説明

有機エレクトロルミネッセンス素子、表示装置及び照明装置

【課題】高い発光効率を示し、発光寿命が長く、且つ、発光欠陥が低減された有機エレクトロルミネッセンス素子、該有機エレクトロルミネッセンス素子を有する表示装置、照明装置を提供する。
【解決手段】 基板上に第一電極と少なくとも発光層を含む構成層と第二電極とがこの順で積層され、該第二電極側より発光を取り出す有機エレクトロルミネッセンス素子において、該構成層の少なくとも一層が下記一般式(A)で表される化合物を少なくとも一種含有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子、表示装置及び照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自発光素子として、素子を流れる電流により発光する有機エレクトロルミネッセンス(以下、有機EL素子ともいう)が知られている。有機EL素子は、発光する化合物を含有する発光層を、陰極と陽極で挟んだ構成を有し、発光層に電子及び正孔を注入して、再結合させることにより励起子(エキシトン)を生成させ、このエキシトンが失活する際の光の放出(蛍光・リン光)を利用して発光する素子であり、数V〜数十V程度の電圧で発光が可能である。有機EL素子は自己発光型であるため視野角に富み、視認性が高く、薄膜型の完全固体素子であるため、近年、省スペース・携帯性等の観点から注目されており、有機EL素子を複数個並べて画像情報を表示するテレビや携帯電話等の有機ELディスプレイ装置に利用されている。
【0003】
図6は、従来の有機EL素子の1画素を示す断面図である。従来の有機EL素子では、前記のような各画素がマトリクス状に配置され、この各画素は、図6に示すようにガラス基板201上に形成された陽極202と、薄膜の有機化合物の単層または複数層で形成された有機層(図6では、正孔輸送層206、発光層207、電子輸送層208が相当するものである)と、陰極204とが順次積層された構成を有する。
【0004】
尚、マトリクスの交点のガラス基板201上には、駆動用素子205(TFT素子等)が形成されている。ここで、陽極202は、酸化インジウム(ITO)等の透明導電材料からなり、陰極204はアルミニウム等の金属材料からなる。
【0005】
図6に示すような、従来の有機EL素子は、マトリクス状に配置された画素における陽極202と陰極204との間に電圧を印加して、陽極202からホールを注入し、正孔輸送層206を経て発光層207に輸送し、一方、陰極204から電子を注入して、電子輸送層208を経て発光層207に輸送し、この発光層207中、または、隣接層との界面でホールと電子とを結合させて発光させ、この発光した光を陽極202を介して透明基板201側から外部に取り出すことによって表示を行う(ボトムエミッションともいう)ものである。
【0006】
この場合、透明基板201側から発光した光を取り出す限り、駆動用素子205の占める割合を小さくしても、この駆動用素子205部分が発光した光を遮るため、発光効率を低下させる。
【0007】
この対策として、陰極204側から発光を取り出すことが考えられた。この際、陰極204として、光透過性が良好で、電子注入効率の良好な材料が必要とされ、薄い金属膜とITOとを積層した構造が用いることが検討されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0008】
しかしながら、従来の有機EL素子とは異なる、このような構造の有機EL素子(トップエミッション型有機EL素子ともいう)の作製に際しては、透明電極を製膜する際、高いエネルギーが有機薄膜層に印可されるため有機層がダメージをうけ、発光効率低下や局所的発熱によるダークスポット発生、素子の短命化など、数々の不都合が生じていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−43980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、高い発光効率を示し、発光寿命が長く、且つ、発光欠陥が低減された有機エレクトロルミネッセンス素子、該有機エレクトロルミネッセンス素子を有する表示装置、照明装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の上記目的は下記の構成1〜41(第1〜第41の態様)により達成され、具体的に本発明によれば、
基板上に第一電極と少なくとも発光層及び電子輸送層を含む構成層と第二電極とがこの順で積層され、該第二電極側より発光を取り出す有機エレクトロルミネッセンス素子において、
該第一電極がアルミニウムからなり、
該電子輸送層の少なくとも一層が下記一般式(1)で表される化合物を少なくとも一種含有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子が提供される。
【0012】
【化1】

【0013】
〔式中、Zは6員の芳香族複素環を表し、Zは、6員の芳香族複素環または芳香族炭化水素環を表し、Zは、単なる結合手を表す。R101は、水素原子または置換基を表す。〕
【0014】
(第1の態様)
基板上に第一電極と少なくとも発光層を含む構成層と第二電極とがこの順で積層され、該第二電極側より発光を取り出す有機エレクトロルミネッセンス素子において、
該構成層の少なくとも一層が下記一般式(A)で表される化合物を少なくとも一種含有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0015】
【化2】

【0016】
〔式中、X〜Xは、各々炭素原子または窒素原子を表し、少なくとも一つは窒素原子である。X〜Xのいずれかが炭素原子である場合、該炭素原子に結合しているR〜Rは各々、水素原子または置換基を表し、該置換基が複数の場合、同一でも異なっていてもよい。X〜Xのいずれかが窒素原子である場合、該窒素原子に結合しているR〜Rは、各々非共有電子対を表す。Rは、水素原子または置換基を表す。〕
(第2の態様)
前記一般式(A)で表される化合物が、下記一般式(1)で表される化合物であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0017】
【化3】

【0018】
〔式中、Zは芳香族複素環を表し、Zは、芳香族複素環または芳香族炭化水素環を表し、Zは、2価の連結基または単なる結合手を表す。R101は、水素原子または置換基を表す。〕
(第3の態様)
前記一般式(1)で表される化合物のZが、6員環であることを特徴とする第2の態様に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0019】
(第4の態様)
前記一般式(1)で表される化合物のZが、6員環であることを特徴とする第2または第3の態様に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0020】
(第5の態様)
前記一般式(1)で表される化合物のZが、結合手であることを特徴とする第2〜第4の態様のいずれか1つに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0021】
(第6の態様)
前記一般式(1)で表される化合物が、分子量450以上であることを特徴とする第2〜第5の態様のいずれか1つに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0022】
(第7の態様)
前記一般式(1)で表される化合物が、下記一般式(1−1)で表されることを特徴とする第2〜第6の態様のいずれか1つに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0023】
【化4】

【0024】
〔式中、R501〜R507は、各々独立に、水素原子または置換基を表す。〕
(第8の態様)
前記一般式(1)で表される化合物が、下記一般式(1−2)で表されることを特徴とする第2〜第6の態様のいずれか1つに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0025】
【化5】

【0026】
〔式中、R511〜R517は、各々独立に、水素原子または置換基を表す。〕
(第9の態様)
前記一般式(1)で表される化合物が、下記一般式(1−3)で表されることを特徴とする第2〜第6の態様のいずれか1つに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0027】
【化6】

【0028】
〔式中、R521〜R527は、各々独立に、水素原子または置換基を表す。〕
(第10の態様)
前記一般式(1)で表される化合物が、下記一般式(1−4)で表されることを特徴とする第2〜第6の態様のいずれか1つに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0029】
【化7】

【0030】
〔式中、R531〜R537は、各々独立に、水素原子または置換基を表す。〕
(第11の態様)
前記一般式(1)で表される化合物が、下記一般式(1−5)で表されることを特徴とする第2〜第6の態様のいずれか1つに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0031】
【化8】

【0032】
〔式中、R541〜R548は、各々独立に、水素原子または置換基を表す。〕
(第12の態様)
前記一般式(1)で表される化合物が、下記一般式(1−6)で表されることを特徴とする第2〜第6の態様のいずれか1つに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0033】
【化9】

【0034】
〔式中、R551〜R558は、各々独立に、水素原子または置換基を表す。〕
(第13の態様)
前記一般式(1)で表される化合物が、下記一般式(1−7)で表されることを特徴とする第2〜第6の態様のいずれか1つに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0035】
【化10】

【0036】
〔式中、R561〜R567は、各々独立に、水素原子または置換基を表す。〕
(第14の態様)
前記一般式(1)で表される化合物が、下記一般式(1−8)で表されることを特徴とする第2〜第6の態様のいずれか1つに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0037】
【化11】

【0038】
〔式中、R571〜R577は、各々独立に、水素原子または置換基を表す。〕
(第15の態様)
前記一般式(1)で表される化合物が、下記一般式(1−9)で表されることを特徴とする第2〜第6の態様のいずれか1つに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0039】
【化12】

【0040】
〔式中、Rは、水素原子または置換基を表す。また、複数のRは、各々同一でもよく、異なっていてもよい。〕
(第16の態様)
前記一般式(1)で表される化合物が、下記一般式(1−10)で表されることを特徴とする第2〜第6の態様のいずれか1つに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0041】
【化13】

【0042】
〔式中、Rは、水素原子または置換基を表す。また、複数のRは、各々同一でもよく、異なっていてもよい。〕
(第17の態様)
前記一般式(1)で表される化合物が、下記一般式(2−1)〜(2−8)のいずれかで表される基を少なくとも一つ有することを特徴とする第2〜第6の態様のいずれか1つに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0043】
【化14】

【0044】
〔式中、R502〜R507、R512〜R517、R522〜R527、R532〜R537、R542〜R548、R552〜R558、R562〜R567、R572〜R577は、各々独立に、水素原子または置換基を表し、該置換基は各々同一でもよく、異なっていてもよい。〕
(第18の態様)
前記一般式(1)で表される化合物が、下記一般式(3)で表されることを特徴とする第2〜第6の態様のいずれか1つに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0045】
【化15】

【0046】
〔式中、R601〜R606は、各々独立に、水素原子または置換基を表すが、R601〜R606の少なくとも一つは前記一般式(2−1)〜(2−4)で表される基から選ばれる少なくとも一つの基を表す。〕
(第19の態様)
前記一般式(1)で表される化合物が、下記一般式(4)で表されることを特徴とする第2〜第6の態様のいずれか1つに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0047】
【化16】

【0048】
〔式中、R611〜R620は、各々独立に、水素原子または置換基を表すが、R611〜R620の少なくとも一つは前記一般式(2−1)〜(2−4)で表される基から選ばれる少なくとも一つの基を表す。〕
(第20の態様)
前記一般式(1)で表される化合物が、下記一般式(5)で表されることを特徴とする第2〜第6の態様のいずれか1つに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0049】
【化17】

