説明

有機エレクトロルミネッセンス素子

【課題】
発光ムラが少なく、高効率、長寿命な有機エレクトロルミネッセンス素子を提供する。
【解決手段】
陽極2と陰極7の間に発光層5が設けられた有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。陽極2の発光層5側の面に、第一のホール輸送層3aと金属酸化物層4と第二のホール輸送層3bとがこの順で積層されることによって、陽極2の発光層5側の面にホール輸送材料と金属酸化物材料とからなる混合層9が形成される。混合層9に効率よくカチオン及びジカチオンを生成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラットパネルディスプレイ、液晶表示機用バックライトや照明用光源等に用いることができる有機エレクトロルミネッセンス素子に関し、詳しくは、二つの電極間に有機発光層を設けて形成される有機エレクトロルミネッセンス素子において、陽極の発光層側の面に、または、中間層の一部に、ホール輸送材料の層と、金属酸化物の層と、ホール輸送材料の層をこの順に積層することで、積層膜界面でのホール輸送材料の酸化反応を制御し、共蒸着法を使用することなく、発光ムラの無い、高効率、長寿命である有機エレクトロルミネッセンス素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス素子は、数V程度の低電圧で高輝度の面発光が可能であること、発光物質の選択により任意の色調での発光が可能であること等々の理由により、フラットパネルディスプレイ、液晶表示装置用バックライト、照明用の光源として活用可能な次世代光源として注目を集め、精力的に基礎研究が行われると共に実用化を目指した開発が行われている。近年では特に、大気中での安定性に優れ、また、材料が非常に安価であることが注目され、金属酸化物、または、金属酸化物混合層を用いた有機デバイス開発が特に盛んに行われている。
【0003】
例えば、特許文献1では、モリブデン酸化物等の仕事関数の高い金属酸化物を陽極に用いることで、発光素子の低駆動電圧化を達成している。さらに、長寿命化に対する効果も得ている。しかしながら、ホール注入性は向上するものの、ホール輸送性の向上に関しては、特許文献1に示された手段のみでは十分であると言えず、さらに高効率化を達成するための技術開発が必要であった。また、この構成では、ITOや、仕事関数の高い金属酸化物の表面状態の影響を非常に受けやすく、発光ムラを改善するための技術開発が必要であった。
【0004】
また、特許文献2ではモリブデン酸化物と芳香族アミンとの混合層を、電極間に挿入することで、発光素子の低駆動電圧化、長寿命化を達成している。しかしながら、モリブデン酸化物と芳香族アミンとの混合膜を有機エレクトロルミネッセンス素子に用いる場合、極わずかな反応量の違いにより、キャリア輸送性や吸収スペクトルが変化するため、安定したデバイス作製を行うためには、厳密な成膜条件の管理が必要となる。近年、成膜時間の短縮を目的とした、高レート成膜技術開発が盛んに行われているが、モリブデン酸化物と芳香族アミンとの混合膜を有機エレクトロルミネッセンス素子に用いる場合、反応量の制御を目的とした蒸着レートの管理が必要となり、他の層の成膜と同様の手段で、高レート蒸着手法を用いることは困難である。また、近年、高材料使用効率化を目的に、蒸着槽の内壁を、蒸着材料の昇華温度程度に高温に保ち、内壁への材料付着を防ぐことで、高材料使用効率を達成する蒸着方法が提案されている。しかしながら、モリブデン酸化物と芳香族アミンとの混合膜を有機エレクトロルミネッセンス素子に用いる場合、モリブデン酸化物と芳香族アミンの昇華温度が極端に異なるため、上記、高材料使用効率を達成する蒸着方法を用いることができない。
【0005】
また、特許文献3では、陽極電極と接していない位置にある、異なる物質から形成されるホール輸送層の界面に電子受容性物質を存在させることで、ホール移動障壁を低減させ、消費電力を低減できることが示されている。この手法を用いた場合、異なる有機材料間のホール移動障壁の低減には有効であるが、単一のホール輸送層を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子においては、そもそもホール輸送層界面のホール移動障壁が存在しないため、消費電力の低減は期待できない。また、特許文献3に示された手段のみでは、陽極電極と接していない位置に、電子受容性物質が存在するため、ホール注入性の向上は望めず、結果として、ホール注入性の向上のためには、同時にホール注入層を用いる手法が明記されており、有機エレクトロルミネッセンス素子の製造工程が複雑になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2824411号公報
【特許文献2】特許第3748110号公報
