説明

有機エレクトロルミネッセンス素子

本発明は、マトリックス材料としてケトンまたはホスフィンオキシド誘導体と少なくとも二つの燐光発光化合物を含む有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二つの燐光発光ドーパントを含む燐光発光有機エレクトロルミネセンス素子に関する。
【0002】
有機半導体が、機能性材料として使用される有機エレクトロルミネセンス素子(OLED)の構造は、例えば、US 4539507、US 5151629、EP 0676461及びWO 98/27136に記載されている。しかしながら、一層の改善がいまだに必要である。したがって、有機エレクトロルミネセンス素子の寿命、効率および駆動電圧に関する改善がいまだ必要とされている。また、引き続く改善の必要性、特に、いわゆるOLEDのロールオフ性すなわちOLEDの輝度の関数としての効率の改善の必要性が存在する。というのは、効率が高輝度において相当に低下することがよく見られるからである。これは、特に、燐光発光エミッターでドープされたエレクトロルミネセンス素子にあてはまる。
【0003】
先行技術に関して、カルバゾール誘導体、たとえば、ビス(カルバゾリル)ビフェニルは、燐光発光エミッターのためのマトリックス材料として、よく使用されている。ここで改善の必要性、特に、これら材料で製造されるOLEDの効率と寿命に関して改善の必要性がいまだ存在する。加えて、これらマトリックス材料は、比較的高い駆動電圧を生じることがよくある。
【0004】
先行技術に従うと、電子伝導性材料、特に、ケトン(たとえば、WO 04/093207に従い、または、未公開出願DE 102008033943.1に従う)、ホスフィンオキシド(WO 05/003253)が、燐光発光エミッターのためのマトリックス材料として、さらに使用されている。非常に低い駆動電圧と長い寿命が、特に、ケトンについて、達成されているが、おそらく、その良好な電子輸送特性によるものであり、この種の化合物を非常に興味深いマトリックス材料としている。しかしながら、これらマトリックス材料の使用に関して、特に、効率に関して改善の必要性がいまだ存在する。さらに、これらマトリックス材料は、OLEDのより強いロールオフ性すなわち他のマトリックス材料より高い輝度でより大きな効率の低下を生じることがある。したがって、ここで、改善の必要性がいまだ存在する。さらに、これらマトリックス材料は、ある場合には、ケトケトネート配位子、たとえば、アセチルアセトネートを含む金属錯体との不適合性を示す。これは、より低い効率とより短い寿命から明らかである。しかしながら、これらの金属錯体は、特に、非常に良好な発光特性を有するエミッターであることが証明されており、したがって、現在使用されている多くの燐光発光エミッターは、このタイプの構造を有する。したがって、ここに引き続き改善の必要性がある。
【0005】
したがって、本発明が基礎とする技術的目的は、高輝度において低下したロールオフ性を示す有機エレクトロルミネセンス素子を提供することである。更なる目的は、ケトケトネート配位子を含む金属錯体を含み、このドーパントにより、良好な発光特性、特に、良好な効率、長い寿命および低い駆動電圧を生じる有機エレクトロルミネセンス素子を提供することである。
【0006】
驚くべきことに、発光層に、二種の異なる燐光発光エミッターにより同時に置換された芳香族ケトンまたは芳香族ホスフィンオキシドまたは以下に定義される他のマトリックス材料を含む有機エレクトロルミネセンス素子は、ケトケトネート配位子を含む燐光発光エミッターであってさえも、高い効率と長い寿命と低い駆動電圧を示すことが見出された。さらに、これらエレクトロルミネセンス素子は、驚くほど小さなロールオフ性を示し、高輝度で良好な効率で駆動することが可能となる。
【0007】
先行技術は、マトリックス中に二種の燐光発光エミッターを含む有機エレクトロルミネセンス素子を開示する。
【0008】
US 2007/0247061は、一つのホスト材料と二種の燐光発光ドーパントを含む有機エレクトロルミネセンス素子を開示する。例において、示される唯一のマトリックス材料は、CBP(ビス(カルバゾリル)-ビフェニル)である。しかしながら、これらエレクトロルミネセンス素子は、非常に高い駆動電圧を有する。ここで、電圧は、一種の燐光発光ドーパントのみを含むエレクトロルミネセンス素子に匹敵するかそれよりも高い。エレクトロルミネセンス素子のロールオフ性に対する影響は、開示されていない。
【0009】
US 2002/0125818は、ホスト材料と燐光発光ドーパントとより長い波長で発光する燐光発光或いは蛍光発光ドーパントを含む、有機エレクトロルミネセンス素子を開示する。トリアリールアミン誘導体とカルバゾール誘導体が、特に、ホスト材料として開示されている。より良好な効率と、特に、蛍光発光ドーパントとの組み合わせに対してより良好な寿命がそこで達成されている。寿命に対する影響は、二種の燐光発光ドーパントを含むエレクトロルミネセンス素子に対しては開示されていない。さらに、エレクトロルミネセンス素子のロールオフ性に対する影響も、開示されていない。
【0010】
したがって、本発明は、少なくとも一つの発光層に、以下のものを含む有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。
【0011】
(A)燐光発光化合物A、
(B)燐光発光化合物Aとは異なるものである燐光発光化合物B、及び
(C)芳香族ケトン、芳香族ホスフィンオキシド、芳香族スルホキシド及び芳香族スルホンより成る群から選択されるマトリックス材料。
【0012】
本出願の目的のために、芳香族ケトンは、二個の芳香族若しくは複素環式芳香族基または芳香族若しくは複素環式芳香族環構造が直接結合するカルボニル基を意味するものと解される。本出願の目的のために、芳香族ホスフィンオキシドは、三個の芳香族若しくは複素環式芳香族基または芳香族若しくは複素環式芳香族環構造が直接結合するP=O基を意味するものと解される。本出願の目的のために、芳香族スルホキシドは、二個の芳香族若しくは複素環式芳香族基または芳香族若しくは複素環式芳香族環構造が直接結合するS=O基を意味するものと解される。本出願の目的のために、芳香族スルホンは、二個の芳香族若しくは複素環式芳香族基または芳香族若しくは複素環式芳香族環構造が直接結合するS(=O)基を意味するものと解される。
【0013】
好ましいのは、少なくとも一つの発光層に、以下のものを含む有機エレクトロルミネッセンス素子である。
【0014】
(A)燐光発光化合物A、
(B)燐光発光化合物Aとは異なるものである燐光発光化合物B、及び
(C)式(1)の化合物から選択される少なくとも一つの化合物。
【化1】

