説明

有機エレクトロルミネッセンス素子

【課題】輝度むらの低減を図ることが可能で且つ光取り出し効率の向上を図ることが可能な有機エレクトロルミネッセンス素子を提供する。
【解決手段】有機エレクトロルミネッセンス素子は、第1電極20と、基板10の一表面側で第1電極20に対向した第2電極50と、第1電極20と第2電極50との間にあり少なくとも発光層32を含む機能層30とを備え、第2電極50が、機能層30に接する導電性高分子層39と、導電性高分子層39における機能層30側とは反対側に位置し機能層30からの光の取り出し用の光取出部を有する電極パターン40とを備える。光取出部には、導電性高分子層39の屈折率以上の屈折率を有する透明樹脂部100を設けてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、図10に示す構成の有機エレクトロルミネッセンス素子が提案されている(特許文献1)。この有機エレクトロルミネッセンス素子は、一方の電極(陰極)101が基板104の表面に積層され、電極101の表面上に電子注入・輸送層105を介して発光層103が積層され、発光層103上に、ホール注入・輸送層106を介して他方の電極(陽極)102が積層されている。また、この有機エレクトロルミネッセンス素子は、基板104の上記表面側に封止部材107を備えている。したがって、この有機エレクトロルミネッセンス素子では、発光層103で発光した光が、光透過性電極として形成される電極102、透明体で形成される封止部材107を通して放射されるようになっている。
【0003】
反射性の電極101の材料としては、例えば、Al、Zr、Ti、Y、Sc、Ag、Inなどが挙げられている。また、光透過性電極である電極102の材料としては、例えば、インジウム−錫酸化物(ITO)、インジウム−亜鉛酸化物(IZO)などが挙げられている。なお、特許文献1には、光取り出し側の部位に光取り出し処理として、電極102の表面への凹凸形状付与、封止部材107の表面の反射防止処理、散乱処理、光散乱性を有する封止部材の使用、拡散フィルム等の光散乱性を有する部材の電極102の表面上あるいは封止部材107上への光学的接合などを行ってもよい旨が記載されている。
【0004】
ところで、有機エレクトロルミネッセンス素子を高輝度で点灯させるためには、より大きな電流を流す必要がある。しかしながら、有機エレクトロルミネッセンス素子は、一般的に、ITO膜からなる陽極のシート抵抗が、金属膜、合金膜、金属化合物膜などからなる陰極のシート抵抗に比べて高いため、陽極での電位勾配が大きくなって、輝度の面内ばらつきが大きくなってしまう。
【0005】
また、従来から、スパッタ法により形成されるITO膜からなる電極を備えた構成の問題点を解決するエレクトロルミネセンス・ランプとして、ITO膜からなる電極を用いずに構成されたエレクトロルミネセンス・ランプが提案されている(特許文献2)。特許文献2には、例えば、図11に示すように、第1の導電層220、エレクトロルミネセンス物質230、第2の導電層240および基板245を備え、第1の導電層220が、矩形の開口250を有する矩形格子電極により構成されてなるエレクトロルミネセンス・ランプ210が提案されている。
【0006】
ここで、特許文献2には、第1の導電層220および第2の導電層240を、銀インク、炭素インクなどの導電性インクで形成することが好ましい旨が記載されている。また、特許文献2には、第1の導電層220、エレクトロルミネセンス物質230、第2の導電層240を、スクリーン印刷法やオフセット印刷法などにより形成することが記載されている。
【0007】
また、従来から、図12(a)に示す構成の有機エレクトロルミネッセンス素子が提案されている(特許文献3)。
【0008】
図12(a)に示した有機エレクトロルミネッセンス素子は、透光性の基板301の片側表面に光散乱層305と平坦化層311とで構成される光取出し層304を形成してある。また、この有機エレクトロルミネッセンス素子は、平坦化層311の光散乱層305側と反対側の表面に、透光性の電極303を形成してあり、電極303の平坦化層311と反対側の表面に、有機発光層302を積層してある。有機発光層302の電極303側には、必要に応じて正孔注入層や正孔輸送層が積層され、有機発光層302の電極303と反対側には、必要に応じて電子輸送層や電子注入層が積層される。そして、有機発光層302の透光性の電極303と反対側に対向電極となる電極310を積層してある。
【0009】
光散乱層305は、図12(b)に示すように、光散乱粒子306がバインダー樹脂307中で凝集して多く存在する光散乱領域308と、光散乱粒子306の含有比率が光散乱領域308よりも低い光透過領域309とが、面方向で混在して形成されている。また、特許文献3には、平坦化層311の材料として、光透過性を有する熱硬化性樹脂を用いるのが好ましい旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−331694号公報
【特許文献2】特表2002−502540号公報
【特許文献3】特開2009−76452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
図10に示した構成の有機エレクトロルミネッセンス素子では、発光層103で発光した光が、光透過性電極として形成される電極102、封止部材107を通して放射されるので、電極102のシート抵抗が高いことに起因して輝度むらを生じてしまうことがある。また、この有機エレクトロルミネッセンス素子では、電極102と封止部材107との空間の媒質について明記されていないが、不活性ガスが充填されている場合、発光層103、ホール注入・輸送層106および電極102の屈折率に比べて、電極102と封止部材107との空間に存在する媒質の屈折率が小さいので、電極102と当該媒質との界面での全反射に起因した反射損失が生じてしまう。
【0012】
また、図11に示した構成のエレクトロルミネセンス・ランプ210では、第1の導電層220が開口250を有しているので、第1の導電層220からエレクトロルミネセンス物質230へのキャリア注入性が低下してしまい、外部量子効率が低下してしまう。