【0050】
〔式中、R621〜R623は、各々独立に、水素原子または置換基を表すが、R621〜R623の少なくとも一つは前記一般式(2−1)〜(2−4)で表される基から選ばれる少なくとも一つの基を表す。〕
(第21の態様)
前記一般式(1)で表される化合物が、下記一般式(6)で表されることを特徴とする第2〜第6の態様のいずれか1つに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0051】
【化18】

【0052】
〔式中、R631〜R645は、各々独立に、水素原子または置換基を表すが、R631〜R645の少なくとも一つは前記一般式(2−1)〜(2−4)で表される基から選ばれる少なくとも一つの基を表す。〕
(第22の態様)
前記一般式(1)で表される化合物が、下記一般式(7)で表されることを特徴とする第2〜第6の態様のいずれか1つに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0053】
【化19】

【0054】
〔式中、R651〜R656は、各々独立に、水素原子または置換基を表すが、R651〜R656の少なくとも一つは前記一般式(2−1)〜(2−4)で表される基から選ばれる少なくとも一つの基を表す。naは0〜5の整数を表し、nbは1〜6の整数を表すが、naとnbの和は6である。〕
(第23の態様)
前記一般式(1)で表される化合物が、下記一般式(8)で表されることを特徴とする第2〜第6の態様のいずれか1つに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0055】
【化20】

【0056】
〔式中、R661〜R672は、各々独立に、水素原子または置換基を表すが、R661〜R672の少なくとも一つは前記一般式(2−1)〜(2−4)で表される基から選ばれる少なくとも一つの基を表す。〕
(第24の態様)
前記一般式(1)で表される化合物が、下記一般式(9)で表されることを特徴とする第2〜第6の態様のいずれか1つに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0057】
【化21】

【0058】
〔式中、R681〜R688は、各々独立に、水素原子または置換基を表すが、R681〜R688の少なくとも一つは前記一般式(2−1)〜(2−4)で表される基から選ばれる少なくとも一つの基を表す。〕
(第25の態様)
前記一般式(1)で表される化合物が、下記一般式(10)で表されることを特徴とする第2〜第6の態様のいずれか1つに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0059】
【化22】

【0060】
〔式中、R691〜R700は、各々独立に、水素原子または置換基を表し、Lは2価の連結基を表す。R691〜R700の少なくとも一つは前記一般式(2−1)〜(2−4)で表される基から選ばれる少なくとも一つの基を表す。〕
(第26の態様)
前記一般式(1)で表される化合物が、下記一般式(11)で表されることを特徴とする第2〜第6の態様のいずれか1つに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0061】
【化23】

【0062】
〔式中、R、Rは、各々独立に、水素原子または置換基を表す。n、mは、各々1〜2の整数を表し、k、lは、各々3〜4の整数を表す。但し、n+k=5、且つ、l+m=5である。〕
(第27の態様)
前記一般式(1)で表される化合物が、下記一般式(12)で表されることを特徴とする第2〜第6の態様のいずれか1つに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0063】
【化24】

【0064】
〔式中、R、Rは、各々独立に、水素原子または置換基を表す。n、mは、各々1〜2の整数を表し、k、lは、各々3〜4の整数を表す。但し、n+k=5、且つ、l+m=5である。〕
(第28の態様)
前記一般式(1)で表される化合物が、下記一般式(13)で表されることを特徴とする第2〜第6の態様のいずれか1つに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0065】
【化25】

【0066】
〔式中、R、Rは、各々独立に、水素原子または置換基を表す。n、mは、各々1〜2の整数を表し、k、lは、各々3〜4の整数を表す。但し、n+k=5、且つ、l+m=5である。〕
(第29の態様)
前記一般式(1)で表される化合物が、下記一般式(14)で表されることを特徴とする第2〜第6の態様のいずれか1つに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0067】
【化26】

【0068】
〔式中、R、Rは、各々独立に、水素原子または置換基を表す。n、mは、各々1〜2の整数を表し、k、lは、各々3〜4の整数を表す。但し、n+k=5、且つ、l+m=5である。〕
(第30の態様)
前記一般式(1)で表される化合物が、下記一般式(15)で表されることを特徴とする第2〜第6の態様のいずれか1つに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0069】
【化27】

【0070】
〔式中、R、Rは、各々独立に、水素原子または置換基を表す。n、mは、各々1〜2の整数を表し、k、lは、各々3〜4の整数を表す。但し、n+k=5、且つ、l+m=5である。Z、Z、Z、Zは、各々窒素原子を少なくとも一つ含む6員の芳香族複素環を表す。〕
(第31の態様)
前記一般式(1)で表される化合物が、下記一般式(16)で表されることを特徴とする第2〜第6の態様のいずれか1つに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0071】
【化28】

【0072】
〔式中、o、pは、各々1〜3の整数を表し、Ar、Arは、各々アリーレン基または2価の芳香族複素環基を表す。Z、Zは、各々窒素原子を少なくとも一つ含む6員の芳香族複素環を表し、Lは、2価の連結基を表す。〕
(第32の態様)
前記一般式(1)で表される化合物が、下記一般式(17)で表されることを特徴とする第2〜第6の態様のいずれか1つに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0073】
【化29】

