説明

有機エレクトロルミネッセンス素子

【課題】本発明は、高効率および長寿命を実現することが可能な有機EL素子を提供する。
【解決手段】本発明は、陽極と正孔注入輸送層とn層(n≧2)の発光層と電子注入輸送層と陰極とが順に積層され、隣り合う発光層の間の少なくともいずれか1箇所に形成された1層以上(n−1)層以下の中間層を有し、正孔注入輸送層および電子注入輸送層が同一のバイポーラ材料を含有し、中間層の構成材料と中間層に隣接する発光層のホスト材料とが異なり、中間層の構成材料のIpINLおよびEaINLと中間層に隣接する発光層のホスト材料のIpEMLおよびEaEMLとの関係がIpINL≠IpEML、EaINL≠EaEMLであり、正孔注入輸送層の構成材料のEa1と陽極側発光層のホスト材料のEa2の関係がEa1≧Ea2であり、電子注入輸送層の構成材料のIp3と陰極側発光層のホスト材料のIp4の関係がIp3≦Ip4である有機EL素子を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数層の発光層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス(以下、エレクトロルミネッセンスをELと略す場合がある。)素子は、自発光型のディスプレイとしての使用が注目されており、高輝度、高効率、長寿命が求められている。
【0003】
有機EL素子の高輝度化の技術としては、ホスト材料および発光ドーパントを含有する発光層を用いることが知られている。この発光層では、陽極および陰極から注入された正孔および電子が発光層内のホスト材料で再結合し、そのエネルギーを発光ドーパントが受け取って発光する。このような発光層では、高輝度で色純度の良い発光を得ることが可能である。
【0004】
一方、有機EL素子の高効率化および長寿命化の技術としては、発光材料の他に、正孔もしくは電子の注入機能、輸送機能、ブロッキング機能を有する材料を用いて複数の層を積層した多層構造とすることが知られている。しかしながら、多層構造を有する有機EL素子では、駆動中に各層の界面にて劣化が生じることによって、発光効率が低下したり、素子が劣化して輝度が低下したりすることが懸念される。特に、ブロッキング層が設けられた有機EL素子では、発光層とブロッキング層との界面に電荷が蓄積しやすく、そのため界面にて劣化が生じやすい。
【0005】
そこで、本発明者らは、駆動中に各層の界面にて劣化が生じるのを抑制する手法として、各層のイオン化ポテンシャルおよび電子親和力の大小関係を規定し、ブロッキング層を有さない有機EL素子を提案している(特許文献1参照)。さらには、電荷の突き抜けによる正孔輸送層および電子輸送層の劣化を抑制するために、正孔輸送層および電子輸送層に同一のバイポーラ材料を用いることを提案している。
【0006】
また近年、白色発光の有機EL素子が光源に適用できることから盛んに開発されている。白色光は、通常、2種類または3種類の発光材料の発光により得ることができる。しかしながら、発光層に複数種類の発光材料が含まれる場合には、発光材料間でエネルギー移動が起こり、色度が変化してしまうという問題がある。そこで、互いに異なる発光材料を含有する複数層の発光層を積層することが提案されている(例えば特許文献2〜5参照)。
【0007】
しかしながら、燐光発光ドーパントを含有する発光層と蛍光発光ドーパントを含有する発光層とが積層された有機EL素子では、燐光発光ドーパントから蛍光発光ドーパントへエネルギー移動が起こり、高効率な発光が得られないという問題がある。
この問題を解決するために、燐光発光ドーパントを含有する発光層と蛍光発光ドーパントを含有する発光層との間に、正孔および電子がともに移動可能なバイポーラ層を設けることが提案されている(特許文献6参照)。
【0008】
また、白色発光の有機EL素子ではないが、発光層以外の層(例えば正孔輸送層や電子輸送層)からの発光を抑制し、色純度の低下を抑制するために、発光層中に発光領域制御層が設けられた有機EL素子が提案されている(特許文献7参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2008/102644号パンフレット
【特許文献2】特開2000−68057号公報
【特許文献3】特開2003−282266号公報
【特許文献4】国際公開第2005/91684号パンフレット
【特許文献5】特開2006−269232号公報
【特許文献6】特開2006−172762号公報
【特許文献7】特開2003−36980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
複数層の発光層が積層され、さらに発光層の間に所定の層が設けられた有機EL素子では、層の界面の数が増加するため、上述のように各層の界面にて劣化が生じるおそれがあり、寿命が短くなったり発光効率が低下したりすることが懸念される。よって、複数層の発光層が積層されており発光層の間に所定の層が設けられている場合に、長寿命および高効率を達成するためには、さらなる改善の余地がある。
【0011】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、高効率および長寿命を実現することが可能な有機EL素子を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明は、陽極と、上記陽極上に形成された正孔注入輸送層と、上記正孔注入輸送層上に形成され、ホスト材料および発光ドーパントを含有するn層(nは2以上の整数)の発光層と、隣り合う上記発光層の間の少なくともいずれか1箇所に形成された1層以上(n−1)層以下の中間層と、上記n層の発光層上に形成された電子注入輸送層と、上記電子注入輸送層上に形成された陰極とを有し、上記正孔注入輸送層および上記電子注入輸送層が正孔および電子を輸送しうるバイポーラ材料を含有し、上記正孔注入輸送層および上記電子注入輸送層に含有されるバイポーラ材料が同一であり、上記中間層の構成材料と上記中間層に隣接する上記発光層のホスト材料とが異なり、上記中間層の構成材料のイオン化ポテンシャルをIpINL、上記中間層に隣接する上記発光層のホスト材料のイオン化ポテンシャルをIpEMLとしたとき、IpINL≠IpEMLであり、上記中間層の構成材料の電子親和力をEaINL、上記中間層に隣接する上記発光層のホスト材料の電子親和力をEaEMLとしたとき、EaINL≠EaEMLであり、上記正孔注入輸送層の構成材料の電子親和力をEa1、上記正孔注入輸送層に隣接する上記発光層のホスト材料の電子親和力をEa2としたとき、Ea1≧Ea2であり、上記電子注入輸送層の構成材料のイオン化ポテンシャルをIp3、上記電子注入輸送層に隣接する上記発光層のホスト材料のイオン化ポテンシャルをIp4としたとき、Ip3≦Ip4であることを特徴とする有機EL素子を提供する。
【0013】
本発明によれば、正孔注入輸送層の構成材料と正孔注入輸送層に隣接する発光層のホスト材料との電子親和力の関係がEa1≧Ea2であるので、駆動中における正孔注入輸送層および発光層の界面での電荷の蓄積がなく、劣化を抑制することができる。また、電子注入輸送層の構成材料と電子注入輸送層に隣接する発光層のホスト材料とのイオン化ポテンシャルの関係がIp3≦Ip4であるので、駆動中における電子注入輸送層および発光層の界面での電荷の蓄積がなく、劣化を抑制することができる。さらに、正孔注入輸送層および電子注入輸送層が同一のバイポーラ材料を含有することにより、正孔が電子注入輸送層に突き抜けたり、電子が正孔注入輸送層に突き抜けたりしても、駆動中における各層の界面での劣化を効果的に抑制することができる。また、中間層の構成材料とこの中間層に隣接する発光層のホスト材料とが異なり、中間層の構成材料とこの中間層に隣接する発光層のホスト材料とのイオン化ポテンシャルおよび電子親和力の関係がIpINL≠IpEMLおよびEaINL≠EaEMLであるので、中間層と中間層に隣接する発光層との間に界面が生じ、多少のエネルギー障壁が存在することにより、中間層と発光層との間での電荷輸送において電荷の注入を制御し、発光効率を高めることができる。したがって、高効率で長寿命な有機EL素子とすることが可能である。
【0014】
上記発明においては、上記中間層が(n−1)層であり、上記各発光層間に上記中間層が形成されていることが好ましい。各発光層間に中間層が形成されていることにより、発光効率を一層高めることができるからである。
【0015】
また本発明においては、上記中間層が正孔および電子を輸送しうるバイポーラ材料を含有し、上記正孔注入輸送層と上記電子注入輸送層と上記中間層とに含有されるバイポーラ材料が同一であることが好ましい。これらの層に含まれるバイポーラ材料が同一であれば、正孔が電子注入輸送層に突き抜けたり、電子が正孔注入輸送層に突き抜けたりしても、これらの層が劣化しにくくなるからである。
【0016】
さらに本発明においては、上記n層の発光層の少なくとも一つが、上記発光ドーパントを含有する1箇所以上のドープ領域と上記発光ドーパントを含有しない1箇所以上のノンドープ領域とを有することが好ましい。n層の発光層の少なくとも一つがノンドープ領域を有することにより、ドープ領域中の発光ドーパントから他の物質へエネルギー移動が起こるのを抑制し、発光効率を高めることができるからである。
【0017】
上記の場合、上記正孔注入輸送層に隣接する上記発光層が、上記正孔注入輸送層側に上記ノンドープ領域を有していてもよい。例えば、発光層に含まれる発光ドーパントから正孔注入輸送層の構成材料へエネルギー移動が起こり得る場合には、発光層が正孔注入輸送層側にノンドープ領域を有することにより上記エネルギー移動を起こりにくくし発光効率を向上させることができる。また、発光層が正孔注入輸送層側にノンドープ領域を有することにより、正孔注入輸送層から発光層への正孔注入を良好なものとすることができる。さらに、正孔注入輸送層の構成材料と発光層のホスト材料との電子親和力の関係がEa1≧Ea2であるものの、発光層が正孔注入輸送層側にノンドープ領域を有するので、発光ドーパントによる電荷のトラップによって、発光層へ注入される電荷のバランスをとることができる。
【0018】
また上記の場合、上記電子注入輸送層に隣接する上記発光層が、上記電子注入輸送層側に上記ノンドープ領域を有していてもよい。例えば、発光層に含まれる発光ドーパントから電子注入輸送層の構成材料へエネルギー移動が起こり得る場合には、発光層が電子注入輸送層側にノンドープ領域を有することにより上記エネルギー移動を起こりにくくし発光効率を向上させることができる。また、発光層が電子注入輸送層側にノンドープ領域を有することにより電子注入輸送層から発光層への電子注入を良好なものとすることができる。さらに、電子注入輸送層の構成材料と発光層のホスト材料とのイオン化ポテンシャルの関係がIp3≦Ip4であるものの、発光層が電子注入輸送層側にノンドープ領域を有するので、発光ドーパントによる電荷のトラップによって、発光層へ注入される電荷のバランスをとることができる。
【0019】
さらに上記の場合、上記発光層が上記中間層側に上記ノンドープ領域を有していてもよい。例えば、発光層に含まれる発光ドーパントから中間層の構成材料へエネルギー移動が起こり得る場合には、発光層が中間層側にノンドープ領域を有することにより上記エネルギー移動を起こりにくくし発光効率を向上させることができるからである。
【0020】
また上記の場合、上記発光層が2箇所の上記ドープ領域を有し、上記2箇所のドープ領域の間に上記ノンドープ領域が配置されていてもよく、この場合、上記2箇所のドープ領域がそれぞれ異なる種類の発光ドーパントを含有することが好ましい。例えば、一方のドープ領域に含まれる発光ドーパントから他方のドープ領域に含まれる発光ドーパントへエネルギー移動が起こり得る場合には、これらの2つのドープ領域の間にノンドープ領域が配置されていることにより上記エネルギー移動を起こりにくくし発光効率を向上させることができるからである。
【0021】
また本発明においては、上記n層の発光層のうち、少なくともいずれか一つが蛍光発光ドーパントを含有し、その他が燐光発光ドーパントを含有することが好ましい。蛍光発光ドーパントおよび燐光発光ドーパントの間でエネルギー移動を抑制し、発光効率を高めるとともに、所望の発光色を得ることができるからである。
【0022】
さらに本発明においては、上記n層の発光層が3層の発光層であり、上記3層の発光層が互いに発光色の異なる発光ドーパントを含有することが好ましい。例えば、光の三原色に対応する赤・青・緑の3種類の発光ドーパントを用いる場合には、3層の発光層にそれぞれ1種類の発光ドーパントを含有させ、3種類の発光ドーパントをそれぞれ光らせることで、白色光を得ることができるからである。
【発明の効果】
【0023】
本発明においては、複数層の発光層の間に発光層のホスト材料とは異なる材料から構成される中間層を設け、正孔注入輸送層の構成材料と正孔注入輸送層に隣接する発光層のホスト材料との電子親和力ならびに電子注入輸送層の構成材料と電子注入輸送層に隣接する発光層のホスト材料とのイオン化ポテンシャルを所定の関係とし、正孔注入輸送層および電子注入輸送層に同一のバイポーラ材料を用いることにより、高効率化および長寿命化を図ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の有機EL素子の一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明の有機EL素子のバンドダイヤグラムの一例を示す模式図である。
【図3】本発明の有機EL素子のバンドダイヤグラムの他の例を示す模式図である。
【図4】本発明の有機EL素子のバンドダイヤグラムの他の例を示す模式図である。
【図5】本発明の有機EL素子の他の例を示す概略断面図である。
【図6】本発明の有機EL素子の他の例を示す概略断面図である。
【図7】本発明の有機EL素子の他の例を示す概略断面図である。
【図8】本発明の有機EL素子の他の例を示す概略断面図である。
【図9】本発明の有機EL素子の他の例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の有機EL素子について詳細に説明する。
本発明の有機EL素子は、陽極と、上記陽極上に形成された正孔注入輸送層と、上記正孔注入輸送層上に形成され、ホスト材料および発光ドーパントを含有するn層(nは2以上の整数)の発光層と、隣り合う上記発光層の間の少なくともいずれか1箇所に形成された1層以上(n−1)層以下の中間層と、上記n層の発光層上に形成された電子注入輸送層と、上記電子注入輸送層上に形成された陰極とを有し、上記正孔注入輸送層および上記電子注入輸送層が正孔および電子を輸送しうるバイポーラ材料を含有し、上記正孔注入輸送層および上記電子注入輸送層に含有されるバイポーラ材料が同一であり、上記中間層の構成材料と上記中間層に隣接する上記発光層のホスト材料とが異なり、上記中間層の構成材料のイオン化ポテンシャルをIpINL、上記中間層に隣接する上記発光層のホスト材料のイオン化ポテンシャルをIpEMLとしたとき、IpINL≠IpEMLであり、上記中間層の構成材料の電子親和力をEaINL、上記中間層に隣接する上記発光層のホスト材料の電子親和力をEaEMLとしたとき、EaINL≠EaEMLであり、上記正孔注入輸送層の構成材料の電子親和力をEa1、上記正孔注入輸送層に隣接する上記発光層のホスト材料の電子親和力をEa2としたとき、Ea1≧Ea2であり、上記電子注入輸送層の構成材料のイオン化ポテンシャルをIp3、上記電子注入輸送層に隣接する上記発光層のホスト材料のイオン化ポテンシャルをIp4としたとき、Ip3≦Ip4であることを特徴とするものである。
【0026】
なお、n層(nは2以上の整数)の発光層のうち、正孔注入輸送層に隣接する発光層を陽極側発光層と称し、電子注入輸送層に隣接する発光層を陰極側発光層と称し、陽極側発光層および陰極側発光層以外の発光層を中央発光層と称する場合がある。
【0027】
本発明の有機EL素子について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の有機EL素子の一例を示す概略断面図である。図1に例示するように、有機EL素子1は、3層の発光層(陽極側発光層5a,中央発光層5b,陰極側発光層5c)と2層の中間層(図1においては便宜上、第1中間層6a,第2中間層6bとする。)とを有しており、基板2上に、陽極3と正孔注入輸送層4と陽極側発光層5aと第1中間層6aと中央発光層5bと第2中間層6bと陰極側発光層5cと電子注入輸送層7と陰極8とが順次積層されたものである。正孔注入輸送層4および電子注入輸送層7はバイポーラ材料を含有しており、正孔注入輸送層4および電子注入輸送層7に含有されるバイポーラ材料は同一となっている。また、第1中間層6aの構成材料とこの第1中間層6aに隣接する陽極側発光層5aおよび中央発光層5bのホスト材料とは異なっている。同様に、第2中間層6bの構成材料とこの第2中間層6bに隣接する中央発光層5bおよび陰極側発光層5cのホスト材料とは異なっている。