【0013】
また、図12に示した構成の有機エレクトロルミネッセンス素子では、透光性の電極303のシート抵抗が高いことに起因して輝度むらを生じてしまうことがある。
【0014】
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、輝度むらの低減を図ることが可能で且つ光取り出し効率の向上を図ることが可能な有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、基板と、前記基板の一表面側に設けられた第1電極と、前記基板の前記一表面側で前記第1電極に対向した第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間にあり少なくとも発光層を含む機能層とを備えた有機エレクトロルミネッセンス素子であって、前記第2電極が、前記機能層に接する導電性高分子層と、前記導電性高分子層における前記機能層側とは反対側に位置し前記機能層からの光の取り出し用の光取出部を有する電極パターンとを備え、前記光取出部に、前記導電性高分子層の屈折率以上の屈折率を有する透明樹脂部を設けてなることを特徴とする。
【0016】
この有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記透明樹脂部は、レンズ状に形成されてなることが好ましい。
【0017】
この有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記電極パターンは、前記光取出部が開口部であり、前記開口部の開口形状が多角形状であり、前記透明樹脂部は、前記基板の厚み方向に沿った断面形状が、半円状もしくは半楕円状であることが好ましい。
【0018】
この有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記透明樹脂部は、平面視において前記開口部を塞いでいることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子においては、輝度むらの低減を図ることが可能で且つ光取り出し効率の向上を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施形態1の有機エレクトロルミネッセンス素子の概略断面図である。
【図2】実施形態1の有機エレクトロルミネッセンス素子における第2電極の概略平面図である。
【図3】実施形態1の有機エレクトロルミネッセンス素子の要部概略断面図である。
【図4】(a)は実施形態1の有機エレクトロルミネッセンス素子の要部概略斜視図、(b)は他の構成例の要部概略斜視図である。
【図5】実施形態1の有機エレクトロルミネッセンス素子における第2電極の他の構成例の概略平面図である。
【図6】実施形態1の有機エレクトロルミネッセンス素子における第2電極の別の構成例の概略平面図である。
【図7】実施形態1の有機エレクトロルミネッセンス素子における第2電極および透明樹脂部の更に別の構成例を説明するための要部概略斜視図である。
【図8】実施形態2の有機エレクトロルミネッセンス素子の概略断面図である。
【図9】(a)は実施形態3の有機エレクトロルミネッセンス素子の概略断面図、(b)は実施形態3の有機エレクトロルミネッセンス素子の要部概略斜視図である。
【図10】従来の有機エレクトロルミネッセンス素子の一例を示す概略断面図である。
【図11】従来のエレクトロルミネセンス・ランプの透視上面および断面図である。
【図12】従来の有機エレクトロルミネッセンス素子の他の例を示し、(a)は有機エレクトロルミネッセンス素子の層構成を示す概略図、(b)は光散乱層の表面の一部を拡大して示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(実施形態1)
以下、本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子について図1〜図4に基づいて説明する。
【0022】
有機エレクトロルミネッセンス素子は、基板10と、基板10の一表面側に設けられた第1電極20と、基板10の上記一表面側で第1電極20に対向した第2電極50と、第1電極20と第2電極50との間にあり発光層32を含む機能層30とを備えている。
【0023】
第2電極50は、機能層30に接する導電性高分子層39と、この導電性高分子層39における機能層30側とは反対側に位置し機能層30からの光の取り出し用の光取出部である開口部41(図2および図3参照)を有する電極パターン40とを備えている。要するに、有機エレクトロルミネッセンス素子は、第2電極50が、機能層30からの光の取り出し用の開口部41を有している。
【0024】
有機エレクトロルミネッセンス素子は、第1電極20および第2電極50の電極パターン40それぞれの抵抗率を、透明導電性酸化物(Transparent Conducting Oxide:TCO)の抵抗率よりも低くしてある。透明導電性酸化物としては、例えば、ITO、AZO、GZO、IZOなどがある。
【0025】
また、有機エレクトロルミネッセンス素子は、光取出部である開口部41に、導電性高分子層39の屈折率以上の屈折率を有する透明樹脂部100を設けてある。これにより、有機エレクトロルミネッセンス素子は、第2電極50側から透明樹脂部100を通して光を取り出すことが可能となる。要するに、本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子は、トップエミッション型の有機エレクトロルミネッセンス素子として用いることが可能となる。ここにおいて、透明樹脂部100は、レンズ状に形成されていることが好ましい。
【0026】
また、有機エレクトロルミネッセンス素子は、第1電極20に第1引出し配線(図示せず)を介して電気的に接続された第1端子部(図示せず)と、第2電極50に第2引出し配線46を介して電気的に接続された第2端子部47とを備えている。第1引出し配線、第1端子部、第2引出し配線46および第2端子部47は、基板10の上記一表面側に設けられている。また、有機エレクトロルミネッセンス素子は、第2引出し配線46と機能層30、第1電極20、第1引出し配線とを電気的に絶縁する絶縁膜60が基板10の上記一表面側に設けられている。この絶縁膜60は、基板10の上記一表面と第1電極20の側面と機能層30の側面と、機能層30における第2電極50側の表面の外周部とに跨って形成されている。
