説明

有機エレクトロルミネッセンス素子、有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法、表示装置及び照明装置

【課題】良好な発光輝度、寿命を示し、駆動時でのダークスポットが少なく、更に高温、高湿保存下での経時安定性が高い有機EL素子、その製造方法、及びそれを用いた表示装置、照明装置を提供すること。
【解決手段】基板上に電極と少なくとも2層の有機層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子において、該有機層の少なくとも1層は有機溶媒を10-2〜103ppm含有した状態で転写または貼り合せによって形成されることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子、その製造方法、及び該有機エレクトロルミネッセンス素子を用いた表示装置、照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発光型の電子ディスプレイデバイスとして、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)がある。ELDの構成要素としては、無機エレクトロルミネッセンス素子や有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子ともいう)が挙げられる。無機エレクトロルミネッセンス素子は平面型光源として使用されてきたが、発光素子を駆動させるためには交流の高電圧が必要である。
【0003】
一方、有機EL素子は発光する化合物を含有する発光層を陰極と陽極で挟んだ構成を有し、発光層に電子及び正孔を注入して、再結合させることにより励起子(エキシトン)を生成させ、このエキシトンが失活する際の光の放出(蛍光・リン光)を利用して発光する素子であり、数V〜数十V程度の電圧で発光が可能であり、更に自己発光型であるために視野角に富み、視認性が高く、薄膜型の完全固体素子であるために省スペース、携帯性等の観点から注目されている。
【0004】
今後の実用化に向けた有機EL素子の開発としては、更に低消費電力で、効率よく高輝度に発光する有機EL素子が望まれているわけであり、例えば、スチルベン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体またはトリススチリルアリーレン誘導体に、微量の蛍光体をドープし、発光輝度の向上、素子の長寿命化を達成する技術(例えば、特許文献1参照。)、8−ヒドロキシキノリンアルミニウム錯体をホスト化合物として、これに微量の蛍光体をドープした有機発光層を有する素子(例えば、特許文献2参照。)、8−ヒドロキシキノリンアルミニウム錯体をホスト化合物として、これにキナクリドン系色素をドープした有機発光層を有する素子(例えば、特許文献3参照。)等が知られている。
【0005】
上記特許文献に開示されている技術では、励起一重項からの発光を用いる場合、一重項励起子と三重項励起子の生成比が1:3であるため発光性励起種の生成確率が25%であることと、光の取り出し効率が約20%であるため、外部取り出し量子効率(ηext)の限界は5%とされている。
【0006】
ところが、プリンストン大より、励起三重項からのリン光発光を用いる有機EL素子の報告(例えば、非特許文献1参照。)がされて以来、室温でリン光を示す材料の研究が活発になってきている(例えば、非特許文献2参照。)。励起三重項を使用すると内部量子効率の上限が100%となるため、励起一重項の場合に比べて原理的に発光効率が4倍となり、冷陰極管とほぼ同等の性能が得られ照明用にも応用可能であり注目されている。例えば、多くの化合物がイリジウム錯体系等重金属錯体を中心に合成検討がなされている(例えば、非特許文献3参照。)。
【0007】
また、ドーパントとしてトリス(2−フェニルピリジン)イリジウムを用いた検討がなされている(例えば、非特許文献2参照。)。その他、ドーパントとしてL2Ir(acac)、例えば、(ppy)2Ir(acac)(例えば、非特許文献4参照。)を、またドーパントとして、トリス(2−(p−トリル)ピリジン)イリジウム(Ir(ptpy)3)、トリス(ベンゾ[h]キノリン)イリジウム(Ir(bzq)3)、Ir(bzq)2ClP(Bu)3を用いた検討(例えば、非特許文献5参照。)、またフェニルピラゾールを配位子に用いたイリジウム錯体等を用いた検討(例えば、特許文献4参照。)が行われている。
【0008】
一方、有機発光素子において高輝度発光を実現しているものは、有機物質を真空蒸着によって積層している素子であるが、製造工程の簡略化、加工性、大面積化等の観点から湿式法、転写または貼り合せによる素子作製が検討されている。例えば、転写または貼り合わせを利用する方法において、ホスト材料PVKと燐光性化合物Ir(ppy)3からなる発光層をITO上に、予め形成された有機層の上に転写し、積層構成の素子を作製している。(例えば、特許文献5参照。)
【特許文献1】特許第3093796号公報
【特許文献2】特開昭63−264692号公報
【特許文献3】特開平3−255190号公報
【特許文献4】国際公開第04/085450号パンフレット
【特許文献5】特開2004−22544号公報
【非特許文献1】M.A.Baldo et al.,Nature、395巻、151〜154頁(1998年)
【非特許文献2】M.A.Baldo et al.,Nature、403巻、17号、750〜753頁(2000年)
【非特許文献3】S.Lamansky et al.,J.Am.Chem.Soc.,123巻、4304頁(2001年)
【非特許文献4】M.E.Tompson et al.,The 10th International Workshop on Inorganic and Organic Electroluminescence(EL’00、浜松)
【非特許文献5】Moon−Jae Youn.0g,Tetsuo Tsutsui et al.,The 10th International Workshop on Inorganic and Organic Electroluminescence(EL’00、浜松)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、この転写または貼り合わせを利用する方法において、正孔輸送層もしくは電子輸送層を有する基板上に、支持体上に発光層を有する転写材料を用いて転写材料の発光層を転写する工程を行う場合、密着性が弱いと剥れや接触不良を生じやすく、素子の発光効率や寿命などを低下させる原因となり問題であった。更に、駆動時でのダークスポットの発生や高温、高湿下での経時安定性についての改良が望まれていた。
【0010】
本発明は係る課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、良好な発光輝度、寿命を示し、駆動時でのダークスポットが少なく、更に高温、高湿保存下での経時安定性が高い有機EL素子、その製造方法、及びそれを用いた表示装置、照明装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の上記目的は、下記構成により達成される。
【0012】
1.基板上に電極と少なくとも2層の有機層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子において、該有機層の少なくとも1層は有機溶媒を10-2〜103ppm含有した状態で転写または貼り合せによって形成されることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0013】
2.前記有機溶媒を0.1〜100ppm含有することを特徴とする前記1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0014】
3.前記有機層の少なくとも1層は燐光性化合物を含有する発光層であることを特徴とする前記1または2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0015】
4.前記燐光性化合物のHOMOが−5.15〜−3.50eV、LUMOが−1.25〜+1.00eVであることを特徴とする前記3に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0016】
5.前記燐光性化合物のHOMOが−4.80〜−3.50eV、LUMOが−0.80〜+1.00eVであることを特徴とする前記4に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0017】
6.前記燐光性化合物が一般式(1)で表されることを特徴とする前記3〜5のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0018】
【化1】

