをオン状態とする。その結果、第1ノードND1の電位は、VOfs(例えば、0ボルト)となる。第2ノードND2の電位はVSS(例えば、−10ボルト)を保持する。その後、第2ノード初期化トランジスタ制御回路105の動作に基づき第2ノード初期化トランジスタ制御線AZND2をローレベルとすることによって、第2ノード初期化トランジスタTND2をオフ状態とする。
【0141】
尚、[期間−TP(4)1]の開始と同時に、あるいは、[期間−TP(4)1]の途中で、映像信号書込みトランジスタTSigをオン状態としてもよい。
【0142】
以上の処理により、駆動トランジスタTDrvのゲート電極とソース領域との間の電位差がVth以上となり、駆動トランジスタTDrvはオン状態となる。
【0143】
[期間−TP(4)3]〜[期間−TP(4)4](図11の(D)、図12の(A)参照)
この期間に、上記の工程(b)、より具体的には、上述した工程(b−1)、工程(b−2)から構成された閾値電圧キャンセル処理を行う。以下、詳細に説明する。
【0144】
[期間−TP(4)3](図11の(D)参照)
先ず、上述した工程(b−1)を行う。即ち、映像信号書込みトランジスタTSigのオン状態を維持したまま、[期間−TP(4)3]の始期において発光制御トランジスタ制御回路103の動作に基づき、発光制御トランジスタTEL_Cをオン状態とするための第1の電圧V1_ONを、発光制御トランジスタ制御線CLEL_Cを介して発光制御トランジスタTEL_Cのゲート電極に印加する。そして、発光制御トランジスタTEL_Cをオン状態とする。その結果、第1ノードND1の電位は変化しないが(VOfs=0ボルトを維持)、第1ノードND1の電位から駆動トランジスタTDrvの閾値電圧Vthを減じた電位に向かって、第2ノードND2の電位は変化する。即ち、浮遊状態の第2ノードND2の電位が上昇する。そして、駆動トランジスタTDrvのゲート電極とソース領域との間の電位差がVthに達すると、駆動トランジスタTDrvがオフ状態となる。具体的には、浮遊状態の第2ノードND2の電位が(VOfs−Vth=−3ボルト)に近づき、最終的に(VOfs−Vth)となる。ここで、上述した式(2)が保証されていれば、云い換えれば、式(2)を満足するように電位を選択、決定しておけば、発光部ELPが発光することはない。
【0145】
[期間−TP(4)4](図12の(A)参照)
次いで、上述した工程(b−2)を行う。即ち、映像信号書込みトランジスタTSigのオン状態を維持したまま、[期間−TP(4)4]の始期において、発光制御トランジスタ制御回路103の動作に基づき、発光制御トランジスタTEL_Cをオフ状態とするための第2の電圧V2_OFFを、発光制御トランジスタ制御線CLEL_Cを介して発光制御トランジスタTEL_Cのゲート電極に印加する。その結果、発光制御トランジスタTEL_Cはオフ状態となる。第1ノードND1の電位は変化せず(VOfs=0ボルトを維持)、浮遊状態の第2ノードND2の電位も略(VOfs−Vth=−3ボルト)を保持する。
【0146】
以上説明したように、工程(b−1)、工程(b−2)により、第2ノードND2の電位は、最終的に、(VOfs−Vth)となる。即ち、駆動トランジスタTDrvの閾値電圧Vth、及び、駆動トランジスタTDrvのゲート電極を初期化するための電圧VOfsのみに依存して、第2ノードND2の電位は決定される。そして、発光部ELPの閾値電圧Vth-ELとは無関係である。
【0147】
次いで、[期間−TP(4)5]〜[期間−TP(4)7]の各期間について説明する。これらの期間は、5Tr/1C駆動回路において説明した[期間−TP(5)5]〜[期間−TP(5)7]と、実質的に同じ動作である。
【0148】
[期間−TP(4)5](図12の(B)参照)
この期間内に、上記の工程(c)、即ち、上述した書込み処理を行う。具体的には、映像信号書込みトランジスタTSigのオン状態を維持し、第2ノード初期化トランジスタTND2、及び、発光制御トランジスタTEL_Cのオフ状態を維持したまま、映像信号出力回路102の動作に基づきデータ線DTLの電位を、VOfsから、発光部ELPにおける輝度を制御するための映像信号VSigに切り替える。その結果、第1ノードND1の電位は、VSigへと上昇する。尚、映像信号書込みトランジスタTSigを、一旦、オフ状態とし、映像信号書込みトランジスタTSig、第2ノード初期化トランジスタTND2、及び、発光制御トランジスタTEL_Cのオフ状態を維持したまま、映像信号出力回路102の動作に基づきデータ線DTLの電位を、発光部ELPにおける輝度を制御するための映像信号VSigに変更し、その後、第2ノード初期化トランジスタTND2、及び、発光制御トランジスタTEL_Cのオフ状態を維持したまま、走査線SCLをハイレベルとすることによって、映像信号書込みトランジスタTSigをオン状態としてもよい。
【0149】
これによって、5Tr/1C駆動回路において説明したと同様に、第1ノードND1と第2ノードND2の電位差、即ち、駆動トランジスタTDrvのゲート電極とソース領域との間の電位差Vgsとして、式(3)で説明した値を得ることができる。
【0150】
即ち、4Tr/1C駆動回路においても、駆動トランジスタTDrvに対する書込み処理において得られたVgsは、発光部ELPにおける輝度を制御するための映像信号VSig、駆動トランジスタTDrvの閾値電圧Vth、及び、駆動トランジスタTDrvのゲート電極を初期化するための電圧VOfsのみに依存している。そして、発光部ELPの閾値電圧Vth-ELとは無関係である。
【0151】
[期間−TP(4)6](図12の(C)参照)
その後、駆動トランジスタTDrvの移動度μの大小に基づく駆動トランジスタTDrvのソース領域(第2ノードND2)の電位の補正(移動度補正処理)を行う。具体的には、5Tr/1C駆動回路において説明した[期間−TP(5)6]と同じ動作を行えばよい。尚、移動度補正処理を実行するための所定の時間([期間−TP(4)6]の全時間t0)は、有機EL表示装置の設計の際、設計値として予め決定しておけばよい。
【0152】
[期間−TP(4)7](図12の(D)参照)
以上の操作によって、閾値電圧キャンセル処理、書込み処理、移動度補正処理が完了する。その後、この期間内に、上記の工程(d)を行う。即ち、5Tr/1C駆動回路において説明した[期間−TP(5)7]と同じ処理がなされ、第2ノードND2の電位が上昇し、(Vth-EL+VCat)を越えるので、発光部ELPは発光を開始する。このとき、発光部ELPを流れる電流は、前述した式(5)にて得ることができるので、発光部ELPを流れる電流Idsは、発光部ELPの閾値電圧Vth-EL、及び、駆動トランジスタTDrvの閾値電圧Vthには依存しない。即ち、発光部ELPの発光量(輝度)は、発光部ELPの閾値電圧Vth-ELの影響、及び、駆動トランジスタTDrvの閾値電圧Vthの影響を受けない。加えて、駆動トランジスタTDrvにおける移動度μのばらつきに起因したドレイン電流Idsのばらつき発生を抑制することができる。
【0153】
そして、発光部ELPの発光状態を第(m+m’−1)番目の水平走査期間まで継続する。この時点は、[期間−TP(4)-1]の終わりに相当する。
【0154】
以上によって、有機EL素子10[第(n,m)番目の副画素(有機EL素子10)]の発光の動作が完了する。
【0155】
次に、3Tr/1C駆動回路に関する説明を行う。
【0156】
[3Tr/1C駆動回路]
3Tr/1C駆動回路の等価回路図を図13に示し、有機EL表示装置の概念図を図14を示し、駆動のタイミングチャートを模式的に図15に示し、各トランジスタのオン/オフ状態等を模式的に図16の(A)〜(D)及び図17の(A)〜(E)に示す。
【0157】
この3Tr/1C駆動回路においては、前述した5Tr/1C駆動回路から、第1ノード初期化トランジスタTND1、及び、第2ノード初期化トランジスタTND2の2つのトランジスタが省略されている。即ち、この3Tr/1C駆動回路は、映像信号書込みトランジスタTSig、発光制御トランジスタTEL_C、及び、駆動トランジスタTDrvの3つのトランジスタから構成され、更には、1つのコンデンサ部C1から構成されている。
【0158】
[発光制御トランジスタTEL_C]
発光制御トランジスタTEL_Cの構成は、5Tr/1C駆動回路において説明した発光制御トランジスタTEL_Cの構成と同じであるので、詳細な説明は省略する。
【0159】
[駆動トランジスタTDrv]
駆動トランジスタTDrvの構成は、5Tr/1C駆動回路において説明した駆動トランジスタTDrvの構成と同じであるので、詳細な説明は省略する。
【0160】
[映像信号書込みトランジスタTSig]
映像信号書込みトランジスタTSigの構成は、5Tr/1C駆動回路において説明した映像信号書込みトランジスタTSigの構成と同じであるので、詳細な説明は省略する。但し、映像信号書込みトランジスタTSigの一方のソース/ドレイン領域は、データ線DTLに接続されているが、映像信号出力回路102から、発光部ELPにおける輝度を制御するための映像信号VSigだけでなく、駆動トランジスタTDrvのゲート電極を初期化するための電圧VOfs-H及び電圧VOfs-Lも供給される。この点が、5Tr/1C駆動回路において説明した映像信号書込みトランジスタTSigの動作と相違している。尚、映像信号出力回路102から、データ線DTLを介して、VSigやVOfs-H/VOfs-L以外の信号・電圧(例えば、プリチャージ駆動のための信号)が、一方のソース/ドレイン領域に供給されてもよい。電圧VOfs-H及び電圧VOfs-Lの値として、限定するものではないが、例えば、
VOfs-H=約30ボルト
VOfs-L=約0ボルト
を例示することができる。
【0161】
[CELとC1の値の関係]
後述するように、3Tr/1C駆動回路においては、データ線DTLを利用して第2ノードND2の電位を変化させる必要がある。上述した5Tr/1C駆動回路や4Tr/1Cの駆動回路においては、値cELは、値c1及び値cgsと比較して十分に大きな値であるとし、駆動トランジスタTDrvのゲート電極の電位の変化分(VSig−VOfs)に基づく駆動トランジスタTDrvのソース領域(第2ノードND2)の電位の変化を考慮せずに説明を行った。一方、3Tr/1C駆動回路においては、値c1を、設計上、他の駆動回路よりも大きい値(例えば、値c1を値cELの約1/4〜1/3程度)に設定する。従って、他の駆動回路よりも、第1ノードND1の電位変化により生ずる第2ノードND2の電位変化の程度は大きい。このため、3Tr/1Cの説明においては、第1ノードND1の電位変化により生ずる第2ノードND2の電位変化を考慮して説明を行う。尚、図15に示した駆動のタイミングチャートも、第1ノードND1の電位変化により生ずる第2ノードND2の電位変化を考慮して示した。
【0162】
[発光部ELP]
発光部ELPの構成は、5Tr/1C駆動回路において説明した発光部ELPの構成と同じであるので、詳細な説明は省略する。
【0163】
以下、3Tr/1C駆動回路の動作説明を行う。
【0164】
[期間−TP(3)-1](図16の(A)参照)
この[期間−TP(3)-1]は、例えば、前の表示フレームにおける動作であり、実質的に、5Tr/1C駆動回路において説明した[期間−TP(5)-1]と同じ動作である。
【0165】
図15に示す[期間−TP(3)0]〜[期間−TP(3)4]は、図4に示す[期間−TP(5)0]〜[期間−TP(5)4]に対応する期間であり、次の書込み処理が行われる直前までの動作期間である。そして、5Tr/1C駆動回路と同様に、[期間−TP(3)0]〜[期間−TP(3)4]において、第(n,m)番目の有機EL素子10は非発光状態にある。但し、3Tr/1C駆動回路の動作においては、図15に示すように、[期間−TP(3)5]〜[期間−TP(3)6]の他、[期間−TP(3)1]〜[期間−TP(3)4]も第m番目の水平走査期間に包含される点が、5Tr/1C駆動回路の動作とは異なる。尚、説明の便宜のため、[期間−TP(3)1]の始期、及び、[期間−TP(3)6]の終期は、それぞれ、第m番目の水平走査期間の始期、及び、終期に一致するものとして説明する。
【0166】
以下、[期間−TP(3)0]〜[期間−TP(3)4]の各期間について、説明する。尚、5Tr/1C駆動回路において説明したと同様に、[期間−TP(3)1]〜[期間−TP(3)4]の各期間の長さは、有機EL表示装置の設計に応じて適宜設定すればよい。
【0167】
[期間−TP(3)0](図16の(B)参照)
この[期間−TP(3)0]は、例えば、前の表示フレームから現表示フレームにおける動作であり、5Tr/1C駆動回路において説明した[期間−TP(5)0]と、実質的に同じ動作である。
【0168】
[期間−TP(3)1]〜[期間−TP(3)2](図16の(C)及び(D)参照)
この期間内に、上記の工程(a)、即ち、上述した前処理を行う。以下、詳細に説明する。
【0169】
[期間−TP(3)1](図16の(C)参照)
そして、現表示フレームにおける第m行目の水平走査期間が開始する。[期間−TP(3)1]の開始時、映像信号出力回路102の動作に基づきデータ線DTLの電位を、駆動トランジスタTDrvのゲート電極を初期化するための電圧VOfs-Hとし、次いで、走査回路101の動作に基づき走査線SCLをハイレベルとすることによって、映像信号書込みトランジスタTSigをオン状態とする。その結果、第1ノードND1の電位は、VOfs-Hとなる。上述したように、コンデンサ部C1の値c1を、設計上、他の駆動回路よりも大きい値としたので、ソース領域の電位(第2ノードND2の電位)は上昇する。そして、発光部ELPの両端の電位差が閾値電圧Vth-ELを超えるので、電位発光部ELPは導通状態となるが、駆動トランジスタTDrvのソース領域の電位は、再び、(Vth-EL+VCat)まで、直ちに低下する。尚、この過程において、発光部ELPが発光し得るが、発光は一瞬であり、実用上、問題とはならない。一方、駆動トランジスタTDrvのゲート電極は電圧VOfs-Hを保持する。
【0170】
[期間−TP(3)2](図16の(D)参照)
その後、映像信号出力回路102の動作に基づき、データ線DTLの電位を、駆動トランジスタTDrvのゲート電極を初期化するための電圧VOfs-Hから電圧VOfs-Lへと変更することによって、第1ノードND1の電位は、VOfs-Lとなる。そして、第1ノードND1の電位の低下に伴い、第2ノードND2の電位も低下する。即ち、駆動トランジスタTDrvのゲート電極の電位の変化分(VOfs-L−VOfs-H)に基づく電荷が、コンデンサ部C1、発光部ELPの寄生容量CEL、駆動トランジスタTDrvのゲート電極とソース領域との間の寄生容量に振り分けられる。尚、後述する[期間−TP(3)3]における動作の前提として、[期間−TP(3)2]の終期において、第2ノードND2の電位がVOfs-L−Vthよりも低いことが必要となる。VOfs-Hの値等は、この条件を満たすように設定されている。即ち、以上の処理により、駆動トランジスタTDrvのゲート電極とソース領域との間の電位差がVth以上となり、駆動トランジスタTDrvはオン状態となる。
【0171】
[期間−TP(3)3]〜[期間−TP(3)4](図17の(A)及び(B)参照)
この期間に、上記の工程(b)、より具体的には、上述した工程(b−1)、工程(b−2)から構成された閾値電圧キャンセル処理を行う。以下、詳細に説明する。
【0172】
[期間−TP(3)3](図17の(A)参照)
先ず、上述した工程(b−1)を行う。即ち、映像信号書込みトランジスタTSigのオン状態を維持したまま、[期間−TP(3)3]の始期において発光制御トランジスタ制御回路103の動作に基づき、発光制御トランジスタTEL_Cをオン状態とするための第1の電圧V1_ONを、発光制御トランジスタ制御線CLEL_Cを介して発光制御トランジスタTEL_Cのゲート電極に印加する。そして、発光制御トランジスタTEL_Cをオン状態とする。その結果、第1ノードND1の電位は変化しないが(VOfs-L=0ボルトを維持)、第1ノードND1の電位から駆動トランジスタTDrvの閾値電圧Vthを減じた電位に向かって、第2ノードND2の電位は変化する。即ち、浮遊状態の第2ノードND2の電位が上昇する。そして、駆動トランジスタTDrvのゲート電極とソース領域との間の電位差がVthに達すると、駆動トランジスタTDrvがオフ状態となる。具体的には、浮遊状態の第2ノードND2の電位が(VOfs-L−Vth=−3ボルト)に近づき、最終的に(VOfs-L−Vth)となる。ここで、上述した式(2)が保証されていれば、云い換えれば、式(2)を満足するように電位を選択、決定しておけば、発光部ELPが発光することはない。
【0173】
[期間−TP(3)4](図17の(B)参照)
次いで、上述した工程(b−2)を行う。即ち、映像信号書込みトランジスタTSigのオン状態を維持したまま、[期間−TP(3)4]の始期において、発光制御トランジスタ制御回路103の動作に基づき、発光制御トランジスタTEL_Cをオフ状態とするための第2の電圧V2_OFFを、発光制御トランジスタ制御線CLEL_Cを介して発光制御トランジスタTEL_Cのゲート電極に印加する。その結果、発光制御トランジスタTEL_Cはオフ状態となる。第1ノードND1の電位は変化せず(VOfs-L=0ボルトを維持)、浮遊状態の第2ノードND2の電位も略(VOfs-L−Vth=−3ボルト)を保持する。
【0174】
以上説明したように、工程(b−1)、工程(b−2)により、第2ノードND2の電位は、最終的に、(VOfs-L−Vth)となる。即ち、駆動トランジスタTDrvの閾値電圧Vth、及び、駆動トランジスタTDrvのゲート電極を初期化するための電圧VOfs-Lのみに依存して、第2ノードND2の電位は決定される。そして、発光部ELPの閾値電圧Vth-ELとは無関係である。
【0175】
次いで、[期間−TP(3)5]〜[期間−TP(3)7]の各期間について説明する。これらは、5Tr/1C駆動回路において説明した[期間−TP(5)5]〜[期間−TP(5)7]と、実質的に同じ動作である。
【0176】
[期間−TP(3)5](図17の(C)参照)
この期間内に、上記の工程(c)、即ち、上述した書込み処理を、以下のように行う。具体的には、映像信号書込みトランジスタTSigのオン状態を維持し、発光制御トランジスタTEL_Cのオフ状態を維持したまま、映像信号出力回路102の動作に基づき、データ線DTLの電位を、発光部ELPにおける輝度を制御するための映像信号VSigとする。その結果、第1ノードND1の電位は、VSigへと上昇する。尚、映像信号書込みトランジスタTSigを、一旦、オフ状態とし、映像信号書込みトランジスタTSig、及び、発光制御トランジスタTEL_Cのオフ状態を維持したまま、データ線DTLの電位を、発光部ELPにおける輝度を制御するための映像信号VSigに変更し、その後、発光制御トランジスタTEL_Cのオフ状態を維持したまま、走査線SCLをハイレベルとすることによって、映像信号書込みトランジスタTSigをオン状態としてもよい。
【0177】
[期間−TP(3)5]において、第1ノードND1の電位が、VOfs-LからVSigへと上昇する。このため、第1ノードND1の電位変化により生ずる第2ノードND2の電位変化を考慮すると、第2ノードND1の電位も、若干、上昇する。即ち、第2ノードND1の電位を、VOfs-L−Vth+α・(VSig−VOfs-L)と表すことができる。但し、0<α<1であり、αの値はコンデンサ部C1、発光部ELPの寄生容量CELの値等により定まる。
