説明

有機エレクトロルミネッセンス素子、表示装置及び照明装置

【課題】低電圧駆動、かつ、長寿命の有機EL素子、照明装置及び表示装置を提供。
【解決手段】陽極、陰極及びりん光性化合物を含有する発光層を有する有機EL素子において、前記陽極と前記発光層との間にある少なくとも一つの層が、下記一般式(5)で表される金属錯体を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子、表示装置及び照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発光型の電子ディスプレイデバイスとして、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(以下、ELDともいう)がある。ELDの構成要素としては、無機エレクトロルミネッセンス素子や有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子ともいう)が挙げられる。無機エレクトロルミネッセンス素子は平面型光源として使用されてきたが、発光素子を駆動させるためには交流の高電圧が必要である。有機EL素子は、発光する化合物を含有する発光層を陰極と陽極で挟んだ構成を有し、発光層に電子及び正孔を注入して、再結合させることにより励起子(エキシトン)を生成させ、このエキシトンが失活する際の光の放出(蛍光・燐光)を利用して発光する素子であり、数V〜数十V程度の電圧で発光が可能であり、さらに、自己発光型であるために視野角に富み、視認性が高く、薄膜型の完全固体素子であるために省スペース、携帯性等の観点から注目されている。
【0003】
しかしながら、今後の実用化に向けた有機EL素子においては、さらに低消費電力で効率よく高輝度に発光する有機EL素子の開発が望まれている。
【0004】
特許第3093796号明細書では、スチルベン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体またはトリススチリルアリーレン誘導体に、微量の蛍光体をドープし、発光輝度の向上、素子の長寿命化を達成している。
【0005】
また、8−ヒドロキシキノリンアルミニウム錯体をホスト化合物として、これに微量の蛍光体をドープした有機発光層を有する素子(例えば、特開昭63−264692号公報)、8−ヒドロキシキノリンアルミニウム錯体をホスト化合物として、これにキナクリドン系色素をドープした有機発光層を有する素子(例えば、特開平3−255190号公報)等が知られている。
【0006】
以上のように、励起一重項からの発光を用いる場合、一重項励起子と三重項励起子の生成比が1:3であるため発光性励起種の生成確率が25%であり、光の取り出し効率が約20%であるため、外部取り出し量子効率(ηext)の限界は5%とされている。
【0007】
ところが、プリンストン大より励起三重項からの燐光発光を用いる有機EL素子の報告(M.A.Baldo et al.,nature、395巻、151−154ページ(1998年))がされて以来、室温で燐光を示す材料の研究が活発になってきている。
【0008】
例えばM.A.Baldo et al.,nature、403巻、17号、750−753ページ(2000年)、また米国特許第6,097,147号明細書等にも開示されている。
【0009】
励起三重項を使用すると、内部量子効率の上限が100%となるため、励起一重項の場合に比べて原理的に発光効率が4倍となり、冷陰極管とほぼ同等の性能が得られる可能性があることから照明用途としても注目されている。
【0010】
例えば、S.Lamansky et al.,J.Am.Chem.Soc.,123巻,4304ページ(2001年)等においては、多くの化合物がイリジウム錯体系等重金属錯体を中心に検討されている。
【0011】
また、前述のM.A.Baldo et al.,nature,403巻,17号,750−753ページ(2000年)においては、ドーパントとして、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウムを用いた検討がされている。
【0012】
その他、M.E.Tompson等は、The 10th International Workshop on Inorganic and Organic Electroluminescence(EL′00、浜松)において、ドーパントとしてLIr(acac)、例えば、(ppy)Ir(acac)を、また、Moon−Jae Youn.0g、Tetsuo Tsutsui等は、やはり、The 10th International Workshop on Inorganic and Organic Electroluminescence(EL′00、浜松)において、ドーパントとして、トリス(2−(p−トリル)ピリジン)イリジウム(Ir(ptpy)),トリス(ベンゾ[h]キノリン)イリジウム(Ir(bzq))等を用いた検討を行っている(なおこれらの金属錯体は一般にオルトメタル化イリジウム錯体と呼ばれている。)。
【0013】
また、前記、S.Lamansky et al.,J.Am.Chem.Soc.,123巻,4304ページ(2001年)等においても、各種イリジウム錯体を用いて素子化する試みがされている。
【0014】
また、高い発光効率を得るために、The 10th International Workshop on Inorganic and Organic Electroluminescence(EL′00、浜松)では、Ikai等はホール輸送性の化合物を燐光性化合物のホストとして用いている。また、M.E.Tompson等は、各種電子輸送性材料を燐光性化合物のホストとして、これらに新規なイリジウム錯体をドープして用いている。
【0015】
中心金属をイリジウムの代わりに白金としたオルトメタル化錯体も注目されている。この種の錯体に関しては、配位子に特徴を持たせた例が多数知られている(例えば、特許文献1〜10及び非特許文献1〜3参照。)。
【0016】
何れの場合も発光素子とした場合の発光輝度や発光効率は、その発光する光が燐光に由来することから、従来の発光素子に比べ大幅に改良されるものであるが、発光素子の発光寿命については従来の発光素子よりも低いという問題点があった。このように、りん光性の高効率の発光材料は、発光素子の発光寿命の改善が難しく実用に耐えうる性能を十分に達成できていないのが現状である。
【0017】
正孔阻止層に特定の配位子を有するイリジウム錯体、また、電子ブロック層(以下、電子阻止層ともいう)に特定の配位子を有するイリジウム錯体やガリウム錯体やトリアリールアミン誘導体(正孔輸送材料としてのコバルト錯体と併用)を使用することによる高効率化、または、低駆動電圧化が達成できることが知られている(例えば、特許文献11、12、14、非特許文献4、5参照。)。
【0018】
しかしながら、これらの技術をりん光性素子に適用する場合、金属錯体の配位子や素子構成は最適化されていないため、駆動電圧の低下や発光素子の寿命改良が十分ではない。さらに素子性能を向上させるためには、適切な配位子の分子設計による金属錯体の分子構造の最適化、及び、発光層、正孔阻止層等の材料が求められていた。
【0019】
発光層に隣接する層に含まれる有機材料の最低励起三重項エネルギー準位が、発光層を構成する材料の最低励起三重項エネルギー準位よりも大きな発光素子が知られている(例えば、特許文献13参照。)。しかしながら、ここで開示された隣接する層に含まれる有機材料は特定のアゾール系有機化合物であり、これらの化合物では実用的な耐久性を付与できるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】特開2002−332291号公報
【特許文献2】特開2002−332292号公報
【特許文献3】特開2002−338588号公報
【特許文献4】特開2002−226495号公報
【特許文献5】特開2002−234894号公報
【特許文献6】国際公開第02/15645号パンフレット
【特許文献7】特開2003−123982号公報
【特許文献8】特開2002−117978号公報
【特許文献9】特開2003−146996号公報
【特許文献10】国際公開第04/016711号パンフレット
【特許文献11】国際公開第03/022007号パンフレット
【特許文献12】国際公開第03/022008号パンフレット
【特許文献13】特開2002−100476号公報
【特許文献14】米国特許出願公開第2004/48101号明細書
【非特許文献】
【0021】
【非特許文献1】Inorganic Chemistry,第41巻,第12号,3055〜3066ページ(2002年)
【非特許文献2】Aplied Physics Letters,第79巻,2082ページ(2001年)
【非特許文献3】Aplied Physics Letters,第83巻,3818ページ(2003年)
【非特許文献4】New Journal of Chemistry,第26巻,1171ページ(2002年)
【非特許文献5】Inorganic Chemistry,第43巻,第5号,1697ページ(2004年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明の目的は、低い駆動電圧を示し、かつ、発光寿命の長い有機エレクトロルミネッセンス素子、照明装置及び表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の上記課題は、以下(1)〜(8)の構成により達成される。なお、1〜19は参考とされる手段である。
【0024】
(1).陽極、陰極及びりん光性化合物を含有する発光層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記陽極と前記発光層との間にある少なくとも一つの層が、下記一般式(5)で表される金属錯体を含有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0025】
【化1】

【0026】
(式中、Z31は芳香族炭化水素環または芳香族複素環を形成するのに必要な原子群を表す。X31、X32、X33は炭素原子、−C(R50)−(ここで、R50は水素原子または置換基を表す。)、窒素原子または−N(R51)−(ここで、R51は水素原子または置換基を表す。)を表し、X31、X32、X33の少なくとも1つは、窒素原子または−N(R51)−を表す。C31は炭素原子を表す。M31は元素周期表における8〜10族の金属を表す。C31とNとの間の結合、NとX33との間の結合、X32とX33との間の結合、X31とX32との間の結合、C31とX31との間の結合は、各々単結合または二重結合を表す。nは1〜3の整数を表す。)
(2).前記一般式(5)において、M31がイリジウム、白金、ロジウムまたはパラジウムであることを特徴とする前記(1)に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0027】
(3).前記発光層が、カルボリン誘導体または該カルボリン誘導体のカルボリン環を構成する炭化水素環の炭素原子の少なくとも一つが窒素原子で置換されている環構造を有する誘導体を含有することを特徴とする前記(1)または(2)に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0028】
(4).構成層として正孔阻止層を有し、該正孔阻止層が、カルボリン誘導体または該カルボリン誘導体のカルボリン環を構成する炭化水素環の炭素原子の少なくとも一つが窒素原子で置換されている環構造を有する誘導体を含有することを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0029】
(5).前記一般式(5)で表される金属錯体の最低励起三重項エネルギー準位が、前記発光層を構成する材料の最低励起三重項エネルギー準位よりも大きいことを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0030】
(6).発光が白色であることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0031】
(7).前記(1)〜(5)のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を具備することを特徴とする表示装置。
【0032】
(8).前記(1)〜(5)のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を具備することを特徴とする照明装置。
【0033】
1.陽極、陰極及びりん光性化合物を含有する発光層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記陽極と前記発光層との間にある少なくとも一つの層が、白金錯体を含有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0034】
2.陽極、陰極及びりん光性化合物を含有する発光層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記陽極と前記発光層との間にある少なくとも一つの層が、ロジウム錯体を含有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0035】
3.陽極、陰極及びりん光性化合物を含有する発光層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記陽極と前記発光層との間にある少なくとも一つの層が、下記一般式(1−1)または、該一般式(1−1)の互変異性体で表される部分構造を有する金属錯体を含有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0036】
【化2】

【0037】
(式中、R〜Rは各々水素原子または置換基を表す。M1はイリジウム、白金、ロジウムまたはパラジウムを表す。nは1〜3の整数を表す。)
4.陽極、陰極及びりん光性化合物を含有する発光層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記陽極と前記発光層との間にある少なくとも一つの層が、下記一般式(2−1)または、該一般式(2−1)の互変異性体で表される部分構造を有する金属錯体を含有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0038】
【化3】

【0039】
(式中、R25〜R31は各々水素原子または置換基を表す。Mは白金、ロジウムまたはパラジウムを表す。nは1〜3の整数を表す。)
5.陽極、陰極及びりん光性化合物を含有する発光層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記陽極と前記発光層との間にある少なくとも一つの層が、下記一般式(3)または、該一般式(3)の互変異性体で表される部分構造を有する金属錯体を含有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0040】
【化4】