【0074】
〔式中、o、pは、各々1〜3の整数を表し、Ar、Arは、各々2価のアリーレン基または2価の芳香族複素環基を表す。Z、Z、Z、Zは、各々窒素原子を少なくとも一つ含む6員の芳香族複素環を表し、Lは、2価の連結基を表す。〕
(第33の態様)
前記第二電極は、スパッタ法で形成したことを特徴とする第1〜第32の態様のいずれか1つに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0075】
(第34の態様)
前記発光層が、りん光性発光層であることを特徴とする第1〜第33の態様のいずれか1つに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0076】
(第35の態様)
前記一般式(A)で表される化合物が、発光層に含有されることを特徴とする第1〜第34の態様のいずれか1つに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0077】
(第36の態様)
前記構成層が少なくとも一層の電子輸送層を含み、該電子輸送層が前記一般式(A)で表される化合物を含有することを特徴とする第1〜第35の態様のいずれか1つに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0078】
(第37の態様)
前記りん光性発光層が、オスミウム、イリジウム、ロジウムまたは白金錯体系化合物を含有することを特徴とする第34〜第36の態様のいずれか1つに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0079】
(第38の態様)
白色に発光することを特徴とする第1〜第37の態様のいずれか1つに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0080】
(第39の態様)
第1〜第38の態様のいずれか1つに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を備えたことを特徴とする表示装置。
【0081】
(第40の態様)
第1〜第38の態様のいずれか1つに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を備えたことを特徴とする照明装置。
【0082】
(第41の態様)
第40の態様に記載の照明装置と、表示手段として液晶素子と、を備えたことを特徴とする表示装置。
【発明の効果】
【0083】
本発明により、高い発光効率を示し、発光寿命が長く、且つ、発光欠陥が低減された有機エレクトロルミネッセンス素子、該有機エレクトロルミネッセンス素子を有する表示装置、照明装置を提供することが出来た。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】有機EL素子から構成される表示装置の一例を示した模式図である。
【図2】表示部の模式図である。
【図3】画素の模式図である。
【図4】パッシブマトリクス方式フルカラー表示装置の模式図である。
【図5】封止構造を有する有機EL素子の一例を示す模式図である。
【図6】ボトムエミッション型の有機EL素子の層構成の一例を示す模式図である。
【図7】トップエミッション型の有機EL素子の層構成の一例を示す模式図である。
【図8】有機EL素子に用いる、TFTを有する基板の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0085】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子においては、請求項1〜39のいずれか1項に規定の構成にすることにより、第二電極形成の際にもダメージを受けず、発光効率が高く、発光寿命が長く、且つ、発光欠陥が低減された有機EL素子を得ることが出来た。更に、前記有機EL素子を用いて、高輝度の表示装置、照明装置を得ることが出来た。
【0086】
以下、本発明に係る各構成要素の詳細について、順次説明する。
【0087】
本発明者等は、図6に示されるような、従来の有機EL素子の問題点である、駆動用素子205が発光を遮ることによる発光効率低減を改善するために、図7(尚、図7の各層構成は、図6と同様である)の層構成に示すような、陰極側から発光を取り出す方式を検討し、その際、陰極として設ける、透明電極を製膜する際、高いエネルギーが有機薄膜層(例えば、電子輸送層)に印可されても、ダメージを少なくする手段を種々検討し、本発明に係る一般式(A)で表される化合物を用いて形成した有機層(例えば、電子輸送層等)が透明電極作製時にも熱的なダメージをうけず、結果的に、発光効率低下や局所的発熱によるダークスポット発生が抑制されることが判った。
【0088】
以下、一般式(A)で表される化合物を詳しく説明する。
【0089】
《一般式(A)で表される化合物》
本発明に係る一般式(A)で表される化合物は、本発明の有機EL素子のいずれの構成層に含有されてもよいが、本発明に記載の効果をより好ましく得る観点からは、前記一般式(A)で表される化合物は、後述する発光層または電子輸送層に含有されることが好ましい。また、発光層に用いられる場合は、ホスト化合物として好ましく用いられる。
【0090】
一般式(A)において、X〜Xのいずれかが炭素原子であり、該炭素原子に結合しているR〜Rで各々表される置換基としては、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基等)、アルキニル基(例えば、エチニル基、プロパルギル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基等)、芳香族複素環基(例えば、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、トリアジニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、キナゾリニル基、フタラジニル基等)、複素環基(例えば、ピロリジル基、イミダゾリジル基、モルホリル基、オキサゾリジル基等)、アルコキシル基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基等)、シクロアルコキシル基(例えば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、ドデシルチオ基等)、シクロアルキルチオ基(例えば、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等)、スルファモイル基(例えば、アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、オクチルアミノスルホニル基、ドデシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、ナフチルアミノスルホニル基、2−ピリジルアミノスルホニル基等)、アシル基(例えば、アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、オクチルカルボニル基、2−エチルヘキシルカルボニル基、ドデシルカルボニル基、フェニルカルボニル基、ナフチルカルボニル基、ピリジルカルボニル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、オクチルカルボニルオキシ基、ドデシルカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基等)、アミド基(例えば、メチルカルボニルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、ジメチルカルボニルアミノ基、プロピルカルボニルアミノ基、ペンチルカルボニルアミノ基、シクロヘキシルカルボニルアミノ基、2−エチルヘキシルカルボニルアミノ基、オクチルカルボニルアミノ基、ドデシルカルボニルアミノ基、フェニルカルボニルアミノ基、ナフチルカルボニルアミノ基等)、カルバモイル基(例えば、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、ペンチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、オクチルアミノカルボニル基、2−エチルヘキシルアミノカルボニル基、ドデシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、ナフチルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基等)、ウレイド基(例えば、メチルウレイド基、エチルウレイド基、ペンチルウレイド基、シクロヘキシルウレイド基、オクチルウレイド基、ドデシルウレイド基、フェニルウレイド基ナフチルウレイド基、2−ピリジルアミノウレイド基等)、スルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、ブチルスルフィニル基、シクロヘキシルスルフィニル基、2−エチルヘキシルスルフィニル基、ドデシルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、ナフチルスルフィニル基、2−ピリジルスルフィニル基等)、アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ブチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基、ドデシルスルホニル基等)、アリールスルホニル基(フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基、2−ピリジルスルホニル基等)、アミノ基(例えば、アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ドデシルアミノ基、アニリノ基、ナフチルアミノ基、2−ピリジルアミノ基等)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、フッ化炭化水素基(例えば、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタフルオロフェニル基等)、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、シリル基(例えば、トリメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリフェニルシリル基、フェニルジエチルシリル基等)、等が挙げられる。
【0091】
これらの置換基は、上記の置換基によって更に置換されていてもよい。また、これらの置換基は複数が互いに結合して環を形成していてもよい。
【0092】
好ましい置換基としては、アルキル基、シクロアルキル基、フッ化炭化水素基、アリール基、芳香族複素環基である。
【0093】
また、隣り合ったR〜Rは互いに結合して環を形成しても良い。
【0094】
一般式(A)において、Rで表される置換基は、一般式(A)において、R〜Rで各々表される置換基と同義である。
【0095】
更に、本発明の一般式(A)で表される化合物の中で、好ましく用いられるのは、下記一般式(1)で表される化合物である。
【0096】
《一般式(1)で表される化合物》
本発明に係る一般式(1)で表される化合物について説明する。
【0097】
本発明者等は、鋭意検討の結果、前記一般式(1)で表される化合物を用いた有機EL素子は、発光効率が高くなることを見出した。更に、前記一般式(1)で表される化合物を用いた有機EL素子は、長寿命となることを見出した。
【0098】
前記一般式(1)において、Zは置換基を有してもよい芳香族複素環を表し、Zは置換基を有してもよい芳香族複素環、もしくは芳香族炭化水素環を表し、Zは2価の連結基、もしくは単なる結合手を表す。R101は水素原子、もしくは置換基を表す。
【0099】
前記一般式(1)において、Z、Zで表される芳香族複素環としては、フラン環、チオフェン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、ベンゾイミダゾール環、オキサジアゾール環、トリアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、チアゾール環、インドール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、キノキサリン環、キナゾリン環、フタラジン環、カルバゾール環、カルボリン環、カルボリン環を構成する炭化水素環の炭素原子が更に窒素原子で置換されている環等が挙げられる。更に、前記芳香族複素環は、後述するR101で表される置換基を有してもよい。
【0100】
前記一般式(1)において、Zで表される芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環、ビフェニル環、ナフタレン環、アズレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピレン環、クリセン環、ナフタセン環、トリフェニレン環、o−テルフェニル環、m−テルフェニル環、p−テルフェニル環、アセナフテン環、コロネン環、フルオレン環、フルオラントレン環、ナフタセン環、ペンタセン環、ペリレン環、ペンタフェン環、ピセン環、ピレン環、ピラントレン環、アンスラアントレン環等が挙げられる。更に、前記芳香族炭化水素環は、R101で表される置換基を有してもよい。
【0101】
一般式(1)において、R101で表される置換基としては、上記一般式(A)において、X〜Xのいずれかが炭素原子であり、該炭素原子に結合しているR〜Rで各々表される置換基と同義である。
【0102】
2価の連結基としては、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基などの炭化水素基のほか、ヘテロ原子を含むものであってもよく、また、チオフェン−2,5−ジイル基や、ピラジン−2,3−ジイル基のような、芳香族複素環を有する化合物(ヘテロ芳香族化合物ともいう)に由来する2価の連結基であってもよいし、酸素や硫黄などのカルコゲン原子であってもよい。また、アルキルイミノ基、ジアルキルシランジイル基やジアリールゲルマンジイル基のようなヘテロ原子を介して連結する基でもよい。
【0103】
単なる結合手とは、連結する置換基同士を直接結合する結合手である。
【0104】
上記2価の連結基の具体例としては、後述する、一般式(10)において、Lで表される2価の連結基と同様のものを用いることが出来る。
【0105】
本発明においては、前記一般式(1)のZが6員環であることが好ましい。これにより、より発光効率を高くすることができる。更に、一層長寿命化させることができる。
【0106】
また、本発明においては、前記一般式(1)のZが6員環であることが好ましい。これにより、より発光効率を高くすることができる。更に、より一層長寿命化させることができる。
【0107】
更に、前記一般式(1)のZとZを共に6員環とすることで、より一層発光効率と高くすることができるので好ましい。更に、より一層長寿命化させることができるので好ましい。
【0108】
前記一般式(1)で表される化合物で好ましいのは、前記一般式(1−1)〜(1−13)で各々表される化合物である。
【0109】
前記一般式(1−1)において、R501〜R507は、各々独立に、水素原子、もしくは置換基を表す。
【0110】
前記一般式(1−1)で表される化合物を用いることで、より発光効率の高い有機EL素子とすることができる。更に、より長寿命の有機EL素子とすることができる。
【0111】
前記一般式(1−2)において、R511〜R517は、各々独立に、水素原子、もしくは置換基を表す。
【0112】
前記一般式(1−2)で表される化合物を用いることで、より発光効率の高い有機EL素子とすることができる。更に、より長寿命の有機EL素子とすることができる。
【0113】
前記一般式(1−3)において、R521〜R527は、各々独立に、水素原子、もしくは置換基を表す。
【0114】
前記一般式(1−3)で表される化合物を用いることで、より発光効率の高い有機EL素子とすることができる。更に、より長寿命の有機EL素子とすることができる。
【0115】
前記一般式(1−4)において、R531〜R537は、各々独立に、水素原子、もしくは置換基を表す。
【0116】
前記一般式(1−4)で表される化合物を用いることで、より発光効率の高い有機EL素子とすることができる。更に、より長寿命の有機EL素子とすることができる。
【0117】
前記一般式(1−5)において、R541〜R548は、各々独立に、水素原子、もしくは置換基を表す。
【0118】
前記一般式(1−5)で表される化合物を用いることで、より発光効率の高い有機EL素子とすることができる。更に、より長寿命の有機EL素子とすることができる。
【0119】
前記一般式(1−6)において、R551〜R558は、各々独立に、水素原子、もしくは置換基を表す。
【0120】
前記一般式(1−6)で表される化合物を用いることで、より発光効率の高い有機EL素子とすることができる。更に、より長寿命の有機EL素子とすることができる。
【0121】
前記一般式(1−7)において、R561〜R567は、各々独立に、水素原子、もしくは置換基を表す。
【0122】
前記一般式(1−7)で表される化合物を用いることで、より発光効率の高い有機EL素子とすることができる。更に、より長寿命の有機EL素子とすることができる。
【0123】
前記一般式(1−8)において、R571〜R577は、各々独立に、水素原子、もしくは置換基を表す。
【0124】
前記一般式(1−8)で表される化合物を用いることで、より発光効率の高い有機EL素子とすることができる。更に、より長寿命の有機EL素子とすることができる。
【0125】
前記一般式(1−9)において、Rは、水素原子、もしくは置換基を表す。また、複数のRは、各々同一でもよく、異なっていてもよい。
【0126】
前記一般式(1−9)で表される化合物を用いることで、より発光効率の高い有機EL素子とすることができる。更に、より長寿命の有機EL素子とすることができる。
【0127】
前記一般式(1−10)において、Rは、水素原子、もしくは置換基を表す。また、複数のRは、各々同一でもよく、異なっていてもよい。
【0128】
前記一般式(1−10)で表される化合物を用いることで、より発光効率の高い有機EL素子とすることができる。更に、長寿命の有機EL素子とすることができる。
【0129】
また、前記一般式(1)で表される化合物で好ましいものは、前記一般式(2−1)〜(2−8)のいずれかで表される基を少なくとも一つを有する化合物である。特に、分子内に前記一般式(2−1)〜(2−8)のいずれかで表される基を2つから4つ有することがより好ましい。このとき、前記一般式(1)で表される構造において、R101を除いた部分が、前記一般式(2−1)〜(2−8)に置き換わる場合を含む。
【0130】
このとき、特に前記一般式(3)〜(17)で表される化合物であることが本発明の効果を得る上で好ましい。
【0131】
前記一般式(3)において、R601〜R606は、水素原子、もしくは置換基を表すが、R601〜R606の少なくとも一つは前記一般式(2−1)〜(2−4)のいずれかで表される基を表す。
【0132】
前記一般式(3)で表される化合物を用いることにより、より発光効率の高い有機EL素子とすることができる。更に、より長寿命の有機EL素子とすることができる。
【0133】
前記一般式(4)において、R611〜R620は、水素原子、もしくは置換基を表すが、R611〜R620の少なくとも一つは前記一般式(2−1)〜(2−4)のいずれかで表される基を表す。
【0134】
前記一般式(4)で表される化合物を用いることで、より発光効率の高い有機EL素子とすることができる。更に、より長寿命の有機EL素子とすることができる。
【0135】
前記一般式(5)において、R621〜R623は、水素原子、もしくは置換基を表すが、R621〜R623の少なくとも一つは前記一般式(2−1)〜(2−4)のいずれかで表される基を表す。
【0136】
前記一般式(5)で表される化合物を用いることで、より発光効率の高い有機EL素子とすることができる。更に、より長寿命の有機EL素子とすることができる。
【0137】
前記一般式(6)において、R631〜R645は、水素原子、もしくは置換基を表すが、R631〜R645の少なくとも一つは前記一般式(2−1)〜(2−4)のいずれかで表される基を表す。
【0138】
前記一般式(6)で表される化合物を用いることで、より発光効率の高い有機EL素子とすることができる。更に、より長寿命の有機EL素子とすることができる。
【0139】
前記一般式(7)において、R651〜R656は、水素原子、もしくは置換基を表すが、R651〜R656の少なくとも一つは前記一般式(2−1)〜(2−4)のいずれかで表される基を表す。naは0〜5の整数を表し、nbは1〜6の整数を表すが、naとnbの和が6である。
【0140】
前記一般式(7)で表される化合物を用いることで、より発光効率の高い有機EL素子とすることができる。更に、より長寿命の有機EL素子とすることができる。
【0141】
前記一般式(8)において、R661〜R672は、水素原子、もしくは置換基を表すが、R661〜R672の少なくとも一つは前記一般式(2−1)〜(2−4)のいずれかで表される基を表す。
【0142】
前記一般式(8)で表される化合物を用いることで、より発光効率の高い有機EL素子とすることができる。更に、より長寿命の有機EL素子とすることができる。
【0143】
前記一般式(9)において、R681〜R688は、水素原子、もしくは置換基を表すが、R681〜R688の少なくとも一つは前記一般式(2−1)〜(2−4)のいずれかで表される基を表す。
【0144】
前記一般式(9)で表される化合物を用いることで、より発光効率の高い有機EL素子とすることができる。更に、より長寿命の有機EL素子とすることができる。
【0145】
前記一般式(10)において、R691〜R700は、水素原子、もしくは置換基を表すが、R691〜R700の少なくとも一つは前記一般式(2−1)〜(2−4)のいずれかで表される基を表す。
【0146】
前記一般式(10)において、Lで表される2価の連結基としては、アルキレン基(例えば、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、プロピレン基、エチルエチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、2,2,4−トリメチルヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基、ウンデカメチレン基、ドデカメチレン基、シクロヘキシレン基(例えば、1,6−シクロヘキサンジイル基等)、シクロペンチレン基(例えば、1,5−シクロペンタンジイル基など)等)、アルケニレン基(例えば、ビニレン基、プロペニレン基等)、アルキニレン基(例えば、エチニレン基、3−ペンチニレン基等)、アリーレン基などの炭化水素基のほか、ヘテロ原子を含む基(例えば、−O−、−S−等のカルコゲン原子を含む2価の基、−N(R)−基、ここで、Rは、水素原子またはアルキル基を表し、該アルキル基は、前記一般式(1)において、R101で表されるアルキル基と同義である)等が挙げられる。
【0147】
また、上記のアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基の各々においては、2価の連結基を構成する炭素原子の少なくとも一つが、カルコゲン原子(酸素、硫黄等)や前記−N(R)−基等で置換されていても良い。
【0148】
更に、Lで表される2価の連結基としては、例えば、2価の複素環基を有する基が用いられ、例えば、オキサゾールジイル基、ピリミジンジイル基、ピリダジンジイル基、ピランジイル基、ピロリンジイル基、イミダゾリンジイル基、イミダゾリジンジイル基、ピラゾリジンジイル基、ピラゾリンジイル基、ピペリジンジイル基、ピペラジンジイル基、モルホリンジイル基、キヌクリジンジイル基等が挙げられ、また、チオフェン−2,5−ジイル基や、ピラジン−2,3−ジイル基のような、芳香族複素環を有する化合物(ヘテロ芳香族化合物ともいう)に由来する2価の連結基であってもよい。
【0149】
また、アルキルイミノ基、ジアルキルシランジイル基やジアリールゲルマンジイル基のようなヘテロ原子を会して連結する基であってもよい。
【0150】
前記一般式(10)で表される化合物を用いることで、より発光効率の高い有機EL素子とすることができる。更に、より長寿命の有機EL素子とすることができる。
【0151】
前記一般式(11)〜一般式(15)で各々表される化合物において、R、Rで各々表される置換基としては、前記一般式(1)において、R101で表される置換基と同時である。
【0152】
前記一般式(15)において、Z、Z、Z、Zで各々表される、各々窒素原子を少なくとも一つ含む6員の芳香族複素環としては、例えば、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環等が挙げられる。
【0153】
前記一般式(16)において、Z、Zで各々表される、各々窒素原子を少なくとも一つ含む6員の芳香族複素環としては、例えば、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環等が挙げられる。
【0154】
前記一般式(16)において、Ar、Arで各々表されるアリーレン基としては、o−フェニレン基、m−フェニレン基、p−フェニレン基、ナフタレンジイル基、アントラセンジイル基、ナフタセンジイル基、ピレンジイル基、ナフチルナフタレンジイル基、ビフェニルジイル基(例えば、3,3′−ビフェニルジイル基、3,6−ビフェニルジイル基等)、テルフェニルジイル基、クアテルフェニルジイル基、キンクフェニルジイル基、セキシフェニルジイル基、セプチフェニルジイル基、オクチフェニルジイル基、ノビフェニルジイル基、デシフェニルジイル基等が挙げられる。また、前記アリーレン基は更に後述する置換基を有していてもよい。
【0155】
前記一般式(16)において、Ar、Arで各々表される2価の芳香族複素環基は、フラン環、チオフェン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、ベンゾイミダゾール環、オキサジアゾール環、トリアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、チアゾール環、インドール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、キノキサリン環、キナゾリン環、フタラジン環、カルバゾール環、カルボリン環、カルボリン環を構成する炭化水素環の炭素原子が更に窒素原子で置換されている環等から導出される2価の基等が挙げられる。更に、前記芳香族複素環基は、前記R101で表される置換基を有してもよい。
【0156】
前記一般式(16)において、Lで表される2価の連結基としては、前記一般式(10)において、Lで表される2価の連結基と同義であるが、好ましくはアルキレン基、−O−、−S−等のカルコゲン原子を含む2価の基であり、もっとも好ましくはアルキレン基である。
【0157】
前記一般式(17)において、Ar、Arで、各々表されるアリーレン基は、前記一般式(16)において、Ar、Arで各々表されるアリーレン基と同義である。
【0158】
前記一般式(17)において、Ar、Arで各々表される芳香族複素環基は、前記一般式(16)において、Ar、Arで各々表される2価の芳香族複素環基と同義である。
【0159】
前記一般式(17)において、Z、Z、Z、Zで各々表される、各々窒素原子を少なくとも一つ含む6員の芳香族複素環としては、例えば、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環等が挙げられる。
【0160】
前記一般式(17)において、Lで表される2価の連結基としては、前記一般式(10)において、Lで表される2価の連結基と同義であるが、好ましくはアルキレン基、−O−、−S−等のカルコゲン原子を含む2価の基であり、もっとも好ましくはアルキレン基である。
【0161】
以下に、本発明に係る一般式(1)で表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0162】
【化30】

