説明

有機エレクトロルミネッセンス装置およびその製造方法

【課題】補助配線を用いた良好な導通による表示ムラの解消と画素開口率の拡大を両立する有機EL装置を提供する。
【解決手段】基板10と、基板10の表面の凹凸を略平坦にする平坦化層12と、平坦化層12の上に配置された複数の発光素子70と、複数の発光素子70の周囲を囲んで配置される第2隔壁層34と、平坦化層12と第2隔壁層34との間であって複数の発光素子70の間に設けられ、発光素子70と接続される複数の補助配線50と、を備え、発光素子70は、発光層40Bを含む有機機能層を挟持する第1電極20と第2電極60とを有し、第1電極20の一部が、平坦化層12に設けられた第1開口部12Aに埋設され、第2電極60の一部が、隔壁の補助配線50と平面的に重なる領域に設けられた複数の第2開口部34Aを介して補助配線50と接続され、第1開口部12Aと第2開口部34Aとは、少なくとも一部が平面的に重なって配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス装置およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、情報機器の多様化等に伴い、消費電力が少なく軽量化された平面表示装置のニーズが高まっている。この様な平面表示装置の一つとして、発光層や正孔輸送層等の有機機能層を有する有機エレクトロルミネッセンス(以下「有機EL」)素子を発光させて表示を行う有機EL装置が提案されている。
【0003】
有機EL装置には、有機EL素子が放つ光を該素子が形成された基板側とは反対側から取り出す所謂トップエミッション方式と、有機EL素子が形成された基板側から基板を介して取り出す所謂ボトムエミッション方式の2種類の発光方式がある。この2種類の発光方式を比較すると、トップエミッション方式の有機EL装置は、画素開口率を上げやすく、表示画面の高精細化・高画質化に有利な構造となっている。
【0004】
トップエミッション方式の有機EL装置では、発光層からの光が射出する側の電極(陰極)を光透過性が備わった状態で形成する。具体的には、ITO(Indium Tin Oxide:インジウム錫酸化物)等の透明導電材料を用いる、または、銀やアルミニウム等の金属材料を用いて光透過性を有するほどの薄膜とする、といった方法で形成することにより光透過性の電極(透明陰極)を形成する。
【0005】
しかしながらこれらの透明陰極は、形成材料自体の物性や、薄く形成される透明陰極の導体断面積の狭さに起因して抵抗値が高い。そのため、有機EL装置が備える有機EL素子に流れる電流値が、該素子の配置箇所により変化してしまい、表示画面に発光ムラや輝度ムラ等の表示ムラが発生する課題があった。
【0006】
そのため、抵抗値の低い材料を用いて導通を補助する補助配線を形成することで、透明陰極と合わさった電極全体の実質的な低抵抗化を実現し、表示ムラを解消することが提案されている。例えば、特許文献1には、有機EL素子の周囲を囲む隔壁の頂面に、アルミニウムやクロム等の低抵抗値の金属材料を用いて補助配線を形成し、補助配線に重なって全面に透明陰極を形成する構成が示されている。
【0007】
ところで、有機EL素子は、有機機能層の形成材料に高分子材料を用いる場合、有機機能層の形成材料を含む液状体(機能液)を所定の位置に塗布・配置し、溶媒を蒸発させることで所望の形成材料の膜(機能膜)を成膜する、湿式塗布法が用いられる。
【0008】
この湿式塗布法の有効な手段の1つとして液滴吐出法を用いた製造方法が知られている。中でもインクジェット法は、パターニングにマスクが不要、高解像度の塗りわけが可能、インクの損失が少ない、大面積の塗布が容易、といった様々な利点がある。そのため微細なパターン、例えばフルカラー表示を行うための微細なRGBパターン、が塗りわけられた機能膜の形成に適しており、高精細で高品質な有機EL装置とすることが可能である。
【0009】
液滴吐出法を用いた製造方法では、それぞれの機能液の配置箇所を区画するため機能液を塗布する領域の周囲に隔壁を設ける。隔壁を設けることで位置精度が向上する上に、塗布された機能液が他の領域に塗布される機能液と混ざり合うことを抑制することができる。パターニングを確実なものとするために、隔壁は機能液に対して撥液性を示すこと、また、機能液を塗布する領域は機能液に対して親液性であることが望ましいとされている。
【0010】
しかし、液滴吐出法を用いて前述の隔壁上に補助配線を備えた有機EL装置を製造する場合には、次のような課題が生じる。すなわち、隔壁を設けて液滴吐出法を行う場合には、確実なパターニングのために隔壁の頂面は撥液性に保つ必要があるが、金属材料を用いて補助配線が形成されていると隔壁の頂面が親液性となり、確実なパターニングが困難になるおそれがある。
【0011】
そこで、あらかじめ上述の補助配線をパターニングして形成した後に、補助配線上に隔壁を形成し、形成された補助配線は、隔壁に形成されるコンタクトホールを介して陰極と接続される構成が提案されている(例えば特許文献2)。このコンタクトホールは、補助配線と陰極との確実な導通を実現するために、補助配線に沿って溝状に延在して形成される。
【特許文献1】特開2003−123988号公報
【特許文献2】特開2002−318556号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
前述した有機EL素子の周囲を囲む隔壁は、隣接する画素同士の光の混色を防ぐという機能も備えている。そのため、通常隔壁は遮光性を備えて形成されており、高精細化した高画質の有機EL装置とするためには、隔壁を狭く小さくし画素開口率を向上することが望ましい。
【0013】