【0041】
(式中、Z11は芳香族炭化水素環または芳香族複素環を形成するのに必要な原子群を表す。R11、R12、R13は各々水素原子または置換基を表す。M11は元素周期表における8〜10族の金属を表す。nは1〜3の整数を表す。)
6.陽極、陰極及びりん光性化合物を含有する発光層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記陽極と前記発光層との間にある少なくとも一つの層が、下記一般式(4)または、該一般式(4)の互変異性体で表される部分構造を有する金属錯体を含有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0042】
【化5】

【0043】
(式中、Z21は芳香族炭化水素環または芳香族複素環を形成するのに必要な原子群を表す。R21、R22、R23は各々水素原子または置換基を表す。M21は元素周期表における8〜10族の金属を表す。nは1〜3の整数を表す。)
7.陽極、陰極及びりん光性化合物を含有する発光層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記陽極と前記発光層との間にある少なくとも一つの層が、下記一般式(5)で表される部分構造を有する金属錯体を含有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0044】
【化6】

【0045】
(式中、Z31は芳香族炭化水素環または芳香族複素環を形成するのに必要な原子群を表す。X31、X32、X33は炭素原子、−C(R50)−(ここで、R50は水素原子または置換基を表す。)、窒素原子または−N(R51)−(ここで、R51は水素原子または置換基を表す。)を表し、X31、X32、X33の少なくとも1つは、窒素原子または−N(R51)−を表す。C31は炭素原子を表す。M31は元素周期表における8〜10族の金属を表す。C31とNとの間の結合、NとX33との間の結合、X32とX33との間の結合、X31とX32との間の結合、C31とX31との間の結合は、各々単結合または二重結合を表す。nは1〜3の整数を表す。)
8.陽極、陰極及びりん光性化合物を含有する発光層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記陽極と前記発光層との間にある少なくとも一つの層が、下記一般式(6)または、該一般式(6)の互変異性体で表される部分構造を有する金属錯体を含有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0046】
【化7】

【0047】
(式中、Z41は芳香族複素環を形成するのに必要な原子群を表す。X41、X42は炭素原子、−C(R52)−(ここで、R52は水素原子または置換基を表す。)、窒素原子または−N(R53)−を表し、少なくとも1つは窒素原子または−N(R53)−(ここで、R53は水素原子または置換基を表す。)を表す。M41は元素周期表における8〜10族の金属を表す。C41、C42、C43は各々炭素原子を表す。M41は元素周期表における8〜10族の金属を表す。C41とC42との間の結合、C41とX42との間の結合、X41とX42との間の結合、X41とC43との間の結合、C42とC43との間の結合は、単結合または二重結合を表す。nは1〜3の整数を表す。)
9.陽極、陰極及びりん光性化合物を含有する発光層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記陽極と前記発光層との間にある少なくとも一つの層が、下記一般式(7)または、該一般式(7)の互変異性体で表される部分構造を有する金属錯体を含有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0048】
【化8】

【0049】
(式中、Z51は芳香族炭化水素環または芳香族複素環を形成するのに必要な原子群を表す。X51は酸素原子または硫黄原子を表す。R51、R52は水素原子または置換基を表す。M51は元素周期表における8〜10族の金属を表す。nは1〜3の整数を表す。)
10.陽極、陰極及びりん光性化合物を含有する発光層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記陽極と前記発光層との間にある少なくとも一つの層が、下記一般式(8)または、該一般式(8)の互変異性体で表される部分構造を有する金属錯体を含有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0050】
【化9】

【0051】
(式中、Z61は芳香族炭化水素環または芳香族複素環を形成するのに必要な原子群を表す。X61、X62、X63は炭素原子、−C(R54)−(ここで、R54は水素原子または置換基を表す。)、窒素原子または−N(R55)−を表し、少なくとも1つは窒素原子または−N(R55)−(ここで、R55は水素原子または置換基を表す。)を表す。M61は元素周期表における8〜10族の金属を表す。nは1〜3の整数を表す。)
11.前記金属錯体の中心金属がイリジウム、白金、ロジウムまたはパラジウムであることを特徴とする前記5〜10のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0052】
12.前記発光層が、カルボリン誘導体または該カルボリン誘導体のカルボリン環を構成する炭化水素環の炭素原子の少なくとも一つが窒素原子で置換されている環構造を有する誘導体を含有することを特徴とする前記1〜11のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0053】
13.構成層として正孔阻止層を有し、該正孔阻止層が、カルボリン誘導体または該カルボリン誘導体のカルボリン環を構成する炭化水素環の炭素原子の少なくとも一つが窒素原子で置換されている環構造を有する誘導体を含有することを特徴とする前記1〜11のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0054】
14.陽極、陰極及びりん光性化合物を含有する発光層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記陽極と前記発光層との間にある少なくとも一つの層が、下記一般式(1−2)または該一般式(1−2)の互変異性体、または一般式(1−3)または該一般式(1−3)の互変異性体で表される部分構造を有する金属錯体を含有し、かつ、カルボリン誘導体または該カルボリン誘導体のカルボリン環を構成する炭化水素環の炭素原子の少なくとも一つが窒素原子で置換されている環構造を有する誘導体を含有する層を少なくとも一つ有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0055】
【化10】

【0056】
(式中、R〜R24は各々水素原子または置換基を表す。M、Mはイリジウムまたはコバルトを表す。Y−L−Yは2座の配位子を表し、Y、Yは各々独立に酸素原子、窒素原子、硫黄原子を表し、LはY、Yと共に2座の配位子を形成するのに必要な原子群を表す。nは1〜3の整数を表す。)
15.陽極、陰極及びりん光性化合物を含有する発光層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記陽極と前記発光層との間にある少なくとも一つの層が、下記一般式(2−2)または該一般式(2−2)の互変異性体、または一般式(2−3)または該一般式(2−3)の互変異性体で表される部分構造を有する金属錯体を含有し、かつ、カルボリン誘導体または該カルボリン誘導体のカルボリン環を構成する炭化水素環の炭素原子の少なくとも一つが窒素原子で置換されている環構造を有する誘導体を含有する層を少なくとも一つ有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0057】
【化11】