【0019】
(式中、R1は置換基を表す。Zは5〜7員環を形成するのに必要な非金属原子群を表す。n1は0〜5の整数を表す。B1〜B5は炭素原子、窒素原子、酸素原子もしくは硫黄原子を表し、少なくとも一つは窒素原子を表す。M1は元素周期表における8〜10族の金属を表す。X1及びX2は炭素原子、窒素原子もしくは酸素原子を表し、L1はX1及びX2と共に2座の配位子を形成する原子群を表す。m1は1、2または3の整数を表し、m2は0、1または2の整数を表すが、m1+m2は2または3である。)
7.前記一般式(1)で表される燐光性化合物において、m2が0であることを特徴とする前記6に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0020】
8.前記一般式(1)で表される燐光性化合物において、B1〜B5で形成される含窒素複素環がイミダゾール環であることを特徴とする前記6または7に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0021】
9.発光層が転写または貼り合せにより形成されることを特徴とする前記1〜8のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0022】
10.前記基板がガスバリア層を有することを特徴とする前記1〜9のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0023】
11.青色に発光することを特徴とする前記1〜10のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0024】
12.白色に発光することを特徴とする前記1〜10のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0025】
13.前記1〜12のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を有することを特徴とする表示装置。
【0026】
14.前記1〜12のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を有することを特徴とする照明装置。
【0027】
15.前記14に記載の照明装置と表示手段としての液晶素子を有することを特徴とする表示装置。
【0028】
16.基板上に電極と少なくとも2層の有機層を有し、該有機層の少なくとも1層は該基板の被成膜面に転写または貼り合せによって形成される有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、該転写または貼り合せが有機溶媒を10-2〜103ppm含有した状態で行われることを有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【発明の効果】
【0029】
本発明によって、良好な発光輝度、寿命を示し、駆動時でのダークスポットが少なく、更に高温、高湿保存下での経時安定性が高い有機EL素子、その製造方法、及びそれを用いた表示装置、照明装置を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明者は基板上に電極と少なくとも2層の有機層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子において、該有機層の少なくとも1層は転写または貼り合せにより形成され、更に転写または貼り合せに用いる該有機層が有機溶媒を10-2〜103ppm含有することにより、良好な発光輝度、寿命を示し、高温、高湿保存下でのダークスポットが少なく、さらに経時安定性が高い有機エレクトロルミネッセンス素子とすることができたことを見いだした。
【0031】
以下、本発明の各構成要件について詳細に説明する。
【0032】
まず、本発明で用いられる有機溶媒含有量の測定方法について説明する。本発明に係る有機層中に含有されている揮発性有機溶媒は、パージ&トラップサンプラーを取り付けた、ガスクロマトグラフィー(GC)質量分析法(MS)で測定することができる。(PT−GC/MS)具体的には10cm×10cm四方の有機EL素子を作製し、ガス回収用のチャンバーと有機ガス吸着管(TENAX GR)に残留溶媒を吸着させ、PT−GC/MS測定を行った。溶媒濃度は濃度既知の基準試料を用いて作成した検量線より求めた。
【0033】
本発明に係る有機層は有機溶媒を10-2〜103ppm含有する。好ましくは有機溶媒を0.1〜100ppm含有する。
【0034】
本発明に係る有機溶媒として特に制限はないが、例えば、アルコール類(メタノール、エタノール等)、カルボン酸エステル類(酢酸エチル、酢酸プロピル等)、ニトリル類(アセトニトリル等)、エーテル類(イソプロピルエーテル、THF等)、芳香族炭化水素類(シクロヘキシルベンゼン、トルエン、キシレン等)、ハロゲン化アルキル類(塩化メチレン等)、飽和炭化水素類等(ヘプタン等)が挙げられる。この中で好ましいものはカルボン酸エステル類、ニトリル類、エーテル類、芳香族炭化水素類、ハロゲン化アルキル類、飽和炭化水素類であり、更に好ましくはカルボン酸エステル類、エーテル類、芳香族炭化水素類である。
【0035】
本発明に用いられる有機溶媒の沸点は200℃以下が好ましく、更に好ましくは150℃以下である。
【0036】
本発明に係るHOMO、LUMOについて説明する。
【0037】
本発明において、HOMO、LUMOの値は、米国Gaussian社製の分子軌道計算用ソフトウェアであるGaussian98(Gaussian98、Revision A.11.4,M.J.Frisch,et al,Gaussian,Inc.,Pittsburgh PA,2002.)を用いて計算した時の値であり、キーワードとしてB3LYP/LanL2DZを用いて構造最適化を行うことにより算出した値(eV単位換算値)と定義する。この計算値が有効な背景には、この手法で求めた計算値と実験値の相関が高いためである。
【0038】
本発明において、燐光性化合物はHOMOが−5.15〜−3.50eV、且つLUMOが−1.25〜+1.00eVであることが好ましく、HOMOが−4.80〜−3.50eV、且つLUMOが−0.80〜+1.00eVであることがより好ましい。
【0039】
一般式(1)で表される燐光性化合物において、R1で表される置換基としては、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基等)、アルキニル基(例えば、エチニル基、プロパルギル基等)、芳香族炭化水素環基(芳香族炭素環基、アリール基等ともいい、例えば、フェニル基、p−クロロフェニル基、メシチル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントリル基、アズレニル基、アセナフテニル基、フルオレニル基、フェナントリル基、インデニル基、ピレニル基、ビフェニリル基等)、芳香族複素環基(例えば、ピリジル基、ピリミジニル基、フリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ピラジニル基、トリアゾリル基(例えば、1,2,4−トリアゾール−1−イル基、1,2,3−トリアゾール−1−イル基等)、オキサゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、チアゾリル基、イソオキサゾリル基、イソチアゾリル基、フラザニル基、チエニル基、キノリル基、ベンゾフリル基、ジベンゾフリル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル基、カルボリニル基、ジアザカルバゾリル基(前記カルボリニル基のカルボリン環を構成する炭素原子の一つが窒素原子で置き換わったものを示す)、キノキサリニル基、ピリダジニル基、トリアジニル基、キナゾリニル基、フタラジニル基等)、複素環基(例えば、ピロリジル基、イミダゾリジル基、モルホリル基、オキサゾリジル基等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基等)、シクロアルコキシ基(例えば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、ドデシルチオ基等)、シクロアルキルチオ基(例えば、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等)、スルファモイル基(例えば、アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、オクチルアミノスルホニル基、ドデシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、ナフチルアミノスルホニル基、2−ピリジルアミノスルホニル基等)、アシル基(例えば、アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、オクチルカルボニル基、2−エチルヘキシルカルボニル基、ドデシルカルボニル基、フェニルカルボニル基、ナフチルカルボニル基、ピリジルカルボニル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、オクチルカルボニルオキシ基、ドデシルカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基等)、アミド基(例えば、メチルカルボニルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、ジメチルカルボニルアミノ基、プロピルカルボニルアミノ基、ペンチルカルボニルアミノ基、シクロヘキシルカルボニルアミノ基、2−エチルヘキシルカルボニルアミノ基、オクチルカルボニルアミノ基、ドデシルカルボニルアミノ基、フェニルカルボニルアミノ基、ナフチルカルボニルアミノ基等)、カルバモイル基(例えば、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、ペンチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、オクチルアミノカルボニル基、2−エチルヘキシルアミノカルボニル基、ドデシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、ナフチルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基等)、ウレイド基(例えば、メチルウレイド基、エチルウレイド基、ペンチルウレイド基、シクロヘキシルウレイド基、オクチルウレイド基、ドデシルウレイド基、フェニルウレイド基、ナフチルウレイド基、2−ピリジルアミノウレイド基等)、スルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、ブチルスルフィニル基、シクロヘキシルスルフィニル基、2−エチルヘキシルスルフィニル基、ドデシルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、ナフチルスルフィニル基、2−ピリジルスルフィニル基等)、アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ブチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基、ドデシルスルホニル基等)、アリールスルホニル基またはヘテロアリールスルホニル基(例えば、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基、2−ピリジルスルホニル基等)、アミノ基(例えば、アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ドデシルアミノ基、アニリノ基、ナフチルアミノ基、2−ピリジルアミノ基等)、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、シリル基(例えば、トリメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリフェニルシリル基、フェニルジエチルシリル基等)等が挙げられる。これらの置換基のうち、好ましいものはアルキル基もしくはアリール基である。
【0040】
Zは5〜7員環を形成するのに必要な非金属原子群を表す。Zにより形成される5〜7員環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、ピリミジン環、ピロール環、チオフェン環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサゾール環及びチアゾール環等が挙げられる。これらのうちで好ましいものは、ベンゼン環である。
【0041】
1〜B5は炭素原子、窒素原子、酸素原子もしくは硫黄原子を表し、少なくとも一つは窒素原子を表す。これら5つの原子により形成される含窒素複素環としては単環が好ましい。例えば、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、オキサジアゾール環及びチアジアゾー環ル等が挙げられる。これらのうちで好ましいものは、ピラゾール環、イミダゾール環であり、更に好ましくはイミダゾール環である。これらの環は上記の置換基によって更に置換されていてもよい。置換基として好ましいものはアルキル基及びアリール基であり、更に好ましくは置換アルキル基及び無置換アリール基である。
【0042】
1はX1、X2と共に2座の配位子を形成する原子群を表す。X1−L1−X2で表される2座の配位子の具体例としては、例えば、置換または無置換のフェニルピリジン、フェニルピラゾール、フェニルイミダゾール、フェニルトリアゾール、フェニルテトラゾール、ピラザボール、ピコリン酸及びアセチルアセトン等が挙げられる。これらの基は上記の置換基によって更に置換されていてもよい。
【0043】
m1は1、2または3の整数を表し、m2は0、1または2の整数を表すが、m1+m2は2または3である。中でも、m2は0である場合が好ましい。
【0044】
1で表される金属としては、元素周期表の8〜10族の遷移金属元素(単に遷移金属ともいう)が用いられるが、中でもイリジウム、白金が好ましく、更に好ましくはイリジウムである。
【0045】
なお、一般式(1)で表される燐光性化合物は、重合性基または反応性基を有していてもいなくてもよい。
【0046】
以下、本発明に係る一般式(1)で表される燐光性化合物の具体的な例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0047】
【化2】

【0048】
【化3】

【0049】
【化4】

【0050】
【化5】

【0051】
【化6】

【0052】
【化7】

【0053】
【化8】

【0054】
【化9】

【0055】
これらの金属錯体は、例えば、Organic Letter誌、vol3、No.16、2579〜2581頁(2001)、Inorganic Chemistry,第30巻、第8号、1685〜1687頁(1991年)、J.Am.Chem.Soc.,123巻、4304頁(2001年)、Inorganic Chemistry,第40巻、第7号、1704〜1711頁(2001年)、Inorganic Chemistry,第41巻、第12号、3055〜3066頁(2002年)、New Journal of Chemistry,第26巻、1171頁(2002年)、European Journal of Organic Chemistry,第4巻、695〜709頁(2004年)、更にこれらの文献中に記載の参考文献等の方法を適用することにより合成できる。
【0056】
次に、本発明で用いられるホスト化合物について説明する。
【0057】
本発明で用いられるホスト化合物としては、例えば、カルバゾール誘導体、アザカルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、フェナントロリン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、有機金属化合物、アリールメタン誘導体等が挙げられる。
【0058】
これらのうちで、更に好ましいものとしては以下の構造で示した化合物である。
【0059】
【化10】

【0060】
式中、R1〜R4は置換基を表す。n1及びn2は0〜3の整数を表す。A1及びA2は以下の一般式(a)で表される化合物を表す。
【0061】
【化11】