【0027】
有機エレクトロルミネッセンス素子は、基板10の上記一表面側に対向配置されるカバー基板としての封止層(図示せず)と、基板10の周部と封止層の周部との間に介在する枠状(本実施形態では、矩形枠状)のフレーム部(図示せず)とを備えていることが好ましい。要するに、基板10と封止層とフレーム部とで囲まれる空間に、第1電極20、機能層30、第2電極50などからなる素子部1が配置されていることが好ましい。
【0028】
以下、有機エレクトロルミネッセンス素子の各構成要素について詳細に説明する。
【0029】
基板10は、平面視形状を矩形状としてある。ここで、基板10の平面視形状は、矩形状に限らず、例えば、矩形状以外の多角形状、円形状などでもよい。
【0030】
基板10としては、ガラス基板を用いているが、これに限らず、例えば、プラスチック板や、金属板などを用いてもよい。ガラス基板の材料としては、例えば、ソーダライムガラス、無アルカリガラスなどを採用することができる。また、プラスチック板の材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルサルフォン、ポリカーボネートなどを採用することができる。また、金属板の材料としては、例えば、アルミニウム、銅、ステンレス鋼などを採用することができる。プラスチック板を用いる場合は、プラスチック基板の表面にSiON膜、SiN膜などが成膜されたものを用いることで、水分の透過を抑えることが好ましい。なお、基板10は、リジッドなものでもよいし、フレキシブルなものでもよい。
【0031】
基板10としてガラス基板を用いる場合には、基板10の上記一表面の凹凸が有機エレクトロルミネッセンス素子のリーク電流などの発生原因となることがある(有機エレクトロルミネッセンス素子の劣化原因となることがある)。このため、基板10としてガラス基板を用いる場合には、上記一表面の表面粗さが小さくなるように高精度に研磨された素子形成用のガラス基板を用意することが好ましい。基板10の上記一表面の表面粗さについては、JIS B 0601−2001(ISO 4287−1997)で規定されている算術平均粗さRaが10nm以下であることが好ましく、数nm以下であることが、より好ましい。これに対して、基板10としてプラスチック板を用いる場合には、特に高精度な研磨を行わなくても、上記一表面の算術平均粗さRaが数nm以下のものを低コストで得ることが可能である。
【0032】
本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子では、第1電極20が陰極を構成し、第2電極50が陽極を構成している。この場合、第1電極20から機能層30へ注入する第1キャリアは電子であり、第2電極50から機能層30へ注入する第2キャリアは正孔である。機能層30は、第1電極20側から順に、発光層32、第2キャリア輸送層33、第2キャリア注入層34を備えている。ここにおいて、第2キャリア輸送層、第2キャリア注入層は、それぞれ、ホール輸送層、ホール注入層である。なお、第1電極20が陽極を構成し、第2電極50が陰極を構成する場合には、例えば、第2キャリア輸送層33として電子輸送層を、第2キャリア注入層34として電子注入層を採用すればよい。
【0033】
上述の機能層30の構造は、図1の例に限らず、例えば、第1電極20と発光層32との間に、第1キャリア注入層、第1キャリア輸送層を設けたり、発光層32と第2キャリア輸送層33との間にインターレイヤーを設けたりした構造でもよい。第1電極20が陰極を構成し、第2電極50が陽極を構成している場合、第1キャリア注入層は、電子注入層であり、第1キャリア輸送層は、電子輸送層である。
【0034】
また、機能層30は、少なくとも発光層32を含んでいればよく(つまり、機能層30は、発光層32のみでもよく)、発光層32以外の、第1キャリア注入層、第1キャリア輸送層、インターレイヤー、第2キャリア輸送層33、第2キャリア注入層34などは適宜設ければよい。発光層32は、単層構造でも多層構造でもよい。例えば、所望の発光色が白色の場合には、発光層中に赤色、緑色、青色の3種類のドーパント色素をドーピングするようにしてもよいし、青色正孔輸送性発光層と緑色電子輸送性発光層と赤色電子輸送性発光層との積層構造を採用してもよいし、青色電子輸送性発光層と緑色電子輸送性発光層と赤色電子輸送性発光層との積層構造を採用してもよい。
【0035】
発光層32の材料としては、例えば、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリアセチレン誘導体など、ポリフルオレン誘導体、ポリビニルカルバゾール誘導体、色素体、金属錯体系発光材料を高分子化したものなどや、アントラセン、ナフタレン、ピレン、テトラセン、コロネン、ペリレン、フタロペリレン、ナフタロペリレン、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、クマリン、オキサジアゾール、ビスベンゾキサゾリン、ビススチリル、シクロペンタジエン、クマリン、オキサジアゾール、ビスベンゾキサゾリン、ビススチリル、シクロペンタジエン、キノリン金属錯体、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム錯体、トリス(4−メチル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、トリス(5−フェニル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、アミノキノリン金属錯体、ベンゾキノリン金属錯体、トリ−(p−ターフェニル−4−イル)アミン、ピラン、キナクリドン、ルブレン、およびこれらの誘導体、あるいは、1−アリール−2,5−ジ(2−チエニル)ピロール誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、スチリルアリーレン誘導体、スチリルアミン誘導体、およびこれらの発光性化合物からなる基を分子の一部分に有する化合物などが挙げられる。また、上記化合物に代表される蛍光色素由来の化合物のみならず、いわゆる燐光発光材料、例えばイリジウム錯体、オスミウム錯体、白金錯体、ユーロピウム錯体などの発光材料、又はそれらを分子内に有する化合物若しくは高分子も好適に用いることができる。これらの材料は、必要に応じて、適宜選択して用いることができる。発光層32は、塗布法(例えば、スピンコート法、スプレーコート法、ダイコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法など)のような湿式プロセスによって成膜することが好ましい。ただし、発光層32の成膜方法は、塗布法に限らず、例えば、真空蒸着法、転写法などの乾式プロセスによって発光層32を成膜してもよい。