【0028】
図2〜図4はそれぞれ、本発明の有機EL素子のバンドダイヤグラムの一例を示す模式図である。
図1に例示する有機EL素子において、図2〜図4に示すように、正孔注入輸送層4の構成材料のイオン化ポテンシャルをIp1、陽極側発光層5aのホスト材料のイオン化ポテンシャルをIp2、電子注入輸送層7の構成材料のイオン化ポテンシャルをIp3、陰極側発光層5cのホスト材料のイオン化ポテンシャルをIp4とし、正孔注入輸送層4の構成材料の電子親和力をEa1、陽極側発光層5aのホスト材料の電子親和力をEa2、電子注入輸送層7の構成材料の電子親和力をEa3、陰極側発光層5cのホスト材料の電子親和力をEa4とする。
正孔注入輸送層の構成材料および陽極側発光層のホスト材料の電子親和力の関係はEa1≧Ea2である。電子注入輸送層の構成材料および陰極側発光層のホスト材料のイオン化ポテンシャルの関係はIp3≦Ip4である。
また、正孔注入輸送層および電子注入輸送層は同一のバイポーラ材料を含有することから、正孔注入輸送層および電子注入輸送層の構成材料のイオン化ポテンシャルの関係はIp1=Ip3であり、正孔注入輸送層および電子注入輸送層の構成材料の電子親和力の関係はEa1=Ea3である。
【0029】
また、図1に例示する有機EL素子において、図2〜図4に示すように、陽極側発光層5aのホスト材料のイオン化ポテンシャルをIpEML1、中央発光層5bのホスト材料のイオン化ポテンシャルをIpEML2、陰極側発光層5cのホスト材料のイオン化ポテンシャルをIpEML3、第1中間層6aの構成材料のイオン化ポテンシャルをIpINL1、第2中間層6bの構成材料のイオン化ポテンシャルをIpINL2とし、陽極側発光層5aのホスト材料の電子親和力をEaEML1、中央発光層5bのホスト材料の電子親和力をEaEML2、陰極側発光層5cのホスト材料の電子親和力をEaEML3、第1中間層6aの構成材料の電子親和力をEaINL1、第2中間層6bの構成材料の電子親和力をEaINL2とする。
第1中間層の構成材料と、第1中間層に隣接する陽極側発光層および中央発光層のホスト材料とは異なり、第1中間層の構成材料と、第1中間層に隣接する陽極側発光層および中央発光層のホスト材料とのイオン化ポテンシャルの関係は、IpINL1≠IpEML1、IpINL1≠IpEML2であり、第1中間層の構成材料と、第1中間層に隣接する陽極側発光層および中央発光層のホスト材料との電子親和力の関係は、EaINL1≠EaEML1、EaINL1≠EaEML2である。
また、第2中間層の構成材料と、第2中間層に隣接する中央発光層および陰極側発光層のホスト材料とは異なり、第2中間層の構成材料と、第2中間層に隣接する中央発光層および陰極側発光層のホスト材料とのイオン化ポテンシャルの関係は、IpINL2≠IpEML2、IpINL2≠IpEML3であり、第2中間層の構成材料と、第2中間層に隣接する中央発光層および陰極側発光層のホスト材料との電子親和力の関係は、EaINL2≠EaEML2、EaINL2≠EaEML3である。
【0030】
通常、図1に例示するような有機EL素子において、正孔注入輸送層の構成材料および陽極側発光層のホスト材料の電子親和力の関係がEa1≧Ea2であり、電子注入輸送層の構成材料および陰極側発光層のホスト材料のイオン化ポテンシャルがIp3≦Ip4である場合には、発光層内で効率良く電荷再結合を起こし励起状態を生成させ放射失活させることが困難であり発光効率が低下したり、また対極への正孔および電子の突き抜けが起こり正孔注入輸送層へ電子が注入されたり電子注入輸送層へ正孔が注入されたりすることによって寿命特性が悪くなったりすることが想定される。
【0031】
しかしながら、本発明においては、Ea1≧Ea2かつIp3≦Ip4であることにより、対極への正孔および電子の突き抜けは起こるものの、正孔および電子が円滑に輸送されるので、駆動中における正孔注入輸送層と陽極側発光層との界面および電子注入輸送層と陰極側発光層との界面での電荷の蓄積がなく、これらの層の界面での劣化を抑制することができる。
また、バイポーラ材料を正孔注入輸送層および電子注入輸送層に用いることにより、駆動中における正孔注入輸送層と陽極側発光層との界面および電子注入輸送層と陰極側発光層との界面での劣化を効果的に抑制することができる。
さらに、中間層の構成材料とこの中間層に隣接する発光層のホスト材料とが異なるので、中間層とこの中間層に隣接する発光層との間に界面が生じる。そして、中間層の構成材料とこの中間層に隣接する発光層のホスト材料とのイオン化ポテンシャルおよび電子親和力の関係が、IpINL≠IpEMLかつEaINL≠EaEMLであるので、中間層と発光層との間での電荷輸送において多少のエネルギー障壁が存在する。これにより、中間層と発光層との間での電荷輸送において、電荷の注入を制御し、発光効率を高めることができる。
したがって、高効率化を図り、安定な寿命特性を得ることが可能である。
【0032】
また本発明によれば、正孔注入輸送層および電子注入輸送層が同一のバイポーラ材料を含有するので、正孔が電子注入輸送層に突き抜けたり、電子が正孔注入輸送層に突き抜けたりしても、正孔注入輸送層および電子注入輸送層が劣化するのを抑制することができる。また、真空蒸着法等により正孔注入輸送層および電子注入輸送層を成膜する場合には、共通の蒸着源を用いることができ、製造工程上有利である。
【0033】
なお、各層の「構成材料」とは、各層が単一の材料で構成されている場合には、その材料をいい、また各層がホスト材料とドーパントとから構成されている場合には、ホスト材料をいう。
【0034】
各層の「構成材料のイオン化ポテンシャル」とは、各層が単一の材料で構成されている場合には、その材料のイオン化ポテンシャルをいい、また各層がホスト材料とドーパントとから構成されている場合には、ホスト材料のイオン化ポテンシャルをいう。同様に、各層の「構成材料の電子親和力」とは、各層が単一の材料で構成されている場合には、その材料の電子親和力をいい、また各層がホスト材料とドーパントとから構成されている場合には、ホスト材料の電子親和力をいう。
【0035】
イオン化ポテンシャルは、UPS(紫外光電子分光法)(例えば測定機名「AC−2」理研計器製)により求めた値とする。また、電子親和力の測定方法としては、まずHOMOエネルギーをUPS(紫外光電子分光法)(例えば測定機名「AC−2」理研計器製)により求め、次いで光吸収によるエネルギーギャップ測定値と上記HOMOエネルギーから算出する方法を採用する。
【0036】
「中間層の構成材料と中間層に隣接する発光層のホスト材料とが異なる」とは、中間層に隣接する発光層が2層あることから、中間層の構成材料と、その中間層に隣接する2層の発光層のそれぞれのホスト材料とが異なることをいう。例えば図1においては、第1中間層6aには陽極側発光層5aおよび中央発光層5bが隣接しており、第1中間層6aの構成材料と、その第1中間層6aに隣接する陽極側発光層5aおよび中央発光層5bのそれぞれのホスト材料とが異なるものとなる。
【0037】
「中間層の構成材料のイオン化ポテンシャルIpINLと、中間層に隣接する発光層のホスト材料のイオン化ポテンシャルIpEMLとの関係がIpINL≠IpEMLである」とは、中間層に隣接する発光層が2層あることから、中間層の構成材料のイオン化ポテンシャルIpINLと、その中間層に隣接する2層の発光層のそれぞれのホスト材料のイオン化ポテンシャルIpEMLとの関係がIpINL≠IpEMLであることを意味する。例えば図1においては、第1中間層6aには陽極側発光層5aおよび中央発光層5bが隣接しており、図2に例示するように、第1中間層6aの構成材料のイオン化ポテンシャルIpINL1と、第1中間層6aに隣接する陽極側発光層5aのホスト材料のイオン化ポテンシャルIpEML1および第1中間層6aに隣接する中央発光層5bのホスト材料のイオン化ポテンシャルIpEML2との関係がIpINL1≠IpEML1およびIpINL1≠IpEML2となる。
【0038】
「中間層の構成材料の電子親和力EaINLと、中間層に隣接する発光層のホスト材料の電子親和力EaEMLとの関係がEaINL≠EaEMLである」とは、中間層に隣接する発光層が2層あることから、中間層の構成材料の電子親和力EaINLと、その中間層に隣接する2層の発光層のそれぞれのホスト材料の電子親和力EaEMLとの関係がEaINL≠EaEMLであることを意味する。例えば図1においては、第1中間層6aには陽極側発光層5aおよび中央発光層5bが隣接しており、図2に例示するように、第1中間層6aの構成材料の電子親和力EaINL1と、第1中間層6aに隣接する陽極側発光層5aのホスト材料の電子親和力EaEML1および第1中間層6aに隣接する中央発光層5bのホスト材料の電子親和力EaEML2との関係がEaINL1≠EaEML1およびEaINL1≠EaEML2となる。
【0039】
「バイポーラ材料」とは、正孔および電子のいずれをも安定に輸送することができる材料であって、材料に還元性ドーパントをドープしたものを用いて電子のユニポーラデバイスを作製した場合に電子を安定に輸送することができ、かつ、材料に酸化性ドーパントをドープしたものを用いて正孔のユニポーラデバイスを作製した場合に正孔を安定に輸送することができる材料をいう。ユニポーラデバイスを作製する際には、具体的には、還元性ドーパントとして、Csもしくは8−ヒドロキシキノリノラトリチウム(Liq)を材料にドープしたものを用いて電子のユニポーラデバイスを作製し、酸化性ドーパントとしてVもしくはMoOを材料にドープしたものを用いて正孔のユニポーラデバイスを作製することができる。
【0040】
以下、本発明の有機EL素子における各構成について説明する。
【0041】
1.イオン化ポテンシャルおよび電子親和力
本発明においては、正孔注入輸送層の構成材料の電子親和力をEa1、陽極側発光層のホスト材料の電子親和力をEa2としたとき、Ea1≧Ea2であり、電子注入輸送層の構成材料のイオン化ポテンシャルをIp3、陰極側発光層のホスト材料のイオン化ポテンシャルをIp4としたとき、Ip3≦Ip4である。
また、中間層の構成材料のイオン化ポテンシャルをIpINL、中間層に隣接する発光層のホスト材料のイオン化ポテンシャルをIpEMLとしたとき、IpINL≠IpEMLであり、中間層の構成材料の電子親和力をEaINL、中間層に隣接する発光層のホスト材料の電子親和力をEaEMLとしたとき、EaINL≠EaEMLである。
【0042】
正孔注入輸送層の構成材料および陽極側発光層のホスト材料の電子親和力の関係としては、正孔注入輸送層の構成材料の電子親和力をEa1、陽極側発光層のホスト材料の電子親和力をEa2としたとき、Ea1≧Ea2であればよいが、中でも、Ea1>Ea2であることが好ましい。Ea1>Ea2かつIp1<Ip2であれば、陽極側発光層のホスト材料のバンドギャップエネルギーを比較的大きくすることができるからである。例えば、発光効率の向上のために、陽極側発光層のホスト材料および発光ドーパントのイオン化ポテンシャルおよび電子親和力が所定の関係を満たすように、ホスト材料および発光ドーパントを選択することが容易となる。
【0043】
Ea1>Ea2の場合、Ea1およびEa2の差としては、正孔注入輸送層の構成材料および陽極側発光層のホスト材料に応じて異なるものであるが、具体的には0.1eV以上とすることが好ましく、0.2eV以上とすることがより好ましい。
【0044】
正孔注入輸送層の構成材料および陽極側発光層のホスト材料のイオン化ポテンシャルの関係としては、正孔注入輸送層の構成材料のイオン化ポテンシャルをIp1、陽極側発光層のホスト材料のイオン化ポテンシャルをIp2としたとき、通常はIp1≦Ip2とされる。中でも、Ip1<Ip2であることが好ましい。正孔注入輸送層から陽極側発光層への正孔輸送において多少のエネルギー障壁が存在することにより、正孔の注入を制御し、発光効率を高めることができるからである。
【0045】
Ip1<Ip2の場合、Ip1およびIp2の差としては、正孔注入輸送層の構成材料および陽極側発光層のホスト材料に応じて異なるものであるが、具体的には0.1eV以上とすることが好ましく、0.2eV以上とすることがより好ましい。なお、Ip1およびIp2の差が比較的大きい場合であっても、駆動電圧を比較的高くすれば、正孔注入輸送層から陽極側発光層へ正孔を輸送させることができる。
【0046】
電子注入輸送層の構成材料および陰極側発光層のホスト材料のイオン化ポテンシャルの関係としては、電子注入輸送層の構成材料のイオン化ポテンシャルをIp3、陰極側発光層のホスト材料のイオン化ポテンシャルをIp4としたとき、Ip3≦Ip4であればよいが、中でも、Ip3<Ip4であることが好ましい。Ip3<Ip4かつEa3>Ea4であれば、陰極側発光層のホスト材料のバンドギャップエネルギーを比較的大きくすることができるからである。例えば、発光効率の向上のために、陰極側発光層のホスト材料および発光ドーパントのイオン化ポテンシャルおよび電子親和力が所定の関係を満たすように、ホスト材料および発光ドーパントを選択することが容易となる。
【0047】
Ip3<Ip4の場合、Ip3およびIp4の差としては、電子注入輸送層の構成材料および陰極側発光層のホスト材料に応じて異なるものであるが、具体的には0.1eV以上とすることが好ましく、0.2eV以上とすることがより好ましい。
【0048】
電子注入輸送層の構成材料および陰極側発光層のホスト材料の電子親和力の関係としては、電子注入輸送層の構成材料の電子親和力をEa3、陰極側発光層のホスト材料の電子親和力をEa4、としたとき、通常はEa3≧Ea4とされる。中でも、Ea3>Ea4であることが好ましい。電子注入輸送層から陰極側発光層への電子輸送において多少のエネルギー障壁が存在することにより、電子の注入を制御し、発光効率を高めることができるからである。
【0049】
Ea3>Ea4の場合、Ea3およびEa4の差としては、電子注入輸送層の構成材料および陰極側発光層のホスト材料に応じて異なるものであるが、具体的には0.1eV以上とすることが好ましく、0.2eV以上0.5eV以下とすることがより好ましい。なお、Ea3およびEa4の差が比較的大きい場合であっても、駆動電圧を比較的高くすれば、電子注入輸送層から陰極側発光層へ電子を輸送させることができる。
【0050】
中間層の構成材料および中間層に隣接する発光層のホスト材料のイオン化ポテンシャルの関係としては、中間層の構成材料のイオン化ポテンシャルをIpINL、中間層に隣接する発光層のホスト材料のイオン化ポテンシャルをIpEMLとしたとき、IpINL≠IpEMLであればよく、IpINL<IpEMLおよびIpINL>IpEMLのいずれであってもよい。例えば、第1中間層6aの構成材料のイオン化ポテンシャルをIpINL1、第1中間層に隣接する陽極側発光層5aのホスト材料のイオン化ポテンシャルをIpEML1としたとき、図2に示すようにIpINL1<IpEML1であってもよく、図3に示すようにIpINL1>IpEML1であってもよい。
また、2層以上の中間層が形成されている場合、図2に示すように、すべての中間層(6a,6b)がそれぞれ隣接する発光層(5a,5b,5c)に対してIpINL<IpEMLの関係を満たしていてもよく、図3に示すように、すべての中間層(6a,6b)がそれぞれ隣接する発光層(5a,5b,5c)に対してIpINL>IpEMLの関係を満たしていてもよく、図示しないが、隣接する発光層に対してIpINL<IpEMLの関係にある中間層と、隣接する発光層に対してIpINL>IpEMLの関係にある中間層とが混在していてもよい。
【0051】
IpINL<IpEMLまたはIpINL>IpEMLの場合、IpINLおよびIpEMLの差としては、中間層の構成材料および発光層のホスト材料に応じて異なるものであるが、具体的には0.1eV以上とすることが好ましく、0.2eV以上0.5eV以下とすることがより好ましい。
【0052】
中間層の構成材料および中間層に隣接する発光層のホスト材料の電子親和力の関係としては、中間層の構成材料の電子親和力をEaINL、中間層に隣接する発光層のホスト材料の電子親和力をEaEMLとしたとき、EaINL≠EaEMLであればよく、EaINL>EaEMLおよびEaINL<EaEMLのいずれであってもよい。例えば、第1中間層6aの構成材料の電子親和力をEaINL1、第1中間層に隣接する陽極側発光層5aのホスト材料のイオン化ポテンシャルをEaEML1としたとき、図2に示すようにEaINL1>EaEML1であってもよく、図3に示すようにEaINL1<EaEML1であってもよい。
