説明

有機エレクトロルミネッセンス表示装置およびその製造方法

【課題】発光画素面積が大きい有機EL表示装置およびそのような有機EL表示装置が効率的に得られる製造方法を提供する。
【解決手段】支持基板上に、補助配線層が電気接続された下部電極と、有機発光媒体と、対向電極とを順次に設けるとともに、当該下部電極および対向電極をXYマトリックス状に配設した有機エレクトロルミネッセンス表示装置において、補助配線層と、下部電極とを異なる面に配線するとともに、補助配線層と下部電極とを、非発光部分において電気接続するか、あるいは、補助配線層と、下部電極とを同一面に配線し、補助配線層と、下部電極とを非発光部分において電気接続するとともに、補助配線層と下部電極との間であって、電気接続部を除いた箇所に電気絶縁層を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、有機エレクトロルミネッセンス表示装置(以下、有機EL表示装置と称する場合がある。)およびその製造方法に関する。
さらに詳しくは、民生用および工業用の表示機器(ディスプレイ)に好適なように、発光画素面積が大きい有機EL表示装置およびそのような有機EL表示装置が効率的に得られる製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電極間に発光層を挟持して構成したEL素子を、マトリクス状に配した走査電極線や信号電極線を介して駆動(発光)させるEL表示装置が提案されているが、発光画素の高精細化のために、走査電極線等の配線抵抗による電圧降下や、応答遅延を防止することが要求されている。
このため、第17図に示すように、ガラス基板101上に、第1透明電極(下部電極)102と、無機発光層104と、第2電極(対抗電極)105とを順次に積層した無機EL素子において、抵抗減少用の補助電極103と、第1透明電極102とを同一面に網目状に配線するとともに、第1透明電極102の側端および非発光部分領域にて電気接続した無機EL素子が提案されている。
この種の補助電極を備えたEL素子に関するものとしては、特許文献1に開示されたEL素子がある。
また、特許文献2には、第18図に示すように、基板201上に、いわゆる単純マトリスク状に形成した複数の透明電極202の周囲(非発光部分)に、各透明電極202の四辺と重なるようにして金属電極203を形成して電気接続し、この金属電極203を絶縁層206で被覆することにより、金属電極203によって透明電極202の配線抵抗値を抑制するようにした有機EL素子が提案されている。
一方、特許文献3には、第19図に示すように、支持基板301上に平坦化層306、下部電極302、有機発光層304および対向電極305を順次積層してなる有機EL素子において、下部電極302の下面端部で電気接続する補助配線層303を形成し、この補助配線層303を平坦化層306内に埋設した有機EL表示装置が開示されている。
しかしながら、第17図に示すEL素子は、第1透明電極(下部電極)と補助電極が同一平面に配線され、両者が重なった状態で電気接続されるとともに、この透明電極及び補助電極上に直接発光層が積層されているため、透明電極と補助電極の膜厚に起因した段差が生ずる箇所が多かった。このため、対向電極と下部電極の短絡によって、選択された画素以外の画素が発光するというクロストークが発生したり、対向電極の断線によって選択画素が発光しないという非発光ラインの発生等の表示欠陥が生じやすくなるという問題が見られた。
また、透明電極と補助電極とが同一平面内に形成してあるため、補助電極自身の所要断面積が小さくなり、発光画素の高精細化に十分対応することができなかった。特に、発光画素を高精細化して、例えば、透明電極の抵抗値が1kΩ以上の値となった場合には、補助電極の幅や膜厚を変更して、当該透明電極の抵抗値を低い値、例えば100Ω以下の値に調整することが容易でなかった。
さらに、透明電極と補助電極とを同一平面内に形成してあるため、透明電極と補助電極とが位置ずれした場合に、位置ずれした補助電極を介して隣接する透明電極同士が短絡して表示欠陥が生じることにより、製造上の歩留まりが低くなるという問題が見られた。
また、第18図に示した有機EL素子の場合、金属電極が絶縁層によって被覆されているため、金属電極の位置ずれによって透明電極が短絡するという問題は回避できたが、透明電極と同一平面上に配線された金属電極が、透明電極の端辺に重なるように形成されているため、透明電極と金属電極との膜厚や積層高さに起因する段差がより顕著になり、透明電極と対向電極との間で短絡が発生し、第17図に示したEL素子の場合よりも、クロストークや非発光ラインの発生等の表示欠陥がさらに生じやすくなるという問題が見られた。
しかも、かかる有機EL素子の場合、金属電極は、透明電極と同一平面上で、かつ、EL素子の発光領域部分に影響を与えない透明電極の四辺部分のみで電気接続されるように構成してあるが、透明電極を金属電極が覆っているため、金属電極の所要断面積を大きくすると、発光面積が減少するという問題がみられた。その結果、発光画素を高精細化すると発光輝度が十分に得られないという問題があった。
一方、特許文献3に開示された有機EL表示装置は、補助配線層が平坦化層等の内部に埋設されているため、補助配線層の膜厚に起因した段差については問題とならず、製造上の歩留まりが高く、また、クロストークや非発光ラインの発生等の表示欠陥が少ないという利点がある。しかしながら、補助配線層と下部電極との電気接続部が、下部電極の側端に設けられているため、補助電極の所要断面積を大きくすることが困難であり、大きくしようとすると、発光画素面積が減少するという問題が見られた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−180974号公報
【特許文献2】特開平11−31590号公報
【特許文献3】WO97/3447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明の発明者らは上記問題を鋭意検討したところ、補助配線層を、部分的に下部電極と異なる面に配線するとともに、補助配線層を、有機EL表示装置における非発光部分において電気接続することにより、また、補助配線層と、下部電極とを同一面に配線した場合であっても、下部電極と補助配線層の間に電気絶縁層を設けて、非発光部分において電気接続することにより、それぞれ従来の問題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明の目的は、発光画素面積が大きく、補助配線層の膜厚による表示欠陥発生等の悪影響を排除し、しかも補助配線層の所要断面積を大きくすることができるとともに、発光輝度が高い有機EL表示装置を提供することにある。
また、本発明の別の目的は、発光画素面積が大きく、補助配線層の膜厚による表示欠陥の発生等の悪影響を排した有機EL表示装置を、歩留まりよく製造することができる製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[1] 本発明の一つの態様(第1の発明)は、支持基板上に、補助配線層が電気接続された下部電極と、有機発光媒体と、対向電極とを順次に設けるとともに、当該下部電極および対向電極をXYマトリックス状に配設した有機EL表示装置において、補助配線層と下部電極とを異なる面に配線するとともに、補助配線層と下部電極とを有機EL表示装置の非発光部分において電気接続した有機EL表示装置である。
このように構成することにより、電気接続部と発光部分とが重ならないため、下部電極側から外部に取り出す光量を多くすることができ、結果として、有機EL表示装置の発光輝度の値を大きくすることができる。
また、補助配線層と下部電極とを、垂直方向において異なる面に配線しているため、容易に平坦化することができ、補助配線層の膜厚に起因した短絡発生等の悪影響を排除することができる。
さらには、隣接する下部電極間、または下部電極と対向電極との短絡の問題も生じないため、補助配線層の厚さ、または幅を広げることができ、所要断面積を大きくすることができる。また、有機EL表示装置の駆動電圧(消費電力)を小さくすることができ、かつ、クロストークや非発光ラインの発生等の表示欠陥を低減することができる。
[2] また、第1の発明の有機EL表示装置を構成するにあたり、補助配線層と下部電極との間に、電気絶縁層を設けることが好ましい。
このように構成すると、補助配線層を電気絶縁層内に埋設することができるため、補助配線層を設けた場合であっても表面を平坦化することができる。したがって、隣接する下部電極同士、または下部電極と対向電極との間の電気絶縁性を十分に確保することができる。
[3] また、第1の発明の有機EL表示装置を構成するにあたり、補助配線層と下部電極とを、有機EL表示装置の非発光部分に設けたビアホールを介して電気接続することが好ましい。
このように構成すると、補助電極の厚みの段差に起因して、下部電極が断線することが少なくなり、補助電極と下部電極とを確実に電気接続することができる。