【0036】
電子注入層の材料は、例えば、フッ化リチウムやフッ化マグネシウムなどの金属フッ化物、塩化ナトリウム、塩化マグネシウムなどに代表される金属塩化物などの金属ハロゲン化物や、チタン、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ストロンチウムなどの酸化物、などを用いることができる。これらの材料の場合、電子注入層は、真空蒸着法により形成することができる。また、電子注入層の材料は、例えば、電子注入を促進させるドーパント(アルカリ金属など)を混合した有機半導体材料を用いることができる。このような材料の場合、電子注入層は、塗布法により形成することができる。
【0037】
また、電子輸送層の材料は、電子輸送性を有する化合物の群から選定することができる。この種の化合物としては、Alq等の電子輸送性材料として知られる金属錯体や、フェナントロリン誘導体、ピリジン誘導体、テトラジン誘導体、オキサジアゾール誘導体などのヘテロ環を有する化合物などが挙げられるが、この限りではなく、一般に知られる任意の電子輸送材料を用いることが可能である。
【0038】
ホール輸送層の材料としては、LUMO(Lowest UnoccupiedMolecular Orbital)準位が小さい低分子材料や高分子材料を用いることができる。例えば、ポリビニルカルバゾール(PVCz)や、ポリピリジン、ポリアニリンなどの側鎖や主鎖に芳香族アミンを有するポリアリーレン誘導体などの芳香族アミンを含むポリマーなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。なお、ホール輸送層の材料としては、例えば、4,4’−ビス[N−(ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(α−NPD)、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TPD)、2−TNATA、4,4’,4”−トリス(N−(3−メチルフェニル)N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン(MTDATA)、4,4’−N,N’−ジカルバゾールビフェニル(CBP)、スピロ−NPD、スピロ−TPD、スピロ−TAD、TNBなどを用いることが可能である。
【0039】
ホール注入層の材料としては、例えば、チオフェン、トリフェニルメタン、ヒドラゾリン、アミールアミン、ヒドラゾン、スチルベン、トリフェニルアミンなどを含む有機材料が挙げられる。具体的には、たとえば、ポリビニルカルバゾール、ポリエチレンジオキシチオフェン:ポリスチレンスルホネート(PEDOT:PSS)、TPDなどの芳香族アミン誘導体などで、これらの材料を単独で用いてもよいし、2種類以上の材料を組み合わせて用いてもよい。このようなホール注入層は、塗布法(スピンコート法、スプレーコート法、ダイコート法、グラビア印刷法など)のような湿式プロセスによって成膜することができる。
【0040】
インターレイヤーは、発光層32側からの第2電極50側への第1キャリア(ここでは、電子)の漏れを抑制する第1キャリア障壁(ここでは、電子障壁)としてのキャリアブロッキング機能(ここでは、電子ブロッキング機能)を有することが好ましく、更に、第2キャリア(ここでは、正孔)を発光層32へ輸送する機能、発光層32の励起状態の消光を抑制する機能などを有していることが好ましい。なお、本実施形態では、インターレイヤーが、発光層32側からの電子の漏れを抑制する電子ブロッキング層を構成している。
【0041】
有機エレクトロルミネッセンス素子では、インターレイヤーを設けることにより、発光効率の向上および長寿命化を図ることが可能となる。インターレイヤーの材料としては、例えば、ポリアリールアミン若しくはその誘導体、ポリフルオレン若しくはその誘導体、ポリビニルカルバゾール若しくはその誘導体、トリフェニルジアミン誘導体などを用いることができる。このようなインターレイヤーは、塗布法(スピンコート法、スプレーコート法、ダイコート法、グラビア印刷法など)のような湿式プロセスによって成膜することができる。
【0042】
また、陰極は、機能層30中に第1電荷である電子(第1キャリア)を注入するための電極である。第1電極20が陰極の場合、陰極の材料としては、仕事関数の小さい金属、合金、電気伝導性化合物およびこれらの混合物からなる電極材料を用いることが好ましく、LUMO(Lowest Unoccupied Molecular Orbital)準位との差が大きくなりすぎないように仕事関数が1.9eV以上5eV以下のものを用いるのが好ましい。陰極の電極材料としては、例えば、アルミニウム、銀、マグネシウム、金、銅、クロム、モリブデン、パラジウム、錫など、およびこれらと他の金属との合金、例えばマグネシウム−銀混合物、マグネシウム−インジウム混合物、アルミニウム−リチウム合金を例として挙げることができる。また、金属、金属酸化物など、およびこれらと他の金属との混合物、例えば、酸化アルミニウムからなる極薄膜(ここでは、トンネル注入により電子を流すことが可能な1nm以下の薄膜)とアルミニウムからなる薄膜との積層膜なども使用可能である。陰極を反射電極とする場合、陰極の材料としては、発光層32から放射される光に対する反射率が高く、且つ、抵抗率の低い金属が好ましく、アルミニウムや銀が好ましい。なお、第1電極20が、機能層30中に第2電荷であるホール(第2キャリア)を注入するための電極である陽極を構成する場合、第1電極20の材料としては、仕事関数の大きい金属を用いることが好ましく、HOMO(Highest Occupied Molecular Orbital)準位との差が大きくなりすぎないように仕事関数が4eV以上6eV以下のものを用いるのが好ましい。