トップエミッション方式における補助陰極の機能は陰極の導通補助であるため、導電率を良くするため補助配線を広く大きく形成することが望まれる。しかし、特許文献2記載の方法だと、画素電極の間の領域に補助陰極が配置されている。そのため、補助陰極を広げると、画素電極が小さくなり画素形状が小さくなり有機EL素子が小型化してしまう。また、補助陰極を十分に覆い隠す隔壁を形成する必要も生じ、結果、画素開口率が低下する。高精細な塗り分けが可能であるという液滴吐出法の特長を活かしきれず不十分である。
【0014】
また、有機EL装置の駆動方式に、スイッチング素子として薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:以下、TFT)を用いるアクティブマトリクス駆動方式を採用する場合、絶縁層を介して有機EL素子とTFTとを積層して形成するが、両者の接続に用いるコンタクトホールも、隔壁と平面的に重なる領域に形成することが多い。
【0015】
例えば、有機EL素子を配置する面の平坦性を確保するため、駆動素子を覆うように酸化シリコン膜などの平坦化層(絶縁層)を形成するが、平坦化層は数μmの厚みであることが多く、該コンタクトホール内に形成する電極でコンタクトホールを完全に埋没させることは難しい。そのため、コンタクトホールは有機EL素子の形成には不向きな領域な凹部として残存する。このようなコンタクトホール由来の凹部を、表示に寄与しない隔壁の下に配置する。
【0016】
これらのコンタクトホールを隔壁下および隔壁に設けるには、それらを覆い隠し、また形成するのに十分な広さの隔壁が必要となってくる。上述のように隔壁と平面的に重なる領域を拡大すると画素開口率が低下する課題が生じるが、上記文献にはこの課題に対して何ら対策がなされていない。
【0017】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、隔壁でのコンタクトホールの配置を工夫することで、補助配線を用いた良好な導通による表示ムラの解消と画素開口率の拡大を両立する有機EL装置を提供することを目的とする。また、このような有機EL装置を液滴吐出法を用いて良好に形成することができる製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記の課題を解決するため、本発明の有機EL装置は、基板と、前記基板の表面の凹凸を略平坦にする平坦化層と、前記平坦化層の上に配置された複数の発光素子と、複数の前記発光素子の周囲を囲んで配置される隔壁と、前記平坦化層と前記隔壁との間であって前記複数の発光画素の間の領域に設けられ、前記発光素子と接続される複数の補助配線と、を備え、前記発光素子は、発光層を含む有機機能層を挟持する第1電極および第2電極を有し、前記第1電極の一部が、前記平坦化層に設けられた第1開口部に埋設されており、前記第2電極の一部が、前記隔壁の前記補助配線と平面的に重なる領域に設けられた複数の第2開口部を介して前記補助配線と接続されており、前記第1開口部と前記第2開口部とは、少なくとも一部が平面的に重なって配置されていることを特徴とする。
この構成によれば、開口部の形成領域を1つ分にまとめて縮小することができるため、隔壁と重なる領域において開口部が占める領域を小さくすることができる。また、補助配線の形成領域が画素電極の形成領域と平面的に重なるため、画素電極を小型化することなく十分な広さの補助配線を形成することができる。そのため、縮小分に対応するたけ隔壁を狭くすることが可能となる。したがって、補助配線による良好な導通の確保と、隔壁の形成領域の縮小による画素開口率の向上を両立し、高精細な発光が可能な有機EL装置とすることができる。
【0019】
本発明においては、前記補助配線を配置する領域は、前記第1開口部の形状に対応した凹部を備えており、前記補助配線は、該凹部に平面的に重なり該凹部の底面および側面を覆って設けられていることが望ましい。
この構成によれば、凹部の底面および側面に付きまわる補助配線は、平坦面に形成される場合と比べ形成量が多くなる。そのため、凹部における補助配線の導体断面積を増やすことができ、良好な導通を確保した有機EL装置とすることができる。
【0020】
本発明においては、前記補助配線は、前記補助配線を配置する領域の形状に対応した凹部を備えており、前記第2電極は、該凹部に平面的に重なり該凹部の底面および側面を覆って設けられていることが望ましい。
この構成によれば、凹部の底面および側面で補助配線と第2電極とが接するため、平坦面で両者が接するよりも接触面積を広げることができ、良好な導通が得られる。したがって、表示ムラのない有機EL装置とすることができる。
【0021】
本発明においては、前記複数の発光素子は格子状に配置され、前記第1開口部と前記第2開口部とが、前記隔壁の交点と重なる位置に設けられていることが望ましい。
この構成によれば、隣接する画素間の領域で第1および第2開口部を重ねて形成する場合と比べ、該開口部を形成していない領域の隔壁を狭くすることが可能となるため、画素開口率を広げることができる。
【0022】
また、本発明の有機EL装置の製造方法は、第1電極と第2電極とに挟持された発光層を含む有機機能層を有する複数の発光素子が基板上に配置され、前記有機機能層の形成材料を溶媒に溶解または分散させた機能液を塗布して前記有機機能層を形成する工程を有する有機エレクトロルミネッセンス装置の製造方法であって、前記基板の表面に複数の第1開口部を備える平坦化層を形成する工程と、少なくとも前記第1開口部を覆って複数の前記第1電極を形成する工程と、前記複数の第1電極の間の領域であって前記第1開口部と平面的に重なる領域に、前記発光素子への導通を補助する複数の補助配線を形成する工程と、前記第1電極を露出する複数の画素開口部と、前記第1開口部と平面的に重なる複数の第2開口部と、を備える隔壁を形成する工程と、前記第2開口部を介して前記補助配線と接続する前記第2電極を形成する工程と、を備え、前記補助配線には、前記第1開口部の形状に対応した凹部が形成され、前記第2電極は、前記凹部の底面および側面を覆って形成されることを特徴とする。