【0015】
式中、使用される記号と添字は、以下が適用される:
Xは、C、PまたはSであり;
Arは、出現毎に同一であるか異なり、各場合に1以上の基Rにより置換されてよい5〜80個の芳香族環原子を有する芳香族若しくは複素環式芳香族環構造、
は、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、Cl、Br、I、CHO、C(=O)Ar、P(=O)(Ar、S(=O)Ar、S(=O)Ar、CR=CRAr、CN、NO、Si(R、B(OR、B(R、B(N(R、OSO、1〜40個のC原子を有する直鎖アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ若しくはチオアルコキシ基、または3〜40個のC原子を有する分岐或いは環状アルキル、アルケニル、アルコキシ若しくはチオアルコキシ基(夫々は、1以上の基Rにより置換されてよく、1以上の隣接しないCH基は、RC=CR、C≡C、Si(R、Ge(R、Sn(R、C=O、C=S、C=Se、C=NR、P(=O)(R)、SO、SO、NR、O、S若しくはCONRで置き代えられてよく、また、1以上のH原子は、F、Cl、Br、I、CN若しくはNOで置き代えられてよい。)、または各場合に1以上の基Rにより置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有する芳香族若しくは複素環式芳香族環構造、または1以上の基Rにより置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有するアリールオキシ若しくはヘテロアリールオキシ基、または1以上の基Rにより置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有するアラルキル若しくはヘテロアラルキル基、またはこれらの構造の組み合わせであり;ここで、2以上の隣接する置換基Rは、互いにモノ-或いはポリ環状、脂肪族、芳香族環構造を形成してもよく;
Arは、出現毎に同一であるか異なり、1以上の基Rにより置換されてよい5〜40個の芳香族環原子を有する芳香族若しくは複素環式芳香族環構造であり;
は、出現毎に同一であるか異なり、H、Dまたは1〜20個のC原子を有する脂肪族、芳香族及び/または複素環式芳香族炭化水素基であり、加えて、H原子は、Fで置き代えられてよく;2以上の隣接する置換基Rは、ここで、互いにモノ-或いはポリ環状、脂肪族、芳香族環構造を形成してもよく、
nは、X=CまたはSのときは0であり、X=Pのときは1であり、
mは、X=CまたはPのときは0であり、X=Sのときは1である。
【0016】
本発明の好ましい具体例では、ArもArのいずれも、トリアリールアミン基もカルバゾール基も含まない。
【0017】
有機エレクトロルミネッセンス素子は、陽極、陰極及び陽極と陰極の間に配置される少なくとも一つの発光層を含み、陽極と陰極の間に配置される少なくとも一つの層は少なくとも一つの有機若しくは有機金属化合物を含む素子を意味するものと解される。ここで、少なくとも一つの発光層は、少なくとも一つの燐光発光エミッターAと少なくとも一つの燐光発光エミッターBと少なくとも一つの上記式(1)の化合物を含む。有機エレクトロルミネッセンス素子は、必ずしも有機または有機金属材料から構築される層のみを含む必要はない。したがって、無機材料を含む一以上の層も可能であり、もっぱら無機材料から構築されることも可能である。
【0018】
本発明の目的のために、燐光発光化合物は、比較的高いスピン多重度、すなわち>1のスピン状態を有する励起状態から、特に、励起三重項状態から、室温でルミネッセンスを呈する化合物である。本発明の目的のために、すべてのルミネッセンス遷移金属錯体、特に、すべてのルミネッセンスイリジウム及び白金錯体は、燐光発光化合物とみなされるべきである。
【0019】
本発明の目的のために、アリール基は、少なくとも6個のC原子を含み;本発明の目的のために、ヘテロアリール基は、少なくとも2個のC原子と少なくとも1個のヘテロ原子を含むが、但し、C原子とヘテロ原子の合計は少なくとも5個である。ヘテロ原子は、好ましくは、N、O及び/またはSから選ばれる。ここで、アリール基若しくはヘテロアリール基は、単純な芳香族環すなわちベンゼン、または、単純な複素環式芳香族環、例えば、ピリジン、ピリミジン、チオフェン等、または、縮合アリール若しくはヘテロアリール基、例えば、ナフタレン、アントラセン、ピレン、キノリン、イソキノリン等の何れかを意味するものと解される。
【0020】
本発明の目的のために、芳香族環構造は、環構造中に少なくとも6個のC原子を含む。本発明の目的のために、複素環式芳香族環構造は、環構造中に少なくとも2個のC原子と少なくとも1個のヘテロ原子を含むが、但し、C原子とヘテロ原子の合計は少なくとも5個である。ヘテロ原子は、好ましくは、N、O及び/またはSから選ばれる。本発明の目的のために、芳香族若しくは複素環式芳香族環構造は、必ずしもアリール若しくはヘテロアリール基のみを含む構造ではなく、代わりに、複数のアリール若しくはヘテロアリール基は、例えば、sp混成のC、N或いはO原子のような短い非芳香族単位(H以外の原子は、好ましくは、10%より少ない)により中断されていてもよい構造を意味するものと解される。したがって、例えば9,9’-スピロビフルオレン、9,9-ジアリールフルオレン、トリアリールアミン、ジアリールエーテル、スチルベン、ベンゾフェノン等のような構造も、本発明の目的のための芳香族環構造を意味するものと解されることを意図されてもいる。同様に、芳香族若しくは複素環式芳香族環構造は、複数のアリール若しくはヘテロアリール基が、互いに単結合により結合される構造、たとえば、ビフェニル、ターフェニルまたはビピリジンを意味するものと解される。
【0021】
本発明の目的のために、C〜C40-アルキル基は、ここで、加えて、個々のH原子若しくはCH基は、上記した基により置換されていてよく、特に、好ましくは、基メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、2-メチルブチル、n-ペンチル、s-ペンチル、tert-ペンチル、2-ペンチル、シクロペンチル、n-ヘキシル、s-ヘキシル、tert-ヘキシル、2-ヘキシル、3-ヘキシル、シクロヘキシル、2-メチルペンチル、n-ヘプチル、2-ヘプチル、3-ヘプチル、4-ヘプチル、シクロヘプチル、1-メチルシクロヘキシル、n-オクチル、2-エチルヘキシル、シクロオクチル、1-ビシクロ[2.2.2]オクチル、2-ビシクロ[2.2.2]オクチル、2-(2,6-ジメチル)オクチル、3-(3,7-ジメチル)オクチル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチルおよび2,2,2-トリフルオロエチルを意味するものと解される。アルケニル基は、特に、好ましくは、基エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、シクロペンテニル、ヘキセニル、シクロヘキセニル、ヘプテニル、シクロヘプテニル、オクテニルおよびシクロオクテニルを意味するものと解される。アルキニル基は、特に、好ましくは、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニルおよびオクチニルを意味するものと解される。C〜C40-アルコキシ基は、特に、好ましくは、メトキシ、トリフルオロメトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、i-プロポキシ、n-ブトキシ、i-ブトキシ、s-ブトキシ、t-ブトキシまたは2-メチルブトキシを意味するものと解される。