また、2層以上の中間層が形成されている場合、図2に示すように、すべての中間層(6a,6b)がそれぞれ隣接する発光層(5a,5b,5c)に対してEaINL>EaEMLの関係を満たしていてもよく、図3に示すように、すべての中間層(6a,6b)がそれぞれ隣接する発光層(5a,5b,5c)に対してEaINL<EaEMLの関係を満たしていてもよく、図示しないが、隣接する発光層に対してEaINL>EaEMLの関係にある中間層と、隣接する発光層に対してEaINL<EaEMLの関係にある中間層とが混在していてもよい。
【0053】
EaINL>EaEMLまたはEaINL<EaEMLの場合、EaINLおよびEaEMLの差としては、中間層の構成材料および発光層のホスト材料に応じて異なるものであるが、具体的には0.1eV以上とすることが好ましく、0.2eV以上0.5eV以下とすることがより好ましい。
【0054】
また、中間層の構成材料と中間層に隣接する発光層の発光ドーパントとのイオン化ポテンシャルおよび電子親和力の関係としては、中間層の構成材料のイオン化ポテンシャルをIpINL、発光層の発光ドーパントのイオン化ポテンシャルをIpdとしたとき、IpINL>Ipdであり、かつ、中間層の構成材料の電子親和力をEaINL、発光層の発光ドーパントの電子親和力をEadとしたとき、EaINL<Eadであることが好ましい。中間層の構成材料と中間層に隣接する発光層の発光ドーパントとのイオン化ポテンシャルおよび電子親和力が上記の関係を満たす場合には、発光効率を高めることができるからである。
【0055】
ここで、発光層の発光ドーパントのイオン化ポテンシャルおよび電子親和力は、次のようにして得られる。イオン化ポテンシャルは、UPS(紫外光電子分光法)(例えば測定機名「AC−2」理研計器製)により求める。一方、電子親和力の測定方法としては、まずUPS(紫外光電子分光法)(例えば測定機名「AC−2」理研計器製)によりHOMOエネルギーを求め、次いで光吸収によるエネルギーギャップ測定値と上記HOMOエネルギーから算出する方法を採用する。
【0056】
正孔注入輸送層および電子注入輸送層の構成材料のイオン化ポテンシャルの関係としては、正孔注入輸送層の構成材料のイオン化ポテンシャルをIp1、電子注入輸送層の構成材料のイオン化ポテンシャルをIp3としたとき、正孔注入輸送層および電子注入輸送層は同一のバイポーラ材料を含有することから、Ip1=Ip3である。また、正孔注入輸送層および電子注入輸送層の構成材料の電子親和力の関係としては、正孔注入輸送層の構成材料の電子親和力をEa1、電子注入輸送層の構成材料の電子親和力をEa3としたとき、正孔注入輸送層および電子注入輸送層は同一のバイポーラ材料を含有することから、Ea1=Ea3である。
【0057】
本発明においては、図5に例示するように、陽極3および正孔注入輸送層4の間に第2正孔注入輸送層9が形成されていてもよい。
この場合、第2正孔注入輸送層の構成材料の電子親和力をEa5、正孔注入輸送層の構成材料の電子親和力をEa1とすると、Ea5<Ea1であることが好ましい。陽極側への電子の突き抜けが起こり正孔注入輸送層へ電子が注入されたとしても、第2正孔注入輸送層および正孔注入輸送層間にエネルギー障壁が存在することにより第2正孔注入輸送層から陽極側への電子の突き抜けを防ぐことができる。そのため、第2正孔注入輸送層および陽極の界面での劣化を抑制することができる。また、第2正孔注入輸送層の構成材料は、正孔注入輸送層の構成材料と比較して、材料選択の幅が広く、第2正孔注入輸送層に好適な材料を用いることができる。これにより、陽極から第2正孔注入輸送層への正孔注入において有利な構成とすることができる。
【0058】
Ea5<Ea1の場合、Ea5およびEa1の差としては、第2正孔注入輸送層および正孔注入輸送層の構成材料に応じて異なるものであるが、具体的には0.1eV以上とすることが好ましく、より好ましくは0.2eV〜2.0eVの範囲内である。
【0059】
一方、第2正孔注入輸送層および正孔注入輸送層の構成材料の電子親和力の関係としては、Ea5≧Ea1であることも好ましい。これにより、駆動中における第2正孔注入輸送層および正孔注入輸送層の界面での電荷の蓄積がなく、劣化を抑制することができるからである。
【0060】
上記の場合、第2正孔注入輸送層の構成材料のイオン化ポテンシャルをIp5、正孔注入輸送層の構成材料のイオン化ポテンシャルをIp1とすると、通常はIp5≦Ip1とされる。中でも、Ip5<Ip1であることが好ましい。陽極側発光層のエネルギーギャップが比較的大きい場合には、陽極側発光層へ正孔が輸送され難くなるが、Ip5<Ip1となるように陽極および正孔注入輸送層の間に第2正孔注入輸送層が形成されていることにより、陽極側発光層へ正孔を円滑に輸送することができるからである。また、第2正孔注入輸送層から正孔注入輸送層への正孔輸送において多少のエネルギー障壁が存在することにより、正孔の注入を制御し、発光効率を高めることができるからである。
【0061】
Ip5<Ip1の場合、Ip5およびIp1の差の差としては、第2正孔注入輸送層および正孔注入輸送層の構成材料に応じて異なるものであるが、具体的には0.1eV以上とすることが好ましく、より好ましくは0.2eV〜0.5eVの範囲内である。
【0062】
本発明においては、図5に例示するように、電子注入輸送層7および陰極8の間に第2電子注入輸送層10が形成されていてもよい。
この場合、電子注入輸送層の構成材料のイオン化ポテンシャルをIp3、第2電子注入輸送層の構成材料のイオン化ポテンシャルをIp6とすると、Ip3<Ip6であることが好ましい。陰極側への正孔の突き抜けが起こり電子注入輸送層へ正孔が注入されたとしても、電子注入輸送層および第2電子注入輸送層間にエネルギー障壁が存在することにより第2電子注入輸送層から陰極側への正孔の突き抜けを防ぐことができる。そのため、第2電子注入輸送層および陰極の界面での劣化を抑制することができる。また、第2電子注入輸送層の構成材料は、電子注入輸送層の構成材料と比較して、材料選択の幅が広く、第2電子注入輸送層に好適な材料を用いることができる。これにより、陰極から第2電子注入輸送層への電子注入において有利な構成とすることができる。
【0063】
Ip3<Ip6の場合、Ip3およびIp6の差としては、電子注入輸送層および第2電子注入輸送層の構成材料に応じて異なるものであるが、具体的には0.1eV以上とすることが好ましく、より好ましくは0.2eV〜2.0eVの範囲内である。
【0064】
一方、電子注入輸送層および第2電子注入輸送層の構成材料のイオン化ポテンシャルの関係としては、Ip3≧Ip6であることも好ましい。これにより、駆動中における第2電子注入輸送層および電子注入輸送層の界面での電荷の蓄積がなく、劣化を抑制することができるからである。
【0065】
上記の場合、電子注入輸送層の構成材料の電子親和力をEa3、第2電子注入輸送層の構成材料の電子親和力をEa6とすると、通常はEa3≦Ea6とされる。中でも、Ea3<Ea6であることが好ましい。陰極側発光層のエネルギーギャップが比較的大きい場合には、陰極側発光層へ電子が輸送され難くなるが、Ea3<Ea6となるように陰極および電子注入輸送層の間に第2電子注入輸送層が形成されていることにより、陰極側発光層へ電子を円滑に輸送することができるからである。また、第2電子注入輸送層から電子注入輸送層への電子輸送において多少のエネルギー障壁が存在することにより、電子の注入を制御し、発光効率を高めることができるからである。
【0066】
Ea3<Ea6の場合、Ea3およびEa6の差としては、電子注入輸送層および第2電子注入輸送層の構成材料に応じて異なるものであるが、具体的には0.1eV以上とすることが好ましく、より好ましくは0.2eV〜0.5eVの範囲内である。
【0067】
本発明においては、図6に例示するように、第2正孔注入輸送層9および正孔注入輸送層4の間に第3正孔注入輸送層11が形成されていてもよい。
この場合、第2正孔注入輸送層、第3正孔注入輸送層および正孔注入輸送層の構成材料の電子親和力の関係としては、第2正孔注入輸送層の構成材料の電子親和力をEa5、第3正孔注入輸送層の構成材料の電子親和力をEa7、正孔注入輸送層の構成材料の電子親和力をEa1としたとき、Ea5<Ea7、Ea7≧Ea1であることが好ましい。これにより、陽極および第2正孔注入輸送層の界面、ならびに、第3正孔注入輸送層および正孔注入輸送層の界面での劣化を抑制することができるからである。また、Ea5<Ea7であるので、第2正孔注入輸送層の構成材料の選択肢の幅が広くなるからである。
【0068】
Ea5<Ea7の場合、Ea5およびEa7の差としては、第2正孔注入輸送層および第3正孔注入輸送層の構成材料に応じて異なるものであるが、具体的には0.1eV以上とすることが好ましく、より好ましくは0.2eV〜2.0eVの範囲内である。
【0069】
一方、第2正孔注入輸送層、第3正孔注入輸送層および正孔注入輸送層の構成材料の電子親和力の関係としては、Ea5≧Ea7≧Ea1であることも好ましい。これにより、駆動中における各層の界面での劣化を抑制することができるからである。
【0070】
上記の場合、第2正孔注入輸送層、第3正孔注入輸送層および正孔注入輸送層の構成材料のイオン化ポテンシャルの関係としては、第2正孔注入輸送層の構成材料のイオン化ポテンシャルをIp5、第3正孔注入輸送層の構成材料のイオン化ポテンシャルをIp7、正孔注入輸送層の構成材料のイオン化ポテンシャルをIp1としたとき、通常はIp5≦Ip7≦Ip1とされる。中でも、Ip5<Ip7<Ip1であることが好ましい。Ip5およびIp1の差が比較的大きい場合には正孔が輸送され難くなるが、Ip5<Ip7<Ip1となるように第2正孔注入輸送層および正孔注入輸送層の間に第3正孔注入輸送層が形成されていることにより、正孔を円滑に輸送することができるからである。また、多少のエネルギー障壁が存在することにより、正孔の注入を制御し、発光効率を高めることができるからである。
【0071】
Ip5<Ip7<Ip1の場合、Ip5およびIp7の差、ならびに、Ip7およびIp1の差としては、正孔注入輸送層、第2正孔注入輸送層および第3正孔注入輸送層の構成材料に応じて異なるものであるが、具体的にはそれぞれ0.1eV以上とすることが好ましく、より好ましくは0.2eV〜0.5eVの範囲内である。
【0072】
本発明においては、図6に例示するように、電子注入輸送層7および第2電子注入輸送層10の間に第3電子注入輸送層12が形成されていてもよい。
この場合、電子注入輸送層、第3電子注入輸送層および第2電子注入輸送層の構成材料のイオン化ポテンシャルの関係としては、電子注入輸送層の構成材料のイオン化ポテンシャルをIp3、第3電子注入輸送層の構成材料のイオン化ポテンシャルをIp8、第2電子注入輸送層の構成材料のイオン化ポテンシャルをIp6としたとき、Ip3≧Ip8、Ip8<Ip6であることが好ましい。これにより、電子注入輸送層および第3電子注入輸送層の界面、ならびに、第2正孔注入輸送層および陰極の界面での劣化を抑制することができるからである。また、Ip8<Ip6であるので、第2電子注入輸送層の構成材料の選択肢の幅が広くなるからである。
【0073】
Ip8<Ip6の場合、Ip8およびIp6の差としては、第2電子注入輸送層および第3電子注入輸送層の構成材料に応じて異なるものであるが、具体的には0.1eV以上とすることが好ましく、より好ましくは0.2eV〜2.0eVの範囲内である。
【0074】
一方、電子注入輸送層、第3電子注入輸送層および第2電子注入輸送層の構成材料のイオン化ポテンシャルの関係としては、Ip3≧Ip8≧Ip6であることも好ましい。これにより、駆動中における各層の界面での劣化を抑制することができるからである。
【0075】
上記の場合、電子注入輸送層、第3電子注入輸送層および第2電子注入輸送層の構成材料の電子親和力の関係としては、電子注入輸送層の構成材料の電子親和力をEa3、第3電子注入輸送層の構成材料の電子親和力をEa8、第2電子注入輸送層の構成材料の電子親和力をEa6としたとき、通常はEa3≦Ea8≦Ea6とされる。中でも、Ea3<Ea8<Ea6であることが好ましい。Ea3およびEa6の差が比較的大きい場合には電子が輸送され難くなるが、Ea3<Ea8<Ea6となるように電子注入輸送層および第2電子注入輸送層の間に第3電子注入輸送層が形成されていることにより、電子を円滑に輸送することができるからである。また、多少のエネルギー障壁が存在することにより、電子の注入を制御し、発光効率を高めることができるからである。
【0076】
Ea3<Ea8<Ea6の場合、Ea3およびEa8の差、ならびに、Ea8およびEa6の差としては、電子注入輸送層、第2電子注入輸送層および第3電子注入輸送層の構成材料に応じて異なるものであるが、具体的にはそれぞれ0.1eV以上とすることが好ましく、より好ましくは0.2eV〜0.5eVの範囲内である。
【0077】
なお、各層の構成材料のイオン化ポテンシャルおよび電子親和力の測定方法は、上述したとおりである。
【0078】
2.中間層
本発明における中間層は、隣り合う発光層の間の少なくともいずれか1箇所に形成されるものであり、n層の発光層に対して1層以上(n−1)層以下の中間層が形成される。また、中間層の構成材料とこの中間層に隣接する発光層のホスト材料とは異なっている。
【0079】
なお、「中間層が、隣り合う発光層の間の少なくともいずれか1箇所に形成されている」とは、例えば発光層が3層以上であり、隣り合う発光層の間が2箇所以上ある場合には、少なくとも1箇所に中間層が形成されていることをいう。例えば図1および図7に示すように発光層(5a,5b,5c)が3層である場合には、隣り合う発光層の間は、陽極側発光層5aおよび中央発光層5bの間と中央発光層5bおよび陰極側発光層5cの間との2箇所となるが、図1に例示するように隣り合う発光層(5a,5b,5c)の間のすべての箇所に中間層6a,6bが形成されていてもよく、図7に例示するように隣り合う発光層(5a,5b,5c)の間の1箇所のみに中間層6が形成されていてもよい。
【0080】
中でも、中間層は、各発光層の間に形成されていることが好ましい。例えば図1に示すように、発光層(5a,5b,5c)が3層である場合には、隣り合う発光層(5a,5b,5c)の間のすべての箇所に中間層6a,6bが形成されていることが好ましい。中間層と中間層に隣接する発光層との間に界面が生じ、多少のエネルギー障壁が存在することにより、中間層と発光層との間での電荷輸送において電荷の注入を制御し、発光効率を一層高めることができるからである。
【0081】
中間層の構成材料としては、正孔および電子を輸送することができる材料であれば特に限定されるものではない。中でも、中間層の構成材料は、バイポーラ材料であることが好ましい。バイポーラ材料を中間層に用いることにより、駆動中における各層の界面での劣化を効果的に抑制することができるからである。
【0082】
バイポーラ材料としては、例えば、ジスチリルアレーン誘導体、多芳香族化合物、芳香族縮合環化合物類、カルバゾール誘導体、複素環化合物等を挙げることができる。具体的には、下記式で示される4,4'-ビス(2,2-ジフェニル-エテン-1-イル)ジフェニル(4,4'-bis(2,2-diphenyl-ethen-1-yl)diphenyl;DPVBi)、4,4'-ビス(カルバゾール-9-イル)ビフェニル(4,4'-bis(carbazol-9-yl)biphenyl;CBP)、2,2',7,7'-テトラキス(カルバゾール-9-イル)-9,9'-スピロ-ビフルオレン(2,2',7,7'-tetrakis(carbazol-9-yl)-9,9'-spiro-bifluorene;spiro-CBP)、4,4''-ジ(N-カルバゾリル)-2',3',5',6'-テトラフェニル-p-テルフェニル(4,4''-di(N-carbazolyl)-2',3',5',6'-tetraphenyl-p-terphenyl;CzTT)、1,3-ビス(カルバゾール-9-イル)-ベンゼン(1,3-bis(carbazole-9-yl)-benzene;m-CP)、3-tert−ブチル-9,10-ジ(ナフサ-2-イル)アントラセン(3-tert−butyl-9,10-di(naphtha-2-yl)anthracene;TBADN)、およびこれらの誘導体等が挙げられる。
【0083】
【化1】

【0084】
【化2】

【0085】
なお、上述の手法により正孔および電子の両キャリアの輸送が可能であると確認される材料は、すべて本発明におけるバイポーラ材料として用いることができる。
【0086】
中間層の数としては、後述の発光層の数に応じて適宜選択されるものであり、1層以上であればよいが、発光層の数が2層または3層であることが好ましいことから、中でも、1層または2層であることが好ましい。
【0087】
中間層の成膜方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法等の乾式法、あるいは、印刷法、インクジェット法、スピンコート法、キャスティング法、ディッピング法、バーコート法、ブレードコート法、ロールコート法、グラビアコート法、フレキソ印刷法、スプレーコート法等の湿式法などを挙げることができる。
