説明

有機エレクトロルミネッセンス素子

【課題】透明基材と発光部との間に微細凹凸層を設けているにも関わらず、発光部が劣化しにくい有機EL素子を提供する。
【解決手段】透明基材10と、透明基材10の上に設けられた、微細凹凸層22を有する光取り出し部20と、光取り出し部20の上に設けられた、透明基材10の側から順に透明電極32、発光層(図示略)を含む有機半導体層34および背面電極36を有する発光部30と、光取り出し部20および前記発光部30を封止する封止部40とを具備し、光取り出し部20が、封止部40の外面から露出していない有機EL素子1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレクトロルミネッセンス(以下、ELと記す。)を利用した有機EL素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子としては、透明基材と、透明基材の側から順に透明電極、有機化合物の発光材料を含む発光層および金属薄膜からなる背面電極を有する発光部とを備えたものが知られている。
【0003】
有機EL素子においては、透明電極からの正孔と背面電極からの電子とが発光層で結合することによって発光層が発光する。発光層で発光した光は、透明電極および透明基材を透過して放射面(透明基材の表面)から取り出される。また、発光層で発光した光の一部は、背面電極の金属薄膜で反射された後、発光層、透明電極、および透明基材を透過して放射面から取り出される。
【0004】
しかし、この有機EL素子においては、透明電極、透明基材、外部空気等に入射する光の入射角が、入射元の材料の屈折率と入射先の材料の屈折率によって決まる臨界角以上である光は、発光層と透明電極との界面、透明電極と透明基材との界面、透明基材と外部空気との界面(放射面)等にて全反射し、有機EL素子の内部に閉じ込められてしまう。そのため、一部の光を外部に取り出すことができず、光の取り出し効率が低いという問題がある。
【0005】
この問題を解決する有機EL素子としては、透明基材と透明電極との間に微細凹凸層を設けたものが提案されている(特許文献1、2)。透明基材と透明電極との間に微細凹凸層を設けることによって、透明電極と微細凹凸層との界面における光の反射が抑えられたり、透明基材や発光層(有機半導体層)を導光して消失する光を微細凹凸による散乱や回折効果によって変調したりすることで、光の取り出し効率が高くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−287486号公報
【特許文献2】特開2009−009861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、透明基材の表面に微細凹凸層を形成する場合は、透明基材の表面に塗布された硬化性材料に、微細凹凸を表面に有するモールドを押し付けた後、硬化性材料を硬化させる、いわゆるインプリント法が用いられる。そのため、微細凹凸層は、通常、透明基材の表面の全体に形成される。
【0008】
一方、有機EL素子の発光部は、透明基材の面積に比べ通常小さく設計される。そのため、発光部を封止する封止部の面積も透明基材(すなわち微細凹凸層)の面積に比べ小さくなる。
【0009】
しかし、このように透明基材の表面に微細凹凸層が形成され、かつ封止部の面積が透明基材(微細凹凸層)の面積よりも小さくされた有機EL素子においては、発光部が劣化しやすく、寿命が短いということが判明した。
【0010】
本発明は、透明基材と発光部との間に微細凹凸層を設けているにも関わらず、発光部が劣化しにくい有機EL素子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の有機EL素子は、透明基材と、該透明基材の上に設けられた、微細凹凸層を有する光取り出し部と、該光取り出し部の上に設けられた、透明基材の側から順に透明電極、発光層を含む有機半導体層および背面電極を有する発光部と、前記光取り出し部および前記発光部を封止する封止部とを具備し、前記光取り出し部が、前記封止部の外面から露出していないことを特徴とする。
【0012】
前記微細凹凸層における凸部または凹部のピッチは、50nm〜50μmであることが好ましく、前記微細凹凸層における凸部の高さまたは凹部の深さは、50nm〜50μmであることが好ましい。
本発明の有機EL素子は、前記透明基材と前記光取り出し部との間に接着層をさらに有することが好ましい。
【0013】
前記接着層は、(メタ)アクリロイルオキシ基を有するシランカップリング剤を30質量%以上含む接着剤の硬化物からなることが好ましい。
前記接着層は、0.4mN試験荷重下での押し込み深さが0.2μm以上であることが好ましい。
【0014】
前記光取り出し部は、透明基材の側から順に前記微細凹凸層および高屈折率層を有することが好ましい。
前記微細凹凸層は、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物からなることが好ましい。
前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、(メタ)アクリロイルオキシ基を有するモノマーおよびまたはオリゴマーを含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の有機EL素子は、透明基材と発光部との間に微細凹凸層を設けているにも関わらず、発光部が劣化しにくい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の有機EL素子の一例を示す断面図である。
【図2】本発明の有機EL素子の他の例を示す断面図である。
【図3】本発明の有機EL素子の他の例を示す発光部付近の拡大断面図である。
【図4】本発明の有機EL素子の他の例を示す発光部付近の拡大断面図である。
【図5】本発明の有機EL素子の他の例を示す発光部付近の拡大断面図である。
【図6】本発明の有機EL素子の他の例を示す発光部付近の拡大断面図である。
【図7】光インプリント法によってモールドの微細凹凸を転写して微細凹凸層を形成する様子を示す断面図である。
【図8】光インプリント法によってモールドの微細凹凸を転写して微細凹凸層を形成する転写装置の一例を示す概略図である。
【図9】実施例1で得られた有機EL素子を封止部側から見た平面図である。
【図10】実施例1で得られた有機EL素子の断面図である。
【図11】比較例1で得られた有機EL素子の断面図である。
【図12】実施例2で得られた有機EL素子の断面図である。
【図13】比較例1で得られた有機EL素子の断面図である。
【図14】実験例1で得られた微細凹凸層AのSEM写真である。
【図15】実験例1で得られた微細凹凸層BのSEM写真である。
【図16】実験例1で得られた微細凹凸層CのSEM写真である。
【図17】実験例8で得られた微細凹凸層AのSEM写真である。
【図18】実験例8で得られた微細凹凸層BのSEM写真である。
【図19】実験例8で得られた微細凹凸層CのSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書において、透明とは、可視光を透過できること(光透過性を有すること)を意味する。また、(メタ)アクリロイルオキシ基は、アクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基を意味する。また、(メタ)アクリレートは、アクリレートまたはメタクリレートを意味する。また、活性エネルギー線は、可視光線、紫外線、電子線、プラズマ、熱線(赤外線等)等を意味する。
【0018】
<有機EL素子>
図1は、本発明の有機EL素子の一例を示す断面図である。有機EL素子1は、透明基材10と;透明基材10の上に設けられた接着層12と;接着層12の上に設けられた、透明基材10の側から順に微細凹凸層22および高屈折率層24を有する光取り出し部20と;光取り出し部20の上に設けられた、透明基材10の側から順に透明電極32、発光層(図示略)を含む有機半導体層34および背面電極36を有する発光部30と;透明電極32から透明基材10の周縁に向かって延びる配線ライン38と;光取り出し部20および発光部30を囲む掘り込みガラス42、掘り込みガラス42を透明基材10(および配線ライン38)に接着する接着剤44および掘り込みガラス42の内部に形成される封止空間46からなる封止部40とを具備する。
【0019】
有機EL素子1においては、接着層12、光取り出し部20および発光部30が、封止部40の内部に完全に封止されて、封止部40の外面(有機EL素子1の外側に面する掘り込みガラス42の表面および側面)から露出していない。
【0020】
(透明基材)
透明基材10の形態としては、フィルム、シート、板等が挙げられる。
透明基材10の材料としては、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、アクリル系樹脂(ポリメチルメタクリレート等)、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、スチレン系樹脂(ABS樹脂等)、セルロース系樹脂(トリアセチルセルロース等)、ポリイミド系樹脂(ポリイミド樹脂、ポリイミドアミド樹脂等)、ガラス等が挙げられる。透明基材10の材料として樹脂を用いる場合には、透明基材10の表面に各種バリア膜(SiO/SiNの多重積層膜、樹脂系バリア膜)を設けてもよい。
【0021】
(接着層)
接着層12は、公知の接着剤からなる層である。
接着剤としては、透明基材10や微細凹凸層22との接着性に優れ、かつ透明基材10や微細凹凸層22との屈折率の差が小さい(すなわち界面における反射が抑えられる)点から、(メタ)アクリロイルオキシ基を有するシランカップリング剤を30質量%以上含むものが好ましい。
【0022】
(メタ)アクリロイルオキシ基を有するシランカップリング剤を含む接着剤からなる接着層12は、シロキサン結合(−Si−O−Si−)と、反応性基として(メタ)アクリロイルオキシ基と、ヒドロキシシリル基(−Si−OH)またはアルコキシシリル基(−Si−OR)とを有する。
【0023】
(メタ)アクリロイルオキシ基を有するシランカップリング剤を含む接着剤は、必要に応じて、アルコキシシラン、硬化触媒、有機溶媒、レベリング剤等を含んでいてもよい。また、(メタ)アクリロイルオキシ基を有するシランカップリング剤やアルコキシシランは、加水分解縮合物(オリゴマー)であってもよい。
【0024】
(メタ)アクリロイルオキシ基を有するシランカップリング剤としては、下記式(1)で表されるものが好ましい。
(R−RSi(OR ・・・(1)。
【0025】
は、(メタ)アクリロイルオキシ基である。
は、炭素原子数1〜10の2価の有機基である。具体的には、アルキレン基、アリーレン基等が挙げられ、これらはアミノ基、カルボニル基、エステル基、ヒドロキシ基等を有していてもよい。