【特許文献3】特許第4300176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、高レート蒸着手法、高材料使用効率蒸着手法を用い、従来の有機エレクトロルミネッセンス素子よりも、発光ムラが少なく、高効率、長寿命な有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1に係る有機エレクトロルミネッセンス素子は、陽極2と陰極7の間に発光層5が設けられた有機エレクトロルミネッセンス素子において、陽極2の発光層5側の面に、第一のホール輸送層3aと金属酸化物層4と第二のホール輸送層3bとがこの順で積層されることによって、陽極2の発光層5側の面にホール輸送材料と金属酸化物材料とからなる混合層9が形成されて成ることを特徴とするものである。
【0009】
本発明の請求項2に係る有機エレクトロルミネッセンス素子は、請求項1において、金属酸化物層4の厚みが1〜20nmであることを特徴とするものである。
【0010】
本発明の請求項3に係る有機エレクトロルミネッセンス素子は、請求項1又は2において、陽極2の発光層5側の面に接して形成された第一のホール輸送層3aの厚みが1〜10nmであることを特徴とするものである。
【0011】
本発明の請求項4に係る有機エレクトロルミネッセンス素子は、陽極2と陰極7の間に、中間層10を介して、二つの発光層5が積層されてなる有機エレクトロルミネッセンス素子において、中間層10が複数の層を積層して形成され、且つ第一のホール輸送層3aと金属酸化物層4と第二のホール輸送層3bがこの順で積層された部分を含むことによって、中間層10にホール輸送材料と金属酸化物材料とからなる混合層9が形成されて成ることを特徴とするものである。
【0012】
本発明の請求項5に係る有機エレクトロルミネッセンス素子は、請求項4において、金属酸化物層4の厚みが1〜20nmであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明では、混合層9に効率よくカチオン及びジカチオンを生成することができ、発光ムラが少なく、高効率化、長寿命化を図ることができるものである。
【0014】
請求項2の発明では、ホール輸送材料の酸化反応を効率よく、且つ発光面内で均一に行うことができ、しかも、高電圧化や寿命特性の低下が発生しにくくなり、高効率化や長寿命化を確実に得ることができるものである。
【0015】
請求項3の発明では、ホール輸送材料の酸化反応を効率よく、且つ発光面内で均一に行うことができ、しかも、高電圧化や寿命特性の低下が発生しにくくなり、高効率化や長寿命化を確実に得ることができるものである。
【0016】
請求項4の発明では、混合層9に効率よくカチオン及びジカチオンを生成することができ、発光ムラが少なく、高効率化、長寿命化を図ることができるものである。
【0017】
請求項5の発明では、ホール輸送材料の酸化反応を効率よく、且つ発光面内で均一に行うことができ、しかも、高電圧化や寿命特性の低下が発生しにくくなり、高効率化や長寿命化を確実に得ることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示す概略の断面図である。
【図2】本発明の他の実施の形態の一例を示す概略の断面図である。
【図3】本発明のさらに他の実施の形態の一例を示す概略の断面図である。
【図4】α‐NPD/MoO積層膜の532nm励起ラマンスペクトルを示すグラフである。
【図5】α‐NPD/MoO積層膜の633nm励起ラマンスペクトルを示すグラフである。
【図6】MoO/α‐NPD積層膜の532nm励起ラマンスペクトルを示すグラフである。
【図7】MoO/α‐NPD積層膜の633nm励起ラマンスペクトルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態を説明する。
【0020】
図1に本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の一例を示す。この有機エレクトロルミネッセンス素子は、基板1の表面に、透明導電膜からなる陽極2を成膜し、陽極2の表面に第一のホール輸送層3a、金属酸化物層4、第二のホール輸送層3bをこの順に積層し、さらにこの上に発光層5、電子輸送層6、陰極7を順に積層することにより形成されている。そして、第一のホール輸送層3aを構成するホール輸送材料と金属酸化物層4を構成する金属酸化物とが混合されることにより、陽極2の表面に混合層9が形成されるものである。本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、混合層9においてホール輸送材料を金属酸化物で効果的に酸化状態にすることで、高効率、長寿命化を達成することを特徴としており、金属酸化物によりホール輸送材料から電子を引き抜き、ホール輸送材料をカチオン、ジカチオンへと酸化反応を進めることが重要である。
【0021】
上記基板1は光が出射される場合には光透過性を有するものであり、無色透明の他に、多少着色されているものであっても、すりガラス状のものであってもよい。例えば、ソーダライムガラスや無アルカリガラスなどの透明ガラス板や、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、エポキシ等の樹脂、フッ素系樹脂等から任意の方法によって作製されたプラスチックフィルムやプラスチック板などを用いることができる。またさらに、基板1内に基板母剤と屈折率の異なる粒子、粉体、泡等を含有し、あるいは表面に形状を付与することによって、光拡散効果を有するものも使用可能である。また、基板1を通さずに光を射出させる場合、基板1は必ずしも光透過性を有するものでなくてもかまわず、素子の発光特性、寿命特性等を損なわない限り、任意の基板1を使うことができる。特に、通電時の素子の発熱による温度上昇を軽減するために、熱伝導性の高い基板1を使うこともできる。