【0163】
【化31】

【0164】
【化32】

【0165】
【化33】

【0166】
【化34】

【0167】
【化35】

【0168】
【化36】

【0169】
【化37】

【0170】
【化38】

【0171】
【化39】

【0172】
【化40】

【0173】
【化41】

【0174】
【化42】

【0175】
【化43】

【0176】
【化44】

【0177】
【化45】

【0178】
【化46】

【0179】
【化47】

【0180】
【化48】

【0181】
【化49】

【0182】
【化50】

【0183】
【化51】

【0184】
【化52】

【0185】
【化53】

【0186】
【化54】

【0187】
【化55】

【0188】
【化56】

【0189】
【化57】

【0190】
【化58】

【0191】
【化59】

【0192】
【化60】

【0193】
【化61】

【0194】
【化62】

【0195】
【化63】

【0196】
【化64】

【0197】
【化65】

【0198】
これらの有機EL素子用材料のアザカルバゾール環やその類緑体は、J.Chem.Soc.,PerkinTrans.1,1505〜1510(1999)、Pol.J.Chem.,54,1585(1980)、(TetrahedronLett.41(2000),481〜484)に記載される合成法に従って合成できる。
【0199】
合成されたアザカルバゾール環やその類緑体と、芳香族炭化水素環、芳香族複素環、芳香環、複素環、アルキル基などの、コア、連結基への導入は、ウルマンカップリング、Pd触媒を用いたカップリング、スズキカップリング等公知の方法を用いることができる。
【0200】
本発明に係る一般式(A)で表される化合物は、好ましくは分子量が400以上のものを用いる。
【0201】
次に本発明の有機EL素子の層構成の好ましい具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0202】
I:陽極/発光層/陰極
II:陽極/発光層/電子輸送層/陰極
III:陽極/陽極バッファー層/発光層/陰極
IV:陽極/陽極バッファー層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極
V:陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
VI:陽極/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極
VII:陽極/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極バッファー層/陰極
VIII:陽極/陽極バッファー層/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極バッファー層/陰極
《発光層》
本発明に係る発光層は、発光材料を含有し、電極または電子輸送層、正孔輸送層から注入されてくる電子及び正孔が再結合して発光する層であり、発光する部分は発光層の層内であっても発光層と隣接層との界面であってもよい。
【0203】
本発明では、発光材料としてはリン光性化合物を用いることが好ましい。これにより、高い発光輝度と発光効率を得ることができる。リン光性化合物は、励起三重項からの発光が観測される化合物であり、室温(25℃)にてリン光発光する化合物であり、リン光量子収率が、25℃において0.01以上の化合物である。リン光量子収率は好ましくは0.1以上である。
【0204】
上記リン光量子収率は、第4版実験化学講座7の分光IIの398頁(1992年版、丸善)に記載の方法により測定できる。溶液中でのリン光量子収率は種々の溶媒を用いて測定できるが、本発明に用いられるリン光性化合物は、任意の溶媒の何れかにおいて上記リン光量子収率が達成されればよい。
【0205】
リン光性化合物の発光は、原理としては2種挙げられ、一つはキャリアが輸送されるホスト化合物上でキャリアの再結合が起こってホスト化合物の励起状態が生成し、このエネルギーをリン光性化合物に移動させることでリン光性化合物からの発光を得るというエネルギー移動型、もう一つはリン光性化合物がキャリアトラップとなり、リン光性化合物上でキャリアの再結合が起こりリン光性化合物からの発光が得られるというキャリアトラップ型であるが、いずれの場合においても、リン光性化合物の励起状態のエネルギーはホスト化合物の励起状態のエネルギーよりも低いことが条件である。
【0206】
リン光性化合物は、有機EL素子の発光層に使用される公知のものの中から適宜選択して用いることができる。
【0207】
発光層中の発光ホストに対する発光ドーパント(因みに、後述する、本発明に係るリン光発光性化合物は、発光ドーパントの一種である。)との混合比は好ましくは質量で0.1質量%〜30質量%未満の範囲に調整することである。
【0208】
本発明においては、リン光発光性化合物は、オスミウム、イリジウム、ロジウムまたは白金錯体系化合物であることが好ましく、これにより、より一層発光輝度と発光効率を向上させることができる。
【0209】
本発明に用いられるりん光発光性化合物(リン光性化合物ともいう)は、溶液中のリン光量子収率が25℃において0.001以上であることが好ましく、更に好ましくは0.01以上であり、特に好ましくは0.1以上である。
【0210】
また、本発明に用いられるホスト化合物とは、発光層に含有される化合物のうちで室温(25℃)においてリン光発光のリン光量子収率が、0.01未満の化合物である。
【0211】
リン光量子収率は、第4版実験化学講座7の分光IIの398ページ(1992年版、丸善)に記載の方法で測定することが出来る以下に、本発明で用いられるりん光発光性化合物の具体例を示すが、これらに限定されるものではない。これらの化合物は、例えば、Inorg.Chem.40巻、1704〜1711に記載の方法等により合成できる。
【0212】
【化66】

