説明

有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法

【課題】配線に損傷を与えずに安定して配線の一部を無機膜から露出させることを目的とする。
【解決手段】基板12に有機材料からなるエレクトロルミネッセンス層32を含む有機膜46及び配線44を形成する。有機膜46及び配線44を覆うように封止用の無機膜36を形成する。無機膜36に線50を描くようにレーザー光Lを照射する。無機膜36に粘着材56を貼り付ける。粘着材56に基板12から離れる方向の力を加えて、無機膜36の粘着材56に貼り付けられた部分を線50に沿って切断しながら剥離する。配線44は、有機膜46の形成領域の内側及び外側に形成する。無機膜36は有機膜46の形成領域の内側及び外側で配線44を覆うように形成する。レーザー光Lは線50が配線44の上方を通るように照射する。無機膜36の剥離される部分は、有機膜46の形成領域の外側で配線44の一部を覆う部分である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造プロセスでは、発光層である有機膜の酸化や吸湿による劣化を防止するために、封止基板の接着や薄膜の保護膜の形成によって、有機膜を封止している。保護膜による封止では、封止工程後に外部回路と電気的接続を行う端子部分の配線を露出させる処理が必要であった(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−048679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、ガラス基板上の配線を部分的に保護膜から露出させるために保護膜としての無機膜(例えばSiN膜)を除去する。保護膜は粘着テープを貼り付けてから引き剥がせばガラス基板上から剥離可能であり、カッターによる引っ掻きにより、剥離する部分と剥離しない部分との境界を作り、配線を露出させる部分の保護膜を粘着テープで剥離している。
【0005】
しかし、カッターによる引っ掻きにより保護膜の下のアルミ配線が損傷すると、導通不良になるという問題があった。また、保護膜の膜質や、カッターの押し付け圧力や、引っ掻き速度などによって、保護膜の分断状態が不安定になるという問題もあった。
【0006】
本発明は、配線に損傷を与えずに安定して配線の一部を無機膜から露出させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法は、基板に、有機材料からなるエレクトロルミネッセンス層を含む有機膜及び配線を形成する工程と、前記有機膜及び前記配線を覆うように封止用の無機膜を形成する工程と、前記無機膜に線を描くようにレーザー光を照射する工程と、前記無機膜に粘着材を貼り付ける工程と、前記粘着材に前記基板から離れる方向の力を加えて、前記無機膜の前記粘着材に貼り付けられた部分を、前記線に沿って切断しながら剥離する工程と、を含み、前記配線は、前記有機膜の形成領域の内側及び外側に形成し、前記無機膜は、前記有機膜の形成領域の前記内側及び前記外側で前記配線を覆うように形成し、前記レーザー光は、前記線が前記配線の上方を通るように照射し、前記無機膜の前記剥離される部分は、前記有機膜の形成領域の前記外側で前記配線の一部を覆う部分であることを特徴とする。本発明によれば、レーザー光によって無機膜を切断しやすくするので、配線に損傷を与えずに安定して配線の一部を無機膜から露出させることができる。
【0008】
(2)(1)に記載された有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法において、前記レーザー光の波長は、350nm以下であることを特徴としてもよい。
【0009】
(3)(1)又は(2)に記載された有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法において、前記レーザー光によって描かれる前記線は、実線及び破線の少なくとも一方であることを特徴としてもよい。
【0010】
(4)(1)から(3)のいずれか1項に記載された有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法において、前記無機膜は、SiN膜であり、前記配線は、少なくともアルミニウムからなる層を含むことを特徴としてもよい。
【0011】
(5)(1)から(4)のいずれか1項に記載された有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法において、前記レーザー光によって描かれる前記線は、前記無機膜の前記剥離される部分の輪郭上の相互に対向する二本の線であることを特徴としてもよい。
【0012】
(6)(1)から(5)のいずれか1項に記載された有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法において、前記無機膜を、前記配線の前記無機膜を向く面から剥離することを特徴としてもよい。
【0013】
(7)(6)に記載された有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法において、前記無機膜を、前記配線の前記基板から立ち上がる側面からも剥離することを特徴としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る方法によって製造された有機エレクトロルミネッセンス表示装置を示す平面図である。
【図2】図1に示す表示領域の一部を拡大した断面図である。
【図3】レーザー光の照射を説明する図である。
