説明

有機エレクトロルミネッセンス素子の封止方法、有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法

【課題】 ガラス基板を使用した薄型・軽量な有機EL素子を得る有機EL素子の封止方法及び有機EL素子の製造方法の提供。
【解決手段】 ガラス基板上に形成された少なくとも一つの有機EL素子を可撓性封止部材を使用し封止工程で封止する有機EL素子の封止方法において、前記封止工程は前記可撓性封止部材の供給工程と、前記有機EL素子の大きさに応じ、前記可撓性封止部材を分離可能とする封止領域を形成する分離手段形成工程と、前記分離手段を設けた前記可撓性封止部材に接着剤を塗設する接着剤塗設工程と、前記接着剤を塗布した前記分離手段形成済み可撓性封止部材と前記有機EL素子とを貼合する貼合工程と、前記貼合の後に前記接着剤を硬化させる硬化処理工程と、前記貼合工程で貼合した前記可撓性封止部材の不要部分を取り除く除去工程とを有することを特徴とする有機EL素子の封止方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子とも言う)の封止方法及び有機EL素子の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、有機物質を使用した有機EL素子は、固体発光型の安価な大面積フルカラー表示素子や書き込み光源アレイとしての用途が有望視されており、活発な研究開発が進められている。有機EL素子は、基板上に形成された第1電極(陽極又は陰極)と、その上に積層された有機発光物質を含有する有機化合物層(単層部又は多層部)すなわち発光層と、この発光層上に積層された第2電極(陰極又は陽極)とを有する薄膜型の素子である。この様な有機EL素子に電圧を印加すると、有機化合物層に陰極から電子が注入され陽極から正孔が注入される。この電子と正孔が発光層において再結合し、エネルギー準位が伝導帯から価電子帯に戻る際にエネルギーを光として放出することにより発光が得られることが知られている。
【0003】
この様に、有機EL素子は薄膜型の素子であるため、1個又は複数個の有機EL素子を基板上に形成した有機ELパネルをバックライト等の面光源として利用した場合には、面光源を備えた装置を容易に薄型にすることが出来る。又、画素としての有機EL素子を基板上に所定個数形成した有機ELパネルをディスプレイパネルとして用いて表示装置を構成した場合には視認性が高い、視野角依存性がないなど、液晶表示装置では得られない利点がある。
【0004】
通常、有機EL素子は、基材(ガラス、樹脂フィルム等)上に、第1電極(陽極)と、正孔輸送層(正孔注入層)と、有機化合物層(発光層)と、電子注入層と、第2電極(陰極)と、接着剤層と、封止部材とをこの順番に有している。例えば、ガラス基板上に形成された複数の有機EL層の一つ一つを被覆するように、複数の凹部を有するガラス製封止部材を準備し、凹部に乾燥剤を入れ、周囲に接着剤を配置した状態で、凹部と有機EL層とを位置合わせ、ガラス製封止部材上にガラス基板を置き有機EL層を封止した後、ガラス基板とガラス製封止部材とを各有機EL層単位に切断し、個別の有機EL表示パネルを製造する方法が知られている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の方法の場合、次の欠点を有している。1)封止部材がガラス製であるため薄型・軽量化が困難である。2)封止部材をガラス基板上に形成された有機EL層に合わせ加工するのに精度を要すると共に封止部材のコストが高くなる。3)ガラス製の封止部材を封止フィルムに代えた場合、封止フィルムをガラス基板上で切断することが難しく、刃物材出の切断では素子電極を傷つけるおそれが生じる。又、封止フィルムのみを断裁するハーフカットの方法も封止フィルム自体が薄いため全面に渡り精度よく電極を傷つけずに分断するのは難しい。
【0006】
又、基材上に剥離樹脂層も所定の形状にパターニングされた接着層を有する転写可能な金属箔を有する転写材(封止部材)を使用し、透光性基板上に多数個作製された有機EL発光素子を金属箔で被覆する方法が知られている(例えば、特許文献2を参照。)。
【0007】
しかしながら、特許文献2に記載の方法の場合次の如き欠点を有している。1)予め仮基材にパターニングされた接着層を有する転写可能な金属箔を貼り付ける工程が必要となる。2)金属箔を転写した後に残るロスとなる仮基材の処置に伴うコスト的負荷、環境負荷が増加する。
【0008】
この様な状況から、ガラス基板を使用した薄型・軽量な有機EL素子を得るために有効である封止フィルムを使用した有機EL素子の封止方法及び有機EL素子の製造方法の開発が望まれている。
【特許文献1】特開2002−352951号公報
【特許文献2】特開2004−303528号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は根上記状況を鑑みなされたものであり、その目的は、ガラス基板を使用した薄型・軽量な有機EL素子を得る有機EL素子の封止方法及び有機EL素子の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成された。
【0011】
(1)ガラス基板上に第1電極と、前記第1電極上に形成された発光層を含む1層以上の有機化合物層を有する有機エレクトロルミネッセンス層と、第2電極層とを有する少なくとも一つの有機エレクトロルミネッセンス素子を可撓性封止部材を使用し封止工程で封止する有機エレクトロルミネッセンス素子の封止方法において、前記封止工程は前記可撓性封止部材の供給工程と、前記有機エレクトロルミネッセンス素子の大きさに応じ、前記可撓性封止部材を分離可能とする封止領域を形成する分離領域形成工程と、前記封止領域を設けた前記可撓性封止部材に接着剤を塗設する接着剤塗設工程と、前記接着剤を塗布した前記封止領域を形成した可撓性封止部材と前記有機エレクトロルミネッセンス素子とを貼合する貼合工程と、前記貼合の後に前記接着剤を硬化させる硬化処理工程と、前記貼合工程で貼合した前記可撓性封止部材の封止領域部分を分離する分離工程とを有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の封止方法。
【0012】
(2)前記可撓性封止部材は分離領域形成工程により複数の封止領域が形成されており、且つ、分離工程で該可撓性封止部材の封止領域部分を同時に分離することを特徴とする前記(1)に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の封止方法。
【0013】
(3)前記供給工程から供給される可撓性封止部材はガラス基板のサイズに合わせ断裁した後、クリーニング処理が施されることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の封止方法。
【0014】
(4)前記接着剤は可撓性封止部材の封止領域又は該封止領域の周辺部に塗設されることを特徴とする前記(1)〜(3)の何れか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の封止方法。
【0015】