【0062】
式中、Z1及びZ2は置換基を有してもよい芳香族複素環、もしくは芳香族炭化水素環を表し、Z3は2価の連結基もしくは単なる結合手を表す。L1は2価の連結基もしくは単なる結合手を表す。
【0063】
【化12】

【0064】
式中、R11は置換基を表す。n11は0〜4の整数を表す。A11及びA12は上記一般式(a)で表される化合物を表す。
【0065】
【化13】

【0066】
式中、R21及びR22は置換基を表す。n21及びn22は0〜3の整数を表す。A21及びA22は上記一般式(a)で表される化合物を表す。Lは2価の連結基を表す。
【0067】
【化14】

【0068】
式中、R31及びR32は置換基を表す。n31及びn32は0〜3の整数を表す。Yは酸素原子、イオウ原子、イミノ基、スルホキシド基もしくはスルホニル基を表す。A31及びA32は上記一般式(A)で表される化合物を表す。
【0069】
前記一般式(2)、(3)、(4)及び(5)において、更に好ましくは一般式(2)、(3)、(5)である。
【0070】
前記一般式(2)、(3)、(4)及び(5)において、R1〜R4、R11、R21及びR22、R31及びR32で表される置換基としては、例えば、アルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えば、メチル、エチル、iso−プロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えば、ビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニルなどが挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えば、プロパルギル、3−ペンチニルなどが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えば、フェニル、p−メチルフェニル、ナフチルなどが挙げられる。)、アミノ基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜10、特に好ましくは炭素数0〜6であり、例えば、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えば、メトキシ、エトキシ、ブトキシなどが挙げられる。)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えば、フェニルオキシ、2−ナフチルオキシなどが挙げられる。)、アシル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えば、アセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイルなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニルなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜10であり、例えば、フェニルオキシカルボニルなどが挙げられる。)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えば、アセトキシ、ベンゾイルオキシなどが挙げられる。)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えば、アセチルアミノ、ベンゾイルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えば、メトキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えば、フェニルオキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えば、メタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノなどが挙げられる。)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜16、特に好ましくは炭素数0〜12であり、例えば、スルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイルなどが挙げられる。)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えば、カルバモイル、メチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、フェニルカルバモイルなどが挙げられる。)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えば、メチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えば、フェニルチオなどが挙げられる。)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えば、メシル、トシルなどが挙げられる。)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えば、メタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニルなどが挙げられる。)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えば、ウレイド、メチルウレイド、フェニルウレイドなどが挙げられる。)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えば、ジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなどが挙げられる。)、ヒドロキシル基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(ヘテロ原子として、例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、セレン原子等を含む、好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20の、例えば、イミダゾリル、ピリジル、フリル、ピペリジル、モルホリノなどが挙げられる。)などが挙げられる。これらの置換基は更に置換されてもよい。また、可能な場合には連結して環を形成してもよい。これらのうち好ましいものはアルキル基及びアリール基である。
【0071】
一般式(a)及び一般式(4)において、L及びL1で表される2価の連結基としては、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、アリーレンなどの炭化水素基の他、ヘテロ原子を含むものであってもよく、またチオフェン−2,5−ジイル基やピラジン−2,3−ジイル基のような芳香族複素環を有する化合物(ヘテロ芳香族化合物ともいう)に由来する2価の連結基であってもよいし、酸素や硫黄などのカルコゲン原子であってもよい。また、アルキルイミノ基、ジアルキルシランジイル基やジアリールゲルマンジイル基のような、ヘテロ原子を会して連結する基でもよい。
【0072】
本発明で用いられる有機化合物としては、低分子化合物、高分子化合物いずれも使用することが可能である。
【0073】
高分子化合物とは重合性基を少なくとも一つ有する化合物(重合性化合物)が重合したものであり、重合性基としては、例えば、ビニル基、エポキシ基、オキセタン基、イソシアネート基、チオイソシアネート基等が挙げられる。これらのうちで好ましいものはビニル基である。本発明に係る一般式(2)〜一般式(5)で表される有機化合物は、これらの重合性基を分子内のいずれかの位置に有してもよい。
【0074】
重合性化合物の重合反応について説明する。重合が形成される時期として、予め重合した高分子を用いてもよいし、また素子作製前の溶液中でも素子作製時でも重合してよい。また素子作製後に結合を形成してもよい。重合反応を起こす場合、外部からのエネルギー(熱・光・超音波など)供給を行ってもよいし、重合開始剤、酸触媒もしくは塩基触媒を添加し反応を起こしてもよい。あるいは本発明に係る化合物を発光素子に含有したときに重合反応を起こす場合、発光素子の駆動時に供給される電流や発生する光や熱によって反応が起こってもよい。また、2つ以上の重合性化合物を重合させ、共重合体を形成してもよい。
【0075】
重合した高分子化合物は5000〜1000000の重量平均分子量が好ましく、更に好ましくは5000〜200000である。
【0076】
ラジカル重合開始剤としては、例えば、2,2′−アゾビスブチロニトリル、2,2′−アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、1,1′−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2′−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、4,4′−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2′−アゾビスイソ酪酸ジメチル、2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオンアミドキシム)、2,2′−アゾビス(2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン)、2,2′−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)などのアゾ系開始剤、過酸化ベンゾイル、過酸化ジ−t−ブチル、t−ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシドなどの過酸化物系開始剤、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、ベンジル−β−メトキシエチルアセタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−t−ブチルジクロロアセトフェノン、4−t−ブチルトリクロロアセトフェノン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オンなどの芳香族カルボニル系開始剤などが挙げられる。また、テトラエチルチイラムジスルフィドなどのジスルフィド系開始剤、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルなどのニトロキシル開始剤、4,4′−ジ−t−ブチル−2,2′−ビピリジン銅錯体−トリクロロ酢酸メチル複合体などのリビングラジカル重合開始剤を用いることもできる。
【0077】
酸触媒としては、活性白土、酸性白土などの白土類、硫酸、塩酸などの鉱酸類、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸などの有機酸、塩化アルミニウム、塩化第二鉄、塩化第二スズ、三塩化チタン、四塩化チタン、三フッ化硼素、フッ化水素、三臭化硼素、臭化アルミニウム、塩化ガリウム、臭化ガリウムなどのルイス酸、更に固体酸、例えば、ゼオライト、シリカ、アルミナ、シリカ・アルミナ、カチオン交換樹脂、ヘテロポリ酸(例えば、リンタングステン酸、リンモリブデン酸、ケイタングステン酸、ケイモリブデン酸)など各種のものが使用できる。
【0078】
本発明で用いられる塩基性触媒としては、Li2CO3、Na2CO3、K2CO3などのアルカリ金属炭酸塩、BaCO3、CaCO3などのアルカリ土類金属炭酸塩、Li2O、Na2O、K2Oなどのアルカリ金属酸化物、BaO、CaOなどのアルカリ土類金属酸化物、Na、Kなどのアルカリ金属、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、あるいはナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等のアルコキシド等を挙げることができる。
【0079】
以下に、本発明に係るホスト化合物及びホスト化合物となる重合性化合物の具体的な例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0080】
【化15】

【0081】
【化16】

【0082】
【化17】

【0083】
【化18】

【0084】
【化19】

【0085】
【化20】

【0086】
本発明に係る一般式(1)で表される燐光性化合物は、他の燐光性化合物もしくは蛍光化合物と併用してもよい。
【0087】
本発明で用いられる燐光性化合物としては、好ましくは元素の周期律表でVIII属の金属を含有する錯体系化合物であり、更に好ましくはイリジウム化合物、オスミウム化合物、または白金化合物(白金錯体系化合物)であり、中でも最も好ましいのはイリジウム化合物である。
【0088】
以下に、本発明で用いられる燐光性化合物の具体例を示すが、これらに限定されるものではない。これらの化合物は、例えば、Inorg.Chem.40巻、1704〜1711に記載の方法等により合成できる。なお併用する蛍光性化合物及び燐光性化合物は、重合性基または反応性基を有していてもいなくてもよい。
【0089】
【化21】

【0090】
【化22】

【0091】
【化23】

【0092】
【化24】

【0093】
本発明で用いられる蛍光性化合物とは、蛍光化合物を含有することにより含有しない場合と異なる極大発光波長の蛍光発光が得られる化合物であり、好ましいものは溶液状態で蛍光量子収率が高いものである。ここで、蛍光量子収率は10%以上、特に30%以上が好ましい。具体的な蛍光性化合物は、例えば、クマリン系色素、アントラセン系色素、ピラン系色素、シアニン系色素、クロコニウム系色素、スクアリウム系色素、オキソベンツアントラセン系色素、フルオレセイン系色素、ローダミン系色素、ピリリウム系色素、ペリレン系色素、スチルベン系色素、ポリチオフェン系色素、または希土類錯体系蛍光体等が挙げられる。ここでの蛍光量子収率は、第4版実験化学講座7の分光IIの362頁(1992年版、丸善)に記載の方法により測定することができる。
【0094】
以下に本発明に係る蛍光化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0095】
【化25】

