有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法、電気光学装置の製造方法、および電子機器の製造方法
【課題】 液滴吐出装置を用いて、ムラのない均一な厚さの正孔輸送層または発光層をもつ有機エレクトロルミネッセンス素子を製造すること。
【解決手段】 有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法が、基板上の画素電極が凹部の底部になるように、前記凹部を規定する隔壁を形成する工程Aと、前記底部上に親液層を形成する工程Bと、前記親液層上に、液滴吐出装置を用いて液状の第1の材料を付与する工程Cと、を含んでおり、前記第1の材料は、正孔輸送材料および発光材料のどちらか一方であって、前記液状の第1の材料に対する前記親液層の親液性は、前記液状の第1の材料に対する前記隔壁の親液性よりも高い。
【解決手段】 有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法が、基板上の画素電極が凹部の底部になるように、前記凹部を規定する隔壁を形成する工程Aと、前記底部上に親液層を形成する工程Bと、前記親液層上に、液滴吐出装置を用いて液状の第1の材料を付与する工程Cと、を含んでおり、前記第1の材料は、正孔輸送材料および発光材料のどちらか一方であって、前記液状の第1の材料に対する前記親液層の親液性は、前記液状の第1の材料に対する前記隔壁の親液性よりも高い。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器の製造方法および電気光学装置の製造方法に関し、特にインクジェット法を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自発光素子である有機エレクトロルミネッセンス(以下「有機EL」)素子を備えた有機EL表示装置の開発が加速している。有機EL表示装置は、液晶表示装置に替わり得る薄型表示装置であるとされているからである。有機EL素子の製造方法としては、非特許文献1に示されるような、低分子の発光材料を蒸着法で基板上に成膜する方法と、非特許文献2に示されるような、高分子の発光材料を基板上に付与する方法が主に知られている。
【0003】
特に、高分子を用いる有機EL素子の製造方法において、特許文献1に示されるような、液状の高分子をインクジェット法で付与する方法が注目されている。インクジェット法によれば、表示装置をカラー化する際に、各色に対応した高分子をそれぞれインクジェット法で所定の位置に付与すればよいので、困難とされる発光層のパターニングを行う必要がない。また、付与する高分子の使用量を必要最低限の量にまで抑えることができるという利点がある。
【0004】
【特許文献1】特開平10−153967号公報
【非特許文献1】Appl.Phys.Lett.51(12),21 September 1987(第913頁)
【非特許文献2】Appl.Phys.Lett.71(1),7 July 1997(第34頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
インクジェット法により有機EL素子を製造する際には、基板上に形成した薄膜を加工して隔壁を作り、この隔壁に囲まれた被吐出部に液状の高分子を付与していく。しかしながら、付与された高分子が被吐出部に均一に濡れ広がらないと、厚さにムラが生じたり、高分子が隔壁を越えて拡散して混色を起こすことがある。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、隔壁に撥液性をもたせると同時に被吐出部に親液性をもたせて、液状の高分子をムラなく均一な厚さに付与することが可能な有機EL素子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による有機EL素子の製造方法は、基板上の画素電極が凹部の底部になるように、前記凹部を規定する隔壁を形成する工程Aと、前記底部上に親液層を形成する工程Bと、前記親液層上に、液滴吐出装置を用いて液状の第1の材料を付与する工程Cと、を含んでおり、前記第1の材料は、正孔輸送材料および発光材料のどちらか一方であって、前記液状の第1の材料に対する前記親液層の親液性は、前記液状の第1の材料に対する前記隔壁の親液性よりも高い。好ましくは、上記構成のうちの工程Bが、前記底部上にシリカ(SiO2)の微粒子を含有する液状の第2の材料を付与して前記親液層を形成する工程を含んでいる。
【0008】
上記構成によって得られる効果の一つは、正孔輸送材料または発光材料をムラなく均一な厚さに形成できることである。
【0009】
前記液状の第2の材料は、さらに酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO2)、チタン酸ストロンチウム(SrTi3)、酸化タングステン(WO3)、酸化ビスマス(Bi2O3)、および酸化鉄(Fe2O3)のうちの少なくとも1種からなる微粒子を含有していてもよい。
【0010】
また、前記工程Bは、前記底部上に、シリカ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、チタン酸ストロンチウム、酸化タングステン、酸化ビスマス、および酸化鉄のうちの少なくとも1種以上の組成の組み合わせからなる微粒子を含有する液状の第2の材料を付与して前記親液層を形成する工程を含んでいてもよい。あるいは、前記工程Bは、前記底部上に、シリカと、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、チタン酸ストロンチウム、酸化タングステン、酸化ビスマス、および酸化鉄のうちの少なくとも1種以上と、の組成の組み合わせからなる微粒子を含有する液状の第2の材料を付与して前記親液層を形成する工程を含んでいてもよい。
【0011】
上記構成によって得られる効果の一つは、親液層によって、画素電極から正孔輸送層または発光層へのイオン拡散を防止できることである。
【0012】
さらに、上述した微粒子の平均粒径は1μm以下であることが望ましい。
【0013】
上記の条件を満たすことによって得られる効果の一つは、液状の第1の材料を液滴吐出装置によって吐出する際に、目詰まりすることなく、液状の第1の材料を所望の方向へ吐出できることである。
【0014】
また、前記工程Aは、フッ素を含有する高分子化合物、またはフッ素を含有する有機分子が混合されたフォトレジストから前記隔壁を形成する工程を含んでもよい。
【0015】
上記構成によって得られる効果の一つは、正孔輸送材料または発光材料をムラなく均一な厚さに形成できるという本発明の効果をさらに高めることができることである。
【0016】
本発明による有機EL素子の製造方法は、基板上の画素電極を覆う親液層を形成する工程Aと、前記画素電極上の前記親液層が凹部の底部になるように、前記凹部を規定する隔壁を形成する工程Bと、前記底部上に液滴吐出装置を用いて液状の第1の材料を付与する工程Cと、を含んでおり、前記第1の材料は、正孔輸送材料および発光材料のどちらか一方であって、前記液状の第1の材料に対する前記親液層の親液性は、前記液状の第1の材料に対する前記隔壁の親液性よりも高い。好ましくは、上記構成のうちの工程Aが、前記底部上にシリカ(SiO2)の微粒子を含有する液状の第2の材料を付与して前記親液層を形成する工程を含んでいる。
【0017】
上記構成によって得られる効果の一つは、正孔輸送材料または発光材料をムラなく均一な厚さに形成できることである。
【0018】
前記液状の第2の材料は、さらに酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO2)、チタン酸ストロンチウム(SrTi3)、酸化タングステン(WO3)、酸化ビスマス(Bi2O3)、および酸化鉄(Fe2O3)のうちの少なくとも1種からなる微粒子を含有していてもよい。
【0019】
また、前記工程Aは、前記底部上に、シリカ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、チタン酸ストロンチウム、酸化タングステン、酸化ビスマス、および酸化鉄のうちの少なくとも1種以上の組成の組み合わせからなる微粒子を含有する液状の第2の材料を付与して前記親液層を形成する工程を含んでいてもよい。あるいは、前記工程Aは、前記底部上に、シリカと、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、チタン酸ストロンチウム、酸化タングステン、酸化ビスマス、および酸化鉄のうちの少なくとも1種以上と、の組成の組み合わせからなる微粒子を含有する液状の第2の材料を付与して前記親液層を形成する工程を含んでいてもよい。
【0020】
上記構成によって得られる効果の一つは、親液層によって、画素電極から正孔輸送層または発光層へのイオン拡散を防止できることである。
【0021】
さらに、上述した微粒子は、平均粒径が1μm以下であることが望ましい。
【0022】
上記の条件を満たすことによって得られる効果の一つは、液状の第1の材料を液滴吐出装置によって吐出する際に、目詰まりすることなく、液状の第1の材料を所望の方向へ吐出できることである。
【0023】
また、前記工程Bは、フッ素を含有する高分子化合物、またはフッ素を含有する有機分子が混合されたフォトレジストから前記隔壁を形成する工程を含んでもよい。
【0024】
上記構成によって得られる効果の一つは、正孔輸送材料または発光材料をムラなく均一な厚さに形成できるという本発明の効果をさらに高めることができることである。
【0025】
本発明のある態様では、前記親液層に光を照射する工程を含んでおり、このときの光の波長は400nm以下であることが好ましい。
【0026】
上記構成によって得られる効果の一つは、親液層の、正孔輸送材料または発光材料に対する親液性が高くなることである。
【0027】
本発明の他の態様では、前記隔壁は、フッ素を含有する有機分子を含んでいる。
【0028】
上記構成によって得られる効果の一つは、隔壁が、正孔輸送材料または発光材料に対する撥液性をもつことである。
【0029】
本発明の他の態様では、前記隔壁の表面を、フルオロカーボン系の化合物を反応ガスに用いてプラズマ処理する工程を含んでいる。
【0030】
上記構成によって得られる効果の一つは、隔壁の、正孔輸送材料または発光材料に対する撥液性がさらに向上することである。
【0031】
なお、本発明は、種々の態様で実現することができる。具体的には、電気光学装置の製造方法または電子機器の製造方法として実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0033】
(第1の実施形態)
(A.表示装置)
始めに、有機EL素子を用いた電気光学装置としての有機EL表示装置の構造について説明する。
【0034】
図1を参照しながら、有機EL表示装置1の電気的な構成を説明する。有機EL表示装置1は、走査線駆動回路41と、走査線駆動回路41に連結された複数本の走査線43と、データ線駆動回路42と、データ線駆動回路42に連結された複数本のデータ線44と、複数本の走査線43と複数本のデータ線44との交差に対応して配置された複数の画素領域45と、を有する。ここで、複数の画素領域45のそれぞれは、少なくとも一つのTFT(薄膜トランジスタ)素子と、流れる電流の大きさに応じて発光する有機EL素子と、を有している。
【0035】
有機EL表示装置1の表示動作は、書き込み期間と発光期間とを繰り返して行われる。書き込み期間において、走査線駆動回路41は、走査線43を順次選択し、選択された走査線43に対応する画素領域45のTFT素子をオンする。TFT素子がオンしている状態で、データ線駆動回路42からのデータ信号が、データ線44を介して当該TFT素子のソースに印加されると、当該画素領域45には、データ信号に応じた電圧が書き込まれる。すべての画素領域45への書き込みが完了すると、書き込み期間が終了する。続く発光期間では、書き込まれた電圧に応じた電流が有機EL素子に流れ、発光が行われる。有機EL表示装置1は、上述の書き込み期間と発光期間を短時間で繰り返し実行することによって、画面表示を行う表示装置である。
【0036】
図2を参照しながら、有機EL表示装置1の構造をより具体的に説明する。なお、図2(a)は、有機EL表示装置1のXZ断面を示しており、図2(b)は、有機EL表示装置1における複数の被吐出部31(後述)のXY平面上での位置関係を示している。
【0037】
図2(a)に示すように、有機EL表示装置1は、図1を参照して説明した構成要素に加えて、支持基板20と、支持基板20上に形成された回路素子層11と、複数の画素電極21と、複数の画素電極21の間に形成された隔壁としてのバンク22と、親液層23と、正孔輸送層24と、赤色発光層25R、緑色発光層25G、および青色発光層25B(不図示)とからなる発光層25と、陰極26と、を有している。
【0038】
支持基板20は、可視光に対して光透過性を有する基板であり、例えばガラス基板である。
【0039】
回路素子層11は、支持基板20上で所定の方向に延びる複数の走査線と、複数の走査線を覆うように形成された絶縁層12と、絶縁層12上に位置するとともに複数の走査線が延びる方向に対して直交する方向に延びる複数のデータ線と、走査線およびデータ線の交点付近に位置する複数のTFT素子30と、複数のTFT素子30を覆うように形成されたポリイミドなどからなる層間絶縁層15および層間絶縁層18と、を有する層である。TFT素子30は、シリコンからなる半導体層13と、半導体層13上に形成されたゲート絶縁層14と、ゲート絶縁層14上に形成されたゲート電極19と、ソース電極16およびドレイン電極17とを有する。層間絶縁層15には、ソース電極16およびドレイン電極17に対応する位置にそれぞれスルーホール27および28が設けられている。ソース電極16は、半導体層13の表面からスルーホール27内を経由して層間絶縁層15の表面にまで延設されている。また、ドレイン電極17は、半導体層13の表面からスルーホール28内を経由して層間絶縁層15の表面にまで延設されている。さらに、層間絶縁層18にはドレイン電極17に対応する位置にスルーホール29が設けられており、画素電極21は、このスルーホール29内にまで延設され、層間絶縁層15上のドレイン電極17と接続されている。こうした構成からなるそれぞれのTFT素子30は、バンク22に対応する位置に位置している。つまり、図2(b)の紙面に垂直な方向から観察すると、複数のTFT素子30のそれぞれは、バンク22に覆われるように位置している。
【0040】
以下では、支持基板20と、支持基板20上の回路素子層11と、をまとめて、「回路基板」とも表記する。本実施形態においては、この回路基板が本発明の「基板」に対応する。
【0041】
なお、本発明の「基板」は、必ずしも上述したような回路素子層11を含む回路基板である必要はない。「基板」の態様は、有機EL素子の用途に応じて様々に変えることができる。例えば、単なるガラス基板やプラスチック基板などでも良い。
【0042】
複数の画素電極21は、回路素子層11上にマトリクス状に配置されており、それぞれが画素領域45を規定する。そして、複数の画素電極21のそれぞれは、可視光に対して光透過性を有する電極であり、例えば、ITO(Indium-Tin Oxide)電極である。
【0043】
バンク22は、Z軸方向から見ると格子状の形状を有しており、複数の画素電極21のそれぞれの周囲を囲む。バンク22は、フッ素を含有する有機分子からなる有機薄膜を加工して形成される。
【0044】
格子状のバンク22が規定する凹部内には、画素電極21側から順に、親液層23、正孔輸送層24、および発光層25R(または発光層25G、25B)が位置している。
【0045】
以下では、格子状のバンク22が規定する凹部を「被吐出部31」とも呼ぶ。この凹部(つまり「被吐出部31」)の側面は、バンク22によって構成され、底部は、画素電極21、親液層23、および正孔輸送層24のうちのいずれか一つによって構成される。具体的には、「被吐出部31」は、側面がバンク22で底部が画素電極21である凹部、側面がバンク22で底部が親液層23である凹部、および側面がバンク22で底部が正孔輸送層24である凹部、のいずれをも包含する概念である。そして、図2(b)に示すように、複数の被吐出部31が形成するマトリクスの行方向および列方向は、それぞれX軸方向およびY軸方向と平行である。
【0046】
親液層23は、シリカ(SiO2)の微粒子と酸化チタン(TiO2)の微粒子とを含有する材料からなっている。そして、液状の正孔輸送材料24A(後述)に対する親液層23の親液性は、液状の正孔輸送材料24Aに対するバンク22の親液性よりも高い。つまり、液状の正孔輸送材料24Aが親液層23上で呈する接触角は、正孔輸送材料24Aがバンク22上で呈する接触角よりも小さい。なお、後述するように、親液層23を形成する工程は、液状の親液材料23Aを画素電極21上に付与する工程を含んでいる。
【0047】
正孔輸送層24には、例えばトリフェニルアミンを骨格として有する高分子材料を用いることができる。このような高分子としては、化合物1として示すADS社製「ADS254BE」を採用することができる。トリフェニルアミン骨格を有する高分子は、正孔輸送性を有することから、このような高分子を含んだ膜は正孔輸送層として機能し得る。さらに、トリフェニルアミンを骨格として有する高分子は、現在主流であるPEDOT:PSS(ポリエチレンジオキシチオフェン:ポリスチレンスルフォン酸)とは異なり、分散系ではないので、不純物イオンの軽減を図ることができ、信頼性に対して有効であると考えられる。なお、後述するように、正孔輸送層24を形成する工程は、液状の正孔輸送材料24Aを親液層23上に付与する工程を含んでいる。
【0048】
【化1】
【0049】
発光層25は、高分子有機化合物からなり、電気を光に変えるエレクトロルミネッセンス現象を担う発光物質の層である。発光層25には、赤色の光を発する発光層25R、緑色の光を発する発光層25G、および青色の光を発する発光層25Bの3種類があり、これらは所定の規則に従って配置されている。陰極26と画素電極21との間に電圧を印加すると、発光層25に正孔と電子が注入される。発光層25は、これらの正孔と電子が再結合したときに光を発する。正孔輸送層24は、画素電極21から注入される正孔を効率良く発光層25へ輸送するための層であり、有機化合物からなる。陰極26は、光を反射する金属からなる。発光層25からZ軸の負の方向へ出射した光は、回路素子層11および支持基板20を透過する。一方、発光層25からZ軸の正の方向へ出射した光は、陰極26で反射されてZ軸の負の方向へ進み、回路素子層11および支持基板20を透過する。このように、この有機EL表示装置1は、支持基板20側から光を取り出す、ボトムエミッション型として構成されている。なお、後述するように、発光層25を形成する工程は、液状の発光材料25Aを正孔輸送層24上に付与する工程を含んでいる。