[4] また、本発明の他の態様(第2の発明)は、支持基板上に、補助配線層が電気接続された下部電極と、有機発光媒体と、対向電極とを順次に設けるとともに、当該下部電極および対向電極をXYマトリックス状に配設した有機EL表示装置において、補助配線層と、下部電極とを同一面に配線し、非発光部分において補助配線層と下部電極とを電気接続部を形成して電気接続するとともに、補助配線層と下部電極との間であって、電気接続部を除いた箇所に電気絶縁層を設けた有機EL表示装置である。
このように構成することにより、補助配線層および下部電極の電気接続部が、発光部分と重なっていないため、下部電極側から外部に取り出す光量を多くすることができ、結果として、有機EL表示装置の発光輝度の値を大きくすることができる。
また、同一平面に配線した下部電極と補助配線層の間には、電気接続部を除いて電気絶縁層が形成してあるので、下部電極と補助配線層の膜厚に起因する段差が電気絶縁層によって埋められ、対向電極と、下部電極および補助配線層の短絡や、対向電極の断線が生じることがなくなる。したがって、クロストークや非発光ラインの発生等の表示欠陥を低減することができる。
[5] また、第1の発明および第2の発明の有機EL表示装置を構成するにあたり、電気絶縁層の表面が平坦化してあることが好ましい。
このように構成すると、補助配線層の膜厚が問題とならず、製造上の歩留まりが向上して、クロストークや非発光ラインの発生等の表示欠陥をより少なくすることができる。
[6] また、第1の発明および第2の発明の有機EL表示装置を構成するにあたり、補助配線層と下部電極とを電気接続するためのビアホールの側面が、順テーパー状としてあることが好ましい。
このように構成すると、下部電極が電気絶縁層のエッジで断線することが少なくなり、より確実に補助配線層と電気接続することができる。また、このように構成すると、間口が広いために、補助配線層と下部電極との電気接続箇所における接触面積を大きくし、密着性を高めることができる。さらには、ビアホール内部に対して、間口が広い部分から、例えば導電材料等を容易に充填することができ、製造することも容易である。
[7] また、第1の発明および第2の発明の有機EL表示装置を構成するにあたり、電気絶縁層のビアホール内部に、下部電極を延設して電気接続してあることが好ましい。
例えば、下部電極または補助配線層と同様の導電性材料をビアホール内部に充填して、下部電極を延設することにより、下部電極と補助配線層との間の電気接続がより確実となる。
[8] また、本発明のさらに別の態様(第3の発明)は、支持基板上に、補助配線層が電気接続された下部電極と、有機発光媒体と、対向電極とを順次に設け、当該下部電極および対向電極をXYマトリックス状に配設した有機EL表示装置の製造方法において、
補助配線層と、下部電極とを部分的に異なる面に配線する工程と、
補助配線層と、下部電極とを非発光部分において電気接続部を形成して電気接続する工程と、
を含むことを特徴とする有機EL表示装置の製造方法である。
このように実施することにより、補助配線層および下部電極の電気接続部を、有機EL表示装置の発光部分以外に容易に設けることができる。また、補助配線層と下部電極とを、それぞれ垂直方向に異なる面に配線しているため、容易に平坦化することができる。しかも、補助配線層の所要断面積を大きくすることができるため、有機EL表示装置の駆動電圧(消費電力)を小さくすることができ、かつ、クロストークや非発光ラインの発生等の表示欠陥をより低減することができる。
[9] また、第3の発明の有機EL表示装置の製造方法を実施するにあたり、下部電極と補助配線層との間に電気絶縁層を設ける工程を含むことが好ましい。
このように実施すると、補助配線層を電気絶縁層内に埋設して、平坦化することができるとともに、隣接する下部電極との電気絶縁性を十分に確保することができる。
[10] また、第3の発明の有機EL表示装置の製造方法を実施するにあたり、有機EL表示装置の非発光部分にビアホールを設ける工程と、このビアホールを介して、補助配線層と下部電極とを電気接続する工程と、を含むことが好ましい。
このように実施すると、補助電極の厚みの段差により下部電極が断線することなく、補助電極と下部電極を確実に電気接続することができる。
[11] また、本発明のさらに別の態様(第4の発明)は、支持基板上に、補助配線層が電気接続された下部電極と、有機発光媒体と、対向電極とを順次に設け、当該下部電極および対向電極をXYマトリックス状に配設した有機EL表示装置の製造方法において、
補助配線層と、下部電極とを同一面に配線する工程と、
補助配線層と、下部電極とを非発光部分において電気接続部を形成して電気接続する工程と、
補助配線層と下部電極の間であって、電気接続部を除いた箇所に電気絶縁層を設ける工程と、
を含むことを特徴とする有機EL表示装置の製造方法である。
このように実施することにより、補助配線層および下部電極の電気接続部を、発光部分以外に容易に設けることができる。また、下部電極と補助配線層との間に電気絶縁層を設けてあるので、補助配線層を下部電極と同一面に配線したとしても、対向電極との電気絶縁性を十分に確保することができる。また、このように実施することにより、下部電極と補助配線層の膜厚に起因する段差を電気絶縁層で埋めて平坦化することができるため、補助配線層の所要断面積を大きすることもできる。その結果、クロストークや非発光ラインの発生等の表示欠陥を低減することができる。
[12] また、第3の発明および第4の発明の有機EL表示装置の製造方法を実施するにあたり、電気絶縁層の表面を平坦化する工程を含むことが好ましい。
このように実施すると、補助配線層の膜厚が問題とならず、製造上の歩留まりが向上して、クロストークや非発光ラインの発生等の表示欠陥をより少なくすることができる。
[13] また、第3の発明および第4の発明の有機EL表示装置の製造方法を実施するにあたり、ビアホールの側面を順テーパー状とする工程を含むことが好ましい。
このように実施すると、下部電極が電気絶縁層のエッジで断線することがより少なくなる。また、このように実施すると、蒸着法等を用いてビアホール内部に導電材料を容易に充填することができる。
[14] また、第3の発明および第4の発明の有機EL表示装置の製造方法を実施するにあたり、電気絶縁層のビアホールの内部に、下部電極を延設し、下部電極と補助配線層とを電気接続する工程を含むことが好ましい。
例えば、下部電極または補助配線層と同様の導電性材料をビアホールの内部に充填することによって、下部電極を延設することにより、下部電極の断線を少なくし、下部電極と補助配線層との接続がより確実となり、結果として、製造の歩留まりを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】第1の実施形態における有機EL表示装置を模式的に示す概略説明図であり、(a)は平面図、(b)はX−X線断面図、(c)はY−Y線断面図である。
【図2】第1の実施形態における有機EL表示装置の他の形態を模式的に示した発光部分の断面図である。
【図3】第1の実施形態における有機EL表示装置の他の形態を模式的に示す概略説明図であり、(a)は平面図、(b)はX−X線断面図、(c)はY−Y線断面図である。
【図4】第1の実施形態における有機EL表示装置のさらに他の形態を模式的に示した非発光部分の断面図である。
【図5】第2の実施形態における有機EL表示装置を模式的に示した断面図であり、(a)は非発光部分、(b)は発光部分の断面図である。
【図6】第2の実施形態における有機EL表示装置の他の形態をを模式的に示した断面図であり、(a)は非発光部分、(b)は発光部分の断面図である。
【図7】第2の実施形態におけるさらに有機EL表示装置のさらに他の形態を模式的に示した断面図であり、(a)は非発光部分、(b)は発光部分の断面図である。
【図8】第3の実施形態における製造方法の補助配線層形成工程における有機EL表示装置を模式的に示す概略説明図であり、(a)は平面図、(b)はX−X線断面図である。
【図9】第3の実施形態における製造方法の電気絶縁層形成工程における有機EL表示装置を模式的に示す概略平面図である。
【図10】第3の実施形態における製造方法の電気絶縁層形成工程における有機EL表示装置を模式的に示す概略平面図である。
【図11】第3の実施形態における製造方法の下部電極形成工程における有機EL表示装置を模式的に示す概略平面図である。
【図12】第3の実施形態における製造方法の下部電極形成工程における有機EL表示装置を模式的に示す概略平面図である。
【図13】第3の実施形態における製造方法の下部電極形成工程における有機EL表示装置を模式的に示す概略説明図であり、(a)は平面図、(b)はX−X線断面図である。
【図14】第3の実施形態における製造方法の有機発光媒体および対向電極形成工程における有機EL表示装置を模式的に示す概略平面図である。
【図15】第5の実施形態における有機EL表示装置の電気絶縁層を模式的に示す概略説明図であり、(a)は平面図、(b)はX−X線断面図である。
【図16】第6の実施形態における有機EL表示装置の補助配線パターンを模式的に示す概略平面図である。
【図17】従来の補助電極を備えたEL素子を模式的に示す概略説明図であり、(a)は補助電極と第1電極の積層部の断面図、(b)は補助電極の配線部の断面図である。
【図18】従来の透明電極の周囲に金属電極を備えた有機EL素子を模式的に示す概略断面図である。