5〜60個の芳香族環原子を有する芳香族または複素環式芳香族環構造は、各場合に、上記した基Rにより置換されていてもよく、任意の所望の位置で、芳香族または複素環式芳香族系に連結していてもよいが、特に、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ベンズアントラセン、ベンズフェナントレン、ピレン、クリセン、ペリレン、フルオランセン、ベンゾフルオランセン、ナフタセン、ペンタセン、ベンゾピレン、ビフェニル、ビフェニレン、ターフェニル、ターフェニレン、フルオレン、ベンゾフルオレン、ジベンゾフルオレン、スピロビフルオレン、ジヒドロフェナントレン、ジヒドロピレン、テトラヒドロピレン、シス-若しくはトランス-インデノフルオレン、シス-若しくはトランス-モノベンゾインデノフルオレン、シス-若しくはトランス-ジベンゾインデノフルオレン、トルクセン、イソトルクセン、スピロトルクセン、スピロイソトルクセン、フラン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ジベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、イソベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、ピロール、インドール、イソインドール、カルバゾール、ピリジン、キノリン、イソキノリン、アクリジン、フェナントリジン、ベンゾ-5,6-キノリン、ベンゾ-6,7-キノリン、ベンゾ-7,8-キノリン、フェノチアジン、フェノキサジン、ピラゾール、インダゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、ナフトイミダゾール、フェナントロイミダゾール、ピリジンイミダゾール、ピラジンイミダゾール、キノキサリンイミダゾール、オキサゾール、ベンズオキサゾール、ナフトオキサゾール、アントロオキサゾール、フェナントロオキサゾール、イソオキサゾール、1,2-チアゾール、1,3-チアゾール、ベンゾチアゾール、ピリダジン、ベンゾピリダジン、ピリミジン、ベンゾピリミジン、キノキサリン、1,5-ジアザアントラセン、2,7-ジアザピレン、2,3-ジアザピレン、1,6-ジアザピレン、1,8-ジアザピレン、4,5-ジアザピレン、4,5,9,10-テトラアザペリレン、ピラジン、フェナジン、フェノキサジン、フェノチアジン、フルオルビン、ナフチリジン、アザカルバゾール、ベンゾカルボリン、フェナントロリン、1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、ベンゾトリアゾール、1,2,3-オキサジアゾール、1,2,4-オキサジアゾール、1,2,5-オキサジアゾール、1,3,4-オキサジアゾール、1,2,3-チアジアゾール、1,2,4-チアジアゾール、1,2,5-チアジアゾール、1,3,4-チアジアゾール、1,3,5-トリアジン、1,2,4-トリアジン、1,2,3-トリアジン、テトラゾール、1,2,4,5-テトラジン、1,2,3,4-テトラジン、1,2,3,5-テトラジン、プリン、プテリジン、インドリジン及びベンゾチアジアゾールから誘導される基を意味するものと解される。
【0022】
式(1)の化合物は、好ましくは、70℃より高い、特に、好ましくは、90℃より高い、非常に特に、好ましくは、110℃より高いガラス転移温度Tを有する。
【0023】
本発明の好ましい具体例では、燐光発光化合物Aのフォトルミネッセンス最大値が、燐光発光化合物Bよりも波長において、少なくとも20nm短く、好ましくは、波長において、少なくとも30nm短い。これは、特に、化合物Aが緑色燐光発光化合物であり、化合物Bが赤色燐光発光化合物であるか、または、化合物Aが青色燐光発光化合物であり、化合物Bが緑色燐光発光化合物ならば、あてはまる。化合物Aが暗青色燐光発光化合物であり、化合物Bが薄青色燐光発光化合物であるならば、化合物Aが化合物Bより少なくとも10nm短い波長で発光することが好ましい。ここで、フォトルミネッセンス最大値は、化合物Aが5体積%の割合で式(1)の対応するマトリックス材料にドープされたか、または、化合物Bが5体積%の割合で式(1)の対応するマトリックス材料にドープされた、厚さ50nmを有する層のフォトルミネッセンススペクトルの測定により決定される。
【0024】
エレクトロルミネッセンス素子の発光スペクトルは、主として、より長い波長で発光する化合物すなわち化合物Bの発光スペクトルに全体として対応する。
【0025】
本発明の具体例では、燐光発光化合物Aが緑色ルミネッセンス化合物であり、燐光発光化合物Bが赤色ルミネッセンス化合物である。
【0026】
本発明のさらなる具体例では、燐光発光化合物Aが青色ルミネッセンス化合物であり、燐光発光化合物Bが緑色ルミネッセンス化合物あるいは赤色ルミネッセンス化合物である。
【0027】
本発明のなおさらなる具体例では、燐光発光化合物Aが暗青色ルミネッセンス化合物あるいはUV域で発光する化合物であり、化合物Bが薄青色ルミネッセンス化合物である。
【0028】
ここで、赤色ルミネッセンスは、560〜750nm範囲でフォトルミネッセンススペクトルの最大値を有するルミネッセンスを意味するものと解される。緑色ルミネッセンスは、490〜560nm範囲でフォトルミネッセンススペクトルの最大値を有するルミネッセンスを意味するものと解される。青色ルミネッセンスは、440〜490nm範囲でフォトルミネッセンススペクトルの最大値を有するルミネッセンスを意味するものと解される。暗青色ルミネッセンスは、350〜460nm範囲でフォトルミネッセンススペクトルの最大値を有するルミネッセンスを意味するものと解される。薄青色ルミネッセンスは、460〜490nm範囲でフォトルミネッセンススペクトルの最大値を有するルミネッセンスを意味するものと解される。ここで、フォトルミネッセンススペクトルは、前記のとおり測定される。
【0029】
層中の燐光発光化合物Aの割合は、好ましくは、5〜50体積%であり、特に、好ましくは、10〜25体積%であり、非常に、特に、好ましくは、12〜20体積%である。
【0030】
層中の燐光発光化合物Bの割合は、好ましくは、1〜20体積%であり、特に、好ましくは、3〜10体積%であり、非常に、特に、好ましくは、4〜7体積%である。
【0031】
本発明による有機エレクトロルミネッセンス素子においては、燐光発光化合物Aは、好ましくは、正孔を輸送することができる材料である。特に、HOMO(最高占有分子軌道)の位置が材料の正孔輸送特性を規定することから、化合物Aは、好ましくは、>−5.9eV、特に、好ましくは、>−5.7eV、非常に特に、好ましくは、>−5.5eVのHOMOを有する。HOMOは、理研計器(株)の光電子スペクトロメータ、モデルAC−2(http://www.rikenkeiki.com/pages/AC2.htm)による光電子分光法により測定することができる。
【0032】
燐光発光化合物AおよびBと式(1)の化合物の好ましい具体例は、以下に記載される。
【0033】
適切な燐光発光化合物AおよびBは、特に、好ましくは、可視域で適切な励起により発光し、加えて、20より大きい原子番号、好ましくは、38〜84の原子番号、特に、好ましくは、56〜80の原子番号を有する少なくとも一つの原子を含む。好ましい燐光発光エミッターAおよびBは、銅、モリブデン、タングステン、レニウム、ルテニウム、オスミウム、ロジウム、イリジウム、パラジウム、白金、銀、金またはユウロピウム、特に、イリジウムまたは白金を含む化合物である。
【0034】
特に、好ましい有機エレクトロルミネッセンス素子は、燐光発光化合物Aとして、及び/又は燐光発光化合物Bとして、少なくとも一つの式(2)〜(5)の化合物を含む。
【化2】

