説明

有機エレクトロルミネッセンス素子用基板、有機エレクトロルミネッセンス素子および有機エレクトロルミネッセンス素子用基板の製造方法

【課題】本発明は、画素ピッチを変えずに発光領域の面積を広くし、画素開口率を向上させることができる有機EL素子用基板を提供することを主目的とする。
【解決手段】本発明においては、基板と、上記基板上に形成された第1電極層と、上記第1電極層が形成された基板上に形成され、第2電極層を複数に分断する分断領域を画定する複数の絶縁性の隔壁とを有し、上記隔壁が同一材料で形成され、上記隔壁の横断面における上底面に対する一方の側面のテーパー角度をθ、他方の側面のテーパー角度をθとしたとき、0°<θ<90°かつθ<θ<180°であることを特徴とする有機EL素子用基板を提供することにより、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画素の開口率が高い有機エレクトロルミネッセンス素子用基板および有機エレクトロルミネッセンス素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、有機エレクトロルミネッセンス(以下、エレクトロルミネッセンスをELと略すことがある。)素子の製造方法として、陽極上にさまざまな形状の絶縁性の隔壁(カソードセパレーター)を設け、その上から有機層および陰極を順に成膜することにより、陰極を分断する方法が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1においては、逆テーパー形状に形成された2個の隔壁と、隔壁の外側に順テーパー形状に形成された絶縁層とを有する有機ELディスプレイパネルの製造方法が開示されている。また例えば、特許文献2においては、発光層を囲む順テーパー形状の隔壁と、電極層を分断するための逆テーパー形状の隔壁とを備えたEL装置の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−45668号公報
【特許文献2】特開2005−197189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような隔壁を有する有機EL素子においては、隔壁を形成する領域を確保する必要があるため、結果として相対的に発光領域が狭くなり、画素の開口率が低下してしまうという問題がある。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、画素ピッチを変えずに発光領域の面積を広くし、画素の開口率を向上させることができる有機EL素子用基板を提供することを主目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、基板と、上記基板上に形成された第1電極層と、上記第1電極層が形成された基板上に形成され、第2電極層を複数に分断する分断領域を画定する複数の絶縁性の隔壁とを有し、上記隔壁が同一材料で形成され、上記隔壁の横断面における上底面に対する一方の側面のテーパー角度をθ、他方の側面のテーパー角度をθとしたとき、0°<θ<90°かつθ<θ<180°であることを特徴とする有機EL素子用基板を提供する。
【0008】
本発明によれば、隔壁の横断面における上底面に対する両側面のテーパー角度が0°<θ<90°かつθ<θ<180°であるため、隔壁のθ側の側面を常に第2電極層を分断するための逆テーパー形状とし、隔壁のθ側の側面を順テーパー形状、垂直形状、またはθよりテーパー角度の大きい逆テーパー形状のいずれかの形状とすることができる。このような形状を有する隔壁は、隔壁の下底面の幅が一定の場合、隔壁の両側面が同一のテーパー角度を有する逆テーパー形状(0°<θ=θ<90°)である従来の隔壁と比較して、発光領域を狭める要因となる逆テーパー部分を隔壁のθ側で無くす(90°≦θ<180°である場合)、もしくは小さくする(θ<θ<90°の場合)ことができる。これにより、画素ピッチを変えずに発光領域を広くすることができ、画素の開口率を向上させることが可能である。
【0009】
上記発明においては、上記隔壁が、上記隔壁の上記θ側の側面に対して、上記隔壁の内側に屈曲する屈曲部を有していてもよい。隔壁のθ側の逆テーパー形状である側面に所定の屈曲角度の屈曲部を持たせることで、隔壁の下底面の幅を広くすることができ、隔壁と基板との密着性を高めることができる。
【0010】
上記発明においては、上記第1電極層と上記隔壁との間に絶縁層が形成されていることが好ましい。有機EL素子を形成した場合に、第1電極層と第2電極層とが接触してショートすることを防ぐことができるからである。
【0011】
また、本発明は、上述した有機EL素子用基板と、上記有機EL素子用基板の隔壁間の第1電極層上に形成され、発光層を含む有機EL層と、上記有機EL層上に形成され、上記隔壁により分断されている第2電極層とを有し、上記隔壁を挟んで隣接する上記第2電極層が互いに電気的に絶縁されていることを特徴とする有機EL素子を提供する。
【0012】
本発明によれば、上述した有機EL素子用基板を用いているため、隔壁の一方の側面を常に第2電極層を分断するための逆テーパー形状とし、隔壁の他方の側面を順テーパー形状、垂直形状、または上記一方の側面よりテーパー角度の大きい逆テーパー形状のいずれかの形状とすることができる。このような形状を有する隔壁は、隔壁の下底面の幅が一定の場合、隔壁の両側面が等しいテーパー角度を有する逆テーパー形状である従来の隔壁と比較して、発光領域を狭める要因となる逆テーパー部分を隔壁の片側で無くす(90°≦θ<180°である場合)、もしくは小さくする(θ<θ<90°の場合)ことができる。これにより、画素ピッチを変えずに発光領域を広くすることができ、画素の開口率を向上させることが可能である。
【0013】
また、本発明は、基板と、上記基板上に形成された第1電極層と、上記第1電極層が形成された基板上に、同一材料で形成され、第2電極層を複数に分断する分断領域を画定する複数の絶縁性の隔壁とを有する有機EL素子用基板の製造方法であって、上記第1電極層が形成された基板上に、ネガ型感光性樹脂と、架橋成分と、活性放射線を吸収する化合物とを含有する隔壁形成用レジスト溶液を塗布して、隔壁形成用レジスト膜を形成する隔壁形成用レジスト膜形成工程と、上記隔壁の横断面における上底面に対する一方の側面のテーパー角度をθ、他方の側面のテーパー角度をθとしたとき、θ<θ<180°となるθ側隔壁側面形成部を形成するために、上記隔壁形成用レジスト膜をパターン露光し、露光された上記隔壁形成用レジスト膜を加熱処理する第1ベーク工程と、上記第1ベーク工程後に、さらに0°<θ<90°となるθ側隔壁側面形成部を形成するために、上記隔壁形成用レジスト膜の上記第1ベーク工程で露光された領域のθ側の端部から上記第1ベーク工程で露光されていない領域側の、少なくとも最終的に得られる隔壁のテーパー角度がθとなる領域をパターン露光し、露光された上記隔壁形成用レジスト膜を上記第1ベーク工程よりも上記架橋成分の架橋が進み難い条件で加熱処理する第2ベーク工程と、上記第2ベーク工程後に、上記隔壁形成用レジスト膜を現像する現像工程とを有することを特徴とする有機EL素子用基板の製造方法を提供する。
【0014】
本発明によれば、第1ベーク工程では、露光後に架橋成分の架橋が進み易い条件で加熱処理を行うことでθ<θ<180°となるθ側隔壁側面形成部を形成し、第2ベーク工程では、露光後に第1ベーク工程よりも架橋成分の架橋が進み難い条件で加熱処理を行うことで0°<θ<90°となるθ側隔壁側面形成部を形成することにより、隔壁の横断面における両側面の上底面に対するテーパー角度が0°<θ<90°かつθ<θ<180°となるように隔壁を形成することができる。したがって、隔壁のθ側の側面を常に第2電極層を分断するための逆テーパー形状とし、隔壁のθ側の側面を順テーパー形状、垂直形状、またはθよりテーパー角度の大きい逆テーパー形状のいずれかの形状とすることができ、このような形状を有する隔壁は、隔壁の下底面の幅が一定の場合、隔壁の両側面が等しいテーパー角度を有する逆テーパー形状(0°<θ=θ<90°)である従来の隔壁と比較して、発光領域を狭める要因となる逆テーパー部分を隔壁のθ側で無くす(90°≦θ<180°である場合)、もしくは小さくする(θ<θ<90°の場合)ことができる。これにより、画素ピッチを変えずに発光領域を広くすることができ、画素の開口率を向上させることが可能である。
【発明の効果】
【0015】
本発明においては、画素ピッチを変えずに発光領域の面積を広くし、画素の開口率を向上させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の有機EL素子用基板の一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明の有機EL素子用基板の一例を示す模式図である。
【図3】従来の有機EL素子用基板の一例を示す概略断面図である。
【図4】本発明の有機EL素子用基板の他の例を示す概略断面図である。
【図5】本発明の有機EL素子用基板の他の例を示す概略断面図である。
【図6】本発明の有機EL素子用基板の他の例を示す模式図である。
【図7】従来の有機EL素子用基板の他の例を示す概略断面図である。
【図8】本発明の有機EL素子の一例を示す概略断面図である。
【図9】本発明の有機EL素子の他の例を示す概略断面図である。
【図10】本発明の有機EL素子用基板の製造方法の一例を示す工程図である。
【図11】本発明の有機EL素子用基板の製造方法の他の例を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の有機EL素子用基板、有機EL素子および有機EL素子用基板の製造方法について詳細に説明する。
【0018】
A.有機EL素子用基板
まず、本発明の有機EL素子用基板について説明する。本発明の有機EL素子用基板は、基板と、上記基板上に形成された第1電極層と、上記第1電極層が形成された基板上に形成され、第2電極層を複数に分断する分断領域を画定する複数の絶縁性の隔壁とを有し、上記隔壁が同一材料で形成され、上記隔壁の横断面における上底面に対する一方の側面のテーパー角度をθ、他方の側面のテーパー角度をθとしたとき、0°<θ<90°かつθ<θ<180°であることを特徴とするものである。
【0019】
本発明の有機EL素子用基板について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の有機EL素子用基板の一例を示す概略断面図である。図1に例示する有機EL素子用基板1は、基板2と、基板2上に形成された第1電極層3と、第1電極層3上に形成された絶縁層4と、絶縁層4上に形成され、第2電極層を複数に分断する分断領域10を画定する複数の絶縁性の隔壁5とを有している。
