説明

有機エレクトロルミネッセンス表示装置用カラーフィルタ

【課題】本発明は、低コストで、ガスバリア性に優れ、有機エレクトロルミネッセンス表示装置に用いた際に、カラー表示の発色を良好にする混色防止用無機透明基板を有する有機EL表示装置用カラーフィルタおよびその製造方法、さらにはこの有機エレクトロルミネッセンス表示装置用カラーフィルタを用いた有機エレクトロルミネッセンス表示装置を提供することを主目的とする。
【解決手段】本発明は、透明基板と、上記透明基板上に形成された調色層と、上記調色層上に形成された接着剤層と、上記接着剤層上に配置されたガスバリア性を有する混色防止用無機透明基板とを有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス表示装置用カラーフィルタを提供することにより、上記目的を達成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス表示装置用カラーフィルタ、およびその製造方法、ならびにこの有機エレクトロルミネッセンス表示装置用カラーフィルタを用いた有機エレクトロルミネッセンス表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス(以下、有機ELと略す。)表示装置は、自己発色により視認性が高いこと、液晶表示装置と異なり全固体ディスプレイであるため耐衝撃性に優れていること、応答速度が速いこと、温度変化による影響が少ないこと、および、視野角が大きいことなどの利点が注目されている。
【0003】
有機EL素子の構成は、陽極/有機EL層/陰極の積層構造を基本としている。また、カラー表示が可能な有機EL表示装置として、このような有機EL素子を有する有機EL素子側基板とカラーフィルタとを組み合わせたものが知られている。
【0004】
ここで、有機EL素子に用いられる有機EL層は、水分、酸素、その他ガス成分に対する耐性が弱く、これらの水分、酸素、その他ガス成分の影響によりシュリンクやダークポットなどが発生する。ここで、シュリンクとは、時間が経つにつれて、あたかも発光領域が収縮するように非発光領域の拡大が進行する現象をいう。また、ダークスポットとは、有機EL素子の作製直後に生じる黒点のような非発光領域をいう。このダークスポットも時間の経過とともに拡大することがある。すなわち、上記有機EL素子は、水分等が存在することにより、経時的に劣化するのである。
【0005】
また、有機EL表示装置は、有機EL素子の発光層からの光の色により、カラー表示を行うことができるものであるが、発光層からの光自体の色では、発色が良好ではない場合がある。この場合、有機EL素子と、着色層とを組み合わせることによって、発色の良好なカラー表示を行うことが可能となる。
【0006】
しかしながら、有機EL素子を用いた表示装置においては、有機EL素子とカラーフィルタとを貼り合わせる際にカラーフィルタから発生する脱離ガスによって、有機EL素子中の有機EL層に上記のような欠陥が生じてしまう問題があった。
【0007】
この問題を解決するために、例えば、パッシブマトリックス駆動方式の有機EL表示装置に用いられるカラーフィルタには、カラーフィルタ上に窒化ケイ素、酸化窒化ケイ素等のSi系の透明無機膜を形成することが提案されている(特許文献1参照)。
また、アクティブマトリックス駆動方式の有機EL表示装置では、TFT側基板上に透明無機膜を形成することが提案されている。
【0008】
しかしながら、このようなSi系の透明無機膜がガスバリア性を有するには、最低でも1000Åは必要である。また、有機EL素子をカラーフィルタ上に形成するパッシブ型にはバリア性が高く求められるので最低でも3000Å以上は必要となる。
よって、例えば酸化窒化ケイ素を用いてスパッタリング法により製膜する場合には、工程に時間がかかり、効率が悪くコストがかかるという問題があった。またCVDを用いてもコスト高の問題は変らない。
また、成膜型の製造方式では、微小なピンホールが発生する問題があり、完全無欠なガスバリア性を有する透明無機膜を形成するのが困難であった。その他に、透明無機膜をカラーフィルタ上に形成した場合、透明無機膜にクラックが生じることや、透明無機膜の応力により透明基板がたわむこと、透明無機膜が厚い膜になると透明性が落ちるなどの問題があった。
【0009】
また、上記のような透明無機膜では、完全なガスバリア性を有することが困難であるため、外部から着色層への酸素および水蒸気等の侵入を防止することが困難であった。そのため、着色層中の染料と酸素とが反応して、カラーフィルタの劣化を早めるという問題もあった。
【0010】
さらに、カラーフィルタを組み合わせた有機EL表示装置であっても、カラー表示には、より良好な発色が望まれている。
【0011】
【特許文献1】特開2006−228705号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、低コストで、ガスバリア性に優れ、有機EL表示装置に用いた際に、カラー表示の発色を良好にする混色防止用無機透明基板を有する有機EL表示装置用カラーフィルタおよびその製造方法、さらにはこの有機EL表示装置用カラーフィルタを用いた有機EL表示装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記目的を達成するために、透明基板と、上記透明基板上に形成された調色層と、上記調色層上に形成された接着剤層と、上記接着剤層上に配置されたガスバリア性を有する混色防止用無機透明基板とを有することを特徴とする有機EL表示装置用カラーフィルタを提供する。
【0014】
本発明によれば、上記混色防止用無機透明基板は、上記調色層上に接着剤を用いて貼り合わせることにより配置されるため、従来のようにガスバリア性を有する無機透明膜を調色層上に直接形成する場合に比べて工程が短時間で済み、また、製膜に用いる設備も必要がないため、低いコストで有機EL表示装置用カラーフィルタを得ることができる。
また、本発明によれば、無機透明膜を調色層上に直接形成する場合に生じるクラック、ピンホール欠陥等の欠陥が生じないので、ガスバリア性に優れたものとすることができる。
また、本発明によれば、外部から調色層への酸素および水蒸気の侵入を防ぐことができるため、カラーフィルタの劣化を防止することができる。
さらに、本発明によれば、当該有機EL表示装置用カラーフィルタを用いて有機EL表示装置とした際に、上記混色防止用無機透明基板が上記有機EL表示装置の発光層から発光された光の混色を防止する機能を有するため、各色の混色が少なく、高輝度かつ高効率の有機EL表示装置を提供することができる。
【0015】
本発明においては、上記調色層が着色層であることが好ましい。着色層に含まれる顔料を調整することにより、有機EL表示装置用カラーフィルタの発色を良好なものに調整することができるからである。
【0016】
上記発明においては、上記混色防止用無機透明基板の厚みが、5μm〜200μmの範囲内であることが好ましい。上記混色防止用無機透明基板の厚みが上記範囲内であることにより、有機EL表示装置の発光層から発光された光が混色防止用無機透明基板を入射した位置から、混色防止用無機透明基板から光が出射する位置までの透明基板表面の平面視上の距離が小さくなるので、光の混色を防止することができる。
【0017】
また、上記発明においては、上記混色防止用無機透明基板の屈折率と、上記接着剤層の屈折率と、当該有機EL表示装置用カラーフィルタを用いて有機EL表示装置とした際に、上記接着剤層側とは反対側の面で上記混色防止用無機透明基板と接する接触層の屈折率との関係が、接着剤層の屈折率≧混色防止用無機透明基板の屈折率≧接触層の屈折率となるように、上記混色防止用無機透明基板と、上記接着剤層とが選択されていることが好ましい。これにより、有機EL表示装置からの光が、それぞれの界面で屈折することによって、上記混色防止用無機透明基板に光が入射する入射角よりも上記混色防止用無機透明基板から光が出射した出射角を小さくすることができる。これにより、発光層から発光された光の混色を防ぐことができる。
【0018】
上記発明においては、上記混色防止用無機透明基板の表面に、当該有機EL表示装置用カラーフィルタを用いて有機EL表示装置とした際に、上記有機EL表示装置の発光層から発光された光が、上記混色防止用無機透明基板を透過した際に、上記透明基板表面の垂直方向に対する角度が小さくなるように、凹凸が形成されていることが好ましい。このような凹凸を有することにより、光の混色を防止することができるからである。
【0019】
また本発明においては、上記混色防止用無機透明基板が、上記混色防止用無機透明基板上に乾燥剤を挿入するための凹部を有していてもよい。このような凹部を有することにより、本発明の有機EL表示装置用カラーフィルタと有機EL素子側基板との間に乾燥剤を挿入することができるため、より耐久性の高い有機EL表示装置を提供することが可能となる。
【0020】
本発明においては、上記混色防止用無機透明基板上に柱状スペーサが一体で形成されていてもよい。別途柱状スペーサを形成する必要がないため、コストを下げることが可能となる。
【0021】
また、本発明においては、上記混色防止用無機透明基板上に有機EL表示装置の発光層から発光された光が上記混色防止用無機透明基板表面で反射するのを防止する反射防止層を有していてもよい。
反射防止層を有することで、より高い輝度で表示を行う有機EL表示装置を提供することが可能となる。
【0022】
本発明は、透明基板上に調色層を形成する調色層形成工程と、上記調色層上に接着剤層を形成し、ガスバリア性を有する混色防止用無機透明基板を貼り合わせる混色防止用無機透明基板接着工程と、上記混色防止用無機透明基板を薄膜化する混色防止用無機透明基板薄膜化工程とを有する有機EL表示装置用カラーフィルタの製造方法を提供する。
【0023】
本発明によれば、上記混色防止用無機透明基板接着工程および混色防止用無機透明基板薄膜化工程を有することにより、低コストで高品質な有機EL表示装置用カラーフィルタを製造することが可能となる。また、上記混色防止用無機透明基板の厚みを調整することで、有機EL表示装置からの発光層から発光された光の混色を防止する機能を混色防止用無機透明基板に付与することができる。
【0024】
本発明は、透明基板と、上記透明基板上に形成された調色層と、上記調色層上に形成された接着剤層と、上記接着剤層上に配置されたガスバリア性を有する混色防止用無機透明基板とを有する有機EL表示装置用カラーフィルタと、上記有機EL素子用カラーフィルタ基板の混色防止用無機透明基板上に形成された有機EL素子とを有することを特徴とする有機EL表示装置を提供する。
【0025】