【0178】
これによって、5Tr/1C駆動回路において説明したと同様に、第1ノードND1と第2ノードND2の電位差、即ち、駆動トランジスタTDrvのゲート電極とソース領域との間の電位差Vgsとして、以下の式(3’)で説明した値を得ることができる。
【0179】
Vgs≒VSig−(VOfs-L−Vth)−α・(VSig−VOfs-L) (3’)
【0180】
即ち、3Tr/1C駆動回路においても、駆動トランジスタTDrvに対する書込み処理において得られたVgsは、発光部ELPにおける輝度を制御するための映像信号VSig、駆動トランジスタTDrvの閾値電圧Vth、及び、駆動トランジスタTDrvのゲート電極を初期化するための電圧VOfs-Lのみに依存している。そして、発光部ELPの閾値電圧Vth-ELとは無関係である。
【0181】
[期間−TP(3)6](図17の(D)参照)
その後、駆動トランジスタTDrvの移動度μの大小に基づく駆動トランジスタTDrvのソース領域(第2ノードND2)の電位の補正(移動度補正処理)を行う。具体的には、5Tr/1C駆動回路において説明した[期間−TP(5)6]と同じ動作を行えばよい。尚、移動度補正処理を実行するための所定の時間([期間−TP(3)6]の全時間t0)は、有機EL表示装置の設計の際、設計値として予め決定しておけばよい。
【0182】
[期間−TP(3)7](図17の(E)参照)
以上の操作によって、閾値電圧キャンセル処理、書込み処理、移動度補正処理が完了する。その後、この期間内に、上記の工程(d)を以下のように行う。即ち、5Tr/1C駆動回路において説明した[期間−TP(5)7]と同じ処理がなされ、第2ノードND2の電位が上昇し、(Vth-EL+VCat)を越えるので、発光部ELPは発光を開始する。このとき、発光部ELPを流れる電流は、前述した式(5)にて得ることができるので、発光部ELPを流れる電流Idsは、発光部ELPの閾値電圧Vth-EL、及び、駆動トランジスタTDrvの閾値電圧Vthには依存しない。即ち、発光部ELPの発光量(輝度)は、発光部ELPの閾値電圧Vth-ELの影響、及び、駆動トランジスタTDrvの閾値電圧Vthの影響を受けない。加えて、駆動トランジスタTDrvにおける移動度μのばらつきに起因したドレイン電流Idsのばらつき発生を抑制することができる。
【0183】
そして、発光部ELPの発光状態を第(m+m’−1)番目の水平走査期間まで継続する。この時点は、[期間−TP(3)-1]の終わりに相当する。
【0184】
以上によって、有機EL素子10[第(n,m)番目の副画素(有機EL素子10)]の発光の動作が完了する。
【0185】
以上、本発明を好ましい実施例に基づき説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例において説明した有機EL表示装置、有機EL素子、駆動回路を構成する各種の構成要素の構成、構造、発光部の駆動方法における工程は例示であり、適宜、変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0186】
【図1】図1は、[期間−TP(5)2]〜[期間−TP(5)7]において、有機EL表示装置の発光制御トランジスタ制御線を伝達する信号の波形BF0,BF1,BFNを模式的に示した図である。
【図2】図2は、5トランジスタ/1コンデンサ部から基本的に構成された駆動回路の等価回路図である。
【図3】図3は、有機EL表示装置の概念図である。
【図4】図4は、5トランジスタ/1コンデンサ部から基本的に構成された駆動回路の駆動のタイミングチャートを模式的に示す図である。
【図5】図5は、図1に示す波形BF0,BF1,BFNと、図4の上段に示すタイミングチャートとを対比して示した図である。
【図6】図6の(A)〜(D)は、5トランジスタ/1コンデンサ部から基本的に構成された駆動回路を構成する各トランジスタのオン/オフ状態等を模式的に示す図である。
【図7】図7の(A)〜(E)は、図6の(D)に引き続き、5トランジスタ/1コンデンサ部から基本的に構成された駆動回路を構成する各トランジスタのオン/オフ状態等を模式的に示す図である。
【図8】図8は、4トランジスタ/1コンデンサ部から基本的に構成された駆動回路の等価回路図である。
【図9】図9は、4トランジスタ/1コンデンサ部から基本的に構成された駆動回路の概念図である。
【図10】図10は、4トランジスタ/1コンデンサ部から基本的に構成された駆動回路の駆動のタイミングチャートを模式的に示す図である。
【図11】図11の(A)〜(D)は、4トランジスタ/1コンデンサ部から基本的に構成された駆動回路を構成する各トランジスタのオン/オフ状態等を模式的に示す図である。
【図12】図12の(A)〜(D)は、図11の(D)に引き続き、4トランジスタ/1コンデンサ部から基本的に構成された駆動回路を構成する各トランジスタのオン/オフ状態等を模式的に示す図である。
【図13】図13は、3トランジスタ/1コンデンサ部から基本的に構成された駆動回路の等価回路図である。
【図14】図14は、3トランジスタ/1コンデンサ部から基本的に構成された駆動回路の概念図である。
【図15】図15は、3トランジスタ/1コンデンサ部から基本的に構成された駆動回路の駆動のタイミングチャートを模式的に示す図である。
【図16】図16の(A)〜(D)は、3トランジスタ/1コンデンサ部から基本的に構成された駆動回路を構成する各トランジスタのオン/オフ状態等を模式的に示す図である。
【図17】図17の(A)〜(E)は、図16の(D)に引き続き、3トランジスタ/1コンデンサ部から基本的に構成された駆動回路を構成する各トランジスタのオン/オフ状態等を模式的に示す図である。
【図18】図18は、有機エレクトロルミネッセンス素子の一部分の模式的な一部断面図である。
【図19】図19は、[期間−TP(5)2]〜[期間−TP(5)7]において、有機EL表示装置の発光制御トランジスタ制御線を伝達する信号の波形AF0,AF1,AFNを模式的に示した図である。
【図20】図20は、図19に示す波形AF0,AF1,AFNと、図4の上段に示すタイミングチャートとを対比して示した図である。
【図21】図21の(A)及び(B)は、[期間−TP(5)2]〜[期間−TP(5)3]における、駆動回路の動作を説明するための等価回路図である。
【符号の説明】
【0187】
TSig・・・映像信号書込みトランジスタ、TDrv・・・駆動トランジスタ、TEL_C・・・発光制御トランジスタ、TND1・・・第1ノード初期化トランジスタ、TND2・・・第2ノード初期化トランジスタ、C1・・・コンデンサー部、ELP・・・有機エレクトロルミネッセンス発光部(発光部)、CEL・・・発光部ELPの寄生容量、ND1・・・第1ノード、ND2・・・第2ノード、SCL・・・走査線、DTL・・・データ線、CLEL_C・・・発光制御トランジスタ制御線、AZND1・・・第1ノード初期化トランジスタ制御線、AZND2・・・第2ノード初期化トランジスタ制御線、10,101,10N・・・有機エレクトロルミネッセンス素子、20・・・支持体、21・・・基板、31・・・ゲート電極、32・・・ゲート絶縁層、33・・・半導体層、35・・・ソース/ドレイン領域、34・・・チャネル形成領域、36・・・他方の電極、37・・・一方の電極、38,39・・・配線、40・・・層間絶縁層、51・・・アノード電極、52・・・正孔輸送層、発光層及び電子輸送層、53・・・カソード電極、54・・・第2層間絶縁層、55,56・・・コンタクトホール、100・・・電流供給部、101・・・走査回路、102・・・映像信号出力回路、103・・・発光制御トランジスタ制御回路、104・・・第1ノード初期化トランジスタ制御回路、105・・・第2ノード初期化トランジスタ制御回路
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス発光部の駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、単に、有機EL素子と略称する)を発光素子として用いた有機エレクトロルミネッセンス表示装置(以下、単に、有機EL表示装置と略称する)において、有機EL素子の輝度は、有機EL素子を流れる電流値によって制御される。そして、液晶表示装置と同様に、有機EL表示装置においても、駆動方式として、単純マトリクス方式、及び、アクティブマトリクス方式が周知である。アクティブマトリクス方式は、単純マトリクス方式に比べて構造が複雑となるといった欠点はあるが、画像の輝度を高いものとすることができる等、種々の利点を有する。
【0003】
有機EL素子を構成する有機エレクトロルミネッセンス発光部(以下、単に、発光部と略称する)を駆動するための回路として、5つのトランジスタと1つのコンデンサ部から構成された駆動回路(5Tr/1C駆動回路と呼ぶ)が、例えば、特開2006−215213号公報から周知である。5Tr/1C駆動回路は、図2に示すように、映像信号書込みトランジスタTSig、駆動トランジスタTDrv、発光制御トランジスタTEL_C、第1ノード初期化トランジスタTND1、第2ノード初期化トランジスタTND2の5つのトランジスタから構成され、更には、1つのコンデンサ部C1から構成されている。ここで、駆動トランジスタTDrvの他方のソース/ドレイン領域は第2ノードND2を構成し、駆動トランジスタTDrvのゲート電極は第1ノードND1を構成する。
【0004】
尚、これらのトランジスタ及びコンデンサ部については、後に詳しく説明する。
【0005】
例えば、各トランジスタはnチャネル型の薄膜トランジスタ(TFT)から成り、発光部ELPは、駆動回路を覆うように形成された層間絶縁層等の上に設けられている。発光部ELPのアノード電極は、駆動トランジスタTDrvの他方のソース/ドレイン領域に接続されている。一方、発光部ELPのカソード電極には、電圧VCat(例えば、0ボルト)が印加される。符号CELは発光部ELPの寄生容量を表す。
【0006】
駆動のタイミングチャートを模式的に図4に示し、各トランジスタのオン/オフ状態等を模式的に図6の(A)〜(D)及び図7の(A)〜(E)に示す。図4に示すように、[期間−TP(5)1]において、閾値電圧キャンセル処理を行うための前処理が実行される。即ち、図6の(B)に示すように、第1ノード初期化トランジスタTND1及び第2ノード初期化トランジスタTND2をオン状態とすることで、第1ノードND1の電位は、VOfs(例えば、0ボルト)となる。一方、第2ノードND2の電位は、VSS(例えば、−10ボルト)となる。そして、これによって、駆動トランジスタTDrvのゲート電極と他方のソース/ドレイン領域との間の電位差が、駆動トランジスタTDrvの閾値電圧Vth以上となる。駆動トランジスタTDrvはオン状態である。
【0007】
次いで、図4に示すように、[期間−TP(5)2]〜[期間−TP(5)3]において、閾値電圧キャンセル処理が行われる。図6の(D)に示すように、第1ノード初期化トランジスタTND1のオン状態を維持したまま、発光制御トランジスタTEL_Cをオン状態とする。その結果、第1ノードND1の電位から駆動トランジスタTDrvの閾値電圧Vthを減じた電位に向かって、第2ノードND2の電位は変化する。即ち、浮遊状態の第2ノードND2の電位が上昇する。そして、駆動トランジスタTDrvのゲート電極と他方のソース/ドレイン領域との間の電位差がVthに達すると、駆動トランジスタTDrvがオフ状態となる。この状態にあっては、第2ノードの電位は、概ね(VOfs−Vth)である。その後、[期間−TP(5)3]において、第1ノード初期化トランジスタTND1のオン状態を維持したまま、発光制御トランジスタTEL_Cをオフ状態とする。次に、[期間−TP(5)4]において、第1ノード初期化トランジスタTND1をオフ状態とする。
【0008】
次いで、図4に示すように、[期間−TP(5)5]において、駆動トランジスタTDrvに対する書込み処理を行う。具体的には、図7の(C)に示すように、第1ノード初期化トランジスタTND1、第2ノード初期化トランジスタTND2、及び、発光制御トランジスタTEL_Cのオフ状態を維持したまま、データ線DTLの電位を映像信号に相当する電圧[発光部ELPにおける輝度を制御するための映像信号(駆動信号、輝度信号)VSig]とし、次いで、走査線SCLをハイレベルとすることによって映像信号書込みトランジスタTSigをオン状態とする。その結果、第1ノードND1の電位は、VSigへと上昇する。第1ノードND1の電位の変化分に基づく電荷は、コンデンサ部C1、発光部ELPの寄生容量CEL、駆動トランジスタTDrvのゲート電極とソース領域との間の寄生容量に振り分けられる。従って、第1ノードND1の電位が変化すると、第2ノードND2の電位も変化する。しかし、発光部ELPの寄生容量CELの容量値が大きな値である程、第2ノードND2の電位の変化は小さくなる。そして、一般に、発光部ELPの寄生容量CELの容量値は、コンデンサ部C1の容量値及び駆動トランジスタTDRVの寄生容量の値よりも大きい。そこで、第2ノードND2の電位は殆ど変化しないとすれば、駆動トランジスタTDrvのゲート電極と他方のソース/ドレイン領域との間の電位差Vgsは、以下の式(A)のとおりとなる。
【0009】
Vgs≒VSig−(VOfs−Vth) (A)
【0010】
その後、図4に示すように、[期間−TP(5)6]において、駆動トランジスタTDrvの特性(例えば、移動度μの大小等)に応じて駆動トランジスタTDrvの他方のソース/ドレイン領域の電位(即ち、第2ノードND2の電位)を上昇させる移動度補正処理を行う。具体的には、図7の(D)に示すように、駆動トランジスタTDrvのオン状態を維持したまま、発光制御トランジスタTEL_Cをオン状態とし、次いで、所定の時間(t0)が経過した後、映像信号書込みトランジスタTSigをオフ状態とする。その結果、駆動トランジスタTDrvの移動度μの値が大きい場合、駆動トランジスタTDrvの他方のソース/ドレイン領域における電位の上昇量ΔV(電位補正値)は大きくなり、駆動トランジスタTDrvの移動度μの値が小さい場合、駆動トランジスタTDrvの他方のソース/ドレイン領域における電位の上昇量ΔV(電位補正値)は小さくなる。ここで、駆動トランジスタTDrvのゲート電極と他方のソース/ドレイン領域との間の電位差Vgsは、式(A)から以下の式(B)のように変形される。尚、移動度補正処理を実行するための所定の時間([期間−TP(5)6]の全時間(t0)は、有機EL表示装置の設計の際、設計値として予め決定しておけばよい。
【0011】
Vgs≒VSig−(VOfs−Vth)−ΔV (B)
【0012】
以上の操作によって、閾値電圧キャンセル処理、書込み処理、移動度補正処理が完了する。そして、その後の[期間−TP(5)7]において、映像信号書込みトランジスタTSigがオフ状態となり、第1ノードND1、即ち、図7の(E)に示すように、駆動トランジスタTDrvのゲート電極は浮遊状態となる一方、発光制御トランジスタTEL_Cはオン状態を維持しており、発光制御トランジスタTEL_Cの一方のソース/ドレイン領域は、発光部ELPの発光を制御するための電流供給部(電圧VCC、例えば20ボルト)に接続された状態にある。従って、以上の結果として、第2ノードND2の電位が上昇し、所謂ブートストラップ回路におけると同様の現象が駆動トランジスタTDrvのゲート電極に生じ、第1ノードND1の電位も上昇する。その結果、駆動トランジスタTDrvのゲート電極と他方のソース/ドレイン領域との間の電位差Vgsは、式(B)の値を保持する。また、発光部ELPを流れる電流は、駆動トランジスタTDrvのドレイン領域からソース領域へと流れるドレイン電流Idsであるので、式(C)で表すことができる。発光部ELPは、ドレイン電流Idsの値に応じた輝度で発光する。
【0013】
Ids=k・μ・(Vgs−Vth)2
=k・μ・(VSig−VOfs−ΔV)2 (C)
【0014】
以上に概要を説明した5Tr/1C駆動回路の駆動等についても、後に詳しく説明する。
【0015】
ところで、有機EL表示装置は、図3に概念図を示すように、
(1)走査回路101、
(2)映像信号出力回路102、
(3)第1の方向にN個、第1の方向とは異なる第2の方向(具体的には、第1の方向に直交する方向)にM個、合計N×M個の、2次元マトリクス状に配列され、それぞれが有機エレクトロルミネッセンス発光部ELP、及び、有機エレクトロルミネッセンス発光部ELPを駆動するための駆動回路を備えている有機エレクトロルミネッセンス素子10、
(4)走査回路101に接続され、第1の方向に延びるM本の走査線SCL、
(5)映像信号出力回路102に接続され、第2の方向に延びるN本のデータ線DTL、並びに、
(6)電流供給部100、
を備えている。尚、図3においては、便宜のため3×3個の有機EL素子10を示したが、これは単なる例示に過ぎない。
【0016】
ここで、各有機EL素子10は、上述したとおり、5Tr/1C駆動回路、及び、発光部ELPを備えている。発光制御トランジスタTEL_Cの動作は、発光制御トランジスタ制御回路103に接続された発光制御トランジスタ制御線CLEL_Cに印加される電圧によって規定される。上述した閾値電圧キャンセル処理にあっては、発光制御トランジスタ制御回路103の動作に基づき、[期間−TP(5)2]において発光制御トランジスタTEL_Cをオン状態とするための所定の電圧(例えば30ボルト)が発光制御トランジスタ制御線CLEL_Cに印加される。また、[期間−TP(5)3]において発光制御トランジスタTEL_Cをオフ状態とするための所定の電圧(例えば−10ボルト)が発光制御トランジスタ制御線CLEL_Cに印加される。更には、[期間−TP(5)6]以降において、上述した発光制御トランジスタTEL_Cをオン状態とするための所定の電圧(30ボルト)が発光制御トランジスタ制御線CLEL_Cに印加される。従って、後述する図20に示すように、発光制御トランジスタ制御回路103の信号の波形AF0は、基本的に、−10ボルトと30ボルトの2値からなる矩形波である。
【0017】
【特許文献1】特開2006−215213号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
一般に、配線を伝わる信号の形状は、分布容量等の影響により信号の立ち上がり/立ち下がりが鈍り、変形する。そして、変形の程度は、信号が伝達する経路が長くなればなる程、顕著になる。例えば、発光制御トランジスタ制御回路103の信号に着目すると、図3に示す有機EL表示装置において、発光制御トランジスタ制御回路103に最も近い有機EL素子10(左端に配列された有機EL素子10)と、発光制御トランジスタ制御回路103から最も離れた有機EL素子10(右端に配列された有機EL素子10)とでは、信号が伝達する経路長(換言すれば、各有機EL素子10から発光制御トランジスタ制御回路103に至る部分の発光制御トランジスタ制御線CLEL_Cの長さ)が相違する。図19に、図3に示す有機EL表示装置について、第1行目の有機EL素子10と、発光制御トランジスタ制御回路103と、発光制御トランジスタ制御線CLEL_Cとの関係を模式的に示す。
【0019】