隔壁5の上底面に対する一方の側面のテーパー角度θおよび他方の側面のテーパー角度θは、0°<θ<90°かつθ<θ<180°であるため、隔壁5のθ側の側面は常に逆テーパー形状となっており、隔壁5のθ側の側面は順テーパー形状、垂直形状、またはθ側の側面よりテーパー角度の大きい逆テーパー形状のいずれかの形状となっている。図1においては、隔壁5のθ側の側面が垂直形状である例を示している。
なお、隔壁5は複数の異なる部材を組み合わせて形成されたものではなく、同一材料から形成された単一の部材である。また、画素ピッチpは、分断領域10および発光領域11の幅によって決定され、画素ピッチpが一定の場合、発光領域11の幅が大きくなるほど、画素の開口率が高くなる。
図1に示す例においては、図2に例示するように、第1電極層3のストライプパターンに、隔壁5のストライプパターンが直交するように、隔壁5が形成されている。なお、図1は図2のA−A線断面図である。
【0020】
図3は、従来の有機EL素子用基板の一例を示す概略断面図である。図3に示される有機EL素子用基板1においては、隔壁5の上底面に対する一方の側面のテーパー角度θおよび他方の側面のテーパー角度θは、0°<θ<90°かつθ=θとなっており、隔壁5の両側面が同一角度を有する逆テーパー形状となっている。このため、図1に例示した本発明の有機EL素子用基板1と比べて、画素ピッチpに対する分断領域10の幅が広がり、発光領域11の幅が狭くなってしまう。
【0021】
本発明によれば、隔壁の横断面における両側面の上底面に対するテーパー角度が0°<θ<90°かつθ<θ<180°であるため、隔壁のθ側の側面を常に第2電極層を分断するための逆テーパー形状とし、隔壁のθ側の側面を順テーパー形状、垂直形状、またはθよりテーパー角度の大きい逆テーパー形状のいずれかの形状とすることができる。このような形状を有する隔壁は、隔壁の下底面の幅が一定の場合、隔壁の両側面が等しいテーパー角度を有する逆テーパー形状(0°<θ=θ<90°)である従来の隔壁と比較して、発光領域を狭める要因となる逆テーパー部分を隔壁のθ側で無くす(90°≦θ<180°である場合)、もしくは小さくする(θ<θ<90°の場合)ことができる。これにより、画素ピッチを変えずに発光領域を広くすることができ、画素の開口率を向上させることが可能である。
【0022】
なお、「分断領域」とは、第2電極層を複数に分断する領域であって、発光に寄与しない領域をいう。この分断領域は、隔壁が設けられている領域であり、隔壁により画定される。また、「発光領域」とは、発光に寄与する領域をいう。この発光領域は、隣接する隔壁間に設けられている領域であり、発光領域の両端には隔壁が形成される。
【0023】
以下、本発明の有機EL素子用基板における各構成について説明する。
【0024】
1.隔壁
まず、本発明に用いられる隔壁について説明する。本発明に用いられる隔壁は、第1電極層が形成された基板上に複数形成され、第2電極層を複数に分断する分断領域を画定するものである。隔壁は同一材料で形成され、隔壁の横断面における上底面に対する一方の側面のテーパー角度をθ、他方の側面のテーパー角度をθとしたとき、0°<θ<90°かつθ<θ<180°となっている。
【0025】
隔壁の横断面における上底面に対する一方の側面のテーパー角度θは、0°<θ<90°となっていればよいが、中でも、20°<θ<80°の範囲内であることが好ましく、30°<θ<70°の範囲内であることがより好ましい。テーパー角度θを上記範囲内とすることで、θ側の側面に第2電極層を分断し易い逆テーパー形状を形成することができるからである。
また、隔壁の横断面における上底面に対する他方の側面のテーパー角度θは、θ<θ<180°となっていればよいが、中でも、θ<θ<110°の範囲内であることが好ましく、θ<θ<90°の範囲内であることがより好ましい。テーパー角度θを上記範囲内とすることで、θ側の側面に垂直に近い逆テーパー形状、垂直形状または順テーパー形状を形成し、隔壁の片側の側面のみを鋭角な逆テーパー形状とすることができるからである。したがって、発光領域を狭めてしまう鋭角な逆テーパー部分を隔壁の一方の側面から無くすことができ、発光領域を広くすることが可能である。
【0026】
また、上記隔壁は、隔壁のθ側の側面に対して、隔壁の内側に屈曲する屈曲部を有していてもよい。逆テーパー形状であるθ側の側面に所定の屈曲角度を有する屈曲部を形成することで、隔壁の横断面における下底面の幅を広くし、隔壁と基板との密着性を高めることができる。例えば、図4に示す有機EL素子用基板1においては、隔壁5が屈曲部5′と逆テーパー形成部5″とからなり、屈曲角度θの屈曲部5′を有していることから、逆テーパー形成部5″のみの下底面の幅と比べて、隔壁5の下底面の幅を屈曲部5′の底面の幅の分だけ広くすることができる。これにより、第1電極層3および絶縁層4が形成された基板2と隔壁5との密着性を向上させることが可能となる。なお、屈曲部5′および逆テーパー形成部5″は、同一材料から形成されている。
屈曲角度θは、図4に例示するように、隔壁5における逆テーパー形成部5″のθ側の側面に対して、逆テーパー形成部5″の外側に屈曲して迫り出した角度をいう。上記屈曲部は、屈曲角度をθとしたとき、0°<θ≦50°となるように形成されることが好ましく、0°<θ≦30°となるように形成されることがより好ましい。
【0027】
隔壁の下底面の幅としては、隔壁と基板との密着性が十分に得られる幅であれば、特に限定されるものではなく、通常、隔壁の高さに応じて設定される。隔壁の下底面の幅の高さに対する比率としては、1〜10の範囲内であることが好ましく、1〜5の範囲内であることがより好ましい。
また、隔壁の上底面の幅としては、第2電極層を分断することができる幅であれば、特に限定されるものではなく、目的とする有機EL素子に応じて適宜選択される。具体的には、1μm〜60μmの範囲内であることが好ましく、1μm〜30μmの範囲内であることがより好ましい。
【0028】
隔壁の高さとしては、通常、隔壁の絶縁層側の表面から絶縁層と反対側の表面までの高さが、発光領域の中心部における基板表面から第2電極層表面までの高さよりも高くなるように設定される。具体的には、0.5μm〜10μmの範囲内であることが好ましい。隔壁の高さが高すぎると、例えば、有機EL層を構成する有機層を印刷法で形成する場合に、発光領域に有機EL層形成用塗工液を十分に充填することができないおそれがあり、一方、隔壁の高さが低すぎると、第2電極層を分断できなくなるおそれがあるからである。
【0029】
隔壁の形成位置としては、有機EL素子の駆動方式や表示方式等により適宜選択される。例えば、パッシブ型の有機EL素子の場合、通常、第1電極層がストライプパターンに形成されることから、この第1電極層のストライプパターンに直交するように、隔壁もストライプパターンに形成される。また例えば、エリアカラーの有機EL素子の場合であって、かつ、第1電極層が、取り出し電極等が形成されている領域を除いて基板上にほぼ全面に形成されており、隔壁によって発光領域を所望のパターンに区画する場合、隔壁は所望のパターン、例えば、絵柄、文字のパターンに形成される。
【0030】
隔壁により画定される分断領域の幅は、特に限定されるものではないが、200μm以下であることが好ましい。分断領域の幅が広すぎると、発光領域が相対的に狭くなるからである。
【0031】
一方、隣接する隔壁間に設けられる発光領域の幅としては、目的とする有機EL素子の画素の大きさ等に応じて適宜選択されるものであるが、通常、パッシブ駆動型パネルの場合は、10μm〜20mmの範囲内である。固定パターンの場合は、限定されない。
【0032】
本発明においては、隔壁は同一材料で形成されているものである。隔壁の形状が異なる部分ごとに異なる材料を用いて隔壁を形成するのではなく、同一材料を用いて1つの隔壁を形成することにより、隔壁の形成材料の調製および塗布をそれぞれ一度に行うことができ、隔壁の形成工程を簡易化することができる。なお、隔壁を形成する材料および形成方法については、後述の「C.有機EL素子用基板の製造方法」の項に記載するので、ここでの説明は省略する。
【0033】
本発明においては、隔壁の各々が所定間隔をおいて平行に設けられた複数の小隔壁から構成されていてもよい。特に、有機EL層を構成する有機層を印刷法により形成する場合には、このように小隔壁を複数設けることが好ましい。隔壁の側面にインクが付着し、隔壁周辺で有機層の厚みが厚くなっても、第2電極層を分断することができるからである。
隔壁が2個の小隔壁から構成されている場合は、図5に例示するように、小隔壁5aおよび5bの発光領域11側の側面のテーパー角度がθ、小隔壁5aおよび5bの発光領域11とは反対の側の側面のテーパー角度がθとなるように隔壁5を形成することが好ましい。このような配置とすることにより、発光領域11側で小隔壁5aおよび5bの逆テーパー部分を無くす(90°≦θ<180°である場合)、もしくは、発光領域11側で小隔壁5aおよび5bの逆テーパー部分をテーパー角度がθのときよりも小さくする(θ<θ<90°である場合)ことができるため、画素ピッチpに対して発光領域11の幅を広くすることができ、画素の開口率を向上させることができる。
なお、図5に示す例においては、θ=90°であり、図6に例示するように、第1電極層3のストライプパターンに、隔壁5のストライプパターンが直交するように、隔壁5が形成されている。なお、図5は図6のB−B線断面図である。
【0034】
一方、図7に例示するように、隔壁5を構成する小隔壁5aおよび5bの両側面が同一角度の逆テーパー形状(0°<θ=θ<90°)となっている従来の場合、小隔壁5aおよび5bの逆テーパー部分が発光領域11側にもあるため、図5に例示した本発明の有機EL素子用基板1と比較して、画素ピッチpに対して発光領域11の幅が狭くなり、画素の開口率が低下してしまう。
【0035】
小隔壁間の間隔は、第2電極層を確実に分断することが可能な間隔であればよいが、中でも、1μm〜60μmの範囲内であることが好ましく、1μm〜30μmの範囲内であることがより好ましく、1μm〜10μmの範囲内であることがさらに好ましい。小隔壁間の間隔が広すぎると、例えば、有機EL層を構成する有機層を印刷法によって形成する場合、有機層形成用塗工液が小隔壁間に入り込み易くなり、第2電極層を分断することが困難となるおそれがあるからである。一方、小隔壁間の間隔が狭すぎるものは形成が困難であったり、また小隔壁間の間隔が狭すぎると、有機層が隣接する小隔壁の頂部間で連なって成膜されるおそれがあったりするからである。
なお、「小隔壁間の間隔」とは、隔壁を構成する複数の小隔壁において、隣接する小隔壁の向かい合う上底面の端部から上底面の端部までの距離をいい、光学顕微鏡、レーザ顕微鏡、走査型白色干渉計により測定することができる。