【0022】
上記陽極2は、発光層5中にホールを注入するための電極であり、仕事関数の大きい金属、合金、電気伝導性化合物、あるいはこれらの混合物からなる電極材料を用いることが好ましく、仕事関数が4eV以上のものを用いるのがよい。このような陽極2の材料としては、例えば、金などの金属、CuI、ITO(インジウム−スズ酸化物)、SnO、ZnO、IZO(インジウム−亜鉛酸化物)等、PEDOT、ポリアニリン等の導電性高分子及び任意のアクセプタ等でドープした導電性高分子、カーボンナノチューブなどの導電性光透過性材料を挙げることができる。陽極2は、例えば、これらの電極材料を、基板1の表面に真空蒸着法やスパッタリング法、塗布等の方法により薄膜に形成することによって作製することができる。また、発光層5における発光を陽極2を透過させて外部に照射するためには、陽極1の光透過率を70%以上にすることが好ましい。さらに、陽極2のシート抵抗は数百Ω/□以下とすることが好ましく、特に好ましくは100Ω/□以下とするものである。ここで、陽極2の膜厚は、陽極2の光透過率、シート抵抗等の特性を上記のように制御するために、材料により異なるが、500nm以下、好ましくは10〜200nmの範囲に設定するのがよい。
【0023】
また上記陰極7は、発光層5中に電子を注入するための電極であり、仕事関数の小さい金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物からなる電極材料を用いることが好ましく、仕事関数が5eV以下のものであることが好ましい。このような陰極7の電極材料としては、アルカリ金属、アルカリ金属のハロゲン化物、アルカリ金属の酸化物、アルカリ土類金属等、およびこれらと他の金属との合金、例えばナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、リチウム、マグネシウム、マグネシウム−銀混合物、マグネシウム−インジウム混合物、アルミニウム−リチウム合金、Al/LiF混合物を例として挙げることができる。またアルミニウム、Al/Al混合物なども使用可能である。さらに、アルカリ金属の酸化物、アルカリ金属のハロゲン化物、あるいは金属酸化物を陰極7の下地として用い、さらに金属等の導電材料を1層以上積層して用いてもよい。例えば、アルカリ金属/Alの積層、アルカリ金属のハロゲン化物/アルカリ土類金属/Alの積層、アルカリ金属の酸化物/Alの積層などが例として挙げられる。また、ITO、IZOなどに代表される透明電極を用い、陰極7側から光を取りだす構成としても良い。また陰極7の界面の有機物層にリチウム、ナトリウム、セシウム、カルシウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属をドープしても良い。
【0024】
また上記陰極7は、例えば、これらの電極材料を真空蒸着法やスパッタリング法等の方法により、薄膜に形成することによって作製することができる。発光層4における発光を陽極2側から取り出す場合には、陰極7の光透過率を10%以下にすることが好ましい。また反対に、透明電極を陰極7として陰極7側から発光を取りだす場合(陽極2と陰極7の両電極から光を取り出す場合も含む)には、陰極7の光透過率を70%以上にすることが好ましい。この場合の陰極7の膜厚は、陰極7の光透過率等の特性を制御するために、材料により異なるが、通常500nm以下、好ましくは100〜200nmの範囲とするのがよい。
【0025】
発光層5に使用できる材料としては、有機エレクトロルミネッセンス素子用の材料として知られる任意の材料が使用可能である。例えばアントラセン、ナフタレン、ピレン、テトラセン、コロネン、ペリレン、フタロペリレン、ナフタロペリレン、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、クマリン、オキサジアゾール、ビスベンゾキサゾリン、ビススチリル、シクロペンタジエン、キノリン金属錯体、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム錯体、トリス(4−メチル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、トリス(5−フェニル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、アミノキノリン金属錯体、ベンゾキノリン金属錯体、トリ−(p−ターフェニル−4−イル)アミン、1−アリール−2,5−ジ(2−チエニル)ピロール誘導体、ピラン、キナクリドン、ルブレン、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、ジスチリルアミン誘導体及び各種蛍光色素等、前述の材料系およびその誘導体を始めとするものが挙げられるが、これらに限定するものではない。またこれらの化合物のうちから選択される発光材料を適宜混合して用いることも好ましい。また、前記化合物に代表される蛍光発光を生じる化合物のみならず、スピン多重項からの発光を示す材料系、例えば燐光発光を生じる燐光発光材料、およびそれらからなる部位を分子内の一部に有する化合物も好適に用いることができる。これらの材料からなる発光層(有機層)5は、蒸着、転写等乾式プロセスによって成膜しても良いし、スピンコート、スプレーコート、ダイコート、グラビア印刷等、湿式プロセスによって成膜するものであってもよい。