【0096】
《有機EL素子の製造方法》
本発明における転写とは、支持体上に有機層を有する転写材料から該有機層のみを基板上に積層させ、支持体等を剥離することを意味する。また、本発明における貼り合わせとは、電極(好ましくは陽極)上に有機層を積層させたものを基板上に貼り合わせることを意味する。
【0097】
本発明の有機EL素子の製造方法は、支持体上に有機層を形成することにより転写材料を作製し、有機層側が基板の被成膜面に対面するように転写材料を基板に重ねて加熱または加圧して層を軟化させて、基板の被成膜面に接着させた後、支持体を剥離することにより有機層だけを被成膜面に残留させ、有機層を基板の被成膜面に転写するものである。転写材料は1種のみ使用してもよいし、同一または異なる組成の有機層を有する2種以上の転写材料を使用してもよい。
【0098】
加熱手段としては一般に公知の方法を用いることができ、例えば、ラミネータ、赤外線ヒータ、レーザ、熱ヘッド、ヒートローラ等を用いることができる。大面積の転写の際には、加熱手段はラミネータ、赤外線ヒータ、ヒートローラ等が好ましく用いられる。熱ヘッドとしては、例えば、ファーストラミネータVA−400III(大成ラミネータ(株)製)や、熱転写プリント用の熱ヘッド等を用いることができる。
【0099】
転写用の温度は特に限定的でなく、有機層の材質や加熱部材によって変更することができるが、一般に40〜250℃が好ましく、更に50〜200℃が好ましく、特に60〜180℃が好ましい。但し、転写用の温度の範囲は加熱部材、転写材料及び基板の耐熱性に関係しており、耐熱性が向上すればそれにともなって変化する。
【0100】
2種以上の転写材料を使用する場合には、最初に転写する転写材料の転写温度が次に転写する転写材料の転写温度以上であることが好ましい。また、一つの転写材料で2種以上の有機層を有する転写材料を使用する場合には、最初に転写する有機層の転写温度が次に転写する有機層の転写温度以上であるのが好ましい。転写材料の有機層あるいはこの有機層に含有される高分子成分のガラス転移温度、または該有機層の流動開始温度が40℃以上で、且つ転写温度+40℃以下であるのが好ましい。また転写する2種以上の有機層は少なくとも1種の共通成分を含有していることが好ましい。
【0101】
転写前に、基板及び転写材料の少なくともいずれかを予熱しておくのが好ましい。予熱温度は30℃以上で、且つ転写温度+20℃以下であるのが好ましい。また支持体を引き剥がす時の温度は10℃以上で、且つ転写温度以下であるのが好ましい。
【0102】
支持体を引き剥がした後、転写された有機層を再度加熱するのが好ましい。再加熱温度は、有機層のガラス転移温度または流動開始温度以上であるのが好ましい。
【0103】
本発明では、転写の操作を減圧雰囲気下で行うことが好ましい。減圧雰囲気の圧力は、発光素子の製造装置により適宜好適な圧力を選択することができるが、1×10-3Pa以上1×10-5Pa以下が好ましい。
【0104】
転写材料の有機層は、少なくとも発光性化合物またはキャリア輸送性材料を有するのが好ましい。また、基板上に予め電子輸送層を設けておき、この電子輸送層上に発光層及びホール輸送層を転写するのが好ましい。
【0105】
本発明において有機EL素子の製造に使用する転写材料は、支持体上に湿式法により有機層を形成してなるものが好ましい。また、1つの支持体に同一または異なる組成の2種以上の有機層が面順次に形成されていてもよい。
【0106】
本発明では、転写工程(転写工程の中に、支持体を剥離する工程も含まれる)を繰返し行い、複数の有機層を基板上に積層することもできる。複数の有機層は同一の組成であっても異なっていてもよい。同一組成の場合、転写不良や剥離不良による層の抜けを防止することができるという利点がある。また異なる層を設ける場合、機能を分離して発光効率を向上する設計とすることができ、例えば、本発明に係る転写法により被成膜面に、透明導電層/ホール注入層/ホール輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/背面電極を積層することができる。このとき転写温度は、先の転写層が次の転写層に逆転写されないように、先の転写材料を加熱する温度を次の転写材料を加熱する温度以上とするのが好ましい。
【0107】
基板に転写した有機層に対して、あるいは先に転写した有機層に転写した新たな有機層に対して、必要に応じて再加熱するのが好ましい。再加熱により有機層は基板または先に転写した有機層にいっそう密着する。再加熱時に必要に応じて加圧するのが好ましい。再加熱温度は転写温度±50℃の範囲であるのが好ましい。
【0108】
先の転写層が次の転写層に逆転写されないように、先の転写工程と次の転写工程の間で、被成膜面に密着力を向上するような表面処理を施してもよい。このような表面処理としては、例えば、コロナ放電処理、火炎処理、グロー放電処理、プラズマ処理等の活性化処理が挙げられる。表面処理を併用する場合、逆転写しなければ、先の転写材料の転写温度が次の転写材料の転写温度未満であってもよい。
【0109】
本発明の有機EL素子を製造する設備としては、支持体上に湿式法により有機層を形成した転写材料を送給する装置と、転写材料を加熱しながら基板の被成膜面に押し当てることにより、有機層を基板の被成膜面に転写させる装置、転写材料の支持体を有機層から引き剥がす装置とを有する設備を用いることができる。以後、上記の対面する装置と引き剥がす装置を合わせて転写装置とも呼称する。
【0110】
上記設備は、転写装置に送給する前に転写材料及び/または基板を予熱する手段を有するのが好ましい。また転写装置の後段に冷却装置を有するのが好ましい。転写装置の前面には、転写材料の基板に対する進入角度を90°以下にする進入角度調整部が設けられているのが好ましい。また対面装置または冷却装置の後面には、転写材料の支持体の有機層に対する剥離角度を90°以上にする剥離角度調整部が設けられているのが好ましい。
【0111】
以上の有機EL素子の製造法及び装置についての詳細は、特開2002−289346号公報等に記載されている
《転写材料》
以下、転写材料の構成及び内容について説明する。特に転写材料として支持体を用いる場合について説明する。転写材料は支持体と少なくとも一層の有機層を有する。工程に応じて、少なくとも一層の発光層を有する転写材料を使うことがある。
【0112】
(1)構成
有機層(有機EL素子の有機層として機能する有機化合物を含有する層)は、支持体上に湿式法で作製するのが好ましい。有機層を設けた転写材料は、有機層毎に個々独立した転写材料として作製してもよいし、面順次に設けてもよい。即ち、素子の積層順に複数の有機層を1枚の支持体に設けてもよい。この転写材料を使用すれば、転写材料の交換の必要なしに複数の有機層を連続的に形成することができる。
【0113】
また支持体上に2層以上の有機層を予め積層した転写材料を使用すれば、1回の転写工程で基板の被成膜面に多層膜を積層することができる。支持体上に予め積層する場合、積層される各有機層の界面が均一でないと正孔や電子の移動にムラが生じてしまうので、界面を均一にするために溶剤を慎重に選ぶ必要があり、またその溶剤に可溶な有機層用の有機化合物を選択する必要がある。
【0114】
(2)支持体
支持体を用いて転写を行う場合、本発明に使用する支持体は化学的及び熱的に安定であって、可撓性を有する材料により構成されることが好ましい。具体的には、フッ素樹脂(例えば、4フッ化エチレン樹脂(PTFE)、3フッ化塩化エチレン樹脂(PCTFE))、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN))、ポリアリレート、ポリカーボネート、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン)、ポリエーテルスルホン(PES)等の薄いシート、またはこれらの積層体が好ましい。支持体の厚さは1〜300μmが適当であり、更に3〜200μmが好ましく、特に3〜50μmであるのが好ましい。
【0115】
《基板及び支持体上への有機層の形成》
本発明に係る有機層は、蒸着法、塗布法いずれでも形成可能であるがで塗布法で形成するのが好ましい。塗布法に際しては、スピンコート法、グラビアコート法、ディップコート法、キャスト法、ダイコート法、ロールコート法、バーコート法、エクストルージェンコート法、インクジェット塗布法等が挙げられる。
【0116】
《有機EL素子の層構成》
本発明の有機EL素子の層構成について説明する。
【0117】
本発明の有機EL素子は、基板上に電極(陰極と陽極)と少なくとも2層以上の有機層を有し、有機層の少なくとも1層は燐光性化合物及びホスト化合物を含有する発光層である。
【0118】
本発明に係る発光層は、広義の意味では陰極と陽極からなる電極に電流を流した際に発光する層のことであり、具体的には陰極と陽極からなる電極に電流を流した際に発光する化合物を含有する層のことを指す。
【0119】
本発明に係る有機層は、必要に応じ発光層の他に正孔輸送層、電子輸送層、陽極バッファー層及び陰極バッファー層等を有してもよく、陰極と陽極で挟持された構造をとる。具体的には以下に示される構造が挙げられる。
【0120】
(i)陽極/正孔輸送層/発光層/陰極
(ii)陽極/発光層/電子輸送層/陰極
(iii)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(iv)陽極/陽極バッファー層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極バッファー層/陰極
上記有機EL素子を構成する、電極(陽極及び陰極)間に挟持された複数層のうち、有機層は2層以上であり、更に好ましくは3層以上である。
【0121】
《発光層》
本発明の有機EL素子の発光層には、ホスト化合物を複数種併用して用いてもよい。ホスト化合物を複数種もちいることで電荷の移動を調整することが可能であり、有機EL素子を高効率化することができる。また、燐光性化合物を複数種用いることで異なる発光を混ぜることが可能となり、これにより任意の発光色を得ることができる。燐光性化合物の種類、ドープ量を調整することで白色発光が可能であり、照明、バックライトへの応用もできる。
【0122】
このようにして形成された発光層の膜厚については特に制限はなく、状況に応じて適宜選択することができるが、5nm〜5μmの範囲に膜厚調整することが好ましい。
【0123】
次に正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層等、発光層と組み合わせて有機EL素子を構成するその他の層について説明する。
【0124】
《正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層》
本発明に用いられる正孔注入層、正孔輸送層は、陽極より注入された正孔を発光層に伝達する機能を有し、この正孔注入層、正孔輸送層を陽極と発光層の間に介在させることにより、より低い電界で多くの正孔が発光層に注入され、その上発光層に陰極、電子注入層、または電子輸送層より注入された電子は、発光層と正孔注入層もしくは正孔輸送層の界面に存在する電子の障壁により、発光層内の界面に累積され発光効率が向上するなど発光性能の優れた素子となる。
【0125】
《正孔注入材料、正孔輸送材料》
この正孔注入層、正孔輸送層の材料(以下、正孔注入材料、正孔輸送材料という)については、前記の陽極より注入された正孔を発光層に伝達する機能を有する性質を有するものであれば特に制限はなく、従来、光導伝性材料において、正孔の電荷注入輸送材料として慣用されているものや、有機EL素子の正孔注入層、正孔輸送層に使用される公知のものの中から任意のものを選択して用いることができる。
【0126】
上記正孔注入材料、正孔輸送材料は正孔の注入もしくは輸送、電子の障壁性のいずれかを有するものであり、有機物、無機物のいずれであってもよい。この正孔注入材料、正孔輸送材料としては、例えば、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、または導電性高分子オリゴマー、特にチオフェンオリゴマーなどが挙げられる。
【0127】
正孔注入材料、正孔輸送材料としては上記のものを使用することができるが、ポルフィリン化合物、芳香族第三級アミン化合物及びスチリルアミン化合物、特に芳香族第三級アミン化合物を用いることが好ましい。
【0128】
上記芳香族第三級アミン化合物及びスチリルアミン化合物の代表例としては、N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノフェニル;N,N′−ジフェニル−N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−〔1,1′−ビフェニル〕−4,4′−ジアミン(TPD);2,2−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)プロパン;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン;N,N,N′,N′−テトラ−p−トリル−4,4′−ジアミノビフェニル;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン;ビス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)フェニルメタン;ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)フェニルメタン;N,N′−ジフェニル−N,N′−ジ(4−メトキシフェニル)−4,4′−ジアミノビフェニル;N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル;4,4′−ビス(ジフェニルアミノ)クオードリフェニル;N,N,N−トリ(p−トリル)アミン;4−(ジ−p−トリルアミノ)−4′−〔4−(ジ−p−トリルアミノ)スチリル〕スチルベン;4−N,N−ジフェニルアミノ−(2−ジフェニルビニル)ベンゼン;3−メトキシ−4′−N,N−ジフェニルアミノスチルベンゼン;N−フェニルカルバゾール、更に米国特許第5,061,569号明細書に記載されている2個の縮合芳香族環を分子内に有するもの、例えば、4,4′−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル(α−NPD)、特開平4−308688号公報に記載されているトリフェニルアミンユニットが3つスターバースト型に連結された4,4′,4″−トリス〔N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ〕トリフェニルアミン(MTDATA)などが挙げられる。更にこれらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
【0129】
またはp型−Si、p型−SiCなどの無機化合物も正孔注入材料、正孔輸送材料として使用することができる。この正孔注入層、正孔輸送層は上記正孔注入材料、正孔輸送材料を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法などの公知の方法により、薄膜化することにより形成することができる。
【0130】
(正孔注入層の膜厚、正孔輸送層の膜厚)
正孔注入層、正孔輸送層の膜厚については特に制限はないが、5nm〜5μm程度での範囲に調整することが好ましい。この正孔注入層、正孔輸送層は上記材料の一種または二種以上からなる一層構造であってもよく、同一組成または異種組成の複数層からなる積層構造であってもよい。
【0131】
《電子輸送層、電子輸送材料》
本発明に係る電子輸送層は、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有していればよく、その材料としては従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができる。
【0132】
この電子輸送層に用いられる材料(以下、電子輸送材料という)の例としては、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、ナフタレンペリレンなどの複素環テトラカルボン酸無水物、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタン及びアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体、有機金属錯体などが挙げられる。更に上記オキサジアゾール誘導体において、オキサジアゾール環の酸素原子を硫黄原子に置換したチアジアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有するキノキサリン誘導体も、電子輸送材料として用いることができる。更にこれらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
【0133】
または8−キノリノール誘導体の金属錯体、例えば、トリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alq)、トリス(5,7−ジクロロ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5,7−ジブロモ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(2−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、ビス(8−キノリノール)亜鉛(Znq)など、及びこれらの金属錯体の中心金属がIn、Mg、Cu、Ca、Sn、GaまたはPbに置き替わった金属錯体も、電子輸送材料として用いることができる。
【0134】
その他、メタルフリーまたはメタルフタロシアニン、更にはそれらの末端がアルキル基やスルホン酸基などで置換されているものも、電子輸送材料として好ましく用いることができる。または発光層の材料として例示したジスチリルピラジン誘導体も、電子輸送材料として用いることができるし、正孔注入層、正孔輸送層と同様にn型−Si、n型−SiCなどの無機半導体も電子輸送材料として用いることができる。
【0135】
(電子輸送層の膜厚)
電子輸送層の膜厚は特に制限はないが、5nm〜5μmの範囲に調整することが好ましい。この電子輸送層は、これらの電子輸送材料一種または二種以上からなる一層構造であってもよいし、あるいは同一組成または異種組成の複数層からなる積層構造であってもよい。
【0136】
更に本発明においては、陽極と発光層または正孔注入層の間、及び陰極と発光層または電子注入層との間にはバッファー層(電極界面層)を存在させてもよい。
【0137】
バッファー層とは、駆動電圧低下や発光効率向上のために電極と有機層間に設けられる層のことで、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(123〜166頁)に詳細に記載されており、陽極バッファー層と陰極バッファー層とがある。
【0138】
陽極バッファー層は特開平9−45479号、同9−260062号、同8−288069号の各公報等にもその詳細が記載されており、具体例として、銅フタロシアニンに代表されるフタロシアニンバッファー層、酸化バナジウムに代表される酸化物バッファー層、アモルファスカーボンバッファー層、ポリアニリン(エメラルディン)やポリチオフェン等の導電性高分子を用いた高分子バッファー層等が挙げられる。
【0139】
陰極バッファー層は特開平6−325871号、同9−17574号、同10−74586号の各公報等にもその詳細が記載されており、具体的にはストロンチウムやアルミニウム等に代表される金属バッファー層、フッ化リチウムに代表されるアルカリ金属化合物バッファー層、フッ化マグネシウムに代表されるアルカリ土類金属化合物バッファー層、酸化アルミニウム、酸化リチウムに代表される酸化物バッファー層等が挙げられる。
【0140】
上記バッファー層はごく薄い膜であることが望ましく、素材にもよるがその膜厚は0.1〜100nmの範囲が好ましい。
【0141】
更に上記基本構成層の他に必要に応じてその他の機能を有する層を積層してもよく、例えば、特開平11−204258号、同11−204359号の各公報、及び「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の237頁等に記載されている正孔阻止(ホールブロック)層などのような機能層を有していてもよい。
【0142】
《電極》
次に有機EL素子の電極について説明する。有機EL素子の電極は陰極と陽極からなる。この有機EL素子における陽極としては、仕事関数の大きい(4eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが好ましく用いられる。このような電極物質の具体例としてはAuなどの金属、CuI、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO2、ZnOなどの導電性透明材料が挙げられる。
【0143】
上記陽極は蒸着やスパッタリングなどの方法により、これらの電極物質の薄膜を形成させ、フォトリソグラフィー法で所望の形状のパターンを形成してもよく、あるいはパターン精度をあまり必要としない場合(100μm以上程度)は、上記電極物質の蒸着やスパッタリング時に所望の形状のマスクを介してパターンを形成してもよい。この陽極より発光を取り出す場合には、透過率を10%より大きくすることが望ましく、または陽極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましい。更に膜厚は材料にもよるが、通常10nm〜1μm、好ましくは10〜200nmの範囲で選ばれる。
【0144】