【図4】レーザー光が照射された無機膜を示す図である。
【図5】無機膜の剥離を説明する図である。
【図6】無機膜から露出した配線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係る方法によって製造された有機エレクトロルミネッセンス表示装置を示す平面図である。表示装置は、表示領域10を有している。表示領域10で画像が表示されるようになっている。有機エレクトロルミネッセンス表示装置は、テレビ受像機、パーソナルコンピュータ用モニタ、ノート型パーソナルコンピュータ、PDA(Personal Digital Assistant)、携帯電話機、デジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラ、カーナビゲーション用モニタなどに使用することができる。
【0017】
図2は、図1に示す表示領域の一部を拡大した断面図である。有機エレクトロルミネッセンス表示装置は、ガラス等からなる基板12を有する。基板12上には、半導体薄膜14が形成され、その上方に絶縁膜16を介してゲート電極18が形成され、半導体薄膜14に導通するようにソース/ドレイン電極20が形成されることで、薄膜トランジスタ22が構成されている。なお、薄膜トランジスタ22を覆うように層間絶縁膜24が形成されている。
【0018】
薄膜トランジスタ22によって、画素電極26(例えば陽極電極)が駆動されるようになっている。画素電極26の一部を開口させるように、例えば有機材料からなるバンク層28が形成されている。バンク層28の開口で画素電極26に載るように正孔輸送層30が形成され、その上に、エレクトロルミネッセンス層(発光層)32が形成されている。複数の画素電極26に載るように複数のエレクトロルミネッセンス層32が形成されている。エレクトロルミネッセンス層32は、電圧をかけることにより発光する周知の有機材料からなる。エレクトロルミネッセンス層32の上には、共通電極34(例えば陰極電極)が形成されている。共通電極34の上には、無機膜36が形成されている。無機膜36は、特に、エレクトロルミネッセンス層32を封止している。これにより、エレクトロルミネッセンス層32を水分や酸素から遮断して劣化を防いでいる。
【0019】
図1に示すように、表示領域10を囲む額縁領域38には、周辺回路40が形成されている。周辺回路40は、図示しない走査線駆動回路を含み、図示しない走査線に電気的に接続されている。複数の走査線が額縁領域38から表示領域10に延びるようになっており、走査信号が供給されるようになっている。
【0020】
額縁領域38から表示領域10に延びるように、図示しない電源線が設けられている。電源線は、上述したソース/ドレイン電極20に電気的に接続されており、画素電極26を介してエレクトロルミネッセンス層32に電流が供給される。
【0021】
有機エレクトロルミネッセンス表示装置は、外部との電気的接続のための外部端子42を有する。外部端子42は、額縁領域38から延びる配線44の一部である。配線44は、ゲート電極18、ソース/ドレイン電極20、共通電極34、画素電極26、周辺回路40などに電気的に接続される。外部端子42は、無機膜36から露出している。
【0022】
次に、有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法を説明する。本実施形態では、基板12に、有機膜46及び配線44を形成する(図2参照)。有機膜46は、少なくとも、エレクトロルミネッセンス層32を含む。配線44は、ゲート電極18、ソース/ドレイン電極20、共通電極34、画素電極26、周辺回路40などから延びるように形成する。そのため、配線44は、有機膜46の形成領域の内側(表示領域10)及び外側(額縁領域38)に形成する。配線44は、少なくともアルミニウムからなる層を含み、さらにモリブデンからなる層を含んでもよい。また、基板12の上にSiN下地膜(例えば絶縁膜16及び層間絶縁膜24の少なくとも一方)を形成し、その上に配線44を形成してもよい。
【0023】
有機膜46及び配線44を覆うように封止用の無機膜36を形成する。無機膜36は、有機膜46を水分や酸素から遮断して保護する。無機膜36として、酸素を含まないSiN膜を形成することが好ましい。無機膜36は、有機膜46の形成領域の内側及び外側で配線44を覆うように形成する。なお、複数の無機膜36を積層してもよい。無機膜36の上に封止のための有機材料層を形成してもよいが、後述するレーザー光を照射する領域には有機材料層を形成しない。
【0024】
図3に示すように、無機膜36にレーザー光Lを照射する。レーザー光Lは、外部端子42の形成領域(図1参照)に照射する。レーザー光Lは配線44の上方を通るように照射する。照射するレーザー光Lの波長は、350nm以下である。例えば、YAGレーザーの第4高調波の波長は266nm、XeClエキシマレーザーの波長は308nm、KrFエキシマレーザーの波長は248nmであり、いずれかのレーザー48を使用することができる。
【0025】
特に、波長が300nm以下のレーザー光Lのエネルギーは、SiN膜に100%吸収される。これに対して、350nm以下の波長のレーザー光Lのエネルギーはアルミニウム膜には吸収されにくい(反射される)。アルミニウム膜にエネルギーを吸収させるレーザー光は、波長が1000nm以上である。
【0026】
図4は、レーザー光Lの軌跡を説明する図である。レーザー光Lは線50を描くように照射する。レーザー光Lによって描かれる線50は、実線52及び破線(又は点線)54の少なくとも一方である。レーザー光Lによって描かれる線50は、無機膜36の剥離される部分の輪郭上の相互に対向する二本の線を含む。レーザー光Lは、線50が配線44の上方を通る(交差する)ように照射する。