【0035】
式中、Rは、式(1)に記載されるのと同じ意味を有し、使用されるその他の記号は、以下が適用される:
DCyは、出現毎に同一であるか異なり、少なくとも一つのドナー原子、好ましくは、窒素、カルベン型の炭素または燐を含む環状基であり、環状基はドナー原子を介して金属に結合し、環状基は1以上の置換基Rを順に担持してもよく、;DCyとCCyは、互いに共有結合を介して結合し、
CCyは、出現毎に同一であるか異なり、炭素原子を含む環状基であり、環状基は炭素原子を介して金属に結合し、環状基は1以上の基Rを順に担持してもよく、
Aは、出現毎に同一であるか異なり、モノアニオン性2座キレート配位子、好ましくは、ジケトン配位子またはピコリネート配位子である。
【0036】
また、ブリッジは、複数の基Rとの間の環構造の形成により、基DCyとCCyとの間に存在し得る。さらにまた、ブリッジは、複数の基Rとの間の環構造の形成により、2或いは3個の配位子CCy−DCyとの間または1或いは2個の配位子CCy−DCyと配位子Aとの間に存在し得、多座或いはポリポダル配位子構造を生じる。
【0037】
前記のエミッターの例は、WO 00/70655、WO 01/41512、WO 02/02714、WO 02/15645、EP 1191613、EP 1191612、EP 1191614、WO 04/081017、WO 05/033244、WO 05/042550、WO 05/113563、WO 06/008069、WO 06/061182、WO 06/081973及び未公開出願DE 102008027005.9により明らかにされている。一般的には、燐光発光OLEDの先行技術に従って使用され、有機エレクトロルミネッセンス素子分野の当業者に知られるようなすべての燐光発光錯体が適切であり、当業者は進歩性を必要とせず、更なる燐光発光化合物を使用することができよう。特に、あらゆる発光色を有する燐光発光錯体が当業者に知られている。
【0038】
ここで、化合物Aは、好ましくは、上記式(3)の化合物であり、特に、1以上の基Rにより置換されてよいトリス(フェニルピリジル)イリジウムである。化合物Aは、非常に特に、好ましくは、トリス(フェニルピリジル)イリジウムである。
【0039】
化合物Bは、好ましくは、上記式(2)、(3)または(5)、特に、好ましくは、上記式(2)または(5)、非常に、特に、好ましくは、上記式(2)の化合物である。式(2)中のAは、好ましくは、アセチルアセトネートまたはアセチルアセトネート誘導体を表わす。
【0040】
好ましい燐光発光化合物AおよびBの例は、以下の表に示される。
【化3−1】