【0058】
(式中、R32〜R45は各々水素原子または置換基を表す。M、Mはイリジウムまたはコバルトを表す。Y−L−Yは2座の配位子を表し、Y、Yは各々独立に酸素原子、窒素原子、硫黄原子を表し、LはY、Yと共に2座の配位子を形成するのに必要な原子群を表す。nは1〜3の整数を表す。)
16.陽極、陰極及びりん光性化合物を含有する発光層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記陽極と前記発光層との間にある少なくとも一つの層が金属錯体を含有し、かつ、該金属錯体の最低励起三重項エネルギー準位が、前記発光層を構成する材料の最低励起三重項エネルギー準位よりも大きいことを特徴とする前記1〜13のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0059】
17.前記1〜16のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を具備することを特徴とする表示装置。
【0060】
18.発光が白色であることを特徴とする前記1〜16のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0061】
19.前記1〜16のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を具備することを特徴とする照明装置。
【発明の効果】
【0062】
本発明により、低い駆動電圧を示し、かつ、発光寿命の長い有機エレクトロルミネッセンス素子、照明装置及び表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】有機EL素子から構成される表示装置の一例を示した模式図である。
【図2】表示部Aの模式図である。
【図3】画素を構成する駆動回路の等価回路図である。
【図4】パッシブマトリクス方式による表示装置の模式図である。
【図5】有機EL素子OLED1−1の封止構造の概略模式図である。
【図6】有機EL素子を具備してなる照明装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0064】
本発明の有機EL素子材料においては、前記(1)〜(5)のいずれか1項に規定される構成により、有機EL素子用に有用な有機EL素子材料を分子設計することに成功した。また、該有機EL素子材料を用いることにより、低い駆動電圧を示し、かつ、発光寿命の長い有機EL素子、照明装置及び表示装置を提供することができた。
【0065】
本発明者等は、上記の問題点について鋭意検討を行った結果、金属錯体の配位子として一般的に使用されているフェニルピリジン(6員環と6員環が炭素−炭素結合で結ばれているもの)の母核に対しては前記一般式(1−1)、(1−3)、(2−1)、(2−3)で各々表される配位子と中心金属の適切な選択により、また、前記一般式(3)〜(8)で各々表されるような「芳香族炭化水素環、または、芳香族複素環(好ましくは6員環)」と「芳香族複素環(好ましくは5員環)」、が炭素−炭素結合、または、炭素−窒素結合で結ばれたような、特定の部分構造を有する金属錯体を有機EL素子材料として含む有機EL素子により、駆動電圧の低下、及び発光寿命が大幅に改善されることを見出した。これらの材料を含有する層が、陽極とりん光性化合物を含有する発光層との間に、その固有の電位(HOMO.LUMO)の値を有して存在することにより、電子ブロック効果が高まり本発明の効果を発揮できるものと推定される。
【0066】
以下、本発明に係る各構成要素の詳細について、順次説明する。
【0067】
《金属錯体》
本発明の有機EL素子材料に係る金属錯体について説明する。
【0068】
本発明に係る、または参考とされる白金錯体、ロジウム錯体、一般式(1−1)〜(1−3)、(2−1)〜(2−3)、(3)〜(8)またはその互変異性体を部分構造として有する金属錯体の含有層としては、陽極と発光層との間にある少なくとも一つの層であることが好ましく、特に、電子ブロック層として用いることにより、本発明の有機EL素子の駆動電圧の低下や発光寿命の長寿命化を達成することができる。
【0069】
《一般式(1−1)〜(1−3)またはその互変異性体で表される部分構造を有する金属錯体》
一般式(1−1)〜(1−3)またはその互変異性体で表される部分構造を有する金属錯体において、R〜R24で各々表される置換基としては、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、ヒドロキシエチル基、メトキシメチル基、トリフルオロメチル基、t−ブチル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アラルキル基(例えば、ベンジル基、2−フェネチル基等)、芳香族炭化水素基(例えば、フェニル基、p−クロロフェニル基、メシチル基、トリル基、キシリル基、ビフェニリル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基等)、芳香族複素環基(例えば、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、トリアジニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、キナゾリニル基、カルバゾリル基、カルボリニル基、ジアザカルバゾリル基(ジアザカルバゾリル基とは、該カルボリニル基のカルボリン環を構成する炭素原子の任意に一つが窒素原子で置換されたものを示す。)、フタラジニル基等)、アルコキシル基(例えば、エトキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等)、シアノ基、水酸基、アルケニル基(例えば、ビニル基等)、スチリル基、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、沃素原子、フッ素原子等)等が挙げられる。これらの基は、さらに置換されていてもよい。
【0070】
一般式(1−1)から(1−3)またはその互変異性体で表される部分構造を有する金属錯体において、Mはイリジウム、白金、ロジウム、または、パラジウムである。
【0071】
nは1〜3の整数を表す。
【0072】
《一般式(2−1)〜(2−3)またはその互変異性体で表される部分構造を有する金属錯体》
一般式(2−1)〜(2−3)またはその互変異性体で表される部分構造を有する金属錯体において、R25〜R45で各々表される置換基としては、一般式(1−1)〜(1−3)またはその互変異性体で表される部分構造を有する金属錯体においてR〜R24で各々表される置換基と同義である。
【0073】
一般式(1−2)、(2−2)またはその互変異性体において、Y−L−Y、Y−L−Yは2座の配位子を表し、Y、Y、Y、Yは、各々独立に酸素原子、硫黄原子、または窒素原子を表し、LはY、Yと共に2座の配位子の形成するのに必要な原子群、LはY、Yと共に2座の配位子の形成するのに必要な原子群を表す。
【0074】
−L−Y、Y−L−Yで表される2座の配位子の具体例としては、特に制限はないが、酢酸、アセチルアセトン、チオカルバミン酸誘導体、2−アシルフェノール、ピコリン酸、ピラザボール等の誘導体であることが好ましい。
【0075】
一般式(2−1)から(2−3)またはその互変異性体で表される部分構造を有する金属錯体において、Mは白金、ロジウムまたはパラジウムである。
【0076】
nは1〜3の整数を表す。
【0077】
《一般式(3)またはその互変異性体で表される部分構造を有する金属錯体》
一般式(3)またはその互変異性体で表される部分構造を有する金属錯体において、Z11で表される芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環、ビフェニル環、ナフタレン環、アズレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピレン環、クリセン環、ナフタセン環、トリフェニレン環、o−テルフェニル環、m−テルフェニル環、p−テルフェニル環、アセナフテン環、コロネン環、フルオレン環、フルオラントレン環、ナフタセン環、ペンタセン環、ペリレン環、ペンタフェン環、ピセン環、ピレン環、ピラントレン環、アンスラアントレン環等が挙げられる。
【0078】
中でも好ましく用いられるのは、ベンゼン環である。さらに、前記芳香族炭化水素環は、前記一般式(3)またはその互変異性体においてR11、R12、R13で各々表される置換基を有してもよい。
【0079】
一般式(3)またはその互変異性体で表される部分構造を有する金属錯体において、Z11で表される芳香族複素環としては、フラン環、チオフェン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、ベンゾイミダゾール環、オキサジアゾール環、トリアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、チアゾール環、インドール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、キノキサリン環、キナゾリン環、フタラジン環、カルバゾール環、カルボリン環、カルボリン環を構成する炭化水素環の炭素原子の少なくとも一つがさらに窒素原子で置換されている環等が挙げられる。
【0080】
中でも好ましいのは、ピリジン環である。さらに、前記芳香族複素環は、前記一般式(3)においてR11、R12、R13で各々表される置換基を有してもよい。
【0081】
一般式(3)またはその互変異性体で表される部分構造を有する金属錯体においてR11、R12、R13で各々表される置換基としては、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、ヒドロキシエチル基、メトキシメチル基、トリフルオロメチル基、t−ブチル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アラルキル基(例えば、ベンジル基、2−フェネチル基等)、芳香族炭化水素基(例えば、フェニル基、p−クロロフェニル基、メシチル基、トリル基、キシリル基、ビフェニリル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基等)、芳香族複素環基(例えば、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、トリアジニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、キナゾリニル基、カルバゾリル基、カルボリニル基、ジアザカルバゾリル基(ジアザカルバゾリル基とは、該カルボリニル基のカルボリン環を構成する炭素原子の任意に一つが窒素原子で置換されたものを示す。)、フタラジニル基等)、アルコキシル基(例えば、エトキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等)、シアノ基、水酸基、アルケニル基(例えば、ビニル基等)、スチリル基、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、沃素原子、フッ素原子等)等が挙げられる。これらの基は、さらに置換されていてもよい。
【0082】
中でも、本発明では、上記R11、R12、R13で表される基の少なくとも一つは、上記のアルキル基、芳香族炭化水素基または芳香族複素環基であることが好ましい。
【0083】
一般式(3)またはその互変異性体で表される部分構造を有する金属錯体において、M11は、元素周期表における8〜10族の金属(金属原子でも、イオンでもよい)を表すが、中でも好ましく用いられるのは、白金、ロジウム、パラジウムである。また、一般式(3)またはその互変異性体で表される部分構造を有する金属錯体において、M11は、金属でもよく、イオンでもよい。
【0084】
本発明では、上記一般式(3)またはその互変異性体とM11で表される中心金属(金属でもイオンでもよい)との間で配位結合が形成(錯形成ともいう)されて金属錯体が形成される。
【0085】
nは1〜3の整数を表す。
【0086】
《一般式(4)またはその互変異性体で表される部分構造を有する金属錯体》
一般式(4)またはその互変異性体で表される部分構造を有する金属錯体において、Z21で表される芳香族炭化水素環は、一般式(3)またはその互変異性体で表される部分構造を有する金属錯体において、Z11で表される芳香族炭化水素環と同義である。
【0087】
一般式(4)またはその互変異性体で表される部分構造を有する金属錯体において、Z21で表される芳香族複素環は、一般式(3)またはその互変異性体で表される部分構造を有する金属錯体において、Z11で表される芳香族複素環と同義である。
【0088】
一般式(4)またはその互変異性体で表される部分構造を有する金属錯体において、R21、R22、R23で各々表される置換基は、一般式(3)またはその互変異性体で表される部分構造を有する金属錯体においてR11、R12、R13で各々表される置換基と同義である。
【0089】
一般式(4)またはその互変異性体で表される部分構造を有する金属錯体において、M21で表される、元素周期表における8〜10族の金属(イオンでもよい)は、一般式(3)またはその互変異性体で表される部分構造を有する金属錯体において、M11で表される、元素周期表における8〜10族の金属と同義である。
【0090】
nは1〜3の整数を表す。
【0091】
《一般式(5)またはその互変異性体で表される部分構造を有する金属錯体》
一般式(5)またはその互変異性体で表される部分構造を有する金属錯体において、Z31で表される芳香族炭化水素環は、一般式(3)またはその互変異性体で表される部分構造を有する金属錯体において、Z11で表される芳香族炭化水素環と同義である。
【0092】
一般式(5)またはその互変異性体で表される部分構造を有する金属錯体において、Z31で表される芳香族複素環は、一般式(3)またはその互変異性体で表される部分構造を有する金属錯体において、Z11で表される芳香族複素環と同義である。
【0093】
一般式(5)またはその互変異性体で表される部分構造を有する金属錯体において、X31、X32、X33で各々表される−C(R50)−、−N(R51)−のR50、R51で表される置換基は、一般式(3)またはその互変異性体で表される部分構造を有する金属錯体においてR11、R12、R13で各々表される置換基と同義である。
【0094】
一般式(5)またはその互変異性体で表される部分構造を有する金属錯体において、M31で表される、元素周期表における8〜10族の金属(イオンでもよい)は、一般式(3)またはその互変異性体で表される部分構造を有する金属錯体において、M11で表される、元素周期表における8〜10族の金属と同義である。
【0095】
nは1〜3の整数を表す。
【0096】
《一般式(6)またはその互変異性体で表される部分構造を有する金属錯体》
一般式(6)またはその互変異性体で表される部分構造を有する金属錯体において、Z41で表される芳香族複素環は、一般式(3)またはその互変異性体で表される部分構造を有する金属錯体において、Z11で表される芳香族複素環と同義である。
【0097】
一般式(6)またはその互変異性体で表される部分構造を有する金属錯体において、X41,X42で各々表される−C(R52)−、−N(R53)−のR52、R53で表される置換基は、一般式(3)で表される部分構造を有する金属錯体においてR11、R12、R13で各々表される置換基と同義である。
【0098】
一般式(6)またはその互変異性体で表される部分構造を有する金属錯体において、M41で表される、元素周期表における8〜10族の金属(イオンでもよい)は、一般式(3)またはその互変異性体で表される部分構造を有する金属錯体において、M11で表される、元素周期表における8〜10族の金属と同義である。
【0099】
nは1〜3の整数を表す。
【0100】
《一般式(7)またはその互変異性体で表される部分構造を有する金属錯体》
一般式(7)またはその互変異性体で表される部分構造を有する金属錯体において、Z51で表される芳香族炭化水素環は、一般式(3)またはその互変異性体で表される部分構造を有する金属錯体において、Z11で表される芳香族炭化水素環と同義である。
【0101】
一般式(7)またはその互変異性体で表される部分構造を有する金属錯体において、Z51で表される芳香族複素環は、一般式(3)またはその互変異性体で表される部分構造を有する金属錯体において、Z11で表される芳香族複素環と同義である。
【0102】
一般式(7)で表される部分構造を有する金属錯体において、R51、R52で各々表される置換基は、一般式(3)で表される部分構造を有する金属錯体においてR11、R12、R13で各々表される置換基と同義である。
【0103】
一般式(7)またはその互変異性体で表される部分構造を有する金属錯体において、M51で表される、元素周期表における8〜10族の金属(イオンでもよい)は、一般式(3)またはその互変異性体で表される部分構造を有する金属錯体において、M11で表される、元素周期表における8〜10族の金属と同義である。
【0104】
nは1〜3の整数を表す。
【0105】
《一般式(8)またはその互変異性体で表される部分構造を有する金属錯体》
一般式(8)またはその互変異性体で表される部分構造を有する金属錯体において、Z61で表される芳香族炭化水素環は、一般式(3)またはその互変異性体で表される部分構造を有する金属錯体において、Z11で表される芳香族炭化水素環と同義である。
【0106】
一般式(8)またはその互変異性体で表される部分構造を有する金属錯体において、Z61で表される芳香族複素環は、一般式(3)またはその互変異性体で表される部分構造を有する金属錯体において、Z11で表される芳香族複素環と同義である。
【0107】
一般式(8)またはその互変異性体で表される部分構造を有する金属錯体において、M61で表される、元素周期表における8〜10族の金属(イオンでもよい)は、一般式(3)またはその互変異性体で表される部分構造を有する金属錯体において、M11で表される、元素周期表における8〜10族の金属と同義である。
【0108】
nは1〜3の整数を表す。
【0109】
本発明、または参考とされる一般式(1−1)〜(1−3)、(2−1)〜(2−3)、(3)〜(8)またはその互変異性体において、置換基は電子供与性基(本発明では、ハメットのσp値が0未満の基を表す)であることが好ましい。
【0110】
《ハメットのσp値》
本発明に係るハメットのσp値とは、ハメットの置換基定数σpを指す。ハメットのσpの値は、Hammett等によって安息香酸エチルの加水分解に及ぼす置換基の電子的効果から求められた置換基定数であり、『薬物の構造活性相関』(南江堂:1979年)、『Substituent Constants for Correlation Analysis in chemistry and biology』(C.Hansch and A.Leo,John Wiley&Sons,New York,1979年)等に記載の基を引用することができる。
【0111】
本発明では、置換基の電子供与性基の少なくとも一つのσpが、−0.10以下のものが用いられることが好ましい。
【0112】
《σpが−0.10以下の電子供与性基》
ここで、σpが−0.10以下の電子供与性基としては、例えば、メチル基(−0.17)、エチル基(−0.15)、イソプロピル基(−0.15)、n−ブチル基(−0.16)、シクロプロビル基(−0.21)、シクロヘキシル基(−0.22)、tert−ブチル基(−0.20)、−CHSi(CH(−0.21)、アミノ基(−0.66)、ヒドロキシルアミノ基(−0.34)、−NHNH(−0.55)、−NHCONH(−0.24)、−NHCH(−0.84)、−NHC(−0.61)、−NHCONHC(−0.26)、−NHC(−0.51)、−NHC(−0.40)、−N=CHC(−0.55)、−OH(−0.37)、−OCH(−0.27)、−OCHCOOH(−0.33)、−OC(−0.24)、−OC(−0.25)、−OCH(CH(−0.45)、−OC11(−0.34)、−OCH(−0.42)等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
【0113】
以下、本発明に係る、または参考とされる前記一般式(1−1)〜(1−3)、(2−1)〜(2−3)、(3)〜(8)またはその互変異性体で表される部分構造として有する金属錯体の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0114】
【化12】