本発明によれば、上記有機EL表示装置用カラーフィルタが上記混色防止用無機透明基板を有することにより、有機EL表示装置の有機EL層が、カラーフィルタからの脱離ガスによって損傷されるのを防ぐことができる。また、有機EL表示装置の発光層から発光された光が混色するのを防止することができる。よって、耐久性が高く、発色の良好な有機EL表示装置を得ることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明においては、ガスバリア性を有する無機透明層をスパッタリング法、CVD法、ALE法等によって成膜することがないため、コストを下げることができる。また、本発明に用いられる混色防止用無機透明基板は、接着剤層によって、調色層と貼り合わされているため、クラック等の欠陥が生じず、有機EL表示装置用カラーフィルタからの脱離ガスに対するガスバリア性に優れたものとなる。また、上記混色防止用無機透明基板には、有機EL表示装置とした際、有機EL表示装置の発光層からの光が混色するのを防止する機能を有しているので、本発明の有機EL表示装置用カラーフィルタを用いることによって、高品質な有機EL表示装置を提供できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の有機EL表示装置用カラーフィルタの一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明の有機EL表示装置用カラーフィルタの他の一例を示す概略断面図である。
【図3】本発明の有機EL表示装置用カラーフィルタの他の一例を示す概略断面図である。
【図4】本発明の有機EL表示装置用カラーフィルタの他の一例を示す概略断面図である。
【図5】本発明の有機EL表示装置用カラーフィルタの他の一例を示す概略断面図である。
【図6】本発明の有機EL表示装置用カラーフィルタの他の一例を示す概略断面図である。
【図7】本発明の有機EL表示装置用カラーフィルタの製造方法の一例を示す工程図である。
【図8】本発明に用いられる有機EL表示装置の一例を示す概略断面図である。
【図9】本発明に用いられる有機EL表示装置の他の一例を示す概略断面図である。
【図10】本発明に用いられる有機EL表示装置の他の一例を示す概略断面図である。
【図11】本発明に用いられる有機EL表示装置の他の一例を示す概略断面図である。
【図12】有機EL表示装置の他の一例を示す概略断面図である。
【図13】有機EL表示装置の他の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明は、有機EL表示装置用カラーフィルタ、有機EL表示装置用カラーフィルタの製造方法、および有機EL表示装置を含むものである。以下、それぞれについて説明する。
A.有機EL表示装置用カラーフィルタ
まず、本発明の有機EL表示装置用カラーフィルタについて説明する。
本発明の有機EL表示装置用カラーフィルタは、透明基板と、上記透明基板上に形成された調色層と、上記調色層上に形成された接着剤層と、上記接着剤層上に配置されたガスバリア性を有する混色防止用無機透明基板とを有することを特徴とするものである。
【0029】
ここで、「混色防止用無機透明基板」とは、当該有機EL表示装置用カラーフィルタを用いて有機EL表示装置とした際に、上記有機EL表示装置の発光層から発光された光の混色を防止する機能を有するものである。
また、「上記有機EL表示装置の発光層から発光された光の混色を防止する機能」(以下、「混色防止機能」と表現する場合がある。)とは、有機EL表示装置の発光層から発光された光が上記混色防止用無機透明基板を透過した際に、上記混色防止用無機透明基板に光が入射した位置から、上記混色防止用無機透明基板から光が出射した位置までの透明基板表面の平面視上の距離をより小さくする機能、または、上記混色防止用無機透明基板に光が入射する入射角よりも上記混色防止用無機透明基板から光が出射した出射角を小さくする機能である。
【0030】
ここで、有機EL表示装置の発光層から発光された光が混色する理由について説明する。
図12は、有機EL表示装置の一例を示す概略断面図である。図12(a)に示すように、有機EL表示装置30は、透明基板1と、透明基板1上に形成された着色層(図12中では赤色着色層2R、緑色着色層2G、青色着色層2B)と、着色層間に形成された遮光部5と、着色層上に形成された接着剤層3と、接着剤層3上に配置された無機透明基板4’とを有する有機EL表示装置用カラーフィルタと、無機透明基板4’上に形成された透明電極層24と、発光層を含む有機EL層23と、背面電極層22と、透明電極層間に配置された絶縁層26とを有するものである。ここで、図12においては、説明のため、有機表示装置の発光層、両電極層、および有機EL表示装置用カラーフィルタ以外の構成については省略して記載している。また、図12では、調色層を着色層としている。
有機EL層23の発光層から発光された光は、通常、あらゆる方向に対して進むものである。そのため、有機EL層23の発光層から発光された光が、有機EL表示装置用カラーフィルタの着色層を透過する場合も、あらゆる方向から光が透過することになる。例えば、赤色着色層2R上に形成された有機EL層23から発光された光は、直進して有機EL表示装置用カラーフィルタを透過するものもあれば、光L1のように透明基板1表面の垂直方向に対して、ある角度をもって有機EL表示装置用カラーフィルタを透過するものもある。
また、着色層2上に、例えば、着色層からの脱ガスを防止するために無機透明基板4’が配置されている場合には、無機透明基板4’によって、屈折した光L1の透明基板表面の垂直方向に対する角度はより大きくなって、無機透明基板4’、接着剤層3、赤色着色層2R、および透明基板1を透過して進み、観察者の目に入る。このとき、光L1が隣接する緑色着色層2Gの領域にまで及ぶと、観察者の目には、緑色着色層2Gから直進してきた光L2と、隣接した赤色着色層から進んできた光L1とが混色して観察されてしまう。このため、良好な表示ができなくなるという問題があった。
また、図12には、図示しないが、用いられる無機透明基板によっては、有機EL層の発光層から発光された光が、無機透明基板に入射する入射角よりも、無機透明基板から接着剤層へ出射する出射角が大きくなるために、隣接する着色層の領域にまで及んで光の混色を引き起こす場合もあった。
【0031】
図12(b)は、図12(a)のAで囲われた部分の拡大図である。上記のような混色を防止する機能を無機透明基板に付与するには、有機EL表示装置の発光層から発光された光L1が、上記無機透明基板4’を透過した際に、無機透明基板4’に光が入射した位置から、無機透明基板4’から光が出射した位置までの、透明基板1表面の距離αが小さくなるようにすればよい。なお、本発明においては、この距離αを、「透明基板の平面視上の距離」ということとする。
距離αには、無機透明基板4’を透過する光L1の透明基板1表面の垂直方向に対する角度γ、および、無機透明基板4’を透過する光が無機透明基板4’に光が入射した位置から、無機透明基板4’から光が出射した位置までの透明基板1表面の垂直方向の距離βが大きく影響している。角度γが大きい場合、距離αも大きくなるので、隣接する着色層を透過する光同士の混色が起こりやすくなる。また距離βが大きい場合も距離αは大きくなるので、透過する光は広がってしまうため、混色は起こりやすくなる。
したがって、角度γ、または、距離βを調整すれば、距離αを小さくすることができ、混色を防止することができる。
【0032】
次に、図13を用いて、発光層からの光の無機透明基板への入射角と無機透明基板からの出射角との関係を説明する。図13は、有機EL表示装置の一例を示す概略断面図である。説明のため、図13は、接着剤層3、接着剤層3上に形成された無機透明基板4’、および無機透明基板4’上に配置され、有機EL表示装置とした際に、無機透明基板4’と接する接触層9以外の構成については省略している。また、接触層9は有機EL表示装置の構成によって異なるものであり、例えば不活性ガス層、乾燥剤や透明電極層等の固体層が挙げられる。
図13に示すように、本発明においては、発光層の光Lは、接触層9、無機透明基板4’、および接着剤層3の順に進み、図示しないが、着色層、透明基板を経て観察者の目に入る。このとき図13(a)のように、発光層から発光された光Lが無機透明基板へ入射する入射角δよりも、無機透明基板から出射した出射角θが大きい場合は、発光層から発光された光Lが進む領域が広くなるため、他の色の着色層の領域まで及んで混色を引き起こす可能性がある。
一方、図13(b)から図13(d)に示すように、発光層から発光された光Lが無機透明基板へ入射する入射角δよりも、無機透明基板から出射した出射角θが小さい場合は、発光層から発光された光Lが進む領域が制限されるため、混色を防止することが可能となる。
したがって入射角δよりも出射角θが小さくなるように、各部材を選択することにより、混色を防止することができる。
なお、図13中の角度γは、接触層9から無機透明基板4’へ入射した屈折角であり、また、無機透明基板4’から接着剤層3へ入射する角度である。
【0033】
また、本発明において「調色層」とは、有機EL表示装置が発色の良好なカラー表示を行うために、有機EL層の発光層からの光の色を調整する層である。具体的には、着色層、色変換層、および着色層と色変換層とからなるものが挙げられる。
【0034】
次に、本発明の有機EL表示装置用カラーフィルタについて、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の有機EL表示装置用カラーフィルタの一例を示す概略断面図である。ここで、図1においては調色層が着色層である場合について示している。
図1に例示するように、本発明の有機EL表示装置用カラーフィルタ10は、透明基板1と、透明基板1上に形成された着色層2(図1では、赤色着色層2R,緑色着色層2G、青色着色層2B)と、着色層2上に形成された接着剤層3と、接着剤層3上に配置されたバリア性を有する混色防止用無機透明基板4とを有するものである。ここで、混色防止用無機透明基板4は混色防止機能を有する。また、本発明においては、図1に示すように、着色層2の間に画素を画定する遮光部5を形成してもよい。
【0035】
本発明によれば、ガスバリア性を有する上記混色防止用無機透明基板を上記接着剤層上に配置することにより、調色層から発生する脱離ガスによって有機EL層が損傷するのを防ぐことが可能となる。この混色防止用無機透明基板は、スパッタリング、CVD等を用いて調色層上に形成されるガスバリア性を有する無機透明膜に比べ、コストが低く、かつ、ガスバリア性の高いものとすることが可能となる。
また、ガスバリア性を有する上記混色防止用無機透明基板が、上記調色層上に形成されていることにより、外部から上記調色層への酸素および水蒸気の侵入を防止することができるので、調色層中の染料と酸素とが反応することによるカラーフィルタの劣化を抑制することができる。