【0050】
発光層25を構成する発光材料としては、以下に化合物2から6として示す、ポリビニルカルバゾール、ポリフルオレン系高分子誘導体、(ポリ)パラフェニレンビニレン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ペリレン系色素、クマリン系色素、ローダミン系色素、あるいは上記高分子に有機EL材料をドープしたものを使用することができる。ドープする物質としては、例えば、ルブレン、ペリレン、9,10−ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、キナクリドン等が挙げられる。この他にも、燐光発光材料であるイリジウム錯体、例えばIr(ppy)3なども挙げられる。
【0051】
【化2】
【0052】
【化3】
【0053】
【化4】
【0054】
【化5】
【0055】
【化6】
【0056】
さらに、赤色発光材料としては、例えばMEH−PPV(poly Methoxy(2ethyl)hexyloxy paraphenylene vinylene)を、青色発光材料としては、例えばポリジオクチルフルオレンを、緑色発光材料としては、例えばPPV(poly(para-phenylene vinylene))を用いることができる。
【0057】
(B.製造装置)
図3を参照しながら、有機EL表示装置1の製造に用いる製造装置Aを説明する。なお、以下では、発光層25が設けられる以前の有機EL表示装置1を指して基体10と表記する。
【0058】
製造装置Aは、基体10の被吐出部31に対して、親液材料23A、正孔輸送材料24A、および対応する発光材料25RA、25GA、25BAを塗布する装置である。製造装置Aは、すべての画素電極21上に親液材料23Aを付与する吐出装置300Lと、画素電極21上の親液材料23Aを乾燥して親液層23を得る乾燥装置350Lと、親液層23に光を照射する光照射装置400Lと、すべての親液層23上に正孔輸送材料24Aを付与する吐出装置300Hと、親液層23上の正孔輸送材料24Aを乾燥して正孔輸送層24を得る乾燥装置350Hと、赤色に対応する画素領域45内の正孔輸送層24上に発光材料25RAを付与する吐出装置300Rと、正孔輸送層24上の発光材料25RAを乾燥して発光層25Rを得る乾燥装置350Rと、緑色に対応する画素領域45内の正孔輸送層24上に発光材料25GAを付与する吐出装置300Gと、正孔輸送層24上の発光材料25GAを乾燥して発光層25Gを得る乾燥装置350Gと、青色に対応する画素領域45内の正孔輸送層24上に発光材料25BAを付与する吐出装置300Bと、正孔輸送層24上の発光材料25BAを乾燥して発光層25Bを得る乾燥装置350Bと、を備えている。
【0059】
さらに製造装置Aは、吐出装置300L、乾燥装置350L、光照射装置400L、吐出装置300H、乾燥装置350H、吐出装置300R、乾燥装置350R、吐出装置300G、乾燥装置350G、吐出装置300B、乾燥装置350Bの順番に基体10を搬送する搬送装置270も備えている。このように、本実施形態の有機EL素子の製造方法は、5つの液滴吐出装置を利用する。なお、親液材料23A、正孔輸送材料24A、発光材料25RA、25GA、25BAは、いずれも、後述する液状の材料の一種である。
【0060】
(C.液滴吐出装置の全体構成)
図4に示す液滴吐出装置300Lは、基本的には液状の親液材料23Aを吐出するためのインクジェット装置である。より具体的には、液滴吐出装置300Lは、液状の材料111を保持するタンク101と、チューブ110と、グランドステージGSと、吐出ヘッド部103と、ステージ106と、第1位置制御装置104と、第2位置制御装置108と、制御部112と、支持部104aと、を備えている。なお、他の4つの液滴吐出装置300H、300R、300G、300Bの構造および機能は、液滴吐出装置300Lの構造および機能と基本的に同じであり、このため、これら4つの液滴吐出装置の構造および機能の説明は省略する。
【0061】
吐出ヘッド部103は、ヘッド114(図5)を保持している。このヘッド114は、制御部112からの信号に応じて、液状の材料111の液滴を吐出する。なお、吐出ヘッド部103におけるヘッド114は、チューブ110によってタンク101に連結されており、このため、タンク101からヘッド114に液状の材料111が供給される。
【0062】
ステージ106は、上述の基体10を固定するための平面を提供している。さらにステージ106は、吸引力を用いて基体10の位置を固定する機能も有する。
【0063】
第1位置制御装置104は、支持部104aによって、グランドステージGSから所定の高さの位置に固定されている。この第1位置制御装置104は、制御部112からの信号に応じて、吐出ヘッド部103をX軸方向と、X軸方向に直交するZ軸方向と、に沿って移動させる機能を有する。さらに、第1位置制御装置104は、Z軸に平行な軸の回りで吐出ヘッド部103を回転させる機能も有する。ここで、本実施形態では、Z軸方向は、鉛直方向(つまり重力加速度の方向)に平行な方向である。
【0064】
第2位置制御装置108は、制御部112からの信号に応じて、ステージ106をグランドステージGS上でY軸方向に移動させる。ここで、Y軸方向は、X軸方向およびZ軸方向の双方と直交する方向である。
【0065】
上記のような機能を有する第1位置制御装置104の構成と第2位置制御装置108の構成とは、リニアモータまたはサーボモータを利用した公知のXYロボットを用いて実現できる。このため、ここでは、それらの詳細な構成の説明を省略する。
【0066】
さて上述のように、第1位置制御装置104によって、吐出ヘッド部103はX軸方向に移動する。そして、第2位置制御装置108によって、基体10はステージ106と共にY軸方向に移動する。これらの結果、基体10に対するヘッド114の相対位置が変わる。より具体的には、これらの動作によって、吐出ヘッド部103、ヘッド114、またはノズル118(図5)は、基体10に対して、Z軸方向に所定の距離を保ちながら、X軸方向およびY軸方向に相対的に移動、すなわち相対的に走査する。「相対移動」または「相対走査」とは、液状の材料111を吐出する側と、そこからの吐出物が着弾する側(被吐出部31)の少なくとも一方を他方に対して相対移動することを意味する。
【0067】
制御部112は、液状の材料111の液滴を吐出すべき相対位置を表す吐出データを外部情報処理装置から受け取るように構成されている。制御部112は、受け取った吐出データを内部の記憶装置に格納するとともに、格納された吐出データに応じて、第1位置制御装置104と、第2位置制御装置108と、ヘッド114と、を制御する。なお、吐出データとは、基体10上に、液状の材料111を所定パターンで付与するためのデータである。本実施形態では、吐出データはビットマップデータの形態を有している。
【0068】
上記構成を有する液滴吐出装置300Lは、吐出データに応じて、ヘッド114のノズル118(図5)を基体10に対して相対移動させるとともに、被吐出部31に向けてノズル118から液状の材料111を吐出する。
【0069】
なお、インクジェット法で層、膜、またはパターンを形成するとは、液滴吐出装置300Lのような装置を用いて、所定の物体上に、層、膜、またはパターンを形成することである。
【0070】
(D.ヘッド)
図5(a)および(b)に示すように、液滴吐出装置300Lにおけるヘッド114は、複数のノズル118を有するインクジェットヘッドである。具体的には、ヘッド114は、振動板126と、液たまり129と、複数の隔壁122と、複数の振動子124と、複数のノズル118の開口を規定するノズルプレート128と、供給口130と、孔131と、を備えている。液たまり129は、振動板126と、ノズルプレート128と、の間に位置しており、この液たまり129には、図示しない外部タンクから孔131を介して供給される液状の配向材料111が常に充填される。
【0071】
複数の隔壁122は、振動板126と、ノズルプレート128と、の間に位置している。そして、振動板126と、ノズルプレート128と、一対の隔壁122と、によって囲まれた部分がキャビティ120である。キャビティ120はノズル118に対応して設けられているため、キャビティ120の数とノズル118の数とは同じである。キャビティ120には、一対の隔壁122間に位置する供給口130を介して、液たまり129から液状の配向材料111が供給される。なお、本実施形態では、ノズル118の直径は、約27μmである。
【0072】
さて、振動板126上には、それぞれのキャビティ120に対応して、それぞれの振動子124が位置する。振動子124のそれぞれは、ピエゾ素子124Cと、ピエゾ素子124Cを挟む一対の電極124A、124Bと、を含む。制御部112が、この一対の電極124A、124Bの間に駆動波形を与えることで、対応するノズル118から液状の配向材料111の液滴Dが吐出される。ここで、ノズル118から吐出される材料の体積は、0pl以上42pl(ピコリットル)以下の間で可変である。なお、ノズル118からZ軸方向に液状の配向材料111の液滴Dが吐出されるように、ノズル118の形状が調整されている。
【0073】
本明細書では、1つのノズル118と、ノズル118に対応するキャビティ120と、キャビティ120に対応する振動子124と、を含んだ部分を「吐出部127」とも表記する。この表記によれば、1つのヘッド114は、ノズル118の数と同じ数の吐出部127を有する。また、吐出部127は、ピエゾ素子の代わりに電気熱変換素子を有してもよい。つまり、吐出部127は、電気熱変換素子による材料の熱膨張を利用して材料を吐出する構成を有していてもよい。
【0074】
(E.制御部)
次に、図6を参照しながら、制御部112の構成を説明する。制御部112は、入力バッファメモリ200と、記憶装置202と、処理部204と、走査駆動部206と、ヘッド駆動部208と、を備えている。入力バッファメモリ200と処理部204とは相互に通信可能に接続されている。処理部204と、記憶装置202と、走査駆動部206と、ヘッド駆動部208とは、図示しないバスによって相互に通信可能に接続されている。
【0075】
走査駆動部206は、第1位置制御装置104および第2位置制御装置108と相互に通信可能に接続されている。同様にヘッド駆動部208は、ヘッド114と相互に通信可能に接続されている。
【0076】
入力バッファメモリ200は、液滴吐出装置300Lの外部に位置する外部情報処理装置(不図示)から、液状の材料111の液滴を吐出するための吐出データを受け取る。入力バッファメモリ200は、吐出データを処理部204に供給し、処理部204は吐出データを記憶装置202に格納する。図6では、記憶装置202はRAMである。
【0077】
処理部204は、記憶装置202内の吐出データに基づいて、被吐出部31に対するノズル118の相対位置を示すデータを走査駆動部206に与える。走査駆動部206はこのデータと、吐出周期と、に応じたステージ駆動信号を第1位置制御装置104および第2位置制御装置108に与える。この結果、被吐出部31に対する吐出ヘッド部103の相対位置が変わる。一方、処理部204は、記憶装置202に記憶された吐出データに基づいて、液状の材料111の吐出に必要な吐出信号をヘッド114に与える。この結果、ヘッド114において対応するノズル118から、液状の材料111の液滴Dが吐出される。
【0078】
制御部112は、CPU、ROM、RAM、およびバスを含んだコンピュータである。したがって、制御部112の上記機能は、コンピュータによって実行されるソフトウェアプログラムによって実現される。もちろん、制御部112は、専用の回路(ハードウェア)によって実現されてもよい。
【0079】
(F.液状の材料)
上述の「液状の材料111」とは、ヘッド114のノズル118から液滴Dとして吐出されうる粘度を有する材料をいう。ここで、液状の材料111が水性であると油性であるとを問わない。ノズル118から吐出可能な流動性(粘度)を備えていれば十分で、固体物質が混入していても全体として流動体であればよい。ここで、液状の材料111の粘度は1mPa・s以上50mPa・s以下であるのが好ましい。粘度が1mPa・s以上である場合には、液状の材料111の液滴Dを吐出する際にノズル118の周辺部が液状の材料111で汚染されにくい。一方、粘度が50mPa・s以下である場合は、ノズル118における目詰まり頻度が小さく、このため円滑な液滴Dの吐出を実現できる。親液材料23A、正孔輸送材料24A、発光材料25RA、25GA、25BAは、いずれも上述の条件を満たす液状の材料である。
【0080】
また、これらの液状の材料111が微粒子を含有している場合は、当該微粒子の平均粒径は1μm以下であることが望ましい。この条件を満たす液状の材料111は、ヘッド114のノズル118から、目詰まりすることなく、所望の方向へ吐出される。親液材料23Aは、上述した通り、シリカ(SiO2)の微粒子と酸化チタン(TiO2)の微粒子とを含有しているが、これらの微粒子の平均粒径は、1μm以下である。
【0081】
なお、本実施形態においては、正孔輸送材料24Aが本発明の「第1の材料」に対応し、親液材料23Aが本発明の「第2の材料」に対応する。
【0082】
(G.製造方法)
図7および図8を参照しながら、上述の液滴吐出装置を用いた有機EL素子の製造方法を説明する。なお、図7および図8においては、図2(a)における絶縁層12、半導体層13、ゲート絶縁層14、ソース電極16、ドレイン電極17、およびゲート電極19の図示を省略し、これらすべてを代表して、TFT素子30として図示する。
【0083】
まず、公知の成膜技術とパターニング技術とを用いて、支持基板20上に回路素子層11および画素電極21を形成する。なお、上述のように、本実施形態では、支持基板20と、支持基板20上の回路素子層11と、をまとめて「回路基板」とも表記する。同様に、発光層25が設けられる以前の有機EL表示装置1を指して「基体10」と表記する。
【0084】
次に、回路素子層11上および画素電極21上をUV洗浄する。そして、図7(a)に示すように、回路素子層11上および画素電極21上を覆うようにスピンコート法を用いて、黒顔料およびフッ素を含有する有機分子からなる樹脂有機薄膜(すなわち樹脂ブラック)を塗布する。このことで、回路素子層11上および画素電極21上に樹脂ブラック層22Aを形成する。さらに樹脂ブラック層22Aの全面を覆うようにネガ型のアクリル系化学増幅型感光性レジストを塗布することで、樹脂ブラック層22A上にレジスト層22Bを形成する。
【0085】
続いて、レジスト層22Bと樹脂ブラック層22Aとをパターニングする。具体的には、図7(b)に示すように、発光層25R、25G、25Bが形成されるべき領域に対応する部位に遮光部ABを有するフォトマスクPMを介して、レジスト層22Bに光hνを照射する。そして、所定のエッチング液を用いてエッチングすることで、光hνが照射されていない部分、すなわち発光層25R、25G、25Bに対応する部分のレジスト層22Bと、対応する樹脂ブラック層22Aとを取り除く。そのことによって、図7(c)に示すように、後に形成されるべき発光層25R、25G、25Bを囲む形状を有する、樹脂ブラックからなるバンク22とレジスト層22Bとが、回路基板上に残る。その後、所定の薬液を用いてレジスト層22Bを剥離して、回路基板上には、図7(d)に示すように、バンク22と画素電極21とで規定される被吐出部31が形成される。ここで、画素電極21とバンク22とは、凹部を形取っている。画素電極21は、その凹部の底部を構成する。
【0086】
以上のような工程を経て、回路基板上の画素電極21が凹部の底部になるように、バンクが形成される。
【0087】
次に、バンク22の表面に対して、プラズマ処理を行う。プラズマ処理は、基体10をフルオロカーボン系化合物を含有するガスにさらし、当該ガスにエネルギーを与えてプラズマ化してバンク22の表面と反応させて行う。このプラズマ処理によって、バンク22の、親液材料23A、正孔輸送材料24A、および発光材料25RA、25GA、25BAに対する撥液性を高めることができる。
【0088】
続いて、基体10に設けられた被吐出部31に、親液材料23A、正孔輸送材料24A、および対応する発光材料25RA、25GA、25BAを順次付与していく。これらの工程は、図3に示す製造装置Aによって行われる。
【0089】
被吐出部31が設けられた基体10は、搬送装置270によって、吐出装置300Lのステージ106に運ばれる。そして、図8(a)に示すように、吐出装置300Lは、被吐出部31のすべてに親液材料23Aの層が形成されるように、ヘッド114から親液材料23Aを吐出する。より具体的には、吐出装置300Lは、被吐出部31の底部を構成する画素電極21の表面に親液材料23Aを吐出する。基体10のすべての被吐出部31に親液材料23Aの層が形成された場合には、搬送装置270が基体10を乾燥装置350L内に位置させる。そして、被吐出部31上の親液材料23Aを完全に乾燥させることで、図8(a)に示すように、被吐出部31に親液層23が形成される。
【0090】
親液層23が設けられた基体10は、搬送装置270によって、光照射装置400Lに運ばれる。そして、光照射装置400Lは、基体10に対して波長400nm以下の光を照射する。親液層23は、このような波長の光に対して反応し、親液性が高まる性質を持っている。したがって、当該工程を経た親液層23は、正孔輸送材料24Aあるいは発光材料25R、25G、および25Bに対する親液性が高まる。
【0091】
なお、光照射装置400Lは、上述のように波長400nm以下の光を照射するが、親液層23に含まれる微粒子の種類によって、実際に反応に寄与する光の波長は異なる。具体的には、シリカ(SiO2)の微粒子と、金属を含む微粒子とを含有する親液層23は、波長400nm以下の光のうち、その金属を含有する微粒子が光触媒として機能する波長の光に反応する。例えば、本実施形態で用いる、シリカ(SiO2)の微粒子と酸化チタン(TiO2)の微粒子とを含有する親液層23は、酸化チタン(TiO2)の微粒子が光触媒として機能する、波長380nm以下の光に反応する。また、シリカ(SiO2)の微粒子のみを含む親液層23は、波長が250nm以下の光に反応する。
【0092】
続いて、基体10は、搬送装置270によって、吐出装置300Hのステージ106に運ばれる。そして、図8(b)に示すように、吐出装置300Hは、被吐出部31のすべてに正孔輸送材料24Aの層が形成されるように、ヘッド114から正孔輸送材料24Aを吐出する。より具体的には、吐出装置300Hは、被吐出部31の底部を構成する親液層23の表面に正孔輸送材料24Aを吐出する。基体10のすべての被吐出部31に正孔輸送材料24Aの層が形成された場合には、搬送装置270が基体10を乾燥装置350H内に位置させる。そして、被吐出部31上の正孔輸送材料24Aを完全に乾燥させることで、図8(b)に示すように、被吐出部31に正孔輸送層24が形成される。
