有機エレクトロルミネッセンス素子、及びその製造方法、有機エレクトロルミネッセンスパネルならびに電子機器
【課題】液滴吐出法を用いて有機発光層を形成する場合、各画素内での層厚分布が不均一になる傾向がある。この場合、各画素内部での発光強度を均一に保つことが困難となり、単位画素内部での発光強度不均一性により表示画質が低下するという課題が生じる。
【解決手段】有機発光層208の発光領域211内での層厚が薄く、電気抵抗の低下により電流が増え高輝度となる領域に、正孔注入層207よりも有機発光層208へのキャリア注入効率が低い高抵抗キャリア注入層215を配置する。層厚が薄く、電気的な抵抗値が低くなることで電流の集中が生じる領域に高抵抗キャリア注入層215が配置されるため、電流集中が緩和される。そのため、有機発光層208における層厚が薄い領域での有機エレクトロルミネッセンス素子の輝度が低下し、輝度分布を均一化することが可能となる。
【解決手段】有機発光層208の発光領域211内での層厚が薄く、電気抵抗の低下により電流が増え高輝度となる領域に、正孔注入層207よりも有機発光層208へのキャリア注入効率が低い高抵抗キャリア注入層215を配置する。層厚が薄く、電気的な抵抗値が低くなることで電流の集中が生じる領域に高抵抗キャリア注入層215が配置されるため、電流集中が緩和される。そのため、有機発光層208における層厚が薄い領域での有機エレクトロルミネッセンス素子の輝度が低下し、輝度分布を均一化することが可能となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子、及びその製造方法、有機エレクトロルミネッセンスパネルならびに電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス(以下、有機ELと称する)素子は、自発光の表示素子として急速に普及してきている。有機EL素子は、その発色性の良さから今後表示パネルとしての需要が期待されている。
【0003】
有機EL素子を形成する場合、液状の有機発光層前駆体を液滴吐出法を用いて各画素に吐出し、乾燥→アニールを行うことで有機発光層を形成する技術が知られている。液滴吐出法を用いて有機発光層を形成することで、有機発光層を形成すべき領域にのみ有機発光層前駆体を供給することができるため、スピンコート法等、基板全面に有機発光層前駆体を塗布した後、有機発光層が不要な領域をエッチングして除去する方法と比べ、廃棄物の量を抑制できるという長所がある。
【0004】
また、有機発光層前駆体を必要とする部分にのみ吐出するため、有機発光層前駆体の消費量を削減することが可能となり、有機発光層の層形成を少ない有機発光層前駆体の使用量で行うことができる。そのため、環境負荷を削減し、且つ、エッチング工程の省略や、高価な有機発光層前駆体の使用量を削減できることからTATの短縮、製造コストの低減化が可能となる。液滴吐出法を用いて有機EL素子を形成している例としては、例えば特許文献1や特許文献2を挙げることができる。
【0005】
【特許文献1】特開2005−339949号公報
【特許文献2】特開2006−13139号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、液滴吐出法を用いて有機発光層を形成する場合、有機発光層の形成にスピンコート法等を用いる場合と比べ、各画素内での層厚分布が不均一になる傾向がある。この場合、各画素内部での発光強度を均一に保つことが困難となり、単位画素内部での発光強度不均一性により表示画質が低下するという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]本適用例にかかる有機エレクトロルミネッセンス素子は、基板と、前記基板上に配置される、第1電極と、前記第1電極上に位置し、平面視にて前記第1電極を覆うキャリア注入層と、前記キャリア注入層上に配置される有機発光層と、平面視にて発光領域内に位置し、前記キャリア注入層と前記有機発光層との間における少なくとも一部の領域に配置されるキャリア調整層と、前記有機発光層上に位置し、平面視にて前記有機発光層を覆う第2電極と、を含むことを特徴とする。
【0009】
これによれば、キャリア調整層がキャリア注入層と有機発光層との間に配置される。キャリア調整層を配置することで、有機発光層の発光効率を有機エレクトロルミネッセンス素子内部で変調することが可能となり、輝度分布を制御することが可能となる。
【0010】
[適用例2]上記適用例にかかる有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記キャリア調整層は前記有機発光層と対応する層厚分布を有し、前記発光領域内の少なくとも一部に形成されていることを特徴とする。
【0011】
上記した構成によれば、キャリア調整層は発光領域内で層厚分布を有している。そのため、有機発光層の発光効率を有機エレクトロルミネッセンス素子内部で連続量として変調することが可能となり、輝度分布をより精密に制御することが可能となる。
【0012】
[適用例3]上記適用例にかかる有機エレクトロルミネッセンス素子において、平面視にて前記発光領域内に位置する前記有機発光層から見て、前記第1電極側、又は前記第2電極側の少なくとも片側が光透過性を有していることを特徴とする。
【0013】
上記した構成によれば、平面視にて発光領域内に位置する有機発光層が射出する光を外部に取り出すことが可能となる。
【0014】
[適用例4]上記適用例にかかる有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記キャリア調整層として、前記キャリア注入層よりも前記有機発光層へのキャリア注入効率が低い低効率キャリア注入層を用いてなり、且つ前記低効率キャリア注入層を、前記有機発光層の層厚分布と逆の相関を持つ厚みを与え、前記低効率キャリア注入層により、前記発光領域の少なくとも一部を覆うことを特徴とする。
【0015】
上記した構成によれば、電気的な抵抗値が低くなることで有機発光層の層厚が薄い領域では、層厚の厚い領域と比べ電気的な抵抗値が低くなる。そのため、注入される電流が増え、高い輝度を示す。有機発光層の層厚が薄い領域に、低効率キャリア注入層を配置することで、有機発光層の層厚が薄い領域での有機エレクトロルミネッセンス素子の輝度を下げることができる。従って、発光領域内での輝度を均一化することが可能となる。また、低効率キャリア注入層の層厚を連続量として変調することで、輝度分布をより精密に制御することが可能となる。
【0016】
[適用例5]上記適用例にかかる有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記有機発光層の前記発光領域内での層厚が、前記有機発光層の前記発光領域内での層厚の平均値と比べ薄い領域の少なくとも一部に、前記キャリア注入層よりも前記有機発光層へのキャリア注入効率が低い低効率キャリア注入層を、前記キャリア調整層として配置していることを特徴とする。
【0017】
上記した構成によれば、電気的な抵抗値が低くなることで有機発光層の層厚が薄い領域では、層厚の厚い領域と比べ注入される電流が増え、高い輝度を示す。有機発光層の層厚が薄い領域に、低効率キャリア注入層を配置することで、有機発光層の層厚が薄い領域での有機エレクトロルミネッセンス素子の輝度を下げることができる。従って、発光領域内での輝度を均一化することが可能となる。また、有機発光層の層厚が薄い領域のみを補正するため、有機発光層の層厚が厚い領域の輝度は低下せず、輝度低下を抑えて輝度分布を均一化することが可能となる。
【0018】
[適用例6]上記適用例にかかる有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記キャリア調整層として、前記キャリア注入層よりも前記有機発光層へのキャリア注入効率が高いキャリア輸送層を用いてなり、且つ前記キャリア輸送層に前記有機発光層の層厚分布と正の相関を持つ厚みを与え、前記キャリア輸送層により、前記発光領域の少なくとも一部を覆うことを特徴とする。
【0019】
上記した構成によれば、電気的な抵抗値が高くなることで有機発光層の層厚が厚い領域では、層厚の薄い領域と比べ電気的な抵抗値が高くなる。そのため、注入される電流が減り、低い輝度を示す。有機発光層の層厚が厚い領域に、注入効率が高いキャリア輸送層を配置することで、有機発光層の層厚が厚い領域での有機エレクトロルミネッセンス素子の輝度を上げることができる。従って、発光領域内での輝度を均一化することが可能となる。また、キャリア輸送層の層厚を連続量として変調することで、輝度分布をより精密に制御することが可能となる。
【0020】
[適用例7]上記適用例にかかる有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記有機発光層の層厚が、前記有機発光層における層厚の平均値と比べて厚い領域の少なくとも一部に、前記キャリア注入層よりも前記有機発光層へのキャリア注入効率が高いキャリア輸送層を前記キャリア調整層として配置することを特徴とする。
【0021】
上記した構成によれば、電気的な抵抗値が高くなることで有機発光層の層厚が厚い領域では、層厚の薄い領域と比べ電気的な抵抗値が高くなる。そのため、注入される電流が減り、低い輝度を示す。有機発光層の層厚が厚い領域に、注入効率が高いキャリア輸送層を配置することで、有機発光層の層厚が厚い領域での有機エレクトロルミネッセンス素子の輝度を上げることができる。従って、発光領域内での輝度を均一化することが可能となる。また、有機発光層の層厚が厚い領域のみを補正するため、有機発光層の層厚が薄い領域の輝度は低下せず、輝度低下を抑えて輝度分布を均一化することが可能となる。
【0022】
[適用例8]本適用例にかかる有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法は、(1)モニタ基板上にモニタ層間絶縁層を形成する工程と、(2)前記モニタ層間絶縁層上にモニタ第1電極を形成する工程と、(3)モニタ発光領域を含む領域を各素子毎に分離するモニタ隔壁を形成する工程と、(4)平面視にて前記モニタ隔壁の内側に、モニタキャリア注入層を形成する工程と、(5)モニタ有機発光層を形成する工程と、(6)前記モニタ有機発光層の、モニタ発光領域内での前記モニタ有機発光層の層厚分布を測定する工程と、(7)基板上に層間絶縁層を形成する工程と、(8)前記層間絶縁層上に第1電極を形成する工程と、(9)発光領域を含む領域を各素子毎に分離する隔壁を形成する工程と、(10)平面視にて前記隔壁の内側に、キャリア注入層を形成する工程と、(11)前記モニタ有機発光層の層厚分布に対応させて前記キャリア注入層上に、平面視にて前記発光領域を含む領域にキャリア調整層を形成する工程と、(12)平面視にて前記隔壁の内側に有機発光層を形成する工程と、(13)前記有機発光層上に、平面視にて少なくとも前記発光領域と重なる領域に第2電極を形成する工程と、を含むことを特徴とする。
【0023】
これによれば、製造条件を変えた場合に生じる有機発光層の層厚分布に対応させて、キャリア調整層を構成する部材、キャリア調整層の配置、層厚分布の調整を行う工程を用いることができるため、発光領域内での輝度分布を制御することができる。有機発光層の層厚分布は、製造方法が同じ場合、層厚分布の再現性は高い。そのため、モニタ基板を用いて層厚データと製造条件データを記録し、各製造条件データに合致した層厚データに基づき、キャリア調整層を形成することで輝度分布を制御することが可能となる。
【0024】
[適用例9]上記適用例にかかる有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法において、前記(11)の工程は、前記発光領域内における前記モニタ有機発光層の層厚の平均値と比べ、中央部で層厚が厚い製造条件を用いる場合に、前記キャリア調整層として、前記キャリア注入層よりも、前記有機発光層へのキャリア注入効率が低い低効率キャリア注入層を用い、且つ前記低効率キャリア注入層を前記キャリア注入層の前記発光領域内での外周部の少なくとも一部に形成する工程であることを特徴とする。
【0025】
上記した適用例によれば、層厚分布の再現性が高いことから、モニタ有機発光層と同様有機発光層の層厚は中央部で厚い状態を有する。この場合、中央部では層厚が厚いため電気抵抗値が高くなり、注入される電流は減り、輝度は低下する。そこで、有機発光層へのキャリア注入効率が低い低効率キャリア注入層を、キャリア注入層の外周部に対して、少なくとも一部に形成する。その結果、周辺部での電気抵抗が高くなり、注入される電流は減り、輝度は低下する。そのため、発光領域内で均一性の高い有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法を提供することが可能となる。
【0026】
[適用例10]上記適用例にかかる有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法において、前記(11)の工程は、前記発光領域内における前記モニタ有機発光層の層厚の平均値と比べ、中央部で層厚が厚い製造条件を用いる場合に、前記キャリア調整層として、前記キャリア注入層よりも、前記有機発光層へのキャリア注入効率が高いキャリア輸送層を用い、且つ前記キャリア輸送層を前記キャリア注入層の前記発光領域内での中央部の少なくとも一部に形成する工程であることを特徴とする。
【0027】
上記した適用例によれば、層厚分布の再現性が高いことから、モニタ有機発光層と同様有機発光層の層厚は中央部で厚い状態を有する。この場合、中央部では層厚が厚いため電気抵抗値が高くなり、注入される電流は減り、輝度は低下する。そこで、中央部の少なくとも一部にキャリア輸送層を形成することで、中央部でのキャリア注入効率が高くなり、注入される電流は増加し、輝度は増加する。そのため、発光領域内で均一性の高い有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法を提供することが可能となる。
【0028】
[適用例11]上記適用例にかかる有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法において、前記(11)の工程は、前記発光領域内における前記モニタ有機発光層の層厚の平均値と比べ、中央部で層厚が薄い製造条件を用いる場合に、前記キャリア調整層として、前記キャリア注入層よりも、前記有機発光層へのキャリア注入効率が低い低効率キャリア注入層を用い、且つ前記低効率キャリア注入層を前記キャリア注入層の中央部の少なくとも一部に形成する工程であることを特徴とする。
【0029】
上記した適用例によれば、層厚分布の再現性が高いことから、モニタ有機発光層と同様有機発光層の層厚は中央部で薄い状態を有する。この場合、中央部では層厚が薄いため電気抵抗値が低くなり、注入される電流は増え、輝度は上昇する。こで、有機発光層へのキャリア注入効率が低い低効率キャリア注入層を、中央部の少なくとも一部に形成する。その結果、中央部での電気抵抗が高くなり、注入される電流は減り、輝度は低下する。そのため、発光領域内で均一性の高い有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法を提供することが可能となる。