【図19】従来の補助配線層を備えた有機EL表示装置を模式的に示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について具体的に説明する。また、参照する図面は、この発明が理解できる程度に各構成成分の大きさ、形状および配置関係を概略的に示してあるに過ぎない。したがって、この発明は図示例にのみ限定されるものではない。
なお、本発明の有機EL表示装置において、支持基板上に積層される下部電極、有機発光媒体、対向電極および電気絶縁層は、特に平坦化処理を行わない場合、各層の表面は滑らかに凹凸、隆起することがあるが、図面上の理解を容易にするため、適宜、各層を平坦化した状態で示す場合がある。
【0008】
[第1の実施形態]
まず、第1図を参照して、本発明の有機EL表示装置における第1の実施形態について説明する。第1図は、本発明の有機EL表示装置の第1の実施形態を模式的に示したものであり、(a)は平面図、(b)はX−X線断面図、(c)はY−Y線断面図である。
【0009】
1.基本的形態
第1図に示す本実施形態の有機EL表示装置は、支持基板1上に、下部電極(透明電極)2、有機発光層を含む有機層(以下、有機発光媒体という)4、および対向電極5をこの順に積層してなる有機EL表示装置であり、下部電極2と対向電極5がXYマトリックスを形成し、下部電極2と対向電極5の各交差部分が有機EL表示装置の発光部分(発光画素部分)8を構成している。
そして、支持基板1と下部電極2の間の対向電極5の下部に相当する部分に電気絶縁層6が設けてあり(第1図(c)参照)、この電気絶縁層6内に、下部電極2の抵抗値を減少させるための補助配線層3が埋設して配線してある。
【0010】
本実施形態における補助配線層3は、電気絶縁層6内に埋設されることによって下部電極2と部分的に異なる面に配線され、かつ、有機EL表示装置の発光部分(発光画素部分)8と重ならないように非発光部に配線されるとともに、この非発光部において下部電極2に対して電気接続されて、下部電極2の抵抗値を減少させるように構成してある。
ここで、発光部分(発光画素部分)8とは、下部電極2と対向電極5とが交差する領域であり、かつ、有機発光媒体4に正孔または電子を注入できる領域である。また、非発光部分とは、下部電極2と対向電極5が交差していない領域であるか、または、下部電極2と対向電極5とが交差するものの、有機発光媒体4に正孔または電子を注入することができない領域である。
【0011】
また、補助配線層3は、この非発光部、すなわち、各下部電極2の間に下部電極2と平行に配線され、対向電極5の下部に相当する部分は電気絶縁層6に埋設されるとともに(第1図(c)参照)、この下部電極2との平行配線部から各対向電極5の間隙に延びる配線部が対向電極5と平行に配線されていることを特徴としている。そして、補助配線層3は、対向電極5の間隙部において、下部電極2と電気接続している構成である(第1図(b)参照)。
また、電気絶縁層6は、支持基板1と下部電極2の間に形成される平坦化された絶縁層であり、内部に補助配線層3を埋設していることを特徴としている。
なお、電気絶縁層6は、第1図に示す補助配線層3のみを埋設する形態の他、第2図に示すように、表面に下部電極2を埋設し、下部電極2とともに表面を平坦化するように構成してもよい。このように構成すると、下部電極2の厚みに起因した段差も電気絶縁層6に埋設されることによって緩和され、対向電極5の断線や下部電極2と対向電極5との間の短絡もなくなる。すなわち、断線や、クロストーク等の表示欠陥をより低減させることができる。
【0012】
さらに、電気絶縁層6の形態としては、第3図に示すように、下部電極2と補助配線層3との間に、ほぼ全面にわたって電気絶縁層6を形成し、補助配線層3をすべて電気絶縁層6に埋設することも好ましい。
このように構成すると、補助配線層3は、電気絶縁層6に埋設されることになり、すべての部分が下部電極2とは異なる面に配線されることになる。
なお、この場合、補助配線層3と下部電極2との間にすべて電気絶縁層6が存在することになるので、補助配線層3を下部電極2に電気接続するために、電気絶縁層6の有機EL表示装置の発光部分8と重ならない非発光部分にビアホール7を形成することができる。したがって、このビアホール7を介して補助配線層3と下部電極2を電気接続させることができる(第3図(b)参照)。
なお、このように構成しても、第1図の場合と同様に、下部電極2の抵抗値を有効に減少させることができる。
【0013】
また、電気絶縁層6に形成するビアホール7は、第3図に示すように、対向電極5の間隙部に位置する電気絶縁層6と下部電極2とを連通する開口部となっている。そのため、ビアホール7内に、下部電極2と補助配線層3とを導通する導通部2aを配設することにより、下部電極2と補助配線層3とを電気的に接続することができる。
また、導通部2aとしては、下部電極2と補助配線層3とを電気的に接続するものであれば、部材の種類は特に制限されるものではなく、例えば、第3図(b)に示すように、スルーホール7に導電性部材を充填して導通部2aを形成してもよい。また、第4図に示すように、下部電極2の下面を延設することにより、下部電極2そのものを導通部2aとしてもよい。
なお、このようにビアホール7を設けることにより、補助配線層3の厚みの段差によって、下部電極2に断線が生ずることが少なくなる。したがって、下部電極2と補助配線層3とを確実に電気接続することができ、表示領域の輝度分布がより均一化するとともに、製造歩留まりを高くすることができる。
【0014】
以上のような構成からなる本実施形態の有機EL表示装置によれば、補助配線層3および下部電極2の電気接続部が、有機EL表示装置における発光部分8と重なることがない。したがって、下部電極側から外部に取り出す光量を多くすることができ、結果として、有機EL表示装置の発光輝度の値を大きくすることができる。
また、補助配線層3と下部電極2との間には電気絶縁層6が設けてあるため、補助配線層3を電気絶縁層6内に埋設することができる。したがって、補助配線層3と下部電極2とが、それぞれ垂直方向に異なる面に配線される部分を有するため、補助配線層3が下部電極2の上に突出することがなくなり、装置各層を容易に平坦化することができる。また、このように構成することにより、補助配線層3の膜厚も問題とならない。
よって、このように構成することにより、製造上の歩留まりが向上して、クロストークや非発光ラインの発生等の表示欠陥をより少なくすることができる。
さらに、補助配線層3を埋設した電気絶縁層6を設けることにより、隣接する下部電極2と補助配線層3や下部電極2同士の電気絶縁性を十分に確保し、短絡等も生じず、補助配線層3の所要断面積を大きくすることができる。
【0015】
2.構成要素
以下、本実施形態の有機EL表示装置を、その構成要素ごとにさらに具体的に説明する。
(1)下部電極
本実施形態では、下部電極は補助配線層と電気的に接続している。そして、補助配線層には、導電性の高い材料、すなわち低抵抗材料が使用されるため、下部電極層において導電性の高い材料を使用することは必須ではない。なお、下部電極側から外部へ光を取り出す場合は、発光波長において、光透過率が30%以上となるような導電材料を使用することが好ましい。
また、下部電極層は、有機EL素子の構成に対応して、陽極あるいは陰極となるが、下部電極層が陽極の場合は、正孔注入性に優れる高仕事関数(仕事関数4.0eV以上)の金属などの導電性物質を用いることが好ましい。また、陽極においては、抵抗率は問われないため、半導体を用いることもできる。具体的には、たとえば、金(Au),ニッケル(Ni),パラジウム(Pd),プラチナ(Pt)などの金属、In−Sn−O,ZnO:Al(ZnOにAlを添加した混合物),In−Zn−O,SnO2:Sb(SnO2にSbを添加した混合物)などの導電性の酸化物、α−ケイ素,ポリシリコン,α−炭化ケイ素,α−炭素などの半導体を好適に用いることができる。更には、有機半導体である全共役系ポリマーも用いることができる。このようなポリマーとして、具体的には、ポリアニリン、ポリアリーレンビニレン、ポリチェニレンビニレン、ポリアセチレン、ポリピロールなどを好適に用いることがきる。
一方、下部電極層が陰極の場合は、電子注入性に優れる低仕事関数(仕事関数4.0eV以下)の金属、合金などの導電性物質を用いることが好ましい。また、陰極においても、抵抗率は問われないため、半導体を用いることもできる。
また、陰極に使用する合金としては、アルカリ土類金属、アルカリ金属または希土類金属を微量含有するもの、例えば、Al−Li,Al−Mg,Al−Ba,Al−Ca,Al−Sc,Al−Ybなどを好適に用いることができる。更には、BaO,SrO,MgOなどのアルカリ土類金属酸化物を超薄膜(20nm程度以下)にしたものも陰極として用いることができる。また、陰極の構成材料として、LaB6やTiNなどの低仕事関数のホウ化金属や、チッ化金属や、あるいは、低仕事関数の希土類シリサイドを用いることも好ましく、さらに有機発光媒体と前記金属との混合物を用いることも好ましい。
また、本実施形態においては、下部電極層は抵抗率が高くてもよいため、膜厚を薄くすることができる。その場合、膜厚を300nm以下の値、特に2〜200nmの範囲内の値とするのが好ましい。この場合において、膜厚が2〜10nmの範囲では、連続層が形成されない可能性がある。しかしながら、下部電極層と補助配線層を広い面積で密着させるような場合には、有機EL素子の動作上、支障がないことが判明している。