【0093】
ところで、親液層23の正孔輸送材料24Aに対する親液性は、バンク22の正孔輸送材料24Aに対する親液性よりも高くなっている。これは、バンク22に撥液性の高いフッ素を含有する有機分子を用いるとともに、バンク22をプラズマ処理して撥液性を高めていることと、シリカ(SiO2)の微粒子と酸化チタン(TiO2)の微粒子とを含有する親液性の高い親液層23にさらに光を照射して親液性を高めていることによる。このため、被吐出部31の底部を構成する親液層23の表面に着弾した正孔輸送材料24Aの液滴は、バンク22に対して反撥するとともに、親液層23上に濡れ広がろうとする。このような作用によって、正孔輸送材料24Aは親液層23上に均一に濡れ広がり、これを乾燥させて得られた正孔輸送層24は、均一な厚さを持つ層となる。
【0094】
正孔輸送層24が設けられた基体10は、搬送装置270によって、吐出装置300Rのステージ106に運ばれる。そして、図8(c)に示すように、吐出装置300Rは、赤色に対応する発光層25Rが形成されるべき被吐出部31のすべてに発光材料25RAの層が形成されるように、ヘッド114から発光材料25RAを吐出する。より具体的には、吐出装置300Rは、赤色に対応する発光層25Rが形成されるべき被吐出部31の底部を構成する正孔輸送層24の表面に発光材料25RAを吐出する。基体10の所定の被吐出部31のすべてに発光材料25RAの層が形成された場合には、搬送装置270が基体10を乾燥装置350R内に位置させる。そして、被吐出部31上の発光材料25RAを完全に乾燥させることで、被吐出部31に発光層25Rが形成される。
【0095】
次に搬送装置270は、基体10を吐出装置300Gのステージ106に位置させる。そして、吐出装置300Gは、緑色に対応する発光層25Gが形成されるべき被吐出部31のすべてに発光材料25GAの層が形成されるように、ヘッド114から発光材料25GAを吐出する。より具体的には、吐出装置300Gは、緑色に対応する発光層25Gが形成されるべき被吐出部31の底部を構成する正孔輸送層24の表面に発光材料25GAを吐出する。基体10の所定の被吐出部31のすべてに発光材料25GAの層が形成された場合には、搬送装置270が基体10を乾燥装置350G内に位置させる。そして、被吐出部31上の発光材料25GAを完全に乾燥させることで、被吐出部31に発光層25Gが形成される。
【0096】
次に搬送装置270は、基体10を吐出装置300Bのステージ106に位置させる。そして、吐出装置300Bは、青色に対応する発光層25Bが形成されるべき被吐出部31のすべてに発光材料25BAの層が形成されるように、ヘッド114から発光材料25BAを吐出する。より具体的には、吐出装置300Bは、青色に対応する発光層25Bが形成されるべき被吐出部31の底部を構成する正孔輸送層24の表面に発光材料25BAを吐出する。基体10の所定の被吐出部31のすべてに発光材料25BAの層が形成された場合には、搬送装置270が基体10を乾燥装置350B内に位置させる。そして、被吐出部31上の発光材料25BAを完全に乾燥させることで、被吐出部31に発光層25Bが形成される。
【0097】
こうして得られた発光層25R、25G、25Bは、ムラのない、均一な厚さを持つ層となる。これは、正孔輸送層24の発光材料25RA、25GA、25BAに対する親液性が、バンク22の発光材料25RA、25GA、25BAに対する親液性よりも高いために、発光材料25RA、25GA、25BAは、バンク22に対して反撥するとともに、正孔輸送層24上に濡れ広がろうとするためである。
【0098】
次に、図8(d)に示すように、発光層25R、25G、25B、およびバンク22を覆うように陰極26を設ける。その後、封止基板32と基体10とを、互いの周辺部で接着することで、図8(d)に示す有機EL表示装置1が得られる。なお、封止基板32と基体10との間には不活性ガス33が封入されている。
【0099】
このような有機EL表示装置1において、発光層25R、25G、25Bから発した光は、画素電極21と、回路素子層11と、支持基板20と、を介して射出する。このように回路素子層11を介して光を射出するエレクトロルミネッセンス表示装置は、ボトムエミッション型の表示装置と呼ばれる。
【0100】
こうして得られた有機EL素子においては、正孔輸送層24および発光層25R、25G、25Bがムラのない均一な厚さの層となる。したがって、この有機EL素子を用いた有機EL表示装置1は、良好な表示特性を実現することができる。さらに、表示装置自体が大型で、このため被吐出部31が大きい場合であっても、正孔輸送材料24Aおよび発光材料25RA、25GA、25BAの被吐出部31での濡れ性がよいので、これらを均一な厚さの層に形成することができる。したがって、被吐出部31が大きくても、良好な表示特性を維持することができる。
【0101】
また、正孔輸送材料24Aおよび発光材料25RA、25GA、25BAの着弾位置が被吐出部31の中のいずれの位置であっても、バンク22に対して反撥するとともに被吐出部31の底部に濡れ広がろうとするので、吐出位置制御の精度が低くても高品位な表示装置を製造できる。よって、表示装置の生産性を向上することができる。同様の理由で、着弾位置不良や、被吐出部31の端部の角での濡れ不足を原因とする不具合が低減されるので、表示装置の信頼性を高めることができる。さらに、画素電極21と正孔輸送層24との間に親液層23が配置されているので、画素電極21から正孔輸送層24への不純物イオンの拡散を抑えることができ、表示装置の寿命を向上させることができる。
【0102】
(第2の実施形態)
前述の第1の実施形態においては、バンク22を形成した後で被吐出部31に親液層23を形成する。一方、本実施形態においては、回路基板の表面全体に親液層23を塗布した後で、親液層23の表面上にバンク22を形成する。そして、この点を除くと、本実施形態は、第1の実施形態と基本的に同じである。詳細は以下の通りである。
【0103】
まず、公知の成膜技術とパターニング技術とを用いて、支持基板20上に回路素子層11を形成する。その後、回路素子層11上に複数の画素電極21をマトリクス状に形成する。なお、上述のように、本実施形態では、支持基板20と、支持基板20上の回路素子層11と、をまとめて「回路基板」とも表記する。同様に、発光層25が設けられる以前の有機EL表示装置1を指して「基体10」と表記する。
【0104】
次に、回路素子層11上および画素電極21上をUV洗浄する。そして、基体10は、製造装置A中の搬送装置270によって、吐出装置300Lのステージ106に運ばれる。ここで、図9(a)に示すように、吐出装置300Lは、回路素子層11上および画素電極21を覆う親液材料23Aの層が形成されるように、ヘッド114から親液材料23Aを吐出する。回路素子層11上および画素電極21を覆って親液材料23Aの層が形成された後に、搬送装置270が基体10を乾燥装置350L内に位置させる。そして、親液材料23Aを完全に乾燥させることで、基体10の表面に親液層23を得る。この結果、回路基板上の画素電極21を覆う親液層23が形成される。
【0105】
親液層23が設けられた基体10は、搬送装置270によって、光照射装置400Lに運ばれる。そして、光照射装置400Lは、基体10に対して波長400nm以下の光を照射する。親液層23は、このような波長の光に対して反応し、親液性が高まる性質を持っている。したがって、当該工程を経た親液層23は、正孔輸送材料24Aあるいは発光材料25R、25G、25Bに対する親液性が高まる。
【0106】
なお、光照射装置400Lは、上述のように波長400nm以下の光を照射するが、親液層23に含まれる微粒子の種類によって、実際に反応に寄与する光の波長は異なる。具体的には、シリカ(SiO2)の微粒子と、金属を含む微粒子とを含有する親液層23は、波長400nm以下の光のうち、その金属を含有する微粒子が光触媒として機能する波長の光に反応する。例えば、本実施形態で用いる、シリカ(SiO2)の微粒子と酸化チタン(TiO2)の微粒子とを含有する親液層23は、酸化チタン(TiO2)の微粒子が光触媒として機能する、波長380nm以下の光に反応する。また、シリカ(SiO2)の微粒子のみを含む親液層23は、波長が250nm以下の光に反応する。
【0107】
ここで、基体10は製造装置Aから取り出されて、バンク22の形成のための工程を経る。すなわち、まず図9(b)に示すように、親液層23の表面に、スピンコート法を用いて樹脂ブラック層22Aを形成する。さらに樹脂ブラック層22Aの全面を覆うようにネガ型のアクリル系化学増幅型感光性レジストを塗布することで、樹脂ブラック層22A上にレジスト層22Bを形成する。
【0108】
次に、図9(c)および(d)に示すように、レジスト層22Bと樹脂ブラック層22Aとをパターニングし、その後、レジスト層22Bを剥離して、バンク22を形成する。親液層23とバンク22とは、凹部を形取るようになる。親液層23は、その凹部の底部である。続いて、バンク22の表面に対して、撥液性を高めるためにプラズマ処理を行う。なお、レジスト層22Bと樹脂ブラック層22Aのパターニング法、レジスト層22Bの剥離法、およびプラズマ処理の方法は、第1の実施形態と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0109】
こうして、図9(d)に示すように、基体10上に親液層23を底部とする被吐出部31が形成される。つまり、画素電極21上の親液層23が凹部の底部になるようにバンク22が形成される。
【0110】
被吐出部31が設けられた基体10は、再び製造装置Aに戻され、搬送装置270によって、吐出装置300Hのステージ106に運ばれる。そして、図10(a)に示すように、吐出装置300Hは、被吐出部31のすべてに正孔輸送材料24Aの層が形成されるように、ヘッド114から正孔輸送材料24Aを吐出する。より具体的には、吐出装置300Hは、被吐出部31の底部を構成する親液層23の表面に正孔輸送材料24Aを吐出する。基体10のすべての被吐出部31に正孔輸送材料24Aの層が形成された場合には、搬送装置270が基体10を乾燥装置350H内に位置させる。そして、被吐出部31上の正孔輸送材料24Aを完全に乾燥させることで、図10(a)に示すように、被吐出部31上に正孔輸送層24が形成される。
【0111】
ところで、被吐出部31の底部を形成する親液層23の正孔輸送材料24Aに対する親液性は、バンク22の正孔輸送材料24Aに対する親液性よりも高くなっている。これは、バンク22に撥液性の高いフッ素を含有する有機分子を用いるとともに、バンク22をプラズマ処理して撥液性を高めていることと、シリカ(SiO2)の微粒子と酸化チタン(TiO2)の微粒子とを含有する親液性の高い親液層23に光を照射して親液性を高めていることによる。このため、被吐出部31に着弾した正孔輸送材料24Aの液滴は、バンク22に対して反撥するとともに、親液層23上に濡れ広がろうとする。このような作用によって、正孔輸送材料24Aは親液層23上に均一に濡れ広がり、これを乾燥させて得られた正孔輸送層24は、均一な厚さを持つ層となる。
【0112】
被吐出部31に正孔輸送層24が形成されると、基体10は、搬送装置270によって、吐出装置300Rのステージ106に運ばれる。そして、図10(b)に示すように、吐出装置300Rは、赤色に対応する発光層25Rが形成されるべき被吐出部31のすべてに発光材料25RAの層が形成されるように、ヘッド114から発光材料25RAを吐出する。より具体的には、吐出装置300Rは、赤色に対応する発光層25Rが形成されるべき被吐出部31の底部を構成する正孔輸送層24の表面に発光材料25RAを吐出する。基体10の所定の被吐出部31のすべてに発光材料25RAの層が形成された場合には、搬送装置270が基体10を乾燥装置350R内に位置させる。そして、被吐出部31上の発光材料25RAを完全に乾燥させることで、被吐出部31上に発光層25Rが形成される。
【0113】
次に搬送装置270は、基体10を吐出装置300Gのステージ106に位置させる。そして、吐出装置300Gは、緑色に対応する発光層25Gが形成されるべき被吐出部31のすべてに発光材料25GAの層が形成されるように、ヘッド114から発光材料25GAを吐出する。より具体的には、吐出装置300Gは、緑色に対応する発光層25Gが形成されるべき被吐出部31の底部を構成する正孔輸送層24の表面に発光材料25GAを吐出する。基体10の所定の被吐出部31のすべてに発光材料25GAの層が形成された場合には、搬送装置270が基体10を乾燥装置350G内に位置させる。そして、被吐出部31上の発光材料25GAを完全に乾燥させることで、被吐出部31上に発光層25Gが形成される。
【0114】
次に搬送装置270は、基体10を吐出装置300Bのステージ106に位置させる。そして、吐出装置300Bは、青色に対応する発光層25Bが形成されるべき被吐出部31のすべてに発光材料25BAの層が形成されるように、ヘッド114から発光材料25BAを吐出する。より具体的には、吐出装置300Bは、青色に対応する発光層25Bが形成されるべき被吐出部31の底部を構成する正孔輸送層24の表面に発光材料25BAを吐出する。基体10の所定の被吐出部31のすべてに発光材料25BAの層が形成された場合には、搬送装置270が基体10を乾燥装置350B内に位置させる。そして、被吐出部31上の発光材料25BAを完全に乾燥させることで、被吐出部31上に発光層25Bが形成される。
【0115】
こうして得られた発光層25R、25G、25Bは、ムラのない、均一な厚さを持つ層となる。これは、正孔輸送層24の発光材料25RA、25GA、25BAに対する親液性が、バンク22の発光材料25RA、25GA、25BAに対する親液性よりも高いために、発光材料25RA、25GA、25BAは、バンク22に対して反撥するとともに、正孔輸送層24上に濡れ広がろうとするためである。
【0116】
次に、図10(c)に示すように発光層25R、25G、25B、およびバンク22を覆うように陰極26を設ける。その後、封止基板32と基体10とを、互いの周辺部で接着することで、図10(c)に示す有機EL表示装置1が得られる。なお、封止基板32と基体10との間には不活性ガス33が封入されている。
【0117】
こうして得られた有機EL素子においては、正孔輸送層24および発光層25R、25G、25Bのそれぞれが均一な厚さの層となる。したがって、この有機EL素子を用いた有機EL表示装置1は、第1の実施形態で示した効果と同様の効果を奏する。
【0118】
(第3の実施形態)
第1の実施形態および第2の実施形態においては、バンク22の形成のために塗布したレジスト層22Bは、樹脂ブラック層22Aおよびレジスト層22Bのパターニング後に剥離したが、レジスト層22B自体に、正孔輸送材料24A、および対応する発光材料25RA、25GA、25BAに対する撥液性を持たせて、レジスト層22Bを剥離せずに製造することもできる。以下では、この方式を用いた第3の実施形態について説明する。
【0119】
本実施形態における有機EL素子の製造方法は、以降で述べる事項を除いては第2の実施形態における有機EL素子の製造方法と同じである。このため、第2の実施形態と共通する部分については説明を省略する。
【0120】
図11は、本実施形態における有機EL素子の製造方法を示した図である。図11(a)は、回路基板上に、親液層23、樹脂ブラック層22Aおよびレジスト層22Bを設けた後に、レジスト層22Bに光を照射してパターニングを行った状態の基体10を示す。
【0121】
ここで、レジスト層22Bには、フッ素を含有する高分子化合物からなるフォトレジストが用いられている。このような材料から形成されたレジスト層22Bは、正孔輸送材料24A、および発光材料25RA、25GA、25BAに対して撥液性を有する。
【0122】
本実施形態においては、この後、レジスト層22Bを剥離しない。したがって、第2の実施形態におけるバンク22に相当する構成要素は、樹脂ブラック層からなるバンク22と、レジスト層22Bとを合わせたものとなる。以下では、バンク22と、レジスト層22Bとを合わせたものをバンク22’と呼ぶ。本実施形態における被吐出部31の側面は、バンク22’で規定される。また、バンク22’は、撥液性を有するレジスト層22Bを表面に有するので、この後、バンク22’の撥液性を高めるためのプラズマ処理は行わなくてよい。
【0123】
続いて、図11(b)に示すように、被吐出部31に、第2の実施形態と同様の工程によって正孔輸送層24、発光層25R、25G、25B、陰極26、および封止基板32を形成する。
【0124】
こうして得られた有機EL表示装置1においては、正孔輸送層24は、ムラのない均一な厚さの層となる。これは、親液層23の正孔輸送材料24Aに対する親液性が、バンク22’の正孔輸送材料24Aに対する親液性よりも高いために、正孔輸送材料24Aがバンク22’に対して反撥するとともに、親液層23上に濡れ広がろうとするためである。
【0125】
また、発光層25R、25G、25Bも、ムラのない均一な厚さの層となる。これは、正孔輸送層24の発光材料25RA、25GA、25BAに対する親液性が、バンク22’の発光材料25RA、25GA、25BAに対する親液性よりも高いために、発光材料25RA、25GA、25BAがバンク22’に対して反撥するとともに、正孔輸送層24上に濡れ広がろうとするためである。
【0126】
本実施形態の製造方法によって製造された有機EL素子を用いた有機EL表示装置1は、第2実施形態の製造方法によって製造された有機EL素子を用いた有機EL表示装置1と同様の効果が得られる。加えて、本実施形態の製造方法では、レジスト層22Bの剥離工程と、バンク22’のプラズマ処理工程とを行う必要がないので、有機EL素子および有機EL表示装置の製造工程を簡略化することができる。
【0127】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態に対しては、本発明の趣旨から逸脱しない範囲で様々な変形を加えることができる。変形例としては、例えば以下のようなものが考えられる。
【0128】
(変形例1)