【0030】
[適用例12]上記適用例にかかる有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法において、前記(11)の工程は、前記発光領域内における前記モニタ有機発光層の層厚の平均値と比べ、中央部で層厚が薄い製造条件を用いる場合に、前記キャリア調整層として、前記キャリア注入層よりも、前記有機発光層へのキャリア注入効率が高いキャリア輸送層を用い、且つ前記キャリア輸送層を前記キャリア注入層の外周部の少なくとも一部に形成する工程であることを特徴とする。
【0031】
上記した適用例によれば、層厚分布の再現性が高いことから、モニタ有機発光層と同様有機発光層の層厚は中央部で薄い状態を有する。この場合、中央部では層厚が薄いため電気抵抗値が低くなり、注入される電流は増え、輝度は上昇する。そこで、外周部の少なくとも一部にキャリア輸送層を形成することで、外周部でのキャリア注入効率が高くなり、注入される電流は増加し、輝度は増加する。そのため、発光領域内で均一性の高い有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法を提供することが可能となる。
【0032】
[適用例13]本適用例にかかる有機エレクトロルミネッセンスパネルは、上記記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を含むことを特徴とする。
【0033】
これによれば、各々の有機エレクトロルミネッセンス素子内部での発光強度分布が均一性高く形成されているため、均一性の高い表示品質を有する有機エレクトロルミネッセンスパネルを提供することが可能となる。
【0034】
[適用例14]本適用例にかかる電子機器は、上記記載の有機エレクトロルミネッセンスパネルを含むことを特徴とする。
【0035】
これによれば、均一性の高い表示品質を有する有機エレクトロルミネッセンスパネルを備えているため、均一性に優れた高い画像を表示し得る電子機器を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
(有機エレクトロルミネッセンスパネルの構成)
以下、本実施形態にかかる有機エレクトロルミネッセンス(以下有機ELと称する)パネルについて、図面を参照して説明する。図1は、本実施形態の有機ELパネルの配線構造を示す模式図である。有機ELパネル1は、スイッチング素子として薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor、以下TFTと称する。)を用いており、例えばTFT122、TFT123を用いたアクティブマトリクス方式のもので、複数の走査線101と、各走査線101に対して直角に交差する方向に延びる複数の信号線102と、各信号線102に並列に延びる複数の電源線103とからなる配線構成を有するとともに、走査線101及び信号線102の各交点付近に、サブ画素40が設けられている。
【0037】
信号線102には、シフトレジスタ、レベルシフタ、ビデオライン及びアナログスイッチを備えるデータ線駆動回路100が接続されている。また、走査線101には、シフトレジスタ及びレベルシフタを備える走査線駆動回路80が接続されている。
【0038】
サブ画素40の各々には、走査線101を介して走査信号がゲート電極に供給されるスイッチング用のTFT122と、スイッチング用のTFT122を介して信号線102と共有される画素信号を保持する保持容量113と、が含まれる。そして、保持容量113によって保持される画素信号がゲート電極に供給される駆動用のTFT123と、TFT123を介して電源線103に電気的に接続したときに、当該電源線103から駆動電流が与えられる第1電極としての画素電極23と、画素電極23と対向する第2電極としての対向電極50との間に挟み込まれた、画素電極23と対向電極50を含む有機EL素子17(R,G,B)と、が設けられている。
【0039】
次に、本実施形態の有機ELパネル1の具体的な態様を、図2を参照して説明する。ここで、図2は有機ELパネル1の構成を模式的に示す平面図である。
【0040】
図2に示すように、基板20A上の実表示領域4には、R,G,Bに対応して設けられたサブ画素40がマトリクス状に規則的に配置される。ここで、基板20Aは、基板本体20、及び基板本体20上に設けられた、例えばTFT122、TFT123等を含むものである。
【0041】
また、R,G,B各色のサブ画素40(R,G,B)は一つの基本単位となって表示単位画素41を構成している。また、サブ画素40(R,G,B)の各々は、TFT122、TFT123(図1参照)の動作に伴って、R,G,B各々の発光に対応する有機EL素子17(R,G,B)(図1参照)を備える構成を有している。
【0042】
なお、本実施形態において画素部3(図中一点鎖線内)は、中央部分の実表示領域4(図中二点鎖線枠内)と、実表示領域4の周囲に配置されたダミー領域5(一点鎖線及び二点鎖線の間の領域)とに区画されている。そして、実表示領域4を挟むように、走査線駆動回路80が配置されている。
【0043】
また、実表示領域4の上方には検査回路90が配置されている。検査回路90は、有機ELパネル1の作動状況を検査するための回路であって、例えば検査結果を外部に出力する検査情報出力手段(図示せず)を備え、製造途中や出荷時における有機ELパネル1の品質、欠陥の検査を行うことができるように構成されている。
【0044】
(有機EL素子−1:中央部が凸の場合(1))
次に、図3を参照して、有機EL素子の構造を説明する。図3(a)は、中央部が凸となる層厚分布を有する、有機ELパネル1(図1参照)を構成する有機EL素子17Rの平面図、図3(b)は、図3(a)のA−A’線断面図である。ここで、有機EL素子17(R,G,B)(図1参照)は同様の構造を有しているため、有機EL素子17Rを例として記載している。なお、説明の便宜上、図面上側を「上」と定義する。ここでは、まず、有機EL素子17Rの構造について説明する。
【0045】
ガラス基板を用いた基板20A上には、層間絶縁層202が配置されている。ここで発光領域211は、第1隔壁205によって区画された領域であり、典型的な寸法として、直径80μm程度の直径を有している。領域Aは、有機発光層208の厚さが有機発光層208の厚さの平均値よりも厚い領域であり、平面視にて、直径40μm程度の円形形状を有している。領域Bは、有機発光層208の厚さが有機発光層208の厚さの平均値よりも薄い領域であり直径40μmから直径80μm程度の範囲に配置されている。ここで、発光領域211の平面形状は、後述する第1隔壁205の平面形状と同等な形状を持つ。ここで、発光領域211の形状は、円形形状に限定されることはなく、例えば矩形、長方形、その他不定形を取ることができる。なお、有機発光層208を平坦に作ることは困難であるが、有機発光層208の層厚分布は再現性高く発生するため、後述する構造を用いることで有機発光層208の層厚分布に起因する輝度分布を均一化することが可能となる。
【0046】
層間絶縁層202は、例えば400nmの厚さを有している。層間絶縁層202を構成する物質としては、ここでは窒化珪素を用いている。層間絶縁層202上には、光透過性を有する、インジウム・錫・酸化物(以下ITOと称する)を構成材として、50nm程度の厚さを有する第1電極(陽極)204が配置されている。第1電極204上には、有機発光層208に電流を流す領域を規定する第1隔壁205が配置されている。そして、平面視にて第1隔壁205を囲うように第2隔壁206が配置されている。第2隔壁206は例えば感光性のアクリル樹脂により構成されている。
【0047】
第1隔壁205の内側には正孔注入層207が配置されている。正孔注入層207は、例えばPEDOT/PSS(ポリ(エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレン・スルフォン酸))が用いられ、層厚は50nm程度を有している。そして、CuPc,TAPC,TPD等を用いてなる高抵抗キャリア注入層(キャリア調整層)としての高抵抗正孔注入層215は領域Bと重なるように配置されている。
【0048】
なお、高抵抗正孔注入層215は、有機発光層208の厚さの10分の1程度以下の層厚にすることが好ましく、高抵抗正孔注入層215を配置する際に伴う層厚分布の変化に伴う、有機発光層208における層厚分布の変化を抑制することができる。この場合において、例えば高抵抗正孔注入層215の挿入による層厚分布の変動を含めて観察してある場合等では、10分の1を超える層厚を用いることが可能である。
【0049】
高抵抗正孔注入層215、正孔注入層207上には、有機発光層208が配置されている。有機発光層208の断面形状は、後述する製造工程を用いる場合、領域Aに対応する中央部が厚く(120nm程度)、領域Bに対応する周辺部が薄く(100nm程度)構成される。この構造は、典型的には後述する製造工程を用いる場合に発生する頻度が高くなる。有機発光層208は、本実施形態に係る材質として、フルオレン系の高分子化合物にローダミンをドープしたものや、CBP(4,4−ジカルバゾール−4,4−ビフェニル)誘導体等をホスト材とし、PtOEP(白金ポルフィリン錯体)誘導体をゲスト材として用いた材質を使用することができる。
【0050】
有機発光層208上には、5nm程度の厚さを有するカルシウムを用いた第2電極(陰極)209が配置されている。そして、第2電極209を覆うように200nm以上の層厚を有する、アルミニウムを用いた光反射層210が配置されている。そして、平面視にて第1隔壁205の内側では有機発光層208に電流が供給され、発光領域211が第1隔壁205の内側に配置される。
【0051】
高抵抗正孔注入層215による補正を行わない場合、領域Bでは、有機発光層208の厚さが薄くなるため、電気抵抗が低下し、領域Bに電流が集中する。点線で示す矢印は、補正を行わない場合の電流密度分布を模式化したものである。そのため、領域Bにおける輝度は領域Aにおける輝度と比べ高くなる。図4(a)は、高抵抗正孔注入層215による補正を行わない場合における輝度の分布を示すグラフである。領域Bで輝度が高くなり、発光領域211内部での発光強度に分布ができることが示されている。
【0052】
一方、領域Bに高抵抗正孔注入層215を配置してある場合には、高抵抗正孔注入層215により電気的な抵抗が発生し、電流の流入が抑えられる。そのため、電流分布が均一化する。実線で示す矢印は、高抵抗正孔注入層215が配置された場合の電流密度分布を模式化したものである。そのため、領域Bにおける輝度は領域Aにおける輝度と近い値となる。図4(b)は、高抵抗正孔注入層215が配置された場合における輝度の分布を示すグラフである。領域Bにおける輝度は抑えられ、発光領域211内部での発光強度が均一化することが示されている。即ち、素子内輝度が均一な有機EL素子17Rを提供することが可能となる。
【0053】
(変形例)
ここでは、基板20Aを通過させるボトムエミッション型の有機EL素子17Rについて説明したが、これは容易に有機EL素子17(G,B)に適用することができる。
【0054】
具体的には、有機EL素子17Gに適用させる場合には、有機発光層208に用いる材料として、フルオレン系の高分子化合物に、クマリン系色素をドープしたものや、CBP(4,4−ジカルバゾール−4,4−ビフェニル)誘導体等をホスト材として、Ir(ppy)3、(イリジウム錯体)誘導体をゲスト材として用いた材質を使用することができる。
【0055】
また、有機EL素子17Bに適用させる場合には、有機発光層208に用いる材料として、フルオレン系の高分子化合物に、ペニレン系色素をドープしたものや、CBP(4,4−ジカルバゾール−4,4−ビフェニル)誘導体等をホスト材として、FIrpic(イリジウム錯体)誘導体をゲスト材として用いた材質を使用することができる。この場合、発光波長に合わせて層間絶縁層202の層厚を各々最適化しても良く、発光効率、色純度を向上させることが可能となる。
【0056】
また、本実施形態ではボトムエミッション型の構造について説明したが、これは容易にトップエミッション型に変更することが可能である。即ち、基板20Aと層間絶縁層202との間に例えば200nm以上の厚みを有するアルミニウム等の反射層を配置し、光透過性を有する第2電極として酸化に強いMg/Agを用い、光反射層210を除いた構造を用いることで同様の効果を有するトップエミッション型の構造を得ることができる。また、光反射層を配置しないことで、両面で視認可能な構造を得ることも可能である。
【0057】
また、高抵抗正孔注入層215の厚みは、一定の層厚を有する必要はなく、輝度分布を所望の輝度(例えば発光領域内で発光分布を均一化する、又は、敢えて発光領域211の周辺部の輝度を高める)分布に調整させるよう、層厚分布に分布を持たせても良い。また、高抵抗正孔注入層215の厚みを調整して、発光領域211の全面に高抵抗正孔注入層215を形成しても良い。
【0058】
また、本実施形態では、陰極(第2電極209)材としてCaを用いているが、これは、例えばMgAgやLiF等を用いても良い。また、陰極(第2電極209)と、有機発光層208及び高抵抗正孔注入層215との間に、電子輸送層としてオキシジアゾール誘導体や、アントラキノン誘導体層を構成することも好適である。
【0059】
(有機EL素子−2:中央部が凸の場合(2))
次に、図5を参照して、有機EL素子の構造を説明する。図5は、中央部が凸となる層厚分布を有する、有機ELパネル1(図1参照)を構成する有機EL素子17Rの断面図である。ここで、有機EL素子17(R,G,B)(図1参照)は同様の構造を有しているため、有機EL素子17Rを例として記載している。なお、説明の便宜上、図面上側を「上」と定義する。ここでは、まず、有機EL素子17Rの構造について説明する。また、デバイス構造が上記記載の「有機EL素子−1」と略同一の構成を有する部分については重複を避けるため、説明を省略する。ここでは、正孔注入層207以降の部分について説明する。なお、この場合においても、有機発光層208を平坦に作ることは困難であるが、有機発光層208の層厚分布は再現性高く発生するため、後述する構造を用いることで有機発光層208の層厚分布に起因する輝度分布を均一化することが可能となる。
【0060】
第1隔壁205の内側には正孔注入層207が配置されている。正孔注入層207は、例えばPEDOT/PSS(ポリ(エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレン・スルフォン酸))が用いられ、層厚は50nm程度を有している。そして、有機発光層208への正孔輸送効率を上げるべく、α−NPD,m−MTDATA,2−TNATA,TCTA,(DTP)DPPD,HTM1,TPTE1,NTPA,TFLTL等を用いてなるキャリア輸送層(キャリア調整層)としての正孔輸送層217は領域Aと重なるように配置されている。
【0061】