【0115】
【化13】

【0116】
【化14】

【0117】
【化15】

【0118】
【化16】

【0119】
【化17】

【0120】
【化18】

【0121】
【化19】

【0122】
【化20】

【0123】
【化21】

【0124】
【化22】

【0125】
【化23】

【0126】
本発明の、または参考とされる有機EL素子材料に係る金属錯体は、例えばOrganic Letter誌、vol3、No.16、p2579〜2581(2001)、Inorganic Chemistry,第30巻、第8号、1685〜1687ページ(1991年)、J.Am.Chem.Soc.,123巻、4304ページ(2001年)、Inorganic Chemistry,第40巻、第7号、1704〜1711ページ(2001年)、Inorganic Chemistry,第41巻、第12号、3055〜3066ページ(2002年)、New Journal of Chemistry.,第26巻、1171ページ(2002年)、さらに、これらの文献中に記載の参考文献等の方法を適用することにより合成できる。
【0127】
《金属錯体を含む有機EL素子材料の有機EL素子への適用》
本発明の有機EL素子材料を用いて、有機EL素子を作製する場合、有機EL素子の構成層(詳細は後述する)の中で、陽極と発光層との間にある少なくとも一つの層であることが好ましく、特に、電子ブロック層として好ましく用いられる。
【0128】
(発光ホストと発光ドーパント)
発光層中の主成分であるホスト化合物である発光ホストに対する発光ドーパントとの混合比は好ましくは質量で0.1〜30質量%未満の範囲に調整することである。
【0129】
ただし、発光ドーパントは複数種の化合物を混合して用いてもよく、混合する相手は構造を異にする、その他の金属錯体やその他の構造を有するリン光性ドーパントや蛍光性ドーパントでもよい。
【0130】
ここで、発光ドーパントとして用いられる金属錯体と併用してもよいドーパント(リン光性ドーパント、蛍光性ドーパント等)について述べる。
【0131】
発光ドーパントは、大きく分けて、蛍光を発光する蛍光性ドーパントとリン光を発光するリン光性ドーパントの2種類がある。
【0132】
前者(蛍光性ドーパント)の代表例としては、クマリン系色素、ピラン系色素、シアニン系色素、クロコニウム系色素、スクアリウム系色素、オキソベンツアントラセン系色素、フルオレセイン系色素、ローダミン系色素、ピリリウム系色素、ペリレン系色素、スチルベン系色素、ポリチオフェン系色素、または希土類錯体系蛍光体等が挙げられる。
【0133】
後者(リン光性ドーパント)の代表例としては、好ましくは元素の周期表で8属、9属、10属の金属を含有する錯体系化合物であり、さらに好ましくは、イリジウム化合物、白金化合物、オスミウム化合物、パラジウム化合物、ロジウム化合物であり、中でも最も好ましいのはイリジウム化合物、白金化合物である。
【0134】
具体的には以下の特許公報に記載されている化合物である。
【0135】
国際公開第00/70655号パンフレット、特開2002−280178号公報、同2001−181616号公報、同2002−280179号公報、同2001−181617号公報、同2002−280180号公報、同2001−247859号公報、同2002−299060号公報、同2001−313178号公報、同2002−302671号公報、同2001−345183号公報、同2002−324679号公報、国際公開第02/15645号パンフレット、特開2002−332291号公報、同2002−50484号公報、同2002−332292号公報、同2002−83684号公報、特表2002−540572号公報、特開2002−117978号公報、同2002−338588号公報、同2002−170684号公報、同2002−352960号公報、国際公開第01/93642号パンフレット、特開2002−50483号公報、同2002−100476号公報、同2002−173674号公報、同2002−359082号公報、同2002−175884号公報、同2002−363552号公報、同2002−184582号公報、同2003−7469号公報、特表2002−525808号公報、特開2003−7471号公報、特表2002−525833号公報、特開2003−31366号公報、同2002−226495号公報、同2002−234894号公報、同2002−235076号公報、同2002−241751号公報、同2001−319779号公報、同2001−319780号公報、同2002−62824号公報、同2002−100474号公報、同2002−203679号公報、同2002−343572号公報、同2002−203678号公報等。
【0136】
その具体例の一部を下記に示す。
【0137】
【化24】

【0138】
【化25】

【0139】
【化26】

【0140】
(発光ホスト)
発光ホスト(単にホストともいう)とは、2種以上の化合物で構成される発光層中にて混合比(質量)の最も多い化合物のことを意味し、それ以外の化合物については「ドーパント化合物(単に、ドーパントともいう)」という。例えば、発光層を化合物A、化合物Bという2種で構成し、その混合比がA:B=10:90であれば化合物Aがドーパント化合物であり、化合物Bがホスト化合物である。さらに、発光層を化合物A、化合物B、化合物Cの3種から構成し、その混合比がA:B:C=5:10:85であれば、化合物A、化合物Bがドーパント化合物であり、化合物Cがホスト化合物である。
【0141】
本発明に用いられる発光ホストとしては、構造的には特に制限はないが、代表的にはカルバゾール誘導体、トリアリールアミン誘導体、芳香族ボラン誘導体、含窒素複素環化合物、チオフェン誘導体、フラン誘導体、オリゴアリーレン化合物等の基本骨格を有するもの、または、カルボリン誘導体やジアザカルバゾール誘導体(ここで、ジアザカルバゾール誘導体とは、カルボリン誘導体のカルボリン環を構成する炭化水素環の少なくとも一つの炭素原子が窒素原子で置換されているものを表す。)等が挙げられる。
【0142】
中でもカルボリン誘導体、ジアザカルバゾール誘導体等が好ましく用いられる。
【0143】
以下に、カルボリン誘導体、ジアザカルバゾール誘導体等の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
【0144】
【化27】