上述の各実施形態では、正孔輸送層24と発光層25とを分離して積層したが、正孔輸送層24を発光層25に混合することも可能である。その際は、正孔輸送層24はなくてもよい。この場合は、親液層23の表面に直接発光材料25RA、25GA、25BAを付与すればよい。このとき、親液層23の発光材料25RA、25GA、25BAに対する親液性は、バンク22または22’の発光材料25RA、25GA、25BAに対する親液性より高いので、親液層23上に着弾した発光材料25RA、25GA、25BAは、バンク22またはバンク22’の底部に配置された親液層23上を均一に濡れ広がる。したがって、ムラのない均一な厚さの発光層25を形成することができる。
【0129】
(変形例2)
上述の各実施形態では、親液材料23Aにはシリカ(SiO2)の微粒子と酸化チタン(TiO2)の微粒子とが含有されていたが、シリカ(SiO2)の微粒子のみを含む材料であっても良い。あるいは、酸化チタン(TiO2)の代わりに、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO2)、チタン酸ストロンチウム(SrTi3)、酸化タングステン(WO3)、酸化ビスマス(Bi2O3)、および酸化鉄(Fe2O3)のうちの少なくとも1種からなる微粒子を含有させてもよい。このような親液材料23Aは、正孔輸送材料24A、および発光材料25RA、25GA、25BAに対して親液性を有する。
【0130】
また、親液材料23Aは、シリカ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、チタン酸ストロンチウム、酸化タングステン、酸化ビスマス、および酸化鉄のうちの少なくとも1種以上の組成の組み合わせからなる微粒子を含有する材料であってもよい。さらに、酸化チタンや酸化亜鉛などの上記金属がシリカでコーティングされた微粒子を含有する材料などを用いることができる。このような親液材料23Aも、正孔輸送材料24A、および発光材料25RA、25GA、25BAに対して親液性を有する。
【0131】
(変形例3)
上述の各実施形態では、親液層23の親液性を高めるために親液層23に対して波長400nm以下の光を照射していたが、この工程は省略してもよい。この場合、親液層23の、正孔輸送材料24A、および発光材料25RA、25GA、25BAに対する親液性は低下するものの、それでもバンク22の正孔輸送材料24Aおよび発光材料25RA、25GA、25BAに対する親液性よりも高い。したがって、この変形例によれば、光を照射する工程を省略することができるので、有機EL素子および有機EL表示装置の製造工程を簡略化することができる。
【0132】
(変形例4)
第2の実施形態および第3の実施形態において、親液層23は吐出装置300Lを用いてインクジェット法によって形成したが、この他にも液状の材料を塗布する方法であればどのような方法で形成してもよい。親液層23の形成に適用することが可能な方法の例としては、押出コーティング方法、スピンコーティング方法、グラビアコーティング方法、リバースロールコーティング方法、ロッドコーティング方法、スリットコーティング方法、マイクログラビアコーティング方法、ディップコーティング方法、フレキソ印刷法、およびスクリーン印刷法などを挙げることができる。
【0133】
(変形例5)
第3の実施形態において、レジスト22Bにはフッ素を含有する高分子化合物からなるフォトレジストを用いたが、フッ素を含有する有機分子を混合したフォトレジストを用いてもよい。このようなフォトレジストによって形成されたレジスト22Bは、正孔輸送材料24A、および発光材料25RA、25GA、25BAに対して撥液性をもつ。このため、上述の各実施形態と同様に、正孔輸送層24および発光層25R、25G、25Bをムラのない均一な厚さで付与することができる。フッ素を含有する有機分子としては、界面活性剤が好ましい。具体的には、日本サーファクタント工業製のNIKKOL BL、BC、BO、BBの各シリーズ等の炭化水素系、デュポン製のZONYL FSN、FSO、旭硝子製のサーフロンS−141、145、大日本インキ製のメガファックF−141、144、ネオス製のフタージェント F−200、F251、ダイキン工業製のユニダインDS−401、402、スリーエム製の、フロラードFC−170、176、JEMCO製のエフトップEF−シリーズ、等のフッ素系の非イオン界面活性あるいは、カチオン系、アニオン系、両性界面活性剤を用いることができる。これらの界面活性剤は、フォトレジストに添加する種類および量を調整することによって、フォトレジストの撥液性を任意に設定することができる。
【0134】
(変形例6)
上述の各実施形態では、樹脂ブラック層22Aとレジスト層22Bとをパターニングしてバンク22を形成していたが、レジスト層22Bに撥液性のある材料を用いる場合においては、レジスト層22Bのみからバンク22を形成してもよい。より具体的には、樹脂ブラック層22Aを塗布せずにレジスト層22Bを塗布し、その後レジスト層22Bをパターニングしたものをバンク22とすればよい。このような方法でバンク22を形成した場合でも、親液層23の、正孔輸送材料24A、および発光材料25RA、25GA、25BAに対する親液性は、バンク22の正孔輸送材料24Aおよび発光材料25RA、25GA、25BAに対する親液性よりも高いので、均一な厚さの正孔輸送層24および発光層25R、25G、25Bを形成することができる。
【0135】
(変形例7)
第1の実施形態および第2の実施形態においては、バンク22の表面に対してプラズマ処理を行ったが、この工程は省略してもよい。この場合、バンク22の、正孔輸送材料24A、および発光材料25RA、25GA、25BAに対する撥液性は低下するものの、プラズマ処理工程を省略することができるので、有機EL素子および有機EL表示装置の製造工程を簡略化することができる。
【0136】
(電子機器)
次に、第1から第3の実施形態、および変形例1から7に示した製造方法で製造された有機EL素子を含む有機EL表示装置を、具体的な電子機器に組み込んだ例について説明する。図12は、表示部520に上述の有機EL表示装置を組み込んだ携帯電話機500の構成を示す模式図である。この携帯電話機500は、表示部520において、電話番号や日付情報を始めとする各種情報を表示することができる。この携帯電話機500は、第1から第3の実施形態に示した有機EL素子の製造方法を含む製造方法、または変形例1から7に示した有機EL素子の製造方法を含む製造方法によって製造することができる。このような製造方法によれば、良好な表示特性を実現することができて、かつ信頼性が高く寿命の長い携帯電話機500を製造することができる。
【0137】
図13は、表示部620に上述の有機EL表示装置を組み込んだパーソナルコンピュータ600の構成を示す模式図である。このパーソナルコンピュータ600は、表示部620において、入力装置630によって入力された情報を始めとする各種情報を表示することができる。このパーソナルコンピュータ600は、第1から第3の実施形態に示した有機EL素子の製造方法を含む製造方法、または変形例1から7に示した有機EL素子の製造方法を含む製造方法によって製造することができる。このような製造方法によれば、良好な表示特性を実現することができて、かつ信頼性が高く寿命の長いパーソナルコンピュータ600を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0138】
【図1】有機EL表示装置の電気的な構成を説明するためのブロック図である。
【図2】(a)および(b)は、有機EL表示装置を構成する基板の構造を示す模式図である。
【図3】有機EL素子の製造装置を示す模式図である。
【図4】液滴吐出装置を示す模式図である。
【図5】(a)および(b)は、液滴吐出装置におけるヘッドを示す模式図である。
【図6】液滴吐出装置における制御部の機能ブロック図である。
【図7】(a)から(d)は、第1の実施形態の有機EL素子の製造方法を説明する図である。
【図8】(a)から(d)は、第1の実施形態の有機EL素子の製造方法を説明する図である。
【図9】(a)から(d)は、第2の実施形態の有機EL素子の製造方法を説明する図である。
【図10】(a)から(c)は、第2の実施形態の有機EL素子の製造方法を説明する図である。
【図11】(a)および(b)は、第3の実施形態の有機EL素子の製造方法を説明する図である。
【図12】有機EL表示装置を組み込んだ携帯電話機の構成を示す模式図である。
【図13】有機EL表示装置を組み込んだパーソナルコンピュータの構成を示す模式図である。
【符号の説明】
【0139】
1…有機EL表示装置、10…基体、11…回路素子層、12…絶縁層、13…半導体層、14…ゲート絶縁層、15,18…層間絶縁層、16…ソース電極、17…ドレイン電極、19…ゲート電極、20…支持基板、21…画素電極、22…バンク、22A…樹脂ブラック層、22B…レジスト、23…親液層、23A…親液材料、24…正孔輸送層、24A…正孔輸送材料、25,25R,25G,25B…発光層、25RA,25GA,25BA…発光材料、26…陰極、27,28,29…スルーホール、30…TFT素子、31…被吐出部、32…封止基板、33…不活性ガス、41…走査線駆動回路、42…データ線駆動回路、43…走査線、44…データ線、45…画素領域、101…タンク、103…吐出ヘッド部、104…第1位置制御装置、104a…支持部、106…ステージ、108…第2位置制御装置、110…チューブ、111…材料、112…制御部、114…ヘッド、118…ノズル、120…キャビティ、122…隔壁、124…振動子、124A…電極、124C…ピエゾ素子、126…振動板、127…吐出部、128…ノズルプレート、130…供給口、131…孔、200…入力バッファメモリ、202…記憶装置、204…処理部、206…走査駆動部、208…ヘッド駆動部、270…搬送装置、300L,300H,300R,300G,300B…吐出装置、350L,350H,350R,350G,350B…乾燥装置、400L…光照射装置、500…携帯電話機、520…表示部、600…パーソナルコンピュータ、620…表示部、630…入力装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器の製造方法および電気光学装置の製造方法に関し、特にインクジェット法を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自発光素子である有機エレクトロルミネッセンス(以下「有機EL」)素子を備えた有機EL表示装置の開発が加速している。有機EL表示装置は、液晶表示装置に替わり得る薄型表示装置であるとされているからである。有機EL素子の製造方法としては、非特許文献1に示されるような、低分子の発光材料を蒸着法で基板上に成膜する方法と、非特許文献2に示されるような、高分子の発光材料を基板上に付与する方法が主に知られている。
【0003】
特に、高分子を用いる有機EL素子の製造方法において、特許文献1に示されるような、液状の高分子をインクジェット法で付与する方法が注目されている。インクジェット法によれば、表示装置をカラー化する際に、各色に対応した高分子をそれぞれインクジェット法で所定の位置に付与すればよいので、困難とされる発光層のパターニングを行う必要がない。また、付与する高分子の使用量を必要最低限の量にまで抑えることができるという利点がある。
【0004】
【特許文献1】特開平10−153967号公報
【非特許文献1】Appl.Phys.Lett.51(12),21 September 1987(第913頁)
【非特許文献2】Appl.Phys.Lett.71(1),7 July 1997(第34頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
インクジェット法により有機EL素子を製造する際には、基板上に形成した薄膜を加工して隔壁を作り、この隔壁に囲まれた被吐出部に液状の高分子を付与していく。しかしながら、付与された高分子が被吐出部に均一に濡れ広がらないと、厚さにムラが生じたり、高分子が隔壁を越えて拡散して混色を起こすことがある。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、隔壁に撥液性をもたせると同時に被吐出部に親液性をもたせて、液状の高分子をムラなく均一な厚さに付与することが可能な有機EL素子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による有機EL素子の製造方法は、基板上の画素電極が凹部の底部になるように、前記凹部を規定する隔壁を形成する工程Aと、前記底部上に親液層を形成する工程Bと、前記親液層上に、液滴吐出装置を用いて液状の第1の材料を付与する工程Cと、を含んでおり、前記第1の材料は、正孔輸送材料および発光材料のどちらか一方であって、前記液状の第1の材料に対する前記親液層の親液性は、前記液状の第1の材料に対する前記隔壁の親液性よりも高い。好ましくは、上記構成のうちの工程Bが、前記底部上にシリカ(SiO2)の微粒子を含有する液状の第2の材料を付与して前記親液層を形成する工程を含んでいる。
【0008】
上記構成によって得られる効果の一つは、正孔輸送材料または発光材料をムラなく均一な厚さに形成できることである。
【0009】
前記液状の第2の材料は、さらに酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO2)、チタン酸ストロンチウム(SrTi3)、酸化タングステン(WO3)、酸化ビスマス(Bi2O3)、および酸化鉄(Fe2O3)のうちの少なくとも1種からなる微粒子を含有していてもよい。
【0010】
また、前記工程Bは、前記底部上に、シリカ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、チタン酸ストロンチウム、酸化タングステン、酸化ビスマス、および酸化鉄のうちの少なくとも1種以上の組成の組み合わせからなる微粒子を含有する液状の第2の材料を付与して前記親液層を形成する工程を含んでいてもよい。あるいは、前記工程Bは、前記底部上に、シリカと、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、チタン酸ストロンチウム、酸化タングステン、酸化ビスマス、および酸化鉄のうちの少なくとも1種以上と、の組成の組み合わせからなる微粒子を含有する液状の第2の材料を付与して前記親液層を形成する工程を含んでいてもよい。
【0011】
上記構成によって得られる効果の一つは、親液層によって、画素電極から正孔輸送層または発光層へのイオン拡散を防止できることである。
【0012】
さらに、上述した微粒子の平均粒径は1μm以下であることが望ましい。
【0013】
上記の条件を満たすことによって得られる効果の一つは、液状の第1の材料を液滴吐出装置によって吐出する際に、目詰まりすることなく、液状の第1の材料を所望の方向へ吐出できることである。
【0014】
また、前記工程Aは、フッ素を含有する高分子化合物、またはフッ素を含有する有機分子が混合されたフォトレジストから前記隔壁を形成する工程を含んでもよい。
【0015】
上記構成によって得られる効果の一つは、正孔輸送材料または発光材料をムラなく均一な厚さに形成できるという本発明の効果をさらに高めることができることである。
【0016】
本発明による有機EL素子の製造方法は、基板上の画素電極を覆う親液層を形成する工程Aと、前記画素電極上の前記親液層が凹部の底部になるように、前記凹部を規定する隔壁を形成する工程Bと、前記底部上に液滴吐出装置を用いて液状の第1の材料を付与する工程Cと、を含んでおり、前記第1の材料は、正孔輸送材料および発光材料のどちらか一方であって、前記液状の第1の材料に対する前記親液層の親液性は、前記液状の第1の材料に対する前記隔壁の親液性よりも高い。好ましくは、上記構成のうちの工程Aが、前記底部上にシリカ(SiO2)の微粒子を含有する液状の第2の材料を付与して前記親液層を形成する工程を含んでいる。
【0017】
上記構成によって得られる効果の一つは、正孔輸送材料または発光材料をムラなく均一な厚さに形成できることである。
【0018】
前記液状の第2の材料は、さらに酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO2)、チタン酸ストロンチウム(SrTi3)、酸化タングステン(WO3)、酸化ビスマス(Bi2O3)、および酸化鉄(Fe2O3)のうちの少なくとも1種からなる微粒子を含有していてもよい。
【0019】
また、前記工程Aは、前記底部上に、シリカ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、チタン酸ストロンチウム、酸化タングステン、酸化ビスマス、および酸化鉄のうちの少なくとも1種以上の組成の組み合わせからなる微粒子を含有する液状の第2の材料を付与して前記親液層を形成する工程を含んでいてもよい。あるいは、前記工程Aは、前記底部上に、シリカと、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、チタン酸ストロンチウム、酸化タングステン、酸化ビスマス、および酸化鉄のうちの少なくとも1種以上と、の組成の組み合わせからなる微粒子を含有する液状の第2の材料を付与して前記親液層を形成する工程を含んでいてもよい。
【0020】
上記構成によって得られる効果の一つは、親液層によって、画素電極から正孔輸送層または発光層へのイオン拡散を防止できることである。
【0021】
さらに、上述した微粒子は、平均粒径が1μm以下であることが望ましい。
【0022】
上記の条件を満たすことによって得られる効果の一つは、液状の第1の材料を液滴吐出装置によって吐出する際に、目詰まりすることなく、液状の第1の材料を所望の方向へ吐出できることである。
【0023】
また、前記工程Bは、フッ素を含有する高分子化合物、またはフッ素を含有する有機分子が混合されたフォトレジストから前記隔壁を形成する工程を含んでもよい。
【0024】
上記構成によって得られる効果の一つは、正孔輸送材料または発光材料をムラなく均一な厚さに形成できるという本発明の効果をさらに高めることができることである。
【0025】
本発明のある態様では、前記親液層に光を照射する工程を含んでおり、このときの光の波長は400nm以下であることが好ましい。
【0026】
上記構成によって得られる効果の一つは、親液層の、正孔輸送材料または発光材料に対する親液性が高くなることである。
【0027】
本発明の他の態様では、前記隔壁は、フッ素を含有する有機分子を含んでいる。
【0028】
上記構成によって得られる効果の一つは、隔壁が、正孔輸送材料または発光材料に対する撥液性をもつことである。
【0029】
本発明の他の態様では、前記隔壁の表面を、フルオロカーボン系の化合物を反応ガスに用いてプラズマ処理する工程を含んでいる。
【0030】
上記構成によって得られる効果の一つは、隔壁の、正孔輸送材料または発光材料に対する撥液性がさらに向上することである。
【0031】