図19に示す例では、有機EL素子101の経路長が最も短く、有機EL素子10Nの経路長が最も長い。従って、発光制御トランジスタ制御回路103の信号の波形AF0は、左端に配列された有機EL素子10Nに、より変形して伝達される。図19に、上述した[期間−TP(5)2]〜[期間−TP(5)7]において、有機EL表示装置の発光制御トランジスタ制御線CLEL_Cを伝達する信号の波形AF0,AF1,AFNを模式的に示した。発光制御トランジスタ制御回路103の信号の波形AF0は、発光制御トランジスタTEL_Cをオン状態とするための電圧(例えば30ボルト)と、オフ状態とするための電圧(例えば−10ボルト)の2値からなる矩形波であり、発光制御トランジスタTEL_Cのゲート電極に印加される。図19に示すように、有機EL素子101には、元波形、即ち波形AF0に対して、殆ど劣化のない波形AF1が伝達され、有機EL素子101の発光制御トランジスタTEL_Cのゲート電極に印加される。一方、有機EL素子10Nには変形した略台形状の波形AFNが伝達され、有機EL素子10Nの発光制御トランジスタTEL_Cのゲート電極に印加される。図20に、図19に示す波形AF0,AF1,AFNと、図4の上段に示すタイミングチャートとを対比して示す。
【0020】
ここで、上述した閾値電圧キャンセル処理が行われる[期間−TP(5)2]及びこの前後において、発光制御トランジスタTEL_Cのゲート電極に上述した波形AF1が印加された場合と、波形AFNが印加された場合とで、発光制御トランジスタTEL_Cと駆動トランジスタTDrvとの接続部(より具体的には、後述するソース/ドレイン領域A1,A2)に起きる電位変動の差について考察する。図21の(A)及び(B)は、上述した[期間−TP(5)2]〜[期間−TP(5)3]における、駆動回路の動作を説明するための等価回路図である。発光制御トランジスタTEL_Cのゲート電極とソース/ドレイン領域A1との間の寄生容量を符号CA1、駆動トランジスタTDrvのゲート電極とソース/ドレイン領域A2との間の寄生容量を符号CA2で表す。
【0021】
上述したように、[期間−TP(5)2]の始期においては、駆動トランジスタTDrvはオン状態にある。そして、発光制御トランジスタTEL_Cをオン状態とする結果、浮遊状態の第2ノードND2の電位が上昇し、駆動トランジスタTDrvのゲート電極と他方のソース/ドレイン領域との間の電位差がVthに達すると、駆動トランジスタTDrvがオフ状態となる。これにより、図21の(A)の左側に示すように、波形AF1、波形AFNの立ち下がり時において、駆動トランジスタTDrvはオフ状態にある。従って、波形AF1、波形AFNの立ち下がり時において、ソース/ドレイン領域A1,A2は、発光制御トランジスタTEL_Cがオン状態であれば電圧VCCが印加されており浮遊状態ではないが、発光制御トランジスタTEL_Cがオフ状態となると浮遊状態となる。発光制御トランジスタTEL_Cと駆動トランジスタTDrvとの接続部(ソース/ドレイン領域A1,A2)が浮遊状態にあるとき、発光制御トランジスタTEL_Cのゲート電極の電位が変化すると、寄生容量CA1等による静電結合により、ソース/ドレイン領域A1,A2の電位も変化する。
【0022】
ここで、波形AFNは波形AF1に対し立ち下がりが鈍っている。図20の下段、及び、図21の(A)に示すΔT1は、波形AF1の立ち下がりにおいて、発光制御トランジスタTEL_Cのオン状態とオフ状態が切り替わる迄の時間を示す(理想的な矩形波であれば、ΔT1は0である)。同様に、図20の下段、及び、図21の(A)に示すΔTnは、波形AFNの立ち下がりにおいて、発光制御トランジスタTEL_Cのオン状態とオフ状態が切り替わる迄の時間を示す。図から明らかなように、ΔT1<ΔTnである。上述したように、ソース/ドレイン領域A1,A2は、発光制御トランジスタTEL_Cがオン状態であれば電圧VCCが印加される。従って、波形AFnの立ち下がりにおいては、波形AF1の立ち下がりに対して、(ΔTn−ΔT1)だけ長くソース/ドレイン領域A1,A2に電圧VCCが印加された状態となる。換言すれば、波形AFnの立ち下がりにおいては、波形AF1の立ち下がり対して、ソース/ドレイン領域A1,A2の電位はより電圧VCC側に保持される。これにより、図21の(B)に示すように、波形AF1、波形AFNの立ち下がり時において、静電結合によるソース/ドレイン領域A1,A2の電位変動は、波形AF1においてより顕著に現れる。より具体的には、波形AF1が印加される駆動回路と、波形AFNが印加される駆動回路とを比較すると、前者の駆動回路における発光制御トランジスタTEL_Cと駆動トランジスタTDrvとの接続部の電位が、よりマイナス側に変化する。
【0023】
発光制御トランジスタTEL_Cと駆動トランジスタTDrvとの接続部の電位変動は、寄生容量CA2等を介した静電結合により、最終的には第2ノードND2に伝播する。これにより、波形AF1が印加される駆動回路と、波形AFNが印加される駆動回路とでは、第2ノードND2の電位に若干の差が生ずる。これに起因して[期間−TP(5)7]におけるドレイン電流の値が変動する。即ち、左端に配列された有機EL素子101と、右端に配列された有機EL素子10Nとで、発光部ELPの輝度に差が生ずる。また、他の有機EL素子10においても同様の現象が起こるが、その程度は、信号波形の変形の程度に応じて変化する。上述したように、信号波形の変形の程度は、各有機EL素子10から発光制御トランジスタ制御回路103に至る部分の発光制御トランジスタ制御線CLEL_Cの長さに応じて変化する。結局、図19に示す例では、有機EL表示装置の輝度が画面の左端から右端に向かって徐々に変化する現象が起こり、表示画面の輝度均一性が悪化する。
【0024】
従って、本発明の目的は、発光制御トランジスタ制御線CLEL_Cを伝達する信号波形の変形に起因する表示画面の輝度均一性の悪化を抑制することができる有機エレクトロルミネッセンス発光部の駆動方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上記の目的を達成するための本発明の有機エレクトロルミネッセンス発光部の駆動方法は、
(1)走査回路、
(2)映像信号出力回路、
(3)第1の方向にN個、第1の方向とは異なる第2の方向にM個、合計N×M個の、2次元マトリクス状に配列され、それぞれが有機エレクトロルミネッセンス発光部、及び、有機エレクトロルミネッセンス発光部を駆動するための駆動回路を備えている有機エレクトロルミネッセンス素子、
(4)走査回路に接続され、第1の方向に延びるM本の走査線、
(5)映像信号出力回路に接続され、第2の方向に延びるN本のデータ線、並びに、
(6)電流供給部、
を備えた有機エレクトロルミネッセンス表示装置における、有機エレクトロルミネッセンス発光部の駆動方法に関する。
【0026】
上述した有機エレクトロルミネッセンス発光部を駆動するための駆動回路は、
(A)ソース/ドレイン領域、チャネル形成領域、及び、ゲート電極を備えた駆動トランジスタ、
(B)ソース/ドレイン領域、チャネル形成領域、及び、ゲート電極を備えた映像信号書込みトランジスタ、
(C)ソース/ドレイン領域、チャネル形成領域、及び、ゲート電極を備えた発光制御トランジスタ、並びに、
(D)一対の電極を備えたコンデンサ部、
から構成されており、
駆動トランジスタにおいては、
(A−1)一方のソース/ドレイン領域は、発光制御トランジスタの他方のソース/ドレイン領域に接続されており、
(A−2)他方のソース/ドレイン領域は、有機エレクトロルミネッセンス発光部に備えられたアノード電極に接続され、且つ、コンデンサ部の一方の電極に接続されており、第2ノードを構成し、
(A−3)ゲート電極は、映像信号書込みトランジスタの他方のソース/ドレイン領域に接続され、且つ、コンデンサ部の他方の電極に接続されており、第1ノードを構成し、 映像信号書込みトランジスタにおいては、
(B−1)一方のソース/ドレイン領域は、データ線に接続されており、
(B−2)ゲート電極は、走査線に接続されており、
発光制御トランジスタにおいては、
(C−1)一方のソース/ドレイン領域は、電流供給部に接続されており、
(C−2)ゲート電極は、発光制御トランジスタ制御線に接続されている。
【0027】
上記の目的を達成するための本発明の有機エレクトロルミネッセンス発光部の駆動方法は、上述した駆動回路を用いて、
(a)第1ノードと第2ノードとの間の電位差が、駆動トランジスタの閾値電圧を越え、且つ、第2ノードと有機エレクトロルミネッセンス発光部に備えられたカソード電極との間の電位差が、有機エレクトロルミネッセンス発光部の閾値電圧を越えないように、第1ノードに第1ノード初期化電圧を印加し、第2ノードに第2ノード初期化電圧を印加する前処理を行い、次いで、
(b)第1ノードの電位を保った状態で、第1ノードの電位から駆動トランジスタの閾値電圧を減じた電位に向かって、第2ノードの電位を変化させる閾値電圧キャンセル処理を行い、その後、
(c)走査線からの信号によりオン状態とされた映像信号書込みトランジスタを介して、データ線から映像信号を第1ノードに印加する書込み処理を行い、次いで、
(d)走査線からの信号により映像信号書込みトランジスタをオフ状態とすることにより第1ノードを浮遊状態とし、電流供給部から、発光制御トランジスタと駆動トランジスタとを介して、第1ノードと第2ノードとの間の電位差の値に応じた電流を有機エレクトロルミネッセンス発光部に流す、
ことにより、有機エレクトロルミネッセンス発光部を駆動する駆動方法に関する。
【0028】
そして、上記の目的を達成するための本発明の有機エレクトロルミネッセンス発光部の駆動方法は、
前記工程(b)は、
(b−1)発光制御トランジスタをオン状態とするための第1の電圧を、発光制御トランジスタ制御線を介して発光制御トランジスタのゲート電極に印加し、オン状態の発光制御トランジスタを介して駆動トランジスタの一方のソース/ドレイン領域を電流供給部と導通させ、以て、駆動トランジスタの一方のソース/ドレイン領域の電位を前記工程(a)における第2ノードの電位よりも高くし、次いで、
(b−2)発光制御トランジスタをオフ状態とするための第2の電圧を、発光制御トランジスタ制御線を介して発光制御トランジスタのゲート電極に印加する、
工程から構成されており、
前記工程(d)において、発光制御トランジスタをオン状態とするための第3の電圧を、発光制御トランジスタ制御線を介して発光制御トランジスタのゲート電極に印加し、オン状態の発光制御トランジスタを介して駆動トランジスタの一方のソース/ドレイン領域を電流供給部と導通させ、以て、第1ノードと第2ノードとの間の電位差の値に応じた電流を有機エレクトロルミネッセンス発光部に流し、
第1の電圧をV1_ON、第2の電圧をV2_OFF、第3の電圧をV3_ONと表すとき、|V1_ON−V2_OFF|<|V3_ON−V2_OFF|を満たすことを特徴とする。
【0029】
また、本発明の有機エレクトロルミネッセンス発光部の駆動方法にあっては、駆動回路は、
(E)ソース/ドレイン領域、チャネル形成領域、及び、ゲート電極を備えた第2ノード初期化トランジスタ、
を更に備えており、
第2ノード初期化トランジスタにおいては、
(E−1)一方のソース/ドレイン領域は、第2ノード初期化電圧供給線に接続されており、
(E−2)他方のソース/ドレイン領域は、第2ノードに接続されており、
(E−3)ゲート電極は、第2ノード初期化トランジスタ制御線に接続されており、
前記工程(a)において、第2ノード初期化トランジスタ制御線からの信号によりオン状態とされた第2ノード初期化トランジスタを介して、第2ノード初期化電圧供給線から第2ノードに第2ノード初期化電圧を印加した後、第2ノード初期化トランジスタ制御線からの信号により第2ノード初期化トランジスタをオフ状態とする構成とすることができる。
【0030】
また、上記の各種の好ましい構成を含む本発明の有機エレクトロルミネッセンス発光部の駆動方法にあっては、駆動回路は、
(F)ソース/ドレイン領域、チャネル形成領域、及び、ゲート電極を備えた第1ノード初期化トランジスタ、
を更に備えており、
第1ノード初期化トランジスタにおいては、
(F−1)一方のソース/ドレイン領域は、第1ノード初期化電圧供給線に接続されており、
(F−2)他方のソース/ドレイン領域は、第1ノードに接続されており、
(F−3)ゲート電極は、第1ノード初期化トランジスタ制御線に接続されており、
前記工程(a)において、第1ノード初期化トランジスタ制御線からの信号によりオン状態とされた第1ノード初期化トランジスタを介して、第1ノード初期化電圧供給線から第1ノードに第1ノード初期化電圧を印加する構成とすることができる。
【0031】
本発明の駆動方法にあっては、第1の電圧V1_ONは、有機EL表示装置の設計に応じて適宜設定すればよい。例えば、発光制御トランジスタの動作が線形領域から非飽和領域に切り替わる臨界値(以下、臨界電圧と呼ぶ場合がある)を目安として、第1の電圧V1_ONを設定することもできる。例えば、発光制御トランジスタがnチャネル型であり、臨界電圧が、臨界電圧の設計値±V0ボルトの範囲でばらつく場合には、ばらつきの下限(上の例では臨界電圧の設計値−V0ボルト)を若干下回る値を目安として、第1の電圧V1_ONを設定することもできる。同様に、pチャネル型の場合には、臨界電圧の設計値+V0ボルトを若干上回る値を目安として設定することもできる。
【0032】
本発明の駆動方法にあっては、工程(b)において、第1ノードの電位から駆動トランジスタの閾値電圧を減じた電位に向かって、第2ノードの電位を変化させる閾値電圧キャンセル処理を行なう。定性的には、閾値電圧キャンセル処理において、第1ノードと第2ノードとの間の電位差(換言すれば、駆動トランジスタのゲート電極とソース領域との間の電位差)が駆動トランジスタの閾値電圧に近づく程度は、閾値電圧キャンセル処理の時間により左右される。従って、例えば閾値電圧キャンセル処理の時間を充分長く確保した形態にあっては、第2ノードの電位は第1ノードの電位から駆動トランジスタの閾値電圧を減じた電位に達する。そして、第1ノードと第2ノードとの間の電位差は駆動トランジスタの閾値電圧に達し、駆動トランジスタはオフ状態となる。一方、例えば閾値電圧キャンセル処理の時間を短く設定せざるを得ない形態にあっては、第1ノードと第2ノードとの間の電位差が駆動トランジスタの閾値電圧より大きく、駆動トランジスタはオフ状態とはならない場合がある。本発明の駆動方法にあっては、閾値電圧キャンセル処理の結果として、必ずしも駆動トランジスタがオフ状態となることを要しない。
【0033】
上述した好ましい構成、形態を含む本発明の有機エレクトロルミネッセンス発光部の駆動方法(以下、単に、本発明の駆動方法と呼ぶ場合がある)にあっては、発光制御トランジスタのゲート電極には、第1の電圧V1_ON、第2の電圧V2_OFF、第3の電圧V3_ONが順次印加される。そして、これらの電圧は、|V1_ON−V2_OFF|<|V3_ON−V2_OFF|という関係を満たす。従来の駆動方法は、工程(b)、工程(d)を問わず、発光制御トランジスタをオン状態とする際に、共に、第3の電圧V3_ONを印加する態様に相当する。これに対して、本発明の駆動方法によれば、閾値電圧キャンセル処理において、発光制御トランジスタをオフ状態とする前の発光制御トランジスタのゲート電極には、第1の電圧V1_ONを印加する。そして、上述した式に示されているように、第1の電圧V1_ONと第2の電圧V2_OFFとの電位差の絶対値は、第3の電圧V3_ONと第2の電圧V2_OFFとの電位差の絶対値よりも小さい。これにより、従来の単純な矩形波を印加する駆動方法に対して、図20、図21の(A)に示すΔTnの値を小さくすることができる。そして、発光制御トランジスタTEL_Cと駆動トランジスタTDrvとの接続部の電位変動の差が小さくなり、上述した表示画面の輝度均一性の悪化を抑制することができる。また、発光時において、駆動トランジスタは上述した式(C)で示すドレイン電流Idsを流すが、駆動トランジスタと直列に接続された発光制御トランジスタのゲート電圧が臨界電圧に近いと、発光制御トランジスタの電流容量の制限により、上述した式(C)に示す値のドレイン電流Idsを流すことができず、表示装置の動作に支障をきたすおそれがある。従って、発光制御トランジスタは、式(C)に示すドレイン電流Idsが表示装置の設計上の最大値となったときでも、支障無く電流を流すことができなければならない。本発明の駆動方法によれば、充分な電流容量が確保できる値の電圧を、第3の電圧V3_ONとして駆動トランジスタのゲートに印加することができるので、表示装置の動作に支障をきたすことがない。
【0034】
本発明の駆動方法にあっては、工程(d)において、走査線からの信号により映像信号書込みトランジスタをオフ状態とする。この時期と、第3の電圧を発光制御トランジスタのゲート電極に印加する時期との先後関係は、有機EL表示装置の設計に応じて適宜設定することができる。例えば、映像信号書込みトランジスタをオフ状態とした後、直ちに、あるいは、所定の間隔を空けて、第3の電圧を発光制御トランジスタのゲート電極に印加する態様であってもよいし、第3の電圧を発光制御トランジスタのゲート電極に印加した後、映像信号書込みトランジスタをオフ状態とする態様であってもよい。尚、第3の電圧を発光制御トランジスタのゲート電極に印加した後、映像信号書込みトランジスタをオフ状態とする態様にあっては、発光制御トランジスタと映像信号書込みトランジスタとが共にオン状態となる期間が存在する。この期間において、駆動トランジスタの特性に応じて第2ノードの電位を上昇させる移動度補正処理の動作が行われる。尚、第3の電圧を発光制御トランジスタのゲート電極に印加した状態で、工程(c)を行う構成とすることもできる。この構成にあっては、書込み処理において実質的に移動度補正処理が併せて行なわれる。
【0035】
以上に説明した各種の好ましい構成を含む本発明の駆動方法(以下、これらを単に、本発明と略称する場合がある)において、走査回路、映像信号出力回路等の各種の回路、走査線、データ線等の各種の配線、電流供給部、有機エレクトロルミネッセンス発光部(以下、単に、発光部と呼ぶ場合がある)の構成、構造は、周知の構成、構造とすることができる。具体的には、発光部は、例えば、アノード電極、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、カソード電極等から構成することができる。
【0036】
駆動回路の詳細は後述するが、例えば、5つのトランジスタと1つのコンデンサ部から構成された駆動回路(5Tr/1C駆動回路)、4つのトランジスタと1つのコンデンサ部から構成された駆動回路(4Tr/1C駆動回路と呼ぶ)、3つのトランジスタと1つのコンデンサ部から構成された駆動回路(3Tr/1C駆動回路と呼ぶ)から構成することができる。
【0037】