一方、陰極としては仕事関数の小さい(4eV以下)金属(電子注入性金属と称する)、合金、電気伝導性化合物、及びこれらの混合物を電極物質とするものが好ましく用いられる。このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al23)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属などが挙げられる。
【0145】
これらの中で電子注入性及び酸化などに対する耐久性の点から、電子注入性金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al23)混合物、リチウム/アルミニウム混合物などが好適である。
【0146】
上記陰極は、これらの電極物質を蒸着やスパッタリングなどの方法で薄膜を形成させることにより作製することができる。または陰極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましく、膜厚は通常10nm〜1μm、好ましくは50〜200nmの範囲で選ばれる。なお発光を透過させるため、有機EL素子の陽極または陰極のいずれか一方が透明または半透明であれば、発光効率が向上するので好都合である。
【0147】
《基材》
本発明の有機EL素子は、基材(以下、基板、基体、支持体、フィルム等ともいう)上に形成されているのが好ましい。
【0148】
本発明の有機EL素子に用いることのできる基材としては、ガラス、プラスチック等の種類には特に限定はなく、また透明のものであれば特に制限はないが、好ましく用いられる基材としては例えばガラス、石英、透明フィルムを挙げることができる。特に好ましい基材は、有機EL素子にフレキシブル性を与えることが可能な透明フィルムである。
【0149】
具体的にはエチレン、ポリプロピレン、ブテン等の単独重合体または共重合体、または共重合体等のポリオレフィン(PO)樹脂、環状ポリオレフィン等の非晶質ポリオレフィン樹脂(APO)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン2,6−ナフタレート(PEN)等のポリエステル系樹脂、ナイロン6、ナイロン12、共重合ナイロン等のポリアミド系(PA)樹脂、ポリビニルアルコール(PVA)樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)等のポリビニルアルコール系樹脂、ポリイミド(PI)樹脂、ポリエーテルイミド(PEI)樹脂、ポリサルホン(PS)樹脂、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリビニルブチラート(PVB)樹脂、ポリアリレート(PAR)樹脂、エチレン−四フッ化エチレン共重合体(ETFE)、三フッ化塩化エチレン(PFA)、四フッ化エチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(FEP)、フッ化ビニリデン(PVDF)、フッ化ビニル(PVF)、パーフルオロエチレン−パーフロロプロピレン−パーフロロビニルエーテル−共重合体(EPA)等のフッ素系樹脂等を用いることができる。
【0150】
また上記に挙げた樹脂以外にも、ラジカル反応性不飽和化合物を有するアクリレート化合物によりなる樹脂組成物や、上記アクリルレート化合物とチオール基を有するメルカプト化合物よりなる樹脂組成物、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート等のオリゴマーを多官能アクリレートモノマーに溶解せしめた樹脂組成物等の光硬化性樹脂及びこれらの混合物等を用いることも可能である。更に、これらの樹脂の1または2種以上をラミネート、コーティング等の手段によって積層させたものを基材フィルムとして用いることも可能である。
【0151】
これらの素材は単独であるいは適宜混合されて使用することもできる。中でもゼオネックスやゼオノア(日本ゼオン(株)製)、非晶質シクロポリオレフィン樹脂フィルムのARTON(ジェイエスアール(株)製)、ポリカーボネートフィルムのピュアエース(帝人(株)製)、セルローストリアセテートフィルムのコニカタックKC4UX、KC8UX(コニカミノルタオプト(株)製)などの市販品を好ましく使用することができる。
【0152】
また、上記に挙げた樹脂等を用いた本発明に係る基材は、未延伸フィルムでもよく、延伸フィルムでもよい。
【0153】
本発明に係る基材は、従来公知の一般的な方法により製造することが可能である。例えば、材料となる樹脂を押し出し機により溶融し、環状ダイやTダイにより押し出して急冷することにより、実質的に無定形で配向していない未延伸の基材を製造することができる。また、未延伸の基材を一軸延伸、テンター式逐次二軸延伸、テンター式同時二軸延伸、チューブラー式同時二軸延伸などの公知の方法により、基材の流れ(縦軸)方向、または基材の流れ方向と直角(横軸)方向に延伸することにより延伸基材を製造することができる。この場合の延伸倍率は、基材の原料となる樹脂に合わせて適宜選択することできるが、縦軸方向及び横軸方向にそれぞれ2〜10倍が好ましい。
【0154】
また、本発明に係る基材においては、蒸着膜を形成する前にコロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、グロー放電処理、粗面化処理、薬品処理などの表面処理を行ってもよい。
【0155】
更に本発明に係る基材表面には、蒸着膜との密着性の向上を目的としてアンカーコート剤層を形成してもよい。このアンカーコート剤層に用いられるアンカーコート剤としては、ポリエステル樹脂、イソシアネート樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、ビニル変性樹脂、エポキシ樹脂、変性スチレン樹脂、変性シリコン樹脂、及びアルキルチタネート等を、1または2種以上併せて使用することができる。これらのアンカーコート剤には、従来公知の添加剤を加えることもできる。
【0156】
そして、上記のアンカーコート剤はロールコート、グラビアコート、ナイフコート、ディップコート、スプレーコート等の公知の方法により基材上にコーティングし、溶剤、希釈剤等を乾燥除去することによりアンカーコーティングすることができる。上記のアンカーコート剤の塗布量としては、0.1〜5g/m2(乾燥状態)程度が好ましい。
【0157】
基材はロール状に巻き上げられた長尺品が便利である。基材の厚さは得られるフィルムの用途によって異なるので一概には規定できないが、フィルムを包装用途とする場合には、特に制限を受けるものではなく、包装材料としての適性から3〜400μm、中でも6〜30μmの範囲内とすることが好ましい。
【0158】
また、本発明に用いられる基材は、フィルム形状のものの膜厚としては10〜200μmが好ましく、より好ましくは50〜100μmである。
【0159】
《表示装置》
本発明の有機EL素子は、照明用や露光光源のような一種のランプとして使用してもよいし、画像を投影するタイプのプロジェクション装置や、静止画像や動画像を直接視認するタイプの表示装置(ディスプレイ)として使用してもよい。動画再生用の表示装置として使用する場合の駆動方式は、単純マトリクス(パッシブマトリクス)方式でもアクティブマトリクス方式でもどちらでもよい。または異なる発光色を有する本発明の有機EL素子を2種以上使用することにより、フルカラー表示装置を作製することが可能である。
【0160】
《光取り出し技術》
本発明の有機EL素子は、発光層から放射された光の取り出し効率を向上させるため、基板の表面にプリズムやレンズ状の加工を施す、もしくは基板の表面にプリズムシートやレンズシートを貼りつけてもよい。
【0161】
本発明の有機EL素子は、電極と基板の間に低屈折率層を有してもよい。低屈折率層としては、例えば、エアロゲル、多孔質シリカ、フッ化マグネシウム、フッ素系ポリマーなどが挙げられる。
【0162】
基板の屈折率は一般に1.5〜1.7程度であるので、低屈折率層は屈折率がおよそ1.5以下であることが好ましい。また更に1.35以下であることが好ましい。また、低屈折率媒質の厚みは媒質中の波長の2倍以上となるのが望ましい。これは低屈折率媒質の厚みが、光の波長程度になってエバネッセントで染み出した電磁波が基板内に入り込む膜厚になると、低屈折率層の効果が薄れるからである。
【0163】
本発明の有機EL素子はいずれかの層間、もしくは媒質中(透明基板内や透明電極内)に回折格子を有してもよい。導入する回折格子は二次元的な周期屈折率を持っていることが望ましい。これは発光層で発光する光はあらゆる方向にランダムに発生するので、ある方向にのみ周期的な屈折率分布を持っている一般的な1次元回折格子では、特定の方向に進む光しか回折されず、光の取り出し効率がさほど上がらない。しかしながら、屈折率分布を二次元的な分布にすることにより、あらゆる方向に進む光が回折され、光の取り出し効率が上がる。回折格子を導入する位置としては前述のとおり、いずれかの層間もしくは、媒質中(透明基板内や透明電極内)でもよいが、光が発生する場所である有機発光層の近傍が望ましい。このとき、回折格子の周期は媒質中の光の波長の約1/2〜3倍程度が好ましい。回折格子の配列は正方形のラチス状、三角形のラチス状、ハニカムラチス状など、2次元的に配列が繰り返されることが好ましい。
【0164】
本発明に係る基材は、ガスバリア層を有することが好ましい。これによりダークスポット及び高温、高湿下での経時安定性のより一層の改良効果を有する。
【0165】
《ガスバリア層》
本発明に係るガスバリア層とは、酸素及び水蒸気の透過を阻止する層であれば、その組成等は特に限定されるものではない。酸素の透過度が23℃、0%RHにおいて0.005ml/m2/day以下が好ましく、またJIS K7129 B法に従って測定した水蒸気透過度が0.1g/m2/day以下が好ましい。本発明に係るガスバリア層を構成する材料として、具体的には無機酸化物が好ましく、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化窒化珪素、酸化窒化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化スズ等を挙げることができる。
【0166】
また、本発明におけるガスバリア層の厚さは、用いられる材料の種類、構成により最適条件が異なり、適宜選択されるが、5〜2000nmの範囲内であることが好ましい。ガスバリア層の厚さが上記の範囲より薄い場合には、均一な膜が得られず、ガスに対するバリア性を得ることが困難であるからである。またガスバリア層の厚さが上記の範囲より厚い場合には、ガスバリア性フィルムにフレキシビリティを保持させることが困難であり、成膜後に折り曲げ、引っ張り等の外的要因により、ガスバリア性フィルムに亀裂が生じる等の恐れがあるからである。
【0167】
本発明に係るガスバリア層は、後述する原材料をスプレー法、スピンコート法、スパッタリング法、イオンアシスト法、後述するプラズマCVD法、後述する大気圧または大気圧近傍の圧力下でのプラズマCVD法等を適用して形成することができる。
【0168】
図1は、本発明に係るガスバリア層を有する基材の構成を示す一例である。
【0169】
本発明に係るガスバリア層を有する基材の構成とその密度について説明する。本発明に係るガスバリア層21は、基材22上に密度の異なる層を積層しており、密着膜23、セラミック膜24及び保護膜25を積層した構成をとる。図1においては3層を積層した例を示してある。各層内における密度分布は均一とし、セラミック膜の密度をその上下に位置する密着膜及び保護膜のそれぞれの密度よりも高く設定している。なお、図1においては各層を1層として示したが、必要に応じてそれぞれ2層以上の構成をとってもよい。
【0170】
基材上に密着膜、セラミック膜及び保護膜を形成する方法としては、スプレー法、スピンコート法、スパッタリング法、イオンアシスト法、プラズマCVD法、大気圧または大気圧近傍の圧力下でのプラズマCVD法等を適用して形成することができる。
【実施例】
【0171】
以下、本発明について実施例をもって説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0172】
実施例1
〔有機EL素子OLED1−1の作製〕
(A)転写材料Aの作製
ポリエーテルスルホン(住友ベークライト(株)製、厚さ188μm)の支持体の片面上に、下記の例示化合物A15の重合体、燐光性化合物1−1(質量比100:5)ジクロロエタンを含む流動体をバーコータを用いて塗布し、室温で乾燥させることにより、厚さ40nmの発光層を支持体上に形成した転写材料Aを作製した。
【0173】
更に、発光層の有機溶媒の含有量が表1に示すように調整を行った。
【0174】
(B)転写材料Bの作製
ポリエーテルスルホン(住友ベークライト(株)製、厚さ188μm)の支持体の片面上に、下記の例示化合物A28の重合体及びジクロロエタンを含む流動体をバーコータを用いて塗布し、室温で乾燥させることにより、厚さ40nmの電子輸送層を支持体上に形成した転写材料Bを作製した。
【0175】
更に、電子輸送層の有機溶媒の含有量が表1に示すように調整を行った。
【0176】
(C)ガスバリア層を有する基板1の作製
基板として、厚さ100μmのポリエチレンナフタレートフィルム(帝人・デユポン社製フィルム、以下PENと略記する)上に、下記の大気圧プラズマ放電処理装置及び放電条件で、図1記載プロファイル構成でガスバリア層を有する基板1を作製した。
【0177】
(大気圧プラズマ放電処理装置)
図2の大気圧プラズマ放電処理装置を用い、誘電体で被覆したロール電極及び複数の角筒型電極のセットを以下のように作製した。
【0178】
第1電極となるロール電極は、冷却水による冷却手段を有するチタン合金T64製ジャケットロール金属質母材に対して、大気プラズマ法により高密度、高密着性のアルミナ溶射膜を被覆し、ロール径1000mmφとなるようにした。一方、第2電極の角筒型電極は、中空の角筒型のチタン合金T64に対し、上記同様の誘電体を同条件にて方肉で1mm被覆し、対向する角筒型固定電極群とした。
【0179】
この角筒型電極をロール回転電極のまわりに、対向電極間隙を1mmとして10本配置した。角筒型固定電極群の放電総面積は、150cm(幅手方向の長さ)×4cm(搬送方向の長さ)×10本(電極の数)=6000cm2であった。なお、いずれもフィルターは適切なものを設置した。
【0180】
プラズマ放電中、第1電極(ロール回転電極)は120℃及び第2電極(角筒型固定電極群)は80℃になるように調節保温し、ロール回転電極はドライブで回転させて薄膜形成を行った。上記10本の角筒型固定電極中、上流側より2本を下記第1層(密着層)の製膜用に、次の6本を下記第2層(セラミック層)の製膜用に、次の2本を第3層(保護層)の製膜用に使用し、各条件を設定して1パスで3層を積層した。
【0181】
(第1層:密着層)
下記の条件でプラズマ放電を行って、厚さ約50nmの密着層を形成した。
【0182】
〈ガス条件〉
放電ガス:窒素ガス 94.5体積%
薄膜形成性ガス:ヘキサメチルジシロキサン
(リンテック社製気化器にて窒素ガスに混合して気化) 0.5体積%
添加ガス:酸素ガス 5.0体積%
〈電源条件:第1電極側の電源のみを使用した〉
第1電極側 電源種類 応用電機社製高周波電源
周波数 80kHz
出力密度 10W/cm2
上記形成した第1層(密着層)の密度は、前述のマックサイエンス社製MXP21を用いたX線反射率法で測定した結果、1.90であった。
【0183】
(第2層:セラミック層)
下記の条件でプラズマ放電を行って、厚さ約30nmのセラミック層を形成した。
【0184】
〈ガス条件〉
放電ガス:窒素ガス 94.9体積%
薄膜形成性ガス:ヘキサメチルジシロキサン
(リンテック社製気化器にて窒素ガスに混合して気化) 0.1体積%
添加ガス:酸素ガス 5.0体積%
〈電源条件〉
第1電極側 電源種類 応用電機社製高周波電源
周波数 80kHz
出力密度 10W/cm2
第2電極側 電源種類 パール工業社製高周波電源
周波数 13.56MHz
出力密度 10W/cm2
上記形成した第2層(セラミック層)の密度は、前述のマックサイエンス社製MXP21を用いたX線反射率法で測定した結果、2.20であった。
【0185】
(第3層:保護層)
下記の条件でプラズマ放電を行って、厚さ約200nmの保護層を形成した。
【0186】
〈ガス条件〉
放電ガス:窒素ガス 93.0体積%
薄膜形成性ガス:ヘキサメチルジシロキサン
(リンテック社製気化器にて窒素ガスに混合して気化) 2.0体積%
添加ガス:酸素ガス 5.0体積%
〈電源条件:第1電極側の電源のみを使用した〉
第1電極側 電源種類 応用電機社製高周波電源
周波数 80kHz
出力密度 10W/cm2
上記形成した第3層(保護層)の密度は、前述のマックサイエンス社製MXP21を用いたX線反射率法で測定した結果、1.95であった。
【0187】
JIS−K−7129Bに準拠した方法により水蒸気透過率を測定した結果、10-3g/m2/day以下であった。JIS−K−7126Bに準拠した方法により酸素透過率を測定した結果、10-3g/m2/day以下であった。
【0188】
次いで、ガスバリア層を有する基板1上にITO(インジウムチンオキシド)を120nm成膜した基板にパターニングを行った後、このITO透明電極を付けた基板をイソプロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥し、UVオゾン洗浄を5分間行った。市販の真空蒸着装置の基板ホルダーに固定し、真空度4×10-4Paまで減圧し、ITO基板100を作製した。
【0189】
次に図3のように市販のインクジェット式ヘッド10(コニカミノルタ製KM512S非水系ヘッド)を用いて、下記の例示化合物A7の重合体及びTHFを含む流動体DをITO基板100上に吐出させ、膜厚50nmの正孔輸送層を形成した基板Aを作製した。
【0190】
更に、正孔輸送層の有機溶媒の含有量が表1に示すように調整を行った。
【0191】
(D)有機EL素子の作製
上記基板Aの正孔輸送層の上面に転写材料Aの発光層側を重ね、転写材料Aの支持体側から0.3MPaの加圧力の1対のローラー(一方が155℃の加熱ローラー)の間を0.05m/分の速度で通すことにより、転写材料Aの支持体側から加熱しながら加圧し、支持体を引き剥がすことにより、正孔輸送層の上面に発光層を形成した。
【0192】
更に、発光層の上面に転写材料Bの電子輸送層側を重ね、転写材料Bの仮支持体側から0.3MPaの加圧力の1対のローラー(一方が155℃の加熱ローラー)の間を0.05m/分の速度で通すことにより、転写材料Bの支持体側から加熱しながら加圧し、支持体を引き剥がすことにより、発光層の上面に電子輸送層を形成した。
【0193】
次に、電子輸送層の上に厚さ200nmのアルミニウム(陰極)を蒸着形成した。更にその上にガスバリア層を有する基材1を貼りつけて、有機EL素子OLED1−1を形成した。
【0194】
(例示化合物A15の重合体の合成)
反応容器に例示化合物A15、1.34g(2.5mmol)、2,2′−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)0.010g(0.061mmol)、酢酸ブチル30mlを入れて窒素置換を行った後、80℃で10時間反応させた。反応後、アセトンに投入して再沈殿を行い、濾過によりポリマーを回収した。回収したポリマーのクロロホルム溶液をメタノール中に投入して再沈殿させることを更に2回行うことにより精製し、回収後真空乾燥して、目的とする例示化合物A15の重合体1.20gを粉末として得た。
【0195】
この共重合体の重量平均分子量はポリスチレン換算で10000(HFIP(ヘキサフルオロイソプロパノール)を溶離液に用いたGPC測定による)であった。
【0196】
同様の方法で例示化合物A7の重合体(重量平均分子量36000)、例示化合物A28の重合体(重量平均分子量26000)を合成した。
【0197】
〔有機EL素子OLED1−2〜1−15の作製〕
有機EL素子OLED1−1の製造方法において、各層の材料を下記表1に示す材料に代えた以外は、有機EL素子OLED1−1の製造方法と同様の製造方法で有機EL素子OLED1−2〜1−15を作製した。
【0198】
〔有機EL素子OLED1−16の作製〕
(A)貼り合せ基材Aの作製
ガスバリア層を有する基材1上に厚さ200nmのアルミニウム(陰極)を蒸着形成し、更に上記の例示化合物A28の重合体及びジクロロエタンを含む流動体をバーコータを用いて塗布し、室温で乾燥させることにより、厚さ40nmの電子輸送層を支持体上に形成した貼り合せ基材Aを作製した。
【0199】
更に、電子輸送層の有機溶媒の含有量が表1に示すように調整を行った。
【0200】
(B)有機EL素子の作製
有機EL素子OLED1−1と同様に基板Aの正孔輸送層の上面に、転写材料Aの発光層側を重ね、更に転写材料Aの支持体側から0.3MPaの加圧力の1対のローラー(一方が155℃の加熱ローラー)の間を0.05m/分の速度で通すことにより、転写材料Aの支持体側から加熱しながら加圧し、支持体を引き剥がすことにより、正孔輸送層の上面に発光層を形成した。
【0201】
更に、発光層の上面に貼り合せ基材Aの電子輸送層側を重ね、貼り合せ基材Aの支持体側から0.3MPaの加圧力の1対のローラー(一方が155℃の加熱ローラー)の間を0.05m/分の速度で通し、貼り合せることにより、有機EL素子OLED1−16を作製した。
【0202】
〔有機EL素子OLED1−17、1−18の作製〕
有機EL素子OLED1−16の製造方法において、各層の材料を下記表1に示す材料に代えた以外は、有機EL素子OLED1−1の製造方法と同様の製造方法で有機EL素子OLED1−17、1−18を作製した。
【0203】
〔有機EL素子OLED1−19の作製〕
有機EL素子OLED1−1の製造方法において、転写の際、加圧力の1対のローラーの代わりにレーザーを用いて転写を行った以外は、有機EL素子OLED1−1の製造方法と同様の製造方法で有機EL素子OLED1−19を作製した。
【0204】
【表1】