【0036】
本発明においては、形成された隔壁の側面の形状を走査型電子顕微鏡(SEM)等により確認することができる。
【0037】
2.第1電極層
次に、本発明に用いられる第1電極層について説明する。本発明に用いられる第1電極層は、陽極であっても陰極であってもよいが、通常は陽極として形成される。
【0038】
第1電極層は透明性を有していても有していなくてもよい。第1電極層の透明性は、光の取り出し面等によって適宜選択される。例えば、第1電極層側から光を取り出す場合は、第1電極層は透明または半透明である必要がある。
【0039】
陽極としては、正孔が注入し易いように仕事関数の大きい導電性材料を用いることが好ましく、具体的には、ITO、酸化インジウム、金のような仕事関数の大きい金属、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリアルキルチオフェン誘導体、ポリシラン誘導体のような導電性高分子等を挙げることができる。
【0040】
第1電極層は抵抗が小さいことが好ましく、一般には金属材料が用いられるが、有機化合物または無機化合物を用いてもよい。
【0041】
第1電極層は、基板上にパターン状に形成されていてもよく、取り出し電極等が形成されている領域を除いて基板上にほぼ全面に形成されていてもよい。通常、第1電極層は基板上にパターン状に形成される。第1電極層が、取り出し電極等が形成されている領域を除いて基板上にほぼ全面に形成されている場合には、隔壁によって発光領域を所望のパターンに区画することができる。
【0042】
第1電極層の成膜方法としては、一般的な電極の成膜方法を用いることができ、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等のPVD法や、CVD法などを挙げることができる。また、第1電極層のパターニング方法としては、所望のパターンに精度よく形成することができる方法であれば、特に限定されるものではなく、具体的にはフォトリソグラフィー法等を挙げることができる。
【0043】
3.基板
次に、本発明に用いられる基板について説明する。本発明に用いられる基板は、上述の隔壁、第1電極層などを支持するものであり、所定の強度を有するものであれば、特に限定されない。本発明においては、第1電極層が所定の強度を有する場合には、第1電極層が基板を兼ねるものであってもよいが、通常は所定の強度を有する基板上に第1電極層が形成される。
【0044】
基板としては、上記の隔壁や第1電極層等が形成可能であれば、特に限定されるものではないが、例えば、光の取り出し面により光透過性が必要か否かが適宜決定される。一般的には、基板側を光の取り出し面とすることが好ましいことから、基板は透明な材料で形成されることが好ましい。
【0045】
このような基板の形成材料としては、例えば、ソーダ石灰ガラス、アルカリガラス、鉛アルカリガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミノケイ酸ガラス、シリカガラス等のガラス板、またはフィルム状に成形が可能な樹脂基板等を用いることができる。この樹脂基板に用いる樹脂としては、耐溶媒性および耐熱性の比較的高い高分子材料であることが好ましい。具体的には、フッ素系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエステル、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルサルフォン、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、液晶性ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリミクロイキシレンジメチレンテレフタレート、ポリオキシメチレン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアクリレート、アクリロニトリル−スチレン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、シリコーン樹脂、非晶質ポリオレフィン等が挙げられる。また、上記の他にも所定の条件を満たす高分子材料であれば使用可能であり、2種類以上の共重合体を用いることもできる。さらに必要に応じて水分、酸素等のガスを遮断するガスバリア性を有する基板を用いてもよい。
【0046】
4.絶縁層
本発明においては、第1電極層と隔壁との間に絶縁層が形成されていることが好ましい。本発明の有機EL素子用基板を用いて有機EL素子を形成した場合に、第1電極層と第2電極層とが接触してショートすることを防ぐことができるからである。この絶縁層は、第1電極層の端部を覆うように形成されていることが好ましい。第1電極層の端部では有機EL層の厚みが薄くなるため、絶縁層を形成することでショートし難くすることができる。また隣り合う発光領域が電気的に接続されることを防ぐことができるからである。絶縁層が形成された部分は、発光に寄与しない領域とすることができる。
【0047】
絶縁層の形成材料としては、感光性ポリイミド樹脂、アクリル系樹脂等の光硬化型樹脂、または熱硬化型樹脂、および無機材料等を挙げることができる。
【0048】
絶縁層の形成方法としては、フォトリソグラフィー法、印刷法等の一般的な方法を用いることができる。
【0049】
B.有機EL素子
次に、本発明の有機EL素子について説明する。本発明の有機EL素子は、上述した有機EL素子用基板と、上記有機EL素子用基板の隔壁間の第1電極層上に形成され、発光層を含む有機EL層と、上記有機EL層上に形成され、上記隔壁により分断されている第2電極層とを有し、上記隔壁を挟んで隣接する上記第2電極層が互いに電気的に絶縁されていることを特徴とするものである。
【0050】
本発明の有機EL素子について、図面を参照しながら説明する。図8は、本発明の有機EL素子の一例を示す概略断面図である。図8に例示する有機EL素子20は、基板2上に第1電極層3が形成され、第1電極層3上に絶縁層4が形成され、絶縁層4上に、第2電極層7を複数に分断する分断領域10を画定する複数の絶縁性の隔壁5が形成された有機EL素子用基板を有するものであり、さらに、隔壁5間の第1電極層3上に形成された有機EL層6と、有機EL層6上に形成され、隔壁5により分断されている第2電極層7とを有している。
隔壁5の横断面における上底面に対する一方の側面のテーパー角度θおよび他方の側面のテーパー角度θは、0°<θ<90°かつθ<θ<180°であるため、隔壁5のθ側の側面は逆テーパー形状となっており、隔壁5のθ側の側面はθよりテーパー角度が大きい逆テーパー形状、垂直形状、もしくは順テーパー形状のいずれかの形状となっている。図8においては、隔壁5のθ側の側面が垂直形状である例を示している。なお、隔壁5は複数の異なる部材を組み合わせたものではなく、同一材料から形成されている。また、画素ピッチpは、分断領域10および発光領域11の幅によって決定され、画素ピッチpが一定の場合、発光領域11の幅が大きくなるほど、画素の開口率が高くなる。
また、隔壁5を挟んで隣接する第2電極層7は、隔壁5のθ側の側面の逆テーパー形状により、互いに電気的に絶縁されている。
【0051】
本発明によれば、上述した有機EL素子用基板を用いているため、隔壁の一方の側面を常に第2電極層を分断するための逆テーパー形状とし、隔壁の他方の側面を順テーパー形状、垂直形状、または上記一方の側面よりテーパー角度の大きい逆テーパー形状のいずれかの形状とすることができる。これらの形状を有する隔壁は、隔壁の下底面の幅が一定の場合、隔壁の両側面が等しいテーパー角度を有する逆テーパー形状である従来の隔壁と比較して、発光領域を狭める要因となる逆テーパー部分を隔壁の片側で無くす(90°≦θ<180°である場合)、もしくは小さくする(θ<θ<90°の場合)ことができる。これにより、画素ピッチを変えずに発光領域を広くすることができ、画素の開口率を向上させることが可能である。
【0052】
なお、基板、第1電極層、絶縁層、隔壁、分断領域、発光領域については、上記「A.有機EL素子用基板」の項に詳しく記載したので、ここでの説明は省略する。以下、本発明の有機EL素子における他の構成について説明する。
【0053】
1.有機EL層
まず、本発明に用いられる有機EL層について説明する。本発明に用いられる有機EL層は、上記有機EL素子用基板の隔壁間の第1電極層上に形成され、発光層を含むものである。
【0054】
有機EL層は、少なくとも発光層を含む1層もしくは複数層の有機層を有するものである。すなわち、有機EL層とは、少なくとも発光層を含む層であり、その層構成が有機層1層以上の層をいう。通常、塗布によるウェットプロセスで有機EL層を形成する場合は、溶媒との関係で多数の層を積層することが困難であることから、1層もしくは2層の有機層で構成される場合が多いが、有機材料を工夫したり、真空蒸着法を組み合わせたりすることにより、さらに多数層とすることも可能である。
【0055】
発光層以外に有機EL層を構成する層としては、正孔注入層、電子注入層、正孔輸送層、電子輸送層等を挙げることができる。正孔輸送層は、正孔注入層に正孔輸送の機能を付与することにより、正孔注入層と一体化される場合がある。また、電子輸送層は、電子注入層に電子輸送の機能を付与することにより、電子注入層と一体化される場合がある。さらに、有機EL層を構成する層としては、キャリアブロック層のような正孔もしくは電子の突き抜けを防止し、再結合効率を高めるための層や、スパッタ保護層等を挙げることができる。
以下、本発明に用いられる有機EL層について、構成ごとに説明する。
【0056】
(1)発光層
本発明における発光層に用いられる材料としては、例えば、色素系材料、金属錯体系材料、高分子系材料等の発光材料を挙げることができる。
【0057】
色素系材料としては、シクロペンタジエン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、トリフェニルアミン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ピラゾロキノリン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、シロール誘導体、チオフェン環化合物、ピリジン環化合物、ペリノン誘導体、ペリレン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、トリフマニルアミン誘導体、オキサジアゾールダイマー、ピラゾリンダイマー等を挙げることができる。
【0058】