【0145】
また、本発明に用いられる発光ホストは低分子化合物でも、繰り返し単位をもつ高分子化合物でもよく、ビニル基やエポキシ基のような重合性基を有する低分子化合物(蒸着重合性発光ホスト)でもいい。
【0146】
発光ホストとしては、正孔輸送能、電子輸送能を有しつつ、かつ、発光の長波長化を防ぎ、高Tg(ガラス転移温度)である化合物が好ましい。
【0147】
発光ホストの具体例としては、以下の文献に記載されている化合物が好適である。例えば、特開2001−257076号公報、同2002−308855号公報、同2001−313179号公報、同2002−319491号公報、同2001−357977号公報、同2002−334786号公報、同2002−8860号公報、同2002−334787号公報、同2002−15871号公報、同2002−334788号公報、同2002−43056号公報、同2002−334789号公報、同2002−75645号公報、同2002−338579号公報、同2002−105445号公報、同2002−343568号公報、同2002−141173号公報、同2002−352957号公報、同2002−203683号公報、同2002−363227号公報、同2002−231453号公報、同2003−3165号公報、同2002−234888号公報、同2003−27048号公報、同2002−255934号公報、同2002−260861号公報、同2002−280183号公報、同2002−299060号公報、同2002−302516号公報、同2002−305083号公報、同2002−305084号公報、同2002−308837号公報等。
【0148】
次に、代表的な有機EL素子の構成について述べる。
【0149】
《有機EL素子の構成層》
本発明の有機EL素子の構成層について説明する。
【0150】
本発明の有機EL素子の層構成の好ましい具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されない。
(i)陽極/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極
(ii)陽極/電子阻止層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極
(iii)陽極/正孔輸送層/電子阻止層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極
(iv)陽極/正孔輸送層/電子阻止層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極
(v)陽極/正孔輸送層/電子阻止層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極バッファー層/陰極
(vi)陽極/陽極バッファー層/正孔輸送層/電子阻止層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極バッファー層/陰極
(vii)陽極/陽極バッファー層/正孔輸送層/電子阻止層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極バッファー層/陰極
《阻止層(電子阻止層、正孔阻止層)》
本発明に係る阻止層(例えば、電子阻止層、正孔阻止層)について説明する。
【0151】
本発明においては、正孔輸送層、電子阻止層等に、本発明の有機EL素子材料を用いることが好ましく、特に好ましくは電子阻止層に用いることである。
【0152】
本発明の有機EL素子材料を正孔輸送層、電子阻止層に含有させる場合、本発明に係る金属錯体を正孔輸送層や電子阻止層等の層構成成分として100質量%の状態で含有させてもよいし、他の有機化合物(例えば、本発明の有機EL素子の構成層に用いられる化合物等)等と混合してもよい。
【0153】
本発明に係る阻止層の膜厚としては好ましくは3〜100nmであり、さらに好ましくは5〜30nmである。
【0154】
《正孔阻止層》
正孔阻止層とは広い意味では電子輸送層の機能を有し、電子を輸送する機能を有しつつ正孔を輸送する能力が著しく小さい材料からなり、電子を輸送しつつ正孔を阻止することで電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。
【0155】
正孔阻止層としては、例えば特開平11−204258号公報、同11−204359号公報、及び「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日 エヌ・ティー・エス社発行)」の237頁等に記載の正孔阻止(ホールブロック)層等を本発明に係る正孔阻止層として適用可能である。また、後述する電子輸送層の構成を必要に応じて、本発明に係る正孔阻止層として用いることができる。
【0156】
《電子阻止層》
一方、電子阻止層とは広い意味では正孔輸送層の機能を有し、正孔を輸送する機能を有しつつ電子を輸送する能力が著しく小さい材料からなり、正孔を輸送しつつ電子を阻止することで電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。また、後述する正孔輸送層の構成を必要に応じて電子阻止層として用いることができる。
【0157】
また、本発明においては、発光層に隣接する隣接層、即ち、正孔阻止層、電子阻止層に、上記の本発明の有機EL素子材料を用いることが好ましく、特に正孔阻止層に用いることが好ましい。
【0158】
《正孔輸送層》
正孔輸送層とは正孔を輸送する機能を有する材料を含み、広い意味で正孔注入層、電子阻止層も正孔輸送層に含まれる。正孔輸送層は単層もしくは複数層設けることができる。
【0159】
正孔輸送材料としては、特に制限はなく、従来、光導伝材料において、正孔の電荷注入輸送材料として慣用されているものや有機EL素子の正孔注入層、正孔輸送層に使用される公知のものの中から任意のものを選択して用いることができる。
【0160】
正孔輸送材料は、正孔の注入もしくは輸送、電子の障壁性のいずれかを有するものであり、有機物、無機物のいずれであってもよい。例えばトリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、また、導電性高分子オリゴマー、特にチオフェンオリゴマー等が挙げられる。
【0161】
正孔輸送材料としては、上記のものを使用することができるが、ポルフィリン化合物、芳香族第三級アミン化合物及びスチリルアミン化合物、特に芳香族第三級アミン化合物を用いることが好ましい。
【0162】
芳香族第三級アミン化合物及びスチリルアミン化合物の代表例としては、N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノフェニル;N,N′−ジフェニル−N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−(1,1′−ビフェニル)−4,4′−ジアミン(TPD);2,2−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)プロパン;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン;N,N,N′,N′−テトラ−p−トリル−4,4′−ジアミノビフェニル;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン;ビス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)フェニルメタン;ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)フェニルメタン;N,N′−ジフェニル−N,N′−ジ(4−メトキシフェニル)−4,4′−ジアミノビフェニル;N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル;4,4′−ビス(ジフェニルアミノ)クオードリフェニル;N,N,N−トリ(p−トリル)アミン;4−(ジ−p−トリルアミノ)−4′−(4−(ジ−p−トリルアミノ)スチリル)スチルベン;4−N,N−ジフェニルアミノ−(2−ジフェニルビニル)ベンゼン;3−メトキシ−4′−N,N−ジフェニルアミノスチルベンゼン;N−フェニルカルバゾール、さらには、米国特許第5,061,569号明細書に記載されている2個の縮合芳香族環を分子内に有するもの、例えば4,4′−ビス(N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ)ビフェニル(NPD)、特開平4−308688号公報に記載されているトリフェニルアミンユニットが3つスターバースト型に連結された4,4′,4′′−トリス(N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン(MTDATA)等が挙げられる。
【0163】
さらにこれらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
【0164】
また、p型−Si、p型−SiC等の無機化合物も正孔注入材料、正孔輸送材料として使用することができる。また、正孔輸送材料は、高Tgであることが好ましい。
【0165】
この正孔輸送層は、上記正孔輸送材料を、例えば真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法、LB法等の公知の方法により、薄膜化することにより形成することができる。正孔輸送層の膜厚については特に制限はないが、通常は5nm〜5000nm程度である。この正孔輸送層は、上記材料の一種または二種以上からなる一層構造であってもよい。
【0166】
《電子輸送層》
電子輸送層とは電子を輸送する機能を有する材料からなり、広い意味で電子注入層、正孔阻止層も電子輸送層に含まれる。電子輸送層は、単層もしくは複数層を設けることができる。
【0167】
従来、単層の電子輸送層、及び複数層とする場合は発光層に対して陰極側に隣接する電子輸送層に用いられる電子輸送材料(正孔阻止材料を兼ねる)としては、下記の材料が知られている。
【0168】
さらに、電子輸送層は、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有していればよく、その材料としては従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができる。
【0169】
この電子輸送層に用いられる材料(以下、電子輸送材料という)の例としては、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタン及びアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体等が挙げられる。さらに、上記オキサジアゾール誘導体において、オキサジアゾール環の酸素原子を硫黄原子に置換したチアジアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有するキノキサリン誘導体も、電子輸送材料として用いることができる。
【0170】
さらにこれらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
【0171】
また、8−キノリノール誘導体の金属錯体、例えばトリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alq)、トリス(5,7−ジクロロ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5,7−ジブロモ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(2−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、ビス(8−キノリノール)亜鉛(Znq)等、及びこれらの金属錯体の中心金属がIn、Mg、Cu、Ca、Sn、GaまたはPbに置き替わった金属錯体も、電子輸送材料として用いることができる。その他、メタルフリー若しくはメタルフタロシアニン、またはそれらの末端がアルキル基やスルホン酸基等で置換されているものも、電子輸送材料として好ましく用いることができる。また、発光層の材料として例示したジスチリルピラジン誘導体も、電子輸送材料として用いることができるし、正孔注入層、正孔輸送層と同様に、n型−Si、n型−SiC等の無機半導体も電子輸送材料として用いることができる。
【0172】
この電子輸送層は、上記電子輸送材料を、例えば真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法、LB法等の公知の方法により、薄膜化することにより形成することができる。電子輸送層の膜厚については特に制限はないが、通常は5〜5000nm程度である。この電子輸送層は、上記材料の一種または二種以上からなる一層構造であってもよい。
【0173】
次に、本発明の有機EL素子の構成層として用いられる、注入層について説明する。
【0174】
《注入層》:電子注入層、正孔注入層
注入層は必要に応じて設け、電子注入層と正孔注入層があり、上記のごとく陽極と発光層または正孔輸送層の間、及び、陰極と発光層または電子輸送層との間に存在させてもよい。
【0175】
注入層とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために電極と有機層間に設けられる層のことで、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日 エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(123〜166頁)に詳細に記載されており、正孔注入層(陽極バッファー層)と電子注入層(陰極バッファー層)とがある。
【0176】
陽極バッファー層(正孔注入層)は、特開平9−45479号公報、同9−260062号公報、同8−288069号公報等にもその詳細が記載されており、具体例として、銅フタロシアニンに代表されるフタロシアニンバッファー層、酸化バナジウムに代表される酸化物バッファー層、アモルファスカーボンバッファー層、ポリアニリン(エメラルディン)やポリチオフェン等の導電性高分子を用いた高分子バッファー層等が挙げられる。
【0177】
陰極バッファー層(電子注入層)は、特開平6−325871号公報、同9−17574号公報、同10−74586号公報等にもその詳細が記載されており、具体的には、ストロンチウムやアルミニウム等に代表される金属バッファー層、フッ化リチウムに代表されるアルカリ金属化合物バッファー層、フッ化マグネシウムに代表されるアルカリ土類金属化合物バッファー層、酸化アルミニウムに代表される酸化物バッファー層等が挙げられる。
【0178】
上記バッファー層(注入層)はごく薄い膜であることが望ましく、素材にもよるが、その膜厚は0.1〜100nmの範囲が好ましい。
【0179】
この注入層は、上記材料を、例えば真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法、LB法等の公知の方法により、薄膜化することにより形成することができる。注入層の膜厚については特に制限はないが、通常は5〜5000nm程度である。この注入層は、上記材料の一種または二種以上からなる一層構造であってもよい。
【0180】
《陽極》
本発明の有機EL素子に係る陽極としては、仕事関数の大きい(4eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが好ましく用いられる。このような電極物質の具体例としてはAu等の金属、CuI、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO、ZnO等の導電性透明材料が挙げられる。また、IDIXO(In−ZnO)等非晶質で透明導電膜を作製可能な材料を用いてもよい。陽極は、これらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により、薄膜を形成させ、フォトリソグラフィー法で所望の形状のパターンを形成してもよく、あるいはパターン精度をあまり必要としない場合は(100μm以上程度)、上記電極物質の蒸着やスパッタリング時に所望の形状のマスクを介してパターンを形成してもよい。この陽極より発光を取り出す場合には、透過率を10%より大きくすることが望ましく、また、陽極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましい。さらに膜厚は材料にもよるが、通常10〜1000nm、好ましくは10〜200nmの範囲で選ばれる。
【0181】
《陰極》
一方、本発明に係る陰極としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属(電子注入性金属と称する)、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。これらの中で、電子注入性及び酸化等に対する耐久性の点から、電子注入性金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えばマグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が好適である。陰極は、これらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により、薄膜を形成させることにより、作製することができる。また、陰極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましく、膜厚は通常10〜1000nm、好ましくは50〜200nmの範囲で選ばれる。なお、発光を透過させるため、有機EL素子の陽極または陰極のいずれか一方が、透明または半透明であれば発光輝度が向上し好都合である。
【0182】
《基体(基板、基材、支持体等ともいう)》
本発明の有機EL素子に係る基体としては、ガラス、プラスチック等の種類には特に限定はなく、また、透明のものであれば特に制限はないが、好ましく用いられる基板としては例えばガラス、石英、光透過性樹脂フィルムを挙げることができる。特に好ましい基体は、有機EL素子にフレキシブル性を与えることが可能な樹脂フィルムである。
