説明

有機エレクトロルミネッセンス表示装置

【課題】水分の影響による劣化を防ぐことの可能な信頼性の高い有機EL表示装置を提供する。
【解決手段】封止基板3は、素子基板1と対向する周縁に突堤10を形成して有機EL素子2で構成される表示部との間に空間9を形成する凹部11を有し、凹部11の4辺が交叉するコーナ領域8が表示領域から離れる方向で当該表示領域からはなれる方向で外側に突出させた平面形状とし、この凹部11の際に塗布型吸湿材4を形成してなり、封止基板3側から見て、表示領域の角と塗布型吸湿材4との間に隙間を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置に係り、特に発光素子を配列した表示領域を有する第1の基板を透光性の第2の基板で密封した有機エレクトロルミネッセンス表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス(以下、有機EL)表示装置は、バックライトが必要な液晶表示装置とは異なり、自発光であるため、液晶表示装置よりも薄型で視野角も広く、かつ応答速度が速いために動画表示にも優れている、などの特徴がある。有機EL表示装置を構成する有機EL素子の基本構造は、有機EL発光層が二つの電極の間に挟まれたサンドイッチ構造で、電極の間に電流を流すことで有機EL発光層が発光する。この有機EL素子で構成する画素回路を二次元に複数配置して表示領域を形成した第1の基板(素子基板)と、第1の表示領域を密封する第2の基板(封止基板:封止キャップ)で構成した有機ELパネルに駆動回路等を組み込んで有機EL表示装置が形成される。
【0003】
有機EL素子で構成する画素回路が形成された透明な第1基板(素子基板)を通して発光を取り出すのがボトムエミッション構造であり、画素回路が形成された面を気密封止する透光性の封止基板(封止キャップ)側から発光光を取り出すのがトップエミッション構造である。ボトムエミッション構造は、画素を制御する駆動素子で構成される駆動回路や、駆動素子に走査信号やデータ信号(表示信号)あるいは表示電流を供給する各種の配線等による遮光があるために開口率を高くすることが難しい。一方、トップエミッション構造は、このような構造上の遮光の影響を受け難く、開口率を高くすることができるために高精細化に適している。
【0004】
また、有機EL表示装置では、有機EL素子内部への水分の侵入により、いわゆるダークスポット(非発光部)が発生することがある。そこで、一般に、水分を吸着する吸湿剤、あるいは乾燥剤をシート状等に成形して搭載した封止キャップ(金属製またはガラス製)で有機EL表示装置を構成する素子(有機EL素子、発光素子ともいう)を低水分濃度雰囲気にて封止することによって、有機EL素子内部への水分の侵入を防止している。特許文献1は、封止キャップに凹部を形成し、この凹部の内面にフィルム上の吸湿材を貼り付けて機密封止した構造を開示する。
【0005】
図12は、従来のボトムエミッション構造の有機EL表示装置の構造例を説明する断面図である。図12に示す従来の有機EL表示装置は、有機EL素子で構成した表示回路(有機EL表示回路)502を形成したガラス等の素子基板501と、シート状吸湿材505を内側に設けた封止キャップ506とをシール材503で封着して構成される。封止キャップ506の内側には凹部507が掘り込み形成されており、突堤511と素子基板501の間にシール材503が配置される。そして、凹部507にシート状吸湿材505が収容されている。有機EL表示回路(表示領域)502を有する素子基板501に封止キャップ506を封止した際に、シート状吸湿材505が有機EL表示回路502に接触しないように封止空間504を設けている。
【0006】
この構成の有機EL表示装置は、封止キャップ506側を観察面にすると、シート状吸湿材505に発光光が遮蔽されることになるため、有機EL表示回路(表示領域)502の発光光508を素子基板501から取り出すボトムエミッション構造とするのが一般的である。また、この構造では、素子基板501上に形成される図示しない駆動回路等の配線の遮蔽により開口率が制限されるため、高精細化した際に高輝度を得るのが難しい。
【0007】
トップエミッション構造に対応した封止技術としては、塗布型吸湿材を有機EL素子を遮光しない領域に螺旋状に形成してシール材により平板素子基板と封止キャップを固着して機密構造とし、透光性の封止キャップを通して発光光を取り出すものが特許文献2に開示されている。
【0008】