は、炭素原子数1〜5のアルキル基または炭素原子数1〜4のアシル基である。具体的には、メチル、エチル、プロピル等が挙げられる。
xは、0から3の整数であり、x+yは、4である。
【0026】
(メタ)アクリロイルオキシ基を有するシランカップリング剤の具体例としては、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシメチルトリメトキシシラン、3−アクリロキシエチルトリメトキシシラン、(3−アクリロキシプロピル)シジメチルメトキシシラン、(3−アクリロキプロピル)メチルビス(トリメチルシロキシ)シラン、(3−アクリロキプロピル)メチルジメトキシシラン、メチルジメトキシシラン、N−(3−アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(3−アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、(アクリロキシメチル)フェネチルトリメトキシシラン、(アクリロキシメチル)フェネチルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、O−(メタアクリロキシエチル)−N−(トリエトキシシリルプロピル)カルバメート、N−(3−メタクリロキシ−2−ヒドロキシプロピル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、(メタクリロキシメチル)ジメチルエトキシシラン、(メタクリロキシメチル)メチルジエトキシシラン、(メタクリロキシメチル)メチルジメトキシシラン、メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、メタクリロキシジメチルエトキシシラン、メタクリロキシジメチルメトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリイソプロポキシシラン、メタクリロキシプロピルトリス(メトキシエトキシシラン)等が挙げられる。(メタ)アクリロイルオキシ基を有するシランカップリング剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
アルコキシシランとしては、下記式(2)で表されるものが好ましい。
Si(OR ・・・(2)。
【0028】
は、アルキル基またはアリール基である。
は、アルキル基である。
xは、0から3の整数であり、x+yは、4である。
【0029】
アルコキシシランの具体例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリエトキシシラン等のケイ素化合物;メチルシリケート、エチルシリケート、プロピルシリケート等のアルキルシリケート類等があげられる。アルコキシシランは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
(メタ)アクリロイルオキシ基を有するシランカップリング剤やアルコキシシランの加水分解、縮合反応は、公知の方法によって行う。
加水分解の方法としては、(メタ)アクリロイルオキシ基を有するシランカップリング剤やアルコキシシランの100質量部に対して、水の10〜1000質量部、アルコール類の0〜1000質量部を加え、撹拌する方法が挙げられる。撹拌は、0〜100℃に温度制御して行ってもよい。また、塩酸、酢酸等の酸を加えて溶液を酸性(pH2〜5)にしてもよい。加水分解に際して発生するアルコールは、反応系外に留去してもよい。
加水分解に続く縮合反応は、例えば、1〜4時間、放置または撹拌することにより進行させることができる。その際、pHを6〜7に制御することによって、縮合反応の進行を速めることができる。また、40〜80℃程度に加温することによって、縮合反応の進行を速めることもできる。縮合反応に際して発生する水は、反応系外に留去してもよい。
【0031】
硬化触媒としては、活性エネルギー線の照射によって酸を発生する活性エネルギー線感応性酸発生剤、pH調整剤(酸、アルカリ等)等が挙げられ、活性エネルギー線感応性酸発生剤が好ましく、紫外線により酸を発生する光感応性酸発生剤がより好ましい。
【0032】
光感応性酸発生剤としては、ジフェニルヨードニウム系化合物、トリフェニルスルホニウム系化合物、ジアゾジスルホン系化合物等が挙げられる。市販品としては、イルガキュア250(チバ・ジャパン社製);アデカオプトマーSP−150、SP−170(アデカ社製);サイラキュアUVI−6992(ダウケミカル日本社製);サンエイドSI−60L、SI−80L、SI−85L、SI−100L、SI−110L、SI−145L、SI−150L、SI−160L、SI−180L、SI−15H、SI−20H、SI−25H、SI−40H、SI−50H(三新化学工業社製);CPI−100P、CPI−101A(サンアプロ社製);MPI−103、MP−105、MP−109(みどり化学社製)等が挙げられる。光感応性酸発生剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
pH調整剤としては、鉱酸類、鉱酸塩等が挙げられる。具体的には、酢酸、塩酸、硫酸等の希釈水溶液;酢酸ナトリウム等が挙げられるが、縮合反応の促進に有効なものであれば特に制限はない。
【0034】
硬化触媒の量は、接着剤中のシランカップリング剤およびアルコキシシランの合計(酸化物換算)100質量部に対して、0.01〜10質量部が好ましい。硬化触媒の量が0.01質量部以上であれば、シランカップリング剤やアルコキシシランを効率よく硬化することができる。硬化触媒の量が10質量部以下であれば、着色が抑制され、柔軟な接着層12を得ることができる。硬化触媒の量は、硬化性、性能が良好な接着層12が得られる点から、0.05〜5質量部がより好ましい。
【0035】
有機溶媒は、接着剤の固形分濃度を調整し、分散安定性、被膜形成性、透明基材への密着性を向上させるものである。
有機溶媒としては、アルコール類、ケトン類、エーテル類、エステル類、セロソルブ類、芳香族化合物類等が挙げられる。具体的には、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブチルアルコール、t−ブチルアルコール、ベンジルアルコール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−(メトキシメトキシ)エタノール、2−ブトキシエタノール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジアセトンアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、2−ヘキサノン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン、4−ヘプタノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、アセトフェノン、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジヘキシルエーテル、アニソール、フェネトール、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、1,2−ジブトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、グリセリンエーテル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル、3−メトキシブチルアセテート、2−エチルブチルアセテート、2−エチルヘキシルアセテート、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、γ−ブチロラクトン、2−メトキシエチルアセテート、2−エトキシエチルアセテート、2−ブトキシエチルアセテート、2−フェノキシエチルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。有機溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
有機溶媒の量は、接着剤の固形分100質量部に対して、10〜1000質量部が好ましい。有機溶媒の量が10質量部以上であれば、接着剤の保存安定性が良好となり、接着剤が高粘度になるのを抑制することができ、作業性がよく、良好な接着層12を得ることができる。有機溶媒の量が1000質量部以下であれば、外観良好な接着層12を得ることができる。
【0037】
レベリング剤は、接着層12の平坦性を向上させるものである。
レベリング剤としては、シリコーン系レベリング剤が好ましい。シリコーン系レベリング剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、フェノール変性シリコーンオイル、カルボキシ変性シリコーンオイル、メタクリレート変性シリコーンオイル、アルコキシ変性シリコーンオイル等が挙げられる。市販品としては、BY16−201、SF8427、SF8428、FZ2162、FZ−77、L7001、FZ−2104、SH3773M(以上、東レダウコーニング社製)等が挙げられる。これらのポリエーテル変性シリコーンオイルは、末端にヒドロキシ基、アルコキシ基等の反応性基を有するため、ガラスとの接着に好適である。レベリング剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
レベリング剤の量は、接着剤中のシランカップリング剤およびアルコキシシランの合計(酸化物換算)100質量部に対して、0.1〜10質量部が好ましい。レベリング剤の量が0.1質量部以下であれば、平坦性を高くすることができ、良好な接着層12を得ることができる。レベリング剤の量が10質量部以下であれば、レベリング剤による接着層12の硬度不良を防止することができる。レベリング剤の量は、0.25〜5質量部がより好ましい。
【0039】
接着層12は、0.4mN試験荷重下での押し込み深さが0.2μm以上であることが好ましい。押し込み深さが0.2μm以上であれば、透明基材10や微細凹凸層22との接着性がさらに向上する。押し込み深さは、0.3μm以上がより好ましい。
押し込み深さの測定には、Fischerscope HM2000を用いる。圧子としては、ダイヤモンド製の四角錐型、対面角135度のものを用いる。温度23℃、相対湿度50%の環境下、接着層12に対して圧子を、dF/dt(F:荷重、t:経過時間)が一定となるよう20秒間で1mNまで荷重させ、0.4mNの試験荷重がかかった時点の圧子の押し込み深さを求める。
【0040】
(微細凹凸層)