この方法によれば、第1開口部の形状を利用し、第1開口部上に積層して形成する各構成要素に凹形状を付与することができる。そのため、凹部を備え導体断面積の広い補助配線を容易且つ確実に形成することができ、導電率の高い補助配線とすることができる。また、補助配線の凹部を含む面で補助陰極と第2電極とを接続させるため、両者の接触面積を広げ、良好な導通を確保することができる。したがって、表示ムラのない高性能な有機EL装置を製造することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図1〜図7を参照しながら、本発明の第1実施形態に係る有機EL装置1について説明する。ここでは、まず図1から図3を用いて有機EL装置1の構成を説明した後に、図4と図5を用いて製造方法を説明し、図6および図7を用いて本有機EL装置の特徴を説明する。なお、以下の全ての図面においては、図面を見やすくするため、各構成要素の膜厚や寸法の比率などは適宜異ならせてある。
【0024】
図1は、本実施形態の有機EL装置1の配線構造を示す模式図である。この有機EL装置1は、スイッチング素子として薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:以下、TFT)を用いたアクティブマトリクス方式のもので、複数の走査線101と、各走査線101に対して直角に交差する方向に延びる複数の信号線102と、各信号線102に並列に延びる複数の電源線103とからなる配線構成を有し、走査線101と信号線102との各交点付近にサブ画素Xを形成したものである。本発明の技術的思想に沿えば、TFTなどを用いるアクティブマトリクスは必須ではなく、単純マトリクス向けの素子基板を用いて本発明を実施し、単純マトリクス駆動しても全く同じ効果が低コストで得られる。
【0025】
信号線102には、シフトレジスタ、レベルシフタ、ビデオライン及びアナログスイッチを備えるデータ線駆動回路104が接続されている。また、走査線101には、シフトレジスタ及びレベルシフタを備える走査線駆動回路105が接続されている。
【0026】
さらに、サブ画素Xの各々には、走査線101を介して走査信号がゲート電極に供給されるスイッチング用TFT112と、このスイッチング用TFT112を介して信号線102から共有される画素信号を保持する保持容量113と、該保持容量113によって保持された画素信号がゲート電極に供給される駆動用TFT123と、この駆動用TFT123を介して電源線103に電気的に接続したときに該電源線103から駆動電流が流れ込む陽極(画素電極)20と、該画素電極20と共通電極60との間に挟み込まれた発光層40が設けられている。
【0027】
この有機EL装置1によれば、走査線101が駆動されてスイッチング用TFT112がオン状態になると、そのときの信号線102の電位が保持容量113に保持され、該保持容量113の状態に応じて、駆動用TFT123のオン・オフ状態が決まる。そして、駆動用TFT123のチャネルを介して、電源線103から画素電極20に電流が流れ、さらに発光部40を介して共通電極60に電流が流れる。発光部40は、これを流れる電流量に応じて発光する。
【0028】
図2は、有機EL装置1の構成を模式的に示す平面図である。図3に示す通り、有機EL装置1は、光透過性と電気絶縁性とを備える基板10Lと、基板10Lの略中央部分に位置する平面視ほぼ矩形の画素部130(図3中一点鎖線枠内)とを備えて構成されている。画素部130は、サブ画素Xがマトリクス状に配置された実表示領域140(図中二点鎖線枠内)と、実表示領域140の周囲に配置されたダミー領域150(一点鎖線及び二点鎖線の間の領域)とに区画されている。
【0029】
各々のサブ画素Xが備える発光部40は、発光することで赤色(R)、緑色(G)または青色(B)のいずれかの光を取り出すことが可能となっている。これらの各色の光は、発光部40が直接各色の光を射出してもよく、発光部40が白色光を射出した後に、R、G、Bに対応するカラーフィルタを介することで各色の光に変調することとしてもよい。実表示領域140においては、図の縦方向に同一色のサブ画素Xが配列しており、いわゆるストライプ配置を構成している。実画素領域140では、マトリクス状に配置されたサブ画素Xが射出するRGBの光を混色させてフルカラー表示を行うことが可能となっている。
【0030】
実表示領域140の図3中両側には、走査線駆動回路105が配置されている。この走査線駆動回路105は、ダミー領域150の下層側に位置して設けられている。また、実表示領域140の図3中上方側には検査回路160が配置されており、この検査回路160はダミー領域150の下層側に配置されて設けられている。この検査回路160は、有機EL装置100の作動状況を検査するための回路であって、例えば検査結果を外部に出力する検査情報出力手段(図示せず)を備え、製造途中や出荷時における表示装置の品質、欠陥の検査を行うことができるように構成されている。
【0031】
図3は、有機EL装置1が備えるサブ画素X周辺の拡大図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA−Aにおける矢視断面図を示す。
【0032】
図3(a)に示すように、本実施形態の有機EL装置1は、平面視が角丸矩形の複数のサブ画素Xを備えており、マトリクス状に配置した各々のサブ画素Xの周囲には、マトリクス状に第2隔壁層34が形成されている。第2隔壁層34のマトリクスの交点には、それぞれ平面視略円形の第2コンタクトホール34Aが形成されている。
【0033】