【0183】
樹脂フィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリイミド、ポリカーボネート(PC)、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)等からなるフィルム等が挙げられる。
【0184】
樹脂フィルムの表面には、無機物もしくは有機物の被膜またはその両者のハイブリッド被膜が形成されていてもよく、水蒸気透過率が0.01g/m・day・atm以下の高バリア性フィルムであることが好ましい。
【0185】
本発明の有機EL素子では、例えば、前記発光層を一対の電極間に挟持させ、該電極に電界を供与することによって、陰極からは電子が及び陽極からはホールが発光層に各々注入され、これらが発光層において再結合して、三重項励起子が生成する。この励起子が基底状態に戻る際に、余剰のエネルギーを光として放出する。前記有機EL素子では、前記発光層に含有される発光材料及びホスト材料の最低励起三重項エネルギー準位(T1)よりも高いT1を有する金属錯体により前記発光層に隣接する層を構成することによって、発光層において生成した三重項励起子のエネルギーが、発光層に隣接する層を構成する有機材料に移動してしまうことを防ぐことができ、本発明の効果を可能としている。
【0186】
りん光性化合物を含有する発光層に隣接する層としては、正孔注入層、正孔輸送層、電子ブロック層等が挙げられ、前記金属錯体としては、各層に各々使用される正孔注入材料、正孔輸送材料及び電子ブロック材料が挙げられる。また、複数の層が前記発光層に隣接する場合は、少なくとも一つの層が、前記発光材料のT1準位よりも高いT1準位を有する金属錯体からなるのが好ましい。
【0187】
前記発光層に隣接する層に含まれる金属錯体のT1準位は、発光層に隣接する層を構成する有機材料のT1準位の1.05〜1.38倍であるのが好ましい。
【0188】
本発明の有機EL素子の発光の室温における外部取り出し効率は1%以上であることが好ましく、より好ましくは2%以上である。ここに、外部取り出し量子効率(%)=有機EL素子外部に発光した光子数/有機EL素子に流した電子数×100である。
【0189】
また、カラーフィルター等の色相改良フィルター等を併用してもよい。
【0190】
照明用途で用いる場合には、発光ムラを低減させるために粗面加工したフィルム(アンチグレアフィルム等)を併用することもできる。
【0191】
多色表示装置として用いる場合は少なくとも2種類の異なる発光極大波長を有する有機EL素子からなるが、有機EL素子を作製する好適な例を説明する。
【0192】
《有機EL素子の作製方法》
本発明の有機EL素子の作製方法の一例として、陽極/正孔輸送層/電子ブロック層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極バッファー層/陰極からなる有機EL素子の作製法について説明する。
【0193】
まず適当な基体上に、所望の電極物質、例えば陽極用物質からなる薄膜を、1μm以下、好ましくは10〜200nmの膜厚になるように、蒸着やスパッタリング等の方法により形成させ、陽極を作製する。次に、この上に素子材料である正孔輸送層、電子ブロック層、発光層、正孔阻止層、電子輸送層等の有機化合物を含有する薄膜を形成させる。
【0194】
この有機化合物を含有する薄膜の薄膜化の方法としては、前記の如くスピンコート法、キャスト法、インクジェット法、蒸着法、印刷法等があるが、均質な膜が得られやすく、かつピンホールが生成しにくい等の点から、真空蒸着法またはスピンコート法が特に好ましい。さらに層ごとに異なる製膜法を適用してもよい。製膜に蒸着法を採用する場合、その蒸着条件は、使用する化合物の種類等により異なるが、一般にボート加熱温度50〜450℃、真空度10−6〜10−2Pa、蒸着速度0.01〜50nm/秒、基板温度−50℃〜300℃、膜厚0.1〜5μmの範囲で適宜選ぶことが望ましい。
【0195】
これらの層の形成後、その上に陰極用物質からなる薄膜を、1μm以下好ましくは50〜200nmの範囲の膜厚になるように、例えば蒸着やスパッタリング等の方法により形成させ、陰極を設けることにより、所望の有機EL素子が得られる。この有機EL素子の作製は、一回の真空引きで一貫して正孔注入層から陰極まで作製するのが好ましいが、途中で取り出して異なる製膜法を施してもかまわない。その際、作業を乾燥不活性ガス雰囲気下で行う等の配慮が必要となる。
【0196】
《表示装置》
本発明の表示装置について説明する。
【0197】
本発明の表示装置は単色でも多色でもよいが、ここでは、多色表示装置について説明する。多色表示装置の場合は、発光層形成時のみシャドーマスクを設け、一面に蒸着法、キャスト法、スピンコート法、インクジェット法、印刷法等で膜を形成できる。
【0198】
発光層のみパターニングを行う場合、その方法に限定はないが、好ましくは蒸着法、インクジェット法、印刷法である。蒸着法を用いる場合においてはシャドーマスクを用いたパターニングが好ましい。
【0199】
また作製順序を逆にして、陰極、電子輸送層、正孔阻止層、発光層、電子ブロック層、正孔注入層、陽極の順に作製することも可能である。
【0200】
このようにして得られた多色表示装置に、直流電圧を印加する場合には、陽極を+、陰極を−の極性として電圧2〜40V程度を印加すると、発光が観測できる。また、逆の極性で電圧を印加しても電流は流れずに発光は全く生じない。さらに、交流電圧を印加する場合には、陽極が+、陰極が−の状態になったときのみ発光する。なお、印加する交流の波形は任意でよい。
【0201】
多色表示装置は、表示デバイス、ディスプレイ、各種発光光源として用いることができる。表示デバイス、ディスプレイにおいて、青、赤、緑発光の3種の有機EL素子を用いることにより、フルカラーの表示が可能となる。
【0202】
表示デバイス、ディスプレイとしてはテレビ、パソコン、モバイル機器、AV機器、文字放送表示、自動車内の情報表示等が挙げられる。特に静止画像や動画像を再生する表示装置として使用してもよく、動画再生用の表示装置として使用する場合の駆動方式は単純マトリックス(パッシブマトリックス)方式でもアクティブマトリックス方式でもどちらでもよい。
【0203】
発光光源としては家庭用照明、車内照明、時計や液晶用のバックライト、看板広告、信号機、光記憶媒体の光源、電子写真複写機の光源、光通信処理機の光源、光センサーの光源等が挙げられるがこれに限定するものではない。発光が白色である有機EL素子は発光光源として好ましく用いられる。
【0204】
《照明装置》
本発明の照明装置について説明する。
【0205】
本発明の有機EL素子に共振器構造を持たせた有機EL素子として用いてもよく、このような共振器構造を有した有機EL素子の使用目的としては光記憶媒体の光源、電子写真複写機の光源、光通信処理機の光源、光センサーの光源等が挙げられるが、これらに限定されない。また、レーザー発振をさせることにより、上記用途に使用してもよい。
【0206】
また、本発明の有機EL素子は、照明用や露光光源のような一種のランプとして使用してもよいし、画像を投影するタイプのプロジェクション装置や、静止画像や動画像を直接視認するタイプの表示装置(ディスプレイ)として使用してもよい。動画再生用の表示装置として使用する場合の駆動方式は単純マトリクス(パッシブマトリクス)方式でもアクティブマトリクス方式でもどちらでもよい。または、異なる発光色を有する本発明の有機EL素子を2種以上使用することにより、フルカラー表示装置を作製することが可能である。発光が白色である有機EL素子は照明装置として好ましく用いられる。
【0207】
以下、本発明の有機EL素子を有する表示装置の一例を図面に基づいて説明する。
【0208】
図1は、有機EL素子から構成される表示装置の一例を示した模式図である。有機EL素子の発光により画像情報の表示を行う、例えば、携帯電話等のディスプレイの模式図である。
【0209】
ディスプレイ1は、複数の画素を有する表示部A、画像情報に基づいて表示部Aの画像走査を行う制御部B等からなる。
【0210】
制御部Bは、表示部Aと電気的に接続され、複数の画素それぞれに外部からの画像情報に基づいて走査信号と画像データ信号を送り、走査信号により走査線毎の画素が画像データ信号に応じて順次発光して画像走査を行って画像情報を表示部Aに表示する。
【0211】
図2は、表示部Aの模式図である。
【0212】
表示部Aは基板上に、複数の走査線5及びデータ線6を含む配線部と、複数の画素3等とを有する。表示部Aの主要な部材の説明を以下に行う。
【0213】
図においては、画素3の発光した光が、白矢印方向(下方向)へ取り出される場合を示している。
【0214】
配線部の走査線5及び複数のデータ線6は、それぞれ導電材料からなり、走査線5とデータ線6は格子状に直交して、直交する位置で画素3に接続している(詳細は図示していない)。
【0215】
画素3は、走査線5から走査信号が印加されると、データ線6から画像データ信号を受け取り、受け取った画像データに応じて発光する。発光の色が赤領域の画素、緑領域の画素、青領域の画素を、適宜、同一基板上に並置することによって、フルカラー表示が可能となる。
【0216】
次に、画素の発光プロセスを説明する。
【0217】
図3は、画素の模式図である。
【0218】
画素は、有機EL素子10、スイッチングトランジスタ11、駆動トランジスタ12、コンデンサ13等を備えている。複数の画素に有機EL素子10として、赤色、緑色、青色発光の有機EL素子を用い、これらを同一基板上に並置することでフルカラー表示を行うことができる。
【0219】
図3において、制御部Bからデータ線6を介してスイッチングトランジスタ11のドレインに画像データ信号が印加される。そして、制御部Bから走査線5を介してスイッチングトランジスタ11のゲートに走査信号が印加されると、スイッチングトランジスタ11の駆動がオンし、ドレインに印加された画像データ信号がコンデンサ13と駆動トランジスタ12のゲートに伝達される。
【0220】
画像データ信号の伝達により、コンデンサ13が画像データ信号の電位に応じて充電されるとともに、駆動トランジスタ12の駆動がオンする。駆動トランジスタ12は、ドレインが電源ライン7に接続され、ソースが有機EL素子10の電極に接続されており、ゲートに印加された画像データ信号の電位に応じて電源ライン7から有機EL素子10に電流が供給される。
【0221】
制御部Bの順次走査により走査信号が次の走査線5に移ると、スイッチングトランジスタ11の駆動がオフする。しかし、スイッチングトランジスタ11の駆動がオフしてもコンデンサ13は充電された画像データ信号の電位を保持するので、駆動トランジスタ12の駆動はオン状態が保たれて、次の走査信号の印加が行われるまで有機EL素子10の発光が継続する。順次走査により次に走査信号が印加されたとき、走査信号に同期した次の画像データ信号の電位に応じて駆動トランジスタ12が駆動して有機EL素子10が発光する。
【0222】
すなわち、有機EL素子10の発光は、複数の画素それぞれの有機EL素子10に対して、アクティブ素子であるスイッチングトランジスタ11と駆動トランジスタ12を設けて、複数の画素3それぞれの有機EL素子10の発光を行っている。このような発光方法をアクティブマトリクス方式と呼んでいる。
【0223】
ここで、有機EL素子10の発光は、複数の階調電位を持つ多値の画像データ信号による複数の階調の発光でもよいし、2値の画像データ信号による所定の発光量のオン、オフでもよい。
【0224】
また、コンデンサ13の電位の保持は、次の走査信号の印加まで継続して保持してもよいし、次の走査信号が印加される直前に放電させてもよい。
【0225】
本発明においては、上述したアクティブマトリクス方式に限らず、走査信号が走査されたときのみデータ信号に応じて有機EL素子を発光させるパッシブマトリクス方式の発光駆動でもよい。
【0226】
図4は、パッシブマトリクス方式による表示装置の模式図である。図4において、複数の走査線5と複数の画像データ線6が画素3を挟んで対向して格子状に設けられている。
【0227】
順次走査により走査線5の走査信号が印加されたとき、印加された走査線5に接続している画素3が画像データ信号に応じて発光する。パッシブマトリクス方式では画素3にアクティブ素子がなく、製造コストの低減が計れる。
【0228】
本発明に係わる有機EL材料は、また、照明装置として、実質白色の発光を生じる有機EL素子に適用できる。複数の発光材料により複数の発光色を同時に発光させて混色により白色発光を得る。複数の発光色の組み合わせとしては、青色、緑色、青色の3原色の3つの発光極大波長を含有させたものでもよいし、青色と黄色、青緑と橙色等の補色の関係を利用した2つの発光極大波長を含有したものでもよい。
【0229】
また、複数の発光色を得るための発光材料の組み合わせは、複数のリン光または蛍光を発光する材料(発光ドーパント)を、複数組み合わせたもの、蛍光またはリン光を発光する発光材料と、該発光材料からの光を励起光として発光する色素材料とを組み合わせたもののいずれでもよいが、本発明に係わる白色有機EL素子においては、発光ドーパントを複数組み合わせる方式が好ましい。
【0230】
複数の発光色を得るための有機EL素子の層構成としては、複数の発光ドーパントを、一つの発光層中に複数存在させる方法、複数の発光層を有し、各発光層中に発光波長の異なるドーパントをそれぞれ存在させる方法、異なる波長に発光する微小画素をマトリックス状に形成する方法等が挙げられる。
【0231】
本発明に係わる白色有機EL素子においては、必要に応じ製膜時にメタルマスクやインクジェットプリンティング法等でパターニングを施してもよい。パターニングする場合は、電極のみをパターニングしてもいいし、電極と発光層をパターニングしてもいいし、素子全層をパターニングしてもいい。
【0232】
発光層に用いる発光材料としては特に制限はなく、例えば液晶表示素子におけるバックライトであれば、CF(カラーフィルター)特性に対応した波長範囲に適合するように、本発明に係わる白金錯体、また公知の発光材料の中から任意のものを選択して組み合わせて白色化すればよい。
【0233】
このように、本発明の白色発光有機EL素子は、前記表示デバイス、ディスプレイに加えて、各種発光光源、照明装置として、家庭用照明、車内照明、また、露光光源のような一種のランプとして、液晶表示装置のバックライト等、表示装置にも有用に用いられる。
【0234】
その他、時計等のバックライト、看板広告、信号機、光記憶媒体等の光源、電子写真複写機の光源、光通信処理機の光源、光センサーの光源等、さらには表示装置を必要とする一般の家庭用電気器具等広い範囲の用途が挙げられる。
【実施例】
【0235】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0236】
参考例1
《有機EL素子OLED1−1の作製》
陽極としてガラス上にITOを150nm成膜した基板(NHテクノグラス社製:NA−45)にパターニングを行った後、このITO透明電極を設けた透明支持基板をiso−プロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥し、UVオゾン洗浄を5分間行った。この透明支持基板を、市販の真空蒸着装置の基板ホルダーに固定し、一方、タンタル製抵抗加熱ボートに、α−NPD、Ir−1,CBP、Ir−12、BCP、Alqをそれぞれ入れ、真空蒸着装置(第1真空槽)に取付けた。
【0237】
さらに、タンタル製抵抗加熱ボートにフッ化リチウムを、タングステン製抵抗加熱ボートにアルミニウムをそれぞれ入れ、真空蒸着装置の第2真空槽に取り付けた。
【0238】
まず、第1の真空槽を4×10−4Paまで減圧した後、α−NPDの入った前記加熱ボートに通電して加熱し、蒸着速度0.1〜0.2nm/秒で透明支持基板に膜厚40nmの厚さになるように蒸着し、正孔注入/輸送層を設けた。
【0239】
次に、第1の真空槽を4×10−4Paまで減圧した後、Ir−1の入った前記加熱ボートに通電して加熱し、蒸着速度0.1〜0.2nm/秒で透明支持基板に膜厚20nmの厚さになるように蒸着し、電子ブロック層を設けた。
【0240】
さらに、CBPの入った前記加熱ボートとIr−12の入ったボートをそれぞれ独立に通電して発光ホストであるCBPと発光ドーパントであるIr−12の蒸着速度が100:7になるように調節し膜厚30nmの厚さになるように蒸着し、発光層を設けた。
【0241】
ついで、BCPの入った前記加熱ボートに通電して加熱し、蒸着速度0.1〜0.2nm/秒で厚さ15nmの正孔阻止層を設けた。さらに、Alqの入った前記加熱ボートを通電して加熱し、蒸着速度0.1〜0.2nm/秒で膜厚20nmの電子輸送層を設けた。
【0242】
次に、前記の如く電子輸送層まで製膜した素子を真空のまま第2真空槽に移した後、電子輸送層の上にステンレス鋼製の長方形穴あきマスクが配置されるように装置外部からリモートコントロールして設置した。
【0243】
第2真空槽を2×10−4Paまで減圧した後、フッ化リチウム入りのボートに通電して蒸着速度0.01〜0.02nm/秒で膜厚0.5nmの陰極バッファー層を設け、次いでアルミニウムの入ったボートに通電して蒸着速度1〜2nm/秒で膜厚150nmの陰極をつけた。さらにこの有機EL素子を大気に接触させることなく窒素雰囲気下のグローブボックス(純度99.999%以上の高純度窒素ガスで置換したグローブボックス)へ移し、図5に示したような内部を窒素で置換した封止構造にして、有機EL素子OLED1−1を作製した。
【0244】
なお、捕水剤である酸化バリウム105は、アルドリッチ社製の高純度酸化バリウム粉末を、粘着剤付きのフッ素樹脂系半透過膜(ミクロテックス S−NTF8031Q 日東電工製)でガラス製封止缶104に貼り付けたものを予め準備して使用した。封止缶と有機EL素子の接着には紫外線硬化型接着剤107を用い、紫外線ランプを照射することで両者を接着し封止素子を作製した。
【0245】
図5において101は透明電極を設けたガラス基板、102が前記正孔注入/輸送層、電子ブロック層、発光層、正孔阻止層、電子輸送層等からなる有機EL層、103は陰極を示す。
【0246】
【化28】