微細凹凸層22は、硬化性材料の硬化物からなる層であり、後述の陽極酸化アルミナのモールドの細孔を転写して形成された複数の突起を表面に有する。後述の陽極酸化アルミナのモールドの細孔を転写して形成された複数の突起は、平面六方格子の配置となる。また、後述の陽極酸化アルミナのモールドの細孔を転写して形成された略円錐形状(断面略三角形)、略角錐形状(断面略三角形)等の複数の突起は、いわゆるモスアイ構造を形成する。モスアイ構造は、空気の屈折率から材料の屈折率へと連続的に屈折率が増大していくことで有効な反射防止の手段となることが知られている。
【0041】
突起(凸部)のピッチは、50nm〜50μmが好ましく、100〜5μmがより好ましい。突起のピッチが50μmを超えると、回折やフレネル反射ロス低減による光取り出し効果が低くなる。突起のピッチが50nm未満では、モールドからの樹脂の離型性が悪くなり製造が難しくなる。
突起のピッチは、電子顕微鏡観察によって隣接する突起の間隔(突起の中心から隣接する突起の中心までの距離)を3点測定し、これらの値を平均したものである。
【0042】
突起(凸部)の高さは、50nm〜50μmが好ましく、100〜5μmがより好ましい。突起の高さが50μmを超えると、モールドの微細凹凸に対し樹脂充填が難しくなる。突起の高さが50nm未満では、十分な光取り出し効果が得られない。
突起の高さは、電子顕微鏡観察によって突起の高さを3点測定し、これらの値を平均したものである。
【0043】
微細凹凸層は、後述するモールドの表面の微細凹凸が正確に転写される点から、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物からなるものが好ましい。
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物としては、接着層12との接着性に優れる点から、(メタ)アクリロイルオキシ基を有するモノマーおよびまたはオリゴマーを含むものが好ましい。
【0044】
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、重合性化合物および重合開始剤を含む。
重合性化合物としては、分子中にラジカル重合性結合およびまたはカチオン重合性結合を有するモノマー、オリゴマー、反応性ポリマー等が挙げられる。
ラジカル重合性結合を有するモノマーとしては、単官能モノマー、多官能モノマーが挙げられる。
【0045】
単官能モノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート誘導体;(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリロニトリル;スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン誘導体;(メタ)アクリルアミド、N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド誘導体等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0046】
多官能モノマーとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、イソシアヌール酸エチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル)プロパン、1,2−ビス(3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)エタン、1,4−ビス(3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ブタン、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、メチレンビスアクリルアミド等の二官能性モノマー;ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキシド変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキシド変性トリアクリレート、イソシアヌール酸エチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート等の三官能モノマー;コハク酸/トリメチロールエタン/アクリル酸の縮合反応混合物、ジペンタエリストールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリストールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート等の四官能以上のモノマー;二官能以上のウレタンアクリレート、二官能以上のポリエステルアクリレート等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0047】
カチオン重合性結合を有するモノマーとしては、エポキシ基、オキセタニル基、オキサゾリル基、ビニルオキシ基等を有するモノマーが挙げられ、エポキシ基を有するモノマーが特に好ましい。
オリゴマーまたは反応性ポリマーとしては、不飽和ジカルボン酸と多価アルコールとの縮合物等の不飽和ポリエステル類;ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、カチオン重合型エポキシ化合物、側鎖にラジカル重合性結合を有する上述のモノマーの単独または共重合ポリマー等が挙げられる。
【0048】
光硬化反応を利用する場合、光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジル、ベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、α,α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノン、メチルフェニルグリオキシレート、エチルフェニルグリオキシレート、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン等のカルボニル化合物;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド等の硫黄化合物;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ベンゾイルジエトキシフォスフィンオキサイド等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0049】
電子線硬化反応を利用する場合、重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、メチルオルソベンゾイルベンゾエート、4−フェニルベンゾフェノン、t−ブチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2,4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン等のチオキサントン;ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン等のアセトフェノン;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド;メチルベンゾイルホルメート、1,7−ビスアクリジニルヘプタン、9−フェニルアクリジン等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0050】
熱硬化反応を利用する場合、熱重合開始剤としては、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシオクトエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ラウロイルパーオキサイド等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系化合物;前記有機過酸化物にN,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン等のアミンを組み合わせたレドックス重合開始剤等が挙げられる。
【0051】
重合開始剤の量は、重合性化合物の100質量部に対して、0.1〜10質量部が好ましい。重合開始剤の量が0.1質量部未満では、重合が進行しにくい。重合開始剤の量が10質量部を超えると、硬化膜が着色したり、機械強度が低下したりすることがある。
【0052】
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、非反応性のポリマー、活性エネルギー線ゾルゲル反応性組成物、帯電防止剤、防汚性を向上させるためのフッ素化合物等の添加剤、微粒子、少量の溶媒を含んでいてもよい。
【0053】
非反応性のポリマーとしては、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリウレタン、セルロース系樹脂、ポリビニルブチラール、ポリエステル、熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
活性エネルギー線ゾルゲル反応性組成物としては、アルコキシシラン化合物、アルキルシリケート化合物等が挙げられる。
【0054】
アルコキシシラン化合物としては、テトラメトキシシラン、テトラ−i−プロポキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−t−ブトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルプロポキシシラン、トリメチルブトキシシラン等が挙げられる。
アルキルシリケート化合物としては、メチルシリケート、エチルシリケート、イソプロピルシリケート、n−プロピルシリケート、n−ブチルシリケート、n−ペンチルシリケート、アセチルシリケート等が挙げられる。
【0055】
(高屈折率層)
高屈折率層24は、微細凹凸層22の屈折率よりも高く、透明電極32の屈折率よりも低い屈折率を有する材料からなる層である。微細凹凸層22が(メタ)アクリロイルオキシ基を有するモノマーおよびまたはオリゴマーを含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物からなる場合の屈折率は1.49程度であり、また、透明電極32がITOからなる場合の屈折率は2.12程度であることから、高屈折率層24の材料の屈折率は、1.5〜2.1が好ましく、1.6〜2.0がより好ましい。
【0056】
高屈折率の材料としては、ビス(4−メタクリロイルチオフェニル)スルフィド、ビニルナフタレン、ビニルフェニルスルフィド、4−メタクリロキシフェニル−4’−メトキシフェニルチオエーテル、フルオレン系エポキシ樹脂(ビスアリールフルオレンを基本骨核とするエポキシ樹脂(長瀬産業社製)等)、フルオレン系アクリル樹脂(オグソール(大阪ガスケミカル社製)等)等が挙げられる。