【0213】
【化67】

【0214】
【化68】

【0215】
【化69】

【0216】
また、りん光発光性化合物(発光ドーパント)としては、下記広報等に記載の化合物を用いることも出来る。
【0217】
例えば、国際公開第00/70655号パンフレット、特開2002−280178号公報、特開2001−181616号公報、特開2002−280179号公報、特開2001−181617号公報、特開2002−280180号公報、特開2001−247859号公報、特開2002−299060号公報、特開2001−313178号公報、特開2002−302671号公報、特開2001−345183号公報、特開2002−324679号公報、国際公開第02/15645号パンフレット、特開2002−332291号公報、特開2002−50484号公報、特開2002−332292号公報、特開2002−83684号公報、特表2002−540572号公報、特開2002−117978号公報、特開2002−338588号公報、特開2002−170684号公報、特開2002−352960号公報、国際公開第01/93642号パンフレット、特開2002−50483号公報、特開2002−100476号公報、特開2002−173674号公報、特開2002−359082号公報、特開2002−175884号公報、特開2002−363552号公報、特開2002−184582号公報、特開2003−7469号公報、特表2002−525808号公報、特開2003−7471号公報、特表2002−525833号公報、特開2003−31366号公報、特開2002−226495号公報、特開2002−234894号公報、特開2002−235076号公報、特開2002−241751号公報、特開2001−319779号公報、特開2001−319780号公報、特開2002−62824号公報、特開2002−100474号公報、特開2002−203679号公報、特開2002−343572号公報、特開2002−203678号公報等が挙げられる。
【0218】
本発明においては、リン光性化合物のリン光発光極大波長としては特に制限されず、原理的には、中心金属、配位子、配位子の置換基等を選択することで得られる発光波長を変化させることができるが、リン光性化合物のリン光発光波長が380〜480nmにリン光発光の極大波長を有することが好ましい。このような青色リン光発光の有機EL素子や、白色リン光発光の有機EL素子で、より高い発光輝度を示し、かつ、より半減寿命の長い有機エレクトロルミネッセンス素子とすることができる。
【0219】
また、リン光性化合物を複数種用いることで、異なる発光を混ぜることが可能となり、これにより任意の発光色を得ることができる。リン光性化合物の種類、ドープ量を調整することで白色発光が可能であり、照明装置、バックライトへの応用もできる。
【0220】
また、発光層には、公知のホスト化合物を複数種併用して用いてもよい。ホスト化合物を複数種もちいることで、電荷の移動を調整することが可能であり、有機EL素子を高効率化することができる。これらの公知のホスト化合物としては、正孔輸送能、電子輸送能を有しつつ、かつ、発光の長波長化を防ぎ、なおかつ高Tg(ガラス転移温度)である化合物が好ましい。
【0221】
公知のホスト化合物の具体例としては、以下の文献に記載されている化合物が挙げられる。
【0222】
特開2001−257076号公報、同2002−308855号公報、同2001−313179号公報、同2002−319491号公報、同2001−357977号公報、同2002−334786号公報、同2002−8860号公報、同2002−334787号公報、同2002−15871号公報、同2002−334788号公報、同2002−43056号公報、同2002−334789号公報、同2002−75645号公報、同2002−338579号公報、同2002−105445号公報、同2002−343568号公報、同2002−141173号公報、同2002−352957号公報、同2002−203683号公報、同2002−363227号公報、同2002−231453号公報、同2003−3165号公報、同2002−234888号公報、同2003−27048号公報、同2002−255934号公報、同2002−260861号公報、同2002−280183号公報、同2002−299060号公報、同2002−302516号公報、同2002−305083号公報、同2002−305084号公報、同2002−308837号公報等。
【0223】
また、発光層は、さらに長波長な蛍光極大波長を有する蛍光性化合物を含有していてもよい。この場合、ホスト化合物とリン光発光性化合物から蛍光性化合物へのエネルギー移動で、有機EL素子としての電界発光は該蛍光性化合物からの発光も得られる。該蛍光性化合物として好ましいのは、溶液状態で蛍光量子収率が高いものである。ここで、該蛍光性化合物の蛍光量子収率は10%以上、特に30%以上が好ましい。具体的な蛍光性化合物としては、クマリン系色素、ピラン系色素、シアニン系色素、クロコニウム系色素、スクアリウム系色素、オキソベンゾアントラセン系色素、フルオレセイン系色素、ローダミン系色素、ピリリウム系色素、ペリレン系色素、スチルベン系色素、ポリチオフェン系色素等が挙げられる。蛍光量子収率は、前記第4版実験化学講座7の分光IIの362頁(1992年版、丸善)に記載の方法により測定することができる。
【0224】
本明細書の発光する色は、「新編色彩科学ハンドブック」(日本色彩学会編、東京大学出版会、1985)の108頁の図4.16において、分光放射輝度計CS−1000(ミノルタ製)で測定した結果をCIE色度座標に当てはめたときの色で決定される。
【0225】
発光層は、上記化合物を、例えば真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法、インクジェット法等の公知の薄膜化法により製膜して形成することができるが、好ましくはスピンコート法である。発光層としての膜厚は特に制限はないが、通常は5nm〜5μm、好ましくは5nm〜200nmの範囲で選ばれる。この発光層は、これらのリン光性化合物やホスト化合物が1種または2種以上からなる一層構造であってもよいし、あるいは、同一組成または異種組成の複数層からなる積層構造であってもよい。
【0226】
《電子輸送層》
電子輸送層とは電子を輸送する機能を有する材料からなり、広い意味で電子注入層、正孔阻止層も電子輸送層に含まれる。本発明に用いられる電子輸送層は単層もしくは複数層設けることができる。また、電子輸送層が陰極の隣接層として設けられている場合には、本発明に係る一般式(A)で表される化合物を有機EL素子の電子輸送層形成に用いることにより、陰極形成の際にも殆どダメージを受けないので、結果的に、高い発光効率を示し、発光寿命が長く、且つ、発光欠陥が低減された有機エレクトロルミネッセンス素子を得ることができることがわかった。
【0227】
本発明に係る一般式(A)で表される化合物の耐熱性が高いことが一つの理由であると本発明者等は考えている。
【0228】
また、上記以外に電子輸送層に用いられる電子輸送材料(正孔阻止材料を兼ねる)としては、この電子輸送層に用いられる材料(以下、電子輸送材料という)の例としては、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタン及びアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体などが挙げられる。さらに、上記オキサジアゾール誘導体において、オキサジアゾール環の酸素原子を硫黄原子に置換したチアジアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有するキノキサリン誘導体も、電子輸送材料として併用することは可能である。
【0229】
さらに、電子輸送層は、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有していればよく、従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることも可能である。
【0230】
更に、これらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
【0231】
また、8−キノリノール誘導体の金属錯体、例えばトリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alq)、トリス(5,7−ジクロロ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5,7−ジブロモ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(2−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、ビス(8−キノリノール)亜鉛(Znq)など、及びこれらの金属錯体の中心金属がIn、Mg、Cu、Ca、Sn、Ga又はPbに置き替わった金属錯体も、電子輸送材料として用いることができる。その他、メタルフリー若しくはメタルフタロシアニン、又はそれらの末端がアルキル基やスルホン酸基などで置換されているものも、電子輸送材料として好ましく用いることができる。また、発光層の材料として例示したジスチリルピラジン誘導体も、電子輸送材料として用いることができるし、正孔注入層、正孔輸送層と同様に、n型−Si、n型−SiCなどの無機半導体も電子輸送材料として用いることができる。
【0232】
電子輸送層に用いられる好ましい化合物は、415nm以下に蛍光極大波長を有することが好ましい。すなわち、電子輸送層に用いられる化合物は、電子輸送能を有しつつかつ、発光の長波長化を防ぎ、なおかつ高Tgである化合物が好ましい。
【0233】
この電子輸送層は、上記電子輸送材料を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法、LB法等の公知の方法により、薄膜化することにより形成することができる。電子輸送層の膜厚については特に制限はないが、通常は5〜5000nm程度である。この電子輸送層は、上記材料の一種または二種以上からなる一層構造であってもよい。
【0234】
《注入層:電子注入層、正孔注入層》
注入層は、必要に応じて設け、電子注入層と正孔注入層があり、上記のごとく陽極と発光層または正孔輸送層の間、及び陰極と発光層または電子輸送層との間に存在させてもよい。
【0235】
注入層とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために電極と有機層間に設けられる層のことで、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(123〜166頁)に詳細に記載されており、正孔注入層(陽極バッファー層)と電子注入層(陰極バッファー層)とがある。
【0236】
陽極バッファー層(正孔注入層)は、特開平9−45479号公報、同9−260062号公報、同8−288069号公報等にもその詳細が記載されており、具体例として、銅フタロシアニンに代表されるフタロシアニンバッファー層、酸化バナジウムに代表される酸化物バッファー層、アモルファスカーボンバッファー層、ポリアニリン(エメラルディン)やポリチオフェン等の導電性高分子を用いた高分子バッファー層等が挙げられる。なかでも、ポリジオキシチオフェン類を用いたものが好ましく、これにより、より一層高い発光輝度と発光効率を示し、かつさらに長寿命である有機EL素子とすることができる。また、陽極バッファー層は、陽極と発光層との間にあり、陰極と発光層とに隣接するように設けられていることが好ましい。これにより、より一層高い発光輝度と発光効率を示し、かつさらに長寿命である有機EL素子とすることができる。
【0237】
陰極バッファー層(電子注入層)は、特開平6−325871号公報、同9−17574号公報、同10−74586号公報等にもその詳細が記載され、具体的にはストロンチウムやアルミニウム等に代表される金属バッファー層、フッ化リチウムに代表されるアルカリ金属化合物バッファー層、フッ化マグネシウムに代表されるアルカリ土類金属化合物バッファー層、酸化アルミニウムに代表される酸化物バッファー層等が挙げられる。
【0238】
上記バッファー層(注入層)はごく薄い膜であることが望ましく、素材にもよるが、その膜厚は0.1nm〜100nmの範囲が好ましい。
【0239】
阻止層は、上記のごとく、有機化合物薄膜の基本構成層の他に必要に応じて設けられるものである。例えば、特開平11−204258号公報、同11−204359号公報、及び「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の237頁等に記載されている正孔阻止(ホールブロック)層がある。
【0240】
《陰極》
陰極としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。これらの電極物質を抵抗加熱蒸着、スパッタ法またはイオンプレイティング法によって作製することが好ましい。また、図7に示すように、陰極204側から発光を取り出す場合は、陰極204側から光を取り出すので、陰極204の形成材料としては、導電性を有し、且つ、透光性の高い材料、例えば、酸化すず、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化アンチモン、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化アルミニウムなどの透明導電性酸化物若しくは、それらの混合物を用いることができる。また、図7に示すように、陰極204側から発光を取り出す、本発明の有機EL素子では、光を取り出す側の陰極204は、抵抗加熱蒸着、スパッタ法またはイオンプレイティング法によって作製することが好ましい。また、陰極204の形成材料としては、導電性を有し、且つ、可視光を透過する材料、例えば、酸化すず、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化アンチモン、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化アルミニウムなどの透明導電性酸化物若しくは、それらの混合物を用いることができる。
【0241】
《阻止層:正孔阻止層、電子阻止層》
正孔阻止層とは広い意味では電子輸送層であり、電子を輸送する機能を有しつつ正孔を輸送する能力が著しく小さい材料からなり、電子を輸送しつつ正孔を阻止することで電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。
【0242】
正孔阻止層は、正孔輸送層から移動してくる正孔を陰極に到達するのを阻止する役割と、陰極から注入された電子を効率よく発光層の方向に輸送することができる化合物により形成される。正孔阻止層を構成する材料に求められる物性としては、電子移動度が高く正孔移動度が低いこと、及び正孔を効率的に発光層内に閉じこめるために、発光層のイオン化ポテンシャルより大きいイオン化ポテンシャルの値を有するか、発光層のバンドギャップより大きいバンドギャップを有することが好ましい。
【0243】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、発光層に隣接して正孔阻止層を設けることが好ましい。これにより、より一層発光輝度と発光効率を向上させることができる。
【0244】
また、本発明の有機EL素子では、正孔阻止層が、前記一般式(A)で表される化合物の少なくとも一種を含有することが好ましく、これにより、より一層発光輝度と発光効率を向上させることができる。
【0245】
一方、電子阻止層とは広い意味では正孔輸送層であり、正孔を輸送する機能を有しつつ電子を輸送する能力が著しく小さい材料からなり、正孔を輸送しつつ電子を阻止することで電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。
【0246】
《正孔輸送層》
本発明の有機EL素子の構成層のひとつである正孔輸送層について説明する。
【0247】
正孔輸送層とは正孔を輸送する機能を有する材料からなり、広い意味で正孔注入層、電子阻止層も正孔輸送層に含まれる。正孔輸送層、電子輸送層は単層もしくは複数層設けることができる。
【0248】
正孔輸送材料としては、従来、光導伝材料において、正孔の電荷注入輸送材料として慣用されているものやEL素子の正孔注入層、正孔輸送層に使用される公知のものの中から任意のものを選択して用いることができる。
【0249】
正孔輸送材料は、正孔の注入もしくは輸送、電子の障壁性のいずれかを有するものであり、有機物、無機物のいずれであってもよい。例えば、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、また、導電性高分子オリゴマー、特にチオフェンオリゴマー等が挙げられる。
【0250】
正孔輸送材料としては、上記のものを使用することができるが、ポルフィリン化合物、芳香族第三級アミン化合物及びスチリルアミン化合物、特に芳香族第三級アミン化合物を用いることが好ましい。
【0251】