第2隔壁層34の下には、サブ画素X間の領域に第2コンタクトホール34Aと平面的に重なって帯状の補助配線50が形成されている。ここでは複数の補助配線50が図面横方向にストライプ状に配置されている。補助配線50は、第2コンタクトホール34Aを介して、不図示の共通電極と接続されている。また各々のサブ画素Xは、第2隔壁層34の下に画素電極20を備えており、第2コンタクトホール34Aと平面的に重なる領域において、図1に示す駆動用TFTと接続されている。
【0034】
本実施形態では、補助配線50が図面横方向のストライプ状に配置されることとしているが、図面縦方向のストライプ状に配置されることとしても良く、またマトリクス状に配置されることとしても構わない。
【0035】
図3(b)に示すように、有機EL装置1は、基板10Lと、基板10L上に形成される画素電極20と、画素電極20と平面的に重なる開口部を備えた隔壁30と、隔壁30に囲まれた領域に形成された発光部40と、隔壁30と発光部40とを覆って上面全面に形成された共通電極60と、を備えている。画素電極20と発光部40と共通電極60とで有機EL素子(発光素子)70を形成している。本実施形態の有機EL装置1は、有機EL素子70で生じる光が、共通電極60側へ射出されるトップエミッション方式を採用している。
【0036】
隔壁30は、画素電極20と平面的に重なる開口部を備えた第1隔壁層32と、第1隔壁層32上に形成された補助配線50と、補助配線50と平面的に重なる第2コンタクトホール34Aを備える第2隔壁層34と、を含んでいる。また、発光部40には、画素電極20からの正孔の注入を容易にする正孔注入層(有機機能層)40Aと、発光層(有機機能層)40Bと、が順に積層されている。
【0037】
以下の説明においては、基板本体10の配置している側を下側、共通電極60が配置している側を上側として、各構成の上下関係、積層関係を示すこととする。以下、各構成要素について順に説明する。
【0038】
基板10Lは、基板本体10と、基板本体10上に形成され配線や駆動素子等を備える素子層11と、を備える。基板本体10は、透明基板及び不透明基板のいずれも用いることができる。不透明基板としては、例えばアルミナ等のセラミックス、ステンレススチール等の金属シートに表面酸化などの絶縁処理を施したもの、また熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂、さらにはそのフィルム(プラスチックフィルム)などが挙げられる。透明基板としては、例えばガラス、石英ガラス、窒化ケイ素等の無機物や、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等の有機高分子(樹脂)を用いることができる。また、光透過性を備えるならば、前記材料を積層または混合して形成された複合材料を用いることもできる。本実施形態では、基板本体10の材料として上述した不透明のプラスチックフィルムを用いる。
【0039】
素子層11は、有機EL装置1を駆動させるための各種配線や図1に示すスイッチング用TFTや駆動用TFTなどの駆動素子、及び無機物または有機物の絶縁膜などを備えている。各種配線や駆動素子はフォトリソグラフィによりパターニングした後エッチングすることにより、また、絶縁膜は蒸着法やスパッタ法など通常知られた方法により適宜形成することができる。なお、基板本体10が透明材料を用いて形成されている、トップエミッション方式を採用している、などの必要に応じて、基板本体10側(下側)への光の射出を防ぎ上側に光を射出するため、基板本体10と画素電極20との間に例えばアルミニウムなどの金属材料を用いて光反射膜を形成する。
【0040】
素子層11の上には、素子層11に含まれる駆動用TFTのソース電極と接続される電極22が形成されている。電極22も同様に、フォトリソグラフィによりパターニングした後エッチングすることにより形成することができる。
【0041】
更に素子層11の上には、電極22を覆って平坦化層12が形成されている。平坦化層12は素子層11に形成される各構成要素に起因する凹凸を解消し、有機EL素子を形成するのに適した平坦な面を実現するために設ける。平坦化層12の形成材料には、酸化シリコン(SiO)、窒化シリコン(SiN)、酸窒化シリコン(SiON)等の無機絶縁材料や、硬化性のアクリル樹脂やエポキシ樹脂等の有機絶縁材料が用いられ、上記のような理由から他の構成要素と比べ相対的に厚めに形成される。本実施形態では、SiOを用いて約4μmの厚みで形成されている。
【0042】
平坦化層12には、通常知られた方法を用いて電極22を底部に露出する第1コンタクトホール12A(第1開口部)が形成されており、平坦化層12上の第1コンタクトホール12Aを含む領域に画素電極20が形成されている。そのため、第1コンタクトホール12Aを介して、電極22と画素電極20とは陽極コンタクト部27で電気的に接続している。画素電極20の形成材料には、仕事関数が5eV以上の正孔注入効果が高い材料を用いることが好ましく、このような材料としては、例えばITO(Indium Tin Oxide:インジウム錫酸化物)等の金属酸化物を挙げることができる。本実施形態の有機EL装置1はトップエミッション方式の発光方式を採用するため、画素電極20は透光性を備える必要はなく、光反射性を備える金属材料を用いることも可能である。本実施形態では形成材料にITOを用い、成膜・パターニング処理にて約300nmの厚みの画素電極20が形成されている。
【0043】
平坦化層12の厚み、つまり第1コンタクトホール12Aの深さに対して、画素電極20は薄く形成されており、第1コンタクトホール12Aは画素電極20で完全に埋没することがない。そのため、画素電極20には第1コンタクトホール12Aの形状を反映した凹部20Aが形成される。
【0044】