図13は、凹部を形成した封止キャップを用いて、凹部壁面と有機EL素子との間に塗布型吸湿材を配置した従来のトップエミッション構造の有機EL表示装置を説明する図である。図13(a)は平面図、図13(b)は図13(a)のA―A線に沿った断面図である。図13(a)の直線部107においては、塗布型吸湿材104は有機EL素子102で構成される表示領域から離れているため有機EL素子102に干渉しない。しかし、図示されたように、凹部の平面形状が矩形(長方形)で、角にアール(R:曲率)を取った形状のため、凹部の際(きわ、凹部の内辺に沿った隅)に沿って塗布型吸湿材104を形成した場合、コーナ領域では、コーナ領域108に示したように、塗布型吸湿材104が有機EL素子102に干渉して発光光106を遮蔽してしまう。
【0009】
コーナ領域108における塗布型吸湿材104による遮光を防止するには、シール材105と有機EL素子102の距離を平面上で見て遠く離す(画素領域を狭くするか、額縁(画素領域から封止キャップの外形までの距離)を広げる)必要がある。塗布型吸湿材104によるコーナ部の遮光を防止するために、例えばコーナ領域109に示したように、角の部分で塗布型吸湿材104を開放したパターンにすればよい。しかし、開放端部ではパターンに太りが生じ易いために却って有機EL素子102に干渉する場合があり、また開放パターンとしたことによる局部的な捕水能力の不足を生じる可能性がある。なお、封止キャップ103にはガラス基板を用い、フッ酸を用いて掘り込み加工を行う。
【0010】
図14は、従来の掘り込み形状の封止キャップを用いて凹部壁面と有機EL素子との間に塗布型吸湿材を配置した有機EL表示装置におけるコーナ領域での吸湿材と有機EL素子との干渉を防ぐための位置関係を説明するための要部平面図である。従来、封止キャップの掘り込み部を形成する際に、塗布型吸湿材104の幅をw、コーナの中心パターンの半径をRdで形成した場合、塗布型吸湿材104の最も内側の座標はCとなる。この点に有機EL素子102の角が干渉しないようにするには、塗布型吸湿材104の内側側面から距離nが必要になる。そのため、狭額縁化に支障をきたす。ちなみに、Rd=1mm、w=0.5mmとした場合は、nは約0.22mm以上必要となる。
【0011】
なお、図14において、符号Aは吸湿材コーナ開始座標、Bは吸湿材コーナ終了座標、C’は吸湿材の内側直線部延長交点座標、Dは封止キャップ掘り込み部コーナ開始座標、Eは封止キャップ掘り込み部コーナ終了座標、Rcは封止キャップ掘り込み部コーナ中心半径、mは封止キャップの凹部(掘り込み部)際から吸湿材外側側面までの距離を示す。
【0012】
上記以外のトップエミッション構造に対応した封止技術としては、透光性を有する平板基板上に透光性を有する吸湿材の膜を形成してシール材を用いて素子基板と封止するものが特許文献3に開示がある。
【特許文献1】特開平09−148066号公報
【特許文献2】特開2004−6286号公報
【特許文献3】特開2003−142256号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献1に開示の技術では、シート吸湿材に発光光を遮蔽されるため、ボトムエミッション構造が対象となる。この技術をトップエミッション構造に対応させるためには、有機EL素子に干渉しないスペースにシート乾燥剤を搭載すればよい。しかし、シート乾燥剤を必要な量だけ搭載するスペースの確保が難しく、確保するには額縁(有効画素領域から封止キャップ外形までの距離)を大きくとる必要があり、狭額縁化が困難となる。
【0014】
特許文献2に開示の技術では、有機EL素子を遮光しない領域に螺旋状に塗布型吸湿材を形成するため、有機EL素子からシール材までのスペースを大きくとる必要がある。吸湿材を螺旋状に形成するため、特にコーナ領域が内側に入り狭額縁化が難しい。
【0015】
特許文献3に開示の技術では、有機EL素子が形成された面の全面に対向して吸湿材の膜を形成し発光光を吸湿材を通して取り出す構造のため、発光光に光学的に影響しない膜を安定して広範囲に形成することが非常に難しい。
【0016】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、水分の影響による劣化を防ぐことの可能な信頼性が高く高精細で、パネル外形に対して有効表示領域の割合を大きくできる有機EL表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記した目的を達成するために、本発明は、封止キャップに形成する凹部(掘り込み部)のコーナが表示領域から離れる方向で外側に突出させた平面形状とし、この凹部の際に沿って吸湿剤材を塗布型成した。