【0026】
第一及び第二のホール輸送層3a、3bに用いるホール輸送材料としては、いわゆる電子受容性材料と反応し、カチオン、ジカチオン等の酸化状態を生成するものであればよく、具体的にはN,N’‐ビス(3‐メチルフェニル)‐(1,1’‐ビフェニル)‐4,4’ジアミン(TPD)や4,4’‐ビス[N‐(ナフチル)‐N‐フェニル‐アミノ]ビフェニル(α‐NPD)等の芳香族ジアミン化合物、スチルベン誘導体、ピラゾリン誘導体、ポリアリールアルカン、4,4’,4”‐トリス(N‐(3‐メチルフェニル)N‐フェニルアミノ)トリフェニルアミン(m‐MTDATA)、及びポリビニルカルバゾール等の高分子材料が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0027】
金属酸化物層4に用いる金属酸化物材料としては、前記ホール輸送材料と効率良く界面で反応を進めるため、ホール輸送材料よりも蒸着温度が高温であり、かつ、電子受容性ドーパントとして、ホール輸送材料をルイス酸化学的に酸化しうる性質を有するものを挙げることができる。具体的には、酸化バナジウム、酸化モリブデン、酸化レニウム、酸化タングステン、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化スズ、酸化ガリウム、酸化チタン、酸化アルミニウムなどの金属酸化物が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0028】
ホール輸送層3a、3b及び金属酸化物層4の成膜方法の例としては、例えば蒸着、スパッタ、塗布、キャスティング、スプレー、CVD、転写等が挙げられ、素子特性を悪化させないような方法から適宜選定される。蒸着の場合には、金属酸化物、絶縁物あるいは金属等を蒸発物質とし、加熱蒸着法やEB蒸着法による共蒸着による成膜法が例として挙げられる。また、雰囲気をコントロールして、一部の物質を酸化させることも必要に応じて実施できる。スパッタの場合には、金属酸化物をターゲットとしても良いし、例えば金属をターゲットとして酸素含有雰囲気下での反応性スパッタで当該材料を成膜しても構わない。発光層5等の有機層に致命的なダメージを与える方法でなければ特に限定をする必要はなく、必要な膜の特性を得るための任意の方法を任意に使い分けることが可能である。またキャスティングや塗布等の湿式成膜の場合には、周辺の層に悪影響を与えない材料系を選定すればよい。転写に関しても、周辺の層に悪影響を与えない転写方法を選定すればよく、特に手段を限定するものではない。本発明においては、高レート蒸着手法や高材料使用効率蒸着手法を用いるのが好ましい。
【0029】
電子輸送層6を構成する電子輸送材料としては、電子を輸送する能力を有し、陰極7からの電子注入効果を有するとともに、発光層5に対して優れた電子注入効果を有し、さらにホールの電子輸送層6への移動を防止し、かつ薄膜形成能力の優れた化合物を挙げることができる。具体的には、フルオレン、バソフェナントロリン、バソクプロイン、アントラキノジメタン、ジフェノキノン、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、イミダゾール、アントラキノジメタン、4,4’−N,N’−ジカルバゾールビフェニル(CBP)等やそれらの化合物、金属錯体化合物もしくは含窒素五員環誘導体を挙げることができる。上記の金属錯体化合物としては、具体的には、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム、トリ(2−メチル−8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)ガリウム、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナート)ベリリウム、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナート)亜鉛、ビス(2−メチル−8−キノリナート)(o−クレゾラート)ガリウム、ビス(2−メチル−8−キノリナート)(1−ナフトラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリナート)−4−フェニルフェノラート等があるが、これらに限定されるものではない。また上記の含窒素五員環誘導体としては、オキサゾール、チアゾール、オキサジアゾール、チアジアゾールもしくはトリアゾール誘導体が好ましい。