芳香族第三級アミン化合物及びスチリルアミン化合物の代表例としては、N,N,N’,N’−テトラフェニル−4,4’−ジアミノフェニル;N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−〔1,1’−ビフェニル〕−4,4’−ジアミン(TPD);2,2−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)プロパン;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン;N,N,N’,N’−テトラ−p−トリル−4,4’−ジアミノビフェニル;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン;ビス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)フェニルメタン;ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)フェニルメタン;N,N’−ジフェニル−N,N’−ジ(4−メトキシフェニル)−4,4’−ジアミノビフェニル;N,N,N’,N’−テトラフェニル−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル;4,4’−ビス(ジフェニルアミノ)クオードリフェニル;N,N,N−トリ(p−トリル)アミン;4−(ジ−p−トリルアミノ)−4’−〔4−(ジ−p−トリルアミノ)スチリル〕スチルベン;4−N,N−ジフェニルアミノ−(2−ジフェニルビニル)ベンゼン;3−メトキシ−4’−N,N−ジフェニルアミノスチルベンゼン;N−フェニルカルバゾール、さらには、米国特許第5,061,569号明細書に記載されている2個の縮合芳香族環を分子内に有するもの、例えば、4,4’−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル(NPD)、特開平4−308688号公報に記載されているトリフェニルアミンユニットが3つスターバースト型に連結された4,4’,4’’−トリス〔N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ〕トリフェニルアミン(MTDATA)等が挙げられる。
【0252】
更に、これらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
【0253】
また、p型−Si,p型−SiC等の無機化合物も正孔注入材料、正孔輸送材料として使用することができる。
【0254】
また、本発明においては正孔輸送層の正孔輸送材料は415nm以下に蛍光極大波長を有することが好ましい。すなわち、正孔輸送材料は、正孔輸送能を有しつつかつ、発光の長波長化を防ぎ、なおかつ高Tgである化合物が好ましい。
【0255】
この正孔輸送層は、上記正孔輸送材料を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法、LB法等の公知の方法により、薄膜化することにより形成することができる。正孔輸送層の膜厚については特に制限はないが、通常は5〜5000nm程度である。この正孔輸送層は、上記材料の一種または二種以上からなる一層構造であってもよい。
【0256】
《陽極》
有機EL素子における陽極としては、仕事関数の大きい(4eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが好ましく用いられる。このような電極物質の具体例としてはAu等の金属、CuI、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO、ZnO等の導電性透明材料が挙げられる。また、IDIXO(In−ZnO)等非晶質で透明導電膜を作製可能な材料を用いてもよい。陽極は、これらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により、薄膜を形成させ、フォトリソグラフィー法で所望の形状のパターンを形成してもよく、あるいはパターン精度をあまり必要としない場合は(100μm以上程度)、上記電極物質の蒸着やスパッタリング時に所望の形状のマスクを介してパターンを形成してもよい。図7のように、陰極204側から光を取り出す場合は、陽極は反射電極として機能することになるのでできるだけ反射率の高い材料を用いることが好ましく、逆に陽極より光を取り出す場合には、透光性が高いことが望ましく、また、陽極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましい。さらに膜厚は材料にもよるが、通常10nm〜1000nm、好ましくは10nm〜200nmの範囲で選ばれる。
【0257】
《基体(基板、基材、支持体等ともいう)》
本発明の有機EL素子に用いることができる基体としては、ガラス、プラスチック等の種類には特に限定はない。好ましく用いられる基板としては例えばガラス、石英、樹脂フィルム等を挙げることができる。本発明の有機EL素子を用いてアクティブマトリクス型の発光装置を作成するにあたっては、例えば図8に示すように、ガラス基板601上にTFT602が形成されている基板を用いる。TFT602の作製方法は公知のTFTの作製方法に従えば良い。勿論、TFTとしては、従来公知のトップゲート型TFTであってもボトムゲート型TFTであっても構わない。
【0258】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の発光の室温における外部取り出し効率は、1%以上であることが好ましく、より好ましくは2%以上である。ここに、外部取り出し量子効率(%)=有機EL素子外部に発光した光子数/有機EL素子に流した電子数×100である。
【0259】
また、カラーフィルター等の色相改良フィルター等を併用してもよい。
【0260】
本発明の多色表示装置は少なくとも2種類の異なる発光極大波長を有する有機EL素子からなるが、有機EL素子を作製する好適な例を説明する。
【0261】
《有機EL素子の作製方法》
本発明の有機EL素子の作製方法の一例として、陽極/陽極バッファー層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極からなる有機EL素子の作製法について説明する。
【0262】
まず適当な基体上に、所望の電極物質、例えば、陽極用物質からなる層を、1μm以下、好ましくは10nm〜200nmの膜厚になるように、蒸着やスパッタリング等の方法により形成させ、陽極を作製する。次に、この上に素子材料である陽極バッファー層、発光層、正孔阻止層、電子輸送層の有機化合物薄膜を形成させる。
【0263】
この有機化合物薄膜の薄膜化の方法としては、前記の如くスピンコート法、キャスト法、インクジェット法、蒸着法、印刷法等があるが、均質な膜が得られやすく、かつピンホールが生成しにくい等の点から、真空蒸着法またはスピンコート法が特に好ましい。さらに層ごとに異なる製膜法を適用してもよい。製膜に蒸着法を採用する場合、その蒸着条件は、使用する化合物の種類等により異なるが、一般にボート加熱温度50℃〜450℃、真空度10−6Pa〜10−2Pa、蒸着速度0.01nm〜50nm/秒、基板温度−50℃〜300℃、膜厚0.1nm〜5μmの範囲で適宜選ぶことが望ましい。
【0264】
これらの層の形成後、その上に陰極用物質からなる薄膜を、1μm以下好ましくは50nm〜200nmの範囲の膜厚になるように、例えば、蒸着やスパッタリング等の方法により形成させ、陰極を設けることにより、所望の有機EL素子が得られる。この有機EL素子の作製は、一回の真空引きで一貫して正孔注入層から陰極まで作製するのが好ましいが、途中で取り出して異なる製膜法を施してもかまわない。その際、作業を乾燥不活性ガス雰囲気下で行う等の配慮が必要となる。
【0265】
本発明の表示装置は、発光層形成時のみシャドーマスクを設け、他層は共通として、一面に蒸着法、キャスト法、スピンコート法、インクジェット法、印刷法等で層を形成することができる。
【0266】
また作製順序を逆にして、各層を作製することも可能である。
【0267】
このようにして得られた表示装置に、直流電圧を印加する場合には、陽極を+、陰極を−の極性として電圧2〜40V程度を印加すると、発光が観測できる。また、逆の極性で電圧を印加しても電流は流れずに発光は全く生じない。さらに、交流電圧を印加する場合には、陽極が+、陰極が−の状態になったときのみ発光する。なお、印加する交流の波形は任意でよい。
【0268】
本発明の表示装置は、本発明の有機EL素子を用いており、表示デバイス、ディスプレイ、各種発光光源として用いることができる。表示デバイス、ディスプレイにおいて、青、赤、緑発光の3種の有機EL素子を用いることでフルカラーの表示が可能となる。
【0269】
表示デバイス、ディスプレイとしてはテレビ、パソコン、モバイル機器、AV機器、文字放送表示、自動車内の情報表示等が挙げられる。特に静止画像や動画像を再生する表示装置として使用してもよく、動画再生用の表示装置として使用する場合の駆動方式は単純マトリックス(パッシブマトリックス)方式でもアクティブマトリックス方式でもどちらでもよい。
【0270】
本発明の照明装置は、本発明の有機EL素子を用いており、家庭用照明、車内照明、時計のバックライト、看板広告、信号機、光記憶媒体の光源、電子写真複写機の光源、光通信処理機の光源、光センサーの光源等が挙げられるがこれに限定するものではない。また、液晶表示装置等のバックライトとしても用いることができる。
【0271】
また、本発明に係る有機EL素子に共振器構造を持たせた有機EL素子として用いてもよい。
【0272】
このような共振器構造を有した有機EL素子の使用目的としては、光記憶媒体の光源、電子写真複写機の光源、光通信処理機の光源、光センサーの光源等が挙げられるが、これらに限定されない。また、レーザ発振をさせることにより、上記用途に使用してもよい。
【0273】
本発明の有機EL素子は、前述したように照明用や露光光源のような1種のランプとして使用してもよいし、画像を投影するタイプのプロジェクション装置や、静止画像や動画像を直接視認するタイプの表示装置(ディスプレイ)として使用してもよい。動画再生用の表示装置として使用する場合の駆動方式は単純マトリクス(パッシブマトリクス)方式でもアクティブマトリクス方式でもどちらでもよい。または、異なる発光色を有する本発明の有機EL素子を3種以上使用することにより、フルカラー表示装置を作製することが可能である。または、一色の発光色、例えば白色発光をカラーフィルターを用いてBGRにし、フルカラー化することも可能である。さらに、有機ELの発光色を色変換フィルターを用いて他色に変換しフルカラー化することも可能であるが、その場合、有機EL発光のλmaxは480nm以下であることが好ましい。
【0274】
本発明の有機EL素子から構成される表示装置の一例を図面に基づき以下に説明する。
【0275】
図1は、有機EL素子から構成される表示装置の一例を示した模式図である。有機EL素子の発光により画像情報の表示を行う、例えば、携帯電話等のディスプレイの模式図である。
【0276】
ディスプレイ1は、複数の画素を有する表示部A、画像情報に基づいて表示部Aの画像走査を行う制御部B等からなる。
【0277】
制御部Bは、表示部Aと電気的に接続され、複数の画素それぞれに外部からの画像情報に基づいて走査信号と画像データ信号を送り、走査信号により走査線毎の画素が画像データ信号に応じて順次発光して画像走査を行って画像情報を表示部Aに表示する。
【0278】
図2は、表示部Aの模式図である。
【0279】
表示部Aは基板上に、複数の走査線5及びデータ線6を含む配線部と、複数の画素3等とを有する。表示部Aの主要な部材の説明を以下に行う。図2においては、画素3の発光した光が、白矢印方向(下方向)へ取り出される場合を示している。
【0280】
配線部の走査線5及び複数のデータ線6は、各々導電材料からなり、走査線5とデータ線6は格子状に直交して、直交する位置で画素3に接続している(詳細は図示せず)。
【0281】
画素3は、走査線5から走査信号が印加されると、データ線6から画像データ信号を受け取り、受け取った画像データに応じて発光する。発光の色が赤領域の画素、緑領域の画素、青領域の画素を、適宜、同一基板上に並置することによって、フルカラー表示が可能となる。
【0282】
次に、画素の発光プロセスを説明する。
【0283】
図3は、画素の模式図である。
【0284】
画素は、有機EL素子10、スイッチングトランジスタ11、駆動トランジスタ12、コンデンサ13等を備えている。複数の画素に有機EL素子10として、赤色、緑色、青色発光の有機EL素子を用い、これらを同一基板上に並置することでフルカラー表示を行うことができる。
【0285】
図3において、制御部Bからデータ線6を介してスイッチングトランジスタ11のドレインに画像データ信号が印加される。そして、制御部Bから走査線5を介してスイッチングトランジスタ11のゲートに走査信号が印加されると、スイッチングトランジスタ11の駆動がオンし、ドレインに印加された画像データ信号がコンデンサ13と駆動トランジスタ12のゲートに伝達される。
【0286】
画像データ信号の伝達により、コンデンサ13が画像データ信号の電位に応じて充電されるとともに、駆動トランジスタ12の駆動がオンする。駆動トランジスタ12は、ドレインが電源ライン7に接続され、ソースが有機EL素子10の電極に接続されており、ゲートに印加された画像データ信号の電位に応じて電源ライン7から有機EL素子10に電流が供給される。
【0287】
制御部Bの順次走査により走査信号が次の走査線5に移ると、スイッチングトランジスタ11の駆動がオフする。しかし、スイッチングトランジスタ11の駆動がオフしてもコンデンサ13は充電された画像データ信号の電位を保持するので、駆動トランジスタ12の駆動はオン状態が保たれて、次の走査信号の印加が行われるまで有機EL素子10の発光が継続する。順次走査により次に走査信号が印加されたとき、走査信号に同期した次の画像データ信号の電位に応じて駆動トランジスタ12が駆動して有機EL素子10が発光する。
【0288】
すなわち、有機EL素子10の発光は、複数の画素3それぞれの有機EL素子10に対して、アクティブ素子であるスイッチングトランジスタ11と駆動トランジスタ12を設けて、複数の画素3それぞれの有機EL素子10の発光を行っている。このような発光方法をアクティブマトリクス方式と呼んでいる。
【0289】
ここで、有機EL素子10の発光は、複数の階調電位を持つ多値の画像データ信号による複数の階調の発光でもよいし、2値の画像データ信号による所定の発光量のオン、オフでもよい。
【0290】
また、コンデンサ13の電位の保持は、次の走査信号の印加まで継続して保持してもよいし、次の走査信号が印加される直前に放電させてもよい。
【0291】
本発明においては、上述したアクティブマトリクス方式に限らず、走査信号が走査されたときのみデータ信号に応じて有機EL素子を発光させるパッシブマトリクス方式の発光駆動でもよい。
【0292】
図4は、パッシブマトリクス方式による表示装置の模式図である。図4において、複数の走査線5と複数の画像データ線6が画素3を挟んで対向して格子状に設けられている。
【0293】
順次走査により走査線5の走査信号が印加されたとき、印加された走査線5に接続している画素3が画像データ信号に応じて発光する。パッシブマトリクス方式では画素3にアクティブ素子がなく、製造コストの低減が計れる。
【0294】
本発明に係わる有機EL材料は、また、照明装置として、実質白色の発光を生じる有機EL素子に適用できる。複数の発光材料により複数の発光色を同時に発光させて混色により白色発光を得る。複数の発光色の組み合わせとしては、青色、緑色、青色の3原色の3つの発光極大波長を含有させたものでも良いし、青色と黄色、青緑と橙色等の補色の関係を利用した2つの発光極大波長を含有したものでも良い。
【0295】
また、複数の発光色を得るための発光材料の組み合わせは、複数のリン光または蛍光を発光する材料(発光ドーパント)を、複数組み合わせたもの、蛍光またはリン光を発光する発光材料と、該発光材料からの光を励起光として発光する色素材料とを組み合わせたもののいずれでも良いが、本発明に係わる白色有機エレクトロルミネッセンス素子においては、発光ドーパントを複数組み合わせる方式が好ましい。
【0296】
複数の発光色を得るための有機エレクトロルミネッセンス素子の層構成としては、複数の発光ドーパントを、一つの発光層中に複数存在させる方法、複数の発光層を有し、各発光層中に発光波長の異なるドーパントをそれぞれ存在させる方法、異なる波長に発光する微小画素をマトリックス状に形成する方法等が挙げられる。
【0297】
本発明に係わる白色有機エレクトロルミネッセンス素子においては、必要に応じ製膜時にメタルマスクやインクジェットプリンティング法等でパターニングを施してもよい。パターニングする場合は、電極のみをパターニングしてもいいし、電極と発光層をパターニングしてもいいし、素子全層をパターニングしてもいい。
【0298】
発光層に用いる発光材料としては特に制限はなく、例えば液晶表示素子におけるバックライトであれば、CF(カラーフィルター)特性に対応した波長範囲に適合するように、本発明に係わる白金錯体、また公知の発光材料の中から任意のものを選択して組み合わせて白色化すれば良い。
【0299】
このように、本発明の白色発光有機EL素子は、前記表示デバイス、ディスプレイに加えて、各種発光光源、照明装置として、家庭用照明、車内照明、また、露光光源のような一種のランプとして、更に液晶表示装置のバックライト等、表示装置にも有用に用いられる。
【0300】
その他、時計等のバックライト、看板広告、信号機、光記憶媒体等の光源、電子写真複写機の光源、光通信処理機の光源、光センサーの光源等、更には表示装置を必要とする一般の家庭用電気器具等広い範囲の用途が挙げられる。
【実施例】
【0301】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されない。また、実施例で用いる化合物の構造式を以下に示す。
【0302】
【化70】