【0205】
〔有機EL素子の評価〕
以下のようにして得られた有機EL素子の評価を行い、結果を表2に示す。
【0206】
(発光輝度)
有機EL素子の温度23℃、10V直流電圧を印加した時の発光輝度(cd/m2)を測定した。発光輝度は有機EL素子OLED1−13を100とした時の相対値で表した。発光輝度については、CS−1000(コニカミノルタセンシング社製)を用いて測定した。
【0207】
(駆動寿命)
各有機EL素子を50℃の一定条件で初期輝度1000cd/m2を与える電流で定電流駆動して、初期輝度の1/2(500cd/m2)になる時間を求め、これを50℃駆動寿命の尺度とした。なお、50℃駆動寿命は比較の有機EL素子OLED1−13を100とした時の相対値で表した。
【0208】
(経時安定性)
有機EL素子を60℃、70%Rhの条件で1ヶ月保存後、実施例1と同様に発光輝度(cd/m2)を測定した。経時安定性は保存前の発光輝度測定値に対して相対値で表した。
【0209】
(ダークスポット)
また15mA/cm2の一定電流で30時間駆動させた後に、2mm×2mm四方の範囲での目視で確認できる非発光点(ダークスポット)の数を測定した。
【0210】
以上により得られた結果を、下表に示す。
【0211】
【表2】