【化3−2】

【化3−3】

【化3−4】

【化3−5】

【化3−6】

【化3−7】

【化3−8】

【化3−9】

【化3−10】

【化3−11】

【化3−12】

【化3−13】

【化3−14】

【化3−15】

【0041】
使用されるマトリックス材料は、前記のとおり、式(1)の化合物である。
【0042】
式(1)の適切な化合物は、WO 04/093207 および未公開出願DE 102008033943.1に開示されたケトンであり、WO 05/003253に開示されたホスフィンオキシド、スルホキシド及びスルホンである。これらは、参照として本願に組み込まれる。
【0043】
式(1)の化合物の好ましい具体例は、記号Xが、CまたはP、特に、Cを表わす。それらは、ケトンまたはホスフィンオキシド、特に、好ましくは、ケトンである。
【0044】
これは、必ずしもカルボニルまたはホスフィンオキシド基のみを含む必要はなく、代わりに、複数のこれらの基をも含んでもよいことは式(1)の化合物の定義から明らかである。
【0045】
式(1)の化合物中の基Arは、好ましくは、6〜40個の芳香族環原子を有する芳香族環構造である。上記に定義されたように、芳香族環構造は、必ずしも芳香族基のみを含む必要はなく、代わりに、二個のアリール基が非芳香族基により、たとえば、さらなるカルボニル基により中断されてもよい。
【0046】
本発明のさらなる好ましい具体例では、基Arは、2以上の縮合環を含まない。したがって、それは、フェニル及び/またはナフチル基からのみ構築され、特に、好ましくは、フェニル基からのみ構築されるが、たとえば、アントラセンのようなより大きい縮合環構造は何も含まない
カルボニル基に結合する好ましい基Arは、フェニル、2-、3-若しくは4-トリル、3-若しくは4-o-キシリル、2-若しくは4-m-キシリル、2-p-キシリル、o-,m-若しくはp-tert-ブチルフェニル、o-,m-若しくはp-フルオロフェニル、ベンゾフェノン、1-,2-若しくは3-フェニルメタノン、2-,3-若しくは4-ビフェニル、2-,3-若しくは4-o-ターフェニル、2-,3-若しくは4-m-ターフェニル、2-,3-若しくは4-p-ターフェニル、2’-p-ターフェニル、2’-,4’-若しくは5’-m-ターフェニル、3’-若しくは4’-o-ターフェニル、p,m-,o,p-,m,m-,o,m-若しくはo,o-コーターフェニル、キンケフェニル、セキシフェニル、1-,2-,3-若しくは4-フルオレニル、2-,3-若しくは4-スピロ-9,9'-ビフルオレニル、1-,2-,3-若しくは4-(9,10-ジヒドロ)フェナントレニル、1-若しくは2-ナフチル、2-,3-,4-,5-,6-,7-若しくは8-キノリニル、1-,3-,4-,5-,6-,7-若しくは8-イソキノリニル、1-若しくは2-(4-メチルナフチル)、1-若しくは2-(4-フェニルナフチル)、1-若しくは 2-(4-ナフチル-ナフチル)、1-,2-若しくは3-(4-ナフチルフェニル)、2-3-若しくは4-ピリジル、2-,4-若しくは5-ピリミジニル、2-若しくは3-ピラジニル、3-若しくは4-ピリダジニル、2-(1,3,5-トリアジニル)、2-,3-若しくは4-(フェニルピリジル)、3-,4-,5-若しくは6-(2,2'-ビピリジル)、2-,4-,5-若しくは6-(3,3'-ビピリジル)、2-若しくは3-(4,4'-ビピリジル)および1以上のこれらの基の組み合わせである。
【0047】
基Arは、1以上の基Rにより置換されてもよい。これらの基Rは、好ましくは、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、C(=O)Ar、P(=O)(Ar、S(=O)Ar、S(=O)Ar、1〜4個のC原子を有する直鎖アルキル、または3〜5個のC原子を有する分岐或いは環状アルキル基(夫々は、1以上の基Rにより置換されてよく、また、1以上のH原子は、Fで置き代えられてよい。)、または1以上の基Rにより置換されてよい6〜24個の芳香族環原子を有する芳香族環構造、またはこれらの構造の組み合わせであり;ここで、2以上の隣接する置換基Rは、互いにモノ-或いはポリ環状、脂肪族、芳香族環構造を形成してもよいものから選ばれる。有機エレクトロルミネッセンス素子が溶液から適用されるならば、10個までのC原子を有する直鎖、分岐或いは環状アルキル基が置換基Rとしても好ましい。基Rは、特に好ましくは、出現毎に同一であるか異なり、H、D、C(=O)Ar、または1以上の基Rにより置換されてよいが、好ましくは、置換されない6〜24個の芳香族環原子を有する芳香族環構造より成る基から選ばれる。
【0048】
本発明の別の好ましい具体例では、基Rは、出現毎に同一であるか異なり、1以上の基Rにより置換されてよい6〜24個の芳香族環原子を有する芳香族環構造である。Arは、特に、好ましくは、出現毎に同一であるか異なり、6〜12個の芳香族環原子を有する芳香族環構造である。
【0049】
したがって、好ましい芳香族ケトン、ホスフィンオキシド、スルホキシドまたはスルホンは、式(6)〜(30)の化合物から選択される:
【化4−1】

【化4−2】

【化4−3】

【0050】
式中、Arは前記と同じ意味を有し、さらに:
Zは、出現毎に同一であるか異なり、CRまたはNを表わし、ここで、環毎の最大3個の記号ZはNを表し;Zは、好ましくは、CRであり、
mは、1、2、3、4若しくは5であり、
nは、出現毎に同一であるか異なり、0、1、2、3若しくは4であり、
pは、出現毎に同一であるか異なり、0若しくは1である。
【0051】
上記式(6)〜(30)においてArは、好ましくは、1以上の基Rにより置換されてよい5〜30個の芳香族環原子を有する芳香族若しくは複素環式芳香族環構造を表わす。前に言及したArが、特に、好ましい。
【0052】
特に、好ましい芳香族ケトンは、前記定義のとおり、1以上の基Rにより順に置換されてよい5〜30個の芳香族環原子を有する芳香族若しくは複素環式芳香族環構造により、3,3’,5,5’-位で各場合に置換されたベンゾフェノン誘導体である。特に好ましいものは、さらに、少なくとも一個のC=O-Ar基により、特に、2-位で置換されたスピロビフルオレンである。特に好ましいものは、さらに、少なくとも一個のP=O(Ar)基により、特に、2-位で置換されたスピロビフルオレンである。
【0053】
式(1)の適切な化合物の例は、以下に示す化合物(1)〜(72)である。
【化5−1】