(5)前記貼合工程はガラス基板と接着剤塗設済み可撓性封止部材との位置合わせ工程と、圧着工程とを有していることを特徴とする前記(1)〜(4)の何れか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の封止方法。
【0016】
(6)前記可撓性封止部材が樹脂基材と、防湿層とを有する枚葉シート状樹脂フィルムであることを特徴とする前記(1)〜(5)の何れか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の封止方法。
【0017】
(7)ガラス基板上に第1電極と、前記第1電極上に形成された発光層を含む1層以上の有機化合物層を有する有機エレクトロルミネッセンス層と、第2電極層とを有する少なくとも2つの有機エレクトロルミネッセンス素子を可撓性封止部材を使用し前記(1)〜(6)の何れか1項に記載の封止方法で封止した後、前記ガラス基板をスクライブすることで、前記可撓性封止部材で封止された個別の有機エレクトロルミネッセンス素子を製造することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【発明の効果】
【0018】
ガラス基板を使用した薄型・軽量な有機EL素子を得る有機EL素子の封止方法及び有機EL素子の製造方法を提供することが出来、ガラス基板上に複数の有機EL素子を有する母材を使用し、複数の有機EL素子をバリア性を有する封止フィルムで封止した後、ガラス基板を分断し個別の有機EL素子を作製することが容易になり、生産効率の向上が可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の実施の形態を図1〜図9を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0020】
図1は有機EL素子の層構成の一例を示す概略断面図である。
【0021】
図中、1は有機EL素子を示す。有機EL素子1は、ガラス基材101上に、第1電極を含む陽極層102と、正孔輸送層(正孔注入層)103と、有機化合物層(発光層)104と、電子注入層105と、第2電極を含む陰極層106と、接着剤層107と、封止基材108とをこの順番に有している。本図に示される有機EL素子において、第1電極を含む陽極層102と正孔輸送層103の間に正孔注入層(不図示)を設けてもよい。又、第2電極を含む陰極層106と有機化合物層(発光層)104と電子注入層105との間に電子輸送層(不図示)を設けてもよい。
【0022】
本図に示す有機EL素子の層構成は一例を示したものであるが、他の代表的な有機EL素子の層構成としては次の構成が挙げられる。
【0023】
(1)ガラス基板/陽極(第1電極)/発光層/電子輸送層/陰極(第2電極)/封止基材
(2)ガラス基板/陽極(第1電極)/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極(第2電極)/封止基材
(3)ガラス基板/陽極(第1電極)/正孔輸送層(正孔注入層)/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極バッファー層(電子注入層)/陰極(第2電極)/封止基材
(4)ガラス基板/陽極(第1電極)/陽極バッファー層(正孔注入層)/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極バッファー層(電子注入層)/陰極(第2電極)/封止基材
有機EL素子の場合、通常、陽極(第1電極)102側が観察側になり、陽極(第1電極)102には、ITO(酸化スズと酸化インジウム混合物)、IZO(酸化亜鉛と酸化インジウム混合物)、ZnO、SnO2、In23等が知られている。中でも、ITO電極は、90%以上の高い光透過率と、10Ω/□以下の低いシート抵抗値が可能で、液晶ディスプレイや太陽電池などの透明電極としても用いられている。又、IZO電極は、形成時に基板を加熱せずに所定の低い抵抗値が得られ、ITO電極よりも膜表面が平滑であるという利点がある。
【0024】
図2は図1のTで示される部分の拡大概略断面図である。
【0025】
封止基材108は樹脂基材108aと、防湿層108bとを有する可撓性封止部材で構成されている。尚、防湿層108bの上(本図では防湿層108bと接着剤層の間となる)に保護層(不図示)を設けてもよい。樹脂基材108aは単体でもよいし、積層体であってもよく必要に応じて適宜選択することが可能である。防湿層108bは単体でもよいし、積層体であってもよく必要に応じて適宜選択することが可能である。可撓性封止部材108は接着剤を介して第2電極を含む陰極層上へ貼合されている。
【0026】
可撓性封止部材の封止時のASTM D570に準じて測定した水分量は、可撓性封止部材の持ち込み水分により有機層の結晶化、第2電極の剥離等によりダークスポットの発生、及び有機EL素子の長寿命化等を考慮し、1.0%以下が好ましい。
【0027】
樹脂基材108aの厚さは、取り扱い性、分離手段形成性、切断性等を考慮し、50〜300μmが好ましい。
【0028】
水分透過度は、有機層の結晶化、第2電極の剥離等によりダークスポットの発生、及び有機ELス素子の長寿命化等を考慮し、0.01g/m2・day以下であることが好ましい。水分透過度はJIS K7129B法(1992年)に準拠した方法で主としてMOCON法により測定した値を示す。
【0029】
酸素透過度は、有機層の結晶化、第2電極の剥離等によりダークスポットの発生、及び有機ELス素子の長寿命化等を考慮し、0.01ml/m2・day・atm以下であることが好ましい。酸素透過度はJIS K7126B法(1987年)に準拠した方法で主としてMOCON法により測定した値である。
【0030】
本発明に使用する可撓性封止部材を構成している樹脂基材108aとしては特に限定はなく、例えばエチレンテトラフルオロエチル共重合体(ETFE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、延伸ポリプロピレン(0PP)、ポリスチレン(PS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、延伸ナイロン(ONy)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド、ポリエーテルスチレン(PES)など一般の包装用フィルムに使用されている熱可塑性樹脂フィルム材料を使用することが出来る。又、これら熱可塑性樹脂フィルムは、必要に応じて異種フィルムと共押出しで作った多層フィルム、延伸角度を変えて貼り合せて作った多層フィルム等も当然使用出来る。更に必要とする物性を得るために使用するフィルムの密度、分子量分布を組合せて作ることも当然可能である。
【0031】
防湿層としては、無機蒸着膜、金属箔が挙げられる。無機蒸着膜としては薄膜ハンドブックp879〜p901(日本学術振興会)、真空技術ハンドブックp502〜p509、p612、p810(日刊工業新聞社)、真空ハンドブック増訂版p132〜p134(ULVAC 日本真空技術K.K)に記載されている如き無機膜が挙げられる。例えば、In、Sn、Pb、Au、Cu、Ag、Al、Ti、Ni等の金属、MgO、SiO、SiO2、Al23、GeO、NiO、CaO、BaO、Fe23、Y23、TiO2、Cr23、Sixy(x=1、y=1.5〜2.0)、Ta23、ZrN、SiC、TiC、PSG、Si34、SiN、単結晶Si、アモルファスSi、W、等が用いられる。