【0043】
第2電極50の導電性高分子層39の材料としては、例えば、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアセチレン、ポリカルバゾールなどの導電性高分子材料を用いることができる。また、導電性高分子層39の導電性高分子材料としては、導電性を高めるために、例えば、スルホン酸、ルイス酸、プロトン酸、アルカリ金属、アルカリ土類金属などのドーパントをドーピングしたものを採用してもよい。ここで、導電性高分子層39は、抵抗率がより低いほうが好ましく、抵抗率が低いほど、横方向(面内方向)への通電性が向上し、発光層32に流れる電流の面内ばらつきを低減することが可能となり、輝度むらを低減することが可能となる。
【0044】
第2電極50の電極パターン40は、金属の粉末と有機バインダとを含む電極からなる。この種の金属としては、例えば、銀、金、銅などを採用することができる。これにより、有機エレクトロルミネッセンス素子は、第2電極50が、導電性透明酸化物により形成された薄膜の場合に比べて、第2電極50の電極パターン40の抵抗率およびシート抵抗を小さくすることが可能となり、輝度むらを低減することが可能となる。なお、第2電極50の電極パターン40の導電性材料としては、金属の代わりに、合金や、カーボンブラックなどを用いることも可能である。
【0045】
電極パターン40は、例えば、金属の粉末に有機バインダおよび有機溶剤を混合させたペースト(印刷インク)を、例えばスクリーン印刷法、グラビア印刷法などにより印刷して形成することができる。有機バインダとしては、例えば、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン、ポリアクリルニトリル、ポリビニルアセタール、ポリアミド、ポリイミド、ジアクリルフタレート樹脂、セルロース系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、その他の熱可塑性樹脂や、これらの樹脂を構成する単量体の2種以上の共重合体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0046】
なお、本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子では、第1電極20の膜厚を80〜200nm、発光層32の膜厚を60〜200nm、第2キャリア輸送層33の膜厚を5〜30nm、第2キャリア注入層34の膜厚を10〜60nm、導電性高分子層39の膜厚を200〜400nmにそれぞれ設定してあるが、これらの数値は一例であって、特に限定するものではない。
【0047】
電極パターン40は、図1〜図4に示すように、格子状(網状)に形成されており、複数(図2に示した例では、6×6=36)の開口部41(図2、図3、図4(a)参照)を有している。ここで、図2に示した電極パターン40は、各開口部41の各々の形状が正方形状である。要するに、図2に示した電極パターン40は、正方格子状に形成されている。
【0048】
第2電極50は、正方格子状の電極パターン40の寸法に関して、例えば、線幅L1(図3参照)を1μm〜100μm、高さH1(図3参照)を50nm〜100μm、ピッチP1(図3参照)を100μm〜2000μmとすればよい。ただし、第2電極50の電極パターン40の線幅L1、高さH1およびピッチP1それぞれの数値範囲は、特に限定するものではなく、素子部1の平面サイズに基づいて適宜設定すればよい。ここにおいて、第2電極50の電極パターン40の線幅L1については、発光層32で発光する光の利用効率の観点からは狭い方が好ましく、第2電極50の低抵抗化によって輝度むらを低減するという観点からは広い方が好ましいので、有機エレクトロルミネッセンス素子の平面サイズなどに基づいて適宜設定することが好ましい。また、第2電極50の電極パターン40の高さH1については、第2電極50の低抵抗化の観点、電極パターン40をスクリーン印刷法などの塗布法により形成する際の電極パターン40の材料の使用効率(材料使用効率)の観点、機能層30から放射される光の放射角の観点などから、100nm以上10μm以下が、より好ましい。
【0049】
また、本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子では、電極パターン40における各開口部41を、図1および図3に示したように、機能層30から離れるにつれて開口面積が徐々に大きくなる開口形状としてある。これにより、有機エレクトロルミネッセンス素子は、機能層30から放射される光の広がり角を大きくすることが可能になり、輝度むらを、より低減することが可能となる。また、有機エレクトロルミネッセンス素子は、第2電極50の電極パターン40での反射損失や吸収損失を低減することが可能となり、外部量子効率のより一層の向上を図ることが可能となる。
【0050】
電極パターン40を格子状の形状とする場合、各開口部41の各々の形状は多角形状であればよく、正方形状に限らず、例えば、長方形状や正三角形状や正六角形状の形状としてもよい。
【0051】
電極パターン40は、各開口部41の各々の形状が正三角形状の場合、三角格子状の形状となり、各開口部41の各々の形状が正六角形状の場合、六角格子状(ハニカム状)の形状となる。なお、電極パターン40は、格子状の形状に限らず、例えば、櫛形状の形状でもよい。
【0052】