【0057】
また、高屈折率層24は、微細凹凸層22の突起(凸部)間の凹部を埋めて、光取り出し部20の表面を平滑化する役割も果たす。光取り出し部20の表面が平滑になると、発光部30の各層を均一に形成しやすい。
【0058】
(透明電極)
透明電極32の材料としては、導電性を有する金属酸化物、光透過性を有する金属薄膜を形成し得る金属、導電性を有する有機高分子等が挙げられる。
導電性を有する金属酸化物としては、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、インジウム・スズ・オキサイド(ITO)、インジウム・亜鉛・オキサイド(IZO)、インジウム・ガリウム・亜鉛(IGZO)・オキサイド等が挙げられる。
光透過性を有する金属薄膜を形成し得る金属としては、金、白金、銀、銅、アルミニウム等が挙げられる。
導電性を有する有機高分子としては、ポリアニリン、その誘導体、ポリチオフェン、PEDOT−PSS(poly(3, 4-ethylenedioxythiophene):poly(styrenesulfonate))、その誘導体等が挙げられる。
【0059】
透明電極32は、1層であってもよく、2層以上であってもよい。
透明電極32の厚さは、光透過性および導電性の両立の点から、10〜1000nmが好ましく、50〜500nmがより好ましい。
透明電極32は、陽極であってもよく、陰極であってもよい。透明電極32は、通常、陽極とされる。
【0060】
(有機半導体層)
有機半導体層34は、少なくとも発光層(図示略)を有する。有機半導体層34は、発光層と透明電極32または背面電極36との間には、他の機能層を有していてもよい。透明電極32と発光層との間に設けられる他の機能層としては、透明電極32の側から順に、正孔注入層、正孔輸送層が挙げられる。発光層と背面電極36との間に設けられる他の機能層としては、発光層の側から順に、正孔阻止層、電子輸送層、電子注入層が挙げられる。
【0061】
発光層は、有機化合物の発光材料を含む層である。
有機化合物の発光材料としては、リン光性化合物のホスト化合物であるカルバゾール誘導体(4,4'−N,N'−ジカルバゾール−ジフェニル(以下、CBPと記す。)等)にイリジウム錯体(トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(以下、Ir(ppy)3と記す。)をドープしたもの(CBP:Ir(ppy)等);8−ヒドロキシキノリンまたはその誘導体の金属錯体(トリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム(以下、Alqと記す。)等);その他、公知の発光材料が挙げられる。
【0062】
発光層は、発光材料の他に、正孔輸送性材料、電子輸送性材料等を含んでいてもよい。
発光層の厚さは、1〜100nmが好ましく、10〜50nmがより好ましい。
発光層は、1層であってもよく、2層以上であってもよい。例えば、有機EL素子1を白色の有機EL照明として用いる場合、発光層を、青発光層、緑発光層、および赤発光層を有する積層構造としてもよい。
【0063】
正孔注入層は、正孔注入材料を含む層である。
正孔注入材料としては、銅フタロシアニン(以下、CuPcと記す。);酸化バナジウム;導電性を有する有機高分子;その他、公知の正孔注入材料が挙げられる。
正孔注入層の厚さは、1〜100nmが好ましく、10〜50nmがより好ましい。
【0064】
正孔輸送層は、正孔輸送性材料を含む層である。
正孔輸送性材料としては、トリフェニルジアミン類(4,4'−ビス(m−トリルフェニルアミノ)ビフェニル(以下、TPDと記す。)等);その他、公知の正孔輸送性材料が挙げられる。
正孔輸送層の厚さは、1〜100nmが好ましく、10〜50nmがより好ましい。
【0065】
正孔阻止層は、正孔阻止材料を含む層である。
正孔阻止材料としては、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(以下、BCPと記す。)等);その他、公知の正孔阻止材料が挙げられる。
正孔阻止層の厚さは、1〜100nmが好ましく、5〜50nmがより好ましい。
【0066】
電子輸送層は、電子輸送性材料を含む層である。
電子輸送性材料としては、8−ヒドロキシキノリンまたはその誘導体の金属錯体(Alq3等)、オキサジアゾール誘導体;その他、公知の電子輸送性材料が挙げられる。
電子輸送層の厚さは、1〜100nmが好ましく、10〜50nmがより好ましい。
【0067】
電子注入層は、電子注入材料を含む層である。
電子注入材料としては、アルカリ金属化合物(フッ化リチウム等)、アルカリ土類金属化合物(フッ化マグネシウム等)、金属(ストロンチウム等);その他、公知の電子注入材料が挙げられる。
電子注入層の厚さは、1〜100nmが好ましく、10〜50nmがより好ましい。
【0068】
(背面電極)
背面電極36の材料としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、スカンジウム、バナジウム、亜鉛、イットリウム、インジウム、セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、イッテルビウム等が挙げられ、これらのうち2つ以上を組み合わせた合金、これらフッ化物等の金属塩類、もしくはこれらのうち1つ以上と、金、銀、白金、銅、マンガン、チタン、コバルト、ニッケル、タングステン、錫のうち1つ以上との合金等が挙げられる。合金の具体例としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金、インジウム−銀合金、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−マグネシウム合金、リチウム−インジウム合金、カルシウム−アルミニウム合金等が挙げられる。
【0069】
背面電極36は、1層であってもよく、2層以上であってもよい。
背面電極36の厚さは、導電性および耐久性の点から、5〜1000nmが好ましく、10〜300nmがより好ましい。
背面電極36は、陰極であってもよく、陽極であってもよい。背面電極36は、通常、陰極とされる。
【0070】
(封止部)
掘り込みガラス42は、ガラス板の片面に掘り込み加工を施して、面積(開口および底面)が、光取り出し部20の面積より広く、かつ深さが接着層12、光取り出し部20および発光部30の厚さの合計より深くされた凹部を形成したものである。
【0071】
封止部40における接着剤44としては、エポキシ樹脂系接着剤、アクリレート樹脂系接着剤等、公知の接着剤が挙げられる。接着剤44としては、水や酸素を透過しにくいものが好ましく、その具体例としては、アラルダイトAR−R30(チバガイギー社製のエポキシ樹脂系接着剤)が挙げられる。また、接着剤の代わりに、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂等の種々の樹脂を用いてもよい。
【0072】
(作用効果)
以上説明した有機EL素子1にあっては、微細凹凸層22を有する光取り出し部20を備えているため、光取り出し部20と発光部30との界面における光の反射が抑えられ、光の取り出し効率が高くなる。
【0073】
また、以上説明した有機EL素子1にあっては、光取り出し部20が封止部40の外面から露出していないため、微細凹凸層22を設けているにも関わらず、発光部30が劣化しにくい。
すなわち、光取り出し部が封止部の外面から露出している従来の有機EL素子においては、光取り出し部の微細凹凸層や高屈折率層が外面に露出しており、そこから微細凹凸層や高屈折率層の樹脂中を水分や酸素が浸入しやすい。そのため、発光部が水や酸素によって劣化しやすい。
一方、光取り出し部20が封止部40の外面から露出していない有機EL素子1においては、光取り出し部20の微細凹凸層22や高屈折率層24が外面に露出しておらず、封止部40の内部に水や酸素が透過しにくく、その結果、発光部30が劣化しにくい。
【0074】
また、以上説明した有機EL素子1にあっては、透明基材10と光取り出し部20との間に接着層12を有するため、光取り出し部20が透明基材10から剥離しにくい。その結果、微細凹凸層22を形成する際に、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物にモールドの表面の微細凹凸を転写しやすくなる。
【0075】
また、以上説明した有機EL素子1にあっては、微細凹凸層22と透明電極32との間に、微細凹凸層22の屈折率よりも高く、透明電極32の屈折率と近い屈折率を有する材料からなる高屈折率層24を有するため、微細凹凸層22の凸部のピッチが200nm以下の場合は、各界面における屈折率差が小さくなり、透明基材10と透明電極32との間における光の反射を抑えることができ、その結果、フレネル反射低減効果が向上し、光の取り出し効率がさらに向上する。微細凹凸層22の凸部のピッチが200nm以上から1μm以下の場合は、高屈折率層24により透明電極32や有機半導体層34に閉じ込められていた光を、微細凹凸による回折効果によって外部に取り出すことができる。微細凹凸層22の凸部のピッチが1μm以上から50μm以下の場合は、高屈折率層24により透明電極32や有機半導体層34に閉じ込められていた光を、微細凹凸による散乱によって外部に取り出すことが出来る。
【0076】
(他の形態)
なお、本発明の有機EL素子は、図1の有機EL素子1に限定はされない。
例えば、封止部40は、図2に示すように、光取り出し部20および発光部30の表面を直接被覆するバリア層48からなるものであってもよい。
また、図3に示すように、微細凹凸層22の突起(凸部)が円柱状(断面矩形)のものであってもよい。
また、図4に示すように、高屈折率層24を省略してもよい。この場合、光取り出し部20の表面を平滑化する高屈折率層24がなくなるため、発光部30の各層は、微細凹凸層22の略円錐形状(断面略三角形)や略角錐形状(断面略三角形)の複数の突起の形状に追随した形状となる。
また、図5に示すように、接着層12を省略してもよく、図6に示すように、高屈折率層24および接着層12を省略してもよい。
【0077】