また、金属錯体系材料としては、アルミキノリノール錯体、ベンゾキノリノールベリリウム錯体、ベンゾオキサゾール亜鉛錯体、ベンゾチアゾール亜鉛錯体、アゾメチル亜鉛錯体、ポルフィリン亜鉛錯体、ユーロビウム錯体等、中心金属にAl、Zn、Be等、または、Tb、Eu、Dy等の希土類金属を有し、配位子にオキサジアゾール、チアジアゾール、フェニルピリジン、フェニルベンゾイミダゾール、キノリン構造等を有する金属錯体を挙げることができる。
【0059】
さらに、高分子系材料としては、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリアセチレン誘導体、ポリビニルカルバゾール等、ポリフルオレン誘導体、ポリキノキサリン誘導体、および、それらの共重合体等を挙げることができる。
【0060】
上記発光層中には、発光効率の向上、発光波長を変化させる等の目的でドーピング剤を添加してもよい。このようなドーピング剤としては、例えば、ペリレン誘導体、クマリン誘導体、ルブレン誘導体、キナクリドン誘導体、スクアリウム誘導体、ポルフィリン誘導体、スチリル系色素、テトラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、デカシクレン、フェノキサゾン、キノキサリン誘導体、カルバゾール誘導体、フルオレン誘導体を挙げることができる。
【0061】
発光層の厚みとしては、電子と正孔との再結合の場を提供して発光する機能を発現することができる厚みであれば、特に限定されるものではなく、例えば、1nm〜500nm程度とすることができる。
【0062】
本発明においては、隔壁により発光層が分断され、パターン状に形成される。この際、発光層は、赤・緑・青等の複数色の発光部を有するようにパターン状に形成されていることが好ましい。これにより、カラー表示が可能な有機EL素子とすることができる。
【0063】
(2)正孔注入層
上述したように、正孔輸送層は、正孔注入層に正孔輸送の機能を付与することにより、正孔注入層と一体化される場合がある。すなわち、正孔注入層は、正孔注入機能のみを有していてもよく、正孔注入機能および正孔輸送機能の両機能を有していてもよい。
【0064】
正孔注入層に用いられる材料としては、発光層内への正孔の注入を安定化させることができる材料であれば、特に限定されるものではなく、上記発光層の発光材料に例示した化合物の他、フェニルアミン系、スターバースト型アミン系、フタロシアニン系、酸化バナジウム、酸化モリブデン、酸化ルテニウム、酸化アルミニウム、酸化チタン等の酸化物、アモルファスカーボン、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリフェニレンビニレン誘導体等を用いることができる。具体的には、ビス(N−(1−ナフチル)−N−フェニル)ベンジジン(α−NPD)、4,4,4−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(MTDATA)、ポリ3,4エチレンジオキシチオフェン−ポリスチレンスルホン酸(PEDOT−PSS)、ポリビニルカルバゾール(PVCz)等が挙げられる。
【0065】
上記正孔注入層の厚みとしては、正孔注入機能や正孔輸送機能が十分に発揮される厚みであれば、特に限定されないが、具体的には0.5nm〜1000nmの範囲内、中でも10nm〜500nmの範囲内であることが好ましい。
【0066】
(3)電子注入層
上述したように、電子輸送層は、電子注入層に電子輸送の機能を付与することにより、電子注入層と一体化される場合がある。すなわち、電子注入層は、電子注入機能のみを有していてもよく、電子注入機能および電子輸送機能の両機能を有していてもよい。
【0067】
電子注入層に用いられる材料としては、発光層内への電子の注入を安定化させることができる材料であれば、特に限定されるものではなく、上記発光層の発光材料に例示した化合物の他、アルミリチウム合金、フッ化リチウム、ストロンチウム、酸化マグネシウム、フッ化マグネシウム、フッ化ストロンチウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、酸化アルミニウム、酸化ストロンチウム、カルシウム、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、リチウム、セシウム、フッ化セシウム等のようにアルカリ金属類、およびアルカリ金属類のハロゲン化物、アルカリ金属の有機錯体等を用いることができる。
【0068】
また、電子輸送性の有機材料にアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属をドープした金属ドープ層を形成し、これを電子注入層とすることもできる。上記電子輸送性の有機材料としては、例えば、バソキュプロイン、バソフェナントロリン、フェナントロリン誘導体等を挙げることができ、ドープする金属としては、Li、Cs、Ba、Sr等が挙げられる。
【0069】
上記電子注入層の厚みとしては、電子注入機能や電子輸送機能が十分に発揮される厚みであれば、特に限定されない。
【0070】
(4)電子輸送層
電子輸送層に用いられる材料としては、陰極から注入された電子を発光層内へ輸送することが可能な材料であれば、特に限定されるものではなく、例えば、バソキュプロイン、バソフェナントロリン、フェナントロリン誘導体、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム錯体(Alq)の誘導体等を挙げることができる。
【0071】
上記電子輸送層の厚みとしては、電子輸送機能が十分に発揮される厚みであれば、特に限定されない。
【0072】
(5)形成方法
上記有機EL層を構成する各層の形成方法としては、例えば、真空蒸着法、印刷法、インクジェット法、ディップコート法、ロールコート法、ブレードコート法、スピンコート法、バーコート法、ワイヤーバーコート法、キャスト法、LB法等を挙げることができる。
【0073】
有機EL層を構成する各層のうち、少なくとも1層を印刷法により形成する場合には、本発明の有機EL素子が、図5に例示するような、複数の小隔壁から構成された隔壁を有する有機EL素子用基板を備えていることが好ましい。隔壁が複数の小隔壁により構成されているため、例えば、発光層形成用塗工液が小隔壁の発光領域側の側面に付着して隔壁の周辺で発光層の厚みが厚くなっても、確実に第2電極層を分断することができるからである。図9に例示する有機EL素子20は、隔壁5が小隔壁5aおよび5bからなる有機EL素子用基板と、この有機EL素子用基板上に印刷法により形成された発光層8と、発光層8上に形成された第2電極層7とを有しており、小隔壁5aおよび5bの発光領域11側の側面のテーパー角度がθ、小隔壁5aおよび5bの発光領域11とは反対の側の側面のテーパー角度がθとなるように隔壁5が形成されている。
このような配置であることにより、第2電極層が小隔壁5aおよび5b間で分断されるとともに、隔壁5(小隔壁5aおよび5b)の下底面の幅を一定とすれば、発光領域11側で隔壁5(小隔壁5aおよび5b)の逆テーパー部分を無くす(90°≦θ<180°の場合)、もしくは、発光領域11側で隔壁5(小隔壁5aおよび5b)の逆テーパー部分をテーパー角度がθのときよりも小さくする(θ<θ<90°の場合)ことができる。このため、隔壁5(小隔壁5aおよび5b)の両側面が同一テーパー角度の逆テーパー形状(0°<θ=θ<90°)である従来の隔壁を有する有機EL素子と比べて、画素ピッチpに対して発光領域11の幅を広くし、画素の開口率を向上させることができる。なお、図9に示す例においては、θ=90°となっている。
【0074】
有機EL層の形成位置としては、有機EL層が少なくとも発光領域に形成されていればよい。例えば、図8に例示するように、有機EL層6は隔壁5上に形成されていてもよく、図示しないが、有機EL層6は隔壁5上に形成されていなくてもよい。また、有機EL層6が隔壁5上に形成されている場合には、図8に例示するように、隔壁5上の全面に形成されていてもよく、図示しないが、隔壁5上の一部に形成されていてもよい。
【0075】
2.第2電極層
次に、本発明に用いられる第2電極層について説明する。本発明に用いられる第2電極層は、陽極であっても陰極であってもよいが、通常は陰極として形成される。
【0076】
また、第2電極層は、透明性を有していても有していなくてもよく、光の取り出し面等によって適宜選択される。例えば、第2電極層側から光を取り出す場合は、第2電極層は透明または半透明である必要がある。
【0077】
陰極としては、電子が注入しやすいように仕事関数の小さい導電性材料を用いることが好ましく、例えば、MgAg等のマグネシウム合金、AlLi、AlCa、AlMg等のアルミニウム合金、Li、Caをはじめとするアルカリ金属類およびアルカリ土類金属類、または、アルカリ金属類およびアルカリ土類金属類の合金などが挙げられる。
【0078】
また、第2電極層は抵抗が小さいことが好ましく、一般には金属材料が用いられるが、有機化合物または無機化合物を用いてもよい。
【0079】
本発明においては、上記有機EL層上に、金属材料を成膜して第2電極層を形成することが好ましい。第2電極層の材料としては抵抗が低いものであればよく、金属材料が最も適しているからである。
【0080】
金属材料の成膜方法としては、一般的な電極の形成方法を用いることができ、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の一般的な蒸着法や、金属ペーストを塗布する方法等が挙げられる。中でも、真空蒸着法、金属ペーストを塗布する方法が好ましい。真空蒸着法は、ドライプロセスで有機EL層へのダメージが少ない方法であり、積層に適している。また、金属ペーストを塗布する方法はウェットプロセスであり、ウェットプロセスはドライプロセスよりも大面積の対応に適している。ウェットプロセスであっても、有機EL層に影響を与えない溶媒が配合された金属ペーストは使用可能である。すなわち、有機EL層の耐溶剤性などによって有機EL層に影響を与えないように工夫することで、ウェットプロセスも適用可能となる。
【0081】
また、隔壁を挟んで隣接する第2電極層は互いに電気的に絶縁されている。なお、隔壁を挟んで隣接する第2電極層が互いに電気的に絶縁されていることは、テスターによる導通の有無や、電圧印加による発光の有無などにより確認することができる。
【0082】
C.有機EL素子用基板の製造方法