具体的には、2,5−ビス(1−フェニル)−1,3,4−オキサゾール、2,5−ビス(1−フェニル)−1,3,4−チアゾール、2,5−ビス(1−フェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−(4’−tert−ブチルフェニル)−5−(4”−ビフェニル)1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、1,4−ビス[2−(5−フェニルチアジアゾリル)]ベンゼン、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−トリアゾール、3−(4−ビフェニルイル)−4−フェニル−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール等があるが、これらに限定されるものではない。さらに、ポリマー有機発光素子に使用されるポリマー材料も使用することができる。例えば、ポリパラフェニレン及びその誘導体、フルオレン及びその誘導体等である。電子輸送層6の厚みは特に限定されないが、例えば、10〜300nmとすることができる。また、電子輸送層6は蒸着などの任意の方法で製膜することができる。
【0030】
そして、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子を製造するにあたっては、基板1の表面に順に、陽極2、第一のホール輸送層3a、金属酸化物層4、第二のホール輸送層3b、発光層5、電子輸送層6、陰極7を積層するようにする。そして、第一のホール輸送層3aと金属酸化物層4と第二のホール輸送層3bとがこの順で積層されることによって、陽極2の発光層5側の面に、第一のホール輸送層3aのホール輸送材料と金属酸化物層4の金属酸化物材料とからなる混合層9が形成される。この混合層9は、第一のホール輸送層3aと金属酸化物層4とが全体的に混合して形成される場合や、第一のホール輸送層3aと金属酸化物層4の界面部分に形成される場合があり、混合層9の厚みは0nmよりも大きく30nm以下とすることができる。
【0031】
ここで、金属酸化物層4の厚みは1〜20nmであることが好ましい。混合層9において、ホール輸送材料の酸化反応を、効率良く、また、発光面内で均一に行うためには、金属酸化物層4は1nm以上必要である。また、金属酸化物層4の膜厚が20nm以上では、界面での反応に寄与しない金属酸化物の量が増加し、結果として、第一のホール輸送層3から金属酸化物層4への注入障壁が増加し、高電圧化、寿命特性の低下が起こってしまうため、金属酸化物層4の膜厚は1nm〜20nmとすることが、高効率、長寿命化のためには重要である。
【0032】
また、陽極2の発光層5側の面に接して形成された第一のホール輸送層3aの厚みは1〜10nmであることが好ましい。陽極2に接する第一のホール輸送材料を、効率よく、また面内で均一に行うためには、陽極2に接する部分のホール輸送材料は1nm以上の膜厚が必要である。また、陽極2に接する部分のホール輸送材料の膜厚が10nm以上では、金属酸化物層4との界面で反応に寄与しないホール輸送材料の量が増加し、結果として、陽極2から第一のホール輸送層3aへのホール注入障壁が増加し、高電圧化、寿命特性の低下が起こってしまうため、陽極2に接する第一のホール輸送層3aの膜厚は1nm〜10nmとすることが、高効率、長寿命化のためには重要である。
【0033】
混合層9において、ホール輸送材料と金属酸化物材料の反応量、反応深さ(混合層9の厚み)の制御手法として、第一のホール輸送層3aの膜厚、金属酸化物層4の膜厚を変化させることで調整が可能である。また、ホール輸送材料と金属酸化物材料の反応量や反応深さの制御手段としては、上記、膜厚調整に限られず、成膜レート(特に、金属酸化物層4の成膜レート)や、成膜時の基板温度、膜形成時のエネルギー選択(成膜方法の選択)によっても調整可能である。成膜レートを制御手段とした場合は、成膜レートの違いにより、ホール輸送材料と金属酸化物材料の蒸着時の分子の状態が変化するものであり、例えば、金属酸化物材料がMOの場合は、金属酸化物層4の成膜レートが小さくなるほど、ホール輸送材料と金属酸化物材料の反応量が増加する傾向になる。また、成膜時の基板温度や膜形成時のエネルギー選択を制御手段とした場合は、ホール輸送材料と金属酸化物材料の蒸着時のエネルギーが高いほど反応が進行する傾向があり、基板温度が上がったり膜形成時のエネルギーが高くなったりすると、ホール輸送材料と金属酸化物材料の反応量が増加する傾向になる。また、上記のように全ての層を積層した後に、一定時間の加熱を行うことでも、ホール輸送材料と金属酸化物材料の反応量、反応深さを制御することも可能であり、この場合、加熱によりホール輸送材料と金属酸化物材料の反応量が増加する傾向になる。
【0034】
本発明者らは、ホール輸送材料の層の上に金属酸化物の層を積層した場合と、金属酸化物の層の上にホール輸送材料の層を積層した場合では、界面での反応状態が異なることを明らかにし、この特徴を積極的に用いることで、有機エレクトロルミネセンス素子の高効率化、長寿命化を達成した。本発明者らは、特願2007−274235に示したように、ラマン分光法を用いることにより、非破壊測定で有機エレクトロルミネッセンス素子内部の反応性混合層の評価を実現してきた。