【0018】
より具体的には、本発明は、複数の発光素子を配列してなる表示領域を有する矩形の素子基板と、前記表示領域を覆って前記素子基板の前記表示領域を封止する封止基板と、前記素子基板と前記封止基板の対向面の外縁部を周回して設けられて、該素子基板を前記封止基板で封止するシール材とを有する。そして、前記封止基板は、その前記素子基板と対向する周縁に突堤を形成して前記表示領域との間に空間を形成する凹部を有し、前記凹部の少なくとも1つのコーナ領域が前記表示領域から離れる方向で外側に突出させた平面形状とし、この凹部の際に吸湿材を形成してなり、前記封止基板側から見て、前記表示領域の角と前記吸湿材との間に隙間を有するものとすることができる。
【0019】
また、本発明は、前記封止基板の前記凹部が、平面から見て、その4辺が互いに外側に反り返る曲線状で、前記4辺が交叉する角が外側に突出して、全体としてピンクッション形であり、前記凹部の際に沿って当該凹部の平面形状に倣った形成された吸湿材を有することを特徴とする。
【0020】
また、本発明は、前記封止基板の前記凹部の平面形状を、その4辺の大部分が当該封止基板4辺と平行で、前記4辺が交叉する角でのみ表示領域の角から離れる方向で外側に突出しており、前記吸湿材は前記コーナ領域では一方の辺側が前記凹部の突出部にはみ出し、他方の辺側が該一方の辺側の吸湿材に突き当たって接触する形状とすることができる。
【0021】
また、本発明は、前記封止基板に有する前記凹部の前記コーナ領域を、直線から外側に出っ張った形状とし、前記吸湿材を当該出っ張りに沿って連続的形成することができる。
【0022】
また、本発明は、前記封止基板に有する前記凹部の前記コーナ領域を直線から外側に出っ張った形状とし、吸湿材のパターンがこの出っ張りに沿って連続的に形成することができる。
【0023】
また、本発明は複数の発光素子を配列してなる表示領域と発光素子を駆動する駆動回路を有する矩形の素子基板と、前記表示領域を覆って前記素子基板の前記表示領域を封止する封止基板と、前記素子基板と前記封止基板の対向面の外縁部を周回して設けられて、該素子基板を前記封止基板で封止するシール材とを有する。そして、前記封止基板は、その前記素子基板と対向する周縁に突堤を形成して前記表示領域と前記駆動回路の間に空間を形成する凹部を有し、前記凹部の少なくとも1つのコーナ領域が前記表示領域から離れる方向で外側に突出させた平面形状とし、この凹部の際に吸湿材を形成してなり、前記封止基板側から見て、前記表示領域の角と前記吸湿材との間に隙間を有するものとすることができる。
【発明の効果】
【0024】
封止基板の凹部のコーナを外側に突出させ、この凹部の際に沿って塗布型吸湿材を形成することで、有機EL素子との干渉が回避される。また、有機ELパネルの外形に対して有効表示領域をより大きくすることができ、パネル外周全域に吸湿材が形成されているため、外部からパネル内部へ浸入した水分を効果的に吸湿し、水分の影響による劣化問題を改善した信頼性が高く、高精細な有機EL表示装置を得ることが可能となる。
【0025】
本発明により、ガラス面(エッチング加工の掘り込み面:凹部)だけを通して発光光を取り出すため、透明膜等を形成する場合より、発光光の劣化が無く、より安定に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、添付の図面を参照して、本発明に係る実施の形態について詳細に説明する。なお、本発明は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲から逸脱することなくその形態および詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではないことは言うまでもない。
【実施例1】
【0027】
図1は、本発明に係るトップエミッション構造の有機EL表示装置の実施例1を説明する図である。図1(a)は平面図、図1(b)は図1(a)のA―A線に沿った断面図である。図1において、素子基板1の主面に多数の有機EL素子2からなる表示領域が形成され、その上方に封止基板(以下、封止キャップ)3が凹部11の周縁を構成する突堤10にシール材5を介在させて密封固定されている。封止キャップ3の凹部11のコーナ7が有機EL素子2を配置した表示領域から離れる方向で外側に突出した形状としている。凹部11と有機EL素子2の間には空間9がある。