【0032】
又、金属箔の材料としては、例えばアルミニウム、銅、ニッケルなどの金属材料や、ステンレス、アルミニウム合金などの合金材料を用いることが出来るが、加工性やコストの面でアルミニウムが好ましい。膜厚は、1〜100μm程度、好ましくは10μm〜50μm程度が望ましい。
【0033】
図3は可撓性封止部材により封止した有機EL素子の製造工程の概略斜視図である。
【0034】
図中、2は製造工程を示す。製造工程2は、可撓性封止部材301の供給工程3と、可撓性封止部材301に有機EL素子の大きさに応じ、分離可能とする封止領域を設ける分離領域形成工程4と、分離可能な封止領域の形成を行った可撓性封止部材に接着剤を塗設する接着剤塗設工程5と、接着剤を塗布した分離可能な封止領域を形成した可撓性封止部材と複数の有機EL素子とを貼合する貼合工程6と、接着剤を硬化させる硬化処理工程7と、貼合工程6で貼合した可撓性封止部材の分離可能な封止領域を分離する分離工程8とを有している。尚、分離工程8で分離可能な封止領域を分離した後、分断工程9を設けて可撓性封止部材で封止された有機EL素子を個別に分断することが好ましい。分断工程9は分離工程8に連続して設けても良いし、分離して設けても良く、必要に応じて適宜選択が可能となっている。本図は分離工程8に連続して設けた場合を示している。
【0035】
供給工程3はロール状態で供給された可撓性封止部材を繰り出す繰り出装置(不図示)と、繰り出された帯状可撓性封止部材301を枚葉に断裁する断裁装置302と、枚葉シート状可撓性封止部材301aを載置する載置台303とを有している。断裁装置302によりガラス基板の大きさに合わせ断裁された枚葉シート状可撓性封止部材301aは、クリーニング装置(不図示)により清掃された後、載置台303に載置することが好ましい。クリーニング装置装置としては、粘着式ロールクリーナ、UVオゾン洗浄等が挙げられる。
【0036】
載置台303は枚葉シート状可撓性封止部材301aを載置固定した状態で分離領域形成工程4〜分離工程8を移動手段(不図示)により順次移動可能となっている。
【0037】
分離領域形成工程4は、供給工程3から移動してきた載置台303に載置固定された状態の枚葉シート状可撓性封止部材301aに分離可能とする封止領域を形成する分離領域形成装置401を有している。載置台303は載置台303に付けられたアライメントマーク303aを検出した検出装置(不図示)の情報に従って接着剤塗設装置502aの規定された位置に停止するように制御されている。分離領域形成装置401はガラス基板上に形成された有機EL素子のパターンに応じて枚葉シート状可撓性封止部材301aに分離可能な封止領域301a1を形成する装置であり、装置の種類は分離可能な封止領域301a1が形成出来れば特に限定はない。分離可能な封止領域301a1は、ガラス基板上に形成された有機EL素子へ枚葉シート状可撓性封止部材が貼合された後、貼合された部分と不要部分とを分離することが出来れば特に限定はなく、例えば、ガラス基板上に形成された有機EL素子のパターンに応じて枚葉シート状可撓性封止部材301aを図7に示す様に断裁、ハーフカット、ミシン目等で形成することが可能である。
【0038】
接着剤塗設工程5は、分離可能な封止領域301a1に接着剤を塗設するための検出部501と、接着剤塗設部502とを有している。検出部501は載置台303に付けられたアライメントマーク303aの検出装置501aと、検出装置501aの取り付け台501bとを有している。検出装置501aの種類としては特に限定はなく、例えばCCDカメラによる画像認識手段等が挙げられる。
【0039】
接着剤塗設部502は検出装置501aからの情報に従って、分離可能な封止領域301a1に接着剤を塗設する接着剤塗設装置502aと接着剤塗設装置502aを取り付けた筐体502bとを有している。載置台303は載置台303に付けられたアライメントマーク303aを検出した検出装置501aの情報に従って接着剤塗設装置502aの規定された位置に停止するように制御されている。筐体502bは駆動装置(不図示)により移動(図中の矢印方向)が可能となっている。尚、接着剤塗設部502の構成は分離可能な封止領域301a1に塗設する接着剤の態様に合わせ、例えばディスペンサ、スクリーン印刷等に変更することが可能となっている。本図は、接着剤塗設装置502aとしてディスペンサを使用し、分離可能な封止領域301a1の周辺部に接着剤を線状に塗設する場合を示している。接着剤塗設装置502aの数は枚葉シート状可撓性封止部材に形成された分離可能な封止領域301aのパターンに応じて変えることが可能となっている。本図は枚葉シート状可撓性封止部材の幅方向に2列に分離可能な封止領域301aに対応するために2台の接着剤塗設装置502aを配置した場合を示している。
【0040】
貼合工程6は有機EL素子がパターン化して形成されているガラス基板10の供給部601と、接着剤が塗設された枚葉シート状可撓性封止部材に付けられた各分離可能な封止領域301a1と、ガラス基板10上にパターン化して形成されている有機EL素子10aとを貼合する貼合部602とを有している。供給部601はガラス基板10の保管部601aと、供給部601aよりガラス基板10を載置台303上の接着剤が塗設された枚葉シート状可撓性封止部材上に有機EL素子10aが形成されたガラス基板10上に配置する配置ロボット601bとを有している。配置ロボット601bはガラス基板10を保管部601aから取り出し保持する吸着板601b2を先端に持つアーム601b1とアーム601b1を取り付け、上下方向(図中の矢印方向)に移動可能なガイドポスト601b3とを有している。アーム601b1も載置台303上の接着剤が塗設された枚葉シート状可撓性封止部材の位置合わせ移動(図中の矢印方向)が可能となっている。
【0041】
貼合部602は載置台303上の枚葉シート状可撓性封止部材に付けられた分離可能な封止領域301a1と、ガラス基板10上にパターン化して形成されている有機EL素子10aとを合わせて枚葉シート状可撓性封止部材301a上に積重された状態のガラス基板10を圧着することで、枚葉シート状可撓性封止部材301aとガラス基板10とを貼合する貼合装置602aを有している。貼合装置602aによる貼合時の面圧は、可撓性封止部材の貼合性、有機EL素子のダメージ等を考慮し、0.5×104Pa〜9.8×104Paが好ましい。載置台303は載置台303に付けられたアライメントマーク303aを検出した検出装置(不図示)の情報に従って貼合装置602aの規定された位置に停止するように制御されている。
【0042】
貼合装置602aによる枚葉シート状可撓性封止部材301aとガラス基板10との貼合は、気泡の混入を考慮し、1Pa〜30kPaの減圧環境下で行うことが好ましい。
【0043】
硬化処理工程7は接着剤の硬化処理装置701を有している。硬化処理装置701は使用する接着剤の種類に応じて変更することが可能である。例えば、接着剤が熱硬化型の場合は加熱装置を有した硬化処理装置となり、又、紫外線硬化型の場合は紫外線照射装置を有した硬化処理装置となる。選定する接着剤の硬化時間とタクトにより、硬化処理装置701は仮硬化装置および本硬化装置としての使い分けが可能である。尚、本図では貼合装置602aと硬化処理装置701とを分離した場合を示しているが、貼合装置602aに硬化処理装置701の機能を持たせることも可能である。硬化処理工程7を通過することでガラス基板10上にパターン化して形成されている有機EL素子10aの可撓性封止部材による封止が終了する。