【化5−2】

【化5−3】

【化5−4】

【化5−5】

【化5−6】

【化5−7】

【化5−8】

【化5−9】

【0054】
陰極、陽極及び少なくとも一つの発光層に加えて、有機エレクトロルミネセンス素子は更なる層をも含んでもよい。これらは、例えば、各場合に1以上の正孔注入層、正孔輸送層、正孔障壁層、電子輸送層、電子注入層、電子障壁層、励起子障壁層、電荷生成層(IDMC 2003,Taiwan;Session 21 OLED (5), T. Matsumoto, T. Nakada, J.Endo, K. Mori, N. Kawamura, A. Yokoi, J.Kido, Multiphoton Organic EL Device Having Charge Generation Layer)及び/又は有機或いは無機p/n接合から選択される。加えて、たとえば、素子中の電荷バランスを制御する中間層が存在し得る。さらに、層、特に、電荷輸送層は、ドープされてもよい。層のドープは、電荷輸送の改善に有利であり得る。しかしながら、これら層の夫々は、必ずしも存在しなけばならない必要はないこと、および層の選択は常に使用される化合物に依存することが指摘されねばならない。
【0055】
本発明の具体例では、有機エレクトロルミネセンス素子は、複数の発光層を含んでもよく、ここで、少なくとも一つの発光層は、少なくとも一つの燐光発光化合物A、燐光発光化合物Bおよび式(1)の化合物を含む。これらの発光層は、特に、好ましくは、380nm〜750nm間に全体で複数の最大発光長を有し、全体として、白色発光が生じるものであり、換言すれば、蛍光若しくは燐光を発することができ、発光層中で青色、黄色、オレンジ色或いは赤色発光する種々の発光化合物が発光層に使用される。特に好ましいものは、3層構造すなわち、三個の発光層を有する構造であり、これら層の少なくとも一つは、少なくとも一つの燐光発光化合物A、燐光発光化合物Bおよび式(1)の化合物を含み、その3層は青色、緑色及びオレンジ色若しくは赤色発光を呈する(基本構造については、例えば、WO 05/011013参照。)。三個以上の発光層の使用が好ましい。
【0056】
混合物として複数のマトリックス材料の使用も、さらに好ましく、一つのマトリックス材料は、式(1)の化合物から選ばれる。式(1)の化合物は、X=O基の存在により、電子輸送性を主に有する。二個以上のマトリックス材料の混合物が使用されるならば、混合物の更なる成分は、それゆえに、正孔輸送化合物が好ましい。好ましい正孔伝導マトリックス材料は、トリアリールアミン、カルバゾール誘導体であり、たとえば、CBP(N.N-ビスカルバゾリルビフェニル)または、WO 05/039246、US 2005/0069729、JP2004/288381、EP 1205527或いはWO 08/086851に開示されたカルバゾール誘導体、例えば、WO 07/137725に従う双極性マトリックス材料および、WO 09/021126に従うベンゾチオフェン或いはジベンゾチオフェン誘導体である。マトリックス材料の混合物は、2以上のマトリックス材料を含んでもよい。式(1)のマトリックス材料を混合物として、更なる電子輸送マトリックス材料とともに、たとえば、WO 07/137725に従う双極性マトリックス材料、たとえば、WO 05/111172に従うシラン、たとえば、WO 06/117052に従うアザボロール或いはボロン酸エステルを使用することもさらに可能である。同様に2個以上の式(1)の材料を使用することもできる。
【0057】
更に好ましい有機エレクトロルミネッセンス素子は、1以上の層が、昇華プロセスにより適用され、材料は、10−5mbar未満、好ましくは10−6mbar未満の圧力で、真空昇華ユニット中での気相堆積により適用されることを特徴とする。しかしながら、圧力は、より低くても、たとえば、10−7mbar未満でもよいことに留意する必要がある。
【0058】
同様に好ましい有機エレクトロルミネッセンス素子は、1以上の層が、OVPD(有機気相堆積)プロセス若しくはキャリアガス昇華により適用され、材料は、10−5mbar〜1barの圧力で適用されることを特徴とする。このプロセスの特別な場合は、OVJP(有機蒸気ジェット印刷)プロセスであり、材料はノズルにより直接適用され、ひいては構造化される(例えば、M. S. Arnold et al., Appl. Phys. Lett. 2008, 92, 053301)。
【0059】
更に、好ましい有機エレクトロルミネッセンス素子は、1以上の層が、溶液から、例えば、スピンコーティングにより、若しくは、例えば、スクリーン印刷、フレキソ印刷或いはオフセット印刷、特に、好ましくは、LITI(光誘起熱画像化、熱転写印刷)或いはインクジェット印刷のような任意の所望の印刷プロセスにより製造されることを特徴とする。可溶性の化合物が、この目的のためには必要である。高い溶解度は、化合物の適切な置換により達成することができる。ここで、個々の材料の溶液だけではなく、複数の化合物、たとえば、マトリックス材料とドーパントを含む溶液も適用することができる。
【0060】
有機エレクトロルミネセンス素子は、また、1以上の層を溶液から適用し、そして、1以上の他の層を気相堆積により適用することにより、ハイブリッドシステムとしても製造され得る。したがって、たとえば、式(1)の化合物と燐光発光化合物AおよびBを含む発光層を溶液から適用し、正孔障壁層及び/または電子輸送層を真空気相堆積によりそこに適用するこができる。式(1)の化合物と燐光発光化合物AおよびBを含む発光層は、同様に、真空気相堆積により適用することができ、1以上の層を溶液から適用することができる。
【0061】
これらのプロセスは当業者に一般的に知られており、当業者により進歩性を必要とすることなく、本発明の有機エレクトロルミネセンス素子に適用することができる。
【0062】
本発明は、さらに、少なくとも一つの燐光発光化合物A、少なくとも一つの燐光発光化合物B、及び少なくとも一つの芳香族ケトン、芳香族ホスフィンオキシド、芳香族スルホキシドまたは芳香族スルホン、好ましくは、式(1)の化合物を含む混合物に関する。
【0063】
本発明は、なお、さらに、少なくとも一つの本発明による混合物と、少なくとも一つの溶媒を含む溶液または処方に関する。
【0064】
本発明の有機エレクトロルミネセンス素子は、以下の先行技術を凌駕する驚くべき効果を有する。
【0065】
1.本発明の有機エレクトロルミネセンス素子は、非常に高い効率を有する。これは、また、特に、ケトケトネート配位子、たとえば、アセチルアセトネート配位子を含む燐光発光金属錯体が使用されならば、あてはまる。
【0066】
2.本発明の有機エレクトロルミネセンス素子は、同時に、非常に良好な寿命を有する。これは、また、特に、ケトケトネート配位子を含む燐光発光金属錯体が使用されならば、あてはまる。
【0067】
3.本発明の有機エレクトロルミネセンス素子は、同時に、非常に低い駆動電圧を有する。特に、駆動電圧は、カルバゾール誘導体系のマトリックス材料よりも、顕著に低い。
【0068】
4.本発明の有機エレクトロルミネセンス素子は、非常に低いロールオフ性を有する。したがって、ロールオフ性は、式(1)の化合物と一つの燐光発光化合物のみを含むエレクトロルミネセンス素子より、顕著に低い。
【0069】
本発明は、次の例により更に説明されるが、それにより限定することを望むものではない。当業者は、進歩性を要することなく、更なる本発明の有機エレクトロルミネセンス素子を製造することができるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】図1は、例10と11の、輝度密度の関数としての外部量子効率EQEを示す。
【例】
【0071】
例1−13 本発明に従う有機エレクトロルミネッセンス素子の製造と特性決定
本発明によるエレクトロルミネッセンス素子が、たとえば、WO05/003253に記載されるとおりに製造される。種々のOLEDに対する結果が、以下で比較される。
【0072】
例1−13は、以下の層構造により達成される赤色発光OLEDを説明する。
【0073】
正孔注入層(HIL) 20nmの2,2’7,7’-テトラキス(ジ-p-トリルアミノ)スピロ-9,9’-ビフルオレン
正孔輸送層(HTL) 20nmのNPB(N-ナフチル-N-フェニル-4,4’-ジアミノビフェニル)
発光層(EML) 30nmのマトリックス材料:スピロ-ケトン(SK)(ビス(9 ,9’-スピロビフルオレン-2-イル))またはCBP(4,4’-ビス(カルバゾール-9-イル)ビフェニル)
ドーパント:TER-1、TER-2またはTER-3(以下参照。)ドープ度は表1参照。本発明による例における更なるドーパント:Ir(ppy)(ファク-トリス[2-フェニル-ピリジル]イリジウム)
正孔障壁層(HBL) 10nmのSK
電子伝導層(ETL) 20nmのAlQ(トリス(キノリナート)アルミニウム(III))
陰極 1nmのLiF、頂上の100nmのAl
TER-1、TER-2、TER-3、Ir(ppy)およびSAの構造は、明確にするために以下に示される。
【化6】