【0027】
無機膜36に粘着材56(例えば粘着テープ)を貼り付ける。そして、図5に示すように、粘着材56に基板12から離れる方向の力を加えて、無機膜36の粘着材56に貼り付けられた部分を、線50に沿って切断しながら剥離する。無機膜36の剥離される部分は、有機膜46の形成領域の外側(図1に示す額縁領域38)で配線44の一部を覆う部分である。無機膜36を、配線44の無機膜36を向く面から剥離する。無機膜36は、配線44の基板12から立ち上がる側面からも剥離する。配線44の下にSiNからなる下地膜を形成した場合であって、無機膜36もSiNからなる場合、無機膜36と下地膜が一体化するので、両者を一体的に剥離する。こうして、図6に示すように、配線44の一部を無機膜36から露出させて、この露出部分を外部端子42として使用することができる。
【0028】
本実施形態によれば、レーザー光Lによって無機膜36を切断しやすくするので、配線44に損傷を与えずに安定して配線44の一部を無機膜36から露出させることができる。さらに、カッターなどによる物理的な接触が無いので基板12に傷を付けることもない。
【0029】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、実施形態で説明した構成は、実質的に同一の構成、同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成で置き換えることができる。
【符号の説明】
【0030】
L レーザー光、10 表示領域、12 基板、14 半導体薄膜、16 絶縁膜、18 ゲート電極、20 ソース/ドレイン電極、22 薄膜トランジスタ、24 層間絶縁膜、26 画素電極、28 バンク層、30 正孔輸送層、32 レクトロルミネッセンス層、34 共通電極、36 無機膜、38 額縁領域、40 周辺回路、42 外部端子、44 配線、46 有機膜、48 レーザー、50 線、52 実線、54 破線、56 粘着材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に、有機材料からなるエレクトロルミネッセンス層を含む有機膜及び配線を形成する工程と、
前記有機膜及び前記配線を覆うように封止用の無機膜を形成する工程と、
前記無機膜に線を描くようにレーザー光を照射する工程と、
前記無機膜に粘着材を貼り付ける工程と、
前記粘着材に前記基板から離れる方向の力を加えて、前記無機膜の前記粘着材に貼り付けられた部分を、前記線に沿って切断しながら剥離する工程と、
を含み、
前記配線は、前記有機膜の形成領域の内側及び外側に形成し、
前記無機膜は、前記有機膜の形成領域の前記内側及び前記外側で前記配線を覆うように形成し、
前記レーザー光は、前記線が前記配線の上方を通るように照射し、
前記無機膜の前記剥離される部分は、前記有機膜の形成領域の前記外側で前記配線の一部を覆う部分であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載された有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法において、
前記レーザー光の波長は、350nm以下であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法において、
前記レーザー光によって描かれる前記線は、実線及び破線の少なくとも一方であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載された有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法において、
前記無機膜は、SiN膜であり、
前記配線は、少なくともアルミニウムからなる層を含むことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載された有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法において、
前記レーザー光によって描かれる前記線は、前記無機膜の前記剥離される部分の輪郭上の相互に対向する二本の線であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載された有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法において、
前記無機膜を、前記配線の前記無機膜を向く面から剥離することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載された有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法において、
前記無機膜を、前記配線の前記基板から立ち上がる側面からも剥離することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−94373(P2012−94373A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−240428(P2010−240428)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(502356528)株式会社 日立ディスプレイズ (2,552)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】