バリア層48は、大気中の酸素、水、窒素酸化物、硫黄酸化物、オゾン等の透過を防ぐという機能を有する限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。バリア層48の材料としては、水、酸素等の発光部の劣化を促進するものが内部に入ることを抑止する機能を有しているものであればよく、具体例としては、インジュウム、スズ、鉛、金、銅、銀、アルミニウム、チタン、ニッケル等の金属;酸化マグネシウム、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ゲルマニウム、酸化ニッケル、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化鉄、酸化イットリウム、酸化チタン等の金属酸化物;窒化ケイ素等の金属窒化物:酸窒化ケイ素等の金属酸窒化物;フッ化マグネシウム、フッ化リチウム、フッ化アルミニウム、フッ化カリウム等の金属フッ化物;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、ポリウレア、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリジクロロジフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンとジクロロジフルオロエチレンとの共重合体、テトラフルオロエチレンと少なくとも1種のコモノマーとを含むモノマー混合物を共重合させて得られる共重合体、共重合主鎖に環状構造を有する含フッ素共重合体、吸水率1%以上の吸水性物質、吸水率0.1%以下の防湿性物質、等が挙げられる。
【0078】
バリア層48の厚さは、5〜1000nmが好ましく、7〜750nmがより好ましく、10〜500nmが特に好ましい。バリア層48の厚さが5nm未満では、大気中の酸素および水の透過を防ぐバリア機能が不十分であることがある。バリア層48の厚さが1000nmを超えると、光線透過率が低下し透明性を損なうことがある。
バリア層48の光線透過率は、通常、80%以上であり、85%以上が好ましく、90%以上がより好ましい。
【0079】
<有機EL素子の製造方法>
有機EL素子1は、例えば、下記の工程(I)〜(VII)を有する方法によって製造できる。
(I)透明基材10の上に接着層12を形成する工程。
(II)接着層12の上に微細凹凸層22を形成する工程。
(III)微細凹凸層22の上に高屈折率層24を形成する工程。
(IV)高屈折率層24の上に透明電極32を形成する工程。
(V)透明電極32の上に発光層(図示略)を含む有機半導体層34を形成する工程。
(VI)有機半導体層34の上に背面電極36を形成する工程。
(VII)光取り出し部20および発光部30を封止部40によって封止する工程。
【0080】
(工程(I))
接着層12は、透明基材10の上に接着剤を塗布し、必要に応じてプリベークした後、後述する工程(II)において活性エネルギー線硬化性樹脂組成物と同時に完全に硬化させることによって形成される。
【0081】
接着剤を塗布する前に透明基材10をあらかじめ表面処理してもよい。表面処理としては、紫外線処理、コロナ処理、プラズマ処理等が挙げられる。表面処理によって透明基材10と接着層12との接着性が向上し、後述する工程(II)において活性エネルギー線硬化性樹脂組成物にモールドの表面の微細凹凸を転写しやすくなる。
【0082】
接着剤の塗布方法としては、バーコート、ディップコート、スプレーコート、ロールコート、グラビアコート、フレキソコート、スクリーンコート、スピンコート、フローコート、インクジェット等が挙げられる。
【0083】
透明基材10の上に塗布された接着剤を完全に硬化させる前にプリベークすることによって、接着剤の硬化を促進しておいてもよい。プリベークにおける加熱方法としては、赤外線ヒーターによる照射法、熱風による循環加熱法、ホットプレート等による直接加熱法等が挙げられる。加熱温度としては、接着剤の温度が50〜120℃となる温度が好ましい。加熱時間としては、5秒〜3600分が好ましく、30秒〜30分がより好ましく、1分〜10分がさらに好ましい。
【0084】
透明基材10の上に塗布された接着剤から真空下にて溶媒を揮発させることによって接着剤の硬化を促進しておいてもよい。この際、適宜加熱を併用してもよい。真空下における加熱温度としては、接着剤の温度が室温〜120℃となる温度が好ましい。真空下における溶媒の揮発時間としては、1分〜3600分が好ましく、1分〜120分がより好ましい。
【0085】
(工程(II))
微細凹凸層22は、モールドの表面の微細凹凸を活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に転写することによって形成される。具体的には、接着層12の上に塗布された活性エネルギー線硬化性樹脂組成物にモールドを押し付けた状態にて、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に活性エネルギー線を照射して硬化させて、モールドの微細凹凸が転写されてなる微細凹凸(複数の突起)を表面に有する微細凹凸層22を形成し、微細凹凸層22からモールドを離型する方法(いわゆる光インプリント法)によって形成される。
【0086】
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の塗布方法としては、バーコート、ディップコート、スプレーコート、ロールコート、グラビアコート、フレキソコート、スクリーンコート、スピンコート、フローコート、インクジェット等が挙げられる。
【0087】
接着層12の上に塗布された活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を完全に硬化させる前にプリベークすることによって、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化を促進しておいてもよい。プリベークにおける加熱方法としては、赤外線ヒーターによる照射法、熱風による循環加熱法、ホットプレート等による直接加熱法等が挙げられる。加熱温度としては、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の温度が50〜120℃となる温度が好ましい。加熱時間としては、5秒〜3600分が好ましく、30秒〜30分がより好ましく、1分〜10分がさらに好ましい。
【0088】
接着層12の上に塗布された活性エネルギー線硬化性樹脂組成物から真空下にて溶媒を揮発させることによって活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化を促進しておいてもよい。この際、適宜加熱を併用してもよい。真空下における加熱温度としては、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の温度が室温〜120℃となる温度が好ましい。真空下における溶媒の揮発時間としては、1分〜3600分が好ましく、1分〜120分がより好ましい。
【0089】
モールドとしては、微細凹凸層22の表面の微細凹凸(複数の突起)に対応する反転構造(複数の孔)が形成された転写面を有するモールドを用いる。具体的には、下記のモールドが挙げられる。
(i)フォトリソグラフィ(EUV露光等)によって作製されたモールド。
(ii)3次元描画装置等のレーザー描画によって作製されたモールド。
(iii)陽極酸化アルミナからなるモールド。
(iv)切削バイトを用いて作製したプリズムモールド。
(v)ブラスト処理したモールド。
【0090】
これらモールドのうち、低コストであり、微細凹凸層22を大面積で形成でき、かつ微細凹凸層22を連続して形成しやすい点から、(iii)〜(v)のモールドが好ましい。また、(i)〜(v)のモールドをマスターモールドとし、このマスターモールドの表面の微細凹凸を樹脂フィルムの上に転写して得られたフィルム状のレプリカモールドを用いてもよい。
【0091】
図7に示すように、接着層12の上に塗布された活性エネルギー線硬化性樹脂組成物26にモールド50を押し付けた状態にて、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物26に活性エネルギー線を照射して硬化させて、モールド50の表面の微細凹凸(複数の孔)が転写されてなる微細凹凸(複数の突起)を表面に有する微細凹凸層22を形成する。
【0092】
また、図8に示すように、長尺のフィルム状のレプリカモールド52を用いることによって、複数の透明基材10の上に連続して微細凹凸層22を形成できる。図8に示す転写装置は、ベルトコンベア60と;ベルトコンベア60の上面の上流側にて、ベルトコンベア60の上面を移動する接着層付き透明基材10の上に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物26を供給する供給ダイ62と;長尺のフィルム状のレプリカモールド52をベルトコンベア60に向かって送り出す供給ロール64と;レプリカモールド52を透明基材10の上の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物26に押し付ける一対のニップロール66と;レプリカモールド52側から透明基材10の上の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物26に活性エネルギー線を照射する光源68と;透明基材10の上の微細凹凸層22からレプリカモールド52を剥離させる剥離ロール70と;レプリカモールド52を巻き取る巻取ロール72とを具備する。
【0093】
活性エネルギー線は、図7に示すように、モールド50が透明な場合はモールド側から照射してもよく、透明基材10側から照射してもよく、両側から照射してもよい。
活性エネルギー線を照射する際に、光源と、モールド50および透明基材10のうち活性エネルギー線を照射する側との間に、光透過部82と遮光部84とを有するマスク80を配置することによって、微細凹凸層22を所望の形状、大きさにて形成できる。
【0094】
活性エネルギー線としては、真空紫外線、紫外線、可視光線が好ましい。活性エネルギー線は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
活性エネルギー線の照射時間および照射量は、紫外線の場合、積算光量が100〜5000mJ/cmの範囲となるように調整することが好ましい。
【0095】
光源としては、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、白熱電球、キセノンランプ、ハロゲンランプ、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、蛍光灯、タングステンランプ、ガリウムランプ、エキシマーランプ、太陽等が挙げられる。これらのうち、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプが好ましい。
【0096】
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化させる際には、活性エネルギー線の照射とともに、必要に応じて加熱を併用してもよい。
加熱時期としては、活性エネルギー線の照射前、活性エネルギー線の照射と同時、活性エネルギー線の照射後のいずれかの時期から少なくとも一時期を選択することができる。