【0074】
これら未だ最適化されていないOLEDは、標準方法により特性決定される。この目的のために、エレクトロルミネセンススペクトル、電流-電圧-輝度特性線(IUL特性線)から計算した、輝度、駆動電圧の関数としての効率(cd/Aで測定)及び寿命が測定される。
【0075】
例1は、比較例として役立ち、ドーパントとしてTER-1を含む。例2は、TER-1に加えてさらなるドーパントとしてIr(ppy)を含む本発明のOLEDである。本発明のOLEDは、色と駆動電圧に遜色がないのに、比較例と比べて顕著に改善された効率と寿命を有することを、表1から見て取ることができる。
【0076】
同様に、比較例3−5と本発明の例6−9は、エミッターとしてTER-2を含むOLEDを記載し、比較例10と本発明の例11は、エミッターとしてTER-3を含むOLEDを記載している。ここでも、効率と、特に、駆動寿命のかなりの増加が見られる。TER-2の場合、15%濃度のIr(ppy)と5%濃度のTER-2を含む本発明の例7が、最長の寿命を有することが判明する。反対に、比較例においては受容可能な寿命は、より多いTER-2濃度(15%、比較例3)で達成できるだけであるが、これは、顕著により低い効率を生じることが明らかである。
【0077】
本発明のOLEDでの更なる重要な改善は、例10と11を参照して、効率―輝度濃度の比較から明らかである(図1)。増加する輝度濃度に伴う効率(ここでは、外部量子効率EQEの形)の減少は、本発明のOLED(例11)の場合には、比較例10よりも顕著に小さい。たとえば、EQEは、本発明のOLED(例11)の場合には、400cd/mから4000cd/mで、2.2%から8.3%までに(27%)に低下しているのに対して、比較(例10)は、10.4%から5.7%まで45%低下している。
【0078】
比較例12および13は、先行技術によるホスト材料CBPの使用に関する第2のドーパントの効果を示している。効率と寿命におけるわずかな改善も、ここで生じるが、とにかく顕著により悪い数値水準に加えて、例1−11における本発明に包含されるマトリクス材料の使用よりもパーセンテージにおいてはるかにはっきりしない。しかしながら、駆動電圧もこの場合やや増加している。
【0079】
表1 素子結果
【表1】

【0080】
例14−16 本発明に従う有機エレクトロルミネッセンス素子の製造と特性決定
例14−16は、次の層構造により達成され、上記一般的方法により製造することができる青および緑色発光OLEDを記載している。
【0081】
正孔注入層(HIL) 20nmの2,2’7,7’-テトラキス(ジ-p-トリルアミノ)スピロ-9,9’-ビフルオレン
正孔輸送層(HTL) 5nmのNPB(N-ナフチル-N-フェニル-4,4’-ジアミノビフェニル)
電子障壁層(EBL) 15nmのEBM
発光層(EML) DE102008033943.1に従う40nmのケトン(K)ビス[1,3’;1’,1”;3”,1”’;3”’,1””]-キンケフェニル-5”-イルメタノン、例3、(気相堆積)
ドーパント: 比較例としてのIr(ppy)(ファク-トリス[2-フェニル-ピリジル]イリジウム)、本発明の例、ドーパント2でドープされたドーパント1(ドープ度は表2参照。)ドーパント1とドーパント2は、TEB、Flrpic若しくはIr(ppy)
正孔障壁層(HBL) 10nmのケトン(K)
電子伝導層(ETL) 20nmのAlQ(トリス(キノリナート)アルミニウム(III))
陰極 1nmのLiF、頂上の100nmのAl
EBM、TEB、FlrpicおよびKの構造は、明確にするために以下に示される。
【化7】

【0082】
表2 素子結果
【表2】

【0083】
表から見て取ることができるように、効率は、緑色Ir(ppy)素子中のドーパントFlrpicの導入により増加する。色は同時に改善される。このコンセプトは、例16に示されるとおり、高い効率の青緑色発光素子で実行することもできる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの発光層に、以下のものを含む有機エレクトロルミネッセンス素子。
(A)燐光発光化合物A、
(B)燐光発光化合物Aとは異なるものである燐光発光化合物B、及び
(C)芳香族ケトン、芳香族ホスフィンオキシド、芳香族スルホキシド及び芳香族スルホンより成る群から選択されるマトリックス材料。
【請求項2】
芳香族ケトン、芳香族ホスフィンオキシド、芳香族スルホキシドまたは芳香族スルホンが式(1)の化合物から選択されることを特徴とする、請求項1記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化1】