また、上記混色防止用無機透明基板は、当該有機EL表示装置用カラーフィルタを用いて有機EL表示装置とした際に、有機EL装置の発光層から発光した光の混色を防止する機能を有するものであるので、有機EL装置の発光層からの光が混色するのを防止することができる。したがって、当該有機EL表示装置用カラーフィルタを用いることにより、発色が良好で、高輝度かつ高効率な有機EL表示装置を提供することが可能となる。
以下、各構成について説明する。
【0036】
1.混色防止用無機透明基板
本発明に用いられる混色防止用無機透明基板は、後述する接着剤層上に配置されるものであり、ガスバリア性を有し、かつ、当該有機EL表示装置用カラーフィルタを用いて有機EL表示装置とした際に、有機EL装置の発光層から発光した光の混色を防止する機能を有するものである。
【0037】
本発明に用いられる混色防止用無機透明基板は、従来のように、後述する調色層上にスパッタ等を用いて形成されたものではなく、予め板状を有しているものが接着剤層上に配置されたものである。
また、本発明に用いられる混色防止用無機透明基板は、水蒸気、酸素、脱離ガスなどのガスに対してガスバリア性を有するものである。
本発明の混色防止用無機透明基板のガスバリア性としては、酸素透過率(OTR)が1×10−3cc/m/day/atm以下であることが好ましく、より好ましくは1×10−4cc/m/day/atm以下である。
また、水蒸気透過率(WVTR)が1×10−5g/m/day以下であることが好ましく、より好ましくは1×10−6g/m/day以下である。
なお、上記酸素透過率および水蒸気透過率の値は、酸素透過率はMOCON社のOX-TRAN装置を用い、23℃、90%RHの環境下、水蒸気透過率はMOCON社のPERMATRAN−W装置を用い、40℃、90%RHの環境下で測定された値である。
【0038】
上記混色防止用無機透明基板に上記混色防止機能を付与する態様としては、上記混色防止用無機透明基板の厚みを薄膜化する態様(以下、第1の態様とする。)、上記混色防止用無機透明基板に用いる材料を選択することで屈折率を調整する態様(以下、第2の態様とする。)、上記混色防止用無機透明基板の表面に凹凸を形成する態様(以下、第3の態様とする。)が挙げられる。
以下、それぞれについて説明する。
【0039】
(1)第1の態様
本態様に用いられる混色防止用無機透明基板は、ガスバリア性を有し、かつ、混色防止用無機透明基板の厚みを薄膜化することにより混色防止機能を付与したものである。
【0040】
本態様においては、混色防止用無機透明基板を薄膜化することにより、混色防止用無機透明基板を透過する光が混色防止用無機透明基板に光が入射した位置から、混色防止用無機透明基板から光が出射した位置までの透明基板表面の垂直方向の距離が小さくなる。これによって、混色防止用無機透明基板に光が入射した位置から、混色防止用無機透明基板から光が出射した位置までの、透明基板表面の平面視上の距離も小さくなる。したがって、有機EL表示装置用カラーフィルタを透過した発光層からの光が、隣接する着色層の領域にまで及ぶのを抑制することができるので、各色の光の混色を防ぐことができる。
【0041】
本発明においては、上記混色防止用無機透明基板の厚みが、5μm〜200μmの範囲内が好ましく、なかでも10μm〜100μmの範囲内が好ましく、特に10μm〜60μmの範囲内が望ましい。
上記混色防止用無機透明基板の厚みが200μmよりも厚い場合は、有機EL表示装置の発光層からの光が混色防止用無機透明基板を入射した位置から、混色防止用無機透明基板から光が出射した位置までの、透明基板表面の平面視上の距離が大きくなり、光の混色が起きやすくなるためである。また厚みは薄い方が望ましいが加工技術の点から5μm未満の加工は難しい。薄くなるほど混色防止用無機透明基板に割れを生じたり、加工が進みすぎて接着層が表面に出てしまう可能性があるからである。
【0042】
本態様に用いられる混色防止用無機透明基板としては、透明で、水蒸気、酸素、脱離ガスなどのガスに対してガスバリア性を有し、接着剤により調色層と貼り合わせることができ、薄膜化処理をすることができる無機材料で形成されたものであれば特に限定されるものではない。
本態様に用いられる混色防止用無機透明基板としては、後述する透明基板や、有機EL表示素子側基板の基板に用いられているものと同じ材質のガラス材を用いることが好ましい。透明基板または有機EL表示素子側基板の基板と混色防止用無機透明基板との熱膨張係数をそろえることで、混色防止用無機透明基板を貼り合わせた後、加工をする際に熱による伸びが同じになり、各基板のタワミを極力抑えることができるからである。
【0043】
このような混色防止用無機透明基板としては、ディスプレイ用に用いられる無アルカリガラスが望ましい。具体的には、OA10(日本電気硝子社)、AN100(旭硝子社)、NA35(NHテクノガラス社)、EAGLE(コーニング社)、および1737材(コーニング社)などガラス製造各社のガラスを用いることが望ましい。
その他ソーダライム材、低屈折ガラス、高屈折ガラスなど用いても良く、基本的にガスバリア性に優れるガラスであれば積層可能である。
【0044】
本態様に用いられる混色防止用無機透明基板の大きさ(面積)としては、用いられる有機EL表示装置用カラーフィルタの大きさ(面積)により適宜選択される。
【0045】
本態様に用いられる混色防止用無機透明基板の加工方法としては、後述する接着剤層上に配置させることで、調色層と接着させたのち、薄膜化処理方法により混色防止用無機透明基板を薄膜化させる方法が挙げられる。
上記薄膜化処理方法としては、機械を用いた機械研磨法であってもよいし、エッチング等の化学的薄膜化法であってもよい。
機械研磨法による薄膜化処理は、混色防止用無機透明基板表面の平滑性を良好なものとすることができる。したがって、本態様の有機EL表示装置用カラーフィルタが、例えば図11のように、有機EL表示装置用カラーフィルタ10の混色防止用無機透明基板4上に、透明電極層24が形成されているような有機EL表示装置に用いられる場合は、混色防止用無機透明基板表面が平滑性に優れたものである方が好ましいため、薄膜化処理を機械研磨法によって行うことが好ましい。
また、本態様の有機EL表示装置用カラーフィルタが、例えば図8のように、有機EL表示装置用カラーフィルタ10の混色防止用無機透明基板4と、有機EL素子側基板20の有機EL素子25が形成された面とを対向させて封止したような有機EL表示装置に用いられる場合は、コストの面から薄膜化処理をエッチング方法によって行うことが好ましい。
なお、図8および図11については、後述する「C.有機EL表示装置」の項で詳しく説明するため、ここでの記載は省略する。
【0046】
このような機械研磨方法としては、一般的な精密機器に用いられる無機材料からなる透明基板を研磨する方法と同様であるのでここでの説明は省略する。
また、化学的薄膜化方法としては、ドライエッチングであってもよいし、ウェットエッチングであってもよい。通常ウェットエッチングが好適に用いられる。これは、ウェットエッチングはコストや生産効率の点で有利であるからであり、かつ、化学反応で溶解が進行するため、エッチング剤を選択することにより、エッチング速度を制御することが容易であるからである。
【0047】
(2)第2の態様
本態様に用いられる混色防止用無機透明基板は、ガスバリア性を有し、上記混色防止用無機透明基板に用いる材料を選択することで屈折率を調整し、混色防止機能を付与したものである。
【0048】
本態様においては、混色防止用無機透明基板の材料を選択することによって、有機EL表示装置から発光した光が上記混色防止用無機透明基板を透過した際に、上記混色防止用無機透明基板に光が入射する入射角よりも、上記混色防止用無機透明基板から光が出射した出射角を小さくすることができるので、有機EL表示装置用カラーフィルタを透過した光が混色するのを抑制することができる。
【0049】
本態様においては、図13(b)から図13(d)に示すように、混色防止用無機透明基板4に光Lが入射する入射角δよりも混色防止用無機透明基板4から光Lが出射した出射角θを小さくすることができれば特に限定されるものではないが、図13(b)に示すように、入射角δ>屈折角γ(入射角γ)>出射角θとなることがより好ましい。これによって、有機EL表示装置の発光層からの光が進む領域を、混色を防止することに対してより有効に制限することができるからである。なお、図13(c)は、入射角δ=屈折角γ(入射角γ)>出射角θとなる態様を、図13(d)は、入射角δ>屈折角γ(入射角γ)=出射角θとなる態様を示している。
【0050】
上記のような各角度の調整は、各部材に用いられる材料の屈折率を調整することによって行われる。
一般に、2つの媒体に光を通過させる際、屈折角を入射角よりも小さくするには、光が屈折する側の媒体の屈折率を、光が入射する側の媒体の屈折率よりも大きくすればよい。
したがって、本態様においては、接触層の屈折率よりも混色防止用無機透明基板の屈折率のほうが大きくなるように材料を選択し、混色防止用無機透明基板の屈折率よりも接着剤層の屈折率のほうが大きくなるように材料を選択することが好ましい。
【0051】
まず、混色防止用無機透明基板と接着剤層との関係について説明する。本態様においては、接着剤層の屈折率が、混色防止用無機透明基板の屈折率と同等か大きいことが好ましく、混色防止用無機透明基板の屈折率よりも大きいことがより好ましい。
本発明に用いられる混色防止用無機透明基板と後述する接着剤層との屈折率の差(接着剤層の屈折率−混色防止用無機透明基板の屈折率)としては、0.2以下であることが好ましい。
上記混色防止用無機透明基板と後述する接着剤層との屈折率の差が上記範囲に満たない場合は、有機EL表示装置の発光層から発光された光が混色防止用無機透明基板を透過して、接着剤層へ入射するときの透明基板表面の垂直方向に対する角度が大きくなるため、混色防止の機能が得られない可能性があるからである。また、上記範囲を超えるような屈折率を有する材料は、通常、混色防止用無機透明基板の材料としては用いられないからである。
ここで、上記屈折率の差は、400nm〜700nmの波長領域の光を用いて測定するものとする。
【0052】
また、上記混色防止用無機透明基板は、本発明の有機EL表示装置用カラーフィルタを用いて有機EL表示装置を形成した際に、上記接触層との屈折率の差も考慮する必要がある。
【0053】
次に、上記混色防止用無機透明基板の屈折率と上記接触層の屈折率との関係について説明する。
有機EL表示装置を形成した場合に、上記接着層としては、具体的には、乾燥剤および透明電極層等の固体層と、不活性ガス層とが考えられる。