なお、正孔輸送層217は、有機発光層208の厚さの10分の1程度以下の層厚にすることが好ましく、正孔輸送層217を配置する際に伴う層厚分布の変化に伴う、有機発光層208における層厚分布の変化を抑制することができる。この場合において、例えば正孔輸送層217の挿入による層厚分布の変動を含めて観察してある場合等では、10分の1を超える層厚を用いることが可能である。
【0062】
正孔輸送層217、正孔注入層207上には、有機発光層208が配置されている。有機発光層208の断面形状は、後述する製造工程を用いる場合、領域Aに対応する中央部が厚く(120nm程度)、領域Bに対応する周辺部が薄く(100nm程度)構成される。この構造は、典型的には後述する製造工程を用いる場合に発生する。
【0063】
有機発光層208上には、5nm程度の厚さを有するカルシウムを用いた第2電極(陰極)209が配置されている。そして、第2電極209を覆うように200nm以上の層厚を有する、アルミニウムを用いた光反射層210が配置されている。そして、平面視にて第1隔壁205の内側では有機発光層208に電流が供給され、発光領域211が第1隔壁205の内側に配置される。
【0064】
正孔輸送層217による補正を行わない場合、領域Aでは、有機発光層208の厚さが厚くなるため、電気抵抗が上昇し、領域Aに流れる電流が減少する。点線で示す矢印は、補正を行わない場合の電流密度分布を模式化したものである。そのため、領域Aにおける輝度は領域Bにおける輝度と比べ低くなる。図6(a),(b)は輝度の分布を示すグラフであり、(a)は輝度補正をしない場合の輝度分布、(b)は輝度補正をした場合の輝度分布を示している。輝度補正をしない場合、図6(a)に示すように領域Aでの輝度は低くなり、発光領域211内部での発光強度に分布ができることが示されている。
【0065】
一方、領域Aに正孔輸送層217を配置してある場合には、正孔輸送層217により正孔の注入が促進されるため、電流の流入が促進される。そのため、電流分布が均一化する。実線で示す矢印は、正孔輸送層217が配置された場合の電流密度分布を模式化したものである。従って、領域Aにおける輝度が図6(b)に示すように上昇し、領域Bにおける輝度と近い値となり、発光領域211内部での発光強度が均一化する。即ち、素子内輝度が均一な有機EL素子17Rを提供することが可能となる。なお、この実施形態においても、上記した(変形例)と同様な変形例を成立させることができる。ここで、高抵抗正孔注入層215に代えて正孔輸送層217と読み替えることで、上記した(変形例)と対応をとることができる。
【0066】
(有機EL素子−3:中央部が凹の場合(1))
次に、図7を参照して、有機ELパネル1の構造を説明する。図7(a)は、中央部が凹となる層厚分布を有する、有機ELパネル1(図1参照)を構成する有機EL素子17Rの平面図、図7(b)は、図7(a)のA−A’線断面図である。ここで、有機EL素子17(R,G,B)(図1参照)は同様の構成を有しているため、有機EL素子17Rを例として記載している。なお、説明の便宜上、図面上側を「上」と定義する。以下図7を参照して、有機EL素子17Rの構造について説明する。
【0067】
ガラス基板を用いた基板20A上には、層間絶縁層202が配置されている。ここで発光領域211は、第1隔壁205によって区画された領域であり、典型的な寸法として、直径80μm程度の直径を有している。領域Aは、有機発光層208の厚さが有機発光層208の厚さの平均値よりも薄い領域であり、平面視にて、直径40μm程度の円形形状を有している。領域Bは、有機発光層208の厚さが有機発光層208の厚さの平均値よりも厚い領域であり直径40μmから直径80μm程度の範囲に配置されている。ここで、発光領域211の平面形状は、後述する第1隔壁205の平面形状と同等な形状を持つ。そのため、発光領域211の形状は、円形形状に限定されることはなく、例えば矩形、長方形、その他不定形を取ることができる。なお、有機発光層208を平坦に作ることは困難であるが、有機発光層208の層厚分布は再現性高く発生するため、後述する構造を用いることで有機発光層208の層厚分布に起因する輝度分布を均一化することが可能となる。
【0068】
層間絶縁層202は、例えば400nmの厚さを有している。層間絶縁層202を構成する物質としては、ここでは窒化珪素を用いている。層間絶縁層202上には、光透過性を有する、ITOを構成材として、50nm程度の厚さを有する第1電極(陽極)204が配置されている。第1電極204上には、有機発光層208に電流を流す領域を規定する第1隔壁205が配置されている。そして、平面視にて第1隔壁205を囲うように第2隔壁206が配置されている。第2隔壁206は例えば感光性のアクリル樹脂により構成されている。
【0069】
第2隔壁206の内側には正孔注入層207が配置されている。正孔注入層207は、例えばPEDOT/PSS(ポリ(エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレン・スルフォン酸))が用いられ、層厚は50nm程度を有している。そして、CuPC,TAPC,TPD等を用いてなる高抵抗キャリア注入層(キャリア調整層)としての高抵抗正孔注入層215は領域Aと重なるように配置されている。
【0070】
なお、高抵抗正孔注入層215は、有機発光層208の厚さの10分の1程度以下の層厚にすることが好ましく、高抵抗正孔注入層215を配置する際に伴う層厚分布の変化に伴う、有機発光層208における層厚分布の変化を抑制することができる。この場合において、例えば高抵抗正孔注入層215の挿入による層厚分布の変動を含めて観察してある場合等では、10分の1を超える層厚を用いることが可能である。
【0071】
高抵抗正孔注入層215、正孔注入層207上には、有機発光層208が配置されている。有機発光層208の断面形状は、後述する製造工程を用いる場合、領域Aに対応する中央部が薄く(100nm程度)、領域Bに対応する周辺部が厚く(120nm程度)構成される。この構造は、典型的には後述する製造工程を用いる場合に発生する頻度が高くなる。有機発光層208は、本実施形態に係る材質として、フルオレン系の高分子化合物にローダミンをドープしたものや、CBP(4,4−ジカルバゾール−4,4−ビフェニル)誘導体等をホスト材とし、PtOEP(白金ポルフィリン錯体)誘導体をゲスト材として用いた材質を使用することができる。
【0072】
有機発光層208上には、5nm程度の厚さを有するカルシウムを用いた第2電極(陰極)209が配置されている。そして、第2電極209を覆うように200nm以上の層厚を有する、アルミニウムを用いた光反射層210が配置されている。そして、平面視にて第1隔壁205の内側では有機発光層208に電流が供給され、発光領域211が第1隔壁205の内側に配置される。
【0073】
図7(b)に示すように、高抵抗正孔注入層215による補正を行わない場合、領域Aでは、有機発光層208の厚さが薄くなるため、電気抵抗が低下し、領域Aに電流が集中する。点線で示す矢印は、補正を行わない場合の電流密度分布を模式化したものである。そのため、領域Aにおける輝度は、領域Bにおける輝度と比べ高くなる。図8(a),(b)は輝度分布を示すグラフであり、(a)は輝度補正をしない場合の輝度分布、(b)は輝度補正をした場合の輝度分布を示している。図8(a)に示すように、領域Aでは輝度が高くなり、発光領域211内部での発光強度に分布ができることが示されている。
【0074】
一方、領域Aに高抵抗正孔注入層215を配置してある場合には、高抵抗正孔注入層215により電気的な抵抗が発生し、電流の流入が抑えられる。そのため、電流分布が均一化する。実線で示す矢印は、高抵抗正孔注入層215が配置された場合の電流密度分布を模式化したものである。そのため、図8(b)に示すように、領域Aでの輝度は領域Bでの輝度と近い値となる。領域Aにあたる領域での輝度は抑えられ、発光領域211内部での発光強度が均一化することが示されている。即ち、素子内輝度が均一な有機EL素子17Rを提供することが可能となる。なお、この実施形態においても、上記した(変形例)と同様な変形例を成立させることができる。
【0075】
(有機EL素子−4:中央部が凹の場合(2))
次に、図9を参照して、有機EL素子の構造を説明する。図9は、中央部が凹となる層厚分布を有する、有機ELパネル1(図1参照)を構成する有機EL素子17Rの断面図である。ここで、有機EL素子17(R,G,B)(図1参照)は同様の構造を有しているため、有機EL素子17Rを例として記載している。なお、説明の便宜上、図面上側を「上」と定義する。ここでは、まず、有機EL素子17Rの構造について説明する。また、デバイス構造が上記記載の「有機EL素子−3」と略同一の構成を有する部分については重複を避けるため、説明を省略し、正孔注入層207以降について説明する。なお、この場合においても、有機発光層208を平坦に作ることは困難であるが、有機発光層208の層厚分布は再現性高く発生するため、後述する構造を用いることで有機発光層208の層厚分布に起因する輝度分布を均一化することが可能となる。
【0076】
第2隔壁206の内側には正孔注入層207が配置されている。正孔注入層207は、例えばPEDOT/PSS(ポリ(エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレン・スルフォン酸))が用いられ、層厚は50nm程度を有している。そして、有機発光層208への正孔輸送効率を上げるべく、α−NPD,m−MTDATA,2−TNATA,TCTA,(DTP)DPPD,HTM1,TPTE1,NTPA,TFLTL等を用いてなるキャリア輸送層(キャリア調整層)としての正孔輸送層217は領域Bと重なるように配置されている。
【0077】
なお、正孔輸送層217は、有機発光層208の厚さの10分の1程度以下の層厚にすることが好ましく、正孔輸送層217を配置する際に伴う層厚分布の変化に伴う、有機発光層208における層厚分布の変化を抑制することができる。この場合において、例えば正孔輸送層217の挿入による層厚分布の変動を含めて観察してある場合等では、10分の1を超える層厚を用いることが可能である。
【0078】
正孔輸送層217、正孔注入層207上には、有機発光層208が配置されている。有機発光層208の断面形状は、後述する製造工程を用いる場合、領域Aに対応する中央部が薄く(100nm程度)、領域Bに対応する周辺部が厚く(120nm程度)構成される。この構造は、典型的には後述する製造工程を用いる場合に発生する。
【0079】
有機発光層208上には、5nm程度の厚さを有するカルシウムを用いた第2電極(陰極)209が配置されている。そして、第2電極209を覆うように200nm以上の層厚を有する、アルミニウムを用いた光反射層210が配置されている。そして、平面視にて第1隔壁205の内側では有機発光層208に電流が供給され、発光領域211が第1隔壁205の内側に配置される。
【0080】
正孔輸送層217による補正を行わない場合、領域Aでは、有機発光層208の厚さが薄くなるため、電気抵抗が低下し、領域Aに流れる電流が増加する。点線で示す矢印は、補正を行わない場合の電流密度分布を模式化したものである。そのため、領域Aにおける輝度は領域Bにおける輝度と比べ高くなる。図10(a),(b)は輝度の分布を示すグラフであり、(a)は輝度補正をしない場合の輝度分布、(b)は輝度補正をした場合の輝度分布を示している。図10(a)に示されるように、領域Aでの輝度は高くなり、発光領域211内部での発光強度に分布ができることが示されている。
【0081】
一方、領域Bに正孔輸送層217を配置してある場合には、正孔輸送層217により正孔の注入が促進されるため、電流の流入が促進される。そのため、電流分布が均一化する。実線で示す矢印は、正孔輸送層217が配置された場合の電流密度分布を模式化したものである。図10(b)に示されるように、領域Bにおける輝度が上昇し、発光領域211内部での発光強度が均一化することが示されている。即ち、素子内輝度が均一な有機EL素子17Rを提供することが可能となる。なお、この実施形態においても、上記した(変形例)と同様な変形例を成立させることができる。ここで、高抵抗正孔注入層215に代えて正孔輸送層217と読み替えることで、上記した(変形例)と対応をとることができる。
【0082】
(有機EL素子−5:層厚分布に偏心がある場合)
次に、有機発光層208の層厚分布に偏りがある場合の補正について説明する。なお、説明の便宜上、図面上側を「上」と定義する。図11は、中央部と外れた領域に凸形状が発生した場合の有機EL素子17Rの断面図である。基本的なレイアウトは有機EL素子−1と同様の構成を有している。相違点は凸形状の位置が中心と外れていることである。そのため、補正用の高抵抗正孔注入層215も中心対称の位置と外れた位置に配置されている。この場合においても上記した方法と同様に輝度分布の補正を行うことができる。このように層厚分布に偏りが発生する場合としては、例えば図2に示す有機ELパネル1の周辺部を構成するサブ画素40に配置される有機EL素子17Rに発生する場合が多い。この現象に対しても、再現性が高い事象であるため、補正を行うことが可能である。また、これ以外の場合でも「有機EL素子−1」から「有機EL素子−4」と同様の補正を行うことが可能である。また、(変形例)と同様な変形例を成立させることが可能である。
【0083】
(有機EL素子の製造方法)
次に、有機EL素子の製造方法について説明する。図12(a),(b),(c)から図13(a),(b),(c)は本実施形態に示す有機EL素子の製造方法を説明するための工程断面図である。以下、この図面に沿って説明を行う。製造方法としては有機EL素子17(R,G,B)の構成は殆ど同じであることから、有機EL素子17Rを用いて製造方法を説明する。ここで、有機EL素子17Rの製造工程として、まずモニタ用の基板に対して以下の工程を行う。なお、説明の便宜上、図面上側を「上」と定義する。
【0084】
まず、工程1として、モニタ基板20Dを洗浄し、層間絶縁層202となる窒化珪素層をCVD法(化学気相堆積法)等を用いて400nm程度堆積する。
【0085】
次に、工程2として、ITOを50nm程度の厚さとなるようスパッタ法を用いて積層する。そして不要な部分をエッチング除去することで光透過性を有する第1電極204を形成する。
【0086】
次に、工程3として、酸化珪素層を50nm程度層形成し、発光領域211が形成される領域をエッチング除去することで第1隔壁205を形成する。
【0087】
次に、工程4として、感光性アクリル樹脂を2μm程度の厚さに塗布し、露光・現像することで第2隔壁206を形成する。この工程を終了した状態での断面図を図12(a)に示す。
【0088】
次に、工程5として、酸素プラズマ処理、四弗化炭素ガスでのプラズマ処理等を行い、第1電極204と第1隔壁205に親液性を与え、第2隔壁206に撥液性を与える。
【0089】
次に、工程6として、PEDOT/PSS分散液を液滴吐出法を用いて第2隔壁206内に吐出する。この場合において、第2隔壁206に撥液性を与えているため、第2隔壁206ではPEDOT/PSS分散液は弾かれ、第1隔壁205、第1電極204上に流入するため、液滴吐出位置の若干のずれは補正され、液滴は第1隔壁205、第1電極204上に再現性高く配置される。