【0097】
加熱方法としては、赤外線ヒーターによる照射法、熱風による循環加熱法、ホットプレート等による直接加熱法等が挙げられる。加熱温度としては、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の温度が50〜120℃となる温度が好ましい。加熱時間としては、活性エネルギー線の照射前に加熱する場合は1〜20分間、活性エネルギー線の照射と同時に加熱する場合は0.2〜10分間、活性エネルギー線の照射後に加熱する場合は1〜60分間が好ましい。
【0098】
(工程(III))
高屈折率層24は、例えば、微細凹凸層22の上に、高屈折率の材料を含む液を塗布し、乾燥およびまたは硬化させることによって形成される。
屈折率の材料を含む液の塗布方法としては、バーコート、ディップコート、スプレーコート、ロールコート、グラビアコート、フレキソコート、スクリーンコート、スピンコート、フローコート、インクジェット等が挙げられる。
【0099】
(工程(IV))
所定パターンの孔が形成されたマスク越しに電極の材料を蒸着して、高屈折率層24の上に透明電極32を形成し、同時に透明基材10の上に配線パターン38を形成する。
蒸着法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的蒸着法が挙げられ、透明電極32を形成しやすい点から、スパッタリング法が好ましい。
【0100】
蒸着速度(デポレート)は、透明電極32を形成しやすい点から、10nm/sec以下が好ましく、5nm/sec以下がより好ましい。また、蒸着速度(デポレート)は、生産性の点から、0.001nm/sec以上が好ましく、0.01nm/sec以上がより好ましい。
【0101】
高屈折率層24と透明電極32との接着性を向上させるために、蒸着の前に、高屈折率層24の表面に、UVオゾン処理、プラズマ処理、コロナ処理等を施してもよい。
高屈折率層24に含まれる溶存ガス、未反応モノマーを除去するために、蒸着の前に、透明基材10に、加熱処理、真空処理、加熱真空処理等を施してもよい。
【0102】
(工程(V))
透明電極32の上に、所定パターンの孔が形成されたマスク越しに有機半導体層34を構成する各層の材料を順次蒸着して、有機半導体層34を形成する。
蒸着法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的蒸着法が挙げられる。材料が有機化合物の場合、真空蒸着法が好ましい。
【0103】
蒸着速度(デポレート)は、各層を形成しやすい点から、10nm/sec以下が好ましく、5nm/sec以下がより好ましい。また、蒸着速度(デポレート)は、生産性の点から、0.1nm/sec以上が好ましく、0.5nm/sec以上がより好ましい。
【0104】
透明電極32と有機半導体層34との接着性を向上させるために、蒸着の前に、透明電極32の表面に、UVオゾン処理、プラズマ処理、コロナ処理、エキシマーランプ処理等を施してもよい。
【0105】
(工程(VI))
有機半導体層34の上に、所定パターンの孔が形成されたマスク越しに電極の材料を蒸着して、背面電極36を形成する。
蒸着法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的蒸着法が挙げられ、下層の有機層にダメージを与えないことから、真空蒸着法が好ましい。
【0106】
蒸着速度(デポレート)は、有機半導体層34にダメージを与えない観点から、10nm/sec以下が好ましく、5nm/sec以下がより好ましい。また、蒸着速度(デポレート)は、連続した金属薄膜を形成しやすい点、生産性の点から、0.5nm/sec以上が好ましく、1.0nm/sec以上がより好ましい。
【0107】
(工程(VII))
封止部40が掘り込みガラス42からなる場合、封止部40は、掘り込みガラス42を、光取り出し部20および発光部30が掘り込みガラス42の凹部に収容されるように掘り込みガラス42を被せた後、掘り込みガラス42の開口端面を接着剤44によって透明基材10(および配線ライン38)に接着することによって設けられる。
【0108】
封止部40がバリア層48からなる場合、封止部40は、バリア層48の材料を蒸着する等によって形成される。バリア層48の形成方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、MBE(分子線エピタキシ)法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法(高周波励起イオンプレーティング法)、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、ガスソースCVD法、コーティング法等が挙げられる。
【実施例】
【0109】
以下、本発明の実施例について詳細に述べるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0110】
(数平均分子量)
数平均分子量の測定にはゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)を用いた。GPCの測定条件は下記の通りである。
溶離液:テトラヒドロフラン、
流速:1.0mL/min、
温度:40℃、
カラム:
・TSK:guard column HXL−L(サイズ:6.0×40)、
・TSKgel:GMHXL(サイズ:7.8×300)、
・TSKgel:G1000HXL(サイズ:7.8×300)。
【0111】
(寿命試験)
温度:60℃、湿度:95%の環境下に有機EL素子を静置し、正面輝度:100cd/mで発光させた。48時間後に、2mm□の発光部内に発生するダークスポット(非発光点)を確認し、下記の基準にて評価した。
○:ダークスポットの発生なし。
×:ダークスポットの発生あり。
【0112】
(微細凹凸の評価)
微細凹凸の抜け:
SEM(日立ハイテク社製、S−4300SE/N)を用い、微細凹凸層の微細凹凸を真上から観察し、微細凹凸の抜けを確認した。モールドAの微細凹凸を転写した微細凹凸層Aについては倍率60000倍、モールドB、Cの微細凹凸を転写した微細凹凸層B、Cについては倍率4000倍の視野において、微細凹凸の中心付近での3点について、微細凹凸の抜けを確認し、下記の基準にて評価した。
○:抜けが平均1つ以下である。
×:抜けが2つ以上ある。
【0113】
高さ:
SEMを用い、モールドAの微細凹凸を転写した微細凹凸層Aを真横から倍率60000倍で観察し、凸部の高さを測定した。また、AFM(キーエンス社製、VN−8010、カンチレバーDFM/SS−Mode)を用い、モールドB、Cの微細凹凸を転写した微細凹凸層B、Cにおける凸部の高さを測定した。下記の基準にて評価した。
○:微細凹凸層の凸部の高さが、モールドの凹部の深さの±5%以内である。
×:微細凹凸層の凸部の高さが、モールドの凹部の深さの±5%超である。
【0114】
総合評価:
微細凹凸の抜けの評価結果と高さの評価結果を総合し、下記の基準にて評価した。表中には総合評価を記載した。
○:微細凹凸の抜けが○で、高さが○である。
△:微細凹凸の抜けが○で、高さが×である、または微細凹凸の抜けが×で、高さが○である。
×:微細凹凸の抜けが×で、高さが×である。
【0115】
(押し込み深さ)
押し込み深さの測定には、Fischerscope HM2000を用いた。圧子としては、ダイヤモンド製の四角錐型、対面角135度のものを用いた。温度:23℃、相対湿度:50%の環境下、接着層に対して圧子を、dF/dt(F:荷重、t:経過時間)が一定となるよう20秒間で1mNまで荷重させ、0.4mNの試験荷重がかかった時点の圧子の押し込み深さを求めた。
【0116】
(接着性)
試験A:
JIS K5600に準拠し、微細凹凸層にカッターナイフを用いて2×2mm四方の碁盤目の切り傷を入れた。碁盤目の数は25マスとした。碁盤目を入れた箇所に保護粘着フィルム(ニチバン社製、粘着力:1.00N/10mm、18mm幅)を強く圧着させ、テープの端を90°の角度で急速に引き剥がし、碁盤目の状態を観察した。下記の基準にて評価した。
○:25マスのうち、1マスも剥がれがない。
△:25マスのうち、1マス以上11マス未満で剥がれが発生した。
×:25マスのうち、11マス以上で剥がれが発生した。
【0117】
試験B:
保護粘着フィルムをセロテープ(登録商標)(ニチバン社製、粘着力:3.93N/10mm、18mm幅)に変更した以外は試験Aと同様に行った。
【0118】
総合評価:
試験Aの評価結果と試験Bの評価結果を総合し、下記の基準にて評価した。
◎:試験Aが○で、試験Bが○である。
○:試験Aが○で、試験Bが△である。
△:試験Aが○で、試験Bが×である。
×:試験Aが×で、試験Bが×である。
【0119】
(モールドA)
50mm×50mm×厚さ0.3mmのアルミニウム板(純度:99.99%)を、過塩素酸/エタノール混合溶液(1/4体積比)中で電解研磨した。
工程(a):
該アルミニウム板について、4.5質量%シュウ酸水溶液中で、直流:40V、温度:16℃の条件で6時間陽極酸化を行った。
工程(b):
酸化皮膜が形成されたアルミニウム板を、6質量%リン酸/1.8質量%クロム酸混合水溶液に9時間浸漬して、酸化皮膜を除去し、細孔発生点を形成した。
工程(c):
該アルミニウム板について、3質量%シュウ酸水溶液中、直流:40V、温度:16℃の条件で30秒間陽極酸化を行った。
【0120】
工程(d):
酸化皮膜が形成されたアルミニウム板を、32℃の5質量%リン酸水溶液に8分間浸漬して、細孔径拡大処理を行った。
工程(e):
該アルミニウム板について、3質量%シュウ酸水溶液中、直流:40V、温度:16℃の条件で30秒間陽極酸化を行った。
工程(f):
前記工程(d)および工程(e)を合計で4回繰り返し、最後に工程(d)を行い、ピッチ:100nm、深さ:200nmの略円錐形状の細孔を有する陽極酸化アルミナが表面に形成されたモールドAを得た。
【0121】
工程(g):
シャワーを用いてモールドAの表面のリン酸水溶液を軽く洗い流した後、モールドAを流水中に10分間浸漬した。
工程(h):
モールドAにエアーガンからエアーを吹き付け、モールドAの表面に付着した水滴を除去した。
【0122】
工程(i):
離型剤(ダイキン工業社製、オプツールDSX)を希釈用有機溶媒(ハーベス社製、デュラサーフHD−ZV)で希釈して、離型剤濃度が0.1質量%である希釈溶液を調製した。
モールドAを離型剤の希釈溶液に室温で10分間浸漬した。
モールドAを、希釈溶液から3mm/secでゆっくりと引き上げた。
【0123】
工程(k):
恒温恒湿器を用いて、モールドAを温度60℃、相対湿度:85%に1時間放置し、加熱加湿処理した。
工程(l):
モールドAを一晩風乾して、離型剤で処理されたモールドAを得た。
【0124】
(モールドB)