また、平坦化層12の上には、画素電極20の端部に一部が乗り上げるように、第1隔壁層32が形成されている。第1隔壁層32は画素電極20に対応する開口部を備えており、該開口部内に画素電極20が露出している。また、第1隔壁層32の第1コンタクトホール12Aと平面的に重なる領域には、凹部20Aの形状に応じた凹部32Aが形成されている。第1隔壁層32は、酸化シリコン(SiO)、窒化シリコン(SiN)、酸窒化シリコン(SiON)等の無機絶縁材料で形成されており、開口部の位置に対応するマスクを介したエッチング等の公知の方法で形成することができる。本実施形態では、SiOを用いて形成する。
【0045】
第1隔壁層32の上には、第1コンタクトホール12Aと平面的に重なる帯状の補助配線50が形成されている。補助配線50の第1コンタクトホール12Aと平面的に重なる領域には、第1隔壁層32の凹部32Aの底部、側壁部を覆い凹部32Aの形状に応じた凹部50Aが形成されている。また、補助配線50は導電性材料で形成されており、不図示の陰極取り出し端子へとつながる陰極コンタクト部へ接続されている。導電性材料としては、金、銀、銅、アルミニウム、クロムといった低抵抗の金属材料を用い、フォトリソグラフィ技術を用いてパターニングすることにより形成することができる。
【0046】
第1隔壁層32上には、画素電極20の周囲を囲んで第2隔壁層34が形成されている。第2隔壁層34は、画素電極20に面する側面の断面形状が順テーパ状に形成されている。そのため、第2隔壁層34で囲まれた空間は、下部よりも上部が広く開口している。また、第2隔壁層34には、底部に少なくとも補助配線50の凹部50Aを露出する第2コンタクトホール34A(第2開口部)が形成されている。第2隔壁層34は、後述する有機機能層の形成材料を含む液状体(機能液)に対して撥液性を示すように形成されており、例えば含フッ素樹脂や、表面がCFプラズマ処理により撥液処理された光硬化性のアクリル樹脂やポリイミド樹脂などで形成されている。
【0047】
第1隔壁層32の開口部に露出した画素電極20上には、画素電極20からの正孔の注入を容易にする電荷移動層としての正孔注入層40Aが形成されている。正孔注入層40Aの形成材料は、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)とポリスチレンスルフォン酸(PSS)との混合物(PEDOT/PSS)や、ポリアニリンにイオン性ドーパントを添加したもの(PANI)等の公知の材料を例示することができる。本実施形態ではPEDOT/PSSを用いる。
【0048】
正孔注入層40Aの上には、発光層40Bが形成されている。発光層40Bの形成材料としては、蛍光あるいは燐光を発光することが可能な公知の高分子発光材料を好適に用いることができる。このような材料としては、ポリフルオレン(PF)、ポリパラフェニレンビニレン(PPV)、ポリフェニレン(PP)、ポリパラフェニレン(PPP)、ポリビニルカルバゾール(PVK)、ポリチオフェン、ポリジアルキルフルオレン(PDAF)、ポリフルオレンベンゾチアジアゾール(PFBT)、ポリアルキルチオフェン(PAT)や、ポリメチルフェニルシラン(PMPS)等のポリシランなどの各誘導体を例示することができる。また、これらの発光材料に、ペリレン系色素、クマリン系色素、ローダミン系色素などの高分子系材料や、ルブレン、ペリレン、9,10−ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、キナクリドン等の低分子材料をドープして用いることもできる。
【0049】
また、正孔注入層40Aと発光層40Bとの間に、発光層での発光効率を向上させる機能を備えたインターレイヤ層を形成することとしても良い。インターレイヤ層の形成材料には、例えばアミン系の導電性高分子を用いることができ、正孔注入層40Aや発光層40Bと同様の方法を用いて形成することができる。インターレイヤ層を設けると、正孔注入層40Aと発光層40Bとの界面での発光層の失活を防止でき、発光効率を上げ有機EL装置を長寿命化することができる。
【0050】
発光層40Bの上には、第2隔壁層34の頂面、側壁を覆って表面全面に共通電極60が形成されている。共通電極60は、ITO等の透明導電性材料を用いて形成される。または、カルシウム等の仕事関数の低い金属材料を光透過性を有するほどの薄膜として形成することとしても良く、更にはこれらが積層することとしても良い。
【0051】
共通電極60は、第2コンタクトホール34Aを介して補助陰極コンタクト部57にて補助陰極50と接続されており、凹部50Aの底部、側壁部を覆って形成されている。また共通電極60は、補助配線50を介して、または直接、不図示の陰極取り出し端子へとつながる陰極コンタクト部へ接続されている。画素電極20、発光部40および共通電極60は、有機EL素子70を形成している。
【0052】
このような有機EL装置1に通電すると、有機EL素子70を流れる電流は共通電極60のみならず補助配線50にも流れるため、陰極側では全体として実質的な抵抗値が下がり、導電率が上がる。そのため陰極側の抵抗が高いことに起因した電圧降下による輝度ムラがなくなり、高画質な有機EL装置1となる。
【0053】
次いで、図4および図5を用い、有機EL装置1の製造方法を説明する。有機EL素子は、有機機能層の形成材料に低分子材料を用いるか、又は高分子材料を用いるかによってその製造方法が異なる。低分子材料の場合には、剛直な骨格を有する分子が多く、有機溶媒に対する溶解性が低いものが多い。そのため、例えば真空蒸着法のような気相反応が用いられる。一方で、高分子材料の場合には、有機溶媒に対する溶解性が比較的高いものが多い。そのため、有機機能層の形成材料を含む液状体(機能液)を所定の位置に塗布・配置し、溶媒を蒸発させることで所望の形成材料の膜を成膜する、湿式塗布法が用いられる。本実施形態では、有機機能層の形成材料に高分子材料を用い、湿式塗布法のうちの有効な手段の1つである液滴吐出法、中でも有用なインクジェット法を用いる。なお、以下の製造方法に挙げる各処理条件は一例であり、これに限定するものではない。