【0054】
上記接触層が、固体層である場合、混色防止用無機透明基板の屈折率が、固体層の屈折率と同等か大きいことが好ましく、固体層の屈折率よりも大きいことがより好ましい。混色防止用無機透明基板と固体層との屈折率の差(混色防止用無機透明基板の屈折率−固体層の屈折率)は、0.5以下、なかでも0.1以下であることが好ましい。
上記範囲を超えるような屈折率を有する材料は、通常、混色防止用無機透明基板の材料には用いられないからである。
【0055】
上記接触層が固体層である場合、上記混色防止用無機透明基板の材料としては、具体的には「(1)第1の態様」で説明したものと同様とすることができる。
【0056】
上記接触層が、不活性ガス層(Nガスなど)である場合、不活性ガス層の屈折率は約1.0程度であり、上記混色防止用無機透明基板の屈折率は通常、約1.5程度であるので、不活性ガス層の屈折率よりも大きなものとなる。この場合、上記混色防止用無機透明基板と不活性ガス層との屈折率の差(混色防止用無機透明基板の屈折率−不活性ガス層の屈折率)は、0.5程度になる。また、低屈折ガラスを混色防止用無機透明基板として用いた場合では、その屈折率が1.4程度なのでその差は0.4程度になる。
上記不活性ガス層の屈折率および混色防止用無機透明基板の屈折率の関係のみを考慮した場合、上記混色防止用無機透明基板と不活性ガス層との屈折率の差はより大きい方が好ましい。
しかしながら、実際には、上記混色防止用無機透明基板と上記不活性ガス層との屈折率の差が大きくなるように、混色防止用無機透明基板に屈折率の大きな材料を用いると、混色防止用無機透明基板と接着剤層との屈折率の差を同等もしくは大きなものにするのが困難になる。
したがって、不活性ガス層の屈折率、混色防止用無機透明基板の屈折率、および接着剤層の屈折率の関係を考慮した場合、混色防止用無機透明基板と不活性ガス層との屈折率の差はなるべく小さなものとすることが好ましい。
本態様においては、混色防止用無機透明基板と不活性ガス層との屈折率の差(混色防止用無機透明基板の屈折率−不活性ガス層の屈折率)は、0.6以下、なかでも0.5以下が望ましい。下限としては0.1程度である。
上記範囲を超えるような屈折率を有する材料は、通常、混色防止用無機透明基板の材料には用いられない。
【0057】
本態様に用いられる混色防止用無機透明基板の材料は、透明で、水蒸気、酸素、脱離ガスなどのガスに対してガスバリア性を発現し、接着剤により調色層と貼り合わせることができ、上述した各層における屈折率の差の関係をみたすものであれば特に限定されるものではない。
上記接触層が不活性ガス層である場合は、有機EL表示装置から発光された光は、不活性ガス層、混色防止用無機透明基板、接着剤層の順に進む。不活性ガスの屈折率が1に近いことから、混色防止用無機透明基板の屈折率>不活性ガス層の屈折率の関係を満たす混色防止用無機透明基板は、なるべく屈折率の小さいものが好ましい。上記混色防止用無機透明基板に屈折率の大きな材料を用いた場合、隣接する接着剤層の屈折率をさらに大きなものにする必要があるので、通常使用できる接着剤を用いることができなくなるおそれがあるからである。
このような混色防止用無機透明基板の材料としては、低屈折ガラス(屈折率が1.3〜1.5程度であるガラス)を挙げることができる。
【0058】
本態様に用いられる混色防止用無機透明基板の厚みとしては、接着剤層上に配置しても破損せず、ガスバリア性を有することができる膜厚で、かつ、混色防止機能を妨げない程度の膜厚であれば特に限定されるものではない。
本態様に用いられる混色防止用無機透明基板は、「(1)第1の態様」で説明したように、薄膜化することでさらに混色防止機能を高めることができる。したがって、「(1)第1の態様」で説明した膜厚にすることが好ましい。
【0059】
本態様に用いられる混色防止用無機透明基板の大きさ(面積)、形状については「(1)第1の態様」の項で説明したものと同様とすることができる。
【0060】
(3)第3の態様
本態様に用いられる混色防止用無機透明基板は、上記混色防止用無機透明基板の表面に当該有機EL表示装置用カラーフィルタを用いて有機EL表示装置とした際に、上記有機EL表示装置の発光層から発光された光が、上記混色防止用無機透明基板を透過した際に、上記透明基板表面の垂直方向に対する角度が小さくなるように、凹凸を形成することによって混色防止機能を付与したものである。
【0061】
本態様においては、混色防止用無機透明基板の表面に上記のような凹凸を形成することにより、有機EL表示装置の発光層からの光が、上記透明基板表面の垂直方向に対してある角度を有していても、混色防止用無機透明基板を透過させることによって、混色防止用無機透明基板に入射する前の角度よりも小さなものにすることができる。よって、発光層からの光が進む領域を制限することができ、光の混色が起きるのを防ぐことができる。
【0062】
本態様に用いられる混色防止用無機透明基板は、例えば図2に示すように混色防止用無機透明基板4の表面に凹凸8を形成したものである。図2について説明していない符号については、図1と同様であるので、ここでの説明は省略する。
本態様においては、上記混色防止用無機透明基板の表面に当該有機EL表示装置用カラーフィルタを用いて有機EL表示装置とした際に、上記有機EL表示装置の発光層から発光された光が、上記混色防止用無機透明基板を透過した際に、上記透明基板表面の垂直方向に対する角度が小さくなるように、凹凸を形成することで、有機EL装置の発光層から発光される光を屈折させて、上記透明基板表面の垂直方向に対する角度が小さくなるように変えることができる。したがって、本態様の有機EL表示装置用カラーフィルタを用いた有機EL表示装置は、各色の光の混色が抑制され、発色が良好で、高輝度かつ高効率なものとなる。
【0063】
上記凹凸は例えば、図2(a)に示すように、混色防止用無機透明基板の、有機EL表示装置の有機EL素子側基板に対向させる側の表面に形成されていてもよいし、また例えば図2(b)に示すように、混色防止用無機透明基板の接着剤層側の表面に形成されていてもよいし、また例えば図2(c)に示すように、混色防止用無機透明基板の両側表面に形成されていてもよい。なかでも、混色防止用無機透明基板の接着剤層側の表面、または、混色防止用無機透明基板の両側表面に形成されていることが好ましい。
上記凹凸が混色防止用無機透明基板の接着剤層側の表面に形成されている場合、有機EL素子側基板に対向させる側の表面は平坦であるので、有機EL素子側基板と対向させやすい。
また、上記凹凸が混色防止用無機透明基板の両側表面に形成されている場合、混色防止機能をより高く付与することができるからである。
【0064】
上記凹凸の形状としては、有機EL装置の発光層からの光が、上記混色防止用無機透明基板を透過した際に、上記透明基板表面の垂直方向に対する角度が小さくすることができる形状であれば、特に限定されるものではないが、中でもレンズ形状が好ましい。
また、ナノサイズ(400nm以下)の凸凹形状、三角形状のストライプ、ピラミッド形状等を用いることも可能である。
また、このような凹凸の形成方法としては混色防止用無機透明基板の表面に所望する形状の凹凸を形成することが可能な方法であれば、特に限定されず、ウェットエッチングでもよいし、ドライエッチングでもよいが、通常ウェットエッチングが好適に用いられる。これは、ウェットエッチングはコストや生産効率の点で有利であるからであり、かつ、化学反応で溶解が進行するため、エッチング剤を選択することにより、エッチング速度を制御することが容易であるからである。
【0065】
上記エッチングに用いられるエッチング剤としては、上記混色防止用無機透明基板の表面を所望する形状にエッチングすることができるものであれば、特に限定されず、たとえば、ウェットエッチングの場合は、フッ酸、フッ化ホウ素酸等が挙げられ、また、ドライエッチングの場合、フッ化ホウ素、四フッ化炭素等が挙げられる。
【0066】
本工程における上記ウェットエッチングおよびドライエッチングの方法としては、一般的な無機材料の透明基板の加工の際に用いられる方法と同様なので、ここでの説明は省略する。
【0067】
上記混色防止用無機透明基板に用いられる材料としては、透明で、水蒸気、酸素、脱離ガスなどのガスに対してガスバリア性を発現し、混色防止用無機透明基板の表面に上述したような凹凸を形成することができるものであれば、特に限定されない。
詳しくは、「(1)第1の態様」の項で説明したものと同様とすることができるので、ここでの記載は省略する。
【0068】
本態様に用いられる混色防止用無機透明基板の厚みとしては、混色防止用無機透明基板の表面に上述したような凹凸を形成することができ、ガスバリア性を有することができる膜厚で、かつ、混色防止機能を妨げない程度の膜厚であれば特に限定されるものではない。このような混色防止用無機透明基板の厚みとしては、5μm〜200μmの範囲内、なかでも10μm〜150μmの範囲内、特に、20μm〜100μmの範囲内であることが好ましい。上記範囲に満たない場合、表面に上記のような凹凸を形成することは困難であり、上記範囲を超える場合、混色防止機能を妨げる可能性があるからである。
【0069】
本態様に用いられる混色防止用無機透明基板の大きさ(面積)、形状としては、上述した「(1)第1の態様」の項で説明したものと同様とすることができるので、ここでの記載は省略する。
【0070】
(4)その他
上記混色防止用無機透明基板に混色防止機能を付与する態様としては、上述した3つの態様のうちいずれか1つを選択して用いてもよいし、3つの態様のうち2つを組み合わせて用いてもよいし、3つの態様をすべて用いてもよい。
【0071】
また、本発明に用いられる混色防止用無機透明基板は、例えば図3に示すように、混色防止用無機透明基板4上に乾燥剤を挿入するための凹部6を有していてもよいし、また、例えば図4に示すように、混色防止用無機透明基板4上に柱状スペーサ7を一体で形成してもよい。
上記混色防止用無機透明基板の加工と一括して、上記凹部や上記柱状スペーサの形成を行うことができるので工程数を減らすことができ、コストを削減することができるからである。
ここで、図3および図4において説明していない符号は、図1で説明したものと同様とすることができるので、ここでの記載は省略する。
【0072】
上記凹部の形成方法としては、上記混色防止用無機透明基板が所望する凹部を有することができるように形成することができれば特に限定されない。また、上記柱状スペーサの形成方法としては、上記混色防止用無機透明基板に所望する柱状スペーサを一体で形成することができるのであれば特に限定されない。
いずれの場合も、通常、エッチングにより形成される。エッチングの方法としては、ドライエッチングであってもよいし、ウェットエッチングであってもよい。通常ウェットエッチングが好適に用いられる。