なお、本発明は、種々の態様で実現することができる。具体的には、電気光学装置の製造方法または電子機器の製造方法として実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0033】
(第1の実施形態)
(A.表示装置)
始めに、有機EL素子を用いた電気光学装置としての有機EL表示装置の構造について説明する。
【0034】
図1を参照しながら、有機EL表示装置1の電気的な構成を説明する。有機EL表示装置1は、走査線駆動回路41と、走査線駆動回路41に連結された複数本の走査線43と、データ線駆動回路42と、データ線駆動回路42に連結された複数本のデータ線44と、複数本の走査線43と複数本のデータ線44との交差に対応して配置された複数の画素領域45と、を有する。ここで、複数の画素領域45のそれぞれは、少なくとも一つのTFT(薄膜トランジスタ)素子と、流れる電流の大きさに応じて発光する有機EL素子と、を有している。
【0035】
有機EL表示装置1の表示動作は、書き込み期間と発光期間とを繰り返して行われる。書き込み期間において、走査線駆動回路41は、走査線43を順次選択し、選択された走査線43に対応する画素領域45のTFT素子をオンする。TFT素子がオンしている状態で、データ線駆動回路42からのデータ信号が、データ線44を介して当該TFT素子のソースに印加されると、当該画素領域45には、データ信号に応じた電圧が書き込まれる。すべての画素領域45への書き込みが完了すると、書き込み期間が終了する。続く発光期間では、書き込まれた電圧に応じた電流が有機EL素子に流れ、発光が行われる。有機EL表示装置1は、上述の書き込み期間と発光期間を短時間で繰り返し実行することによって、画面表示を行う表示装置である。
【0036】
図2を参照しながら、有機EL表示装置1の構造をより具体的に説明する。なお、図2(a)は、有機EL表示装置1のXZ断面を示しており、図2(b)は、有機EL表示装置1における複数の被吐出部31(後述)のXY平面上での位置関係を示している。
【0037】
図2(a)に示すように、有機EL表示装置1は、図1を参照して説明した構成要素に加えて、支持基板20と、支持基板20上に形成された回路素子層11と、複数の画素電極21と、複数の画素電極21の間に形成された隔壁としてのバンク22と、親液層23と、正孔輸送層24と、赤色発光層25R、緑色発光層25G、および青色発光層25B(不図示)とからなる発光層25と、陰極26と、を有している。
【0038】
支持基板20は、可視光に対して光透過性を有する基板であり、例えばガラス基板である。
【0039】
回路素子層11は、支持基板20上で所定の方向に延びる複数の走査線と、複数の走査線を覆うように形成された絶縁層12と、絶縁層12上に位置するとともに複数の走査線が延びる方向に対して直交する方向に延びる複数のデータ線と、走査線およびデータ線の交点付近に位置する複数のTFT素子30と、複数のTFT素子30を覆うように形成されたポリイミドなどからなる層間絶縁層15および層間絶縁層18と、を有する層である。TFT素子30は、シリコンからなる半導体層13と、半導体層13上に形成されたゲート絶縁層14と、ゲート絶縁層14上に形成されたゲート電極19と、ソース電極16およびドレイン電極17とを有する。層間絶縁層15には、ソース電極16およびドレイン電極17に対応する位置にそれぞれスルーホール27および28が設けられている。ソース電極16は、半導体層13の表面からスルーホール27内を経由して層間絶縁層15の表面にまで延設されている。また、ドレイン電極17は、半導体層13の表面からスルーホール28内を経由して層間絶縁層15の表面にまで延設されている。さらに、層間絶縁層18にはドレイン電極17に対応する位置にスルーホール29が設けられており、画素電極21は、このスルーホール29内にまで延設され、層間絶縁層15上のドレイン電極17と接続されている。こうした構成からなるそれぞれのTFT素子30は、バンク22に対応する位置に位置している。つまり、図2(b)の紙面に垂直な方向から観察すると、複数のTFT素子30のそれぞれは、バンク22に覆われるように位置している。
【0040】
以下では、支持基板20と、支持基板20上の回路素子層11と、をまとめて、「回路基板」とも表記する。本実施形態においては、この回路基板が本発明の「基板」に対応する。
【0041】
なお、本発明の「基板」は、必ずしも上述したような回路素子層11を含む回路基板である必要はない。「基板」の態様は、有機EL素子の用途に応じて様々に変えることができる。例えば、単なるガラス基板やプラスチック基板などでも良い。
【0042】
複数の画素電極21は、回路素子層11上にマトリクス状に配置されており、それぞれが画素領域45を規定する。そして、複数の画素電極21のそれぞれは、可視光に対して光透過性を有する電極であり、例えば、ITO(Indium-Tin Oxide)電極である。
【0043】
バンク22は、Z軸方向から見ると格子状の形状を有しており、複数の画素電極21のそれぞれの周囲を囲む。バンク22は、フッ素を含有する有機分子からなる有機薄膜を加工して形成される。
【0044】
格子状のバンク22が規定する凹部内には、画素電極21側から順に、親液層23、正孔輸送層24、および発光層25R(または発光層25G、25B)が位置している。
【0045】
以下では、格子状のバンク22が規定する凹部を「被吐出部31」とも呼ぶ。この凹部(つまり「被吐出部31」)の側面は、バンク22によって構成され、底部は、画素電極21、親液層23、および正孔輸送層24のうちのいずれか一つによって構成される。具体的には、「被吐出部31」は、側面がバンク22で底部が画素電極21である凹部、側面がバンク22で底部が親液層23である凹部、および側面がバンク22で底部が正孔輸送層24である凹部、のいずれをも包含する概念である。そして、図2(b)に示すように、複数の被吐出部31が形成するマトリクスの行方向および列方向は、それぞれX軸方向およびY軸方向と平行である。
【0046】
親液層23は、シリカ(SiO2)の微粒子と酸化チタン(TiO2)の微粒子とを含有する材料からなっている。そして、液状の正孔輸送材料24A(後述)に対する親液層23の親液性は、液状の正孔輸送材料24Aに対するバンク22の親液性よりも高い。つまり、液状の正孔輸送材料24Aが親液層23上で呈する接触角は、正孔輸送材料24Aがバンク22上で呈する接触角よりも小さい。なお、後述するように、親液層23を形成する工程は、液状の親液材料23Aを画素電極21上に付与する工程を含んでいる。
【0047】
正孔輸送層24には、例えばトリフェニルアミンを骨格として有する高分子材料を用いることができる。このような高分子としては、化合物1として示すADS社製「ADS254BE」を採用することができる。トリフェニルアミン骨格を有する高分子は、正孔輸送性を有することから、このような高分子を含んだ膜は正孔輸送層として機能し得る。さらに、トリフェニルアミンを骨格として有する高分子は、現在主流であるPEDOT:PSS(ポリエチレンジオキシチオフェン:ポリスチレンスルフォン酸)とは異なり、分散系ではないので、不純物イオンの軽減を図ることができ、信頼性に対して有効であると考えられる。なお、後述するように、正孔輸送層24を形成する工程は、液状の正孔輸送材料24Aを親液層23上に付与する工程を含んでいる。
【0048】
【化1】
【0049】
発光層25は、高分子有機化合物からなり、電気を光に変えるエレクトロルミネッセンス現象を担う発光物質の層である。発光層25には、赤色の光を発する発光層25R、緑色の光を発する発光層25G、および青色の光を発する発光層25Bの3種類があり、これらは所定の規則に従って配置されている。陰極26と画素電極21との間に電圧を印加すると、発光層25に正孔と電子が注入される。発光層25は、これらの正孔と電子が再結合したときに光を発する。正孔輸送層24は、画素電極21から注入される正孔を効率良く発光層25へ輸送するための層であり、有機化合物からなる。陰極26は、光を反射する金属からなる。発光層25からZ軸の負の方向へ出射した光は、回路素子層11および支持基板20を透過する。一方、発光層25からZ軸の正の方向へ出射した光は、陰極26で反射されてZ軸の負の方向へ進み、回路素子層11および支持基板20を透過する。このように、この有機EL表示装置1は、支持基板20側から光を取り出す、ボトムエミッション型として構成されている。なお、後述するように、発光層25を形成する工程は、液状の発光材料25Aを正孔輸送層24上に付与する工程を含んでいる。
【0050】
発光層25を構成する発光材料としては、以下に化合物2から6として示す、ポリビニルカルバゾール、ポリフルオレン系高分子誘導体、(ポリ)パラフェニレンビニレン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ペリレン系色素、クマリン系色素、ローダミン系色素、あるいは上記高分子に有機EL材料をドープしたものを使用することができる。ドープする物質としては、例えば、ルブレン、ペリレン、9,10−ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、キナクリドン等が挙げられる。この他にも、燐光発光材料であるイリジウム錯体、例えばIr(ppy)3なども挙げられる。
【0051】
【化2】
【0052】
【化3】
【0053】
【化4】
【0054】
【化5】
【0055】
【化6】
【0056】
さらに、赤色発光材料としては、例えばMEH−PPV(poly Methoxy(2ethyl)hexyloxy paraphenylene vinylene)を、青色発光材料としては、例えばポリジオクチルフルオレンを、緑色発光材料としては、例えばPPV(poly(para-phenylene vinylene))を用いることができる。
【0057】
(B.製造装置)
図3を参照しながら、有機EL表示装置1の製造に用いる製造装置Aを説明する。なお、以下では、発光層25が設けられる以前の有機EL表示装置1を指して基体10と表記する。
【0058】
製造装置Aは、基体10の被吐出部31に対して、親液材料23A、正孔輸送材料24A、および対応する発光材料25RA、25GA、25BAを塗布する装置である。製造装置Aは、すべての画素電極21上に親液材料23Aを付与する吐出装置300Lと、画素電極21上の親液材料23Aを乾燥して親液層23を得る乾燥装置350Lと、親液層23に光を照射する光照射装置400Lと、すべての親液層23上に正孔輸送材料24Aを付与する吐出装置300Hと、親液層23上の正孔輸送材料24Aを乾燥して正孔輸送層24を得る乾燥装置350Hと、赤色に対応する画素領域45内の正孔輸送層24上に発光材料25RAを付与する吐出装置300Rと、正孔輸送層24上の発光材料25RAを乾燥して発光層25Rを得る乾燥装置350Rと、緑色に対応する画素領域45内の正孔輸送層24上に発光材料25GAを付与する吐出装置300Gと、正孔輸送層24上の発光材料25GAを乾燥して発光層25Gを得る乾燥装置350Gと、青色に対応する画素領域45内の正孔輸送層24上に発光材料25BAを付与する吐出装置300Bと、正孔輸送層24上の発光材料25BAを乾燥して発光層25Bを得る乾燥装置350Bと、を備えている。
【0059】
さらに製造装置Aは、吐出装置300L、乾燥装置350L、光照射装置400L、吐出装置300H、乾燥装置350H、吐出装置300R、乾燥装置350R、吐出装置300G、乾燥装置350G、吐出装置300B、乾燥装置350Bの順番に基体10を搬送する搬送装置270も備えている。このように、本実施形態の有機EL素子の製造方法は、5つの液滴吐出装置を利用する。なお、親液材料23A、正孔輸送材料24A、発光材料25RA、25GA、25BAは、いずれも、後述する液状の材料の一種である。
【0060】
(C.液滴吐出装置の全体構成)
図4に示す液滴吐出装置300Lは、基本的には液状の親液材料23Aを吐出するためのインクジェット装置である。より具体的には、液滴吐出装置300Lは、液状の材料111を保持するタンク101と、チューブ110と、グランドステージGSと、吐出ヘッド部103と、ステージ106と、第1位置制御装置104と、第2位置制御装置108と、制御部112と、支持部104aと、を備えている。なお、他の4つの液滴吐出装置300H、300R、300G、300Bの構造および機能は、液滴吐出装置300Lの構造および機能と基本的に同じであり、このため、これら4つの液滴吐出装置の構造および機能の説明は省略する。
【0061】
吐出ヘッド部103は、ヘッド114(図5)を保持している。このヘッド114は、制御部112からの信号に応じて、液状の材料111の液滴を吐出する。なお、吐出ヘッド部103におけるヘッド114は、チューブ110によってタンク101に連結されており、このため、タンク101からヘッド114に液状の材料111が供給される。
【0062】
ステージ106は、上述の基体10を固定するための平面を提供している。さらにステージ106は、吸引力を用いて基体10の位置を固定する機能も有する。
【0063】
第1位置制御装置104は、支持部104aによって、グランドステージGSから所定の高さの位置に固定されている。この第1位置制御装置104は、制御部112からの信号に応じて、吐出ヘッド部103をX軸方向と、X軸方向に直交するZ軸方向と、に沿って移動させる機能を有する。さらに、第1位置制御装置104は、Z軸に平行な軸の回りで吐出ヘッド部103を回転させる機能も有する。ここで、本実施形態では、Z軸方向は、鉛直方向(つまり重力加速度の方向)に平行な方向である。
【0064】
第2位置制御装置108は、制御部112からの信号に応じて、ステージ106をグランドステージGS上でY軸方向に移動させる。ここで、Y軸方向は、X軸方向およびZ軸方向の双方と直交する方向である。
【0065】
上記のような機能を有する第1位置制御装置104の構成と第2位置制御装置108の構成とは、リニアモータまたはサーボモータを利用した公知のXYロボットを用いて実現できる。このため、ここでは、それらの詳細な構成の説明を省略する。
【0066】
さて上述のように、第1位置制御装置104によって、吐出ヘッド部103はX軸方向に移動する。そして、第2位置制御装置108によって、基体10はステージ106と共にY軸方向に移動する。これらの結果、基体10に対するヘッド114の相対位置が変わる。より具体的には、これらの動作によって、吐出ヘッド部103、ヘッド114、またはノズル118(図5)は、基体10に対して、Z軸方向に所定の距離を保ちながら、X軸方向およびY軸方向に相対的に移動、すなわち相対的に走査する。「相対移動」または「相対走査」とは、液状の材料111を吐出する側と、そこからの吐出物が着弾する側(被吐出部31)の少なくとも一方を他方に対して相対移動することを意味する。
【0067】
制御部112は、液状の材料111の液滴を吐出すべき相対位置を表す吐出データを外部情報処理装置から受け取るように構成されている。制御部112は、受け取った吐出データを内部の記憶装置に格納するとともに、格納された吐出データに応じて、第1位置制御装置104と、第2位置制御装置108と、ヘッド114と、を制御する。なお、吐出データとは、基体10上に、液状の材料111を所定パターンで付与するためのデータである。本実施形態では、吐出データはビットマップデータの形態を有している。
【0068】
上記構成を有する液滴吐出装置300Lは、吐出データに応じて、ヘッド114のノズル118(図5)を基体10に対して相対移動させるとともに、被吐出部31に向けてノズル118から液状の材料111を吐出する。
【0069】
なお、インクジェット法で層、膜、またはパターンを形成するとは、液滴吐出装置300Lのような装置を用いて、所定の物体上に、層、膜、またはパターンを形成することである。
【0070】
(D.ヘッド)
図5(a)および(b)に示すように、液滴吐出装置300Lにおけるヘッド114は、複数のノズル118を有するインクジェットヘッドである。具体的には、ヘッド114は、振動板126と、液たまり129と、複数の隔壁122と、複数の振動子124と、複数のノズル118の開口を規定するノズルプレート128と、供給口130と、孔131と、を備えている。液たまり129は、振動板126と、ノズルプレート128と、の間に位置しており、この液たまり129には、図示しない外部タンクから孔131を介して供給される液状の配向材料111が常に充填される。
【0071】
複数の隔壁122は、振動板126と、ノズルプレート128と、の間に位置している。そして、振動板126と、ノズルプレート128と、一対の隔壁122と、によって囲まれた部分がキャビティ120である。キャビティ120はノズル118に対応して設けられているため、キャビティ120の数とノズル118の数とは同じである。キャビティ120には、一対の隔壁122間に位置する供給口130を介して、液たまり129から液状の配向材料111が供給される。なお、本実施形態では、ノズル118の直径は、約27μmである。
【0072】
さて、振動板126上には、それぞれのキャビティ120に対応して、それぞれの振動子124が位置する。振動子124のそれぞれは、ピエゾ素子124Cと、ピエゾ素子124Cを挟む一対の電極124A、124Bと、を含む。制御部112が、この一対の電極124A、124Bの間に駆動波形を与えることで、対応するノズル118から液状の配向材料111の液滴Dが吐出される。ここで、ノズル118から吐出される材料の体積は、0pl以上42pl(ピコリットル)以下の間で可変である。なお、ノズル118からZ軸方向に液状の配向材料111の液滴Dが吐出されるように、ノズル118の形状が調整されている。
【0073】
本明細書では、1つのノズル118と、ノズル118に対応するキャビティ120と、キャビティ120に対応する振動子124と、を含んだ部分を「吐出部127」とも表記する。この表記によれば、1つのヘッド114は、ノズル118の数と同じ数の吐出部127を有する。また、吐出部127は、ピエゾ素子の代わりに電気熱変換素子を有してもよい。つまり、吐出部127は、電気熱変換素子による材料の熱膨張を利用して材料を吐出する構成を有していてもよい。
【0074】
(E.制御部)
次に、図6を参照しながら、制御部112の構成を説明する。制御部112は、入力バッファメモリ200と、記憶装置202と、処理部204と、走査駆動部206と、ヘッド駆動部208と、を備えている。入力バッファメモリ200と処理部204とは相互に通信可能に接続されている。処理部204と、記憶装置202と、走査駆動部206と、ヘッド駆動部208とは、図示しないバスによって相互に通信可能に接続されている。
【0075】
走査駆動部206は、第1位置制御装置104および第2位置制御装置108と相互に通信可能に接続されている。同様にヘッド駆動部208は、ヘッド114と相互に通信可能に接続されている。