次に、本発明の有機EL素子用基板の製造方法について説明する。本発明の有機EL素子用基板の製造方法は、基板と、上記基板上に形成された第1電極層と、上記第1電極層が形成された基板上に、同一材料で形成され、第2電極層を複数に分断する分断領域を画定する複数の絶縁性の隔壁とを有する有機EL素子用基板の製造方法であって、上記第1電極層が形成された基板上に、ネガ型感光性樹脂と、架橋成分と、活性放射線を吸収する化合物とを含有する隔壁形成用レジスト溶液を塗布して、隔壁形成用レジスト膜を形成する隔壁形成用レジスト膜形成工程と、上記隔壁の横断面における上底面に対する一方の側面のテーパー角度をθ、他方の側面のテーパー角度をθとしたとき、θ<θ<180°となるθ側隔壁側面形成部を形成するために、上記隔壁形成用レジスト膜をパターン露光し、露光された上記隔壁形成用レジスト膜を加熱処理する第1ベーク工程と、上記第1ベーク工程後に、さらに0°<θ<90°となるθ側隔壁側面形成部を形成するために、上記隔壁形成用レジスト膜の上記第1ベーク工程で露光された領域のθ側の端部から上記第1ベーク工程で露光されていない領域側の、少なくとも最終的に得られる隔壁のテーパー角度がθとなる領域をパターン露光し、露光された上記隔壁形成用レジスト膜を上記第1ベーク工程よりも上記架橋成分の架橋が進み難い条件で加熱処理する第2ベーク工程と、上記第2ベーク工程後に、上記隔壁形成用レジスト膜を現像する現像工程とを有することを特徴とするものである。
【0083】
本発明の有機EL素子用基板の製造方法について、図面を参照しながら説明する。図10は、本発明の有機EL素子用基板の製造方法の一例を示す工程図である。
まず、基板2上に第1電極層3を形成し、第1電極層3上に絶縁層4を形成する。次に、第1電極層3および絶縁層4が形成された基板2上に、ネガ型感光性樹脂と、架橋成分と、活性放射線を吸収する化合物とを含有する隔壁形成用レジスト溶液を塗布して加熱処理を行い、隔壁形成用レジスト膜12を形成する(図10(a)、隔壁形成用レジスト膜形成工程)。
次に、隔壁の横断面における上底面に対する一方の側面のテーパー角度をθ、他方の側面のテーパー角度をθとしたとき、θ<θ<180°となるθ側隔壁側面形成部15を形成するために、フォトマスク13を用いて、紫外線14により隔壁形成用レジスト膜12をパターン状に露光し、この露光された隔壁形成用レジスト膜12を加熱処理する(図10(b)、第1ベーク工程)。
続いて、さらに0°<θ<90°となるθ側隔壁側面形成部16を形成するために、フォトマスク13を用いて、紫外線14により隔壁形成用レジスト膜12の第1ベーク工程で露光された領域のθ側の端部から第1ベーク工程で露光されていない領域側の、少なくとも最終的に得られる隔壁のテーパー角度がθとなる領域をパターン状に露光し、この露光された隔壁形成用レジスト膜12を第1ベーク工程よりも架橋成分の架橋が進み難い条件、例えば、低温かつ短時間で加熱処理する(図10(c)、第2ベーク工程)。
次いで、加熱処理された隔壁形成用レジスト膜12をアルカリ現像液により現像して加熱処理することで隔壁5を形成し、有機EL素子用基板1を得る(図10(d)、現像工程)。
隔壁5の上底面に対する一方の側面のテーパー角度θおよび他方の側面のテーパー角度θは、0°<θ<90°かつθ<θ<180°となるため、隔壁5のθ側の側面は常に逆テーパー形状となっており、隔壁5のθ側の側面は順テーパー形状、垂直形状、またはθ側の側面よりテーパー角度の大きい逆テーパー形状のいずれかの形状となっている。図10(d)においては、隔壁5のθ側の側面が垂直形状である例を示している。
なお、隔壁5は複数の異なる部材を組み合わせて形成されたものではなく、同一材料から形成された単一の部材である。また、画素ピッチpは、分断領域10および発光領域11の幅によって決定され、画素ピッチpが一定の場合、発光領域11の幅が大きくなるほど、画素の開口率が高くなる。
図10(d)に示す例においては、図2に例示するように、第1電極層3のストライプパターンに、隔壁5のストライプパターンが直交するように、隔壁5が形成されている。なお、図10(d)は図2のA−A線断面図である。
【0084】
本発明によれば、第1ベーク工程では、露光後に架橋成分の架橋が進み易い条件で加熱処理を行うことでθ<θ<180°となるθ側隔壁側面形成部を形成し、第2ベーク工程では、露光後に第1ベーク工程よりも架橋成分の架橋が進み難い条件で加熱処理を行うことで0°<θ<90°となるθ側隔壁側面形成部を形成する。第1ベーク工程においては、露光およびその後の加熱処理による隔壁形成用レジスト膜の全体的な硬化度が高いため、θ側隔壁側面形成部の底面側が削られていない形状になり易いのに対して、第2ベーク工程においては、露光およびその後の加熱処理による隔壁形成用レジスト膜の全体的な硬化度が低いため、θ側隔壁側面形成部の底面側が削られた形状になり易い。このため、第1ベーク工程では、テーパー角度の大きい側面を形成し、第2ベーク工程では、第1ベーク工程よりもテーパー角度の小さい側面を形成することができ、隔壁の横断面における両側面の上底面に対するテーパー角度が0°<θ<90°かつθ<θ<180°となるように隔壁を形成することができる。したがって、隔壁のθ側の側面を常に第2電極層を分断するための逆テーパー形状とし、隔壁のθ側の側面を順テーパー形状、垂直形状、またはθよりテーパー角度の大きい逆テーパー形状のいずれかの形状とすることができ、このような形状を有する隔壁は、隔壁の下底面の幅が一定の場合、隔壁の両側面が等しいテーパー角度を有する逆テーパー形状(0°<θ=θ<90°)である従来の隔壁と比較して、発光領域を狭める要因となる逆テーパー部分を隔壁のθ側で無くす(90°≦θ<180°である場合)、もしくは小さくする(θ<θ<90°の場合)ことができる。これにより、画素ピッチを変えずに発光領域を広くすることができ、画素の開口率を向上させることが可能である。
【0085】
以下、本発明の有機EL素子用基板の製造方法における各工程について説明する。
【0086】
1.隔壁形成用レジスト膜形成工程
まず、本発明における隔壁形成用レジスト膜形成工程について説明する。本発明における隔壁形成用レジスト膜形成工程は、第1電極層が形成された基板上に、ネガ型感光性樹脂と、架橋成分と、活性放射線を吸収する化合物とを含有する隔壁形成用レジスト溶液を塗布して、隔壁形成用レジスト膜を形成する工程である。
【0087】
本発明に用いられる隔壁形成用レジスト溶液は、少なくともネガ型感光性樹脂と、架橋成分と、活性放射線を吸収する化合物とを混合したレジスト材料を溶媒に溶解または分散させたものである。ここでの架橋成分とは、露光または露光後の加熱処理(PEB:Post Exposure Bake)によりネガ型感光性樹脂を架橋する成分である。架橋成分の作用によって、露光部におけるネガ型感光性樹脂の分子量が大きくなり、現像時に用いられるアルカリ現像液に対する溶解速度が極端に低下するため、アルカリ現像液による現像が可能となる。また、露光に用いられる活性放射線を吸収する化合物を含有させることで、露光時に、隔壁形成用レジスト膜の深さ方向に行く光を吸収するため、断面が逆テーパー状の隔壁を形成することができる。さらに、基板や基板上に形成されたITO膜などにより露光した光が反射することによっても、隔壁の形状が影響を受けるので、露光した光の反射防止のためにも、活性放射線を吸収する化合物が必要となる。特に、架橋成分として後述する光酸発生剤と酸架橋剤との組み合わせを用いたレジスト材料は、架橋型の化学増幅レジストであって、光の照射により生成した酸が隔壁形成用レジスト膜内で拡散し、光が当たらない領域にまで架橋反応を起こすため、活性放射線を吸収する化合物を存在させることにより、隔壁の形状を制御することが重要となる。
以下、本発明に用いられる隔壁形成用レジスト溶液における各構成について説明する。
【0088】
(1)ネガ型感光性樹脂
ネガ型感光性樹脂としては、例えば、感光性ポリイミド樹脂、アクリル系樹脂、感光性フェノール樹脂、感光性エポキシ樹脂、ノボラック樹脂、メラミン樹脂等を挙げることができる。
【0089】
(2)架橋成分
架橋成分としては、活性放射線の照射によってラジカルを発生する光重合開始剤(例えば、ベンゾフェノン誘導体、ベンゾイン誘導体、ベンゾインエーテル誘導体など)と、該ラジカルによって重合する不飽和炭化水素基を有する化合物(例えば、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなど)と、必要に応じて、光反応の効率を高めるための増感剤との組み合わせ、および、活性放射線の照射によって酸を発生する化合物(以下、「光酸発生剤」と呼ぶ。)と、光によって発生した酸を触媒としてネガ型感光性樹脂を架橋する化合物(感酸物質:以下、「酸架橋剤」と呼ぶ。)との組み合わせを挙げることができる。中でも、ネガ型感光性樹脂との相溶性に優れ、かつネガ型感光性樹脂と組み合わせることにより感度が良好な架橋型化学増幅レジストを提供することができる点から、光酸発生剤と酸架橋剤との組み合わせからなる架橋成分が好ましい。
【0090】
(光酸発生剤)
光酸発生剤としては、活性放射線によって露光されると、ブレンステッド酸またはルイス酸を発生する物質であれば特に制限はなく、オニウム塩、ハロゲン化有機化合物、キノンジアジド化合物、スルホン化合物、有機酸エステル化合物、有機酸アミド化合物、有機酸イミド化合物など公知のものを用いることができる。これらの光酸発生剤は、パターンを露光する光源の波長に応じて、分光感度の面から選択することが好ましい。
【0091】
オニウム塩としては、ジアゾニウム塩、アンモニウム塩、ジフェニルヨードニウムトリフレートなどのヨードニウム塩、トリフェニルスルホニウムトリフレートなどのスルホニウム塩、ホスホニウム塩、アルソニウム塩、オキソニウム塩などが挙げられる。
【0092】
ハロゲン化有機化合物としては、ハロゲン含有オキサジアゾール系化合物、ハロゲン含有トリアジン系化合物、ハロゲン含有アセトフェノン系化合物、ハロゲン含有ベンゾフェノン系化合物、ハロゲン含有スルホキサイド系化合物、ハロゲン含有スルホン系化合物、ハロゲン含有チアゾール系化合物、ハロゲン含有オキサゾール系化合物、ハロゲン含有トリアゾール系化合物、ハロゲン含有2−ピロン系化合物、その他のハロゲン含有ヘテロ環状化合物、ハロゲン含有脂肪族炭化水素化合物、ハロゲン含有芳香族炭化水素化合物、スルフェニルハライド化合物などが挙げられる。
【0093】