【0054】
まず図4(a)に示すように、基板本体10上に素子層11、電極22を順に形成し、更に、画素電極20を底部に露出する第1コンタクトホール12Aを備える平坦化層12を形成する。これらはいずれも従来公知の方法を用いて形成することができる。
【0055】
次いで図4(b)に示すように、第1コンタクトホール12Aを含む領域に画素電極20を形成する。画素電極20は、ITO膜を成膜・パターニングすることにより形成することができる。また、画素電極20は、第1コンタクトホール12A内で第1コンタクトホール12Aの側壁および底面を覆う凹部20Aを形成し、陽極コンタクト部27で電極22と接続する。
【0056】
次いで図4(c)に示すように、画素電極20を露出する開口部を備えた第1隔壁層32を形成する。第1隔壁層32は、凹部20A内で凹部20Aの側壁および底面を覆う凹部32Aを形成する。
【0057】
次いで図4(d)に示すように、従来公知の方法により導電性材料を用いて補助配線50を形成する。補助配線50は、凹部32A内で凹部32Aの側壁および底面を覆って形成され、表面には凹部32Aの形状を反映した凹部50Aを形成する。
【0058】
次いで図5(a)に示すように、第1隔壁層32の上に樹脂材料を用いて第2コンタクトホール34Aを備える第2隔壁層34を形成する。第2隔壁層34は、先に第2コンタクトホール34Aを備えない形状の隔壁を形成した後にエッチングにより第2コンタクトホール34Aを掘って形成しても良く、例えば光硬化性樹脂を用いて、第2コンタクトホール34Aを遮光するマスクを介して露光することでパターニングを行い、第2隔壁層34の形成と同時に第2コンタクトホール34Aを形成することとしても良い。第2コンタクトホール34Aは、少なくとも一部が第1コンタクトホール12Aと平面的に重なって補助配線50を露出するように形成されている。
【0059】
第2隔壁層34を形成した後に、全体をOガス下でプラズマ処理を行い、次いで、CFガス下でプラズマ処理を行う。まずOプラズマ処理により、画素電極20、補助配線50、第1隔壁層32および第2隔壁層34の表面は不純物が除去されて親液化され、次いでCFプラズマ処理により、第2隔壁層34の表面が撥液化される。CFプラズマ処理では有機物が撥液化されるため、第2隔壁層34の表面を選択的に撥液化することができる。
【0060】
次いで図5(b)に示すように、液滴吐出法に用いる液滴吐出ヘッド301から、正孔注入層40Aや発光層40Bの形成材料を溶媒に溶解又は分散させた液状体(機能液L)を塗布し、まず画素電極20上に正孔注入層40Aを形成した上で、次いで発光層40Bを形成する。
【0061】
まず、正孔注入層40Aの形成材料を含む機能液L1を塗布し、乾燥および焼成することにより正孔注入層40Aを形成する。塗布時にこれらを溶かしておく溶媒としては、水、イソプロピルアルコール、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−イミダゾリノン等の極性溶媒を例示することができる。画素電極20の表面は親液処理されているため機能液L1は良好に濡れ広がり、確実に正孔注入層40Aを形成することができる。また、第2隔壁層34の表面が撥液処理されているため、第2隔壁層34の頭頂部に機能液L1が留まらず、確実な塗りわけが可能となる。
【0062】
次いで発光層40Bの形成材料を含む機能液L2を塗布し、乾燥およびアニール処理して、正孔注入層40Aの上に発光層40Bを形成する。発光層40Bの形成材料を含む機能液の溶媒には、水、メタノール、エタノール等の水と相溶性のあるアルコール、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルイミダゾリン(DMI)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、2,3−ジヒドロベンゾフラン、等が挙げられ、これらの溶媒を2種以上適宜混合したものであっても良い。また、これらの溶媒にシクロヘキシルベンゼン等を適宜加えて粘度を調整しても構わない。第2隔壁層34の頭頂部は撥液処理されているため第2隔壁層34の頭頂部に機能液が留まらず、確実に塗りわけがなされる。
【0063】
次いで図5(c)に示すように、真空蒸着法にて基板10Lの上面全面に共通電極60を形成する。形成される共通電極60は、補助配線50と接して導通することで全体として陰極として機能する。以上のようにして製造を行って有機EL素子70を形成し、有機EL装置1が完成する。
【0064】
このように第1コンタクトホール12Aと第2コンタクトホール34Aとが平面的に少なくとも一部が重なる配置となることで、コンタクトホールの占める領域を小さくすることができる。さらに、第1コンタクトホール12Aの形成領域が平面的に第2コンタクトホール34Aの形成領域内に含まれるように、または、第2コンタクトホール34Aの形成領域が平面的に第1コンタクトホール12Aの形成領域内に含まれるように、それぞれのコンタクトホールを配置することにより、コンタクトホールの占める領域を1つ分にまとめて縮小することができる。そのため、隔壁30と重なる領域においてコンタクトホールが占める領域を小さくすることができ、縮小分は隔壁30を狭くすることが可能となるため、画素開口率を広げることができる。
【0065】
このように形成された有機EL装置1の特徴部分について、図6および図7を用いて補足する。
【0066】