【0044】
以上の硬化工程までは、素子の劣化による寿命低減の観点より、水分濃度、酸素濃度が低い事が重要であり、好ましくは水分濃度10ppm以下、酸素濃度10ppm以下の環境下で行うことが良い。
【0045】
分離工程8は分離(供給)ロボット801とガラス基板10上にパターン化して形成されている有機EL素子10aに可撓性封止部材が貼合された状態のガラス基板の収納保管部802とを有している。分離(供給)ロボット801は吸着板801a2を先端に持つアーム801a1とアーム801a1を取り付け、上下方向(図中の矢印方向)に移動可能なガイドポスト801a3とを有している。アーム801a1も載置台303上のガラス基板の位置合わせ移動(図中の矢印方向)が可能となっている。載置台303は載置台303に付けられたアライメントマーク303aを検出した検出装置(不図示)の情報に従って分離ロボット801の規定された位置に停止するように制御されている。分離ロボット801の吸着板801a2を載置台303上に吸引固定されているガラス基板に吸着し、ガイドポスト801a3により上方に移動させることで載置台303からガラス基板が分離され、吸着した状態で収納保管部802へ移動(図中の矢印方向)し、吸着を解除することで収納保管部802へ収納される。
【0046】
載置台303に吸引固定しているガラス基板を分離する時、載置台303の吸引力により、載置台303上に枚葉シート状収納保管部301aから形成された分離可能な封止領域301a1が除かれた枚葉シート状可撓性封止部材301a2が残される状態となり分離が終了する。この時点で、複数の有機EL素子が可撓性封止部材により封止されたガラス基板が作製される。
【0047】
載置台303に載置された枚葉シート状可撓性封止部材301aは供給工程3〜分離工程8までの全ての工程で枚葉シート状可撓性封止部材301aを吸引固定した状態となっており、分離工程8でガラス基板が分離された時点で吸引を解除し、分離可能な封止領域301a1が除かれた枚葉シート状可撓性封止部材301a2を回収除去する様になっている。
【0048】
分断工程9は分離工程8により可撓性封止部材により封止された複数の有機EL素子を有するガラス基板を個別に分断する工程であり、スクライバ901を有している。収納保管部802へ収納されたガラス基板を除去(供給)ロボット801により取り出し搬送ベルト902上に供給する。スクライバ901によりガラス基板が分断され個別の有機EL素子が作製される。
【0049】
図4は図3に示される載置台の概略斜視図である。
【0050】
図中、303bは枚葉シート状可撓性封止部材301a(図3を参照)の載置面を示す。載置面303bは枚葉シート状可撓性封止部材301a(図3を参照)を固定するために吸引孔303cが設けられている。本例では載置台が吸引によるシート状可撓性封止封止部材の固定方法を示しているが、載置台が静電吸着方式であっても構わなく、必要に応じて適宜選択が可能である。
【0051】
又、載置面303bには、図3に示す各工程(供給工程3、分離領域形成工程4、接着剤塗設工程5、貼合工程6、硬化処理工程7、分離工程8)に設けられた検出装置で読み取り、載置台303を各工程の規定位置に配設するためのアライメントマーク303aが設けられている。載置面303bは分離領域形成装置(図5を参照)の分離領域形成刃401aの受け面となるため弾性部材で形成されていることが好ましい。303dは吸引管を示し、吸引ポンプ(不図示)に繋がっている。
【0052】
図5は図3に示される分離領域形成装置の概略斜視図である。
【0053】
図中、分離領域形成装置401は枚葉シート状可撓性封止部材301a(図3を参照)にガラス基板上に形成された有機EL素子9a(図3を参照)のパターンに応じて分離可能な封止領域301a1(図3を参照)を形成する装置である。分離領域形成装置401は枚葉シート状可撓性封止部材301a(図3を参照)にガラス基板上に形成された有機EL素子9a(図3を参照)のパターンに応じて分離可能な封止領域301a1(図3を参照)を形成する分離領域形成刃401aを配設した上型401bと、上型401bを上下方向(図中の矢印方向)への作動及び分離領域形成刃401aの下死点を調整することが可能にする4本のガイドポスト401cと、載置台303(図3を参照)を載置する載置面401eとを有する下型401dとを有している。分離領域形成刃401aの数は、枚葉シート状可撓性封止部材301aに形成する分離可能な封止領域の数から適宜選択することが可能である。本図は、形成する分離可能な封止領域301a1(図3を参照)の数が4個の場合を示している。401fは上型401bを上下方向(図中の矢印方向)への作動させるための駆動源を示す。上型401bは駆動軸401gを介して駆動源401fに配設されている。尚、分離領域形成装置は特に限定はなく、本図に示すダイセットに代わり、ロールカッタ方式であっても構わなく、必要に応じて適宜選択が可能である。
【0054】
図6は図5に示す分離領域形成装置の分離領域形成刃の概略図である。図6の(a)は図5に示す分離領域形成刃の配置を示す拡大概略平面図である。図6の(b)は図6の(a)に示す分離領域形成刃の拡大概略斜視図である。図6の(c)は図6の(b)のA−A′に沿った拡大概略部分断面図である。
【0055】
図中、401a1は分離領域形成刃401aを上型401aに取り付ける治具を示す。本図に示される分離領域形成刃401aは4枚の直線連続形状の分離領域形成刃a〜dで構成されており、互いに直角に当接する様にして上型401aに取り付けられている。
【0056】
θ1は分離領域形成刃401aの刃先の角度を示し、角度θ1は可撓性封止部材の切断性、刃の長寿命化、管理容易性等を考慮し、7〜60°が好ましい。分離領域形成刃401aに使用する刃物材質はSKH、SKD材など一般的なものが使用可能である。尚、本図は図7に示す様に断裁、ハーフカットが可能である直線連続形状の分離領域形成刃を示しているが、図7に示す様にミシン目を形成する場合は、ミシン目のパターに合わせた直線不連続形状の分離領域形成刃に取り替えることで対応することが可能である。
【0057】
図7は図6に示した分離領域形成装置により枚葉シート状可撓性封止部材に形成された分離領域形成領域の概略図である。図7の(a)は枚葉シート状可撓性封止部材を断裁して形成された分離領域形成領域の概略図である。図7の(a′)は図7の(a)のB−B′に沿った概略断面図である。図7の(b)は枚葉シート状可撓性封止部材をハーフカットして形成された分離可能な封止領域の概略図である。図7の(b′)は図7の(b)のC−C′に沿った概略断面図である。図7の(c)は枚葉シート状可撓性封止部材にミシン目により形成された分離可能な封止領域の概略図である。図7の(c′)は図7の(c)のD−D′に沿った概略断面図である。
【0058】