ハロゲン化有機化合物の具体例としては、トリス(2,3−ジブロモプロピル)ホスフェート、トリス(2,3−ジブロモ−3−クロロプロピル)ホスフェート、テトラブロモクロロブタン、2−[2−(3,4−ジメトキシフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−S−トリアジン、2−[2−(4−メトキシフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−S−トリアジン、ヘキサクロロベンゼン、ヘキサブロモベンゼン、ヘキサブロモシクロドデカン、ヘキサブロモシクロドデセン、ヘキサブロモビフェニル、アリルトリブロモフェニルエーテル、テトラクロロビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA、テトラクロロビスフェノールAのビス(クロロエチル)エーテル、テトラブロモビスフェノールAのビス(ブロモエチル)エーテル、ビスフェノールAのビス(2,3−ジクロロプロピル)エーテル、ビスフェノールAのビス(2,3−ジブロモプロピル)エーテル、テトラクロロビスフェノールAのビス(2,3−ジクロロプロピル)エーテル、テトラブロモビスフェノールAのビス(2,3−ジブロモプロピル)エーテル、テトラクロロビスフェノールS、テトラブロモビスフェノールS、テトラクロロビスフェノールSのビス(クロロエチル)エーテル、テトラブロモビスフェノールSのビス(ブロモエチル)エーテル、ビスフェノールSのビス(2,3−ジクロロプロピル)エーテル、ビスフェノールSのビス(2,3−ジブロモプロピル)エーテル、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジブロモフェニル)プロパンなどのハロゲン系難燃剤;などが例示される。
【0094】
キノンジアジド化合物の具体例としては、1,2−ベンゾキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、2,1−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,1−ベンゾキノンジアジド−5−スルホン酸エステルのようなキノンジアジド誘導体のスルホン酸エステル;1,2−ベンゾキノン−2−ジアジド−4−スルホン酸クロライド、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルホン酸クロライド、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホン酸クロライド、1,2−ナフトキノン−1−ジアジド−6−スルホン酸クロライド、1,2−ベンゾキノン−1−ジアジド−5−スルホン酸クロライド等のキノンジアジド誘導体のスルホン酸クロライド;などが挙げられる。
【0095】
スルホン化合物の具体例としては、未置換、対称的もしくは非対称的に置換されたアルキル基、アルケニル基、アラルキル基、芳香族基、またはヘテロ環状基を有するスルホン化合物、ジスルホン化合物などが挙げられる。
【0096】
有機酸エステル化合物としては、カルボン酸エステル、スルホン酸エステル、リン酸エステルなどが挙げられ、有機酸アミド化合物としては、カルボン酸アミド、スルホン酸アミド、リン酸アミドなどが挙げられ、有機酸イミド化合物としては、カルボン酸イミド、スルホン酸イミド、リン酸イミドなどが挙げられる。
【0097】
このほか、シクロヘキシルメチル(2−オキソシクロヘキシル)スルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、ジシクロヘキシル(2−オキソシクロヘキシル)スルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、2−オキソシクロヘキシル(2−ノルボルニル)スルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、2−シクロヘキシルスルホニルシクロヘキサノン、ジメチル(2−オキソシクロヘキシル)スルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート、N−ヒドロキシスクシイミドトリフルオロメタンスルホナート、フェニルパラトルエンスルホナート等が挙げられる。
【0098】
光酸発生剤は、ネガ型感光性樹脂100重量部に対して、通常0.1重量部〜10重量部の範囲内、好ましくは0.3重量部〜8重量部の範囲内、より好ましくは0.5重量部〜5重量部の範囲内の割合で使用される。光酸発生剤の割合が過小または過大であると、隔壁の形状が劣化するおそれがある。
【0099】
(酸架橋剤)
酸架橋剤は、活性放射線の照射(露光)によって生じた酸の存在下で、ネガ型感光性樹脂を架橋しうる化合物(感酸物質)である。このような酸架橋剤としては、例えば、アルコキシメチル化尿素樹脂、アルコキシメチル化メラミン樹脂、アルコキシメチル化ウロン樹脂、アルコキシメチル化グリコールウリル樹脂、アルコキシメチル化アミノ樹脂などの周知の酸架橋性化合物を挙げることができる。
【0100】
この他、酸架橋剤として、アルキルエーテル化メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、アルキルエーテル化ベンゾグアナミン樹脂、ユリア樹脂、アルキルエーテル化ユリア樹脂、ウレタン−ホルムアルデヒド樹脂、レゾール型フェノールホルムアルデヒド樹脂、アルキルエーテル化レゾール型フェノールホルムアルデヒド樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0101】
これらの中でも、アルコキシメチル化メラミン樹脂が好ましく、その具体例としては、メトキシメチル化メラミン樹脂、エトキシメチル化メラミン樹脂、n−プロポキシメチル化メラミン樹脂、n−ブトキシメチル化メラミン樹脂等を挙げることができる。これらの中でも、解像度が良好である点で、ヘキサメトキシメチルメラミンなどのメトキシメチル化メラミン樹脂が特に好ましい。アルコキシメチル化メラミン樹脂の市販品としては、例えば、PL−1170、PL−1174、UFR65、CYMEL300、CYMEL303(以上、三井サイテック社製)、BX−4000、ニカラックMW−30、MX290(以上、三和ケミカル社製)を挙げることができる。
【0102】
これらの酸架橋剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。酸架橋剤は、ネガ型感光性樹脂100重量部に対して、通常0.5重量部〜60重量部の範囲内、好ましくは1重量部〜50重量部の範囲内、より好ましくは2重量部〜40重量部の範囲内の割合で使用される。酸架橋剤の使用割合が小さすぎると、架橋反応を十分進行させることが困難となり、アルカリ現像液を用いた現像後の隔壁となるレジストパターンの残膜率が低下したり、レジストパターンの膨潤や蛇行などの変形が生じ易くなったりする。酸架橋剤の使用割合が大きすぎると、解像度が低下するおそれがある。
【0103】
(光酸発生剤と酸架橋剤との割合)
隔壁の耐熱性向上の観点から、架橋成分としては、光酸発生剤と酸架橋剤との組み合わせが好ましい。光酸発生剤と酸架橋剤との重量比(光酸発生剤:酸架橋剤)は、通常1:1〜1:30、好ましくは1:2〜1:25、より好ましくは1:3〜1:20である。両者の比率が上記範囲にあることによって、高度の耐熱性を達成することができる。
【0104】
さらに、光酸発生剤と酸架橋剤との重量比(光酸発生剤:酸架橋剤)を好ましくは1:4〜1:30、より好ましくは1:5〜1:25、特に好ましくは1:6〜1:20として、光酸発生剤に対する酸架橋剤の比率の下限を高めると、隔壁の耐熱性がより一層顕著に向上する。多くの場合、両者の重量比(光酸発生剤:酸架橋剤)が1:7〜1:15の範囲で十分に高度の耐熱性を達成することができる。この場合、ネガ型感光性樹脂100重量部に対する光酸発生剤の使用割合を好ましくは1重量部〜10重量部の範囲内、より好ましくは2重量部〜8重量部の範囲内とし、かつネガ型感光性樹脂100重量部に対する酸架橋剤の使用量を好ましくは4重量部〜60重量部の範囲内、より好ましくは8重量部〜50重量部の範囲内として、それぞれの使用割合の下限を高めることが望ましい。
【0105】
(3)活性放射線を吸収する化合物
活性放射線を吸収する化合物としては、両末端にアジド基を有するビスアジド化合物が好ましい。ビスアジド化合物としては、波長200nm〜500nmの範囲内の領域で活性放射線を吸収するものが好ましい。
【0106】
ビスアジド化合物としては、例えば、4,4′−ジアジドカルコン、2,6−ビス(4′−アジドベンザル)シクロヘキサノン、2,6−ビス(4′−アジドベンザル)−4−メチルシクロヘキサノン、2,6−ビス(4′−アジドベンザル)−4−エチルシクロヘキサノン、4,4′−ジアジドスチルベン−2,2′−ジスルホン酸ナトリウム、4,4′−ジアジドジフェニルスルフィド、4,4′−ジアジドベンゾフェノン、4,4′−ジアジドジフェニル、2,7−ジアジドフルオレン、4,4′−ジアジドフェニルメタンが挙げられる。
【0107】
市販のビスアジド化合物としては、東洋合成工業社製の商品名BAC−H、BAC−M、BAC−E、DAC、DAz、ST(Na)、DazST(51)、DazBA(Na)などが挙げられる。ビスアジド化合物は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0108】
ビスアジド化合物は、ネガ型感光性樹脂100重量部に対して、通常0.1重量部〜10重量部の範囲内、好ましくは0.3重量部〜8重量部の範囲内、より好ましくは0.5重量部〜5重量部の範囲内の割合で用いられる。ビスアジド化合物の使用量が少なすぎると、隔壁側面の形状の改善効果が小さくなり、多すぎると、逆テーパー状断面の隔壁を形成することが困難になり、耐熱性も低下する。一般に、レジスト膜厚が厚い場合には、光が透過し難いので、ビスアジド化合物の使用量が比較的少なくてもよく、薄い場合には、比較的多く用いることが好ましい。
【0109】
ビスアジド化合物とその他の活性放射線を吸収する化合物とを併用してもよいが、その場合、活性放射線を吸収する化合物全量中でのビスアジド化合物の使用割合を通常50重量%超過、好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上とすることが望ましい。
【0110】
その他の活性放射線を吸収する化合物としては、アゾ染料、メチン染料、アゾメチン染料、クルクミン、キサントンなどの天然化合物、シアノビニルスチレン系化合物、1−シアノ−2−(4−ジアルキルアミノフェニル)エチレン類、p−(ハロゲン置換フェニルアゾ)−ジアルキルアミノベンゼン類、1−アルコキシ−4−(4′−N,N−ジアルキルアミノフェニルアゾ)ベンゼン類、ジアルキルアミノ化合物、1,2−ジシアノエチレン、9−シアノアントラセン、9−アントリルメチレンマロノニトリル、N−エチル−3−カルバゾリルメチレンマロノニトリル、2−(3,3−ジシアノ−2−プロペニリデン)−3−メチル−1,3−チアゾリンなどが挙げられる。
【0111】
(4)有機溶剤
本発明に用いられる隔壁形成用レジスト溶液は、上記ネガ型感光性樹脂と、上記架橋成分と、上記活性放射線を吸収する化合物とを含むレジスト材料を溶媒に溶解または分散させたものであるが、通常、溶媒として有機溶剤が用いられる。有機溶剤は、各成分を均一に溶解または分散し得るに足る量で用いられ、溶液中の固形分濃度は、通常5重量%〜50重量%の範囲内であり、好ましくは10重量%〜40重量%の範囲内である。