駆動回路を構成するトランジスタとして、nチャネル型の薄膜トランジスタ(TFT)を挙げることができるが、場合によっては、例えば、発光制御トランジスタや映像信号書込みトランジスタ等にpチャネル型の薄膜トランジスタを用いることもできる。コンデンサ部は、一方の電極、他方の電極、及び、これらの電極に挟まれた誘電体層(絶縁層)から構成することができる。駆動回路を構成するトランジスタ及びコンデンサ部は、或る平面内に形成され(例えば、支持体上に形成され)、発光部は、例えば、層間絶縁層を介して、駆動回路を構成するトランジスタ及びコンデンサ部の上方に形成されている。また、駆動トランジスタの他方のソース/ドレイン領域は、発光部に備えられたアノード電極に、例えば、コンタクトホールを介して接続されている。尚、半導体基板等にトランジスタを形成した構成であってもよい。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、発光制御トランジスタのゲート電極には、第1の電圧V1_ON、第2の電圧V2_OFF、第3の電圧V3_ONが順次印加される。そして、これらの電圧は、|V1_ON−V2_OFF|<|V3_ON−V2_OFF|という関係を満たす。これにより、図20、図21の(A)に示すΔTnの値を小さくできるので、発光制御トランジスタTEL_Cと駆動トランジスタTDrvとの接続部の電位変動の差が小さくなる。従って、寄生容量等を介した静電結合により生ずる第2ノードの電位変動の差も抑制されるので、背景技術において説明した表示画面の輝度均一性の悪化が抑制される。また、発光時において、駆動トランジスタは上述した式(C)で示すドレイン電流Idsを流すが、駆動トランジスタと直列に接続された発光制御トランジスタのゲート電圧が臨界電圧に近いと、発光制御トランジスタの電流容量の制限により表示装置の動作に支障をきたすおそれがある。本発明の駆動方法によれば、充分な電流容量が確保できる値の電圧を、第3の電圧V3_ONとして駆動トランジスタのゲートに印加することができるので、表示装置の動作に支障をきたすことがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、図面を参照して、実施例に基づき本発明を説明する。
【実施例】
【0040】
実施例の有機EL表示装置は、図14に有機EL回路の概念図を示すように、
(1)走査回路101、
(2)映像信号出力回路102、
(3)第1の方向にN個、第1の方向とは異なる第2の方向(具体的には、第1の方向に直交する方向)にM個、合計N×M個の、2次元マトリクス状に配列され、それぞれが有機エレクトロルミネッセンス発光部ELP、及び、有機エレクトロルミネッセンス発光部ELPを駆動するための駆動回路を備えている有機エレクトロルミネッセンス素子10、
(4)走査回路101に接続され、第1の方向に延びるM本の走査線SCL、
(5)映像信号出力回路102に接続され、第2の方向に延びるN本のデータ線DTL、並びに、
(6)電流供給部100、
を備えている。尚、図14あるいは、後述する図3、図9においては、3×3個の有機EL素子10を図示しているが、これは、あくまでも例示に過ぎない。
【0041】
上述したように、各有機EL素子10は、駆動回路、及び、発光部ELPを備えている。ここで、発光部ELPは、例えば、アノード電極、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、カソード電極等の周知の構成、構造を有する。また、走査線SCLの一端に走査回路101が設けられている。更には、走査回路101、映像信号出力回路102、走査線SCL、データ線DTL、電流供給部100の構成、構造は、周知の構成、構造とすることができる。
【0042】
駆動回路は、基本的に、3つのトランジスタと1つのコンデンサ部C1から構成された駆動回路(3Tr/1C駆動回路)である。即ち、実施例の駆動回路は、図13に示すように、(A)駆動トランジスタTDrv、(B)映像信号書込みトランジスタTSig、(C)発光制御トランジスタTEL_C、(D)一対の電極を備えたコンデンサ部C1から構成されている。尚、図8に示す駆動回路は、更に、(E)第2ノード初期化トランジスタTND2を備えた駆動回路(4Tr/1C駆動回路)である。また、図2に示す駆動回路は、これに加えて、(F)第1ノード初期化トランジスタTND1を備えた駆動回路(5Tr/1C駆動回路)である。
【0043】
上述した駆動トランジスタTDrv、映像信号書込みトランジスタTSig、発光制御トランジスタTEL_C、第1ノード初期化トランジスタTND1、及び、第2ノード初期化トランジスタTND2は、それぞれ、ソース/ドレイン領域、チャネル形成領域、及び、ゲート電極を備えた、nチャネル型のTFTから成る。後述する他の実施例においても同様である。尚、映像信号書込みトランジスタTSig、発光制御トランジスタTEL_C、第1ノード初期化トランジスタTND1、及び、第2ノード初期化トランジスタTND2をpチャネル型のTFTから形成してもよい。
【0044】
ここで、駆動トランジスタTDrvにおいては、
(A−1)一方のソース/ドレイン領域は、発光制御トランジスタTEL_Cの他方のソース/ドレイン領域に接続されており、
(A−2)他方のソース/ドレイン領域は、発光部ELPに備えられたアノード電極に接続され、且つ、コンデンサ部C1の一方の電極に接続されており、第2ノードND2を構成し、
(A−3)ゲート電極は、映像信号書込みトランジスタTSigの他方のソース/ドレイン領域に接続され、且つ、コンデンサ部C1の他方の電極に接続されており、第1ノードND1を構成する。
【0045】
また、映像信号書込みトランジスタTSigにおいては、
(B−1)一方のソース/ドレイン領域は、データ線DTLに接続されており、
(B−2)ゲート電極は、走査線SCLに接続されている。走査線SCLは、走査回路101に接続されている。
【0046】
そして、発光制御トランジスタTEL_Cにおいては、
(C−1)一方のソース/ドレイン領域は、電流供給部100に接続されており、
(C−2)ゲート電極は、発光制御トランジスタ制御線CLEL_Cに接続されている。発光制御トランジスタ制御線CLEL_Cは、発光制御トランジスタ制御回路103に接続されている。
【0047】
尚、図8に示す4Tr/1C駆動回路、及び、図2に示す5Tr/1C駆動回路においては、更に、第2ノード初期化トランジスタTND2を備えている。第2ノード初期化トランジスタTND2においては、
(E−1)一方のソース/ドレイン領域は、第2ノード初期化電圧供給線PSND2に接続されており、
(E−2)他方のソース/ドレイン領域は、第2ノードND2に接続されており、
(E−3)ゲート電極は、第2ノード初期化トランジスタ制御線AZND2に接続されている。第2ノード初期化トランジスタ制御線AZND2は、第2ノード初期化トランジスタ制御回路105に接続されている。
【0048】
また、図2に示す5Tr/1C駆動回路においては、更に、第1ノード初期化トランジスタTND1を備えている。第1ノード初期化トランジスタTND1においては、
(F−1)一方のソース/ドレイン領域は、第1ノード初期化電圧供給線PSND1に接続されており、
(F−2)他方のソース/ドレイン領域は、第1ノードND1に接続されており、
(F−3)ゲート電極は、第1ノード初期化トランジスタ制御線AZND1に接続されている。第1ノード初期化トランジスタ制御線AZND1は、第1ノード初期化トランジスタ制御回路104に接続されている。
【0049】
図18に有機EL素子の一部分の模式的な一部断面図を示すように、駆動回路を構成する各トランジスタ及びコンデンサ部C1は支持体20上に形成され、発光部ELPは、例えば、層間絶縁層40を介して、駆動回路を構成するトランジスタ及びコンデンサ部C1の上方に形成されている。また、駆動トランジスタTDrvのソース領域は、発光部ELPに備えられたアノード電極に、コンタクトホールを介して接続されている。尚、図18においては、駆動トランジスタTDrvのみを図示する。駆動トランジスタTDrv以外のトランジスタは隠れて見えない。
【0050】
より具体的には、駆動トランジスタTDrvは、ゲート電極31、ゲート絶縁層32、半導体層33、半導体層33に設けられたソース/ドレイン領域35、及び、ソース/ドレイン領域35の間の半導体層33の部分が該当するチャネル形成領域34から構成されている。一方、コンデンサ部C1は、他方の電極36、ゲート絶縁層32の延在部から構成された誘電体層、及び、一方の電極37(第2ノードND2に相当する)から成る。ゲート電極31、ゲート絶縁層32の一部、及び、コンデンサ部C1を構成する他方の電極36は、支持体20上に形成されている。駆動トランジスタTDrvの一方のソース/ドレイン領域35は配線38に接続され、他方のソース/ドレイン領域35は一方の電極37(第2ノードND2に相当する)に接続されている。駆動トランジスタTDrv及びコンデンサ部C1等は、層間絶縁層40で覆われており、層間絶縁層40上に、アノード電極51、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、及び、カソード電極53から成る発光部ELPが設けられている。尚、図面においては、正孔輸送層、発光層、及び、電子輸送層を1層52で表した。発光部ELPが設けられていない層間絶縁層40の部分の上には、第2層間絶縁層54が設けられ、第2層間絶縁層54及びカソード電極53上には透明な基板21が配置されており、発光層にて発光した光は、基板21を通過して、外部に出射される。尚、一方の電極37(第2ノードND2)とアノード電極51とは、層間絶縁層40に設けられたコンタクトホールによって接続されている。また、カソード電極53は、第2層間絶縁層54、層間絶縁層40に設けられたコンタクトホール56,55を介して、ゲート絶縁層32の延在部上に設けられた配線39に接続されている。
【0051】
以上、実施例の有機EL表示装置、及び、発光部ELPを駆動するための駆動回路の構成について説明した。
【0052】
後述する図1及び図5に示すように、実施例の駆動方法によれば、各有機EL素子10には、発光制御トランジスタ制御線CLEL_Cから第1の電圧V1_ON、第2の電圧V2_OFF、第3の電圧V3_ONから成る波形BF0〜BFNで示す電圧が印加される。従来の駆動方法は、発光制御トランジスタTEL_Cのゲート電極に第3の電圧V3_ON、第2の電圧V2_OFFを順次印加する態様に相当する。実施例の駆動方法によれば、後述するように、閾値電圧キャンセル処理を行うに際し、オフ状態とする前の発光制御トランジスタTEL_Cのゲート電極には第1の電圧V1_ONが印加される。そして、これらの電圧は、|V1_ON−V2_OFF|<|V3_ON−V2_OFF|という関係を満たす。
【0053】
以下、実施例の駆動方法について説明するが、上述した背景技術における駆動回路の動作との対比の便宜上、ここでは、図2に示す5Tr/1C駆動回路の動作に基づいて説明する。
【0054】
図1は、実施例の駆動方法において、図4に示す[期間−TP(5)2]〜[期間−TP(5)7]において、有機EL表示装置の発光制御トランジスタ制御線CLEL_Cを伝達する信号の波形BF0,BF1,BFNを模式的に示した図である。5Tr/1C駆動回路の等価回路図を図2に示し、有機EL表示装置の概念図を図3に示し、駆動のタイミングチャートを模式的に図4に示す。図5は背景技術において参照した図20に対応し、図1に示す波形BF0,BF1,BFNと、図4の上段に示すタイミングチャートとを対比して示した図である。各トランジスタのオン/オフ状態等を模式的に図6の(A)〜(D)及び図7の(A)〜(E)に示す。
【0055】
実施例の駆動方法においては、背景技術で概略を述べたように、
(a)第1ノードND1と第2ノードND2との間の電位差が、駆動トランジスタTDrvの閾値電圧Vthを越え、且つ、第2ノードND2と発光部ELPに備えられたカソード電極との間の電位差が、発光部ELPの閾値電圧Vth-ELを越えないように、第1ノードND1に第1ノード初期化電圧を印加し、第2ノードND2に第2ノード初期化電圧を印加する前処理を行い、次いで、
(b)第1ノードND1の電位を保った状態で、第1ノードND1の電位から駆動トランジスタTDrvの閾値電圧Vthを減じた電位に向かって、第2ノードND2の電位を変化させる閾値電圧キャンセル処理を行い、その後、
(c)走査線SCLからの信号によりオン状態とされた映像信号書込みトランジスタTSigを介して、データ線DTLから映像信号を第1ノードND1に印加する書込み処理を行い、次いで、
(d)走査線SCLからの信号により映像信号書込みトランジスタTSigをオフ状態とすることにより第1ノードND1を浮遊状態とし、電流供給部100から、発光制御トランジスタTEL_Cと駆動トランジスタTDrvとを介して、第1ノードND1と第2ノードND2との間の電位差の値に応じた電流を発光部ELPに流すことにより、発光部ELPを駆動する。
【0056】
尚、実施例の理解の便宜を図るため、上記の工程(a)、工程(c)の詳細は、後程、図4、図6の(A)〜(C)を参照しつつ詳細に説明する。
【0057】
以下、説明の便宜のため、発光制御トランジスタTEL_Cのゲート電極の電圧として20ボルトを境として、発光制御トランジスタTEL_Cの動作が線形領域から非飽和領域に切り替わるとする。即ち、臨界電圧は20ボルトである。
【0058】
発明が解決しようとする課題の欄において説明したが、図4に示す[期間−TP(5)2]及びこの前後において、閾値電圧キャンセル処理が行われる。そして、従来の駆動方法にあっては、図20に示すように、発光制御トランジスタ制御回路103の信号の波形AF0は、発光制御トランジスタTEL_Cをオン状態とするための電圧(例えば30ボルト)と、オフ状態とするための電圧(例えば−10ボルト)の2値から成る矩形波であった。
【0059】
一方、実施例にあっては、閾値電圧キャンセル処理を行う前記工程(b)は、以下の工程(b−1)、工程(b−2)から構成されている。
【0060】
[工程(b−1)]
[期間−TP(5)2]の始期において発光制御トランジスタ制御回路103の動作に基づき、発光制御トランジスタTEL_Cをオン状態とするための第1の電圧V1_ON(例えば18ボルト)を、発光制御トランジスタ制御線CLEL_Cを介して発光制御トランジスタTEL_Cのゲート電極に印加する。そして、オン状態の発光制御トランジスタTEL_Cを介して駆動トランジスタTDrvの一方のソース/ドレイン領域を電流供給部100と導通させ、以て、駆動トランジスタTDrvの一方のソース/ドレイン領域の電位を前記工程(a)における第2ノードND2の電位よりも高くする。より具体的には、前記工程(a)における第2ノードND2の電位に駆動トランジスタTDrvの閾値電圧Vthを加えた電圧を越える電圧を、電流供給部100から駆動トランジスタTDrvの一方のソース/ドレイン領域に印加する。その結果、第1ノードND1の電位から駆動トランジスタTDrvの閾値電圧Vthを減じた電位に向かって、第2ノードND2の電位は変化する。
【0061】
[工程(b−2)]
次いで、[期間−TP(5)3]の始期において、発光制御トランジスタ制御回路103の動作に基づき、発光制御トランジスタTEL_Cをオフ状態とするための第2の電圧V2_OFF(例えば−10ボルト)を、発光制御トランジスタ制御線CLEL_Cを介して発光制御トランジスタTEL_Cのゲート電極に印加する。
【0062】
そして、工程(d)において、発光制御トランジスタTEL_Cをオン状態とするための第3の電圧V3_ON(例えば30ボルト)を、発光制御トランジスタ制御線CLEL_Cを介して発光制御トランジスタTEL_Cのゲート電極に印加し、[期間−TP(5)7]においてオン状態の発光制御トランジスタTEL_Cを介して駆動トランジスタTDrvの一方のソース/ドレイン領域を電流供給部100と導通させ、以て、第1ノードND1と第2ノードND2との間の電位差の値に応じた電流を発光部ELPに流す。尚、実施例においては、第1ノードND1を浮遊状態とする前から、第3の電圧V3_ONを発光制御トランジスタTEL_Cのゲート電極に印加することにより、上述した移動度補正処理をも行う態様とした。
【0063】
以下の工程(b−1)、工程(b−2)、工程(d)における駆動回路の動作の詳細は、後ほど図4、図6の(D)、図7の(A)〜(E)を参照しつつ詳細に説明する。
【0064】
発光制御トランジスタ制御回路103の信号の波形BF0は、図5に示すように、上述した工程(b−1)、工程(b−2)、工程(d)に対応し、上述した第1の電圧V1_ON、第2の電圧V2_OFF、第3の電圧V3_ONの3値から成る。これらの電圧は|V1_ON−V2_OFF|<|V3_ON−V2_OFF|を満たす関係にある。
【0065】
背景技術で説明したと同様に、上記の波形BF0も発光制御トランジスタ制御線CLEL_Cを伝搬する際に立ち上がり/立ち下がりが鈍り、変形する。図1及び図5に示す波形BF1,BFNは、図19及び図20に示した波形AF1,AFNと同様に、発光制御トランジスタ制御回路103に最も近い、左端の有機EL素子101と、発光制御トランジスタ制御回路103から最も離れた、右端の有機EL素子10Nとに印加される波形を示す。図1の下段、及び、図5に示すΔT1’は、波形BF1の立ち下がりにおいて、発光制御トランジスタTEL_Cのオン状態とオフ状態が切り替わる迄の時間を示し(理想的には、ΔT1’は0である)、ΔTn’は、波形BFNの立ち下がりにおいて、発光制御トランジスタTEL_Cのオン状態とオフ状態が切り替わる迄の時間を示す。
【0066】
従来の駆動方法においては、工程(b)において、発光制御トランジスタTEL_Cをオフ状態とする前のゲート電極の電圧は30ボルトであった。一方、実施例の駆動方法においては、発光制御トランジスタTEL_Cをオフ状態とする前のゲート電極の電圧はV1_ON(18ボルト)である。従って、図5に示すように、[期間−TP(5)2]の波形BFNの立ち下がりにおける時間ΔTn’は、図20の時間ΔTnよりも短い。即ち、図20に示すΔT1、ΔTnとの関係において、|ΔTn−ΔT1|>|ΔTn’−ΔT1’|である。即ち、波形の立ち下がりにおいてソース/ドレイン領域A1,A2の電位が電圧VCC側に保持される時間の差が減少する。これにより、左端の有機EL素子101における発光制御トランジスタTEL_Cと駆動トランジスタTDrvとの接続部の電位変動と、右端の有機EL素子10Nにおける発光制御トランジスタTEL_Cと駆動トランジスタTDrvとの接続部の電位変動との差が小さくなる。
【0067】
発明が解決しようとする課題の欄において説明したように、発光制御トランジスタTEL_Cと駆動トランジスタTDrvとの接続部の電位変動は、最終的には第2ノードND2に伝播する。そして、これに起因して[期間−TP(5)7]におけるドレイン電流の値が変動する。実施例においては、上述したように、発光制御トランジスタ制御回路103に最も近い左端の有機EL素子101と、発光制御トランジスタ制御回路103から最も離れた右端の有機EL素子10Nにおける電位変動との差が小さくなる。他の有機EL素子10においても同様である。従って、[期間−TP(5)7]におけるドレイン電流の値の変動が小さくなり、表示画面の輝度均一性の悪化を抑制することができる。
【0068】
また、図5と図20に示すように、[期間−TP(5)7]においては、発光制御トランジスタTEL_Cをオン状態とするために、従来の駆動方法と同様の値の第3の電圧V3_ONをゲート電極に印加する。従って、工程(d)における発光制御トランジスタの電流容量は従来の駆動方法と同様となり、発光部の発光輝度に影響を与えることもない。
【0069】
以上、実施例の駆動方法について説明した。
【0070】
以下、5Tr/1C駆動回路、4Tr/1C駆動回路、3Tr/1C駆動回路、及び、これらの駆動回路を用いた発光部ELPの駆動方法を説明する。
【0071】