図中、301aは枚葉シート状可撓性封止部材を示し、301a′は防湿層を示し、301a″は樹脂基材を示す。図7の(a)に示される枚葉シート状可撓性封止部材の場合は、図6に示される分離手段形成刃401aにより樹脂基材までが完全に切断された状態になっている。図7の(b)に示される枚葉シート状可撓性封止部材の場合は、図6に示される分離手段形成刃401aの切断時の下死点を変えることで樹脂基材の一部を残したハーフカット状態になっている。図7の(c)に示される枚葉シート状可撓性封止部材の場合は、図6に示される分離手段形成刃401aの形状を直線刃に変えて不連続刃に変えて、樹脂基材までを完全に切断したミシン目301a3を設けた状態になっている。
【0059】
図7の(a)〜図7の(b)に示される分離可能な封止領域の大きさは、ガラス基板9(図3を参照)上に形成された有機EL素子9a(図3を参照)の発光領域と外部出力端子の形成部分を除いた第1電極及び第2電極の一部を含む大きさであることが好ましい。
【0060】
図8は図3に示す接着剤塗設装置により枚葉シート状可撓性封止部材の分離可能な封止領域に塗設された接着剤の状態を示す概略平面図である。図8の(a)は分離可能な封止領域の周辺部に接着剤を線状に塗設した状態を示す概略平面図である。図8の(b)は分離可能な封止領域の全面に接着剤を塗設した状態を示す概略平面図である。
【0061】
図中、502cは分離可能な封止領域301a1の周辺部に線状に塗設された接着剤を示す。502dは分離可能な封止領域301a1の全面にされた接着剤を示す。図8の(a)に示す様に分離可能な封止領域の周辺部に接着剤を線状に塗設する方法としては、図3に示す様にディスペンサを使用してもよいし、スクリーン印刷でも塗設することが可能であり、必要に応じて何れかの方法を採ることが可能である。図8の(b)に示す様に分離可能な封止領域の全面に接着剤を塗設する方法としては、生産効率、膜厚安定性を考慮し、スクリーン印刷で塗設することが好ましい。塗設する接着剤の厚さは、硬化反応時間、有機層への影響、端部からの水分浸透等を考慮し、5〜100μmが好ましい。
【0062】
接着剤としては、アクリル酸系オリゴマー、メタクリル酸系オリゴマーの反応性ビニル基を有する光硬化及び熱硬化型接着剤、2−シアノアクリル酸エステル等の湿気硬化型、エポキシ系などの熱及び化学硬化型(二液混合)等の接着剤、カチオン硬化タイプ等の接着剤の紫外線硬化型エポキシ樹脂接着剤等を挙げることが出来る。接着剤には必要に応じてフィラーを添加することが好ましい。フィラーとしては、ビーズ状、ファイバー状に加工されたガラス、石英やエポキシ樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂などの高分子からなる樹脂等が挙げられる。
【0063】
図9は図3に示される分断工程で可撓性封止部材により封止された複数の有機EL素子から個別の有機EL素子を分断する概略フロー図である。
S1では図3の分離工程8で作製された4つの有機EL素子10a(10a1〜10a4)が可撓性封止部材301aにより全て封止されたガラス基板10が準備される。
S2では有機EL素子10a1(10a4)と有機EL素子10a2(10a3)との長さ方向の中間線901と、有機EL素子10a1(10a4)と有機EL素子10a2(10a3)との幅方向の中間線902に沿ってガラス基板10側からスクライバによりスクライブされる。
S3ではスクライブされることで4つの有機EL素子10a1〜10a4が個別に分離された状態となる。
【0064】
スクライバとしては、市販のスクライバの使用が可能であり、例えば刃先スクライバ、レーザスクライバ等が挙げられる。
【0065】
図3〜図9に示す製造装置を使用した封止方法により、可撓性封止部材で有機EL素子を封止することで次の効果が得られる。
1)使用する樹脂基材と、防湿層とを有する可撓性封止部材が予め有機EL素子の大きさに合わせ分離可能に分離手段が形成されているため、有機EL素子を封止した後、不要部分の除去をするのに際し、有機EL素子の電極端子に傷を付けずに除去することが可能となった。
2)可撓性封止部材の不要部分の除去が容易になったのに伴い、ガラス基板上に複数の有機EL素子を有する母材を使用し、同時に複数の有機EL素子を封止することが可能となり、封止後、複数の有機EL素子に合わせガラス基板を分断することで多面取りが可能となり生産効率の向上が可能となった。
3)可撓性封止部材を使用することでガラス基板を使用した有機EL素子でも薄型・軽量化の有機EL素子の製造が可能となった。
【0066】
以下、本発明に係る有機EL素子を構成している主要な層に付き説明する。
《発光層》
本発明に係る有機EL素子の発光層は、電極または電子輸送層、正孔輸送層から注入されてくる電子及び正孔が再結合して発光する層であり、発光する部分は発光層の層内であっても発光層と隣接層との界面であってもよい。発光層の作製には、後述する発光ドーパントやホスト化合物を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法、インクジェット法等の公知の薄膜化法により製膜して形成することができる。発光層の構成としてホスト化合物、発光ドーパント(発光ドーパント化合物ともいう)を含有し、ドーパントより発光させることが好ましい。
【0067】
ホスト化合物としては、公知のホスト化合物を単独で用いてもよく、または複数種併用して用いてもよい。ホスト化合物を複数種用いることで、電荷の移動を調整することが可能であり、有機EL素子を高効率化することができる。また、後述する発光ドーパントを複数種用いることで、異なる発光を混ぜることが可能となり、これにより任意の発光色を得ることができる。
【0068】
発光ホストとしては、従来公知の低分子化合物でも、繰り返し単位をもつ高分子化合物でもよく、ビニル基やエポキシ基のような重合性基を有する低分子化合物(蒸着重合性発光ホスト)でもいい。公知のホスト化合物の具体例としては、以下の文献に記載されている化合物が挙げられる。例えば、特開2001−257076号公報、同2002−308855号公報、同2001−313179号公報、同2002−319491号公報、同2001−357977号公報、同2002−334786号公報、同2002−8860号公報、同2002−334787号公報、同2002−15871号公報、同2002−334788号公報、同2002−43056号公報、同2002−334789号公報、同2002−75645号公報、同2002−338579号公報、同2002−105445号公報、同2002−343568号公報、同2002−141173号公報、同2002−352957号公報、同2002−203683号公報、同2002−363227号公報、同2002−231453号公報、同2003−3165号公報、同2002−234888号公報、同2003−27048号公報、同2002−255934号公報、同2002−260861号公報、同2002−280183号公報、同2002−299060号公報、同2002−302516号公報、同2002−305083号公報、同2002−305084号公報、同2002−308837号公報等が挙げられる。
【0069】
次に、有機EL素子に用いられる発光ドーパントについて説明する。発光ドーパントとしては、蛍光性化合物、燐光発光体(燐光性化合物、燐光発光性化合物等ともいう)を用いることが出来る。燐光発光体としては、好ましくは元素の周期表で8〜10族の金属を含有する錯体系化合物であり、さらに好ましくはイリジウム化合物、オスミウム化合物、または白金化合物(白金錯体系化合物)、希土類錯体であり、中でも最も好ましいのはイリジウム化合物である。