【0112】
本発明で使用する有機溶剤としては、例えば、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、シクロヘキシルアルコール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン類;ギ酸プロピル、ギ酸ブチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソアミル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、酪酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、エトキシプロピオン酸エチル、ピルビン酸エチル等のエステル類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類;エチルセロソルブアセテート、プロピルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテートなどのセロソルブアセテート類;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルなどのアルコールエーテル類;プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルなどのプロピレングリコール類;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルなどのジエチレングリコール類;γ−ブチロラクトンなどのラクトン類;トリクロロエチレンなどのハロゲン化炭化水素類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチルアセトアミドなどの極性有機溶剤;これらの2種以上の混合溶剤などが挙げられる。
【0113】
(5)その他の材料
本発明に用いられる隔壁形成用レジスト溶液は、上述したネガ型感光性樹脂と、架橋成分と、活性放射線を吸収する化合物とを含有するものであるが、これらの他に任意の材料を含有していてもよい。
【0114】
(界面活性剤)
本発明においては、レジスト材料の各成分の分散性向上などの目的で、界面活性剤を添加することができる。界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェノルエーテルなどのポリオキシエチレンアリールエーテル類;ポリエチレングリコールジラウレート、エチレングリコールジステアレート等のポリエチレングリコールジアルキルエステル類;エフトップ EF301、EF303、EF352(新秋田化成社製)、メガファックス F171、F172、F173、F177(大日本インキ社製)、フロラードFC430、FC431(住友スリーエム社製)、アサヒガード AG710、サーフロン S−382、SC−101、SC−102、SC−103、SC−104、SC−105、SC−106(旭硝子社製)等のフッ素界面活性剤;オルガノシロキサンポリマー KP341(信越化学工業社製);アクリル酸系またはメタクリル酸系(共)重合体ポリフローNo.75、No.95(共栄社油脂化学工業社製)が挙げられる。これらの界面活性剤の配合量は、レジスト材料の固形分100重量部当り、通常2重量部以下、好ましくは1重量部以下である。
【0115】
(含窒素塩基性化合物)
本発明においては、レジスト材料の保存安定性を改善するために、さらに含窒素塩基性化合物を添加することが好ましい。含窒素塩基性化合物としては、脂肪族第一級アミン、脂肪族第二級アミン、脂肪族第三級アミン、アミノアルコール、芳香族アミン、第四級アンモニウムヒドロキシド、脂環式アミンなどが挙げられる。
【0116】
含窒素塩基性化合物の具体例としては、ブチルアミン、ヘキシルアミン、エタノールアミン、トリエタノールアミン、2−エチルヘキシルアミン、2−エチルヘキシルオキシプロピルアミン、メトキシプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、N−メチルアニリン、N−エチルアニリン、N−プロピルアニリン、ジメチル−N−メチルアニリン、ジエチル−N−メチルアニリン、ジイソプロピル−N−ジメチルアニリン、N−メチルアミノフェノール、N−エチルアミノフェノール、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、N,N−ジメチルアミノフェノール、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノン−5−エン、などが挙げられる。
【0117】
含窒素塩基性化合物は、ネガ型感光性樹脂100重量部に対して、通常0.01重量部〜10重量部の範囲内、好ましくは0.1重量部〜8重量部の範囲内、より好ましくは0.5重量部〜5重量部の範囲内の割合で用いられる。含窒素塩基性化合物の使用割合が小さすぎると、保存安定性の改善効果が小さくなり、大きすぎると、保存安定性の改善効果が飽和すると共に、レジスト特性に悪影響を及ぼす惧れが生じる。
【0118】
(6)その他
隔壁形成用レジスト溶液を塗布する方法としては、例えば、スピンコート法、印刷法、ロールコート法、ディップコート法、インクジェット法、ディスペンサー法、スプレイ法等が挙げられる。
【0119】
本工程においては、隔壁形成用レジスト溶液を塗布した後に、加熱処理を行ってもよい。この加熱処理は、いわゆるプリベークであり、隔壁形成用レジスト溶液から有機溶剤を乾燥除去し、レジスト材料の塗膜を基板に定着させるために行われるものである。その際の加熱温度としては、例えば、80℃〜130℃の範囲内であり、加熱時間としては、例えば、10秒間〜200秒間の範囲内である。
【0120】
本発明においては、隔壁が同一材料から形成されるため、本工程により形成される隔壁形成用レジスト膜は、同一材料を含有する単一の層から構成されるものである。上記隔壁形成用レジスト膜の厚みとしては、隔壁を形成することができる厚みであれば、特に限定されるものではないが、例えば、0.5μm〜10μmの範囲内であることが好ましく、0.5μm〜5μmの範囲内であることがより好ましく、0.5μm〜2.5μmの範囲内であることがさらに好ましい。
【0121】
2.第1ベーク工程
次に、本発明における第1ベーク工程について説明する。本発明における第1ベーク工程は、隔壁の横断面における上底面に対する一方の側面のテーパー角度をθ、他方の側面のテーパー角度をθとしたとき、θ<θ<180°となるθ側隔壁側面形成部を形成するために、上記隔壁形成用レジスト膜をパターン露光し、露光された上記隔壁形成用レジスト膜を加熱処理する工程である。
【0122】
本工程においては、θ<θ<180°となるθ側隔壁側面形成部が形成されるように、隔壁形成用レジスト膜をパターン露光すればよいが、中でも、テーパー角度θが、θ<θ<110°の範囲内であることが好ましく、θ<θ<90°の範囲内であることがより好ましい。テーパー角度θを上記範囲内とすることで、θ側の隔壁側面に垂直に近い逆テーパー形状、垂直形状または順テーパー形状を形成することができるからである。これにより、発光領域を狭めてしまう鋭角な逆テーパー部分を隔壁の一方の側面から無くすことができ、発光領域を広くすることが可能である。
【0123】
本工程において、露光の際に用いられる活性放射線としては、例えば、紫外線、エキシマレーザー光、電子線、X線等が挙げられ、その波長としては、特に限定されるものではないが、例えば、100nm〜500nmの範囲内、中でも、250nm〜450nmの範囲内であることが好ましい。また、露光の際に用いられる光源としては、例えば、エキシマランプ、水銀ランプ等を挙げることができる。
【0124】
本工程における加熱処理は、PEB(Post Exposure Bake)であり、パターン露光された露光部において、架橋成分である光酸発生剤および酸架橋剤による架橋反応を促進するものである。本工程においては、後述する第2ベーク工程よりも架橋が進み易い条件で加熱処理を行うことで、順テーパー形状、垂直形状またはθよりテーパー角度の大きい逆テーパー形状を形成することを特徴とする。
本工程における加熱温度としては、110℃〜160℃の範囲内であることが好ましく、120℃〜150℃の範囲内であることがより好ましく、120℃〜140℃の範囲内であることがさらに好ましい。
また、本工程における加熱時間は、加熱温度等に応じて適宜選択されるものである。
【0125】
3.第2ベーク工程
次に、本発明における第2ベーク工程について説明する。本発明における第2ベーク工程は、上記第1ベーク工程後に、さらに0°<θ<90°となるθ側隔壁側面形成部を形成するために、上記隔壁形成用レジスト膜の上記第1ベーク工程で露光された領域のθ側の端部から上記第1ベーク工程で露光されていない領域側の、少なくとも最終的に得られる隔壁のテーパー角度がθとなる領域をパターン露光し、露光された上記隔壁形成用レジスト膜を上記第1ベーク工程よりも上記架橋成分の架橋が進み難い条件で加熱処理する工程である。
【0126】
本工程においては、0°<θ<90°となるθ側隔壁側面形成部が形成されるように、隔壁形成用レジスト膜をパターン露光すればよいが、中でも、テーパー角度θが20°<θ<80°の範囲内であることが好ましく、30°<θ<70°の範囲内であることがより好ましい。テーパー角度θを上記範囲内とすることで、θ側の側面に第2電極層を分断し易い逆テーパー形状を形成することができるからである。
【0127】
本工程において、露光の際に用いられる活性放射線、その波長および光源については、上記第1ベーク工程と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0128】
本工程における加熱処理は、上記第1ベーク工程と同様にPEBであり、パターン露光された露光部において、架橋成分である光酸発生剤および酸架橋剤による架橋反応を促進するものである。本工程においては、上記第1ベーク工程よりも架橋成分の架橋が進み難い条件で加熱処理を行うことで、逆テーパー形状を形成することを特徴とする。ここで、架橋が進み難い条件とは、上記第1ベーク工程と比較して、加熱温度が低い、および/または、加熱時間が短い条件をいう。
本工程における加熱温度としては、50℃〜110℃の範囲内であることが好ましく、70℃〜110℃の範囲内であることがより好ましく、90℃〜110℃の範囲内であることがさらに好ましい。
また、本工程における加熱時間は、加熱温度等に応じて適宜選択されるものである。
【0129】