一方、膜厚が300nmより厚い場合には、下部電極層の段差部分において対向電極が断線したり、下部電極と対向電極が短絡する場合がある。
なお、本実施形態においては、下部電極は公知の方法により形成することができる。例えば、スパッタリング法により製膜し、その後フォトリソグラフィー法によりパターニングすることにより下部電極は形成される。
【0016】
(2)補助配線層
本実施形態において、補助配線層は、下部電極の抵抗値を減少させる補助電線としての機能を有する。このため、低い抵抗値を有するとともに、下部電極と電気的に接続されている必要がある。
ここで、電気的接続とは、補助配線層と対向電極とに電源が接続された場合、有機EL表示装置に電圧が印加されるように補助配線層と下部電極とが接続されていることを意味する。したがって、補助配線層は、有機EL表示装置に供給される電流が流れるものであり、低い抵抗値を有するものが好ましい。すなわち、このような補助配線層を備えることにより、下部電極層の抵抗値を極めて低くすることができる。
また、本実施形態に用いる補助配線層としては、抵抗値が低いものであれば、特に制限はないが、たとえば、この補助配線層により低抵抗化された電極ライン(例えば、信号電極線)の抵抗値を5kΩ以下とするような金属線であることが好ましい。
この理由は、補助配線層と組み合わせた電極ラインの抵抗値が5kΩを超えると、画素の発光輝度ムラ、または有機EL表示装置の発光輝度ムラを発生する場合があるためである。
なお、テレビ画像表示を行う場合は、補助配線層と組み合わせて、電極ラインの抵抗値を1kΩ以下の値とすることがさらに好ましい。
また、信号電極線の長さが10cm程度の場合、信号電極線の単位長さ(1cm当たりの長さ)あたりの抵抗値としては、100Ω以下の値であることが好ましい。
また、補助配線層の抵抗率を、5×10-4Ω・cm以下の値とすることが好ましい。この理由は、補助配線層の抵抗率が5×10-4Ω・cmを超えると、補助配線層を設けることによる信号電極線の抵抗値の減少効果が期待できない場合があるためである。
このような補助配線層に用いられる金属としては、たとえばタングステン(W),アルミニウム(Al),銅(Cu),銀(Ag),モリブデン(Mo),タンタル(Ta),金(Au),クロム(Cr),チタン(Ti),ネオジウム(Nd),およびこれらの合金を挙げることができる。
また、これらの合金の具体例としては、Mo−W、Ta−W、Ta−Mo、Al−Ta、Al−Ti、Al−Nd、Al−Zr等の合金を挙げることができる。
更に、補助配線層の構成材料としては、金属とケイ素の化合物である、TiSi2,ZrSi2,HfSi2,VSi2,NbSi2,TaSi2,CrSi2,WSi2,CoSi2,NiSi2,PtSi,Pd2Siなども好ましい。また、これらの金属やケイ素化合物をそれぞれ積層した構成であってもよい。
なお、本実施形態に用いられる補助配線層に好ましく用いられる金属の抵抗率を表1に示す。
【0017】
【表1】

【0018】
また、補助配線層は、金属膜からなる構成とすることが、成膜が容易となることから好ましい。この場合、かかる金属膜は、単層膜であっても良いが、膜の安定性を高める上で二種以上の多層膜とすることも好ましい。
このような多層膜としては、上記金属またはそれらの合金を用いて形成することができる。たとえば、三層の場合、Ta層とCu層とTa層、およびTa層とAl層とTa層、二層の場合、Al層とTa層、Cr層とAu層、Cr層とAl層、およびAl層とMo層の組合わせを挙げることができる。
ここで、膜の安定性とは、低抵抗率を維持しうるとともに、エッチングの際、その処理に用いる液等により腐食されにくい性質をいう。たとえば、補助配線層をCuやAgで構成した場合には、補助配線層の抵抗率自体は低いものの、腐食しやすい場合がある。それに対して、CuやAgからなる金属膜の上部および下部、あるいはいずれか一方に、耐食性に優れた金属、たとえばTa,Cr,Mo等の膜を積層することにより、補助配線層の安定性を高めることができる。
また、補助配線層を金属膜として構成する場合、その膜厚を100nm〜数10μmの範囲内の値とすることが好ましく、特に好ましくは200nm〜5μmの範囲内の値とすることである。
この理由は、かかる膜厚が100nm未満となると、抵抗値が大きくなり、補助配線層として好ましくなく、一方、かかる膜厚が数10μmを超えると平坦化しにくくなり、有機EL表示装置の欠陥が生じるおそれがあるためである。
また、金属膜の幅(短辺の長さ)は、有機EL表示装置の精細度によるが、例えば、2μm〜1,000μmの範囲内の値とすることが好ましく、5μm〜300μmの範囲内の値とすることがより好ましい。
この理由は、かかる金属膜の幅が2μm未満となると、補助配線層の抵抗が大きくなる場合があるであり、一方、かかる金属膜の幅が100μmを超えると、EL光の外部への取り出しを妨害する場合があるためである。
【0019】
(3)電気絶縁層
電気絶縁層は、下部電極と補助配線層とを電気絶縁するとともに、補助配線層のパターン縞の凸部を緩和するために設けられている。この電気絶縁層は、絶縁性材料からなる層であり、表面が平坦化してあることが好ましい。そして、電気絶縁層における平坦度は0.2μm以下の値であることが好ましい。
また、電気絶縁層の表面粗さは、発光欠陥の発生を抑制するため、10nm以下の値とすることが好ましい。
ここで、電気絶縁層の平坦度は、触針式膜厚計あるいは走査型原子間力顕微鏡等で測定される補助配線層におけるパターン縞の凹凸量と定義することができる。
一方、電気絶縁層の表面粗さは、電気絶縁層自体の表面における粗さ(凹凸)であり、500μm角〜1mm角の面積において触針式膜厚計等で測定される表面凹凸値の2乗平均値で定義される値である。
また、電気絶縁層の構成材料としては、所定の電気絶縁性を有する材料であれば、特に種類の制限はないが、例えば、2MV/cm以上の絶縁耐圧を有する材料が好ましい。
また、電気絶縁層は、下部電極を成膜する際の温度に耐えられる耐熱性を有する構成材料が好ましい。
また、電気絶縁層は、補助配線層を埋設する際や、補助配線層と下部電極とを電気的に接続するためのビアホールの加工を行う際に、微細なビアホールを形成するためにエッチング加工ができる構成材料であることが好ましい。
したがって、このような構成材料としては、たとえば透明性ポリマー、酸化物、ガラスなどを挙げることができる。
より具体的に言えば、好ましい透明性ポリマーとしては、ポリイミド,フッ素化ポリイミド,フッ素系樹脂,ポリアクリレート,ポリキノリン,ポリオキサジアゾール,環状構造を有するポリオレフィン,ポリアリレート,ポリカーボネート,ポリサルフォン,ラダー型ポリシロキサン等が挙げられる。
また、好ましい酸化物としては、SiO2,Al23,Ta23,Si34,フッ素添加SiO2,MgO,YbO3などを上記エッチング加工が可能な材料の好適例として挙げることができる。
さらに上述した電気絶縁層の構成材料に加えて、感光性を有するフォトレジストおよびその硬化物を挙げることができる。
ただし、有機EL素子は、水、酸素等により劣化しやすいため、含水量が0.1重量%以下、およびガス透過係数(JISK7126)が1×10-13cc・cm/cm2・s・cmHg以下の電気絶縁層材料を採用することが好ましい。よって、例えば無機酸化物、無機窒化物または両者の組成物が挙げられる。
また、電気絶縁層の膜厚としては、補助配線層を埋設することができるならば特に制限はないが、たとえば補助配線層の膜厚よりも厚く、かつ、10μm以下の値であることが好ましい。
【0020】
(4)その他の構成要素
本実施形態の有機EL表示装置は、下部電極、補助配線層および電気絶縁層の他に、有機発光媒体、対向電極および支持基板を構成要素として含む。
このような有機EL表示装置において、下部電極と対向電極との間に介在する有機発光媒体は、少なくとも有機発光層を含むものであるが、有機発光層のみからなる単層であってもよい。また、有機発光媒体は、有機発光層とともに、正孔輸送層などを積層した多層構造であってもよい。
また、有機発光層に用いられる発光材料の種類についても特に制限はなく、従来の有機EL表示装置における公知のものを用いることができる。
例えば、有機発光層材料としては、オキシン金属錯体、スチルベン系色素、ポリフェニレンビニレン誘導体、DCM(シアニン色素)誘導体などを高水準の有機EL表示装置を与える材料として挙げることができる。
また、対向電極は、下部電極と対をなす電極であって、下部電極とは反対の電荷を有し、下部電極が陽極ならば陰極となり、逆に下部電極が陰極ならば陽極となる。そして、下部電極側から注入された電荷(正孔または電子)と対向電極側から注入された電荷(電子又は正孔)とが有機発光媒体において再結合し、有機EL表示装置の発光を生じることになる。
したがって、対向電極側から有機EL表示装置の発光を取り出す場合には、発光波長における光透過度が30%以上となるような対向電極を採用する必要がある。
このような構成材料としては、この種の有機EL表示装置の常用されているものをそのまま用いることができる。例えば、透明導電性酸化物膜、金属又は合金の膜厚20nm以下の超薄膜、あるいは透明導電性酸化物膜と前記超薄膜の積層膜等を挙げることができる。