【0070】
以下に、燐光発光体として用いられる化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。これらの化合物は、例えば、Inorg.Chem.40巻,1704〜1711に記載の方法等により合成できる。
【0071】
【化1】

【0072】
【化2】

【0073】
【化3】

【0074】
【化4】

【0075】
【化5】

【0076】
【化6】

【0077】
蛍光発光体(蛍光性ドーパント)の代表例としては、クマリン系色素、ピラン系色素、シアニン系色素、クロコニウム系色素、スクアリウム系色素、オキソベンツアントラセン系色素、フルオレセイン系色素、ローダミン系色素、ピリリウム系色素、ペリレン系色素、スチルベン系色素、ポリチオフェン系色素、又は希土類錯体系蛍光体等が挙げられる。
【0078】
また、従来公知のドーパントも本発明に用いることができ、例えば、国際公開第00/70655号パンフレット、特開2002−280178号公報、同2001−181616号公報、同2002−280179号公報、同2001−181617号公報、同2002−280180号公報、同2001−247859号公報、同2002−299060号公報、同2001−313178号公報、同2002−302671号公報、同2001−345183号公報、同2002−324679号公報、国際公開第02/15645号パンフレット、特開2002−332291号公報、同2002−50484号公報、同2002−332292号公報、同2002−83684号公報、特表2002−540572号公報、特開2002−117978号公報、同2002−338588号公報、同2002−170684号公報、同2002−352960号公報、国際公開第01/93642号パンフレット、特開2002−50483号公報、同2002−100476号公報、同2002−173674号公報、同2002−359082号公報、同2002−175884号公報、同2002−363552号公報、同2002−184582号公報、同2003−7469号公報、特表2002−525808号公報、特開2003−7471号公報、特表2002−525833号公報、特開2003−31366号公報、同2002−226495号公報、同2002−234894号公報、同2002−235076号公報、同2002−241751号公報、同2001−319779号公報、同2001−319780号公報、同2002−62824号公報、同2002−100474号公報、同2002−203679号公報、同2002−343572号公報、同2002−203678号公報等が挙げられる。
【0079】
《注入層:電子注入層、正孔注入層》
注入層は必要に応じて設け、電子注入層と正孔注入層があり、陽極と発光層または正孔輸送層の間、及び陰極と発光層または電子輸送層との間に存在させてもよい。
【0080】
注入層とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために電極と有機層間に設けられる層のことで、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(123〜166頁)に詳細に記載されており、正孔注入層(陽極バッファー層)と電子注入層(陰極バッファー層)とがある。
【0081】
陽極バッファー層(正孔注入層)は、特開平9−45479号公報、同9−260062号公報、同8−288069号公報等にもその詳細が記載されており、具体例として、銅フタロシアニンに代表されるフタロシアニンバッファー層、酸化バナジウムに代表される酸化物バッファー層、アモルファスカーボンバッファー層、ポリアニリン(エメラルディン)やポリチオフェン等の導電性高分子を用いた高分子バッファー層等が挙げられる。
【0082】
陰極バッファー層(電子注入層)は、特開平6−325871号公報、同9−17574号公報、同10−74586号公報等にもその詳細が記載されており、具体的にはストロンチウムやアルミニウム等に代表される金属バッファー層、フッ化リチウムに代表されるアルカリ金属化合物バッファー層、フッ化マグネシウムに代表されるアルカリ土類金属化合物バッファー層、酸化アルミニウムに代表される酸化物バッファー層等が挙げられる。上記バッファー層(注入層)はごく薄い膜であることが望ましく、素材にもよるがその膜厚は0.1nm〜5μmの範囲が好ましい。
【0083】
《阻止層:正孔阻止層、電子阻止層》
阻止層は、上記の如く、有機化合物薄膜の基本構成層の他に必要に応じて設けられるものである。例えば、特開平11−204258号公報、同11−204359号公報、及び「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の237頁等に記載されている正孔阻止(ホールブロック)層がある。
【0084】
正孔阻止層とは広い意味では電子輸送層の機能を有し、電子を輸送する機能を有しつつ正孔を輸送する能力が著しく小さい正孔阻止材料からなり、電子を輸送しつつ正孔を阻止することで電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。また、後述する電子輸送層の構成を必要に応じて、正孔阻止層として用いることができる。一般に有機EL素子の正孔阻止層は、発光層に隣接して設けられていることが好ましい。
【0085】
一方、電子阻止層とは広い意味では正孔輸送層の機能を有し、正孔を輸送する機能を有しつつ電子を輸送する能力が著しく小さい材料からなり、正孔を輸送しつつ電子を阻止することで電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。また、後述する正孔輸送層の構成を必要に応じて電子阻止層として用いることができる。一般に正孔阻止層、電子輸送層の膜厚としては好ましくは3〜100nmであり、さらに好ましくは5〜30nmである。
【0086】
《正孔輸送層》
正孔輸送層とは正孔を輸送する機能を有する正孔輸送材料からなり、広い意味で正孔注入層、電子阻止層も正孔輸送層に含まれる。正孔輸送層は単層または複数層設けることができる。
【0087】
正孔輸送材料としては、正孔の注入または輸送、電子の障壁性のいずれかを有するものであり、有機物、無機物のいずれであってもよい。例えば、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、また導電性高分子オリゴマー、特にチオフェンオリゴマー等が挙げられる。
【0088】
正孔輸送材料としては上記のものを使用することができるが、ポルフィリン化合物、芳香族第3級アミン化合物及びスチリルアミン化合物、特に芳香族第3級アミン化合物を用いることが好ましい。
【0089】