【0076】
入力バッファメモリ200は、液滴吐出装置300Lの外部に位置する外部情報処理装置(不図示)から、液状の材料111の液滴を吐出するための吐出データを受け取る。入力バッファメモリ200は、吐出データを処理部204に供給し、処理部204は吐出データを記憶装置202に格納する。図6では、記憶装置202はRAMである。
【0077】
処理部204は、記憶装置202内の吐出データに基づいて、被吐出部31に対するノズル118の相対位置を示すデータを走査駆動部206に与える。走査駆動部206はこのデータと、吐出周期と、に応じたステージ駆動信号を第1位置制御装置104および第2位置制御装置108に与える。この結果、被吐出部31に対する吐出ヘッド部103の相対位置が変わる。一方、処理部204は、記憶装置202に記憶された吐出データに基づいて、液状の材料111の吐出に必要な吐出信号をヘッド114に与える。この結果、ヘッド114において対応するノズル118から、液状の材料111の液滴Dが吐出される。
【0078】
制御部112は、CPU、ROM、RAM、およびバスを含んだコンピュータである。したがって、制御部112の上記機能は、コンピュータによって実行されるソフトウェアプログラムによって実現される。もちろん、制御部112は、専用の回路(ハードウェア)によって実現されてもよい。
【0079】
(F.液状の材料)
上述の「液状の材料111」とは、ヘッド114のノズル118から液滴Dとして吐出されうる粘度を有する材料をいう。ここで、液状の材料111が水性であると油性であるとを問わない。ノズル118から吐出可能な流動性(粘度)を備えていれば十分で、固体物質が混入していても全体として流動体であればよい。ここで、液状の材料111の粘度は1mPa・s以上50mPa・s以下であるのが好ましい。粘度が1mPa・s以上である場合には、液状の材料111の液滴Dを吐出する際にノズル118の周辺部が液状の材料111で汚染されにくい。一方、粘度が50mPa・s以下である場合は、ノズル118における目詰まり頻度が小さく、このため円滑な液滴Dの吐出を実現できる。親液材料23A、正孔輸送材料24A、発光材料25RA、25GA、25BAは、いずれも上述の条件を満たす液状の材料である。
【0080】
また、これらの液状の材料111が微粒子を含有している場合は、当該微粒子の平均粒径は1μm以下であることが望ましい。この条件を満たす液状の材料111は、ヘッド114のノズル118から、目詰まりすることなく、所望の方向へ吐出される。親液材料23Aは、上述した通り、シリカ(SiO2)の微粒子と酸化チタン(TiO2)の微粒子とを含有しているが、これらの微粒子の平均粒径は、1μm以下である。
【0081】
なお、本実施形態においては、正孔輸送材料24Aが本発明の「第1の材料」に対応し、親液材料23Aが本発明の「第2の材料」に対応する。
【0082】
(G.製造方法)
図7および図8を参照しながら、上述の液滴吐出装置を用いた有機EL素子の製造方法を説明する。なお、図7および図8においては、図2(a)における絶縁層12、半導体層13、ゲート絶縁層14、ソース電極16、ドレイン電極17、およびゲート電極19の図示を省略し、これらすべてを代表して、TFT素子30として図示する。
【0083】
まず、公知の成膜技術とパターニング技術とを用いて、支持基板20上に回路素子層11および画素電極21を形成する。なお、上述のように、本実施形態では、支持基板20と、支持基板20上の回路素子層11と、をまとめて「回路基板」とも表記する。同様に、発光層25が設けられる以前の有機EL表示装置1を指して「基体10」と表記する。
【0084】
次に、回路素子層11上および画素電極21上をUV洗浄する。そして、図7(a)に示すように、回路素子層11上および画素電極21上を覆うようにスピンコート法を用いて、黒顔料およびフッ素を含有する有機分子からなる樹脂有機薄膜(すなわち樹脂ブラック)を塗布する。このことで、回路素子層11上および画素電極21上に樹脂ブラック層22Aを形成する。さらに樹脂ブラック層22Aの全面を覆うようにネガ型のアクリル系化学増幅型感光性レジストを塗布することで、樹脂ブラック層22A上にレジスト層22Bを形成する。
【0085】
続いて、レジスト層22Bと樹脂ブラック層22Aとをパターニングする。具体的には、図7(b)に示すように、発光層25R、25G、25Bが形成されるべき領域に対応する部位に遮光部ABを有するフォトマスクPMを介して、レジスト層22Bに光hνを照射する。そして、所定のエッチング液を用いてエッチングすることで、光hνが照射されていない部分、すなわち発光層25R、25G、25Bに対応する部分のレジスト層22Bと、対応する樹脂ブラック層22Aとを取り除く。そのことによって、図7(c)に示すように、後に形成されるべき発光層25R、25G、25Bを囲む形状を有する、樹脂ブラックからなるバンク22とレジスト層22Bとが、回路基板上に残る。その後、所定の薬液を用いてレジスト層22Bを剥離して、回路基板上には、図7(d)に示すように、バンク22と画素電極21とで規定される被吐出部31が形成される。ここで、画素電極21とバンク22とは、凹部を形取っている。画素電極21は、その凹部の底部を構成する。
【0086】
以上のような工程を経て、回路基板上の画素電極21が凹部の底部になるように、バンクが形成される。
【0087】
次に、バンク22の表面に対して、プラズマ処理を行う。プラズマ処理は、基体10をフルオロカーボン系化合物を含有するガスにさらし、当該ガスにエネルギーを与えてプラズマ化してバンク22の表面と反応させて行う。このプラズマ処理によって、バンク22の、親液材料23A、正孔輸送材料24A、および発光材料25RA、25GA、25BAに対する撥液性を高めることができる。
【0088】
続いて、基体10に設けられた被吐出部31に、親液材料23A、正孔輸送材料24A、および対応する発光材料25RA、25GA、25BAを順次付与していく。これらの工程は、図3に示す製造装置Aによって行われる。
【0089】
被吐出部31が設けられた基体10は、搬送装置270によって、吐出装置300Lのステージ106に運ばれる。そして、図8(a)に示すように、吐出装置300Lは、被吐出部31のすべてに親液材料23Aの層が形成されるように、ヘッド114から親液材料23Aを吐出する。より具体的には、吐出装置300Lは、被吐出部31の底部を構成する画素電極21の表面に親液材料23Aを吐出する。基体10のすべての被吐出部31に親液材料23Aの層が形成された場合には、搬送装置270が基体10を乾燥装置350L内に位置させる。そして、被吐出部31上の親液材料23Aを完全に乾燥させることで、図8(a)に示すように、被吐出部31に親液層23が形成される。
【0090】
親液層23が設けられた基体10は、搬送装置270によって、光照射装置400Lに運ばれる。そして、光照射装置400Lは、基体10に対して波長400nm以下の光を照射する。親液層23は、このような波長の光に対して反応し、親液性が高まる性質を持っている。したがって、当該工程を経た親液層23は、正孔輸送材料24Aあるいは発光材料25R、25G、および25Bに対する親液性が高まる。
【0091】
なお、光照射装置400Lは、上述のように波長400nm以下の光を照射するが、親液層23に含まれる微粒子の種類によって、実際に反応に寄与する光の波長は異なる。具体的には、シリカ(SiO2)の微粒子と、金属を含む微粒子とを含有する親液層23は、波長400nm以下の光のうち、その金属を含有する微粒子が光触媒として機能する波長の光に反応する。例えば、本実施形態で用いる、シリカ(SiO2)の微粒子と酸化チタン(TiO2)の微粒子とを含有する親液層23は、酸化チタン(TiO2)の微粒子が光触媒として機能する、波長380nm以下の光に反応する。また、シリカ(SiO2)の微粒子のみを含む親液層23は、波長が250nm以下の光に反応する。
【0092】
続いて、基体10は、搬送装置270によって、吐出装置300Hのステージ106に運ばれる。そして、図8(b)に示すように、吐出装置300Hは、被吐出部31のすべてに正孔輸送材料24Aの層が形成されるように、ヘッド114から正孔輸送材料24Aを吐出する。より具体的には、吐出装置300Hは、被吐出部31の底部を構成する親液層23の表面に正孔輸送材料24Aを吐出する。基体10のすべての被吐出部31に正孔輸送材料24Aの層が形成された場合には、搬送装置270が基体10を乾燥装置350H内に位置させる。そして、被吐出部31上の正孔輸送材料24Aを完全に乾燥させることで、図8(b)に示すように、被吐出部31に正孔輸送層24が形成される。
【0093】
ところで、親液層23の正孔輸送材料24Aに対する親液性は、バンク22の正孔輸送材料24Aに対する親液性よりも高くなっている。これは、バンク22に撥液性の高いフッ素を含有する有機分子を用いるとともに、バンク22をプラズマ処理して撥液性を高めていることと、シリカ(SiO2)の微粒子と酸化チタン(TiO2)の微粒子とを含有する親液性の高い親液層23にさらに光を照射して親液性を高めていることによる。このため、被吐出部31の底部を構成する親液層23の表面に着弾した正孔輸送材料24Aの液滴は、バンク22に対して反撥するとともに、親液層23上に濡れ広がろうとする。このような作用によって、正孔輸送材料24Aは親液層23上に均一に濡れ広がり、これを乾燥させて得られた正孔輸送層24は、均一な厚さを持つ層となる。
【0094】
正孔輸送層24が設けられた基体10は、搬送装置270によって、吐出装置300Rのステージ106に運ばれる。そして、図8(c)に示すように、吐出装置300Rは、赤色に対応する発光層25Rが形成されるべき被吐出部31のすべてに発光材料25RAの層が形成されるように、ヘッド114から発光材料25RAを吐出する。より具体的には、吐出装置300Rは、赤色に対応する発光層25Rが形成されるべき被吐出部31の底部を構成する正孔輸送層24の表面に発光材料25RAを吐出する。基体10の所定の被吐出部31のすべてに発光材料25RAの層が形成された場合には、搬送装置270が基体10を乾燥装置350R内に位置させる。そして、被吐出部31上の発光材料25RAを完全に乾燥させることで、被吐出部31に発光層25Rが形成される。
【0095】
次に搬送装置270は、基体10を吐出装置300Gのステージ106に位置させる。そして、吐出装置300Gは、緑色に対応する発光層25Gが形成されるべき被吐出部31のすべてに発光材料25GAの層が形成されるように、ヘッド114から発光材料25GAを吐出する。より具体的には、吐出装置300Gは、緑色に対応する発光層25Gが形成されるべき被吐出部31の底部を構成する正孔輸送層24の表面に発光材料25GAを吐出する。基体10の所定の被吐出部31のすべてに発光材料25GAの層が形成された場合には、搬送装置270が基体10を乾燥装置350G内に位置させる。そして、被吐出部31上の発光材料25GAを完全に乾燥させることで、被吐出部31に発光層25Gが形成される。
【0096】
次に搬送装置270は、基体10を吐出装置300Bのステージ106に位置させる。そして、吐出装置300Bは、青色に対応する発光層25Bが形成されるべき被吐出部31のすべてに発光材料25BAの層が形成されるように、ヘッド114から発光材料25BAを吐出する。より具体的には、吐出装置300Bは、青色に対応する発光層25Bが形成されるべき被吐出部31の底部を構成する正孔輸送層24の表面に発光材料25BAを吐出する。基体10の所定の被吐出部31のすべてに発光材料25BAの層が形成された場合には、搬送装置270が基体10を乾燥装置350B内に位置させる。そして、被吐出部31上の発光材料25BAを完全に乾燥させることで、被吐出部31に発光層25Bが形成される。
【0097】
こうして得られた発光層25R、25G、25Bは、ムラのない、均一な厚さを持つ層となる。これは、正孔輸送層24の発光材料25RA、25GA、25BAに対する親液性が、バンク22の発光材料25RA、25GA、25BAに対する親液性よりも高いために、発光材料25RA、25GA、25BAは、バンク22に対して反撥するとともに、正孔輸送層24上に濡れ広がろうとするためである。
【0098】
次に、図8(d)に示すように、発光層25R、25G、25B、およびバンク22を覆うように陰極26を設ける。その後、封止基板32と基体10とを、互いの周辺部で接着することで、図8(d)に示す有機EL表示装置1が得られる。なお、封止基板32と基体10との間には不活性ガス33が封入されている。
【0099】
このような有機EL表示装置1において、発光層25R、25G、25Bから発した光は、画素電極21と、回路素子層11と、支持基板20と、を介して射出する。このように回路素子層11を介して光を射出するエレクトロルミネッセンス表示装置は、ボトムエミッション型の表示装置と呼ばれる。
【0100】
こうして得られた有機EL素子においては、正孔輸送層24および発光層25R、25G、25Bがムラのない均一な厚さの層となる。したがって、この有機EL素子を用いた有機EL表示装置1は、良好な表示特性を実現することができる。さらに、表示装置自体が大型で、このため被吐出部31が大きい場合であっても、正孔輸送材料24Aおよび発光材料25RA、25GA、25BAの被吐出部31での濡れ性がよいので、これらを均一な厚さの層に形成することができる。したがって、被吐出部31が大きくても、良好な表示特性を維持することができる。
【0101】
また、正孔輸送材料24Aおよび発光材料25RA、25GA、25BAの着弾位置が被吐出部31の中のいずれの位置であっても、バンク22に対して反撥するとともに被吐出部31の底部に濡れ広がろうとするので、吐出位置制御の精度が低くても高品位な表示装置を製造できる。よって、表示装置の生産性を向上することができる。同様の理由で、着弾位置不良や、被吐出部31の端部の角での濡れ不足を原因とする不具合が低減されるので、表示装置の信頼性を高めることができる。さらに、画素電極21と正孔輸送層24との間に親液層23が配置されているので、画素電極21から正孔輸送層24への不純物イオンの拡散を抑えることができ、表示装置の寿命を向上させることができる。
【0102】
(第2の実施形態)
前述の第1の実施形態においては、バンク22を形成した後で被吐出部31に親液層23を形成する。一方、本実施形態においては、回路基板の表面全体に親液層23を塗布した後で、親液層23の表面上にバンク22を形成する。そして、この点を除くと、本実施形態は、第1の実施形態と基本的に同じである。詳細は以下の通りである。
【0103】
まず、公知の成膜技術とパターニング技術とを用いて、支持基板20上に回路素子層11を形成する。その後、回路素子層11上に複数の画素電極21をマトリクス状に形成する。なお、上述のように、本実施形態では、支持基板20と、支持基板20上の回路素子層11と、をまとめて「回路基板」とも表記する。同様に、発光層25が設けられる以前の有機EL表示装置1を指して「基体10」と表記する。
【0104】
次に、回路素子層11上および画素電極21上をUV洗浄する。そして、基体10は、製造装置A中の搬送装置270によって、吐出装置300Lのステージ106に運ばれる。ここで、図9(a)に示すように、吐出装置300Lは、回路素子層11上および画素電極21を覆う親液材料23Aの層が形成されるように、ヘッド114から親液材料23Aを吐出する。回路素子層11上および画素電極21を覆って親液材料23Aの層が形成された後に、搬送装置270が基体10を乾燥装置350L内に位置させる。そして、親液材料23Aを完全に乾燥させることで、基体10の表面に親液層23を得る。この結果、回路基板上の画素電極21を覆う親液層23が形成される。
【0105】
親液層23が設けられた基体10は、搬送装置270によって、光照射装置400Lに運ばれる。そして、光照射装置400Lは、基体10に対して波長400nm以下の光を照射する。親液層23は、このような波長の光に対して反応し、親液性が高まる性質を持っている。したがって、当該工程を経た親液層23は、正孔輸送材料24Aあるいは発光材料25R、25G、25Bに対する親液性が高まる。
【0106】
なお、光照射装置400Lは、上述のように波長400nm以下の光を照射するが、親液層23に含まれる微粒子の種類によって、実際に反応に寄与する光の波長は異なる。具体的には、シリカ(SiO2)の微粒子と、金属を含む微粒子とを含有する親液層23は、波長400nm以下の光のうち、その金属を含有する微粒子が光触媒として機能する波長の光に反応する。例えば、本実施形態で用いる、シリカ(SiO2)の微粒子と酸化チタン(TiO2)の微粒子とを含有する親液層23は、酸化チタン(TiO2)の微粒子が光触媒として機能する、波長380nm以下の光に反応する。また、シリカ(SiO2)の微粒子のみを含む親液層23は、波長が250nm以下の光に反応する。
【0107】
ここで、基体10は製造装置Aから取り出されて、バンク22の形成のための工程を経る。すなわち、まず図9(b)に示すように、親液層23の表面に、スピンコート法を用いて樹脂ブラック層22Aを形成する。さらに樹脂ブラック層22Aの全面を覆うようにネガ型のアクリル系化学増幅型感光性レジストを塗布することで、樹脂ブラック層22A上にレジスト層22Bを形成する。
【0108】
次に、図9(c)および(d)に示すように、レジスト層22Bと樹脂ブラック層22Aとをパターニングし、その後、レジスト層22Bを剥離して、バンク22を形成する。親液層23とバンク22とは、凹部を形取るようになる。親液層23は、その凹部の底部である。続いて、バンク22の表面に対して、撥液性を高めるためにプラズマ処理を行う。なお、レジスト層22Bと樹脂ブラック層22Aのパターニング法、レジスト層22Bの剥離法、およびプラズマ処理の方法は、第1の実施形態と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0109】
こうして、図9(d)に示すように、基体10上に親液層23を底部とする被吐出部31が形成される。つまり、画素電極21上の親液層23が凹部の底部になるようにバンク22が形成される。
【0110】
被吐出部31が設けられた基体10は、再び製造装置Aに戻され、搬送装置270によって、吐出装置300Hのステージ106に運ばれる。そして、図10(a)に示すように、吐出装置300Hは、被吐出部31のすべてに正孔輸送材料24Aの層が形成されるように、ヘッド114から正孔輸送材料24Aを吐出する。より具体的には、吐出装置300Hは、被吐出部31の底部を構成する親液層23の表面に正孔輸送材料24Aを吐出する。基体10のすべての被吐出部31に正孔輸送材料24Aの層が形成された場合には、搬送装置270が基体10を乾燥装置350H内に位置させる。そして、被吐出部31上の正孔輸送材料24Aを完全に乾燥させることで、図10(a)に示すように、被吐出部31上に正孔輸送層24が形成される。