有機EL表示装置は、(N/3)×M個の2次元マトリクス状に配列された画素から構成されているが、以下の説明において、1つの画素は、3つの副画素(赤色を発光する赤色発光副画素、緑色を発光する緑色発光副画素、青色を発光する青色発光副画素)から構成されているとする。また、各画素を構成する有機EL素子10は、線順次駆動されるとし、表示フレームレートをFR(回/秒)とする。即ち、第m行目(但し、m=1,2,3・・・M)に配列された(N/3)個の画素(N個の副画素)のそれぞれを構成する有機EL素子10が同時に駆動される。換言すれば、1つの行を構成する各有機EL素子10にあっては、その発光/非発光のタイミングは、それらが属する行単位で制御される。尚、1つの行を構成する各画素について映像信号を書き込む処理は、全ての画素について同時に映像信号を書き込む処理(以下、単に、同時書込み処理と呼ぶ場合がある)であってもよいし、各画素毎に順次映像信号を書き込む処理(以下、単に、順次書込み処理と呼ぶ場合がある)であってもよい。いずれの書込み処理とするかは、駆動回路の構成に応じて適宜選択すればよい。
【0072】
ここで、原則として、第m行目、第n列(但し、n=1,2,3・・・N)に位置する画素における1つの副画素を構成する有機EL素子10に関する駆動、動作を説明するが、係る副画素あるいは有機EL素子10を、以下、第(n,m)番目の副画素あるいは第(n,m)番目の有機EL素子10と呼ぶ。そして、第m行目に配列された各有機EL素子10の水平走査期間(第m番目の水平走査期間)が終了するまでに、各種の処理(後述する閾値電圧キャンセル処理、書込み処理、移動度補正処理)が行われる。尚、書込み処理や移動度補正処理は、第m番目の水平走査期間内に行われる必要がある。一方、駆動回路の種類によっては、閾値電圧キャンセル処理やこれに伴う前処理を第m番目の水平走査期間より先行して行うことができる。
【0073】
そして、上述した各種の処理が全て終了した後、第m行目に配列された各有機EL素子10を構成する発光部を発光させる。尚、上述した各種の処理が全て終了した後、直ちに発光部を発光させてもよいし、所定の期間(例えば、所定の行数分の水平走査期間)が経過した後に発光部を発光させてもよい。この所定の期間は、有機EL表示装置の仕様や駆動回路の構成等に応じて、適宜設定することができる。尚、以下の説明においては、説明の便宜のため、各種の処理終了後、直ちに発光部を発光させるものとする。そして、第m行目に配列された各有機EL素子10を構成する発光部の発光は、第(m+m’)行目に配列された各有機EL素子10の水平走査期間の開始直前まで継続される。ここで、「m’」は、有機EL表示装置の設計仕様によって決定される。即ち、或る表示フレームの第m行目に配列された各有機EL素子10を構成する発光部の発光は、第(m+m’−1)番目の水平走査期間まで継続される。一方、第(m+m’)番目の水平走査期間の始期から、次の表示フレームにおける第m番目の水平走査期間内において書込み処理や移動度補正処理が完了するまで、第m行目に配列された各有機EL素子10を構成する発光部は、非発光状態を維持する。上述した非発光状態の期間(以下、単に、非発光期間と呼ぶ場合がある)を設けることにより、アクティブマトリクス駆動に伴う残像ボケが低減され、動画品位をより優れたものとすることができる。但し、各副画素(有機EL素子10)の発光状態/非発光状態は、以上に説明した状態に限定するものではない。また、水平走査期間の時間長は、(1/FR)×(1/M)秒未満の時間長である。(m+m’)の値がMを越える場合、越えた分の水平走査期間は、次の表示フレームにおいて処理される。
【0074】
1つのトランジスタの有する2つのソース/ドレイン領域において、「一方のソース/ドレイン領域」という用語を、電源部に接続された側のソース/ドレイン領域といった意味において使用する場合がある。また、トランジスタがオン状態にあるとは、ソース/ドレイン領域間にチャネルが形成されている状態を意味する。係るトランジスタの一方のソース/ドレイン領域から他方のソース/ドレイン領域に電流が流れているか否かは問わない。一方、トランジスタがオフ状態にあるとは、ソース/ドレイン領域間にチャネルが形成されていない状態を意味する。また、或るトランジスタのソース/ドレイン領域が他のトランジスタのソース/ドレイン領域に接続されているとは、或るトランジスタのソース/ドレイン領域と他のトランジスタのソース/ドレイン領域とが同じ領域を占めている形態を包含する。更には、ソース/ドレイン領域は、不純物を含有したポリシリコンやアモルファスシリコン等の導電性物質から構成することができるだけでなく、金属、合金、導電性粒子、これらの積層構造、有機材料(導電性高分子)から成る層から構成することができる。また、以下の説明で用いるタイミングチャートにおいて、各期間を示す横軸の長さ(時間長)は模式的なものであり、各期間の時間長の割合を示すものではない。
【0075】
[5Tr/1C駆動回路]
上述したように、5Tr/1C駆動回路の等価回路図を図2に示し、有機EL表示装置の概念図を図3を示し、駆動のタイミングチャートを模式的に図4に示し、各トランジスタのオン/オフ状態等を模式的に図6の(A)〜(D)及び図7の(A)〜(E)に示した。
【0076】
この5Tr/1C駆動回路は、映像信号書込みトランジスタTSig、駆動トランジスタTDrv、発光制御トランジスタTEL_C、第1ノード初期化トランジスタTND1、第2ノード初期化トランジスタTND2の5つのトランジスタから構成され、更には、1つのコンデンサ部C1から構成されている。
【0077】
[発光制御トランジスタTEL_C]
発光制御トランジスタTEL_Cの一方のソース/ドレイン領域は、電流供給部100(電圧VCC)に接続され、発光制御トランジスタTEL_Cの他方のソース/ドレイン領域は、駆動トランジスタTDrvの一方のソース/ドレイン領域に接続されている。また、発光制御トランジスタTEL_Cのオン/オフ動作は、発光制御トランジスタTEL_Cのゲート電極に接続された発光制御トランジスタ制御線CLEL_Cによって制御される。尚、電流供給部100は、有機EL素子10の発光部ELPに電流を供給し、発光部ELPの発光を制御するために設けられている。また、発光制御トランジスタ制御線CLEL_Cは、発光制御トランジスタ制御回路103に接続されている。
【0078】
[駆動トランジスタTDrv]
駆動トランジスタTDrvの一方のソース/ドレイン領域は、上述のとおり、発光制御トランジスタTEL_Cの他方のソース/ドレイン領域に接続されている。即ち、駆動トランジスタTDrvの一方のソース/ドレイン領域は、発光制御トランジスタTEL_Cを介して、電流供給部100に接続されている。一方、駆動トランジスタTDrvの他方のソース/ドレイン領域は、
(1)発光部ELPのアノード電極、
(2)第2ノード初期化トランジスタTND2の他方のソース/ドレイン領域、及び、
(3)コンデンサ部C1の一方の電極、
に接続されており、第2ノードND2を構成する。また、駆動トランジスタTDrvのゲート電極は、
(1)映像信号書込みトランジスタTSigの他方のソース/ドレイン領域、
(2)第1ノード初期化トランジスタTND1の他方のソース/ドレイン領域、及び、
(3)コンデンサ部C1の他方の電極、
に接続されており、第1ノードND1を構成する。
【0079】
ここで、駆動トランジスタTDrvは、有機EL素子10の発光状態においては、以下の式(1)に従ってドレイン電流Idsを流すように駆動される。有機EL素子10の発光状態においては、駆動トランジスタTDrvの一方のソース/ドレイン領域はドレイン領域として働き、他方のソース/ドレイン領域はソース領域として働く。説明の便宜のため、以下の説明において、駆動トランジスタTDrvの一方のソース/ドレイン領域を単にドレイン領域と呼び、他方のソース/ドレイン領域を単にソース領域と呼ぶ場合がある。尚、
μ :実効的な移動度
L :チャネル長
W :チャネル幅
Vgs:ゲート電極とソース領域との間の電位差
Vth:閾値電圧
Cox:(ゲート絶縁層の比誘電率)×(真空の誘電率)/(ゲート絶縁層の厚さ)
k≡(1/2)・(W/L)・Cox
とする。
【0080】
Ids=k・μ・(Vgs−Vth)2 (1)
【0081】
このドレイン電流Idsが有機EL素子10の発光部ELPを流れることで、有機EL素子10の発光部ELPが発光する。更には、このドレイン電流Idsの値の大小によって、有機EL素子10の発光部ELPにおける発光状態(輝度)が制御される。
【0082】
[映像信号書込みトランジスタTSig]
映像信号書込みトランジスタTSigの他方のソース/ドレイン領域は、上述のとおり、駆動トランジスタTDrvのゲート電極に接続されている。一方、映像信号書込みトランジスタTSigの一方のソース/ドレイン領域は、データ線DTLに接続されている。そして、映像信号出力回路102からデータ線DTLを介して、発光部ELPにおける輝度を制御するための映像信号VSigが、一方のソース/ドレイン領域に供給される。尚、データ線DTLを介して、VSig以外の種々の信号・電圧(プリチャージ駆動のための信号や各種の基準電圧等)が、一方のソース/ドレイン領域に供給されてもよい。また、映像信号書込みトランジスタTSigのオン/オフ動作は、映像信号書込みトランジスタTSigのゲート電極に接続された走査線SCLによって制御される。
【0083】
[第1ノード初期化トランジスタTND1]
第1ノード初期化トランジスタTND1の他方のソース/ドレイン領域は、上述のとおり、駆動トランジスタTDrvのゲート電極に接続されている。一方、第1ノード初期化トランジスタTND1の一方のソース/ドレイン領域には、第1ノードND1の電位(即ち、駆動トランジスタTDrvのゲート電極の電位)を初期化するための電圧VOfsが供給される。また、第1ノード初期化トランジスタTND1のオン/オフ動作は、第1ノード初期化トランジスタTND1のゲート電極に接続された第1ノード初期化トランジスタ制御線AZND1によって制御される。第1ノード初期化トランジスタ制御線AZND1は、第1ノード初期化トランジスタ制御回路104に接続されている。
【0084】
[第2ノード初期化トランジスタTND2]
第2ノード初期化トランジスタTND2の他方のソース/ドレイン領域は、上述のとおり、駆動トランジスタTDrvのソース領域に接続されている。一方、第2ノード初期化トランジスタTND2の一方のソース/ドレイン領域には、第2ノードND2の電位(即ち、駆動トランジスタTDrvのソース領域の電位)を初期化するための電圧VSSが供給される。また、第2ノード初期化トランジスタTND2のオン/オフ動作は、第2ノード初期化トランジスタTND2のゲート電極に接続された第2ノード初期化トランジスタ制御線AZND2によって制御される。第2ノード初期化トランジスタ制御線AZND2は、第2ノード初期化トランジスタ制御回路105に接続されている。
【0085】
[発光部ELP]
発光部ELPのアノード電極は、上述のとおり、駆動トランジスタTDrvのソース領域に接続されている。一方、発光部ELPのカソード電極には、電圧VCatが印加される。発光部ELPの寄生容量を符号CELで表す。また、発光部ELPの発光に必要とされる閾値電圧をVth-ELとする。即ち、発光部ELPのアノード電極とカソード電極との間にVth-EL以上の電圧が印加されると、発光部ELPは発光する。
【0086】
以下の説明において、電圧あるいは電位の値を以下のとおりとするが、これは、あくまでも説明のための値であり、これらの値に限定されるものではない。
【0087】
VSig :発光部ELPにおける輝度を制御するための映像信号
・・・0ボルト〜10ボルト
VCC :発光部ELPの発光を制御するための電流供給部の電圧
・・・20ボルト
VOfs :駆動トランジスタTDrvのゲート電極の電位(第1ノードND1の電位)を初期化するための電圧
・・・0ボルト
VSS :駆動トランジスタTDrvのソース領域の電位(第2ノードND2の電位)を初期化するための電圧
・・・−10ボルト
Vth :駆動トランジスタTDrvの閾値電圧
・・・3ボルト
VCat :発光部ELPのカソード電極に印加される電圧
・・・0ボルト
Vth-EL:発光部ELPの閾値電圧
・・・3ボルト
V1_ON:発光制御トランジスタをオン状態とするための第1の電圧
・・・18ボルト
V2_OFF:発光制御トランジスタをオフ状態とするための第2の電圧
・・・−10ボルト
V3_ON:発光制御トランジスタをオン状態とするための第3の電圧
・・・30ボルト
【0088】
以下、5Tr/1C駆動回路の動作説明を行う。尚、上述したように、各種の処理(閾値電圧キャンセル処理、書込み処理、移動度補正処理)が全て完了した後、直ちに発光状態が始まるものとして説明するが、これに限るものではない。後述する4Tr/1C駆動回路、3Tr/1C駆動回路の説明においても同様である。
【0089】
尚、従来の駆動方法における動作は、実質的に[期間−TP(5)2]において、工程(b−1)で第1の電圧V1_ONの代わりに第3の電圧V3_ONを印加する動作となる点が相違する他、同様の動作となる。
【0090】
[期間−TP(5)-1](図4、図6の(A)参照)
この[期間−TP(5)-1]は、例えば、前の表示フレームにおける動作であり、前回の各種の処理完了後に第(n,m)番目の有機EL素子10が発光状態にある期間である。即ち、第(n,m)番目の副画素を構成する有機EL素子10における発光部ELPには、後述する式(5)に基づくドレイン電流I’dsが流れており、第(n,m)番目の副画素を構成する有機EL素子10の輝度は、係るドレイン電流I’dsに対応した値である。ここで、映像信号書込みトランジスタTSig、第1ノード初期化トランジスタTND1及び第2ノード初期化トランジスタTND2はオフ状態であり、発光制御トランジスタTEL_C及び駆動トランジスタTDrvはオン状態である。第(n,m)番目の有機EL素子10の発光状態は、第(m+m’)行目に配列された有機EL素子10の水平走査期間の開始直前まで継続される。
【0091】
図4に示す[期間−TP(5)0]〜[期間−TP(5)4]は、前回の各種の処理完了後の発光状態が終了した後から、次の書込み処理が行われる直前までの動作期間である。即ち、この[期間−TP(5)0]〜[期間−TP(5)4]は、例えば、前の表示フレームにおける第(m+m’)番目の水平走査期間の始期から、現表示フレームにおける第(m−1)番目の水平走査期間の終期までの或る時間長さの期間である。尚、[期間−TP(5)1]〜[期間−TP(5)4]を、現表示フレームにおける第m番目の水平走査期間内に含む構成とすることもできる。
【0092】
そして、この[期間−TP(5)0]〜[期間−TP(5)4]において、第(n,m)番目の有機EL素子10は非発光状態にある。即ち、[期間−TP(5)0]〜[期間−TP(5)1]、[期間−TP(5)3]〜[期間−TP(5)4]においては、発光制御トランジスタTEL_Cはオフ状態であるので、有機EL素子10は発光しない。尚、[期間−TP(5)2]においては、発光制御トランジスタTEL_Cはオン状態となる。しかし、この期間においては後述する閾値電圧キャンセル処理が行われている。閾値電圧キャンセル処理の説明において詳しく述べるが、後述する式(2)を満たすことを前提とすれば、有機EL素子10が発光することはない。
【0093】
以下、[期間−TP(5)0]〜[期間−TP(5)4]の各期間について、先ず、説明する。尚、[期間−TP(5)1]の始期や、[期間−TP(5)1]〜[期間−TP(5)4]の各期間の長さは、有機EL表示装置の設計に応じて適宜設定すればよい。
【0094】
[期間−TP(5)0]
上述したように、この[期間−TP(5)0]において、第(n,m)番目の有機EL素子10は、非発光状態にある。映像信号書込みトランジスタTSig、第1ノード初期化トランジスタTND1、第2ノード初期化トランジスタTND2はオフ状態である。また、[期間−TP(5)-1]から[期間−TP(5)0]に移る時点で、発光制御トランジスタTEL_Cがオフ状態となるが故に、第2ノードND2(駆動トランジスタTDrvのソース領域あるいは発光部ELPのアノード電極)の電位は、(Vth-EL+VCat)まで低下し、発光部ELPは非発光状態となる。また、第2ノードND2の電位低下に倣うように、浮遊状態の第1ノードND1(駆動トランジスタTDrvのゲート電極)の電位も低下する。
【0095】
[期間−TP(5)1](図4、図5、図6の(B)及び(C)参照)
この期間内に、上記の工程(a)、即ち、上述した前処理を行う。以下、詳細に説明する。
【0096】
即ち、[期間−TP(5)1]の開始時、第1ノード初期化トランジスタ制御回路104及び第2ノード初期化トランジスタ制御回路105の動作に基づき、第1ノード初期化トランジスタ制御線AZND1及び第2ノード初期化トランジスタ制御線AZND2をハイレベルとし、第1ノード初期化トランジスタTND1及び第2ノード初期化トランジスタTND2をオン状態とする。尚、第1ノード初期化トランジスタTND1のオン状態及び第2ノード初期化トランジスタTND2を同時にオン状態としてもよいし、第1ノード初期化トランジスタTND1を先にオン状態としてもよいし、第2ノード初期化トランジスタTND2を先にオン状態としてもよい。そして、オン状態とされた第1ノード初期化トランジスタTND1を介して、第1ノード初期化電圧供給線PSND1から第1ノードND1に第1ノード初期化電圧を印加し、オン状態とされた第2ノード初期化トランジスタTND2を介して、第2ノード初期化電圧供給線PSND2から第2ノードND2に第2ノード初期化電圧を印加する。
【0097】
その結果、第1ノードND1の電位はVOfs(0ボルト)となる。一方、第2ノードND2の電位は、VSS(−10ボルト)となる。第1ノードND1と第2ノードND2との間の電位差は10ボルトであり、駆動トランジスタTDrvの閾値電圧Vthは3ボルトであるので、駆動トランジスタTDrvはオン状態となる。尚、第2ノードND2と発光部ELPに備えられたカソード電極との間の電位差は−10ボルトであり、発光部ELPの閾値電圧Vth-ELを越えない。
【0098】
以上の処理により、駆動トランジスタTDrvのゲート電極とソース領域との間の電位差がVth以上となる。駆動トランジスタTDrvはオン状態である。
【0099】
この[期間−TP(5)1]の完了以前において、第2ノード初期化トランジスタ制御回路105の動作に基づき、第2ノード初期化トランジスタ制御線AZND2をローレベルとすることによって、第2ノード初期化トランジスタTND2をオフ状態とする。
【0100】
[期間−TP(5)2]〜[期間−TP(5)3](図4、図5、図6の(D)、図7の(A)参照)
この期間に、上記の工程(b)、より具体的には、上述した工程(b−1)、工程(b−2)から構成された閾値電圧キャンセル処理を行う。以下、詳細に説明する。
【0101】