ピッチ:1μm、深さ:1μmの複数の円柱状の凹部からなるピラー構造(凹部の幅:500nm)を有するモールドB(協同インターナショナル社製、シリコン製お試しモールド(2))を用意した。
【0125】
(モールドC)
ピッチ:8μm、深さ:1μmの複数の円柱状の凹部からなるピラー構造(凹部の幅:4μm)を有するモールドC(協同インターナショナル社製、シリコン製お試しモールド(2))を用意した。
【0126】
(活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(J−1))
1,6−ヘキサンジオールジアクリレートの50質量部、
トリメチロールエタン/アクリル酸/コハク酸(2/4/1)の縮合物の50質量部、
ベンゾインエチルエーテルの3質量部
を混合し、ベンゾインエチルエーテルが溶解するまで撹拌し、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(J−1)を調製した。
【0127】
(高屈折率の材料の液(J−2))
オグソールEA−0200((大阪ガスケミカル社製))の100質量部、
ベンゾインエチルエーテルの3質量部、
トルエンの20質量部
を混合し、高屈折率の材料の液(J−2)を調製した。
【0128】
(ゾルゲル反応性組成物(J−3))
メチルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、KBM13)の100質量部、
水の80質量部、
イソプロピルアルコールの70質量部
を混合し、90℃で6時間撹拌し、数平均分子量:1300のオリゴマーを含むゾルゲル反応性組成物(J−3)を得た。
【0129】
(接着剤(S−1))
メチルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、KBM13)の100質量部、
3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、KBM5103)の37質量部、
水の110質量部、
イソプロピルアルコールの100質量部
を混合し、90℃で6時間撹拌し、数平均分子量:1000のオリゴマーを含む接着剤(S−1)を得た。
【0130】
(接着剤(S−2))
メチルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、KBM13)の100質量部、
γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、KBM503)の39質量部、
水の110質量部、
イソプロピルアルコールの110質量部
を混合し、90℃で6時間撹拌し、数平均分子量:800のオリゴマーを含む接着剤(S−2)を得た。
【0131】
(接着剤(S−3))
メチルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、KBM13)の50質量部、
3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、KBM5103)の86質量部、
水の80質量部、
イソプロピルアルコールの210質量部
を混合し、90℃で6時間撹拌し、数平均分子量:700のオリゴマーを含む接着剤(S−3)を得た。
【0132】
(接着剤(S−4))
3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製、KBM5103)の100質量部、
水の46質量部、
イソプロピルアルコールの205質量部
を混合し、90℃で6時間撹拌し、数平均分子量:650のオリゴマーを含む接着剤(S−4)を得た。
【0133】
〔実施例1〕
図9および図10に示すような、25mm□の透明基材10の上に、15mm□の光取り出し部20、2mm□の4つの発光部30、20mm□の封止部40が順に設けられ、接着層12、光取り出し部20および発光部30が、封止部40の内部に完全に封止されて、封止部40の外面から露出していない有機EL素子を以下のようにして製造した。
【0134】
25mm□の透明基材10(旭硝子社製、ガラス基板、AN100)の表面全体に、接着剤(S−1)をスピンコート(2000rpm)した後、90℃で10分間焼成し、部分硬化の接着層12を形成した。
【0135】
部分硬化の接着層12の表面全体に、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(J−1)をスピンコート(2000rpm)した後、モールドBを押し付け、15mm□のマスク越しに積算光量:1000mJ/cmの紫外線を照射し、接着層12および活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(J−1)を硬化させた。トルエンとエタノールで2度ずつ洗浄することによって、紫外線を照射した部分以外の部分硬化の接着層12および活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(J−1)を除去し、微細凹凸層22を形成した。
【0136】
真空乾燥機で乾燥した後、微細凹凸層22および透明基材10の表面全体に、高屈折率の材料の液(J−2)をスピンコート(500rpm)した後、窒素雰囲気下(酸素濃度:1.0%以下)にて、15mm□のマスク越しに積算光量:1000mJ/cmの紫外線を照射した。トルエンとエタノールで2度ずつ洗浄することによって、紫外線を照射した部分以外の高屈折率の材料の液(J−2)を除去し、高屈折率層24を形成した。
【0137】
真空乾燥機で乾燥した後、光取り出し部20が形成された透明基材10をスパッタリング装置のチャンバ内にセットし、高屈折率層24の上に、ITOを2mm幅ラインパターンの孔を有するマスク越しに蒸着し、厚さ:200nmの透明電極32を形成した。
【0138】
UVオゾン処理した後、透明電極32が形成された透明基材10を真空蒸着装置のチャンバ内にセットし、有機蒸着チャンバ内の圧力:10−4Pa、蒸着速度(デポレート):0.5〜2.0nm/secの条件下で、透明電極32の上に、正孔注入層のCuPc(20nm)、正孔輸送層のTPD(40nm)、発光層のCBP:Ir(ppy)(20nm)、正孔阻止層のBCP(10nm)、電子輸送層のAlq(30nm)を順次蒸着した。さらに、金属蒸着チャンバ内の圧力:10−4Pa、蒸着速度(デポレート):0.25nm/secの条件下で、電子注入層のフッ化リチウム(0.5nm)、蒸着速度(デポレート):0.5〜4.0nm/secの条件下で背面電極36のアルミニウム(100nm)を、ITOラインパターンと垂直になるように、2mm幅のラインパターンの孔を有するマスク越しに順次蒸着し、ITOと背面電極2mm幅同士でクロスさせ、2mm□の発光部30を形成した。
【0139】
20mm□の掘り込みガラス42を、光取り出し部20および発光部30が封止部40内に入るように被せ、透明基材10に接着剤44(ナガセケムテック社製、エポキシ系封止剤)で接着し、有機EL素子を得た。
得られた有機EL素子について寿命試験を行った。結果を表1に示す。
【0140】
〔比較例1〕
図11に示すような、25mm□の透明基材10の上に、25mm□の光取り出し部20、2mm□の4つの発光部30、20mm□の封止部40が順に設けられ、接着層12および光取り出し部20が、封止部40の外面から露出している有機EL素子を以下のようにして製造した。
【0141】
実施例1と同様にして透明基材10の表面全体に部分硬化の接着層12を形成した。
【0142】
部分硬化の接着層12の表面全体に、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(J−1)をスピンコート(2000rpm)した後、モールドBを押し付け、積算光量:1000mJ/cmの紫外線を照射し、接着層12および活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(J−1)を硬化させ、微細凹凸層22を形成した。
【0143】
微細凹凸層22の表面全体に、高屈折率の材料の液(J−2)をスピンコート(500rpm)した後、窒素雰囲気下(酸素濃度:1.0%以下)にて、積算光量:1000mJ/cmの紫外線を照射し、高屈折率層24を形成した。
【0144】
実施例1と同様にして高屈折率層24の上に発光部30を形成した。
【0145】
20mm□の掘り込みガラス42を、発光部30が封止部40内に入るように被せ、光取り出し部20に接着剤44(ナガセケムテック社製、エポキシ系封止剤)で接着し、有機EL素子を得た。
得られた有機EL素子について寿命試験を行った。結果を表1に示す。
【0146】
〔実施例2〕
図12に示すような、25mm□の透明基材10の上に、15mm□の光取り出し部20、2mm□の4つの発光部30、20mm□の封止部40が順に設けられ、接着層12、光取り出し部20および発光部30が、封止部40の内部に完全に封止されて、封止部40の外面から露出していない有機EL素子を以下のようにして製造した。
【0147】
実施例1と同様にして透明基材10上に、接着層12、光取り出し部20および発光部30を順に形成した。
【0148】
発光部30が形成された透明基材10を、プラズマCVD装置のチャンバ内にセットし、20mm□のマスクを用い、2mm□の発光部30が封止部40内に入るように、チャンバ内の圧力:10−4Pa、蒸着速度(デポレート):10〜100nm/minの条件で、窒化ケイ素膜および酸化ケイ素膜を2層ずつ交互に積層してバリア層48を形成し、有機EL素子を得た。
得られた有機EL素子について寿命試験を行った。結果を表1に示す。
【0149】
〔比較例2〕
図13に示すような、25mm□の透明基材10の上に、25mm□の光取り出し部20、2mm□の4つの発光部30、20mm□の封止部40が順に設けられ、接着層12および光取り出し部20が、封止部40の外面から露出している有機EL素子を以下のようにして製造した。
【0150】
比較例1と同様にして透明基材10上に、接着層12、光取り出し部20および発光部30を順に形成した。
【0151】
実施例2と同様にしてバリア層48を形成し、有機EL素子を得た。
得られた有機EL素子について寿命試験を行った。結果を表1に示す。
【0152】
【表1】

【0153】
〔実験例1〕
25mm□のガラス基板(旭硝子社製、AN100)の上に、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(J−1)をスピンコート(500rpm)した後、モールドAを押し付け、積算光量:1000mJ/cmの紫外線を照射し、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(J−1)を硬化させ、微細凹凸層Aを形成した。
モールドAを、モールドB、Cに変更した以外は、同様にして微細凹凸層B、Cを形成した。
【0154】