【0035】
この手法を用いて、ホール輸送材料であるα-NPDの上に、金属酸化物であるMoOを積層したサンプルと、金属酸化物であるMoOの上に、ホール輸送材料であるα-NPDを積層したサンプルの反応状態評価を行った。励起波長を532nmと633nmの2種類を選択することで、界面におけるα-NPDのカチオン(α-NPD+)と、α-NPDのジカチオン(α-NPD++)の生成状態の評価を行った。α-NPDの上に、金属酸化物であるMoOを積層したサンプルの532nm励起ラマンスペクトルを図4に、633nm励起ラマンスペクトルを図5に示す。また、金属酸化物であるMoOの上に、ホール輸送材料であるα-NPDを積層したサンプルの532nm励起ラマンスペクトルを図6に、633nm励起ラマンスペクトルを図7に示す。532nm励起ではα-NPDのカチオンの共鳴ラマンスペクトルが可能であり、633nm励起ではα-NPDのジカチオンの共鳴ラマンスペクトルが可能である。図4と図6より、α-NPDとMoOの積層膜では、積層順に係わらずα-NPDのカチオンに帰属されるラマンスペクトルが得られ、積層膜界面でのα-NPDのカチオンの生成を明らかにした。また、図5と図7より、α-NPDとMoOの積層膜界面では、α-NPDのジカチオンに帰属されるラマンスペクトルが得られ、この結果より、α-NPDとMoOの積層膜界面では、α-NPDのカチオンとジカチオンが同時に生成しているということを明らかにした。注目すべき点として、図5と図7では、バックグラウンドとラマンスペクトル強度の比を見ると明らかなように、α-NPDのジカチオンのラマン散乱強度に大きな違いがあり、この結果は、ホール輸送材料であるα-NPDの上に、金属酸化物であるMoOを積層したサンプルのα-NPDのジカチオン生成量は、金属酸化物であるMoOの上に、ホール輸送材料であるα-NPDを積層したサンプルのジカチオン生成量と比較し、非常に多く生成していることを明らかにした。これら、カチオン、ジカチオンの生成が、有機エレクトロルミネッセンス素子の高効率化、長寿命化に有効であり、カチオン、ジカチオンをより効率的に生成させるためには、ホール輸送材料の上に金属酸化物を積層することが有効であることがわかった。
【0036】
以上の結果より、本発明において、第一のホール輸送層3aと、金属酸化物層4と、第二のホール輸送層3bとをこの順に積層することが、有機エレクトロルミネッセンス素子内部に最も効率良く、カチオン、ジカチオンの生成をさせることが可能であり、この手法を用いることで、有機エレクトロルミネッセンス素子の高効率、長寿命化が可能となるものである。
【0037】
図2に本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の他例を示す。この場合、上記と同様にして、基板1の表面に、透明導電膜からなる陽極2を成膜し、陽極2の表面に第一のホール輸送層3a、金属酸化物層4、第二のホール輸送層3bをこの順に積層する。さらに、駆動電圧、キャリアバランスの調整を目的とし、この上に金属酸化物層4、第三のホール輸送層3cを積層し、ホール輸送材料からなる層/金属酸化物材料からなる層/ホール輸送材料からなる層の組み合わせを2度繰り返した状態にし、その上に、さらに上記と同様にして、発光層5、電子輸送層6、陰極7が積層したものである。このように、ホール輸送材料からなる層/金属酸化物材料からなる層/ホール輸送材料からなる層の組み合わせを何度も積層することで、第一のホール輸送層3aと金属酸化物層4からなる混合層9と、金属酸化物層4と第二のホール輸送層3bとからなる混合層9とが形成されて、効果的にホール輸送材料の酸化反応を進めることも可能である。尚、第三のホール輸送層3cは第一及び第二のホール輸送層3a、3bと同様にして形成することができる。
【0038】
図3に本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の他例を示す。これは、二つの発光層5、5が中間層10を介して積層されたマルチユニット素子の有機エレクトロルミネッセンス素子である。中間層10は、複数の層を積層して形成され、且つ第一のホール輸送層3aと金属酸化物層4と第二のホール輸送層3bがこの順で積層された部分を含み、中間層10における第一のホール輸送層3aと金属酸化物層4とで混合層9が形成されるものである。この場合、上記と同様にして、基板1の表面に、透明導電膜からなる陽極2を成膜し、陽極2の表面に第一のホール輸送層3a、金属酸化物層4、第二のホール輸送層3bをこの順に積層する。その上に、発光層5、電子輸送層6を積層し、さらにその上に中間層10の一部の層8としてアルカリ金属層/透明電極層を積層した。次に中間層10の一部の層8の陰極7側に、上記とは別の第一のホール輸送層3aと金属酸化物層4と第二のホール輸送層3bとをこの順に積層し、2ユニット目として発光層5、電子輸送層6、陰極7を積層したものである。