先ず、上述した工程(b−1)を行う。即ち、第1ノード初期化トランジスタTND1のオン状態を維持したまま、[期間−TP(5)2]の始期において発光制御トランジスタ制御回路103の動作に基づき、発光制御トランジスタTEL_Cをオン状態とするための第1の電圧V1_ONを、発光制御トランジスタ制御線CLEL_Cを介して発光制御トランジスタTEL_Cのゲート電極に印加する。そして、発光制御トランジスタTEL_Cをオン状態とする。その結果、第1ノードND1の電位は変化しないが(VOfs=0ボルトを維持)、第1ノードND1の電位から駆動トランジスタTDrvの閾値電圧Vthを減じた電位に向かって、第2ノードND2の電位は変化する。即ち、浮遊状態の第2ノードND2の電位が上昇する。そして、駆動トランジスタTDrvのゲート電極とソース領域との間の電位差がVthに達すると、駆動トランジスタTDrvがオフ状態となる。具体的には、浮遊状態の第2ノードND2の電位が(VOfs−Vth=−3ボルト>VSS)に近づき、最終的に(VOfs−Vth)となる。ここで、以下の式(2)が保証されていれば、云い換えれば、式(2)を満足するように電位を選択、決定しておけば、発光部ELPが発光することはない。
【0102】
(VOfs−Vth)<(Vth-EL+VCat) (2)
【0103】
次いで、上述した工程(b−2)を行う。即ち、第1ノード初期化トランジスタTND1のオン状態を維持したまま、[期間−TP(5)3]の始期において、発光制御トランジスタ制御回路103の動作に基づき、発光制御トランジスタTEL_Cをオフ状態とするための第2の電圧V2_OFFを、発光制御トランジスタ制御線CLEL_Cを介して発光制御トランジスタTEL_Cのゲート電極に印加する。その結果、発光制御トランジスタTEL_Cはオフ状態となる。第1ノードND1の電位は変化せず(VOfs=0ボルトを維持)、浮遊状態の第2ノードND2の電位も略(VOfs−Vth=−3ボルト)を保持する。
【0104】
以上説明したように、工程(b−1)、工程(b−2)により、第2ノードND2の電位は、最終的に、(VOfs−Vth)となる。即ち、駆動トランジスタTDrvの閾値電圧Vth、及び、駆動トランジスタTDrvのゲート電極を初期化するための電圧VOfsのみに依存して、第2ノードND2の電位は決定される。そして、発光部ELPの閾値電圧Vth-ELとは無関係である。
【0105】
[期間−TP(5)4](図7の(B)参照)
次いで、第1ノード初期化トランジスタ制御回路104の動作に基づき第1ノード初期化トランジスタ制御線AZND1をローレベルとすることによって、第1ノード初期化トランジスタTND1をオフ状態とする。第1ノードND1及び第2ノードND2の電位は、実質上、変化しない。実際には、寄生容量等の静電結合により電位変化が生じ得るが、通常、これらは無視することができる。
【0106】
次いで、[期間−TP(5)5]〜[期間−TP(5)7]の各期間について説明する。尚、後述するように、[期間−TP(5)5]において書込み処理が行われ、[期間−TP(5)6]において移動度補正処理が行われる。上述したように、これらの処理は、第m番目の水平走査期間内に行われる必要がある。説明の便宜のため、[期間−TP(5)5]の始期と[期間−TP(5)6]の終期とは、それぞれ、第m番目の水平走査期間の始期と終期とに一致するものとして説明する。
【0107】
[期間−TP(5)5](図4、及び、図7の(C)参照)
この期間内に、上記の工程(c)、即ち、上述した書込み処理を、以下のように行う。具体的には、第1ノード初期化トランジスタTND1、第2ノード初期化トランジスタTND2、及び、発光制御トランジスタTEL_Cのオフ状態を維持したまま、映像信号出力回路102の動作に基づき、データ線DTLの電位を、発光部ELPにおける輝度を制御するための映像信号VSigとし、次いで、走査回路101の動作に基づき走査線SCLをハイレベルとすることによって、映像信号書込みトランジスタTSigをオン状態とする。その結果、第1ノードND1の電位は、VSigへと上昇する。
【0108】
ここで、コンデンサ部C1の容量は値c1であり、発光部ELPの寄生容量CELの容量は値cELである。そして、駆動トランジスタTDrvのゲート電極とソース領域との間の寄生容量の値をcgsとする。駆動トランジスタTDrvのゲート電極の電位がVOfsからVSig(>VOfs)に変化したとき、コンデンサ部C1の両端の電位(第1ノードND1及び第2ノードND2の電位)は、原則として、変化する。即ち、駆動トランジスタTDrvのゲート電極の電位(=第1ノードND1の電位)の変化分(VSig−VOfs)に基づく電荷が、コンデンサ部C1、発光部ELPの寄生容量CEL、駆動トランジスタTDrvのゲート電極とソース領域との間の寄生容量に振り分けられる。然るに、値cELが、値c1及び値cgsと比較して十分に大きな値であれば、駆動トランジスタTDrvのゲート電極の電位の変化分(VSig−VOfs)に基づく駆動トランジスタTDrvのソース領域(第2ノードND2)の電位の変化は小さい。そして、一般に、発光部ELPの寄生容量CELの容量値cELは、コンデンサ部C1の容量値c1及び駆動トランジスタTDRVの寄生容量の値cgsよりも大きい。そこで、説明の便宜のため、特段の必要がある場合を除き、第1ノードND1の電位変化により生ずる第2ノードND2の電位変化は考慮せずに説明を行う。他の駆動回路においても同様である。尚、図4に示した駆動のタイミングチャートも、第1ノードND1の電位変化により生ずる第2ノードND2の電位変化を考慮せずに示した。駆動トランジスタTDrvのゲート電極(第1ノードND1)の電位をVg、駆動トランジスタTDrvのソース領域(第2ノードND2)の電位をVsとしたとき、Vgの値、Vsの値は以下のとおりとなる。それ故、第1ノードND1と第2ノードND2の電位差、即ち、駆動トランジスタTDrvのゲート電極とソース領域との間の電位差Vgsは、以下の式(3)で表すことができる。
【0109】
Vg =VSig
Vs ≒VOfs−Vth
Vgs≒VSig−(VOfs−Vth) (3)
【0110】
即ち、駆動トランジスタTDrvに対する書込み処理において得られたVgsは、発光部ELPにおける輝度を制御するための映像信号VSig、駆動トランジスタTDrvの閾値電圧Vth、及び、駆動トランジスタTDrvのゲート電極を初期化するための電圧VOfsのみに依存している。そして、発光部ELPの閾値電圧Vth-ELとは無関係である。
【0111】
[期間−TP(5)6](図7の(D)参照)
その後、駆動トランジスタTDrvの移動度μの大小に基づく駆動トランジスタTDrvのソース領域(第2ノードND2)の電位の補正(移動度補正処理)を行う。
【0112】
一般に、駆動トランジスタTDrvをポリシリコン薄膜トランジスタ等から作製した場合、トランジスタ間で移動度μにばらつきが生じることは避け難い。従って、移動度μに差異がある複数の駆動トランジスタTDrvのゲート電極に同じ値の映像信号VSigを印加したとしても、移動度μの大きい駆動トランジスタTDrvを流れるドレイン電流Idsと、移動度μの小さい駆動トランジスタTDrvを流れるドレイン電流Idsとの間に、差異が生じてしまう。そして、このような差異が生じると、有機EL表示装置の画面の均一性(ユニフォーミティ)が損なわれてしまう。
【0113】
従って、具体的には、駆動トランジスタTDrvのオン状態を維持したまま、発光制御トランジスタ制御回路103の動作に基づき、発光制御トランジスタTEL_Cをオン状態とするための第3の電圧V3_ONを、発光制御トランジスタ制御線CLEL_Cを介して発光制御トランジスタTEL_Cのゲート電極に印加する。次いで、所定の時間(t0)が経過した後、走査回路101の動作に基づき走査線SCLをローレベルとすることによって、映像信号書込みトランジスタTSigをオフ状態とし、第1ノードND1(駆動トランジスタTDrvのゲート電極)を浮遊状態とする。そして、以上の結果、駆動トランジスタTDrvの移動度μの値が大きい場合、駆動トランジスタTDrvのソース領域における電位の上昇量ΔV(電位補正値)は大きくなり、駆動トランジスタTDrvの移動度μの値が小さい場合、駆動トランジスタTDrvのソース領域における電位の上昇量ΔV(電位補正値)は小さくなる。ここで、駆動トランジスタTDrvのゲート電極とソース領域との間の電位差Vgsは、式(3)から以下の式(4)のように変形される。
【0114】
Vgs≒VSig−(VOfs−Vth)−ΔV (4)
【0115】
尚、移動度補正処理を実行するための所定の時間([期間−TP(5)6]の全時間t0)は、有機EL表示装置の設計の際、設計値として予め決定しておけばよい。また、このときの駆動トランジスタTDrvのソース領域における電位(VOfs−Vth+ΔV)が以下の式(2’)を満足するように、[期間−TP(5)6]の全時間t0は決定されている。そして、これによって、[期間−TP(5)6]において、発光部ELPが発光することはない。更には、この移動度補正処理によって、係数k(≡(1/2)・(W/L)・Cox)のばらつきの補正も同時に行われる。
【0116】
(VOfs−Vth+ΔV)<(Vth-EL+VCat) (2’)
【0117】
[期間−TP(5)7](図4、図5、図7の(E)参照)
以上の操作によって、閾値電圧キャンセル処理、書込み処理、移動度補正処理が完了する。その後、この期間内に、上記の工程(d)を以下のように行う。即ち、走査回路101の動作に基づき走査線SCLをローレベルとし、映像信号書込みトランジスタTSigをオフ状態とし、第1ノードND1、即ち、駆動トランジスタTDrvのゲート電極を浮遊状態とする。そして、発光制御トランジスタTEL_Cをオン状態とするための第3の電圧V3_ONを、発光制御トランジスタ制御線CLEL_Cを介して発光制御トランジスタTEL_Cのゲート電極に印加した状態を維持し、発光制御トランジスタTEL_Cのドレイン領域は、発光部ELPの発光を制御するための電流供給部100(電圧VCC、例えば20ボルト)に接続された状態に保つ。従って、以上の結果として、第2ノードND2の電位は上昇する。
【0118】
ここで、上述したとおり、駆動トランジスタTDrvのゲート電極は浮遊状態にあり、しかも、コンデンサ部C1が存在するが故に、所謂ブートストラップ回路におけると同様の現象が駆動トランジスタTDrvのゲート電極に生じ、第1ノードND1の電位も上昇する。その結果、駆動トランジスタTDrvのゲート電極とソース領域との間の電位差Vgsは、式(4)の値を保持する。
【0119】
また、第2ノードND2の電位が上昇し、(Vth-EL+VCat)を越えるので、発光部ELPは発光を開始する。このとき、発光部ELPを流れる電流は、駆動トランジスタTDrvのドレイン領域からソース領域へと流れるドレイン電流Idsであるので、式(1)で表すことができる。ここで、式(1)と式(4)から、式(1)は、以下の式(5)にように変形することができる。
【0120】
Ids=k・μ・(VSig−VOfs−ΔV)2 (5)
【0121】
従って、発光部ELPを流れる電流Idsは、例えば、VOfsを0ボルトに設定したとした場合、発光部ELPにおける輝度を制御するための映像信号VSigの値から、駆動トランジスタTDrvの移動度μに起因した第2ノードND2(駆動トランジスタTDrvのソース領域)における電位補正値ΔVの値を減じた値の2乗に比例する。云い換えれば、発光部ELPを流れる電流Idsは、発光部ELPの閾値電圧Vth-EL、及び、駆動トランジスタTDrvの閾値電圧Vthには依存しない。即ち、発光部ELPの発光量(輝度)は、発光部ELPの閾値電圧Vth-ELの影響、及び、駆動トランジスタTDrvの閾値電圧Vthの影響を受けない。そして、第(n,m)番目の有機EL素子10の輝度は、係る電流Idsに対応した値である。
【0122】
しかも、移動度μの大きな駆動トランジスタTDrvほど、電位補正値ΔVが大きくなるので、式(4)の左辺のVgsの値が小さくなる。従って、式(5)において、移動度μの値が大きくとも、(VSig−VOfs−ΔV)2の値が小さくなる結果、ドレイン電流Idsを補正することができる。即ち、移動度μの異なる駆動トランジスタTDrvにおいても、映像信号VSigの値が同じであれば、ドレイン電流Idsが略同じとなる結果、発光部ELPを流れ、発光部ELPの輝度を制御する電流Idsが均一化される。即ち、移動度μのばらつき(更には、kのばらつき)に起因する発光部の輝度のばらつきを補正することができる。
【0123】
発光部ELPの発光状態を第(m+m’−1)番目の水平走査期間まで継続する。この時点は、[期間−TP(5)-1]の終わりに相当する。
【0124】
以上によって、有機EL素子10[第(n,m)番目の副画素(有機EL素子10)]の発光の動作が完了する。
【0125】
次に、4Tr/1C駆動回路に関する説明を行う。
【0126】
[4Tr/1C駆動回路]
4Tr/1C駆動回路の等価回路図を図8に示し、有機EL表示装置の概念図を図9を示し、駆動のタイミングチャートを模式的に図10に示し、各トランジスタのオン/オフ状態等を模式的に図11の(A)〜(D)及び図12の(A)〜(D)に示す。
【0127】
この4Tr/1C駆動回路においては、前述した5Tr/1C駆動回路から、第1ノード初期化トランジスタTND1が省略されている。即ち、この4Tr/1C駆動回路は、映像信号書込みトランジスタTSig、駆動トランジスタTDrv、発光制御トランジスタTEL_C、第2ノード初期化トランジスタTND2の4つのトランジスタから構成され、更には、1つのコンデンサ部C1から構成されている。
【0128】
[発光制御トランジスタTEL_C]
発光制御トランジスタTEL_Cの構成は、5Tr/1C駆動回路において説明した発光制御トランジスタTEL_Cの構成と同じであるので、詳細な説明は省略する。
【0129】
[駆動トランジスタTDrv]
駆動トランジスタTDrvの構成は、5Tr/1C駆動回路において説明した駆動トランジスタTDrvの構成と同じであるので、詳細な説明は省略する。
【0130】
[第2ノード初期化トランジスタTND2]
第2ノード初期化トランジスタTND2の構成は、5Tr/1C駆動回路において説明した第2ノード初期化トランジスタTND2の構成と同じであるので、詳細な説明は省略する。
【0131】
[映像信号書込みトランジスタTSig]
映像信号書込みトランジスタTSigの構成は、5Tr/1C駆動回路において説明した映像信号書込みトランジスタTSigの構成と同じであるので、詳細な説明は省略する。但し、映像信号書込みトランジスタTSigの一方のソース/ドレイン領域は、データ線DTLに接続されているが、映像信号出力回路102から、発光部ELPにおける輝度を制御するための映像信号VSigだけでなく、駆動トランジスタTDrvのゲート電極を初期化するための電圧VOfsも供給される。この点が、5Tr/1C駆動回路において説明した映像信号書込みトランジスタTSigの動作と相違している。尚、映像信号出力回路102から、データ線DTLを介して、VSigやVOfs以外の信号・電圧(例えば、プリチャージ駆動のための信号)が、一方のソース/ドレイン領域に供給されてもよい。
【0132】
[発光部ELP]
発光部ELPの構成は、5Tr/1C駆動回路において説明した発光部ELPの構成と同じであるので、詳細な説明は省略する。
【0133】
以下、4Tr/1C駆動回路の動作説明を行う。
【0134】
[期間−TP(4)-1](図10、及び、図11の(A)参照)
この[期間−TP(4)-1]は、例えば、前の表示フレームにおける動作であり、5Tr/1C駆動回路において説明した[期間−TP(5)-1]と同じ動作である。
【0135】
図10に示す[期間−TP(4)0]〜[期間−TP(4)4]は、図4に示す[期間−TP(5)0]〜[期間−TP(5)4]に対応する期間であり、次の書込み処理が行われる直前までの動作期間である。そして、5Tr/1C駆動回路と同様に、[期間−TP(4)0]〜[期間−TP(4)4]において、第(n,m)番目の有機EL素子10は非発光状態にある。但し、4Tr/1C駆動回路の動作においては、図10に示す[期間−TP(4)5]〜[期間−TP(4)6]の他、[期間−TP(4)2]〜[期間−TP(4)4]も第m番目の水平走査期間に包含される点が、5Tr/1C駆動回路の動作とは異なる。尚、説明の便宜のため、[期間−TP(4)2]の始期、及び、[期間−TP(4)6]の終期は、それぞれ、第m番目の水平走査期間の始期、及び、終期に一致するものとして説明する。
【0136】
以下、[期間−TP(4)0]〜[期間−TP(4)4]の各期間について、説明する。尚、5Tr/1C駆動回路において説明したと同様に、[期間−TP(4)1]の始期や、[期間−TP(4)1]〜[期間−TP(4)4]の各期間の長さは、有機EL表示装置の設計に応じて適宜設定すればよい。
【0137】
[期間−TP(4)0]
この[期間−TP(4)0]は、例えば、前の表示フレームから現表示フレームにおける動作であり、5Tr/1C駆動回路において説明した[期間−TP(5)0]と、実質的に同じ動作である。
【0138】
[期間−TP(4)1]〜[期間−TP(4)2](図11の(B)及び(C)参照)
この期間に、上記の工程(a)、即ち、上述した前処理を行う。以下、詳細に説明する。
【0139】
[期間−TP(4)1](図11の(B)参照)
この[期間−TP(4)1]は、5Tr/1C駆動回路において説明した[期間−TP(5)1]に相当する。[期間−TP(4)1]の開始時、第2ノード初期化トランジスタ制御回路105の動作に基づき第2ノード初期化トランジスタ制御線AZND2をハイレベルとすることによって、第2ノード初期化トランジスタTND2をオン状態とする。その結果、第2ノードND2の電位は、VSS(例えば、−10ボルト)となる。また、第2ノードND2の電位低下に倣うように、浮遊状態の第1ノードND1(駆動トランジスタTDrvのゲート電極)の電位も低下する。尚、[期間−TP(4)1]における第1ノードND1の電位は、[期間−TP(4)-1]における第1ノードND1の電位(前フレームのVSigの値に応じて定まる)により左右されるので、一定の値をとるものではない。
【0140】
[期間−TP(4)2](図11の(C)参照)
その後、映像信号出力回路102の動作に基づきデータ線DTLの電位をVOfsとし、走査回路101の動作に基づき走査線SCLをハイレベルとすることによって、映像信号書込みトランジスタTSigをオン状態とする。その結果、第1ノードND1の電位は、VOfs(例えば、0ボルト)となる。第2ノードND2の電位はVSS(例えば、−10ボルト)を保持する。その後、第2ノード初期化トランジスタ制御回路105の動作に基づき第2ノード初期化トランジスタ制御線AZND2をローレベルとすることによって、第2ノード初期化トランジスタTND2をオフ状態とする。
【0141】
尚、[期間−TP(4)1]の開始と同時に、あるいは、[期間−TP(4)1]の途中で、映像信号書込みトランジスタTSigをオン状態としてもよい。
【0142】
以上の処理により、駆動トランジスタTDrvのゲート電極とソース領域との間の電位差がVth以上となり、駆動トランジスタTDrvはオン状態となる。
【0143】
[期間−TP(4)3]〜[期間−TP(4)4](図11の(D)、図12の(A)参照)
この期間に、上記の工程(b)、より具体的には、上述した工程(b−1)、工程(b−2)から構成された閾値電圧キャンセル処理を行う。以下、詳細に説明する。
【0144】
[期間−TP(4)3](図11の(D)参照)