そして、本実施形態において補助配線層の幅が、ピッチ幅(100%)に対して、100〜150%の場合には、対向電極側から取り出すことが好ましい。
また、支持基板は、機械的強度に優れ、水分や酸素の透過性が少ないものであれば、この種の有機エレクトルミネッセンス表示装置に常用されているものをそのまま用いることができる。具体的には、例えば、ガラスやセラミックス等を挙げることができる。また、蛍光変換膜、カラーフィルターが配設された基板を用いても良い。
【0021】
[第2の実施形態]
次に、第5図〜第7図を参照して、本発明の有機EL表示装置における第2の実施形態について説明する。第5図〜第7図は、有機EL表示装置の第2の実施形態を模式的に示した断面図であり、それぞれ(a)は、非発光部分(補助配線層と下部電極の接続部)、(b)は、発光部分の断面図である。
【0022】
1.基本的形態
本実施形態の有機EL表示装置は、第1の実施形態と同様、支持基板1上に、下部電極2、有機発光媒体4、および対向電極5をこの順に積層してなる有機EL表示装置であり、下部電極2と対向電極5がXYマトリックスを形成し、下部電極2と対向電極5の各交差部分が発光部分8(第1図参照)を構成している。
そして、本実施形態では、下部電極2の抵抗値を減少させるための補助配線層3を下部電極2と同一面に配線するとともに、この補助配線層3と下部電極2との間に、電気絶縁層6が設けてある。
ここで、補助配線層は、下部電極と同一面、すなわち下部電極が配線される支持基板上に配線されており、第1の実施形態と同様、有機EL表示装置の発光部分と重ならない非発光部分に配線され、この非発光部分において下部電極の下側(または上側)に積層されて、下部電極と直接電気接続するように構成してある。
このように本実施形態では、第1の実施形態と異なり、下部電極と補助配線層がビアホールを介することなく直接積層されて電気接続されるようになっている。
そして、この電気接続部を除く下部電極と補助配線層との間には、電気絶縁層を設けることを特徴としている。
また、電気絶縁層は、少なくとも電気接続部を除く下部電極と補助配線層との間に設けられていればよく、その態様としては、例えば第5図〜第7図に示すものがある。
第5図では、発光部分8において隣接する各下部電極2の間に配線される補助配線層3の上面を覆うように電気絶縁層6が形成してある。
また、第6図では、第5図の形態に加えて、下部電極2と補助配線層3の接続部分上(非発光部分)にも電気絶縁層6が形成してある。
さらに、第7図では、各下部電極2および補助配線層3の隣接する間隙部に電気絶縁層6を充填して形成してある。
ここで、本実施形態の電気絶縁層についても、第1の実施形態の場合と同様に表面を平坦化することが好ましい。
以上のような構成からなる本実施形態の有機EL表示装置では、補助配線層および下部電極の電気接続部が、発光部分と重なっていないため、上述した第1の実施形態の場合と同様、下部電極側から外部に取り出す光量を多くすることができる。したがって、有機EL表示装置の発光輝度の値を大きくすることができる。
また、本実施形態では、同一平面に配線した下部電極と補助配線層との間には、電気接続部を除いて電気絶縁層が設けてあるので、下部電極と補助配線層との厚さ(膜厚)に起因する段差が電気絶縁層によって埋められる。これにより、従来生じていたような対向電極と下部電極の短絡によるクロストークや、対向電極の断線による表示欠陥、画面表示の不均一化等の発生を低減することができる。
【0023】
2.構成要素
上述した基本的形態を有する第2の実施形態の有機EL表示装置は、支持基板1、下部電極2、補助配線層3、有機発光媒体4、対向電極5および電気絶縁層6からなる各構成要素の構成材料、形成方法等については、第1の実施形態と同様であるため、ここでの説明は省略するものとする。
【0024】
[第3の実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態について第8図〜第14図を参照して説明する。第8図〜第14図は、第3の実施形態にかかる有機EL表示装置の製造方法の各工程における有機EL表示装置を模式的に示す概略説明図であり、平面図および断面図を含む。
【0025】
1.基本的形態
第3の実施形態は、支持基板1上に、補助配線層3が電気接続された下部電極2と、有機発光媒体4と、対向電極5とを順次に設け、当該下部電極2および対向電極5をXYマトリックス状に配設した有機EL表示装置の製造方法であって、以下の工程を有することを特徴としている。
(1)補助配線層3と下部電極2とを、少なくとも部分的に異なる面に配線する工程
(2)補助配線層3を、下部電極2に対して、有機EL表示装置の非発光部分において電気接続する工程
このような各工程により、補助配線層および下部電極の電気接続部を発光部分以外の部分に容易に設けることができる。また、補助配線層を下部電極とは異なる面に配線しているため、容易に平坦化することができ、しかも、補助配線層の所要断面積を大きくすることもできる。
【0026】
また、第3の実施形態を実施するにあたり、下部電極と補助配線層との間に電気絶縁層を設ける工程を含むことが好ましい。このように実施すると、補助配線層を電気絶縁層内に埋設して、平坦化することができるとともに、隣接する下部電極との電気絶縁性を十分に確保することができる。
また、第3の実施形態を実施するにあたり、有機EL表示装置の非発光部分にビアホールを設ける工程と、補助配線層を下部電極に対して、ビアホールを介して電気接続する工程を含むことが好ましい。
このように実施すると、補助配線層の厚みの段差に起因して、下部電極が断線することがなくなり、補助配線層と下部電極とを確実に電気接続することができる。
さらに、第3の実施形態を実施するにあたり、電気絶縁層の表面を平坦化する工程を含むことが好ましい。このように実施すると、補助配線層の膜厚が問題とならず、製造上の歩留まりが向上して、クロストークや表示欠陥をより少なくすることができる。
【0027】
2.製造工程
以下、第3の実施形態の各工程を、第8図〜第14図を参照しつつ具体的に説明する。
なお、第3の実施形態は、第1の実施形態の有機EL表示装置を製造する方法であり、製造される有機EL表示装置の構成材料、構造は第1の実施形態と同様である。したがって、以下の説明は、第3の実施形態における特徴的な部分である補助配線層と電気絶縁層およびビアホールの形成方法について説明するものとし、その他の構成部分、例えば下部電極や、有機発光媒体等については、有機EL表示装置の分野における公知の製法を採ることができる。
【0028】
まず、第8図(a)、(b)に示すように、支持基板1上にフォトリソグラフィー法またはリフトオフ法等を用いて補助配線層3のパターンを形成する。このとき、補助配線層3のパターンは、発光部分8と重ならない非発光部分に配線する。
次に、補助配線層3を被覆するようにして電気絶縁層6を形成する。このとき、電気絶縁層6は内部に補助配線層3を埋設して形成されるので、表面に補助配線層3が突出することなく、補助配線層3の凹凸を平坦化することができる。
また、電気絶縁層6の形成方法としては、スピンコート,ロールコート,蒸着,CVD,スパッタリング等によって電気絶縁層を成膜し、フォトリソグラフィー法を用いて任意の形状にパターニングする。または、成膜の際に任意の形状のマスクを用いて任意の形状に成膜することもでき、印刷手法を用いてもよい。
例えば、フォトレジストを用いて、パターニング、エッチングまたはリフトオフすることにより、第9図に示すような所定の位置(対向電極5の下部に相当する位置)に電気絶縁層6を形成する。
また、第3図で示したようなビアホール7を有する電気絶縁層6を形成する場合には、第10図に示すように、電気絶縁層6を支持基板1上のほぼ全面に形成するとともに、所定位置(有機EL表示装置の非発光部分に相当する位置)にビアホール7を形成する。
次に、第11図または第12図(第12図はビアホール7を設ける場合)に示すように、電気絶縁層6上に下部電極2を形成し、下部電極2と補助配線層6を接続する。
ここで、第12図に示すビアホール7を設ける場合は、ビアホール7を介して下部電極2と補助配線層3を接続する。具体的には、第13図(b)に示すように、ビアホール7内に導電性部材を充填して導通部2aを形成し、この導通部2aを介して下部電極2と補助配線層6を電気的に接続する。
なお、この場合、第1の実施形態の第4図で示したように、ビアホール7に下部電極2そのものを充填して補助配線層6と接続してもよい。
その後、第14図に示すように下部電極2上に有機発光媒体4を形成し、さらに対向電極5を下部電極2とXYマトリックスを構成するように形成する。
これによって、第1図(または第3図)に示したような、下部電極2と補助配線層3が発光部分8と重ならない非発光部分で電気接続された有機EL表示装置が完成する。
なお、補助配線層3および電気絶縁層6の形成方法として上記の方法を好適例として上げたが、特にこれに制限されるものではなく、他の製法を用いることもできる。
【0029】
[第4の実施形態]
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。この実施形態は、上述した第2の実施形態にかかる有機EL表示装置の製造方法である。