図6(a)には、本実施形態の有機EL装置1の特徴部分であるコンタクトホール付近の拡大断面図が示してある。また図6(b)には比較のために、補助配線50および第2コンタクトホール34Aを、第1コンタクトホール12Aと重ねずに形成する場合に予想される構造を示す拡大断面図を示す。
【0067】
図6(a)に示すように、有機EL装置1が備える補助配線50は、凹部32Aに沿って形成されており、更に、共通電極60は補助配線50の凹部50Aに沿って形成されている。そのため、図6(b)のように平坦な箇所に形成する場合と比べ、補助配線50の平面視面積を変えずに導体断面積を広くすることができ、更には凹部50Aにおいて補助配線50と共通電極60との接触面積を広くすることができる。そのため、より確実で効率的な導通を実現することができる。
【0068】
また、凹部32A、50Aは、下層に配置されている第1コンタクトホール12Aの形状を反映したものとなっている。第1コンタクトホール12A上に補助配線50および第2コンタクトホール34Aを重ねて配置することで、容易に上記効果を得られる構成となっている。
【0069】
図7は、第2コンタクトホール34Aの配置を説明するための平面図であり、図7(a)は本実施形態の有機EL装置1を示し、図7(b)は変形例を示す。
【0070】
図7(a)に示すように、第2コンタクトホール34Aは、マトリクス状に形成された第2隔壁層34の交点に配置されている。該交点付近は、隣接するサブ画素間の領域と比べると第2隔壁層34が広く形成されているため、第2コンタクトホール34A、更には第2コンタクトホール34Aと平面的に重なって形成されている第1コンタクトホール12Aを確実に覆い隠すことができる。更には、符号34B,34Cで示すような隣接する画素間の領域に第2コンタクトホールを形成する場合と比べ、該コンタクトホールを形成していない領域の第2隔壁層34を狭くすることが可能となるため、画素開口率を広げることができる。または、画素開口率を維持したまま確実な導通を確保するために平面視面積が広いコンタクトホールを形成することができる。
【0071】
図7(b)には第2コンタクトホールの配置の変形例を示す。図7(b)には、サブ画素Xがマトリクス配置ではなくデルタ配置をした例を示しているが、図7(a)と同様、第2コンタクトホール34Aを第2隔壁層34の交点に配置することで良好な画素開口率を広げることが可能となる。
【0072】
以上のような構成の有機EL装置によれば、コンタクトホールの占める領域を1つ分にまとめて縮小することができるため、隔壁30と重なる領域においてコンタクトホールが占める領域を小さくすることができ、縮小分に対応する隔壁30を狭くすることが可能となる。また、補助配線50の形成領域が画素電極20の形成領域と平面的に重なるため、画素電極20を小型化することなく十分な広さの補助配線50を形成することができる。そのため、補助配線50による良好な導通の確保と、隔壁30の形成領域の縮小による画素開口率の向上を両立し、高精細な発光が可能な有機EL装置1とすることができる。
【0073】
また、本実施形態では、補助配線50を配置する第1隔壁層32は、第1コンタクトホール12Aの形状に対応した凹部32Aを備えており、補助配線50は、該凹部32Aに平面的に重なり該凹部の底面および側面を覆って設けられている。凹部32Aの底面および側面に付きまわる補助配線50は、平坦面に形成される場合と比べ形成量が多くなり、凹部32Aにおける補助配線50の導体断面積を増やすことができるため、良好な導通を確保した有機EL装置1とすることができる。
【0074】
また、本実施形態では、補助配線50は、第1隔壁層32の形状に対応した凹部50Aを備えており、共通電極60は、凹部50Aに平面的に重なり該凹部の底面および側面を覆って設けられている。凹部50Aの底面および側面で補助配線50と共通電極60とが接するため、平坦面で接するよりも両者の接触面積を広げることができ、良好な導通が得られる。したがって、表示ムラのない有機EL装置1とすることができる。
【0075】
また、本実施形態では、第1コンタクトホール12Aと第2コンタクトホール34Aとが、第2隔壁層34の交点と重なる位置に設けられている。そのため、隣接する画素間の領域に両コンタクトホールを形成する場合と比べ、両コンタクトホールを形成していない領域の第2隔壁層34を狭くすることが可能となるため、有機EL装置1の画素開口率を広げることができる。
【0076】
また、本発明の有機EL装置1の製造方法によれば、画素電極20の接続に用いる第1コンタクトホール12Aの形状を利用し、第1コンタクトホール12A上に積層して形成する各構成要素に凹形状を付与することができる。そのため、凹部50Aを備え、導体断面積の広い補助配線50を容易且つ確実に形成することができ、導電率の高い補助配線50とすることができる。また、凹部50Aを含む補助陰極コンタクト部57で接する補助配線50と共通電極60との接触面積を広げ、良好な導通を確保することができる。したがって、表示ムラのない高性能な有機EL装置を製造することが可能となる。
【0077】
なお、本実施形態においては、第2コンタクトホール34Aは、平面視略円形のドット状としたが、これに限らず楕円形、方形、矩形、多角形等の設計に合わせた形状とすることができる。
【0078】
また、第2コンタクトホール34Aの平面視面積が大きいほど、補助配線50と共通電極60との接触面積が確保されるため良好な導通を確保することができるが、その際には第2コンタクトホール34Aは、補助配線50の延在方向と平行な方向に平面視形状を変更させると無駄なく補助配線50を露出させることができ好ましい。
【0079】
[電子機器]