【0028】
すなわち、矩形の封止キャップ3の凹部11は、平面に見て4辺が交叉する4つの角が封止キャップ3の角方向に突出して、全体の平面形状がピンクッション形となっている。この凹部11の際(突提の根元:隅辺)に沿って塗布型吸湿材4(以後は吸湿材と称する)を形成することで、吸湿材4も凹部11の際の形状に倣ったピンクッション形となっている。これにより、コーナ領域8での有機EL素子2からなる表示領域に吸湿材4が干渉することなく、発光光6は吸湿材4で遮光されることなく観察側に取り出される。
【0029】
図2は、本発明に係るトップエミッション構造の有機EL表示装置の実施例1に係る封止キャップを用いた場合のコーナ部における吸湿材と有機EL素子との干渉を防ぐための位置関係を説明するための要部平面図である。図2において、素子基板の主面に有機EL素子2が形成され、その外側の位置に配置される吸湿材4を備えた封止キャップ3がシール材で密封固定されている。シール材は凹部の外側に塗布されるが、図示を省略した。
【0030】
符号Aは従来の封止キャップを用いた際の吸湿材コーナ開始座標。A’はコーナ最内部座標をC’にするためのコーナ開始座標。Bは従来の封止キャップを用いた際の吸湿材コーナ終了座標。B’ はコーナ最内部座標をC’にするためのコーナ終了座標。C’は吸湿材の内側直線部延長交点座標、Dは従来の封止キャップの凹部コーナ開始座標、D’はコーナ最内部座標をC’にするための凹部コーナ開始座標。Eは従来の封止キャップの凹部コーナ終了座標、E’はコーナ最内部座標をC’にするための凹部コーナ終了座標、Rdは吸湿材コーナ中心半径、Rcは封止キャップ凹部コーナ中心半径、L1は吸湿材直線部からA’までのY方向距離、L2は吸湿材直線部からB’までのX方向距離、mは封止キャップ凹部の際から吸湿材外側側面までの距離、wは吸湿材パターン幅、XdはA→A’とB→B‘のX方向のシフト量、YdはA→A’とB→B’のY方向シフト量、XcはD→D’とE→E‘のX方向シフト量、YcはD→D’とE→E’のシフト量、Sはシフト量の絶対値を示す。
【0031】
実施例1では、吸湿材4のコーナ開始座標をA→A’、コーナ終了座標をB→B'にシフトさせることで、吸湿材コーナ部の最も内側の座標を吸湿材の内側直線部を延長した交点の座標C’にすることができる。封止キャップ3では、これに合わせてコーナ開始座標をD→D’、コーナ終了座標をE→E’にシフトさせる。シフト量の絶対値Sは共通であり、S<|Xc|=|Yc|=|Xd|=|Yd|とすることで吸湿材コーナ部の最も内側の座標をC’より外側に配置することができる。吸湿材の幅をw、吸湿材の中心パターンのコーナ半径をRdとするとシフト量SはS=(Rd−w/2)(√2−1)/√2となる。
【0032】
また、封止キャップのコーナの半径Rcは、封止キャップ凹部の際(きわ)と、吸湿材4の外側側面との距離をmとするとRc<Rd+w/2+mの関係を満たせば、封止キャップのシール材形成面に吸湿材4がはみ出すことなく形成できる。なお、封止キャップのコーナ半径Rcの中心座標を、吸湿材のコーナ半径Rdの中心座標より、コーナに向かって外側(XcとYcの値も、それに合わせて変更必要)に配置すること等で封止キャップ凹部コーナの際を外側に移動させることで、シール材形成面への吸湿材4のはみ出しをさらに抑制することができる。
【0033】
吸湿材4の直線部からコーナ開始座標A’までのY方向の距離L1とコーナ終了座標B’と直線部までのX方向の距離L2を大きくした方が、テーパ角度が緩やかになるため吸湿材が形成しやすくなる。吸湿材4の塗布装置の形成限界を考慮すると少なくともL1、L2はコーナ半径Rdより大きい方がよい。また、封止キャップの凹部の直線部からコーナ開始座標D’までのY方向距離と、コーナ終了座標E’と封止キャップの凹部の直線部までのX方向距離もL1,L2とするのが好ましい。
【0034】
次に、図3〜図7を参照して本発明に係るトップエミッション構造の有機EL表示装置を構成する有機ELパネルの製造方法を説明する。先ず、(1)成膜とパターニングを繰り返して、素子基板201上にTFT(Thin Film Transistor)駆動回路と下部電極202および画素分離膜237を形成する(図3)。すなわち、素子基板201の主面の下部絶縁膜(下地膜)231の上にアモルファスシリコン膜232を成膜し(図3(a))、エキシマレーザ照射等でポリシリコンに改質する。これをパターニングして島状の薄膜トランジスタの能動層232’とする。
【0035】