【0088】
中間層の厚みは、均一な膜が成膜可能であれば特に限定されるものではなく、具体的には、0.1nm〜30nm程度であることが好ましく、より好ましくは0.5nm〜20nmの範囲内、さらに好ましくは0.8nm〜15nmの範囲内である。
【0089】
3.発光層
本発明における発光層は、n層(nは2以上の整数)形成されており、正孔注入輸送層および電子注入輸送層の間に形成され、ホスト材料および発光ドーパントを含有するものである。この発光層は、電子と正孔との再結合の場を提供して発光する機能を有する。
【0090】
発光層のホスト材料としては、色素系材料、金属錯体系材料、高分子系材料を挙げることができる。
【0091】
色素系材料としては、例えば、シクロペンタジエン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、トリフェニルアミン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ピラゾロキノリン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、シロール誘導体、チオフェン環化合物、ピリジン環化合物、ペリノン誘導体、ペリレン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、トリフマニルアミン誘導体、クマリン誘導体、オキサジアゾールダイマー、ピラゾリンダイマーなどを挙げることができる。
【0092】
金属錯体系材料としては、例えば、アルミキノリノール錯体、ベンゾキノリノールベリリウム錯体、ベンゾオキサゾール亜鉛錯体、ベンゾチアゾール亜鉛錯体、アゾメチル亜鉛錯体、ポルフィリン亜鉛錯体、ユーロピウム錯体、イリジウム金属錯体、プラチナ金属錯体等、中心金属に、Al、Zn、Be、Ir、Pt等、またはTb、Eu、Dy等の希土類金属を有し、配位子に、オキサジアゾール、チアジアゾール、フェニルピリジン、フェニルベンゾイミダゾール、キノリン構造等を有する金属錯体等を挙げることができる。具体的には、トリス(8−ヒドロキシキノリノラト)アルミニウム(Alq3)を用いることができる。
【0093】
高分子系材料としては、例えば、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリアセチレン誘導体、ポリビニルカルバゾール、ポリフルオレノン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリキノキサリン誘導体、ポリジアルキルフルオレン誘導体、およびそれらの共重合体等を挙げることができる。また、上記の色素系材料および金属錯体系材料を高分子化したものも挙げられる。
【0094】
また、発光層のホスト材料はバイポーラ材料であってもよい。バイポーラ材料を発光層に用いることにより、駆動中における各層の界面での劣化を効果的に抑制することができるからである。
なお、バイポーラ材料については、上記中間層の項に記載したので、ここでの説明は省略する。
【0095】
陽極側発光層のホスト材料がバイポーラ材料である場合、陽極側発光層に含まれるバイポーラ材料と正孔注入輸送層に含まれるバイポーラ材料とは同一であってもよく異なっていてもよい。中でも、図4に例示するように、陽極側発光層5aに含まれるバイポーラ材料と正孔注入輸送層4に含まれるバイポーラ材料とが同一である場合には、正孔注入輸送層から陽極側発光層への正孔注入障壁がなくなり、駆動電圧を低下させることができる。
【0096】
陰極側発光層のホスト材料がバイポーラ材料である場合、陰極側発光層に含まれるバイポーラ材料と電子注入輸送層に含まれるバイポーラ材料とは同一であってもよく異なっていてもよい。中でも、図4に例示するように、陰極側発光層5cに含まれるバイポーラ材料と電子注入輸送層7に含まれるバイポーラ材料とが同一である場合には、電子注入輸送層から陰極側発光層への電子注入障壁がなくなり、駆動電圧を低下させることができる。
【0097】
発光層の発光ドーパントは、蛍光発光または燐光発光するものであれば特に限定されるものではない。発光ドーパントとしては、例えば、ペリレン誘導体、クマリン誘導体、ルブレン誘導体、キナクリドン誘導体、スクアリウム誘導体、ポルフィリン誘導体、スチリル色素、テトラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、デカシクレン、フェノキサゾン、キノキサリン誘導体、カルバゾール誘導体、フルオレン誘導体、イリジウム(Ir)化合物、白金化合物、金化合物、オスミウム化合物、ルテニウム(Ru)化合物、レニウム(Re)化合物等を挙げることができる。より具体的には、2,5,8,11-テトラ-tert-ブチルペリレン(2,5,8,11-Tetra-tert-butylperylene)(ペリレン誘導体)、2,3,6,7-テトラヒドロ-1,1,7,7,-テトラメチル-1H,5H,11H-10-(2-ベンゾチアゾリル)キノリジノ-[9,9a,1gh]クマリン(C545t)(2,3,6,7-Tetrahydro-1,1,7,7,-tetramethyl-1H,5H,11H-10-(2-benzothiazolyl)quinolizino-[9,9a,1gh]coumarin(C545t))(クマリン誘導体)、(5,6,11,12)-テトラフェニルナフタセン((5,6,11,12)-Tetraphenylnaphthacene)(ルブレン誘導体)、および、トリス(2-フェニルピリジン)イリジウム(III)(Tris(2-phenylpyridine)iridium(III);Ir(ppy)3)、トリス(1-フェニルイソキノリン)イリジウム(III)(Tris(1-phenylisoquinoline)iridium(III);Ir(piq)3)、ビス(3,5-ジフルオロ-2-(2-ピリジル)フェニル-(2-カルボキシピリジル)イリジウム(III)(Bis(3,5-difluoro-2-(2-pyridyl)phenyl-(2-carboxypyridyl)iridium(III);FIrpic)(イリジウム化合物)が挙げられる。
【0098】
発光層のホスト材料および発光ドーパントの電子親和力およびイオン化ポテンシャルの関係としては、ホスト材料の電子親和力をEah、発光ドーパントの電子親和力をEadとしたとき、Eah<Eadであり、かつ、ホスト材料のイオン化ポテンシャルをIph、発光ドーパントのイオン化ポテンシャルをIpdとしたとき、Iph>Ipdであることが好ましい。ホスト材料および発光ドーパントの電子親和力およびイオン化ポテンシャルが上記の関係を満たす場合には、正孔および電子が発光ドーパントにトラップされるので、発光効率を向上させることができるからである。
【0099】
n層の発光層において、各発光層に含まれるホスト材料は同一であってもよく異なっていてもよい。中でも、n層の発光層のうち、少なくともいずれか2層は互いに異なるホスト材料を含有することが好ましい。後述するように、各発光層に含まれる発光ドーパントは互いに異なることが好ましいことから、その発光層に用いられる発光ドーパントに適したホスト材料を選択することができるからである。例えば、燐光発光ドーパントを含有する発光層と蛍光発光ドーパントを含有する発光層とがある場合に、燐光発光ドーパントを含有する発光層には燐光発光ドーパントに適したホスト材料を用い、蛍光発光ドーパントを含有する発光層には蛍光発光ドーパントに適したホスト材料を用いることができる。
【0100】
また、n層の発光層において、各発光層に含まれる発光ドーパントは互いに異なることが好ましい。それぞれの発光層中の発光ドーパントの間でのエネルギー移動を抑制し、すべての発光層中の発光ドーパントを光らせることができ、発光効率を高めるとともに、所望の発光色を得ることができるからである。
【0101】
中でも、n層の発光層のうち、少なくともいずれか一つが蛍光発光ドーパントを含有し、その他が燐光発光ドーパントを含有することが好ましい。単一の発光層内に蛍光発光ドーパントおよび燐光発光ドーパントが含まれる場合や、蛍光発光ドーパントを含有する発光層と燐光発光ドーパントを含有する発光層とが積層されている場合には、蛍光発光ドーパントおよび燐光発光ドーパントの間でエネルギー移動が起こるおそれがあるが、本発明においては、各発光層の間に中間層が形成されているので、蛍光発光ドーパントおよび燐光発光ドーパントの間でエネルギー移動を抑制し、蛍光発光ドーパントおよび燐光発光ドーパントの両方を光らせることができ、発光効率を高めるとともに、所望の発光色を得ることができるからである。
【0102】
各発光層が互いに異なる種類の発光ドーパントを含有する場合、各発光層に含まれる発光ドーパントの発光色は同じであってもよく異なっていてもよい。中でも、各発光層に含まれる発光ドーパントの発光色は互いに異なることが好ましい。すべての発光層中の発光ドーパントを光らせることにより、所望の発光色を得ることができるからである。
【0103】
特に、発光層が3層であり、3層の発光層が互いに発光色の異なる発光ドーパントを含有することが好ましい。例えば、光の三原色に対応する赤・青・緑の3種類の発光ドーパントを用いる場合には、3層の発光層にそれぞれ1種類の発光ドーパントを含有させ、3種類の発光ドーパントをそれぞれ光らせることで、白色光を得ることができるからである。
【0104】
発光層では、発光ドーパント濃度が層の厚み方向に一定であってもよく、発光ドーパント濃度が層の厚み方向に分布を有していてもよい。
【0105】
n層の発光層のうち、少なくともいずれか一つは2種類以上の発光ドーパントを含有していてもよい。例えば、発光層が2層であり、光の三原色に対応する赤・青・緑の3種類の発光ドーパントを用いる場合、2層の発光層のうち、一方に1種類の発光ドーパントを含有させ、他方に2種類の発光ドーパントを含有させて、3種類の発光ドーパントをそれぞれ発光させることにより、白色光を得ることができる。また例えば、ホスト材料と発光ドーパントとの励起エネルギーの差が比較的大きい場合には、ホスト材料および発光ドーパントの励起エネルギーの中間に励起エネルギーをもつ発光ドーパントをさらに含有させることにより、エネルギー移動を円滑に起こさせることができ、発光効率を向上させることができる。さらに例えば、電子よりも正孔を輸送しやすい発光ドーパントと、正孔よりも電子を輸送しやすい発光ドーパントとを含有させることにより、陽極側発光層および陰極側発光層へ注入される正孔および電子のバランスをとることができ、発光効率を向上させることができる。
【0106】
n層の発光層のうち、少なくともいずれか一つが2種類以上の発光ドーパントを含有する場合、各発光ドーパントがそれぞれ発光してもよく、1種類のみが発光してもよい。発光ドーパントの励起エネルギーの大小、分布状態、および濃度により、1種類もしくはそれぞれの発光ドーパントの発光が得られる。
中でも、例えば、発光層が2層であり、光の三原色に対応する赤・青・緑の3種類の発光ドーパントを用いて白色光を得る場合には、2層の発光層のうち、一方に1種類の発光ドーパントを含有させ、他方に2種類の発光ドーパントを含有させて、3種類の発光ドーパントをそれぞれ発光させることが好ましい。
【0107】
n層の発光層の少なくともいずれか一つが、第1発光ドーパントと、ホスト材料の励起エネルギーよりも小さく、第1発光ドーパントの励起エネルギーよりも大きい励起エネルギーをもつ第2発光ドーパントとを含有する場合、第1発光ドーパントおよび第2発光ドーパントとしては、上述の発光ドーパントの中から適宜選択して用いることができる。例えば、ホスト材料として緑色発光するAlq3を用い、第1発光ドーパントとして赤色発光するDCMを用いる場合、第2発光ドーパントとして黄色発光するルブレンを用いることにより、Alq3(ホスト材料)→ルブレン(第2発光ドーパント)→DCM(第1発光ドーパント)の順に円滑にエネルギー移動を起こさせることができる。
【0108】
n層の発光層の少なくともいずれか一つが、電子よりも正孔を輸送しやすい第3発光ドーパントと、正孔よりも電子を輸送しやすい第4発光ドーパントとを含有する場合、第3発光ドーパントおよび第4発光ドーパントとしては、正孔注入輸送層および電子注入輸送層の構成材料、ならびに発光層のホスト材料の組み合わせに応じて、上述の発光ドーパントの中から適宜選択して用いることができる。例えば、正孔注入輸送層および電子注入輸送層にTBADNを用い、発光層のホスト材料にCBP、発光ドーパントにルブレンを用いた場合、ルブレンは電子よりも正孔を輸送しやすい発光ドーパントとなる。また例えば、正孔注入輸送層および電子注入輸送層にTBADNを用い、発光層のホスト材料にCBP、発光ドーパントにアントラセンジアミンを用いた場合、アントラセンジアミンは正孔よりも電子を輸送しやすい発光ドーパントとなる。
【0109】
なお、発光層が、電子よりも正孔を輸送しやすいものであるか、正孔よりも電子を輸送しやすいものであるかは、ホスト材料と単一の発光ドーパントとを含有する発光層を有する有機EL素子の発光スペクトルの放射パターンの角度依存性を評価することにより確認することができる。すなわち、発光スペクトルの波長、材料の屈折率、有機EL素子にて発光層から光が取り出されるまでの光路長、および放射パターンの角度依存性から確認することができる。
【0110】
n層の発光層の少なくともいずれか一つが、電子よりも正孔を輸送しやすい第3発光ドーパントと、正孔よりも電子を輸送しやすい第4発光ドーパントとを含有する場合、ドープ領域内での第3発光ドーパントおよび第4発光ドーパントの濃度はそれぞれ、層の厚み方向に一定であってもよく、層の厚み方向に分布を有していてもよい。通常は、発光層内での第3発光ドーパントおよび第4発光ドーパントの濃度はそれぞれ、層の厚み方向に一定とされる。
【0111】
n層の発光層の少なくともいずれか一つは、発光ドーパントを含有する1箇所以上のドープ領域と発光ドーパントを含有しない1箇所以上のノンドープ領域とを有することが好ましい。
【0112】
図8に示す例においては、陽極側発光層5aがドープ領域21aとノンドープ領域22aとを有し、ノンドープ領域22aが正孔注入輸送層4側に配置されており、また陰極側発光層5cがドープ領域21bとノンドープ領域22bとを有し、ノンドープ領域22bが電子注入輸送層7側に配置されている。例えば陽極側発光層5a中の発光ドーパントから正孔注入輸送層4の構成材料へエネルギー移動が起こり得る場合には、陽極側発光層5aが正孔注入輸送層4側にノンドープ領域22aを有することにより上記エネルギー移動を起こりにくくし発光効率を向上させることができる。また、例えば陰極側発光層5c中の発光ドーパントから電子注入輸送層7の構成材料へエネルギー移動が起こり得る場合には、陰極側発光層5cが電子注入輸送層7側にノンドープ領域22bを有することにより上記エネルギー移動を起こりにくくし発光効率を向上させることができる。
【0113】
また、図8に示す例においては、中央発光層5bが1箇所のドープ領域21cと2箇所のノンドープ領域22c,22dとを有し、一方のノンドープ領域22cが第1中間層6a側に配置され、他方のノンドープ領域22dが第2中間層6b側に配置されている。例えば中央発光層5b中の発光ドーパントから第1中間層6aの構成材料へエネルギー移動が起こり得る場合には、中央発光層5bが第1中間層6a側にノンドープ領域22cを有することにより上記エネルギー移動を起こりにくくし発光効率を向上させることができる。また、例えば中央発光層5b中の発光ドーパントから第2中間層6bの構成材料へエネルギー移動が起こり得る場合には、中央発光層5bが第2中間層6b側にノンドープ領域22dを有することにより上記エネルギー移動を起こりにくくし発光効率を向上させることができる。
【0114】
図9に示す例においては、陽極側発光層5aが2箇所のドープ領域21a、21bと1箇所のノンドープ領域22とを有し、2箇所のドープ領域21a、21bの間にノンドープ領域22が配置されている。例えばドープ領域21a中の発光ドーパントおよびドープ領域21b中の発光ドーパントの間でエネルギー移動が起こり得る場合には、2つのドープ領域21a,21bの間にノンドープ領域22が配置されていることにより上記エネルギー移動を起こりにくくし発光効率を向上させることができる。具体的には、2つのドープ領域が互いに発光色の異なる発光ドーパントを含有しており、各発光ドーパントがそれぞれ発光することで白色光を得る場合には、2箇所のドープ領域の間にノンドープ領域が配置されていることが好ましい。また、2つのドープ領域のうち、一方が蛍光発光ドーパントを含有し、他方が燐光発光ドーパントを含有しており、各発光ドーパントをそれぞれ発光させる場合にも、2箇所のドープ領域の間にノンドープ領域が配置されていることが好ましい。
【0115】