また、電極パターン40は、例えば、図5に示すような平面形状としてもよい。すなわち、電極パターン40は、平面視において、直線状の細線部44の線幅を一定として、電極パターン40における周部から中心部に近づくにつれて隣り合う細線部44間の間隔が狭くなり開口部41の開口面積が小さくなる形状としてもよい。有機エレクトロルミネッセンス素子は、第2電極50の電極パターン40の平面形状を図5のような平面形状とすることにより、図2のような平面形状とした場合に比べて、第2電極50において第2端子部47(図1参照)からの距離が周部よりも遠い中央部での発光効率を向上させることが可能となり、外部量子効率の向上を図ることが可能となる。また、有機エレクトロルミネッセンス素子は、第2電極50の電極パターン40の平面形状を図5のような形状とすることにより、図2のような平面形状とした場合に比べて、機能層30のうち第1端子部および第2端子部47からの距離が近い周部での電流集中を抑制することが可能となるから、長寿命化を図ることが可能となる。
【0053】
また、第2電極50の電極パターン40は、例えば、図6に示すような平面形状としてもよい。すなわち、電極パターン40は、平面視において、電極パターン40における最外周にある4つの第1細線部42の線幅と、図6において左右方向の中央にある1つの第2細線部43の線幅とを、第1細線部42と第2細線部43との間にある細線部(第3細線部)44よりも幅広としてある。有機エレクトロルミネッセンス素子は、第2電極50の電極パターン40を図6のような平面形状とすることにより、図2のような平面形状の場合に比べて、第2電極50において第2端子部47(図1参照)からの距離が周部よりも遠い中央部での発光効率を向上させることが可能となり、外部量子効率の向上を図ることが可能となる。なお、電極パターン40は、図6のような平面形状とする場合、相対的に線幅の広い第1細線部42および第2細線部43の高さを第3細線部44の高さよりも高くすることにより、第1細線部42および第2細線部43それぞれの、より一層の低抵抗化を図ることが可能となる。
【0054】
絶縁膜60の材料としては、例えば、ポリイミド、ノボラック樹脂、エポキシ樹脂などを用いることができる。
【0055】
カバー基板である封止層としては、ガラス基板を用いているが、これに限らず、例えば、プラスチック板などを用いてもよい。ガラス基板の材料としては、例えば、ソーダライムガラス、無アルカリガラスなどを採用することができる。また、プラスチック板の材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルサルフォン、ポリカーボネートなどを採用することができる。なお、基板10が、ガラス基板により構成されている場合には、封止層を、基板10と同じ材料のガラス基板により構成することが好ましい。
【0056】
本実施形態では、封止層として、平板状のものを用いているが、これに限らず、基板10との対向面に、上述の素子部1を収納する収納凹所を形成したものを用い、上記対向面における収納凹所の周部を全周に亘って基板10側と接合するようにしてもよい。この場合は、別部材のフレーム部を用いる必要がなくなるという利点がある。一方、平板状の封止層と枠状のフレーム部とを別部材により構成している場合には、封止層に要求される光学的な物性(光透過率、屈折率など)と、フレーム部に要求される物性(ガスバリア性など)との両方の要求を各別に満たす材料を採用することが可能になるという利点がある。
【0057】
フレーム部と基板10の上記一表面側とを接合する第1接合材料としては、エポキシ樹脂を用いているが、これに限らず、例えば、アクリル樹脂などを採用してもよい。第1接合材料として用いるエポキシ樹脂やアクリル樹脂は、例えば、紫外線硬化型のものでもよいし、熱硬化型のものでもよい。また、第1接合材料として、エポキシ樹脂にフィラー(例えば、シリカ、アルミナなど)を含有させたものを用いてもよい。ここで、フレーム部は、基板10の上記一表面側に対して、フレーム部における基板10側との対向面を全周に亘って気密的に接合してある。また、フレーム部と封止層とを接合する第2接合材料としては、エポキシ樹脂を用いているが、これに限らず、例えば、アクリル樹脂、フリットガラスなどを採用してもよい。第2接合材料として用いるエポキシ樹脂やアクリル樹脂は、例えば、紫外線硬化型のものでもよいし、熱硬化型のものでもよい。また、第2接合材料として、エポキシ樹脂にフィラー(例えば、シリカ、アルミナなど)を含有させたものを用いてもよい。ここで、フレーム部は、封止層に対して、フレーム部における封止層との対向面を全周に亘って気密的に接合してある。
【0058】
ところで、本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子では、透明樹脂部100の材料である透光性樹脂として、第2電極50の導電性高分子層39の材料の屈折率以上の屈折率を有するものを用いるようにしている。このような透光性樹脂としては、例えば、屈折率が高くなるように調整されたイミド系樹脂などを用いることができる。
【0059】
また、透明樹脂部100は、材料としては、例えば、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリエチレンテレフタラート、フッ化物樹脂などの有機材料を採用することができる。ここで、透明樹脂部100は、例えば、インクジェット法などの印刷法により形成することができる。透明樹脂部100の材料は、有機材料に限らず、例えば、TiO、SiO、ZrO、Al、Ta、ZnO、Sb、ZrSiO、ゼオライトまたはそれらの多孔性物質やそれらを主成分とした無機材料を採用することができる。
【0060】
また、本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子では、レンズ状の透明樹脂部100の形状を半球状としてある。ここにおいて、透明樹脂部100の寸法は、電極パターン40の光取出部である開口部41の寸法に基づいて適宜設定すればよい。ただし、透明樹脂部100の半径をφ、電極パターン40における開口部41の開口幅をdとした場合、光取り出し効率の向上を図るうえでは、φ≧dであることが好ましい。
【0061】