芳香族第3級アミン化合物及びスチリルアミン化合物の代表例としては、N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノフェニル;N,N′−ジフェニル−N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−〔1,1′−ビフェニル〕−4,4′−ジアミン(TPD);2,2−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)プロパン;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン;N,N,N′,N′−テトラ−p−トリル−4,4′−ジアミノビフェニル;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン;ビス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)フェニルメタン;ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)フェニルメタン;N,N′−ジフェニル−N,N′−ジ(4−メトキシフェニル)−4,4′−ジアミノビフェニル;N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル;4,4′−ビス(ジフェニルアミノ)クオードリフェニル;N,N,N−トリ(p−トリル)アミン;4−(ジ−p−トリルアミノ)−4′−〔4−(ジ−p−トリルアミノ)スチリル〕スチルベン;4−N,N−ジフェニルアミノ−(2−ジフェニルビニル)ベンゼン;3−メトキシ−4′−N,N−ジフェニルアミノスチルベンゼン;N−フェニルカルバゾール、さらには、米国特許第5,061,569号明細書に記載されている2個の縮合芳香族環を分子内に有するもの、例えば、4,4′−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル(NPD)、特開平4−308688号公報に記載されているトリフェニルアミンユニットが3つスターバースト型に連結された4,4′,4″−トリス〔N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ〕トリフェニルアミン(MTDATA)等が挙げられる。
【0090】
さらにこれらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。また、p型−Si、p型−SiC等の無機化合物も正孔注入材料、正孔輸送材料として使用することができる。
【0091】
また、特開平11−251067号公報、J.Huang et.al.著文献(Applied Physics Letters 80(2002),p.139)に記載されているような所謂、p型正孔輸送材料を用いることもできる。
【0092】
正孔輸送層は上記正孔輸送材料を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法を含む印刷法、LB法等の公知の方法により、薄膜化することにより形成することができる。正孔輸送層の膜厚については特に制限はないが、通常は5nm〜5μm程度、好ましくは5〜200nmである。この正孔輸送層は上記材料の1種または2種以上からなる一層構造であってもよい。
【0093】
また、不純物をドープしたp性の高い正孔輸送層を用いることもできる。その例としては、特開平4−297076号公報、特開2000−196140号公報、同2001−102175号公報、J.Appl.Phys.,95,5773(2004)等に記載されたものが挙げられる。
【0094】
《電子輸送層》
電子輸送層とは電子を輸送する機能を有する材料からなり、広い意味で電子注入層、正孔阻止層も電子輸送層に含まれる。電子輸送層は単層または複数層設けることができる。
【0095】
従来、単層の電子輸送層、及び複数層とする場合は発光層に対して陰極側に隣接する電子輸送層に用いられる電子輸送材料(正孔阻止材料を兼ねる)としては、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有していればよく、その材料としては従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができ、例えば、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタン及びアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体等が挙げられる。さらに、上記オキサジアゾール誘導体において、オキサジアゾール環の酸素原子を硫黄原子に置換したチアジアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有するキノキサリン誘導体も、電子輸送材料として用いることができる。さらにこれらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
【0096】
また、8−キノリノール誘導体の金属錯体、例えば、トリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alq)、トリス(5,7−ジクロロ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5,7−ジブロモ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(2−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、ビス(8−キノリノール)亜鉛(Znq)等、及びこれらの金属錯体の中心金属がIn、Mg、Cu、Ca、Sn、GaまたはPbに置き替わった金属錯体も、電子輸送材料として用いることができる。その他、メタルフリーもしくはメタルフタロシアニン、またはそれらの末端がアルキル基やスルホン酸基等で置換されているものも、電子輸送材料として好ましく用いることができる。また、発光層の材料として例示したジスチリルピラジン誘導体も、電子輸送材料として用いることができるし、正孔注入層、正孔輸送層と同様に、n型−Si、n型−SiC等の無機半導体も電子輸送材料として用いることができる。
【0097】
電子輸送層は上記電子輸送材料を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法を含む印刷法、LB法等の公知の方法により、薄膜化することにより形成することができる。電子輸送層の膜厚については特に制限はないが、通常は5nm〜5μm程度、好ましくは5〜200nmである。電子輸送層は上記材料の1種または2種以上からなる一層構造であってもよい。
【0098】
また、不純物をドープしたn性の高い電子輸送層を用いることもできる。その例としては、特開平4−297076号公報、同10−270172号公報、特開2000−196140号公報、同2001−102175号公報、J.Appl.Phys.,95,5773(2004)等に記載されたものが挙げられる。
【0099】
《第1電極:陽極》