【0090】
次に、工程7として、乾燥→アニール工程を行うことで、PEDOT/PSSを用いたキャリア注入層としての正孔注入層207が形成される。この工程を終了した状態での断面図を図12(b)に示す。
【0091】
次に、工程8として、有機発光層前駆体を液滴吐出法により、第2隔壁206内に吐出する。この場合でも工程6と同様に液滴吐出位置の若干のずれは補正される。
【0092】
次に、工程9として、乾燥→アニール工程を行うことで、有機発光層208が形成される。有機発光層208は正孔注入層207を介して電気的に第1電極204と接続され、発光領域211が形成される。ここで、乾燥工程は、大気圧から減圧させることで行われる減圧乾燥を5分以上、より好ましくは10分以上一時間以下で行う工程を用いる条件を用いることができ、この場合には、有機発光層208の中央部が凸の形状が発生する場合が多い。そして、大気圧から減圧させることで行われる減圧乾燥を有機発光層前駆体を液滴吐出法を用いて第2隔壁206内に吐出した後、大気圧から減圧させることで行われる減圧乾燥を5分未満、より確実には1分以下、10秒以上で行う条件で乾燥させることで有機発光層208の中央部が凹の形状を有する場合が多い。ここでは、中央部が凸の形状を有する有機発光層208を用いる場合に対して説明を続ける。この工程を終了した状態での断面図を図12(c)に示す。
【0093】
ここで、有機発光層前駆体を減圧乾燥させる工程において、その真空度は、乾燥に要する時間が上記した値に収まるよう設定されていれば良い。具体例としては例えば数Pa程度の値を用いることができるが、これは一例であり、この値に制約されるものではない。
【0094】
次に、工程10として、有機発光層208の層厚分布を測定する。測定は、例えば触針式膜厚測定器等を用いて測定することが可能である。
【0095】
次に、工程11として有機発光層208の層厚分布の影響を打ち消すべくキャリア調整層のレイアウトを設定する。キャリア調整層としては、高抵抗正孔注入層215(図3参照)や、正孔輸送層217(図5参照)を層厚分布を与えない状態、又は層厚分布に対応させて配置できるようマスクパターンを決定する。
【0096】
次に、工程12として、モニタ基板20Dに代えて、製品用の基板20Aを用いて工程1〜工程7までのプロセスを行う。ここで、モニタ基板20Dを用いて条件出しを行う工程に代えて、製品用の基板20Aの一枚、又は数枚の基板を用いて条件出しを行っても良い。この場合には、より実際の基板に近い状態で測定を行うことが可能となる。この工程を終了した状態での断面図を図13(a)に示す。
【0097】
次に、工程13として、工程11で得られたキャリア調整層のレイアウトに従い、正孔注入層207上にキャリア調整層としての高抵抗正孔注入層215(図3参照)や、正孔輸送層217(図5参照)を正孔注入層207上に形成する。形成方法としては、蒸着法、グラビア印刷法やレーザ転写法等を用いることができる。ここでは、高抵抗正孔注入層215を形成する場合について説明を続ける。
【0098】
次に、工程14として、有機発光層208を形成する。形成方法としては、工程8、工程9と同じ設定条件を用いて形成する。同じ条件を用いることで、有機発光層208の層厚分布をモニタ基板20D上に形成された層厚分布を再現することが可能となる。この工程を終了した状態での断面図を図13(b)に示す。
【0099】
次に、工程15として、カルシウムを5nm程度蒸着し、第2電極(陰極)209を形成する。
【0100】
そして、工程16として、第2電極209を覆うように200nm以上の層厚を有する、アルミニウムを蒸着することで光反射層210を形成することで有機EL素子17Rが形成される。この断面構造を図13(c)に示す。
【0101】
ここでは、基板20Aを通過させて光を取り出すボトムエミッション型の有機EL素子17Rの製造方法について説明したが、これは容易にトップエミッション型の製造工程に変更することが可能である。即ち、基板20Aと層間絶縁層202との間に例えば200nm以上の厚みを有するアルミニウム等の反射層を形成する工程を加えることで基板20A側の反射率を高くし、第2電極側に、光透過性を有する第2電極として酸化に強いMg/Agを用い、光反射層210の製造工程を除くことでトップエミッション型の構造が得られる工程を得ることができる。また、光反射層を形成する工程を省略することで、両面で視認可能な構造を得ることも可能である。
【0102】
(電子機器への搭載例)
以下、図14を参照して、上述した有機EL素子17(R,G,B)(図2参照)を含む有機ELパネル1(図2参照)を用いる電子機器について説明する。図14(a)には、有機ELパネル1を備えた携帯電話機の構成を示す。携帯電話機3000は、複数の操作ボタン3001及びスクロールボタン3002と有機ELパネル1を備える。スクロールボタン3002を操作することによって、有機ELパネル1に表示される画面がスクロールされる。図14(b)は有機ELパネル1を備えた、情報携帯端末(PDA)の構成を示す概略図である。情報携帯端末4000は、複数の操作ボタン4001及び電源スイッチ4002、ならびに有機EL素子17(R,G,B)を備えた有機ELパネル1を備える。操作ボタン4001を操作すると、住所録やスケジュール帳といった各種の情報が有機ELパネル1に表示される。
【0103】
なお、有機EL素子17(R,G,B)を含む有機ELパネル1が搭載される電子機器としては、図14に示すものの他、車載用のスピードメータや、回転計、その他モニタ等が挙げられる。そして、これらの各種電子機器の表示部として、前述した有機EL素子17(R,G,B)が適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】本実施形態の有機ELパネルの配線構造を示す模式図。
【図2】有機ELパネルの構成を模式的に示す平面図。
【図3】(a)は、中央部が凸となる層厚分布を有する、有機ELパネルを構成する有機EL素子の平面図、(b)は、(a)のA−A’線断面図。
【図4】(a)は本実施形態使用前での輝度の分布を示すグラフ、(b)は本実施形態使用後での輝度の分布を示すグラフ。
【図5】中央部が凸となる層厚分布を有する、有機ELパネルを構成する有機EL素子の断面図。
【図6】(a)は本実施形態使用前での輝度の分布を示すグラフ、(b)は本実施形態使用後での輝度の分布を示すグラフ。
【図7】中央部が凹となる層厚分布を有する、有機ELパネルを構成する有機EL素子の断面図。
【図8】輝度の分布を示すグラフ。
【図9】中央部が凹となる層厚分布を有する、有機ELパネルを構成する有機EL素子の断面図。
【図10】(a)は本実施形態使用前での輝度の分布を示すグラフ、(b)は本実施形態使用後での輝度の分布を示すグラフ。
【図11】中央部と外れた領域に凸形状が発生した場合の有機EL素子の断面図。
【図12】有機EL素子の製造方法を説明するための工程断面図。
【図13】有機EL素子の製造方法を説明するための工程断面図。
【図14】(a)は、有機ELパネルを備えた携帯電話機、(b)は表示装置を備えた情報携帯端末(PDA)の構成を示す概略図。
【符号の説明】
【0105】
1…有機ELパネル、3…画素部、4…実表示領域、5…ダミー領域、17B…有機EL素子、17G…有機EL素子、17R…有機EL素子、20…基板本体、20A…基板、20D…モニタ基板、23…画素電極、40…サブ画素、41…表示単位画素、50…対向電極、80…走査線駆動回路、90…検査回路、100…データ線駆動回路、101…走査線、102…信号線、103…電源線、113…保持容量、122…TFT、123…TFT、202…層間絶縁層、204…第1電極、205…第1隔壁、206…第2隔壁、207…正孔注入層、208…有機発光層、209…第2電極、210…光反射層、211…発光領域、215…高抵抗正孔注入層、217…正孔輸送層、3000…携帯電話機、3001…操作ボタン、3002…スクロールボタン、4000…情報携帯端末、4001…操作ボタン、4002…電源スイッチ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子、及びその製造方法、有機エレクトロルミネッセンスパネルならびに電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス(以下、有機ELと称する)素子は、自発光の表示素子として急速に普及してきている。有機EL素子は、その発色性の良さから今後表示パネルとしての需要が期待されている。
【0003】
有機EL素子を形成する場合、液状の有機発光層前駆体を液滴吐出法を用いて各画素に吐出し、乾燥→アニールを行うことで有機発光層を形成する技術が知られている。液滴吐出法を用いて有機発光層を形成することで、有機発光層を形成すべき領域にのみ有機発光層前駆体を供給することができるため、スピンコート法等、基板全面に有機発光層前駆体を塗布した後、有機発光層が不要な領域をエッチングして除去する方法と比べ、廃棄物の量を抑制できるという長所がある。
【0004】
また、有機発光層前駆体を必要とする部分にのみ吐出するため、有機発光層前駆体の消費量を削減することが可能となり、有機発光層の層形成を少ない有機発光層前駆体の使用量で行うことができる。そのため、環境負荷を削減し、且つ、エッチング工程の省略や、高価な有機発光層前駆体の使用量を削減できることからTATの短縮、製造コストの低減化が可能となる。液滴吐出法を用いて有機EL素子を形成している例としては、例えば特許文献1や特許文献2を挙げることができる。
【0005】
【特許文献1】特開2005−339949号公報
【特許文献2】特開2006−13139号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、液滴吐出法を用いて有機発光層を形成する場合、有機発光層の形成にスピンコート法等を用いる場合と比べ、各画素内での層厚分布が不均一になる傾向がある。この場合、各画素内部での発光強度を均一に保つことが困難となり、単位画素内部での発光強度不均一性により表示画質が低下するという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]本適用例にかかる有機エレクトロルミネッセンス素子は、基板と、前記基板上に配置される、第1電極と、前記第1電極上に位置し、平面視にて前記第1電極を覆うキャリア注入層と、前記キャリア注入層上に配置される有機発光層と、平面視にて発光領域内に位置し、前記キャリア注入層と前記有機発光層との間における少なくとも一部の領域に配置されるキャリア調整層と、前記有機発光層上に位置し、平面視にて前記有機発光層を覆う第2電極と、を含むことを特徴とする。
【0009】
これによれば、キャリア調整層がキャリア注入層と有機発光層との間に配置される。キャリア調整層を配置することで、有機発光層の発光効率を有機エレクトロルミネッセンス素子内部で変調することが可能となり、輝度分布を制御することが可能となる。
【0010】
[適用例2]上記適用例にかかる有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記キャリア調整層は前記有機発光層と対応する層厚分布を有し、前記発光領域内の少なくとも一部に形成されていることを特徴とする。
【0011】
上記した構成によれば、キャリア調整層は発光領域内で層厚分布を有している。そのため、有機発光層の発光効率を有機エレクトロルミネッセンス素子内部で連続量として変調することが可能となり、輝度分布をより精密に制御することが可能となる。
【0012】
[適用例3]上記適用例にかかる有機エレクトロルミネッセンス素子において、平面視にて前記発光領域内に位置する前記有機発光層から見て、前記第1電極側、又は前記第2電極側の少なくとも片側が光透過性を有していることを特徴とする。
【0013】
上記した構成によれば、平面視にて発光領域内に位置する有機発光層が射出する光を外部に取り出すことが可能となる。
【0014】
[適用例4]上記適用例にかかる有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記キャリア調整層として、前記キャリア注入層よりも前記有機発光層へのキャリア注入効率が低い低効率キャリア注入層を用いてなり、且つ前記低効率キャリア注入層を、前記有機発光層の層厚分布と逆の相関を持つ厚みを与え、前記低効率キャリア注入層により、前記発光領域の少なくとも一部を覆うことを特徴とする。
【0015】
上記した構成によれば、電気的な抵抗値が低くなることで有機発光層の層厚が薄い領域では、層厚の厚い領域と比べ電気的な抵抗値が低くなる。そのため、注入される電流が増え、高い輝度を示す。有機発光層の層厚が薄い領域に、低効率キャリア注入層を配置することで、有機発光層の層厚が薄い領域での有機エレクトロルミネッセンス素子の輝度を下げることができる。従って、発光領域内での輝度を均一化することが可能となる。また、低効率キャリア注入層の層厚を連続量として変調することで、輝度分布をより精密に制御することが可能となる。
【0016】
[適用例5]上記適用例にかかる有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記有機発光層の前記発光領域内での層厚が、前記有機発光層の前記発光領域内での層厚の平均値と比べ薄い領域の少なくとも一部に、前記キャリア注入層よりも前記有機発光層へのキャリア注入効率が低い低効率キャリア注入層を、前記キャリア調整層として配置していることを特徴とする。
【0017】
上記した構成によれば、電気的な抵抗値が低くなることで有機発光層の層厚が薄い領域では、層厚の厚い領域と比べ注入される電流が増え、高い輝度を示す。有機発光層の層厚が薄い領域に、低効率キャリア注入層を配置することで、有機発光層の層厚が薄い領域での有機エレクトロルミネッセンス素子の輝度を下げることができる。従って、発光領域内での輝度を均一化することが可能となる。また、有機発光層の層厚が薄い領域のみを補正するため、有機発光層の層厚が厚い領域の輝度は低下せず、輝度低下を抑えて輝度分布を均一化することが可能となる。
【0018】
[適用例6]上記適用例にかかる有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記キャリア調整層として、前記キャリア注入層よりも前記有機発光層へのキャリア注入効率が高いキャリア輸送層を用いてなり、且つ前記キャリア輸送層に前記有機発光層の層厚分布と正の相関を持つ厚みを与え、前記キャリア輸送層により、前記発光領域の少なくとも一部を覆うことを特徴とする。
【0019】
上記した構成によれば、電気的な抵抗値が高くなることで有機発光層の層厚が厚い領域では、層厚の薄い領域と比べ電気的な抵抗値が高くなる。そのため、注入される電流が減り、低い輝度を示す。有機発光層の層厚が厚い領域に、注入効率が高いキャリア輸送層を配置することで、有機発光層の層厚が厚い領域での有機エレクトロルミネッセンス素子の輝度を上げることができる。従って、発光領域内での輝度を均一化することが可能となる。また、キャリア輸送層の層厚を連続量として変調することで、輝度分布をより精密に制御することが可能となる。