ここで、透明樹脂部100の直径を正方形状の開口部41の1辺よりも長く且つ対角線の長さよりも短く設定し平面視において開口部41の中心と透明樹脂部100の中心とが一致するようにした場合は、図4(a)に示すように、開口部41において透明樹脂部100により覆われない領域が存在する。これに対して、透明樹脂部100の直径を正方形状の開口部41の対角線の長さと同じに設定し、平面視において開口部41の中心と透明樹脂部100の中心とが一致するようにした場合は、図4(b)に示すように、開口部41の全領域を透明樹脂部100により覆うことが可能となる。これにより、有機エレクトロルミネッセンス素子は、図4(a)の場合に比べて、図4(b)の場合のほうが、光取出し効率の向上を図ることが可能となる。正方形状の開口部41の全領域を半球状の透明樹脂部100により覆うには、透明樹脂部100の直径を、正方形状の開口部41の外接円の直径以上とすればよい。
【0062】
ところで、有機エレクトロルミネッセンス素子は、電極パターン40が、1つの櫛形状、2つの櫛形状を入り組ませた形状、ストライプ状の形状でもよく、これらの場合は、例えば、図7に示すように、レンズ状の透明樹脂部100をシリンドリカルレンズ状の形状としてもよい。また、電極パターン50が上述の図6のような形状で開口部41が細長の長方形状で有る場合も、レンズ状の透明樹脂部100をシリンドリカルレンズ状の形状としてもよい。また、開口部41の数も特に限定するものではなく、複数に限らず、1つでもよい。例えば、電極パターン40を1つの櫛形状の形状としたり、2つの櫛形状を入り組ませた形状(互いの櫛骨部どうしが対向し、互いの櫛歯部どうしが対向する形状)とした場合などは、開口部41の数を1つとすることが可能である。
【0063】
以上説明した本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子は、基板10と、基板10の上記一表面側に設けられた第1電極20と、基板10の上記一表面側で第1電極20に対向した第2電極50と、第1電極20と第2電極50との間にあり少なくとも発光層32を含む機能層30とを備えている。また、本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子は、第2電極50が、機能層30に接する導電性高分子層39と、導電性高分子層39における機能層30側とは反対側に位置し機能層30からの光の取り出し用の光取出部である開口部41を有する電極パターン40とを備えている。さらに、本実施形態の有機エレクトロルミネッセンスは、光取出部である開口部41に、導電性高分子層39の屈折率以上の屈折率を有する透明樹脂部100を設けてある。しかして、本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子では、輝度むらの低減を図ることが可能で且つ光取り出し効率の向上を図ることが可能となる。ここにおいて、有機エレクトロルミネッセンス素子は、透明樹脂部100をレンズ状の形状とすることにより、輝度むらの、より一層の低減を図ることが可能となるとともに、光取り出し効率の、より一層の向上を図ることが可能となる。
【0064】
また、本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子では、開口部41の開口形状が多角形状(例えば、正方形状、正三角形状、正六角形状など)であり、透明樹脂部100の形状に関して、基板10の厚み方向に沿った断面形状が、半円状となっている。これにより、有機エレクトロルミネッセンス素子は、透明樹脂部100において導電性高分子層39と接する面の中心から透明樹脂部100の表面(凸曲面よりなるレンズ面)に到達した光の反射を抑制することが可能となり、光取り出し効率の、より一層の向上を図ることが可能となる。透明樹脂部100の形状に関して、基板10の厚み方向に沿った断面形状は、半円状に限らず、半楕円状でもよく、この場合も、透明樹脂部100の表面に到達した光の反射を抑制することが可能となり、光取り出し効率の、より一層の向上を図ることが可能となる。
【0065】
また、この有機エレクトロルミネッセンス素子においては、第2電極50が陽極であり、機能層30が、発光層32よりも第2電極50側にあるホール注入層34を含んでいることが好ましい。これにより、有機エレクトロルミネッセンス素子では、発光層32へ第2キャリアであるホールを、より効率良く注入することが可能となり、結果的に外部量子効率の向上を図ることが可能となる。
【0066】
また、有機エレクトロルミネッセンス素子は、上述の封止層を備えることが好ましい。この場合、封止層における外面側(基板10側とは反対の面側)には、発光層32から放射された光の上記外面での反射を抑制する光取出し構造部(図示せず)を備えていることが好ましい。このような光取出し構造部としては、例えば、2次元周期構造を有した凹凸構造部が挙げられる。このような2次元周期構造の周期は、発光層32で発光する光の波長が例えば300〜800nmの範囲内にある場合、媒質内の波長をλ(真空中の波長を媒質の屈折率で除した値)とすれば、波長λの1/4〜10倍の範囲で適宜設定することが望ましい。このような凹凸構造部は、例えば、封止層の上記外面側に、例えば、熱インプリント法(熱ナノインプリント法)、光インプリント法(光ナノインプリント法)などのインプリント法により、予め形成することが可能である。また、封止層の材料によっては、封止層を射出成形により形成するようにし、射出成形時に適宜の金型を用いて、封止層に凹凸構造部を直接形成することも可能である。また、凹凸構造部は、封止層とは別部材により構成することも可能であり、例えば、プリズムシート(例えば、株式会社きもと製のライトアップ(登録商標)GM3のような光拡散フィルムなど)により構成することができる。
【0067】
本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子では、上述の光取出し構造部を備えることにより、発光層32から放射され封止層の上記外面側まで到達した光の反射ロスを低減でき、光取り出し効率の向上を図ることが可能となる。
【0068】
(実施形態2)
図8に示す本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子の基本構成は実施形態1と略同じであって、レンズ状の透明樹脂部100の直径が小さく、光取出部である開口部41(例えば、図2など参照)ごとに3×3個の透明樹脂部100を設けてある点などが相違する。なお、実施形態1と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0069】