このように、n層の発光層の少なくともいずれか一つがノンドープ領域を有することにより、発光効率を向上させることができる。
【0116】
なお、発光ドーパントを含有しないノンドープ領域とは、実質的に発光ドーパントを含有しない領域をいう。具体的には、ノンドープ領域とは、ホスト材料および発光ドーパントを共蒸着させて発光層を成膜する際に、発光ドーパントの蒸着源のシャッターを閉じることにより形成される領域をいう。また、ノンドープ領域の厚みが10nm以上である場合、ノンドープ領域とは、隣接するドープ領域中の発光ドーパントの含有量を100%としたときに、発光ドーパントの含有量が10%以下、好ましくは5%以下、さらに好ましくは1%以下である領域を有する領域をいう。
【0117】
ドープ領域およびノンドープ領域の配置としては、n層の発光層の少なくともいずれか一つが1箇所以上のドープ領域と1箇所以上のノンドープ領域とを有するような配置であれば特に限定されるものではない。例えば、陽極側発光層が正孔注入輸送層側にノンドープ領域を有していてもよく、陽極側発光層が中間層側にノンドープ領域を有していてもよく、陰極側発光層が電子注入輸送層側にノンドープ領域を有していてもよく、陰極側発光層が中間層側にノンドープ領域を有していてもよい。また、中央発光層が、片側の中間層側のみにノンドープ領域を有していてもよく、両側の中間層側にノンドープ領域を有していてもよい。さらに、発光層が2箇所のドープ領域に挟まれたノンドープ領域を有していてもよい。また、図示しないが、発光層が2箇所のドープ領域と3箇所のノンドープ領域とを有し、ドープ領域とノンドープ領域とが交互に配置されていてもよい。
【0118】
ドープ領域およびノンドープ領域の配置は、発光ドーパントのエネルギー遷移を考慮して適宜選択される。中でも、正孔および電子の注入バランスがとれるように、ドープ領域およびノンドープ領域の配置を適宜選択することが好ましい。
【0119】
図8に例示する有機EL素子においては、陽極側発光層5aが正孔注入輸送層4側にノンドープ領域22aを有するので、正孔注入輸送層および陽極側発光層の界面で発光ドーパントが正孔注入を阻害することがなく、正孔注入輸送層から陽極側発光層への正孔注入を良好なものとすることができる。
ここで、本発明においては、正孔注入輸送層の構成材料および陽極側発光層のホスト材料の電子親和力の関係がEa1≧Ea2であり、陽極側発光層に注入された電子が対極へ突き抜けるのを防止するブロッキング層が設けられていないため、従来のブロッキング層を有する有機EL素子と同じようにして、陽極側発光層へ注入される正孔および電子のバランスをとることは困難である。
これに対して、図8に例示する有機EL素子においては、陽極側発光層が正孔注入輸送層側にノンドープ領域を有することにより、発光ドーパントによる電荷のトラップを制御することができ、高効率な素子を得ることができる。例えば、発光ドーパントが正孔よりも電子を輸送しやすいものである場合には、電子の注入が過剰になる傾向がある。この場合には、陽極側発光層が正孔注入輸送層側にノンドープ領域を有することにより、発光効率を向上させることができる。これは、陽極側発光層の正孔注入輸送層側(陽極側)にノンドープ領域を設け、陽極側発光層の中間層側(陰極側)にドープ領域を設けることにより、陰極から陽極側発光層に注入された電子が、陽極側発光層中でより多く発光ドーパントにトラップされ、特に陰極側でより多く発光ドーパントにトラップされて、陽極へ突き抜けるのを防止しているためであると思料される。すなわち、陽極側発光層が正孔注入輸送層側にノンドープ領域を有する場合には、電子の注入が過剰である場合に有用である。
【0120】
また、図8に例示する有機EL素子においては、陰極側発光層5cが電子注入輸送層7側にノンドープ領域22bを有するので、電子注入輸送層および陰極側発光層の界面で発光ドーパントが電子注入を阻害することがなく、電子注入輸送層から陰極側発光層への電子注入を良好なものとすることができる。
ここで、本発明においては、電子注入輸送層の構成材料および陰極側発光層のホスト材料のイオン化ポテンシャルの関係がIp3≦Ip4であり、陰極側発光層に注入された正孔が対極へ突き抜けるのを防止するブロッキング層が設けられていないため、従来のブロッキング層を有する有機EL素子と同じようにして、発光層へ注入される正孔および電子のバランスをとることは困難である。
これに対して、図8に例示する有機EL素子においては、陰極側発光層が電子注入輸送層側にノンドープ領域を有することにより、発光ドーパントによる電荷のトラップを制御することができ、高効率な素子を得ることができる。例えば、発光ドーパントが電子よりも正孔を輸送しやすいものである場合には、正孔の注入が過剰になる傾向がある。この場合には、陰極側発光層が電子注入輸送層側にノンドープ領域を有することにより、発光効率を向上させることができる。これは、陰極側発光層の電子注入輸送層側(陰極側)にノンドープ領域を設け、陰極側発光層の中間層側(陽極側)にドープ領域を設けることにより、陽極から陰極側発光層に注入された正孔が、陰極側発光層中でより多く発光ドーパントにトラップされ、特に陽極側でより多く発光ドーパントにトラップされて、陰極へ突き抜けるのを防止しているためであると思料される。すなわち、陰極側発光層が電子注入輸送層側にノンドープ領域を有する場合には、正孔の注入が過剰である場合に有用である。
【0121】
ノンドープ領域の数としては、1箇所以上であればよいが、通常、1〜3箇所程度とされる。一方、ドープ領域の数としては、1箇所以上であればよいが、通常、1〜2箇所程度とされる。
【0122】
ドープ領域は、ホスト材料および発光ドーパントを含有する領域であればよく、ドープ領域では、発光ドーパント濃度が層の厚み方向に一定であってもよく、発光ドーパント濃度が層の厚み方向に分布を有していてもよい。通常は、ドープ領域では、発光ドーパント濃度が層の厚み方向に一定とされる。
【0123】
上述したように、発光層は2種類以上の発光ドーパントを含有していてもよいが、この場合、例えば、1箇所のドープ領域が2種類以上の発光ドーパントを含有していてもよく、2箇所のドープ領域が互いに異なる種類の発光ドーパントを含有していてもよい。
【0124】
1箇所のドープ領域が2種類以上の発光ドーパントを含有する場合において、例えば、発光層が2層であり、光の三原色に対応する赤・青・緑の3種類の発光ドーパントを用いる場合には、2層の発光層のうち、一方を1種類の発光ドーパントを含有するものとし、他方をドープ領域およびノンドープ領域を有し、このドープ領域が2種類の発光ドーパントを含有するものとして、3種類の発光ドーパントをそれぞれ発光させることにより、白色光を得ることができる。また、1箇所のドープ領域が2種類以上の発光ドーパントを含有する場合、例えば、ホスト材料と発光ドーパントとの励起エネルギーの差が比較的大きい場合には、ホスト材料および発光ドーパントの励起エネルギーの中間に励起エネルギーをもつ発光ドーパントをさらに含有させることにより、エネルギー移動を円滑に起こさせることができ、発光効率を向上させることができる。さらに例えば、電子よりも正孔を輸送しやすい発光ドーパントと、正孔よりも電子を輸送しやすい発光ドーパントとを含有させることにより、ドープ領域へ注入される正孔および電子のバランスをとることができ、発光効率を向上させることができる。
【0125】
1箇所のドープ領域が2種類以上の発光ドーパントを含有する場合、各発光ドーパントがそれぞれ発光してもよく、1種類のみが発光してもよい。発光ドーパントの励起エネルギーの大小、分布状態、および濃度により、1種類もしくはそれぞれの発光ドーパントの発光が得られる。
中でも、発光層が2層であり、光の三原色に対応する赤・青・緑の3種類の発光ドーパントを用いて白色光を得る場合であって、2層の発光層のうち、一方を1種類の発光ドーパントを含有するものとし、他方をドープ領域およびノンドープ領域を有し、このドープ領域が2種類の発光ドーパントを含有するものとする場合には、ドープ領域中の2種類の発光ドーパントをそれぞれ発光させることが好ましい。
【0126】
1箇所のドープ領域が、第1発光ドーパントと、ホスト材料の励起エネルギーよりも小さく、第1発光ドーパントの励起エネルギーよりも大きい励起エネルギーをもつ第2発光ドーパントとを含有する場合、第1発光ドーパントおよび第2発光ドーパントとしては、上述の発光ドーパントの中から適宜選択して用いることができる。
【0127】
また、1箇所のドープ領域が、電子よりも正孔を輸送しやすい第3発光ドーパントと、正孔よりも電子を輸送しやすい第4発光ドーパントとを含有する場合、第3発光ドーパントおよび第4発光ドーパントとしては、正孔注入輸送層および電子注入輸送層の構成材料、ならびに発光層のホスト材料の組み合わせに応じて、上述の発光ドーパントの中から適宜選択して用いることができる。
【0128】
1箇所のドープ領域が、電子よりも正孔を輸送しやすい第3発光ドーパントと、正孔よりも電子を輸送しやすい第4発光ドーパントとを含有する場合、ドープ領域内での第3発光ドーパントおよび第4発光ドーパントの濃度はそれぞれ、層の厚み方向に一定であってもよく、層の厚み方向に分布を有していてもよい。通常は、ドープ領域内での第3発光ドーパントおよび第4発光ドーパントの濃度はそれぞれ、層の厚み方向に一定とされる。
【0129】
一方、2箇所のドープ領域が互いに異なる種類の発光ドーパントを含有する場合において、例えば図9に示すように、2層の発光層(5a,5c)と1層の中間層6とが形成されており、光の三原色に対応する赤・青・緑の3種類の発光ドーパントを用い、2層の発光層(5a,5c)のうち、一方の発光層(5a)を2箇所のドープ領域21a,21bおよびノンドープ領域22を有し、この2箇所のドープ領域21a,21bをそれぞれ1種類の発光ドーパントを含有するものとし、他方の発光層(5c)を1種類の発光ドーパントを含有するものとする場合には、2箇所のドープ領域の間にノンドープ領域が配置されていることにより、発光ドーパント間のエネルギー移動を抑制して、発光ドーパントをそれぞれ発光させることができ、発光効率を向上させるともに、白色光を得ることができる。
【0130】
本発明において、白色光を得る場合には、n層の発光層が互いに発光色の異なる発光ドーパントを含有していることが好ましい。例えば、赤色・青色・緑色の3種類の発光ドーパント、青色・黄色の2種類の発光ドーパント、水色・橙色の2種類の発光ドーパント、緑色・紫色の2種類の発光ドーパントの組み合わせを挙げることができる。中でも、赤色・青色・緑色の3種類の発光ドーパントを用いることが好ましい。
【0131】
赤色・青色・緑色の3種類の発光ドーパントを用いる場合において、上述したように、n層の発光層のうち、少なくともいずれか一つが蛍光発光ドーパントを含有し、その他が燐光発光ドーパントを含有することが好ましいことから、例えば、発光層が2層である場合には、一方に青色蛍光発光ドーパントを含有させ、他方に赤色燐光発光ドーパントおよび緑色蛍光発光ドーパントを含有させる、あるいは、一方に赤色蛍光発光ドーパントを含有させ、他方に青色燐光発光ドーパントおよび緑色蛍光発光ドーパントを含有させることが好ましい。また例えば、発光層が3層である場合には、1層に青色蛍光発光ドーパントを含有させ、それ以外の2層の一方に赤色燐光発光ドーパント、他方に緑色蛍光発光ドーパントを含有させる、あるいは、1層に赤色蛍光発光ドーパントを含有させ、それ以外の2層の一方に青色燐光発光ドーパント、他方に緑色蛍光発光ドーパントを含有させることが好ましい。
【0132】
発光層の数としては、2層以上であればよいが、中でも、2層または3層であることが好ましい。
【0133】
各発光層の厚みとしてはそれぞれ、電子と正孔との再結合の場を提供して発光する機能を発現することができる厚みであれば特に限定されるものではなく、例えば1nm〜200nm程度で設定することができる。中でも、発光層の厚みを厚くすることによって、正孔および電子の注入バランスを向上させることで発光効率を高めるには、各発光層の厚みがそれぞれ3nm〜100nmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは5nm〜80nmの範囲内である。
【0134】
発光層がドープ領域とノンドープ領域とを有する場合、ノンドープ領域の厚みは、均一な膜が成膜可能であり、電子と正孔との再結合の場を提供して発光する機能を発現するドープ領域を確保することが可能な厚みであれば特に限定されるものではない。具体的には、ノンドープ領域の厚みは、0.1nm〜30nm程度であることが好ましく、より好ましくは0.5nm〜20nmの範囲内、さらに好ましくは0.8nm〜15nmの範囲内である。
【0135】
発光層の成膜方法としては、ホスト材料および発光ドーパントを共蒸着させる方法が好ましく用いられる。この際、発光ドーパントの蒸着源のシャッターを開閉したり、発光ドーパントの蒸着速度を制御したりすることにより、ドープ領域およびノンドープ領域を有する発光層を形成することができる。
また、溶液からの塗布で薄膜形成が可能な場合には、発光層の成膜方法として、スピンコート法やディップコート法等を用いることができる。この場合、ホスト材料および発光ドーパントを不活性なポリマー中に分散して用いてもよい。
【0136】
また、発光層中の発光ドーパント濃度に分布をつける場合には、例えば、ホスト材料および発光ドーパントの蒸着速度を連続的または周期的に変化させる方法を用いることができる。
【0137】
4.正孔注入輸送層
本発明に用いられる正孔注入輸送層は、陽極および発光層の間に形成され、正孔および電子を輸送しうるバイポーラ材料を含有するものであり、正孔注入輸送層および電子注入輸送層に含有されるバイポーラ材料は同一である。この正孔注入輸送層は、陽極から発光層に正孔を安定に注入または輸送する機能を有する。
【0138】
正孔注入輸送層としては、正孔注入機能を有する正孔注入層、および正孔輸送機能を有する正孔輸送層のいずれか一方であってもよく、あるいは、正孔注入機能および正孔輸送機能の両機能を有する単一の層であってもよい。
【0139】
なお、バイポーラ材料については、上記中間層の項に記載したので、ここでの説明は省略する。
【0140】
正孔注入輸送層は、少なくとも陽極との界面に、バイポーラ材料に酸化性ドーパントが混合された領域を有していてもよい。正孔注入輸送層が、少なくとも陽極との界面にて、バイポーラ材料に酸化性ドーパントが混合された領域を有することにより、陽極から正孔注入輸送層への正孔注入障壁が小さくなり、駆動電圧を低下させることができるからである。
有機EL素子において、陽極から基本的に絶縁物である有機層への正孔注入過程は、陽極表面での有機化合物の酸化、すなわちラジカルカチオン状態の形成である(Phys. Rev.Lett., 14, 229 (1965))。あらかじめ有機化合物を酸化する酸化性ドーパントを陽極に接触する正孔注入輸送層中にドープすることにより、陽極からの正孔注入に際するエネルギー障壁を低下させることができる。酸化性ドーパントがドープされた正孔注入輸送層中には、酸化性ドーパントにより酸化された状態(すなわち電子を供与した状態)の有機化合物が存在するので、正孔注入エネルギー障壁が小さく、従来の有機EL素子と比べて駆動電圧を低下させることができるのである。
【0141】
酸化性ドーパントとしては、バイポーラ材料を酸化する性質を有するものであれば特に限定されるものではないが、通常は電子受容性化合物が用いられる。
【0142】
電子受容性化合物としては、無機物および有機物のいずれも用いることができる。電子受容性化合物が無機物である場合、例えば、塩化第二鉄、塩化アルミニウム、塩化ガリウム、塩化インジウム、五塩化アンチモン、三酸化モリブデン(MoO)、五酸化バナジウム(V)等のルイス酸が挙げられる。また、電子受容性化合物が有機物である場合、例えば、トリニトロフルオレノン等が挙げられる。
【0143】
中でも、電子受容性化合物としては、金属酸化物が好ましく、MoO、Vが好適に用いられる。
【0144】
正孔注入輸送層が、バイポーラ材料に酸化性ドーパントが混合された領域を有する場合、正孔注入輸送層は、少なくとも陽極との界面に上記の領域を有していればよく、例えば、正孔注入輸送層中に、酸化性ドーパントが均一にドープされていてもよく、酸化性ドーパントの含有量が陰極側から陽極側に向けて連続的に多くなるように酸化性ドーパントがドープされていてもよく、正孔注入輸送層の陽極との界面のみに局所的に酸化性ドーパントがドープされていてもよい。
【0145】
正孔注入輸送層中の酸化性ドーパント濃度は、特に限定されるものではないが、バイポーラ材料と酸化性ドーパントとのモル比率が、バイポーラ材料:酸化性ドーパント=1:0.1〜1:10の範囲内であることが好ましい。酸化性ドーパントの比率が上記範囲未満であると、酸化性ドーパントにより酸化されたバイポーラ材料の濃度が低すぎてドーピングの効果が十分に得られない場合があるからである。また、酸化性ドーパントの比率が上記範囲を超えると、正孔注入輸送層中の酸化性ドーパント濃度がバイポーラ材料濃度をはるかに超えて、酸化性ドーパントにより酸化されたバイポーラ材料の濃度が極端に低下するので、同様にドーピングの効果が十分に得られない場合があるからである。