【0212】
表2から明らかなように、本発明に係る方法を用いた有機EL素子ではダークスポットが大幅に減少し、経時安定性が向上し、更に発光輝度、寿命の向上も認められた。
【0213】
実施例2
実施例1で作製した本発明の有機EL素子OLED1−1の燐光性化合物をIr−1に換えた以外は、同様にして作製した緑色発光有機EL素子と、本発明の有機EL素子OLED1−1の燐光性化合物をIr−9に置き換えた以外は、同様にして作製した赤色発光有機EL素子を同一基板上に並置し、図4に示すアクティブマトリックス方式フルカラー表示装置を作製した。図5には作製したフルカラー表示装置の表示部Aの模式図のみを示した。即ち同一基板上に複数の走査線5及びデータ線6を含む配線部と、並置した複数の画素3(発光の色が赤領域の画素、緑領域の画素、青領域の画素等)とを有し、配線部の走査線5及び複数のデータ線6はそれぞれ導電材料からなり、走査線5とデータ線6は格子状に直交して、直交する位置で画素3に接続している(詳細は図示せず)。
【0214】
前記複数の画素3は、それぞれの発光色に対応した有機EL素子、アクティブ素子であるスイッチングトランジスタと駆動トランジスタそれぞれが設けられたアクティブマトリックス方式で駆動されており、走査線5から走査信号が印加されると、データ線6から画像データ信号を受け取り、受け取った画像データに応じて発光する。このように各赤、緑、青の画素を適宜、並置することによって、フルカラー表示が可能となる。
【0215】
フルカラー表示装置を駆動することにより、鮮明なフルカラー動画表示が得られた。
【0216】
実施例3
《照明装置の作製》
実施例2で作製した青色発光、緑色発光及び赤色発光の有機EL素子各々の非発光面をガラスケースで覆い、照明装置とした。照明装置は発光効率が高く、発光寿命の長い白色光を発する薄型の照明装置として使用することができた。図6は照明装置の概略図で、図7は照明装置の断面図である。有機EL素子101をガラスカバー102で覆った。105は陰極で106は有機EL層、107は透明電極付きガラス基板である。なおガラスカバー102内には窒素ガス108が充填され、捕水剤109が設けられている。
【0217】
次いで、ディスプレイ用として市販されているカラーフィルターを組み合わせた際の色再現域を評価した。上記照明装置とカラーフィルターの組み合わせにおいて、色再現域が広く、色再現性において優れた性能を有することが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0218】
【図1】本発明に係る透明ガスバリアフィルムの層構成を示す模式図である。
【図2】本発明に有用な対向電極間で基材を処理する方式の大気圧プラズマ放電処理装置の一例を示す概略図である。
【図3】有機EL素子OLED1−1の吐出及び成膜工程を示す図である。
【図4】有機EL素子から構成される表示装置の一例を示した模式図である。
【図5】表示部の模式図である。
【図6】照明装置の概略図である。
【図7】照明装置の断面図である。
【符号の説明】
【0219】
30 プラズマ放電処理室
35 ロール電極
36 電極
41、42 電源
51 ガス供給装置
55 電極冷却ユニット
100 ITO基板
111 正孔輸送層
112 発光層
113 電子輸送層
114 陰極
115 ガスバリア膜
10 インクジェット式ヘッド
D 液滴
1 ディスプレイ
3 画素
5 走査線
6 データ線
A 表示部
B 制御部
107 透明電極付きガラス基板
106 有機EL層
105 陰極
102 ガラスカバー
108 窒素ガス
109 捕水剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に電極と少なくとも2層の有機層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子において、該有機層の少なくとも1層は有機溶媒を10-2〜103ppm含有した状態で転写または貼り合せによって形成されることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項2】
前記有機溶媒を0.1〜100ppm含有することを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項3】
前記有機層の少なくとも1層は燐光性化合物を含有する発光層であることを特徴とする請求項1または2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項4】
前記燐光性化合物のHOMOが−5.15〜−3.50eV、LUMOが−1.25〜+1.00eVであることを特徴とする請求項3に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項5】
前記燐光性化合物のHOMOが−4.80〜−3.50eV、LUMOが−0.80〜+1.00eVであることを特徴とする請求項4に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項6】
前記燐光性化合物が一般式(1)で表されることを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化1】