【0020】
[適用例7]上記適用例にかかる有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記有機発光層の層厚が、前記有機発光層における層厚の平均値と比べて厚い領域の少なくとも一部に、前記キャリア注入層よりも前記有機発光層へのキャリア注入効率が高いキャリア輸送層を前記キャリア調整層として配置することを特徴とする。
【0021】
上記した構成によれば、電気的な抵抗値が高くなることで有機発光層の層厚が厚い領域では、層厚の薄い領域と比べ電気的な抵抗値が高くなる。そのため、注入される電流が減り、低い輝度を示す。有機発光層の層厚が厚い領域に、注入効率が高いキャリア輸送層を配置することで、有機発光層の層厚が厚い領域での有機エレクトロルミネッセンス素子の輝度を上げることができる。従って、発光領域内での輝度を均一化することが可能となる。また、有機発光層の層厚が厚い領域のみを補正するため、有機発光層の層厚が薄い領域の輝度は低下せず、輝度低下を抑えて輝度分布を均一化することが可能となる。
【0022】
[適用例8]本適用例にかかる有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法は、(1)モニタ基板上にモニタ層間絶縁層を形成する工程と、(2)前記モニタ層間絶縁層上にモニタ第1電極を形成する工程と、(3)モニタ発光領域を含む領域を各素子毎に分離するモニタ隔壁を形成する工程と、(4)平面視にて前記モニタ隔壁の内側に、モニタキャリア注入層を形成する工程と、(5)モニタ有機発光層を形成する工程と、(6)前記モニタ有機発光層の、モニタ発光領域内での前記モニタ有機発光層の層厚分布を測定する工程と、(7)基板上に層間絶縁層を形成する工程と、(8)前記層間絶縁層上に第1電極を形成する工程と、(9)発光領域を含む領域を各素子毎に分離する隔壁を形成する工程と、(10)平面視にて前記隔壁の内側に、キャリア注入層を形成する工程と、(11)前記モニタ有機発光層の層厚分布に対応させて前記キャリア注入層上に、平面視にて前記発光領域を含む領域にキャリア調整層を形成する工程と、(12)平面視にて前記隔壁の内側に有機発光層を形成する工程と、(13)前記有機発光層上に、平面視にて少なくとも前記発光領域と重なる領域に第2電極を形成する工程と、を含むことを特徴とする。
【0023】
これによれば、製造条件を変えた場合に生じる有機発光層の層厚分布に対応させて、キャリア調整層を構成する部材、キャリア調整層の配置、層厚分布の調整を行う工程を用いることができるため、発光領域内での輝度分布を制御することができる。有機発光層の層厚分布は、製造方法が同じ場合、層厚分布の再現性は高い。そのため、モニタ基板を用いて層厚データと製造条件データを記録し、各製造条件データに合致した層厚データに基づき、キャリア調整層を形成することで輝度分布を制御することが可能となる。
【0024】
[適用例9]上記適用例にかかる有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法において、前記(11)の工程は、前記発光領域内における前記モニタ有機発光層の層厚の平均値と比べ、中央部で層厚が厚い製造条件を用いる場合に、前記キャリア調整層として、前記キャリア注入層よりも、前記有機発光層へのキャリア注入効率が低い低効率キャリア注入層を用い、且つ前記低効率キャリア注入層を前記キャリア注入層の前記発光領域内での外周部の少なくとも一部に形成する工程であることを特徴とする。
【0025】
上記した適用例によれば、層厚分布の再現性が高いことから、モニタ有機発光層と同様有機発光層の層厚は中央部で厚い状態を有する。この場合、中央部では層厚が厚いため電気抵抗値が高くなり、注入される電流は減り、輝度は低下する。そこで、有機発光層へのキャリア注入効率が低い低効率キャリア注入層を、キャリア注入層の外周部に対して、少なくとも一部に形成する。その結果、周辺部での電気抵抗が高くなり、注入される電流は減り、輝度は低下する。そのため、発光領域内で均一性の高い有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法を提供することが可能となる。
【0026】
[適用例10]上記適用例にかかる有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法において、前記(11)の工程は、前記発光領域内における前記モニタ有機発光層の層厚の平均値と比べ、中央部で層厚が厚い製造条件を用いる場合に、前記キャリア調整層として、前記キャリア注入層よりも、前記有機発光層へのキャリア注入効率が高いキャリア輸送層を用い、且つ前記キャリア輸送層を前記キャリア注入層の前記発光領域内での中央部の少なくとも一部に形成する工程であることを特徴とする。
【0027】
上記した適用例によれば、層厚分布の再現性が高いことから、モニタ有機発光層と同様有機発光層の層厚は中央部で厚い状態を有する。この場合、中央部では層厚が厚いため電気抵抗値が高くなり、注入される電流は減り、輝度は低下する。そこで、中央部の少なくとも一部にキャリア輸送層を形成することで、中央部でのキャリア注入効率が高くなり、注入される電流は増加し、輝度は増加する。そのため、発光領域内で均一性の高い有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法を提供することが可能となる。
【0028】
[適用例11]上記適用例にかかる有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法において、前記(11)の工程は、前記発光領域内における前記モニタ有機発光層の層厚の平均値と比べ、中央部で層厚が薄い製造条件を用いる場合に、前記キャリア調整層として、前記キャリア注入層よりも、前記有機発光層へのキャリア注入効率が低い低効率キャリア注入層を用い、且つ前記低効率キャリア注入層を前記キャリア注入層の中央部の少なくとも一部に形成する工程であることを特徴とする。
【0029】
上記した適用例によれば、層厚分布の再現性が高いことから、モニタ有機発光層と同様有機発光層の層厚は中央部で薄い状態を有する。この場合、中央部では層厚が薄いため電気抵抗値が低くなり、注入される電流は増え、輝度は上昇する。こで、有機発光層へのキャリア注入効率が低い低効率キャリア注入層を、中央部の少なくとも一部に形成する。その結果、中央部での電気抵抗が高くなり、注入される電流は減り、輝度は低下する。そのため、発光領域内で均一性の高い有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法を提供することが可能となる。
【0030】
[適用例12]上記適用例にかかる有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法において、前記(11)の工程は、前記発光領域内における前記モニタ有機発光層の層厚の平均値と比べ、中央部で層厚が薄い製造条件を用いる場合に、前記キャリア調整層として、前記キャリア注入層よりも、前記有機発光層へのキャリア注入効率が高いキャリア輸送層を用い、且つ前記キャリア輸送層を前記キャリア注入層の外周部の少なくとも一部に形成する工程であることを特徴とする。
【0031】
上記した適用例によれば、層厚分布の再現性が高いことから、モニタ有機発光層と同様有機発光層の層厚は中央部で薄い状態を有する。この場合、中央部では層厚が薄いため電気抵抗値が低くなり、注入される電流は増え、輝度は上昇する。そこで、外周部の少なくとも一部にキャリア輸送層を形成することで、外周部でのキャリア注入効率が高くなり、注入される電流は増加し、輝度は増加する。そのため、発光領域内で均一性の高い有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法を提供することが可能となる。
【0032】
[適用例13]本適用例にかかる有機エレクトロルミネッセンスパネルは、上記記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を含むことを特徴とする。
【0033】
これによれば、各々の有機エレクトロルミネッセンス素子内部での発光強度分布が均一性高く形成されているため、均一性の高い表示品質を有する有機エレクトロルミネッセンスパネルを提供することが可能となる。
【0034】
[適用例14]本適用例にかかる電子機器は、上記記載の有機エレクトロルミネッセンスパネルを含むことを特徴とする。
【0035】
これによれば、均一性の高い表示品質を有する有機エレクトロルミネッセンスパネルを備えているため、均一性に優れた高い画像を表示し得る電子機器を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
(有機エレクトロルミネッセンスパネルの構成)
以下、本実施形態にかかる有機エレクトロルミネッセンス(以下有機ELと称する)パネルについて、図面を参照して説明する。図1は、本実施形態の有機ELパネルの配線構造を示す模式図である。有機ELパネル1は、スイッチング素子として薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor、以下TFTと称する。)を用いており、例えばTFT122、TFT123を用いたアクティブマトリクス方式のもので、複数の走査線101と、各走査線101に対して直角に交差する方向に延びる複数の信号線102と、各信号線102に並列に延びる複数の電源線103とからなる配線構成を有するとともに、走査線101及び信号線102の各交点付近に、サブ画素40が設けられている。
【0037】
信号線102には、シフトレジスタ、レベルシフタ、ビデオライン及びアナログスイッチを備えるデータ線駆動回路100が接続されている。また、走査線101には、シフトレジスタ及びレベルシフタを備える走査線駆動回路80が接続されている。
【0038】
サブ画素40の各々には、走査線101を介して走査信号がゲート電極に供給されるスイッチング用のTFT122と、スイッチング用のTFT122を介して信号線102と共有される画素信号を保持する保持容量113と、が含まれる。そして、保持容量113によって保持される画素信号がゲート電極に供給される駆動用のTFT123と、TFT123を介して電源線103に電気的に接続したときに、当該電源線103から駆動電流が与えられる第1電極としての画素電極23と、画素電極23と対向する第2電極としての対向電極50との間に挟み込まれた、画素電極23と対向電極50を含む有機EL素子17(R,G,B)と、が設けられている。
【0039】
次に、本実施形態の有機ELパネル1の具体的な態様を、図2を参照して説明する。ここで、図2は有機ELパネル1の構成を模式的に示す平面図である。
【0040】
図2に示すように、基板20A上の実表示領域4には、R,G,Bに対応して設けられたサブ画素40がマトリクス状に規則的に配置される。ここで、基板20Aは、基板本体20、及び基板本体20上に設けられた、例えばTFT122、TFT123等を含むものである。
【0041】
また、R,G,B各色のサブ画素40(R,G,B)は一つの基本単位となって表示単位画素41を構成している。また、サブ画素40(R,G,B)の各々は、TFT122、TFT123(図1参照)の動作に伴って、R,G,B各々の発光に対応する有機EL素子17(R,G,B)(図1参照)を備える構成を有している。
【0042】
なお、本実施形態において画素部3(図中一点鎖線内)は、中央部分の実表示領域4(図中二点鎖線枠内)と、実表示領域4の周囲に配置されたダミー領域5(一点鎖線及び二点鎖線の間の領域)とに区画されている。そして、実表示領域4を挟むように、走査線駆動回路80が配置されている。
【0043】
また、実表示領域4の上方には検査回路90が配置されている。検査回路90は、有機ELパネル1の作動状況を検査するための回路であって、例えば検査結果を外部に出力する検査情報出力手段(図示せず)を備え、製造途中や出荷時における有機ELパネル1の品質、欠陥の検査を行うことができるように構成されている。
【0044】
(有機EL素子−1:中央部が凸の場合(1))
次に、図3を参照して、有機EL素子の構造を説明する。図3(a)は、中央部が凸となる層厚分布を有する、有機ELパネル1(図1参照)を構成する有機EL素子17Rの平面図、図3(b)は、図3(a)のA−A’線断面図である。ここで、有機EL素子17(R,G,B)(図1参照)は同様の構造を有しているため、有機EL素子17Rを例として記載している。なお、説明の便宜上、図面上側を「上」と定義する。ここでは、まず、有機EL素子17Rの構造について説明する。
【0045】
ガラス基板を用いた基板20A上には、層間絶縁層202が配置されている。ここで発光領域211は、第1隔壁205によって区画された領域であり、典型的な寸法として、直径80μm程度の直径を有している。領域Aは、有機発光層208の厚さが有機発光層208の厚さの平均値よりも厚い領域であり、平面視にて、直径40μm程度の円形形状を有している。領域Bは、有機発光層208の厚さが有機発光層208の厚さの平均値よりも薄い領域であり直径40μmから直径80μm程度の範囲に配置されている。ここで、発光領域211の平面形状は、後述する第1隔壁205の平面形状と同等な形状を持つ。ここで、発光領域211の形状は、円形形状に限定されることはなく、例えば矩形、長方形、その他不定形を取ることができる。なお、有機発光層208を平坦に作ることは困難であるが、有機発光層208の層厚分布は再現性高く発生するため、後述する構造を用いることで有機発光層208の層厚分布に起因する輝度分布を均一化することが可能となる。
【0046】
層間絶縁層202は、例えば400nmの厚さを有している。層間絶縁層202を構成する物質としては、ここでは窒化珪素を用いている。層間絶縁層202上には、光透過性を有する、インジウム・錫・酸化物(以下ITOと称する)を構成材として、50nm程度の厚さを有する第1電極(陽極)204が配置されている。第1電極204上には、有機発光層208に電流を流す領域を規定する第1隔壁205が配置されている。そして、平面視にて第1隔壁205を囲うように第2隔壁206が配置されている。第2隔壁206は例えば感光性のアクリル樹脂により構成されている。
【0047】
第1隔壁205の内側には正孔注入層207が配置されている。正孔注入層207は、例えばPEDOT/PSS(ポリ(エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレン・スルフォン酸))が用いられ、層厚は50nm程度を有している。そして、CuPc,TAPC,TPD等を用いてなる高抵抗キャリア注入層(キャリア調整層)としての高抵抗正孔注入層215は領域Bと重なるように配置されている。
【0048】