能動層232’とするポリシリコン膜に対し、ゲート電極233、ソース・ドレイン電極234、層間絶縁膜235、パッシベーション膜236、有機EL素子の下部電極202、画素分離膜237を形成する(図3(b))。なお、ここでは、ポリシリコンTFTを用いているが、駆動に支障がなければアモルファスシリコンTFTを用いてもよい。
【0036】
(2)下部電極202上に、有機発光層203と上部電極204を積層し、有機EL素子205を形成する(図4)。
【0037】
(3)外側に突出したコーナを有する凹部を形成した封止キャップ206の凹部の際に、対向する画素領域に入らないように制御して吸湿材207を形成する(図5)。
【0038】
吸湿材207には、塗布型吸湿材(ゼオライト、CaO等をペ一スト状にしたもの)を用い、ディスペンサ方式等で塗布し、仮乾燥した後、焼成して硬化させる。例えば、ゼオライトのペーストを使用する場合、仮乾燥は120℃で30分(大気中)、焼成は300〜400℃で60分(大気中)行い、この後、乾燥N2中にて300〜400℃で60分加熱して水分除去する。吸湿材の塗布パターンは、例えば幅が100〜l000μm、高さ50〜300μm、コーナ半径は0.5〜1mmで形成する。また、封止キャップ凹部の深さは用いるガラス基板の厚さに合わせて、例えば厚さ0.7mmのガラス基板を用いる場合には、凹部の深さは100〜350μmとする。
【0039】
(4)封止キャップ206の周辺に、シール材208を形成する(図6)。シール材塗布方式には、ディスペンサ方式、スクリーン印刷を用い、シール材の材料にはUV硬化性樹脂等を用いる。
【0040】
(5)有機EL素子205と吸湿材207が対向するように、素子基板201と封止キャップ206を貼り合わせてシール材208を硬化する(図7)。なお、シール材には、素子基板201と封止キャップ206の間隔を制御するスペーサを含有させるのが望ましい。
【0041】
実施例1により、画素領域に対する塗布型吸湿材の干渉が抑制され、有機ELパネルの外形に対して有効表示領域をより大きくすることができる。また、パネル外周全域に吸湿材が形成されているため、外部からパネル内部へ浸入した水分を効果的に吸湿し、水分の影響による劣化問題を改善した信頼性が高く、高精細な有機EL表示装置を得ることが可能となる。
【実施例2】
【0042】
図8は、本発明に係るトップエミッション構造の有機EL表示装置の実施例2を説明する平面図である。実施例2では、封止キャップ303に形成する凹部を、そのコーナ領域307で外側に出っ張った形状とした。すなわち、実施例2では、封止キャップ303の4辺に対応する凹部の平面形状は、その4辺の大部分が封止キャップ303の4辺と平行で、コーナ領域でのみ表示領域の角から離れる方向で外側に突出させている。
【0043】
そして、シール材305のパターンを直線のみで形成(角はアール形状)し、吸湿材コーナ部306は片方の辺(ここでは平行する長辺)側が凹部の突出部にはみ出し、短辺側の吸湿材が長辺側の吸湿材に突き当たって接触する形状としている。また、吸湿材の吸湿能力が十分であれば、長辺側の吸湿材と短辺側の吸湿材はコーナ領域で必ずしも接触させずに、開放した隙間をもって対向させてもよい。なお、コーナ部で短辺側と長辺側の吸湿材を十字に交差させると、凹部の掘り込み深さよりも厚くなり、吸湿材の素子基板への接触やシール形成領域へのはみ出しを生じる場合があるため、十字に交差させない方がよい。
【0044】
実施例2によっても、画素領域に対する塗布型吸湿材の干渉が抑制され、有機ELパネルの外形に対して有効表示領域をより大きくすることができる。また、パネル外周全域に吸湿材が形成されているため、外部からパネル内部へ浸入した水分を効果的に吸湿し、水分の影響による劣化問題を改善した信頼性が高く、高精細な有機EL表示装置を得ることが可能となる。
【実施例3】
【0045】
図9は、本発明に係るトップエミッション構造の有機EL表示装置の実施例3を説明する平面図である。実施例3では、封止キャップ303に有する凹部のコーナ領域307を直線から外側に出っ張った形状とし、吸湿材のパターンがこの出っ張りに沿って連続的に形成された形状にした。これにより、吸湿材コーナ部308が有機EL素子から遠ざかり、有機EL素子からなる表示領域との干渉が回避される。
【0046】
実施例3によっても、画素領域に対する塗布型吸湿材の干渉が抑制され、有機ELパネルの外形に対して有効表示領域をより大きくすることができる。また、パネル外周全域に吸湿材が形成されているため、外部からパネル内部へ浸入した水分を効果的に吸湿し、水分の影響による劣化問題を改善した信頼性が高く、高精細な有機EL表示装置を得ることが可能となる。