【0247】
《有機EL素子OLED1−2〜1−17の作製》
上記の有機EL素子OLED1−1の作製において、表1に記載のように、発光ドーパントを変更した以外は同様にして、有機EL素子OLED1−2〜1−17を作製した。
【0248】
得られた有機EL素子OLED1−1〜1−17について下記のような評価を行った。
【0249】
【化29】

【0250】
《駆動電圧》
温度23℃、乾燥窒素ガス雰囲気下で発光開始の駆動電圧を測定した。なお、発光開始の電圧は、輝度50cd/m以上となったときの電圧値を測定した。輝度の測定には分光放射輝度計CS−1000(ミノルタ製)を用いた。
【0251】
表1の駆動電圧は、有機EL素子1−1を100とした時の相対値で表した。
【0252】
《発光寿命》
有機EL素子OLED1−1〜1−17を室温下、2.5mA/cmの定電流条件下による連続点灯を行い、初期輝度の半分の輝度になるのに要する時間(τ)を測定した。また、発光寿命は、有機EL素子OLED1−1を100と設定した時の相対値で表した。得られた結果を表1に示す。
【0253】
【表1】

【0254】
表1から、有機EL素子1−6〜1−17は比較有機EL素子に比べ、駆動電圧が低く、消費電力が少なくてすみ、また、発光寿命の長寿命化が達成できることが明らかである。
【0255】
さらに、カルボリン誘導体または該カルボリン誘導体のカルボリン環を構成する炭化水素環の炭素原子の少なくとも一つがさらに窒素原子で置換されている環構造を有する誘導体を発光層に併用することにより、また、カルボリン誘導体または該カルボリン誘導体のカルボリン環を構成する炭化水素環の炭素原子の少なくとも一つがさらに窒素原子で置換されている環構造を有する誘導体を正孔阻止層に使用することにより、さらに本発明に記載の効果の向上が見られた。
【0256】
参考例2
《有機EL素子OLED2−1の作製》
参考例1における有機EL素子の作製において、正孔輸送層、電子ブロック層、発光ホスト、発光ドーパント、正孔阻止層を表2に記載の材料に置換えた以外は参考例1と同様にして有機EL素子OLED2−1を作製した。
【0257】
《有機EL素子OLED2−2〜2−16の作製》
上記の有機EL素子OLED2−1の作製において、表2に記載のように、各層の材料を変更した以外は同様にして、有機EL素子OLED2−2〜2−18を作製した。
【0258】
得られた有機EL素子OLED2−1〜2−16について、参考例1と同様の評価を行った。得られた結果を表2に示す。
【0259】
なお、駆動電圧、発光寿命は有機EL素子OLED2−1を100とした時の相対値で表した。
【0260】
【表2】

【0261】
表2から、有機EL素子2−6〜2−16は比較有機EL素子に比べ、低い駆動電圧と、発光寿命の長寿命化が達成できることが明らかである。さらに、カルボリン誘導体または該カルボリン誘導体のカルボリン環を構成する炭化水素環の炭素原子の少なくとも一つがさらに窒素原子で置換されている環構造を有する誘導体を発光層に併用することにより、また、カルボリン誘導体または該カルボリン誘導体のカルボリン環を構成する炭化水素環の炭素原子の少なくとも一つがさらに窒素原子で置換されている環構造を有する誘導体を正孔阻止層に使用することにより、さらに本発明に記載の効果の向上が見られた。
【0262】
CBP、ACZ3の最低励起三重項エネルギー準位(T1)を測定したところ、それぞれ2.7eV、2.9eVであった。一方、α−NPD、TPD1、2−1、2−4、2−7のT1を測定したところ、それぞれ2.4eV、3.0eV、3.2eV、3.0eV、2.8eVであった。この結果、電子阻止層の金属錯体のT1が、発光層を構成する材料のT1よりも大きい場合に、より大きな効果が得られていることが分かる。
【0263】
【化30】

【0264】
《T1の測定方法》
測定する化合物を、よく脱酸素されたエタノール/メタノール=4/1(vol/vol)の混合溶媒に溶かし、リン光測定用セルに入れた後液体窒素温度77Kで励起光を照射し、励起光照射後100msでの発光スペクトルを測定する。リン光は蛍光に比べ発光寿命が長いため、100ms後に残存する光はほぼリン光であると考えることができる。
【0265】
なお、リン光寿命が100msより短い化合物に対しては遅延時間を短くして測定しても構わないが、蛍光と区別できなくなるほど遅延時間を短くしてしまうとリン光と蛍光が分離できないので問題となるため、その分離が可能な遅延時間を選択する必要がある。
【0266】
また、上記溶剤系で溶解できない化合物については、その化合物を溶解しうる任意の溶剤を使用してもよい(実質上、上記測定法ではリン光波長の溶媒効果はごくわずかなので問題ない)。
【0267】
次にT1の求め方であるが、本発明においては、上記測定法で得られたリン光スペクトルチャートのなかで最も短波長側に現れる発光極大波長をもってT1と定義する。
【0268】
リン光スペクトルは通常強度が弱いことが多いため、拡大するとノイズとピークの判別が難しくなるケースがある。このような場合には励起光照射中の発光スペクトル(便宜上これを定常光スペクトルと言う)を拡大し、励起光照射後100ms後の発光スペクトル(便宜上これをリン光スペクトルと言う)と重ねあわせリン光スペクトルに由来する定常光スペクトル部分構造からリン光スペクトルのピーク波長を読みとることで決定する。また、リン光スペクトルをスムージング処理することでノイズとピークを分離しピーク波長を読みとる。なお、スムージング処理としては、Savitzky&Golayの平滑化法等を適用する。
【0269】
参考例3
《有機EL素子OLED3−1の作製》
参考例1における有機EL素子の作製において、正孔輸送層、電子ブロック層、発光ホスト、発光ドーパント、正孔阻止層を表3に記載の材料に置換えた以外は参考例1と同様にして有機EL素子OLED3−1を作製した。
【0270】
【化31】

【0271】
《有機EL素子OLED3−2〜3−19の作製》
上記の有機EL素子OLED3−1の作製において、表2に記載のように、各層の材料を変更した以外は同様にして、有機EL素子OLED3−2〜3−19を作製した。
【0272】
得られた有機EL素子OLED3−1〜3−19について、参考例1と同様の評価を行った。得られた結果を表3に示す。なお、駆動電圧、発光寿命は有機EL素子OLED3−1を100とした時の相対値で表した。
【0273】
【表3】

【0274】
表3から、有機EL素子3−4〜3−19は比較有機EL素子に比べ、低い駆動電圧と、発光寿命の長寿命化が達成できることが明らかである。さらに、カルボリン誘導体または該カルボリン誘導体のカルボリン環を構成する炭化水素環の炭素原子の少なくとも一つがさらに窒素原子で置換されている環構造を有する誘導体を発光層に併用することにより、また、カルボリン誘導体または該カルボリン誘導体のカルボリン環を構成する炭化水素環の炭素原子の少なくとも一つがさらに窒素原子で置換されている環構造を有する誘導体を正孔阻止層に使用することにより、さらに本発明に記載の効果の向上が見られた。
【0275】
参考例4
《有機EL素子OLED4−1の作製》
参考例1における有機EL素子の作製において、正孔輸送層、電子ブロック層、発光ホスト、発光ドーパント、正孔阻止層電を表4に記載の材料に置換えた以外は参考例1と同様にして有機EL素子OLED4−1を作製した。
【0276】
《有機EL素子OLED4−2〜4−19の作製》
上記の有機EL素子OLED4−1の作製において、表4に記載のように、各層の材料を変更した以外は同様にして、有機EL素子OLED4−2〜4−19を作製した。
【0277】
得られた有機EL素子OLED4−1〜4−19について、参考例1と同様の評価を行った。得られた結果を表4に示す。
【0278】
なお、駆動電圧、発光寿命は有機EL素子OLED4−1を100とした時の相対値で表した。
【0279】
【表4】