このように、中間層10の一部として、ホール輸送層3a、金属酸化物層4、ホール輸送層3bの積層を用いることで、共蒸着法による混合層を用いることなく、マルチユニット素子の作製が可能となる。また、中間層10に用いた第一のホール輸送層3aが、その上から積層された金属酸化物層4により酸化され、カチオン、ジカチオンが生成することで、高効率化、長寿命化が可能となる。中間層10における金属酸化物層4は、金属酸化物層4の吸収や、屈折率が光取り出し効率に大きく影響してしまう。金属酸化物層4が20nm以上になると、金属酸化物層4により、発光が吸収される量が増加し、また、金属酸化物層4とホール輸送材料の屈折率が異なるため、界面で反射が起こり、光取り出し効率が低下してしまう。これらを防ぐためにも、中間層10における金属酸化物層4の膜厚は1nm〜20nmとすることが、高効率、長寿命化のためには重要である。
【0039】
そして、本発明では、共蒸着法による混合層無しに、発光ムラを低減させ、高効率化、長寿命化が可能となり、安定性が高く、材料使用効率・歩留まりの高い有機エレクトロルミネッセンス素子の作製が可能となるものである。
【実施例】
【0040】
以下本発明を実施例によって具体的に説明する。
【0041】
(実施例1)
ガラス基板(基板1)上に透明電極層(陽極2)としてITOを150nm成膜し、真空蒸着法により、第一のホール輸送層3aとしてアミン系化合物α-NPD(新日鐵化学株式会社製)を3nm、その上に金属酸化物層4として、三酸化モリブデン(フルウチ化学株式会社製:以下、MoO)を3nm、さらにその上に第二のホール輸送層3bとしてα‐NPDを44nm成膜した。この場合、第一のホール輸送層3aの上に金属酸化物層4を成膜した時に混合層9が形成される。次に、第二のホール輸送層3bの上に、電子輸送層6で且つ発光層5としてアルミ金属錯体Alq3(新日鐵化学株式会社製)を50nm成膜し、陰極7として、LiFを1nm、Alを80nm成膜し、有機エレクトロルミネッセンス素子を作製した。そして、この有機エレクトロルミネッセンス素子に対して、窒素雰囲気下で封止を行い、電圧−電流−輝度特性、寿命特性の評価を行った。
【0042】
(実施例2)
金属酸化物層4の厚みを0.5nmにした以外は実施例1と同様にした。
【0043】
(実施例3)
金属酸化物層4の厚みを25nmにした以外は実施例1と同様にした。
【0044】
(実施例4)
第一のホール輸送層3aの厚みを0.5nmにした以外は実施例1と同様にした。
【0045】
(実施例5)
第一のホール輸送層3aの厚みを15nmにした以外は実施例1と同様にした。
(比較例1)
ガラス基板(基板1)上に透明電極層(陽極2)としてITOを150nm成膜し、真空蒸着法により、ホール輸送材料の層としてα‐NPDを50nm、電子輸送層6で且つ発光層5としてAlq3を50nm成膜し、さらに陰極7としてLiFを1nm、Alを80nm成膜し、有機エレクトロルミネッセンス素子を作製した。実施例1と同様に、窒素雰囲下で封止を行い、評価を行った。
(比較例2)
ガラス基板(基板1)上に透明電極層(陽極2)としてITOを150nm成膜し、真空蒸着法により、MoOの層を3nm、ホール輸送材料の層としてα‐NPDを47nm、電子輸送層6で且つ発光層5としてAlq3を50nm成膜し、さらに陰極7としてLiFを1nm、Alを80nm成膜し、有機エレクトロルミネッセンス素子を作製した。実施例1と同様に、窒素雰囲下で封止を行い、評価を行った。
【0046】
各実施例、比較例の素子に10mA/cmの電流密度で通電し、その時の輝度、駆動電圧を測定した。また、寿命特性に関しては50mA/cmの電流密度で通電し、輝度が初期輝度の90%に達した時間(LT90)、80%に達した時間(LT80)を測定した。実施例1〜5、比較例1、比較例2の寿命測定時の初期輝度は何れも、約3000cd/mである。測定結果を表1に示す。
【0047】
【表1】

表1に示したように、比較例1では、陽極であるITOからホール輸送層であるα‐NPDへのホール注入障壁、比較例2では、陽極であるITOからMoO、MoOからホール輸送材料の層であるα‐NPDへのホール注入障壁の影響と思われる高電圧化が観測された。また、実施例1と比較例1、2では寿命特性に大きな違いがあり、本発明の実施例1は比較例1に対し約50倍、比較例2に対し約5倍と、長寿命化していることがわかる。また、実施例1と実施例2〜5の対比から、第一のホール輸送層3aの厚みや金属酸化物層4の厚みが好適な範囲から逸脱すると、駆動電圧や寿命の性能が低下することがわかる。また、実施例1では比較例1、2に比べて発光ムラが少なかった。
(実施例6)