【実施例4】
【0047】
図10は、本発明に係るトップエミッション構造の有機EL表示装置の実施例4を説明する平面図である。実施例4では、封止キャップの凹部のコーナ領域309を、交叉する片方の辺だけ外側に突出した形状とし、シール材305のパターンを直線のみで形成して(角はアール形状)、吸湿材304のコーナ部306では片方の辺が他方の辺に漸次細りながら接触する形状とした。
【0048】
この実施例でも、吸湿材のコーナ部306で2辺の吸湿材を不連続とし、両者の間に隙間を形成してもよく、あるいは一方の端縁側面に他方の端縁を付き当てた構成としてもよい。
【0049】
実施例4によっても、画素領域に対する塗布型吸湿材の干渉が抑制され、有機ELパネルの外形に対して有効表示領域をより大きくすることができる。また、パネル外周全域に吸湿材が形成されているため、外部からパネル内部へ浸入した水分を効果的に吸湿し、水分の影響による劣化問題を改善した信頼性が高く、高精細な有機EL表示装置を得ることが可能となる。
【実施例5】
【0050】
図11は、本発明に係るトップエミッション構造の有機EL表示装置の実施例5を説明する平面図である。この実施例は、素子基板に駆動回路を有機EL素子回路と共に作り込んだものに本発明を適用したものである。駆動回路406を封止空間内に配置する場合には、有機EL素子(表示領域)近くのコーナ領域407だけ、封止キャップ403の凹部の形状を外側に突出した形状とする。吸湿材404もこの凹部の際に沿った形状に塗布型成することで吸湿材404が表示領域の角を遮蔽しない構造とする。一方、駆動回路近くのコーナ領域408の封止キャップ403のコーナ形状は従来の直線の4辺からなる矩形の2辺の交点を面取りしてアールを付けた形状とした。また、駆動回路406の上方では発光光の取り出しがない構造のため、駆動回路406に対向する位置409に吸湿材404を形成することで吸湿材404の搭載量を増やすことができる。その際の吸湿材404のパターンはラインが連続したとしたものでも、ラインが非連続に形成されたものでも、隣接するラインが広がって混ざり合いベタ塗りとなったものでもよい。
【0051】
実施例5によっても、画素領域に対する塗布型吸湿材の干渉が抑制され、有機ELパネルの外形に対して有効表示領域をより大きくすることができる。また、パネル外周全域に吸湿材が形成されているため、外部からパネル内部へ浸入した水分を効果的に吸湿し、水分の影響による劣化問題を改善した信頼性が高く、高精細な有機EL表示装置を得ることが可能となる。
【0052】
次に、有機EL素子の層構造と材料について説明する。トップエミション型の有機EL素子は、可視光域に対して透明な上部電極と有機発光層と光反射性の下部電極とで構成される。下部電極が陰極で上部電極が陽極の構成と、下部電極が陽極で上部電極が陰極の構成がある。いずれの場合も、上部電極に可視光の高い透過性を有する材料を用いる。透過率としては可視光全領域において、80%以上(好ましくは90%以上)の材料が好適である。下部電極が陰極で上部電極の構成では下部電極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/上部電極の順に積層される。下部電極が陽極で上部電極が陰極の構成では、下部電極/電子注入層/電子輸送層/発光層/正孔輸送層/正孔注入層/上部電極の順に構成される。ただし、上記構成において電子注入層あるいは正孔注入層、電子輸送層あるいは正孔輸送層が省略される場合がある。
【0053】
下部電極が陰極で上部電極が陽極の場合、下部電極には電子の注入効率を高める仕事関数の小さな導電膜材料が望ましい。具体的にはアルミニウム、アルミニウム・ネオジウム合金、マグネシウム銀合金等が挙げられる。上部電極4には酸化インジウムを主原料とする酸化物で、ITO(Indium Tin Oxide)またはIZO(Indium Zinc Oxide)等の透明導電膜が望ましい。形成は、スパッタ法、EB蒸着法、イオンフ゜レーティング法等により行う。一方、下部電極2が陽極で、上部電極が陰極の場合、陽極と陰極に上記と同様な材料を用いるが、上部電極の陰極については、透光性が必要である。仕事関数の小さな金属材料等の導電膜材料を用いる場合、可視光の透過率が少なくとも80%以上となる厚さまで薄くする。膜厚は、例えば15nm以下に形成する。また、金属材料等の導電膜材料の上部に透明導電膜材料を積層した構造を用いてもよい。
【0054】