【0303】
実施例1
《有機EL素子1−1〜1−5の作製及び評価》
陽極として基板上に、アルミニウムを150nmメタルマスクを用いて成膜し、パターニングを行った後、このアルミニウム電極を設けた基板に、ホール輸送層としてα−NPDを20nm、発光層としてCBPとIr−1(100:5)を30nm、第一の電子輸送層としてBCを10nm、第2の電子輸送層としてAlqを40nm、各々この順番で真空蒸着法によって成膜した。次に、真空槽を開け、電子輸送層の上にステンレス鋼製の長方形穴あきマスクを設置し、次いで、真空槽を4×10−4Paまで減圧し、電子注入電極としてマグネシウムと銀(10:1)を10nm真空蒸着法で製膜した後、ITO層を100nmスパッタ法により成膜した。この上にプラズマCVD法によりダイヤモンドライクカーボン膜を形成し、紫外線硬化型の接着剤を用いて透光性ガラス基板を貼り付けて封止し、有機EL素子1−1を作製した。
【0304】
上記の有機EL素子1−1の作製において、第一の電子輸送層に用いたBCを、表1に記載の化合物に変更した以外は、有機EL素子1−1と同様の方法で、有機EL素子1−2〜1−5を、各々作製した。
【0305】
作製した有機EL素子1−1〜1−5は、各々、図5に示したような封止構造を持つように調製した。なお、図5において、101は基板、102aは陽極、102bは有機EL層(具体的には、図7の電子輸送層208、発光層207、正孔輸送層206を含む)、102cは陰極を示し、陽極102a、有機EL層102b、陰極102cにより、発光素子102が形成されている。103は封止膜を示す。
【0306】
得られた有機EL素子1−1〜1−5の各々について下記のような評価を行った。
【0307】
(発光輝度)
作成した有機EL素子について、温度23度、乾燥窒素ガス雰囲気下で2.5mA/cmの電流を供給した時の発光輝度(L)[cd/m]を測定した。ここで、発光輝度の測定などは、CS−1000(ミノルタ製)を用いた。
【0308】
(外部取りだし量子効率)
作製した有機EL素子について、23℃、乾燥窒素ガス雰囲気下で2.5mA/cm定電流を印加した時の外部取り出し量子効率(%)を測定した。なお測定には同様に分光放射輝度計CS−1000(ミノルタ製)を用いた。
【0309】
(半減寿命・発光欠陥)
23℃、乾燥窒素ガス雰囲気下で2.5mA/cmの一定電流で駆動したときに、輝度が発光開始直後の輝度(初期輝度)の半分に低下するのに要した時間を測定し、これを半減寿命時間(τ0.5)として寿命の指標とした。なお測定には分光放射輝度計CS−1000(ミノルタ製)を用いた。
【0310】
評価結果を表1に記載するにあたり、発光輝度、外部取り出し量子効率、発光寿命は、有機EL素子1−1の各特性値を100とした時の相対値で表した。また、発光欠陥の有無を初期と1000時間後において測定した。得られた結果を表1に示す。
【0311】
【表1】