【0073】
さらに本発明においては、上記混色防止用無機透明基板上に有機EL表示装置の発光層から発光された光が上記混色防止用無機透明基板表面で反射するのを防止する反射防止層を有していてもよい。
このような反射防止膜としては、SiOやMgF、Al23、TiO等の低屈折の薄膜が挙げられる。
【0074】
2.調色層
次に、本発明に用いられる調色層について説明する。本発明に用いられる調色層は透明基板上に形成されるものである。
【0075】
上述したように、本発明において「調色層」とは、有機EL表示装置が発色の良好なカラー表示を行うために、有機EL表示装置の発光層からの光の色を調整する層である。
このような調色層としては、有機EL表示装置の発光層からの光の色を所望する色に調整することができるのであれば特に限定されるものではない。
このような、調色層の態様としては、調色層が着色層である態様(第4の態様)、調色層が着色層と、上記着色層上に形成された色変換層とからなる態様(第5の態様)、調色層が色変換層である態様(第6の態様)が挙げられる。以下、それぞれの態様について説明する。
【0076】
(1)第4の態様
本態様において、調色層とは、着色層を指すものである。
このような着色層は、通常、赤色、緑色、青色の3色からなる。
【0077】
各色の着色層は、画素に対応して規則的に配列される。着色層の配列としては、各色の着色層が巨視的に見て平均的に配列されていれば特に限定されるものではなく、例えばストライプ配列、モザイク配列、デルタ配列等が挙げられる。
【0078】
上記着色層は、各色の顔料や染料等の着色剤をバインダ樹脂中に分散または溶解させたものである。
赤色着色層に用いられる着色剤としては、例えばペリレン系顔料、レーキ顔料、アゾ系顔料、キナクリドン系顔料、アントラキノン系顔料、アントラセン系顔料、イソインドリン系顔料等が挙げられる。これらの顔料は単独で用いてもよく2種以上を混合して用いてもよい。
緑色着色層に用いられる着色剤としては、例えばハロゲン多置換フタロシアニン系顔料もしくはハロゲン多置換銅フタロシアニン系顔料等のフタロシアニン系顔料、トリフェニルメタン系塩基性染料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料等が挙げられる。これらの顔料もしくは染料は単独で用いてもよく2種以上を混合して用いてもよい。
青色着色層に用いられる着色剤としては、例えば銅フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、インダンスレン系顔料、インドフェノール系顔料、シアニン系顔料、ジオキサジン系顔料等が挙げられる。これらの顔料は単独で用いてもよく2種以上を混合して用いてもよい。
【0079】
また、着色層に用いられるバインダ樹脂としては、透明な樹脂が挙げられる。
着色層の形成方法として印刷法を用いる場合、バインダ樹脂としては、例えばポリメチルメタクリレート樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ヒドロキシエチルセルロース樹脂、カルボキシメチルセルロース樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、マレイン酸樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。
また、着色層の形成方法としてフォトリソグラフィー法を用いる場合、バインダ樹脂としては、通常、アクリレート系、メタクリレート系、ポリ桂皮酸ビニル系、もしくは環化ゴム系等の反応性ビニル基を有する電離放射線硬化性樹脂が使用される。通常は、電子線硬化性樹脂または紫外線硬化性樹脂が用いられる。
紫外線硬化性樹脂を使用する場合には、バインダ樹脂に光重合開始剤が単独または複数組み合わせて使用される。また、紫外線硬化性樹脂を用いる場合には、必要に応じて増感剤、塗布性改良剤、現像改良剤、架橋剤、重合禁止剤、可塑剤、難燃剤等を用いてもよい。
【0080】
また、着色層の形成方法としては、例えば着色剤をバインダ樹脂に混合、分散または可溶化させて着色層形成用塗工液を調製し、この着色層形成用塗工液を用いてフォトリソグラフィー法によってパターニングする方法、あるいは、着色層形成用塗工液を用いてインクジェット法によりパターニングする方法が用いられる。
【0081】
本発明に用いられる着色層の膜厚としては、一般的なカラーフィルタに用いられる着色層の膜厚と同様とすることができる。
【0082】
(3)第5の態様
本態様において調色層とは、着色層と、上記着色層上に形成された色変換層とからなるものを指す。
【0083】
図5は、本態様の有機EL表示装置用カラーフィルタの一例を示す概略断面図である。図5に示すように、有機EL表示装置用カラーフィルタ10は、透明基板1と、透明基板1上に形成された着色層2(図5中では、赤色着色層2R、緑色着色層2G、青色着色層2B)と、各色の着色層2上に形成された色変換層2’(図5中では、赤色色変換層2’R,緑色色変換層2’G、および青色色変換層2’B)と、色変換層2’上に形成された接着剤層3と、接着剤層3上に形成されたガスバリア性および混色防止機能を有する混色防止用無機透明基板4とを有するものである。また、本態様においては、着色層2の間に遮光部5を形成してもよい。
【0084】
本態様によれば、調色層が、着色層と、着色層上に形成された色変換層とからなるものであることから、有機EL表示装置の発光層からの光の色相補正が可能となり、3原色のバランスの優れた有機EL表示装置用カラーフィルタとすることができる。
【0085】
(i)着色層
本態様に用いられる着色層については、上述した「(1)第4の態様」の項で記載したものと同様であるため、ここでの記載は省略する。
【0086】
(ii)色変換層
本態様に用いられる色変換層は、着色層に対応して設けられるものであり、通常は赤色色変換層、緑色色変換層および青色色変換層の3種類の色変換層を有するものである。本態様においては、3種類の色変換層が全て着色層上に形成されていてもよく、3種類の色変換層のうち1種類または2種類の色変換層が着色層上に形成されていてもよい。
【0087】
また、本態様に用いられる色変換層の構成は、本発明の有機EL素子用カラーフィルタを適用する有機EL表示装置の発光層の構成により異なるものとなる。
【0088】
本発明の有機EL素子用カラーフィルタ基板を例えば青色発光する青色発光層を有する有機EL表示装置に用いる場合、色変換層への入射光は一般に青色光の成分を含むものであるか、あるいは青色光および緑色光の成分を含むものである場合が多い。
【0089】
色変換層への入射光が青色光の成分を含むものである場合は、色変換層は、入射光を赤色光に変換する赤色色変換層と入射光を緑色光に変換する緑色色変換層とを少なくとも有すればよい。
【0090】
またこの場合、色変換層への入射光が青色光の成分を含むので、青色色変換層は原則的には色変換を行う必要がないことから、青色色変換層は形成されていなくてもよい。したがって、青色着色層上には何も形成されていなくてもよいが、有機EL素子用カラーフィルタ基板表面を平坦化するために、赤色色変換層および緑色色変換層と同様の厚みを有する透過層を有していてもよい。
この透過層は、入射光を透過するものであり、青色着色層上に形成されている場合は青色光を透過するものであれば特に限定されるものではなく、例えば色変換蛍光体を含まず、後述する樹脂からなるものとすることができる。
【0091】
一方、色変換層への入射光が青色光および緑色光の成分を含むものである場合は、色変換層は、入射光を赤色光に変換する赤色色変換層を少なくとも有すればよい。この場合、赤色色変換層が赤色着色層上に部分的に形成される。
【0092】
またこの場合、色変換層への入射光が青色光および緑色光の成分を含むので、青色色変換層および緑色色変換層は原則的には色変換を行う必要がないことから、青色色変換層および緑色色変換層は形成されていなくてもよい。したがって、青色着色層および緑色着色層上には何も形成されていなくてもよいが、有機EL素子用カラーフィルタ基板表面を平坦化するために、赤色色変換層と同程度の厚みをもつ透過層が形成されていてもよい。
この透過層は、入射光を透過するものであり、青色着色層上に形成されている場合は青色光を透過するものであり、緑色着色層上に形成されている場合は緑色光を透過するものであれば特に限定されるものではなく、例えば色変換蛍光体を含まず、後述する樹脂からなるものとすることができる。
【0093】
さらに、本発明の有機EL素子用カラーフィルタ基板を例えば白色発光する白色発光層を有する有機EL表示装置に用いる場合、色変換層への入射光は一般に赤色光および青色光の成分を含むものである場合が多い。したがって、色変換層は、入射光を緑色光に変換する緑色色変換層を少なくとも有すればよい。
【0094】
またこの場合、色変換層への入射光が赤色光および青色光の成分を含むので、赤色色変換層および青色色変換層は原則的には色変換を行う必要がないことから、赤色色変換層および青色色変換層は形成されていなくてもよい。この場合、赤色着色層および青色着色層上には何も形成されていなくてもよいが、緑色色変換層と同程度の厚みをもつ透過層がそれぞれ形成されていてもよい。
【0095】
上述した説明においては、本発明の有機EL素子用カラーフィルタ基板を適用する有機EL表示装置における発光層の発光光源の種類に応じた色変換層の構成について述べたが、本発明に用いられる色変換層の構成については、発光層の発光光源の種類に応じて特に限定されるものではなく、色変換層が所望の色相補正を行うことができればよい。
【0096】
上記色変換層に用いられる材料は、入射光を吸収して各色の蛍光を発する色変換蛍光体が樹脂中に分散または溶解されたものであり、3色とも通常の有機EL表示装置用カラーフィルタに使用される色変換層の材料と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0097】
上記色変換層においては、色変換層が形成されていない場合に透過層が形成されていてもよい。
透過層が形成されている場合、この透過層は、赤色着色層上に形成されている場合は赤色光を透過するものであり、緑色着色層上に形成されている場合は緑色光を透過するものであり、青色着色層上に形成されている場合は青色光を透過するものであれば特に限定されるものではなく、例えば色変換蛍光体を含まず、通常用いられる樹脂からなるものとすることができる。
【0098】
上記色変換層の厚みとしては、0.5μm〜30μm程度であることが好ましく、より好ましくは5μm〜20μm、さらに好ましくは8μm〜15μmの範囲内である。色変換層の厚みが厚すぎると色変換層の構成による段差(凹凸)が大きくなり、その表面を平坦化するのが困難となるからである。逆に、色変換層の厚みが薄すぎると、色変換効率が低下する可能性があるからである。また、上記と同様に、色変換層の厚みを薄膜化ために色変換層中の有機蛍光体の含有量を増やすと濃度消光が生じるおそれがある。