【0111】
ところで、被吐出部31の底部を形成する親液層23の正孔輸送材料24Aに対する親液性は、バンク22の正孔輸送材料24Aに対する親液性よりも高くなっている。これは、バンク22に撥液性の高いフッ素を含有する有機分子を用いるとともに、バンク22をプラズマ処理して撥液性を高めていることと、シリカ(SiO2)の微粒子と酸化チタン(TiO2)の微粒子とを含有する親液性の高い親液層23に光を照射して親液性を高めていることによる。このため、被吐出部31に着弾した正孔輸送材料24Aの液滴は、バンク22に対して反撥するとともに、親液層23上に濡れ広がろうとする。このような作用によって、正孔輸送材料24Aは親液層23上に均一に濡れ広がり、これを乾燥させて得られた正孔輸送層24は、均一な厚さを持つ層となる。
【0112】
被吐出部31に正孔輸送層24が形成されると、基体10は、搬送装置270によって、吐出装置300Rのステージ106に運ばれる。そして、図10(b)に示すように、吐出装置300Rは、赤色に対応する発光層25Rが形成されるべき被吐出部31のすべてに発光材料25RAの層が形成されるように、ヘッド114から発光材料25RAを吐出する。より具体的には、吐出装置300Rは、赤色に対応する発光層25Rが形成されるべき被吐出部31の底部を構成する正孔輸送層24の表面に発光材料25RAを吐出する。基体10の所定の被吐出部31のすべてに発光材料25RAの層が形成された場合には、搬送装置270が基体10を乾燥装置350R内に位置させる。そして、被吐出部31上の発光材料25RAを完全に乾燥させることで、被吐出部31上に発光層25Rが形成される。
【0113】
次に搬送装置270は、基体10を吐出装置300Gのステージ106に位置させる。そして、吐出装置300Gは、緑色に対応する発光層25Gが形成されるべき被吐出部31のすべてに発光材料25GAの層が形成されるように、ヘッド114から発光材料25GAを吐出する。より具体的には、吐出装置300Gは、緑色に対応する発光層25Gが形成されるべき被吐出部31の底部を構成する正孔輸送層24の表面に発光材料25GAを吐出する。基体10の所定の被吐出部31のすべてに発光材料25GAの層が形成された場合には、搬送装置270が基体10を乾燥装置350G内に位置させる。そして、被吐出部31上の発光材料25GAを完全に乾燥させることで、被吐出部31上に発光層25Gが形成される。
【0114】
次に搬送装置270は、基体10を吐出装置300Bのステージ106に位置させる。そして、吐出装置300Bは、青色に対応する発光層25Bが形成されるべき被吐出部31のすべてに発光材料25BAの層が形成されるように、ヘッド114から発光材料25BAを吐出する。より具体的には、吐出装置300Bは、青色に対応する発光層25Bが形成されるべき被吐出部31の底部を構成する正孔輸送層24の表面に発光材料25BAを吐出する。基体10の所定の被吐出部31のすべてに発光材料25BAの層が形成された場合には、搬送装置270が基体10を乾燥装置350B内に位置させる。そして、被吐出部31上の発光材料25BAを完全に乾燥させることで、被吐出部31上に発光層25Bが形成される。
【0115】
こうして得られた発光層25R、25G、25Bは、ムラのない、均一な厚さを持つ層となる。これは、正孔輸送層24の発光材料25RA、25GA、25BAに対する親液性が、バンク22の発光材料25RA、25GA、25BAに対する親液性よりも高いために、発光材料25RA、25GA、25BAは、バンク22に対して反撥するとともに、正孔輸送層24上に濡れ広がろうとするためである。
【0116】
次に、図10(c)に示すように発光層25R、25G、25B、およびバンク22を覆うように陰極26を設ける。その後、封止基板32と基体10とを、互いの周辺部で接着することで、図10(c)に示す有機EL表示装置1が得られる。なお、封止基板32と基体10との間には不活性ガス33が封入されている。
【0117】
こうして得られた有機EL素子においては、正孔輸送層24および発光層25R、25G、25Bのそれぞれが均一な厚さの層となる。したがって、この有機EL素子を用いた有機EL表示装置1は、第1の実施形態で示した効果と同様の効果を奏する。
【0118】
(第3の実施形態)
第1の実施形態および第2の実施形態においては、バンク22の形成のために塗布したレジスト層22Bは、樹脂ブラック層22Aおよびレジスト層22Bのパターニング後に剥離したが、レジスト層22B自体に、正孔輸送材料24A、および対応する発光材料25RA、25GA、25BAに対する撥液性を持たせて、レジスト層22Bを剥離せずに製造することもできる。以下では、この方式を用いた第3の実施形態について説明する。
【0119】
本実施形態における有機EL素子の製造方法は、以降で述べる事項を除いては第2の実施形態における有機EL素子の製造方法と同じである。このため、第2の実施形態と共通する部分については説明を省略する。
【0120】
図11は、本実施形態における有機EL素子の製造方法を示した図である。図11(a)は、回路基板上に、親液層23、樹脂ブラック層22Aおよびレジスト層22Bを設けた後に、レジスト層22Bに光を照射してパターニングを行った状態の基体10を示す。
【0121】
ここで、レジスト層22Bには、フッ素を含有する高分子化合物からなるフォトレジストが用いられている。このような材料から形成されたレジスト層22Bは、正孔輸送材料24A、および発光材料25RA、25GA、25BAに対して撥液性を有する。
【0122】
本実施形態においては、この後、レジスト層22Bを剥離しない。したがって、第2の実施形態におけるバンク22に相当する構成要素は、樹脂ブラック層からなるバンク22と、レジスト層22Bとを合わせたものとなる。以下では、バンク22と、レジスト層22Bとを合わせたものをバンク22’と呼ぶ。本実施形態における被吐出部31の側面は、バンク22’で規定される。また、バンク22’は、撥液性を有するレジスト層22Bを表面に有するので、この後、バンク22’の撥液性を高めるためのプラズマ処理は行わなくてよい。
【0123】
続いて、図11(b)に示すように、被吐出部31に、第2の実施形態と同様の工程によって正孔輸送層24、発光層25R、25G、25B、陰極26、および封止基板32を形成する。
【0124】
こうして得られた有機EL表示装置1においては、正孔輸送層24は、ムラのない均一な厚さの層となる。これは、親液層23の正孔輸送材料24Aに対する親液性が、バンク22’の正孔輸送材料24Aに対する親液性よりも高いために、正孔輸送材料24Aがバンク22’に対して反撥するとともに、親液層23上に濡れ広がろうとするためである。
【0125】
また、発光層25R、25G、25Bも、ムラのない均一な厚さの層となる。これは、正孔輸送層24の発光材料25RA、25GA、25BAに対する親液性が、バンク22’の発光材料25RA、25GA、25BAに対する親液性よりも高いために、発光材料25RA、25GA、25BAがバンク22’に対して反撥するとともに、正孔輸送層24上に濡れ広がろうとするためである。
【0126】
本実施形態の製造方法によって製造された有機EL素子を用いた有機EL表示装置1は、第2実施形態の製造方法によって製造された有機EL素子を用いた有機EL表示装置1と同様の効果が得られる。加えて、本実施形態の製造方法では、レジスト層22Bの剥離工程と、バンク22’のプラズマ処理工程とを行う必要がないので、有機EL素子および有機EL表示装置の製造工程を簡略化することができる。
【0127】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態に対しては、本発明の趣旨から逸脱しない範囲で様々な変形を加えることができる。変形例としては、例えば以下のようなものが考えられる。
【0128】
(変形例1)
上述の各実施形態では、正孔輸送層24と発光層25とを分離して積層したが、正孔輸送層24を発光層25に混合することも可能である。その際は、正孔輸送層24はなくてもよい。この場合は、親液層23の表面に直接発光材料25RA、25GA、25BAを付与すればよい。このとき、親液層23の発光材料25RA、25GA、25BAに対する親液性は、バンク22または22’の発光材料25RA、25GA、25BAに対する親液性より高いので、親液層23上に着弾した発光材料25RA、25GA、25BAは、バンク22またはバンク22’の底部に配置された親液層23上を均一に濡れ広がる。したがって、ムラのない均一な厚さの発光層25を形成することができる。
【0129】
(変形例2)
上述の各実施形態では、親液材料23Aにはシリカ(SiO2)の微粒子と酸化チタン(TiO2)の微粒子とが含有されていたが、シリカ(SiO2)の微粒子のみを含む材料であっても良い。あるいは、酸化チタン(TiO2)の代わりに、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO2)、チタン酸ストロンチウム(SrTi3)、酸化タングステン(WO3)、酸化ビスマス(Bi2O3)、および酸化鉄(Fe2O3)のうちの少なくとも1種からなる微粒子を含有させてもよい。このような親液材料23Aは、正孔輸送材料24A、および発光材料25RA、25GA、25BAに対して親液性を有する。
【0130】
また、親液材料23Aは、シリカ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、チタン酸ストロンチウム、酸化タングステン、酸化ビスマス、および酸化鉄のうちの少なくとも1種以上の組成の組み合わせからなる微粒子を含有する材料であってもよい。さらに、酸化チタンや酸化亜鉛などの上記金属がシリカでコーティングされた微粒子を含有する材料などを用いることができる。このような親液材料23Aも、正孔輸送材料24A、および発光材料25RA、25GA、25BAに対して親液性を有する。
【0131】
(変形例3)
上述の各実施形態では、親液層23の親液性を高めるために親液層23に対して波長400nm以下の光を照射していたが、この工程は省略してもよい。この場合、親液層23の、正孔輸送材料24A、および発光材料25RA、25GA、25BAに対する親液性は低下するものの、それでもバンク22の正孔輸送材料24Aおよび発光材料25RA、25GA、25BAに対する親液性よりも高い。したがって、この変形例によれば、光を照射する工程を省略することができるので、有機EL素子および有機EL表示装置の製造工程を簡略化することができる。
【0132】
(変形例4)
第2の実施形態および第3の実施形態において、親液層23は吐出装置300Lを用いてインクジェット法によって形成したが、この他にも液状の材料を塗布する方法であればどのような方法で形成してもよい。親液層23の形成に適用することが可能な方法の例としては、押出コーティング方法、スピンコーティング方法、グラビアコーティング方法、リバースロールコーティング方法、ロッドコーティング方法、スリットコーティング方法、マイクログラビアコーティング方法、ディップコーティング方法、フレキソ印刷法、およびスクリーン印刷法などを挙げることができる。
【0133】
(変形例5)
第3の実施形態において、レジスト22Bにはフッ素を含有する高分子化合物からなるフォトレジストを用いたが、フッ素を含有する有機分子を混合したフォトレジストを用いてもよい。このようなフォトレジストによって形成されたレジスト22Bは、正孔輸送材料24A、および発光材料25RA、25GA、25BAに対して撥液性をもつ。このため、上述の各実施形態と同様に、正孔輸送層24および発光層25R、25G、25Bをムラのない均一な厚さで付与することができる。フッ素を含有する有機分子としては、界面活性剤が好ましい。具体的には、日本サーファクタント工業製のNIKKOL BL、BC、BO、BBの各シリーズ等の炭化水素系、デュポン製のZONYL FSN、FSO、旭硝子製のサーフロンS−141、145、大日本インキ製のメガファックF−141、144、ネオス製のフタージェント F−200、F251、ダイキン工業製のユニダインDS−401、402、スリーエム製の、フロラードFC−170、176、JEMCO製のエフトップEF−シリーズ、等のフッ素系の非イオン界面活性あるいは、カチオン系、アニオン系、両性界面活性剤を用いることができる。これらの界面活性剤は、フォトレジストに添加する種類および量を調整することによって、フォトレジストの撥液性を任意に設定することができる。
【0134】
(変形例6)
上述の各実施形態では、樹脂ブラック層22Aとレジスト層22Bとをパターニングしてバンク22を形成していたが、レジスト層22Bに撥液性のある材料を用いる場合においては、レジスト層22Bのみからバンク22を形成してもよい。より具体的には、樹脂ブラック層22Aを塗布せずにレジスト層22Bを塗布し、その後レジスト層22Bをパターニングしたものをバンク22とすればよい。このような方法でバンク22を形成した場合でも、親液層23の、正孔輸送材料24A、および発光材料25RA、25GA、25BAに対する親液性は、バンク22の正孔輸送材料24Aおよび発光材料25RA、25GA、25BAに対する親液性よりも高いので、均一な厚さの正孔輸送層24および発光層25R、25G、25Bを形成することができる。
【0135】
(変形例7)
第1の実施形態および第2の実施形態においては、バンク22の表面に対してプラズマ処理を行ったが、この工程は省略してもよい。この場合、バンク22の、正孔輸送材料24A、および発光材料25RA、25GA、25BAに対する撥液性は低下するものの、プラズマ処理工程を省略することができるので、有機EL素子および有機EL表示装置の製造工程を簡略化することができる。
【0136】
(電子機器)
次に、第1から第3の実施形態、および変形例1から7に示した製造方法で製造された有機EL素子を含む有機EL表示装置を、具体的な電子機器に組み込んだ例について説明する。図12は、表示部520に上述の有機EL表示装置を組み込んだ携帯電話機500の構成を示す模式図である。この携帯電話機500は、表示部520において、電話番号や日付情報を始めとする各種情報を表示することができる。この携帯電話機500は、第1から第3の実施形態に示した有機EL素子の製造方法を含む製造方法、または変形例1から7に示した有機EL素子の製造方法を含む製造方法によって製造することができる。このような製造方法によれば、良好な表示特性を実現することができて、かつ信頼性が高く寿命の長い携帯電話機500を製造することができる。
【0137】
図13は、表示部620に上述の有機EL表示装置を組み込んだパーソナルコンピュータ600の構成を示す模式図である。このパーソナルコンピュータ600は、表示部620において、入力装置630によって入力された情報を始めとする各種情報を表示することができる。このパーソナルコンピュータ600は、第1から第3の実施形態に示した有機EL素子の製造方法を含む製造方法、または変形例1から7に示した有機EL素子の製造方法を含む製造方法によって製造することができる。このような製造方法によれば、良好な表示特性を実現することができて、かつ信頼性が高く寿命の長いパーソナルコンピュータ600を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0138】
【図1】有機EL表示装置の電気的な構成を説明するためのブロック図である。
【図2】(a)および(b)は、有機EL表示装置を構成する基板の構造を示す模式図である。
【図3】有機EL素子の製造装置を示す模式図である。
【図4】液滴吐出装置を示す模式図である。
【図5】(a)および(b)は、液滴吐出装置におけるヘッドを示す模式図である。
【図6】液滴吐出装置における制御部の機能ブロック図である。
【図7】(a)から(d)は、第1の実施形態の有機EL素子の製造方法を説明する図である。
【図8】(a)から(d)は、第1の実施形態の有機EL素子の製造方法を説明する図である。
【図9】(a)から(d)は、第2の実施形態の有機EL素子の製造方法を説明する図である。
【図10】(a)から(c)は、第2の実施形態の有機EL素子の製造方法を説明する図である。
【図11】(a)および(b)は、第3の実施形態の有機EL素子の製造方法を説明する図である。
【図12】有機EL表示装置を組み込んだ携帯電話機の構成を示す模式図である。
【図13】有機EL表示装置を組み込んだパーソナルコンピュータの構成を示す模式図である。
【符号の説明】
【0139】
1…有機EL表示装置、10…基体、11…回路素子層、12…絶縁層、13…半導体層、14…ゲート絶縁層、15,18…層間絶縁層、16…ソース電極、17…ドレイン電極、19…ゲート電極、20…支持基板、21…画素電極、22…バンク、22A…樹脂ブラック層、22B…レジスト、23…親液層、23A…親液材料、24…正孔輸送層、24A…正孔輸送材料、25,25R,25G,25B…発光層、25RA,25GA,25BA…発光材料、26…陰極、27,28,29…スルーホール、30…TFT素子、31…被吐出部、32…封止基板、33…不活性ガス、41…走査線駆動回路、42…データ線駆動回路、43…走査線、44…データ線、45…画素領域、101…タンク、103…吐出ヘッド部、104…第1位置制御装置、104a…支持部、106…ステージ、108…第2位置制御装置、110…チューブ、111…材料、112…制御部、114…ヘッド、118…ノズル、120…キャビティ、122…隔壁、124…振動子、124A…電極、124C…ピエゾ素子、126…振動板、127…吐出部、128…ノズルプレート、130…供給口、131…孔、200…入力バッファメモリ、202…記憶装置、204…処理部、206…走査駆動部、208…ヘッド駆動部、270…搬送装置、300L,300H,300R,300G,300B…吐出装置、350L,350H,350R,350G,350B…乾燥装置、400L…光照射装置、500…携帯電話機、520…表示部、600…パーソナルコンピュータ、620…表示部、630…入力装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上の画素電極が凹部の底部になるように、前記凹部を規定する隔壁を形成する工程Aと、
前記底部上に親液層を形成する工程Bと、
前記親液層上に、液滴吐出装置を用いて液状の第1の材料を付与する工程Cと、
を含んだ有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、
前記第1の材料は、正孔輸送材料および発光材料のどちらか一方であり、
前記液状の第1の材料に対する前記親液層の親液性は、前記液状の第1の材料に対する前記隔壁の親液性よりも高い、