【0280】
表4から、有機EL素子4−4〜4−19は比較有機EL素子に比べ、低い駆動電圧と、発光寿命の長寿命化が達成できることが明らかである。さらに、カルボリン誘導体または該カルボリン誘導体のカルボリン環を構成する炭化水素環の炭素原子の少なくとも一つがさらに窒素原子で置換されている環構造を有する誘導体を発光層に併用することにより、また、カルボリン誘導体または該カルボリン誘導体のカルボリン環を構成する炭化水素環の炭素原子の少なくとも一つがさらに窒素原子で置換されている環構造を有する誘導体を正孔阻止層に使用することにより、さらに本発明に記載の効果の向上が見られた。
【0281】
実施例5
《有機EL素子OLED5−1の作製》
参考例1における有機EL素子の作製において、正孔輸送層、電子ブロック層、発光ホスト、発光ドーパント、正孔阻止層を表5に記載の材料に置換えた以外は参考例1と同様にして有機EL素子OLED5−1を作製した。
【0282】
《有機EL素子OLED5−2〜5−21の作製》
上記の有機EL素子OLED5−1の作製において、表5に記載のように、各層の材料を変更した以外は同様にして、有機EL素子OLED5−2〜5−21を作製した。
【0283】
得られた有機EL素子OLED5−1〜5−21について、参考例1と同様の評価を行った。得られた結果を表5に示す。
【0284】
なお、駆動電圧、発光寿命は有機EL素子OLED5−1を100とした時の相対値で表した。
【0285】
【表5】

【0286】
表5から、本発明に係る金属錯体を用いて作製した有機EL素子は比較有機EL素子に比べ、低い駆動電圧と、発光寿命の長寿命化が達成できることが明らかである。さらに、カルボリン誘導体または該カルボリン誘導体のカルボリン環を構成する炭化水素環の炭素原子の少なくとも一つがさらに窒素原子で置換されている環構造を有する誘導体を発光層に併用することにより、また、カルボリン誘導体または該カルボリン誘導体のカルボリン環を構成する炭化水素環の炭素原子の少なくとも一つがさらに窒素原子で置換されている環構造を有する誘導体を正孔阻止層に使用することにより、さらに本発明に記載の効果の向上が見られた。
【0287】
参考例6
《有機EL素子OLED6−1の作製》
参考例3の有機EL素子3−1の作製において、発光層形成時に、発光ホストであるCBPと発光ドーパントであるIr−12の蒸着速度を100:7から、100:5に変更した以外は同様にして有機EL素子OLED6−1を作製した。
【0288】
《有機EL素子OLED6−2〜6−19の作製》
上記の有機EL素子OLED6−1の作製において、表6に記載のように、各層の材料を変更した以外は同様にして、有機EL素子OLED6−2〜6−19を作製した。得られた有機EL素子OLED6−1〜6−19について参考例1と同様の方法で評価を行った。
【0289】
なお、駆動電圧、発光寿命は有機EL素子OLED6−1を100とした時の相対値で表した。
【0290】
【表6】

【0291】
表6から、有機EL素子6−4〜6−19は比較有機EL素子に比べ、高い発光効率と、低い電圧上昇が達成できることが明らかである。
【0292】
さらに、カルボリン誘導体または該カルボリン誘導体のカルボリン環を構成する炭化水素環の炭素原子の少なくとも一つがさらに窒素原子で置換されている環構造を有する誘導体を発光層に併用することにより、また、カルボリン誘導体または該カルボリン誘導体のカルボリン環を構成する炭化水素環の炭素原子の少なくとも一つがさらに窒素原子で置換されている環構造を有する誘導体を正孔阻止層に使用することにより、さらに本発明に記載の効果の向上が見られた。
【0293】
参考例7
《有機EL素子OLED7−1の作製》
参考例1において、正孔輸送層、電子ブロック層、発光ホスト、発光ドーパント、正孔阻止層を表7に記載の材料に置換えた以外は参考例1と同様にして有機EL素子OLED7−1を作製した。
【0294】
【化32】

【0295】
《有機EL素子OLED7−2〜7−17の作製》
上記の有機EL素子OLED7−1の作製において、表7に記載のように、各層の材料を変更した以外は同様にして、有機EL素子OLED7−2〜7−17を作製した。
【0296】
得られた有機EL素子OLED7−1〜7−17について、参考例1と同様の評価を行った。得られた結果を表7に示す。
【0297】
なお、駆動電圧、発光寿命は有機EL素子OLED7−1を100とした時の相対値で表した。
【0298】
【表7】

【0299】
表7から、有機EL素子7−4〜7−17は比較有機EL素子に比べ、低い駆動電圧と、発光寿命の長寿命化が達成できることが明らかである。さらに、カルボリン誘導体または該カルボリン誘導体のカルボリン環を構成する炭化水素環の炭素原子の少なくとも一つがさらに窒素原子で置換されている環構造を有する誘導体を発光層に併用することにより、また、カルボリン誘導体または該カルボリン誘導体のカルボリン環を構成する炭化水素環の炭素原子の少なくとも一つがさらに窒素原子で置換されている環構造を有する誘導体を正孔阻止層に使用することにより、さらに本発明に記載の効果の向上が見られた。
【0300】
参考例8
《有機EL素子OLED8−1の作製》
参考例1において、正孔輸送層、電子ブロック層、発光ホスト、発光ドーパント、正孔阻止層を表8に記載の材料に置換えた以外は参考例1と同様にして有機EL素子OLED8−1を作製した。
【0301】
《有機EL素子OLED8−2〜8−17の作製》
上記の有機EL素子OLED8−1の作製において、表8に記載のように、各層の材料を変更した以外は同様にして、有機EL素子OLED8−2〜8−17を作製した。
【0302】
得られた有機EL素子OLED8−1〜8−17について、参考例1と同様の評価を行った。
【0303】
得られた結果を表8に示す。
【0304】
なお、駆動電圧、発光寿命は有機EL素子OLED8−1を100とした時の相対値で表した。
【0305】
【表8】

【0306】
表8から、有機EL素子8−4〜8−17は比較有機EL素子に比べ、低い駆動電圧と、発光寿命の長寿命化が達成できることが明らかである。さらに、カルボリン誘導体または該カルボリン誘導体のカルボリン環を構成する炭化水素環の炭素原子の少なくとも一つがさらに窒素原子で置換されている環構造を有する誘導体を発光層に併用することにより、また、カルボリン誘導体または該カルボリン誘導体のカルボリン環を構成する炭化水素環の炭素原子の少なくとも一つがさらに窒素原子で置換されている環構造を有する誘導体を正孔阻止層に使用することにより、さらに本発明に記載の効果の向上が見られた。
【0307】
実施例9
《フルカラー表示装置の作製》
(青色発光素子の作製)
参考例1の有機EL素子OLED1−7を青色発光素子として用いた。
【0308】
(緑色発光素子の作製)
実施例5の有機EL素子OLED5−8を緑色発光素子として用いた。
【0309】
(赤色発光素子の作製)
Ir−9を赤色発光素子として用いた。
【0310】
上記で作製した、各々赤色、緑色、青色発光有機EL素子を同一基板上に並置し、図1に記載のような形態を有するアクティブマトリクス方式フルカラー表示装置を作製し、図2には、作製した前記表示装置の表示部Aの模式図のみを示した。即ち、同一基板上に、複数の走査線5及びデータ線6を含む配線部と、並置した複数の画素3(発光の色が赤領域の画素、緑領域の画素、青領域の画素等)とを有し、配線部の走査線5及び複数のデータ線6はそれぞれ導電材料からなり、走査線5とデータ線6は格子状に直交して、直交する位置で画素3に接続している(詳細は図示せず)。前記複数画素3は、それぞれの発光色に対応した有機EL素子、アクティブ素子であるスイッチングトランジスタと駆動トランジスタそれぞれが設けられたアクティブマトリクス方式で駆動されており、走査線5から走査信号が印加されると、データ線6から画像データ信号を受け取り、受け取った画像データに応じて発光する。この様に各赤、緑、青の画素を適宜、並置することによって、フルカラー表示装置を作製した。
【0311】
該フルカラー表示装置を駆動することにより、駆動電圧が低く、高耐久性を有し、かつ、鮮明なフルカラー動画表示が得られることが分かった。
【0312】
参考例10
《白色発光素子及び白色照明装置の作製》
参考例1の透明電極基板の電極を20mm×20mmにパターニングし、その上に実施例1と同様に正孔注入/輸送層としてα−NPDを40nmの厚さで製膜した。次に、電子ブロック層として化合物1−3を20nmの厚さで製膜した。さらに、CBPの入った前記加熱ボートとIr−12の入ったボート及びIr−9の入ったボートをそれぞれ独立に通電して発光ホストであるCBPと発光ドーパントであるIr−12及びIr−9の蒸着速度が100:5:0.6になるように調節し膜厚30nmの厚さになるように蒸着し、発光層を設けた。
【0313】
ついで、BCPを15nm製膜して正孔阻止層を設けた。さらに、Alqを20nmで製膜し電子輸送層を設けた。
【0314】
次に、参考例1と同様に、電子注入層の上にステンレス鋼製の透明電極とほぼ同じ形状の正方形穴あきマスクを設置し、陰極バッファー層としてフッ化リチウム0.5nm及び陰極としてアルミニウム150nmを蒸着製膜した。
【0315】
この素子を参考例1と同様な方法及び同様な構造の封止缶を具備させ平面ランプを作製した。図6に平面ランプの模式図を示した。図6(a)に平面模式を図6(b)に断面模式図を示す。
【0316】
この平面ランプに通電したところほぼ白色の光が得られ、照明装置として使用できることが分かった。
【符号の説明】
【0317】
1 ディスプレイ
3 画素
5 走査線
6 データ線
7 電源ライン
10 有機EL素子
11 スイッチングトランジスタ
12 駆動トランジスタ
13 コンデンサ
A 表示部
B 制御部
101 透明電極付きガラス基板
102 有機EL層
103 陰極
104 ガラス製封止缶
105 酸化バリウム(捕水剤)
106 窒素ガス
107 紫外線硬化型接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極、陰極及びりん光性化合物を含有する発光層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記陽極と前記発光層との間にある少なくとも一つの層が、下記一般式(5)で表される金属錯体を含有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化1】

(式中、Z31は芳香族炭化水素環または芳香族複素環を形成するのに必要な原子群を表す。X31、X32、X33は炭素原子、−C(R50)−(ここで、R50は水素原子または置換基を表す。)、窒素原子または−N(R51)−(ここで、R51は水素原子または置換基を表す。)を表し、X31、X32、X33の少なくとも1つは、窒素原子または−N(R51)−を表す。C31は炭素原子を表す。M31は元素周期表における8〜10族の金属を表す。C31とNとの間の結合、NとX33との間の結合、X32とX33との間の結合、X31とX32との間の結合、C31とX31との間の結合は、各々単結合または二重結合を表す。nは1〜3の整数を表す。)
【請求項2】
前記一般式(5)において、M31がイリジウム、白金、ロジウムまたはパラジウムであることを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項3】
前記発光層が、カルボリン誘導体または該カルボリン誘導体のカルボリン環を構成する炭化水素環の炭素原子の少なくとも一つが窒素原子で置換されている環構造を有する誘導体を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項4】
構成層として正孔阻止層を有し、該正孔阻止層が、カルボリン誘導体または該カルボリン誘導体のカルボリン環を構成する炭化水素環の炭素原子の少なくとも一つが窒素原子で置換されている環構造を有する誘導体を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項5】
前記一般式(5)で表される金属錯体の最低励起三重項エネルギー準位が、前記発光層を構成する材料の最低励起三重項エネルギー準位よりも大きいことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項6】
発光が白色であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を具備することを特徴とする表示装置。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を具備することを特徴とする照明装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−228723(P2011−228723A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−123130(P2011−123130)
【出願日】平成23年6月1日(2011.6.1)
【分割の表示】特願2005−208377(P2005−208377)の分割
【原出願日】平成17年7月19日(2005.7.19)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】