ここにおいて、レンズ状の透明樹脂部100は、半球状の形状としてあり、透明樹脂部100の形状に関して、基板10の厚み方向に沿った断面形状は、半円状となっている。ただし、透明樹脂部100の形状に関して、基板10の厚み方向に沿った断面形状は、半円状に限らず、例えば、半楕円状でもよい。透明樹脂部100の寸法は、電極パターン40の光取出部である開口部41の寸法に基づいて適宜設定すればよい。ただし、透明樹脂部100の半径をφ、電極パターン40の高さをH1(図3参照)とした場合、光取り出し効率の向上を図るうえでは、φ>H1であることが好ましい。
【0070】
本実施形態の有機エレクトロルミネッセンスは、実施形態1と同様、第2電極50が、導電性高分子層39と、導電性高分子層39における機能層30側とは反対側に位置し機能層30からの光の取り出し用の光取出部である開口部41(図2など参照)を有する電極パターン40とを備え、光取出部である開口部41に、導電性高分子層39の屈折率以上の屈折率を有するレンズ状の透明樹脂部100を設けてある。これにより、本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子は、実施形態1と同様、輝度むらの低減を図ることが可能で且つ光取り出し効率の向上を図ることが可能となる。
【0071】
(実施形態3)
図9に示す本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子の基本構成は実施形態1と略同じであって、透明樹脂部100が、第2電極50の導電性高分子層39と同じ材料により形成されている点などが相違する。なお、実施形態1と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0072】
本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子では、透明樹脂部100が、導電性高分子層39と一体に形成されており、第2電極50に、導電性高分子層39における機能層30側とは反対側に位置し機能層30からの光の取り出し用の光取出部45が設けられている。この例では、導電性高分子層39と透明樹脂部100とを一体に備えた構造体において、電極パターン40の間の部位が光取出部45となる。
【0073】
導電性高分子層39と透明樹脂部100とを一体に備えた構造体の形成にあたっては、当該構造体の材料を含むペーストの粘度を高めておくことで、例えば、インクジェット法やスクリーン印刷法などによって形成することが可能である。
【0074】
本実施形態の有機エレクトロルミネッセンスは、第2電極50が、導電性高分子層39と、導電性高分子層39における機能層30側とは反対側に位置し機能層30からの光の取り出し用の光取出部45を有する電極パターン40とを備え、光取出部45に、導電性高分子層39の屈折率以上の屈折率を有する透明樹脂部100を設けてある。これにより、本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子は、実施形態1と同様、輝度むらの低減を図ることが可能で且つ光取り出し効率の向上を図ることが可能となる。ここにおいて、有機エレクトロルミネッセンス素子は、透明樹脂部100をレンズ状の形状とすることにより、輝度むらの、より一層の低減を図ることが可能となるとともに、光取り出し効率の、より一層の向上を図ることが可能となる。
【0075】
上述の各実施形態で説明した有機エレクトロルミネッセンス素子は、例えば、照明用の有機エレクトロルミネッセンス素子として好適に用いることができるが、照明用に限らず、他の用途に用いることも可能である。
【0076】
なお、上述の各実施形態において説明した各図は、模式的なものであり、各構成要素の大きさや厚さそれぞれの比が、必ずしも実際のものの寸法比を反映しているとは限らない。
【符号の説明】
【0077】
10 基板
20 第1電極
30 機能層
32 発光層
39 導電性高分子層
40 電極パターン
41 開口部(光取出部)
45 光取出部
50 第2電極
100 透明樹脂部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、前記基板の一表面側に設けられた第1電極と、前記基板の前記一表面側で前記第1電極に対向した第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間にあり少なくとも発光層を含む機能層とを備えた有機エレクトロルミネッセンス素子であって、前記第2電極が、前記機能層に接する導電性高分子層と、前記導電性高分子層における前記機能層側とは反対側に位置し前記機能層からの光の取り出し用の光取出部を有する電極パターンとを備え、前記光取出部に、前記導電性高分子層の屈折率以上の屈折率を有する透明樹脂部を設けてなることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項2】
前記透明樹脂部は、レンズ状に形成されてなることを特徴とする請求項1記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項3】
前記電極パターンは、前記光取出部が開口部であり、前記開口部の開口形状が多角形状であり、前記透明樹脂部は、前記基板の厚み方向に沿った断面形状が、半円状もしくは半楕円状であることを特徴とする請求項2記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項4】
前記透明樹脂部は、平面視において前記開口部を塞いでいることを特徴とする請求項3記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−8625(P2013−8625A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−141712(P2011−141712)
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】