次に、本発明の電子機器の実施形態について説明する。図8は、本発明の有機EL装置を用いた電子機器の一例を示す斜視図である。図8に示す携帯電話1300は、本発明の有機EL装置を小サイズの表示部1301として備え、複数の操作ボタン1302、受話口1303、及び送話口1304を備えて構成されている。これにより、本発明の有機EL装置により構成された表示品質に優れる表示部を具備した携帯電話1300を提供することができる。
【0080】
上記各実施の形態の有機EL装置は、上記携帯電話に限らず、電子ブック、プロジェクタ、パーソナルコンピュータ、ディジタルスチルカメラ、テレビジョン受像機、ビューファインダ型あるいはモニタ直視型のビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた機器等々の画像表示手段として好適に用いることができる。かかる構成とすることで、表示品質が高く、信頼性に優れた表示部を備えた電子機器を提供できる。
【0081】
更には、上記各実施の形態の有機EL装置をラインヘッドとして用いることができ、該ラインヘッドを光源として備えた画像形成装置(光プリンタ)として好適に用いることができる。このようにすると、輝度ムラが無く露光不良の生じ難い光プリンタとすることができる。
【0082】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施の形態例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本実施形態の有機EL装置の配線構造を示す模式図である。
【図2】本実施形態に係る有機EL装置の構成を模式的に示す平面図である。
【図3】本実施形態に係る有機EL装置が備えるサブ画素周辺の拡大図である。
【図4】本発明の実施形態に係る有機EL装置の製造方法を示す工程図である。
【図5】本発明の実施形態に係る有機EL装置の製造方法を示す工程図である。
【図6】本発明の有機EL装置の特徴部分を説明する拡大断面図である。
【図7】本発明の有機EL装置の特徴部分を説明する平面図である。
【図8】本発明の有機EL装置を備える電子機器を示す概略図である。
【符号の説明】
【0084】
1…有機エレクトロルミネッセンス装置、10…基板本体(基板)、12…平坦化層、12A…第1コンタクトホール(第1開口部)、20…画素電極(第1電極)、20A,32A,50A…凹部、30…隔壁、32…第1隔壁層、34…第2隔壁層、34A…第2コンタクトホール(第2開口部)、40A…正孔注入層(有機機能層)、40B…発光層(有機機能層)、50…補助配線、60…共通電極(第2電極)、70…発光素子、L,L1,L2…機能液、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の表面の凹凸を略平坦にする平坦化層と、
前記平坦化層の上に配置された複数の発光素子と、
複数の前記発光素子の周囲を囲んで配置される隔壁と、
前記平坦化層と前記隔壁との間であって前記複数の発光素子の間の領域に設けられ、前記発光素子と接続される複数の補助配線と、を備え、
前記発光素子は、発光層を含む有機機能層を挟持する第1電極および第2電極を有し、
前記第1電極の一部が、前記平坦化層に設けられた第1開口部に埋設されており、
前記第2電極の一部が、前記隔壁の前記補助配線と平面的に重なる領域に設けられた複数の第2開口部を介して前記補助配線と接続されており、
前記第1開口部と前記第2開口部とは、少なくとも一部が平面的に重なって配置されていることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス装置。
【請求項2】
前記補助配線を配置する領域には、前記第1開口部の形状に対応した凹部が設けられており、
前記補助配線は、該凹部に平面的に重なり該凹部の底面および側面を覆って設けられていることを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス装置。
【請求項3】
前記補助配線は、前記補助配線を配置する領域の形状に対応した凹部を備えており、
前記第2電極は、該凹部に平面的に重なり該凹部の底面および側面を覆って設けられていることを特徴とする請求項2に記載の有機エレクトロルミネッセンス装置。
【請求項4】
前記複数の発光素子は格子状に配置され、
前記第1開口部と前記第2開口部とが、前記隔壁の交点と重なる位置に設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス装置。
【請求項5】
第1電極と第2電極とに挟持された発光層を含む有機機能層を有する複数の発光素子が基板上に配置され、
前記有機機能層の形成材料を溶媒に溶解または分散させた機能液を塗布して前記有機機能層を形成する工程を有する有機エレクトロルミネッセンス装置の製造方法であって、
前記基板の表面に複数の第1開口部を備える平坦化層を形成する工程と、
少なくとも前記第1開口部を覆って複数の前記第1電極を形成する工程と、
前記複数の第1電極の間の領域であって前記第1開口部と平面的に重なる領域に、前記発光素子への導通を補助する複数の補助配線を形成する工程と、
前記第1電極を露出する複数の画素開口部と、前記第1開口部と平面的に重なる複数の第2開口部と、を備える隔壁を形成する工程と、
前記第2開口部を介して前記補助配線と接続する前記第2電極を形成する工程と、を備え、
前記補助配線には、前記第1開口部の形状に対応した凹部が形成され、
前記第2電極は、前記凹部の底面および側面を覆って形成されることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−199868(P2009−199868A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−39976(P2008−39976)
【出願日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】