具体的には、支持基板1上に、補助配線層3が電気接続された下部電極2と、有機発光媒体4と、対向電極5とを順次に設け、当該下部電極2および対向電極5をXYマトリックス状に配設した有機EL表示装置の製造方法であって、以下の工程を有することを特徴としている。
(1)補助配線層3を、下部電極2と同一面に配線する工程
(2)有機EL表示装置の非発光部分において、補助配線層3を下部電極に対して電気接続する工程
(3)電気接続部を除く補助配線層3と下部電極の間に電気絶縁層6を設ける工程
このような各工程により、補助配線層3および下部電極2の電気接続部を発光部分8以外の部分に容易に設けることができる。
また、下部電極2と補助配線層3との間に電気絶縁層6を設けるようにしてあるので、補助配線層3を下部電極2と同一面に配線しても対向電極5との電気絶縁性を十分に確保することができる。
さらに、下部電極2と補助配線層3のそれぞれの膜厚に起因する段差を電気絶縁層6で埋めて平坦化することができ、補助配線層3の所要断面積を大きすることもできる。その結果、クロストークや非発光ラインの発生等の表示欠陥を低減することができる。
なお、本実施形態の各工程における製造方法は、上述した第3の実施形態における製造方法と同様である。
【0030】
[第5の実施形態]
次に、第15図を参照して、第5の実施形態を説明する。第15図は、有機EL表示装置の第5の実施形態を模式的に示したものであり、(a)は平面図、(b)はX−X線断面図である。
なお、第5の実施形態は、第1の実施形態の有機EL表示装置で設けたビアホール7の開口形状を順テーパー状に製造するものであり、製造される有機EL表示装置の構成材料、構造は第1の実施形態と同様である。したがって、以下の説明では、第5の実施形態における特徴的な部分であるビアホール7の形状についてのものである。
【0031】
1.基本的形態
第15図(a)、(b)に示すように、第5の実施形態は、電気絶縁層6におけるビアホール7の側面が、下部電極2に向かって広く、補助配線層3に向かって狭く傾斜する順テーパー状としてある。
このようにビアホール7を順テーパー状に構成すると、下部電極2が電気絶縁層6のエッジで断線することが少なくなる上に、ビアホール7の内部に対して、間口が広い部分から導電材料を容易に充填することができ、また、間口が広いため、補助配線層3と下部電極2との電気接続箇所における接触面積を大きくして、密着性を向上させることができ、表示領域の輝度分布を均一化することができる。
【0032】
2.製造工程
第5の実施形態では、電気絶縁層6にビアホール7を形成する工程において、ビアホール7の側面を順テーパー状とする工程を有する。
このようにすると、例えば、蒸着法等を用いて、ビアホール内部に導電材料を容易に充填することができ、また、ビアホール内部に導電材料を充填した後に断線をより少なくすることができる。
順テーパー状のビアホール7の形成方法は、例えばパターン断面がオーバーハング形状となるレジストを形成した後、電気絶縁層6を成膜し、レジストを剥離(リフトオフ)することにより形成することができる。また、感光性レジストをビアホール形状のマスクで露光する際に、マスクと基板との距離を離して露光し、その後現像(必要に応じて焼成)することによっても形成できる。
なお、他の製造工程や、形成方法は、第3の実施形態と同様とすることができる。
【0033】
[第6の実施形態]
さらに、第16図を参照して、第6の実施形態を説明する。第16図は、有機EL表示装置の第6の実施形態を模式的に示した平面図である。
この第6の実施形態は、第1または第2の実施形態の有機EL表示装置における補助配線層3の配線パターンを変更したものであり、その他の構成材料、構造、形成方法等は第1〜第4の実施形態と同様である。したがって、以下の説明では、第6の実施形態における特徴的な部分である補助配線層3の配線パターンについてのものである。
【0034】
第6の実施形態の補助配線層3は、配線パターンが有機EL表示装置の発光部8と重ならない非発光部分に配線され、各下部電極2に沿って形成された梯子形状をなす配線パターンとなっている。
第16図に示すように、補助配線層3は、各下部電極2(第16図では図示省略)の間に沿って平行に配線されるとともに、この平行配線部分が対向電極5(第16図では図示省略)の間隙に沿って形成される配線パターンで連結され、各下部電極2ごとに対応した梯子形状となっている。
このように補助配線層3を梯子形状の配線パターンに形成することによって、発光部分と干渉することなく補助配線層3の所要断面積を広くすることができ、配線抵抗の減少効率をより向上させるとともに、抵抗率の調整範囲値も広く確保することができるので、表示領域の輝度の均一性をより向上させることができる。
【実施例】
【0035】
[実施例1]
(1)有機EL表示装置の製造
a.補助電極の形成
実施例1の有機EL表示装置を製造するにあたっては、まず、厚さ1.1mm、縦100mm、横100mmのガラス基板OA2(日本電気硝子(株)製)上に、補助電極材料であるアルミニウムを膜厚が200nmとなるように成膜した。
このガラス基板上に、ポジ型レジストHPR204(富士フィルムオーリン(株)製)をスピンコートし、フォトマスクを介して紫外線を露光した後、現像液としてTMAH(テトラメチルアンモニウムヒドロキシド)を用いて、露光部を現像した。
次いで、オーブンを用いて、130℃、10分の条件でポストベーク処理した後、アルミニウムエッチャント(酢酸/リン酸/硝酸)を用いて、アルミニウム膜をエッチングした。
その後、剥離液N303(長瀬産業(株)製)を用いてポジ型レジストを除去し、第8図に示すパターンを有する補助配線層を形成した。
【0036】
b.電気絶縁層の形成
次いで、補助配線層を形成した基板上に、ネガ型レジストIC28T−3(富士フィルムオーリン(株)製)をスピンコートし、フォトマスクを介して紫外線を露光した後、現像液としてキシレンを用いて、未露光部を現像した。
その後、160℃、10分の条件でポストベーク処理し、レジストパターンを得た。このレジストパターンの上からSiO2をスパッタリングして、膜厚200nmの電気絶縁層とした。その後、剥離液N303を用いてネガ型レジストを除去し、第9図に示すように、電気絶縁層のパターンをリフトオフ法によって補助配線層上に形成した。
【0037】
c.下部電極の形成
次いで、電気絶縁層を形成した基板上に、IZO(インジウム亜鉛酸化物)をスパッタリングして、電気絶縁層上に、膜厚120nmのIZO膜を形成した。
このIZO膜上に、ポジ型レジストHPR204をスピンコートし、フォトマスクを介して紫外線を露光した後、TMAHにより露光部を現像した。
次いで、オーブンを用いて、130℃、10分の条件でポストベーク処理した後、IZOエッチャント(5%蓚酸水溶液)を用いて、ポジ型レジストから露出しているIZO膜をエッチングした。
その後、剥離液N303を用いてポジ型レジストを除去し、第11図に示すパターンを有する下部電極を形成した。
【0038】
d.有機EL素子の形成
下部電極を形成した基板をイソプロピルアルコール洗浄し、さらに紫外線洗浄を行った。この時点で、下部電極表面を、XPSを用いて表面観察したところ、炭素含有量が10atm%未満の値であることを確認した。
次いで、下部電極を形成して洗浄した基板を、蒸着装置(日本真空技術(株)製)内の基板ホルダーに固定した。
そして、蒸着装置内のモリブテン製の加熱ボードに、以下の材料をそれぞれ充填した。
正孔注入材料:4,4',4''−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−
フェニルアミノ]トリフェニルアミン(MTDATA)、および
4,4'−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]
ビフェニル(NPD)
有機発光材料:4,4'−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ビフェニル
(DPVBi)
電子注入材料:トリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alq)
【0039】
さらに対向電極(陰極)材料としての銀ワイヤーをタングステン製フィラメントに、同じくマグネシウムリボンをモリブテン製の加熱ボードに装着した。
その状態で、真空層の真空度を665X10-7Pa(1X10-7Torr)まで減圧し、以下の蒸着速度および膜厚となるように、正孔注入層から陰極の形成まで、途中で真空状態を破らず、一回の真空引きで順次積層し、第1図および第14図に示すような有機EL素子を形成し、実施例1の有機EL表示装置とした。
なお、対向電極の銀およびマグネシウムは、それぞれ同時蒸着し、合わせて膜厚が200nmとなるように成膜した。
MTDATA:蒸着速度0.1-0.3nm/sec.,膜厚60nm
NPD :蒸着速度0.1-0.3nm/sec.,膜厚20nm
DPVBi :蒸着速度0.1-0.3nm/sec.,膜厚50nm
Alq :蒸着速度0.1-0.3nm/sec.,膜厚20nm
Ag :蒸着速度1.3-1.4nm/sec.,膜厚200nm
(AgとMgとの合計膜厚)
Mg :蒸着速度0.1nm/sec.