【0146】
正孔注入輸送層の成膜方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法等の乾式法、あるいは、印刷法、インクジェット法、スピンコート法、キャスティング法、ディッピング法、バーコート法、ブレードコート法、ロールコート法、グラビアコート法、フレキソ印刷法、スプレーコート法等の湿式法などを挙げることができる。
【0147】
中でも、酸化性ドーパントがドープされた正孔注入輸送層の成膜方法としては、バイポーラ材料と酸化性ドーパントとを共蒸着させる方法が好ましく用いられる。この共蒸着の手法において、塩化第二鉄、塩化インジウム等の比較的飽和蒸気圧の低い酸化性ドーパントはるつぼに入れて一般的な抵抗加熱法によって蒸着可能である。一方、常温でも蒸気圧が高く真空装置内の気圧を所定の真空度以下に保てない場合は、ニードルバルブやマスフローコントローラーのようにオリフィス(開口径)を制御して蒸気圧を制御したり、試料保持部分を独立に温度制御可能な構造にして冷却によって蒸気圧を制御したりしてもよい。
【0148】
また、陽極側発光層側から陽極側に向けて酸化性ドーパントの含有量が連続的に多くなるように、バイポーラ材料に酸化性ドーパントを混合させる方法としては、例えば、上記のバイポーラ材料と酸化性ドーパントとの蒸着速度を連続的に変化させる方法を用いることができる。
【0149】
正孔注入輸送層の厚みとしては、陽極から正孔を注入し、発光層へ正孔を輸送する機能が十分に発揮される厚みであれば特に限定されるものではないが、具体的には0.5nm〜1000nm程度で設定することができ、中でも5nm〜500nmの範囲内であることが好ましい。
【0150】
また、酸化性ドーパントがドープされた正孔注入輸送層の厚みとしては、特に限定されるものではないが、0.5nm以上とすることが好ましい。酸化性ドーパントがドープされた正孔注入輸送層は、無電場の状態でもバイポーラ材料がラジカルカチオンの状態で存在し、内部電荷として振る舞えるので、膜厚は特に限定されないのである。また、酸化性ドーパントがドープされた正孔注入輸送層を厚膜にしても、素子の電圧上昇をもたらすことがないので、陽極および陰極間の距離を通常の有機EL素子の場合よりも長く設定することにより、短絡の危険性を大幅に軽減させることもできる。
【0151】
5.電子注入輸送層
本発明に用いられる電子注入輸送層は、陰極および発光層の間に形成され、バイポーラ材料を含有するものであり、正孔注入輸送層および電子注入輸送層に含有されるバイポーラ材料は同一である。この電子注入輸送層は、陰極から発光層に電子を安定に注入または輸送する機能を有するものである。
【0152】
電子注入輸送層としては、電子注入機能を有する電子注入層、および電子輸送機能を有する電子輸送層のいずれか一方であってもよく、あるいは、電子注入機能および電子輸送機能の両機能を有する単一の層であってもよい。
【0153】
なお、バイポーラ材料については、上記中間層の項に記載したので、ここでの説明は省略する。
【0154】
電子注入輸送層は、少なくとも陰極との界面に、バイポーラ材料に還元性ドーパントが混合された領域を有していてもよい。電子注入輸送層が、少なくとも陰極との界面にて、バイポーラ材料に還元性ドーパントが混合された領域を有することにより、陰極から電子注入輸送層への電子注入障壁が小さくなり、駆動電圧を低下させることができるからである。
有機EL素子において、陰極から基本的に絶縁物である有機層への電子注入過程は、陰極表面での有機化合物の還元、すなわちラジカルアニオン状態の形成である(Phys. Rev. Lett., 14, 229 (1965))。あらかじめ有機化合物を還元する還元性ドーパントを陰極に接触する電子注入輸送層中にドープすることにより、陰極からの電子注入に際するエネルギー障壁を低下させることができる。電子注入輸送層中には、還元性ドーパントにより還元された状態(すなわち電子を受容し、電子が注入された状態)の有機化合物が存在するので、電子注入エネルギー障壁が小さく、従来の有機EL素子と比べて駆動電圧を低下させることができるのである。さらには、陰極に、一般に配線材として用いられている安定なAlのような金属を使用することができる。
【0155】
還元性ドーパントしては、バイポーラ材料を還元する性質を有するものであれば特に限定されるものではないが、通常は電子供与性化合物が用いられる。
【0156】
電子供与性化合物としては、金属(金属単体)、金属化合物、または有機金属錯体が好ましく用いられる。金属(金属単体)、金属化合物、または有機金属錯体としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、および希土類金属を含む遷移金属からなる群から選択される少なくとも1種の金属を含むものを挙げることができる。中でも、仕事関数が4.2eV以下である、アルカリ金属、アルカリ土類金属、および希土類金属を含む遷移金属からなる群から選択される少なくとも1種の金属を含むものであることが好ましい。このような金属(金属単体)としては、例えば、Li、Na、K、Cs、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Y、La、Mg、Sm、Gd、Yb、Wなどが挙げられる。また、金属化合物としては、例えば、Li2O、Na2O、K2O、Rb2O、Cs2O、MgO、CaO等の金属酸化物、LiF、NaF、KF、RbF、CsF、MgF2、CaF2、SrF2、BaF2、LiCl、NaCl、KCl、RbCl、CsCl、MgCl2、CaCl2、SrCl2、BaCl2等の金属塩などが挙げられる。有機金属錯体としては、例えば、Wを含む有機金属化合物、8−ヒドロキシキノリノラトリチウム(Liq)などが挙げられる。中でも、Cs、Li、Liqが好ましく用いられる。これらをバイポーラ材料にドープすることにより、良好な電子注入特性が得られるからである。
【0157】
電子注入輸送層が、バイポーラ材料に還元性ドーパントが混合された領域を有する場合、電子注入輸送層は、少なくとも陰極との界面に上記の領域を有していればよく、例えば、電子注入輸送層中に、還元性ドーパントが均一にドープされていてもよく、還元性ドーパントの含有量が陽極側から陰極側に向けて連続的に多くなるように還元性ドーパントがドープされていてもよく、電子注入輸送層の陰極との界面のみに局所的に還元性ドーパントがドープされていてもよい。
【0158】
電子注入輸送層中の還元性ドーパント濃度は、特に限定されるものではないが、0.1〜99重量%程度とすることが好ましい。還元性ドーパント濃度が上記範囲未満であると、還元性ドーパントにより還元されたバイポーラ材料の濃度が低すぎてドーピングの効果が十分に得られない場合があるからである。また、還元性ドーパント濃度が上記範囲を超えると、電子注入輸送層中の還元性ドーパント濃度がバイポーラ材料濃度をはるかに超え、還元性ドーパントにより還元されたバイポーラ材料の濃度が極端に低下するので、同様にドーピングの効果が十分に得られない場合があるからである。
【0159】
電子注入輸送層の成膜方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法等の乾式法、あるいは、印刷法、インクジェット法、スピンコート法、キャスティング法、ディップコート法、バーコート法、ブレードコート法、ロールコート法、グラビアコート法、フレキソ印刷法、スプレーコート法等の湿式法などを挙げることができる。
【0160】
中でも、還元性ドーパントがドープされた電子注入輸送層の成膜方法としては、上記のバイポーラ材料と還元性ドーパントとを共蒸着させる方法が好ましく用いられる。
なお、溶液からの塗布で薄膜形成が可能な場合には、還元性ドーパントがドープされた電子注入輸送層の成膜方法として、スピンコート法やディップコート法等を用いることができる。この場合、バイポーラ材料と還元性ドーパントとを不活性なポリマー中に分散して用いてもよい。
【0161】
また、陽極側から陰極側に向けて還元性ドーパントの含有量が連続的に多くなるように、バイポーラ材料に還元性ドーパントを混合させる方法としては、例えば、上記のバイポーラ材料と還元性ドーパントとの蒸着速度を連続的に変化させる方法を用いることができる。
【0162】
電子注入輸送層の厚みとしては、その機能が十分に発揮される厚みであれば特に限定されるものではない。
【0163】
また、還元性ドーパントがドープされた電子注入輸送層の厚みとしては、特に限定されるものでないが、0.1nm〜300nmの範囲内とすることが好ましく、より好ましくは0.5nm〜200nmの範囲内である。厚みが上記範囲未満であると、陰極界面近傍に存在する、還元性ドーパントにより還元されたバイポーラ材料の量が少ないためにドーピングの効果が十分に得られない場合があるからである。また、厚みが上記範囲を超えると、電子注入輸送層全体の膜厚が厚すぎて、駆動電圧の上昇を招くおそれがあるからである。
【0164】
6.第2正孔注入輸送層
本発明においては、陽極および正孔注入輸送層の間に第2正孔注入輸送層が形成されていてもよい。この場合、第2正孔注入輸送層および正孔注入輸送層の構成材料のイオン化ポテンシャルおよび電子親和力は、上述した関係を満たすことが好ましい。
【0165】
陽極および正孔注入輸送層の間に第2正孔注入輸送層が形成されている場合、通常は、第2正孔注入輸送層が正孔注入層として機能し、正孔注入輸送層が正孔輸送層として機能する。
【0166】
第2正孔注入輸送層の構成材料としては、陽極からの正孔の注入を安定化させることができる材料であれば特に限定されるものではなく、上記発光層のホスト材料に例示した化合物の他、アリールアミン類、スターバースト型アミン類、フタロシアニン類、酸化バナジウム、酸化モリブデン、酸化ルテニウム、酸化アルミニウム等の酸化物、アモルファスカーボン、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリフェニレンビニレン等の導電性高分子およびそれらの誘導体を用いることができる。ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリフェニレンビニレン等の導電性高分子およびそれらの誘導体は、酸がドープされていてもよい。具体的には、N,N´−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N´−ビス(フェニル)−ベンジジン(α−NPD)、4,4,4−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(MTDATA)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸(PEDOT/PSS)、ポリビニルカルバゾール(PVCz)等が挙げられる。
【0167】
中でも、第2正孔注入輸送層の構成材料は、バイポーラ材料であることが好ましい。バイポーラ材料を第2正孔注入輸送層に用いることにより、駆動中における層界面での劣化を効果的に抑制することができるからである。
なお、バイポーラ材料については、上記中間層の項に記載したので、ここでの説明は省略する。
【0168】
第2正孔注入輸送層および後述の第2電子注入輸送層がバイポーラ材料を含有する場合、これらの層に含有されるバイポーラ材料は、同一であってもよく異なっていてもよい。
【0169】
第2正孔注入輸送層の構成材料が有機材料(正孔注入輸送層用有機化合物)である場合、第2正孔注入輸送層は、少なくとも陽極との界面に、上記正孔注入輸送層用有機化合物に酸化性ドーパントが混合された領域を有することが好ましい。第2正孔注入輸送層が、少なくとも陽極との界面にて、正孔注入輸送層用有機化合物に酸化性ドーパントが混合された領域を有することにより、陽極から第2正孔注入輸送層への正孔注入障壁が小さくなり、駆動電圧を低下させることができるからである。
なお、第2正孔注入輸送層が正孔注入輸送層用有機化合物に酸化性ドーパントが混合された領域を有する場合については、上記正孔注入輸送層がバイポーラ材料に酸化性ドーパントが混合された領域を有する場合と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0170】
また、第2正孔注入輸送層の成膜方法および厚みについては、上述の正孔注入輸送層と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0171】
7.第2電子注入輸送層
本発明においては、電子注入輸送層および陰極の間に第2電子注入輸送層が形成されていてもよい。この場合、電子注入輸送層および第2電子注入輸送層の構成材料のイオン化ポテンシャルおよび電子親和力は、上述した関係を満たすことが好ましい。
【0172】
電子注入輸送層および陰極の間に第2電子注入輸送層が形成されている場合、通常は、第2電子注入輸送層が電子注入層として機能し、電子注入輸送層が電子輸送層として機能する。
【0173】
第2電子注入輸送層の構成材料としては、陰極からの電子の注入を安定化させることができる材料であれば特に限定されるものではなく、上記発光層のホスト材料に例示した化合物の他、Ba、Ca、Li、Cs、Mg、Sr等のアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の単体、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、フッ化ストロンチウム、フッ化バリウム、フッ化リチウム、フッ化セシウム等のアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属のフッ化物、アルミリチウム合金等のアルカリ金属の合金、酸化マグネシウム、酸化ストロンチウム、酸化アルミニウム等の金属酸化物、ポリメチルメタクリレートポリスチレンスルホン酸ナトリウム等のアルカリ金属の有機錯体などを挙げることができる。また、バソキュプロイン(BCP)、バソフェナントロリン(Bpehn)等のフェナントロリン誘導体、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、トリス(8−ヒドロキシキノリノラト)アルミニウム(Alq3)等のアルミキノリノール錯体などを挙げることができる。
【0174】
中でも、第2電子注入輸送層の構成材料は、バイポーラ材料であることが好ましい。バイポーラ材料を第2電子注入輸送層に用いることにより、駆動中における層界面での劣化を効果的に抑制することができる。
なお、バイポーラ材料については、上記中間層の項に記載したので、ここでの説明は省略する。
【0175】
第2電子注入輸送層の構成材料が有機化合物(電子注入輸送層用有機化合物)である場合、第2電子注入輸送層は、少なくとも陰極との界面に、上記電子注入輸送層用有機化合物に還元性ドーパントが混合された領域を有することが好ましい。第2電子注入輸送層が、少なくとも陰極との界面にて、電子注入輸送層用有機化合物に還元性ドーパントが混合された領域を有することにより、陰極から第2電子注入輸送層への電子注入障壁が小さくなり、駆動電圧を低下させることができるからである。
なお、第2電子注入輸送層が電子注入輸送層用有機化合物に還元性ドーパントが混合された領域を有する場合については、電子注入輸送層がバイポーラ材料に還元性ドーパントが混合された領域を有する場合と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0176】
また、第2電子注入輸送層の成膜方法および厚みについては、上述の電子注入輸送層と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0177】
8.第3正孔注入輸送層
本発明においては、第2正孔注入輸送層および正孔注入輸送層の間に第3正孔注入輸送層が形成されていてもよい。この場合、第2正孔注入輸送層、第3正孔注入輸送層および正孔注入輸送層の構成材料のイオン化ポテンシャルおよび電子親和力は、上述した関係を満たすことが好ましい。
【0178】
第2正孔注入輸送層および正孔注入輸送層の間に第3正孔注入輸送層が形成されている場合、通常は、第2正孔注入輸送層が正孔注入層として機能し、第3正孔注入輸送層および正孔注入輸送層が正孔輸送層として機能する。
【0179】
第3正孔注入輸送層の構成材料としては、上記第2正孔注入輸送層の構成材料と同様のものを用いることができる。
【0180】
中でも、第3正孔注入輸送層の構成材料はバイポーラ材料であることが好ましい。バイポーラ材料を第3正孔注入輸送層に用いることにより、駆動中における層界面での劣化を効果的に抑制することができる。