【0099】
色変換層の形成方法としては、例えば上記各色変換蛍光体および樹脂を必要に応じて溶剤、希釈剤もしくは適宜な添加剤と共に混合して、各色変換層形成用塗工液を調製し、この各色変換層形成用塗工液を用いてフォトリソグラフィー法によってパターニングする方法、あるいは、上記の各色変換層形成用塗工液を用いて印刷法によりパターニングする方法が用いられる。
なお、着色層と色変換層とは、図5に示したものと逆の順に積層されていてもよい。
【0100】
(3)第6の態様
本態様において調色層とは、色変換層を指す。
【0101】
図6は、本態様の有機EL表示装置用カラーフィルタの一例を示す概略断面図である。本態様の有機EL表示装置用カラーフィルタ10は、透明基板1と、上記透明基板上記形成された色変換層2’(図5中では、赤色色変換層2’R,緑色色変換層2’G、および青色色変換層2’B)と、色変換層2’上に形成された接着剤層3と、接着剤層3上に形成されたガスバリア性および混色防止を有する混色防止用無機透明基板4とを有するものである。本態様においては、色変換層2’の間に遮光部5を有していてもよい。
【0102】
本態様に用いられる色変換層は、発光層の発光光源の種類に応じて特に限定されるものではなく、色変換層が所望の色相補正を行うことができれば特に限定されるものではないが、上記色変換層が青系の光を赤色に変化させる赤色色変換層、および青系の光を緑色に変換させる緑色色変換層を有する色変換層であることが好ましい。色変換層への入射光は一般に青色光の成分を含むものであるか、あるいは青色光および緑色光の成分を含むものである場合が多いからである。発光層からの光が青色光であるため、青色色変換層を形成する必要はないが、色変換層を平坦化させるために、赤色色変換層および緑色色変換層と同等の厚みを有する透過層を形成してもよい。
【0103】
赤色色変換層、緑色色変換層、および透過層については、上述した「(5)第5の態様」の項で説明したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0104】
(4)その他
本発明においては、調色層が着色層であることが好ましい。着色層に含まれる顔料を調整することにより、有機EL表示装置用カラーフィルタの発色を良好なものに調整することができるからである。
【0105】
3.接着剤層
本発明に用いられる接着剤層は、上述した調色層上に形成され、上述した混色防止用無機透明基板を接着するために形成されるものである。
【0106】
上記接着剤層に用いられる接着剤としては、透明で接着力を有し、かつ、硬化性を有するものであれば特に限定されるものではない。このような接着剤としては、熱硬化性を有する接着剤、もしくは光硬化性を有する接着剤が挙げられ、通常無溶剤タイプのものが用いられる。またフィルム状の接着シートなどを用いても良い。
具体的には、合成ゴム系、アクリル系、エポキシ系、ポリイミド系などの接着剤、接着シートが挙げられる。
【0107】
本発明に用いられる接着剤としては、上述した混色防止用無機透明基板の屈折率よりも、接着剤層の屈折率がより大きくなる接着剤がより好ましい。有機EL表示装置の発光層から発光された光が混色防止用無機透明基板を透過して、接着剤層へ入射するときの透明基板表面の垂直方向に対する角度がより小さくなるため、混色防止機能をより高くすることができるからである。
また、本発明に用いられる接着剤としては、上記接着剤層の屈折率よりも、後述する透明基板の屈折率がより大きくなる接着剤がさらに好ましい。有機EL表示装置の発光層から発光された光が接着剤層を透過して、透明基板へ入射するときの透明基板表面の垂直方向に対する角度がより小さくなるため、混色防止機能をより高くすることができるからである。
【0108】
上記接着剤層の膜厚としては、上記接着剤層が接着剤からなる場合は、1μm〜50μmの範囲内、なかでも2μm〜30μmの範囲内、特に3μm〜10μmの範囲内であることが好ましい。
また、上記接着剤層がフィルム状の接着シートからなる場合は、フィルム状の接着シートの膜厚としては、10μm〜200μmの範囲内、なかでも15μm〜150μmの範囲内、特に30μm〜100μmの範囲内であることが好ましい。接着剤の場合は層の厚みが上記範囲で接着することができる。接着シートは上記の範囲内で接着加工することができる。上記範囲は極力薄い方が良いが、技術的にはこの範囲であれば接着性、透明性に優れる接着を行うことができる。よって望ましいのは接着剤を用いる方法である。
【0109】
4.透明基板
本願に用いられる透明基板の材料としては、透明性を有し、カラーフィルタに用いることができるものであれば特に限定されるものではなく、透明無機基板であってもよいし、透明な樹脂基板であってもよい。
このような材料としては、例えば、石英ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、合成石英板等の可撓性のない透明な無機基板、および、透明樹脂フィルム、光学用樹脂板等の可撓性を有する透明な樹脂基板等を挙げることができる。なかでも本発明において透明な無機基板を用いることが好ましく、特に、ガラス基板を用いることが好ましい。さらには、上記ガラス基板のなかでも無アルカリタイプのガラス基板を用いることが好ましい。上記無アルカリタイプのガラス基板は寸度安定性および高温加熱処理における作業性に優れるからである。
【0110】
5.その他の部材
本発明においては、上述した混色防止用無機透明基板、調色層、接着剤層、透明基板以外にも必要な部材を適宜加えることができる。このような部材としては、例えば画素を区画する遮光部が挙げられる。遮光部については、一般的なカラーフィルタに用いられるものと同様とすることができるので、ここでの記載は省略する。
【0111】
6.用途
本発明の有機EL表示装置用カラーフィルタは、有機EL表示装置を形成する際に用いられる。
【0112】
B.有機EL表示装置用カラーフィルタの製造方法
次に本発明の有機EL表示装置用カラーフィルタの製造方法について説明する。
本発明の有機EL表示装置用カラーフィルタの製造方法は、透明基板上に調色層を形成する調色層形成工程と、上記調色層上に接着剤層を形成し、混色防止用無機透明基板を貼り合わせる混色防止用無機透明基板接着工程と、上記混色防止用無機透明基板を薄膜化する混色防止用無機透明基板薄膜化工程とを有する製造方法である。
【0113】
本発明の有機EL表示装置用カラーフィルタの製造方法を図を用いて説明する。
図7は、本発明の有機EL表示装置用カラーフィルタの製造方法の一例を示す工程図である。ここで、図7においては、調色層は着色層であるとする。本発明の有機EL表示装置用カラーフィルタの製造方法は、例えば遮光部5を有する透明基板1上に複数の着色層2(図中では、赤色着色層2R、緑色着色層2G、青色着色層2B)を形成する(図7(a))調色層形成工程と、着色層2上に接着剤層3を形成して(図7(b))、混色防止用無機透明基板4を貼り合わせる(図7(c))混色防止用無機透明基板接着工程と、混色防止用無機透明基板4を薄膜化する(図7(d))混色防止用無機透明基板薄膜化工程を有する製造方法である。
【0114】
本発明によれば、上記混色防止用無機透明基板を接着剤層により調色層と貼り合わせて薄膜化させて有機EL表示装置用カラーフィルタにガスバリア性を付与しているため、従来行われていた無機透明材料を直接調色層上にスパッタすることによってガスバリア性を有する層を形成する方法に比べ、コストを低くすることができる。
また、本発明においては、従来のガスバリア性を有する層に比べて、ピンホール欠陥や、クラック等の欠陥が生じないため、ガスバリア性に優れたものとすることができる。
さらに、本発明によれば、混色防止用無機透明基板を所望する厚みまで薄膜化することによって、本発明の有機EL表示装置用カラーフィルタの製造方法によって製造された有機EL表示装置用カラーフィルタを用いて有機EL表示装置とした際に、有機EL表示装置の発光層からの光の混色を防止する機能を混色防止用無機透明基板に付与することができる。
以下、各工程について説明する。
【0115】
1.調色層形成工程
本工程は、透明基板上に調色層を形成する工程である。
本工程に用いられる透明基板、調色層の材料、形成方法等は「A.有機EL表示装置用カラーフィルタ」の項で説明したものと同様とすることができるのでここでの記載は省略する。
【0116】
2.混色防止用無機透明基板接着工程
本工程は、上記調色層上に接着剤層を形成し、混色防止用無機透明基板を貼り合わせる工程である。
【0117】
本工程に用いられる混色防止用無機透明基板の材料、および接着剤としては「A.有機EL表示装置用カラーフィルタ」の項で記載したものと同様とすることができるので、ここでの記載は省略する。
【0118】
本工程においては、接着剤を調色層上に塗布し、混色防止用無機透明基板を貼り合わせてから光、もしくは熱により接着剤を硬化させるものである。
本工程において、接着剤を調色層上に塗布する方法としては、接着剤を均一に塗布することができるのであれば特に限定されるものではない。
また、接着剤層と混色防止用無機透明基板を貼り合わせる方法としては、気泡等が入ることなく、接着剤層と混色防止用無機透明基板とを貼り合わせることができるのであれば特に限定されるものではないが、なかでも真空下で貼り合わせることが好ましい。混色防止用無機透明基板と接着剤層とを貼り合わせる際に、接着剤層と混色防止用無機透明基板との間に空気が入ることによって気泡が発生するのを防ぐことができるからである。
【0119】
本工程に用いられる薄膜化処理前の混色防止用無機透明基板の厚みとしては、0.1mm〜0.7mmの範囲内、なかでも0.4mm〜0.7mmの範囲内であることが好ましい。
上記範囲に満たない場合、ガラスの搬送時、着色層との接着時に割れを生じる可能性があり、扱いが困難になるからである。また、コストも高くなる。上記範囲を超える場合は、後述する混色防止用無機透明基板薄膜化工程において、薄膜化処理を行うのに時間がかかり、コストが高くなるからである。
上記範囲内では、後の工程を考えると薄膜化処理前の混色防止用無機透明基板の厚みは薄い方が良い。研磨量を少なくすることで、コストが抑えられるからである。
また、サイズの大きな有機EL表示装置用カラーフィルタ(370×470mmや550×650mmなど)に用いられる場合、混色防止用無機透明基板としては、0.4mm程度の厚みがコスト的に安く手に入りやすいため、好ましい。
【0120】
3.混色防止用無機透明基板薄膜化工程
本工程は、上記混色防止用無機透明基板を薄膜化する工程である。