【0040】
(2)有機EL表示装置の評価
得られた有機EL表示装置において、下部電極(陽極)と、対向電極である上部電極(陰極)との間に、DC12Vの電圧を印加し、各電極の交差部分の画素を発光させた。
その状態で色彩色差計CS100(ミノルタ(株)製)を用いて発光輝度を測定したところ、300cd/m2という値が得られた。また、JIS Z 8701に準拠してCIE色度座標を測定したところ、CIEx=0.14,CIEy=0.20である青色の強い発光が得られることを確認した。
さらにまた、得られた有機EL表示装置において、クロストークはほとんど見られず、隣接するラインの発光や欠陥表示についても240本中、1本も観察されなかった。
【0041】
[実施例2]
(1)有機EL表示装置の製造
実施例1と同一の条件で補助配線層を形成した基板を作製した。
次いで、ネガ型レジストIC28T−3(富士フィルムオーリン(株)製)をスピンコートし、フォトマスクを介して紫外線を露光した後、現像液としてキシレンを用いて、未露光部を現像した。その後、160℃、10分の条件でポストベーク処理し、レジストパターンを得た。このレジストパターンの上からSiO2をスパッタリングして、膜厚200nmの電気絶縁層とした。
次いで、剥離液N303を用いてネガ型レジストを除去し、第10図に示すように、電気絶縁層に囲まれたビアホールを補助配線層上に形成した。なお、ビアホールの外観をSEM(Scanning Electron Microscopy,電子顕微鏡)を用いて観察したところ、ビアホールの断面が矩形状であることを確認した。
以下、実施例1と同一の条件により(なお、下部電極の形成工程については第12図、第13図参照)、第3図に示す有機EL表示装置を作製した。
【0042】
(2)有機EL表示装置の評価
得られた有機EL表示装置において、下部電極(陽極)と、対向電極である上部電極(陰極)との間に、DC12Vの電圧を印加し、各電極の交差部分の画素を発光させた。色彩色差計CS100(ミノルタ(株)製)を用いて発光輝度を測定したところ、300cd/m2という値が得られた。また、JIS Z 8701に準拠してCIE色度座標を測定したところ、CIEx=0.14,CIEy=0.20である青色の強い発光が得られることを確認した。
さらにまた、得られた有機EL表示装置において、クロストークはほとんど見られず、隣接するラインの発光や欠陥表示についても240本中、1本も観察されなかった。
【0043】
[実施例3]
(1)有機EL表示装置の製造
実施例2における矩形状のビアホールの代わりに、順テーパー状のビアホール(第15図参照)を形成したほかは、実施例1と同様に有機EL表示装置を製造した。すなわち、補助配線層を形成した基板上に、パターン断面がオーバーハング形状となるネガ型レジストZPN1100(日本ゼオン(株)製)を用いたほかは、実施例2と同様に有機EL表示装置を製造した。なお、ビアホールの外観を、SEMを用いて観察し、ビアホールの断面が順テーパー状であることを確認した。
【0044】
(2)有機EL表示装置の評価
得られた有機EL表示装置において、下部電極(陽極)と、対向電極である上部電極(陰極)との間に、DC12Vの電圧を印加し、各電極の交差部分の画素を発光させた。色彩色差計CS100を用いて発光輝度を測定したところ、300cd/m2という値が得られた。なお、下部電極と、上部電極とをそれぞれ選択して発光させたが、全表示領域(画素数約6万(240本×240本))における輝度分布は、±10cd/m2の範囲内であり、均一に発光することを確認した。
また、JIS Z 8701に準拠してCIE色度座標を測定したところ、CIEx=0.14,CIEy=0.20である青色の強い発光が得られることを確認した。
さらにまた、得られた有機EL表示装置において、クロストークはほとんどみられず、隣接するラインの発光や欠陥表示についても240本中、1本も観察されなかった。
【0045】
[実施例4]
(1)有機EL表示装置の製造
実施例2における電気絶縁層であるSiO2の代わりに、アクリル系ネガ型レジストを使用したほかは、実施例2と同様に有機EL表示装置を製造した。
すなわち、補助配線層を形成した基板上に、アクリル系ネガ型レジストV259PA(新日鉄化学(株)製)をスピンコートし、フォトマスクと基板のギャップ(プロキシミティーギャップ500μm)をとって紫外線を露光した後、現像液としてTMAHを用いて、未露光部を現像し、180℃、10分の条件でポストベーク処理し、膜厚200nmの電気絶縁層とした。
【0046】
(2)有機EL表示装置の評価
得られた有機EL表示装置において、下部電極(陽極)と、対向電極である上部電極(陰極)との間に、DC12Vの電圧を印加し、各電極の交差部分の画素を発光させた。色彩色差計CS100を用いて発光輝度を測定したところ、300cd/m2という値が得られた。なお、下部電極と、上部電極とをそれぞれ選択して発光させたが、全表示領域における輝度分布は、±10cd/m2の範囲内で均一に発光することを確認した。
また、JIS Z 8701に準拠してCIE色度座標を測定したところ、CIEx=0.14,CIEy=0.20である青色の強い発光が得られることを確認した。
さらに、得られた有機EL表示装置において、クロストークはほとんどみられず、隣接するラインの発光や欠陥表示についても240本中、1本も観察されなかった。
【0047】
[実施例5]
(1)有機EL表示装置の製造
実施例5の有機EL表示装置の製造にあたっては、実施例1と同様のガラス基板OA2(日本電気硝子(株)製)からなる支持基板上に、アルミニウムをスパッタリングにより膜厚200nmとなるように成膜後、さらにクロムをスパッタリングにより膜厚50nmとなるように積層した。
次に、この支持基板上に、ポジ型レジストHPR204(富士フィルムオーリン(株)製)をスピンコートし、フォトマスクを介して紫外線を露光し、TMAH(テトラメチルアンモニウムヒドロキシド)を現像液として用いて露光部を現像し、130℃、10分の条件でポストベーク処理した。
その後、硝酸セリウムアンモニウム/過塩素酸水溶液からなるクロムエッチャントHCE(長瀬産業(株)製)と、酢酸/リン酸/硝酸からなるアルミニウムエッチャントを用いて、露出している部分のクロムおよびアルミニウム膜をエッチングした後、剥離液N303(長瀬産業(株)製)を用いてポジ型レジストを除去し、第8図に示すパターン形状のクロム/アルミニウムパターンからなる補助配線層を形成した。
次いで、この補助配線層を形成した基板上に、ITO(インジウム錫酸化物)をスパッタリングにより120nmの膜厚となるように成膜した後、さらにクロムをITO上にスパッタリングにより積層した。
そして、この基板上に上述したのと同様のポジ型レジストをスピンコートし、補助配線層に対して、第11図に示すような下部電極形状に対応する位置決めがなされたフォトマスクを介して紫外線を露光し、さらに、現像液としてTMAHを用いて現像し、130℃、10分の条件でポストベーク処理した。
次に、上述と同様の硝酸セリウムアンモニウム/過塩素酸水溶液からなるクロムエッチャントと、47%臭化水素水溶液からなるITOエッチャントを用いて、レジストから露出しているクロム/ITO層をエッチングし、その後、上述と同様の剥離液を用いてポジ型レジストを除去した。
これによって、第11図に示す下部電極に対応したクロム/ITOパターン層を形成した(なお、本実施例では、第11図に示した電気絶縁層6は存在しない)。
次に、このクロム/ITOパターン層を形成した基板上に、アクリル系ネガ型レジストV259PA(新日鉄化学(株)製)をスピンコートし、支持基板側から背面露光(バックフラッシュ)した後、現像液にて未露光部分を現像し、180℃、10分の条件でポストベーク処理し、これにより電気絶縁層を形成した。
その後、クロム/ITOパターン(下部電極に相当)上のクロムと、補助配線層上のクロムを、クロムエッチャントを用いて剥離し、ITOパターンからなる下部電極およびアルミニウムパターンからなる補助配線層を形成するとともに、この下部電極および補助配線層の間に電気絶縁層を充填形成した(第7図参照)。以下、実施例と同一の条件により、第7図に示す電気絶縁層を備えた有機EL表示装置を作製した。
【0048】
(2)有機EL表示装置の評価
得られた有機EL表示装置において、下部電極(陽極)と、対向電極である上部電極(陰極)との間に、DC12Vの電圧を印加し、各電極の交差部分の画素を発光させた。色彩色差計CS100を用いて発光輝度を測定したところ、300cd/m2という値が得られた。
また、JIS Z 8701に準拠してCIE色度座標を測定したところ、CIEx=0.14,CIEy=0.20である青色の強い発光が得られることを確認した。
さらにまた、得られた有機EL表示装置において、クロストークはほとんど見られず、隣接するラインの発光や欠陥表示についても240本中、1本も観察されなかった。
【0049】
[比較例1]
(1)有機EL表示装置の製造
比較例1の有機EL表示装置の構造は、実施例1において補助配線層と下部電極とを直接電気接合するとともに、当該電気接合箇所を、有機EL表示装置の発光部分の側部、すなわち、下部電極の端辺上に補助配線を積層して設け、当該電気接合箇所上を覆うように電気絶縁層を設けたほかは、実施例1と同様に有機EL表示装置を製造した(第18図参照)。
【0050】
(2)有機EL表示装置の評価
得られた有機EL表示装置において、下部電極と、対向電極との間に、DC12Vの電圧を印加し、各電極の交差部分の画素を発光させた。色彩色差計CS100を用いて発光輝度を測定したところ、250cd/m2という、実施例1の発光輝度よりも低い値が得られた。
この原因としては、比較例1では、補助配線層と、下部電極とが一部重なっているため、外部に取り出せる発光量が減少したためと思われる。
なお、比較例1でも、CIE色度座標については、CIEx=0.14,CIEy=0.20であり、青色の発光が得らることを確認した。