ガラス基板(基板1)上に透明電極層(陽極2)としてITOを150nm成膜し、真空蒸着法により、第一のホール輸送層3aとして、α-NPDを3nm、金属酸化物層4としてMoOを3nm、さらにその上に第二のホール輸送層3bとして、α‐NPDを44nm成膜した。この場合、第一のホール輸送層3aの上に金属酸化物層4を成膜した時に混合層9が形成される。次に、第二のホール輸送層3bの上に、電子輸送層6で且つ発光層5としてアルミ金属錯体Alq3を50nm成膜した。その上に中間層10としてLiを2nm、ITOを5nm成膜し、さらに、第一のホール輸送材料3aとして、α-NPDを3nm、金属酸化物層4としてMoOを3nm、さらにその上に第二のホール輸送材料3bとして、α-NPDを44nm成膜し、中間層10を形成した。この場合、第一のホール輸送層3aの上に金属酸化物層4を成膜した時に混合層9が形成される。次に、中間層10の上に第二の発光層5としてAlq3を50nm成膜し、陰極7として、LiFを1nm、Alを80nm成膜し、中間層10の一部にホール輸送材料の層/金属酸化物材料の層/ホール輸送材料の層が積層された部分を含む有機エレクトロルミネッセンス素子を作製した。作製した有機エレクトロルミネッセンス素子の発光面積は5cm□であり、面内での輝度分布測定より、発光ムラの評価を行った。
【0048】
(実施例7)
ガラス基板(基板1)上に透明電極層(陽極2)としてITOを150nm成膜し、真空蒸着法により、第一のホール輸送層3aとして、α-NPDを3nm、金属酸化物層4としてMoOを3nm、さらにその上に第二のホール輸送層3aとして、α-NPDを44nm成膜した。この場合、第一のホール輸送層3aの上に金属酸化物層4を成膜した時に混合層9が形成される。次に、第二のホール輸送層3bの上に、電子輸送層6で且つ発光層5としてアルミ金属錯体Alq3を50nm成膜した。その上にLiを2nm、ITOを5nm成膜し、金属酸化物材料の層としてMoOを3nm成膜し、その上に、ホール輸送材料の層として、α-NPDを50nmを成膜して中間層10を形成した。次に、中間層10の上に第二の発光層5としてAlq3を50nm成膜し、陰極7として、LiFを1nm、Alを80nm成膜し、有機エレクトロルミネッセンス素子を作製した。窒素雰囲気下で封止を行い、実施例6と同様の手法を用いて、発光ムラの評価を行った。
【0049】
(実施例8)
中間層10における金属酸化物層4の厚みを0.5nmにした以外は実施例6と同様にした。
【0050】
(実施例9)
中間層10における金属酸化物層4の厚みを25nmにした以外は実施例6と同様にした。
【0051】
実施例6〜9の素子に10mA/cmの電流密度で通電し、発光面内の平均輝度と、輝度分布を求めた。測定結果を表2に示す。
【0052】
【表2】

表2に示したように、実施例6では中間層10の陰極7側に用いた、ホール輸送材料の層/金属酸化物材料の層/ホール輸送材料の層の積層により面内に均一に混合層(反応層)9を形成することができており、輝度分布を抑えることができた。一方、実施例7では、中間層10の陰極7側にMoO層のみを用いており、効果的な混合層(反応層)9の形成が出来ておらず、平均輝度、輝度分布ともに、実施例6に比べて低い性能であることがわかる。また、実施例8、9のように、中間層10における金属酸化物層4の厚みが好適な範囲から逸脱すると、平均輝度や輝度分布の性能が低下することがわかる。
【符号の説明】
【0053】
2 陽極
3a 第一のホール輸送層
3b 第二のホール輸送層
4 金属酸化物層
5 発光層
7 陰極
9 混合層
10 中間層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極と陰極の間に発光層が設けられた有機エレクトロルミネッセンス素子において、陽極の発光層側の面に、第一のホール輸送層と金属酸化物層と第二のホール輸送層とがこの順で積層されることによって、陽極の発光層側の面にホール輸送材料と金属酸化物材料とからなる混合層が形成されて成ることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項2】
金属酸化物層の厚みが1〜20nmであることを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項3】
陽極の発光層側の面に接して形成された第一のホール輸送層の厚みが1〜10nmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項4】
陽極と陰極の間に、中間層を介して、二つの発光層が積層されてなる有機エレクトロルミネッセンス素子において、中間層が複数の層を積層して形成され、且つ第一のホール輸送層と金属酸化物層と第二のホール輸送層がこの順で積層された部分を含むことによって、中間層にホール輸送材料と金属酸化物材料とからなる混合層が形成されて成ることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項5】
金属酸化物層の厚みが1〜20nmであることを特徴とする請求項4に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−40437(P2011−40437A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−183710(P2009−183710)
【出願日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「有機発光機構を用いた高効率照明技術の開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】