本工程においては、図11(c)に例示するように、θ側に屈曲部を持たせるため、θ側隔壁側面形成部16がθ側隔壁側面形成部15にほぼ重なり、θ側隔壁側面形成部16の一部の逆テーパー部のみが新たに形成されるようにパターン露光し、加熱処理してもよい。このように本工程を行い、さらに後述する現像工程を行うことで、図11(d)に例示するように、屈曲角度θの屈曲部5′と逆テーパー形成部5″とからなる隔壁5を形成することができる。なお、図11(a)〜(d)は、本発明の有機EL素子用基板の製造方法の他の例を示す工程図である。
【0130】
4.現像工程
次に、本発明における現像工程について説明する。本発明における現像工程は、上記第2ベーク工程後に、上記隔壁形成用レジスト膜を現像する現像工程である。
【0131】
本工程においては、通常、アルカリ現像液によって隔壁形成用レジスト膜を現像する。アルカリ現像液としては、アルカリ水溶液が用いられる。アルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニアなどの無機アルカリ;エチルアミン、プロピルアミンなどの第一級アミン類;ジエチルアミン、ジプロピルアミンなどの第二級アミン類;トリメチルアミン、トリエチルアミンなどの第三級アミン類;ジエチルエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルコールアミン類;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルヒドロキシメチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルヒドロキシエチルアンモニウムヒドロキシドなどの第四級アンモニウムヒドロキシド類;などが挙げられる。また、必要に応じて、上記アルカリ水溶液には、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、エチレングリコールなどの水溶性有機溶剤、界面活性剤、樹脂の溶解抑制剤などを添加することができる。
【0132】
また、本工程においては、隔壁形成用レジスト膜を現像した後に、加熱処理を行うことが好ましい。この加熱処理は、いわゆるポストベークであり、隔壁形成用レジスト膜を現像して得られたレジストパターンの焼き締めを行うものである。ここで、加熱温度としては、基材によって異なるが、例えば、130℃〜300℃の範囲内である。また、加熱時間は、加熱温度等に応じて適宜選択される。
【0133】
5.その他の工程
本発明の有機EL素子用基板の製造方法は、必須の工程である上記隔壁形成用レジスト膜形成工程、上記第1ベーク工程および上記第2ベーク工程の他に、基板上に第1電極層を形成する第1電極層形成工程、第1電極層が形成された基板上に絶縁層を形成する絶縁層形成工程等を行うことができる。
なお、第1電極層およびその形成方法、絶縁層およびその形成方法等については、上記「A.有機EL素子用基板」の項に記載したので、ここでの説明は省略する。
【0134】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0135】
以下、本発明について実施例および比較例を用いて具体的に説明する。
【0136】
[実施例1]
(透明電極層の形成)
まず、ガラス基板(厚み0.7mm)に対して、イオンプレーティング法により膜厚200nmの酸化インジウムスズ(ITO)電極膜を形成し、このITO電極膜上に感光性レジストを塗布し、マスク露光、現像、ITO電極膜のエッチングを行い、上記レジストを剥離して、幅0.8mmのストライプ状の透明電極層を1mmピッチで30本形成した。
【0137】
(絶縁層の形成)
次に、上記の透明電極層が形成されたガラス基板に、洗浄処理と紫外線プラズマ洗浄を施し、その後、ポリイミド前駆体を主成分とするポジ型感光性レジストをスピンコート法で塗布し、フォトリソグラフィープロセスでパターニングして、各透明電極層上に0.7mm×0.7mmの発光領域(開口部)が1mmピッチで存在するように絶縁層(厚み1.5μm)を形成した。
【0138】
(隔壁の形成)
次に、上記の絶縁層が形成されたガラス基板に、洗浄処理と紫外線プラズマ洗浄を施し、その後、スピンコート法によりカソードセパレーター形成溶液(ZPN2464 日本ゼオン株式会社製)を塗布した。次いで、加熱処理(プリベーク)して、厚みが4μm程度のレジスト膜を得た。
続いて、開口部の幅が3μmのスリットが多数並列しているフォトマスクを用いて、紫外線をレジスト膜上にパターン状に露光した後、架橋成分である光酸発生剤および酸架橋剤による架橋反応を促進する目的で、加熱処理(PEB)を行った。ここでは、θ側の隔壁側面を形成するため、PEBの条件を130℃で180秒間とした。
次に、開口部の幅が3μmのスリットが多数並列しているフォトマスクを用いて、先に露光された箇所にかかるように紫外線をレジスト膜上にパターン状に露光した後、架橋成分である光酸発生剤および酸架橋剤による架橋反応を促進する目的で、加熱処理(PEB)を行った。ここでは、θ側の隔壁側面を形成するため、PEBの条件を100℃で60秒間とした。
その後、上記のレジスト膜が形成された基板をアルカリ現像液によって現像することでレジストパターンを形成し、加熱処理(ポストベーク)によって硬化することで、ストライプ状の隔壁を絶縁層上に透明電極層と直交するように形成し、有機EL素子用基板を作製した。形成された隔壁は、上底面が15μm、下底面が12μm、θが45°、θが90°であった。
【0139】
[比較例1]
フォトマスクの開口部の幅を12μmにして、1回目のPEBの条件を110℃で120秒間とし、2回目の露光およびPEBを行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして有機EL素子用基板を作製した。形成された隔壁は、上底面の幅が23μm、下底面の幅が12μm、θおよびθが45°であった。
【0140】
[比較例2]
フォトマスクの開口部の幅を5μmにして、1回目のPEBの条件を110℃で120秒間とし、2回目の露光およびPEBを行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして有機EL素子用基板を作製した。形成された隔壁は、上底面の幅が15μm、下底面の幅が5μm、θおよびθが45°であった。
【0141】
[評価]
実施例1および比較例1を比較することにより、隔壁の下底面の幅を同じにした場合、実施例の方が隔壁の上底面の幅が小さく、発光領域の面積を広くできることを確認した。また、比較例2においては、隔壁の上底面の幅は実施例1と同じであるが、下底面の幅が小さく、隔壁と基板との密着性が低いため、現像時にパターン欠けが発生した。
【符号の説明】
【0142】
1 … 有機EL素子用基板
2 … 基板
3 … 第1電極層
4 … 絶縁層
5 … 隔壁
5a、5b … 小隔壁
5′ … 屈曲部
5″ … 逆テーパー形成部
6 … 有機EL層
7 … 第2電極層
8 … 発光層
10 … 分断領域
11 … 発光領域
12 … 隔壁形成用レジスト膜
13 … フォトマスク
14 … 紫外線
15 … θ側隔壁側面形成部
16 … θ側隔壁側面形成部
20 … 有機EL素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に形成された第1電極層と、
前記第1電極層が形成された基板上に形成され、第2電極層を複数に分断する分断領域を画定する複数の絶縁性の隔壁とを有し、
前記隔壁が同一材料で形成され、
前記隔壁の横断面における上底面に対する一方の側面のテーパー角度をθ、他方の側面のテーパー角度をθとしたとき、0°<θ<90°かつθ<θ<180°であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子用基板。
【請求項2】
前記隔壁が、前記隔壁の前記θ側の側面に対して、前記隔壁の内側に屈曲する屈曲部を有することを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用基板。
【請求項3】
前記第1電極層と前記隔壁との間に絶縁層が形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用基板。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用基板と、
前記有機エレクトロルミネッセンス素子用基板の隔壁間の第1電極層上に形成され、発光層を含む有機エレクトロルミネッセンス層と、
前記有機エレクトロルミネッセンス層上に形成され、前記隔壁により分断されている第2電極層とを有し、
前記隔壁を挟んで隣接する前記第2電極層が互いに電気的に絶縁されていることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項5】
基板と、前記基板上に形成された第1電極層と、前記第1電極層が形成された基板上に、同一材料で形成され、第2電極層を複数に分断する分断領域を画定する複数の絶縁性の隔壁とを有する有機エレクトロルミネッセンス素子用基板の製造方法であって、
前記第1電極層が形成された基板上に、ネガ型感光性樹脂と、架橋成分と、活性放射線を吸収する化合物とを含有する隔壁形成用レジスト溶液を塗布して、隔壁形成用レジスト膜を形成する隔壁形成用レジスト膜形成工程と、
前記隔壁の横断面における上底面に対する一方の側面のテーパー角度をθ、他方の側面のテーパー角度をθとしたとき、θ<θ<180°となるθ側隔壁側面形成部を形成するために、前記隔壁形成用レジスト膜をパターン露光し、露光された前記隔壁形成用レジスト膜を加熱処理する第1ベーク工程と、
前記第1ベーク工程後に、さらに0°<θ<90°となるθ側隔壁側面形成部を形成するために、前記隔壁形成用レジスト膜の前記第1ベーク工程で露光された領域のθ側の端部から前記第1ベーク工程で露光されていない領域側の、少なくとも最終的に得られる隔壁のテーパー角度がθとなる領域をパターン露光し、露光された前記隔壁形成用レジスト膜を前記第1ベーク工程よりも前記架橋成分の架橋が進み難い条件で加熱処理する第2ベーク工程と、
前記第2ベーク工程後に、前記隔壁形成用レジスト膜を現像する現像工程と
を有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子用基板の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2011−222178(P2011−222178A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−87759(P2010−87759)
【出願日】平成22年4月6日(2010.4.6)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】