微細凹凸層A〜CをSEMで観察した。図14に示すように、微細凹凸A層においては、ピッチ:100nm、高さ:200nmのモスアイ構造が得られていることを確認した。図15に示すように、微細凹凸層Bにおいては、ピッチ:1μm、高さ:980nmのピラー構造が得られていることを確認した。図16に示すように、微細凹凸層Cにおいては、ピッチ:8μm、高さ:985nmのピラー構造が得られていることを確認した。
微細凹凸層Aについて接着性試験を行った。試験Aでは25マスのすべてが剥離しなかったが、試験Bでは25マスのすべてが剥離した。結果を表2に示す。
【0155】
〔実験例2〕
25mm□のガラス基板(旭硝子社製、AN100)の上に、接着剤(S−1)をスピンコート(2000rpm)した後、90℃で10分間焼成した。押し込み深さを測定したところ、1μm以上であった。
接着剤(S−1)の上に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(J−1)をスピンコート(2000rpm)した後、モールドAを押し付け、積算光量:1000mJ/cmの紫外線を照射し、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(J−1)を硬化させ、微細凹凸層Aを形成した。
モールドAを、モールドB、Cに変更した以外は、同様にして微細凹凸層B、Cを形成した。
【0156】
微細凹凸層A〜CをSEMで観察した。微細凹凸A層においては、ピッチ:100nm、高さ:200nmのモスアイ構造が得られていることを確認した。微細凹凸層Bにおいては、ピッチ:1μm、高さ:990nmのピラー構造が得られていることを確認した。微細凹凸層Cにおいては、ピッチ:8μm、高さ:988nmのピラー構造が得られていることを確認した。
微細凹凸層Aについて接着性試験を行った。試験A、Bともに25マスのすべてが剥離しなかった。結果を表2に示す。
【0157】
〔実験例3〕
25mm□のガラス基板(旭硝子社製、AN100)上に、接着剤(S−1)をスピンコート(2000rpm)した後、90℃で10分間焼成し、ついで紫外線(1000mJ/cm)を照射した。押し込み深さを測定したところ、0.23μmであった。
実験例2と同様にして接着剤(S−1)上に微細凹凸層A〜Cを形成した。
【0158】
微細凹凸層A〜CをSEMで観察した。微細凹凸層Aにおいては、ピッチ:100nm、高さ:200nmのモスアイ構造が得られていることを確認した。微細凹凸層Bにおいては、ピッチ:1μm、高さ:982nmのピラー構造が得られていることを確認した。微細凹凸層Cにおいては、ピッチ:8μm、高さ:984nmのピラー構造が得られていることを確認した。
微細凹凸層Aについて接着性試験を行った。試験Aでは25マスのすべてが剥離しなかったが、試験Bでは25マスのすべてが剥離した。結果を表2に示す。
【0159】
〔実験例4〕
25mm□のガラス基板(旭硝子社製、AN100)上に、接着剤(S−2)をスピンコート(2000rpm)した後、押し込み深さを測定したところ、1μm以上であった。
実験例2と同様にして接着剤(S−2)上に微細凹凸層A〜Cを形成した。
【0160】
微細凹凸層A〜CをSEMで観察した。微細凹凸層Aにおいては、ピッチ:100nm、高さ:200nmのモスアイ構造が得られていることを確認した。微細凹凸層Bにおいては、ピッチ:1μm、高さ:988nmのピラー構造が得られていることを確認した。微細凹凸層Cにおいては、ピッチ:8μm、高さ:990nmのピラー構造が得られていることを確認した。
微細凹凸層Aについて接着性試験を行った。試験A、Bともに25マスのすべてが剥離しなかった。結果を表2に示す。
【0161】
〔実験例5〕
25mm□のガラス基板(旭硝子社製、AN100)上に、接着剤(S−2)をスピンコート(2000rpm)した後、90℃で10分間焼成し、ついで紫外線(1000mJ/cm)を照射した。押し込み深さを測定したところ、0.25μmであった。
実験例2と同様にして接着剤(S−2)上に微細凹凸層A〜Cを形成した。
【0162】
微細凹凸層A〜CをSEMで観察した。微細凹凸層Aにおいては、ピッチ:100nm、高さ:200nmのモスアイ構造が得られていることを確認した。微細凹凸層Bにおいては、ピッチ:1μm、高さ:990nmのピラー構造が得られていることを確認した。微細凹凸層Cにおいては、ピッチ:8μm、高さ:994nmのピラー構造が得られていることを確認した。
微細凹凸層Aについて接着性試験を行った。試験Aでは25マスのすべてが剥離しなかったが、試験Bでは25マスのすべてが剥離した。結果を表2に示す。
【0163】
〔実験例6〕
25mm□のガラス基板(旭硝子社製、AN100)上に、接着剤(S−3)をスピンコート(2000rpm)した後、90℃で10分間焼成し、ついで紫外線(1000mJ/cm)を照射した。押し込み深さを測定したところ、0.43μmであった。
実験例2と同様にして接着剤(S−3)上に微細凹凸層A〜Cを形成した。
【0164】
微細凹凸層A〜CをSEMで観察した。微細凹凸層Aにおいては、ピッチ:100nm、高さ:200nmのモスアイ構造が得られていることを確認した。微細凹凸層Bにおいては、ピッチ:1μm、高さ:988nmのピラー構造が得られていることを確認した。微細凹凸層Cにおいては、ピッチ:8μm、高さ:990nmのピラー構造が得られていることを確認した。
微細凹凸層Aについて接着性試験を行った。試験A、Bともに25マスのすべてが剥離しなかった。結果を表2に示す。
【0165】
〔実験例7〕
25mm□のガラス基板(旭硝子社製、AN100)上に、接着剤(S−4)をスピンコート(2000rpm)した後、90℃で10分間焼成し、ついで紫外線(1000mJ/cm)を照射した。押し込み深さを測定したところ、0.86μmであった。
実験例2と同様にして接着剤(S−4)上に微細凹凸層A〜Cを形成した。
【0166】
微細凹凸層A〜CをSEMで観察した。微細凹凸層Aにおいては、ピッチ:100nm、高さ:200nmのモスアイ構造が得られていることを確認した。微細凹凸層Bにおいては、ピッチ:1μm、高さ:985nmのピラー構造が得られていることを確認した。微細凹凸層Cにおいては、ピッチ:8μm、高さ:988nmのピラー構造が得られていることを確認した。
微細凹凸層Aについて接着性試験を行った。試験Aでは25マスのすべてが剥離しなかったが、試験Bでは25マスのうち2マスが剥離した。結果を表2に示す。
【0167】
〔実験例8〕
25mm□のガラス基板(旭硝子社製、AN100)上に、ゾルゲル反応性組成物(J−3)をバーコータを用いて5μmの厚さで塗布し、90℃で10分間焼成した後、モールドAを押付圧:0.5kgf/cmにて押し付けた状態で、120℃で2時間焼成し、微細凹凸層Aを形成した。
モールドAを、モールドB、Cに変更した以外は、同様にして微細凹凸層B、Cを形成した。
【0168】
微細凹凸層A〜CをSEMで観察した。図17に示すように、微細凹凸層Aにおいては、ピッチ:300nm、高さ:30nmの凹凸が得られ、モスアイ構造が得られていないことを確認した。図18に示すように、微細凹凸層Bにおいては、ピッチ:1μm、高さ:1007nmのピラー構造が得られていることを確認したが、凸部の抜けが多く発生した。図19に示すように、微細凹凸層Cにおいては、ピッチ:8μm、高さ:1002nmのピラー構造が得られていることを確認したが、凸部の抜けが多く発生した。
微細凹凸層Aについて接着性試験を行った。試験A、Bともに25マスのすべてが剥離しなかった。結果を表2に示す。
【0169】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0170】
本発明の有機EL素子は、有機EL照明、有機ELディスプレイ等として有用である。
【符号の説明】
【0171】
1 有機EL素子
10 透明基材
12 接着層
20 光取り出し部
22 微細凹凸層
24 高屈折率層
26 活性エネルギー線硬化性樹脂組成物
30 発光部
32 透明電極
34 有機半導体層
36 背面電極
40 封止部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材と、
該透明基材の上に設けられた、微細凹凸層を有する光取り出し部と、
該光取り出し部の上に設けられた、透明基材の側から順に透明電極、発光層を含む有機半導体層および背面電極を有する発光部と、
前記光取り出し部および前記発光部を封止する封止部と
を具備し、
前記光取り出し部が、前記封止部の外面から露出していない、有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項2】
前記微細凹凸層における凸部または凹部のピッチが、50nm〜50μmであり、
前記微細凹凸層における凸部の高さまたは凹部の深さが、50nm〜50μmである、請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項3】
前記透明基材と前記光取り出し部との間に接着層をさらに有する、請求項1または2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項4】
前記接着層が、(メタ)アクリロイルオキシ基を有するシランカップリング剤を30質量%以上含む接着剤組成物の硬化物からなる、請求項3記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項5】
前記接着層が、0.4mN試験荷重下での押し込み深さが0.2μm以上である、請求項3または4に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項6】
前記光取り出し部が、透明基材の側から順に前記微細凹凸層および高屈折率層を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項7】
前記微細凹凸層が、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物からなる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項8】
前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が、(メタ)アクリロイルオキシ基を有するモノマーおよびまたはオリゴマーを含む、請求項7に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−174410(P2012−174410A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−33415(P2011−33415)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】