なお、高抵抗正孔注入層215は、有機発光層208の厚さの10分の1程度以下の層厚にすることが好ましく、高抵抗正孔注入層215を配置する際に伴う層厚分布の変化に伴う、有機発光層208における層厚分布の変化を抑制することができる。この場合において、例えば高抵抗正孔注入層215の挿入による層厚分布の変動を含めて観察してある場合等では、10分の1を超える層厚を用いることが可能である。
【0049】
高抵抗正孔注入層215、正孔注入層207上には、有機発光層208が配置されている。有機発光層208の断面形状は、後述する製造工程を用いる場合、領域Aに対応する中央部が厚く(120nm程度)、領域Bに対応する周辺部が薄く(100nm程度)構成される。この構造は、典型的には後述する製造工程を用いる場合に発生する頻度が高くなる。有機発光層208は、本実施形態に係る材質として、フルオレン系の高分子化合物にローダミンをドープしたものや、CBP(4,4−ジカルバゾール−4,4−ビフェニル)誘導体等をホスト材とし、PtOEP(白金ポルフィリン錯体)誘導体をゲスト材として用いた材質を使用することができる。
【0050】
有機発光層208上には、5nm程度の厚さを有するカルシウムを用いた第2電極(陰極)209が配置されている。そして、第2電極209を覆うように200nm以上の層厚を有する、アルミニウムを用いた光反射層210が配置されている。そして、平面視にて第1隔壁205の内側では有機発光層208に電流が供給され、発光領域211が第1隔壁205の内側に配置される。
【0051】
高抵抗正孔注入層215による補正を行わない場合、領域Bでは、有機発光層208の厚さが薄くなるため、電気抵抗が低下し、領域Bに電流が集中する。点線で示す矢印は、補正を行わない場合の電流密度分布を模式化したものである。そのため、領域Bにおける輝度は領域Aにおける輝度と比べ高くなる。図4(a)は、高抵抗正孔注入層215による補正を行わない場合における輝度の分布を示すグラフである。領域Bで輝度が高くなり、発光領域211内部での発光強度に分布ができることが示されている。
【0052】
一方、領域Bに高抵抗正孔注入層215を配置してある場合には、高抵抗正孔注入層215により電気的な抵抗が発生し、電流の流入が抑えられる。そのため、電流分布が均一化する。実線で示す矢印は、高抵抗正孔注入層215が配置された場合の電流密度分布を模式化したものである。そのため、領域Bにおける輝度は領域Aにおける輝度と近い値となる。図4(b)は、高抵抗正孔注入層215が配置された場合における輝度の分布を示すグラフである。領域Bにおける輝度は抑えられ、発光領域211内部での発光強度が均一化することが示されている。即ち、素子内輝度が均一な有機EL素子17Rを提供することが可能となる。
【0053】
(変形例)
ここでは、基板20Aを通過させるボトムエミッション型の有機EL素子17Rについて説明したが、これは容易に有機EL素子17(G,B)に適用することができる。
【0054】
具体的には、有機EL素子17Gに適用させる場合には、有機発光層208に用いる材料として、フルオレン系の高分子化合物に、クマリン系色素をドープしたものや、CBP(4,4−ジカルバゾール−4,4−ビフェニル)誘導体等をホスト材として、Ir(ppy)3、(イリジウム錯体)誘導体をゲスト材として用いた材質を使用することができる。
【0055】
また、有機EL素子17Bに適用させる場合には、有機発光層208に用いる材料として、フルオレン系の高分子化合物に、ペニレン系色素をドープしたものや、CBP(4,4−ジカルバゾール−4,4−ビフェニル)誘導体等をホスト材として、FIrpic(イリジウム錯体)誘導体をゲスト材として用いた材質を使用することができる。この場合、発光波長に合わせて層間絶縁層202の層厚を各々最適化しても良く、発光効率、色純度を向上させることが可能となる。
【0056】
また、本実施形態ではボトムエミッション型の構造について説明したが、これは容易にトップエミッション型に変更することが可能である。即ち、基板20Aと層間絶縁層202との間に例えば200nm以上の厚みを有するアルミニウム等の反射層を配置し、光透過性を有する第2電極として酸化に強いMg/Agを用い、光反射層210を除いた構造を用いることで同様の効果を有するトップエミッション型の構造を得ることができる。また、光反射層を配置しないことで、両面で視認可能な構造を得ることも可能である。
【0057】
また、高抵抗正孔注入層215の厚みは、一定の層厚を有する必要はなく、輝度分布を所望の輝度(例えば発光領域内で発光分布を均一化する、又は、敢えて発光領域211の周辺部の輝度を高める)分布に調整させるよう、層厚分布に分布を持たせても良い。また、高抵抗正孔注入層215の厚みを調整して、発光領域211の全面に高抵抗正孔注入層215を形成しても良い。
【0058】
また、本実施形態では、陰極(第2電極209)材としてCaを用いているが、これは、例えばMgAgやLiF等を用いても良い。また、陰極(第2電極209)と、有機発光層208及び高抵抗正孔注入層215との間に、電子輸送層としてオキシジアゾール誘導体や、アントラキノン誘導体層を構成することも好適である。
【0059】
(有機EL素子−2:中央部が凸の場合(2))
次に、図5を参照して、有機EL素子の構造を説明する。図5は、中央部が凸となる層厚分布を有する、有機ELパネル1(図1参照)を構成する有機EL素子17Rの断面図である。ここで、有機EL素子17(R,G,B)(図1参照)は同様の構造を有しているため、有機EL素子17Rを例として記載している。なお、説明の便宜上、図面上側を「上」と定義する。ここでは、まず、有機EL素子17Rの構造について説明する。また、デバイス構造が上記記載の「有機EL素子−1」と略同一の構成を有する部分については重複を避けるため、説明を省略する。ここでは、正孔注入層207以降の部分について説明する。なお、この場合においても、有機発光層208を平坦に作ることは困難であるが、有機発光層208の層厚分布は再現性高く発生するため、後述する構造を用いることで有機発光層208の層厚分布に起因する輝度分布を均一化することが可能となる。
【0060】
第1隔壁205の内側には正孔注入層207が配置されている。正孔注入層207は、例えばPEDOT/PSS(ポリ(エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレン・スルフォン酸))が用いられ、層厚は50nm程度を有している。そして、有機発光層208への正孔輸送効率を上げるべく、α−NPD,m−MTDATA,2−TNATA,TCTA,(DTP)DPPD,HTM1,TPTE1,NTPA,TFLTL等を用いてなるキャリア輸送層(キャリア調整層)としての正孔輸送層217は領域Aと重なるように配置されている。
【0061】
なお、正孔輸送層217は、有機発光層208の厚さの10分の1程度以下の層厚にすることが好ましく、正孔輸送層217を配置する際に伴う層厚分布の変化に伴う、有機発光層208における層厚分布の変化を抑制することができる。この場合において、例えば正孔輸送層217の挿入による層厚分布の変動を含めて観察してある場合等では、10分の1を超える層厚を用いることが可能である。
【0062】
正孔輸送層217、正孔注入層207上には、有機発光層208が配置されている。有機発光層208の断面形状は、後述する製造工程を用いる場合、領域Aに対応する中央部が厚く(120nm程度)、領域Bに対応する周辺部が薄く(100nm程度)構成される。この構造は、典型的には後述する製造工程を用いる場合に発生する。
【0063】
有機発光層208上には、5nm程度の厚さを有するカルシウムを用いた第2電極(陰極)209が配置されている。そして、第2電極209を覆うように200nm以上の層厚を有する、アルミニウムを用いた光反射層210が配置されている。そして、平面視にて第1隔壁205の内側では有機発光層208に電流が供給され、発光領域211が第1隔壁205の内側に配置される。
【0064】
正孔輸送層217による補正を行わない場合、領域Aでは、有機発光層208の厚さが厚くなるため、電気抵抗が上昇し、領域Aに流れる電流が減少する。点線で示す矢印は、補正を行わない場合の電流密度分布を模式化したものである。そのため、領域Aにおける輝度は領域Bにおける輝度と比べ低くなる。図6(a),(b)は輝度の分布を示すグラフであり、(a)は輝度補正をしない場合の輝度分布、(b)は輝度補正をした場合の輝度分布を示している。輝度補正をしない場合、図6(a)に示すように領域Aでの輝度は低くなり、発光領域211内部での発光強度に分布ができることが示されている。
【0065】
一方、領域Aに正孔輸送層217を配置してある場合には、正孔輸送層217により正孔の注入が促進されるため、電流の流入が促進される。そのため、電流分布が均一化する。実線で示す矢印は、正孔輸送層217が配置された場合の電流密度分布を模式化したものである。従って、領域Aにおける輝度が図6(b)に示すように上昇し、領域Bにおける輝度と近い値となり、発光領域211内部での発光強度が均一化する。即ち、素子内輝度が均一な有機EL素子17Rを提供することが可能となる。なお、この実施形態においても、上記した(変形例)と同様な変形例を成立させることができる。ここで、高抵抗正孔注入層215に代えて正孔輸送層217と読み替えることで、上記した(変形例)と対応をとることができる。
【0066】
(有機EL素子−3:中央部が凹の場合(1))
次に、図7を参照して、有機ELパネル1の構造を説明する。図7(a)は、中央部が凹となる層厚分布を有する、有機ELパネル1(図1参照)を構成する有機EL素子17Rの平面図、図7(b)は、図7(a)のA−A’線断面図である。ここで、有機EL素子17(R,G,B)(図1参照)は同様の構成を有しているため、有機EL素子17Rを例として記載している。なお、説明の便宜上、図面上側を「上」と定義する。以下図7を参照して、有機EL素子17Rの構造について説明する。
【0067】
ガラス基板を用いた基板20A上には、層間絶縁層202が配置されている。ここで発光領域211は、第1隔壁205によって区画された領域であり、典型的な寸法として、直径80μm程度の直径を有している。領域Aは、有機発光層208の厚さが有機発光層208の厚さの平均値よりも薄い領域であり、平面視にて、直径40μm程度の円形形状を有している。領域Bは、有機発光層208の厚さが有機発光層208の厚さの平均値よりも厚い領域であり直径40μmから直径80μm程度の範囲に配置されている。ここで、発光領域211の平面形状は、後述する第1隔壁205の平面形状と同等な形状を持つ。そのため、発光領域211の形状は、円形形状に限定されることはなく、例えば矩形、長方形、その他不定形を取ることができる。なお、有機発光層208を平坦に作ることは困難であるが、有機発光層208の層厚分布は再現性高く発生するため、後述する構造を用いることで有機発光層208の層厚分布に起因する輝度分布を均一化することが可能となる。
【0068】
層間絶縁層202は、例えば400nmの厚さを有している。層間絶縁層202を構成する物質としては、ここでは窒化珪素を用いている。層間絶縁層202上には、光透過性を有する、ITOを構成材として、50nm程度の厚さを有する第1電極(陽極)204が配置されている。第1電極204上には、有機発光層208に電流を流す領域を規定する第1隔壁205が配置されている。そして、平面視にて第1隔壁205を囲うように第2隔壁206が配置されている。第2隔壁206は例えば感光性のアクリル樹脂により構成されている。
【0069】
第2隔壁206の内側には正孔注入層207が配置されている。正孔注入層207は、例えばPEDOT/PSS(ポリ(エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレン・スルフォン酸))が用いられ、層厚は50nm程度を有している。そして、CuPC,TAPC,TPD等を用いてなる高抵抗キャリア注入層(キャリア調整層)としての高抵抗正孔注入層215は領域Aと重なるように配置されている。
【0070】
なお、高抵抗正孔注入層215は、有機発光層208の厚さの10分の1程度以下の層厚にすることが好ましく、高抵抗正孔注入層215を配置する際に伴う層厚分布の変化に伴う、有機発光層208における層厚分布の変化を抑制することができる。この場合において、例えば高抵抗正孔注入層215の挿入による層厚分布の変動を含めて観察してある場合等では、10分の1を超える層厚を用いることが可能である。
【0071】
高抵抗正孔注入層215、正孔注入層207上には、有機発光層208が配置されている。有機発光層208の断面形状は、後述する製造工程を用いる場合、領域Aに対応する中央部が薄く(100nm程度)、領域Bに対応する周辺部が厚く(120nm程度)構成される。この構造は、典型的には後述する製造工程を用いる場合に発生する頻度が高くなる。有機発光層208は、本実施形態に係る材質として、フルオレン系の高分子化合物にローダミンをドープしたものや、CBP(4,4−ジカルバゾール−4,4−ビフェニル)誘導体等をホスト材とし、PtOEP(白金ポルフィリン錯体)誘導体をゲスト材として用いた材質を使用することができる。
【0072】
有機発光層208上には、5nm程度の厚さを有するカルシウムを用いた第2電極(陰極)209が配置されている。そして、第2電極209を覆うように200nm以上の層厚を有する、アルミニウムを用いた光反射層210が配置されている。そして、平面視にて第1隔壁205の内側では有機発光層208に電流が供給され、発光領域211が第1隔壁205の内側に配置される。
【0073】
図7(b)に示すように、高抵抗正孔注入層215による補正を行わない場合、領域Aでは、有機発光層208の厚さが薄くなるため、電気抵抗が低下し、領域Aに電流が集中する。点線で示す矢印は、補正を行わない場合の電流密度分布を模式化したものである。そのため、領域Aにおける輝度は、領域Bにおける輝度と比べ高くなる。図8(a),(b)は輝度分布を示すグラフであり、(a)は輝度補正をしない場合の輝度分布、(b)は輝度補正をした場合の輝度分布を示している。図8(a)に示すように、領域Aでは輝度が高くなり、発光領域211内部での発光強度に分布ができることが示されている。
【0074】
一方、領域Aに高抵抗正孔注入層215を配置してある場合には、高抵抗正孔注入層215により電気的な抵抗が発生し、電流の流入が抑えられる。そのため、電流分布が均一化する。実線で示す矢印は、高抵抗正孔注入層215が配置された場合の電流密度分布を模式化したものである。そのため、図8(b)に示すように、領域Aでの輝度は領域Bでの輝度と近い値となる。領域Aにあたる領域での輝度は抑えられ、発光領域211内部での発光強度が均一化することが示されている。即ち、素子内輝度が均一な有機EL素子17Rを提供することが可能となる。なお、この実施形態においても、上記した(変形例)と同様な変形例を成立させることができる。
【0075】
(有機EL素子−4:中央部が凹の場合(2))