なお、バイポーラ材料については、上記中間層の項に記載したので、ここでの説明は省略する。
【0181】
第3正孔注入輸送層および後述の第3電子注入輸送層がバイポーラ材料を含有する場合、これらの層に含有されるバイポーラ材料は、同一であってもよく異なっていてもよい。
【0182】
なお、第3正孔注入輸送層の成膜方法および厚みについては、上述の正孔注入輸送層と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0183】
9.第3電子注入輸送層
本発明においては、電子注入輸送層および第2電子注入輸送層の間に第3電子注入輸送層が形成されていてもよい。この場合、電子注入輸送層、第3電子注入輸送層および第2電子注入輸送層の構成材料のイオン化ポテンシャルおよび電子親和力は、上述した関係を満たすことが好ましい。
【0184】
電子注入輸送層および第2電子注入輸送層の間に第3電子注入輸送層が形成されている場合、通常は、第2電子注入輸送層が電子注入層として機能し、第3電子注入輸送層および電子注入輸送層が電子輸送層として機能する。
【0185】
第3電子注入輸送層の構成材料としては、上記第2電子注入輸送層の構成材料と同様のものを用いることができる。
【0186】
中でも、第3電子注入輸送層の構成材料はバイポーラ材料であることが好ましい。バイポーラ材料を第3電子注入輸送層に用いることにより、駆動中における層界面での劣化を効果的に抑制することができる。
なお、バイポーラ材料については、上記中間層の項に記載したので、ここでの説明は省略する。
【0187】
なお、第3電子注入輸送層の成膜方法および厚みについては、上述の電子注入輸送層と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0188】
10.陽極
本発明に用いられる陽極は、透明であっても不透明であってもよいが、陽極側から光を取り出す場合には透明電極である必要がある。
【0189】
陽極には、正孔が注入し易いように仕事関数の大きい導電性材料を用いることが好ましい。また、陽極は抵抗ができるだけ小さいことが好ましく、一般には、金属材料が用いられるが、有機物あるいは無機化合物を用いてもよい。具体的には、酸化錫、酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)等が挙げられる。
【0190】
陽極は、一般的な電極の形成方法を用いて形成することができ、例えばスパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等が挙げられる。
また、陽極の厚みとしては、目的とする抵抗値や可視光線透過率、および導電性材料の種類により適宜選択される。
【0191】
11.陰極
本発明に用いられる陰極は、透明であっても不透明であってもよいが、陰極側から光を取り出す場合には透明電極である必要がある。
【0192】
陰極には、電子が注入しやすいように仕事関数の小さな導電性材料を用いることが好ましい。また、陰極は抵抗ができるだけ小さいことが好ましく、一般には、金属材料が用いられるが、有機物あるいは無機化合物を用いてもよい。具体的には、単体としてAl、Cs、Er等、合金としてMgAg、AlLi、AlLi、AlMg、CsTe等、積層体としてCa/Al、Mg/Al、Li/Al、Cs/Al、CsO/Al、LiF/Al、ErF/Al等が挙げられる。
【0193】
陰極は、一般的な電極の形成方法を用いて形成することができ、例えばスパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等が挙げられる。
また、陰極の厚みとしては、目的とする抵抗値や可視光線透過率、および導電性材料の種類により適宜選択される。
【0194】
12.基板
本発明における基板は、上記の陽極、正孔注入輸送層、発光層、中間層、電子注入輸送層、および陰極等を支持するものである。陽極もしくは陰極が所定の強度を有する場合には、陽極もしくは陰極が基板を兼ねていてもよいが、通常は所定の強度を有する基板上に陽極もしくは陰極形成される。また、一般的に有機EL素子を製造する際には、陽極側から積層する方が安定して有機EL素子を作製することができることから、通常は、基板上には、陽極、正孔注入輸送層、発光層および中間層、電子注入輸送層、陰極の順に積層される。
【0195】
基板は、透明であっても不透明であってもよいが、基板側から光を取り出す場合には透明基板である必要がある。透明基板としては、例えば、ソーダ石灰ガラス、アルカリガラス、鉛アルカリガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミノケイ酸ガラス、シリカガラス等のガラス基板や、フィルム状に成形が可能な樹脂基板などを用いることができる。
【0196】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0197】
以下、本発明について実施例および比較例を用いて具体的に説明する。
まず、実施例で用いた材料の構造式、ならびにイオン化ポテンシャルおよび電子親和力を下記に示す。
【0198】
【化3】

【0199】
【化4】

【0200】
【化5】

【0201】
【表1】

【0202】
[実施例1]
(有機EL素子の作製)
まず、ガラス基板上に陽極としてITOが2mm幅のライン状にパターニングされたITO基板を準備した。そのITO基板上に、上記構造式で表されるTBADNとMoO3とを体積比67:33で真空度10-5Paの条件下、共蒸着により1.0Å/secの蒸着速度で合計膜厚10nmとなるように成膜し、正孔注入層(1層目の正孔注入輸送層)を形成した。次に、TBADNとMoO3とを体積比90:10で真空度10-5Paの条件下、共蒸着により1.0Å/secの蒸着速度で合計膜厚100nmとなるように真空蒸着し、その上にTBADNを10nmの厚さになるように真空蒸着し、正孔輸送層(2層目の正孔注入輸送層)を形成した。
【0203】
次に、ホスト材料として上記構造式で表されるTCTAを用い、青色発光ドーパントとして上記構造式で表されるTBPeを用いて、上記正孔輸送層上に、TCTAおよびTBPeを、TBPe濃度が3wt%となるように、真空度10-5Paの条件下、蒸着速度1Å/secで10nmの厚さに真空蒸着により成膜し、青色発光層(1層目の発光層)を形成した。
次に、上記青色発光層上に、TBADNを、真空度10-5Paの条件下、1.0Å/secの蒸着速度で5nmの厚さに真空蒸着により成膜し、中間層(1層目の中間層)を形成した。
次に、ホスト材料としてTCTAを用い、緑色発光ドーパントとして上記構造式で表されるC545Tを用いて、上記中間層上に、TCTAおよびC545Tを、C545T濃度が3wt%となるように、真空度10-5Paの条件下、蒸着速度1Å/secで5nmの厚さに真空蒸着により成膜し、緑色発光層(2層目の発光層)を形成した。
次に、上記緑色発光層上に、TBADNを、真空度10-5Paの条件下、1.0Å/secの蒸着速度で5nmの厚さに真空蒸着により成膜し、中間層(2層目の中間層)を形成した。
次に、ホスト材料として上記構造式で表されるCBPを用い、赤色発光ドーパントとして上記構造式で表されるIr(piq)3を用いて、上記中間層上に、CBPおよびIr(piq)3を、Ir(piq)3濃度が3wt%となるように、真空度10-5Paの条件下、蒸着速度1Å/secで10nmの厚さに真空蒸着により成膜し、赤色発光層(3層目の発光層)を形成した。
【0204】
次に、上記赤色発光層上に、TBADNを、真空度10-5Paの条件下、蒸着速度が1Å/secで10nmの厚さに真空蒸着により成膜し、電子輸送層(1層目の電子注入輸送層)を形成した。次に、上記電子輸送層上に、TBADNと、上記構造式で表されるLiqとを体積比1:1で真空度10-5Paの条件下、共蒸着により蒸着速度1Å/secで膜厚10nmに成膜し、電子注入層(2層目の電子注入輸送層)を形成した。
【0205】
最後に、上記電子注入層上に陰極としてAlを蒸着速度5Å/secで100nmの厚さに蒸着した。
【0206】
[実施例2]
(有機EL素子の作製)
まず、ガラス基板上に陽極としてITOが2mm幅のライン状にパターニングされたITO基板を準備した。そのITO基板上に、TBADNとMoO3とを体積比67:33で真空度10-5Paの条件下、共蒸着により1.0Å/secの蒸着速度で合計膜厚10nmとなるように成膜し、正孔注入層(1層目の正孔注入輸送層)を形成した。次に、TBADNとMoO3とを体積比90:10で真空度10-5Paの条件下、共蒸着により1.0Å/secの蒸着速度で合計膜厚100nmとなるように真空蒸着し、その上にTBADNを10nmの厚さになるように真空蒸着し、正孔輸送層(2層目の正孔注入輸送層)を形成した。
【0207】
次に、ホスト材料としてTCTAを用い、青色発光ドーパントとしてTBPeを用いて、上記正孔輸送層上に、TCTAおよびTBPeを、TBPe濃度が3wt%となるように、真空度10-5Paの条件下、蒸着速度1Å/secで10nmの厚さに真空蒸着により成膜し、青色発光層(1層目の発光層)を形成した。
次に、ホスト材料としてTCTAを用い、緑色発光ドーパントとしてC545Tを用いて、上記青色発光層上に、TCTAおよびC545Tを、C545T濃度が3wt%となるように、真空度10-5Paの条件下、蒸着速度1Å/secで5nmの厚さに真空蒸着により成膜し、緑色発光層(2層目の発光層)を形成した。
次に、上記緑色発光層上に、TBADNを、真空度10-5Paの条件下、1.0Å/secの蒸着速度で5nmの厚さに真空蒸着により成膜し、中間層を形成した。
次に、ホスト材料としてCBPを用い、赤色発光ドーパントとしてIr(piq)3を用いて、上記中間層上に、CBPおよびIr(piq)3を、Ir(piq)3濃度が3wt%となるように、真空度10-5Paの条件下、蒸着速度1Å/secで10nmの厚さに真空蒸着により成膜し、赤色発光層(3層目の発光層)を形成した。
【0208】
次に、上記赤色発光層上に、TBADNを、真空度10-5Paの条件下、蒸着速度が1Å/secで10nmの厚さに真空蒸着により成膜し、電子輸送層(1層目の電子注入輸送層)を形成した。次に、上記電子輸送層上に、TBADNと、Liqとを体積比1:1で真空度10-5Paの条件下、共蒸着により蒸着速度1Å/secで膜厚10nmに成膜し、電子注入層(2層目の電子注入輸送層)を形成した。
【0209】
最後に、上記電子注入層上に陰極としてAlを蒸着速度5Å/secで100nmの厚さに蒸着した。
【0210】
[実施例3]
(有機EL素子の作製)
まず、ガラス基板上に陽極としてITOが2mm幅のライン状にパターニングされたITO基板を準備した。そのITO基板上に、TBADNとMoO3とを体積比67:33で真空度10-5Paの条件下、共蒸着により1.0Å/secの蒸着速度で合計膜厚10nmとなるように成膜し、正孔注入層(1層目の正孔注入輸送層)を形成した。次に、TBADNとMoO3とを体積比90:10で真空度10-5Paの条件下、共蒸着により1.0Å/secの蒸着速度で合計膜厚100nmとなるように真空蒸着し、その上にTBADNを10nmの厚さになるように真空蒸着し、正孔輸送層(2層目の正孔注入輸送層)を形成した。
【0211】
次に、ホスト材料としてTCTAを用い、青色発光ドーパントとしてTBPeを用いて、上記正孔輸送層上に、TCTAおよびTBPeを、TBPe濃度が3wt%となるように、真空度10-5Paの条件下、蒸着速度1Å/secで10nmの厚さに真空蒸着により成膜し、青色発光層(1層目の発光層)を形成した。
次に、上記青色発光層上に、TBADNを、真空度10-5Paの条件下、1.0Å/secの蒸着速度で5nmの厚さに真空蒸着により成膜し、中間層を形成した。
次に、ホスト材料としてTCTAを用い、緑色発光ドーパントとしてC545Tを用いて、上記中間層上に、TCTAおよびC545Tを、C545T濃度が3wt%となるように、真空度10-5Paの条件下、蒸着速度1Å/secで5nmの厚さに真空蒸着により成膜し、緑色発光層(2層目の発光層)を形成した。
次に、ホスト材料としてCBPを用い、赤色発光ドーパントとしてIr(piq)3を用いて、上記中間層上に、CBPおよびIr(piq)3を、Ir(piq)3濃度が3wt%となるように、真空度10-5Paの条件下、蒸着速度1Å/secで10nmの厚さに真空蒸着により成膜し、赤色発光層(3層目の発光層)を形成した。
【0212】
次に、上記赤色発光層上に、TBADNを、真空度10-5Paの条件下、蒸着速度が1Å/secで10nmの厚さに真空蒸着により成膜し、電子輸送層(1層目の電子注入輸送層)を形成した。次に、上記電子輸送層上に、TBADNと、Liqとを体積比1:1で真空度10-5Paの条件下、共蒸着により蒸着速度1Å/secで膜厚10nmに成膜し、電子注入層(2層目の電子注入輸送層)を形成した。
【0213】
最後に、上記電子注入層上に陰極としてAlを蒸着速度5Å/secで100nmの厚さに蒸着した。
【0214】
[比較例1]
(有機EL素子の作製)
まず、ガラス基板上に陽極としてITOが2mm幅のライン状にパターニングされたITO基板を準備した。そのITO基板上に、上記構造式で表されるα-NPDとMoO3とを体積比67:33で真空度10-5Paの条件下、共蒸着により1.0Å/secの蒸着速度で合計膜厚10nmとなるように成膜し、正孔注入層を形成した。次に、α-NPDとMoO3とを体積比90:10で真空度10-5Paの条件下、共蒸着により1.0Å/secの蒸着速度で合計膜厚100nmとなるように真空蒸着し、その上にα-NPDを10nmの厚さになるように真空蒸着し、正孔輸送層を形成した。
【0215】
次に、ホスト材料としてTCTAを用い、青色発光ドーパントとしてTBPeを用いて、上記正孔輸送層上に、TCTAおよびTBPeを、TBPe濃度が3wt%となるように、真空度10-5Paの条件下、蒸着速度1Å/secで10nmの厚さに真空蒸着により成膜し、青色発光層(1層目の発光層)を形成した。
次に、ホスト材料としてTCTAを用い、緑色発光ドーパントとしてC545Tを用いて、上記青色発光層上に、TCTAおよびC545Tを、C545T濃度が3wt%となるように、真空度10-5Paの条件下、蒸着速度1Å/secで5nmの厚さに真空蒸着により成膜し、緑色発光層(2層目の発光層)を形成した。
次に、ホスト材料としてCBPを用い、赤色発光ドーパントとしてIr(piq)3を用いて、上記緑色色発光層上に、CBPおよびIr(piq)3を、Ir(piq)3濃度が3wt%となるように、真空度10-5Paの条件下、蒸着速度1Å/secで10nmの厚さに真空蒸着により成膜し、赤色発光層(3層目の発光層)を形成した。
【0216】
次に、上記赤色発光層上に、上記構造式で表されるAlq3を、真空度10-5Paの条件下、蒸着速度が1Å/secで10nmの厚さに真空蒸着により成膜し、電子輸送層を形成した。次に、上記電子輸送層上に、Alq3と、Liqとを体積比1:1で真空度10-5Paの条件下、共蒸着により蒸着速度1Å/secで膜厚10nmに成膜し、電子注入層を形成した。
【0217】
最後に、上記電子注入層上に陰極としてAlを蒸着速度5Å/secで100nmの厚さに蒸着した。
【0218】
(評価)
表2に実施例1〜3および比較例1の有機EL素子の10mA/cm2下での発光特性を示す。
【0219】
【表2】

【0220】
実施例1〜3および比較例1の有機EL素子からは、TBPe、C545T、Ir(piq)3由来の発光ピークがそれぞれ観測された。実施例1の有機EL素子では、正面輝度の発光効率が8.5cd/Aであり、全角度へ放射される発光を観測して得られたフォトン数と、投入した電子数とから外部量子効率を算出したところ4.0%であった。一方、比較例1の有機EL素子では、正面輝度の発光効率は7.3cd/Aであり、外部量子効率は3.4%であった。また、寿命特性については、初期輝度1000cd/m2からの輝度半減寿命を定電流密度下で観察したところ、実施例1〜3の有機EL素子では、輝度が半減する時間は250時間を達成した。一方、比較例1の有機EL素子では、150時間にて輝度が半減した。
【0221】
[実施例4]
(有機EL素子の作製)
まず、ガラス基板上に陽極としてITOが2mm幅のライン状にパターニングされたITO基板を準備した。そのITO基板上に、TBADNとMoO3とを体積比67:33で真空度10-5Paの条件下、共蒸着により1.0Å/secの蒸着速度で合計膜厚10nmとなるように成膜し、正孔注入層(1層目の正孔注入輸送層)を形成した。次に、TBADNとMoO3とを体積比90:10で真空度10-5Paの条件下、共蒸着により1.0Å/secの蒸着速度で合計膜厚100nmとなるように真空蒸着し、その上にTBADNを10nmの厚さになるように真空蒸着し、正孔輸送層(2層目の正孔注入輸送層)を形成した。