また、得られた有機EL表示装置において、クロストークが10箇所以上発生し、これに起因して隣接するラインの発光や、断線による欠陥表示(非発光ライン)が240本の画素のうち、15本に見られることが確認された。これは、下部電極と同一平面上に配線された補助電極が、下部電極の端辺に重なるように形成されているため、下部電極と補助電極との膜厚や、積層高さに起因する段差がより顕著となり、その結果、下部電極と対向電極との間での短絡や、対向電極の断線が生じたためと考えられる。
【0051】
[比較例2]
(1)有機EL表示装置の製造
比較例2の有機EL表示装置の構造は、電気絶縁層を設けず、補助配線層と、下部電極とをすべて同一面内に形成して、直接電気接合したほかは、実施例1と同様に有機EL表示装置を製造した(第17図参照)。
【0052】
(2)有機EL表示装置の評価
得られた有機EL表示装置において、下部電極と、対向電極との間に、DC12Vの電圧を印加し、各電極の交差部分の画素を発光させた。色彩色差計CS100を用いて発光輝度を測定したところ、300cd/m2という値が得られた。また、CIE色度座標については、CIEx=0.14,CIEy=0.20であり、青色発光であることを確認した。
また、得られた有機EL表示装置において、クロストークが10箇所以上発生し、隣接するラインの発光や、断線による欠陥表示(非発光ライン)が240本中、10本あることが確認された。
このクロストークの大量発生や欠陥表示の増加の原因としては、補助配線層と下部電極とが同一平面にあるため、これらの厚さ(膜厚)に起因した段差が大きくなり、またその段差を有する頻度が増えたので、対向電極と下部電極、あるいは対向電極と補助配線層との短絡または対向電極の断線が生じたためと考えられる。
【0053】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0054】
以上、詳細に説明したように、本発明の有機EL表示装置(第1の発明)によれば、補助配線層と下部電極とが、少なくとも異なる面に配線された部分を有するとともに、補助配線層を、有機EL表示装置の非発光部分において電気接続することにより、発光輝度の値が大きくなり、補助配線層の膜厚が問題とならず、しかも補助配線層の所要断面積が大きく、発光輝度の均一性が高く、消費電力を小さくできるとともに、表示欠陥の少ない高品質の有機EL表示装置を提供することができるようになった。
また、本発明の有機EL表示装置(第2の発明)によれば、補助配線層と、下部電極とを同一面に配線し、有機EL表示装置の非発光部分において補助配線層と、下部電極とを電気接続するとともに、補助配線層と下部電極との間であって、電気接続部を除いた箇所に電気絶縁層を設けることにより、補助配線層および下部電極の電気接続部が、発光部分と重なっていないため、下部電極側から外部に取り出す光量を多くすることができ、結果として、発光輝度の値が大きく、表示欠陥の少ない高品質の有機EL表示装置を提供することができるようになった。
また、本発明の有機EL表示装置の製造方法(第3の発明)によれば、補助配線層と下部電極とを部分的に異なる面に配線する工程と、補助配線層を、下部電極に対して、有機EL表示装置の非発光部分において電気接続する工程と、を含むことにより、補助配線層および下部電極の電気接続部を、発光部分以外に容易に設けることができるようになり、また、補助配線層と下部電極とを、それぞれ垂直方向に異なる面に配線しているため、容易に平坦化することができ、しかも、補助配線層の所要断面積を大きくした場合であっても、クロストークや非発光ラインの発生等の表示欠陥を低減できるようになった。
また、本発明の有機EL表示装置の製造方法(第4の発明)によれば、補助配線層と、下部電極とを同一面に配線する工程と、有機EL表示装置の非発光部分において、補助配線層を下部電極に対して電気接続する工程と、補助配線層と下部電極の間であって、電気接続部を除いた箇所に電気絶縁層を設ける工程と、を含むことにより、補助配線層および下部電極の電気接続部を、発光部分以外に容易に設けることができるようなった。また、このように実施することにより、下部電極と補助配線層の膜厚に起因する段差を電気絶縁層で埋めて平坦化することができるため、補助配線層の所要断面積を大きくした場合であっても、クロストークや非発光ラインの発生等の表示欠陥が低減できるようになった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基板上に、補助配線層が電気接続された下部電極と、有機発光媒体と、対向電極とを順次に設けるとともに、当該下部電極および対向電極をXYマトリックス状に配設した有機エレクトロルミネッセンス表示装置において、
前記補助配線層と、前記下部電極とを異なる面に配線するとともに、
前記補助配線層と、前記下部電極とを非発光部分において電気接続すること、
を特徴とする有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項2】
前記補助配線層と前記下部電極との間に、電気絶縁層が設けてあることを特徴とする請求の範囲1に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項3】
前記補助配線層と前記下部電極とが、前記非発光部分に設けたビアホールを介して電気接続してあることを特徴とする請求の範囲1または2に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項4】
支持基板上に、補助配線層が電気接続された下部電極と、有機発光媒体と、対向電極とを順次に設け、当該下部電極および対向電極をXYマトリックス状に配設した有機エレクトロルミネッセンス表示装置において、
前記補助配線層と、前記下部電極とを同一面に配線し、
前記補助配線層と、前記下部電極とを非発光部分において電気接続部を設けて電気接続してあるとともに、
この電気接続部を除く前記補助配線層と前記下部電極の間に、電気絶縁層が設けてあること
を特徴とする有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項5】
前記電気絶縁層の表面が平坦化してあることを特徴とする請求の範囲2〜4のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項6】
前記ビアホールの側面が、順テーパー状としてあることを特徴とする請求の範囲3または5に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項7】
前記ビアホール内部に、前記下部電極を延設して電気接続してあることを特徴とする請求の範囲3、5または6のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項8】
支持基板上に、補助配線層が電気接続された下部電極と、有機発光媒体と、対向電極とを順次に設け、当該下部電極および対向電極をXYマトリックス状に配設した有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法において、
前記補助配線層と、前記下部電極とを部分的に異なる面に配線する工程と、
前記補助配線層と、前記下部電極とを非発光部分において電気接続する工程と、
を含むことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法。
【請求項9】
前記下部電極と前記補助配線層との間に電気絶縁層を設ける工程を含むことを特徴とする請求の範囲8に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法。
【請求項10】
前記非発光部分にビアホールを設ける工程と、
当該ビアホールを介して、前記補助配線層と、前記下部電極とを電気接続する工程と、
を含むことを特徴とする請求の範囲8または9に有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法。
【請求項11】
支持基板上に、補助配線層が電気接続された下部電極と、有機発光媒体と、対向電極とを順次に設け、当該下部電極および対向電極をXYマトリックス状に配設した有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法において、
前記補助配線層と、前記下部電極とを同一面に配線する工程と、
前記補助配線層と、前記下部電極とを非発光部分において電気接続を形成して電気接続する工程と、
当該電気接続部を除いて、前記補助配線層と前記下部電極との間に電気絶縁層を設ける工程と、
を含むことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法。
【請求項12】
前記電気絶縁層の表面を平坦化する工程を含むことを特徴とする請求の範囲9〜11のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法。
【請求項13】
前記ビアホールの側面を順テーパー状とする工程を含むことを特徴とする請求の範囲10または12に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法。
【請求項14】
前記ビアホール内部に前記下部電極を延設し、前記下部電極と前記補助配線層とを電気接続する工程を含むことを特徴とする請求の範囲10、12または13のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2010−80453(P2010−80453A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−3922(P2010−3922)
【出願日】平成22年1月12日(2010.1.12)
【分割の表示】特願2000−610259(P2000−610259)の分割
【原出願日】平成12年3月30日(2000.3.30)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】