次に、図9を参照して、有機EL素子の構造を説明する。図9は、中央部が凹となる層厚分布を有する、有機ELパネル1(図1参照)を構成する有機EL素子17Rの断面図である。ここで、有機EL素子17(R,G,B)(図1参照)は同様の構造を有しているため、有機EL素子17Rを例として記載している。なお、説明の便宜上、図面上側を「上」と定義する。ここでは、まず、有機EL素子17Rの構造について説明する。また、デバイス構造が上記記載の「有機EL素子−3」と略同一の構成を有する部分については重複を避けるため、説明を省略し、正孔注入層207以降について説明する。なお、この場合においても、有機発光層208を平坦に作ることは困難であるが、有機発光層208の層厚分布は再現性高く発生するため、後述する構造を用いることで有機発光層208の層厚分布に起因する輝度分布を均一化することが可能となる。
【0076】
第2隔壁206の内側には正孔注入層207が配置されている。正孔注入層207は、例えばPEDOT/PSS(ポリ(エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレン・スルフォン酸))が用いられ、層厚は50nm程度を有している。そして、有機発光層208への正孔輸送効率を上げるべく、α−NPD,m−MTDATA,2−TNATA,TCTA,(DTP)DPPD,HTM1,TPTE1,NTPA,TFLTL等を用いてなるキャリア輸送層(キャリア調整層)としての正孔輸送層217は領域Bと重なるように配置されている。
【0077】
なお、正孔輸送層217は、有機発光層208の厚さの10分の1程度以下の層厚にすることが好ましく、正孔輸送層217を配置する際に伴う層厚分布の変化に伴う、有機発光層208における層厚分布の変化を抑制することができる。この場合において、例えば正孔輸送層217の挿入による層厚分布の変動を含めて観察してある場合等では、10分の1を超える層厚を用いることが可能である。
【0078】
正孔輸送層217、正孔注入層207上には、有機発光層208が配置されている。有機発光層208の断面形状は、後述する製造工程を用いる場合、領域Aに対応する中央部が薄く(100nm程度)、領域Bに対応する周辺部が厚く(120nm程度)構成される。この構造は、典型的には後述する製造工程を用いる場合に発生する。
【0079】
有機発光層208上には、5nm程度の厚さを有するカルシウムを用いた第2電極(陰極)209が配置されている。そして、第2電極209を覆うように200nm以上の層厚を有する、アルミニウムを用いた光反射層210が配置されている。そして、平面視にて第1隔壁205の内側では有機発光層208に電流が供給され、発光領域211が第1隔壁205の内側に配置される。
【0080】
正孔輸送層217による補正を行わない場合、領域Aでは、有機発光層208の厚さが薄くなるため、電気抵抗が低下し、領域Aに流れる電流が増加する。点線で示す矢印は、補正を行わない場合の電流密度分布を模式化したものである。そのため、領域Aにおける輝度は領域Bにおける輝度と比べ高くなる。図10(a),(b)は輝度の分布を示すグラフであり、(a)は輝度補正をしない場合の輝度分布、(b)は輝度補正をした場合の輝度分布を示している。図10(a)に示されるように、領域Aでの輝度は高くなり、発光領域211内部での発光強度に分布ができることが示されている。
【0081】
一方、領域Bに正孔輸送層217を配置してある場合には、正孔輸送層217により正孔の注入が促進されるため、電流の流入が促進される。そのため、電流分布が均一化する。実線で示す矢印は、正孔輸送層217が配置された場合の電流密度分布を模式化したものである。図10(b)に示されるように、領域Bにおける輝度が上昇し、発光領域211内部での発光強度が均一化することが示されている。即ち、素子内輝度が均一な有機EL素子17Rを提供することが可能となる。なお、この実施形態においても、上記した(変形例)と同様な変形例を成立させることができる。ここで、高抵抗正孔注入層215に代えて正孔輸送層217と読み替えることで、上記した(変形例)と対応をとることができる。
【0082】
(有機EL素子−5:層厚分布に偏心がある場合)
次に、有機発光層208の層厚分布に偏りがある場合の補正について説明する。なお、説明の便宜上、図面上側を「上」と定義する。図11は、中央部と外れた領域に凸形状が発生した場合の有機EL素子17Rの断面図である。基本的なレイアウトは有機EL素子−1と同様の構成を有している。相違点は凸形状の位置が中心と外れていることである。そのため、補正用の高抵抗正孔注入層215も中心対称の位置と外れた位置に配置されている。この場合においても上記した方法と同様に輝度分布の補正を行うことができる。このように層厚分布に偏りが発生する場合としては、例えば図2に示す有機ELパネル1の周辺部を構成するサブ画素40に配置される有機EL素子17Rに発生する場合が多い。この現象に対しても、再現性が高い事象であるため、補正を行うことが可能である。また、これ以外の場合でも「有機EL素子−1」から「有機EL素子−4」と同様の補正を行うことが可能である。また、(変形例)と同様な変形例を成立させることが可能である。
【0083】
(有機EL素子の製造方法)
次に、有機EL素子の製造方法について説明する。図12(a),(b),(c)から図13(a),(b),(c)は本実施形態に示す有機EL素子の製造方法を説明するための工程断面図である。以下、この図面に沿って説明を行う。製造方法としては有機EL素子17(R,G,B)の構成は殆ど同じであることから、有機EL素子17Rを用いて製造方法を説明する。ここで、有機EL素子17Rの製造工程として、まずモニタ用の基板に対して以下の工程を行う。なお、説明の便宜上、図面上側を「上」と定義する。
【0084】
まず、工程1として、モニタ基板20Dを洗浄し、層間絶縁層202となる窒化珪素層をCVD法(化学気相堆積法)等を用いて400nm程度堆積する。
【0085】
次に、工程2として、ITOを50nm程度の厚さとなるようスパッタ法を用いて積層する。そして不要な部分をエッチング除去することで光透過性を有する第1電極204を形成する。
【0086】
次に、工程3として、酸化珪素層を50nm程度層形成し、発光領域211が形成される領域をエッチング除去することで第1隔壁205を形成する。
【0087】
次に、工程4として、感光性アクリル樹脂を2μm程度の厚さに塗布し、露光・現像することで第2隔壁206を形成する。この工程を終了した状態での断面図を図12(a)に示す。
【0088】
次に、工程5として、酸素プラズマ処理、四弗化炭素ガスでのプラズマ処理等を行い、第1電極204と第1隔壁205に親液性を与え、第2隔壁206に撥液性を与える。
【0089】
次に、工程6として、PEDOT/PSS分散液を液滴吐出法を用いて第2隔壁206内に吐出する。この場合において、第2隔壁206に撥液性を与えているため、第2隔壁206ではPEDOT/PSS分散液は弾かれ、第1隔壁205、第1電極204上に流入するため、液滴吐出位置の若干のずれは補正され、液滴は第1隔壁205、第1電極204上に再現性高く配置される。
【0090】
次に、工程7として、乾燥→アニール工程を行うことで、PEDOT/PSSを用いたキャリア注入層としての正孔注入層207が形成される。この工程を終了した状態での断面図を図12(b)に示す。
【0091】
次に、工程8として、有機発光層前駆体を液滴吐出法により、第2隔壁206内に吐出する。この場合でも工程6と同様に液滴吐出位置の若干のずれは補正される。
【0092】
次に、工程9として、乾燥→アニール工程を行うことで、有機発光層208が形成される。有機発光層208は正孔注入層207を介して電気的に第1電極204と接続され、発光領域211が形成される。ここで、乾燥工程は、大気圧から減圧させることで行われる減圧乾燥を5分以上、より好ましくは10分以上一時間以下で行う工程を用いる条件を用いることができ、この場合には、有機発光層208の中央部が凸の形状が発生する場合が多い。そして、大気圧から減圧させることで行われる減圧乾燥を有機発光層前駆体を液滴吐出法を用いて第2隔壁206内に吐出した後、大気圧から減圧させることで行われる減圧乾燥を5分未満、より確実には1分以下、10秒以上で行う条件で乾燥させることで有機発光層208の中央部が凹の形状を有する場合が多い。ここでは、中央部が凸の形状を有する有機発光層208を用いる場合に対して説明を続ける。この工程を終了した状態での断面図を図12(c)に示す。
【0093】
ここで、有機発光層前駆体を減圧乾燥させる工程において、その真空度は、乾燥に要する時間が上記した値に収まるよう設定されていれば良い。具体例としては例えば数Pa程度の値を用いることができるが、これは一例であり、この値に制約されるものではない。
【0094】
次に、工程10として、有機発光層208の層厚分布を測定する。測定は、例えば触針式膜厚測定器等を用いて測定することが可能である。
【0095】
次に、工程11として有機発光層208の層厚分布の影響を打ち消すべくキャリア調整層のレイアウトを設定する。キャリア調整層としては、高抵抗正孔注入層215(図3参照)や、正孔輸送層217(図5参照)を層厚分布を与えない状態、又は層厚分布に対応させて配置できるようマスクパターンを決定する。
【0096】
次に、工程12として、モニタ基板20Dに代えて、製品用の基板20Aを用いて工程1〜工程7までのプロセスを行う。ここで、モニタ基板20Dを用いて条件出しを行う工程に代えて、製品用の基板20Aの一枚、又は数枚の基板を用いて条件出しを行っても良い。この場合には、より実際の基板に近い状態で測定を行うことが可能となる。この工程を終了した状態での断面図を図13(a)に示す。
【0097】
次に、工程13として、工程11で得られたキャリア調整層のレイアウトに従い、正孔注入層207上にキャリア調整層としての高抵抗正孔注入層215(図3参照)や、正孔輸送層217(図5参照)を正孔注入層207上に形成する。形成方法としては、蒸着法、グラビア印刷法やレーザ転写法等を用いることができる。ここでは、高抵抗正孔注入層215を形成する場合について説明を続ける。
【0098】
次に、工程14として、有機発光層208を形成する。形成方法としては、工程8、工程9と同じ設定条件を用いて形成する。同じ条件を用いることで、有機発光層208の層厚分布をモニタ基板20D上に形成された層厚分布を再現することが可能となる。この工程を終了した状態での断面図を図13(b)に示す。
【0099】
次に、工程15として、カルシウムを5nm程度蒸着し、第2電極(陰極)209を形成する。
【0100】
そして、工程16として、第2電極209を覆うように200nm以上の層厚を有する、アルミニウムを蒸着することで光反射層210を形成することで有機EL素子17Rが形成される。この断面構造を図13(c)に示す。
【0101】
ここでは、基板20Aを通過させて光を取り出すボトムエミッション型の有機EL素子17Rの製造方法について説明したが、これは容易にトップエミッション型の製造工程に変更することが可能である。即ち、基板20Aと層間絶縁層202との間に例えば200nm以上の厚みを有するアルミニウム等の反射層を形成する工程を加えることで基板20A側の反射率を高くし、第2電極側に、光透過性を有する第2電極として酸化に強いMg/Agを用い、光反射層210の製造工程を除くことでトップエミッション型の構造が得られる工程を得ることができる。また、光反射層を形成する工程を省略することで、両面で視認可能な構造を得ることも可能である。
【0102】
(電子機器への搭載例)
以下、図14を参照して、上述した有機EL素子17(R,G,B)(図2参照)を含む有機ELパネル1(図2参照)を用いる電子機器について説明する。図14(a)には、有機ELパネル1を備えた携帯電話機の構成を示す。携帯電話機3000は、複数の操作ボタン3001及びスクロールボタン3002と有機ELパネル1を備える。スクロールボタン3002を操作することによって、有機ELパネル1に表示される画面がスクロールされる。図14(b)は有機ELパネル1を備えた、情報携帯端末(PDA)の構成を示す概略図である。情報携帯端末4000は、複数の操作ボタン4001及び電源スイッチ4002、ならびに有機EL素子17(R,G,B)を備えた有機ELパネル1を備える。操作ボタン4001を操作すると、住所録やスケジュール帳といった各種の情報が有機ELパネル1に表示される。
【0103】
なお、有機EL素子17(R,G,B)を含む有機ELパネル1が搭載される電子機器としては、図14に示すものの他、車載用のスピードメータや、回転計、その他モニタ等が挙げられる。そして、これらの各種電子機器の表示部として、前述した有機EL素子17(R,G,B)が適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】本実施形態の有機ELパネルの配線構造を示す模式図。
【図2】有機ELパネルの構成を模式的に示す平面図。
【図3】(a)は、中央部が凸となる層厚分布を有する、有機ELパネルを構成する有機EL素子の平面図、(b)は、(a)のA−A’線断面図。
【図4】(a)は本実施形態使用前での輝度の分布を示すグラフ、(b)は本実施形態使用後での輝度の分布を示すグラフ。
【図5】中央部が凸となる層厚分布を有する、有機ELパネルを構成する有機EL素子の断面図。
【図6】(a)は本実施形態使用前での輝度の分布を示すグラフ、(b)は本実施形態使用後での輝度の分布を示すグラフ。
【図7】中央部が凹となる層厚分布を有する、有機ELパネルを構成する有機EL素子の断面図。
【図8】輝度の分布を示すグラフ。
【図9】中央部が凹となる層厚分布を有する、有機ELパネルを構成する有機EL素子の断面図。
【図10】(a)は本実施形態使用前での輝度の分布を示すグラフ、(b)は本実施形態使用後での輝度の分布を示すグラフ。
【図11】中央部と外れた領域に凸形状が発生した場合の有機EL素子の断面図。
【図12】有機EL素子の製造方法を説明するための工程断面図。
【図13】有機EL素子の製造方法を説明するための工程断面図。
【図14】(a)は、有機ELパネルを備えた携帯電話機、(b)は表示装置を備えた情報携帯端末(PDA)の構成を示す概略図。
【符号の説明】
【0105】
1…有機ELパネル、3…画素部、4…実表示領域、5…ダミー領域、17B…有機EL素子、17G…有機EL素子、17R…有機EL素子、20…基板本体、20A…基板、20D…モニタ基板、23…画素電極、40…サブ画素、41…表示単位画素、50…対向電極、80…走査線駆動回路、90…検査回路、100…データ線駆動回路、101…走査線、102…信号線、103…電源線、113…保持容量、122…TFT、123…TFT、202…層間絶縁層、204…第1電極、205…第1隔壁、206…第2隔壁、207…正孔注入層、208…有機発光層、209…第2電極、210…光反射層、211…発光領域、215…高抵抗正孔注入層、217…正孔輸送層、3000…携帯電話機、3001…操作ボタン、3002…スクロールボタン、4000…情報携帯端末、4001…操作ボタン、4002…電源スイッチ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に配置される、第1電極と、
前記第1電極上に位置し、平面視にて前記第1電極を覆うキャリア注入層と、
前記キャリア注入層上に配置される有機発光層と、