【0121】
本工程に用いられる薄膜化処理方法としては、混色防止用無機透明基板を所望する厚みまで均一に薄膜化することができる方法であれば特に限定されず、機械を用いた機械研磨方法や、エッチング等による化学的薄膜化法が挙げられる。
本工程においては、製造される有機EL表示装置用カラーフィルタが、例えば図11に示すように、混色防止用無機透明基板4上に透明電極層24が形成されているような有機EL表示装置に用いられる場合は、機械研磨方法を用いることが好ましい。機械研磨方法により薄膜化処理を行った場合、混色防止用無機透明基板表面が平滑性に優れたものになるからである。
また、製造される有機EL表示装置用カラーフィルタが、例えば図8に示すように、有機EL表示装置用カラーフィルタ10の混色防止用無機透明基板4と、有機EL素子側基板20の有機EL素子25が形成された面とを対向させて封止したような有機EL表示装置に用いられる場合は、エッチングによる方法が好ましい。エッチングの方が薄膜化処理を容易に行うことができ、コストを低げることができるからである。
詳しい薄膜化処理方法については、「A.有機EL表示装置用カラーフィルタ」の項で説明したので、ここでの記載は省略する。
また、図8および図11については、後述する「C.有機EL表示装置」の項で詳しく説明するので、ここでの記載は省略する。
【0122】
また、本工程においては、図3に示すように、混色防止用無機透明基板に乾燥剤を挿入するための凹部6を形成する凹部形成工程や、図4に示すように、混色防止用無機透明基板上に柱状スペーサ7を一体で形成する柱状スペーサ形成工程を同時に行ってもよい。
上記の場合も、エッチング等による化学的薄膜化法を用いることが好ましい。
【0123】
本工程後の混色防止用無機透明基板の厚みとしては、「A.有機EL表示装置用カラーフィルタ」の混色防止用無機透明基板の項で記載したものと同様とすることができるのでここでの記載は省略する。
【0124】
4.その他の工程
本発明の有機EL表示装置用カラーフィルタの製造方法は、上述した調色層形成工程、混色防止用無機透明基板接着工程、および混色防止用無機透明基板薄膜化工程を少なくとも有する製造方法であれば特に限定されるものではなく、必要な工程を適宜加えることができる。
例えば透明基板上に遮光部を形成する遮光部形成工程、混色防止用無機透明基板の接着剤層側表面に有機EL表示装置とした際上記有機EL表示装置の発光層から発光された光が、上記混色防止用無機透明基板を透過した際に、上記透明基板表面の垂直方向に対する角度が小さくなるようにするための凹凸を形成する混色防止用無機透明基板凹凸形成工程、混色防止用無機透明基板に凹部を形成する凹部形成工程、および柱状スペーサを混色防止用無機透明基板と一体で形成する柱状スペーサ形成工程等が挙げられる。
【0125】
C.有機EL表示装置
次に、本発明の有機EL表示装置について説明する。
本発明の有機EL表示装置は、透明基板と、上記透明基板上に形成された調色層と、上記調色層上に形成された接着剤層と、上記接着剤層上に配置されたガスバリア性を有する混色防止用無機透明基板とを有する有機EL表示装置用カラーフィルタと、上記有機EL素子用カラーフィルタ基板の混色防止用無機透明基板上に形成された有機EL素子とを有することを特徴とするものである。
本発明においては、有機EL表示装置の構成の違いにより2つの態様が存在する。以下、第1実施態様および第2実施態様として、それぞれ説明する。
【0126】
I.第1実施態様
本実施態様の有機EL表示装置は、透明基板と、上記透明基板上に形成された調色層と、上記調色層上に形成された接着剤層と、上記接着剤層上に配置されたガスバリア性を有する混色防止用無機透明基板とを有する有機EL表示装置用カラーフィルタと、基板上に形成された有機EL素子を有する有機EL素子側基板と、上記有機EL表示装置用カラーフィルタおよび有機EL素子側基板の周縁部に形成され、上記有機EL素子を封止するシール剤と、を有し、上記有機EL表示装置用カラーフィルタの混色防止用無機透明基板上に有機EL素子が形成されている側が対向するように配置されたものである。
【0127】
図8は、本実施態様の有機EL表示装置の一例を示す概略断面図である。図8では、調色層は、着色層であるとする。
図8に示すように、本実施態様の有機EL表示装置30は、基板21および上記基板21上に形成され有機EL素子25を有する有機EL素子側基板20と、透明基板1、上記透明基板1上に形成された遮光部5、遮光部5の開口部に形成された複数色の着色層2(図中では赤色着色層2R、緑色着色層2G、青色着色層2B)、着色層2上に形成された接着剤層3、および接着剤層3上に配置されガスバリア性を有する混色防止用無機透明基板4を有し、上記有機EL素子側基板20の有機EL素子25が形成された面と、混色防止用無機透明基板4が形成された面とが対向するように配置された有機EL表示装置用カラーフィルタ10と、上記有機EL表示装置用カラーフィルタ10および有機EL素子側基板20の周縁部に形成され、上記有機EL素子25を封止するシール剤27とを有するものである。
なお、図8においては、上記有機EL素子が、背面電極層22、有機EL層23、および透明電極層24を含むものであり、上記有機EL素子側基板20が、上記背面電極層22の開口部に形成された絶縁層26を有するものである。
【0128】
本実施態様によれば、上記混色防止用無機透明基板を有することによって、有機EL層を調色層から発生する脱離ガスから保護することができるので、耐久性の高い有機EL表示装置とすることができる。また、上記混色防止用無機透明基板は、有機EL層からの光の混色防止機能を有するため、各色の混色を防止し、高効率で高品位な有機EL表示装置とすることができる。
以下、各構成について説明する。
【0129】
1.有機EL表示装置用カラーフィルタ
本実施態様に用いられる有機EL表示装置用カラーフィルタについては、「A.有機EL表示装置用カラーフィルタ」の項で説明したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0130】
2.有機EL素子側基板
本実施態様に用いられる有機EL素子側基板は、基板と、有機EL素子とを少なくとも有するものであり、通常、絶縁層を有するものである。
【0131】
(1)基板
本実施態様に用いられる基板としては、後述する有機EL素子等を支持することができるものであれば良く、有機EL表示装置に一般的に用いられるものを使用することができる。
なお、本実施態様においては、上記有機EL表示装置用カラーフィルタ側から光が取り出されるものであるため、上記基板としては、透明であっても、不透明であっても良い。
【0132】
(2)有機EL素子
本実施態様における有機EL素子は、背面電極層および透明電極層と、上記両電極層により挟まれ、発光層を少なくとも含む有機EL層とを含むものである。
【0133】
(i)有機EL層
本実施態様に用いられる有機EL層は、少なくとも発光層を含む1層もしくは複数層の有機層から構成されるものであり、通常、正孔注入層や電子注入層といった電荷注入層や、発光層に正孔を輸送する正孔輸送層、発光層に電子を輸送する電子輸送層といった電荷輸送層を有するものとすることができる。
【0134】
(ii)透明電極層および背面電極層
本実施態様における透明電極層は、透明電極層と背面電極層との間に挟まれた有機EL層に電圧をかけ、発光層で発光を起こさせるために設けられるものである。また、発光層で発生した光を、上記有機EL表示装置用カラーフィルタ側に透過させるものである。したがって、上記有機EL層と、上記有機EL表示装置用カラーフィルタとの間に配置されるものである。
また、本実施態様における背面電極層は、上記有機EL層と、上記基板との間に配置されたものである。背面電極層は、有機EL層を発光させるための他方の電極をなすものであり、上記透明電極層と反対の電荷が印加される電極である。
【0135】
このような透明電極層および背面電極層としては、発光層に所望の発光をさせることができるものであれば良く、有機EL表示装置に一般的に用いられるものを使用することができる。
【0136】
3.絶縁層
本実施態様における絶縁層は、透明電極層と背面電極層とが直接接触することを防ぐために形成されるものである。
【0137】
このような絶縁層としては、有機EL表示装置に一般的に用いられるものを使用することができるため、ここでの説明は省略する。
【0138】
4.シール剤
本実施態様に用いられるシール剤は、上記カラーフィルタおよび有機EL素子側基板の周縁部に形成され、上記有機EL素子を封止するものである。
【0139】
このようなシール剤の構成材料としては、上記有機EL素子を、大気中の水分等と接触することを抑制することができるものであれば良く、有機EL表示装置に一般的に用いられるものを使用することができる。
【0140】
5.有機EL表示装置
本実施態様に用いられる有機EL表示装置は、上記有機EL表示装置用カラーフィルタ、有機EL素子側基板、およびシール剤を少なくとも有するものであるが、必要に応じてその他の構成を有するものであっても良い。
また、図9に示すように、有機EL表示素子側基板20と、有機EL表示装置用カラーフィルタ10との間に乾燥剤41を挿入してもよい。ここで、用いられる乾燥剤としては、大気中の水分等が侵入しても乾燥させることができるものであればよく、有機EL表示装置に一般的に用いられるものを使用することができる。
また、図10に示すように、有機EL表示素子側基板20と、有機EL表示装置用カラーフィルタ10との間に柱状スペーサ7を有していてもよい。
ここで、説明していない図9および図10の符号については図8と同様であるのでここでの説明は省略する。
【0141】
本実施態様の有機EL表示装置の駆動方法としては、アクティブマトリックス方式、およびパッシブマトリックス方式のどちらの方式でも駆動させることができる。
【0142】
II.第2実施態様
本実施態様の有機EL表示装置は、透明基板と、上記透明基板上に形成された調色層と、上記調色層上に形成された接着剤層と、上記接着剤層上に配置されたガスバリア性を有する混色防止用無機透明基板とを有する有機EL表示装置用カラーフィルタと、上記有機EL素子用カラーフィルタ基板の混色防止用無機透明基板上に形成された透明電極層と、上記透明電極層上に形成された有機EL層と、上記有機EL層上に形成された対向電極層とを有する有機EL表示装置ものである。
【0143】
図11は、本実施態様の有機EL表示装置の一例を示す概略断面図である。ここで、図11においては、調色層は着色層であるとする。