【0222】
次に、ホスト材料としてTCTAを用い、青色発光ドーパントとしてTBPeを用いて、上記正孔輸送層上に、TCTAおよびTBPeを、TBPe濃度が3wt%となるように、真空度10-5Paの条件下、蒸着速度1Å/secで10nmの厚さに真空蒸着により成膜し、青色発光層(1層目の発光層)を形成した。
次に、上記青色発光層上に、TBADNを、真空度10-5Paの条件下、1.0Å/secの蒸着速度で5nmの厚さに真空蒸着により成膜し、中間層(1層目の中間層)を形成した。
次に、ホスト材料としてCBPを用い、緑色発光ドーパントとして上記構造式で表されるIr(ppy)3を用いて、上記中間層上に、CBPおよびIr(ppy)3を、Ir(ppy)3濃度が3wt%となるように、真空度10-5Paの条件下、蒸着速度1Å/secで5nmの厚さに真空蒸着により成膜し、緑色発光層(2層目の発光層)を形成した。
次に、上記緑色発光層上に、TBADNを、真空度10-5Paの条件下、1.0Å/secの蒸着速度で5nmの厚さに真空蒸着により成膜し、中間層(2層目の中間層)を形成した。
次に、ホスト材料としてCBPを用い、赤色発光ドーパントとしてIr(piq)3を用いて、上記中間層上に、CBPおよびIr(piq)3を、Ir(piq)3濃度が3wt%となるように、真空度10-5Paの条件下、蒸着速度1Å/secで10nmの厚さに真空蒸着により成膜し、赤色発光層(3層目の発光層)を形成した。
【0223】
次に、上記発光層上に、TBADNを、真空度10-5Paの条件下、蒸着速度が1Å/secで10nmの厚さに真空蒸着により成膜し、電子輸送層(1層目の電子注入輸送層)を形成した。次に、上記電子輸送層上に、TBADNと、Liqとを体積比1:1で真空度10-5Paの条件下、共蒸着により蒸着速度1Å/secで膜厚10nmに成膜し、電子注入層(2層目の電子注入輸送層)を形成した。
【0224】
最後に、上記電子注入層上に陰極としてAlを蒸着速度5Å/secで100nmの厚さに蒸着した。
【0225】
[比較例2]
(有機EL素子の作製)
まず、ガラス基板上に陽極としてITOが2mm幅のライン状にパターニングされたITO基板を準備した。そのITO基板上に、α-NPDとMoO3とを体積比67:33で真空度10-5Paの条件下、共蒸着により1.0Å/secの蒸着速度で合計膜厚10nmとなるように成膜し、正孔注入層を形成した。次に、α-NPDとMoO3とを体積比90:10で真空度10-5Paの条件下、共蒸着により1.0Å/secの蒸着速度で合計膜厚100nmとなるように真空蒸着し、その上にα-NPDを10nmの厚さになるように真空蒸着し、正孔輸送層を形成した。
【0226】
次に、ホスト材料としてTCTAを用い、青色発光ドーパントとしてTBPeを用いて、上記正孔輸送層上に、TCTAおよびTBPeを、TBPe濃度が3wt%となるように、真空度10-5Paの条件下、蒸着速度1Å/secで10nmの厚さに真空蒸着により成膜し、青色発光層(1層目の発光層)を形成した。
次に、ホスト材料としてCBPを用い、緑色発光ドーパントとしてIr(ppy)3を用いて、上記中間層上に、CBPおよびIr(ppy)3を、Ir(ppy)3濃度が3wt%となるように、真空度10-5Paの条件下、蒸着速度1Å/secで5nmの厚さに真空蒸着により成膜し、緑色発光層(2層目の発光層)を形成した。
次に、ホスト材料としてCBPを用い、赤色発光ドーパントとしてIr(piq)3を用いて、上記中間層上に、CBPおよびIr(piq)3を、Ir(piq)3濃度が3wt%となるように、真空度10-5Paの条件下、蒸着速度1Å/secで10nmの厚さに真空蒸着により成膜し、赤色発光層(3層目の発光層)を形成した。
【0227】
次に、上記発光層上に、Alq3を、真空度10-5Paの条件下、蒸着速度が1Å/secで10nmの厚さに真空蒸着により成膜し、電子輸送層を形成した。次に、上記電子輸送層上に、Alq3と、下記式(4)で表されるLiqとを体積比1:1で真空度10-5Paの条件下、共蒸着により蒸着速度1Å/secで膜厚10nmに成膜し、電子注入層を形成した。
【0228】
最後に、上記電子注入層上に陰極としてAlを蒸着速度5Å/secで100nmの厚さに蒸着した。
【0229】
(評価)
表3に実施例4および比較例2の有機EL素子の10mA/cm2下での発光特性を示す。
【0230】
【表3】

【0231】
実施例4および比較例2の有機EL素子からは、TBPe、Ir(ppy)3、Ir(piq)3由来の発光ピークがそれぞれ観測された。実施例4の有機EL素子では、正面輝度の発光効率が13.4cd/Aであり、全角度へ放射される発光を観測して得られたフォトン数と、投入した電子数とから外部量子収率を算出したところ5.6%であった。一方、比較例2の有機EL素子では、正面輝度の発光効率は9.8cd/Aであり、外部量子収率は5.0%であった。また、寿命特性については、初期輝度1000cd/m2からの輝度半減寿命を定電流密度下で観察したところ、実施例4の有機EL素子では、輝度が半減する時間は300時間を達成した。一方、比較例2の有機EL素子では、200時間にて輝度が半減した。
【0232】
[実施例5]
(有機EL素子の作製)
まず、ガラス基板上に陽極としてITOが2mm幅のライン状にパターニングされたITO基板を準備した。そのITO基板上に、TBADNとMoO3とを体積比67:33で真空度10-5Paの条件下、共蒸着により1.0Å/secの蒸着速度で合計膜厚10nmとなるように成膜し、正孔注入層(1層目の正孔注入輸送層)を形成した。次に、TBADNとMoO3とを体積比90:10で真空度10-5Paの条件下、共蒸着により1.0Å/secの蒸着速度で合計膜厚100nmとなるように真空蒸着し、その上にTBADNを10nmの厚さになるように真空蒸着し、正孔輸送層(2層目の正孔注入輸送層)を形成した。
【0233】
次に、ホスト材料としてTCTAを用い、青色発光ドーパントとしてTBPeを用いて、上記正孔輸送層上に、TCTAおよびTBPeを、TBPe濃度が3wt%となるように、真空度10-5Paの条件下、蒸着速度1Å/secで10nmの厚さに真空蒸着により成膜し、青色発光層(1層目の発光層)を形成した。
次に、上記青色発光層上に、TBADNを、真空度10-5Paの条件下、1.0Å/secの蒸着速度で5nmの厚さに真空蒸着により成膜し、中間層(1層目の中間層)を形成した。
次に、ホスト材料としてTCTAを用い、緑色発光ドーパントとしてC545Tを用いて、上記中間層上に、TCTAおよびC545Tを、C545T濃度が3wt%となるように、真空度10-5Paの条件下、蒸着速度1Å/secで5nmの厚さに真空蒸着により成膜し、緑色発光層(2層目の発光層)を形成した。
次に、上記緑色発光層上に、TBADNを、真空度10-5Paの条件下、1.0Å/secの蒸着速度で5nmの厚さに真空蒸着により成膜し、中間層(2層目の中間層)を形成した。
次に、上記中間層上に、CBPを、真空度10-5Paの条件下、1.0Å/secの蒸着速度で5nmの厚さに真空蒸着により成膜し、ノンドープ領域を形成した。次に、ホスト材料としてCBPを用い、赤色発光ドーパントとしてIr(piq)3を用いて、上記ノンドープ領域上に、CBPおよびIr(piq)3を、Ir(piq)3濃度が3wt%となるように、真空度10-5Paの条件下、蒸着速度1Å/secで10nmの厚さに真空蒸着により成膜し、赤色発光領域(ドープ領域)を形成した。これにより、ノンドープ領域とドープ領域とを有する赤色発光層(3層目の発光層)を得た。
【0234】
次に、上記発光層上に、TBADNを、真空度10-5Paの条件下、蒸着速度が1Å/secで10nmの厚さに真空蒸着により成膜し、電子輸送層(1層目の電子注入輸送層)を形成した。次に、上記電子輸送層上に、TBADNと、Liqとを体積比1:1で真空度10-5Paの条件下、共蒸着により蒸着速度1Å/secで膜厚10nmに成膜し、電子注入層(2層目の電子注入輸送層)を形成した。
【0235】
最後に、上記電子注入層上に陰極としてAlを蒸着速度5Å/secで100nmの厚さに蒸着した。
【0236】
[実施例6]
(有機EL素子の作製)
まず、ガラス基板上に陽極としてITOが2mm幅のライン状にパターニングされたITO基板を準備した。そのITO基板上に、TBADNとMoO3とを体積比67:33で真空度10-5Paの条件下、共蒸着により1.0Å/secの蒸着速度で合計膜厚10nmとなるように成膜し、正孔注入層(1層目の正孔注入輸送層)を形成した。次に、TBADNとMoO3とを体積比90:10で真空度10-5Paの条件下、共蒸着により1.0Å/secの蒸着速度で合計膜厚100nmとなるように真空蒸着し、その上にTBADNを10nmの厚さになるように真空蒸着し、正孔輸送層(2層目の正孔注入輸送層)を形成した。
【0237】
次に、ホスト材料としてTCTAを用い、青色発光ドーパントとしてTBPeを用いて、上記正孔輸送層上に、TCTAおよびTBPeを、TBPe濃度が3wt%となるように、真空度10-5Paの条件下、蒸着速度1Å/secで10nmの厚さに真空蒸着により成膜し、青色発光層(1層目の発光層)を形成した。
次に、上記青色発光層上に、TBADNを、真空度10-5Paの条件下、1.0Å/secの蒸着速度で5nmの厚さに真空蒸着により成膜し、中間層(1層目の中間層)を形成した。
次に、ホスト材料としてTCTAを用い、緑色発光ドーパントとしてC545Tを用いて、上記中間層上に、TCTAおよびC545Tを、C545T濃度が3wt%となるように、真空度10-5Paの条件下、蒸着速度1Å/secで5nmの厚さに真空蒸着により成膜し、緑色発光層(2層目の発光層)を形成した。
次に、上記緑色発光層上に、TBADNを、真空度10-5Paの条件下、1.0Å/secの蒸着速度で5nmの厚さに真空蒸着により成膜し、中間層(2層目の中間層)を形成した。
次に、上記中間層上に、CBPを、真空度10-5Paの条件下、1.0Å/secの蒸着速度で5nmの厚さに真空蒸着により成膜し、ノンドープ領域を形成した。次に、ホスト材料としてCBPを用い、赤色発光ドーパントとしてIr(piq)3を用いて、上記ノンドープ領域上に、CBPおよびIr(piq)3を、Ir(piq)3濃度が3wt%となるように、真空度10-5Paの条件下、蒸着速度1Å/secで10nmの厚さに真空蒸着により成膜し、赤色発光領域(ドープ領域)を形成した。次に、上記ドープ領域上に、CBPを、真空度10-5Paの条件下、1.0Å/secの蒸着速度で5nmの厚さに真空蒸着により成膜し、ノンドープ領域を形成した。これにより、ノンドープ領域とドープ領域とノンドープ領域とを有する赤色発光層(3層目の発光層)を得た。
【0238】
次に、上記発光層上に、TBADNを、真空度10-5Paの条件下、蒸着速度が1Å/secで10nmの厚さに真空蒸着により成膜し、電子輸送層(1層目の電子注入輸送層)を形成した。次に、上記電子輸送層上に、TBADNと、Liqとを体積比1:1で真空度10-5Paの条件下、共蒸着により蒸着速度1Å/secで膜厚10nmに成膜し、電子注入層(2層目の電子注入輸送層)を形成した。
【0239】
最後に、上記電子注入層上に陰極としてAlを蒸着速度5Å/secで100nmの厚さに蒸着した。
【0240】
(評価)
表4に実施例5、6の有機EL素子の10mA/cm2下での発光特性を示す。
【0241】
【表4】

【0242】
実施例5、6の有機EL素子からは、TBPe、C545T、Ir(piq)3由来の発光ピークがそれぞれ観測された。実施例5、6では、発光層にノンドープ領域を設けることで外部量子効率が向上することを確認した。また、寿命特性については、初期輝度1000cd/m2からの輝度半減寿命を定電流密度下で観察したところ、すべての素子で250時間を達成した。
【符号の説明】
【0243】
1 … 有機EL素子
2 … 基板
3 … 陽極
4 … 正孔注入輸送層
5a … 陽極側発光層
5b … 中央発光層
5c … 陰極側発光層
6,6a,6b … 中間層
7 … 電子注入輸送層
8 … 陰極
9 … 第2正孔注入輸送層
10 … 第2電子注入輸送層
11 … 第3正孔注入輸送層
12 … 第3電子注入輸送層
21,21a,21b,21c … ドープ領域
22,22a,22b,22c,22d … ノンドープ領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極と、
前記陽極上に形成された正孔注入輸送層と、
前記正孔注入輸送層上に形成され、ホスト材料および発光ドーパントを含有するn層(nは2以上の整数)の発光層と、
隣り合う前記発光層の間の少なくともいずれか1箇所に形成された1層以上(n−1)層以下の中間層と、
前記n層の発光層上に形成された電子注入輸送層と、
前記電子注入輸送層上に形成された陰極とを有し、
前記正孔注入輸送層および前記電子注入輸送層が正孔および電子を輸送しうるバイポーラ材料を含有し、前記正孔注入輸送層および前記電子注入輸送層に含有されるバイポーラ材料が同一であり、
前記中間層の構成材料と前記中間層に隣接する前記発光層のホスト材料とが異なり、前記中間層の構成材料のイオン化ポテンシャルをIpINL、前記中間層に隣接する前記発光層のホスト材料のイオン化ポテンシャルをIpEMLとしたとき、IpINL≠IpEMLであり、前記中間層の構成材料の電子親和力をEaINL、前記中間層に隣接する前記発光層のホスト材料の電子親和力をEaEMLとしたとき、EaINL≠EaEMLであり、
前記正孔注入輸送層の構成材料の電子親和力をEa1、前記正孔注入輸送層に隣接する前記発光層のホスト材料の電子親和力をEa2としたとき、Ea1≧Ea2であり、前記電子注入輸送層の構成材料のイオン化ポテンシャルをIp3、前記電子注入輸送層に隣接する前記発光層のホスト材料のイオン化ポテンシャルをIp4としたとき、Ip3≦Ip4であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項2】
前記中間層が(n−1)層であり、前記各発光層間に前記中間層が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項3】
前記中間層が正孔および電子を輸送しうるバイポーラ材料を含有し、前記正孔注入輸送層と前記電子注入輸送層と前記中間層とに含有されるバイポーラ材料が同一であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項4】
前記n層の発光層の少なくとも一つが、前記発光ドーパントを含有する1箇所以上のドープ領域と前記発光ドーパントを含有しない1箇所以上のノンドープ領域とを有することを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項5】
前記正孔注入輸送層に隣接する前記発光層が、前記正孔注入輸送層側に前記ノンドープ領域を有することを特徴とする請求項4に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項6】
前記電子注入輸送層に隣接する前記発光層が、前記電子注入輸送層側に前記ノンドープ領域を有することを特徴とする請求項4または請求項5に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項7】
前記発光層が前記中間層側に前記ノンドープ領域を有することを特徴とする請求項4から請求項6までのいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項8】
前記発光層が2箇所の前記ドープ領域を有し、前記2箇所のドープ領域の間に前記ノンドープ領域が配置されており、前記2箇所のドープ領域がそれぞれ異なる種類の発光ドーパントを含有することを特徴とする請求項4から請求項7までのいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項9】
前記n層の発光層のうち、少なくともいずれか一つが蛍光発光ドーパントを含有し、その他が燐光発光ドーパントを含有することを特徴とする請求項1から請求項8までのいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項10】
前記n層の発光層が3層の発光層であり、前記3層の発光層が互いに発光色の異なる発光ドーパントを含有することを特徴とする請求項1から請求項9までのいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−205427(P2010−205427A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−46409(P2009−46409)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】