先ず、上述した工程(b−1)を行う。即ち、映像信号書込みトランジスタTSigのオン状態を維持したまま、[期間−TP(4)3]の始期において発光制御トランジスタ制御回路103の動作に基づき、発光制御トランジスタTEL_Cをオン状態とするための第1の電圧V1_ONを、発光制御トランジスタ制御線CLEL_Cを介して発光制御トランジスタTEL_Cのゲート電極に印加する。そして、発光制御トランジスタTEL_Cをオン状態とする。その結果、第1ノードND1の電位は変化しないが(VOfs=0ボルトを維持)、第1ノードND1の電位から駆動トランジスタTDrvの閾値電圧Vthを減じた電位に向かって、第2ノードND2の電位は変化する。即ち、浮遊状態の第2ノードND2の電位が上昇する。そして、駆動トランジスタTDrvのゲート電極とソース領域との間の電位差がVthに達すると、駆動トランジスタTDrvがオフ状態となる。具体的には、浮遊状態の第2ノードND2の電位が(VOfs−Vth=−3ボルト)に近づき、最終的に(VOfs−Vth)となる。ここで、上述した式(2)が保証されていれば、云い換えれば、式(2)を満足するように電位を選択、決定しておけば、発光部ELPが発光することはない。
【0145】
[期間−TP(4)4](図12の(A)参照)
次いで、上述した工程(b−2)を行う。即ち、映像信号書込みトランジスタTSigのオン状態を維持したまま、[期間−TP(4)4]の始期において、発光制御トランジスタ制御回路103の動作に基づき、発光制御トランジスタTEL_Cをオフ状態とするための第2の電圧V2_OFFを、発光制御トランジスタ制御線CLEL_Cを介して発光制御トランジスタTEL_Cのゲート電極に印加する。その結果、発光制御トランジスタTEL_Cはオフ状態となる。第1ノードND1の電位は変化せず(VOfs=0ボルトを維持)、浮遊状態の第2ノードND2の電位も略(VOfs−Vth=−3ボルト)を保持する。
【0146】
以上説明したように、工程(b−1)、工程(b−2)により、第2ノードND2の電位は、最終的に、(VOfs−Vth)となる。即ち、駆動トランジスタTDrvの閾値電圧Vth、及び、駆動トランジスタTDrvのゲート電極を初期化するための電圧VOfsのみに依存して、第2ノードND2の電位は決定される。そして、発光部ELPの閾値電圧Vth-ELとは無関係である。
【0147】
次いで、[期間−TP(4)5]〜[期間−TP(4)7]の各期間について説明する。これらの期間は、5Tr/1C駆動回路において説明した[期間−TP(5)5]〜[期間−TP(5)7]と、実質的に同じ動作である。
【0148】
[期間−TP(4)5](図12の(B)参照)
この期間内に、上記の工程(c)、即ち、上述した書込み処理を行う。具体的には、映像信号書込みトランジスタTSigのオン状態を維持し、第2ノード初期化トランジスタTND2、及び、発光制御トランジスタTEL_Cのオフ状態を維持したまま、映像信号出力回路102の動作に基づきデータ線DTLの電位を、VOfsから、発光部ELPにおける輝度を制御するための映像信号VSigに切り替える。その結果、第1ノードND1の電位は、VSigへと上昇する。尚、映像信号書込みトランジスタTSigを、一旦、オフ状態とし、映像信号書込みトランジスタTSig、第2ノード初期化トランジスタTND2、及び、発光制御トランジスタTEL_Cのオフ状態を維持したまま、映像信号出力回路102の動作に基づきデータ線DTLの電位を、発光部ELPにおける輝度を制御するための映像信号VSigに変更し、その後、第2ノード初期化トランジスタTND2、及び、発光制御トランジスタTEL_Cのオフ状態を維持したまま、走査線SCLをハイレベルとすることによって、映像信号書込みトランジスタTSigをオン状態としてもよい。
【0149】
これによって、5Tr/1C駆動回路において説明したと同様に、第1ノードND1と第2ノードND2の電位差、即ち、駆動トランジスタTDrvのゲート電極とソース領域との間の電位差Vgsとして、式(3)で説明した値を得ることができる。
【0150】
即ち、4Tr/1C駆動回路においても、駆動トランジスタTDrvに対する書込み処理において得られたVgsは、発光部ELPにおける輝度を制御するための映像信号VSig、駆動トランジスタTDrvの閾値電圧Vth、及び、駆動トランジスタTDrvのゲート電極を初期化するための電圧VOfsのみに依存している。そして、発光部ELPの閾値電圧Vth-ELとは無関係である。
【0151】
[期間−TP(4)6](図12の(C)参照)
その後、駆動トランジスタTDrvの移動度μの大小に基づく駆動トランジスタTDrvのソース領域(第2ノードND2)の電位の補正(移動度補正処理)を行う。具体的には、5Tr/1C駆動回路において説明した[期間−TP(5)6]と同じ動作を行えばよい。尚、移動度補正処理を実行するための所定の時間([期間−TP(4)6]の全時間t0)は、有機EL表示装置の設計の際、設計値として予め決定しておけばよい。
【0152】
[期間−TP(4)7](図12の(D)参照)
以上の操作によって、閾値電圧キャンセル処理、書込み処理、移動度補正処理が完了する。その後、この期間内に、上記の工程(d)を行う。即ち、5Tr/1C駆動回路において説明した[期間−TP(5)7]と同じ処理がなされ、第2ノードND2の電位が上昇し、(Vth-EL+VCat)を越えるので、発光部ELPは発光を開始する。このとき、発光部ELPを流れる電流は、前述した式(5)にて得ることができるので、発光部ELPを流れる電流Idsは、発光部ELPの閾値電圧Vth-EL、及び、駆動トランジスタTDrvの閾値電圧Vthには依存しない。即ち、発光部ELPの発光量(輝度)は、発光部ELPの閾値電圧Vth-ELの影響、及び、駆動トランジスタTDrvの閾値電圧Vthの影響を受けない。加えて、駆動トランジスタTDrvにおける移動度μのばらつきに起因したドレイン電流Idsのばらつき発生を抑制することができる。
【0153】
そして、発光部ELPの発光状態を第(m+m’−1)番目の水平走査期間まで継続する。この時点は、[期間−TP(4)-1]の終わりに相当する。
【0154】
以上によって、有機EL素子10[第(n,m)番目の副画素(有機EL素子10)]の発光の動作が完了する。
【0155】
次に、3Tr/1C駆動回路に関する説明を行う。
【0156】
[3Tr/1C駆動回路]
3Tr/1C駆動回路の等価回路図を図13に示し、有機EL表示装置の概念図を図14を示し、駆動のタイミングチャートを模式的に図15に示し、各トランジスタのオン/オフ状態等を模式的に図16の(A)〜(D)及び図17の(A)〜(E)に示す。
【0157】
この3Tr/1C駆動回路においては、前述した5Tr/1C駆動回路から、第1ノード初期化トランジスタTND1、及び、第2ノード初期化トランジスタTND2の2つのトランジスタが省略されている。即ち、この3Tr/1C駆動回路は、映像信号書込みトランジスタTSig、発光制御トランジスタTEL_C、及び、駆動トランジスタTDrvの3つのトランジスタから構成され、更には、1つのコンデンサ部C1から構成されている。
【0158】
[発光制御トランジスタTEL_C]
発光制御トランジスタTEL_Cの構成は、5Tr/1C駆動回路において説明した発光制御トランジスタTEL_Cの構成と同じであるので、詳細な説明は省略する。
【0159】
[駆動トランジスタTDrv]
駆動トランジスタTDrvの構成は、5Tr/1C駆動回路において説明した駆動トランジスタTDrvの構成と同じであるので、詳細な説明は省略する。
【0160】
[映像信号書込みトランジスタTSig]
映像信号書込みトランジスタTSigの構成は、5Tr/1C駆動回路において説明した映像信号書込みトランジスタTSigの構成と同じであるので、詳細な説明は省略する。但し、映像信号書込みトランジスタTSigの一方のソース/ドレイン領域は、データ線DTLに接続されているが、映像信号出力回路102から、発光部ELPにおける輝度を制御するための映像信号VSigだけでなく、駆動トランジスタTDrvのゲート電極を初期化するための電圧VOfs-H及び電圧VOfs-Lも供給される。この点が、5Tr/1C駆動回路において説明した映像信号書込みトランジスタTSigの動作と相違している。尚、映像信号出力回路102から、データ線DTLを介して、VSigやVOfs-H/VOfs-L以外の信号・電圧(例えば、プリチャージ駆動のための信号)が、一方のソース/ドレイン領域に供給されてもよい。電圧VOfs-H及び電圧VOfs-Lの値として、限定するものではないが、例えば、
VOfs-H=約30ボルト
VOfs-L=約0ボルト
を例示することができる。
【0161】
[CELとC1の値の関係]
後述するように、3Tr/1C駆動回路においては、データ線DTLを利用して第2ノードND2の電位を変化させる必要がある。上述した5Tr/1C駆動回路や4Tr/1Cの駆動回路においては、値cELは、値c1及び値cgsと比較して十分に大きな値であるとし、駆動トランジスタTDrvのゲート電極の電位の変化分(VSig−VOfs)に基づく駆動トランジスタTDrvのソース領域(第2ノードND2)の電位の変化を考慮せずに説明を行った。一方、3Tr/1C駆動回路においては、値c1を、設計上、他の駆動回路よりも大きい値(例えば、値c1を値cELの約1/4〜1/3程度)に設定する。従って、他の駆動回路よりも、第1ノードND1の電位変化により生ずる第2ノードND2の電位変化の程度は大きい。このため、3Tr/1Cの説明においては、第1ノードND1の電位変化により生ずる第2ノードND2の電位変化を考慮して説明を行う。尚、図15に示した駆動のタイミングチャートも、第1ノードND1の電位変化により生ずる第2ノードND2の電位変化を考慮して示した。
【0162】
[発光部ELP]
発光部ELPの構成は、5Tr/1C駆動回路において説明した発光部ELPの構成と同じであるので、詳細な説明は省略する。
【0163】
以下、3Tr/1C駆動回路の動作説明を行う。
【0164】
[期間−TP(3)-1](図16の(A)参照)
この[期間−TP(3)-1]は、例えば、前の表示フレームにおける動作であり、実質的に、5Tr/1C駆動回路において説明した[期間−TP(5)-1]と同じ動作である。
【0165】
図15に示す[期間−TP(3)0]〜[期間−TP(3)4]は、図4に示す[期間−TP(5)0]〜[期間−TP(5)4]に対応する期間であり、次の書込み処理が行われる直前までの動作期間である。そして、5Tr/1C駆動回路と同様に、[期間−TP(3)0]〜[期間−TP(3)4]において、第(n,m)番目の有機EL素子10は非発光状態にある。但し、3Tr/1C駆動回路の動作においては、図15に示すように、[期間−TP(3)5]〜[期間−TP(3)6]の他、[期間−TP(3)1]〜[期間−TP(3)4]も第m番目の水平走査期間に包含される点が、5Tr/1C駆動回路の動作とは異なる。尚、説明の便宜のため、[期間−TP(3)1]の始期、及び、[期間−TP(3)6]の終期は、それぞれ、第m番目の水平走査期間の始期、及び、終期に一致するものとして説明する。
【0166】
以下、[期間−TP(3)0]〜[期間−TP(3)4]の各期間について、説明する。尚、5Tr/1C駆動回路において説明したと同様に、[期間−TP(3)1]〜[期間−TP(3)4]の各期間の長さは、有機EL表示装置の設計に応じて適宜設定すればよい。
【0167】
[期間−TP(3)0](図16の(B)参照)
この[期間−TP(3)0]は、例えば、前の表示フレームから現表示フレームにおける動作であり、5Tr/1C駆動回路において説明した[期間−TP(5)0]と、実質的に同じ動作である。
【0168】
[期間−TP(3)1]〜[期間−TP(3)2](図16の(C)及び(D)参照)
この期間内に、上記の工程(a)、即ち、上述した前処理を行う。以下、詳細に説明する。
【0169】
[期間−TP(3)1](図16の(C)参照)
そして、現表示フレームにおける第m行目の水平走査期間が開始する。[期間−TP(3)1]の開始時、映像信号出力回路102の動作に基づきデータ線DTLの電位を、駆動トランジスタTDrvのゲート電極を初期化するための電圧VOfs-Hとし、次いで、走査回路101の動作に基づき走査線SCLをハイレベルとすることによって、映像信号書込みトランジスタTSigをオン状態とする。その結果、第1ノードND1の電位は、VOfs-Hとなる。上述したように、コンデンサ部C1の値c1を、設計上、他の駆動回路よりも大きい値としたので、ソース領域の電位(第2ノードND2の電位)は上昇する。そして、発光部ELPの両端の電位差が閾値電圧Vth-ELを超えるので、電位発光部ELPは導通状態となるが、駆動トランジスタTDrvのソース領域の電位は、再び、(Vth-EL+VCat)まで、直ちに低下する。尚、この過程において、発光部ELPが発光し得るが、発光は一瞬であり、実用上、問題とはならない。一方、駆動トランジスタTDrvのゲート電極は電圧VOfs-Hを保持する。
【0170】
[期間−TP(3)2](図16の(D)参照)
その後、映像信号出力回路102の動作に基づき、データ線DTLの電位を、駆動トランジスタTDrvのゲート電極を初期化するための電圧VOfs-Hから電圧VOfs-Lへと変更することによって、第1ノードND1の電位は、VOfs-Lとなる。そして、第1ノードND1の電位の低下に伴い、第2ノードND2の電位も低下する。即ち、駆動トランジスタTDrvのゲート電極の電位の変化分(VOfs-L−VOfs-H)に基づく電荷が、コンデンサ部C1、発光部ELPの寄生容量CEL、駆動トランジスタTDrvのゲート電極とソース領域との間の寄生容量に振り分けられる。尚、後述する[期間−TP(3)3]における動作の前提として、[期間−TP(3)2]の終期において、第2ノードND2の電位がVOfs-L−Vthよりも低いことが必要となる。VOfs-Hの値等は、この条件を満たすように設定されている。即ち、以上の処理により、駆動トランジスタTDrvのゲート電極とソース領域との間の電位差がVth以上となり、駆動トランジスタTDrvはオン状態となる。
【0171】
[期間−TP(3)3]〜[期間−TP(3)4](図17の(A)及び(B)参照)
この期間に、上記の工程(b)、より具体的には、上述した工程(b−1)、工程(b−2)から構成された閾値電圧キャンセル処理を行う。以下、詳細に説明する。
【0172】
[期間−TP(3)3](図17の(A)参照)
先ず、上述した工程(b−1)を行う。即ち、映像信号書込みトランジスタTSigのオン状態を維持したまま、[期間−TP(3)3]の始期において発光制御トランジスタ制御回路103の動作に基づき、発光制御トランジスタTEL_Cをオン状態とするための第1の電圧V1_ONを、発光制御トランジスタ制御線CLEL_Cを介して発光制御トランジスタTEL_Cのゲート電極に印加する。そして、発光制御トランジスタTEL_Cをオン状態とする。その結果、第1ノードND1の電位は変化しないが(VOfs-L=0ボルトを維持)、第1ノードND1の電位から駆動トランジスタTDrvの閾値電圧Vthを減じた電位に向かって、第2ノードND2の電位は変化する。即ち、浮遊状態の第2ノードND2の電位が上昇する。そして、駆動トランジスタTDrvのゲート電極とソース領域との間の電位差がVthに達すると、駆動トランジスタTDrvがオフ状態となる。具体的には、浮遊状態の第2ノードND2の電位が(VOfs-L−Vth=−3ボルト)に近づき、最終的に(VOfs-L−Vth)となる。ここで、上述した式(2)が保証されていれば、云い換えれば、式(2)を満足するように電位を選択、決定しておけば、発光部ELPが発光することはない。
【0173】
[期間−TP(3)4](図17の(B)参照)
次いで、上述した工程(b−2)を行う。即ち、映像信号書込みトランジスタTSigのオン状態を維持したまま、[期間−TP(3)4]の始期において、発光制御トランジスタ制御回路103の動作に基づき、発光制御トランジスタTEL_Cをオフ状態とするための第2の電圧V2_OFFを、発光制御トランジスタ制御線CLEL_Cを介して発光制御トランジスタTEL_Cのゲート電極に印加する。その結果、発光制御トランジスタTEL_Cはオフ状態となる。第1ノードND1の電位は変化せず(VOfs-L=0ボルトを維持)、浮遊状態の第2ノードND2の電位も略(VOfs-L−Vth=−3ボルト)を保持する。
【0174】
以上説明したように、工程(b−1)、工程(b−2)により、第2ノードND2の電位は、最終的に、(VOfs-L−Vth)となる。即ち、駆動トランジスタTDrvの閾値電圧Vth、及び、駆動トランジスタTDrvのゲート電極を初期化するための電圧VOfs-Lのみに依存して、第2ノードND2の電位は決定される。そして、発光部ELPの閾値電圧Vth-ELとは無関係である。
【0175】
次いで、[期間−TP(3)5]〜[期間−TP(3)7]の各期間について説明する。これらは、5Tr/1C駆動回路において説明した[期間−TP(5)5]〜[期間−TP(5)7]と、実質的に同じ動作である。
【0176】
[期間−TP(3)5](図17の(C)参照)
この期間内に、上記の工程(c)、即ち、上述した書込み処理を、以下のように行う。具体的には、映像信号書込みトランジスタTSigのオン状態を維持し、発光制御トランジスタTEL_Cのオフ状態を維持したまま、映像信号出力回路102の動作に基づき、データ線DTLの電位を、発光部ELPにおける輝度を制御するための映像信号VSigとする。その結果、第1ノードND1の電位は、VSigへと上昇する。尚、映像信号書込みトランジスタTSigを、一旦、オフ状態とし、映像信号書込みトランジスタTSig、及び、発光制御トランジスタTEL_Cのオフ状態を維持したまま、データ線DTLの電位を、発光部ELPにおける輝度を制御するための映像信号VSigに変更し、その後、発光制御トランジスタTEL_Cのオフ状態を維持したまま、走査線SCLをハイレベルとすることによって、映像信号書込みトランジスタTSigをオン状態としてもよい。
【0177】
[期間−TP(3)5]において、第1ノードND1の電位が、VOfs-LからVSigへと上昇する。このため、第1ノードND1の電位変化により生ずる第2ノードND2の電位変化を考慮すると、第2ノードND1の電位も、若干、上昇する。即ち、第2ノードND1の電位を、VOfs-L−Vth+α・(VSig−VOfs-L)と表すことができる。但し、0<α<1であり、αの値はコンデンサ部C1、発光部ELPの寄生容量CELの値等により定まる。
【0178】
これによって、5Tr/1C駆動回路において説明したと同様に、第1ノードND1と第2ノードND2の電位差、即ち、駆動トランジスタTDrvのゲート電極とソース領域との間の電位差Vgsとして、以下の式(3’)で説明した値を得ることができる。
【0179】
Vgs≒VSig−(VOfs-L−Vth)−α・(VSig−VOfs-L) (3’)
【0180】
即ち、3Tr/1C駆動回路においても、駆動トランジスタTDrvに対する書込み処理において得られたVgsは、発光部ELPにおける輝度を制御するための映像信号VSig、駆動トランジスタTDrvの閾値電圧Vth、及び、駆動トランジスタTDrvのゲート電極を初期化するための電圧VOfs-Lのみに依存している。そして、発光部ELPの閾値電圧Vth-ELとは無関係である。
【0181】
[期間−TP(3)6](図17の(D)参照)
その後、駆動トランジスタTDrvの移動度μの大小に基づく駆動トランジスタTDrvのソース領域(第2ノードND2)の電位の補正(移動度補正処理)を行う。具体的には、5Tr/1C駆動回路において説明した[期間−TP(5)6]と同じ動作を行えばよい。尚、移動度補正処理を実行するための所定の時間([期間−TP(3)6]の全時間t0)は、有機EL表示装置の設計の際、設計値として予め決定しておけばよい。