(式中、使用される記号と添字は、以下が適用される:
Xは、C、PまたはSであり;
Arは、出現毎に同一であるか異なり、各場合に1以上の基Rにより置換されてよい5〜80個の芳香族環原子を有する芳香族若しくは複素環式芳香族環構造、
は、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、Cl、Br、I、CHO、C(=O)Ar、P(=O)(Ar、S(=O)Ar、S(=O)Ar、CR=CRAr、CN、NO、Si(R、B(OR、B(R、B(N(R、OSO、1〜40個のC原子を有する直鎖アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ若しくはチオアルコキシ基、または3〜40個のC原子を有する分岐或いは環状アルキル、アルケニル、アルコキシ若しくはチオアルコキシ基(夫々は、1以上の基Rにより置換されてよく、1以上の隣接しないCH基は、RC=CR、C≡C、Si(R、Ge(R、Sn(R、C=O、C=S、C=Se、C=NR、P(=O)(R)、SO、SO、NR、O、S若しくはCONRで置き代えられてよく、また、1以上のH原子は、F、Cl、Br、I、CN若しくはNOで置き代えられてよい。)、または各場合に1以上の基Rにより置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有する芳香族若しくは複素環式芳香族環構造、または1以上の基Rにより置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有するアリールオキシ若しくはヘテロアリールオキシ基、または1以上の基Rにより置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有するアラルキル若しくはヘテロアラルキル基、またはこれらの構造の組み合わせであり;ここで、2以上の隣接する置換基Rは、互いにモノ-或いはポリ環状、脂肪族、芳香族環構造を形成してもよく;
Arは、出現毎に同一であるか異なり、1以上の基Rにより置換されてよい5〜40個の芳香族環原子を有する芳香族若しくは複素環式芳香族環構造であり;
は、出現毎に同一であるか異なり、H、Dまたは1〜20個のC原子を有する脂肪族、芳香族及び/または複素環式芳香族炭化水素基であり、加えて、H原子は、Fで置き代えられてよく;2以上の隣接する置換基Rは、ここで、互いにモノ-或いはポリ環状、脂肪族、芳香族環構造を形成してもよく、
nは、X=CまたはSのときは0であり、X=Pのときは1であり、
mは、X=CまたはPのときは0であり、X=Sのときは1である。)
【請求項3】
燐光発光化合物Aのフォトルミネッセンス最大値が、燐光発光化合物Bよりも波長において、少なくとも20nm短く、好ましくは、波長において、少なくとも30nm短いことを特徴とする、請求項1または2記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項4】
燐光発光化合物Aが緑色ルミネッセンス化合物であり、燐光発光化合物Bが赤色ルミネッセンス化合物であるか、または、燐光発光化合物Aが青色ルミネッセンス化合物であり、燐光発光化合物Bが緑色ルミネッセンス化合物あるいは赤色ルミネッセンス化合物であるか、または、燐光発光化合物Aが暗青色ルミネッセンス化合物あるいはUV域で発光する化合物であり、燐光発光化合物Bが薄青色ルミネッセンス化合物であることを特徴とする、請求項1〜3何れか1項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項5】
層中の燐光発光化合物Aの割合が5〜50体積%であり、好ましくは、10〜25体積%であり、特に、好ましくは、12〜20体積%であることを特徴とする、請求項1〜4何れか1項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項6】
層中の燐光発光化合物Bの割合が1〜20体積%であり、好ましくは、3〜10体積%であり、特に、好ましくは、4〜7体積%であることを特徴とする、請求項1〜5何れか1項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項7】
燐光発光化合物Aが正孔を輸送することができる材料であり、好ましくは、>−5.9eV、特に、好ましくは、>−5.7eV、非常に特に、好ましくは、>−5.5eVのHOMOを有することを特徴とする、請求項1〜6何れか1項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項8】
燐光発光化合物A及びBが38〜84の原子番号、好ましくは、56〜80の原子番号を有する少なくとも一つの金属、特に、好ましくは、銅、モリブデン、タングステン、レニウム、ルテニウム、オスミウム、ロジウム、イリジウム、パラジウム、白金、銀、金またはユウロピウム、特に、イリジウムまたは白金を含むことを特徴とする、請求項1〜7何れか1項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項9】
燐光発光エミッターA及び/またはBが、式(2)〜(5)の化合物から選択されることを特徴とする、請求項1〜8何れか1項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化2】

(式中、Rは、請求項2に記載されるのと同じ意味を有し、使用されるその他の記号は、以下が適用される:
DCyは、出現毎に同一であるか異なり、少なくとも一つのドナー原子、好ましくは、窒素、カルベン型の炭素または燐を含む環状基であり、環状基はドナー原子を介して金属に結合し、環状基は1以上の置換基Rを順に担持してもよく、;DCyとCCyは、互いに共有結合を介して結合し、
CCyは、出現毎に同一であるか異なり、炭素原子を含む環状基であり、環状基は炭素原子を介して金属に結合し、環状基は1以上の置換基Rを順に担持してもよく、
Aは、出現毎に同一であるか異なり、モノアニオン性2座キレート配位子、好ましくは、ジケトン配位子またはピコリネート配位子である。)
【請求項10】
基Arは、フェニル及び/またはナフチル基からのみ構築され、好ましくは、フェニル基からのみ構築されるが、如何なるより大きい芳香族環構造も含まない、6〜40個の芳香族環原子を有する芳香族環構造であることを特徴とする、請求項1〜9何れか1項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項11】
は、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、C(=O)Ar、P(=O)(Ar、S(=O)Ar、S(=O)Ar、1〜4個のC原子を有する直鎖アルキル基、または3〜5個のC原子を有する分岐或いは環状アルキル基(夫々は、1以上の基Rにより置換されてよく、また、1以上のH原子は、Fで置き代えられてよい。)、または1以上の基Rにより置換されてよい6〜24個の芳香族環原子を有する芳香族環構造、またはこれらの構造の組み合わせであり;ここで、2以上の隣接する置換基Rは、互いにモノ-或いはポリ環状、脂肪族、芳香族環構造を形成してもよいものより成る群から選ばれることを特徴とする、請求項1〜10何れか1項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項12】
芳香族ケトン、芳香族ホスフィンオキシド、芳香族スルホンまたは芳香族スルホキシドが式(6)〜(30)の化合物から選択されることを特徴とする、請求項1〜10何れか1項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化3−1】

【化3−2】

【化3−3】

(式中、Arは請求項2に記載されるのと同じ意味を有し、さらに:
Zは、出現毎に同一であるか異なり、CRまたはNを表わし、ここで、環毎の最大3個の記号ZはNを表し;Zは、好ましくは、CRであり、
mは、1、2、3、4若しくは5であり、
nは、出現毎に同一であるか異なり、0、1、2、3若しくは4であり、
pは、出現毎に同一であるか異なり、0若しくは1である。)
【請求項13】
一以上の層は、昇華プロセスにより適用されること、及び/または、一以上の層は、OVPD(有機気相堆積)プロセス若しくはキャリアガス昇華により適用されること、及び/または一以上の層は、たとえば、スピンコートまたは任意の所望の印刷プロセス等の、溶液から製造されることを特徴とする、請求項1〜12何れか1項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項14】
以下のものを含む混合物、
(A)少なくとも一つの燐光発光化合物A、
(B)燐光発光化合物Aとは異なるものである少なくとも一つの燐光発光化合物B、及び
(C)少なくとも一つの芳香族ケトン、芳香族ホスフィンオキシド、芳香族スルホキシドまたは芳香族スルホン、好ましくは、式(1)の化合物。
【化4】

(式中、使用される記号と添字は、請求項2に記載されるのと同じ意味を有する。)
【請求項15】
請求項14記載の少なくとも一つの混合物を含む溶液または処方。

【図1】
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【公表番号】特表2012−512535(P2012−512535A)
【公表日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−541133(P2011−541133)
【出願日】平成21年11月18日(2009.11.18)
【国際出願番号】PCT/EP2009/008196
【国際公開番号】WO2010/069442
【国際公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(597035528)メルク パテント ゲーエムベーハー (209)
【Fターム(参考)】