下部電極と上部電極の間に積層される有機発光層の各層の材料としては、次のような材料を用いることができる。
【0055】
電子注入層には、弗化リチウム,弗化マグネシウム,弗化カルシウム,弗化ストロンチウム,弗化バリウム,酸化マグネシウム,酸化アルミニウム等がある。その成膜には真空蒸着法等を用いる。
【0056】
電子輸送層の材料としては、トリス(8−キノリノール)アルミニウム,オキサジアゾール誘導体,シロール誘導体,亜鉛ベンゾチアゾール錯体等がある。形成は真空蒸着法等により行う。
【0057】
発光層は、形成するホスト材料自体が発光する場合とホストに微量添加したドーバント材料が発光する場合とがある。ホスト材料としては、ジスチリルアリーレン誘導体(DPVBi),骨格にベンゼン環を有するシロール誘導体(2PSP),トリフェニルアミン構造を両端に有するオキソジアゾール誘導体(EM2),フェナンスレン基を有するべリノン誘導体(P1),トリフェニルアミン構造を両端に有するオリゴチオフェン誘導体(BMA−3T),べリレン誘導体(tBu−PTC),トリス(8−キノリノール)アルミニウム,ポリバラフェニレンビニレン誘導体,ポリチオフェン誘導体,ポリバラフェニレン誘導体,ポリシラン誘導体、ポリアセチレン誘導体等がある。また、ドーバント材料としては、キナクリドン,クマリン6,ナイルレッド,ルプレン、4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6−(パラ−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン(DCM),ジカルバゾール誘導体等がある。形成は真空蒸着法や共蒸着法等により行う。
【0058】
正孔輸送層の材料としては、N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−N,N′−ジフェニル−[1,1′−ビフェニル]−4,4′ジアミン(TPD)、4,4′−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(α−NPD)、4,4′,4″−トリ(N−カルバゾリル)トリフェニルアミン(TCTA)、1,3,5−トリス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)フェニルアミノ]ベンゼン(p−DPA−TDAB)等がある。これらの形成は真空蒸着法等を用いる。
【0059】
正孔注入層の材料としては、鋼フタロシアニン,スターパーストアミン化合物,ポリアニリン,ポリチオフェン等がある。その形成は真空蒸着法等により行う。
【0060】
有機発光層の各層の形成方法としては、単体の材料の形成には真空蒸着法等が用いられ、複数の材料を用いる場合には共蒸着法等がある。
【0061】
吸湿材として、前記ではゼオライト、CaOを用いた例を説明したが、この他の化学吸湿性物質粒子、金属錯体化合物、物理吸着物質粒子を用いることができる。また、シール材には光硬化樹脂等を用いることができる。
【0062】
本発明に係る有機EL表示装置は、デジタルカメラの画像を確認するためのモニター、デジルビデオカメラ、携帯電話、パーソナルコンピュータ等、画像を表示するためのモニターを有する電子機器であれば、どのような電子機器にも実装可能である。なお、本発明は、上記した実施例の構成に限定されるものではなく、本発明の技術思想を逸脱することなく、種々の変更が可能であることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明に係るトップエミッション構造の有機EL表示装置の実施例1を説明する図である。
【図2】本発明に係るトップエミッション構造の有機EL表示装置の実施例1に係る封止キャップを用いた場合のコーナ領域における吸湿材と有機EL素子との干渉を防ぐための位置関係を説明するための要部平面図である。
【図3】本発明に係るトップエミッション構造の有機EL表示装置を構成する有機ELパネルの製造方法を説明する図である。
【図4】本発明に係るトップエミッション構造の有機EL表示装置を構成する有機ELパネルの製造方法を説明する図である。
【図5】本発明に係るトップエミッション構造の有機EL表示装置を構成する有機ELパネルの製造方法を説明する図である。
【図6】本発明に係るトップエミッション構造の有機EL表示装置を構成する有機ELパネルの製造方法を説明する図である。
【図7】本発明に係るトップエミッション構造の有機EL表示装置を構成する有機ELパネルの製造方法を説明する図である。