【0312】
表1より明らかなように、本発明の一般式(1)で表される化合物を第一の電子輸送層に用いた有機EL素子は、高発光効率で、発光欠陥の発生が防止され、安定な発光が得られることがわかった。
【0313】
更に、リン光性化合物であるIr−1をIr−12に替えた以外は同様にして有機EL素子1−1B〜1−5Bを、また、Ir−1をIr−9に替えた以外は同様にして有機EL素子1−1R〜1−5Rを作製した。この各有機EL素子においても、上記Ir−1を使用した時と同様の効果が得られた。なお、Ir−12を用いた素子からは青色の発光が、Ir−9を用いた素子からは赤色の発光が得られた。
【0314】
実施例2
《有機EL素子2−1〜2−5の作製及び評価》
陽極として基板上に、アルミニウムを150nmメタルマスクを用いて成膜し、パターニングを行った後、このアルミニウム電極を設けた基板に、ホール輸送層としてα−NPDを20nm、発光層としてCBPとIr−1(100:5)を30nm、電子輸送層としてAlqを40nm、それぞれこの順番で真空蒸着法によって成膜した。次に、真空槽を開け、電子輸送層の上にステンレス鋼製の長方形穴あきマスクを設置し、次いで、真空槽を4×10−4Paまで減圧し、電子注入電極としてアルミニウムとリチウム(10:1)を10nm真空蒸着法で製膜した後、ITO層を100nmスパッタ法により成膜した後、実施例1と同様に素子を封止し、有機EL素子2−1を作製した。
【0315】
上記の有機EL素子2−1の作製において、発光層に用いたCBPを、表2に記載の化合物に変更した以外は、有機EL素子2−1と同様の方法で、有機EL素子2−1〜2−5を作製した。
【0316】
得られた有機EL素子2−1〜2−5の各々について、実施例1と同様にして、発光輝度、輝度の半減する時間、発光欠陥の有無の評価を行い、得られた結果を表2に示す。
【0317】
なお、表2に記載の各評価結果は、有機EL素子2−1の発光輝度、外部取り出し量子効率、半減寿命をそれぞれ100とした時の相対値で表した。
【0318】
【表2】

【0319】
表2より明らかなように、本発明の一般式(1)で表される化合物を発光層に用いた場合でも、高発光効率で、発光欠陥の発生が防止され、安定な発光が得られることがわかった。
【0320】
実施例3
〈フルカラー表示装置〉
(青色発光有機EL素子)
実施例1で作製した有機EL素子1−5Bを用いた。
【0321】
(緑色発光有機EL素子)
実施例1で作製した有機EL素子1−5を用いた。
【0322】
(赤色発光有機EL素子)
実施例1で作製した有機EL素子1−5Rを用いた。
【0323】
上記の赤色、緑色及び青色発光有機EL素子を、同一基板上に並置し、図1に記載の形態を有するアクティブマトリクス方式フルカラー表示装置を作製し、図2には、作製した前記表示装置の表示部Aの模式図のみを示した。即ち、同一基板上に、複数の走査線5及びデータ線6を含む配線部と、並置した複数の画素3(発光の色が赤領域の画素、緑領域の画素、青領域の画素等)とを有し、配線部の走査線5及び複数のデータ線6はそれぞれ導電材料からなり、走査線5とデータ線6は格子状に直交して、直交する位置で画素3に接続している(詳細は図示せず)。前記複数の画素3は、それぞれの発光色に対応した有機EL素子、アクティブ素子であるスイッチングトランジスタと駆動トランジスタそれぞれが設けられたアクティブマトリクス方式で駆動されており、走査線5から走査信号が印加されると、データ線6から画像データ信号を受け取り、受け取った画像データに応じて発光する。この様に各赤、緑、青の画素を適宜、並置することによって、フルカラー表示装置を作製した。
【0324】
該フルカラー表示装置を駆動することにより、発光効率が高い発光寿命の長いフルカラー動画表示が得られることを確認することができた。
【0325】
実施例4(白色の有機EL素子の作製例)
実施例2で作製した有機EL素子2−5において、発光層に用いたIr−1を、Ir−1、Ir−9、Ir−12の混合物に変更した以外は有機EL素子1−1と同様の方法で作製した有機EL素子2−5Wを用いた。該素子は、発光効率が高く発光寿命の長い白色光を発する薄型の照明装置として使用することができた。
【符号の説明】
【0326】
1 ディスプレイ
3 画素
5 走査線
6 データ線
7 電源ライン
10 有機EL素子
11 スイッチングトランジスタ
12 駆動トランジスタ
13 コンデンサ
A 表示部
B 制御部
101、201 基板
102 有機EL素子
102a、202 陽極
102b 有機EL層
102c、204 陰極
103 封止膜
205 駆動用素子
206 正孔輸送層
207 発光層
208 電子輸送層
601 基板
602 TFT

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に第一電極と少なくとも発光層及び電子輸送層を含む構成層と第二電極とがこの順で積層され、該第二電極側より発光を取り出す有機エレクトロルミネッセンス素子において、
該第一電極がアルミニウムからなり、
該電子輸送層の少なくとも一層が下記一般式(1)で表される化合物を少なくとも一種含有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化1】

〔式中、Zは6員の芳香族複素環を表し、Zは、6員の芳香族複素環または芳香族炭化水素環を表し、Zは、単なる結合手を表す。R101は、水素原子または置換基を表す。〕

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−39135(P2012−39135A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−219128(P2011−219128)
【出願日】平成23年10月3日(2011.10.3)
【分割の表示】特願2004−307966(P2004−307966)の分割
【原出願日】平成16年10月22日(2004.10.22)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】