図11に示すように、本実施態様の有機EL表示装置30は、透明基板1、透明基板1上に形成された遮光部5、遮光部5の開口部に形成された複数の着色層2(図中では赤色着色層2R、緑色着色層2G、青色着色層2B)、着色層2上に形成された接着剤層3、および接着剤層3上に配置されガスバリア性を有する混色防止用無機透明基板4を有する有機EL表示装置用カラーフィルタ10と、有機EL表示装置用カラーフィルタ10の混色防止用無機透明基板4上に透明電極層24、有機EL層23、および対向電極層28が形成されており、混色防止用無機透明基板4上の透明電極層24の間に絶縁層26が形成され、その上に隔壁部15が形成されているものである。
【0144】
本実施態様によれば、上記混色防止用無機透明基板を有することによって、有機EL層を調色層から発生する脱離ガスから保護することができるので、耐久性の高い有機EL表示装置とすることができる。また、上記混色防止用無機透明基板は、有機EL層からの光の混色防止機能を有するため、各色の混色を防止し、高効率で高品位な有機EL表示装置とすることができる。
以下、各構成について説明する。
【0145】
1.有機EL表示装置用カラーフィルタ
本実施態様に用いられる有機EL表示装置用カラーフィルタについては、「A.有機EL表示装置用カラーフィルタ」の項で説明したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0146】
2.有機EL層
本実施態様に用いられる有機EL層については、上述した「I.第1実施態様」の項で説明したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0147】
3.透明電極層および対向電極層
本実施態様における透明電極層は、透明電極層と対向電極層との間に挟まれた有機EL層に電圧をかけ、発光層で発光を起こさせるために設けられるものである。また、発光層で発生した光を、上記有機EL表示装置用カラーフィルタ側に透過させるものである。したがって、上記有機EL層と、上記有機EL表示装置用カラーフィルタとの間に配置されるものである。
また、本発明における対向電極層は、上記有機EL層上に配置されたものである。背面電極層は、有機EL層を発光させるための他方の電極をなすものであり、上記透明電極層と反対の電荷が印加される電極である。
【0148】
このような透明電極層および対向電極層としては、発光層に所望の発光をさせることができるものであれば良く、有機EL表示装置に一般的に用いられるものを使用することができる。
【0149】
4.有機EL表示装置
本実施態様の有機EL表示装置は、上述した有機EL表示装置用カラーフィルタと、透明電極層、有機EL層、および対向電極層を有しているのであれば特に限定されるものではなく、必要な部材を適宜加えることができる。このような部材としては、絶縁層、および隔壁部がある。以下、それぞれについて説明する。
【0150】
(1)絶縁層
本実施態様に用いられる絶縁層は、ストライプ状に形成された透明電極層の間に配置されるものである。
上記絶縁層については、上述した「I.第1実施態様」の項で説明したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0151】
(2)隔壁部
本実施態様に用いられる隔壁部は、絶縁層上に形成され、発光層等を形成する際のマスクの役割を果たすものである。この隔壁部の形成材料としては、例えば感光性ポリイミド樹脂、アクリル系樹脂等の光硬化型樹脂、または熱硬化型樹脂、あるいは無機透明材料などを用いることができる。この場合、隔壁部の表面エネルギー(濡れ性)を変化させる処理を行ってもよい。
【0152】
5.その他
本実施態様の有機EL表示装置の駆動方法としては、パッシブマトリクス方式により駆動させることができる。
【0153】
III.用途
本発明の有機EL表示装置は、携帯情報端末等に用いることができる。
【0154】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0155】
[実施例]
カラーフィルタを形成するガラスとしてOA10(日本電気硝子社製370×470mm0.7t)を用いた。カラーフィルタを形成した後、接着層を5μmの厚みで塗布した後、真空貼り合せ機で無機透明ガラスOA10(日本電気硝子社製100×100mm0.7t)を貼り合せて接着させた。その後、後工程としてカラーフィルタ上に接着させたガラス全体をエッチングにより50μmまで薄く加工し、目的の混色防止用無機透明基板を有するカラーフィルタを得た。その基板上に、有機EL素子を形成し、封止まで行い発光パネルを得た(このパネルをサンプルAとする)。
【0156】
[比較例]
実施例と同じ材料を用いてカラーフィルタを同条件で作製した後、オーバーコートを積層し、バリア膜としてSiON膜を2000Å成膜させ、バリア膜つきのカラーフィルタを得た。その後、有機EL素子を形成し封止を行い発光パネルを作製した(上記をサンプルBとする)。
【0157】
[評価]
発光パネルのダークスポットについて発生率を調査比較した。
サンプルA:作製直後、200時間経過後共にダークスポット発生無し。
サンプルB:作製直後20μm以上のダークスポットが15個、200時間経過後ダークスポットは拡大し、尚且つ、発生数も30個に増加した。
【0158】
以上からバリアとしては完全な膜をガラス接着後、エッチングすることで達成することができた。
また光漏れなどの評価として外観評価も行った。サンプルAは発光時の光漏れによる混色など観察されなかった。
【符号の説明】
【0159】
1 … 透明基板
2 … 着色層
2’ … 色変換層
3 … 接着剤層
4 … 混色防止用無機透明基板
4’ … 無機透明基板
5 … 遮光部
6 … 凹部
7 … 柱状スペーサ
8 … 凹凸
10 … 有機EL表示装置用カラーフィルタ
20 … 有機EL素子側基板
21 … 基板
22 … 背面電極層
23 … 有機EL層
24 … 透明電極層
25 … 有機EL素子
26 … 絶縁層
27 … シール材
28 … 対向基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板と、前記透明基板上に形成された調色層と、前記調色層上に形成された接着剤層と、前記接着剤層上に配置されたガスバリア性を有する混色防止用無機透明基板とを有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス表示装置用カラーフィルタ。
【請求項2】
前記調色層が、着色層であることを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置用カラーフィルタ。
【請求項3】
前記混色防止用無機透明基板の厚みが、5μm〜200μmの範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項2に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置用カラーフィルタ。
【請求項4】
前記混色防止用無機透明基板の屈折率と、前記接着剤層の屈折率と、当該有機エレクトロルミネッセンス表示装置用カラーフィルタを用いて有機エレクトロルミネッセンス表示装置とした際に、前記接着剤層側とは反対側の面で前記混色防止用無機透明基板と接する接触層の屈折率との関係が、接着剤層の屈折率≧混色防止用無機透明基板の屈折率≧接触層の屈折率となるように、前記混色防止用無機透明基板と、前記接着剤層とが選択されていることを特徴とする請求項1から請求項2に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置用カラーフィルタ。
【請求項5】
前記混色防止用無機透明基板の表面に、当該有機エレクトロルミネッセンス表示装置用カラーフィルタを用いて有機エレクトロルミネッセンス表示装置とした際に、前記有機エレクトロルミネッセンス表示装置の発光層から発光された光が、前記混色防止用無機透明基板を透過した際に、前記透明基板表面の垂直方向に対する角度が小さくなるように、凹凸が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項2に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置用カラーフィルタ。
【請求項6】
前記混色防止用無機透明基板が、前記混色防止用無機透明基板上に乾燥剤を挿入するための凹部を有することを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれかの請求項に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置用カラーフィルタ。
【請求項7】
前記混色防止用無機透明基板上に柱状スペーサが一体で形成されていることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれかの請求項に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置用カラーフィルタ。
【請求項8】
前記混色防止用無機透明基板上に有機EL表示装置の発光層から発光された光が前記混色防止用無機透明基板表面で反射するのを防止する反射防止層を有することを特徴とする請求項1から請求項7までのいずれかの請求項に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置用カラーフィルタ。
【請求項9】
透明基板上に調色層を形成する調色層形成工程と、
前記調色層上に接着剤層を形成し、混色防止用無機透明基板を貼り合わせる混色防止用無機透明基板接着工程と、
前記混色防止用無機透明基板を薄膜化する混色防止用無機透明基板薄膜化工程とを有する有機エレクトロルミネッセンス表示装置用カラーフィルタの製造方法。
【請求項10】
透明基板と、前記透明基板上に形成された調色層と、前記調色層上に形成された接着剤層と、前記接着剤層上に配置されたガスバリア性を有する混色防止用無機透明基板とを有する有機エレクトロルミネッセンス表示装置用カラーフィルタと、前記有機エレクトロルミネッセンス素子用カラーフィルタ基板の混色防止用無機透明基板上に形成された有機エレクトロルミネッセンス素子とを有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−238024(P2012−238024A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−178043(P2012−178043)
【出願日】平成24年8月10日(2012.8.10)
【分割の表示】特願2008−314623(P2008−314623)の分割
【原出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】