有機EL素子における陽極としては、仕事関数の大きい(4eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが好ましく用いられる。このような電極物質の具体例としてはAu等の金属、CuI、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO2、ZnO等の導電性透明材料が挙げられる。また、IDIXO(In23−ZnO)等非晶質で透明導電膜を作製可能な材料を用いてもよい。陽極はこれらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により、薄膜を形成させ、フォトリソグラフィー法で所望の形状のパターンを形成してもよく、あるいはパターン精度をあまり必要としない場合は(100μm以上程度)、上記電極物質の蒸着やスパッタリング時に所望の形状のマスクを介してパターンを形成してもよい。あるいは、有機導電性化合物のように塗布可能な物質を用いる場合には、印刷方式、コーティング方式等湿式製膜法を用いることもできる。この陽極より発光を取り出す場合には、透過率を10%より大きくすることが望ましく、また陽極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましい。さらに膜厚は材料にもよるが、通常10〜1000nm、好ましくは10〜200nmの範囲で選ばれる。
【0100】
《第2電極:陰極》
一方、陰極としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属(電子注入性金属と称する)、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al23)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。これらの中で、電子注入性及び酸化等に対する耐久性の点から、電子注入性金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al23)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が好適である。陰極はこれらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することができる。また、陰極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましく、膜厚は通常10nm〜5μm、好ましくは50〜200nmの範囲で選ばれる。なお、発光した光を透過させるため、有機EL素子の陽極または陰極のいずれか一方が、透明または半透明であれば発光輝度が向上し好都合である。
【0101】
また、陰極に上記金属を1〜20nmの膜厚で作製した後に、陽極の説明で挙げた導電性透明材料をその上に作製することで、透明または半透明の陰極を作製することができ、これを応用することで陽極と陰極の両方が透過性を有する素子を作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】有機EL素子の層構成の一例を示す概略断面図である。
【図2】図1のTで示される部分の拡大概略断面図である。
【図3】可撓性封止部材により封止した有機EL素子の製造工程の概略斜視図である。
【図4】図3に示される載置台の概略斜視図である。
【図5】図3に示される分離手段形成装置の概略斜視図である。
【図6】図5に示す分離手段形成装置の分離手段形成刃の概略図である。
【図7】図6に示した分離手段形成装置により枚葉シート状可撓性封止部材に形成された分離手段形成領域の概略図である。
【図8】図3に示す接着剤塗設装置により枚葉シート状可撓性封止部材の分離手段形成領域に塗設された接着剤の状態を示す概略平面図である。
【図9】図3に示される分離工程で可撓性封止部材により封止された複数の有機EL素子から個別の有機EL素子を分離する概略フロー図である。
【符号の説明】
【0103】
1 有機EL素子
101 ガラス基材
102 陽極層
103 正孔輸送層(正孔注入層)
104 有機化合物層(発光層)
105 電子注入層
106 陰極層
107 接着剤層
108 封止基材
108a、301a″ 樹脂基材
108b、301a′ 防湿層
2 製造工程
3 供給工程
301 可撓性封止部材
301a 枚葉シート状可撓性封止部材
301a1 分離手段形成領域
302 断裁装置
303 載置台
4 分離手段形成工程
401a 分離手段形成刃
5 接着剤塗設工程
502a 接着剤塗設装置
6 貼合工程
7 硬化処理工程
8 分離工程
9 分断工程
10 ガラス基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板上に第1電極と、前記第1電極上に形成された発光層を含む1層以上の有機化合物層を有する有機エレクトロルミネッセンス層と、第2電極層とを有する少なくとも一つの有機エレクトロルミネッセンス素子を可撓性封止部材を使用し封止工程で封止する有機エレクトロルミネッセンス素子の封止方法において、
前記封止工程は前記可撓性封止部材の供給工程と、
前記有機エレクトロルミネッセンス素子の大きさに応じ、前記可撓性封止部材を分離可能とする封止領域を形成する分離領域形成工程と、
前記封止領域を設けた前記可撓性封止部材に接着剤を塗設する接着剤塗設工程と、
前記接着剤を塗布した前記封止領域を形成した可撓性封止部材と前記有機エレクトロルミネッセンス素子とを貼合する貼合工程と、
前記貼合の後に前記接着剤を硬化させる硬化処理工程と、
前記貼合工程で貼合した前記可撓性封止部材の封止領域部分を分離する分離工程とを有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の封止方法。
【請求項2】
前記可撓性封止部材は分離領域形成工程により複数の封止領域が形成されており、且つ、分離工程で該可撓性封止部材の封止領域部分を同時に分離することを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の封止方法。
【請求項3】
前記供給工程から供給される可撓性封止部材はガラス基板のサイズに合わせ断裁した後、クリーニング処理が施されることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の封止方法。
【請求項4】
前記接着剤は可撓性封止部材の封止領域又は該封止領域の周辺部に塗設されることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の封止方法。
【請求項5】
前記貼合工程はガラス基板と接着剤塗設済み可撓性封止部材との位置合わせ工程と、圧着工程とを有していることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の封止方法。
【請求項6】
前記可撓性封止部材が樹脂基材と、防湿層とを有する枚葉シート状樹脂フィルムであることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の封止方法。
【請求項7】
ガラス基板上に第1電極と、前記第1電極上に形成された発光層を含む1層以上の有機化合物層を有する有機エレクトロルミネッセンス層と、第2電極層とを有する少なくとも2つの有機エレクトロルミネッセンス素子を可撓性封止部材を使用し請求項1〜6の何れか1項に記載の封止方法で封止した後、前記ガラス基板をスクライブすることで、前記可撓性封止部材で封止された個別の有機エレクトロルミネッセンス素子を製造することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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