(式中、R1は置換基を表す。Zは5〜7員環を形成するのに必要な非金属原子群を表す。n1は0〜5の整数を表す。B1〜B5は炭素原子、窒素原子、酸素原子もしくは硫黄原子を表し、少なくとも一つは窒素原子を表す。M1は元素周期表における8〜10族の金属を表す。X1及びX2は炭素原子、窒素原子もしくは酸素原子を表し、L1はX1及びX2と共に2座の配位子を形成する原子群を表す。m1は1、2または3の整数を表し、m2は0、1または2の整数を表すが、m1+m2は2または3である。)
【請求項7】
前記一般式(1)で表される燐光性化合物において、m2が0であることを特徴とする請求項6に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項8】
前記一般式(1)で表される燐光性化合物において、B1〜B5で形成される含窒素複素環がイミダゾール環であることを特徴とする請求項6または7に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項9】
発光層が転写または貼り合せにより形成されることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項10】
前記基板がガスバリア層を有することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項11】
青色に発光することを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項12】
白色に発光することを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を有することを特徴とする表示装置。
【請求項14】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を有することを特徴とする照明装置。
【請求項15】
請求項14に記載の照明装置と表示手段としての液晶素子を有することを特徴とする表示装置。
【請求項16】
基板上に電極と少なくとも2層の有機層を有し、該有機層の少なくとも1層は該基板の被成膜面に転写または貼り合せによって形成される有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、該転写または貼り合せが有機溶媒を10-2〜103ppm含有した状態で行われることを有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−226983(P2007−226983A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−43547(P2006−43547)
【出願日】平成18年2月21日(2006.2.21)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】