平面視にて発光領域内に位置し、前記キャリア注入層と前記有機発光層との間における少なくとも一部の領域に配置されるキャリア調整層と、
前記有機発光層上に位置し、平面視にて前記有機発光層を覆う第2電極と、
を含むことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項2】
請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子であって、前記キャリア調整層は前記有機発光層と対応する層厚分布を有し、前記発光領域内における少なくとも一部に形成されていることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子であって、平面視にて前記発光領域内に位置する前記有機発光層から見て、前記第1電極側、又は前記第2電極側の少なくとも片側が光透過性を有していることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子であって、前記キャリア調整層として、前記キャリア注入層よりも前記有機発光層へのキャリア注入効率が低い低効率キャリア注入層を用いてなり、且つ前記低効率キャリア注入層を、前記有機発光層の層厚分布と逆の相関を持つ厚みを与え、前記低効率キャリア注入層により、前記発光領域の少なくとも一部を覆うことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子であって、前記有機発光層の前記発光領域内での層厚が、前記有機発光層の前記発光領域内での層厚の平均値と比べ薄い領域の少なくとも一部に、前記キャリア注入層よりも前記有機発光層へのキャリア注入効率が低い低効率キャリア注入層を、前記キャリア調整層として配置していることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項6】
請求項1から3のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子であって、前記キャリア調整層として、前記キャリア注入層よりも前記有機発光層へのキャリア注入効率が高いキャリア輸送層を用いてなり、且つ前記キャリア輸送層に前記有機発光層の層厚分布と正の相関を持つ厚みを与え、前記キャリア輸送層により、前記発光領域の少なくとも一部を覆うことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項7】
請求項1から3のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子であって、前記有機発光層の層厚が、前記有機発光層における層厚の平均値と比べて厚い領域の少なくとも一部に、前記キャリア注入層よりも前記有機発光層へのキャリア注入効率が高いキャリア輸送層を前記キャリア調整層として配置することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項8】
(1)モニタ基板上にモニタ層間絶縁層を形成する工程と、
(2)前記モニタ層間絶縁層上にモニタ第1電極を形成する工程と、
(3)モニタ発光領域を含む領域を各素子毎に分離するモニタ隔壁を形成する工程と、
(4)平面視にて前記モニタ隔壁の内側に、モニタキャリア注入層を形成する工程と、
(5)モニタ有機発光層を形成する工程と、
(6)前記モニタ有機発光層の、モニタ発光領域内での前記モニタ有機発光層の層厚分布を測定する工程と、
(7)基板上に層間絶縁層を形成する工程と、
(8)前記層間絶縁層上に第1電極を形成する工程と、
(9)発光領域を含む領域を各素子毎に分離する隔壁を形成する工程と、
(10)平面視にて前記隔壁の内側に、キャリア注入層を形成する工程と、
(11)前記モニタ有機発光層の層厚分布に対応させて前記キャリア注入層上に、平面視にて前記発光領域を含む領域にキャリア調整層を形成する工程と、
(12)平面視にて前記隔壁の内側に有機発光層を形成する工程と、
(13)前記有機発光層上に、平面視にて少なくとも前記発光領域と重なる領域に第2電極を形成する工程と、
を含むことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、前記(11)の工程は、前記発光領域内における前記モニタ有機発光層の層厚の平均値と比べ、中央部で層厚が厚い製造条件を用いる場合に、前記キャリア調整層として、前記キャリア注入層よりも、前記有機発光層へのキャリア注入効率が低い低効率キャリア注入層を用い、且つ前記低効率キャリア注入層を前記キャリア注入層の前記発光領域内での外周部の少なくとも一部に形成する工程であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項10】
請求項8に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、前記(11)の工程は、前記発光領域内における前記モニタ有機発光層の層厚の平均値と比べ、中央部で層厚が厚い製造条件を用いる場合に、前記キャリア調整層として、前記キャリア注入層よりも、前記有機発光層へのキャリア注入効率が高いキャリア輸送層を用い、且つ前記キャリア輸送層を前記キャリア注入層の前記発光領域内での中央部の少なくとも一部に形成する工程であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項11】
請求項8に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、前記(11)の工程は、前記発光領域内における前記モニタ有機発光層の層厚の平均値と比べ、中央部で層厚が薄い製造条件を用いる場合に、前記キャリア調整層として、前記キャリア注入層よりも、前記有機発光層へのキャリア注入効率が低い低効率キャリア注入層を用い、且つ前記低効率キャリア注入層を前記キャリア注入層の中央部の少なくとも一部に形成する工程であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項12】
請求項8に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、前記(11)の工程は、前記発光領域内における前記モニタ有機発光層の層厚の平均値と比べ、中央部で層厚が薄い製造条件を用いる場合に、前記キャリア調整層として、前記キャリア注入層よりも、前記有機発光層へのキャリア注入効率が高いキャリア輸送層を用い、且つ前記キャリア輸送層を前記キャリア注入層の外周部の少なくとも一部に形成する工程であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項13】
請求項1から7のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を含むことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンスパネル。
【請求項14】
請求項13に記載の有機エレクトロルミネッセンスパネルを含むことを特徴とする電子機器。
【請求項1】
基板と、
前記基板上に配置される、第1電極と、
前記第1電極上に位置し、平面視にて前記第1電極を覆うキャリア注入層と、
前記キャリア注入層上に配置される有機発光層と、
平面視にて発光領域内に位置し、前記キャリア注入層と前記有機発光層との間における少なくとも一部の領域に配置されるキャリア調整層と、
前記有機発光層上に位置し、平面視にて前記有機発光層を覆う第2電極と、
を含むことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項2】
請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子であって、前記キャリア調整層は前記有機発光層と対応する層厚分布を有し、前記発光領域内における少なくとも一部に形成されていることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子であって、平面視にて前記発光領域内に位置する前記有機発光層から見て、前記第1電極側、又は前記第2電極側の少なくとも片側が光透過性を有していることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子であって、前記キャリア調整層として、前記キャリア注入層よりも前記有機発光層へのキャリア注入効率が低い低効率キャリア注入層を用いてなり、且つ前記低効率キャリア注入層を、前記有機発光層の層厚分布と逆の相関を持つ厚みを与え、前記低効率キャリア注入層により、前記発光領域の少なくとも一部を覆うことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子であって、前記有機発光層の前記発光領域内での層厚が、前記有機発光層の前記発光領域内での層厚の平均値と比べ薄い領域の少なくとも一部に、前記キャリア注入層よりも前記有機発光層へのキャリア注入効率が低い低効率キャリア注入層を、前記キャリア調整層として配置していることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項6】
請求項1から3のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子であって、前記キャリア調整層として、前記キャリア注入層よりも前記有機発光層へのキャリア注入効率が高いキャリア輸送層を用いてなり、且つ前記キャリア輸送層に前記有機発光層の層厚分布と正の相関を持つ厚みを与え、前記キャリア輸送層により、前記発光領域の少なくとも一部を覆うことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項7】
請求項1から3のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子であって、前記有機発光層の層厚が、前記有機発光層における層厚の平均値と比べて厚い領域の少なくとも一部に、前記キャリア注入層よりも前記有機発光層へのキャリア注入効率が高いキャリア輸送層を前記キャリア調整層として配置することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項8】
(1)モニタ基板上にモニタ層間絶縁層を形成する工程と、
(2)前記モニタ層間絶縁層上にモニタ第1電極を形成する工程と、
(3)モニタ発光領域を含む領域を各素子毎に分離するモニタ隔壁を形成する工程と、
(4)平面視にて前記モニタ隔壁の内側に、モニタキャリア注入層を形成する工程と、
(5)モニタ有機発光層を形成する工程と、
(6)前記モニタ有機発光層の、モニタ発光領域内での前記モニタ有機発光層の層厚分布を測定する工程と、
(7)基板上に層間絶縁層を形成する工程と、
(8)前記層間絶縁層上に第1電極を形成する工程と、
(9)発光領域を含む領域を各素子毎に分離する隔壁を形成する工程と、
(10)平面視にて前記隔壁の内側に、キャリア注入層を形成する工程と、
(11)前記モニタ有機発光層の層厚分布に対応させて前記キャリア注入層上に、平面視にて前記発光領域を含む領域にキャリア調整層を形成する工程と、
(12)平面視にて前記隔壁の内側に有機発光層を形成する工程と、
(13)前記有機発光層上に、平面視にて少なくとも前記発光領域と重なる領域に第2電極を形成する工程と、
を含むことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、前記(11)の工程は、前記発光領域内における前記モニタ有機発光層の層厚の平均値と比べ、中央部で層厚が厚い製造条件を用いる場合に、前記キャリア調整層として、前記キャリア注入層よりも、前記有機発光層へのキャリア注入効率が低い低効率キャリア注入層を用い、且つ前記低効率キャリア注入層を前記キャリア注入層の前記発光領域内での外周部の少なくとも一部に形成する工程であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項10】
請求項8に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、前記(11)の工程は、前記発光領域内における前記モニタ有機発光層の層厚の平均値と比べ、中央部で層厚が厚い製造条件を用いる場合に、前記キャリア調整層として、前記キャリア注入層よりも、前記有機発光層へのキャリア注入効率が高いキャリア輸送層を用い、且つ前記キャリア輸送層を前記キャリア注入層の前記発光領域内での中央部の少なくとも一部に形成する工程であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項11】
請求項8に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、前記(11)の工程は、前記発光領域内における前記モニタ有機発光層の層厚の平均値と比べ、中央部で層厚が薄い製造条件を用いる場合に、前記キャリア調整層として、前記キャリア注入層よりも、前記有機発光層へのキャリア注入効率が低い低効率キャリア注入層を用い、且つ前記低効率キャリア注入層を前記キャリア注入層の中央部の少なくとも一部に形成する工程であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項12】
請求項8に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、前記(11)の工程は、前記発光領域内における前記モニタ有機発光層の層厚の平均値と比べ、中央部で層厚が薄い製造条件を用いる場合に、前記キャリア調整層として、前記キャリア注入層よりも、前記有機発光層へのキャリア注入効率が高いキャリア輸送層を用い、且つ前記キャリア輸送層を前記キャリア注入層の外周部の少なくとも一部に形成する工程であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項13】
請求項1から7のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を含むことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンスパネル。
【請求項14】
請求項13に記載の有機エレクトロルミネッセンスパネルを含むことを特徴とする電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−253134(P2009−253134A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−101139(P2008−101139)
【出願日】平成20年4月9日(2008.4.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月9日(2008.4.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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