【図8】本発明に係るトップエミッション構造の有機EL表示装置の実施例2を説明する平面図である。
【図9】本発明に係るトップエミッション構造の有機EL表示装置の実施例3を説明する平面図である。
【図10】本発明に係るトップエミッション構造の有機EL表示装置の実施例4を説明する平面図である。
【図11】本発明に係るトップエミッション構造の有機EL表示装置の実施例5を説明する平面図である。
【図12】従来のボトムエミッション構造の有機EL表示装置の構造例を説明する断面図である。
【図13】凹部を形成した封止キャップを用いた従来のトップエミッション構造の有機EL表示装置を説明する図である。
【図14】従来の掘り込み形状の封止キャップを用いた有機EL表示装置におけるコーナ部での吸湿材と有機EL素子との干渉を防ぐための位置関係を説明するための要部平面図である。
【符号の説明】
【0064】
1・・・素子基板、2・・・有機EL素子、3・・・封止基板(封止キャップ)、4・・・塗布型吸湿材、5・・・シール材、6・・・発光光、7・・・凹部、8・・・コーナ領域、9・・・空間、10・・・突堤、11・・・凹部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発光素子を配列してなる表示領域を有する矩形の素子基板と、前記表示領域を覆って前記素子基板の前記表示領域を封止する封止基板と、前記素子基板と前記封止基板の対向面の外縁部を周回して設けられて、該素子基板を前記封止基板で封止するシール材とを有し、
前記封止基板は、その前記素子基板と対向する周縁に突堤を形成して前記表示領域との間に空間を形成する凹部を有し、
前記凹部の少なくとも1つのコーナが前記表示領域から離れる方向で外側に突出させた形状とし、この凹部の際に沿って吸湿材を形成してなり、
前記封止基板側から見て、前記表示領域の角と前記吸湿材との間に隙間を有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記封止基板の前記凹部は、平面から見て、その4辺が互いに外側に反り返る曲線状で、前記4辺が交叉する角が外側に突出して、全体としてピンクッション形であり、
前記凹部の際に沿って当該凹部の平面形状に倣って形成された吸湿材を有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記封止基板の前記凹部の平面形状は、その4辺の大部分が当該封止基板4辺と平行で、前記4辺が交叉する角でのみ表示領域の角から離れる方向で外側に突出しており、
前記吸湿材は前記コーナ領域では一方の辺側が前記凹部の突出部にはみ出し、他方の辺側が該一方の辺側の吸湿材に突き当たって接触する形状を有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項4】
請求項1において、
前記封止基板に有する前記凹部の前記コーナ領域を直線から外側に出っ張った形状とし、前記吸湿材を当該出っ張りに沿って連続的形成されていることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項5】
複数の発光素子を配列してなる表示領域と、前記発光素子を駆動する駆動回路を有する矩形の素子基板と、前記表示領域を覆って前記素子基板の前記表示領域を封止する封止基板と、前記素子基板と前記封止基板の対向面の外縁部を周回して設けられて、該素子基板を前記封止基板で封止するシール材とを有し、
前記封止基板は、その前記素子基板と対向する周縁に突堤を形成して前記表示領域と前記駆動回路の間に空間を形成する凹部を有し、
前記凹部の少なくとも1つのコーナが前記表示領域から離れる方向で外側に突出させた平面形状とし、この凹部の際に沿って吸湿材を形成してなり、
前記封止基板側から見て、前記表示領域の角と前記吸湿材との間に隙間を有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記駆動回路に対向する前記封止基板の凹部に、前記吸湿材を他の領域より多量に搭載することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−186681(P2008−186681A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−18401(P2007−18401)
【出願日】平成19年1月29日(2007.1.29)
【出願人】(502356528)株式会社 日立ディスプレイズ (2,552)
【Fターム(参考)】