【0182】
[期間−TP(3)7](図17の(E)参照)
以上の操作によって、閾値電圧キャンセル処理、書込み処理、移動度補正処理が完了する。その後、この期間内に、上記の工程(d)を以下のように行う。即ち、5Tr/1C駆動回路において説明した[期間−TP(5)7]と同じ処理がなされ、第2ノードND2の電位が上昇し、(Vth-EL+VCat)を越えるので、発光部ELPは発光を開始する。このとき、発光部ELPを流れる電流は、前述した式(5)にて得ることができるので、発光部ELPを流れる電流Idsは、発光部ELPの閾値電圧Vth-EL、及び、駆動トランジスタTDrvの閾値電圧Vthには依存しない。即ち、発光部ELPの発光量(輝度)は、発光部ELPの閾値電圧Vth-ELの影響、及び、駆動トランジスタTDrvの閾値電圧Vthの影響を受けない。加えて、駆動トランジスタTDrvにおける移動度μのばらつきに起因したドレイン電流Idsのばらつき発生を抑制することができる。
【0183】
そして、発光部ELPの発光状態を第(m+m’−1)番目の水平走査期間まで継続する。この時点は、[期間−TP(3)-1]の終わりに相当する。
【0184】
以上によって、有機EL素子10[第(n,m)番目の副画素(有機EL素子10)]の発光の動作が完了する。
【0185】
以上、本発明を好ましい実施例に基づき説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例において説明した有機EL表示装置、有機EL素子、駆動回路を構成する各種の構成要素の構成、構造、発光部の駆動方法における工程は例示であり、適宜、変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0186】
【図1】図1は、[期間−TP(5)2]〜[期間−TP(5)7]において、有機EL表示装置の発光制御トランジスタ制御線を伝達する信号の波形BF0,BF1,BFNを模式的に示した図である。
【図2】図2は、5トランジスタ/1コンデンサ部から基本的に構成された駆動回路の等価回路図である。
【図3】図3は、有機EL表示装置の概念図である。
【図4】図4は、5トランジスタ/1コンデンサ部から基本的に構成された駆動回路の駆動のタイミングチャートを模式的に示す図である。
【図5】図5は、図1に示す波形BF0,BF1,BFNと、図4の上段に示すタイミングチャートとを対比して示した図である。
【図6】図6の(A)〜(D)は、5トランジスタ/1コンデンサ部から基本的に構成された駆動回路を構成する各トランジスタのオン/オフ状態等を模式的に示す図である。
【図7】図7の(A)〜(E)は、図6の(D)に引き続き、5トランジスタ/1コンデンサ部から基本的に構成された駆動回路を構成する各トランジスタのオン/オフ状態等を模式的に示す図である。
【図8】図8は、4トランジスタ/1コンデンサ部から基本的に構成された駆動回路の等価回路図である。
【図9】図9は、4トランジスタ/1コンデンサ部から基本的に構成された駆動回路の概念図である。
【図10】図10は、4トランジスタ/1コンデンサ部から基本的に構成された駆動回路の駆動のタイミングチャートを模式的に示す図である。
【図11】図11の(A)〜(D)は、4トランジスタ/1コンデンサ部から基本的に構成された駆動回路を構成する各トランジスタのオン/オフ状態等を模式的に示す図である。
【図12】図12の(A)〜(D)は、図11の(D)に引き続き、4トランジスタ/1コンデンサ部から基本的に構成された駆動回路を構成する各トランジスタのオン/オフ状態等を模式的に示す図である。
【図13】図13は、3トランジスタ/1コンデンサ部から基本的に構成された駆動回路の等価回路図である。
【図14】図14は、3トランジスタ/1コンデンサ部から基本的に構成された駆動回路の概念図である。
【図15】図15は、3トランジスタ/1コンデンサ部から基本的に構成された駆動回路の駆動のタイミングチャートを模式的に示す図である。
【図16】図16の(A)〜(D)は、3トランジスタ/1コンデンサ部から基本的に構成された駆動回路を構成する各トランジスタのオン/オフ状態等を模式的に示す図である。
【図17】図17の(A)〜(E)は、図16の(D)に引き続き、3トランジスタ/1コンデンサ部から基本的に構成された駆動回路を構成する各トランジスタのオン/オフ状態等を模式的に示す図である。
【図18】図18は、有機エレクトロルミネッセンス素子の一部分の模式的な一部断面図である。
【図19】図19は、[期間−TP(5)2]〜[期間−TP(5)7]において、有機EL表示装置の発光制御トランジスタ制御線を伝達する信号の波形AF0,AF1,AFNを模式的に示した図である。
【図20】図20は、図19に示す波形AF0,AF1,AFNと、図4の上段に示すタイミングチャートとを対比して示した図である。
【図21】図21の(A)及び(B)は、[期間−TP(5)2]〜[期間−TP(5)3]における、駆動回路の動作を説明するための等価回路図である。
【符号の説明】
【0187】
TSig・・・映像信号書込みトランジスタ、TDrv・・・駆動トランジスタ、TEL_C・・・発光制御トランジスタ、TND1・・・第1ノード初期化トランジスタ、TND2・・・第2ノード初期化トランジスタ、C1・・・コンデンサー部、ELP・・・有機エレクトロルミネッセンス発光部(発光部)、CEL・・・発光部ELPの寄生容量、ND1・・・第1ノード、ND2・・・第2ノード、SCL・・・走査線、DTL・・・データ線、CLEL_C・・・発光制御トランジスタ制御線、AZND1・・・第1ノード初期化トランジスタ制御線、AZND2・・・第2ノード初期化トランジスタ制御線、10,101,10N・・・有機エレクトロルミネッセンス素子、20・・・支持体、21・・・基板、31・・・ゲート電極、32・・・ゲート絶縁層、33・・・半導体層、35・・・ソース/ドレイン領域、34・・・チャネル形成領域、36・・・他方の電極、37・・・一方の電極、38,39・・・配線、40・・・層間絶縁層、51・・・アノード電極、52・・・正孔輸送層、発光層及び電子輸送層、53・・・カソード電極、54・・・第2層間絶縁層、55,56・・・コンタクトホール、100・・・電流供給部、101・・・走査回路、102・・・映像信号出力回路、103・・・発光制御トランジスタ制御回路、104・・・第1ノード初期化トランジスタ制御回路、105・・・第2ノード初期化トランジスタ制御回路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)走査回路、
(2)映像信号出力回路、
(3)第1の方向にN個、第1の方向とは異なる第2の方向にM個、合計N×M個の、2次元マトリクス状に配列され、それぞれが有機エレクトロルミネッセンス発光部、及び、有機エレクトロルミネッセンス発光部を駆動するための駆動回路を備えている有機エレクトロルミネッセンス素子、
(4)走査回路に接続され、第1の方向に延びるM本の走査線、
(5)映像信号出力回路に接続され、第2の方向に延びるN本のデータ線、並びに、
(6)電流供給部、
を備え、
前記駆動回路は、
(A)ソース/ドレイン領域、チャネル形成領域、及び、ゲート電極を備えた駆動トランジスタ、
(B)ソース/ドレイン領域、チャネル形成領域、及び、ゲート電極を備えた映像信号書込みトランジスタ、
(C)ソース/ドレイン領域、チャネル形成領域、及び、ゲート電極を備えた発光制御トランジスタ、並びに、
(D)一対の電極を備えたコンデンサ部、
から構成されており、
駆動トランジスタにおいては、
(A−1)一方のソース/ドレイン領域は、発光制御トランジスタの他方のソース/ドレイン領域に接続されており、
(A−2)他方のソース/ドレイン領域は、有機エレクトロルミネッセンス発光部に備えられたアノード電極に接続され、且つ、コンデンサ部の一方の電極に接続されており、第2ノードを構成し、
(A−3)ゲート電極は、映像信号書込みトランジスタの他方のソース/ドレイン領域に接続され、且つ、コンデンサ部の他方の電極に接続されており、第1ノードを構成し、 映像信号書込みトランジスタにおいては、
(B−1)一方のソース/ドレイン領域は、データ線に接続されており、
(B−2)ゲート電極は、走査線に接続されており、
発光制御トランジスタにおいては、
(C−1)一方のソース/ドレイン領域は、電流供給部に接続されており、
(C−2)ゲート電極は、発光制御トランジスタ制御線に接続されている、
有機EL表示装置における有機エレクトロルミネッセンス発光部の駆動方法であって、
(a)第1ノードと第2ノードとの間の電位差が、駆動トランジスタの閾値電圧を越え、且つ、第2ノードと有機エレクトロルミネッセンス発光部に備えられたカソード電極との間の電位差が、有機エレクトロルミネッセンス発光部の閾値電圧を越えないように、第1ノードに第1ノード初期化電圧を印加し、第2ノードに第2ノード初期化電圧を印加する前処理を行い、次いで、
(b)第1ノードの電位を保った状態で、第1ノードの電位から駆動トランジスタの閾値電圧を減じた電位に向かって、第2ノードの電位を変化させる閾値電圧キャンセル処理を行い、その後、
(c)走査線からの信号によりオン状態とされた映像信号書込みトランジスタを介して、データ線から映像信号を第1ノードに印加する書込み処理を行い、次いで、
(d)走査線からの信号により映像信号書込みトランジスタをオフ状態とすることにより第1ノードを浮遊状態とし、電流供給部から、発光制御トランジスタと駆動トランジスタとを介して、第1ノードと第2ノードとの間の電位差の値に応じた電流を有機エレクトロルミネッセンス発光部に流す、
ことにより、有機エレクトロルミネッセンス発光部を駆動する工程から成り、
前記工程(b)は、
(b−1)発光制御トランジスタをオン状態とするための第1の電圧を、発光制御トランジスタ制御線を介して発光制御トランジスタのゲート電極に印加し、オン状態の発光制御トランジスタを介して駆動トランジスタの一方のソース/ドレイン領域を電流供給部と導通させ、以て、駆動トランジスタの一方のソース/ドレイン領域の電位を前記工程(a)における第2ノードの電位よりも高くし、次いで、
(b−2)発光制御トランジスタをオフ状態とするための第2の電圧を、発光制御トランジスタ制御線を介して発光制御トランジスタのゲート電極に印加する、
工程から構成されており、
前記工程(d)において、発光制御トランジスタをオン状態とするための第3の電圧を、発光制御トランジスタ制御線を介して発光制御トランジスタのゲート電極に印加し、オン状態の発光制御トランジスタを介して駆動トランジスタの一方のソース/ドレイン領域を電流供給部と導通させ、以て、第1ノードと第2ノードとの間の電位差の値に応じた電流を有機エレクトロルミネッセンス発光部に流し、
第1の電圧をV1_ON、第2の電圧をV2_OFF、第3の電圧をV3_ONと表すとき、|V1_ON−V2_OFF|<|V3_ON−V2_OFF|を満たすことを特徴とする駆動方法。
【請求項2】
駆動回路は、
(E)ソース/ドレイン領域、チャネル形成領域、及び、ゲート電極を備えた第2ノード初期化トランジスタ、
を更に備えており、
第2ノード初期化トランジスタにおいては、
(E−1)一方のソース/ドレイン領域は、第2ノード初期化電圧供給線に接続されており、
(E−2)他方のソース/ドレイン領域は、第2ノードに接続されており、
(E−3)ゲート電極は、第2ノード初期化トランジスタ制御線に接続されており、
前記工程(a)において、第2ノード初期化トランジスタ制御線からの信号によりオン状態とされた第2ノード初期化トランジスタを介して、第2ノード初期化電圧供給線から第2ノードに第2ノード初期化電圧を印加した後、第2ノード初期化トランジスタ制御線からの信号により第2ノード初期化トランジスタをオフ状態とすることを特徴とする請求項1に記載の駆動方法。
【請求項3】
駆動回路は、
(F)ソース/ドレイン領域、チャネル形成領域、及び、ゲート電極を備えた第1ノード初期化トランジスタ、
を更に備えており、
第1ノード初期化トランジスタにおいては、
(F−1)一方のソース/ドレイン領域は、第1ノード初期化電圧供給線に接続されており、
(F−2)他方のソース/ドレイン領域は、第1ノードに接続されており、
(F−3)ゲート電極は、第1ノード初期化トランジスタ制御線に接続されており、
前記工程(a)において、第1ノード初期化トランジスタ制御線からの信号によりオン状態とされた第1ノード初期化トランジスタを介して、第1ノード初期化電圧供給線から第1ノードに第1ノード初期化電圧を印加することを特徴とする請求項2に記載の駆動方法。
【請求項1】
(1)走査回路、
(2)映像信号出力回路、
(3)第1の方向にN個、第1の方向とは異なる第2の方向にM個、合計N×M個の、2次元マトリクス状に配列され、それぞれが有機エレクトロルミネッセンス発光部、及び、有機エレクトロルミネッセンス発光部を駆動するための駆動回路を備えている有機エレクトロルミネッセンス素子、
(4)走査回路に接続され、第1の方向に延びるM本の走査線、
(5)映像信号出力回路に接続され、第2の方向に延びるN本のデータ線、並びに、
(6)電流供給部、
を備え、
前記駆動回路は、
(A)ソース/ドレイン領域、チャネル形成領域、及び、ゲート電極を備えた駆動トランジスタ、
(B)ソース/ドレイン領域、チャネル形成領域、及び、ゲート電極を備えた映像信号書込みトランジスタ、
(C)ソース/ドレイン領域、チャネル形成領域、及び、ゲート電極を備えた発光制御トランジスタ、並びに、
(D)一対の電極を備えたコンデンサ部、
から構成されており、
駆動トランジスタにおいては、
(A−1)一方のソース/ドレイン領域は、発光制御トランジスタの他方のソース/ドレイン領域に接続されており、
(A−2)他方のソース/ドレイン領域は、有機エレクトロルミネッセンス発光部に備えられたアノード電極に接続され、且つ、コンデンサ部の一方の電極に接続されており、第2ノードを構成し、
(A−3)ゲート電極は、映像信号書込みトランジスタの他方のソース/ドレイン領域に接続され、且つ、コンデンサ部の他方の電極に接続されており、第1ノードを構成し、 映像信号書込みトランジスタにおいては、
(B−1)一方のソース/ドレイン領域は、データ線に接続されており、
(B−2)ゲート電極は、走査線に接続されており、
発光制御トランジスタにおいては、
(C−1)一方のソース/ドレイン領域は、電流供給部に接続されており、
(C−2)ゲート電極は、発光制御トランジスタ制御線に接続されている、
有機EL表示装置における有機エレクトロルミネッセンス発光部の駆動方法であって、
(a)第1ノードと第2ノードとの間の電位差が、駆動トランジスタの閾値電圧を越え、且つ、第2ノードと有機エレクトロルミネッセンス発光部に備えられたカソード電極との間の電位差が、有機エレクトロルミネッセンス発光部の閾値電圧を越えないように、第1ノードに第1ノード初期化電圧を印加し、第2ノードに第2ノード初期化電圧を印加する前処理を行い、次いで、
(b)第1ノードの電位を保った状態で、第1ノードの電位から駆動トランジスタの閾値電圧を減じた電位に向かって、第2ノードの電位を変化させる閾値電圧キャンセル処理を行い、その後、
(c)走査線からの信号によりオン状態とされた映像信号書込みトランジスタを介して、データ線から映像信号を第1ノードに印加する書込み処理を行い、次いで、
(d)走査線からの信号により映像信号書込みトランジスタをオフ状態とすることにより第1ノードを浮遊状態とし、電流供給部から、発光制御トランジスタと駆動トランジスタとを介して、第1ノードと第2ノードとの間の電位差の値に応じた電流を有機エレクトロルミネッセンス発光部に流す、
ことにより、有機エレクトロルミネッセンス発光部を駆動する工程から成り、
前記工程(b)は、
(b−1)発光制御トランジスタをオン状態とするための第1の電圧を、発光制御トランジスタ制御線を介して発光制御トランジスタのゲート電極に印加し、オン状態の発光制御トランジスタを介して駆動トランジスタの一方のソース/ドレイン領域を電流供給部と導通させ、以て、駆動トランジスタの一方のソース/ドレイン領域の電位を前記工程(a)における第2ノードの電位よりも高くし、次いで、
(b−2)発光制御トランジスタをオフ状態とするための第2の電圧を、発光制御トランジスタ制御線を介して発光制御トランジスタのゲート電極に印加する、
工程から構成されており、
前記工程(d)において、発光制御トランジスタをオン状態とするための第3の電圧を、発光制御トランジスタ制御線を介して発光制御トランジスタのゲート電極に印加し、オン状態の発光制御トランジスタを介して駆動トランジスタの一方のソース/ドレイン領域を電流供給部と導通させ、以て、第1ノードと第2ノードとの間の電位差の値に応じた電流を有機エレクトロルミネッセンス発光部に流し、
第1の電圧をV1_ON、第2の電圧をV2_OFF、第3の電圧をV3_ONと表すとき、|V1_ON−V2_OFF|<|V3_ON−V2_OFF|を満たすことを特徴とする駆動方法。
【請求項2】
駆動回路は、
(E)ソース/ドレイン領域、チャネル形成領域、及び、ゲート電極を備えた第2ノード初期化トランジスタ、
を更に備えており、
第2ノード初期化トランジスタにおいては、
(E−1)一方のソース/ドレイン領域は、第2ノード初期化電圧供給線に接続されており、
(E−2)他方のソース/ドレイン領域は、第2ノードに接続されており、
(E−3)ゲート電極は、第2ノード初期化トランジスタ制御線に接続されており、
前記工程(a)において、第2ノード初期化トランジスタ制御線からの信号によりオン状態とされた第2ノード初期化トランジスタを介して、第2ノード初期化電圧供給線から第2ノードに第2ノード初期化電圧を印加した後、第2ノード初期化トランジスタ制御線からの信号により第2ノード初期化トランジスタをオフ状態とすることを特徴とする請求項1に記載の駆動方法。
【請求項3】
駆動回路は、
(F)ソース/ドレイン領域、チャネル形成領域、及び、ゲート電極を備えた第1ノード初期化トランジスタ、
を更に備えており、
第1ノード初期化トランジスタにおいては、
(F−1)一方のソース/ドレイン領域は、第1ノード初期化電圧供給線に接続されており、
(F−2)他方のソース/ドレイン領域は、第1ノードに接続されており、
(F−3)ゲート電極は、第1ノード初期化トランジスタ制御線に接続されており、
前記工程(a)において、第1ノード初期化トランジスタ制御線からの信号によりオン状態とされた第1ノード初期化トランジスタを介して、第1ノード初期化電圧供給線から第1ノードに第1ノード初期化電圧を印加することを特徴とする請求項2に記載の駆動方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2008−233502(P2008−233502A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−72504(P2007−72504)
【出願日】平成19年3月20日(2007.3.20)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月20日(2007.3.20)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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