有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、
前記工程Bは、前記底部上にシリカの微粒子を含有する液状の第2の材料を付与して前記親液層を形成する工程を含む、
有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、
前記液状の第2の材料は、さらに酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、チタン酸ストロンチウム、酸化タングステン、酸化ビスマス、および酸化鉄のうちの少なくとも1種からなる微粒子を含有する、
有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、
前記工程Bは、前記底部上に、シリカ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、チタン酸ストロンチウム、酸化タングステン、酸化ビスマス、および酸化鉄のうちの少なくとも1種以上の組成の組み合わせからなる微粒子を含有する液状の第2の材料を付与して前記親液層を形成する工程を含む、
有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、
前記工程Bは、前記底部上に、シリカと、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、チタン酸ストロンチウム、酸化タングステン、酸化ビスマス、および酸化鉄のうちの少なくとも1種以上と、の組成の組み合わせからなる微粒子を含有する液状の第2の材料を付与して前記親液層を形成する工程を含む、
有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項6】
請求項2から5のいずれか一つに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、
前記微粒子の平均粒径は1μm以下である、
有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一つに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、
前記工程Aは、フッ素を含有する高分子化合物が混合されたフォトレジストから前記隔壁を形成する工程を含む、
有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項8】
請求項1から6のいずれか一つに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、
前記工程Aは、フッ素を含有する有機分子が混合されたフォトレジストから前記隔壁を形成する工程を含む、
有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項9】
基板上の画素電極を覆う親液層を形成する工程Aと、
前記画素電極上の前記親液層が凹部の底部になるように、前記凹部を規定する隔壁を形成する工程Bと、
前記底部上に、液滴吐出装置を用いて液状の第1の材料を付与する工程Cと、
を含んだ有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、
前記第1の材料は、正孔輸送材料および発光材料のどちらか一方であり、
前記液状の第1の材料に対する前記親液層の親液性は、前記液状の第1の材料に対する前記隔壁の親液性よりも高い、
有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、
前記工程Aは、前記底部上にシリカの微粒子を含有する液状の第2の材料を付与して前記親液層を形成する工程を含む、
有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項11】
請求項10に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、
前記液状の第2の材料は、さらに酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、チタン酸ストロンチウム、酸化タングステン、酸化ビスマス、および酸化鉄のうちの少なくとも1種からなる微粒子を含有する、
有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項12】
請求項9に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、
前記工程Aは、前記底部上に、シリカ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、チタン酸ストロンチウム、酸化タングステン、酸化ビスマス、および酸化鉄のうちの少なくとも1種以上の組成の組み合わせからなる微粒子を含有する液状の第2の材料を付与して前記親液層を形成する工程を含む、
有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項13】
請求項9に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、
前記工程Aは、前記底部上に、シリカと、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、チタン酸ストロンチウム、酸化タングステン、酸化ビスマス、および酸化鉄のうちの少なくとも1種以上と、の組成の組み合わせからなる微粒子を含有する液状の第2の材料を付与して前記親液層を形成する工程を含む、
有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項14】
請求項10から13のいずれか一つに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、
前記微粒子の平均粒径は1μm以下である、
有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項15】
請求項9から14のいずれか一つに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、
前記工程Bは、フッ素を含有する高分子化合物が混合されたフォトレジストから前記隔壁を形成する工程を含む、
有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項16】
請求項9から14のいずれか一つに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、
前記工程Bは、フッ素を含有する有機分子が混合されたフォトレジストから前記隔壁を形成する工程を含む、
有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか一つに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、
前記親液層に光を照射する工程をさらに含む、
有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項18】
請求項17に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、
前記光の波長は、400nm以下である、
有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項19】
請求項1から16のいずれか一つに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、
前記隔壁は、フッ素を含有する有機分子を含む、
有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項20】
請求項1から16のいずれか一つに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、
前記隔壁の表面を、フルオロカーボン系の化合物を反応ガスに用いてプラズマ処理する工程を含む、
有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項21】
請求項1から20のいずれか一つに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法を包含した電気光学装置の製造方法。
【請求項22】
請求項1から20のいずれか一つに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法を包含した電子機器の製造方法。
【請求項1】
基板上の画素電極が凹部の底部になるように、前記凹部を規定する隔壁を形成する工程Aと、
前記底部上に親液層を形成する工程Bと、
前記親液層上に、液滴吐出装置を用いて液状の第1の材料を付与する工程Cと、
を含んだ有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、
前記第1の材料は、正孔輸送材料および発光材料のどちらか一方であり、
前記液状の第1の材料に対する前記親液層の親液性は、前記液状の第1の材料に対する前記隔壁の親液性よりも高い、
有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、
前記工程Bは、前記底部上にシリカの微粒子を含有する液状の第2の材料を付与して前記親液層を形成する工程を含む、
有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、
前記液状の第2の材料は、さらに酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、チタン酸ストロンチウム、酸化タングステン、酸化ビスマス、および酸化鉄のうちの少なくとも1種からなる微粒子を含有する、
有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、
前記工程Bは、前記底部上に、シリカ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、チタン酸ストロンチウム、酸化タングステン、酸化ビスマス、および酸化鉄のうちの少なくとも1種以上の組成の組み合わせからなる微粒子を含有する液状の第2の材料を付与して前記親液層を形成する工程を含む、
有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、
前記工程Bは、前記底部上に、シリカと、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、チタン酸ストロンチウム、酸化タングステン、酸化ビスマス、および酸化鉄のうちの少なくとも1種以上と、の組成の組み合わせからなる微粒子を含有する液状の第2の材料を付与して前記親液層を形成する工程を含む、
有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項6】
請求項2から5のいずれか一つに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、
前記微粒子の平均粒径は1μm以下である、
有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一つに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、
前記工程Aは、フッ素を含有する高分子化合物が混合されたフォトレジストから前記隔壁を形成する工程を含む、
有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項8】
請求項1から6のいずれか一つに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、
前記工程Aは、フッ素を含有する有機分子が混合されたフォトレジストから前記隔壁を形成する工程を含む、
有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項9】
基板上の画素電極を覆う親液層を形成する工程Aと、
前記画素電極上の前記親液層が凹部の底部になるように、前記凹部を規定する隔壁を形成する工程Bと、
前記底部上に、液滴吐出装置を用いて液状の第1の材料を付与する工程Cと、
を含んだ有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、
前記第1の材料は、正孔輸送材料および発光材料のどちらか一方であり、
前記液状の第1の材料に対する前記親液層の親液性は、前記液状の第1の材料に対する前記隔壁の親液性よりも高い、
有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、
前記工程Aは、前記底部上にシリカの微粒子を含有する液状の第2の材料を付与して前記親液層を形成する工程を含む、
有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項11】
請求項10に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、
前記液状の第2の材料は、さらに酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、チタン酸ストロンチウム、酸化タングステン、酸化ビスマス、および酸化鉄のうちの少なくとも1種からなる微粒子を含有する、
有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項12】
請求項9に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、
前記工程Aは、前記底部上に、シリカ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、チタン酸ストロンチウム、酸化タングステン、酸化ビスマス、および酸化鉄のうちの少なくとも1種以上の組成の組み合わせからなる微粒子を含有する液状の第2の材料を付与して前記親液層を形成する工程を含む、
有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項13】
請求項9に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、
前記工程Aは、前記底部上に、シリカと、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、チタン酸ストロンチウム、酸化タングステン、酸化ビスマス、および酸化鉄のうちの少なくとも1種以上と、の組成の組み合わせからなる微粒子を含有する液状の第2の材料を付与して前記親液層を形成する工程を含む、
有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項14】
請求項10から13のいずれか一つに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、
前記微粒子の平均粒径は1μm以下である、
有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項15】
請求項9から14のいずれか一つに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、
前記工程Bは、フッ素を含有する高分子化合物が混合されたフォトレジストから前記隔壁を形成する工程を含む、
有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項16】
請求項9から14のいずれか一つに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、
前記工程Bは、フッ素を含有する有機分子が混合されたフォトレジストから前記隔壁を形成する工程を含む、
有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか一つに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、
前記親液層に光を照射する工程をさらに含む、
有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項18】
請求項17に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、
前記光の波長は、400nm以下である、
有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項19】
請求項1から16のいずれか一つに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、
前記隔壁は、フッ素を含有する有機分子を含む、
有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項20】
請求項1から16のいずれか一つに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、
前記隔壁の表面を、フルオロカーボン系の化合物を反応ガスに用いてプラズマ処理する工程を含む、
有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項21】
請求項1から20のいずれか一つに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法を包含した電気光学装置の製造方法。
【請求項22】
請求項1から20のいずれか一つに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法を包含した電子機器の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−164589(P2006−164589A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−350815(P2004−350815)
【出願日】平成16年12月3日(2004.12.3)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年12月3日(2004.12.3)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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